第8期 環境エネルギー科学技術委員会(第5回) 議事録

1.日時

平成28年6月14日(火曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室

3.議題

  1. 今後の環境エネルギー分野の研究開発について
  2. 研究開発計画(環境エネルギー分野)骨子案について
  3. その他

4.出席者

委員

安井主査、橋本主査代理、高村主査代理、市橋委員、江守委員、沖委員、奥委員、加藤委員、河宮委員、小長井委員、関委員、関根千津委員、関根泰委員、館山委員、田中委員、花木委員、山地委員

文部科学省

白間大臣官房審議官、田中研究開発局長、藤吉環境エネルギー課長、樋口環境科学技術推進官、小野専門官、石橋課長補佐、森課長補佐、直井地球観測推進専門官

オブザーバー

大阪大学大学院 谷口特任教授

5.議事録

【安井主査】  おはようございます。ただいまから、第8期になります科学技術・学術審議会 研究計画・評価分科会、環境エネルギー科学技術委員会、その第5回となります会合を開催させていただきます。お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
まず事務局から、本日の出席者の確認をお願いしたいと思います。
【小野専門官】  おはようございます。環境エネルギー課の小野と申します。本日の御出席の委員数は過半数に達しておりますので、本委員会は成立となります。
また、今回は、議題1、「今後の環境エネルギー分野の研究開発について」において御説明いただくため、次世代半導体研究開発事業のプログラムディレクターである大阪大学の谷口先生に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。
【安井主査】  ありがとうございました。
それでは、議事に入ります前に、事務局より本日の資料の確認をお願いしたいと思います。
【小野専門官】  事務局より、資料の確認をさせていただきます。まず、議事次第が1枚、その後ろに座席表が1枚、それから資料ナンバーで1、2、3というのが、それぞれ先生方からのプレゼンの資料が付いております。また、資料4-1と資料4-2、あと参考資料が1と2とございます。過不足等ございましたら事務局まで御連絡をお願いいたします。
【安井主査】  大丈夫でしょうか。それでは、早速でございますけれども、議事に入らせていただきたいと思います。お手元の議事次第をごらんいただきますとお分かりのように、本日2つの議題でございます。議題の1、これが大部分の時間ですけれども、今後の環境エネルギー分野の研究開発についてということでございます。議題の2が研究開発計画についてということになっております。多分ちょっと遅れるかもしれませんが、12時近くには終われると思っております。
それでは、早速議題の1でございますけれども、今後の環境エネルギー分野の研究開発についてということでございます。本日最初の議題の目的及び段取り等につきまして、事務局からの御説明を頂きたいと思います。
【小野専門官】  それでは、まず資料4-1と4-2をごらんください。前回委員会において事務局より御説明いただきましたとおり、本年度この環境エネルギー委員会においては、第5期科学技術基本計画に基づく環境エネルギー分野の研究開発計画を審議・作成する必要がございます。今後の審議のスケジュールといたしましては、資料4-1をごらんください。
研究開発計画について、全4回にわたり審議を行っていただいて、骨子案、素案、案と内容を充実させて、年度末に決定を頂く予定となっております。この研究開発計画の策定に当たりましては、各会において有識者の皆様方から御知見を頂いて、その内容も踏まえて研究開発計画の中身を充実させていただければと考えております。
最初の審議となる本日は、研究開発計画の骨子案について御審議いただきたいと考えております。最初に、安井主査との御相談の上、事務局において作成いたしました研究開発計画の骨子のたたき台について御説明をさせていただきまして、その後、有識者の方々から最新の知見や動向について御説明を頂いて、その後、骨子の御議論を頂ければと考えております。
それでは、事務局から、資料4-2に基づいて、研究開発計画の骨子について御説明をさせていただきます。
【安井主査】  では、お願いいたします。
【藤吉環境エネルギー課長】  私の方から骨子について御説明いたします。資料4-2をごらんいただきたいと思います。まず、この資料の構成なんですけれども、柱が3つあります。1つ目は、基本的な考え方、そして2つ目は、次のページの重点的に推進すべき研究開発の取組、そして、3本目は、5ページ目の研究開発の推進方策となっております。
これは、基本計画ができたときに分野ごとの研究開発計画を作るというのがこれまでの考え方になっておりまして、計画評価分科会――この委員会の上の部会ですけれども、そこで分野ごとの研究開発計画を作るとされておりまして、その流れでこの環境エネルギー分野の研究開発計画を作るということになっております。これは、第5期の基本計画等に基づいてということになっておりますので、向こう10年間程度を見越して、今後5年間の環境エネルギー分野の研究開発計画を策定するというものでございます。
また、このフォーマット、先ほど申し上げました3つの柱につきましても、これは分野ごとに作成するわけでございますが、こういった構成につきましては、この同じ構成で作成すべしとなっておりまして、それに基づいて骨子を作らせていただいております。
それでは、1ページ目からでございます。まず基本的な考え方でございます。最初、第5期の基本計画においては、10年程度を見通しつつ、平成28年度からの5年間の科学技術イノベーション政策の姿が示された。この中では、目指すべき国の姿として、持続的な成長と地域社会の自律的な発展、国及び国民の安全・安心の確保と豊かで質の高い生活の実現、地球規模課題への対応と世界の発展への貢献、知の資産の持続的創出の4つを掲げております。
その上で、これらの目指すべき国の姿の実現に向けて、未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組として、世界に先駆けた超スマート社会の実現(Sciety5.0)、経済・社会的課題への対応として、エネルギー、資源、食料の安定的な確保、地球規模課題への対応と世界の発展への貢献等を推進するとされております。
2段落目、一方、2015年末に開催されたCOP21で採択されたパリ協定においては、世界共通の長期目標として、産業革命以前の水準と比べて世界全体の平均気温の上昇を2度より十分低く保つこと、加えて同気温上昇を1.5度に抑える努力を追求すること、可及的速やかな排出のピークアウト、今世紀後半における排出と吸収の均衡達成への取組に言及しております。さらに、エネルギー・環境イノベーション戦略においては、2度目標と整合的なシナリオに戻すため、2050年頃という長期的視点に立って、世界全体で温室効果ガスの抜本的な排出削減を実現するイノベーションを創出することをターゲットとして、中長期的なエネルギー・環境分野の研究開発を、産学官の英知を結集して強力に推進し、その成果を世界に展開するとされております。
また、エネルギー基本計画においても、エネルギー需給構造上の脆弱(ぜいじゃく)性への対応や、2050年には世界で温室効果ガスの排出量を半減して、先進国では80%削減を目指すという目標達成のため、革命的なエネルギー関係技術の開発と導入が不可欠とされているほか、更に地球温暖化対策計画においても、地球温暖化対策技術の開発・実証は、温室効果ガス削減量の拡大及び削減コストの低減を促し、それが社会に広く普及することによって、将来にわたる大きな温室効果ガスの削減を実現する取組であることから、再生可能エネルギーや省エネルギー等の技術開発・実証を進めることとされております。
同時に、温対計画におきましては、長期的かつ世界的な観点から地球温暖化対策を推進するためには、国内外の最新の科学的知見を継続的に集積していくことが不可欠であり、気候変動に関する研究、観測・監視は、これらの知見の基盤をなす極めて重要な施策であるとされております。また、地球温暖化に係る研究については、気候変動メカニズムに解明や地球温暖化の現状把握と予測及びそのために必要な技術開発の推進、地球温暖化が環境、社会・経済に与える影響の評価、温室効果ガスの削減及び地球温暖化への適応策などの研究を、国際協力を図りつつ、戦略的・集中的に推進するとされております。さらに、気候変動の影響への適応計画においても、観測・監視、調査・研究等、気候リスク情報等の共有と提供及び地域での適応の推進に関する基盤的施策並びに国際的施策を進めることとされております。
研究開発計画(環境エネルギー分野)においては、これらの計画等を踏まえて、2050年頃という長期的な視点を持ちつつ、おおむね5年程度以内に文科省が取り組むべき事項を明らかにするとしております。
最初の柱には、やや長くなりましたけれども、本来は、科学技術基本計画に沿って分野ごとの研究開発計画を作るとされておりますけれども、この環境エネルギー分野におきましては、今申し上げたように様々な政策文書が決定されておりますので、そういったものへの配慮、参照というのも必要だと考えまして、このように関係文書についても引用するとしております。
続きまして、2ページ目の2つ目の柱、重点的に推進すべき研究開発の取組。これが具体的に今後5年間、この分野で何をしていくかというものでございます。大きく3点挙げております。鍵括弧で3つありますけれども、最初が、創エネ・蓄エネ・省エネ等に係る革新的な技術の研究開発の推進でございます。これについては、まず構成としては、大目標、そして中目標、さらに、中目標に基づいた具体的な施策の中身、こういった書き方で書かれております。
大目標のマル1でございますけれども、これは冒頭申し上げました科学技術基本計画ですとか、様々な政策文書にどのように掲げられているかというのを書いております。最初の丸ですけれども、これは科学技術基本計画に言及されております。将来のエネルギー需給構造を見据えた最適なエネルギーミックスに向け、エネルギーの安定的な確保と効率的な利用を図る必要があり、現行技術の高度化と先進技術の導入の推進を図りつつ、革新的技術の創出にも取り組む。また、同じ基本計画では、2つ目のマルですけれども、資源の安定的な確保を図りつつ、ライフサイクルを踏まえ、資源生産性と循環利用率を向上させ最終処分量を抑制した持続的な循環型社会の実現を目指し、バイオマスからの燃料や化学品等の製造・利用技術の研究開発等にも取り組むと書かれております。
また、エネルギー環境イノベーション戦略におきましては――3つ目ですけれども、長期的視野に立って、CO2排出削減のイノベーションを実現するための中長期的なエネルギー環境分野の研究開発を、産学官の英知を結集して強力に推進し、その成果を世界に展開していくとされております。
また、エネルギー基本計画におきましては、革命的なエネルギー関係技術の開発と、そのような技術を社会全体で導入していくという目標が掲げられ、最後、温対計画では、再生可能エネルギーや省エネルギー等の技術開発・実証を早い段階から推進するとともに、そうした技術の社会実装を進めるといった目標が掲げられております。
こういったものを踏まえて、文科省の役割、中目標ですけれども、エネルギーの安定的な確保と効率的な利用、温室効果ガスの抜本的な排出削減を実現するため、大学等の基礎研究に立脚した従来の延長線上ではない、新発想に基づく低炭素化技術の研究開発、温室効果ガスの抜本的な排出削減を実現するための革新的な技術の研究開発を推進するとさせていただいております。
この中目標の達成のために重点的に推進すべき研究開発の取組として、2つ掲げております。1つ目は、大学等の基礎研究に立脚した新発想に基づく低炭素化技術の研究開発でございます。我が国の大学や理化学研究所等の国立研究開発法人における優れた基礎研究の力を生かして、従来の延長線上ではないゲームチェンジングな研究者の発想に基づく低炭素化技術の研究開発を推進するとしております。
