核融合科学技術委員会(第22回)議事録

1.日時

令和2年10月30日(金曜日)15時~17時

2.場所

開催方法:オンライン開催

3.議題

(1) 令和3年度核融合関係概算要求について
(2) 第25回BA運営委員会の結果について
(3) 大阪大学のレーザー核融合研究開発について
(4) 研究開発プログラム評価の新たな仕組みについて
(5) アウトリーチ戦略、活動推進計画について

4.出席者

委員

核融合科学技術委員会
小川主査、五十嵐委員、植竹委員、上田委員、大野委員、岡野委員、尾崎委員、岸本委員、小磯委員、兒玉委員、高梨委員、髙本委員、竹入委員、中熊委員

原型炉開発総合戦略タスクフォース
笠田委員

文部科学省

堀内審議官(研究開発局担当)、岩渕研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、加々美室長補佐、川窪核融合科学専門官、長壁科学官、近藤学術調査官

5.議事録

【小川主査】 本日は,御多忙のところ御参加いただき,ありがとうございます。定刻になりましたので,第22回核融合科学技術委員会を開催します。
今回も新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から,オンラインにて開催します。
それでは,議事に入る前に,事務局より,新たな委員の紹介と,定足数の確認,配付資料の確認をお願いします。
【川窪専門官】 それでは,今回より新たに核融合科学技術委員会委員に御就任いただいた方を御紹介させていただきます。
所属先の人事異動に伴い,渥美法雄委員に代わり就任いただきました電気事業連合会原子力部長の中熊哲弘委員でいらっしゃいます。中熊委員,お願いいたします。
【中熊委員】 今年の7月から電気事業連合会原子力部長を拝命いたしました中熊と申します。核融合は素人ですが,是非お力になれるように頑張りたいと思います。よろしくお願いいたします。
【川窪専門官】 ありがとうございます。
本日,委員の皆様の御出欠ですが,松尾亜紀子委員,栗原研一委員が御欠席です。そのほか尾崎委員,高梨委員は追ってお入りになると思います。
本会議の定足数は過半数9名以上でございます。本日は,今,12人の方が入っていらっしゃいますが,14人の委員会委員に御出席いただく予定でいますので,定足数を満たしていることを御報告いたします。
次に,本日の配付資料についてですが,議事次第の配付資料一覧のとおりです。今回は,委員の皆様及び傍聴の登録をされた方宛てに,事前にメールにて配付資料を送付させていただいております。会議中,遠隔会議システム上では資料は表示しませんので,各自お手元で御確認いただきます。
【小川主査】 ありがとうございます。中熊委員,よろしくお願いいたします。
本委員会は,委員会運営規則に基づき,議事を公開いたします。御発言は議事録に掲載され,ホームページ等で公開されます。本日は,議題5の説明者として,原型炉開発総合戦略タスクフォース主査代理の笠田竜太東北大学教授に御出席いただいております。
また,本日は,文部科学省研究開発局担当の堀内審議官に御出席いただいております。
議事に先立ちまして,堀内審議官より御挨拶を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
【堀内審議官】 ありがとうございます。ただいま紹介にあずかりました文部科学省研究開発局担当の堀内です。よろしくお願いいたします。
本日は,皆さん,お忙しい中,お集まりいただき,日本の核融合科学技術について,しっかり御議論いただけるということで,大変感謝いたしております。私は今回初めての参加だということで,少しだけ御挨拶させていただければと思います。
着任してから,早速,核融合科学研究所であるとか,それから,QSTの六ヶ所,それから,那珂,こういったところを見てまいりました。自分は,若い頃ですけども,核融合開発官という定員を要求したり,また,ITERを決めたときのレポートの一部を書いたり,あと,ITERを誘致するときに安全規制の考え方などをアピールするための報告書などを作るときに携わったというようなこともあって,それほど多くないですけれども,核融合の関係の仕事もさせていただいてきております。
核融合科研の「雷神」であるとか,それから,六ヶ所のIFMIF,それから,リチウムの回収技術の話など,それから,JT-60が60SAということになって,ファーストプラズマを迎えるというような状況で,自分が現在思っている印象としては,やはりITERが着実に進んでいる中,次の戦略を考え出すいい機会なのかなとも思っておりまして,方向性について,また機会を捉えて議論して,この分野を着実に進めていければと思っております。
今後ともこういった場で御意見をいろいろ賜りながら,この分野をしっかり進めていきたいと思っておりますので,よろしくお願いいたします。
【小川主査】 堀内審議官,ありがとうございます。ITER立ち上げ期にはお世話になったそうで,ありがとうございました。それから,着任早々,核融合研や量研機構を見学していただいたということですので,是非とも今後とも御支援いただきたいと思います。どうもありがとうございました。
それでは,早速,議題に入らせていただきます。議題1,「令和3年度核融合関係概算要求について」に入ります。岩渕戦略官から御説明をお願いいたします。
【岩渕戦略官】 岩渕です。8月に就任いたしました。今後もよろしくお願いいたします。それでは,令和3年度核融合関係概算要求の概要について,御説明を申し上げます。
資料1の2ページ目を御覧ください。「ITER計画等の実施(1)」です。ITER計画,2007年,ITER協定発効後,2025年のファーストプラズマに向けて,現在,ITERの7極がそれぞれ分担する機器を調達・製造しています。これを持ち寄って,ITER機構が全体を組み立てる仕組みです。本年の新しい動きとしては,本年7月に,南仏のITERのサイトにおいて,組立開始記念式典も開催したところです。組立開始式典においては,我が国から,当時の安倍総理からのメッセージ,そして,各国首脳,例えばマクロンフランス大統領等からもビデオメッセージが出されました。実際,ITERのサイトには,8月にはクライオスタットの据付という形で,実際に機器の組立が始まっており,進捗が見られます。
こうした中,2025年の運転開始に向けて,調達が加速するという段階を迎えています。こうした状況を踏まえ,来年度,令和3年度の概算要求としては,文部科学省から,約286億円の要求・要望を財務省に提出しています。これは昨年の予算額213億から増ということで,必要な予算を確保できるよう努めてまいります。
具体的な内訳は,この2ページの右下に書かれていますが,ITER機構の活動を支える分担金に49億円。ITER機器の調達,製作などのためのITER補助金に179億円という予算要求を行っています。
3ページを御覧ください。「ITER計画等の実施(2)」です。BA活動に関する予算の説明です。BA活動全体で,要求・要望額59億円ということで,前年の49億円から増額の要求という形です。
BA活動は御案内のとおり,3つの柱から成り立っています。IFERC,IFMIF/EVEDA,JT-60SAという3つの柱です。核融合科学委員会においては,従来,例えば原型炉研究開発ロードマップなど原型炉の文脈では,この3つの事業は,通常,1つ目にIFERC,2つ目にIFMIF/EVEDA,3つ目にJT-60SAという並べ方,記載順を取っています。本委員会の原型炉タスクフォースのように,原型炉の文脈では,この順番を心に留めていきます。他方で,この資料については,今年の予算要求の内容はJT-60SAが予算増ということもあり,財務省に対する予算要求の資料という形ではこうした順番で書いています。記載順は,原型炉研究開発ロードマップ等とは違う形ですが,これはそういう理由ということになります。1番目のものが重要で,3番目のものはそうではないという意味ではありません。
4ページ目です。大規模学術フロンティア促進事業,超高性能プラズマの定常運転の実証,こちらは核融合科学研究所の予算です。LHD,大型ヘリカル装置に関する予算でして,こちらは10年計画の予算であり,前年度とほぼ同額,若干増の予算を要求しているところです。LHDの2020年度の研究計画ということでは,イオン温度,1億2,000万度,電子温度1億度の同時達成を実現することが目標となっており,2021年度以降は,イオン温度,電子温度ともに,1億2,000万度を超える超高性能プラズマ実現に向けた取組が行われます。
文部科学省からの資料1に関する説明は以上です。
【小川主査】 岩渕戦略官,ありがとうございました。ただいまの御説明に対して,御質問等がございましたら,挙手という形で,手を挙げていただければと思いますけれども,どなたか,いらっしゃるでしょうか。
よろしいでしょうか。
では,私の方から2点ばかり。まず,ITER関係でコロナ感染に関連して,何かコロナの影響はどう出ているのかというのをもし御存じでしたら,情報として教えていただければというのが1点。
もう1点は,私の記憶だと,この委員会,前回は6月末でしたので,この夏に着任された岩渕戦略官も初めての出席かと思いますので御挨拶をお願いいたします。
【岩渕戦略官】 御挨拶が遅れ恐縮です。8月に就任いたしました。前職は,ベルギー,ブリュッセルにあるEU日本政府代表部で勤務しておりました。そちらで3年間,仕事をさせていただきましたが,その際は,ちょうどBA活動がフェーズ1からフェーズ2に移るということで,日EU間の交渉等もありました。そうしたことに関わらせていただき,引き続き,日本に戻った後もこうして核融合の仕事をさせていただきます。今後,核融合のコミュニティの皆さまに御指導いただければと思います。
御質問のありました,コロナがITERに与える影響ですが,この瞬間もヨーロッパにおけるコロナに関する情勢が非常に不安定で,見通しが利きにくいところです。ITERの理事会が11月18日,19日にオンラインで開催される予定ですが,その場において,ITERのそれぞれの機器の調達等にどのような影響が各極で生じているのか、分析が行われる予定です。その結果を待たないと何とも申し上げられませんが,少なくとも日本が調達する機器の調達についてはほとんど影響なく進んでおり,若干,1か月ぐらいの遅れがある物品もあるようですが,概ねオンスケジュールで日本の担当部分は進んでいると言えます。
【小川主査】 ありがとうございました。
ほかにどなたか質問あるでしょうか。岡野さん,どうぞ。
【岡野主査】 岡野です。どうもありがとうございました。岩渕戦略官,念のために申し上げますが,この表の一番上のタイトルが全部,「ITER国際熱核融合実験炉」になっていますが,国際熱核融合実験炉というのはITERの正式名ではないというのは御存じの上で使っていらっしゃいますよね。
【岩渕戦略官】 はい。
【岡野主査】 概算要求用なので,前から名前を変えたくないからこうなっているだろうとは思いましたが,念のために。
【岩渕戦略官】 はい。これは財務省向けの資料として使っているものをそのまま転載しております。財務省の方に事柄が分かりやすく理解していただくため,ITERのみでなく漢字表記も説明的に加えています。
【岡野主査】 分かりました。何で聞いたかというと,今書いている本なども,本屋さんの方でわざわざこれを書いてくるので,どこに残っているのかと思って不思議に思っていましたけど,こういうところにあったのですね。それは分かりました。ありがとうございます。
