核融合科学技術委員会(第18回) 議事録

1.日時

令和元年7月25日(木曜日)13時~15時

2.場所

文部科学省 3F1特別会議室

3.議題

  1. 第24回ITER理事会の開催結果について
  2. アウトリーチ活動について
  3. 「ITER計画(建設段階)等の推進のうち幅広いアプローチ(BA)活動(フェーズ2)」の事前評価について(非公開)

4.出席者

委員

小川主査、五十嵐委員、植竹委員、牛草委員、岸本委員、小磯委員、兒玉委員、高梨委員、髙本委員、竹入委員、松尾委員

文部科学省

新井研究開発戦略官、近江室長補佐、吉澤核融合科学専門官、上田科学官、徳澤学術調査官

5.議事録

【小川主査】  それでは、始めたいと思います。事務局は定足数の確認をお願いいたします。
【吉澤専門官】  本会議の定足数は過半数7名でございます。本日は、11人の委員の方に御出席いただいておりますので、定足数を満たしております。
【小川主査】  ありがとうございます。
 ただいまから、第18回核融合科学技術委員会を開催いたします。本委員会は、委員会運営規則に基づき、非公開の部分を除き議事を公開いたします。

御発言は議事録に掲載され、ホームページ等で公開されますので御承知おきください。
 本日、議題3の「「ITER計画(建設段階)等の推進のうち幅広いアプローチ(BA)活動(フェーズ2)」の事前評価について」は、審議の円滑な実施に