2つ目、温室効果ガスの抜本的な排出削減のための明確な課題解決のための研究開発。これは、温室効果ガスの抜本的な排出削減に向けて、明確なターゲットを示して、その解決を図るための革新的な技術の研究開発を推進するとしております。これにつきましての論点例といたしましては、温室効果ガスの抜本的な排出削減が実現された2050年の社会像とそれに必要な技術は何か、また、ほかの研究開発プログラムや他府省の取組との連携等の実用化に向けた道筋は何かといったものかと思います。
また、3ページ目、2つ目の柱でございますけれども、これは最先端の気候変動予測・対策技術の確立でございます。大目標ですけれども、これは基本計画に掲げられた目標でございます。これは、基本計画では、地球規模での温室効果ガスの大幅な削減を目指すとともに、我が国のみならず世界における気候変動の影響への適応に貢献する。また、温対計画では、地球温暖化に係る研究については、従前からの取組を踏まえ、気候変動メカニズムの解明や、地球温暖化の現状把握と予測及びそのために必要な技術開発の推進、地球温暖化が環境、社会・経済に与える影響の評価、温室効果ガスの削減及び地球温暖化への適応策などの研究を、国際協力を図りつつ、戦略的、集中的に推進する等々となってございます。
以下、適応計画で同様にスパコン等を用いたモデル技術やシミュレーション技術の高度化、さらには最新の気候変動予測データ、全球気候モデリングのダウンスケーリングの活用。さらには、適応計画でございますけれども、気候変動適応情報に係るプラットフォーム等において、ダウンスケール等による高解像度データなど、地域が必要とする様々なデータ・情報にもアクセスが可能とするとともに、地方公共団体が活用しやすい形で情報提供をする等々となっております。
こうしたものを踏まえた文科省の役割としては、中目標ですけれども、国内外における気候変動対策に活用されるよう、地球観測データやスーパーコンピューター等を活用して、気候変動メカニズムの解明、気候変動予測モデルの高度化を進め、より精緻な将来予測に基づく温暖化対策目標・アプローチの策定に貢献する。また、より効率的・効果的な気候変動適応策の立案・推進のため、不確実性の低減、高分解能での気候変動予測や気候モデルのダウンスケーリング、気候変動影響評価、適応策の評価に関する技術の研究開発を推進するとさせていただいております。
これを踏まえた具体的な研究開発の中身ですけれども、2つございます。1つは、国内外における気候変動対策に活用するための気候変動予測・影響評価の技術の開発です。これは、国内外の気候変動適応策の立案・推進に貢献するため、地球観測データやスパコン等を活用し、気候変動メカニズムの解明、気候変動モデルの高度化、高分解能での気候変動予測等の技術の研究開発を推進し、気候上昇の不確実性の低減や環境の不可逆変化のより確実な解明、極端気象現象に関する高精度な確率的予測や脆弱(ぜいじゃく)性・暴露も考慮した影響評価を可能とするとしております。
2つ目、次のページでございますけれども、地域レベルでの気候変動適応に活用するための気候変動影響評価・適応策評価技術の開発。中身は、気候モデルのダウンスケーリング、地域レベルでの気候変動影響評価、適応策の評価に関する技術の研究開発を推進して、地方公共団体における地域の実情に応じた効率的・効果的な適応策の立案に貢献するというものでございます。
大きな柱の3つ目は、地球観測ビッグデータのプラットフォーム構築でございます。これは、基本計画等におきましては、例えばICTを最大限に活用して、サイバー空間とフィジカル空間とを融合させた取組により、人々に豊かさをもたらす超スマート社会を未来社会への姿として共有し、その実現に向けた一連の取組を更に進化させつつ、「Society5.0」として強力に推進し、世界に先駆けて超スマート社会を実現していく。同様に、地球環境の情報をビッグデータとして捉え、気候変動に起因する経済・社会的な課題の解決のための地球環境情報プラットフォームを構築する等々とされております。
これを踏まえた文科省の役割としては、我が国の政府等が収集した地球観測データ等をビッグデータとして捉え、人工知能も活用しながら各種の大容量データを組み合わせて解析し、環境エネルギーをはじめとする様々な社会・経済的な課題の解決等を図るプラットフォームの構築を図るとさせていただいております。
これを踏まえた具体的な政策ですけれども、地球環境情報プラットフォームの構築でございます。具体的には、JAXA、JAMSTEC、NIEDや気象庁、国土交通省等の政府が保有する地球観測データ等を集約して、多分野・多種類のデータをリアルタイムで統合・解析するための情報基盤を構築するとともに、研究利用に加えて、気候変動適応や再生可能エネルギーの導入等の公共・国際利用、産業利用も推進して、我が国の有する地球観測データ等によるイノベーションの創出を図るとさせていただいております。
最後に、3番目の柱、研究開発の推進方策。これは、今述べました研究開発をしていく上で、特に留意すべき事項という観点から挙げさせていただいております。1つ目は、オープンイノベーションの推進でございます。2つ目は国際連携、3つ目は社会との関係深化(ステークホルダーとの対話・協働)、そして4つ目が人材育成、5つ目がオープンサイエンスの推進、最後に府省連携、こういったものに留意して、向こう5年間、大きな柱の2つ目で述べました3つの柱を中心にして研究開発をしていってはどうかと考えております。以上です。
【安井主査】  ありがとうございました。
【小野専門官】  ただいまの骨子案につきましては、有識者の方々からの御説明の後、御議論を頂く時間を設けております。本日は、エネルギー分野の施策の現状について、それでは御説明をお願いしたいと思います。
次世代半導体研究開発については、谷口プログラムディレクターより、また、革新的エネルギー研究開発拠点形成について、小長井委員より、また、先端的低炭素化技術開発事業(ALCA)について、橋本委員より御説明を頂きます。それぞれ15分程度で御説明を頂き、その後、10分程度、質疑応答をお願いできればと考えております。
【安井主査】  それでは、御準備ができましたら、早速お願いしたいと思います。
では、お願いします。
【谷口大阪大学大学院特任教授】  プログラムディレクターをしております、谷口と申します。この次世代半導体研究開発というのは今年の4月からスタートしたばかりで、まだ研究成果というのは上がっておりませんので、本研究開発拠点の目的、そして、今後進めるべき方向性というのを御紹介していきたいと思います。
先ほど御説明がありましたように、COP21で日本は2050年度までにCO2排出量を5分の1に削減しようという目標を立てています。そして、2030年に26%減というところでございます。いろいろな分野、例えばこういった高効率エンジン、それから断熱材・蓄熱材、こういったところでの技術開発が今非常に期待されているわけでございます。日本の中で一体どういった分野で二酸化炭素の排出が行われているかというのを調べてみますと、ここに示しましたように、発電と、それで作り上げた電力を消費する部分、これが何と40%を占めているという状況でございます。CO2の排出量は電力関係が最大でございまして、発電、それから電力消費を含めて4割を占めているというのが現状でございます。これが2014年度でございます。
したがって、目標達成に向けてCO2排出の代償で得られた電力、これを全く無駄なく使い尽くすというところがポイントかと思います。既存技術と同じ性能、若しくは機能を革新的な省エネで実現していくというところを、我々は目指しているわけでございます。先ほど言いましたように、電力の部分が約40%のCO2排出を行っていると。発電所で7%、残りの33%が電力になって電力変換、消費といったところで使われているというところでございます。
この33%の内訳でございますけれども、照明に約7%、それから動力(モーター)で17%、それから熱電ほかで9%ということになっております。実は、ここに至るまでにいろいろとロスがございます。現在の技術では変換損失が、インバーターとかアダプター等、大体5%から20%ということになっておりますし、照明では何とまだ50%ぐらいしか活用されていないというところでございます。電力の一番よく使われております動力、特にモーターなどでは損失がまだ20%あるということですので、いろいろな動力等を取り出すにしても、半分近くは熱として失われているという状況でございます。
今回の拠点、次世代半導体研究開発ということになってございますけれども、これは技術的な背景をちょっと御紹介したいと思います。御承知のとおり、名古屋大学ではガリウムナイトライド結晶を非常にいい性質にして、そしてLED、いわゆる発光ダイオードというのができておりまして、それによる照明革命が今どんどん進んでいるという状況でございます。横に西暦、縦軸に発光効率を書いたものでございます。
御承知のとおり、白熱電球は1900年、100年以上前から出てきておりますけれども、発光効率は止まったままです。それに対して、蛍光灯、これはかなりよく効率が上がってきたわけですけれども、今の白色LED、このような形で非常に性能向上が著しい状況でございます。この場合には、ガリウムナイトライドという結晶の結晶性向上、これが一番大きく効いているというふうに言われております。
このガリウムナイトライド結晶というのは、日本が世界のシェアの約83%を占めておりまして、日本の中で開発されたガリウムナイトライド結晶、それを作るメーカーが世界のほとんど日本に存在するという状況でございます。2020年度に照明の70%を現在の発光ダイオードに換えれば、全発電量の約7%を削減することができると言われております。経済効果、3,500億円、雇用創出が3万2,000人という計算も出てきております。
ガリウムナイトライド結晶、先ほど言いましたように非常に効率のいい照明を作ることができるということで、LEDによって照明革命が現在起こっております。もう一つ、大きなポイントがございます。ガリウムナイトライドというものは非常に性質がいい夢の結晶でございまして、非常に高出力な電力を高速でスイッチングできるという特徴を持っております。これから先、本拠点の方では、電力変換効率を大幅に向上して、そして装置等を小型化していく、こういった我々の革命を進めてまいりたいと考えてスタートしているわけでございます。
先ほど言いましたACアダプター、コンピューターにこれを付けておりますと、触っていただくと非常に熱くなっているというのがお分かりかと思います。電力が熱に変わって、電力としてはコンピューターの中に使われていないということを意味しております。こういったIHヒーターなどでも、お宅で使われているのを見ていただくと分かるかと思いますけれども、うちのところから非常に熱が出ているということが分かるかと思います。これ、有効利用がまだされていないというところでございます。あとEV、こういった車のところ。そういったところで次世代の半導体開発の目指すところがあるというところでございます。
これが、現在使われておりますパワーデバイスをガリウムナイトライドに換えたときに、約9.8%省エネが可能になるという道筋を示したものでございます。電源のサイズ、こういったものが10分の1以下にできます。こういったものが10分の1以下にすることができて、軽量で小型化が可能になってくる。当然ガリウムナイトライド、作り方を見ていただくと分かりますけれども、いわゆる製造プロセスの工程は大幅に削減することができるということで、低コストも同時に実現できるという、非常に夢のような技術でございます。
本拠点では、省エネ社会を実現するために、ガリウムナイトライドの次世代半導体に関しまして、先ほど言いましたようにウエハの約83%を日本の企業が持っている強みを生かして、実用化に向けた研究開発を一体的に加速していこうということを考えているわけでございます。
ここに示しましたように、材料の方から始まって、デバイス、システム、応用まで、こういったものを一貫的に研究開発を進めていって、産学官が結集した研究開発拠点を構築していこうということで、オールジャパンでそれを進めていくことを考えております。
中核拠点は、先ほど言いましたように、結晶というのが非常にこの性能に大きく効いてきております。そういった意味では、結晶の創生拠点、これを中核にして、そして物性、それから原理の解明を行う、評価基盤、それから、パワエレの応用のための研究開発、こういったものを一体的に研究していくということを考えております。
