核融合科学技術委員会(第38回)原型炉開発総合戦略タスクフォース(第35回) 合同開催 議事録

1.日時

令和6年7月10日(水曜日)13時00分~15時00分

2.開催方法

対面形式とオンライン形式を併用したハイブリッド開催

3.議題

(1) フュージョンエネルギー・イノベーション戦略を踏まえた最近の取組
(2) フュージョンエネルギーの早期実現に向けて
(3) ITER計画の進捗状況について
(4) その他

4.出席者

核融合科学技術委員会

上田良夫主査、大野哲靖主査代理、石田真一委員、植竹明人委員、尾崎弘之委員、葛西賀子委員、柏木美恵子委員、栗原美津枝委員、小磯晴代委員、兒玉了祐委員、花田和明委員、吉田善章委員

原型炉開発総合戦略タスクフォース

坂本瑞樹主査、武田秀太郎主査代理、大山直幸委員、奥本素子委員、木戸修一委員、古賀麻由子委員、近藤正聡委員、坂本隆一委員、鈴木隆博委員、馬場貴志委員、福家賢委員、吉橋幸子委員

有識者

鎌田裕ITER機構副機構長、大前敬祥ITER機構首席戦略官

文部科学省

千原由幸研究開発局長、清浦隆大臣官房審議官(研究開発局担当)、馬場大輔研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、髙橋佑也課長補佐、日野宏江核融合科学専門官、安原亮科学官、梶田信学術調査官

