核融合科学技術委員会(第23回)議事録

1.日時

令和3年1月27日(水曜日)14時~16時

2.開催方法

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

(1) 第27回ITER理事会および第26回BA運営委員会の開催結果について
(2) アクションプランの進捗状況報告
(3) 第1回中間チェックアンドレビューについて(第11期への期待)
(4) その他

4.出席者

核融合科学技術委員会

小川主査、五十嵐委員、植竹委員、上田委員、大野委員、岡野委員、岸本委員、栗原委員、小磯委員、兒玉委員、高梨委員、髙本委員、竹入委員、中熊委員、松尾委員

文部科学省

堀内審議官(研究開発局担当)、岩渕研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、加々美室長補佐、川窪核融合科学専門官、長壁科学官、近藤学術調査官

5.議事録

【小川主査】 本日は,御多忙のところ,御参加いただき,ありがとうございます。定刻になりましたので,第23回核融合科学技術委員会を開催いたします。
今回も新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からオンラインにて開催します。
今回は,第10期を締めくくる最後の委員会ということもあり,私とタスクフォース主査の岡野委員は文部科学省から参加しております。
それでは,議事に入る前に,事務局より,定足数の確認,配付資料の確認をお願いいたします。
【川窪専門官】 事務局の川窪でございます。本日,委員の皆様の御出欠は,尾崎弘之委員が御欠席で,その他の委員の皆様は出席予定となっています。
本会議の定足数は過半数9名以上でございます。本日は,15人の委員会委員に御出席いただいておりますので,定足数を満たしていることを御報告いたします。
次に,本日の配付資料についてですが,議事次第の配付資料一覧のとおりです。今回は,委員の皆様及び傍聴の登録をされた方宛てに事前にメールにて配付資料を送付させていただいております。会議中,遠隔会議システム上では資料を表示しませんので,各自お手元で御確認いただきます。
以上です。
【小川主査】 それでは,本委員会は,委員会運営規則に基づき,議事を公開いたします。御発言は議事録に掲載され,ホームページ等で公開されます。
また,本日は,文部科学省研究開発局担当の堀内審議官に御出席いただいております。議事に先立ちまして,堀内審議官より御挨拶を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
【堀内審議官】 ありがとうございます。文部科学省の研究開発局担当,堀内と申します。よろしくお願いいたします。
本日は,第10期の最後の核融合科学技術委員会ということになっております。小川主査,岡野タスクフォースの主査など,全ての委員の皆様に,今期の御尽力や御貢献に関して感謝申し上げたいとまずは思っております。
今期の2年間の活動を振り返ってみますと,ITERの建設段階になりますけれども,いろいろな幅広いアプローチ,BA活動,こういったものの評価を頂いたりであるとか,また,核融合を取り巻く動向,状況,これを踏まえて,当面における核融合研究開発の推進の方向性,第6期の科学技術基本計画に向けていろいろ考え方をまとめていただいたりというような重要な任務をこなしていただいて,非常に成果を上げてこられたのではないかと思っております。
核融合エネルギーに関するアウトリーチの戦略や,また人材育成など,常にゆるがせにできない問題というか,課題についても御議論いただき,非常に価値ある御意見を賜って,しかも,御議論を賜るだけではなく,それぞれの立場でこの分野に関する取組を進めていただいているということに改めて感謝を申し上げたいと思っております。
核融合に関する政府の状況としましては,先般,菅総理が所信表明演説において,カーボンニュートラル社会を2050年までに実現すると述べられまして,それだけではなく,欧州連合やフランス,ドイツ,イタリア,スペイン,イギリスなど,各国も世界的な目標として2050年までにカーボンニュートラルを目指していくということになっておりまして,非常にそこの点については盛り上がっているというか,皆さん,熱心に取り組もうと。さらに,先般,アメリカのバイデン大統領もパリ協定への復帰ということを発表されております。
こういった中で,いろいろなエネルギー問題,環境問題,資源の問題などを解決する大きな力,戦力になるのがこの核融合ではないかと私ども考えておりまして,これからそういったことをアピールし,また,いろいろなそれに向けた議論をしていきながらこの分野の振興を図っていきたいと。それにつきましては,皆様の御協力,お力が是非とも必要になるのではないかというふうにも考えております。
本日の議題,いろいろ用意してございますので,いろいろな観点から御議論を賜れればというふうに思っております。よろしくお願いいたします。
私の方からは以上になります。
【小川主査】 堀内審議官ありがとうございます。昨今の核融合を取り巻く政府内の状況等を詳しく御説明いただきまして,本当にありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
【堀内審議官】 はい。ありがとうございます。
【小川主査】 それでは,議題1,第27回ITER理事会及び第26回BA運営委員会の開催結果について、に入ります。岩渕戦略官から御説明をお願いいたします。
【岩渕戦略官】 それでは,資料1-1に基づき,第27回ITER理事会の結果について御報告申し上げます。資料1-1の1ページを御覧ください。「第27回ITER理事会の議題等」というタイトルです。令和2年11月に2日間にわたって開催されました。新型コロナの影響ということで,通常,フランスに集まっての会議ですが,今回はビデオ会議形式の開催でした。
我が国からは松尾文部科学審議官などが出席をしたところです。
議題について,1ページの下の方に書かれているとおり,ITER計画の進捗報告,建設活動のマネジメント等の議題が設定されました。
2ページを御覧ください。現在までのITERの建設状況について確認いたしました。現時点で,運転開始,ファーストプラズマまでの建設作業のうち,71%が進捗をしているということで,順調な進捗が確認されたということです。
具体的には,主要な機器が,このコロナ禍の中でありますが,ITERサイトに納入されました。日本の担当しているTFコイルも世界初号機が昨年4月に現地に到着,2号機が昨年7月に到着ということで,順調に納入が進んでいる。あるいは,韓国の真空容器が着くというようなことも進んでいます。
他方で,世界中,コロナということで,コロナの影響がプロジェクトに対してどう発生しているのか、これについて分析するということがこの理事会では大きな話題でした。
実際評価してみますと,おおむね数か月程度の遅れが生じているところもある。担当する極,感染状況も世界それぞれの国によって違いますので,影響はそれぞれ違うわけです。我が国であれば,数週間程度の遅れが生じているかなというところですが,大きいところだと数か月オーダーの影響が出ている。
昨年11月の時点で,まだ新型コロナの影響,全体を評価するというには時期尚早ということで,ファーストプラズマの時期などについて見直すということはなく,現行のスケジュールを維持して,引き続き頑張っていこうということを確認したというのが昨年の11月の理事会でした。
もちろんコロナが続いておりますので,影響を最小化する対策を講じるとともに,次の理事会,今年の6月を予定していますが,ここで改めて新型コロナによる影響を再評価するということです。
コロナのことですので,なかなか現時点で影響の見積りが難しいというところですが、引き続き注視してまいります。
TBM試験計画への参加極の決定について,この理事会では,テストブランケットモジュールについて,どの極が担当するのかという議論がありました。この件,数年来,検討,協議を進めてきたところです。ITERの設計上,テストブランケットモジュールの試験を実施できるのが4個の機器に限られるということで,ITERは7極が参加しているわけですが,4個の機器に限定されるということで,若干競争のようなものもあったわけです。しかし,日本が提案したTBMの試験計画,この参加が無事に決定され,喜ばしい決定だと思います。日本のほかの参加極は,EU,中国,韓国ということでした。
資料1-1の説明は以上です。
【小川主査】 ありがとうございました。コロナの影響で今後スケジュール的にもいろいろまだ読めないところあるとは思いますけれども,このような状況だそうでございます。ただいまの御説明に対して御質問等がございましたらお願いいたします。
どなたかいらっしゃるでしょうか。
よろしいでしょうか。コロナの影響,今後注視しながらITERの着実な進展を期待したいと思います。
続きまして,岩渕戦略官,BAの方もお願いいたします。