2030年、今から15年先の目標でございますけれども、先ほど言いましたように、高周波・高出力で小型、軽量、高効率なパワーデバイスを社会実装していこうということです。同時に、このパワーデバイスと制御回路等を融合したような革新的なスマートパワーデバイスというのを実現していきたいと考えております。
この15年先の目標をブレークダウンして、5年後ということの目標でございますけれども、大きく分けまして3つの分野がございます。1つは結晶、もう一つは評価、それからデバイスというところでございまして、この結晶の部分が非常に重要な比重を占めております。
パワーデバイスに活用可能な高品質の結晶を、革新的な作成技術で確立していこうと考えております。結晶の評価、これをちゃんとやるために、評価技術の標準化も含めて進めてまいります。それから、デバイスの分野では、安定的に製造できるようなプロセス技術といったものを進めてまいりたいと考えております。
今年の4月に発足いたしました名古屋を代表といたします中核拠点を核にいたしまして、そしてパワーデバイス分野、やはり名古屋大学の加地教授、それから評価基盤技術に関しましては、物質・材料研究機構の小出先生、こういった方々と一緒に1つのオールジャパンで研究開発法人と大学、それから企業、こういったものを一体にまとめて、このパワーデバイスの拠点を作っているということでございます。
次世代の半導体に関する結晶創製、評価、パワーデバイスシステムの応用、評価、こういったものを一体的に行う拠点といったものを作り上げて、今スタートしたところでございます。研究の方法でございますけれども、従来の試行錯誤を繰り返すというプロセスをできるだけ避けて、科学的な方法論を使ってできるだけ効率的に研究開発を進めてまいりたいと考えております。こうして欠陥の少ない、ガリウムナイトライド基板を作って、高品質で低コストの基板を作って、安定的なデバイスを実現していきたいと考えております。
それをサポートするために、シミュレーション技術、理論、そういったものを活用していきたいと考えております。その中で、プログラムディレクターの私と、それからパナソニックでガリウムナイトライドの開発を担当しておりました上田教授、それから松本常務と一緒にこの拠点を運営していくということを考えております。このような研究開発を進めることで、省エネルギー社会の早期実現、ガリウムナイトライド等の次世代半導体の強みを生かした世界市場を獲得していきたいと考えております。
このような研究開発拠点を今整備したところでございますけれども、名古屋大学ではそれ以外に、こういったガリウムナイトライド研究のコンソーシアムを発足しております。現在、ここの会員が16大学、それから2つの国立研究開発法人、先ほど言いました物質・材料研究機構と産業技術総合研究所(産総研)、こういったものが一緒に入り、更に36企業というところで、全体を盛り上げていこうということで、共同研究、情報共有を進めて、そして、こういう企業からの会員にも共同研究を募って、最終的には開発した技術を迅速に事業化していこうということ。同時に、また人材の育成も目的としております。
このようなガリウムナイトライドを前提とするような次世代半導体の研究開発事業というのは、我が国では大きく文部科学省だけではなくて、内閣府、それから経済産業省でも同時並行で今進んでおります。内閣府では主に縦型のガリウムナイトライドのパワーデバイス、こういったものを主体的に研究開発を進めております。経済産業省側では、主に製品にしていくための製造技術、プロセス、そういった技術の開発を進めている。文部科学省は、本拠点ですけれども、こういったところは次世代半導体の基礎的なところの開発を進めていくということを考えております。
このように3つの府省合同で関係の合同連絡会を設置しまして、目的を合理的に実現するために、今尽力しているところでございます。最終的には、省エネルギー社会の早期実現を果たしていきたいと考えております。
こういうふうな方向で、先ほどから説明しておりますように、ガリウムナイトライドというのは夢の結晶でございまして、現在は発光ダイオード、それから、この拠点ではパワエレ応用ということをやっておりますけれども、それ以外にも非常に大きな応用範囲がございます。1つは、レーザー応用。特にガリウムナイトライド、非常に高輝度で、波長が短くて、しかも高信頼性があるということで、高速データ通信に非常に向いております。御承知のとおり、IoT等でとられたデータをビッグデータとしていろいろ活用することが今考えられておりますけれども、それの伸び率というのは非常に早いものがございます。
したがいまして、将来的にはこういったビッグデータを活用して、データ通信量が非常に増加してくるということは間違いないわけでございまして、そのための電力消費量は急増しそうだと。特にこういった高速の光ファイバー通信、こういったときの電力の低減が必要ということで、そういった意味で、ガリウムナイトライドのレーザー応用というのがこれから非常に大きく伸びてくると期待しております。
それ以外にも、ガリウムナイトライド、非常に高周波応用に向いております。これは、いろいろな材料に対して、現在までどういうふうな性能を持っているかというのを描いた図でございます。ここはシリコンゲルマ、ガリウムヒ素、インジュウムリン、いろいろな化合物半導体がございますけれども、その中でも、特にこのガリウムナイトライドというものは出力性能が非常にいい、それから高速性能が高い。両方、非常に優れている性質を持っておりまして、速度面、出力面、全ての化合物半導体をしのぐ勢いにあると。
この非常にすばらしい結晶を更に応用して、そして高速性を応用して高出力のマイクロ波発振器、それから高速データ通信、特にこういったのは無線基地といったところで使うことによって、電力損失を低減することができるという夢が広がってまいります。特にマイクロ波の発振器におきましてはこういうふうな応用が考えられておりますし、現在いろいろなところで使われている非常に重量の大きなマグネトロンというのが、手のひらサイズに乗ってくる軽量で小型なマイクロ波発振器が出来上がってくる。そういったものをうまく使えば、こういった自動車の自動運転等にも生きてくると考えております。
以上、まとめますと、こういう形になります。次世代のガリウムナイトライド、これは現在、照明の分野、パワーデバイス、そういったところで使われておりますけれども、更にレーザー応用、それから高周波応用など、こういった分野でもいろいろ省エネ社会の実現に向かうことが可能でございまして、多様な貢献ができるということがあります。ガリウムナイトライド、超スマート社会の実現の切り札だと我々は考えて、研究開発を進めるということを考えています。以上でございます。
【安井主査】  ありがとうございました。若干遅れておりますが、時間の範囲内で御質問を頂きたいと思います。何か御質問がありましたら、できれば札を立てていただければ有り難いと思いますが、いかがでございましょうか。
特になければ、時間を使わせていただきたいと思います。今回のお話を伺うに当たって、2050年というのが1つのキーワードになってしまったんですけれども、そういうことから考えますと、このデバイスがあるとこれができるという話はいいんですが、このデバイスがもし完璧に完成したとしても、できないということを、やはりちゃんと限界を明らかにしていただいて、これだけで、要するに2050年という世界が本当に実現するのかどうかという、その見通しを付けなくてはいけないんですね。
ですから、例えば今日本は50ヘルツ、60ヘルツと、こういう2つの周波数を使っているんですけれども、自然エネルギーを大量導入したときに、西日本というのはエネルギーが足りないんですよ。それで、東日本から直流送電で持っていって、60ヘルツ変換をしなければいけないのではないかなと思うんですけれども、そんなような用途には、これは向くのでしょうか。
【谷口大阪大学大学院特任教授】  基本的には、ここで述べていますパワーデバイスというのは大体1キロボルト、2キロボルト、3キロボルト、そのくらいがいいところかなと思っています。非常に高圧の送電に関しましてはSiCという技術がございますので、むしろそちらの方に任せた方がいいかなと思います。若しくは、低電位の変換を高速で行って、効率を非常に上げるという、すみ分けが必要なのではないかなと思っております。
【安井主査】  その先が必要ということは、まだないですか、例えばダイヤモンドとか。
【谷口大阪大学大学院特任教授】  ダイヤモンドですか。余り他人の悪口は言いたくないんですが、かなり先の長い技術かなという感触を、私は持っております。
【安井主査】  ほかにいかがでございますか。どうぞ。
【加藤委員】  済みません、ガリウムナイトライドが夢の結晶ということで、すばらしいと思って聞かせていただいたんですけれども。ちょっとお聞きしたいんですが、今現在、発光素子として成功していて、それをパワーデバイスに持っていくと。そのために結晶の更なる高純度化とか、高品質化とかいうお話があったんですけれども、そういう基礎結晶において山というのはどのぐらいあるんでしょうか。結晶を更に高品質なものにするという技術が必要であるということで、今の発光素子では、パワーデバイスにするためにはどのぐらいのところまで持っていかないといけないとか、そういう少し山と見通しというのがあれば、教えていただければと思うんです。
【谷口大阪大学大学院特任教授】  現在、結晶欠陥というのが、結晶性を評価する1つの指標なんですけれども、それが大体10の5乗パー平方センチメーター、若しくは6乗というオーダーで非常にたくさんあるわけです。これは不思議なことに、光デバイスに対してはほとんど影響がないということで、現在LEDとして使われているわけですけれども、パワーデバイスに使おうと思いますと、その数を桁違いに減らさなければいけないわけです。
現在、10の6乗から5乗といったものが、今10の3乗ぐらいまで、約3桁下がる技術が開発されておりますし、これから先も、その辺の結晶欠陥の減少というのは十分実現できる技術は今育ちつつあります。そこで、明らかにほかをしのぐような結晶性のいい基板ができると、いろいろなところに応用できる。特にこういったパワーデバイスについては、結晶欠陥が縦方向に入ったときに、そこでリークが起こります。これが効率を悪くする理由になっていますので、それを桁違いに下げることによって、こういうパワーデバイスで使えると、見通しも今かなり明るいと思っております。
【加藤委員】  分かりました。ありがとうございます。
【安井主査】  どうもありがとうございました。
それでは、次に行かせていただきます。それでは、続きまして、革新的エネルギー研究開発拠点形成につきまして、小長井委員からの御説明でございます。それでは、お願いいたします。
【小長井委員】  それでは、早速、革新的エネルギー研究開発拠点形成事業について、小長井から報告させていただきます。
本事業につきましては、日頃、先生方の御支援を頂きまして誠にありがとうございます。本事業も本年度で最終年度を迎えまして、最終目標を達成するように、今みんなで必死に頑張っているところでございます。今日は、この事業の概要と成果、今後の方向性、この3点について説明するようにということでしたものですから、この順番で説明させていただきます。
最初に、この事業の概要でございますけれども、これは5年計画で始まりました。復興事業として特別会計で手当てされたものでございます。最初の4年間は特別会計ですけれども、最後の今年度は一般会計になりまして、そういうことでかなり額が減ったということもあって、当初の計画を少し縮小してやっておりますけれども、最終目標を達成するように、今一生懸命やっているところでございます。
私が研究総括を務めさせていただいておりますが、主たる目的はシリコンの太陽電池で超高効率を目指すというものでございます。それと同時に、この事業は復興事業ということもございますので、研究開発は郡山でやるということでございまして、この予算で購入する設備は全部郡山に持っていっておりますし、この事業で雇用する研究者も全員郡山で働いているということでございます。