影響が生じるものと認められますので、委員会運営規則第4条第3号に従い非公開とさせていただきます。傍聴者の方々には御退席いただきますので、御了承ください。
 事務局に異動がありましたので、最初に御紹介をお願いいたします。
【吉澤専門官】  6月21日付けで、阿南補佐の後任として近江補佐が着任しております。
【近江補佐】  阿南の後任として参りました近江と申します。これまではナノテクノロジーとか材料の研究ですとか、基礎研究全般の振興などを担当しておりました。これだけの大型プロジェクトは初めてですので、是非、御指導いただければと思います。よろしくお願いいたします。
【小川主査】  よろしくお願いいたします。次に、配付資料の確認をお願いいたします。
【吉澤専門官】  本日の配布資料は、議事次第に記載しているとおりでございます。机上のファイルには、参考資料を付けさせていただいておりますので、こちらも適宜御参照ください。
【小川主査】  それでは、議題1「第24回ITER理事会の開催結果について」に入ります。内容につきまして、新井戦略官より御報告をお願いいたします。
【新井戦略官】  資料1に沿ってご説明させていただきます。
 まず1ページ目、会議の概要でありますけれども、6月に定例のITER理事会がフランスのITER本部でありました。日本からは、山脇文部科学審議官が、いつもどおり主席代表として出席しております。議題としては、毎回のごとく進捗状況の報告、建設活動のマネジメントの状況報告と議論を行っています。今回は組織再編の議論もございました。
 4ページ目が結果概要です。1番目、進捗等については、ファーストプラズマまで63%近くの建設が進捗しています。今、建設戦略に基づいて、様々なクリティカル機器の製作・建設が進んでいますけれども、それについてもきちんと進んでいるという評価がなされております。現在のビゴ機構長については、来年3月からの任期延長が今年1月の理事会で決定しており、理事会議長との間で実際の契約更新の署名が行われたということでございます。2番目、組立・据付本格化に向けた準備については、組織再編案が承認されています。また、イタリアのパドヴァで、中性粒子入射装置の研究が日本・欧州・インドの間で行われていますけれども、こちらの協定の延長が承認されました。次回の日程ということでは、11月に次回の会議が予定されているところであります。
 組織再編についてですけれども、背景としましては、運転開始が2025年12月に予定されている中、現状、現地では建屋の建設などが大分進んできています。来年の初めあたりから、各極が担当している調達機器の主要な機器はどんどん現地に届き始めます。例えば、日本と欧州で担当しているTFコイルは、日本から初号機が入り、韓国製の真空容器も届きます。実際に組立建屋からトカマク建屋の方に運ぶため、クレーンといった設備整備もされており、まさに組立・据付が本格化していきます。そういう状況において、きちんとITER機構として仕事が機能するようにというところで組織再編の提案があり、承認されました。
 4ページが、その概要であります。今の体制では、ビゴ機構長がいて、副機構長が2人いて、その下に9つの部があります。それぞれ機能が分かれていて、日本人の方では多田副機構長をはじめとして活躍されています。9つの部に分かれているところを、新体制では大括り化して、4つのドメインを作っていこうというものであります。 新体制でのドメインとしては、コーポレートドメイン、エンジニアリングドメイン、建設ドメイン、科学・運転ドメインがあります。コーポレートドメインは財務、人事、資源管理等々、マネジメントをするドメインです。エンジニアリングドメインは、システムの工学的管理ということでシステムエンジニアリング、あるいは、構成管理と言っていますがConfiguration Managementの仕事を担当します。2025年のファーストプラズマ以降に入ってくるような、キーシステムの設計・製作も担当します。その下の建設ドメインについては、2025年のファーストプラズマに向けて、トカマク装置の周辺機器の製作・組立・据付をメーンに担当していくところになります。科学・運転ドメインは、まさに研究・運転フェーズでの仕事をしていくところです。 この案が承認され、7月から9月15日を期間として、実際に公募が始まっております。ただし、科学・運転ドメインについては、これから本格化していくということで、今の時点では公募をせず、4つのうち3つ、コーポレート、エンジニアリング、建設ドメインの公募がかかっております。なお副機構長については、ITERの協定のとおり、今後も理事会で検討することになっています。
 4ページの右上に、日本人職員数と、出向制度であるIPAの人員数があります。今、ITER機構は850人ぐらいの陣営ですけれども、そのうち日本人職員が30名強、それから出向で行っている方が数名というところで、やはりここをきちんと増やしていくことを、組織再編とは別にやっていかなければいけないものとして考えております。
 次のページでは、ITERへの参画方法を御紹介いたします。ITER機構はインターンシップを受け入れています。このほか、2番目のITERプロジェクトアソシエイトがIPAで、出向の仕組みになります。どちらも、仕事、経験をどういった形で積むか、調整しながら人を受け入れるということになっております。また、まさにアウトリーチというのも、ITERへの日本人の参画を増やしていく意味で重要だと思っております。
 6ぺージ以降は参考資料で、ITERの概要資料のほか、最近の閣議決定レベルの政策文書における核融合エネルギー関係の記述を御紹介しています。その1つは、パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略が6月に閣議決定されておりますけれども、ここで核融合が取り上げられています。それから、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議で検討して、これも閣議決定している統合イノベーション戦略では、国際的な拠点としての核融合という観点で取り上げられているところです。また、経済界においては、経団連や、経済同友会でも核融合について取り上げていただいているということで、御紹介させていただいております。
 以上です。
【小川主査】  ありがとうございました。
 ITER機構の組織再編について、まさに新体制として来年の1月から動くということでした。各ドメインの方々は、現在公募中ということですけれども、これが決まり次第、その下のところもある程度、また再編されて動くんでしょうか。
【新井戦略官】  資料では、ドメイン長のところだけを書いておりますけれども、まさにこの下に部であるとか、さらにその下のレベルのストラクチャーというのがあります。それも含めて、今回、承認されております。幹部人事について、機構長、副機構長は理事会のマターです。メーンとなる組織は理事会で決めており、今回その下のドメインについて議論になりました。さらにその下のレベルは、まさに機構の中で進めているものです。現在いらっしゃる職員の方が横すべりで入っていくような部署もあれば、毎月のように公募情報が出ているように、新しいポストも順次出てくると思います。トランジションの過程で、少しずつ順番はあるかと思いますけれども、1月に向けて進んでいくということです。
【小川主査】  もう一点、職員全体が850名くらいのうち、日本の方は31名いらっしゃるとのことでした。本来、日本の費用負担は約9%ですから、70人ぐらい日本の職員がいてもいいはずですが、なかなか日本の職員の数は増えないということがあります。日本の職員数の推移は、コミュニティの中で共有して、より多くの日本人の方に参加していただけるように発信し続けていただければと思います。やはり他の国に比べても、日本人が一番少ないような状況になっているんでしょうか。
【新井戦略官】  推移の資料については、次回から参考で入れさせていただきたいと思います。また今、日本人が一番少ないという状況があります。