5.議事録

【上田主査】  本日は、御多忙のところ御参加いただきまして、誠にありがとうございます。定刻となりましたので、第38回核融合科学技術委員会、第35回原型炉開発総合戦略タスクフォース合同会合を開催いたします。
 今回は対面とオンラインのハイブリッド形式にて開催をいたします。司会進行については、委員会主査の私、上田が担当させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入る前に事務局より、新たな委員、科学官の紹介、定足数及び配付資料の確認をお願いしたいと思います。
【日野専門官】  前任の吉原の後任として、本年4月に核融合科学専門官に着任いたしました日野と申します。どうぞ、よろしくお願いいたします。まずは核融合科学技術委員会委員に異動がございますので、新たに御就任いただきます委員の方々のお名前を御紹介させていただきます。
 所属先の人事異動に伴いまして、中熊哲弘委員が御退任されまして、その後任として電気事業連合会原子力部長の大塚康介委員に御就任いただいております。また、こちらも所属先の人事異動に伴う委員の交代でございますが、髙本学委員の後任として、一般社団法人日本電機工業会専務理事の中嶋哲也委員に御就任いただいております。なお、本年4月から、自然科学研究機構核融合科学研究所(以下、NIFS)の安原亮教授に新たに科学官に御就任いただき、本日は対面にて御出席いただいております。
 続きまして、本日の委員の御出欠でございます。核融合科学技術委員会は、大塚委員、吉田朋子委員の2名が御欠席でございます。なお、兒玉委員におかれましてはオンラインで参加予定でございますが、15分ほど遅れての御参加となる旨御連絡をいただいております。また、原型炉タスクフォースは、伊神委員、藤岡委員、横山委員の3名が御欠席でございます。
 本委員会及び原型炉タスクフォースの定足数は、それぞれ過半数でございます。本日は、各委員会等におきまして、現時点でそれぞれ12名の委員に御出席いただいており、それぞれ過半数に達しておりますので、いずれも定足数を満たしていることを御報告いたします。
 本日は、対面及びオンラインでのハイブリッド形式による開催になってございます。御発言いただく際には、対面参加の委員におかれましては挙手していただき、オンライン参加の委員におかれましては、画面の下にありますリアクションから「手を挙げる」ボタンを押して、ミュートを解除の上、御発言いただきますようお願いいたします。
 最後に、本日の配付資料でございます。議事次第に一覧で示しておりますとおり、資料1から4及び参考資料1となります。なお、参考資料1につきましては、核融合科学技術委員会の尾崎委員より共有があった資料でございます。
 それでは、尾崎委員から資料の概要について簡単に御説明をお願いいたします。
【尾崎委員】  どうもありがとうございます。表題が「核融合市場研究会報告書 核融合産業イノベーションを目指して」というふうに記載しておりますけど、参考資料を含めますと実は数百ページに及ぶような資料でございまして、詳細はお話ししませんが、簡単に、この報告書の背景、内容について皆様に御説明したいと思います。
 この市場研究会といいますのは、私と文科省の栗原技術参与、この2人でやっています、いわゆる任意団体でございまして、ただ、任意団体でも、企業関係者の方々が昨年度、非常に核融合に注目していただいたということで、参加登録人数が127名、参加企業団体数が56社ということで、昨年度1年間にわたって研究会を行いました。プレゼンテーションでは、馬場戦略官、それから前任の稲田戦略官、髙橋補佐、QSTの大山部長、坂本チームリーダー、ITERの大前戦略官、こういった方々に御協力いただきまして、非常にいい資料が出来上がったと思っております。これは公開資料になるというふうにお聞きしておりますので、企業関係者あるいは学術関係者の方々もぜひ使っていただいて、今後の参考にしていただければありがたいと思っております。
 以上でございます。
【日野専門官】  尾崎委員、ありがとうございました。
 事務局からは以上となります。
 それでは、冒頭の撮影は以上となりますので、報道関係者の方々におかれましては御退出をお願いいたします。
(報道関係者退室)
【日野専門官】  それでは、上田主査、よろしくお願いいたします。
【上田主査】  本委員会は、委員会運営規則に基づき、議事を公開いたします。御発言は議事録に掲載され、ホームページ等で公開されますので、御承知おきください。また、本日は、議題3の説明者として、ITER機構の鎌田裕副機構長に御出席いただいております。
 それでは、本日の議事に入りたいと思います。
 まず、議題の1番です。「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略を踏まえた最近の取組」に入ります。それでは、事務局から資料の御説明をどうぞよろしくお願いいたします。
【馬場戦略官】  事務局より、国家戦略を踏まえた最近の取組について御紹介したいと思います。
 原型炉タスクフォースは過去、3月、6月に開催しておりますが、前回核融合科学技術委員会が開催された2月以降の取組について中心にお話しさせていただければと思います。
 目次に記載のとおり、本日は、研究開発の全体像について簡単に御紹介した後、国家戦略を踏まえた最近の取組についてお話しさせていただく予定です。
 まず、研究開発の全体像については、ここにいらっしゃる方は皆様御存じかと思います。世界3大トカマクと言われたJT-60から、現在、科学的・技術的実現性を確認する段階としてJT-60SA、また、今日お話があるITERについて、さらには学術研究の観点で大阪大学レーザー科学研究所(以下、ILE)、NIFSの取組で、将来的に原型炉、そして商用炉というような流れになっております。また、昨年度からはSBIRフェーズ3基金を活用し、スタートアップなどが有する先端技術の社会実装を促進するとともに、ムーンショット型研究開発制度により、未来社会像からのバックキャストによる挑戦的な研究開発を推進しているところでございます。
 ITERについてはこの後お話がありますので、説明は省かせていただき、先月、私も参加してきた第34回ITER理事会の概要について簡単に御報告したいと思います。
 議事のポイントにもございますとおり、計画の進捗状況としては、各極及びITER機構において、機器の製造や組立て、据付けが進展しています。特に技術的に最も困難な機器であるトロイダル磁場コイルの全機納入が行われ、7月1日には記念式典が開催されたところです。その他、真空容器、熱遮蔽板の修理が進展し、官民ワークショップを開催したこと、これはこの後、議題3で鎌田副機構長から詳細に御報告あるかと思います。
 またベースラインの更新につきましては、ITER計画の日程・コストを定める基本文書「ベースライン」の最適化に向けて、ITER機構から提案を受けたところでございます。新型コロナ感染症や機器の不具合の修理等による日程の影響があるものの、工程の大幅な組替えを行うことにより、核融合運転の開始時期は2035年を維持する方針という報告、提案がございました。
 今後、各極が精査を行った上で、早ければ次回11月に予定されている理事会において、加盟7極の全会一致によって承認される必要があるものになっております。4ページ目にも記載しているとおり、科学技術・学術審議会の下に設置されている本委員会において、ITER機構の提案の妥当性や、原型炉の研究開発計画への影響など、俯瞰的な議論を実施する予定と考えております。
 7月1日に行われたITER記念式典についても簡単に御紹介したいと思います。先週月曜日、文部科学省からは盛山文部科学大臣が出席の下、TFコイルの納入完了記念式典が行われています。最重要機器の一つであるTFコイルが全機納入されたことを記念して開催されておりますが、このTFコイル自体は、日欧が計19機を調達し、2023年までに全数の製作及びITER機構への納入が完了したところございます。盛山文部科学大臣からは、技術的困難を乗り越え、TFコイルを完成に導いたということは、日本のものづくりの力が存分に発揮されたことの証左である、加えてITER計画が確実に進展していることを示すものだ、というような御発言をいただいております。あわせて、5ページ目の下に写真を載せておりますが、ITER機構職員の子弟が多く通うPACA国際学校も訪問しているところでございます。
 続いて、BA活動の状況です。こちらも同様に、今年の4月にBA運営委員会が開催され、私も参加しておりました。各事業の進捗状況として、3本柱について順調に進展しており、特にJT-60SAの初プラズマを含めた統合コミッショニング等を成功裏に完了したことについても報告がありました。加えて、運営委員会欧州側、日本側としても、欧州側の研究者・技術者家族への支援に対する県、六ヶ所村の多大なる尽力に謝意などが述べられているところでございます。
 続いて、ムーンショット型研究開発制度の状況です。こちらについては1月に国際ワークショップを開催するなど、現在、公募が行われ、審査が行われているところでございます。この審議会でも研究開発構想など御審議いただいたところでありますが、多くの質の高い提案が寄せられたこと、我々としても期待をしているところでございます。
 また、学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想については、前回、兒玉委員、吉田委員からも御報告ありました。12月に文部科学省で定めたロードマップにおいては、ロードマップ2023の計画の中に2つ、NIFSとILEを中核とした2つのプロジェクト計画が掲載されているところでございます。
 それでは続いて、国家戦略を踏まえた最近の取組について御紹介したいと思います。
 14ページ目の資料につきましては、2月に開催された総合科学技術・イノベーション会議の資料を一部改訂したものになります。国家戦略を昨年4月に策定して以降、約1年、様々な進展がございました。3本柱で構成されておりますが、左上、産業育成戦略については、フュージョンエネルギー産業協議会(J-Fusion)が設立されました。また右側、技術開発戦略においては、ムーンショット目標、またJT-60SAの初プラズマ生成ということがございました。さらに、国家戦略の推進体制については、QSTを中心に、アカデミア、民間企業が参加する実施体制を構築するとともに、大学間連携による教育プログラムの提供、ITER、JT-60SAを活用した人材育成などの取組が現在進められているところでございます。
 今後の方針として、記載されているとおり、国際連携も活用し、原型炉に必要な基盤整備を加速すること、また、産業協議会とも連携した安全確保の基本的な考え方を策定するなど、早期実現、関連産業の発展に向けた取組を加速するということが2月のCSTIの本会議でも報告させていただいたところです。
 こちらの内容について、国際連携、産業協議会、安全確保の3点について最新の状況を御報告したいと思います。
 まず国際連携については、これも既に御報告済みですが、JT-60SAの記念式典に合わせて、シムソン欧州委員と共に、フュージョンエネルギーに関する共同プレス声明に署名しているところでございます。また、アメリカとの関係では、総理が首脳会談を行うタイミングに合わせて盛山文部科学大臣が訪米し、DOEとの間でフュージョンエネルギーの実証と商業化を加速する戦略的パートナーシップに関する共同声明を締結しております。こちらについては、40年続く科学技術協力協定に基づいて設立されたCCFEを活用し、戦略的な活動を推進するということがうたわれております。
 加えて、18ページ目でG7の取組を説明いたします。こちらについては今週もG7の科学技術大臣会合ということで、内閣府の高市科学技術政策担当大臣が参加しておりますが、今回6月に開催されたG7プーリア・サミットの成果文書において、恐らく初めてかと思いますが、フュージョンに関する記載が盛り込まれております。2つ目の丸にございますが、フュージョンエネルギーが将来的に気候変動とエネルギー安全保障上の課題に対して永続的な解決策を提供する可能性があることを認識する、こういったことが日本のみならず、各国の首脳間においても合意、認識が示されたところです。特に、ページの下に囲ってある成果文書のコミュニケの部分ですが、フュージョンエネルギーに関するG7作業部会の設立を約束する、規制に対する一貫したアプローチに向けて取り組む、世界フュージョン・エネルギー・グループの創立閣僚会議をローマで主催するというような文言がコミットメントでも示されているところです。
 産業協議会についても3月末に、国家戦略に基づいて設立されております。発起人としては計21社お集まりいただき、これまでの主な活動にも記載されているとおり、既に様々な取組が進んでおります。いくつか御紹介したいと思います。
 まず20ページ目、アメリカの業界団体と共催でイベントを開催しております。こちらはワシントンDCの日本国大使公邸で開催しておりますが、当日は産業界、政府関係者、総勢100名が参加し、様々な議論が行われているところでございます。
 また、21ページ目には、設立社員総会の様子も掲載しております。高市科学技術政策担当大臣からは、このJ-Fusionがメーカー、商社、電力、IT、建設、材料、金融など、多様な業界業種の企業で構成されていること、日本の力を総結集したオール・ジャパンのチームができることを願っているというような発言がございました。また、盛山文部科学大臣からは、産学官が密に連携しているのが日本の強みであると、原型炉の基盤整備を加速する、原型炉に生かせる技術や人材を培っていきたいというような発言があったところでございます。
 次に、安全確保検討タスクフォースの状況になります。こちらについては国家戦略を踏まえて、昨年3月に内閣府の有識者会議の下に設置するということが決定したところでございます。ここに記載のとおり、フュージョンインダストリーの育成、原型炉開発の促進も念頭に置いた安全確保の基本的な考え方を、関連学会とも連携を図りながら、今年度中にパブリックコメントを経て取りまとめていきたいというふうに考えております。こちらの安全確保検討タスクフォースにおいては、本委員会・原型炉タスクフォースからも大野先生、奥本先生、福家先生、横山先生にも御参画いただきながら、委員会とも連携連動していきたいと思っておりますし、また、議論の状況については本委員会・原型炉タスクフォースにおいても随時御報告、共有していきたいというふうに考えているところでございます。
 最後、こちらは宣伝になります。原型炉タスクフォースでも従前議論してきたところでございますが、本年、ITER International Schoolの13回目の会合を日本でホストすることが決定しております。12月9~13日、名古屋でNIFSにホストいただいて開催し、全国、また世界7極から御参加いただく形になると思います。国内の参加者におかれましては、当日の宿泊費や昼食費といったものが無料になりますし、また企業の方、そういった方々の参画も我々としては期待しているところでございますので、この場を借りて御紹介させていただきました。
 事務局からの説明は以上になります。
【上田主査】  ありがとうございました。ただいまの説明に対して御意見、御質問等ございましたら、よろしくお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 私から1点だけお伺いしてよろしいでしょうか。資料18ページ目のG7サミットに関係する部分です。下の点線で囲われたところの一番下のポツですが、世界フュージョン・エネルギー・グループというものが創立されるということで、これはイタリアとIAEAの意思決定を関係するとあるので、多分IAEAの下で運営されるのかなと思うのですが、このグループは今後どういう活動を想定して設立されるのでしょうか。
【馬場戦略官】  御質問ありがとうございます。まさに今、IAEA側ともコミュニケーションを図っているところでありまして、恐らく早ければ今年中にイタリアで、こういった形での会議を開催したいということを考えています。具体的な活動内容については、IAEAは当然、御案内のとおり、核融合の初期の段階からいろいろな形でコミットいただいているところでございますので、様々な議論が行われるのではないかなというふうに思っています。特にITERの場合は、世界7極が参画しておりますが、そこに参画していない国々も恐らくこの閣僚会合にはいらっしゃるのではないかなというふうに思っています。