【岩渕戦略官】
資料1-2を御覧ください。第26回BA運営委員会結果です。1ページ目を御覧いただきますと,BA運営委員会の概要です。昨年12月に開催されたもので,これもオンラインで開催いたしました。
我が国からは堀内審議官ほかが出席いたしました。
主な議題は,1ページの下に書いておりますとおり,BAにおける3つの事業の進捗状況の報告,そして,JT-60SA運転開始に向けて準備状況,その他,地元青森六ヶ所によるホストサポート状況の紹介などがありました。
2ページを御覧ください。第26回BA運営委員会結果概要ですが,3つの事業について事業の進展を確認するとともに,2021年の作業計画について議論をしました。1. ①IFMIF/EVEDAの現状で,長パルスビーム試運転に向けた必要な機器の据付けが終了した,試運転に向けた調整が進展したというようなことで,コロナの影響がやはりあるわけですが,その遅延を最小化するための取組,遠隔実験制御室の整備などを行ったという進捗が確認されました。
1. ②,IFERCの事業ですが,こちらについては,幸い新型コロナの影響は非常に小さく,事業が順調に進展したということを確認したところです。
また,1. ③,サテライト・トカマクの事業ですが,こちらはスケジュールに若干の遅延がコロナによって生じたものの,初プラズマに向けた調整は順調に進展しているところです。
JT-60SAの調整運転が順調に進んでいるということもあり,2. にあるとおり,JT-60SAの運転を開始する記念式典を日欧共同で開催するということについても日欧間で議論がなされたところです。
その他,六ヶ所サイトにおける欧州の研究者等への生活支援,教育支援に関する状況の報告等がありました。コロナの影響,当然日本においても現在進行形でして,外国の方の日本への入国に関する規制も,緊急事態宣言等もあり厳しくなっており,再び人的な交流について困難が発生しているところですが,政府全体の入国管理の方針等をよく確認しながら,BA活動について,人的な流動性含めて,可能な取組ができるよう鋭意取り組んでいるというところです。
概略,報告,以上です。
【小川主査】 ありがとうございました。それでは,BA運営委員会についても,御質問,御意見がありましたらば,よろしくお願いします。
JT-60SAに関しましては,本日の最後の議題として取り上げておりますので,そのときにまた現状を御報告していただけると期待しております。
よろしいでしょうか。
ありがとうございました。それでは,次に,議事の2番目,アクションプランの進捗状況報告に入ります。本委員会に属する原型炉開発総合戦略タスクフォースにおいて、アクションプランに挙げられている課題の進捗状況調査結果を取りまとめていただきました。その報告をタスクフォース主査の岡野委員からお願いいたします。
それでは,岡野委員,お願いします。
【岡野委員】 それでは,資料2に沿って報告させていただきます。資料2の表紙をめくっていただくと,まず文章になりますが,これまでの経緯は,時間の都合で省略させていただきます。
それから,2番目のチェックアンドレビューに向けた進捗状況の必要性も,内容はよく御存じのことなので,スキップさせていただきますが,記号だけご説明いたします。2行目,第1回中間チェックアンドレビューを以下CR1と言います。それから,第2回チェックアンドレビュー,これは2025年から数年以内ですけれども,これをCR2というふうに表現して略称で書いておりますので,それだけ御案内しておきます。
それでは,3の本調査結果についてから説明させていただきます。本資料は,CR1に向けての調査結果です。ただし,アクションプランは2020年までで終わっているわけではなく,2035年頃の原型炉の建設を開始するところまで継続的に計画されています。
したがって,今回の調査では,原型炉の建設段階に向けて進めるアクションプランとしてどう評価できるかも重視しました。すなわち,現時点の達成度で順調と評価される場合も,今後新たにアクションの必要性が予見できる場合には,CR1で原型炉開発の推進を承認された後の意味で,CR1後と明記の上,そのアクションが必要だという点を指摘しております。
現時点までの達成度の評価においては,一部に課題は残るものの,おおむね順調に推移していると考えています。本フォローアップの結果を踏まえつつ,CR1を実施することを期待したいと思います。
ただし,CR1後については,多くの必要なアクションが指摘されています。こうしたアクションのためには,2022年以降,本格化させる必要がある核融合実験炉ITERの運転に向けた機器開発の経験を活用していくことが不可欠です。将来の原型炉開発に生かしていく上でも,ITER向けに日本が調達責任を負う機器について開発を加速することは急務と言えます。
これらのアクション全体を俯瞰的に見ると,人材や資金面での十分なリソースを確保した上での開発体制の充実が必要なのは言うまでもないと思います。リソースの配分の優先順位を議論すること,それから,ITER,BAで得られた知見を最大限活用していくこと,産業界とのさらなる協調に関する議論を踏まえることなどは重要な課題と言えます。
CR1後には,原型炉の建設という大事業に向けて日本国内のステークホルダーの間に議論を要請する体制の構築と原型炉建設を担い得るように開発体制を発展させることが非常に重要になってくるものと予想されます。この点はCR1後の大きな課題であるということを指摘しておきたいと思います。
それでは,4番の進捗状況の概要に入りたいと思います。ここからは課題個別ごとに御説明します。
以下に本調査における課題別の進捗状況の概要を示しますが,進捗の記載でCR1後とあるのは,CR1において開発の推進を承認された後,の意味に使われています。よろしくお願いします。
それでは,炉設計から順に行きますが,ここに書いてある数行の各説明は,後ろのページにエクセルファイルの表がついており,そのトップのところに同じことが書いてありますので,そちらを御覧いただきながら見ていただいた方が分かりやすいと思いますので,エクセルファイルの「0.炉設計」の方に移っていただけるでしょうか。数枚めくっていただいて,横長の資料になります。
それでは,0番の炉設計から御説明いたします。CR1までに完了予定のアクションはほとんど達成されており,進捗は順調と判断できます。CR1以降,原型炉,テストブランケットモジュール,これはITERのではなくて,原型炉のテストブランケットモジュールに向けた先進ブランケットの成立性検討が必要であるが,NIFSや大学が参画するなど,作業加速の下地ができています。
下の表を見ていただくと,左から炉設計に関係する小課題名があって,そのアクション,もう少し小さい課題名,それから期限が書いてあって,それからチェックアンドレビューまでの要完了事項には※印。もちろん完了していなければいけないけれども,チェックアンドレビュー項目で大きくは取り上げられていないのも入っておりますが,そこには※印がついていないこともあります。それから,実施される機関,実施を期待されている機関の略語が書いてあります。
それから,進捗状況の分析が書いてあって,その右が進捗度の欄で,順調や,極めて順調とありますが,これは飽くまでもCR1へのチェックアンドレビューに向けての進捗度を今の時点で評価したものでございます。その右には進捗の状況の評価が書いてあって,一番右には,必要であれば,課題達成のために必要な措置というものが書いてあります。
真ん中あたりにあるCR1への進捗度のところでグレーで塗り潰してあるところは,CR1までに終了している予定にはなっていないものですね。終わりの期限が,2026年や30年と遅いものでございまして,それはCR1への進捗度をここに書いても途中ということになってしまいますので,グレーに塗り潰してありまして,あえてここに何かを書いていないということになっています。
御覧いただいて分かるように,炉設計については,おおむね順調,ものによっては極めて順調という進捗でございまして,チェックアンドレビューに向けては少なくとも心配はないという状態です。
もちろんそれ以降,炉設計,工学設計に向けては非常に大事なので,もちろんたくさんの課題が出てきますが,チェックアンドレビューに向けては順調であると評価いたしました。
それでは,課題数も多いので次に移りたいと思います。2ページめくっていただくと,1番の超伝導コイルになります。CR1までの要完了事項はおおむね対応したと判断できます。結果として立案された概念基本設計,これは超伝導コイルの概念基本設計ですが,これはITER方式をベースとしているものの,同一品ではないため,CR1後に試作・試験による検証が必要です。また,コスト低減を盛り込む際には,ITER方式,これ,ラジアルプレート方式と言いますが,これとのコストの低減比についての評価を合わせて,ITERにはない耐放射線材料の検討等,新たな知見が必要となるため,CR1後に試験装置まで含めたR&D全体の予算計算を立てる必要があると考えられています。
同じように,アクションから進捗度が書いてありますが,御覧のとおり,チェックアンドレビューに向けて終わっていなければならないものは全て順調と評価できています。
CR1で評価いただいた後は,テストコイルを作るとか,そういった大きなものに入っていくので,今後の課題はたくさんあるというふうに御理解いただければと思います。
それでは,次はブランケットに入ります。2ページめくっていただいて,2番のブランケットです。CR1に向けて,固体増殖・水冷却ブランケットについては,原型炉ブランケットの概念基本設計としてはおおよその見通しは得られています。ITERテストブランケットモジュールについては,製作性設計検討を開始しました。ブランケット工学試験等が着工されており,導入される安全性試験装置群の設計は順調です。その導入後に速やかなデータ取得が求められます。T工学試験については,ITERのT除去系の設計は順調に進捗していますが,大型T取扱い施設については,設計検討に着手したところでありまして,CR1後の加速が必要と思います。先進ブランケットにつきましては,設計検討や基礎データの取得などに着手されてはいますが,体制構築を含めた加速がCR1後には必要だと思われます。
先進ブランケットというのは,原型炉,テストブランケットモジュールに入れるためのものですね。それが加速していく必要があると思います。
具体的な小課題の評価は表にあるとおりですが,やはり20年頃までに終わっていなければならない,チェックアンドレビュー1までに終わっていなければならないものは順調と判断しておりますが,それ以降はR&Dが大きくなっていきますので,数々の課題が残されているし,気をつける必要があるということが述べられています。
それでは,次々行って申し訳ないですが,時間もありませんので,次のダイバータに行かせていただきます。3番のダイバータです。原型炉の初期フェーズでタングステン・銅合金水冷却のダイバータを選択するのであれば,デタッチメントプラズマの実時間制御は不可欠な要素になります。デタッチメントプラズマというのは,つまり,ダイバータの負荷を下げるというテクニックですが,これが不可欠です。デタッチメントプラズマの素過程への理解とそれに基づく制御シナリオの確立を目指した研究開発がCR1に向け着実に進歩していると言えます。一方で,最終的な目標達成には多くの項目でCR1以降の長期的な加速が必要になっています。また,ダイバータ級定常高密度プラズマ実験装置やホットラボに設置する必要がある中性子照射材料・機器の熱負荷試験装置に関しては,チェックアンドレビュー後,今後の研究進展を見ながら展開を判断していく必要があると思います。これは恐らく必要ですが,今後の展開を見ていくという意味でございます。
現時点, CR1への進捗度で言えば,次の表にありますように,ダイバータは非常にスパンの長い開発ですので,多くが2020年までではありませんが,2番目の先進ダイバータの評価と開発推進への判断というところは順調に進んでおりまして,それ以外も,今後の課題という意味では順調になっています。
それでは,次が加熱・電流駆動システムですね。加熱・電流駆動は2020年までの期限というものがないので,順調とか,加速が必要とかは何も書いていませんが,全体の評価を御紹介いたします。
ITER,JT-60SAに向けてQSTが担当する課題については,ECH,NBIともにCR1に向けて順調に進捗しています。CR1後については,2022年以降に本格化させる必要があるITER核融合運転向けの機器開発の経験を活用していくことが不可欠です。ヨーロッパ,欧州担当のITER-NBI用RF負イオン源開発に関して,高出力・長パルスの観点で克服すべき問題が発生していますが,NIFSを交えた国際共同研究による解決が図られています。また,メンテナンスレス・セシウムフリー負イオン源,これは負イオン源を作るための技術ですけど,この負イオン源開発は,NIFSも交え,大学での基礎研究が進められておりまして,高信頼性に関するNBIの課題に取り組む国内体制が構築されつつあり,CR1後も推進する必要があります。高信頼性に関するECHの課題は,ジャイロトロンの周波数可変,高周波数帯域における大電力化,ミラーレスアンテナの設計に関しては進捗があります。しかし,ITERとJT-60SAに向けた計画に直接は取り込まれていない高速周波数切替え・高効率運転・完全連続運転・アンテナ保守・伝送系に関する設計や開発は,国内の取組体制を早急に構築し,CR1以後の進捗を加速する必要があります。
そういうことなので,御覧のように,課題としては,進捗度のところ,CR1への進捗度はグレーになっていて,現時点ではおおむね順調ということでありますが,今後ITERに取り組まれていないような部分を原型炉のために開発していくという仕事が残っているということになります。