これまでは、今いる組織を辞めて行かなければならないという形だけですと、日本の雇用環境や、社会との関係で、なかなか難しいのではないかという議論もありました。そういうこともあって、ITER機構と意見交換をした上で、IPAと言っている出向制度が数年前にできた経緯があります。一番多いところはやはり欧州でありまして、70%弱ぐらいの職員は欧州からです。その次が中国、アメリカ、ロシア、そういった順番になっています。
【小川主査】  すぐに何かいい策があるわけではないですけれども、いつもそれなりの認識を持って情報交換しながら次善の策を考えていければと思いますので、よろしくお願いします。
 それでは、次の議題に移らせていただきます。議題2「アウトリーチ活動について」に入ります。前期委員会で策定した「核融合原型炉研究開発の推進に向けて」や「原型炉研究開発ロードマップ」についても、アウトリーチ活動やその中核となるアウトリーチヘッドクォーターの必要性が述べられております。これを受けまして、関係者間で御検討いただき、このたびアウトリーチ活動が開始されました。新井戦略官より御説明をお願いいたしたいと思います。
【新井戦略官】  資料2として、アウトリーチ活動についてまとめさせていただいています。背景ですが、アウトリーチ活動自体は、今までこの委員会で取りまとめていただいている報告書にも記載されております。核融合という分野は長期的な視野に立ってやっているわけですけれども、将来、国民に選択され得るエネルギー源となるためには、やはり人材育成も重要です。また、社会の中で理解が深まって認識していただく重要性があるということで、アウトリーチ活動が重要だと考えております。
 活動方針としては、今まで大学や研究機関においてなされている一般的広報は引き続き必要だという前提の上で、一般国民の方々、産業界の皆さん、学術コミュニティなど、どのレベルの方を対象としたアウトリーチとするかで、ヒットする、いわゆる「刺さる」アプローチが違ってくるのかなと思います。どのような広報、アウトリーチがいいのかを対象ごとに考えて活動していく必要があるのではないかというところが問題意識であり、さらに、それを踏まえて活動していく必要があると思っております。そのための実施体制ということで、こちらの委員会で取りまとめていただいた報告書に基づき、ヘッドクォーターを新たに始めるということです。
 その次のページに要項が付いております。趣旨は申し上げたとおりですけれども、構成ということで、新しくオフィスを作るというよりは、政府、委員会の先生方、核融合を進めている研究機関・大学の中で広報や企画を担当されている人にアドホックに集まっていただく委員会形式の形で、各々が行っている活動を共有しつつ、どういった新しい取組ができるかを議論してきた経緯があります。会合の開催実績でありますけれども、今年2月の立上げ以来、今まで4回の会合を行っています。ここに書いていないようなインフォーマルな会合も含めて、集まれるときに集まっていろいろな検討をしてきました。
 次の資料で、吉澤専門官から、現在の実績でありますとか、今後計画しているものを御紹介したいと思います。
【吉澤専門官】  現段階で計画中もしくは実施済の活動について御紹介させていただきます。資料3を御覧ください。機関単独の広報ではなく、核融合全体を広報するアウトリーチ活動としていけるものについて案を持ち寄り、相互に協力やアドバイスをし合うような形で現状は行っております。
 最初は「Fusionフェスタ in Tokyo 2019」ということで、核融合科学研究所が行っているものでございます。こちらは若い世代をはじめとして広く一般の方を対象に、核融合の進捗状況ですとか、科学全般的なものについて体験型のイベントを実施しているものでございます。核融合研が2010年から開始しているもので、今年度からは核融合を全般的に御紹介しようということで、QSTにもブースを出してもらい、ITERやBA活動についても紹介いただいて

