核融合科学技術委員会(第25回)議事録

1.日時

令和3年6月24日(木曜日)15時~17時

2.開催方法

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

(1)「第1回中間チェックアンドレビュー」について:ヒアリング(非公開)
(2)「第1回中間チェックアンドレビュー」について:作業方針の検討
(3)核融合発電に向けた国際競争時代における我が国の取組方針について
(4)第11期の活動について(研究計画・評価分科会への報告案)

4.出席者

核融合科学技術委員会

上田良夫主査、五十嵐道子委員、植竹明人委員、大野哲靖委員、尾崎弘之委員、岸本泰明委員、栗原研一委員、栗原美津枝委員、小磯晴代委員、兒玉了祐委員、高梨千賀子委員、髙本学委員、中熊哲弘委員、吉田善章委員、吉田朋子委員

有識者

武田秀太郎京都大学特定准教授、多田栄介ITER機構副機構長

文部科学省

岩渕秀樹研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、加々美綾乃室長補佐、川窪百合子核融合科学専門官、長壁正樹科学官、近藤正聡学術調査官

5.議事録


(冒頭から議題1まで非公開)

【上田主査】
次は,議事の2番,「『第1回中間チェックアンドレビュー』について:作業方針の検討」に入りたいと思います。まず,「第1回中間チェックアンドレビュー」の構成案について,岩渕戦略官から説明をお願いします。どうぞよろしくお願いいたします。
【岩渕戦略官】 資料の2-1に基づき,原型炉第1回中間チェックアンドレビュー構成(案)について御説明申し上げます。
本日は,構成(案)の説明で,内容の審議は次回の委員会以降であると認識しております。こちらの構成(案)は,上田主査,大野主査代理と,事前に何度も議論を重ね,案として掲示させていただいたものです。
構成(案)は,3ページの資料で,1から6までの構成です。
1は,「第1回中間チェックアンドレビューとは」ということで,これまでの核融合科学技術委員会において,第1回中間チェックアンドレビュー,すなわちCR1の目的などがどう規定されてきたのか,これまでの方針を確認する内容を予定しています。
2は,「原型炉研究開発に関するこれまでの方針」で,これまで委員会において,原型炉の目的あるいは原型炉の目標などがどう規定されてきたのか。委員会の方針に基づき,原型炉に関する概念設計の基本設計活動がこれまで行われてきましたが,これがどう行われてきたのか。これらを確認するパートとして,2を設定いたしました。2のところで,これまでの方針に基づいてどのような研究開発が行われてきたのかということにつき,その代表的な成果として,「原型炉概念設計の基本設計」があるわけですが,この点については,この後,報告があると承知しています。
資料2-1の2ページ目,3ということで,「核融合を取り巻く国内外の情勢の変化」という節を想定しています。この中では,先ほどまでの議題,あるいは前回も御説明したような,カーボンニュートラルに向けた新しい国際情勢が生まれていること,エネルギー安全保障の重要性などの高まりなどが見られること,技術面でITER,BA活動の中で新しい知見の蓄積があること,こうした最近の状況をまとめることを想定しています。
その上で,4が中心的な内容かと思いますが,CR1時点で求められている目標の達成状況を書き込むことを想定しています。(1)「アクションプラン進捗状況」では,今年1月に原型炉タスクフォースから報告を頂いているアクションプランの進捗状況を基に,CR1の段階までの達成目標に達しているかどうか,進捗を確認するという内容を想定しています。
また,(2)として,今年1月以降の最近の状況についても,追加的な確認を行うことを想定しています。
5は,中間チェックアンドレビューの2回目,「CR2に向けた課題の抽出」と章立てしています。(1)で,進捗状況調査結果,タスクフォースから頂いております調査結果を踏まえた分析,そして(2)で,国際情勢等「最新情勢を踏まえた分析」を行った上で,(3)「CR2に向けた重要課題の抽出」ということで,①「技術的側面」,②「非技術的側面」,その両面にわたって,今後のCR2に向けての課題を御議論いただき,抽出して記載することを想定しています。
そして最後,6「結論」ということで,(1)「主文」で,CR1段階までの達成目標を満たしているのかどうかを中心に記載し,(2)で,CR2までの課題を整理,CR2までに達成すべき目標の変更があればその新しい目標について規定することを想定しています。
このような構成で,第1回中間チェックアンドレビューの報告書を作成していくという構成(案)を本日御提案させていただきました。以上です。
【上田主査】 ありがとうございました。ただいまの御説明に対しての御質問につきましては,後ほど意見交換の時間を設けたいと思いますので,そのときお願いいたします。
それでは,まずその前に,第1回中間チェックアンドレビューというのは,原型炉概念設計の開始判断を行うものでございます。そのために,概念設計の基本設計を完了するということが達成目標の一つとして挙げられています。ここでは,この基本設計について,既に2019年に発表されているものではございますが,改めて量研の核融合部門の代表である栗原研一委員から,本委員会への報告をお願いしたいと思います。栗原委員,よろしいでしょうか。