それでは,次が,理論・シミュレーション,5番ですね。原型炉設計合同特別チーム,以下特別チームと略しますが,の理論シミュレーションワーキンググループにおける2025年頃までの開発・利用計画の議論・提示を踏まえつつ,アクションプランの進捗は全般的に堅調であり,CR1に向けて成果が出ていますが,加速が必要な部分も確かにあります。特にダイバータシミュレーションコードのJT-60SA,ITERなどの実験への適用,それから検証,継続開発ですね,それから,同様に,炉心プラズマ統合シミュレーションコード,これのJT-60SAへの適用,ITER実験への適用,それから,検証及び継続開発,及びディスラプション・燃焼プラズマ・乱流輸送・プラズマエッジ第1原理シミュレーションコードの継続開発・利用は,CR2までのチェックアンドレビュー項目の達成と強くリンクしており,今後更に重点化していかないとCR1後の進捗が遅れる可能性があり,対策が必要と考えます。
進捗度のところは,順調となっておりますが,一言コメントしておくと,我々の原型炉は,ITER,JT-60SAの実験とシミュレーションの合わせ技で原型炉に行こうというのが我々の戦略ですね。つまり,原型炉のプラズマそのものは原型炉でしかできないという困った特性があるので,それを予測する方法が必要ですね。ですから,ITERとJT-60SAとシミュレーションというのは3本柱ですが,実験というのは進捗が非常によく見えると思いますね。ITERができつつあるとか,JT-60SAが動いたというのが見えると思いますけれども,シミュレーションってちょっと見落としがちなところがありますが,同じぐらい重要であるということを申し上げて,ここでは順調とは書いていますが,日本は,特にダイバータや,その辺は非常に人材が不足していて,ぎりぎり加速が必要と書きたかった感じの状態にあるということだけは申し上げておきたいと思います。もちろんこれから加速すれば間に合うということではありますが,計算機リソースだけではなく,人材のところで加速が要ると考えています。それだけコメントさせてください。
次が炉心プラズマでございます。CR1までに完了すべきアクションについては,おおむね順調であることを確認できました。特にJT-60SA研究計画やJT-60SAファーストプラズマのアクションは極めて順調に進んでおります。粒子制御技術については,CR1後も高度化に向けた取組が必要です。また,モデリング/シミュレーション研究には計算機資源の継続的な確保も必要であると思います。計算資源だけではなくて,もちろん使う人も必要なわけですけれども,同じことを繰り返していますけれども,この辺,非常に大事になってきます。
各項目のCR1までの進捗度については,ほとんどが順調,又は極めて順調という状態にあり,CR1に向けては非常に心強い状態になっています。
次が燃料システムになります。7番ですね。CR1までに完了すべきアクションについては全て完了していることを確認できました。CR1後,新たな課題が顕在化した燃料循環システム要素技術の開発です。これは不純物除去であるとか,同位体分離などでございます。それから,規模拡大が必要なパイロットプラント規模でのリチウム確保技術の確立,それから,リチウム6濃縮技術基盤技術開発のアクションには今後の支援が必要だと考えています。
進捗度としては,CR1に向けては順調と判断していますが,ひとつ拡大していかなければいけない部分がありますので,CR1以後は大きな拡大が必要,加速が必要と考えています。
御覧のように,進捗度の意味では順調となっていますが,今後はいろいろなことをやっていかなければならないなという感じですね。
見ていくと,リチウム確保の方策の検討については極めて順調というふうになっていますね。この辺の材料,あるいはTをどう手に入れるかを,意外に忘れていて,核融合炉はできたけど動きませんでしたみたいなことにならないようにきちんとアクションプランはつくられていて,こういった評価も進めているわけです。
それでは,3ページほどめくっていただいて,課題名8,核融合炉材料と規格・基準(1)に入ります。ここは1,2,3と分かれていて,3つの課題がまとまっているようなところですけれども,材料関係を御説明いたします。
まず1番として,ブランケットの構造材料についてですね。1番については,チェックアンドレビュー1,CR1に向け,低放射化フェライト鋼に関しては,大量製造技術の確立や関連する要素技術開発など,極めて順調であると言えますが,コールド試験設備を用いた腐食実験データベースの拡充,照射効果に関するデータ取得や照射による劣化モデルや関連する規格基準の構築などについては,照射場の確保も含めて,CR1後に加速が必要な状況になっていると言えます。
2ページめくっていただくと,2番目の項目,その他材料というのが見えてまいりますが,これについて御説明いたします。先進ブランケット材料につきましては,利用方法やデータベースの構築について,NIFSや大学の協力を得つつ,検討が始まっています。CR1後はこの項目に加え,ダイバータ材料や計測・制御機能材料について,照射場を確保しつつ,照射効果関連の評価を行う必要があります。
簡単な略語で言ってしまいましたけれども,先進ブランケット材料というのは,すなわち低放射化フェライト鋼以外の構造材料という意味になります。
それから,もう一つめくりますと,3番目に入りまして,3番目になると,ここは,今,何度か照射場が必要ということを申し上げましたけれども,そのための核融合中性子源の話になります。核融合中性子源の概念設計については,極めて順調に進捗しており,CR1後に工学設計を加速するために大学や他機関との連携を深めることが必要である。また,核融合中性子源の価値を発信するということについてもCR1後に強化していく必要があると考えます。
御覧になりまして分かるように,材料も非常にスパンの長い開発なので,今度のチェックアンドレビューまでに終了していなければいけないという課題は非常にわずかで,それらはいずれも順調,多くが極めて順調となっています。
計測系の材料,2ページめくったところの規格・基準(2)のところの計測系のところとハンドブックのところに継続が必要という項目がございますが,これは非常に長くやっていかなければいけないものなので,現時点でもやっていますが,今後も継続的に開発する必要があるという意味でこういう書き方をさせていただきました。
非常にたくさんあるのをさっと行ってしまって恐縮ですが,それでは,次が安全性になります。9番ですね。安全に関する活動については,日欧協力も活用して,順調に進捗しております。安全性解析評価に関しても,特別チームにおいて基本的なコードの整備が行われています。特別チームにおいては,若手人材を確保し,技術伝承にも取り組んでいるという状態ですね。CR1後,将来の工学設計において無駄が出ないように安全規制についても早めにその考え方の検討を進めておく必要があるということを注意する必要があります。安全規制はまだできていないので,それがどうなっても大丈夫なように,あるいは考え方そのものを先行して考えておくという意味ですね。そうしないと無駄な開発になってしまうところはないかということを常に考えながら進める必要があるということを述べているわけです。
安全性は非常に重要なので,進捗は大事ですけれども,御覧のように全て順調に推移しております。
それから,次が10番の稼働率と保守になります。CR1に向けた2019年までの基本概念設計は,要求条件をおおむね満足していると判断しています。一方,2020年からの概念設計は,基本概念設計の中から摘出された技術課題,ダイバータやバックプレートの再利用改造,ホットセルの機器などに検討を加え,炉構造と遠隔保守機器の設計統合を2024年までに行う必要があり,チェックアンドレビュー1以後は加速が必要であると判断しています。
ここ,コメントしますと,バックプレートの再利用というのだけでは何かちょっと分からないかもしれませんが,ブランケット交換のときに,ブランケットをまるごと交換すると,後ろについているバックプレートと言われるものも一緒に取れてきますけれども,それ,非常にマスがあるもので,またあまり照射されていないですから,それはもう一遍使いましょうという,ロケットの再利用みたいなもので,そこは再度使いましょうということを今考えているということでございます。
CR1への進捗度については,達成すべきものは全て順調であると考えています。
実は稼働率というか,メンテナンス手法というのは,これが決まっていないと原型炉設計そのものが変わってしまうので,これは早めに進捗しているというのが結構重要でございます。運用を始めてから考えるというのではとても駄目だということからこうやって前倒して進めているわけです。
次が11番の計測・制御になります。本項目内のアクションは主に3つに分類できます。1番が制御パラメータに関する理論的な検討,2番が計測手法・装置の設計検討,3番がITER・JT-60SAを利用した理論・計測手法・ロジックの検証である。いずれのアクションについても,CR1までに完了すべき事項を順調に達成しています。しかしながら,CR2に向けて完了すべきアクションについては,検討項目が増えるとともに,詳細化されつつあるので,現在の体制では遅れが生じてしまうおそれがあるというのが判断です。また,照射試験のアクション完了には中性子源による照射が必要でありまして,何度か出てきたように,照射場の確保というものが非常に大事になります。材料開発だけではなくて,計測系も照射場で使うわけですから,そういったものが必要になってくるということでございます。
表におけるチェックアンドレビュー後の進捗は,御覧のように,順調であるべきもの,開発されているべきものは全て順調に進んでいます。
次が12番ですね。12番目は,これまでのいわゆるロードマップの類いにはなかった,2017年のアクションプランから登場した項目ですね。社会連携,非常に重視するという意味でこの項目があえてここに入っているわけですが,それについてですね。
アウトリーチヘッドクオーターというものがアクションプランに沿って設置されました。具体的にここにリストがありますように,社会連携活動に着手しており,順調に進んでおります。講演会であるとか,いろんな集まりであるとか,そういったものも進んでおりますし,アナウンスしていないかもしれませんが,アウトリーチ戦略に沿って新しい本を出しまして,1月12日に発売になりました。『核融合エネルギーのきほん』という本で,いっときアマゾンで売り切れまして,今,アマゾンでまた在庫が,結構売れています。是非皆さん,お手元になければ,今日持ってくるのを忘れましたけれども,是非手に入れて見ていただければなと思います。
実は,余りに売れまして,早くも第2刷の印刷に入っておりまして,核融合の本でこんな売れたことはかつてないかなと思うほどの勢いでございますので,早くお買い求めいただかないと第2版も売り切れるかもしれませんので,是非早めにお願いいたします。
これはアウトリーチのほんの1つの成果の例でございますが,それ以外にもいろんな方が取り組んでくれています。アウトリーチヘッドクオーターができる前と比べれば,それぞれ,日本の各地でばらばらに努力していたものが一致団結して調整できるようになったというのが非常に大きいと思います。
次が13番のヘリカルですね。ヘリカルが原型炉に貢献できる部分を取り上げて,その評価をしてもらっているわけですが,プラズマ実験,炉工学・炉設計,数値実験炉の各課題についておおむね順調に進展をしており,トーラス系に関する理解が進んでいます。今後は,LHDを用いたプラズマ実験の炉設計や数値実験炉への反映や連携強化により,信頼性の高い炉設計から精度の高いシミュレーションモデルの構築が求められていくと思います。
基本的には非常に順調に進捗していただいていると思います。
次がヘリカルと並んでもう一つの方式であるレーザー方式になります。14番,レーザー方式です。レーザー方式の原型炉の話じゃなくて,レーザー方式で行われた実験の中で原型炉開発に寄与いただける部分を課題として取り上げて,それが順調かどうかを確認しているものでございます。
パワーレーザー及びレーザー方式で培った技術を原型炉開発に活用する研究が着実に増加している点が評価できます。CR1に向けてはおおむね順調であります。原型炉開発共同研究の一環として,大学としては最大規模のT取扱い施設を利用した固体DT,重水素・Tの物性評価の研究が,計画より若干遅れたものの,開始されたということは注目に値すると思います。また,複数の研究成果が原型炉の開発や核融合エネルギーの開発を最終目的としていない研究のバイプロダクトであるということは特筆すべきだと思います。特筆するというのは2つ意味があって,そうやって別のところの研究を原型炉に適用してくれているという意味もありますし,原型炉のために何らかの研究を進めるためのそれなりの仕組みが必要かなという意味も含めての特筆でございます。
大変駆け足になりましたが,以上でございます。
【小川主査】 岡野委員,ありがとうございました。それでは,最初に私の方から,今岡野委員が説明していただきましたように,タスクフォースの方で策定しましたアクションプランの非常に細かいたくさんの項目に対して,このたびタスクフォースの方でその進捗状況及び進捗状況の評価をきれいにまとめていただきました。ものによっては課題達成のために必要な措置等に関してもまとめていただきまして,非常にボリュームある資料としてまとめていただきましたことに対しまして,岡野委員及びタスクフォースのメンバーの方々には感謝申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。
それでは,今の岡野委員の説明に対しまして,御質問等がありましたらお願いいたします。五十嵐委員,お願いします。
【五十嵐委員】 五十嵐です。今小川先生もおっしゃいましたけれども,大変膨大な資料をおまとめいただき,ありがとうございました。多様な項目について,皆さん,チェックしていただいて,大変な作業だったと思います。内容の方も,ほとんどが順調ということで,すばらしいなと思いました。
それで,質問は,岡野先生の御説明の中で,チェックアンドレビューの1回目までは順調だけど,その後加速が必要だという項目も多かったと思います。ここまでが順調ならば引き続き順調であってほしいと思うわけで,それに対する措置が書き込まれたものもありましたけど,そうではないものもあったので,連続していく上で,その準備というのは順調なのか,もちろんちゃんと進めていただいているということだと思いますが,その辺のつながりを大切にしていただけたらと思いました。