【小川主査】 ありがとうございました。
ほかにどなたかいらっしゃるでしょうか。大丈夫ですね。ありがとうございました。
それでは,次に,議題2,「第25回BA運営委員会の結果について」に入ります。これも岩渕戦略官から御説明,お願いいたします。
【岩渕戦略官】 資料2を御確認ください。2ページ目,第25回BA運営委員会の概要です。今年7月にBA運営委員会を開催いたしました。これもオンラインでの開催でした。日本側は,当時の千原審議官,そして,欧州側はガリバ副総局長代行というレベルでした。主な議題としては,3つの事業に関する進捗状況の確認,ITERとBAの連携です。
その内容について,3ページ,BA運営委員会の結果概要という資料です。運営委員会においては,3つの事業に関する進捗状況確認をしています。日EU間のBA協定においては, IFMIF/EVEDA,IFERC,STPという順番で書かれており,BA運営委員会の資料は,この順番で書かれています。
それぞれ御説明すると,①番のIFMIF/EVEDAについては,これまでの進捗として,昨年7月に世界最高強度の重陽子ビームの加速に成功したことを確認した上で,BAフェーズⅡにおいては,核融合中性子源の開発のため,設計活動の検討を行うという内容です。
②番のIFERCについては,この場での活動として,原型炉研究開発活動,計算シミュレータ,遠隔実験センター,おおむね計画どおりに進捗し,BAフェーズⅠの目標を達成したということです。
③番のSTP,サテライト・トカマクについては,本年3月末にJT-60SAの組立が完了し,初プラズマに向けて,現在,各機器の健全性の確認等を進めているところです。
先ほどITERに対する新型コロナの影響というお話もありましたが,BAに対する影響ということも当然ありえます。こうした点について,BAについては12月に次回の運営委員会が開かれますので,今後のスケジュール等について議論していくことになると考えています。
④番,ITERとBAの協力の取組です。ITER機構とBAを実施する日EUの実施機関,QSTとF4E,この実施機関との間の協力取決めの署名が行われたといった進捗について確認しています。
続いて,4ページ目を御覧いただければと思います。BA活動の現状です。BA活動は,ITER計画を補完・支援するとともに,原型炉に必要な技術基盤を確立するための先進的な研究開発を実施しています。高性能加速器の据付・調整やJT-60SAの組立が完了するなど,主立った研究環境の整備が進んでいます。青森の六ヶ所サイトにおける進捗,茨城の那珂サイトにおける進捗状況を書いています。
この関係で,IFERCとも関係し,また原型炉との関係で1点だけ,EUの動きをこの場をかりて御紹介させていただきます。EUにおけるDEMOに向けた取組が今かなり動いているようです。
EUでDEMOの研究開発を推進する主体であるEURO fusionが今年12月に年次総会を開くようですが,その辺りでDEMOに関する1回目の中間評価の結果が報告,公表されるのではないかと言われています。正式には,プレCDRゲート。 EU側がDEMOについて,プレ概念設計の段階から概念設計の段階へ移行する判断をするタイミングということです。
EURO fusionがまとめたDEMOのロードマップを見ると,21世紀後半にはグローバルに,電力需要は10テラワットであるとされ,この10テラワットの電力需要に対して,EURO fusionは,1テラワットをフュージョンで賄うというビジョンを訴えています。1テラワットをフュージョンですので,100万キロワットの発電所に換算しますと,世界で1,000基の核融合発電所が必要という壮大なロードマップです。これをEURO fusionが掲げ,そのビジョンの下で,DEMOに向けた中間評価活動を今この瞬間しているということで,我々としても注目しています。来年,核融合科学技術委員会において原型炉に向けた第1回の中間チェックアンドレビューを行うということで,原型炉タスクフォースの方でも様々な準備をしていただいていますが,ヨーロッパの動きなどもよく注視しながら,原型炉に向けて取組をしてまいります。資料2の報告は以上です。
【小川主査】 ありがとうございました。ただいまの御説明に対して御意見等がありましたらお願いします。
岡野さん,どうぞ。
【岡野主査】 今,ヨーロッパのゲートレビューのお話が出てきましたが,そのとおりですが,最近,IFERCのプロジェクト会議がヨーロッパとありまして,そこでその話ができたので,私が日本もチェックアンドレビューを来年予定していて,2025年頃にはチェックアンドレビューをもう1回やって,原型炉のコンセプチュアルデザインの段階に進むという発言したところが,EU側は,いや,EUのこのレビューは非常に重要なもので,日本と違うと言われました。
これだって日本の最高トップのレビューで,同じだよと反論しました。ヨーロッパの認識がそうであるというのは,後で,何であんなこと言ったのだろうかと周りの人に聞いてみると,ヨーロッパのチェックアンドレビューには,産業界が入ってきていて,非常に厳しくやっているということを思っているらしいですね。
実はここにも産業界の皆さんがいらっしゃるから,産業界のお話を聞きながらやっていますが,そういう日本の思いが伝わっていないような気はしました。とても軽く見られているという印象を持って,私は非常に不本意でしたけど,何かそういうイメージがあると,こちらの一生懸命やっているということをやっぱり少し伝えないといけないですね。
それからもう一つ,世界で,1,000基でいいですが,500基ぐらいの核融合炉が必要で,そのための資源量が足りるか,足りないかという議論をしたのは,日本の方がずっと先ですね。小川先生と一緒にやりましたよね。本当は先んじています。それをコメントしたかったので。
【小川主査】 ありがとうございました。今,岡野委員が言われましたように,21世紀後半に,核融合エネルギーがどれくらい入るかという解析等は,逆に日本の方が今までも着々とやっていますし,ある意味で,国際会議などで発表していますので,ヨーロッパの人はある程度知っているとは思います。
それから,今,岡野委員が言われましたように,ヨーロッパは産業界が入っているといいますか,私から言わせると,日本は,政府も入って,一丸とやっているから,こちらの方が強いと私は個人的には思っておりますので,皆様,是非ともアピールしていただければと思います。
ほかの委員の方,どなたかコメントあるでしょうか。
BA,ITER,両方含めまして,ちょっと宣伝になるかもしれませんけど,12月22日に核融合エネルギーフォーラムのITER/BA成果報告会があります。当日は,イイノホールでやるのと同時にリモートでも参加できます。全国から参加できますので,積極的に参加していただければと思います。
ほかにあるでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは,その次の議題に移らせていただきます。議題3,「大阪大学のレーザー核融合研究開発について」に入ります。レーザー高速点火計画については,前々期,第8期ですけども,2017年1月,もう4年近くになりますね、でも議論があったように,科学技術・学術審議会等の評価を踏まえつつ進めることとされています。そのときの議論としましては,その時期については,平成29年度以降に必要なデータや知見がセンターにおいて得られた段階に行うとし,委員会においては,同計画の現状の継続的な把握に努めていくこととしていました。
こうした観点から,大阪大学レーザー科学研究所から,その後の進展及び今後の研究の方向性について紹介したいとの申出がありましたので,本日は,兒玉委員から御紹介いただきたいと思います。
それでは,兒玉委員,お願いいたします。
【兒玉委員】 大阪大学の兒玉です。まずは,今回このような機会を頂きまして,ありがとうございます。
それでは,資料3を御覧ください。まず1ページ目に,本日報告する内容を示させていただいております。レーザー核融合の概要,研究開発の経緯と進捗を報告させていただきまして,今後のどのようなことが展開できるかについて触れさせていただき,最後にまとめとさせていただきたいと思います。
次に,資料の2ページを御覧ください。ここではレーザー核融合発電炉並びに炉の実現までの道のりの特徴をまとめています。
右側に示すように,レーザー核融合炉の大きさ,出力は,現在の火力発電炉もしくは軽水炉程度と考えられており,地方分散型の電力量可変の発電炉となると考えられています。そのため,地域の電力需要の変動に対応できるスマート社会に適した基盤的なエネルギー源として期待できます。
また,左の道路の図のところに示していますように,商業炉実現までに核融合開発で使用されるレーザーシステムは,宇宙物理学や,新材料開発をはじめ,様々な極限的な量子の世界を開拓することにも貢献できます。
3ページを御覧ください。このように,レーザー核融合を実現するには,左図に示すように,核融合点火を実現できる温度と密度を実現することが必要です。レーザー核融合の場合,核融合燃料全体の温度を上げる必要はありません。核融合反応で発生するアルファ粒子の飛程程度の領域だけ温度を上げれば,核融合燃焼波が残りの圧縮された燃料を自動加熱し,燃料が飛散するまでに燃料燃焼が自動的に維持されます。
このような状況をどのようにしてつくるか,簡単に示したのが右の図でございます。真ん中下の白い丸がスタートですが,燃料の温度と密度の最終目標である核融合点火を実現するには右上のところまで上げる必要があります。
様々な星の状態と比較してもかなり極限状態であることが分かります。現在この目標をアタックする2つのルートが主に研究されております。
一つは,燃料の圧縮と加熱と同時に同じレーザーで行う中心点火方式で,グレーの矢印で示されたルートでございます。もう一つが燃料圧縮と加熱を別々に最適化できる高速点火方式と呼ばれている方法で,青色と赤色の矢印でのルートでございます。
4ページを御覧ください。レーザー核融合炉心プラズマ研究のこれまでの成果,概要をまとめたものでございます。当初,日本でも中心点火方式の研究を行っておりました。世界に先駆けて,核融合に必要な温度と密度を我が国が1990年代までに,別々に達成いたしました。これらを受けまして,アメリカ,フランスは,点火燃焼を目指した施設の建設に進みました。
一方,我が国は,より効率的な核融合実現を目指して,高速点火方式というものにかじを切り,2001年には,独自の手法でその有効性を世界で初めて実施いたしました。その後,FIREX計画として加熱の物理など,詳細が調べられてきております。
昨年までは,この高速点火方式に重点を置いた研究開発は主に我が国だけでしたが,本年度から中国科学アカデミー,それから,ドイツのベンチャー企業がそれぞれ1,000億円規模のプロジェクトとして高速点火方式の本格的な研究をスタートさせました。
それでは,5ページ目を御覧ください。この高速点火方式による炉心プラズマの核融合点火に対する現状を右の図に示してございます。縦軸がいわゆる核融合積で,横軸が温度です。右上のだいだい色の領域が目指す核融合点火燃焼領域です。アメリカのNIFは,点火目前の燃焼が起こっている領域にメガジュールのエネルギーで達成しております。
また,同じく米国のロチェスター大学は30キロジュールで,その下の水色の丸の辺りにあります。これらに対して,我々の高速点火方式で達成できている領域は,赤色の星印辺りでございます。レーザーのエネルギーは,ロチェスターの10分の1で,ほぼ同じような成果が得られております。つまり,10倍の高率で核融合を実現できているということでございます。これらを実現するために,我々は左上に示すような効率的な爆縮,効率的な加熱を実現できる独自のターゲットを考案し,かつ詳細な加熱物理の理解を基に加熱実験を行うことで,競争力ある成果を得ることができております。