【栗原(研)委員】 上田先生,ありがとうございます。
それでは,お手元の資料2-2に基づきまして,原型炉概念設計の基本設計につきまして,ごく短くなりますが,御紹介させていただきます。
今御紹介がありましたように,2019年11月に一旦完了しているものでございますけれども,この原型炉概念設計の基本設計は,原型炉研究開発のロードマップに従っているものでございます。資料2-2の1枚目のビューグラフ,パワーポイントのビューグラフの上の方を御覧ください。2015年,これは特別チーム,原型炉設計合同特別チームのことですけれども,それが設置されまして,概念設計の基本設計が開始されました。ここでは,第1回中間チェックアンドレビューへのインプット情報というような位置づけとしてやってきたわけでございます。
2020年頃には,第1回中間チェックアンドレビューを経て概念設計に移行いたしまして,その先,2025年頃に第2回の中間チェックアンドレビューを経ますと,工学設計,そして実規模の技術開発を行っていくと。さらに,その先には,いよいよ2035年頃には原型炉段階への移行判断が待ち受けておりますので,その判断で,原型炉建設にゴーサインが出ますと,製造設計並びに建設という形で進んでいくというのが,ロードマップでございます。
今回,この概念設計の基本設計が目指すところでございますが,その下でございます。オールジャパン体制の原型炉設計合同特別チームの設計活動によりまして,核融合発電の実証を21世紀中頃へ加速させる日本独自の原型炉の基本概念を明確化するというのが1つ目でございます。そして,物理的/技術的に飛躍の大きかった従来の原型炉概念,これはSlimCSと呼んでございますが,それを踏まえながらも、同時にITER及びJT-60SAの技術基盤に産業界の発電プラント技術や運転経験等を取り込んだ,技術的実現性のある基本概念を検討して,核融合発電プラントの全体像を提示するというのが,2つ目の目指すところであります。
ここのSlimCSにおいて,飛躍の大きかったという大きな技術ポイントが三つございまして,一つは,センターソレノイドという,いわゆるプラズマを立ち上げるコイルがございますけれども,これの供給磁束が必ずしも十分ではなく,100%の本来あるべきものに対して20%ぐらいのところであったというところが一つありました。また,プラズマの圧力が,これは規格化の圧力と言っておりますけれども,これが4.3という数字で,これは極めて高くて,非常に圧力の高いプラズマを想定しておりました。これが,実は不安定性に対して非常に効くものでございまして,ITERですと大体2.3でやっておりますので,4.3,約2倍近くということで,これもかなりの技術的飛躍になります。また,中性子の壁負荷につきましても,平米当たり3メガワットということでしたが,ITERで平米当たり1メガワットでございますので,これも3倍というように,現状,我々が手に入れることのできる技術的基盤から,かなり飛躍が大きかったということがありました。それでは,実現性のある,あるいは現実的な設計にならないということで,今回の概念設計の基本設計では,飛躍はなく,実際につくれるというものを想定するというのが目指すところでございます。
一方,背景といたしましては,そのページの下のところでございますが,核融合エネルギーの導入の潜在的な位置づけでございます。これは既に本日も議論がございましたけれども,21世紀の後半に温室効果ガス排出の実質ゼロということで,カーボンニュートラル,パリ協定の実現というところがございます。これにつきまして,核融合でも,これまで何度もいろいろな未来予測に基づく計算あるいは登場のシナリオというのを考えた結果といたしまして,2050年代には核融合が電力系統に投入されることが実現しないと,カーボンニュートラルというのは達成がなかなか厳しいのではないかということが分かったところでございます。
次のページでございます。次が,今度は原型炉概念設計の基本設計そのものの概要になります。「検討の方針と基本仕様」でございますけれども,主要機器でありますトロイダル磁場コイル等につきましては,ITERの技術基盤の延長で概念を構築いたします。そして,ITERにないような,あるいはITERから少し外挿するような技術につきましては,産業界の発電プラント技術あるいは運転経験,並びに大学等によります未踏技術の解決方策を取り入れた概念を構築しようというものでございます。また,炉心プラズマについては,ITERあるいはJT-60SAの想定成果に基づいた概念を構築しようという,この3つの検討の方針を立てたわけです。
この結果,原型炉の目標といたしまして,まず数十万キロワットの正味の電気出力,それから実用に供し得る稼働率,そして燃料の自己充足性に見通しを得る基本概念を構築することができたということで,一昨年,2019年の11月にプレス発表も行いました。その具体的なパラメーターにつきましては,その下に書いたところでございます。右側が,発電プラント全体で1辺1キロメートルの約100ヘクタールという敷地ということになったわけでございます。