もう一つ,先ほどのITERやBAでも出ましたけれども,コロナの影響というのは国内のことにはあまり影響がなかったのか。あまり御説明の中ではそういったことがなかったようだったので,影響がなかったのなら,なかったということで,また今後に対する影響なども心配はないだろうかというところが気になりました。
それと,先ほどのITERのお話では,人の移動というのが一番キーになるようなお話もありましたが,一番心配なのはそこなのか,どうなのかということが気になりましたので,よろしくお願いします。
【岡野委員】 五十嵐委員,ありがとうございます。アクションプランは,チェックアンドレビュー1以降のアクションまで全部書いてあって,そういう準備が,後になって,あっ,しまったということにならないためにつくったものなので,必ずしも具体的な案が,準備がここに書かれていないものでも,必ずその次を準備して,心づもりで準備しているはずでございます。そこはアクションプランの役割なので,御安心いただければと思います。
それから,コロナの影響については,なかったはずはないとは思いますが,例えばJT-60SAは若干遅れたりしましたけれども,間もなく火もつこうとしていると聞いておりますし,何か非常にこれは遅れてしまったなという,チェックアンドレビューが遅らせなきゃみたいなものはなかったと私は感じています。
一番やっぱり厳しいのは,建設とか,そういったものだと思いますが,ITERも少し若干の遅れが出ていると聞いていますが,それはまだ分かりませんけれども,JT-60SAに関してはほぼ順調に動いたので。理論とか,そういったものに関しては,研究所は意外とちゃんと人が入って研究しているようですから,そんなには遅れていないというふうに私は感じています。もちろん現地は苦労していると思いますけれども,遅れないように最大限努力してくれているのではないかなというのが私の感じです。
【小川主査】 ありがとうございます。コロナの影響に関しましては,現場の声をお伺いしたいなと思いますので,現場の栗原委員,それから,竹入委員,それから,大学関係で大野委員,その3人にコロナの影響に関してこの1年間どうだったのか,研究所及び教育上どうだったのか,現場の声を聞かせていただけないでしょうか。
【栗原委員】 今小川主査おっしゃった順番ですと最初の量研の栗原でございます。まずITER関係でございますけれども,先ほど岩渕戦略官の方からもお話がありましたように,ヨーロッパで製作している機器につきましては,若干の遅れが出ている。それから,サイトもフランスで,そのフランスは一時期ロックアウト状態に置かれたわけですけれども,サイトそのものへの影響は,若干人数は減ってはいたものの,建設活動は継続したということで,最小限に食い止められていたというふうに我々認識しておりますが,ただし,計画の進捗率につきましては影響が出ているというところで,その影響の評価につきましては,これからITER機構の中で確認して,次回のITER理事会等で議論されるということになろうかと思っております。
それから,JT-60SAにつきましても,やはり国内的な人のやりくりに影響が出ました。移動が絡んだ面もございまして,コロナの発生している場所からの作業者の確保というのはできなくなりましたので,その代わりにコロナが発生していないところの作業者を入れることによりまして,影響は最小限に食い止めたというのが実情で,後ほどそこをJT-60SAの進捗状況報告の中で触れさせていただきます。
また,コロナによっていわゆるオンライン会議というのが活発になったおかげで,その効用というのがあって,特に産業界の方や大学関係のお忙しい参加予定者が出張することなく参加できるというように,大勢の参加者がいろんな会議で見られたという,そういったプラスの面もあったということも申し添えたいと思います。
以上でございます。
【小川主査】 ありがとうございます。竹入委員,よろしいでしょうか。
【竹入委員】 核融合研の竹入です。核融合研は大学共同利用機関ということで,全国の大学の先生方が本当は核融合研まで実際に来ていただいて,共同研究を推進することで研究が進展しますけれども,さすがにこのコロナの状況で,大学の先生,研究所まで来ていただくことがほとんどかないませんでした。その代わり,今栗原さんからもありましたように,オンラインによる会議,オンラインによる打合せ,それから,研究会等もオンラインで開催するということで,年度前半の方はある意味順調にやってきまた。そして,実際に大型ヘリカル装置の実験,10月から開始しましたけれども,その時点までに遠隔実験のシステムを大分整えまして,10月以降のLHDの実験では遠隔実験で国内はもとより国際的な共同研究もかなり順調に進展してきています。
そういう意味では,対面で本当は実験したいところですけれども,逆に遠隔実験システムが進展して,実験もかなり順調に進んでいっているようなところです。
LHDの年度前半,4月,5月,6月の頃はメンテナンス作業がありましたけれども,これは感染拡大の措置を徹底して,メーカーの協力も得まして,何とかメンテナンスに関しましても遅れを最小限にとどめて,ほぼ1週間遅れでLHDの実験を10月に開始して,実験の終盤に入ってきているところです。
工学関係に関しましても,大型工学実験施設,核融合研に来た大学の先生と共同研究を行っているわけですけれども,さすがにこれは規模からしてLHDほど遠隔実験の準備に時間をかけていませんけれども,これも何とか遠隔実験ができるような形に少しずつ進めていますので,工学関係の共同研究も,少し遅れは出ていますけれども,進んできているというのが実情です。
以上です。
【小川主査】 ありがとうございました。最後に,大学関係ということで,大野委員。
【大野委員】 ありがとうございます。まず実験とシミュレーションに分けてお話ししますが,実験に関して,大学院生が大学に出てこられないという状況が結構長く続きまして,やはり大学における戦力は大学院生ですので,そういう意味ではやっぱり実験が少し遅れ気味ということはありました。特に共同研究で他大学の方が来ていただいて一緒に実験をやるということが今回全くできなかったので,その点は少し課題を残しております。
ただ一方,シミュレーションに関する共同研究は物凄く進みまして,信州大学とうちと核融合研の方で,一応コードの開発ということでいろいろやっていましたが,今までは3か月に1回ぐらい,会合をやっていましたけど,今,週1で学生さんも含めてゼミ形式で皆さんと議論しながらやっていくという意味で,それを5月ぐらいからやっていまして,そのために非常にそこのところは進んで,ある意味誇れるような内容のものができておりますので,そういう意味で,こういう環境でもやれることはすごく進むところもあるなということでやれるなというふうに思っております。
以上でございます。
【小川主査】 ありがとうございました。ちょっと脱線しましたけれども,そのような状況だと思います。ありがとうございました。
それでは,それ以外の項目に関しまして,ほかの方から御質問等ありましたらお願いします。植竹委員,お願いします。
【植竹委員】 ありがとうございます。このペーパーの2ページの上段になるかと思いますけれども,3. の最終段落でしょうかね。チェックアンドレビュー1の後は原型炉の建設という大事業に向けてというところですけれども,ここ,下線が引いてあるということで,先生の強調ポイントだというふうに理解をしております。特に原型炉建設を担い得るように開発体制を発展させることが重要という御指摘の部分ですけれども,原型炉の場合,建設して終わりではなくて,その後運営するということが出てきますから,ここのところは原子炉の建設と運営の両方かなと思った次第です。開発の体制ですけれども,もんじゅの反省も生かしてということになろうと思いますので,そこが重要になってくるのかなと思います。というのは,この後で議論することになっているチェックアンドレビューの項目ですね。特にチェックアンドレビュー2で出てくるような項目の達成度とか達成の仕方,若しくはその判断の仕方に建設の運営がどういう体制で行われるかということが影響してくると思いますので,非常に重要なコメントかなと思って見ました。質問ではなくてコメントということで,ありがとうございます。
【小川主査】 ありがとうございます。岡野委員,何かコメントありますか。
【岡野委員】 コメントいただきありがとうございました。原型炉の建設までしか見えていなかったところを,その次の運用も考えなさいという御指摘,全くそのとおりだと思います。是非そういうふうに付け加えさせていただきたいと思います。アクションプランそのものが運用まで含めておりますので,書くべきだったと思います。原型炉の建設と運用というふうに書かせていただきたいと思います。
もちろんチェックアンドレビュー2にはある程度の体制が動くと。一気にはいかないと思いますが,ある程度の体制が動きつつあるというのも当然ながら評価項目に入ってくるのかなと考えていますので,いろいろ今後とも御指導いただければ有り難いと思います。よろしくお願いいたします。
【小川主査】 ありがとうございます。非常に重要な御指摘で,実は次の議題,チェックアンドレビューに向けて,第11期に向けてのところでも,チェックアンドレビュー1後,何を検討しなくてはいけないのかというところの非常に大きな1つのイシューが原型炉に対する開発体制の構築という項目でもあります。この点が重要であるという意味で,まずここのアクションプランの方では岡野委員の方でアンダーラインをつけて指摘されたと思います。非常に重要な御指摘ありがとうございました。
続きまして,大野委員,お願いします。
【大野委員】 簡単な質問ですけれども,岡野先生にお伺いしたいのですが,この期限というものがございますよね。19とか30とか書いてあります。まずこれがどういうことで決まっているかということと,多分今回,順調と書いてあるのは,その期限が来ているものに対して順調というふうに書いてあると思いますけれども,それで,27ページの中性子源のところは,期限が30ですけど,進捗度は極めて順調というふうに書いてあります。
【岡野委員】 これは間違いですね。
【大野委員】 間違いですか。分かりました。
【岡野委員】 余りに順調なので書きたかったというのがあって,でもフォーマットに沿えば,これは要らないです。ただ,コメントとしては,少なくとも準備は順調ですね。
【大野委員】 順調ということですね。はい,分かりました。そこを変えていただければと思います。ありがとうございます。
【小川主査】 ありがとうございます。多分議論の中では,今回チェックの必要がなかったのかもしれませんが,さっきの加速が必要というようなニュアンスのものも幾つかあると思います。その辺は現場サイドでまた11期に向けて引き継いでいただければと思いますけど。
【岡野委員】 よろしいですか。この核融合中性子源は建設という大項目1個になっているので,こんなことになっていますけど,本来なら,設計とか,準備とか,細かくあった方がよかったでしょうけれども,アクションプランをつくった時期のこともあって,中性子源についてはこの1項目だけという状態になっていますので,今後のチェックアンドレビュー1の後では項目の構成を見直すことがあり得ると思うので,項目を増やしていくということはあってもいいと思います。
【小川主査】 そう思います。ありがとうございます。ほかにどなたかいらっしゃるでしょうか。
【岸本委員】 京大の岸本です。岡野先生には膨大な取りまとめを頂き,ありがとうございました。課題5の理論・シミュレーションに関してですが,理論・シミュレーションは,実験と抱き合わせで評価することが重要というのは御指摘のとおりと思います。関連したことで1点,既に記載されているかもしれませんが,そのときは御了承ください。様々なシミュレーションコードを計画的に開発,整備していくことが重要な鍵になりますが,それに加えて,シミュレーションコードは第一原理に基づくものが多かったり,扱う時空間スケールが広範囲であったりするわけですが,そのためスーパーコンピューター等のリソースを原型炉研究に向けていかに確保するかが重要であり,その観点がシミュレーションには特に必要ではないかと思った次第です。もしも記載されていれば問題ありませんし,よろしければコメントをいただければと思います。
【岡野委員】 理論シミュレーションのところの各項目にはほとんど軒並み元は書いてありました。項目ごとに全部書いたらかえって読まないでしょうということを考えて,別のところで1か所で書いております。必ず書いてございます。リソースは重要というのはもちろん書いております。
私がそれに追加して,計算機があればできるのねと思われたらいけないので,人材も必要ですよというのを先ほどコメントで,人材が必要というのもほとんど全部の項目に書きたくなってしまいますが,それをここは削除したので,あえて言わせていただいた次第でございます。リソースと人材が必要ということは書いています。
【岸本委員】 はい,分かりました。
【小川主査】 炉心プラズマ統合シミュレーションコードのところの一番右側のカラムのところですかね。一番右側のカラムのところに利用可能な計算機資源の継続的確保も必要であると,この辺ですかね。
【岸本委員】 はい,分かりました。スーパーコンピューターは,核融合研に高性能なものが入っていますが,JT-60SA等の実験装置を持つのと同じ程度に,専用の計算機が必要ではないかなと思った次第です。
【小川主査】 そのとおりだと思います。
【岡野委員】 おっしゃるとおりだと思います。
【小川主査】 ありがとうございました。ほかにどなたかいらっしゃるでしょうか。
よろしいでしょうか。今の岡野先生を中心としてタスクフォースの方でまとめていただいた資料はこの後のチェックアンドレビューに向けての基礎資料となります。なおこの後,チェックアンドレビューに対しての議論をしますので,そのとき,皆様から,全員から2分程度コメントいただきます。従って,そのときも含めてこれを活用していただければと思いますので,まずはこの資料に関しましての議論はここで終わらせていただき,次の議題に移りたいと思います。よろしいでしょうか。
ありがとうございます。それでは,議題3の第1回中間チェックアンドレビューについて(第11期への期待)に入ります。第1回チェックアンドレビューについて,岩渕戦略官から御説明をお願いいたします。