 いずれにせよ、この上のG7作業部会といったところもこれから具体化を図っていく段階ではありますので、またそういったものも見え次第、この審議会でも御報告させていただければと思っております。また、今後我々が議論する内容、例えば内閣府で現在議論しているような安全確保検討タスクフォースの検討状況であったりとか、我が国としての原型炉に向けた取組であったりとか、そういったところについても、こういった国際会議の場でも随時、進捗状況など我々からも説明していきたいと考えているところでございます。
【上田主査】  ありがとうございます。ほかに委員の先生方、いかがでしょうか。
【木戸委員】  よろしいですか。原型炉タスクフォース委員の木戸です。最後のITER International Schoolですけど、これは何か定員のようなもので、各社の応募制限といった人数制限のようなものはあるのでしょうか。
【馬場戦略官】  ありがとうございます。場合によってはNIFSからも回答いただければと思いますが、今こちらについては、過去12回を見て分かるとおり、前回日本で開催したのは第2回、九州大学さんでホストいただいているところでございます。今後各極からも多くの参加が行われるところになるかと思いますが、現在ホームページ上で参加者の募集をしているところでございます。
 もし人数制限、そういったものについて御説明があればと思いますが、NIFS 吉田所長、お願いいたします。
【吉田(善)委員】  NIFSがホストとして今準備しています。このITER International Schoolは歴史の長いものですが、今回は異次元に拡張したものにしたいということで取り組んでいます。参加人数については、旅費等の支援をできる枠としての予算的な制限があり、それから会場の広さといった物理的な制限もございます。それでも積極的に、とりわけ異分野、それから産業界にも声がけをして、ぜひ応募してほしいと思っており、その応募実績というものが、これを今後発展させていく上で重要であると考えています。
 また、今回は枠のせいで採択できなくても、これに似たスクーリングの取組みを続けていく計画があり、そういうところに参加をしていただくように案内していきますので、ぜひ応募してくださいとお願いしているところです。今回の応募実績に基づいて、事業を拡大していき、とりわけ様々なセクターからの核融合研究にコミットしてもらうための、人の巻き込みという人材育成事業としてやっていきたいということで進めております。
【木戸委員】  ありがとうございます。では、まずは特に意識せずに応募させていただければと思います。
【吉田(善)委員】  はい。ぜひ積極的に応募していただきますと、リストに上がってきますので、今後も案内をすることで、似たようないろいろな機会を提供したいと考えています。
【木戸委員】  ありがとうございました。
【上田主査】  ありがとうございました。
【鎌田副機構長】  少し補足をさせていただいてよろしいですか。
 ありがとうございます。このITER International Schoolは毎年開催しておりまして、ITER、外国、ITER、外国という順番で続いております。そのため去年はITERで開催しまして、高エネルギー物理、粒子の物理を中心にして、世界中から150人くらいの若い学生、特に大学院の学生さんに一番多く参加していただきました。
 今回お願いしたのは、ダイアグノスティクスとデータサイエンスという分野でありますので、物理だけではなくて、工学の方も非常にたくさん参加いただけるだろうと、ITER機構でも考えており、NIFSさんに引き受けていただいたのは本当にありがたいと思っております。かなり幅が広い分野でありますので、制御のようなものも入るかもしれないし、ダイアグノスティクスとデータというのは、いろいろな意味で刺激的な分野だと思います。特に今後のフュージョンに関してどういったところが大事かと、これは各国からの、もちろんNIFSの先生も含めた講師の方から話を聞いて、聴講する人たちがお互いの議論をするということ、その場をつくること自体も非常に重要なポイントでございますので、ぜひ積極的に木戸さんのところからも参加者を出していただけると、ITER機構としてもありがたいというふうに思っております。ありがとうございます。
【上田主査】  ありがとうございました。鎌田副機構長の力強い言葉がありましたので、ぜひ参加を呼びかけていただければと思います。
 ほかにございますでしょうか。
【栗原委員】  よろしいですか。この次の資料2以降で具体的な開発についての深掘りの議論があると思いますが、それに入る前に、核融合の技術開発、それから産業化は、息が長い取り組みだと思っております。その間に、産業界、企業がこれらに対して長期的な視点を持って、あるいはグローバルな視点を持って、どう積極的に取り組むかというのは大変重要だと思います。
 その意味で、今回の産業協議会であったり、それから、先ほど尾崎委員のほうからお話がありました核融合市場研究会の報告であったり、これらの動きが競争領域というより国内での協調領域としてどう連携して、同じ方向を向いてやっていけるかが重要だと思います。ですから、この中で出た産業界からの意見ですとか、ITER International Schoolなどの人材育成で、大きな課題や、皆さんが共有したほうがいい課題があれば、ぜひこの場でもお話しいただけるとありがたいと思います。いかがでしょうか。
【上田主査】  そうですね。戦略官、お願いできますか。
【馬場戦略官】  まず事務局のほうから、発起人の方々と意見交換していった中で問題意識持たれていたのは、やはり人材育成について、どの業種の方々も問題意識を持たれていたのは確かかなと思っています。それ以外に、今回J-Fusion、産業協議会をつくった背景としては、やはり個社さんだけだと、ほかの国とのやり取りといったときに、ある意味おいしいとこ取りされかねないというところの危惧もあったので、我々としてはやはりオール・ジャパンでの声というところを、当然、海外との関係、国内での政策形成とかにつなげていきたいというふうに思っています。具体的な話については、いろいろと出てきておりますが、その内容については我々としても一つ一つ取り上げながら対応していきたいと思っております。ただ、せっかくの機会なので、今回参加している委員の中にはJ-Fusionに参画されている企業から来ていらっしゃる方もみえますので、もし何かあればこの場でも、J-Fusionなりに期待している内容について御発言していただいたほうがいいかもしれないと思いました。
【上田主査】  ありがとうございます。それではこの後、よければまた御発言ください。
 それでは、次の議題に移りたいと思います。議題の2「フュージョンエネルギーの早期実現に向けて」に入ります。
 まずは事務局から資料の御説明をよろしくお願いいたします。
【馬場戦略官】  それでは、資料2について、フュージョンエネルギーの早期実現に向けて、国家戦略の加速について御紹介したいと思います。
 まず、今回こういった議題で上げている理由の一つとしては、諸外国の動向、環境の変化がございます。各国が国策としてフュージョンエネルギーを推進しているということについては、国家戦略を昨年4月に策定した背景にもなっておりますが、それ以降も様々な変化がございました。例えばアメリカにおいては、2022年にBoldビジョンを発表したのは皆様御存じかと思いますが、実は先月、2周年記念イベントをホワイトハウスで開催した際に、アメリカとして初めて国家戦略「フュージョンエネルギー戦略2024」というものを発表しているところでございます。またイギリスにおいては、EURATOMからの脱退も踏まえ、2040年までに原型炉に相当するSTEPを建設するため、実施主体の設立であったりとか、またドイツにおいては、国家戦略「Fusion2040」というものを策定したり、新たな研究支援プログラムなどを開始しているという状況です。中国については、この委員会、また原型炉タスクフォースでも報告しておりますが、大規模試験設備群CRAFTを2019年に建設開始し、また、ITERに先立ってDT運転を行うBESTというものを2023年に建設開始する計画なども発表されております。また、議題3でも鎌田副機構長からお話がありますし、また先ほど御報告しましたが、ITER機構からベースラインの更新の提案があった中で、我が国として今後どう対応していくかというところが今求められている段階かなというふうに思います。
 そのような中、こちらについては前回の委員会でも御報告しておりますが、バラバスキITER機構長が訪日されたタイミングを得て、岸田総理の表敬をしていただいております。この中で総理からも、この国家戦略を踏まえて、産業界との協働、安全規制に関する検討、早期実現に向けた取組を加速していきたいというような発言があり、この発言を踏まえて政府部内においても議論を活発化しているところでございます。
 その一つの例として、この原型炉タスクフォース、前回、前々回の資料でも議論させていただいたものを持ってきておりますが、4ページ目に記載のとおり、現在、世界各国が大規模投資を実施し、自国への技術・人材の囲い込みがさらに加速している中、日本の技術・人材の海外流出を防ぎ、世界のハブとなるため、我が国のイノベーション拠点化を推進するなど、エコシステム構築に向けた取組を強化するべきではないかということでございます。こちらは過去の原型炉タスクフォースでも必要な取組例を8個挙げさせていただいた中で、具体化するような議論をしてきたところでございます。その中には、原型炉実現に向けた基盤整備の加速や、ITER/BA活動を通じたコア技術の獲得、QST、NIFS、ILE等のイノベーション拠点化など、今日議論している内容についても、この場でも御議論いただいたところかと思います。
 こういった議論を踏まえまして、政府においては先般、先月の総合科学技術・イノベーション会議においても、統合イノベーション戦略2024というものを閣議決定しております。この中では、新たな産業の芽となるフュージョンというところを、まずいの一番に総理からも発言させていただいているところでございます。具体的な内容についても簡単に御紹介したいと思います。
 6ページ目と7ページ目に統合イノベーション戦略の内容を抜粋しております。フュージョンエネルギーについて、世界に先駆けた2030年代の発電実証の達成に向けて、必要な国の取組を含めた工程表を策定するなど、フュージョンエネルギーの早期実現を目指すということや、ITER/BAの知見や新興技術を最大限活用し、バックキャストに基づくロードマップを策定することなどが記載されております。加えて、原型炉実現に向けた基盤整備を加速するために実規模技術開発のための試験施設・設備群を整備することやJ-Fusionとの連携などにより、国際標準化を戦略的に主導すること、小型動力源等の多様な社会実装に向けた用途を実証することが記載されております。さらに、ITER計画/BA活動を通じたコア技術を着実に獲得するとともに、議題1で御報告した日米、日欧、多国間・2国間の連携を強化することや内閣府の安全確保検討タスクフォースにおける議論も踏まえて、2024年度中に国際協調した基本的な考え方を策定すること、加えて先ほどITER International Schoolの話もありましたが、大学間の連携、国際連携による体系的な人材育成システムを構築すること、また、アウトリーチ活動などでも取り組んでいますが、リスクコミュニケーションによる国民理解の醸成等の環境整備を一体的に推進することが今、閣議決定されているというところです。これを、具体化していくにあたり、本委員会での先生方の御指導を得ながら進めていきたいと考えているところでございます。
 加えて、成長戦略の関係です。こちらについては、政府だけではなくて、与党自民党においてもプロジェクトチームが結成され、議論を重ねていただいてまいりました。そういった議論も踏まえて閣議決定された成長戦略「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画2024年改訂版」の中でも、フュージョンエネルギーについて大きく記載されているところでございます。フュージョンエネルギーの実現については、我が国の自律性の確保、産業振興を通じた国富の増大及びエネルギーを含む経済安全保障全般の強化に資することから、戦略、法制度、予算、人材面での強化が必要であるということが記載されているところでございます。このように政府としては、これまでの委員会・原型炉タスクフォースの議論、また各国の動向を踏まえながら、大きな意思決定、閣議決定を今現在しているところでございます。
 そのような中、本日、また今後の議論を踏まえまして、この委員会においては、国家戦略に記載されているとおり、早期実施に向けては原型炉を早期に建設することが肝要であるという部分を踏まえまして、第三段階核融合研究開発基本計画等、これまで原型炉に向けた方針を策定してまいりました。これからも研究の進展や国内外の状況の変化に応じ、適宜見直しを実施してきた中、ITER計画の進捗状況、また、諸外国で掲げられている野心的な目標も踏まえ、以下の観点に留意しながら、この夏以降、原型炉に向けた方針の見直しに向けた議論をさらに活発化してはどうかというふうに考えております。
 具体的には、社会実装につながる科学的・技術的に意義のある発電実証を可能な限り早期に実現することや、現在の原型炉目標、10ページ目の丸1から丸3が記載してありますが、これをもし実現しようとすると、ITERよりもさらに大きなサイズ、1.2倍、1.5倍になりかねないというところを踏まえながらどう考えるか、ということがございます。また原型炉段階への移行判断を見直す必要があるのかないのか、先ほど話したとおり、ITER計画/BA活動の知見や、ムーンショット型研究開発制度などの新興技術を最大限活用すること、加えて、原型炉実現に向けた基盤整備、技術開発、人材育成、アウトリーチ、拠点化、そういったことも踏まえたバックキャスト、具体的なマイルストーンを設定した上で、工程、ロードマップというものをつくっていく必要があるのではないかというふうに事務局としては考えているところでございます。
 以降の資料については、これまでの委員会、過去の経緯も含めて、主なポイントとして記載している部分になりますが、説明については省略させていただければと思います。
 事務局からの説明は以上になります。
【上田主査】  ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に対しまして御質問、御意見等ございましたら、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
 武田主査代理、お願いします。
【武田主査代理】  ありがとうございます。馬場戦略官におかれましても、大変力強い国家戦略の御発表をご報告いただきまして、誠にありがとうございます。私自身、民間での核融合研究開発に携わる身といたしまして、従来の閣議決定の中で唯一懸念であったのが、2030年代における発電実証という、この一文に主語がついていないというところでございました。
 それを踏まえまして、本日は、1点御質問と御意見を申し上げたいと思っております。御質問といたしましては、先ほど馬場戦略官のほうから、2030年代早期発電の実証に関連しまして、原型炉目標の見直しであるとか、そういった御提案いただいたわけでございますが、これは、この2030年代発電実証というものが原型炉とひもづいているという、意思表示とは申し上げませんが、そういった方針というふうに御理解申し上げてよろしいのかというのが1点目の御質問でございます。
 その上で、御意見というふうに申し上げても僭越ではございますが、我々民間として恐らく最も懸念しているのは、本日この後、鎌田副機構長から、ITERのベースラインを含めた御説明があるというふうに伺っておりますが、それも踏まえた一連の議論の結果としまして、この2030年代の発電の目標は、将来的にもう民間にお任せをしますというようなことに決まるというのが最も困るシナリオであるというふうに考えております。
 もちろん民間としましては、各社全てが2030年代の発電を単体で行っていくという覚悟を持って進めているわけでございますが、ここにおられる委員の先生方もよく御承知おきのとおり、なかなか民間のみでそれを成し遂げるというのは大いなる困難を伴うものでございます。したがいまして、将来、2030年代目標、この主語がもし民間になるという場合におきましても、例えばトリチウムの取扱いでありますとか立地でありますとか、そういった政府としても官民で分担をする領域というものを、ぜひ技術的に議論いただきたいということを考えております。9ページにございますが、閣議決定にありますトカマクに限らない競争的な支援についてもやはり技術的なマイルストーンに基づいた議論がずっと考えられておりますし、人材育成につきましても、もし公的プログラムで十分な数の人材が育成されない場合には、民間として人材育成を行っていくというような判断を早急に取る必要があるというふうに思っております。