6ページを御覧ください。安定な爆縮方法を実現する独自の手法を左図に示しております。これまで中心点火方式は,爆縮時に温度を上げることも必要で,右図のような中空シェルターゲットを爆縮させていました。これは流体不安定性に対して大変敏感で,いまだにシェル爆縮は大きな課題の一つでございます。長年,レーザー核融合の燃料は,このシェル構造の爆縮が常識となっておりました。
ところが,高速点火の利点である爆縮とか加熱のそれぞれを最適化すればよいという,そういう点から,高密度で実現する安定な爆縮という点に特化すると,シェルである必要は全くございません。中実の球でよいわけで,中実にすると温度は上がらないですが,一気に安定な爆縮が期待できます。
ここで,真ん中の図は,二次元流体コードによる中実球とシェル爆縮のシミュレーションの結果です。爆縮とシェルと最終爆縮時をそれぞれ下と上に示してございます。また,ここでは,あえてレーザーのタイミングのアンバランスを20ピコ秒としています。明らかな違いがお分かりになるかと思います。
そのほかに中実球にすることによって,加熱にも有効に働くことが分かってきました。加熱用の金属コーンの先端の金属をなくすことができる,穴開きコーンが使えるということで,これは加熱に大変有効であることが分かってまいりました。
7ページを御覧ください。実際に中実球で爆縮実験を行った結果でございます。爆縮によるコアプラズマの面密度の時間変化の一次元と二次元シミュレーションの結果を黒と赤の線で示しております。赤い点が実験結果です。ほぼ一次元あるいは二次元シミュレーションどおりのパフォーマンスを示していることがお分かりになるかと思います。
8ページを御覧ください。この中実球の爆縮で,レーザーのエネルギーを上げたとき,二次元シミュレーションの結果を示しております。実際に点火燃焼させて,発電炉として成立させることができることをここでは示しておりまして,その際に必要なレーザーパルス波形成型技術も既に確立いたしました。
それでは,9ページを御覧ください。ここでは加熱に関することを示させていただいております。高速点火における加熱物理機構を簡単に,左図に示しております。超高強度レーザーを高密度爆縮したコア近辺に瞬間的に照射します。レーザーのエネルギーは数十%から50%近い高率で電子に変換され,この電子が主に3種類の物理機構で爆縮プラズマを高速加熱します。
1つ目がエネルギーの高い電子で,飛程が長く,直接,高密度領域のプラズマを加熱します。これは図の中で,ピンク色で示したものでございます。
2つ目が,レーザーがプラズマを直接加熱する領域から熱拡散によって加熱するものでございまして,緑色で示しております。
3つ目が飛程の長い高速電子が飛び出していくことで生じる電荷アンバランスを防ぐ反対向きのプラズマ中の電子による加熱で,水色で示したところでございます。
これら3つの加熱物理機構のバランスは,加熱したい爆縮プラズマの密度,加熱パルス幅,それから,強度に依存しております。現在,大阪大学にある激光レーザー,あるいはLFEXレーザーで比較的簡単にできるコア密度を想定したときに,加熱に支配的な物理機構を示したのが右上の図でございます。実際の実験の範囲は,赤色で示された領域で,直接加熱から拡散加熱が重要な領域になっております。右下は,点火実験で予測されるパラメータでの領域を示したもので,やはり直接加熱から拡散加熱が重要な領域であることが分かります。つまり,下図のような点火実験における加熱物理を見据えた上で,右上のような現在の実験では,現実的に加熱を観測できるそういう領域を実験しているということでございます。
10ページを御覧ください。先ほど申し上げました直接加熱と拡散加熱の詳細を実験的に明らかにした結果を示しております。まず左に示すように,高密度の爆縮プラズマを生成します。これを加熱レーザーで加熱したときのX線像の結果が真ん中に示されております。X線の像ですが,X線のスペクトルは,実は加熱機構というか,電子の輸送のされ方に依存しております。その中でそれぞれに対応したスペクトルを分解して,下,X線像というものが加熱機構の違いを見分けることをできるということで,真ん中の図の上図で示されたように,拡散加熱というのはレーザー近辺に近いところから真ん中になっております。真ん中下図のように,直接加熱というのは,レーザー照射領域から離れて,高密度の領域の加熱が支配的となっていることが分かります。これらの結果から,拡散加熱による結合効率は10から15%と分かりました。また,直接加熱による結合効率は5から15%ということも明らかになりました。
次に,11ページを御覧ください。直接加熱に関する実験結果です。直接加熱の効率を上げるには,コア密度を上げるとともに,コア密度に適したスペクトルの電子を生成する必要がございます。加熱温度を上げるには,単純に加熱レーザーのエネルギーを上げることなのですが,しかし,単にレーザーのエネルギーを上げ,その強度を上げると,どんどんエネルギーの高い電子が発生します。
このエネルギーの高過ぎる電子というのは,実はコアプラズマを突き抜けて,加熱に寄与しません。実際には数100KeVか1MeVの電子をできるだけ多く作る必要がございます。そのために加熱レーザーパルスの時間的なコントラストを上げるとか,あるいは加熱レーザーの波長を短くすることが重要な技術ですが,これらに関しましても,最近,ほぼ確立することができました,例えばここで示しております実験結果は,コントラストの違いによる結合効率の違いを示してございます。直接加熱の結合効率は5%から15%に増加できてございます。ちなみに左の縦軸は,拡散加熱分15%を考慮したトータルの結合効率ございます。
次に12ページを御覧ください。先ほど示しましたように,大変高い効率でコアプラズマを加熱できることが分かってきましたが,かなり電子のフローがあるわけで,本当に展開に向けて,今と同じように,安定にエネルギーを輸送できるのかという懸念があります。電子輸送の安定性を示したのがここの図でございまして,電子がレーザー照射面から高密度のコア領域まで伝搬する際のプラズマの密度を横軸に,プラズマの電子温度を縦軸に示してございます。密度が高いところは衝突が支配的となり,不安定性は押さえられます。それが水色で示されております。
一方,温度が高くなると,非局所的に電子が拡散し,やはり安定になります。これは黄色っぽい色で示した領域でございます。つまり,電子フローが不安定になるのは赤色で示した領域で,密度は高くなく,かつ温度がある一定以下の領域となります。
これらの領域はレーザー共同により異なります。左が現在の実験条件,右が点火実験条件を示してございます。これに関して,黒の矢印で示したのが電子の発生領域からコアまでの電子輸送トラジェクトリーを大まかに示したものでございます。矢印の始まりはレーザーが照射されている近辺で,矢印の先端が最大密度のところでございます。見ていただくと分かるように,現在の実験も将来の実験も,共に同じようなトラジェクトリーで,不安定な領域にはならないということが分かります。
1ページを飛ばしていただいて,14ページを御覧ください。レーザー核融合高速点火研究開発に関する現状と展開に向けた知見をまとめたものでございます。
15ページを御覧ください。上3分の2がこれまでのレーザー核融合に関する,我が国がクリアしたマイルストーンを簡単にまとめたものでございます。高速点火に関しては,この20年間,相当理解が進み,今できることは,全てとは申しませんが,かなり,ほぼ全てできたのではないかと思っております。
問題はこの次ではないかと思っておりまして,次の課題は,やはり核融合燃焼と定常運転ではないかということでございます。
まず点火燃焼物理ですが,17ページを御覧ください。レーザー核融合燃焼で最も重要な課題の一つは,高密度プラズマ中でのアルファ粒子の振る舞いです。中でも点火燃焼を決めるアルファ粒子のストッピング,あるいは飛程が挙げられます。最近の研究成果によりますと,高密度プラズマ中では,従来考えられていたモデルよりも止まりやすい可能性があることを示してございます。これは核融合点火燃焼のしきい値を下げる可能性を示唆するものでございます。
もう1つは,2つ目として記載させていただいております燃焼波伝播の安定性です。燃焼波面の擾乱が懸念されておりますが,これは理論シミュレーションでは,核燃焼による熱的平滑化が予測されております。いずれにしろ,実験的な確認,検証が必要ですが,現在,高密度燃焼プラズマ実験が世界で唯一可能なのはアメリカのNIF施設です。この施設を利用,あるいは共同研究ができれば,我々が開発した世界最高の時間分解能の中性子計測器により燃焼の詳細の理解が記載できます。
18ページを御覧ください。左の写真に見られるように,この一,二年,実は米国と日本の連携強化がかなり進められ,今年の初めには,NIFを利用した燃焼物流に関する共同研究の合意を得ることができました。真ん中の図はローソン条件に対する核融合発生エネルギーを示しております。左から右に見ていただいて,最初の変曲点は燃焼が始まるところです。ローソン条件が1に近づいてきているところの変曲点が点火の始まりでございます。この図が示すように,NIFの核融合プラズマというのは燃焼が始まっております。この燃焼プラズマを調べることで先ほどの課題を明らかにできます。
そこで米国のNIFと我々の超高速中性子計測で核融合燃焼の詳細を実験的に明らかにすることを,この夏から実際に開始しようと言っていたところでしたが,残念ながらコロナで中断しております。
19ページを御覧ください。実は今年の初め,リバモアの所長と合意したことはもう一つございまして,それは我々が今,提案しております高繰返しの大型レーザー,J-EPoCHと呼んでいますが,これとリバモアのNIF施設の連携でございます。この連携が実現できれば,繰返しレーザーによるビッグデータ,燃焼プラズマのデータ,さらに,急激に進められておりますデータ駆動解析などを駆使することで,数値実験による核融合点火の実現が期待できます。
次に,核融合の定常運転について少し紹介いたします。21ページを御覧ください。これまでの成果を基に,世界は炉心プラズマの添加実証を目指し,シングルショットベースでレーザーエネルギーをどんどん増やす戦略の下,メガジュール級のレーザーを実現させました。右図,ここの右に示しておりますように,世界の大型レーザーは,基本的には50年前の技術で,ガラスレーザーをフラッシュランプで励起する方式で,シングルショットによる炉心プラズマ研究に限定されたものです。定常運転を行う工学的アプローチはできません。これはパワーレーザーの繰返し化技術が十分になかったという,そういう前提でございます。
ところが,近年,パワーレーザーの高繰返し化技術が産業応用などを目的に,急激に進展しております。そこで我々は50年前の技術から脱却し,つまり,フラッシュランプの代わりに半導体レーザーを利用するなど,最新のレーザー技術を導入した繰返しレーザーで定常運転を行い,炉工学と炉心プラズマの両輪を世界に先駆けて推進する独自の戦略を提案することといたしました。
これは学術会議マスタープラン2020に出した10キロジュール,100ヘルツレーザーのJ-EPoCH施設を利用したものでございます。このJ-EPoCHレーザーは,100ジュール,100ヘルツのモジュールレーザーを100台並べるものでございますが,このモジュール単体は,二,三年後には完成する段階に今来ております。ほぼ順調に開発が進められております。