次のページでございますが,これがそれぞれの基本設計における主要機器の概念になります。細かくは申し述べませんが,左の上が,まずは熱の輸送系になりますけれども,これをきちっと検討することによりまして,正味の発電端,電気出力として25万キロワット。ダイバータの熱の回収ができるとすると,30万キロワットが出力できるということが分かった。それから右側でございます。増殖ブランケットにつきましては,ハニカム構造を採用することによりまして,トリチウム増殖率が1.05という,1を十分超えているということでございます。また,左の下,ダイバータの基本概念ですけれども,これもITERと同レベルの除熱能力で成立するということが分かってございます。そして右下,遠隔保守でございますけれども,これも遠隔保守の技術を考慮した形で,稼働率が70%ということが実現できるということが分かったわけでございます。こういった原型炉概念設計の基本設計が完了いたしましたので,これをインプットといたしまして,第1回の中間チェックアンドレビューにお諮りし,その後,概念設計に進めていきたいと考えているところでございます。
詳しくはこの後に文章の形で記述してございますので,詳細はそちらに委ねたいと思います。以上でございます。
【上田主査】 ありがとうございました。栗原委員から,JT-60SAの状況について,ごく簡単で結構ですのでコメントをお願いします。
【栗原(研)委員】 ありがとうございます。それでは,JT-60SAの現状につきまして,特に不具合が起こりましたので,それを簡単に御紹介させていただきます。
まず起こりましたことは,今年の3月に,超電導コイルの通電試験中に起こったものでございます。少し電圧を上げた,7キロボルト程度の高電圧を印加する,そういった試験の最中に発生いたしました。突然,電流が多く流れて,いわゆる過電流という状態になりまして,5キロアンペアが流れたという信号が発生して,インターロックで停止した訳でございます。その後,装置全体を覆っております断熱真空容器の圧力が,通常,真空に近い状態なのですけれども,そこから0.07気圧ぐらいまで上昇したという現象です。
JT-60SAは安全に停止いたしまして,統合試験運転を中断したわけです。その後,20日間かけまして温度を上げまして,4月に入りまして調査を開始いたしました。調査の結果,まず超伝導コイルへの接続部分の外側に放電痕があることが分かりました。目視検査と,解析結果からは,接続部の絶縁不良によりまして地絡が発生したということが推定されております。この断熱真空容器内の圧力上昇ですけれども,放電によりまして,接続部分のヘリウム流路に小さな穴が空(あ)きまして,ヘリウムが漏れ出した結果ということが分かりました。一方,超伝導コイルそのものには,幸いなことに損傷は全くありませんでした。現在は,日本とヨーロッパの専門家によりまして,事象の根本原因を特定する解析が進行してございます。
JT-60SAの統合試験運転は,今回の事案によりまして,今,遅延しているところですけれども,損傷した接続部と同様な箇所を含めて,全ての絶縁処理について点検と再施工実施によりまして再発防止を図ろうということで,現在その検討を進めているところでございます。検討に際しましては,外部の専門委員あるいは内部の委員会を立ち上げまして,この事象の原因究明,そして再発防止策を実施いたしまして,今回の事象につきましては,ITERや,あるいは原型炉の超伝導トカマク装置に生かしていくということも含めて,教訓として整理する等やっていきたいと考えているところでございます。以上でございます。
【上田主査】 ありがとうございました。
第1回中間チェックアンドレビューの実施に当たっては,まずその前段階として,アクションプランに関する進捗状況調査結果を本年1月に原型炉タスクフォースから委員会に報告いただいております。その概要は,前回の委員会資料4のとおりですが,それ以降の状況を踏まえて進捗状況調査結果に変更がないかどうか,本委員会から原型炉タスクフォースに追加調査を付託することにしたいと存じます。また,第1回中間チェックアンドレビューでは,国内外の情勢を踏まえて課題の抽出を行うため,核融合における各国動向の分析・評価についても原型炉タスクフォースに付託したいと思います。
それでは,第1回中間チェックアンドレビュー構成(案)等の御説明につきまして,御質問,御意見等ございましたらよろしくお願いいたします。挙手ボタンでお教えいただくか,あるいは御発言いただいてもよろしいかと思います。いかがでしょうか。
最初の岩渕戦略官の説明及び栗原委員の御説明に関しまして,御質問,御意見等,いかがでしょうか。特にございませんでしょうか。
植竹委員,よろしくお願いいたします。
【植竹委員】 植竹です。 1月の委員会で発言させていただいたと思うのですけれども,チェックアンドレビュー2の完成のためには,別添2の表の,社会的受容性と実用化段階における経済性の見通しが必要になってくるわけなのですが,社会的受容性の検討というのは,この構成(案)の中のどこに出てくることになるのでしょうか。
【上田主査】 すみません。戦略官,よろしくお願いします。
【岩渕戦略官】 5の中で,(3)「CR2に向けた重要課題の抽出」の②「非技術的側面」,この中で今後の課題,「例えば」という,ここでは仮に「実施体制の検討,規制・技術規格・安全性の検討,社会連携方策の検討など」と書いていますが,この辺りで記述するということを想定していました。