 したがいまして、私からの御意見といたしましては、この2030年代の発電の主語がいかんにしましても、民間にしても原型炉にしましても、ぜひ、有識者会議に付託をして早期発電のロードマップは終わりということではなく、いかに技術的に30年代の発電実証を可能たらしめるかということにつきまして、技術開発、人材を含めた、殊こういった内容で核融合科学技術委員会でございますとか原型炉タスクフォースを含めた場、別個の検討会の立ち上げもあるかもしれませんが、表面的な努力目標にとどまらないような、真の意味でのバックキャストでの技術的な議論というものを切にお願いしたいというのが私からの御意見でございます。
 私からは以上です。
【上田主査】  ありがとうございました。馬場戦略官、いかがでしょうか。
【馬場戦略官】  御質問ありがとうございます。この2030年の発電実証については、主語が記載されていないという御指摘があったかと思います。我々としては、民間、国、どこでもいいので、日本でまずはこういったものを実現していきたいというふうに考えているところでございます。
 今のバックキャストに基づくロードマップについては、この6ページ目の閣議決定されている文章の一番下にも記載してあるとおり、自分のイメージは、原型炉開発ロードマップを具体的なマイルストーンをつくって、何を本当に今やっていかなければいけないのか、ITERで得られる知見、またそれ以外の知見も加えながら、逆に今後、例えば2035年までの10年間でどういう人材が必要なのか、技術開発をしていかなければいけないのか、また、トリチウムの話もありましたが、その前にやはり規制のような問題についても前もって取り組んでいかないといけないというようなことを問題意識として考えているところでございます。
 特に議題3のほうでまたお話ししたいというふうには思っていますが、こちらの10ページ目ですけど、今後、社会実装につながる科学的・技術的に意義のある発電実証を可能な限り早期に実現するということ、恐らくこういった部分についてはトレードオフの部分も出てくるのではないかなというふうに思っています。既存の原型炉目標を実現するというところをもし変えないとなると、恐らく期間、タイミングというものが後ろになりかねないというところもありますし、全てを満足するような解を求めようとすると、エンジニアリング的、技術的に難しいような問題も出てくることが想定されます。そういった部分を、まさに専門的にこれから、この夏、秋にかけて議論いただくというところが、最終的にITER計画の今回のベースラインの提案の判断にも関わってくるところにつながってくるのかなと思っています。武田主査代理の御質問については、まさに我々としても、この委員会・原型炉タスクフォースでのこれからの議論に期待しているところでございます。お答えになっていますでしょうか。
【武田主査代理】  お答えありがとうございました。
【上田主査】  ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 吉田委員、お願いします。
【吉田(善)委員】  今の議論の中で、2030年代の発電実証ということの意味について意見です。発電実証ということが全ての目標ではなくて、最終的にはフュージョンエネルギーというものが社会の中でいかに使われていくかという未来像を描き、それを総合的に見た戦略が重要です。2030年代の発電実証ということについては、特に民間のほうでこれを目標に掲げている活動がありますが、それが戦略の全てではないということが一つ重要なポイントだと思います。フュージョンエネルギーの理想的なありように向けて、まさにバックキャストして我が国としてどういう取組をするのがいいのかということが総合的な観点から大事だと思います。
 ですから、2030年度発電実証ということをあまりにクローズアップし過ぎて、それだけが核融合研究であるということにならないことが重要なのだと思います。ただ、そういう動きがあるということ自身は基本的にはポジティブな勢いですから、そういったものを支援していくことが最終的な核融合技術の確立に対してきちんと資するということを前提に、いろいろなセクターがそれぞれ何をすべきか考えることが課題になると思います。
【上田主査】  ありがとうございました。総合的にいろいろな見地から核融合、将来を見据えて、そこからバックキャストしていろいろなことを並行して進めていくということかと思います。
 それでは、柏木委員、お願いいたします。
【柏木委員】  柏木です。よろしくお願いいたします。
 今の御質問と関連している質問になるのですけども、この原型炉タスクフォースが考えた取組の加速で8点ぐらい重要な科目が4ページ目に挙がっているかと思います。これを踏まえて2030年代の発電実証、あるいはもう少し先の発電炉といったときに、これらの活動を全てやらなければいけないのかどうかということを考えると、先ほどバックキャストという言葉が出てきましたけど、2030年とか2040年を目標にした場合、これら全てについてロードマップをつくり、多分アクションプランをつくっていかないと、うまく連携していかないと思います。実際にこれらの活動を目標に向けて具体的に進めていくということについては、既に議論、例えば規制関係はもう今年から始まっていますけれども、ほかの件につきましては具体的にはどういう形で進めようというようなこととかは、もう何かあるのでしょうか。
【上田主査】  事務局からお願いできますか。
【馬場戦略官】  ありがとうございます。前回、前々回の原型炉タスクフォースでは、実はこれにいくつかハイライトしたような形で議論をさせていただきました。原型炉タスクフォースの中では、4ページの中で、例えば原型炉実現に向けた基盤整備の加速だったりとか、大学間連携による人材育成だったり、そういった部分についてハイライトして、特に今日はこの議論をさせていただきたいというような話をさせていただきました。
 他方、安全確保の基本的な考え方は、先ほど御紹介したとおり、内閣府の安全確保検討タスクフォースで今議論しているものがあり、国際活動の戦略的推進は、少し外交的な側面もあるので、まずは国が表に出ているところもあるかなと思います。最終的には国家戦略の改定というところも閣議決定には記載されているところではありますので、まさに柏木委員が参加されている内閣府の有識者会議の場で全てをまとめることができればいいのかなと思っています。本委員会においては、やはり技術的な観点での積み上げを期待しているところでございますので、特にこの8項目の中でも、基盤整備の加速だったり、コア技術の獲得だったり、イノベーション拠点化だったり、大学間の人材育成だったりとか、そういったところの議論をこれから、夏から秋にかけて具体化をさらにしていけるといいかなと思っているところです。
【上田主査】  どうぞ。
【柏木委員】  技術的なところは今までのアクションプランの形とかで進んでいくところがあるかと思うのですけど、この中には産業協議会とか、あるいは原型炉に向けた体制の構築とか、結構技術的以外のところもあるので、そういうところについてもロードマップやアクションプランをつくっていくというようなイメージでよろしいのでしょうか。それとも、これはまた違うロジックで、どういう段階で強化していくとかいうのが議論されていくことになるのでしょうか。
【馬場戦略官】  よろしいでしょうか。
【上田主査】  どうぞ。お願いします。
【馬場戦略官】  産業協議会は、おっしゃるとおり、確かに主体としては国ではないので、どういう形で巻き込んでいくかというところあるかと思いますが、閣議決定の中でも官民連携してそういったものをつくり上げていくことが大事だという話にはなっているので、様々な形でコミュニケーションを図りながら、最終的には国としての方針、方向性をつくって、それが将来的な原型炉や産業化を見据えたようなものになればいいかなと思っています。今の時点で具体的にそこまで考え切れていなくて申し訳ないと思います。
【上田主査】  よろしいでしょうか。ほかにいかがでしょうか。オンラインでつないでおられる委員の方もよろしいでしょうか。
 それでは、どうもありがとうございました。
 では次に、議題の3に移りたいと思います。6月19、20日に開催されたITER理事会においては、ITER計画の進捗状況に加えて、ITER計画の日程、コスト等を定める基本文書、ベースラインについての提案がありました。本日はITER機構の鎌田裕副機構長に御出席いただいておりますので、ITER計画の進捗状況について御説明をいただきたいと存じます。まずは事務局のほうから、本日の位置づけ並びに今後の流れについて説明をいただき、その後、鎌田副機構長より御説明を行っていただきたいと思います。その後で質疑応答とさせていただきたいと思います。
 それでは、まず事務局より御説明、よろしくお願いいたします。
【馬場戦略官】  ありがとうございます。それでは資料3に基づきまして、今後の委員会、原型炉タスクフォースの予定について、まずは本日の会議の位置づけについて御説明させていただければと思います。
 昨年度、本委員会でも実施いただきましたITER計画の推進については中間評価を実施しており、その際には、国家戦略も踏まえ、実験炉であるITERから得られる様々な知見を活用し、将来の原型炉開発を見据えた研究開発を加速するとともに、産業化に向けた他国の動きに後れを取ることなく、ITER計画で培った技術の伝承・開発と産業化、人材育成を見据えた取組を強化していくことが重要だという評価をいただいております。
 他方、資料上部に記載のとおり、令和6年にITER機構よりベースライン更新に係る提案が行われる予定であるということも踏まえ、本委員会において、提案の妥当性や、原型炉研究開発ロードマップ等への影響など、ITER計画・BA活動を含むフュージョンエネルギーの推進に向けた活動全般について俯瞰的な観点から、別途補完的に議論を行う必要があるといった御指摘をいただいているところかと思います。
 本日7月10日自体は、この後、鎌田副機構長から、ITER計画の進捗状況、ベースライン更新等に係る説明について御説明いただきますが、先ほど御紹介した新しい資本主義実現計画の改訂版、統合イノベーション戦略2024、そういった政府の全体の大きな方向性も踏まえ、この夏から秋にかけて議論を重ねていってはどうかというふうに考えております。
 具体的には、左下に記載してあるITERの次回の理事会が11月に予定されていることも踏まえ、核融合科学技術委員会において中間評価の補完的議論を実施していただければというふうに考えております。その中では、ITER機構の提案の妥当性や、原型炉の研究開発計画への影響など俯瞰的な議論を実施することとし、提案の妥当性については、ITER計画の国内実施機関であるQSTから提案の分析結果の報告なども踏まえながら、検討、議論をしてはどうかと考えております。
 並行して、右側の青色の部分ですが、原型炉タスクフォースにおいては、この委員会からのチャージを受けて、ロードマップの見直しに向けた検討を実施していただきたいというふうに考えております。具体的には、ITER計画のベースラインの改定も見据え、原型炉研究開発ロードマップの見直しや、バックキャストに基づく技術的な観点でのロードマップというものを策定していただきたいと考えております。特に今回、この後提案がありますITERの核融合運転2035年の開始に向けて、具体的にそれまでの間にどのような技術開発を別途、国でやるべき必要があるのか、どれだけの人材を日本として育成する必要があるのか、どのような実証試験が必要なのか、そういったことを議論していき、最終的には核融合科学技術委員会にも報告いただき、委員会としては、原型炉タスクフォースの報告も踏まえ、フュージョンエネルギーの推進に向けた活動全般について議論し、ITER機構のベースライン更新に係る提案の妥当性について審議していただきたいというふうに考えております。
 最終的には、委員会主査から研究計画・評価分科会に中間評価の補完的な議論の結果という形で報告いただくとともに、先ほど柏木委員からも御質問ありましたが、内閣府のほうで行われている核融合戦略有識者会議の国家戦略の改定にもインプットしていければいいかなと考えているところでございます。
 事務局からは、本日の位置づけについての説明は以上になります。
【上田主査】  ありがとうございました。
 それでは続きまして、鎌田副機構長、どうぞよろしくお願いいたします。
【鎌田副機構長】  ありがとうございます。ITER機構の鎌田です。今日はこういう機会を与えていただきまして大変光栄です。よろしくお願いいたします。
 それでは、ITER計画の進捗状況ということで、1ページ目に写真で写っているのが今のサイトです。大体85%ぐらいの建屋は出来上がっているというところです。
 2ページ目をお願いします。さて、最初のページに、私、「ITERが拓く道」というページを持ってまいりました。今さら何でこれを言うのかというところですが、先ほど来お話に上がっているように、今、世界各国でフュージョンというものが非常に速く、しかも複雑に動いております。もちろんフュージョンにとって追い風が吹いているのは非常にすばらしいことです。そういう社会の状況の変化、それから、今日お話ししますITERのいろいろな現状、これを踏まえて、ITERとは何なのだろうかと、ITERが持つ意味は何なのだろうかといったところが非常に重要なポイントで、もう一度、我々はこれを再認識あるいは共有していく必要があるということで、このページから始めさせていただきました。
 もちろん「拓く道」の最後は、人類の幸せ、エネルギー問題の解決でありますが、重要な点は、皆様よく御存じの2点です。1つは核融合の運転ということで、燃焼プラズマ、エネルギー増倍率10で、核融合出力50万キロワットを維持するということです。同じように重要なポイントが、これは工学の分野でありますが、核融合炉に不可欠な技術のアベイラビリティー、超伝導コイル、こういうものがしっかりと世の中で出来上がって、すぐにでもほかの原型炉などに使える状況であるか、というアベイラビリティーです。それとシステムを統合するインテグレーション、これを実証するということです。同時に、ITERを使って将来の原型炉に必要な構成機器、ダイバータなどの試験を行う、これがITERのプロジェクトスペシフィケーションという、一番ITERの目標を7極で合意した文書に記載されている事柄でありまして、これは新しいベースラインでも全く変えずに進めていこうというふうに思っていますが、記載してあること一つ一つをもう一度かみしめてみたいと思います。
 同じ2ページ目の水色枠の右下に書きましたが、日本は最も枢要で高い技術が必要な機器製作を担当しています。超伝導コイル、トロイダルコイル、それからセンターソレノイドの導体、それから加熱、これはNeutral Beam Injection heating (NBI)とECH、それから受熱機器、ダイバータです。それから遠隔保守、トリチウム設備、計測、テストブランケット、こういうものを日本がやっているということの意味は何か、これはまた後で話は戻ってきたいと思います。
 そういうことを踏まえた上で、ITERというのは皆さんの装置です、といいますか、あなたの装置です、ということを今日はこの日本の皆様の前でもう一度確認したいと思います。ITERは誰かがやっているのではなくて、自分がやる装置です。ぜひ自分の装置だと思って、一緒にこのITERというのはどうやって使っていったらいいのだろう、それを考えていただけるとありがたいと思います。そういう意味で、核融合の科学技術、人材育成に世界が活用する場だと、ぜひこの活用を考えていただきたいというふうに思います。