22ページを御覧ください。このJ-EPoCH施設ができますと,ここに示しますように,世界一の高平均出力のレーザー施設となります。このような世界に類のないレーザーが実現できれば,学術フロンティアから産業応用まで幅広い利用が可能になります。その一つが先ほどから申し上げておりますレーザー核融合の次なる課題へのアプローチでございます。一つは数値実験,核融合点火を目的としたビッグデータ取得のための繰返し実験です。もう一つがレーザー核融合の定常運転実験でございます。
23ページを御覧ください。今,お示しさせていただきましたJ-EPoCHで可能なレーザー核融合定常運転実験でできること,つまり,レーザー核融合未臨界炉でできることをまとめたものでございます。まず核融合エネルギー,あるいは中性子で発電炉を再現できます。特殊なターゲットではなく,シンプルな,これまでの実績を基にしたターゲットを使って,1ヘルツ動作させることで,核融合中性子により,1ワット程度の発電を実証できます。
また,発生する核融合中性子数は1秒間に10の13乗から15乗,これは1ヘルツだと10の13乗,100ヘルツだと10の15乗ということでございます。こういう値が期待できまして,磁場,レーザーに関係なく,核融合炉材料開発に役立つものと考えられます。さらに,トリチウム増殖の技術開発にも大きな貢献が期待できます。
このような将来のレーザー核融合研究に関する議論は,24ページを御覧ください。24ページの上に示しますように,オールジャパン体制で今議論されておりますIFEフォーラムという,企業支援のフォーラムの下,データ核融合戦略会議を設置し,10年後に主体となる人たちを中心に議論が進められております。これは先月をもちまして一区切りいたしまして,本年度からレーザー核融合,未臨界炉基本設計を目指した委員会を立ち上げる準備が今進められてございます。
ということで,最後の25ページにまとめを示させていただいております。高速点火に関するこれまでの成果とこれからのレーザー核融合研究開発に関する計画案を報告させていただきました。
以上です。どうもありがとうございました。
【小川主査】 兒玉委員,ありがとうございました。研究の現状と,それから,今後の研究の方向性について御紹介いただきました。
それでは,まず皆様から御質問等をお受けしたいと思います。どなたかいらっしゃるでしょうか。挙手をしていただければと思います。
岸本委員,お願いします。
【岸本委員】 最新の進展について,まとまったお話を頂き,ありがとうございました。高速点火の加熱の物理が明らかになって,大変いいことだと思いますが,テクニカルなことをお聞きできればと思います。
その一つの直接加熱ですが,これはいわゆる拡散的な加熱,すなわち,古典的な熱伝導によるゆっくりとした加熱プロセスがコアの熱輸送にも寄与するということかと思います。これは今までも起きていたプロセスと思いますが,これがリアクターサイズの大きなコアになったときも,コア全体に広がって,中心が効率よく加熱される可能性があると理解しました。
質問としては,これがリアクターサイズにスケールしたときに,この効果がプラスに働くのかどうか,すなわち,コアが大きくなれば,高速点火はむしろ中心を狙って加熱しないといけないので,全体に広がるような拡散的な加熱では難しいようにも思いますが,そのようなターゲットのスケールに対する見通しをお聞かせいただければと思います。
【兒玉委員】 まず,中心の温度が高くなければいけないというのは,これは中心点火方式の話です。高速点火の場合は,最初に申し上げたように,燃料の一部がそういう領域を作ればよくて,そういう意味では,レーザーを照射した近辺がアルファ粒子の飛程範囲が温まればいいということで,その点は大丈夫です。それから,もう1点は,大きくなったらどうなるのかということですけども,実は,岸本先生が言われるように,熱拡散ですから,時間がかかります。
実は,炉のことを考えたとき,圧縮される燃料も大きくなりますが,飛散する時間,いわゆる慣性の時間が長くなると。それに合わせて,実は加熱データも多分長くなるはずです。そうすると,今のところ,1ピコ秒とか2ピコ秒とか5ピコ秒ぐらいでやっていますけども,点火燃焼は20ピコ秒ぐらいになる予定で,そうすると,より熱拡散が効いてくる状態ということですね。
ですから,むしろ熱拡散というのは結構重要です。ただ,熱拡散の効率は,そんなに上下させるということはあんまり操作ができないところもありまして,そこは正にドラッグ,直接加熱のところをどれだけストッピングをうまくするかというところがみそになるかなとは思います。
【岸本委員】 そうすると,直接加熱と拡散加熱を併用して行う戦略だと思ってよろしいでしょうか。
【兒玉委員】 これはやはり最初,時間の初めの頃はやっぱり直接加熱ですね。だから,それが実はある程度進む,熱拡散の前に直接加熱が起こりますので,そこの加熱の仕方が実はいろんな磁場の発生とかを効かせて,最終的には自己磁場が生成されて,全部そこでガイドされて加熱されるということになると,シミュレーションでは予測されていますので,どちらもこれは重要な機構と思います。
【岸本委員】 なるほど。そうすると,プラスの方向に取れば,先ほど言われたように,高速点火を行うタイミングでは密度は既に十分上がっているので,コアのどこか1点が加熱され,点火すれば,それが,全体が燃焼するというシナリオ,すなわち,その1点が中心であってもいいし,周辺であってもいいし,その辺りは自由度があり,大きな問題ではないと思ってよろしいでしょうか。
【兒玉委員】 はい。若干,実はファクターがエキスパンジョンロスの関係で少しだけ変わりますけど,それを考慮して,シミュレーションをやっておりますので。
【岸本委員】 分かりました。物理の全体像が分かってきて,それが問題の解決につながるといった流れは非常にいいことじゃないかなと思いました。
それから,もう1点,すみません。NIFの状況はあんまり存じ上げていないですけれども,申し訳ありません。ほぼ点火状態にあるというように先ほど言われましたでしょうか。
【兒玉委員】 いえ,やはり点火というのは大変難しくて,ローソン条件1というのはなかなか難しいですね。18ページで示させていただいたように,点火のところまではやはりもうひと押し,いろんな工夫をしないといけない状態。ただ,燃焼が起こっているわけですね。
【岸本委員】 なるほど。
【兒玉委員】 はい。この燃焼を我々は使うべきだと。
【岸本委員】 分かりました。NIFの場合は,予算の制約等もあって,ポイントデザイン的になっていたと思います。一方,先ほど,9ページのレーザーの強度とパルス長の図で,赤色で囲まれている領域は三つが競合する領域であり,その領域は動作点として望ましいという意味なら,ポイントデザイン的な状況になっていて,その点に動作点を持ってくるのは難しいように見えてしまいますが,それは大丈夫でしょうか。
【兒玉委員】 これは現状を表しているので,ポイントになっておりまして,点火燃焼のところは,今,最適化されたポイントの状況です。
【岸本委員】 分かりました。
【兒玉委員】 シミュレーションですけども,やはり最適化していっているところで,ある意味,もう最適化されたところを示させていただいたということでございます。
【岸本委員】 先ほど申し上げたのは,NIFの場合,様々な状況がうまくいったとすれば,ポイント的に点火する,そういう設計だったというように理解していますが,この場合は,そのような意味でのポイントデザインではないということですね。
【兒玉委員】 じゃないですね。
【岸本委員】 その領域というのは広いと思ってよろしいでしょうか。
【兒玉委員】 はい。そうです。
【岸本委員】 分かりました。ありがとうございます。
【小川主査】 ありがとうございました。
ほかの委員の方,いるでしょうか。
私の方からまず。NIFの話なので,NIFの件で,18ページの図で確認ですけども,NIF,現在は70キロジュールぐらいのアウトプットが得られていますか。
【兒玉委員】 そうですね。それぐらい。もうちょっと,70キロジュールぐらいは出ております。
【小川主査】 別にこれはこれでいいですけども,こう書くと,この図の中でいつも皆さんに誤解されやすいのは,Qがニアリー1となっている点です。ここでは,Q値が圧縮に使われたパワーと核融合反応で発生したパワーの比として定義されていて,一方で,入射レーザーパワーとの比としてゲイン値Gが定義されていますので,G値が磁場核融合で使われているエネルギー利得Q値ですね。
【兒玉委員】 そうですね。はい。
【小川主査】 その辺は,皆さん,誤解されないように。ただし,私の理解だと,NIFもまだ点火条件G>1には2桁ぐらい低いですけども,うまくすれば,ここに書かれた横軸のパラメータが0.9か1ぐらいまでいけば,ぐんと上がって,NIFの所期の目的であるゲインが1近くまで行くということに狙っているわけですね。
【兒玉委員】 そうでございます。これは論文からそのまま引いておりまして。
【小川主査】 それからちょっと,別に皮肉を言っているわけじゃないですけども,6ページでの中実球と中空シェルの説明において,いかに中空シェルを圧縮するNIF方式というのが大変かというのが如実に判りますし,一方で中実球は正に高速点火方式ではこれが使えるから非常にメリットであるというのはそのとおりだと思うので,今後はこの方向で行くといいですね。しかし、中空シェルから中実球までに来るのに割合時間がかかりましたね。
【兒玉委員】 発想の転換というのができませんでした。正直,我々もシェルを爆縮にするという頭に凝り固まっていました。
【小川主査】 そうですよね。
【兒玉委員】 はい。これというのは,実はもともと本当はここから出たのではなく,どういうふうに電子が輸送されるかという計測に中実球を使ったんですね。それでシミュレーションをやっていたら,あれっという。
【小川主査】 そうですか。
【兒玉委員】 そういうことです。セレンディピティということかと思います。
【小川主査】 でも,非常にいいことだと思います。ありがとうございます。
ほかの委員,どなたかいますか。
【岡野主査】 短いのを聞いてもいいですか。
【小川主査】 はい,岡野委員,どうぞ。
【岡野主査】 8ページで,アルファ1とアルファ2というのが多分説明されなかったと思いますが,8ページですね。これは縮退エネルギーと内部エネルギー比とかいう,例のアルファでよろしいですか。
【兒玉委員】 はい。
【岡野主査】 それで,1.7によく乗っているように見えるのは,これは計算結果ですか。
【兒玉委員】 計算結果です。
【岡野主査】 計算結果ですか。分かりました。それは非常に希望がありますよね。アルファで行って,1.7で済むなら。
【兒玉委員】 はい。
【岡野主査】 ありがとうございました。
【小川主査】 ほかの委員はどなたか。よろしいですか。
では,私なりに総括させていただきたいと思いますけども,兒玉委員から参考資料として配布されてありますアカデミックな話や産業応用の話は本日割愛されましたけれども,参考資料として見ておいていただければと思います。