【上田主査】 よろしいでしょうか。いかがでしょうか。
【植竹委員】 ということは,チェックアンドレビュー1のフェーズの中でも,その議論はするということですか。
【上田主査】 1のフェーズで議論をするというよりは,2のフェーズに向けての課題という形で議論させていただければと思っております。
【植竹委員】 分かりました。ありがとうございます。
【上田主査】 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは,ただいま岩渕戦略官から御説明いただきましたような形で,まずは構成ですね。中に具体的にどのようなことを書くかということについては,また今後の御議論をお願いしたいと思いますが,まずは構成として,このような形で進めるということに関しては,御了解いただけたと考えたいと思います。その上で,本日の議論,御意見などを踏まえて,次回以降の委員会で更に肉づけを進めていきたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,続きまして次の議事に移りたいと思います。議事3「核融合発電に向けた国際競争時代における我が国の取組方針について」に入りたいと思います。
この議題につきましては,前回の委員会でも紹介したとおりですが,昨年以降,カーボンニュートラル実現に向けた政策的要請が急速に高まっており,欧州,米国など主要国では,核融合に対する取組が加速しております。これは議題1で報告のあったとおりでございます。こうした国際情勢の変化を踏まえて,我が国として当面どのように取り組むべきか,この委員会としても簡潔に見解をまとめる責任があると考えております。そうした趣旨で,委員会として取りまとめるべき見解の骨子を事務局に起草していただきました。こちらに関しましても,岩渕戦略官から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【岩渕戦略官】 資料3に基づきまして御説明させていただきます。「核融合発電に向けた国際競争時代における当面の取組方針」骨子案と題した資料です。
資料3の1,「本文書の目的」です。ただいま主査が問題意識を御説明されたことに尽きるわけですが,欧州・米国など主要国の動きが急を告げています。この1年,この半年間の動き。そこで,当然ながら,この国際情勢を踏まえて,我が国の核融合コミュニティーはどうするのかという議論がある。その中で,核融合科学技術委員会としても,簡潔でも構わないが見解を取りまとめる必要があるという主査の問題意識の下で作成するというペーパーだと理解しています。中長期的な戦略は,今後,中間チェックアンドレビュー,原型炉に向けた作業をする中で更に議論があると考えておりますが,それを待たずして当面の方針を速やかに世の中に対して示す,簡潔なもので構わないので示すということが,本文書の目的であると理解しています。
その上で,2「国際情勢概観」で,これは骨子案ですので,中身をこれから書き込んでいかないといけないですが,前回の委員会,今回の委員会の2回にわたり,国際情勢について様々な情報を紹介いたしました。こうした国際情勢の概観を簡潔にまとめることが必要で,ここでは4つの○を書いています。ITER計画の順調な進捗に加え,カーボンニュートラルという政策的な要求が高まっていることが,根本的なドライバーになっている。その上で,EUでは,2050年までの「DEMO」建設方針が2020年11月に出てきた。3つ目の○,米国は,今日も議論があったところですが,2040年代にfusion pilot plant,FPPという構想が出てきた。まだ構想段階なので,どのようなものなのかについては慎重な見方も必要かもしれないが,そうしたものが出てきている。同様に英国においても,そうしたプランがある。民間においても,ベンチャー企業の動きがある。こうしたことを概観するのではないか。
その上で,3,「当面の取組方針(案)」,本日御議論を頂くところですが,最大公約数的に,今言えることを簡潔にまとめてみました。この書き方は,上田主査,大野主査代理とも大分議論し,取りあえず今日お示しさせていただきました。3,「当面の取組方針(案)」の(1)から(3)までとなっています。
(1)は,まずスピード感,加速するという方向性が大事ではないか。国際競争時代の核融合に日本として対応するため,研究開発を加速していくという方向性が,当面の取組方針として1番目に来るのではないか。これまでITERの中で,国際協力,国際協調というトーンがあった。もちろん,これは堅持していくわけです。一方で核融合発電に向けた国際競争が顕在化していることも事実であり,民間資本による投資も具体化する中で,我が国として研究開発を加速することが必要ではないか。こうしたことを取組方針の1番目に記したもの。
そして,加速はYesとしても,それをどうやっていくのか,howの部分も必要です。そこで(2)で「核融合発電基幹技術の確保」。核融合発電に向けた各国からの構想には,米国,英国,EU,それぞれ違いが若干あるわけですが,いずれの構想,いずれの場合においても必要になるような,共通的に必要な基幹技術というものがあるのではないか。そう考えると,基幹技術の確保は,早く始める必要があるのではないか。そうした方針を(2)に記した。このように共通的に必要な基幹技術,核融合機器に関する技術などは,先に技術を獲得することにより,例えば他国のプロジェクトへの輸出,機器輸出ということも想定される。最近の発表などを見ると,中小企業で,ITERにおける機器調達の中で蓄えたノウハウを基に,ヨーロッパへの輸出に成功した中小企業もある。早急に技術を獲得し,マーケットを我が国の産業が獲得できるようにすること,基幹技術を早期確保することが必要ではないか。
そして,最後の(3)「人材育成などの基盤整備」で,(1),(2)のような,研究開発の加速,基幹技術の確保を進めていく上で,当然ながら必要なのが人材育成等の基盤整備ということで,こちらを進めていくべきという内容。