 3ページ目をお願いします。このページが本日のまとめのようなものです。1個ずつ後で詳しく説明しますけれど、真ん中から見ると、建屋85%完成と記載しました。左側の上がトロイダル磁場コイルでありますが、写真の下のほうに人間がいまして、いかに大きいかが分かります。高さが17メートル、1個当たり300トン、これが18個プラス、スペア1個の全19個、これが全部造り終わりました。それから、その下側が6個のポロイダル磁場コイル、これも全部できました。これは5月で最後のコイルが巻き上がりました。上のほうへ行きますと、世界最大のヘリウム冷凍プラントがもう既に完成して、試運転に入っています。それから、電源設備もできております。ただし、右側のほうにありますように、トカマクの組立てを2021年から始めたわけですけれども、真空容器セクターを2022年に入れた後で、この真空容器セクターの横の次のセクターと接合する溶接開先の部分がこのままでは駄目だと分かり、修理の必要があるということになって、1回入れたものを取り出しましたというような状況です。
 それで、そういうことを踏まえて、2週間ほど前にITER理事会で、ITER機構としては新基本計画である新しいベースラインを提案いたしました。2035年、重水素-重水素の核融合運転、39年、重水素-三重水素の核融合運転の開始というものです。後で詳しく話をします。これが全体の今日のお話のインフォメーションをまとめたものです。
 4ページ目をお願いします。さて、先ほど1ページ目で技術の供用性という話をしました。なぜITERが大事かという最初の部分が、こういう大きな超伝導のコイルをしっかりと造るだけのサプライチェーンがあること、量産化できるようになったこと、ITER計画を使ってこういうことができましたということが今日の大事な報告であります。
 4ページ目の文章を読みますと、2023年12月、18プラス1スペアの全コイルがITERのサイトに到着しました日本が9機、(三菱重工さんが5、東芝さん4)、欧州が10機となっております。これは皆さん御存じのように、ITERプロジェクトの最初というのは、協定の前のコンセプチュアルデザインフェーズ、エンジニアリングデザインフェーズ、そういうものを入れて30年以上、多分ITERで一番挑戦的な技術だと思われていたのが、というか実際にそうであったのが、この超伝導のD型のコイルを造るといったところです。ただ造ればいいわけではなくて、これだけのもので許される誤差は1ミリだといったところが非常に重要なポイントです。
 真ん中に記載してありますが、ニオブスズの導体は6極が作って、日本が巻線9個、ヨーロッパは巻線10個です。その次が大事なポイントで、コイルケース、構造物は特殊なステンレス、低温であっても機械強度が非常に強い、ただし溶接が非常に難しいのです。こういうコイルケースは日本でしか造れないということで、日本が全部造っております。ケースはその後一体化します。例えば日本から10個のコイルケースをヨーロッパに持っていって一体化することになりますが、これを見ていただければ分かりますように、必要な技術を全部持っているのは日本であり、非常に大事なポイントだと思います。こういうサプライチェーンと量産化ができたといったところが、まずITERプロジェクトとしての大きな成果です。
 5ページ目をお願いします。それを祝うという意味で、先ほど戦略官からも御紹介ありましたが、7月1日にトロイダル磁場コイルの完成式典を開催しました。写真がありますけれども、盛山文部科学大臣からも御祝辞をいただいて、イタリアの環境エネルギー安全保障大臣の方やバラバスキ機構長にも参列いただきました。また、このコイルを造った日本とヨーロッパのメーカーの方々に、感謝の意を示した盾を機構長からお渡ししたといったことがありました。
 6ページ目をお願いします。超伝導コイルではもう一つ、左側のポロイダル磁場コイル、これは6個造るわけですけれども、一番下が中国の小さいコイル、それから一番上の小さいコイルはロシア、そのほか欧州ですが、これも全部製作が終わりました。右側がセンターソレノイドです。ニオブスズでありまして、これの導体は全数、日本です。これをアメリカに持っていって、アメリカが6プラス1個で合わせて7モジュールを造るのですけれども、今4番目のモジュールまで出来上がっていて、組立てではITERサイトで3つまでのモジュールの組込みが写真のように出来上がっている状況です。
 以上、超伝導コイルに関して言えば、ほぼ必要な技術、サプライチェーン、量産化というものが全部できたかなと認識しています。したがいまして、ITERと少なくとも同じサイズの原型炉の同タイプにおける超伝導コイルであれば、それをしっかりと造っていくだけの素地は今もう整っているということが言えるわけです。
 7ページ目をお願いします。さて、次はダイバータです。一体、核融合炉はどこまでコンパクトにできるか、その多分一番重要なポイントが、恐らくこのダイバータです。いくら磁場を強くして、あるいは同じ磁場に対してプラズマの圧力を上げて、ベータを上げて、出力密度を上げていっても、結局ダイバータあるいは壁がもたなければ、核融合炉はコンパクト化できないです。一瞬だけそういうコンパクトな装置で核融合反応を多く起こすことができるかもしれませんが、それを長い間持続することはできないわけです。というわけで、皆さん専門家に言うのは釈迦に説法でありますが、どのくらい受熱をすることができるか、これが核融合炉の大きさを決める大事なポイントになってまいります。
 日本は7ページ目の左にありますように、全部で54個あるダイバータカセットのうちの、全てで外側ターゲットというものを造っています。その外側ターゲット、真ん中の写真にありますが、これのプロトタイプというのは三菱重工さんが完成されまして、それが7月2日にITERに来たのを開梱したのが右側の写真です。右側見ていただければ分かりますように、この写真では、小さなタングステンのモノブロックがたくさんついています。先ほどのプロトタイプの1体でも1,600個のタングステンのモノブロックがあって、これはアライドマテリアルさんが造って、量産化がここまでできているということでありますけれども、100ミクロンの精度で造って据え付けるというものであり、ITER全体では20万個これが必要というようなところです。こういうものがしっかりと今整っていると、20メガワット・パー・スクエアメーター受けることができるというようなところまで来ています。
 こういうこと自体も非常に重要なポイントでありまして、しかし、これでもITERのサイズです。ITERよりも小さな、コンパクトなリアクターを本当に造ろうと思うと、もっと受熱性能を上げるか、ダイバータに来る熱を事前に分散させるという技術をもっと発達させないといけないということになります。
 8ページ目をお願いします。これ以外にも、今日は紹介していない中性粒子ビームだとかジャイロトロンだとか、いろいろなところがあるわけですけれども、今日は少しその辺りを省いて、プラントシステムについてだけ手短に紹介しますと、いろいろなものを造るだけではなくて、ITERサイトには自前の電力供給システムが出来上がっていて、右上は超伝導コイルを冷やすための冷凍プラントが既に出来上がって試運転を開始しているとか、右下はマグネットの電源設備、これも非常に順調に組み上がって、試運転に向かっているといったような状況になっています。
 9ページ目をお願いします。ところが、皆さん御存じのように、真空容器と熱遮蔽の修理というのを今やっています。左側は真空容器セクターでありまして、この40度セクター、360度でドーナツ型になるわけですが、それを9分割して、1つの40度セクター、今写真に写っているミカンの房のようなものがサイドの様子ですが、隣のセクターと溶接してつなげていくところの開先の精度が悪くて、このままでは溶接できない状態です。このためにR&Dと修理をしなくてはならないということが分かったわけです。様々なR&D、この1年間くらいやってきまして、溶接部分の開先部分のビルドアップ、削る両方含めてR&Dがうまくいくということが分かって、左下の写真にありますように、開先をしっかりと作り上げていく、修理していくというような作業を今進めているところです。この夏過ぎには最初の40度セクターの修理が終わって、日本から来ているトロイダル磁場コイル2つと組み合わせてセクターモジュールを組んでいく作業をもうじき始めようとしているところです。もともと最初の真空容器セクターをコイルと合わせていくのは、ちょうど6年前に行うはずだったので、この真空容器セクターは修理も含めて6年の遅延というのが現状であります。
 右側は熱遮蔽で、全部の銀メッキを取り去っていく必要があるということが分かって、今その作業をしています。ただし、今のところ、この作業は律速段階ではなくて、真空容器の修理の裏、シャドーのところに入っているという形です。
 10ページ目をお願いします。さて、そういうことも含めて、新しいベースラインというのを今から御紹介いたします。既に合意されている最終プロジェクト目標を維持しながら、ITERの主要目標をできるだけ早く達成することに焦点を当てて、組立て、統合試験、運用に関する包括かつ実現可能な計画を策定することにしています。
 まず計画策定、ニーズとしては、計画見直しと記載してありますが、コロナの影響、それから各国の世界初機器の製作の難度、真空容器などの修理、これら合計して遅延6年とここに記載しました。ITERというトカマクは、今世界最大のトカマクであるJT-60SAの、その重さも体積も10倍になるものです。こういうものづくりは、本当に最初思っていた予定どおり進むのかどうか、当然予定どおりに進めるべきだろうという考え方はあるわけですけども、チャレンジということで、それはそれなりに遅れるということがやはりあります。もう一つは、修理をする必要があるというのも、やはり造るのが難しいから修理して利用せざるを得ない状況です。
 ここから我々が何を学ぶべきなのかと言うと、ITERは原型炉に向けた教訓であるべきなので、ITERと同じような造り方を、この二重壁の真空容器で、もっと大きな原型炉でやっていくのかどうなのかということとも密接に関連した議論になってくると思うのです。どこの国が造ったものがどう悪いからどう責任だということではなくて、我々は技術的にITERから何を学んで、どのように原型炉に生かしていくかというところが、非常に重要なポイントだというふうに思っています。
 先ほど6年の真空容器の遅れはありましたが、あれは韓国製のものでありますが、同様に、欧州製の真空容器も5年3か月遅れています。それから、真空容器の陰に隠れていますけど、先ほど、完成を報告したトロイダルコイル、これも大体2年遅れています。また、センターソレノイドはアメリカが作っておりますが、これも約3年遅れています。このように、いろいろなものの遅延というのがあるのですが、そういうものから一体何を原型炉に向けて学んでいけばいいのかが大事です。造るのに20年かかります、などという原型炉は誰も造らないと思います。10年程度で建設できるようにするにはどうするのだといったところは、ITERから学ぶべきことがたくさんあるのではないかなと考えています。
 もう一つは、現実的な組立て工程の設定というふうに記載しました。今までの2016年のベースラインというのは、ベストテクニカルやアチーバブルということでした。それはもう技術的に一番早くやってできる工程だったということです。今回はテクニカリーフィージブルというのが私たちの基本的な考え方で、かなり現実的な工程を組んだといったところがあります。
 そして、段階的放射線安全実証として、重水素-三重水素の運転を2期に分けて、前期と後期で、前期の辺りは中性子の総発生量を大体プロジェクトの最終値の1%ぐらいのところでしっかりとデータを取ってから先に進めていくようにします。現状あるトカマク装置の10倍の大きさでどのぐらいダストが出るのか、ダストの中にどれだけトリチウムが吸蔵されるのか、ドーズレートがどうなるのか、全部今からITERの最後まで見通すのは非常に難しいというのが現実です。これは核融合の規制との関係等もちろんありますけれども、どのくらいのことを考えるべきなのか、それはITERが自分で実証しながら先へ進んでいかなくてはいけないというのが現実的であるということで、そのような進め方になっています。
 それから3つ目、初期運転については、最初の運転期から十分な加熱装置、これは50メガワット、Electron Cyclotron Heating (ECH)が40メガワットの、Ion Cyclotron. Resonance Heating (ICH)が10メガワットですけど、それとあとダイバータも備えることになります。ダイバータの熱負荷も非常に高いところで、本格的な科学研究を開始します。その中には重水素の核融合運転も入っています。これは同時にHモードの運転ということになりますので、この最初の時期から、ITERの将来のDT運転も見通すような、閉じ込めでありますとか安定性の議論、Edge Localized Mode (ELM)の制御、ディスラプションの制御、ミティゲーション、そういったものが全部できるというような状況です。
 もう一つ大事なことは、最大定格プラズマ電流15メガアンペア、5.2テスラトロイダル磁場という磁場エネルギーの最大定格に、この時期に既に到達するということです。御存じのように、電磁力がどういうふうになりますか、ディスラプションのときに装置がどうなりますか、こういうことも含めて最大定格磁場エネルギーの実現、そこでの運転の実証というのが、少なくとも工学システムとしてのITERトカマクをしっかり評価することがこれでできるという意味で非常に重要なポイントです。
 次が、第一壁の材料を、溶融リスクの高いベリリウムからタングステンに変えました。ダイバータはもともとタングステンなのですけども、第一壁はベリリウムだったのです。でもベリリウムは、例えばディスラプションのときのランアウェーの電子が当たると、すぐに溶融して、隣のタングステンと溶融したものがくっついてしまう。これはヨーロッパのJET装置の結果でも非常にクリアには見えていて、そうするとディスラプションのときの電磁力が大きくなると、これは第一壁の健全性がもたないだろうという懸念があります。それが1つのポイントです。
 それからもう一つ、ベリリウムは非常にたくさんダストを出します。もともとDT運転の2期分くらい、1期2年で2期分ぐらいやると200キログラムを超えるようなダストが出て、そうすると、それを全部回収しないといけないと、これはもともとそういう話になっていました。一方、世界の核融合炉の第一壁は、もうみんなタングステンです。ITERではもともと、大分後の段階になって全部ベリリウムからタングステンに変えようという話にはなっていたのですが、それであれば、もう最初からタングステンにしようというのが今回の大事なポイントであります。
 それから、リスク低減についてです。これはトロイダルコイルの低温試験を追加して、実際に日本のTFコイル、ヨーロッパのTFコイル、全数ではないですが、新しく低温試験装置を作って、ノミナル電流68キロアンペアを流して、しっかりと健全性を試験していこうとしています。それからもちろん、タングステンのときどうなるのかとか、いろいろなことがあります。そういう今後のリスクを低減する上で、各国の装置での試験だとか研究協力の増強などが、この新しいベースラインのバックグラウンドになっています。日本には特にJT-60SAとITERとの研究協力を強くお願いしたいと思っているところであります。
 それから最後、品質の強化についてです。先ほどの修理の話もありましたが、バラバスキ機構長の基本的な方針は、品質最優先です。過去の事例、表現が難しいですが、スケジュール優先というところが否めない部分があっただろうと考えられ、そうすることで結局手戻りが大きいというのが、今回非常に明確になったところです。ですので、品質最優先だからといってスケジュールがどんどん遅れていいわけではもちろんありません。そのために、10ページ目の最後の文章ですけれども、ITER機構と極内機関の合同の品質管理活動を開始しようというわけです。高い透明性というところがキーポイントでありまして、決してまずいところは隠さないで、お互いに共有しながら、どういうふうに改善していくかというのを一緒に品質活動していこうということになっています。
 11ページ目をお願いします。これは、そういうことを踏まえて、ITERの新しいリサーチプランというのをつくりました。これはITER機構だけでつくったわけではありません。7極の研究者が合同して策定して、ITERの科学技術諮問委員会が承認したというものです。
 まずITERの研究計画ワーキンググループ、これは各極の代表的な研究者5名と、あとITER機構10名で、45名でチームをつくっていただきまして、去年12月ぐらいから今年4月にかけて、ITERの研究計画、ITERリサーチプラン・レベル1というのを策定していただきました。並行して、国際トカマク物理活動(ITPA)で、先ほどのタングステンの第一壁に関する評価を行っていただきました。これは7つの専門グループがあって、おのおのの専門分野としての評価をしていただきました。タングステンは、御存じのように、高Zの物質でありますので、プラズマの中に入ったときにラディエーションが増えます。逆に、低Zのベリリウムを今まで選んできた理由は、放射損失が少ないだろうということが原因であり、理由だったわけですけれども、タングステンで大丈夫かという話になりました。