なお,本日が第10期の最後でありますので,岩渕戦略官からの御説明後に第1回中間チェックアンドレビューに関する御意見や第11期への期待等について委員の皆様お一人一人から御発言いただきたいと思いますので,よろしくお願いします。
では,岩渕戦略官,よろしくお願いいたします。
【岩渕戦略官】 資料3を御説明いたします。「第1回中間チェックアンドレビューについて」です。
1. 趣旨ですが,原型炉段階に移行するためには,技術的な成熟が不可欠であるということで,技術的な成熟度を判断するため,核融合科学技術委員会は,平成29年に「核融合原型炉研究開発推進に向けて」を作成しました。その中で,第1回中間チェックアンドレビューをJT-60SAの運転が開始される2020年頃,実際の運転開始は今年の前半が見込まれますので,2021年になるわけです。そして,第2回のチェックアンドレビューを2025年から数年以内,これはITERのファーストプラズマを意識したスケジュールです,に行うこととされました。
チェックアンドレビューの実施においては,その前段階として,原型炉タスクフォースが策定したアクションプランが着実に実施される必要があるということで,先ほど岡野委員から御報告がありましたが,タスクフォースで行ったアクションプランの進捗状況調査を踏まえ,核融合科学技術委員会は技術的成熟度を判断するということがこれまで定められてきたところです。
2. 検討スケジュールということで,今期第10期の核融合科学技術委員会及びタスクフォースにおいて,令和元年度,令和2年度と,アクションプランの進捗状況確認をして,進捗評価の取りまとめを行ってきたところです。
実際の第1回チェックアンドレビューにつきましては,第11期,次の期の核融合科学技術委員会において,本年度に行うという予定をしているところです。
3番のチェックアンドレビューの項目,達成目標については,この資料の最後のページにもついておりますが,「核融合原型炉研究開発の推進に向けて」という,この委員会が決定いただいた文章の中にチェックアンドレビューの項目ということが書かれています。項目及び第1回中間チェックアンドレビューまでの達成目標としてそこで記載されたものを基準に行っていくということです。次のページに別紙1ということで,チェックアンドレビューに関するこれまでの記述について抜粋させていただきました。別紙1,チェックアンドレビューに関する記述です。
これは改めて復習いたしますと,6. 原型炉段階への移行に向けての考え方ということで,以下に示すような技術的成熟度を判断するため,核融合科学技術委員会による中間チェックアンドレビューを行うこと、中間チェックアンドレビューには柔軟性を持たせ,将来の不確定性にも対応できるようにするという位置づけが書かれております。
そして,6.1のところでは,研究開発の時系列展開の指針として,進捗状況を確認するチェックアンドレビューを実施するという位置づけが書かれており,第1回の中間チェックアンドレビューについて,原型炉設計合同特別チームによる概念設計の基本設計が終了し,JT-60SAの運転が開始される2020年頃,これは2021年ということになるわけですが,に実施することが書かれている。
また,中間チェックアンドレビューから移行判断までを準備期間として,相当規模の工学開発活動への着手を促進すべきであるといったことが書かれていました。
最後に6.2のところで,中間チェックアンドレビューの項目と時期は,コミュニティ内外の議論の下,ITER計画の進捗状況やBA活動の成果を踏まえて合理的かつ効率的に対応が取れるよう,随時タスクフォースで見直していくと定められています。
この資料の最後のページに,別紙2ということで,先ほど申し上げましたチェックアンドレビュー項目案として,平成29年のこの委員会において定めた項目,達成目標が書かれています。これを基に第1回の中間チェックアンドレビューを行っていくと理解しているところです。
以上,資料3の御説明でした。
【小川主査】 ありがとうございました。今御説明ありましたように,別紙1を見ていただいて,別紙1の2枚目の中頃に書いてありますように,第1回中間チェックアンドレビューは,原型炉設計合同特別チームによる概念設計の基本設計が終了し,JT-60SAの運転が開始される2020年頃に実施というのが,先ほど言いましたように,必要条件です。これに対して、先ほど概念設計の基本設計が完了したという点を,アクションプランの方で確認していただきましたし,JT-60SAの建設が完了し実験が近々開始されると期待されますので,正に第1回チェックアンドレビューを実施する機運になったということだと思います。それを第11期にお願いするあたり、その基礎資料として,アクションプランのフォローアップを先ほど岡野委員の方でまとめて頂きました。つきましては、皆様の方からも,第10期の委員会で議論してきたことを踏まえ,第1回チェックアンドレビューに向けてのコメントを聞かせていただきたいと思います。
ということで,ただいまの御説明を踏まえまして,第1回のチェックアンドレビューに関する御意見や第11期への期待等について,委員の皆様お一人お一人から御発言いただきたいと思います。いつもあいうえお順になって申し訳ないですけれども,参考資料の名簿順で進めさせていただきたいと思います。お一人2分程度でお願いできればと思います。では,最初に五十嵐委員からよろしいでしょうか。お願いいたします。
【五十嵐委員】 五十嵐です。あいうえお順ということになるといつも先になってしまって,失礼いたします。
核融合科学技術委員会,私,長く関わらせていただいて,チェックアンドレビューなんていうのは,2020年頃,まだまだ先のように思っていましたけれども,そこまで来たという思いがしています。それは,これまで委員会の先生方や現場の研究者の皆様方や,タスクフォースの先生方が一つ一つ積み上げてこられた結果だと思いまして,本当に敬意を表したいと思います。
私自身は,もともとというか,大学では天文学を専攻しておりまして,恒星を専門にしていたので,そういう意味では核融合とは実は関係があったのかなと思いますが,実際の核融合研究となると全く私は素人ですので,この委員会に参加させていただくのも,そういった立場からの発言となってきたかと思います。いろいろと理解不足のところもあったと思いますが,そういうのもいつも丁寧に教えていただいて,参加させていただいてきました。
その中で,やっぱり私は,自分の立場としては,専門的な意見は言えないけれども,どうしても核融合ってすごく専門的で難しいお話なので,どんどん専門の奥深く入っていってしまうところを,国民の方々と言うと大げさですけど,国民にも分かりやすく発言,情報発信していただきたいという立場だったと思います。従来から核融合の分野では,非常にしっかりと広報をやっていらっしゃいましたけれども,今回のチェックアンドレビューにも7番目の柱として社会連携というのが大きな柱として入っていて,また,先ほど本の御紹介もありましたが,様々な形でヘッドクオーターが機能されているということもすごくすばらしいと思います。
今後も私のこうした立場からいろいろとさらに,本当にこれからが本番だと思いますので,これからも注視し,応援させていただきたいと思っています。ありがとうございます。
【小川主査】 ありがとうございました。五十嵐委員,今後ともよろしくお願いいたします。ありがとうございました。続きまして,植竹委員,お願いします。
【植竹委員】 日本原子力産業協会の植竹でございます。1つ質問と1つコメントをさせていただきたいと思います。まず質問ですけれども,資料3の立てつけですけれども,最初のページにあるとおり,技術的成熟性と核融合に対する国民の信頼の醸成,これが不可欠とまず書いてあって,そのうちの1つである前者の技術的成熟度を今回チェックアンドレビューの対象になっております。ここのもう一つ,後段にある国民の信頼の醸成というのはまた別のところで議論するという,これ,枝分かれしていると思いますけれども,一方で,別紙2にある,原型炉の設計マル6の,右端のカラムのところに,原型炉段階への移行判断の要件として社会受容性と実用化段階における経済性の見通しを得てという条件がついております。これは先ほど冒頭申し上げた国民の信頼の醸成という中身は何かと考えると,やっぱり社会的受容性と実用化段階での経済性の見通しというふうに分解されると思いますけれども,要は,循環参照しているといいますか,この2つ目の,国民の信頼の醸成についてもチェックアンドレビューの対象としているのか否か,これまずお聞きしたいと思います。
【岩渕戦略官】 確かに平成29年の「核融合原型炉の研究開発推進に向けて」を見ると,微妙な書き方になっています。技術的成熟度について評価するということで,それのみを評価するようにも見えるわけですが,一方で,別紙2で今回つけさせていただいたチェックアンドレビューの項目の案を見ますと,先ほど五十嵐委員が御指摘のとおり,7番目の項目として社会連携というところが入っている。ここは今の植竹委員の御指摘にある国民の信頼への醸成に関わる項目でもあり,実際,このチェックアンドレビューの項目を見ると,技術的成熟と国民信頼醸成,両方が入っているというふうに読めます。今頂いた御指摘,非常に大事な点だと思いますので,第11期において中間チェックアンドレビューをする際に,これをどう捉えるのか,整理させていただきたいと思います。
【植竹委員】 ありがとうございます。是非よろしくお願いします。もう一つはコメントですけれども,先ほど岡野先生から御指摘のあった2ページ目のところに,産業界とのさらなる協調に関する議論を深めると。産業界とのコミュニケーションについて言及があります。この産業界という言葉,核融合のコミュニティの中でもよく使われますけれども,原子力産業協会の役員としては,ちょっと説明というか,コメントさせていただきます。
産業界と言った場合,一体何かということですけれども,現在存在している核融合コミュニティ,産官学の核融合コミュニティというのは,税金を当てにしたコミュニティといいますか,言い方が悪いかもしれませんけれども,原資は国民の税金だと思います。
したがって,国民の信頼の醸成というところに先ほどの課題が出てくると思いますけれども,これはいずれ核融合発電が実用化された暁には,電気料金を原資とする核融合産業界に脱皮していくだろうと思いますけれども,それは一足飛びにはいきませんでして,今の税金を原資とする産業界という意味でいうと,直接の顧客はやはり行政といいますか,政府になってきます。したがって,今,産業界の意見を聞くということになると,行政,政府の意向が背景にある意見ということに当然なると思います。
一方で,先ほど申し上げた実用化した暁の産業界というのは,当然直接的なユーザーは電力会社でありまして,発電炉のユーザーということになりますので,その先には電気の需要者,お客様がいてということになって,当然産業界の意見もそのときには変わってくると思います。
ということでございまして,核融合産業界が育っていった暁にはそういうことになると思いますけれども,今ある原子力産業界というのは,海外の商業炉の技術を直接導入して,国の政策を背景に国産化をして,政府がクローズドサイクルの核燃料サイクル政策をつくって,さらにコストの回収の仕組みというのも経産省がつくって,総括原価で回収されてきたというような,産業政策を背景に成立してきたということがあります。したがって核融合の産業政策がどうなっていくのかが重要であります。そこからバックキャストして,先ほどちょっと議論した原型炉の開発体制はいかにあるべきという議論になっていくだろうと個人的には思っております。
以上です。
【小川主査】 ありがとうございました。原資が税金であるか,電気代であるかという,非常に分かりやすい御説明で,なるほどと思いました。ありがとうございました。それから,前半の部分,非常に重要な御指摘ありがとうございました。技術成熟度と国民の信頼の醸成,これ,2つ不可避であると言いながら,おっしゃるように,文章的にはインクルードされているので,その辺の仕分というか,位置づけというのをはっきりさせて議論する必要があると思います。両方とも重要だと思いますので,是非とも,先ほど戦略官が申しましたように,11期のときにはその部分を確認して,議論をスタートさせていただければと思っております。ありがとうございました。
よろしいでしょうか。それでは,上田委員,よろしくお願いいたします。
【上田委員】 まずチェックアンドレビューにつきましては,今御説明のあった別紙2のところの第1中間チェックアンドレビューまでの達成目標については,これはある意味アクションプラン,あるいは達成目標を検討していった時点で,もう既に人的リソース,あるいは,装置,その他のリソースが既に十分確保できているということが見込まれている状況でもございましたし,研究開発が十分進んでいるということを前提としての達成目標ということであると私は理解しておりますので,中間チェックアンドレビュー第1回につきましては,ほぼ目標を達成したということで,ここまでは順調ということで,基本的にはいいと思いますけれども,問題は,その先の第2回の中間チェックアンドレビューです。ここの項目をいろいろ再度チェックさせていただきましたが,ここを達成するためには,今回,岡野先生,あるいは関係の方々がまとめていただきましたアクションプランの現状報告からいたしまして,いろいろな課題があると思います。特に加速をしなければいけない項目もあると思います。そのために何をしなければいけないか,どういうリソースが必要か,いろいろな課題というものがあります。そういうところを第1回チェックアンドレビューで,取りあえずそこまで順調だよということはある程度書けるとしても,その先を見据えてどういう課題が必要か,どういう施策が必要か,そういうことをしっかり書き込んで,今後の展開のために我々が注力できるような,そういう必要な情報が書き込まれているようなチェックアンドレビューの報告書といいますか,そういうまとめというのにしていく必要があるのかなと思いました。
また,第11期に向けては,BAもフェーズ2に入りましたし,ITERの建設も進んで,ITERの運転も大分視野に入ってきているという状況の中で,こういうプロジェクトをできる限り推進するためにしっかり仕事をしていければなと思っております。