このように(1)から(3)として,当面,最大公約数的に,今,日本が行うべきことを,ごく簡潔に記載してはどうかと,上田主査,大野主査代理とともに議論させていただき,今日,こうした骨子案を提示させていただいた。
【上田主査】 御説明ありがとうございました。それでは,ただいまの御説明につきまして,委員の皆様から御意見あるいは御質問をお伺いしたいと思いますが,いかがでしょうか。
五十嵐委員,よろしくお願いします。
【五十嵐委員】 ありがとうございます。御説明ありがとうございました。
前回及び今日,御説明いただいたような状況の中で,こういうものをこの委員会としてまとめておくということだと思うのですが,まず,これの目的というか,用途というか,誰に向けて出すものなのかというところを確認したいと思いました。現状の認識を共有するということが第一だと思うのですけれども,書かれたことがどう実現されていくのか,例えば予算であるとか,産業界への働きかけなども具体的に進んでいくことになるのか。どこまでが含まれるのでしょうか。
あと,例えば, 3の中の(2),基幹技術の確保ということは,その後の技術の管理,知財であるとか,そういうことまで入ってくるのか,そのあたりを教えていただければと思いました。
【上田主査】 ありがとうございます。岩渕戦略官からお願いできますでしょうか。
【岩渕戦略官】 政府,文部科学省の諮問機関であります核融合科学技術委員会ですので,この答申は,基本的には文部科学省向けのメッセージということになります。また,文部科学省向けに行うことの意味は,文部科学省の予算要求の方針に対して働きかけるという意味合いもあるとは思う。
【上田主査】 ありがとうございます。よろしいでしょうか。それでは髙本委員,お願いできますか。
【髙本委員】 電機工業会の髙本でございます。
本文書を作るに当たりまして,今,御説明があった件を優先課題として取り組むということになると思うのですけれども,もう少し,日本の核融合に関する大きな方針を書いていってほしいなというのが私の意見です。というのは,先ほどの有識者ヒアリングの中でもありましたけれども,やはり核融合技術に関わる日本の技術的な位置づけ,現在の位置づけは,かなり世界でも,進んだ状態にあるというアズイズがあって,そこを生かしながら,現実社会実装まで目標としてやりたいのだという強い思いというのは,やっぱり表明すべきではないのかというのが私の意見です。
1番目にアズイズがあって,次に,ではどうしたいのかということです。先ほどキーワードで,国家ビジョンとか戦略とかいうのがあって,それを法律の制定までつなげていくべきである。現実的な課題として,そこの部分はやはり必要な部分だと思うわけです。ですので,そういうことをやっていきたいのだということも書き込むというのが重要ではないかと。
もう一つは,先ほど話題に出た安全基準の対応の考え方等も含めて,やはり,実現させるという方向で,どんなプロセスが必要なのだというのを書き込んでいくというのが必要ではないかと思います。以上でございます。
【上田主査】 御意見ありがとうございます。岩渕戦略官からございますか。
【岩渕戦略官】 今お示ししている文章は,インパクトを与えるような当面の効果が期待されるものですが,より中長期的に核融合全体のビジョンをつくるべき,例えば安全規制の問題も議論すべきということもあるのではというご指摘かと思います。これは,この夏までに一回,二回議論すればまとまるということではなく,もう少し中長期的な議論が必要ですし,例えば安全・規制について議論がありましたが,CR2に向けた課題として位置づけ,煮詰めていく。そのぐらいのタイムフレームで考えるべきことではないか。
また,原型炉のチェックアンドレビューを今年実施している。これは原型炉の議論。核融合全体のビジョンは,一段上のレイヤーのもの。より中長期的な課題。しかしながら,非常に重要な御指摘であり,これをどうこなしていくのかは,少し考える必要があるのではないか。
【上田主査】 ありがとうございます。大変重要な御指摘だと思いますし,そういうことをしっかりと訴えていく必要があるかと思います。多分そのような話のある程度の部分は,中間チェックアンドレビューの報告書に関する議論の中で少しずつ,特に安全の基準の話を今後どういうふうに進めていくかというところなど盛り込まれると思いますので。しかしながら,今,髙本委員からの御指摘に関しましては,事務局とも相談いたしまして,何らかの形でそういう,メッセージというよりはニュアンスに近いと思いますが,もし含められるようであれば,含めることを検討いたしたいと思いますが,こちらに少し考える時間を頂ければ幸いでございます。
【髙本委員】 ありがとうございました。よろしくお願いします。
【上田主査】 ありがとうございます。それでは,兒玉委員,よろしくお願いいたします。
【兒玉委員】 ありがとうございます。大変,明確にまとめられて,よく分かる方針だなと思ったのですけれども,2点ほど。1点は細かいことなのですけれども,2ポツの,EUのところの文章で,原型炉は「最初の発電を」ということになっていますが,原型炉の定義は電力系統供給まで言っていたのではないのかなと思ったので,これは発電だけでいいのかなという,ちょっとここがよく分からないなという感じを覚えました。
それから2点目は,3ポツの(2)の「核融合発電基幹技術の確保」,これは物すごく重要なポイントだと私も思うのですけれども,この基幹技術の定義というか,これは誰がどのように決定されていくのか,極めて戦略性の要ることだと思うのですけれども,これのプロセスとか,そういうのはどうなっていくのでしょうか。核融合発電基幹技術というと,物すごく幅広くも捉えられますし,狭くも捉えられますが,もし御意見いただけたらと思います。
【上田主査】 ありがとうございます。どうしましょう。これも岩渕戦略官から一言お願いできますか。
【岩渕戦略官】 発電なのかグリッド供給なのか。そこはテクニカルによく詰めておく必要があると思います。改めてEU「DEMO」について精査した上で,次の委員会に案文を提示したい。