 それに関して専門的な評価、あるいは中国のEASTなどでの実験などもやっていただいて、タングステン、高Z不純物の混入によるエネルギー増倍率10の到達へのリスクは許容範囲であるということが7つの専門グループの結論でありまして、ただし、必要な第一壁の調整、ボロナイゼーションなどは行う必要があるとし、今はこのボロナイゼーションシステムも我々の提案の中に入っています。それだけではなくて、今後の各極の研究機関・装置とのR&Dの協力推進が大事であるというのがITPAの勧告でありまして、それはそのままITERのSTACの勧告に結びついています。
 一番下、ITER科学技術諮問委員会、今年の5月です。これでITER研究計画レベル1が承認されたと、レベル1の建設計画も承認された、あとはタングステン第一壁の選択を支持していただいたといったところが研究分野からです。ちょうど今週、ヨーロッパの物理学会があって、そこでこのITERリサーチプランの紹介を多分、今日か明日あたりに行っているところです。そういう資料もじき皆さんのところに来ると思いますし、必要であれば、国内のそういう学会あるいは学術機関の方々などとも説明の機会を設けたいと思います。
 12ページ目をお願いします。さて、事業全体スケジュールです。目標日程と書きました。建設期、組立て1統合試験運転、運転期とありますが、これだけだと分かりづらいと思いますので、右側に加熱を記載しています。最初の組立てのときから、電子サイクロトロンは40メガワット、イオンサイクロトロンは10メガワット、ダイバータつけて、垂直位置安定化コイルもついて、ELM制御コイルもついて、ディスラプション緩和システムもついているということで、これらを使って、その後の運転開始期のところでダイバータプラズマの運転だとか重水素、Hモード、そういう研究がかなりしっかりできるということになっています。その後、初期の研究期間の後にDT運転に移っていくのですが、そこではECHは60から70メガワットに増強して、ICHも10メガワットから20メガワット、それから、ここから中性粒子ビーム加熱が33メガワットで始まります。それから、テストブランケットシステムも4つつくといったところで整備をしていきます。
 13ページ目をお願いします。ここでもう一回、最初のページと似たような話ですが、プラズマ性能としてITERの価値は何かという確認です。特徴的なスケールより十分長い時間、核融合エネルギー増倍率大なり10の長時間燃焼を達成する。それから、非定常電流駆動を利用したQ大なり5の定常運転を目指す。工学的な性能と試験、技術の供用性と統合実証、そういうことがあります。これらがおのおのどこの時期に入りますかというのは、後で資料として見ていただければと思いますが、それを青い字で記載してあります。
 14ページ目をお願いします。これが新しいベースラインです。左から組立て1があって、組立て1が終わるのは、下側に矢印が記載してありますが、トカマク装置の完成、これが2033年3月です。これはクライオスタット閉止といったところです。それから18か月、統合試験運転を行って、その最後が、おのおの個別に定格磁場を出すということになります。2034年10月から初期研究期期間が始まります。すぐにダイバータ運転を開始すると。2035年の半ばぐらいから重水素の核融合運転を開始します。それから2036年に入りまして、最大定格磁場エネルギーに到達すると、ここまで27か月です。
 その後、組立て2に入って、ここでニュートラルビームをつけたりだとかをしていくことをしていくわけですが、それからインテグレーテッドコミッショニングの2というのを10か月やって、そして重水素-三重水素の核融合運転に入っていくといったところです。Q=10で50秒以上、それから300秒以上というのが大体どのくらいになりそうだというのが44年とか46年と、赤い字で記載してありますが、この辺りDT運転が始まった後の実験手順は、研究の進捗と放射線量の評価などの結果に基づいて、Q大なり10のミッションをできるだけ早く達成できるように、今後最適化していきます。
 それからもちろん、これは目標日程です。予備的なコンティンジェンシーというのも我々は考えておりまして、ITER理事会では提案させていただきましたが、組立て2は2年くらいコンティンジェンシーが必要ではないか、統合試験運転6か月、SRO、初期実験期間が6か月とか、こういうものはコンティンジェンシーとして考えていきたいという提案であります。
 15ページ目をお願いします。さて、それでは2024年の新しいベースラインが、これまでの2016年のベースラインと比較するとどうなるのかというのがこの図です。上側が2016ベースライン、下側が新ベースラインです。緑で記載してありますのが組立てです。今の組立て1というのは、昔の組立て1と2と3の半分ぐらい、これが合わさったものを最初に全部組み立ててしまおうとしています。そしてインテグレーテッドコミッショニングに行きます。今のベースラインの最初の赤いところ、研究運転開始期と記載してあります。そこでやることは、今までの計画は、軽水素を使った運転が2028年から始まるものと、2032年から始まるものと2回分入っておりましたが、これらを軽水素でなく重水素を使いながらやっていくというのが新しいSRO、初期研究運転期です。
 以前の計画の上のラインのうちの左のほうに細い筋で1か月間ほど、ファーストプラズマ期というフェーズがもともとありました。これはプラズマ電流が100キロアンペアくらいで、非常に低いプラズマ電流で、言葉は悪いですけど、取りあえずプラズマをつけますと、そういう時期でした。ダイバータもなければ加熱もないといったところでありまして、過去、実際2016年も、大体トカマクとしてのそれなりの運転を始めるのは2028年の12月からということでありましたが、そのようなものも前は軽水素のみを使うというのが随分長く続いていたということになります。今回は、繰り返しになりますが、初期研究のところから定格磁場の後、ダイバータ運転を開始して、重水素-重水素、DDの核融合運転を開始して、最大定格磁場エネルギーに到達しようということになっています。
 それでは、これらが何年くらい遅れているか、どうですか、というような話が上の4行に書いてあります。15ページ目に記載しているとおりで、重水素-重水素の核融合運転は5か月、むしろ加速しており、前よりも早く始めることになります。それから、最大定格の磁場エネルギーの到達は3年遅延です。そして重水素-三重水素の核融合運転の開始は3年9か月の遅延、Q大なり10で50万キロワット核融合出力の50秒以上維持というのは6年の遅延といったことになっています。
 右側のほうに緑の字で記載いたしましたが、ITERの工学目標の達成というのは、先ほどの最大定格磁場エネルギー到達、それから物理目標の達成というのはQ大なり10ということでありますが、この図で記載しておりますいろいろな定格磁場、ダイバータ運転、DD核融合、最大定格磁場、こういったもの一つ一つのマイルストーンが非常に重要な事柄になってきて、これらおのおのが日本で原型炉の建設を判断するための重要な材料になると私は思っております。こういうITERの状況を踏まえながら、日本でどのようにITERの成果を原型炉の意思判断、決定につなげていくかというのは、恐らくこの委員会で議論なさるのだと思いますので、ぜひそういったことのための参考にしていただきたいと思います。
 16ページ目をお願いします。さて、ITERの役割、ITERをどう活用するかといったところですが、御存じのようにITERは、ワンステップ・ツー・デモという役割でありまして、50万キロワットの熱出力で、原型炉は200万キロワットくらいだろうといったところです。
 下に記載の表は、核融合の技術ということで、機器製作については冒頭で申したように日本は枢要なものをやってきました。その後、集まってきた機器を組み立てて、システムとして統合していく、そしてコミッショニングをして運転をしていく、プラズマ実験ということですが、ただし、これを実施するだけで終わりではないです。機器は、製作したものが本当に思ったとおりに動いたのか、思った以上だったか、以下だったのか、それとも、少しやり過ぎており、緩和してもいいと判断できるのか、という評価が必要です。もし緩和していいのであれば、原型炉はすごく楽になりますが、そういう評価をすること自体がITERの重要な役割ですので、私、評価というのを表の右側に書きました。
 これは組立てについてもそうであり、1ミリの精度で組み立てる、製作して組み立てるのはITERの目標でありますが、それを本当にやっていくのか評価する必要があります。必要だったらやらなくてはいけないわけですが、そういったところをしっかりとITERを使って評価する。こういう評価も含めて、緑の字で記載の通りですが、核融合の規制をつくる、規格基準をつくっていくために、ITERは物を造るだけではなくて評価もする、それによってこういったところに貢献していくというのが大事な役割です。
 下側の赤い四角内で記載しましたが、日本は最も枢要で高い技術が必要な機器を担当います。これは上の表の赤い丸のところです。でも残り5つ、青い丸の部分が残っているわけですが、ぜひ日本には継続して組立て、運転、そして評価に参加していただきたいと思います。そうすることによって、一番大事な機器をやってきた日本がこういう評価もしっかりとやるということは、日本が核融合炉で最も重要な知見を獲得できるということになりますので、こういう観点で、ぜひ原型炉に携わる方々には、ITERを使って評価をやっていただきたいというふうに思います。製作のところは知財がすごくありますけど、この評価というのは、造った人でしか分からない、そういう人だからかゆいところがどこかよく分かるとか、そういうことがあると思うのです。そういう意味で、日本で造ったものは日本でしっかりと評価するのだといったところで、ぜひ産業界の方も含めてITERを活用していただきたいというふうに思います。
 17ページ目をお願いします。そういう産業界の方ということで、この5月27~29日にPUBLIC-PRIVATE WORKSHOPというのを開催しました。先ほど紹介していただきましたので、詳細は省きますが、350名以上という思った以上にたくさんの会社に来ていただきました。スタートアップ30社、部品供給は80社ということで、日本からスタートアップという点ではJ-Fusion代表として、冒頭の講演もしていただきました京都フュージョニアリングさんを始め、ヘリカルフュージョンさん、EX-Fusionさんにお越しいただきました。
 これは何が大事な会議だったかといいますと、民間企業から発表していただいて、おのおのどういうイノベーションやブレークスルーを達成したか、残された課題は何か、そういう中で、こういう企業がITERに何を期待しますか、こういう話をしていただきました。左下に記載しましたが、ITER機構としては、もちろん知財の適切な保護・管理は前提条件でありますが、今後民間の核融合企業とどのように関わっていくかについて、こういう各企業からの希望を伺った上で計画を策定していきたいというふうに考えているところです。
 18ページ目をお願いします。ということで、本日の私が一番申し上げたいのは、ITERをぜひ活用していただきたいところと、日本の原型炉のためにITERを使ってほしいといったところと、もちろんITERの御支援をよろしくお願いしますというところです。
 以上です。ありがとうございました。
【上田主査】  鎌田副機構長、ありがとうございました。それでは、御説明いただいた内容につきまして質疑応答に移りたいと思います。御質問ございましたら、お願いいたします。
 それでは、坂本瑞樹タスクフォース主査、お願いいたします。
【坂本(瑞)主査】  鎌田副機構長、詳しい御説明ありがとうございました。ベースラインの見直しに関しては大変合理的に考えられて進めているということが今の御説明でもよく分かりました。先ほど馬場戦略官からもあったのですけど、やはり原型炉をこれから考えていく上では、ITERからコア技術を獲得して、いろいろと考えていきたいと思います。今御説明があったように、今までにもかなりのコア技術は獲得しつつあると思います。これは現在完了形で、さらに将来に目を向けると、これからITERで得られるであろう知見ということも見越しながら、アクションプランを立てていくことになると思います。
 そこで1つ気になるのは、核燃焼プラズマの制御というところは非常にITERに期待されるところで、自己加熱しているプラズマをどうやって安定に制御するのかというところは、まだ誰もやっていなく、知見がないわけで、それをITERにとても期待するわけですけど、それが今、2040年代にずれてくるということで、これを代替するような何かお考えとかがあれば聞かせていただければと思います。
【鎌田副機構長】  大事なというか、多分プラズマという視点では一番大事な御質問がそこだと思います。Q=10というのは、大体自己加熱1に対して、フュージョンが10でありますので、そのうちのアルファ粒加熱は5分の1になりますから、2です。全体の加熱が1足す2で3のうちの1だけしか外部加熱がないですよと、こういうハンドルの切り代が少ない燃焼プラズマをしっかりと制御できますか、どうやって制御しますか、これがITERの燃焼プラズマの非常に大事なポイントであります。
 もちろんITER自体でそれを実証してみせるというのが先ほどの2044年ということになるわけですけれども、その前にどこまで原型炉を予測するモデリングのベンチマークができていますかということが非常にまず一つ大事なポイントだと思います。それはITERサイズのプラズマでどういうふうにHモードが振る舞いますかとか、そういったことは初期運転のところでもかなりのことが分かるだろうというふうに一つ思っている部分があります。
 もう一つは、とは言っても実際にやってみなければ分かるまいと、全くそうだと思うのですけど、それは必ずしもITERでなくてもできることはかなり多くあると思っていて、私が言うのも何ですが、特にJT-60SAはもともと燃焼模擬というのを大事なポイントにしていて、たくさんニュートラルビームがある中で、そのうちの幾つかをアルファ粒子の模擬として考えて、実際に出てきた重水素-重水素ニュートロンの発生に応じて、アルファ粒子を模擬する部分のニュートラルビームのパワーを入れていくというような、連携させていくというようなことで、燃焼模擬の実験ができるという装置でもあります。そういうものを活用しながらモデリングがしっかりと検証できていくというのが、まず一つ、大事なポイントかなと考えています。そういうことをやりながら、もちろん最終的にはITERで検証するということになると思います。
 それともう一つは、50秒くらいと300秒以上というのを記載しました。50秒と300秒の違いは、電流拡散時間を十分超えるというのが300秒で、50秒はそれよりも短いのですが、電流分布が時間的に変わっていくようなことも含めて、50秒の中でかなりのことが多分モデルと比較ができるかなというふうに思っているので、50秒といったところでも随分価値がある実験になるかなと、一応今はそういうふうに考えています。
【坂本(瑞)主査】  ありがとうございます。今、鎌田副機構長が言われたように、原型炉に向けてはシミュレーションで外挿していくことが必要になりますが、確かなモデリングというか、そういうものが必要になってきて、それがJT-60SAと、2030年代のDD実験、初期のところで確立したもので合わせていって、より確度が上がっていくという、そのような形で外挿できるということでよろしいでしょうか。
【鎌田副機構長】  あと多分、もちろん燃焼もそうなのですけど、ラジエーティブダイバータと、しっかりと燃焼温度が高いコアのプラズマと、このITERサイズで両者を一緒に制御できるかどうかを実証するというのも非常に重要なポイントです。それはこの初期の段階で、50メガワットまでですけど、ダイバータで随分できるかなというふうに思っています。
【坂本(瑞)主査】  分かりました。ありがとうございます。
【上田主査】  ほかにいかがでしょうか。
 花田委員、お願いいたします。