おります。企画の内容や展示等、詳細を書いてございますので、御覧ください。
 続いて、こちらも核融合科学研究所の取組ですけれども、核融合コミュニティだけではなく他分野のターゲット層にも宣伝していくことを狙ってやっているものです。今の段階では、比較的近く、親和性がある天文の分野でのイベントにジョインする形で行っております。既に実施したものもございまして、1個目が、科学技術館でやっています科学ライブショー「ユニバース」というものです。天文系の話題を紹介するイベントで、6月22日に東北大の笠田先生に御参加いただき、講演者として核融合を御紹介いただきました。今まで核融合を知らなかった方々へのアウトリーチ活動として、多くの関心が寄せられたと聞いております。続いて2個目ですけれども、国立天文台がある三鷹市でやっているサイエンス・カフェの天文バージョンというものがございまして、核融合研の先生に行っていただき、市民の方に核融合を御紹介して交流を図っていただくものを11月に計画しております。
 続きまして、大阪大学レーザー科学研究所の企画でございます。大きな慣性核融合に関する国際会議が9月に大阪で開催されますので、それに併せて一般向けのイベントを開催するという企画です。こちらも体験型ということで、いろんなブースが出されると伺っており、QST、NIFS、大学の先生方に出展していただく予定です。
 4ページ目ですが、こちらは今まで御紹介したイベントとは異なる形態のものになります。まずQSTでは、JT-60SAの完成及びファーストプラズマに向けて、各種式典やイベントの企画、もしくは、様々な情報ツールを使用した広報を御計画されていると伺っております。これもコミュニティ全体で盛り上げていくような形で考えております。
 その次が、ITERをもっと皆さんに知ってもらいたいということで、次世代を担う高校生向けに、ITERサイトの見学ツアーを計画しています。核融合の分野に入ってきていただく卵たちにITERを知ってもらうこと、研究者を目指していただくこと、高校生の国際化を促進する、という面からも進めていきたいと思っております。具体的には、様々なところに広報活動をしていくのかなと思いますけれども、まずはSSHの高校が海外に研修へ行っていますので、その研修先の一つとしてITER機構を選択していただけるように御紹介できればと思います。併せて、フランスに行く前に、日本の国内の状況をレクチャーしてもらったり、国内の装置を見ていただいたりすることも考えております。
 最後の御紹介になりますけれども、文科省のホームページを新しく作成しようという取組でございます。今まで文科省のホームページは、非常に見にくく、また核融合の全体のポータルサイトとなるようなものを作っていきたいということで、計画しております。広く国民の皆様に核融合を知っていただくということをコンセプトに、様々な段階別にアプローチ方法を変えて核融合を紹介していくというものになっており、動画ですとか、写真ですとか、ビジュアル面を重視したホームページを計画しております。国内外の何十人という核融合のスペシャリストの方から、キャリアパスや若者向けへのメッセージとか、そういうものも頂いて、御紹介をしていくという内容もあります。こちらは秋口ぐらいに公開できればと思います。まずはここにアクセスいただいて、いろんな研究所に飛んでいくような仕組みを考えておりますので、でき上がった暁には、改めて御紹介させていただきたいと思います。
【新井戦略官】  少し補足させていただきます。今、資料3で御紹介させていただきましたけれども、このヘッドクォーターではさらにいろんな議論が出ています。構想というか、ブレインストーミング段階のものもありますので、そのうちの一部を御紹介させていただきました。
 核融合だけではなくほかの分野でもアウトリーチが大事だといわれていますが、大事だというだけでは新しい財源が出てくるわけでもありません。まずは各々が計画し、やっている活動について、お互いに情報共有して、効果が上がるものであれば乗り合いするとか、発信の仕方についてこっちの方向性がより効果的なのではないかとか、取組をよりよいものにしていく議論をしているところであります。
やはり本委員会では、産学から先生方に集まっていただいていますので、こういった御紹介をして、いろんな方々に刺さるアプローチをこういった感じでやるともっといいのではないかとか、そういった御意見を頂ければありがたいと思います。
【小川主査】  ありがとうございました。
 資料2では、アウトリーチの活性化に向けた基本的な考え方を、資料3では、今どういう形で具体的なものが動いているのかを紹介いただきました。是非とも皆様のお知恵を拝借したいと思いますので、御意見を伺わせていただければと思います。