それから、併せて大変すばらしい、本当にアンダーワンルーフの省庁連携になっておりまして、産総研、経産省が作りました研究所、産業技術総合研究所福島再生可能エネルギー研究所(FREA)と申しますけれども、そこの中に1,000平米の場所を借りて文科省のプロジェクトを実施しているというところでございます。研究実施に当たってはJSTが全面的に支援していただいていると、こういう体制でございます。
もともとこの事業を始めたときに、やはりシリコンの太陽電池の変換効率をもっと抜本的に変えていきたい、向上させていきたいという思いで始めたわけでございます。実は、シリコンの太陽電池の変換効率は25%程度でほぼ飽和しておりまして、これは事業の始まった時点と今でもほとんど変わりございません。これは、シリコンの物性でかなり決まっている値で、飽和の傾向が出ているわけであります。
これを一段、ぽんと上に上げるには、一番いい方法は多接合という方法であるということなんです。この事業では、シリコンにこだわりたいと思っております。普通シリコンはバンドギャップのせいでできないんですけれども、量子効果を使ってワイドギャップのシリコンを作ってやると。それと、普通のシリコンの太陽電池で多接合して、効率30%ぐらいを目指そうと、こういう意気込みで始めているわけです。
ただ、ワイドキャップのシリコンを作るといっても、これは全くの未踏領域でございまして、非常にハードルは高いです。だけれども、みんなでこれらまで挑戦するということであります。この5年目を迎えまして、いよいよ量子効果でワイドギャップの太陽電池というのが今できつつあるということでございます。
それから、あわせて、これはトータルで効率を上げなければいけませんので、下の結晶がよくないといけませんので、結晶成長の方もとびきりいいもの、それから安くなる可能性のあるものを手がけるということで進めております。
それから、私は、かなり前から波長スプリッティング方式というのを提案しております。これは、太陽のスペクトルを、例えばフィルターを使って2つに分けまして、エネルギーが高いやつは、例えば量子効果を使ったワイドギャップのシリコンで、それから、エネルギーの低いのはシリコン太陽電池に貢献というような、こういうことをしますと、効率が大変上がるわけであります。最終的には、これを適用したいと思っています。これは、ソーラーシミュレーターで実際光を分けているわけですけれども、実際にソーラーシミュレーターをかけるときは、こんな形で色を分けて測るわけです。
もうちょっとシステム的なイメージを持っておりまして、最初はこういう形でやりますと、製造コストは1つずつは高くなりますので、低倍率集光で発電コストを下げるということを考えております。こういった低倍率集光器は今大変安く手に入れることができますので、例えば10倍ぐらい集光したときに、ここは普通のシリコンの太陽電池が並んでおりますけれども、ここに波長スプリッターとトップセル、ボトムセルということで、太陽電池を置きますと、大変効率が高く、しかも低コストで発電できるというわけです。
それから、今追尾システムを使っておりますけれども、追尾システムを使うということは、大変システム利用効率を高くするのに有効でありまして、一般的に大体2割、システム利用率が上がります。これについても、今実際に検証しております。
これは、5年間の事業のスケジュールでございます。実際に郡山に産総研のFREAの建物ができて稼働を始めたのが26年の4月です。実際にこのプロジェクトは24年の7月から始まっておりますけれども、建物がないうちから設備を導入するということになりまして、当初は各研究機関に置いてありましたが、それを一度ばらして、また郡山の方で立ち上げるという作業が入りましたものですから、大体このところで9か月ぐらい、そういったことに時間を取られております。
ということで、チームは3つに分けてやっておりましたが、現在は、装置、人は全て郡山でやっているということです。それ以降、大変成果が上がってきております。この成果についても、いろいろな形で公表したり、理科教室をやってアウトリーチをやったり、いろいろやってございます。今日は、この成果の方も聞いていただきたいと思っております。
まずは、結晶製作の方、今大変うまくいっておりまして、これを使ってくれるところがないか、今見つけているところです。あと、量子効果型の太陽電池についてもテーマを絞りまして、これにフォーカスしてやっていまして、それに近いものができてきています。大変チャレンジングなことをしておりましたものですから、最初は可能性のある技術を、いろいろやっていたんですけれども、年次推移とともに、いろいろ諮問委員の先生方の御意見を伺うなど、中間評価を受けてございますけれども、それをやってずっと絞り込みをしてきて、最後は量子効果型の2テーマぐらいに絞って進めております。
これは、ちょっとビジーな図面でございますけれども、27年度まではこのような形でいろいろやっておりました。今年は最後の年ということもあり、量子効果型の太陽電池、これで実際に検証するということにかなり重きを置いてやっています。それから、結晶技術の方は大変いいものができてきたんですけれども、予算の関係で今年は評価が中心になっております。
これが本年度の実施体制でございます。私が総括ですけれども、私の下に総括補佐がおりまして、この方は企業で太陽電池の製造、それからパワエレ等に関わってこられた方で、研究所長を務めた方です。会社を辞められて、今私の下で補佐を務めていただいております。またこの3つのチーム構成でやっています。結晶成長のチーム、それから量子効果の太陽電池を作るチーム、それから、波長スプリッティングで実証するチームという構成でございます。今かなり日本で太陽電池を生産していますメジャーの会社も入ってくださっております。具体的には、パナソニック、三菱電機、京セラ、カネカ、こういう会社が今入って一緒に研究者を派遣してやっていただいています。それから、国際諮問委員の方、この分野では大変著名なMITから、デルフト大学から、いろいろな方に加わっていただいて、常に御助言を頂いているというわけです。
当初、30%目標達成するのに、トップセル、ボトムセルでどのぐらい出したらいいかとか、いろいろ計算したんですけれども、最後の年、ちょっと予算が足りなくなって、30まで実証するのはなかなか難しい状況ですので、現状では量子効果を使ったもので、確かにこれは量子効果が効いているということを見ることに集中しております。
もう少し具体的に申しますと、まず結晶成長の方ですけれども、これは東北大学におられた中嶋教授のオリジナルのアイデアをもっとスケールアップして実用化に近いものに持っていって、本当にいいかどうか検証しようというものでございます。当初は小さい結晶から始めたんですけれども、今は単結晶、45センチくらいの径のものができるようになりました。いわゆるCZ法でやりますと、1メートルのルツボを使って30センチのインゴットを引き上げるんですけれども、そういう意味ではインゴットと単結晶の径は30%ぐらいしかないんですけれども、中嶋教授の技術を使いますと、50センチのルツボで45センチの結晶というわけであります。普通の太陽電池を作るときに、これは4個取りと言うんですけれども、4個取りでできるわけであります。
今年、もう1つ、実は無転位化のところをやりたかったんですけれども、残念ながら予算的な問題がありまして、これは今できませんので、今までの結晶を切ってセル化にするという方向で進んでいます。
FREAの中で産総研の方がセル化のラインを立派なものを持っておりますので、我々のできた技術を産総研の方に持っていって検証してもらうということをようやくできるようになりました。今、初期の頃のインゴットを切ったやつで見ますと、大体19%のものができるようになってきております。これは、CZのトップデータとほぼ似たようなところまで来ておりますので、これから無転位化を図れば相当いいものができると思っています。産総研だけではなくて、MITやフランスの研究機関でも結晶の評価をしていただいております。
それから、量子効果型を使った太陽電池については今2つやっております。超格子のワイヤーを使った太陽電池、これについては既に量子効果は実証されておりますが、今年になりまして、太陽電池そのものを作るのに力を使っております。開放電圧も今大変高いものができるようになってきておりまして、これでも0.1ボルトぐらい上がってきますと、シリコンにない大きな特徴が出せると思っています。
それから、もう1つは、量子効果をやるのに、今ナノウォールの太陽電池というのを手掛けております。当初、ナノインプリントとエッチングでやっておりましたけれども、どうしても余り均整がいいものができなかったんです。その後、いろいろグループ内で技術の融合を図りました結果、今ナノインプリントと異方性エッチングというのを使いますと、大変細い、しかも非常に整ったきれいなものができるようになってまいりました。
この絵は見にくいかもしれませんが、このシリコンの幅が3.5ナノメートルです。これですと、完全に量子効果が出る領域であります。今それを状態密度で見たり、フォトルミネッセンスで見たりという物性の評価から検証するのと同時に、実際に太陽電池を作ってワイドギャップがどうなっているかとか、開放電圧がどうなるか、そういうことを見ております。
これと併せて、少し先にセルを作って検証するということがあります。これは、ちょっと力ずくで作っているところもあるんですけれども、電子グローブを使って、先ほどのはこのウォールは立っているものなんですけれども、平面状になったものを作っております。これですと、簡単に薄いものができますものですから、これで効率を上げるということではなくて、検証という意味ですけれども、太陽電池を作りますと、確かにシリコンのワイドギャップの1.1が1.3エレクトロボルトくらいまでは広がっていると、こういう結果が得られているわけです。
それから、本当は量子効果のものをトップセルに使って検証するのがいいんですけれども、なかなか待てないということがありますので、いわゆるプルーフ・オブ・コンセプトとして、現在知られている化合物系のトップセルを使って、当方で作った結晶のシリコンを使いまして、実際にどこまで効率が上げられるかということもやっております。現状ですと、インジウム・ガリウム・リン等を使えば35%ぐらいは出せるという結論は得られております。
最後は発電コストの上でこのぐらい貢献できますよということをやりたいと思っておりまして、このFREAの建物の屋上に今二軸追尾、一軸追尾の波長スプリッティングの発電特性を観測する装置を作っております。これが10月ぐらいから正式に動き始めましたものですから、今度の10月で大体1年のデータが集まります。これを見て解析していくわけですけれども、先ほど申し上げたように、システム利用効率は2割ぐらいは上げられると思っております。
今お話ししたことを簡単にまとめたのがこの表でございます。時間の関係がありますので、これを省略させていただきます。
これからの方向性のことで、あと2、3枚を見ていただければと思うんですけれども。太陽電池も開発が始まって50年、60年たってきているわけですけれども、やはりこれから先、2050年に向けてどうするかということですが、2050年になりますと、世界的に見ても4,500ギガワットぐらいは入っているだろうという工業会の見込みでございます。
そのときに、やはり効率が非常に高いというのが重要な要素になると思っています。それをどうやって達成していくかということでございます。シリコンが今メジャーの材料でございますけれども、シリコンの単独ではここまで行きませんので、それをいかにしてあげるかということで、我々もかなり貢献できているのではないかと思います。最近出ましたエネルギー・環境イノベーション戦略の答申につきましても、量子ドットとか、ペロブスカイトという言葉が並んでいるわけでございますけれども、やはりシリコン系の、量子効果を扱ったやつを使っていけば、相当効率は上げられると考えております。
考え方としては、安井先生らにもよく申し上げているんですけれども、太陽光でCO2削減効果を計算してみても、日本で100ギガ入れても、多分3%ぐらいの削減量にしかなりません。やっぱり技術というのはいろいろ組み合わせて高く上げて、この技術もそのうちの1つと、私どもは考えております。