すいません,以上でございます。
【小川主査】 ありがとうございました。御指摘のように,第2回のチェックアンドレビューに向けての展開が非常に重要だと思いますので,よろしくお願いします。
続きまして,大野委員,お願いいたします。
【大野委員】 まず,非常に多数のヒアリングをやっていただきまして,取りまとめていただきまして,本当にありがとうございました。このアクションプランのおかげで,核融合研究は総合工学なので,自分が何をやっているかというのがなかなか分かりにくいところがあって,そういう意味では,学生さんも含めて,どういう課題があるかということが明確になったという意味で,非常に分かりやすくて,進捗状況も明確になっておりますので,大変有用な資料だと思います。
ダイバータに関してちょっとだけコメントさせていただきたいのですが,12ページのところにデタッチメントに関する実時間制御法の開発というのがございまして,そこもいろんな課題が挙げてありますが,先ほど岡野先生が言われましたように,設計のためには予測性能を持つシミュレーションコードの開発というのが非常に重要で,物理理解ではなくて,予測性能を持つというのか重要だと思います。
そのために今コードが開発されておりますけれども,それをベンチマークするというのが重要で,もちろんコード間比較というのが1つあるのですが,その下の13ページのところにありますJT-60SAでの手法の実証というのがやっぱり極めて重要なテーマになって,そこでコードの有用性みたいなのをきちっと確認して,具体的な設計ということなので,そこの今開始に向けて準備中というふうになっているところが具体的に記述されていくといいのかなというのがまず思った次第です。
あと,16ページに,今度は理論の立場からの,ダイバータのシミュレーションコードに関する記述があって,これ,19年度までのものは非常に頑張ってやっていただいて,このとおりだと思いますし,ここもやっぱり何が不足しているかというと,まずハードの面もありますけれども,やっぱり人材が重要で,このコードを日本で携われる人が何人いるかと思うと,すごい少ないですね。そういう意味で,継続的にコードを開発してベンチマークしていくということであれば,やっぱりそこのところを,先ほど岡野さんが言われた人材のところをやっていく必要があると。最後は人が重要だと思いますので,その点ができるといいかなと思っております。
以上でございます。
【小川主査】 ありがとうございました。それでは,岡野委員,お願いします。
【岡野委員】 それでは,岡野からお話しします。私がアクションプランを褒めてもけなしてもどうかと思うので,全然違うことを申し上げます。
今から約50年前,1969年ですね,その後の日本のエネルギー戦略に大きな影響を及ぼす出来事がありました。それは液化天然ガスの輸入とそれを使った天然ガス火力発電の開始です。輸入されたのは東京ガスさん,発電したのは東京電力さんですね。さすがですよね。原産地に液化基地を作って専用タンカーで運ぶというのは,もちろんインフラも大変ですけれども,加えて,かなりのエネルギーを消費してしまって,当時は決して高効率な発電になるようには思えなかったはずですね。実際に疑問の声も多くあったと聞いていますが,資源のない日本には新しいエネルギーが必要との信念から実施されたと聞きました。
それから40年後の東日本大震災による一時的な電力不足を救ったのは天然ガスでしたし,太陽光や風力をたくさん導入するための電力の需給調整でも,将来はバッテリーや水素製造で安定化するにしても,今現在は出力がフレキシブルな天然ガス火力がこの需給調整にはなくてはならない存在になっていますよね。現在のような高効率な火力発電になるというのは全く見えなかった50年前に日本の将来のためと考えて天然ガス火力を導入した方々を,実は私,昔から非常に尊敬しています。当時効率が悪くて使えませんよと言った人はいっぱいいたと思いますし,その頃,私がいれば,きっと私だってそう言ったと思いますが,それは全く間違っていたわけですね。
核融合は今,50年前の天然ガス火力の導入のような重大な決断を迫られる時期だと思います。研究費が増えそうとか,逆に負担が増えそうだとかの目先のことにとらわれるのではなくて,30年あるいは50年先の将来に,あのとき,あの状況でよくぞ決断してくれたと言ってもらえるような判断を次の委員会には期待したいと思っています。
以上です。よろしくお願いいたします。
【小川主査】 ありがとうございました。熱い思いを語っていただきました。ありがとうございました。尾崎委員は本日御欠席ですので,続きまして,岸本委員,お願いします。
【岸本委員】 京都大学の岸本です。最初に,アクションプランを取りまとめていただきましたこと,岡野先生を始め,本当にありがとうございました。個々の研究者は限られた領域で研究しているので,それから離れたところはイメージするのは容易ではありません。その中にあって,核融合の個々の課題を整理いただいたことは,広い海の中で灯台の光を見るような道標の役割を果たすことになります。
それから,対社会連携が極めて重要で,国民の理解を得ながら進めることを基本に,御努力を頂いているところです。
加えて,人材育成についてです。私自身は大学で活動を行っていますが,今後の核融合プラズマ研究が大学でどのように展開するのかが重要な視点になります。そ大学では限られた予算の中で様々な分野が競っています。
核融合研究は1960年代から始まり,60年が経過し,一時は,エネルギー問題はさして重要ではないと言われた時代もありましたが, 10年,20年単位で考えると,様々な新しい事象が出てきて,核融合エネルギーの重要性も認識されている状況になってきています。
大学で学部学生を相手に核融合の講義をしますと,核融合エネルギーに対して非常に強い期待を寄せているというのが実情です。このような状況を, ITERが立ち上がり,JT-60SAが立ち上がり,原型炉が今回このような形で計画的に進められるという状況を,うまくシンクロさせて,大学の研究がいかにあるべきか,ということを,このレビューを読み直して,考えたいと思います。今後ともその視点で御議論いただければ有り難く思う次第です。どうもありがとうございました。
【小川主査】 ありがとうございました。大学は研究,教育の両方の面が非常に重要ですので,よろしくお願いいたします。
続きまして,栗原委員からお願いいたします。
【栗原委員】 ありがとうございます。量研の栗原でございます。アクションプランのフォローアップの資料作成,大変ありがとうございました。10期から11期への移行ということで,正にチェックアンドレビューの第1回に向けていよいよ進み始めるという,そういった道をつけたという段階だと思いますので,大変意義深いと私は思います。本当にそういった意味では非常に過渡的でありますけれども,非常に重要な時期だと認識しておるところでございます。
この時期に,先生方がおっしゃっているのとかぶる部分はありますが,3つ大きな点があろうかと思っております。1つは,フォローアップの中にもありましたように,技術的な部分で加速すべき部分等もやはりまだあると認識しているところですので,我々,プロジェクトの推進ということで,目先の課題に振り回される部分も多々ありますが,一方で,やはり研究テーマをしっかり設定して,それを解決していくという努力が必要だなと思ったとこところです。
2番目の課題,これは人材育成も含めての意味ですけれども,社会との連携,原型炉に向かってかじが切られるということを思いますと,長い目で見たときに,社会との連携というのは非常に重要であると思います。
また,そこに向けてオールジャパン体制ということをよく言うわけですが,オールジャパン体制にするためにも,どういった体制で核融合の推進をするのかというところはこれからも議論の中心部分になるかと思いますので,そこでは,産業界,大学等を含めた,研究機関を含めた,そしてもちろん政府といったところも含めた,文科省も含めたいわゆるオールジャパン体制をどうやって構築して,きちっとそれが回っていくかというところが重要なポイントだと思っております。技術,社会,そして体制といったところで,これからも微力ながら,我々,やらせていただけたらと思っております。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
以上でございます。
【小川主査】 的確にまとめていただき,ありがとうございました。続きまして,小磯委員,お願いいたします。
【小磯委員】 高エネルギー加速器研究機構の小磯です。私は加速器の中の荷電粒子,これを研究テーマにしておりまして,そういう意味では,プラズマの中の粒子というのは近いものがあるのかもしれませんが,核融合は専門外で,いろいろ勉強しなければいけないことが多い分野でございます。
その中で,今回まとめていただきましたアクションプランのフォローアップ,これをじっくりと見せていただきますと,いかに多くのチャレンジングな課題を推進しておられるのか改めて実感したところでございます。面白そうだと思うのはありますが,科学的・技術的な理解は全く及ばないので,感想のようなものになってしまいますけれども,このように多岐にわたる研究開発を現実の様々な状況の変化に対応しながら整合性を持って展開しておられるところを非常に印象深く思いました。
そういう展開ができるということは,このような大きなプロジェクトで研究をどういうふうに進めていくか方針を決定するに当たって,十分なコミュニティの中での議論ができているだろう,コミュニティの中で公平で透明性のある議論ができる環境を維持されているであろうと思いますから,是非,若い人,あるいは専門外の方がどんどん参入しやすい,そこで意見を言いやすい状況をこれからも維持していっていただきたいと思います。
あともう一つ,社会との連携ということで,今回,平成29年の12月に策定された「核融合原型炉研究開発の推進に向けて」という文章,実は初めて読ませていただいたのですが,そこで核融合の原型炉を建設するに当たっては,安全性に対して社会からの信頼を得ることが非常に重要で,もし信頼が得られないようであれば,原型炉を立地する場所は日本にないと,非常にはっきりとしたことを言っておられます。社会に対してきちんと説明をして理解していただくことが重要だという点に関して非常に意識的に取り組んでおられると。このことも大変インプレッシブでした。
以上でございます。
【小川主査】 ありがとうございました。同じ科学技術分野として,連携も重要だと思いますので,小磯委員,今後もよろしくお願いいたします。
それでは,続きまして,兒玉委員からお願いします。
【兒玉委員】 大阪大学のレーザー研の兒玉です。まずは,岡野先生,ほか皆さん,まとめられたアクションプランのフォローアップですか,大変すばらしいものをまとめていただき,本当にありがとうございます。一番実は感動させていただいたのは,しっかりと課題が明記されている。よくチェックアンドレビューであるのは,順調です,順調です。それはそれでいいですけれども,やはり一番重要なのは,何が課題かということを,2025年を見据えていろんなことを書かれている。これが一番重要だと思います。
その上で,第1回のチェックアンドレビューというのは,恐らく2025年のチェックアンドレビューと本質的に違うところがあるかと思います。それは,今回,やはりどれだけ課題,問題点,いろんなものを書き出すかということがプロジェクトを最終的に成功させるかどうかだと思います。なかなか日本の中では文化的にはなじまないところもありますけれども,というのが,ちょっと例を言いますと,手前みそで申し訳ないですけれども,レーザー研を4年ぐらい前から見させていただいたときに,まずプロジェクトのチェックアンドレビューをやるということで,核融合のプロジェクトに全部駄目出しをさせました。いいことはもう言うなと。悪かったこと,駄目だったこと,全てそれだけを出せと言ったら,皆さんから反発を食いまして,そんなのやってられないと。小さな組織なので,それでも無理やりやったら,最終的には物すごくよくて,皆さんも理解してくれて,本当にどこを攻めたらいいのか,どこを改善したらいいか,恐らくPDCAサイクルをやる上で一番重要なのはやはり改善のところ,チェックの次だと思います。そこに向けて明確な答えが出てくるので,恐らく第1回のチェックアンドレビューは正にそこなんじゃないかなと私は思うので,なかなか日本では難しいですけれども,どれだけ課題を出せるかということを是非次期の第1回チェックアンドレビューでできたらすばらしいなと思っている次第です。
以上です。
【小川主査】 ありがとうございました。面白い視点で御指摘いただき,ありがとうございます。そのとおりだと私も思いました。
続きまして,高梨委員,お願いいたします。
【高梨委員】 私の方からは,まずアクションプランをまとめてくださいました岡野先生を始め皆さんにお礼を申し上げます。本当にすばらしいまとめになっていると思います。非常に網羅的でありますし,先ほど御指摘たくさんされていたと思いますけれども,ちゃんと課題も明確になっているという点でも非常に評価されるものだと思います。
一言ということなので,私自身も,6年くらいですか,たっている中で,このような巨大システムのイノベーションを目の当たりにすることができて,大変よい機会を頂いたと同時に,どういう貢献ができるかというのを常に考えながらやってきました。
いわゆる研究者の努力の中に自律的に不確実性を軽減する様々な施策を見てとることができました。もちろんアクションプランというのもその大きな1つの柱になっていると思います。
今後,やっとアウトリーチヘッドクオーターができたところですので,市場の不確実性というところを軽減する,削減していく活動を着手し始めるというところだと思います。アクションプランの方にもありましたが,今後やっていく活動は,2026年や2035年といった長期にわたるものです。巨大なシステムを長期にわたって社会受容させていくという上で,非常にそれほどの努力が必要だということですけれども,やはり26年,35年に向けてどういったことを具体的にやっていくのか,それをチェックアンドレビューの項目に反映させていくというのは重要かなと思いました。