それで,兒玉委員から,現状の研究について紹介して頂きましたけども,3年前の議論のときには,今後の方向性としては,再現性の担保やシミュレーションモデルによる検証が可能とされるだけの十分なデータ蓄積を今後は望むということでありました。本日,兒玉委員からは,先ほどありましたように,それをJ-EPoCHという繰返しレーザーで,よりアカデミックなデータを蓄積していくことで進めたいと。それから,先ほど言ったシミュレーションを充実させていくという方向で研究を展開し,しかも,中実球という新しいコンセプトで研究を展開していきたいと。そのJ-EPoCHという高繰返しデータの開発ですが、これは正にレーザー研が展開してきたものであり,その技術開発は,核融合以外のアカデミア,それから,産業応用からも期待されておるので,非常に重要なものであると考えており研究開発を展開していきたいという趣旨の御紹介でございました。
その研究の方向性,考え方に関しまして,いかがでしょうか。
例えば上田委員,大阪大学,一緒で近くにいらっしゃいますけれども,近くで見ていて,何かいかがでしょうか。
【上田委員】 核融合の研究をこれから進めるに当たって,もちろん核融合プラズマそのものの研究も必要ですが,やはり波及効果,広い応用,あるいは展開というものも視野に入れた上で,核融合研究の本流のところを進めていくという,両にらみの方向が必要だと思いますので,その意味で,先生の考えられている方向というのはよろしいのかと思います。
問題は繰返しレーザーのところですね。繰返しレーザーのところの開発をいかにどのような形で進めていくか。そこの具体化が今後,何らかの形で見えてくるといいのではないかと思いますが,私は,基本的には,兒玉先生のおっしゃる方向を支持したいと思っています。
以上です。
【小川主査】 ありがとうございました。正に現在,レーザー研は,ハイパワーレーザーの開発では正に世界をリードしている一つですので,それを高繰返し化として今後は発展させて,核融合のみならず,いろいろな分野に展開させていきたいということだと思いますので,是非我々としても期待したいと思います。
【兒玉委員】 ありがとうございます。
【小川主査】 そういうことで,本日の御説明で,大阪大学レーザー科学研究所は,これまでの装置で十分な成果を上げてこられたことが分かりました。そして,本日は,核融合の枠を大きく超えた新たなコンセプトに基づく構想も御披露いただきました。このような意欲的な構想を示していただいたことにつき,核融合コミュニティの一員として感謝するとともに,今後の発展に対して期待を申し上げたいと思います。
ということで,本日の兒玉委員からの御紹介を閉めさせていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
【兒玉委員】 どうもありがとうございました。
【小川主査】 では,続きまして,議題4,「研究開発プログラム評価の新たな仕組みについて」に入ります。それに関しまして,岩渕戦略官から御説明をお願いいたします。
【岩渕戦略官】 資料4に基づき,御説明いたします。研究計画・評価分科会における研究開発計画と分野別緊急戦略・計画との関係という1ページ目から御説明差し上げます。
この資料4は,核融合科学技術委員会の親委員会に当たります研究計画・評価分科会の資料です。この第10期の核融合科学技術委員会あるいは親委員会である研究計画・評価分科会においては,試行的な新しい取組として,研究開発計画という,分野によらない研究開発計画に基づいて,分野によらない統一的な研究開発プログラム評価を試行的に実施してみようということで,これまで第10期の期間,試行的な取組が行われてきました。その結果に基づいて,来期,第11期において,来年,令和3年以降の評価の在り方の方針が,研究計画・評価分科会から示されておりますので,その資料を御報告し,皆様から御意見をお伺いしたいと考えます。
1ページにあるとおり,この第10期,現在取り組んでいる取組については,左側に研究開発計画と書いてありますが,分野を横断した文科省が所管する研究開発全てについての研究開発計画を一つ立て,そこに各分野の研究開発の計画を束ねていくという取組でした。
これに対し,右側,令和3年以降は,分野横断の研究開発計画に代わり,分野別で研究戦略・計画を立ててはどうか,と研究計画・評価分科会から示されています。分野別ですので,どのような分野別計画を立てるか,その範囲あるいは粒度については,分野ごとのこれまでの経緯などを踏まえて,各分野別の委員会,すなわち核融合であれば,核融合科学技術委員会において個別に設定するということです。分野によらない横断的な研究開発計画ではではなく,分野別の研究戦略・計画を立てるという方針に変わっているということです。
この右側の分野別研究戦略・計画の一番下の欄ですが,各分野の研究計画を立てるに当たって,これまで各分野の委員会で既に様々な戦略・計画が立てられているわけですが,そうした既存の戦略・計画をできるだけ引用しながら,不足の部分があれば最低限のポイントだけ補足するような形で分野別の文書を取りまとめていってはどうかという方針が示されています。核融合分野であれば,例えば原型炉の研究開発ロードマップといった核融合科学技術委員会が決めた分野別の研究戦略があるわけで,こうしたものをできるだけ活用し,評価疲れのようなことがないよう進めていくことが可能になると考えます。
資料4の2ページ目です。研究開発課題,研究開発プログラムといったものがどのように今後変わっていくのかが書かれています。研究開発課題の捉え方については,基本的にこれまでと同じということです。研究開発プログラムの概念については,左側にあるとおり,平成30年度より,試行的に,この分野によらない,分野横断的な研究開発プログラムという一律の概念を設け,評価を行ってはどうかということを研究計画・評価分科会が進めてきたわけです。本委員会においても,前回6月の会議でも諮らせていただきましたが,研究開発プログラムの評価表を,分野によらない全体フォーマットにしたがい作成してきたところです。
これに対して,この資料2ページの右下方ですが,令和3年以降の新しい考え方,分野別プログラム(案)ですが,これは,全体ではなく研究分野ごと,分野別プログラムというものを策定していくということが適当ではないかとなっています。それもまずは客観的,俯瞰的な評価に使えるようなエビデンスの蓄積を図るところから,着実に取組を進めていったらいいのではないかということです。分野別のやり方,核融合科学技術委員会のレベルで核融合の評価については進めていくというような方向性が示されています。
最後のページ,3ページ目です。この新たな評価の仕組みに関する今後の予定・見込みという資料です。これを見ると,今申し上げたことが分かりやすく書かれていますが,今まで研究計画・評価分科会において研究開発計画を立ててきましたが,この矢印が令和2年度までで終わっています。すなわち,この研究開発計画という分野横断の計画は廃止するという方針で,その代わり,分野別の委員会,この核融合科学技術委員会も分野別委員会の一つに当たりますが,こちらで分野別の戦略や計画を,既存の戦略や計画をうまく活用しながら立てていくということが方針として示されています。第11期,来年の研究計画・評価分科会,そしてその傘下にある本委員会においては,このような新しいやり方で評価の取組を進めていくという方針です。こうした方針について,研究計画・評価分科会としては,各分野別委員会の皆様の声,意見などを聞きながら最終的に決めていきたいということですので,御意見をお伺いしたいと思います。
【小川主査】 ありがとうございました。背景が分かりづらいかと思いますが,後で,この親委員会である研究計画・評価分科会の委員であります五十嵐委員と高梨委員から一言コメントいただきたいと思いますけれども,その前に,それ以外の委員の方は背景を十分に御理解いただけないと思いますので私の方から簡単にご説明申し上げます。親委員会の下にはこの核融合科学技術委員会以外にも幾つかの委員会があります。例えば,原子力科学技術委員会,それから,防災科学技術委員会,量子科学技術委員会,ライフサイエンス科学委員会などがあります。
例えば,原子力科学技術委員会というのは,文科省が推進しています原子力関係の計画を議論していますが,原子力関連では,経産省にも委員会があって,いろいろ研究開発のことを議論しているわけですね。また例えば防災だったら国交省,情報だったら総務省とか,文科省以外の他省庁でいろんな研究開発をやっています。それから,国としても,総合科学技術・イノベーション会議とかでも議論しています。従ってこれらの委員会においては,ほかの省庁,内閣府等でやっている議論や方針と,文科省が所管している研究計画・評価分科会での計画がどういう位置づけになっているのかという点や関連づけを明確にした上でまとめるべきであるというのが今回の改訂の趣旨でございます。この1ページ目右側のカラムの一番下に書いてあります。ちょっと濃く書いてありますように,「各分野委員会や政府全体において,別途検討やとりまとめがなされている戦略あるいは計画をできるだけ引用し」,というのが,文科省が見ている以外の戦略や計画ですね、それをできるだけ引用して,「分野を俯瞰する戦略・計画として最低限のポイントを記載した文書を,この分野別委員会でまとめるべき」であるということです。文科省のこの研究計画・評価分科会だけで閉じるのではなく,ほかの政府全体の戦略等を勘案しながらまとめるべきであるということをうたっているものであります。ただし実は,先ほど戦略官も言いましたけど,核融合に関しては,幸いなことに,この委員会がほぼ全部所管していますので,ある意味では,我々はこれを先取りして行っていると言えます。従って、核融合に関しては特に根本的に何か考え方,方法,検討の仕方を変える必要があるというわけではないですね。私はそう理解しております。
ただし,研究計画・評価分科会全体としては,いろんな分野がありますので,原子力,防災,ライフサイエンス,量子などいろいろありますので,そのような分野については全体を俯瞰しつつ今後は議論しましょうという指針を出しているわけです。それに対して,何かコメントありますかという位置づけだと思います。
岩渕戦略官,そういう位置づけでよろしいでしょうか。
【岩渕戦略官】 はい。
【小川主査】 はい。それでもまだ十分じゃないかもしれませんけど,五十嵐委員,高梨委員,親委員会に出席されて,コメントがありましたらよろしくお願いします。フォローアップ,お願いします。どちらからでも。
【五十嵐委員】 では,五十嵐です。今,小川先生が御説明くださったとおりですけれども,研究計画・評価分科会の方で,以前に作った研究開発計画,この核融合科学技術委員会でも皆さんで議論をして作成いたしましたが,同様に,原子力,防災であるとか,各々から出てきたものを一つにまとめた研究開発計画というのがございました。しかし,それがあまりちゃんと機能していないのではないかという見方もあったようで,ならば,やはりもともとの分野別の方がやっぱり一番よくその分野のことは分かっているのだから,それぞれで,エビデンスに基づいた計画・評価をしていく,それを積み上げていくべきではないかというところなのかなと私としては理解しております。
本当にいろんな分野が研究開発計画にまとめられ,それぞれがもうまるで粒度も違い,時間軸も違って,特にその中でも核融合は時間軸なども大きく違って,ちょっと特殊性があるかと私は思っています。この委員会では研究開発計画をつくるときに,かなり議論をさせていただきましたし,小川先生がおっしゃったように,もともとこの分野はオールジャパンで一体として取り組まれていて,その情報がこの委員会にまとめられてきているので,ここで議論していることが全体の計画や評価となっていくのだろうなと思います。特別に何か変わるということはないのかなと私も思っています。ただ,ちょっと長くなってすみませんが,研究開発計画が目指したことの重要性もやはりあったと思います。他分野の人にも分かる言葉,分かる形で示す,評価していくことです。単に従来の分野別に戻るのではなく,それぞれの分野により合ったやり方,示し方を目指していくことになるのかなというふうに,私としては理解しているところです。