【高梨委員】  御紹介ありがとうございました。アウトリーチ活動において、ヘッドクォーターが立ち上がったのは非常に喜ばしいことだと思っています。幾つか確認しつつ、気になったところをお話させていただきます。
 まず、目的ですね。ヘッドクォーターがなすアウトリーチ活動の目的ですけれども、先ほどの御報告においては、関心を高める、国民に知っていただくというお話があったかと思います。ただ、知るだけではなく、その次は何かという、もうちょっと具体的なところが多分議論されているのではないかなと思います。ターゲットというところも、刺さるアピールの仕方を模索されているということは、恐らく知った先にどうするのかということがターゲットごとにあるんだと思うんですね。
 ですので、より具体的な目的があって、その目的を達成するための戦略がどんどん出てくるというイメージを私は持っているので、その辺、今どんな況の中で話し合われているのかをお聞かせいただきたいと思います。あと、この委員会においても、アウトリーチ活動については随分と議論してきたと思うんです。もうちょっと細かいことがここでも議論されていたように思うんですけど、そういうのは伝わっているのかなという、ちょっと確認ですね。よろしくお願いいたします。
【新井戦略官】  ありがとうございます。
 まず、この委員会でも非常に活発な議論をしていただいたので、その結果を紹介した上で、ヘッドクォーターでも議論しております。ただ、具体的に何をやるかにフォーカスを当てるところで議論を始めていますので、こういった具体例が最初に出てきているというのは事実であります。
各ターゲットの皆様方にどう刺さるようにするのか、戦略が必要じゃないかというところは、まさにそうだと思っておりまして、年齢、性別までは分けていませんが、小さいお子さん、学生さん、研究者の方々、産業界の方々、そういったカテゴリーでどういったことができるかという議論をしているところです。例えば、お子さんについては、科学への関心を深める過程で核融合に興味を持ってもらうところがまず大事なのではないかという議論をしています。お子さんそのものに見てもらうものが何かあるのかとか、小さいお子さんがいるようなお父さん、お母さんというのも考える必要があるのかという議論もしています。学生さんについては、例えば核融合を大学に入ってから知って修士から専門的にやるというデータもありますので、もうちょっと前から興味を持ってもらうにはどうするのかという議論があります。あと、産業界の皆様には、核融合に興味を持ってもらった上で、非常に長期的な取組が必要なこの分野に投資をしてもらうためにはどうしたらいいのかという視点で、アウトリーチの仕方も変わってくるのではないかという議論も出ております。やはり体系の立った戦略が必要ではないかと考えております。
 その上で、戦略を作る文書化のようなところを最初にするのがいいのか、具体的な取組を先に議論するのがいいのかというところで、最初の駆動力としては、イベントで一緒にできるものがあるのかを前面に出してやっているというのが現状でございます。