あと,現アクションプランのレビューのところですけれども,社会活動のところに3つのカテゴリーごとに活動推進という,非常にばくと書いてあったところがあったので,この3つのカテゴリーって何かなと思いながら,すいません,不勉強なものですから,ほかの方に目に触れるところもあるかと思いますので,3つのカテゴリーとはということで若干追記していただけると有り難いなと思いました。
今後,私は特にアウトリーチ活動というのに興味があって,何かしら関われたらいいなと思っていますけれども,やはり長期にわたってやっていくということを考えると,アウトリーチ活動のターゲットの捉え方というのをやっぱり再検討しないといけないのかなと思いました。
1つは,対民間についてなんですけれども,大衆,いわゆるマスマーケティング的にやっているというのは,それはそれで重要ですけれども,やはりオピニオンリーダーのような人たちをつかまえてやっていかないと効果的なマーケティングにはならないかなという点,それから,対ステークホルダー。先ほど植竹委員の方からもありましたが,ステークホルダーって一体誰というところで,今のステークホルダーは,今後,将来,同じようにステークホルダーを形成していくわけではないと思うので,そういうステークホルダーは誰なのかといったところを見据えてというか,もちろん確定なものは得られないですけれども,インナーマーケティングをやっていくことが重要かなと私自身は思いました。
ちょっと長くなりましたが,以上でございます。これからもよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
【小川主査】 ありがとうございました。アウトリーチに関しましては継続的にまた発展させていきますので,高梨委員もよろしくお願いいたしたいと思います。
続きまして,髙本委員からお願いします。
【髙本委員】 髙本でございます。よろしくお願いいたします。先ほどアクションプランの進捗状況の確認表のところで,質問,意見が言えなかったものですから,それからまず始めます。表の中で,大変まとめていただいてありがとうございます。その中で期限と実施期待機関というところですけれども,期限は,多分これ,年か年度かどちらかだと思います。ただ,空白とか※が出てきたりしていますので,この定義をきちんと書いておく必要があると思います。それから,実施機関につきましても,略称で書いてございますので,特に先ほども話がありました,コメントがありました,産業界とは何かという定義も含めて記載しておく必要があるかと思います。よろしくお願いします。
次に,今回のコメントでございます。まず第1回中間チェックアンドレビューの意見についてでございます。第1回の中間チェックアンドレビューは,ロードマップにおける最初の重要なマイルストーンでございまして,原型炉に向け,初めての組織的なチェックアンドレビューとなります。第10期ではコロナ禍という社会的な事情等もあり,第1回中間チェックアンドレビューが第11期に持ち越されることになりました。しかしながら,このような困難な状況下においても,JT-60SAのファーストプラズマがほぼ計画どおり進捗しているなど,関係機関においてアクションプランが着実に実行されていることは高く評価できるものと思います。
また,核融合の認知度は決して社会的に高いとは言えない状況ですが,科学技術立国を目指す我が国のものづくりを牽引する大変重要な柱であります。このため,広く国民の支持が得られるよう,コミュニティに限定されないオープンな活動を期待するとともに,アウトリーチ活動を今以上に活性化できるようにすることが必要であると考えます。
それには,現状の課題を明確にし,技術者の育成,継続的な予算措置,産業界の継続的な参画を図る等,第11期において確実に,そして早期にチェックアンドレビューを実施することが重要であると考えます。
2点目,第11期委員会への期待についてでございます。今回のチェックアンドレビューは,核融合エネルギー開発を推進するためのゲートと認識しており,核融合エネルギーを研究開発から設計・製造へ移行させる重要な第一歩であります。華々しい研究成果だけでなく,反省すべき開発遅延リスクを冷静に見極め,具体的な遅延挽回策を決定できるよう,責任のある対応が必要となります。
第1回中間チェックアンドレビューの早期実施は言うまでもなく,原型炉開発のフェーズに見合った国内人材,英知を結集いただき,第1回中間チェックアンドレビュー後にも実施すべきアクションのためのリソースの確保に向けても議論を重ねることが重要であると考えます。このためにも,第11期委員会を早期に実施し,予算,人材の確保も含めた開発体制の一層の充実を図り,核融合開発の着実かつ効率的な実行に向けて継続的な議論を期待しております。
以上でございます。
【小川主査】 貴重なコメントありがとうございました。冒頭にありました期限のアスタリスクはどういうことでしょうか。
【岡野委員】 記号の説明がないというのは,全く申し訳ございません。非常に不親切だったと思いますが,これらの記号,それから期限,そういったものは,アクションプランの本体に書いてありまして,それをここにもう1回つけるかどうか迷いましたが,つけなかったというのが事実でございますが,アクションプランの方の表紙にそういった項目が書いてございました。
産業界の定義だけは正確にはできていなくて,産業界とだけ書いていますが,それ以外はきちんと定義されております。よろしくお願いします。
【小川主査】 ありがとうございました。それでは,次,竹入委員からお願いいたします。
【竹入委員】 核融合研の竹入です。本日,アクションプランのフォローアップ,タスクフォースが非常によくまとめていただきまして,きめ細かいこと,それから特に印象的だったのは,チェックアンドレビュー1からチェックアンドレビュー2の課題まで言及しているという,そういうまとめ方をしているので,非常に方向性としてはよかったのではないかと感じています。
実はアクションプランの中身というのは,特に大学,核融合研の担う役割というのは予算的裏づけがないという形になっています。一部で予算的裏づけがないという課題に対しても,ここまでしっかりと順調に進んでいるというのは,ある意味各所の研究者を含めて,非常に大きな頑張りがあったというのが認められると思います。
ただ,チェックアンドレビュー2までのところは,非常にいろんな大きな課題が待ち構えていると私は思います。そういう意味でも,大学,核融合研で行っている,ある意味,先進的な部分,先進概念の部分というのは,直近の課題に対しての予算措置はそれなりにされていますけれども,先進的な課題に対する予算措置,今現在原型炉研究開発共同研究を3年前に立ち上げましたけれども,その拡大をしてもらうとか,予算的裏づけを少ししていただかないと,2回目のチェックアンドレビューの課題をクリアするところの手前で息絶えてしまう可能性もあるということを御承知おきいただければと思います。
2つ目ですけれども,原型炉,あるいは核融合炉の開発は非常に長期にわたっている課題になっています。例えば2010年頃の原型炉の設計を2040年代の後半に実現したときには,実に30年,40年,設計段階から実現まで30年,40年たっている。ということは,考え方によっては,完成した段階では30年,40年前の構想を実現するということにもなりかねないわけです。もちろんいいものは,30年たっても,40年たってもいい設計になると思いますけれども,そういう意味でも,先進概念というものをパラレルで進めているというアクションプランの構成そのものは非常によくできていると思いますし,先ほど申しましたように,大学が行っている先進課題,あるいは先進材料,そうしたものをしっかりと位置づけて取り組むということが非常に大事だと思います。
そういう意味でも,大学,核融合研で行っている新しい概念をしっかりと原型炉のアクションプランの中でも位置づけて,チェックアンドレビューの中でも位置づけて,予算的にも位置づけてやっていただきたいと思います。
そういう意味では,チェックアンドレビューについても,チェック項目については柔軟な対応,あるいはチェックをする時期の柔軟な対応が必要になってくるのかなと。
関連して,やはり長期にわたる研究開発ですので,特に多様性というのは非常に大事かと思います。原型炉というものに向かって一丸となって進むということは非常にいいことですけれども,目的だけに特化してしまうと,ある意味細い一本道になってしまう。そういうのは,核融合のような大きなゴールを目指しているプロジェクト開発,研究開発にとっては,やはり多様性をしっかりと確保して,束という形で目標に向かって進めるということは非常に大事なことでありまして,核融合の炉の形式,あるいは核融合の発電の形式も含めまして,工学,理学,物理学含めまして,確実に多様性を確保することが,どこか課題が新たに見出されたときでも,課題を乗り越える力にもなるということで,是非多様性の確保ということを,取り組んでいただきたいと思います。そこら辺が第11期へ向けた期待になりますので,よろしくお願いします。
以上です。
【小川主査】 ありがとうございました。御指摘のように,予算計画及び予算措置というのは非常に重要ですので,チェックアンドレビュー1以降はそれが非常に重要になると思います。ありがとうございました。
続きまして,中熊委員,お願いします。
【中熊委員】 電気事業連合会の中熊でございます。私は正直申し上げて,前任から引き継いで,前回から委員を拝命しているところでもございまして,なかなか議論についていきづらくて,一生懸命勉強させていただいているところというのが正直なところでございます。
また,先ほどの植竹委員からの御発言もありましたけれども,電気事業者という立場では,商業段階でのエンドユーザーでもございますし,また,原子力でも軽水炉のオペレーターという観点では,核融合の世界,若干縁遠い分野だなというふうには感じているところではございます。
ただ一方で,原子力全体で広く考えたときには,これだけの数多くの高度な技術開発要素が存在しいて,国際的な連携もすごく大規模になされているような研究開発プラットフォームというのは非常に貴重だというふうにも感じてございます。
そういう意味では,若干素人ながら,こういう重要な局面であるチェックアンドレビューというところに関与させていただくというのは非常に光栄に感じてございますので,素人ながら,一生懸命勉強して,しっかりと評価してまいりたいと思っております。
以上でございます。
【小川主査】 ありがとうございました。今後とも是非よろしくお願いいたします。
それでは,松尾委員,お願いします。
【松尾委員】 松尾でございます。ここにいらっしゃる多くの方が核融合のコミュニティかと思いますけれども,私は核融合のコミュニティではございませんで,研究分野といたしましては,航空宇宙の分野が主でございます。そういったこともございまして,会議の席ではなかなか議論は難しいことも多く,勉強させていただいているところがございました。
そういったこの分野の者ではないというところから見させていただきますと,こういったすばらしい活動ですとか,今後の将来の新しいエネルギーの担い手になる可能性があるということがなかなか見えてこないということがあるのかと思います。
その辺のところにつきましては,活動が今後とも継続されていかれると思いますので,それについてはしっかりとしていただくとよいのかと思いました。
岡野先生と関連の方々に行っていただきましたアクションプランのフォローアップの内容につきましては,非常に細かいところまでできていまして,先ほどから言われておりますように,今回のところだけではない,次の段階まで見据えたものになっているかと思います。
その中で,課題達成のために必要な措置として今後のことが書いてあるというところを見ますと,やはり人材が必要ですとか,また人材ということは非常に難しいことではありますけれども,予算もまた今後とも継続的に更に多くの寄与が必要なのかなということも考えますと,なかなか厳しいなと思っております。
そういうふうなことを思いますのは,今,幅広く多様性の中でということもありますけれども,ある程度集中するということもしないと,なかなか同じ予算の中で効率よく運営していくというのはちょっと難しいところもあるのかなということは客観的に見て思うところでございます。
宇宙関係につきまして,もともと宇宙開発というものは長期にわたる国家プロジェクトによってやっと行われるということが長年行われてきておりましたが,アメリカのスペースエックス社に代表されますように,民間の力が入ることによって,物すごいスピードで,考えられないような短いスピードでどんどん開発が行われるということがあります。
こういった核融合のエネルギーにつきましても,物すごくよいものであって,ある程度の道筋ができれば,民間というものの力も借りることで,どんどんそちらの方が先導していくことによっても,また新たな,今の段階では難しいかもしれませんけれども,将来的にはもっと進めていくようなことが将来起きて,普通に原子力発電所があるように,いろんなタイプのものとして幅広く広がっていって,私たちの国民のエネルギー源となることができればよいなと思っております。
以上でございます。
【小川主査】 ありがとうございました。核融合界も,是非とも民間の,特にベンチャー関係とかも積極的に関与していただければと思っている次第です。貴重なコメントありがとうございました。
以上で皆様から非常に示唆に富むコメントいただきまして,本当に主査として御礼申し上げます。
今後の進め方や評価の視点等に関して示唆に富む御意見を頂きましたので,皆様からの頂いた御意見は第11期で行われる第1回チェックアンドレビューの基礎になるものと確信しております。ありがとうございました。
ちょっと時間は過ぎてしまいましたけれども,最後にその他の項目としまして10分ぐらいお時間いただければと思います。最後に,その他の項目としまして,皆様御存じのとおり,BA活動で進められておりますJT-60SAは昨年3月に完成し,コミッショニングが行われているところですので,本日は栗原委員からその進捗状況について御報告いただければと思います。栗原委員,よろしくお願いいたします。