今なかなか日本の太陽電池の企業が産業力が落ちてきているので問題になっているわけですけれども、やはりすぐにまねされないような技術を開発していかないことにはどうしようもないと思っております。基本的には、産業力を強化するための革新技術、これをやっていったらいいのではないかと思っています。
それから、材料的には、もちろんシリコンをやらなければいけないんですけれども、それ以外に、最近出てきましたペロブスカイト、これは我が国の研究者で発見されたものでもありますから、これについて今以上に拠点を集約して、国際競争力をアップさせていったらいいのではないかと思っております。
あと、以下、具体的にいろいろな例が書いてございますが、時間がそろそろ15分たったようでございますので、これは後でごらんいただければと。これは個人的な見解でございます。以上でございます。
【安井主査】  ありがとうございました。何か御質問等ございましたら、お願いしたいと思いますけれども、いかがでございましょうか。
特になければ、またちょっと時間を使わせていただきますが。最終的に世界全体で大量の太陽電池がはやるのは間違いないんですけれども、そのときに、例えばある毒性元素を使ったようなものというのは、私は成立しないのではないかと思っているんですけれども、そのあたりはいかがなんですか、リサイクル技術とか。
【小長井委員】  基本的にシリコンを使っていれば全く問題ないんですけれども、現在シリコン以外の材料、10%くらいはカドミウム、テルルとCISが使われております。そういう意味では、先生がおっしゃるようにテルルとインジウムの資源量の心配はございまして、どのぐらいできるかというと、多分100ギガくらいは問題なく行くんですけれども、その先は、これからリサイクルが進んでいきますので、実はもうちょっとできるんですけれども。
そういう点では、やっぱり資源量に問題があるものは、生産量に当然制限がかかってきますので、私はやっぱり10%、20%くらいの割合にしかならないと思います。将来、導入量として年間1,000ギガ作るとなると、すごいことになりますので。シリコンを使っていても相当な量になりますけれども、現在は180ミクロンとか160ミクロンくらいになってきていますが、将来12ミクロンぐらいのシリコンにするとかしないと、それこそ何万トン要るか。1年間に1,000万トンぐらいシリコンが必要になってきたりします。
【安井主査】  あとは、余り関係ない話なんですけれども、使う板ガラスもそろそろ資源限界、大体あれをどうやってCO2を出さないで作るんだろうというのは、ちょっと問題ですね。
【小長井委員】  そうですね、作り方は確かに問題だと思うんですけれども、ガラス自体はもうちょっと薄いものでもできないかとかありまして、従来は3ミリの強化ガラスを使っているんですけれども、今は0.5ミリでもできるようになってきております。薄くなりすぎますと、今度フレキシブルなものができてしまいますので、そういう方向もあります。ただ、0.5ミリの強化ガラスは組立て処理してちょっと高いですけれども、特殊な場合は使えると思います。
【安井主査】  ほかに何かございませんでしょうか。よろしゅうございましょうか。
それでは、次が準備できておりますね。ありがとうございました。
橋本委員がお見えになりましたので、それでは、続けてお願いしたいと思います。
【橋本主査代理】  では、資料3をごらんください。先端的低炭素化技術開発、いわゆるALCAのPDを仰せつかっておりますので、この概略について御説明いたします。ちょっと資料が多いので、ぽんぽんと飛ばしながら。
右上にページ数を振っております。1番目は申し上げるまでもないわけですけれども、CO2の排出においては、運輸と民生部門における技術開発が必要であるとよく言われているように、産業はまだ可能性がないわけではないですけれども、かなり頑張っているんですけれども、運輸、民生部門の割合が多いですし、そこの部分に対する技術開発が重要だということはコンセンサスが得られているわけです。
温暖化ガスに関しては、国際的な約束がいろいろありまして、例えば2ページ目はCOP21の話ですが、3ページ目をごらんいただきますと、我が国は2030年度までに、2013年度比で26%、2005年度比で25.4%のCO2削減を国際的に、その目標を宣言しているわけです。約束じゃないですね、宣言しているので、ちょっと言い方があれだと思いますけれども。
これは、申し上げるまでもなく、極めて高い目標なわけです。これは、2030年までですが。一方で2050年までに対しては国際的には、世界全体で半分、先進諸国では80%削減ということも言われておりまして、私たち科学をやっている人間から言うと、非常に高い目標なわけです。
そういうような状況の中で、4ページ目ですが、ALCA、2010年にJST事業として発足したわけですが、そのような高い目標を達成するためには、既存の技術の延長ではなかなか難しいだろうと。もちろん、既存の技術を高めることも重要なんですが、非常に基礎研究に一回立ち返ってやらなければいけないだろうと。しかし、出口、要するに温暖化ガス削減という目標を明確に持った、そういう基礎研究を行うべきだよと。そのときに、キーワードとしてはブレークスルーテクノロジーの創出に向けた新しい科学技術の発見等を推進するんだと。
ということなので、10年間、こういうプロジェクトとしてはかなり長いものです。2010年で10年間ですので、最大2020年までということで、2020年、そのときの出口として産業界は興味を持って、2020年には産業界にバトンタッチできると。そこで急に渡すのではなくて、その間に助走期間があるわけですけれども、2020年以降、産業界が自主的にやるようなところを目標に目指してということなので、2030年以降の実用化をイメージしました。エネルギーの話というのは、すぐ技術ができるわけではありませんので、2030年以降の実用化をイメージしていくと。
長期間の研究開発なので、ステージゲート評価を入れようということを、実は最初から計画しておりました。文部科学省の事業の中で個人に対してファンドするもので、ステージゲートというのは、今まで入れられたことがなかったんです。これが初めてです。これを入れるというときに、本当にできるのかということも随分言われたわけですけれども、最初からこれを入れるということを宣言して始めました。
研究のテーマ設定に関しては2つのタイプを設けました。1つはトップダウン型。これは、事業推進委員会によってこういうテーマをやりますということを提示して、それに対して提案していただく。チーム型の研究です。ですので、これは、提案は個人個人で提案していただくんですが、それを事業推進委員会、あるいはPOがチームをしっかり作っていくと。野球で言うと4番バッターばかり集めてもいいチームはできませんので、4番バッターだけではなくて、7番バッターとか、バントの得意な人もという意味で、しっかりとチームを作るというやり方です。
ALCAの事業推進委員会がテーマを示すとありますが、ここに来るまでには、実は文部科学省の研究開発局長と、それから経済産業省の産業技術環境局長、この両局長が率いている両省共通の検討会がありまして、そこで検討された内容について、それを参考に決めているということもあります。
もう一方は、ボトムアップ型。これは研究者に自由に提案していただくというものでありまして、まさに研究者の創意に基づき、ゲームチェンジングテクノロジーを提案してもらうというやり方です。これは、グループ研究もあり得ますが、基本的に研究者が個人でやる場合が多いです。この2つのやり方であります。
6ページ目ですが、トップダウン型、これはPOの裁量を非常に強くしておりまして、POは野球の監督、あるいはオーケストラの指揮者のようなものですので、領域会議を半年に一度、かなり詰めてやるだけではなくて、研究チームを頻繁に訪問してもらって指導・意見交換をすると。それから、文部科学省等々で行われているいろいろな先端施設の利用をしっかりと支援しています。
一方ボトムアップ型は、個人の研究者の発想に基づくものですので、かなり自由にさせるわけです。自由に研究していただいて、ただし、目標が明確に出ているわけですので、成果はまとまって発表していただく中でその目標に沿っているかどうかということをしっかりとチェックし、指導するということになっております。
次の7ページを御覧いただきますと、縦軸に実用化フェーズを見たときに、ボトムアップ型のものというのが一番下にあって、トップダウン型のものは、近いところでチームを組んで、ある目的に行くと。ボトムアップ型の革新技術も、少なくとも5年たったときには実用化プロジェクト、あるいは特別重点領域プロジェクトに移っていくという、このような形の編成を組んでやっているわけです。
8ページ目ですが、技術分野は低炭素社会の実現へということに向けて、大きく分けて、エネルギー貯蔵、カーボンニュートラル、エネルギー創出、省エネルギー、こういうような全体を低炭素社会に向けたための技術を分けてというか、大きくくるみまして、それに対してどういう技術があるかというのが一番下に書いてあるわけです。こういうものがそれぞれ、これはボトムアップ型とトップダウン型、両方ともこのような分類の中で行われているわけです。
9ページ目です。私が全体のプログラムディレクターをしておりますが、トップダウン型は現在2つ走っておりまして、この後説明いたしますが、次世代蓄電池とホワイトバイオテクノロジー、このPOがお2人と、それから、ボトムアップ型はいろいろなグループといいますか、分野に分かれて、それぞれPOの先生方に見ていただいているということです。御発表いただいた小長井先生は、太陽電池及び太陽エネルギー利用システムですし、その前、今日御説明いただいた谷口先生は、一番下の革新的省・創エネルギーシステム・デバイスのPOをしていただいているわけです。
特徴は10ページ目、これは必ずしも最初から意図していたわけではないんですが、やりながら、こういうやり方にすべきだと変わっていったと言うべきかも分かりませんが、スモールスタート。要するに、最初から大きなお金をどんと与えるのではなくて、ステージゲートを入れて途中で切っていくということです。それから、ゲームチェンジングテクノロジーということは、失敗というか、もくろみどおり行かない場合というのも当然多いわけです。ということを考えたときには、最初から大きなお金を分配するよりは、少なめで、かつ確率を上げるために、できるだけ多くの提案を採択して、それでスタートすると。ステージゲートを何度かやることによって、それでステージゲートを通過したものに対しては、必要であればだんだんファンディングを大きくしていくと、こういうやり方です。
これ、イメージで描いておりますが、5年目に大ステージゲートをやりまして、それまでに少なくとも1回、多いのは2回、3回した場合もありますけれども、5年間のうちに少なくとも2回、ないし3回はステージゲートをしていくということになります。
次のページを御覧いただきますと、これは最初の年に採択したものの残存率です。11ページ目、縦軸は企画開始して1でスタートして、5年目は24%しか残っていないと。この結果はすごく衝撃を与えたわけですが、これは研究のレベルが低いということで切っているのではなくて、あくまでもこの目的に合った研究の内容として進んでいるかどうかということでステージゲートをやっております。
ここ、非常に重要なところで、ステージゲートが通らなかったから研究として評価が低いということでは決してないです。実際に、私たちはステージゲートで通過しなかったものに対して、科研費で是非しっかりと基礎研究をやってくださいということを強く推奨して、実際にそうやって科研費で通って研究を展開している場合もあります。ですので、これはあくまでも基礎研究ではありますけれども、出口が明確になっているという観点から、基礎研究としてすばらしくて、そういうふうに低炭素の技術につながる可能性があるかも分からないと思ってスタートしたけれども、やはりそうではないということが分かることが非常に多いです。
我々がすごく学んだことの1つ目は、こういう研究はこのようにステージゲートを入れていくということは必要だなということです。ステージゲートを入れておかなかったら、目的に合わない研究をずっと続けていたということになります。だから、必要だなということを1つ学びました。