3(2)の基幹技術とは何か。定義して,ここまでが基幹技術で,ここからは基幹技術ではないという議論を始めると,今回と次回の委員会で議論をするぐらいでは到底まとまらない。非常に難しい問題。ここでは,個々の技術がどこからどこまでなのかということではなく,いろんな炉型戦略があるけれども,共通的に必要だと信じられているものがあるという概念,そういう基幹技術についてはしっかりとまず進めていくべきと言っている。炉型に依存しないようなテクノロジーもあるだろう。一般的に,こうした共通技術,基幹技術の推進を,ここで取組方針としてまとめるという提案がされている。定義はあえて書いていない,あるいは個々の技術を例示していない。そういうこと意図で起草した。
以上です。
【兒玉委員】 ありがとうございます。
【上田主査】 重要な御指摘だとは思いますが,具体的なところまでは踏み込まずに,まずは大きな方針を示すということで,ちょっと時間的なものもございますので,ある程度そこは御了解いただければと思います。それでは次,植竹委員,お願いできますでしょうか。
【植竹委員】 ありがとうございます。髙本委員の御発言とかぶるのですけれども,3ポツの(1)の,研究開発を加速するという書きぶりだけでいいのかというのは若干思います。このペーパー自身は,実証炉のお話に限定されているわけではなくて,核融合発電に向けた競争なので,この研究開発を加速するのは1つの要素にすぎなくて,先ほど多田さんのお話にもありましたとおり,それ以外にもいろいろなファクターがそろわないと社会実装はできないわけですので,社会実装を加速するということではないのかなと思いました。アメリカの場合は,fusion power industryというものを育てるという政治的な意思がはっきりしているわけですけれども,こういったことにつながるようなキックオフの文書ではないのかなと思いました。そういう意味で言いますと,2050年とか2035年とかいう,今のロードマップ上のゴールポストを動かす議論を,これで始めるのかどうかということかなという意味では,非常に大きな意味のある文書かなと思います。以上です。
【上田主査】 ありがとうございました。非常に重要な御指摘かと思いますので,特に社会実装という部分につきましては,やはりそういうニュアンスを込める方がいいのかなとも思いますが,戦略官の方からもし御意見がございましたらお願いします。
【岩渕戦略官】 主査の御指摘のとおり。主査とも相談させていただきたい。
【上田主査】 ありがとうございました。ほかにございますか。
【高梨委員】 高梨です。よろしいでしょうか。
【上田主査】 高梨委員,よろしくお願いいたします。
【高梨委員】 ありがとうございます。中長期的な取組というのを見据えた上で今回の文書をまとめ,どこまで盛り込んでいくかというところについて御検討いただくという話なのですけれども,それは重々承知の上で申し上げます。タイトルです。「当面の取組」という,これは飽くまでもタイトル,仮だとは思うのですけれども,やはりこの「当面」というのがすごく不明確なところがあるので,ちょっとその辺の表現を検討していただければいいかなと思いました。どういう表現が適切なのかはちょっと分からないのですが。
それから2つ目があるのですけれども,対文科省に対しての予算獲得のための文書であるということなのですが,この文書は公になるのでしょうか。公になるとしたら,いわゆる,先ほどから御指摘いただいている,意味ある文章になり得る可能性があるので,かなりやはり短期的なところで持っていかなければならないというか,持っていきたいという意向があるにしても,ある程度の中長期的な文章は含まないと,かなり誤解を受ける可能性があるかなというのがちょっと心配です。いかがでしょうか。
【上田主査】 ありがとうございます。最初の御指摘については,少し文言は検討させていただきます。そうですね。やはり「当面」というか,まず目前の予算等々を実際考えていることはあるのですけれども,ただ,それは大きな開発の流れの中でどう位置づけられるかというところがもちろん重要ですので,その辺の書きぶりも,是非事務局と相談させていただきたいと思いますが,戦略官から何かコメントはございますか。
【岩渕戦略官】 重要な御指摘を頂いた。次回の委員会までに,作文をしてみたい。
【上田主査】 少し検討の時間を頂ければと思います。どうもありがとうございました。ほかに御意見はございますか。
それでは,本日,皆様方から頂いた御意見を踏まえまして,事務局とともに提言案の内容を深めて検討して,次回の委員会で審議させていただき,取りまとめたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
それでは,本日最後の議題ですが,議題の4番です。「第11期の活動について(研究計画・評価分科会への報告案)」に入ります。
皆様御存じのとおり,核融合科学技術委員会というのは,科学技術・学術審議会の傘下にある研究計画・評価分科会の下で活動しております。このたび,第6期科学技術・イノベーション基本計画等を踏まえた政策の在り方について,今期どのようなことを議論するか,次回の科学技術・学術審議会総会で報告いただきたいという,濵口会長から分科会に対して実は依頼がございまして,これに対応するために,分科会から委員会に対して,添付のフォーマットに沿って報告を求められています。簡単な文章ではございますが,そのような報告を求められております。
我々の委員会からの報告事項について,事務局案を取りまとめていただきましたので,これも,すみません。岩渕戦略官から御説明いただけますでしょうか。
【岩渕戦略官】 資料4に基づきまして,御説明を差し上げます。タイトルは,「核融合科学技術委員会における第11期の活動について」です。
研究計画・評価分科会からの発注によれば,こういう内容を記してほしいとなっている。1つ目の○,「第6期科学技術・イノベーション基本計画に対応する取組について」では,(1)各委員会に関する研究・開発に関するものとして,どのような活動を行うのか。(2)自然科学と人文科学の総合によってどのような活動を行うのか。この2点を記してほしいとされている。そして2つ目の○で,その他,「今後,分科会で議論することを期待する論点について」報告をせよとのこと。