【花田委員】  どうも御説明ありがとうございました。2つほどお聞きしたいことがあります。1つ目は、最初のDTフェーズで当初予定の1%程度の中性子出力という制限された形で行うこととテストブランケットモジュールはITERでしか試験できない部分ですので各国がITERに期待しているところとの両立性についてです。遅れてしまうとするとどのくらいの遅れが見込まれるかという質問です。また、各国が開発しようとしているタイミングとの調整というのがどういうふうに行われているのか、というのがもう1点の質問です。
【鎌田副機構長】  ありがとうございます。非常に重要なポイントでありまして、花田先生おっしゃるように、帯のスケジュールになっている14ページ、これはテストブランケットモジュール、今4つつけることになっていて、4つの国が参加していくわけですが、そこでもかなり4つの国の人たちで議論していただきました。現状はFPO-3という2044年とか、実際にはFPO-4というところで集中的にそういう時間をつくろうというふうにしています。ITERは50万キロワットというのが最大のところですけど、その半分の25万キロワットくらいの出力で、30ショットぐらい繰り返して行って、とにかくトリチウムの増殖というものがしっかりと思ったとおりできますかというのを見ていこうということになっています。その時期が2046年とかいうのがどうかという議論があるとは思いますが、一応今TBMとしてはそこをターゲットにしています。
【花田委員】  TBMの取付けは結構早い時期、最初のタイミングで行うということでしょうか。
【鎌田副機構長】  取付けは早いです。組立て2というところで取り付けますので、誤差磁場をつくることによる影響だとか、フェライト綱を使うことによるというようなことについては、FPO-1という最初のDTのところからそういう試験はできると思います。
【花田委員】  分かりました。
 あともう一点、先ほどJETの実験で、例えばベリリウムが溶けてしまってという話が少しありましたが、今、各国、ダイバータについては非常に精力的に開発を行っているところで、今後、新しい概念や新しい材料などが生まれてくる可能性はあるかと思うのですけど、もしそういった新しい考え方とかいうのが入ってきたときに、どのタイミングでそれを取り入れることができるかという点についてはいかがでしょうか。
【鎌田副機構長】  ありがとうございます。これは正直に言いまして、新しいダイバータというので磁場の形を変えるということは、ITERでは私は無理だと思います。材料の選択だとか形状を変えるというのは将来的にあり得るかもしれません。例えば、このカセットというのは替えられる、54個というのは取り替えることができますので、もちろんそれを替えていくということは可能だろうなと思います。
 もう一つ、世界的な流れでは、液体金属をダイバータにしていくというのは、イタリアDTTという装置ではそういうことを目指してやろうとしていますが、液体金属をITERに持ち込むのは現実的ではないというふうに私は思いますので、ITERは基本的には今のダイバータ、あるいはそれに非常にかなり近い状況でのダイバータの試験ということになるだろうというふうに思います。
【花田委員】  分かりました。ありがとうございます。
【上田主査】  ありがとうございます。
 それでは、オンラインで参加いただいている大野委員、お願いいたします。
【大野主査代理】  鎌田さん、どうもありがとうございました。何点かお伺いしたいのですけど、まず、ITERはやはり各極から物を造って持ち込んで、それを組み入れて造らないといけないという今までにない国際ミッションで、そこが非常に大変だというふうに思います。それで修理が途中で行われるということもあると思うのですけども、この修理をするメンバーというのは、かなり技術的に高い人たちが必要だと思うのですが、ITER機構の中でそういう方がどうやって選ばれて、どういうチームでそれをやられているかというのがまず1点教えていただきたいです。あとスケジュールでDD運転が5か月前倒しと伺ったのですが、その後、時間が次のところまでかかっているのですけど、それは次のフェーズに行くまでの機器というのは、何がそこの期間を決めているのかということを教えていただきたいです。加えてもう一点、申し訳ないですけど、ITERスクールについて最後あったのですが、13回目を迎えるということで、今までこの中で具体的に人材としてこの分野に進んだ人がどのくらいいるのかという、そういうエビデンスというのはITER側のほうで何かあるのでしょうかというのが3点目です。
 すみません、少し多くて申し訳ないですけど、よろしくお願いします。
【鎌田副機構長】  ありがとうございます。まず組立て2の修理の件から話します。修理のメンバーからいきますと、今ITER機構の中では、今までの部とかグループだとかそういうのを全部見直して、新しいコンストラクションプロジェクトというのを再編成しました。その中で、本当にこういう組立てのところの専門性の高い人たちを、そこのプロジェクトリーダーにしたり、副プロジェクトリーダーにしたり、グループリーダーになってもらったりということで、そういう組立てという意味での適材適所というのを随分去年から進めているので、そういう意味では今、非常にすばらしい専門家が対応しているというふうには一つ思います。
 もう一つは、先ほど非常に透明性ということを申しましたが、やはり各極のドメスティックエージェンシー、極内機関も、こういう品質の大事さというのはよく理解してくれていらっしゃっているので、そういうプロジェクトチームのようなものをしっかりとつくって進めていると思います。例えば韓国製のものを直すということに関しても、同じように真空容器を造っているヨーロッパの人たちも一緒に関与して、ヨーロッパの品質向上に役に立てるとか、そういう複数のドメスティックエージェンシーを含めたようなチームをつくって修理に対応しているといったところです。あとR&Dに関しても、専門的なことができる会社にしっかり頼んで、それを進めてきているといったところで、私から言うのも何ですが、かなり修理は順調に進んでいるかなというふうに思います。
 それから、先ほどの組立て2といったところでどういうふうにという話ですが、これはNBIももちろんありますが、第一壁を全部水冷にしていくといったところも、ここの大事なポイントです。それから計測器も、初期の段階で全部の計測器が入るわけではないものです。最初の研究運転開始期に入っているのが6割ぐらいになっています。そういうことで随分たくさんのポートプラグをつけていかないといけないとかがあります。それから、ECHの増強も40メガワットから60メガワットあるいは67メガワットに増やす、それからIon Cyclotron Range of Frequencies Heating (ICRF)も10メガワットから20に増やすとか、そういうことがありますので、インテグレーテッドコミッショニング2というものも含めて、今このくらいの期間を考えています。
 もう一つは、トリチウムプラントを造らないといけないのです。トリチウムプラントは、ちょうどこの組立て2というようなあたりからしっかり造っていきます。それから、先ほどNBIと言いましたが、NBIも、ただ組み上げるだけではなくて、NBIとしての試運転も開始していかないといけないとか、そういうことも含めて、この組立て2とIC2というのを合わせて34か月というのが今の計画になっています。
 あと最後のスクールの話ですけど、今すぐスタティスティクスで、どのぐらいの人が経験をしたからITER機構に来たというデータは、私は持っていないのですが、大前さん、何か知っていますか。
【大前首席戦略官】  いや、すみません、13年前のところからのスクール追っていないので、分からないです。
【鎌田副機構長】  すみません、大野先生のおっしゃることは非常に重要なポイントだと思いますので、資料を作って、また御連絡させていただきたいと思います。
【大野主査代理】  ありがとうございます。また参考にさせていただければと思います。どうぞよろしく願います。よく分かりました。ありがとうございました。
【鎌田副機構長】  ありがとうございます。
【上田主査】  ありがとうございました。
 それでは、吉田委員お願いします。
【吉田(善)委員】  熱の籠もったお話だったのですけど、エールという意味で少し厳しいことを申します。2ページ目のところに、ITERをぜひ活用してほしいとあり、それは非常に重要なメッセージで、ITERをつくった大きな目的なのですけれども、ここに具体的には、核融合運転、技術の汎用性、統合の実証とだけ記載してあります。このことは、ともすれば技術屋が陥りやすい罠であって、つまり、装置を造って、それを運転するということが目的なのかということを反省する必要があります。よくいろいろな人が例に引く戦艦大和は、日本の技術の粋を集めた芸術品として完成した、そのときの技術が、例えば原発の圧力容器の溶接技術につながっていると言われます。無事進水して、速射もできた、それはいいことなのだけど、目的は戦に勝つことだったはずであり、それに役立ったのか、こういうことが問われなくてはなりません。
 ITER建設のここに至るまでのよかった面を強くアピールしていくことは極めて重要で、そのことに反対するわけではないのですけれども、これを運転したり、評価したりということだけではなくて、このITERというものを使って、核融合炉がより高性能化するという成果を出さなくてはならないと思います。これは実験炉ですから。そういうふうな使い方の具体的な計画を示していく必要があると考えます。
 ほかのいろいろな動きがある中で、ITERをこのスケジュールで運転して実験が行われるようになったときに、将来の核融合炉の高性能化あるいは安定化といった、様々な課題に、このITERを使うことによってどういう成果が出てくるのかということを、もう少し具体的にプランを立てていく必要があると思います。
 これは、ITERを造っている現場の人だけの責任ではなくて、これを使う側の責任でもあるわけで、そういった意味で、原型炉タスクフォースなどでもそういった観点から、これからどういうふうな核融合炉の高性能化につながる知見が得られるのかを意識して、単にこれこれを実証していきますという予定調和的なことではなくて、積極的にこれから新しいアイデアが出るというふうな魅力というか、それを示していく必要があると思います。
【鎌田副機構長】  ありがとうございます。非常に重要なポイントでありまして、今日は私、DT-1といったところの御説明しかしませんでした。先ほどの14ページ、やはりITERはミッションを持った大型で、この一番右側が、今DT-1と言ったところまでです。DT-2というのがこの後にありまして、DT-2というのは、まさに今、吉田先生がおっしゃったことをやるというのがリサーチプランに記載してあります。様々なことがあって、このDT-1の間は、中性子の発生量に非常に制限がある中でミッションを達成しないといけないということでありますので、それに特化したリサーチプランになっています。その後、自由にというか、十分な中性子発生量の下でトライ・アンド・エラーをしながら、中性子発生量を気にすることなく、いろいろな研究ができるという意味では、DT-2というようなところに、今、吉田先生おっしゃったことを随分リサーチプランでは現状記載しています。もちろんおっしゃるように、このDT-1の間でもそういうことは大事になってくるかなと思います。
 一つ大事なポイントは、今、Q=10と言っているのは、15メガアンペアのHモードというのが主案ですが、腹案がありまして、先進的なプラズマ運転で、ハイブリッドオペレーションというものですが、13.5メガアンペアぐらいの、より低いプラズマ電流のところで、よりフラットな安全係数の分布で、恐らく閉じ込め性能が高いだろうということで、そういったところを途中で、このFPO-1とか2のところでそれを比較することにしているのです。どういうところで一番いいQ=10が得られるかというのも、このDT-1の中でやっていくということになっています。吉田先生おっしゃるのは大変重要なポイントでありますので、できるだけこのDT-1の間でも、そういう研究としての幅の広がりが持てるようにしていきたいというふうには思います。ありがとうございます。
【上田主査】  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 鈴木委員、お願いいたします。
【鈴木委員】  ありがとうございました。私のITER、私のSAと思ってやっています。
 この14ページ目で質問なのですが、今の新しい計画が現実的なものになっていると思っています。その上でさらに予備日程というのを入れているのは、それぞれどういう意味があるのでしょうか。この期間のそれぞれ何を想定して、2年とか6か月とかというのが入っているのかを伺いたいです。
【鎌田副機構長】  ありがとうございます。それは非常にすばらしい質問で、例えば何か細かくリスクを一個一個洗い出して、1つのプロバビリティーで、何が起きたときにどのぐらい延びるかという、そういうことを計算して積算したわけではないです。これはあまり科学的ではないのですが、今までの多くの装置での経験などを含めてこれくらいだろうとして、こういう期間を、今設定しているというふうに理解してください。組立てという中で今後想定されるものが多分一番厳しいのは、360度の溶接がしっかりと今考えているとおりに終わっていくかどうかとか、そういう代表的な項目を考えながら、このぐらいの期間があればということで、今、鈴木さんがおっしゃったことはSTACでも非常にそういう議論になりました。当面ITER機構としてはこういうふうに考えたいのだということを申し上げて、一応STACでは、理解いただいているところです。ということで、一つ一つの積み上げで予備日程をつくっているわけではないといったところは御理解ください。
【鈴木委員】  不測の事態ということ、で、理解しました。
【鎌田副機構長】  例えば、身近な例でいけばJT-60SAのことを頭に思い浮かべるわけですけれども、インテグレーテッドコミッショニングに入ってからということがありました。でも、今ITERとしては、SAの経験を学ばせていただいているので、できる限りそういったところは潰しながらやっていこうとしており、そういうことも含めて今こういうふうに設定しているということです。
【鈴木委員】  ありがとうございます。
【上田主査】  よろしいでしょうか。それでは、もう少し質問あるでしょうか。
 まず柏木委員、その次に尾崎委員、お願いします。
【柏木委員】  鎌田さん、ありがとうございました。鎌田さんへの質問というよりは、お話を聞いていて、我々何をやらなくてはいけないのかなということをちょっと考えていたのですけれども、2つありまして、1つ目は資料3に関係するところです。今回のITERの計画を受けまして、今後ITER理事会に向けてどのような活動をしていくかということが資料3にまとめられているのですけども、そこを見てみますと、核融合科学技術委員会のポツの最後のところに、ITER機構のベースライン更新に係る提案の妥当性について審議と記載してありまして、この文章だけ見ると、何か妥当性を審議するという感じになっています。多分、先ほどの吉田先生の御意見を聞いていてもやはりそこがポイントかなと思ったのですけど、ITER計画が日本の戦略に対してどういうところが使えるものかというか、妥当性だけではなくて、どういうポイントを大事に日本としては主張していくかというか、いつまでにこの技術は確立してほしいというようなところも併せてこの段階で確認して、日本の主張として入れていくことかなと思いました。
 なので、そういうことを大事にやらなくてはいけないのかなというのが1点目です。2点目は、これも今後我々が考えなければいけないのだろうなと思ったのが、今の鎌田さんの御説明で、難しいトロイダルコイルが完成しましたとのことですが、私の経験上、この「完成した」という言葉は一番リスクが高い段階だと思います。メーカーさんは完成して喜ぶのですけど、次の仕事はどこにあるのかというのが核融合業界では常にリスクにさらされている観点で、ここまで技術が確立したのに次の仕事がないというのが一番チームと技術を維持するときのリスクとなると思います。私自身、仕事をしていて、そういうリスクに何度もさらされているので、今後、スタートアップとか、先ほどのイノベーション戦略2024の負託に応えるために、そういうメーカーさんとか日本の技術をいかに継続していくかということも考えていかなければいけないのだろうなというふうに思いました。
 以上です。