2つ目は、こういうのが研究者の特に基礎研究には似合わないという批判を随分受けたわけですが、今も一部受けているかも分かりません。しかし、やっている私たちの印象では、基礎研究も、やはり自由発想型の科研費のようなものは違うので、先ほど申し上げたような、そういうクライテリアをしっかり立てると、ほとんど審査員の間で意見が分かれることなく判断ができます。だから、随分切ってきたわけですけれども、昔はかなりクレームを言ってきたケースもありましたが、最近はそういうこともなくなっております。こういう研究が非常に重要だなと、有効だなという感じがしております。
予算に関しては次のとおりで、平成25年にピークを迎えていますが、これは実は補正予算が入ったからです。補正予算の部分を除きますと、大体初期上がって、それ以降、大体同じような値で来ております。
次のページを御覧いただきます。ちょっとだけ中身を御紹介いたします。特別重点領域、トップダウン型の中に次世代蓄電池があります。次世代蓄電池はリチウムイオン電池の先のものでありまして、この概要のところに絵が出ているのは、横軸が重量エネルギー密度、縦軸は容量出力密度です。現状は今この青いラインのちょっと内側とか、その辺にあるんですけれども、点線があります。この点線はリチウムイオン電池の理論限界と言われているものです。これはリチウムイオン電池を使っている限りは超えられないと言われています。
それに対して、電気自動車のためには、この黄色い領域に入っていかないと使えないというのが多くの自動車会社の言うところです。テスラがあるじゃないかと言いますが、テスラ車というのは充電に1日掛かるんです。だから、2台持っていないと実際には運用できない。テスラを持っている人は2台持っているというのが必要で、1日使ったら1日充電して、2日目は違う車で走るという、そういう車かなと。
ですから、確かにテスラ車はすばらしいんですけれども、そういう限界もある。本当に汎用な自動車にするためには、この黄色い領域に行かないといけない。そのためには、リチウムイオン電池では駄目で、その先のものが必要だと。これは、ある程度コンセンサスになっておりまして、経済産業省でもリチウムイオンの先、ポストリチウムイオン電池の研究がなされております。
経済産業省でもなされているにもかかわらず文部科学省でやるのは何かというと、これは先ほど言いましたように明確です。やはり基礎まで1回戻って、それで本格的にこちらの方を狙うと、そこが経産省のNEDOプロジェクトとは随分違うところであります。後から具体的に説明いたします。
14ページ目はいいとして、15ページ目を御覧いただきますと、今申し上げたことですが、ALCA-SPRING、SPRINGというふうに電池のやつはALCAの下に付けております。とにかく、ゲームチェンジングな次々世代蓄電池技術を目指すために徹底したサイエンスに基づく新材料の探索・開発をすると。ですから、新材料の探索・開発するんですが、しかし、そこに止まらずに、電池システムまで作ると。ここが重要なところなんです。
実は徹底してサイエンスに遡って材料を見る人たちは、それはそれでいるわけです。電池を作る人たちというのもいるわけです。しかし、そのサイエンスに基づいているのは、基盤的な材料を使って電池まで作っているというのは、これは世界的に見ても非常に数が少ないんです。それをシステマティックに、我が国はこの辺は強いと言われていますので、そういう研究者がいろいろいるので、その人たちを全部融合して、先ほど申し上げたように強いチームを作ろうということで設計しているわけです。
ですので、これはその下に書いた電池設計から、材料開発、当然なんですけれども、電池総合技術まで、最初から最後まで行って、かつシステム・戦略研究に基づいて明確な知財ポリシーを当初から考える。これもすごく力を入れているところです。これはリチウムイオン電池の事例を教訓にしているのです。リチウムイオン電池というのは、御存じのように、今から10年ほど前に日本が特許を持ち、生産も日本が90%以上。特許も、重要な特許の70%以上は日本が持っていて、生産も90%以上を日本がやっていたのが、数年前に韓国に抜かれたわけです。特許も、技術も、生産もあるのに負けたというのは何なのか。
ポストリチウムイオン電池も、いいものを作っても、同じことをやったら負けてしまったらしようがないだろうということで、開発の段階から、どうやれば最後の商売まで勝てるのかということまでイメージしてサイエンスをやると。非常に壮大な狙いなんですが、実際にそういうことをやっております。
16ページですが、グループは4つに分かれています。研究の全体のリーダーは首都大学東京の金村先生、POはNIMSの魚崎フェローですが、このようにやっています。ここらが縦串、横串、縦横無尽にこのチーム編成をやっております。それだけでなくて、重要なのは、実は一番右側にありますけれども、革新型蓄電池先端基礎事業という、これはRISINGと言われる経産省の事業なんですが、こことの連携もしっかりやっております。実はこれ、今年度から次のが始まっています。
実は、そのポストRISINGですが、そちらの方ともすごく組んでおります。実際に私がポストRISINGの検討委員会の委員長を仰せつかりまして、このALCAともしっかり連携できるような形の設計を入れました。その基本方針は先ほど申し上げたことであります。
次のページを御覧いただきます。これは、成果の中の一部だけ御紹介いたします。17ページで、全固体電池の酸化物系を御覧いただきますと、世界では完全なバルク型の全固体電池の例はないのですけれども、私たちのこのプロジェクトでは世界で初めて酸化型のバルク型全固体電池を実現し、室温から50度付近までの動作確認を実証いたしました。このように材料から実際のシステムまで作るということで、できているわけであります。
あるいは、18ページを御覧いただきますと、リチウム金属電池、世界的には、リチウム金属電池を二次電池として使うというのは、非常に魅力的なので研究は活発化しているわけです。多くの問題を抱えて、なかなかできないと思われているわけですが、私たちの方では、金属リチウムを負極に用いて、現行のエネルギー密度を大きく上回り、スマートフォンクラスに使える電池の試作に成功いたしました。
このように、やはり基礎研究者がみんなが集まってしっかりとシステムまで作るということまで意図的にやると、世界に勝てるものができるなということを実質的に感じているわけであります。
19ページですが、ガバニングボードは、文科省だけではなくて、経産省の担当課長が出てくれるガバニングボードを年に2回ぐらいやりまして、そこでいろいろ洗い出していくと同時に、先ほど申し上げました特許戦略をしっかりやらないといけないので、INPITの協力も得て、専門家にも入っていただいて、その特許戦略の勉強会、それから具体的にどうするかということも、かなり頻繁に詰めながら進めているという状況であります。
電池は既に進んでいるので成果も出ておりますが、20ページ目のホワイトバイオテクノロジーは始まったばかりですので、まだ御説明する内容はそれほどないんです。重要なのは、やはり下流ターゲットの化成品を目指してずっと遡って、バイオマスの増産のところまで、原料からプロダクトまで全体を一体的に進めると。これも、やはり経済産業省で行われているプロジェクトですけれども、経済産業省と話し合った結果、文部科学省で是非ここの基礎的なものを1回サイエンスまで立ち戻った上で、全体をつないだ、そういうプロジェクトをやってほしいということを言われて、始めたわけであります。
次のページを御覧いただきます。現在、高分子多糖類、糖、リグニン、それから廃グリセロールというのと、それから、特定技術型でセルロースナノファイバー、これらのグループに分かれて、理研の土肥先生にPOをやっていただいて、今始まったいというところであります。
22ページが、実はこの研究成果をまとめたものですが、この後ろのボトムアップ型のものを御説明する時間がないので、お土産として付けておりますけれども、それも含めた研究成果です。我々、別に論文を書くことが目的では全然ないので、論文を評価対象にしませんと。それから、特許戦略をやっていく中、特許もたくさん出せばいいというものではないというのは徹底してよく分かりましたので、特許もたくさん出すということが目的ではないということを明確に言っております。
しかし、これだけの人たち、世界トップの研究者が集まってやっていますので、結果的に論文もこのように23、24、25とどんどん出ておりますし、特許もどんどん出ております。出ておりますが、これは繰り返し、繰り返し、皆さんに論文を書くこと、特許を書くことが目的ではないということを強く、強く言いながら、一方で、特許庁とか、先ほど言いましたINPITの方に来ていただいて、勉強会をガバニングボードでするだけではなくて、各研究現場にまで行って、どういう特許戦略が必要なのかということを研究者にもしっかり知っていただくと。そういうことで、戦略会議と実際の研究現場をしっかりつなぐようなことをしながらやっております。
次のページ以降で、例えば1つだけ御紹介いたしますと、先ほどの太陽電池の絡みで言いますと、ペロブスカイトの薄膜もやっております。変換効率18.5%と世界最高のものが得られておりますが、これはこのペロブスカイトの発見者である宮坂さんが代表者でやっているので、彼とそのグループで18.5%行って、世界最高を行っておりますが、そこでは駄目だということを強く言っております。これは有機鉛を使っているんです。有機鉛を使っている限りは使われないと、私は個人的に思っております。
宮坂さんには、鉛を使っている成果はALCAの成果として認めないと実は言っております。鉛でどんなにいい成果を出しても一切認めませんからということを言って、それがALCAの目指すところです。というように、エネルギー、あるいはCO2削減に向けて、基礎に遡って、非常に難しいところ、ボトルネックを抽出して、それをやっていただくということをやっております。
最後、ずっと飛びまして30ページです。これは、今年の3月に国際評価を受けました。元会津大学学長の池上先生を委員長として、各国からそうそうたるCO2削減、温暖化問題の専門家に来ていただきまして、評価を受けました。その結果、このスモールスタートでステージゲート方式というものが、やはりこういう研究には非常に重要だということを認めていただいたというか、認識していただきまして、ALCAは重要な貢献を果たす役割の可能性を有していると。具体的な中身を御説明することはしましたけれども、期待どおりの成果が得られていると。
特に3番目にある、ステージゲート評価によって、研究者のマインドセットを変えたということが、褒められています。そういう意味では、かなりユニークな運営をやっているとが評価されていると。
ただし、国際協調とか連携が少ないのではないかと言われました。ここは難しいんです。こういう知財戦略も含めてやっていく中で、国際戦略は重要なんですが、ここはもう少し、我々、考えなければいけない。ここはもっとしっかり考えるようにということを強く言われました。全体においては、この国際評価で非常に高い評価を頂いたということであります。
最後ですが、今後、社会実装に向けて更に強化することと、それからトップダウン型の領域を増設し、ローリスク・ハイリターン研究プログラムへ向けたものを、更に運営方法も進めてやっていきたいと思っています。ちょっと長くなりました。以上です。
【安井主査】  ありがとうございました。何か御質問等ございましたら、お願いしたいと思いますが。いかがですか。
はい、どうぞ。
【江守委員】  ありがとうございます。もしかしたら、今のALCAの御説明と最初に文科省からありました研究開発計画骨子にも関係するかもしれないことを、2つお伺いしたいと思います。前にも似たようなことを伺ったかもしれないですけれども、ちょっと素人的な視点からお伺いしたいと思います。
1つ目は、このALCAの話は非常にボトムアップであるとか、スモールスタートとか、ステージゲートとか、様々な工夫がなされていて、成功に導かれる設計になっていることはよく分かりました。素人目に、よくアメリカのベンチャーがいっぱいいて、それで投資家が目ききし、ベンチャーキャピタルで投資して、それで失敗したのは消えていったり、また新しいのがいっぱい出てきたりするという、そういうところでイノベーションのエコシステムとよく呼ばれるような状況で、いろいろな新しい技術が出てきているんだというようなことを伺います。