1の(1)ですが,各委員会における研究・開発に関する活動ということで,この委員会では,第6期科学技術基本計画に対応して,ITER,BAなどの推進方策をこれまでも議論してまいりましたし,今後も議論するということであります。特に本年については,先ほど来,議論があるところの,原型炉に向けた第1回中間チェックアンドレビューを行うという内容。(2)自然科学と人文・社会科学の「知」の融合による活動として何を創出ということですが,前回の委員会でもありましたが,本委員会ではこれまでも,核融合のアウトリーチについて,分野を超えた専門家の知の結集を図ってきた。今日も安全性の問題,規制の問題といった話もでており,こうしたものも含めて,今後も,自然科学に閉じない活動を,この委員会で進めていくことを記載しました。資料4の内容は以上です。
【上田主査】 ありがとうございます。比較的,短い記述ではございますが,今後の活動に関しての方針を一応示したものでございます。これに関しまして,何か委員の皆様から御意見等ありますでしょうか。
五十嵐委員,よろしくお願いいたします。
【五十嵐委員】 御説明ありがとうございました。
私も研究計画・評価分科会に出席しているので,こういった依頼があったということは聞いているのですけれども,質問はまず,この形で回答されるのでしょうか。というのは,先ほど来も御指摘があったように,ここにあるような,ITERであるとかBAであるとかについては,この委員会の先生方は皆さん御存じで,その位置づけであるとか,中間チェックアンドレビューの位置づけであるとか,全体像がお見えになっていると思うのですが,やはり計評分科会に出すに当たっては,その背景であるとか,核融合研究がについて何か全体的なこともあった方がいいのではないかなと。6期の科学技術・イノベーション計画の中のサステナブルのあたりなどに,すごく大きく核融合は関係していると考えますので,そういったところからの記述も必要なのかなという印象を持ちました。
【上田主査】 ありがとうございます。非常に的確な御指摘かなと私は思いました。
確かに,最初におっしゃいましたように,ITER,BAと突然書くと,計評の分科会の先生にすぐに伝わるかどうかというのは,疑問かなと思いましたし,イノベーション基本計画に書かれている文言あるいは文章を,ある程度,引用して書くというのが分かりやすいとは思います。この点につきましても,事務局と相談をさせていただきたいと思います。御意見ありがとうございました。
ほかに何か御意見はございますか。
【吉田(善)委員】 吉田ですけど,よろしいですか。
【上田主査】 吉田委員,よろしくお願いいたします。
【吉田(善)委員】 今の御意見とパラレルになりますが,やはり核融合エネルギー開発と,それからもう一つ,核融合科学というものは,そもそも今のコンテンポラリーな視点で見て,どのような位置づけと,我々としての未来観というのを持っているのかということをまず述べないと,既にある意味で動いているプロジェクトの,ある種,技術的な側面だけを述べていても,広い分野の中でこの分野がどういうふうに位置づけられるのかということが発信されないような気がするので,広い分野に対して発出する文書においては,やはりそういうところを,少し力を入れて記述する必要があるのかなと思います。
それからもう一つ,これは前回も少しコメントしましたけれど,アウトリーチ活動というのが文理融合的な「知」の創出だというのは,少し観点が狭いのかなと。しばしばいろんなところで見ていると,アウトリーチ活動と称してやっていることは,我々がやっていることを理解してもらう素地をつくるという観点といいますか,そういう面が非常に出ていて,つまり,かなり一方向的といいますか,我々が持っている価値観が理解されるような土壌をつくり上げたいということがアプリオリにあるような気がします。それで,私はそういう観点というのは,文系の人と,かなり文理融合のことをずっと大学にいたときやってきていましたが,その点が文系の人とはかなり違うというか。だから,文理融合のときにアウトリーチをしていると,人文知と融合していると理系の人はしばしば思っていますが,それは大分違うと思います。ですから,やっぱり問題の仕切り方というのを,もう少し根源に戻って考えていく必要があるのかなと。これはやはり,長期に及ぶ核融合で,かつニュークリアな側面を持っているので,そのことについてやはり本格的に取り組んでいく必要があるのではないかなと思います。
以上です。
【上田主査】 最初の御指摘も非常に重要な御指摘かと考えます。基本的に,まず科学技術・イノベーション基本計画に対応してということなので,そこをベースとして,その中で先生の述べられたような核融合の技術の広がりのようなニュアンスが加えられればいいのかなとは思っております。ただ,11期の活動という,ある程度,期間も限定されたものですし,多少具体的なインフォメーションも書く必要がありますので,その辺のところから,ITER,BAとそのまま書いてしまうのが適切ではないかもしれませんけれども,何らかの具体的なアクションを含めた形で書いていきたいとは思います。
それから,アウトリーチ活動のところは,なかなか書き方が難しいですよね。先生の御指摘はそのとおりかと思います。アウトリーチというのが,一方向の,こちらの考えていることを伝える。先方の意見を聞いて,お互いの考えを融合させる,あるいは高いレベルに昇華するというニュアンスにはなっていないので,ここのところは,正直,書き方がなかなか難しいと思うのですけれども,何か先生の方から御提案などあれば,お伺いしたいと思いますが如何でしょうか。
【吉田(善)委員】 いや,難しい課題を与えられていると思います。それで,今こういうことをやっていますということだけではなくて,やはり,もう一度,問題点を分析すると。
【上田主査】 問題点の分析ということを確認するということですね。
【吉田(善)委員】 そういうことから,やはり始めないと。
【上田主査】 なるほど。