【高梨委員】  このヘッドクォーターの組織はどういうふうになっていらっしゃるんですか。構成というのがありましたけど、それは組織のことなんですか。
【新井戦略官】  新しく事務所を構えて何かということではなくて、こういったメンバーが文科省に集まって、あるいは、違うところに集まって会議形式でやるものです。大学でいう委員会の感じだと思いますけれども、そういった形で現在のところは進めております。
【高梨委員】  どなたかマーケティングの専門家とか、そういった分野の方々はいらっしゃらないですか。いわゆる研究畑、技術畑の方々だけですか。
【新井戦略官】  マーケティングの専門の方はいらっしゃらないんですけれども、研究者の先生方だけではなく、広報を専門にやっていらっしゃる方にお入りいただいて、そういった視点で議論ができるように心を用いてはおります。
【小川主査】  今の高梨委員からの話で、目的や戦略にという視点としては、例えば、核融合が一般に広く知られるのと同時に、核融合界の人材育成にもつながる方向というのが1つのアプローチとして考えており、そのためのキャリアパスを示してゆこうとしています。またそのために今動いているのは、大学の研究室で核融合関連の研究はどういうのをやっているのというのを全部調査して、それをポータルサイトで発信しようと考えています。大学生レベルで核融合に興味を持つ人をどう集約していくかという方向では、1つ動いています。
 ヘッドクォーターの御議論では、それぞれのターゲットによってやり方が違ってくることを踏まえて、どういうことを具体的にやっていったらいいのか議論しており、たとえばある項目に対してはQSTが担当するのがいいんじゃないか、この項目は核融合研が、または大学がいいんじゃないかとか、そういう形で議論しながらやっているというのが現状だと思います。
【五十嵐委員】  御説明ありがとうございます。
 私も、高梨委員と同じような感想を持ちました。もともとこの分野では、各組織で活発な広報活動をされていたと思いますが、その上さらにヘッドクォーターを作って、ということだったので、高梨委員がおっしゃったように、ニーズの調査などをもっと掘り起こしていくのかなという部分に期待があります。これまでもこういう広報の活動というのは、先生方が忙しい研究の時間を割いてボランティア的にやられていたというようなことがあり、これからはそういう意識ではないようにしていこうという議論がありました。研究に付随してやるというのではなく、例えば、広報活動やアウトリーチの活動をしたことをちゃんと評価するシステムを作るべきではないかとか、それの専門のポジションの人を置くべきではないかという議論もしてきたかと思います。そういったことも含めて議論が進んでいるのかなというのが、ちょっと気になったところです。
 先ほど戦略官の御説明の中に、財源のあるものではないという一言がさらっと入ったのですが、まさにそういった点が、理科離れということで核融合だけでなく各分野が苦労されているところですので、予算もちゃんと立てて、取り組んでいく必要があると思います。私は「刺さる」という言葉は好きじゃないんですけど、仮に「刺さる」ものとするには何が必要かということについては、たとえば、もっと大胆に、他分野の人を入れていくなどの必要もあるんじゃないかなと思います。集まって議論をするという形だけで切り拓いていけるのかなというのは、ちょっと気になりました。手始めにこういうことをやっていらっしゃるというのは理解していますけれども、これまでここの委員会で議論してきたことを、是非、お金のこと、人事、そういうことも含めて考えていっていただけたらいいかなと思いました。
【新井戦略官】  ありがとうございます。財源の話については、全く財源がないというわけではなく、最近、大学や研究機関では、先生方が忙しい中で広報もする今までのような形だけではなくて、広報に詳しい専門の方とか、そういった能力のある方を別途入れて、予算を組んで組織の広報により力を入れる実態があるかと思います。そういった各機関での広報やアウトリーチの強化が進んでいるところを、少し核融合にもお力を貸していただき、振り向けてもらうようなことができないかというのが最初の発想としてありまして、ヘッドクォーターにも、単に何とか教授とか、何とか室長とかだけではなく、若い人も入れて議論を進めているところであります。
 我々がアウトリーチで存じ上げている専門家以外にも、マーケティングといった分野の、必ずしも普段コンタクトがない方で、いい方もいらっしゃるのかなと思いますので、別の機会にまた御紹介いただけるとありがたく思います。
【吉澤専門官】  この委員会での今までの議論を受けて、QSTとNIFSでは、広報の専門の方をお一人ずつ入れていただいた経緯がございます。その方々も前面に立って、研究所の広報という視点に留まらず、このアウトリーチ活動をやっていただいております。
 加えて、今まで若手の先生方も含めて、大学の活動として核融合のことを御紹介いただいておりますが、それがひとところに共有されているのかという観点に立ちますと、個々人でやっていらっしゃる側面があります。まずはそういうものをまとめたり、文科省のホームページなどを経由して、そういうことを御紹介したりすることによって、皆様の活動にフォーカスを当てていくというようなことは考えております。