【栗原委員】 ありがとうございます。量研の栗原でございます。それでは,かいつまんで,ポイント,ポイントを御説明させていただきます。資料4でございます。表紙のとおりJT-60SAの進捗状況ということで御説明をさせていただきます。
左下のところにあります中央制御室の運転状態画面というのが,これが現在表示されている画面でございまして,ここどのような実験をこれからスタートしていこうという,そういった表示がこの画面で見ることができます。
それでは,次の2ページ目でございますが,これはJT-60SA計画でございます。ITERの支援研究,そして,ITERより先端的な運転手法の開発,そして人材育成という,この3つの大きな柱でJT-60SA計画を進めるという,これが大きなミッションでございます。
次の3ページでございます。これは日欧でどのような機器製作を分担しているかという分担の図ですけれども,このように様々な機器に,旗がついておりますので,製作国が御理解いただけると思いますが,重量でいきますと,ITERの約10分の1,約2,000トンというところになりますが,大きさ的にはITERの縦・横・高さ約半分ということになります。
一方,超伝導コイルなどの主要機器の大きさは10メートル級ですので,そういう意味では若干小さめですけれども,精度という意味ではITERと同様に非常に高精度の製作をしてきたというところでございます。
4ページでございます。2013年の3月から組立てを開始し,そして,2020年3月に完了したということで,7年間にわたります組立ての活動であったわけでございます。その下に時期ごとの状況が写真で見ることができます。
続きまして,5ページでございます。これが現在のJT-60SAの外観,そして,真空容器の内部の状況でございます。正面に見えますのがJT-60SAの組立てが終了した時の状況で,2020年3月に完了したわけですが,現在右下にありますような真空容器の内部状態で,特にポイントは何かと申しますと,最初は上側のダイバータを想定しておりますので,アーマータイルが上側だけについているというところでございます。
続きまして,6ページでございます。2020年4月よりBAフェーズ2に移行しているわけでございますけれども,2020年3月にJT-60SAが完成をしたわけですが,3月2日に共同宣言文書が日本と欧州の政府によって調印された訳でございます。そこにあります写真が,兒玉日本政府代表部特命全権大使と,シムソン欧州委員との調印の風景になります。これは3月2日ということで,ベルギーにおいてコロナが蔓延をする約1週間前という,ちょうどすれすれのときにこの共同宣言文書の調印式が行われた訳でございます。
次の7ページが統合調整運転,現在進めております運転の状況です。そこに幾つか課題と対策を書かせていただきました。特に今回はコロナウイルスの影響というのがございましたので,その影響で大幅な遅延が当初は発生をいたしました。特に冷媒配管の溶接につきましては,5,000か所が必要になって,しかもこれもクオリティが非常に高いものであるというところで,そのための熟練作業員の確保というのがコロナウイルス渦で非常に難しかったというところがございました。一方,その対策といたしましては,コロナウイルスの感染の少ない地方からの熟練作業者を確保するといったこと。それから,作業員の作業状態の密状態を避け,あるいは,健康状態の監視,それから,休憩場所の分散といったことをやることによって対策をしてきた。
それから,効率の改善ということで,特にクライオスタットの外で配管を溶接しておいて,中に持ち込むことである程度塊で持ち込むということによりまして,先ほど5,000か所と言っていたものが2,500か所まで低減をさせることができたということ。
それから,作業の事前に練習をするといったこともやった。こういったことを含めまして,様々な合理化をやることによりまして,当初の計画より工程を1週間短縮するといったようなことができたというところでございます。
8ページでございます。これがクライオスタット内の,冷媒配管等の配置の最終化の結果で,配管類が御覧いただけるかと思います。これら配管類を溶接してここまできたということでございます。
続きまして,9ページでございます。真空リーク試験です。これは2020年の9月14日,あるいは18日から真空容器及びクライオスタットの真空引きを開始しておりまして,結果的には順調に推移をいたしました。
リーク試験につきましては,合計530か所について試験をいたしましたが,そのうち溶接を必要するような補修箇所はたった1か所だったということで,これは先ほど申しました作る段階で局所的なリーク試験を随時やっていったことが,ここに来て工程の短縮に更につながっていったということでございます。
続きまして,10ページでございます。今度は超伝導コイルの冷却になりますが,2020年10月10日より超伝導コイルの冷却を開始いたしまして,コイルの温度計,変位計,冷媒流量等を詳細に分析し,慎重に,且つ欧州とも協議をしながら,徐々に冷やしてまいりました。
その結果,11月26日に全28コイルが超伝導状態に遷移をいたしまして,右側にそれぞれの縦軸が超伝導コイルの抵抗になります。横軸が時間になりますけれども,一番上はCS,導体ニオブ3スズでございますけれども,これは18ケルビンで超伝導に遷移をいたしますが,遷移をいたしますと,抵抗値がすとんとゼロに落ちる様子が見られます。それから,ニオブチタン導体のEFコイル,ニオブチタン導体のトロイダル磁場コイルは,それぞれ8ケルビンで超伝導に移行いたしますけれども,それぞれがやはりすとんと抵抗がゼロに落ちているということで,正に教科書どおりの超伝導遷移が観測されたというデータでございます。
続きまして,11ページでございます。これがコイルへの通電試験の結果で,現在続いております。1月13日から開始をしたところでございます。EFコイルを皮切りに進めておりまして,現在まではEF5,6,3コイルにつきましては,5キロアンペアまでの通電が完了してございます。この図は,これはEF5につきまして,マイナス2キロアンペアまでの波形を出させていただいております。ここに至るまでの間も実は電源のノイズといったものがかなり影響し,温度計やクエンチ検出回路にかなりのノイズが当初乗っておりました。このノイズ対策をこの年末年始に集中してやったわけでございます。
結果的にノイズ対策も終わり,このような通電試験が無事進んでいるという状況でございます。
一方12ページでございますけれども,このJT-60SAの経験がITERの研究開発におけるリスクの低減に貢献をするというのも,これも重要なJT-60SAのミッションでございます。2019年の11月に実施取決めが結ばれました。これはITER機構とブロード・アプローチの日欧の3者になりますけれども,協定を結んだものでございます。
今回は,ITER機構の方から統合調整運転に冷凍機の専門家が参加をして,この写真にありますように,本体室の写真でございます。ITER機構からの参加者,そして,フュージョン・フォー・エナジー,ヨーロッパの実施機関,そして,量研が一緒に協力しながらJT-60SAのコイルの冷凍ということを一緒にやってきたという写真でございまして,これがITERのニュースレターにも紹介をされてございます。
以上最後の13ページになりますが,まとめますと,2020年3月2日にブローダー・アプローチのフェーズ2の共同宣言文書が日欧両政府によって調印されてございまして,4月からBAフェーズ2に移行したわけでございます。
2020年4月より統合調整運転ということで,周辺配管の配置の最終化であるとか,局所リーク試験を行いまして,9月より真空引きを開始,その後,リーク試験,そして,コイル冷却が10月に始まりまして,現在は完全に全てのコイルが超伝導状態に移行し,コイルの通電試験が現在進んでいるという状況でございます。
今年,早期に初プラズマを着火いたしまして,実験運転に移行したいと考えて,鋭意現在努力をしているという状況でございます。
非常に駆け足でございましたけれども,以上でございます。
【小川主査】 栗原委員,ありがとうございました。JT-60SAのファーストプラズマを是非とも期待しておりますので,よろしくお願いいたします。
それから,ITERとの連携が順調に進んでいるようですので,やはりITERとの連携として,JT-60SAの組立は正にITERのコミッショニングの基礎になると思いますので,是非ともよろしくお願いします。
もう一つ,ITER連携の超伝導関係の前川さん,夏目さんは共にNIFSのOBですよね。核融合研との連携,非常によろしいかと思います。ありがとうございます。
以上で本日用意しております議題は全てでございます。このほか特に報告,審議すべき案件はございますでしょうか。
それでは,本日ちょっと遅れましたけれども,15分ぐらい過ぎてしまいましたけれども,本日の第10期の核融合科学技術委員会はこれで閉会といたします。
本当に皆様,第10期の皆様,どうもありがとうございました。御礼申し上げたいと思います。御多用のところ,御出席いただきまして,ありがとうございました。
これで閉会といたします。ありがとうございました。

―― 了 ――

 

お問合せ先

研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付

(研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付)