そういうのを思い出すと、例えばステージゲートみたいなものというのは、アメリカのエコシステムでは、投資家とかマーケットがそういう役割を果たしていて、多分もっと物すごい数のプレーヤーがそこで生まれたり、消えたりしているのかなということを想像するんです。
そういうわけで、イノベーションの戦略というか、エコシステムがそういう、例えばアメリカと日本で相当違うのかなと思うんです。それは、本当はアメリカみたいにした方がいいんだけれども、まねしようと思ってもなかなかできないから違うのか、それとも、日本は日本の特性を生かして、こういうやり方がいいと思っているから違うのかとか、その辺の勘どころというのが素人目にちょっとよく分からない感じがしますので、教えていただきたいということが1つです。
もう一つ、お伺いしたいのは、技術のことを考えるときに、実用化まで見据えた戦略を立てていらっしゃるということも含めて非常によく理解しました。そのときに社会に与えるインパクトというのが、単に技術が新しいものに置き変わって、社会は今までと同じように新しい技術を使っているということばかりではないというふうに想像しています。例えば再生可能エネルギーがたくさん導入されてくると、最近たまに聞くようになった言葉で言うと、地域分散エネルギー社会のようなものがどんどん推進されてくると、今までの電力会社の中央集中的なエネルギーのシステムとコンフリクトというか、ストラグルというかが生じるだろうとか。
あるいは、何かそういう技術を受け入れる側(がわ)の社会の問題というのが、恐らく技術と同時にイノベーションを考えるときに検討されなくてはいけないだろうというふうに思っていて、そういうところでは、かなり技術者、自然科学者だけじゃなくて、社会科学者が働かなくてはいけないような分野なのではないかというのを、よくそれも最近指摘されるのを読んだりとかしたものですので、そういう部分の考え方というのが、国の研究開発計画とか戦略の中でどのように考えられているのかというのを、ちょっとお分かりになればと思いました。よろしくお願いします。
【橋本主査代理】  最初の方から、これ、時間を掛けて話さないと本当はなかなか難しいかもしれませんが、時間がないので簡単に言います。実は、日本の研究開発システムをどうするかというのはもっと大きな話で、これは国の政策として、ここ2年間、安倍政権において非常に検討されました。それは、私は産業競争力会議のメンバーなので、産業競争力会議の中で日本のイノベーション・ナショナルシステムはどうあるべきかという議論をしまして、2つの方法があります。1つは、ドイツ型のフラウンホーファー型の、日本でいうと国研を中心とした、そういう橋渡し機能強化するという道と、もう一つは、アメリカ型のベンチャー企業を媒介としてイノベーションを起こす、この2つを両方求めていくというのが日本の戦略です。
それで、そのために今いろいろな制度、あるいは環境を整備しております。後者のベンチャーの方に関して言うと、これは総理が自らの言葉で言われていますけれども、日本というのは1回失敗すると駄目な国なんだよなと。総理は一昨年、スタンフォードに行って非常に感銘を受けたと。1回失敗するのは当たり前、逆に1回失敗しないやつはまともじゃないと思われているというぐらいの、そういう文化が日本にも必要だということを強く言われました。それで、是非ベンチャー環境をつくるようにという指示がありました。そういう方向で、今、大学政策も含めて動いております。
そういう中で、この研究はその中でどう位置づけられているか。ステージゲートが、ベンチャーが消えていくなどの仕組みを代替としているかと。これはそういうことよりはもうちょっと前の段階です。もちろん、アメリカの場合は、かなりアーリーステージでも、ベンチャーとして何か考えていくというのもありますけれども、我々のイメージとしては、ここでやっているステージゲートというのはもう少し前段階の話で、研究として、これが本当にエネルギー問題につながるか、つながらないかぐらいのところで見ているところですので、ベンチャーでどうのこうのというのはもうちょっと先の話かなと。すなわち5年目以降のステージなのかなと思っています。
そのときに、ベンチャー企業としてIPOを目指すような、そういうやり方もそうですが、一方、大企業にあるバイアウト、M&A、これが日本の場合はより有効に機能するんじゃないかというような議論もたくさんありました。今、私たちの場合は、両にらみでやっております。ですので、やっているこの研究に参画している人たちが、自分でベンチャーを起こすということも可能だし、それから、産業界との連携というのもかなり推奨しておりまして、両にらみで進めているというのがこの研究です。
2番目の、社会に与えるインパクトの話は、これは実は私たちのところではなくて、JSTの中の、小宮山先生の低炭素社会戦略センター(LCS)があって、LCSがそういうことを担当しているんです。ALCAとLCSは連絡を密にとっておりまして、実はこのテーマ設定をするときに、特にボトムアップ型のテーマ設定をするときにはLCSに協力していただいて、どういうものが社会親和性も含めて重要なのかということを議論を頂いた上でやっております。
ですので、我々は技術開発の方をやるわけですが、その技術開発をやるときに、LCSの方の意見を頂きながら進めているということにおいては、御質問の意味において考慮されていると言っていいというふうに思います。以上です。
【江守委員】  ありがとうございます。
【安井主査】  ちょっと短めにお願いいたします。
【田中委員】  技術の開発の一番初めのところから出口を考えておられるということで、大変すばらしい考え方だと思うんですけれども、出口の評価の中には経済的な評価というものもあると思うんです。特にトップダウン型のステージゲートの後で、出口、経済性といったものについてはどういうふうに評価されているのか、教えていただけたらと思います。
【橋本主査代理】  これは、まだそこまで行っておりませんで、最初のトップダウン型の場合は、テーマ設定のところで、経産省と文科省、両省で検討した委員会の中で、そこでの議論の中で、どういう分野が社会的な、経済的なインパクトが大きいかということを含めて議論されているんです。その中から選んだものをやっていますので。私たちのこの技術が、もう少し先の方に行かないとそういう議論はできないのかなと思っています。
ただ、たまたま今取り上げている電池なんかは明確で、これは主に自動車用の電池を研究しております。定置用向け、付随的にはやっておりますけれども。そうすると、これは経産省の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の方の電池に関する将来の市場等も含めて、しっかりとした計算、見通しされていますので、そういうものと連携しながらやっていると。
ホワイトバイオの方は今始まったばかりですけれども、これもやっぱり経産省の方でかなりそういう積み上げをしておりますので、そういう中で選ばれておりますので。
それと、年に2回ぐらい行われているガバニングボードの中で、両省一緒に、そこにはNEDOの方も来ているんですが、そういう中で検討しながら進めていくということで。
まだ今、田中委員の御質問のレベルまでは行っておりませんけれども、もう少しこれが本格的に産業界の方につながっていくというような段階になると、まさにそこが十分検討されることになるだろうというふうに思っております。
【田中委員】  特にホワイトバイオなんかになりますと、ポリマーというのは結局科学が1つの非常に重要なパフォーマンスになりますので、よろしくお願いいたします。
【橋本主査代理】  三菱化学の方にもしっかりと意見を聞きたいなと思っています。
【安井主査】  ありがとうございました。もしよろしければ、このぐらいにして次に行かないと、ちょっと時間が足らないものですから。済みません。
それでは、議題の1を終わりにいたしまして、議題の2に参りたいと思います。いろいろと御発表ありがとうございました。
議題の2は、先ほど課長の方から御紹介ありました、研究開発計画の骨子案でございます。これから先、とにかく本年度を掛けてずっとやるものでございますから、今全部やらなきゃいけないということでは全くないんですけれども、とにかく一応、骨子としていろいろな要素が入っていることが望ましいことは間違いない。そのいろいろな表現方法よりも、何かこれが落ちているのではないか、みたいな議論が今行われることが多分望ましいのだろうと思います。
今週中に事務局までメールで御指摘を頂ければ、検討するということでございますので、今言えなくても大丈夫でございます。というわけでございまして、何か現時点で、例えばこんなポイントが抜けているんじゃないかとか、こんなところは不十分だと。
はい、どうぞ。
【山地委員】  済みません、12時前に出なければいけないので。4-2、伺っていまして、今、安井先生がおっしゃったとおり、まだ今からだと思うんですけれども、今気づいた点を少し簡単に申し上げたいと思います。
【安井主査】  はい、お願いします。
【山地委員】  3ページ目のところの、最先端の気候変動予測・対策技術の確立というところです。ここは大目標のレベルだと、気候変動メカニズムとか、影響評価、それから温室効果ガス削減と適応と書いてあるんだけれども、文科省の役割のところへ来ると、気候変動メカニズムと、それから影響評価と適応策の評価になっていて、いわゆる削減策、ミティゲーションの評価がないんです。これは、恐らくその前の創・蓄・省エネルギーというところでも入っているんだという理解かもしれませんが、しかし、エネルギー分野以外の温室効果ガス削減というのもあるし、それから吸収とかありますね。だから、削減の部分も入っていていいのではないかなと思いました。
それから、その次のページ、4ページの一番上のところで、適応の話が書いてあるんですが、適応のところは、大きく言えば、国内もあるけれども、国際展開という話がもともとあるわけです。ここを、何かいきなり地方公共団体による効率的・効果的な適応策の立案に貢献すると書いてあるんだけれども、まだまだ影響予測も非常に不確実な中で、いきなり地方自治体による適応というのはどうですかね、そう特定化していけるものでしょうか。
むしろ、グローバルを見た方で適応をしなければいけないという明確なところがいっぱいあると思うので、国際的な対応の方が適応の場合は今はより重要で、地方公共団体の話になると、一般的な意味での防災と絡めた方が。気候変動の影響による適応として地方公共団体を通して貢献していくというのは、私はちょっと違和感がありました。
【安井主査】  なるほど。
【山地委員】  それから、その下のところの地球観測ビッグデータのプラットフォーム構築で、ここに超スマート社会が出てきて、地球観測データとビッグデータとして解析するというんだけれども、何となく「Sciety5.0」とか、超スマート社会のところというのは、さっきもちょっと出た民生部門の省エネがすごく重要だ思います。情報を提供して、人々の行動を変容させて新たな省エネを目指すとか、社会を目指すとか、そちらの方のイメージが私には強い。
その中で、先ほど谷口先生がちょっと言われたように、パワエレのところの省エネに使うだけじゃなくて、情報通信技術に使って「Sciety5.0」の推進というのがあるわけなので、ちょっとこの地球観測ビッグデータというところの中に位置づけられているからぴんと来ないんだけれども。どうもこれと「Sciety5.0」を結び付けたところが私にはしっくり来なかったということです。
とりあえず、実は感想ですので、しかも1回目だということで、放言かもしれませんけれども、言わせていただきました。
【安井主査】  何か事務局側からの御回答はありますか。
どうぞ。
【藤吉環境エネルギー課長】  それでは、御説明します。最初のミティゲーション、削減方策がないのではないかということなんですけれども、これは先生御指摘のとおり、最初の柱の省エネ・蓄エネのところで、そこでの施策も含んだつもりです。ただ、貴重な御意見としてお受けしたいと思います。