ちょっと私自身もまだ十分に理解していなく,ちゃんと説明できずに申し訳ありませんが,そういうところです。どうも失礼いたしました。
【小川主査】 ありがとうございました。
高梨委員,いかがでしょうか。
【高梨委員】 皆さん,こんにちは。高梨です。小川先生がおっしゃったとおりに,核融合の方は非常に幾つもの技術が並行して走っていて,それをこの委員会がまとめているという形で,非常にまとまった,この様々な委員会の中でも統一感のある活動をされていますので,特段新しいことを求められるわけではないと。何かの作業が増えるなどですね。でも,五十嵐委員がおっしゃったように,今まで不十分だった点というのを踏まえながら,今後,展開していくというのがきっと求められているだろうなとは思っています。
すみません。私自身もあまりよく理解していないところがありますけれども,過度な負担が生じるというわけではなく,今までどおりアクションプランに基づき,作業部会も含めて進めていくようにすればよろしいのではないかと思いました。失礼いたしました。
【小川主査】 ありがとうございました。この研究計画・評価分科会の山下戦略官からも,核融合は模範生ですから,特に変える必要はありませんと言われておりますので。ということで,今後もこの委員会が日本の核融合の司令塔となって動いていくということで,皆様,よろしくお願いいたします。ということで,上の委員会にも上げていきたいと思います。
それからあと,五十嵐委員が言われましたように,他分野にも伝わるようなメッセージを伝えていただくということで,最後に,植竹委員から何かあるでしょうか。
【植竹委員】 日本原産協会の植竹です。
【小川主査】 植竹委員,どうぞ,よろしくお願いします。
【植竹委員】 今のお話の中で,国としての戦略,他省庁でやられているものも引用しながらというお話の中で,核融合に関連してくるエネルギー戦略としては,当面,経産省が今取り組んでいる次期エネルギー基本計画になろうかと思います。これも参照,引用するということになります。今回,菅総理がおっしゃっている2050年,CO2,実質排出ゼロという目標を受けて議論されていくわけですけれども,ここで議論されている2050年というのが2100年に向けての一つのマイルストーンになりますので,時間軸としては,21世紀後半のエネルギーがどうあるべきかというところと当然かぶってきます。現在はフィッションの方に比重がかかって議論されていくだろうと思いますけれども,先ほどのEUで行われている100万キロワット級1,000基の計画とか,先ほど兒玉先生が2ページで御紹介いただいたような数十万から100万キロワット級の中型の発電を目指しているというマーケットは,fission側で検討しているSMR(スモールモジュラーリアクタ―)の新増設などもマーケットと当然競合してくる部分です。つまり,先ほど,ITERなどfusionの議論はその中で連結しているというお話が出ましたけれども,必ずしもそうではないのかなと感じるところです。
この辺は発電炉のユーザーとなる電力会社としては,どれに投資していくのかということの超長期戦略にもちろんなってきますので,当然視野に入れて,fissionとfusionの両方見ていくことになると思います。
以上です。
【小川主査】 はい21世紀後半のエネルギー政策で重要であるとの植竹委員からのご指摘ありがとうございます。おっしゃるように,菅総理のこの間の2050年の話について,私の家で取っている新聞では,記事の最後に,核融合も入っていました。エネルギー資源量という点に加えて,エネルギー技術として,何を日本としてレベルアップしていくかという視点も重要であり,核融合もその一つだと思います。従って,植竹委員がおっしゃるように,この委員会だけでローカルに核融合をクローズするのではなくて,ほかのもっと広い経産省も含めた国の委員会にもうちょっと核融合が発展的に議論していただけるように手を広げていくべきだということだと思います。
是非それは進めたいと思いますけれども,その辺の感触を含めて,岩渕戦略官,いかがですか。
【岩渕戦略官】 大事な御指摘ありがとうございます。核融合は,現在の第5次のエネルギー基本計画にも当然位置づけられているものです。カーボンニュートラル等の重要性も高まっていますので,引き続き第6次のエネルギー基本計画等にしっかり核融合が位置づけられるよう,政府部内での調整,文科省としても取り組んでいきます。
【小川主査】 皆様もいろいろな機会で,いろいろな場で,エネルギー戦略等で御発言する機会があると思いますけれども,そのときに,是非とも核融合についても積極的にオピニオンを発信していただければと思います。
それがこの委員会にフィードバックされるとともに,別の委員会でも議論されるようになって,もっと広く核融合が議論されることの方がよいと思いますので,御尽力いただければと思います。
ほかに御意見あるでしょうかよろしいでしょうか。 それでは,次に移らせていただきます。議題5の「アウトリーチ戦略,活動推進計画について」に入ります。本件については,10月15日に開催された原型炉開発総合戦略タスクフォースで審議いただいていますので,タスクフォース主査代理であり,アウトリーチヘッドクォーターのメンバーでおられる笠田教授から説明いただきたいと思います。笠田先生,お願いいたします。
【笠田教授】 ありがとうございます。それでは,資料5に従って説明させていただきます。核融合エネルギーに関するアウトリーチヘッドクォーターの活動報告ということで,ヘッドクォーターの笠田から報告させていただきます。
次のページをめくっていただいて,まずこのヘッドクォーターですけれども,こちらは,原型炉開発に向けたアクションプラン,平成29年に核融合科学技術委員会で認めていただいておりますけども,こちらの社会連携という項目において,第1回中間チェックアンドレビューまでに,アウトリーチヘッドクォーターによる活動として,こちらの表にあるような項目を実施するということになっております。アクションプランに示す期限よりも早い平成31年2月にはヘッドクォーターを立ち上げまして,こちらの目的と活動方針に沿って活動してきております。
まず,このヘッドクォーターの目的をおさらいさせていただきますと,大学及び研究機関が従来個別に実施しているアウトリーチ活動を集約させ,一体となって戦略的なアウトリーチ活動を実施することとなっております。実施体制は文科省,量研機構,核融合研,大学等の関係者からなっております。
アクションプランにおいては,このような達成目標が書かれておりますけれども,現時点で,2020年まで行うべき3つの点は達成できており,さらに,現在の懸案であるコロナ禍における核融合アウトリーチ活動を模索すべく,アウトリーチ活動推進計画への追加項目の議論を行っているところです。
次のページには,核融合技術委員会より,ヘッドクォーター活動の活動戦略を明確化しろというような御指示を頂いておりましたので,それに応えるという意味もあって,このようなヘッドクォーターの活動戦略を設定しております。まず戦略目標として,核融合科学技術を取り巻く幅広い層に存在するステークホルダー間の対話を可能とする環境を整備し,核融合科学技術の社会的価値と社会受容性を高めることを目標としております。
このために3つのカテゴリーの活動指針を立てております。まずカテゴリー1として,アウトリーチヘッドクォーターの位置づけの確立,これは核融合科学技術関係者,コミュニティの中との双方向やり取りでできるものと考えております。そして,カテゴリー2は,各ステークホルダーを対象として,情報発信の活性化を行う。カテゴリー3として,ステークホルダー間の対話をつなぐ環境の整備を行います。ここで言っているステークホルダーというのは,核融合を取り巻く様々な方々を含んでおります。これらの3つを統合して,この戦略目標を達成していきたいと。当然これを実施していくには,核融合アウトリーチとしてのプラットフォーム化というものがやはり必要であろうと。個別にやっているだけでは,これだけのステークホルダーを対象としての活動はなかなか難しいと考えているわけです。
そのために,今後,個人や組織で展開している活動の情報交換や,今後立ち上げるべき企画の提案などを中心に,戦略的なアウトリーチ活動の推進方策を議論してまいります。既に議論しております。
また,それぞれの企画がどのステークホルダー,ターゲット層を対象としているのか,アウトプット・アウトカムとして何が期待できるかなどについて整理しながら,対象とするターゲット層に突き刺さるとがった企画を目指します。更にアウトプットとして,この核融合アウトリーチとしてのプラットフォーム化を目指します。
次のページには,令和2年度,これまでにおけるアウトリーチ活動推進計画と進捗状況というものを表にしております。一番左にそれぞれのターゲット層を小中学生,高校生から全般まで属性ごとに分けております。かつ,その次の列に活動内容ということで,その次の列に進捗状況ということになっております。
当然,コロナ禍ですので,一部のリアルなイベントは中止になる,オンライン開催になるなどして変更されております。そのような中でも,皆さん,工夫されて,様々なオンラインイベント等を行われているというのが実際でございます。もちろんまだ活動が進んでいないものもありますけれども,アウトリーチヘッドクォーターができましたので,いろいろな情報交換しながら,鋭意進めているところです。
カテゴリー1のヘッドクォーターの位置づけの確立に関するコミュニティを対象とする活動ですけれども,まず立ち上げに当たっては,我々の主体となる学会であるプラズマ・核融合学会の学会誌にサロン記事として,小川先生を主として,この活動を紹介する記事を掲載していただきました。
また,学会の年会では,核融合若手インフォーマル会合の中で,こういった核融合をどうやって世の中に知らしめていくかというような情報交換の場を設けて,コミュニティから意見を聴取しました。
また,ヘッドクォーターの活動内容を共有する場として,核融合研の共同研究を活用させていただいて,この「核融合エネルギーの社会的受容性向上のためのアウトリーチ活動の進め方」を検討しております。
今後,アウトリーチ活動を進めるに当たり,やはり核融合でバラ色の未来ということだけでは,今の世の中は会話ができないということもありますので,きちんとリスクコミュニケーションということを,我々研究者コミュニティも認識を持つべきであろうと。特に安全性やポスト将来性などについて,客観的な事実をきちんと正しく捉えて,社会に説明していく責任があると考えております。そのためのガイドライン,あるいはガイドブックのようなものを作成するように議論しています。
続きまして,カテゴリー2,「各ステークホルダーに対する情報発信の活性化」に関するヘッドクォーターの活動です。これはもういろいろな層に訴えかけることになりますけれども,やはり情報発信,外部に向けて情報発信する支援として,文部科学省の果たす役割は大変重要とコミュニティも期待していますし,文科省さんは,その責務を果たすべく頑張られております。
文科省の最初の取組として,核融合研究全体を紹介する核融合ホームページ,「Fusion Energy~核融合エネルギーの実現に向けて~」という,非常に格好いいサイトを立ち上げていただきました。