【上田主査】  ありがとうございます。事務局のほうからお願いします。
【馬場戦略官】  事務局から2点、簡単にお答えします。
 まず1点目は、おっしゃるとおりで、我々ITER計画の今回の提案の妥当性を議論する際には、日本として原型炉研究開発計画も含めて考えていかないと、最終的な判断できないと思っています。当然、原型炉タスクフォースでこれから議論していくことになると思いますが、少なくとも日本としては、ITERにおいてはこれを絶対やってもらわなければ困る、ここについては逆に日本でできるのでそこまで優先しないといった条件のようなものが仮に10個ぐらい出てきたときに、先生方の御議論を踏まえて、11月のITER理事会で我々からITER機構にそういったものをぶつけていくのではないのかなというふうには思います。なので、ここであえて右、左と記載しているのは、やはり国としての戦略があって初めてITER計画をどう活用できるかというところにつながっていくのかなと思います。
 2点目、まさに今回J-Fusionができた一つの趣旨だと思います。予見可能性というわけではないのですけど、日本として、国として、場合によってはITER機構の調達の話もありますし、逆に海外からそういったサプライチェーンを獲得するというような流れもあります。そういった企業から得られる情報も含めて、場合によってはトップ外交的に日本として勝ち取るようなもの、逆に日本として何かしら検討しなければいけないという判断もしていかないといけない、そういったところをこれからJ-Fusionとも議論していけるといいのかなと思っています。ありがとうございます。
【上田主査】  よろしいでしょうか。
 それでは、尾崎委員、お願いいたします。
【尾崎委員】  鎌田さん、どうもありがとうございました。全体で6年の遅延ということなのですけど、いろいろなパートで遅れているということはおっしゃっていただきまして、やはり結構あちこちで遅れているのだなということがよく分かりました。ITERの新しい計画を踏まえて、原型炉のロードマップについてこれから改定の議論が始まってくると思うのですけど、その際に、鎌田さんがおっしゃっていたのは、ITERでの失敗をぜひ原型炉の今後に役立ててほしいというお話で、いろいろな複合的な要因がありますし、細かい点もたくさんあると思うのですけど、原型炉のロードマップ再製作において、こういうレッスンが役に立つのではないかというところで重要なポイントを教えていただければと思います。
【鎌田副機構長】  ありがとうございます。今後していく失敗もあるかもしれないので、それはまだ分からないのですけど、やはり一番大きなところは、こういう表現がいいかどうか分かりませんが、既存技術の延長だと思っていた真空容器に一番トラブルが生じているということだと思います。ここは大事だと思っていたものは、むしろみんなが集中してやってきたのでといった、そういう少し観念的な部分ですが、本当に物量、重さだとかサイズが大きくなることに関しての難しさをどういうふうに考えていくか、日本の原型炉が大半径8メートルなのか、ITERよりもっと大きなものを造ろうと本当に思うのか、ITERサイズで何とかやっていこうと思うのかというのとも今のお話は通じると思います。何か外挿するときに油断をしてはいけないものは一番最先端のものでないところに隠れているというのが、一つ大きな教訓ではないかなというふうに私は思います。
 もう一つは、これはまだこれからでありますけれども、超伝導というものに対する気の遣い方は、よくよくしっかりやる必要があるだろうというところです。これはむしろJT-60SAからITERが学んでいるところは非常に多くあって、コイルだけではなくて、ジョイントのところ、ちょっとしたフィーダーのところ、計測線の取り出しの仕方、そういうことも今、ITERは非常にJT-60SAから学びながら、その工程を考えています。今後どういう超伝導システムを原型炉で考えていくかといったところも、施工の難しさ、後で修理できるかできないかということも含めて、メンテナビリティーといいますか、そういうことも含めてしっかりと超伝導というのはよほどしっかり考えていくべきだろうなというふうに思います。したがいまして、スペースが非常に狭いところの中で、あまり組み上げようとし過ぎないことが大事ではないかなと思ったりもします。
 あとは、各極、各会社でいいのですけど、どういうふうにものづくりを分担しながらやっていくのか、ということです。ITERの一番の重要さは7極が造って持ってくるといったところはありましたが、ものづくりというか、組立ての観点からすると、かなり大きなチャレンジです。今後日本の原型炉を造るときにも、どういうふうに機器を製作する会社があるのか、誰がどういうふうにインテグレートしていくのかというのを、同じ日本人とはいえ、いろいろな会社が造ってきたものがそのまま簡単に組み上がるのかとか、そういうことも考えないといけないと思います。ですので、全体的に会社がどういうふうに関わり合いながら1つの大きなシステムをつくっていくかというのも、ITERの複雑さから学んでいただくべきことはあるかなというふうに私は考えています。
 大前さん、何かほかにありますか。
【大前首席戦略官】  私は、どちらかというとプロジェクトマネジメントのチャレンジをできるだけ減らして、できるだけ当たり前のスタンダードな民間のプラクティスでやるという思想を持ち込むことが重要だと思います。特に最後の調達のところの苦労、複雑性が増すというところに関しては、いかにそこを抑えてやれるのか、しっかりとしたインテグレーター、日本の原型炉であれば、先ほどどなたか委員の先生の質問でありましたけれども、主語、そこの確定とそこへの強いリーダーシップ、それが最も重要ではないかと思います。
【上田主査】  ありがとうございます。よろしいでしょうか。
 少し実は時間を過ぎているのですけども、このような鎌田副機構長に直接お答えいただける機会というのは非常に限られているかと思いますので、もし皆様方よろしければ、もう少しだけ延長して議論させていただきたいと思いますが、よろしいですか。
では、まず武田主査代理、その次、近藤委員、その順番で質問お願いいたします。
【武田主査代理】  ありがとうございます。そうしたら、短く御質問させていただきます。
 ITERが我々の装置であって、ぜひ使ってくださいという大変力強いメッセージありがとうございます。本当にITERというものは、これまでは建設も物納も含めて、まさしくフュージョンインダストリーといいますか、産業をつくってこられたと、人材を育成してこられたというふうに私たちは考えておりますし、物納のフェーズが終わったタイミングでこういったプライベートワークショップを開かれるというのも、大変力強いメッセージといいますか、我々としては心強く思っております。
 いわゆる民間への技術移転ということも含めてでございますが、ITER機構では当然協定に厳しく縛られているというのは存じ上げております。一方で、ITER技術を各極がどう活用していくかということに関しますと、昨今ですと、例えば一部の政治であるとかで、技術の流出に近いようなことがあるというような懸念が表されている現実もあることを考えますと、我が国というのは、ITERからの技術移転であるとか、ITERの技術の活用であるとかが相対的に下手なのではないかというふうな懸念を持っているわけでございます。各極においてどういったITERの技術移転、これは原型炉にも民間にも通じることだと思いますが、それが行われていて、鎌田副機構長として、我々としてITERの技術の移転というものをいかに注力するべきかということのお考えをお聞かせいただけないでしょうか。
【鎌田副機構長】  ありがとうございます。大事な観点だと思うのですが、ITERからの技術移転が難しいことが具体的に何であるか、私も少し今、すぐに思いつかなくて、もともとITER、今までのものづくりに関しては、日本は非常に枢要な部分を造っていると申しましたが、私は大事な部分は大体もう既に日本は持っているかなと思っています。あとはITERというシステムを組んだときに、どういうようなことが大事ですかというのを最後のページのほうで申しましたけども、組み上げること、それから運転すること、それから全体を評価すること、これはITER計画自体の中で、自分たちが参加をして持って帰ってくるので、ITERが何か日本にあげるよといって持ってくるものではないというところが大事なポイントだと思います。ITERを使って大事なところをどういうふうに日本が持って帰るか、それは日本から参加する人たちの手腕であって、ITERからどうぞというふうに来るものでは多分ないのだと思います。そこは多分、TBM、テストブランケットモジュールもそうですけど、国際協力の中でもやはり自分の国のことを考えながら仕事をするという部分はあるかと思うので、ぜひそういうふうに考えていただければいいかなと、もし何か、今のままだとどうしても日本に何かを持ってくることが難しいというのが具体的にあれば、教えていただければ解決するようにしたいと思います。
【武田主査代理】  大変ありがとうございます。
【上田主査】  ありがとうございました。
 それでは、オンラインのほうで参加されている近藤委員、お願いできますでしょうか。
【近藤委員】  上田先生、ありがとうございます。私、東京工業大学の近藤と申しまして、原型炉タスクフォースでは主にブランケットや材料開発の観点に関して御議論させていただいております。今日は鎌田副機構長、本当にすばらしい、見直されたロードマップの御説明いただきましてありがとうございました。よく練られている内容と、一部、尤度をしっかり含めた、いいロードマップだったと思っております。
 私、1つ質問させていただきたいのはテストブランケットモジュールの部分でして、鎌田副機構長がお答えになられた中で、設置自体は比較的早い時期にやって、テストブランケットモジュールの本番というのでしょうか、テストブランケットモジュール、エネルギー変換と燃料の増殖というか生産と、大事な機能を担うわけなのですけども、そのために、少し後半に計画されています。いろいろ難しいチャレンジが途中含まれていて、鎌田副機構長が今日お示しされたように、尤度の部分も、予備日があると思うのですけども、設置されたものが使われていく期間として、一言で10年と考えたときに、造った方が設置して、使うときに、本当にその際に同じように協力してもらえるのかどうかという、年齢的なものもキャリア的なものもあると思います。少し間が空いてしまって、ITER内のスタッフの工夫とか、もしくは企業内でのスタッフの工夫とかがあるとは思うのですけども、その辺りはどうでしょうか。しっかりと技術が継承されていくような、そのようなお考えでいらっしゃるのでしょうか。その辺り、私の浅はかな観点でいいますと、原型炉開発をうまく絡めて人を回していくのだろうとは思うのですが、せっかくなのでお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
【鎌田副機構長】  ありがとうございます。非常に大事なポイントでありまして、ITERだけではなくて、核融合研究開発は、1人の研究者、技術者のライフタイムを超えているものがほとんどでありますので、どういうふうに次の世代に知識だとか知恵だとか経験を伝えていくかというのは、やはりテストブランケットモジュールだけではなくて、全ての分野がそうだと思います。ITER機構では、特別ということではありませんが、できるだけ若い人たちに常に入ってきてもらって、入ってきた人たちがそれなりに経験を積んだら、また国に帰るとか、もう一回来るとか、そういう人の流れを活性化するようなことがまず大事かなというふうに思っています。
 それからもう一つは、そういう過去に行った判断だとかそういうものをしっかりと記録に残していくことです。今、ITER白書、ホワイトブックというふうに言っていますが、これまででもう既に雲散霧消してしまいそうな部分がITERという長い歴史の中であるものですから、そういうものを今の段階でもつくっていこうと、将来も同様にそういうふうにやっていこうというふうに考えているところです。ぜひ参加各極は、自分たちの極の中でのそういう世代交代も考えながらITER機構に人を送っていただけるとありがたいというふうに思います。
 私が申し上げるのは僭越ですけども、ITERではなくて、原型炉に向けた大きなプロジェクト、日本としてのプロジェクトの中で、人材というのが先ほど来強調されていますが、人の流れをうまくつくっていくこと自体が非常に重要なポイントだと思うので、ぜひそこはこの委員会で方針をつくっていただければいいかなと思います。私どもITER機構といたしましては、そういったところに最大限しっかりとお応えできるようなシステムと言いますか、ITERの中での人の流れをつくっていきたいというふうに思います。少し抽象的なお答えで恐縮ですけれども、今そういうふうに思います。
【近藤委員】  ありがとうございます。本当であれば、やはりすごく難しい装置ですので、専属の方が設計、製作から運転までうまくできるといいなと思うのですが、今日お示しくださったロードマップを見ても、非常に長い期間で行われるものなので、その辺りがどうなっているのかなというふうに思いました。
【鎌田副機構長】  おっしゃるとおりです。例えば、一番私として、今まで深く感じて来たのは計測なのです。ITERの計測は、例えば中性子計測やっている人がQSTの那珂研にはいらっしゃるのですけども、ずっと昔からやってきて、でも自分で実際に中性子が出るときには定年になっているとか、本当にそういう長い年月をかけるプロジェクトというのは、今、先生おっしゃったようなことも含めて起こりますが、それは一人一人の人のモチベーションとも結びつく事柄でありますので、うまくそういうシステムがつくれるといいなというふうに全く私も思います。
【近藤委員】  すばらしいコメントありがとうございました。すばらしいコメントいただいたので、大学の人間として1つ申し上げますと、例えば、ITERはやはり非常に重要なキャリアパスになっていると思うのですけども、なるべくITERに長くいられるような、そういった人事制度をつくっていただきたいです。もしくは、大学の人間がITERを目指していった際に、新卒で、と言うのでしょうか、大学院卒の学生がそのまま入ってきて、可能であれば、三、四年でどこかへ行くのではなく、10年、20年単位の契約期間で働けるような、そんな制度もぜひ今日のロードマップに併せて御検討いただけたりすると、学生らにとっては非常に励みになるのではないかなと思いました。
 私のほうからは以上です。長くなりました。ありがとうございます。
【鎌田副機構長】  ありがとうございます。そこは非常に大事なポイントでありまして、今ITERは、1回の契約は最大5年で、それは更新も可能ということになっていますが、今ITER機構として各極と非常に真剣に議論させていただいているのは、各極が選んだ人をセカンドメントとしてITER機構に送ってもらう、そういうことなのですね。ITERが人を選考して、そのときに一番技術がある人たちの中で競争させてということはもちろん大事だなと思ってやっていますが、それだけではなくて各極から、例えば日本から若い人を送りたい時に、日本がセカンドメントにしっかりとお金を出してくれるというのであれば、それは何年いていただいても構わないわけです。そういうことも含めて人事制度をもっと流動的にして、各極から人が各極のニーズに合わせた形でITERの中で働けるようにしたいというふうに考えていて、各極とは今、相談をさせていただいているところです。
【上田主査】  ありがとうございました。よろしいでしょうか。
 それでは、少し時間が延びてすみませんでしたが、長い時間、鎌田副機構長、御説明いただきましてどうもありがとうございました。
【鎌田副機構長】  すみません、長々と話して申し訳ありません。
【上田主査】  それでは、本日の議事はこれにて終了となります。
 事務局から連絡事項等ございますでしょうか。
【日野専門官】  事務局でございます。次回の核融合科学技術委員会、それから原型炉タスクフォースの開催につきましては、追って事務局から日程調整の御連絡をさせていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 事務局からは以上でございます。
【上田主査】  ありがとうございます。
 本日の核融合科学技術委員会・原型炉タスクフォース合同開催はこれで閉会いたします。御多忙の中、御出席ありがとうございました。
 
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