【植竹委員】  このアウトリーチ活動につきましては、産業界も非常に苦労しているところでございまして、刺さるといいますか、相手の腹に落ちるといいますか、そういう共感をしていただけるようなアプローチというのはどういうものかというのを、ターゲットごとに検討しているところもございます。結局、腹に落ちてほしいターゲットに、最後どういうアクションを期待しているのかという目的のところを、初めによく議論しておかないといけないのかなと思います。その対象先によって、腹に落ちるときの価値感といいますか、どういうところに共感を求めるのかというのは違ってきますので、そこが共有されていないと、活動がばらばらになってしまうということがあるのかなと思っているところです。
 産業界でもいろんな組織がいろいろと活動していますけれども、戦略的にオプティマイズするというのは非常に難しいということは経験上理解しておりますので、そこのところは非常に重要かなと感じております。
【小川主査】  先ほど五十嵐委員の言われたように、ヘッドクォーターのメンバーを見ると、ある意味で核融合コミュニティのプラットフォーム化みたいなものはできているけれども、それ以外の人が入っていないから、コミュニティ内だけの情報交換、情報共有だけになっている可能性があるので、もっと開いたところで発信できるようなことを戦略的に考える必要はあるのかもしれませんね。
【吉澤専門官】  ありがとうございます。戦略を立てていかないといけないというのは非常によく認識しております。文科省には、広報戦略を立てたり、どうメディアを使ったりするか相談できる、広報アドバイザーという民間の専門家おり、そういう方にも御相談をしながら進めております。
 ただ、完全に戦略を立ててから始めるには時間がかかるということと、それをプロフェッショナルな人に頼むにはそれなりの経費を要しますので、なかなか着手できていない状況もあります。まずは活動を開始することが先かなということで、皆さんがやられていることからこれに適したものを集めて、それを自身や外部で評価し合いながら、多少戦略を練っていくということもあると考えています。
【高梨委員】  少しずつ始めていくのはすごくいいことだな、そのうちに見えてくることはあるだろうなと思います。ただ、いつまでにというか、このヘッドクォーターを設けてアウトリーチ活動をするのにも、期間があると思うんですね。だから、ある一定のところで、ここで一旦立ち止まって戦略を考えてみようという時点が必要になってくるのかなと思います。
 何となく不安なんです。この話を聞いていて、様々な機関が様々なイベントをやっていて、相乗りして、こういうふうに紹介し合おうねということからスタートするのは全く構わないことですが、これをどこまでやるんだろうと、ちょっと不安になってしまったんですね。たしかこの委員会でも、ヘッドクォーターを設けてアウトリーチ活動をやっていくという議論をしてきたときには、どちらかというと、目的オリエンテッドで話をしてきたような気がするんですね。そういう期待がこちらで高まっちゃったところがあるのかもしれません。ある意味、いろんなものを寄せ集めてやるというのは、本当に御指摘のとおり、大変なことだとは思うんですが、どこかでやっぱりリーダーシップを発揮して、このヘッドクォーターがまとめて、皆さんに賛同していただいてという大きなビジョンを描く必要があるのかなと思いました。
 もちろん、目的と戦略というのはあるんですけれども、そのビジョンとしても、研究者サイドから見るビジョンではなく、今の活動を見ていると研究者側からのアプローチはすごくにじみ出てきますが、こういう技術の中にある生活はどんなものだろうという国民側からのアプローチというか、そういうものもきっとあるんだろうと思います。それが御紹介いただいた中にはあまり感じられなかったので、あればいいなと思いました。
【兒玉委員】  私も高梨委員に大賛成でございます。というのも、先ほど専門官が言われたように、アウトリーチは大学でも評価の対象になっていて、アウトリーチを進めろということになっているんですけれども、私が2年前にレーザー研を見させていただいたときは、アウトリーチのためのアウトリーチに走っていました。要するに、アウトリーチをやれば、それで評価が高くなるという、まさに目的なし、目標なしにアウトリーチをずっとやっていって、研究者の時間が損なわれているという状態でしたので、その時点でそういう無駄なことを一切やめさせました。そこでもう一回、考え直して、見学なども全て目的を持ってやるというふうに変えました。なぜか皆さん、アウトリーチをやりたがるんですかね。アウトリーチをやっていたら安心なのか何か知らないけれども、そっちにずっと行くんですよ。だから、アウトリーチって、ちょっと危険な面があるんですね。だから、やはり目的をちゃんと持ってというのは、是非やっていけたらなとは思いますね。
【新井戦略官】  ありがとうございます。
 まだこのヘッドクォーターも立ち上がって数か月というところで、少しずつ始めておりますけれども、きょう頂いた御議論も踏まえて、戦略的なところもしっかり作って、進めてきたいと思います。