この目的は,このホームページがコミュニティのポータルサイトとして機能することを目標としております。また,対象として,核融合を知らない層,研究者に至る広い層に向けて,各ターゲット層に有効なコンテンツや必要な情報を掲載するようにしております。
ホームページ構成上の注意点としては,各メニューのターゲットの明確化ですね。誰に向けて発信しているのかという観点から,研究の中心となる研究所や大学にとっても興味関心を引くポータル,入り口としての機能など,いろいろな情報を注意して作っていただいているのがよく分かります。
そして,人材育成に向けてというのが,今後の核融合研究にとって最も重要なところでもありますし,核融合研究を学べる大学一覧などをこちらの方に掲載し,研究者や技術者のキャリアパスやメッセージなど,核融合研究している人の顔が見える形で共感を得られるようなことになればという思いで,このようなコーナーも設置されていると思います。このような活動は,昨年11月末の開設以降,文科省のホームページのトップバナーにも掲載され,高く評価されております。
ということで,こういった活動で,コミュニティ外への周知のために,省内他施策との連携なども行っていただいているということです。
そのカテゴリー2の続きですけども,もちろんボトムアップ的な活動をコミュニティの中では行われているわけです。核融合全体を俯瞰しつつ,ターゲット層を意識した企画なども行われております。特にターゲット層を意識して,例えば子供を対象とした将来の原型炉計画などを担うのは今の子供の世代ですから,そういった子供でも読める一般向けの書籍というものも,ヘッドクォーターの中で議論を重ねながら進行しております。
ほかにも,もうちょっと近いところでは,次世代を担う高校生,高専生へのアプローチということで,ITER機構が実施するインターンシップについて,今までとは異なる層への認知度向上を目指してチラシを作成して,大学,高専等へ配布しているそうです。高校生を対象としたITERへの研修ツアーについて,全国のSSH指定校やSGH指定高,高等専門学校への案内も進んでおります。いろいろ具体的な話も出ているとお聞きしておりますけれども,やはりコロナのためにいろんな難しさがあるというところの中で,ただ興味を持っていただける高校などはたくさんある,出てきていると伺っています。
こういう中で,学生を対象,コロナの中で,なかなかリアルイベントがない中で,学生を対象としたインフォーマルミーティングというものが行われており,ITER及びLHDのバーチャルツアーなども行われております。こういった大学,大学院を目指す若者,学生向けに核融合研究ができる大学の研究室リストがウェブサイトにまとめられて,非常に整理されているところです。
こちらはまだ長く続きますけども,当然QSTの方でもITERの広報というのは非常に注力してやられています。このような最初のトロイダルコイルの式典を開催して,幾つかの報道機関でITERの現状が取り上げられております。そして,新たな試みとして,ITERに関するユーチューブを使った広告動画配信を行ったところ,48万回の視聴という実績を得られているそうです。また,JT-60SAの完成,ファーストプラズマに向けて,式典の開催とともに,つくばとタイアップしたようなイベントや,テレビ番組に取り上げて,実際にもテレビ番組で幾つか私も視聴させていただきましたけども,非常によいテレビ,好意的な企画が多く取り上げられていると思って,何となく核融合という言葉をテレビで聞く機会が多くなっております。あるいはITERを題材にしたコミックも作られているということです。
量研機構の次に,阪大レーザー研ですね。こちらも阪大レーザー研さんが国際会議を主催した際に,公開イベント,「核融合とレーザー」を開催したところ,最初の予想以上に,親子連れを中心に入場者があり,大盛況でした。NIFSとQST,ほかの大学,私ですけども,いろいろ協力して,非常に好評に終わったと思います。
核融合研でも当然,いろいろな講演会や科学イベントを通して,一般市民に向けて実施しております。毎年5月に行っていたFusionフェスタ,日本科学未来館,東京で行っていましたけれども,これは残念ながらリアルイベントはなかったと思います。9月にはオープンキャンパスのイベントを実施したそうです。科学技術館の科学ライブショー,「ユニバース」やサイエンスカフェなどの場を用いて,NIFSの研究者が登壇して,一般市民とコミュニケーションを持つ機会も最近はできてきています。
ここまで,カテゴリー2までいろいろな活動を簡単に御説明しましたけども,その先にあるカテゴリー3ですね。各ステークホルダー間の対話をつなぐ環境の整備に関する活動,これはある意味,ここまで行けば核融合というのは社会に対して導入していくというか,そういった直前を目指すというところだと思いますけども,ここに至るまでに,コミュニティ内外への信頼を醸成するための地道な活動が大切であると考えております。その一環として,NIFSなどでは科学技術コミュニケーション人材を非核融合分野から新たに採用しており,多様なステークホルダーの間をつなぐ要となることを期待していますし,実際につながりが今は生まれてきているというふうに私も実感しております。
また,数名の核融合研究者が北大の科学技術コミュニケーター養成プログラム,CoSTEPを修了するなど,専門性とコミュニケーションスキルを併せ持つ核融合人材の育成の足がかりとなることが期待されております。私もほぼ修了しております。
これまでのヘッドクォーター活動の総括として,これは非常に喜ばしいですけれども,文科省の各部署が行った広報活動を省内投票や審査により表彰する「広報顕彰」を実施しているそうですけども,ヘッドクォーターの創設や,その関連のアウトリーチ活動を,「核融合コミュニティ One Teamによるアウトリーチ活動への挑戦」としてエントリーしたところ,「ターゲット毎に多様な方法でアプローチしている点や既存のリソースを活用し継続的に行う工夫がなされている点など,他施策にも参考にすべき事例が多い」として,令和元年度の文部科学大臣賞を受賞したそうです。これはこれまでのヘッドクォーターの活動,あるいは理念のようなものが一定の評価を得ているということだと思います。
まとめますと,アクションプランに示されるヘッドクォーターの課題は現時点で達成しております。ヘッドクォーターが定めた活動戦略に基づき,アウトリーチ活動推進計画を立案し,カテゴリーごとに活動を展開しております。ヘッドクォーターは大臣賞を受賞しました。コロナ禍においても,我々は頑張って,核融合アウトリーチ活動を模索しております。御協力,御意見いただければと思います。
以上です。
【小川主査】 笠田先生,ありがとうございました。
それでは,本件に関しまして,皆様から御意見を伺いたいと思います。どなたか,御意見をお寄せいただければと思います。高梨さん,どうぞ。
【高梨委員】 高梨です。大変すばらしい活動をなさっている,この御報告を頂きまして,感銘いたしました。ありがとうございました。幾つか感想と,それから,お聞きしたいことがございます。私は,この資料に基づいて,幾つかホームページですとかコミック,のぞいてみました。このホームページは本当にすばらしくて,格好いいですよね。いろんな情報がここに来れば分かるという状態になっていまして,関心のあるステークホルダーがここに寄ってくるというような様子が想像できました。2つお伺いしたいことがあります。
1つは,本当に多様なステークホルダーを相手に活動しなければならないというところで,ざっと3ページの活動を見渡した限りですけれども,小学生ですね。まだこれから関心が芽生えてくるような子たちへ向けた活動,親も含めてです。親がやはり大きな影響力を持っているので,そういう小学生向けの題材というか,活動というのはどういうふうになっているのかなというところをお聞きしたいのと,もう一つは,カテゴリー3のところですね。8ページの2ポツ目ですけれども,科学技術コミュニケーション人材を採用されて活動しているということなので,このお話をちょっとお聞かせいただければ大変うれしく思います。
以上です。よろしくお願いします。
【小川主査】 ありがとうございます。まず笠田先生,お願いします。
【笠田教授】 高梨先生,質問ありがとうございます。まず多様なステークホルダー,特に小学生と保護者というのは,核融合の入り口の前のところにいて,やっぱり科学に興味ある子がそういうイベントに来ると思いますけど,そこで核融合とファーストコンタクトをするということで非常に重要だと思っています。子供たち向けにはいろいろな活動をしていますけれども,やはり科学イベントの一環の中で,科学の楽しさを感じていただくという中で核融合というのもあるというのを知っていただくというのが一番大事かなと思っています。
というのは,子供たちがそのイベントをやっている間に,必ず,高梨先生,御指摘のとおり,保護者が隣にいますよね。その保護者が手持ちぶさたにしている状態というのを,少なくとも私は放っておきませんし,多分このイベントをやられている先生たちも放っておいていないと思いますけども,「核融合って何かおっかないと思っていた。」とか「危なくないの?」という話は必ず保護者様から出てきます。そこできちんと説明,リスクとベネフィットというもの,あるいは研究の今の状況がどうなっているかを説明するというのを意識していくというのが,こういった小学生相手の活動のときには非常に重要になると思っています。
2つ目のカテゴリー3に関する御質問ですけれども,特にNIFSの方では,もともと太陽の研究をされていた方を今,URAの人材として採用されていて,宇宙と核融合をつなげたイベントのような,要するに,我々が今まで,つながっている人はつながっていましたけども,あまりつながっていなかった人同士,研究者間でもつなげるということができてきているのではないかなと,私は外から見ていて思います。また,そういった宇宙に興味を持っている子供たち,あるいはもうちょっと上の人たちが,ああ,宇宙の研究と核融合のプラズマの研究はつながっているということを気づくことによって,そこからまた広がっていくということが期待できると考えています。
それは私が勝手に思っているところもありますし,NIFSにはNIFSの狙いがあるとは思いますけれども,そういったことによって,高梨先生がおっしゃるとおり,これは全部のステークホルダーに対して,全部個別にアプローチ,核融合コミュニティだけでやっているというのは絶対どこかで限界が来ますよね。むしろ核融合というものの隣にいるコミュニティ,あるいは隣にいるステークホルダーに核融合をきちんと知っていただいて,その方たちがその人たちの文脈で核融合の価値というものを説明していただけるような仕組みに展開していけば,それはステークホルダー間の対話を構築できるというカテゴリー3の目的にかなうのではないかと私は考えております。
以上で回答になっておりますでしょうか。
【高梨委員】 ありがとうございました。これからがすごく楽しみです。
【小川主査】 核融合研の竹入委員,もしコメントありましたらお願いします。
【竹入委員】 核融合研の竹入です。今,笠田先生からもありましたように,天文台出身の人をサイエンスコミュニケーターというような形で参加してもらったというのがあります。核融合は非常に,やっぱり天文,宇宙とつながりが深いのと,かなり社会的に,やっぱり科学というと,天文とか宇宙は人気がある。そこをうまく核融合と絡めて,広報あるいはアウトリーチしてもらうということで,非常にいい人材がある意味,見つかったという感じがあります。ですから,戦略的にできていたかというと,むしろ,非常にいい人材にめぐり会えたという方が正直なところです。