【吉田(善)委員】 いや,こういうことをやっていますということを報告するだけでは,ある意味,(1)のところも何となくそんな感じがします。だから,今のコンテンポラリーな問題として,チェックアンドレビューというのは,そういうことですよね。
【上田主査】 そうですね。
【吉田(善)委員】 既定の路線に従っていることで,今こういうことをやっていますというのは,何かある種,成果報告的なのだけれども,そうではなくて,問題の分析から物事はやはり入った方がいいかなと思います。
【上田主査】 分かりました。ただ,これは,あまり長い文章を書くという種類の報告ではないと一応理解していますので,先生の言われるようなことを事細かに多分書くスペースがないかもしれません。
【吉田(善)委員】 そうですか。すみません。
【上田主査】 先生のお考えはお伺いした上で,どのような書きぶりにするかについては,少しこちらでまた検討させていただきたいと思っております。
【吉田(善)委員】 よく状況を理解していないコメントかもしれません。
【上田主査】 非常に貴重な御意見と理解しております。ほかに委員の方から御意見があれば。
いろいろ御意見を頂きまして,ありがとうございます。あまり時間がなく,この委員会で細かいところまできちんと先生方に御検討いただく時間が実はありません。ただいま御意見いただきましたことを踏まえて,事務局あるいは主査代理等々,関係者の皆様と相談して,最終的な文言につきましては,誠に申し訳ないですが,主査一任とさせていただきたいと思います。次回の委員会に諮るところまで,実はあまり時間の余裕がないという状況は御了解いただきたいと思っております。
そのようにさせていただきたいのですが,御了解いただけますでしょうか。非常に唐突で申し訳ございません。ありがとうございます。
それでは,本日用意しております議事は以上のとおりでございますけれども,何か委員の方から特に報告若しくは審議すべき案件がございましたらお教えください。何かございますか。
尾崎委員。よろしくお願いします。
【尾崎委員】 神戸大学の尾崎でございます。今お話に出た広義のアウトリーチ活動になるかもしれませんが,今,ITERに産業界から,例えばコイルを製造している重電業界とか,電工とかエンジニアリングといった企業はもうたくさん参加されていますけど,原型炉というものが出てくると,当然,オペレーションをやる会社も,今のうちから原型炉に興味を持ってもらいたいといったこともあります。この場ですから個社の名前は申し上げませんけれど,文科省の事務局の皆さんと一緒に,大手商社エネルギー業界の複数の会社に聞き取りを行ってまいりました。非常に有意義だったと思うので,かいつまんで皆様に御報告いたします。
まず,企業でR&Dの方々が核融合に興味を持っていただいていますけれど,これは全く新しい産業をつくるということで,研究所の人たちではなくて,経営トップに近い人,特にエネルギー部門のトップとか,そういった方々に直接,関心を持ってもらわないといけないと。それで,そういった対象にお話をしてきたのですが,主に3つ,反応がありました。
一つ目は,皆さんITERのことは知っていますと。それで2050年の商業発電というのは何となく知っていると。ですから,もう全然,自分たちと関係ないという意識でしたが,原型炉のようなものが結構,迫っているということを理解していただくと,大きく反応が変わってきて,自分たちも本格的に投資とか,そういうことを考えないといけないという反応が1つありました。
二つ目は,そうはいっても,やはりいきなり大きな投資をするというのは難しいわけですよね。ITERに部材を納入するというのとは,またわけが違いますので。その点は,企業連合とかコンソーシアムという形をつくった方が,認知が広がって継続するのではないか。こんな反応がありました。
三つ目は,最初に私が質問したことと関係してきますが,安全基準がやはり欲しいと。要は,経営レベルで理解しても,まあ,経営レベルでも,原発と核融合の区別がつかないことがやはり多いというのが現実にあります。これはもう,財界のトップ企業でさえそうです。したがって,安全基準が,たとえアメリカでもEUでも出てくれば,これは自分たちも長期投資をして大丈夫だという判断がつきやすいと。こんな反応を頂きました。
以上,簡単ですが御報告です。
【上田主査】 ありがとうございます。非常に有益な情報をお伝えいただきまして,ありがとうございました。
本件に関して,あるいは全く違うことでもよろしいのですけれども,御意見等ありますでしょうか。
特にないようですので,それでは,本日の核融合科学技術委員会はこれで閉会させていただきたいと思います。御多忙の中,御出席いただき,御議論ありがとうございました。今後ともまたよろしくお願いいたします。

―― 了 ――

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