【岸本委員】  先ほど、戦略を持った広報活動やアウトリーチの話が出てきました。最近、大学の研究所でも、SSHなどに関係した高校生の訪問が非常に増えています。SSH等で要請されているのではないかと思います。また、教育委員会などからも見学の申し込みや講演依頼もあり、研究所へのアクセスが増えている状況です。
 ITERの燃焼実験の開始が2035年、15年後ですね。そうすると、今の高校生が博士課程に進学して学位を取り、30歳ぐらいになった時期に、ITERで活躍するぐらいの年齢になります。大学でも、全学的に科学教育に取り組んでいる状況があり、その中で核融合やプラズマも位置付けています。核融合研やQSTなどとも連携して、まさにITERを担う30歳から35歳の若手研究者を育てることを組織的・戦略的に考えてもいいのではないかと思いました。
【竹入委員】  ここのアウトリーチ活動のヘッドクォーターというのは、全国的な展開というイメージがあります。私ども核融合研では、非常にローカルなアウトリーチ活動をやっています。それは、核融合研が地域で研究活動をするに当たって、やはり「核」という言葉が付いて危険ではないかという見方に対して、あるいは、我々のLHDの重水素実験に対する理解を得るということで、非常にローカルなアウトリーチ活動を十数年以上やっています。
 その中で市民説明会をやるとか、研究所のオープンキャンパスをやるとか、それから、今では保育園にまで行っていますが、科学教室を開くとか、そういうことをずっと続けていて、地域としては非常に核融合に対する期待が大きくなっています。今年も市民説明会を連日やっていますけれども、もう危険だ、不安だという声ではなくて、逆に、一体いつになったら実現するんだ、自分が生きている間に実現してくれという、そういう意見が増えてきています。
 だから、そういう意味で、核融合研では、保育園での科学教室から始まって、小さい子供からそのお母さんたちも対象にしていて、それから、数人ですけれども、核融合の研究をやりたいと言って研究所の大学院に入学する人も地元から出てきています。そういうローカルな活動の積み重ねの中で、それを全国に展開できないかなということで、このヘッドクォーターには1つの期待と我々の責任も感じて、参加させていただいているところです。
 ただ、なかなかローカルな事柄を全国展開するのは、非常に一研究所としては厳しいのでどういう形でできるか分かりませんけれども。もう一つ、総合研究大学院大学の核融合科学専攻の学生をどれだけ増やすかということで、中学生、高校生を対象とした様々な教室を開いていまして、そういう事柄も将来の核融合研究者を一人でも多く増加させることに結び付くかなということでやっています。ある意味、ローカルな非常に明確な目標の下に広報活動をやっているということをちょっと御紹介したいと思います。
【牛草委員】  QSTでもほぼ同じで、我々はITER・BAの実施機関としてやるべきことをやるために、一般の国民の方、地元の方、それから、将来を担う若い学生さん、こういう方々を対象に、できる範囲内で仕事の傍ら時間を設けて、活動をやってきています。
 僕たちが今回のヘッドクォーターに期待するのは、オールジャパンの戦略を持ってうまく連携して、我々がローカルでやっていることを、例えば、アウトリーチの素材を他機関に提供して、そこで同じようなことをやってもらって理解を増やしていくだとか、そういうふうなうまい交通整理をしていただきつつ、できればそれに必要な予算措置もしていただければと思います。
 我々の場合、QST全体の広報部隊はいますが、核融合に特化した広報部隊というのはほとんどいません。1人、専門の方を雇いましたけれども、やっぱりそれ専門に仕事としてやるような方を設けないと、なかなか片手間ではできない部分があります。だから、そういった意味で、例えばヘッドクォーターの方から、各機関の中でそういうふうに組織立って取り組みなさいという御指示を頂いて、それに付随して予算措置なんかもしていただければなと期待しているところです。
【小川主査】  ありがとうございました。
 どうしても現場の者が集まってやると、資料3にあるような、自分たちでやっていることをいかに発展させるかという具体的なところに目が行きがちなんですけれども、もちろんそれを進めると同時に、高梨委員はじめ皆様からおっしゃっていただいたように、ヘッドクォーターとしてのリーダーシップや大きなビジョン、それから、国民側からのアプローチといった別の視点からのアウトリーチの在り方を議論しながら続けていく必要があるのかなと感じた次第です。
 続きまして、これからは非公開になりますので、傍聴者の方々は、御退席をお願いいたします。

 (以下、議事非公開)
                               

お問合せ先

研究開発局研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付

(研究開発局研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付)