ただ,方向性としては,やっぱりできるだけ一般の人が親しみの持てる分野から導入できるような,そういう人を探してくるという努力はやっぱり必要かなと感じているところです。実際にかなりファンも増えてきていますので,今後,この切り口を基に展開していければと思っています。
それから,もう一つ,子供,小学生,親という話がありましたけれども,核融合研は,地元とのコミュニケーションという観点で,地元の公民館で,保育園とか放課後教室,そういうところで科学遊びをやっています。科学遊びの中では,幼稚園児が参加する,そういうところでやっていますから,当然,親も参加しています。そこで核融合がどうのこうのという話は一切せずに,本当に科学遊びをしています。
その導入のところで,核融合研から来ています,核融合研ではこういうことをやっていますということをサラッと言うだけで,それを積み重ねて,毎年,もう20回,30回と,地域でやっていますので,かなり若いお母さんたちにも核融合という言葉を言っているのと,面白いことをやってくれる研究所ですねという,そういう信頼感というものができてきていますから,そういう環境で,理科に,科学に興味を持つ子供たちが大きくなってくると,今度はオープンキャンパスに来てもらえるとか,あるいは高校で,SSHの指定校に入ったときには,核融合の研究施設を回ってもらえるとかそういうことが,非常に長い目で見てできるのかなと,そういうふうに感じています。
以上です。
【小川主査】 ありがとうございます。
兒玉委員,お願いします。
【兒玉委員】 ありがとうございました。こういう活動は恐らくいろんなところに影響して,そのうち,取組に対して物すごく大きな影響を与える成果,アウトカムが出てくると思います。それを理解した上でお聞きしたいと思いますけども,アウトカムの方からあえて質問させていただきます。欧米の方では,御存じのように,核融合に関するベンチャーがかなりあるわけですね。先ほど申し上げましたように,レーザー核融合も1,000億を投資するような,そういう人が出るとか,恐らくその辺の核融合に対する考え方がかなり欧米と違う。一方で,では,日本のベンチャーはやっぱり海外と違うというのも全体でありますけれども,では,ロケットはといったら,やはりロケットはそういう投資をされている企業,あるいは人がやっぱり日本でもいらっしゃいます。そういう中で,やはりアウトカムの一つとしてそういうのも見据えた活動があってもいいような気がしますけれども,いかがでしょうか。
【笠田教授】 はい。産業界というカテゴリーの考え方は,どうしても一つ昔の時代の,既存の大きな会社にアプローチしていくというような考え方がベースになっているところはたくさんあります。それも一つの柱として当然,核融合は巨大科学なので,とても大事ですけど,やはり最近の欧米のスタートアップ企業はかなり増えてきていると。投資家も注目しているということは,今,日本でもやはり産声が始まっておりまして,岸本先生にその辺,コメントいただくのがいいかもしれないですけども,京都大学のエネルギー理工学研究所では,小西先生が最近,スタートアップ企業を立ち上げましたし,最近,いろいろベンチャーキャピタルの動向を見ていると,核融合はどうなっているのかという興味はかなり高まっているというようなお話は漏れ伝わっております。
そういうところにどうやってアプローチしていくかというのは,我々が,学術コミュニティで育ってきた人間が持っていないチャンネルのところがあると思うので,むしろ大学は今,産学連携というところのチャンネルがありますよね。そういうところをうまく活用していくというのが一つのやり方というふうに。それはやはり岸本先生か小西先生がいらっしゃれば一番よかったですけども,そういうところにいろいろお話を伺いたいなと私は思っております。
【小川主査】 ありがとうございました。
岸本先生,何かありますか。
【岸本委員】 岸本です。私の方も,一度,小西先生に全体像をお話しいただければと思っていますが,まとまった話を聞いていないので,コメントできる状況ではないかと思います。笠田先生が少し触れられましたように,大学人は,大学で生まれた様々なシーズを,産業を含めて展開していくとともに,それを大学として支援しようという流れがあります。小西先生もその枠を積極的に使われて,大学の支援を受けながら展開するという方針でやっておられると思います。
笠田先生が言われたように,大学人は,頭が学術研究に固定されている傾向がありますので,まず頭を柔らかくして、理解するところから始めないといけないように考えています。その関係のお話が,この科学技術委員会であったと思いますが,そういう観点で積極的に広報していただければと思います。【小川主査】 ありがとうございます。どうぞ。
【兒玉委員】 よろしいですか。実は,私が申し上げたことと少し違いまして,これはよく勘違いされますけども,私が申し上げたベンチャーというのは,いわゆる日本特有のシーズを基にしたベンチャーではなくて,シーズと,要するに,お金を持っている人をつなぐベンチャーのことです。欧米はそれがかなり多いです。それをやるためには,やはりこういうアウトリーチ活動をして,それで,そういうことをしたいと思う人を増やすということが第一です。そういう意味で,いかがでしょうかということをお伺いしたつもりでした。
【小川主査】 ありがとうございます。この議論,私も是非どこかでやった方がいいと思っております。あと,本当は産業界の方にもお伺いできればと。日本ではそういうベンチャーキャピタルとかが,核融合では今,なかなか起こりづらくなっているのですが,産業界から見たら,どういう懸念があるのかとお伺いできればと思います。一般的に最近は,産学連携が非常にエンドースされていますが,核融合分野での産学連携に関して,企業の方がやろうという声もあまり上がってこないですけども,何が問題なのでしょうか。それとも,正にベンチャー的なものを立ち上げた方がいいのか。この辺は多分,更にどんどん議論が深まってしまうと思いますので,また何か機会があったらば,是非産業界など,特にベンチャーを含めて,それからあと,冒頭,岡野さんが指摘されましたように,原型炉に対して産業界がどうコミットするかという視点も含めまして,議論する必要があると思いますが,本日は時間も限られておりますので別な機会に議論させていただきたいと思います。
兒玉先生から,アウトリーチもそれに使えないかというコメントがありましたが,産業界がどうベンチャーを立ち上げるかという議論とはまた別だと思いますので,今日は,その議論は打ち切らせていただきたいと思います。
アウトリーチという観点で,何かまたほかにコメントあるでしょうか。実際の現場で一生懸命頑張ってアイデアを出していらっしゃる学術調査官の近藤さん,何か感想及びコメントはありますか。
【近藤学術調査官】 東京工業大学の近藤です。文部科学省の学術調査官をしております。小川先生,御指名いただきまして,誠にありがとうございます。
アウトリーチの方法も,このコロナの状況の中で,いかに効率的に進めていくかということも考えていく必要があるかなと思いまして,一つは,これまでと違ったリモートでのアプローチ。最近ですと,フランスにあるITERをバーチャルで見学する機会を設けて,高校生ぐらいまでですけども,参加してもらっております。
まだこのコロナが少し続きそうな気配がございますので,先ほどコメントございましたが,小学生ぐらいまでをターゲットに入れて,少し簡単な内容で,御両親とお子さんと一緒に参加してもらえるような内容を展開していけたらなというように考えております。
以上です。
【小川主査】 ありがとうございます。
高梨委員,発言いただければと思います。
【高梨委員】 ありがとうございます。竹入先生がおっしゃっていた地域の活動ですね。参加してくださった地域の人たちに,ツイッターなどを通して発信していく枠というのはいいのではないかなと思いました。地域のお母さんたちは,そういうツイッターが大好きなので,そういう人たちの力をかりながら,お母さんネットワークで広げていくというのも一つなのかなと。非常に難しいツイッターチャンネルは存在していますが,コミュニケーションの場としてのツイッターがあってもいいかなと思いました。
それからもう一つは,小学生向けのデジタルコンテンツが欲しいなと思いました。何か拡散して存在はしているようですが,それがやはりホームページと似たような感じで,ああ,ここに来れば,コンテンツ,そろっているよねというのがあると,親御さんたちも安心して,子供たちに,探す手間なく見せることができるかなと思いました。
以上です。すみません。ありがとうございました。
【小川主査】 ありがとうございました。尾崎委員,お願いします。
【尾崎委員】 ありがとうございます。一般の方々、中高校生などへの広報努力は高く評価できると思いますが、経済界への情報発信が不足していることが残念に思います。
現在、公的な研究資金のみで核融合研究が実施されていますが、今後経済界の関心を増やすことが、核融合研究の持続可能性のために欠かせません。しかし、経済界での核融合開発への認識は高いといえませんが、それは関心が低いというより情報を十分に得ていないためと思われます。ITERの現状を説明すると、ポジティブな意味で驚く経営者は少なくありません。
もちろん企業に所属して核融合に興味を持つ人も少なくありませんが、同分野の研究者に偏っています。組織としての関心を高めるためには経営層、イノベーション担当部署をターゲットにしなければなりません。三菱重工業などITERの部品を提供している企業に加えて、ITERと関わりを持たない企業への情報発信を増やすことが必要です。
私が所属する経済同友会、経団連、ベンチャーキャピタル業界などを対象に、ITERの現状、内外の研究動向、米国、EU、中国のベンチャー投資動向などを継続的に提供する仕組みが必要と考えます。是非ご検討をお願いします。
【小川主査】 ありがとうございました。アウトリーチに関しましては,皆さん,いろいろとアイデア等もあると思い議論が尽きないと思いますが,本日はこれで閉めさせていただきます。実は,アウトリーチの議論には,2か月に1回の頻度で,文科省さん,それから,QST,NIFS,大学の関係者が集まって議論しています。ズームの会議で情報交換しながら,次のアイデアを練って,やっていますので,皆様の意見を是非ともその場で紹介しながら,前向きに発展させていただきたいと思います。
それから,HQを立ち上げて,最初の大きな喜びとしましては,文科省さんで文科大臣賞を受賞しましたことは,非常に我々としては励みになりました。また文科省さんのポータルサイトの立ち上げに対して,御礼を申し上げたいと思います。
それから,ヘッドクォーターを運営するに当たって,核融合研とQSTには事務局として,いろいろ御尽力いただき,人的に支援もしていただいていますので,御礼申し上げたいと思います。
このような形で発展させていって,時々皆様にまた活動を紹介し,御意見を伺いながら,よいものに発展させていきたいと思っております。
ということで,この議題を終わらせていただきますけど,よろしいでしょうか。ありがとうございました。
それでは,本日用意しております議題は以上ですが,このほか,特に報告,審議すべき案件はございますか。

それでは,本日の核融合科学技術委員会はこれで閉会といたします。御多忙の中,御出席いただき,どうもありがとうございました。

―― 了 ――
 

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