また、2つ目の、4ページ目の上の地域レベルでの気候変動適応というのはどうかと。むしろ海外ではないかということなんですけれども、これは実は、今、私どもでやっております気候変動適応技術社会実装プログラム(SI-CAT)という施策、これは前回の科エネ委員会で御説明しましたけれども、そういったものを念頭に置きまして、様々な気候、地球観測データというのを、例えば日本周辺の地域のみならず、さらには日本の国内の地域にも活用していただいて、様々な科学技術の成果をそういった地方自治体にも広く活用していただくと、そういう趣旨の事業もやっておりますので、そういったものも念頭において書いております。
また、海外につきましては、その柱ではないんですけれども、次の5ページ目の冒頭、一番上にありますが、地球観測ビッグデータのプラットフォーム構築の一番後に、公共・国際利用、産業利用も促進し、などとあります。こういったプラットフォーム、これはデータ統合・解析システム(DIAS)を更に活用することによりまして、そういった、先生が先ほどおっしゃいましたような洪水ですとか、日本のみならず世界の気候変動による自然災害ですとか、そういったものへの対策ですとか、あるいは予防ですとか、そういったものにもこういったプラットフォームを使っていきたいという趣旨が入っております。
また、4ページ目の地球観測ビッグデータのプラットフォームの大目標のマルで、いきなり「Sciety5.0」の記述があります。これにつきましては、もちろん一番しっくりくる引用のところは、2つ目のマルの地球環境の情報というところですけれども、ここでICTを利用したというのを書きましたのは、こういったDIASを中心とした我々が10年間作っていたプラットフォームというのを、更にAIですとか、IoTですとか、そういったものとうまく連動させてさらなる価値が生み出すこともできるのではないかと思いまして書かせていただきました。以上です。
【安井主査】  確かに先生の御指摘は正しいんですけれども、地方公共団体というのは、多分農業とか生態系保全に関してはやはり適応策を考えろという意味かなというふうにとれるんですけれども、そういうような意図ではないのかな。その適応策は、多分、そこと防災ぐらいしか多分ないんですけれども、そんな感じだろうと思うんです。
ほかに何か御意見ございましたら。
【高村主査代理】  ありがとうございます。意見ということで、お答えを頂く必要はないのでございますけれども。1つ目は、1ページ目、それから2ページ目の論点面のところにも書いてございますけれども、恐らく2050年の社会像、あるいは温暖化対策計画との関係ですと、日本の2050年80%削減という長期目標の言及というのが必要ではないかと。それによって、今日も御報告ありましたけれども、技術開発の方向性、あるいは必要性がより明確になるように思います。
2つ目が、3ページ目の中長期目標の国内外における気候変動対策に活用するための気候変動予測、永久評価技術の開発のところでございます。前回のこの4月の委員会で報告をさせていただいた気候変動研究の在り方に関する検討会が、やはり5年ぐらいの先を見た内容になっていると思っております。ここにかなり拾っていただいているんですが、是非検討会の報告書を参照といいましょうか、言及を頂きたいと思います。特に、この中で、例えば炭素循環の解明とか、総合的予測影響評価といったあたりはキーワードかと思いますので、そのあたりは是非拾っていただけないかということです。
それから、3点目です。これは、4ページの冒頭にあります適応策のところですが、適応策の評価技術だけでいいのかというところが気になっていると。狭くなり過ぎてないでしょうかというコメントでございます。
4点目は、これは江守さんが先ほど発言されたことに関わるんですけれども、恐らく2050年、大きな社会の変革というのが伴うはずで、そういう意味では、2ページ目の論点にあります社会像、それから社会実装のインパクトを明らかにするような人文科学、社会科学の役割というのは、どちらかに言及をしていただくとよいのではないか。
最後のページに社会との関係深化というふうに書かれているところでございますけれども、これも、江守さんが座長をされたFuture Earthの委員会が一定の議論の整理をしていると思っております。ここに書かれていると思うんですが、私自身の理解では、社会ニーズを踏まえた研究開発と、いわゆる入り口、それから社会実装という出口、それから、そのプロセスとしてのステークホルダーとの連携・協働という。このあたりを、明確にしていただくと、この社会との関係深化と書かれているところの内容と、今後の研究開発というところの関係性がよく分かるのではないかという印象を持っております。以上です。
【安井主査】  何かございましたら。
【藤吉環境エネルギー課長】  先生、ありがとうございます。ちなみに、最初に先生がおっしゃった2050年に80%減の件は、最初のページの中ほどのエネルギー基本計画でこう書かれていますよというところで、その2行目に、2050年に世界で、先進国では80%削減を目指すと書かれております。更にまた、本文でも書くと。
【高村主査代理】  温対計画のところで、日本の目標として2050年80が入っていると理解していますので、そちらも、やはり書いていただく必要があるんじゃないかという趣旨です。
【藤吉環境エネルギー課長】  はい、了解いたしました。
【安井主査】  ほかに何かございますか。よろしゅうございますか。
それでは、再度確認でございますけれども、もしよろしければ、今週中ですね。ということは、土日に作業がされるということですね。今週中に事務局までメール等で御連絡を頂ければ、特に何かこういったキーワードが落ちているとか、こういったコンセプトが入っていないとか、先ほどの御指摘ですと、せっかく検討した報告書が十分引用されていなとか、そういうような御指摘を頂ければ、適宜検討するということかと思いますので、ひとつよろしくお願いいたします。
このぐらいで終わると、ちょっと予定を5分ぐらい早く終わることになるかもしれませんが、よろしゅうございましょうか、何か。せっかくお見えいただいて。
どうぞ。
【江守委員】  済みません、ありがとうございます。ちょっと今見ていて思いついたことがあったのですけれども、研究開発計画骨子の6ページにある社会との関係深化のところをちょっと眺めていて、2段落目の「フューチャー・アース」構想の推進を図るとともに、気候変動予測技術や影響評価・適応策評価技術の研究開発に当たってなんですけれども、「フューチャー・アース」の国際的なプログラムのターゲットというか、扱っている問題は、御存じのように気候変動問題に限らなくて、気候変動は様々な持続性の問題のうちの1つでありまして、より広く捉えると、一番引用しやすいのは持続可能な開発目標(SDGs)ではないかと思うんです。
そのSDGsというのは、環境省がやっているから文科省は書かないものなのか。それとも、例えば1段落目には、環境の持続性に加え、社会の持続性、経済の持続性的な発展も一体に考えたというところに、かなり様々な問題が実際には掛かってくるのだろうと思うので、ちょっとそのあたりをどうされるか、検討されたらいいんじゃないかと思います。
【安井主査】  むしろ私が答えた方がいいのかもしれないんだけれども。SDGsは実を言うと、文科省系はユネスコスクールがかなりコミットしてやっている。したがって、どうもテリトリーがここじゃない。だから、そこをどうするか、SDGsをどうするか、ちょっと調整していただかないと駄目かもしれないですね。そんな気がしますわ。
前のEducation for Sustainable Development、ESDと呼んでいたものは本当に何でもありで、SDGsも本当に何でもありなんだけれども、それをはるかに上回る何でもありだったんです。ですから、そのあたりをSDGsに収束をさせることができるとも思えない、現状は。
【江守委員】  ESDですか。
【安井主査】  ESDは、地域文化に関して。そういうことなので、ちょっとここに書けるかなという感じがしないでもない。というわけで、ちょっと検討させてください。
ほかに何かございませんでしょうか。どうぞ。
【市橋委員】  持続的な成長と1ページ目の3行目に書いてあって、その後、6ページの経済の持続的な発展という言葉なんですけれども、2050年の将来像を考えるときに、すごくあやふやというか。経済成長というと、何か物が多く消費されて、二酸化炭素の削減等もマイナスするようなイメージがあるんですけれども、その辺の持続可能な開発とか、持続可能な経済成長みたいなところのコンセンサスというのはあるんですかね。
そこを少し書き込まなくても、よく考えないと、将来の形みたいなものがなかなか見えづらい気がしていて、いろいろなところで、いろいろな人が考える言葉の定義がずれている、玉虫色になってしまっているような気がするんですが。済みません、ちょっと感想というか、意見みたいになって。以上です。
【安井主査】  大変難しいところなんですけれども、一応、この研究開発計画というのは、一義的にはやはり向こう6年間の10年程度の、1ページ目の最初の文章に書かれているのが一応のスコープなんです。だから、実際、今の言葉が2050だけだったら、確かにおっしゃるとおりなんだけれども、ここ5年と言われると、やっぱり。だから、この言葉は、この5年に限ると書くかどうかはあれなんだけれども、だから、スコープが2種類あってという切り分け。それをどういうふうに分かりやすく書くかだと思うんです。その辺は、ちょっとやっぱり作文を意識していただいた方がいいということだと思いますけれども。
よろしいですか。代わりに答えちゃって悪いんですけれども。
ほかはよろしいですか。どうぞ。
【河宮委員】  ありがとうございます。主には、大目標3に関わることなんですけれども、具体的にDIASについて触れてあります。しかも、地球環境情報に特化した書き方がしてありますが、特に大目標1との関連で、例えばバイオテクノロジーに関して、遺伝子情報であるとか、そういった情報をこういう上に載せて共有するという考え方はないんでしょうか。
【安井主査】  考えていないな。
【河宮委員】  漠然とした感想というか、そういう質問ですので。
【安井主査】  どういう意図で書き込めますかね。そのあたりで、だから、多分何も考えていないような気がするんだ。
【河宮委員】  質問の背景としては、DIASというのはどうでしょう、地球環境情報から始まってはいるものの、やはり科学全般をカバーするような総合的なプラットフォームを目指すというふうに聞いたことがあるので、そちらに向けた取組はどうなのかなと思ったのが質問の背景ではあります。
【安井主査】  誰が一番詳しいんだろう。どうぞ。
【藤吉環境エネルギー課長】  済みません、今のところの4ページの一番下にありますけれども、具体的な施策のところで、先ほども申し上げましたけれども、このDIASを中心として、今までは学術利用がメーンだったと思うんですけれども、そのほかにも様々な活用方策に使いたいと思っています。4ページの一番下からありますけれども、研究利用に加えて、気候変動適応や再生可能エネルギーの導入等の公共・国際利用、産業利用も促進と書かせていただきました。今、先生がおっしゃったようなものも含めた形で、様々な方面に活用していったらどうかという趣旨で書かせていただいております。以上です。
【安井主査】  また議論させてくださいというのがよろしいかと思いますので、今日はこういうところですかね。
ほかに何かございますでしょうか。よろしいですかね。
ちょうどいい時間になりましたので、それでは、これにて議論は終了とさせていただきます。事務局側からの御連絡を頂いた上で閉会にしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
【小野専門官】  本日の議事録は、後日、事務局よりメールで委員の皆様にお送りいたしますので、御確認をお願いいたします。最終的には、文科省のホームページに掲載をさせていただきます。
【安井主査】  ありがとうございました。それでは、これをもちまして、第5回環境エネルギー科学技術委員会は閉会でございます。ありがとうございました。

 ―― 了 ――

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