核融合科学技術委員会(第37回)議事録

1.日時

令和6年2月7日(水曜日)14時00分~16時00分

2.開催方法

オンライン開催

3.議題

(1) フュージョンエネルギー・イノベーション戦略を踏まえた最近の取組について
(2) 学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想(ロードマップ2023)について
(3) 中間評価の実施について(非公開)

4.出席者

核融合科学技術委員会

上田良夫主査、大野哲靖主査代理、石田真一委員、植竹明人委員、尾崎弘之委員、柏木美恵子委員、栗原美津枝委員、小磯晴代委員、兒玉了祐委員、髙本学委員、花田和明委員、吉田善章委員、吉田朋子委員

文部科学省

林孝浩大臣官房審議官(研究開発局担当)、馬場大輔研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、髙橋佑也課長補佐、吉原誉夫核融合科学専門官、長壁正樹科学官、梶田信学術調査官

5.議事録

【上田主査】定刻になりましたので、第37回核融合科学技術委員会(以下、委員会)を開催いたします。司会進行につきましては、委員会主査である私、上田が担当させていただきます。それでは、議事に入る前に、事務局より定足数及び配付資料の確認をよろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】核融合科学専門官の吉原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まずは、本日の委員の御出欠でございます。本日の御欠席は、葛西賀子委員、中熊哲弘委員の2名でございます。全15名中13名の委員に御出席いただいております。過半数を超えておりますので、定足数を満たしていることを御報告いたします。
 続きまして、本日の配付資料でございます。議事次第の配付資料一覧に示しております資料1から6となります。会議中は、Zoomの画面共有システムを使って事務局より資料を表示させていただきます。各委員におかれましては、御発言いただく際にはミュートを解除の上、画面の下にあります「手を挙げる」ボタンを押して発言いただきますようお願いいたします。また、本日は、文部科学省研究開発局の林審議官も参加しておりますので、御紹介申し上げます。
 
【上田主査】ありがとうございました。本日は、3つの議題を用意しております。このうち、議題3につきましては、非公開とさせていただきたいと思います。傍聴者の方々におかれましては、議題3の開始前に御退出いただきますので、よろしくお願いいたします。
 委員会は、本委員会運営規則に基づき、議事を公開いたします。御発言は議事録に掲載され、ホームページ等で公開されます。
 それでは、本日の議事に入りたいと思います。まずは議題1「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略を踏まえた最近の取組について」です。それでは、事務局から資料の御説明をよろしくお願いいたします。
 
【馬場戦略官】それでは、資料1に基づきまして、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略を踏まえた最近の取組、特に前回の委員会開催後の最新状況を中心に御説明させていただきます。目次にもございますとおり、最近の取組に加えまして、原型炉実現に向けた基盤整備やムーンショット型研究開発制度の最新の検討状況についても御説明させていただきます。
 改めまして、昨年4月に策定した国家戦略は、産業育成戦略、技術開発戦略、推進体制の3本柱で構成されています。本日は、産業育成戦略の中の産業協議会協議会(以下、協議会)、技術開発戦略の中の独創的な新興技術の支援策の強化やITER/BA活動を通じたコア技術の獲得・将来の原型炉開発を見据えた研究開発の加速に加え、議題2でフュージョンエネルギーに関する学術研究の推進についても御説明させていただく予定です。
 技術開発戦略について、現在、取り組んでいるフェーズとしては、ITER計画等への参画を通じて科学的・技術的実現性を確認した上で、原型炉への移行を判断することとしております。本日は、この中でJT-60SA、ITERに加えまして、原型炉に向けた基盤整備、ムーンショット型研究開発制度、さらには議題2において大阪大学レーザー科学研究所と核融合科学研究所(以下、NIFS)における学術研究の大型プロジェクトについて御説明する予定です。
 それでは、まずJT-60SAの状況です。前回の委員会でも報告しているとおり、昨年10月23日にJT-60SAで初めてプラズマを生成しております。資料4ページ目に記載のとおり、12月1日にはJT-60SAの運転開始を記念する式典を茨城県の量子科学技術研究開発機構(以下、QST)那珂研究所において日欧共同で開催しております。
 JT-60SAについては、BA活動の一環として日欧で取り組んでまいりましたが、今回、欧州側で中心となって尽力されていたITER機構のバラバスキ機構長が式典に出席する機会を捉え、岸田総理への表敬をしていただいております。岸田総理からは、バラバスキ機構長に加え、鎌田副機構長もJT-60SAに長年携わっていたことから、初プラズマへの祝意を述べた後、国家戦略も踏まえ、ITER計画等で培った技術や人材を最大限活用してフュージョンエネルギーの早期実現に向けた取組を加速するということを言及しております。
 ITERの状況については、11月に理事会を開催しております。計画の進捗状況といたしましては、私も理事会に参加してまいりましたが、(1)各極及びITER機構において機器の製造や組立・据付が進展しており、例えば日本からの最後のトロイダル磁場コイルを搬入していることなどの説明がございました。また、(2)としてITER計画の日程・コスト等を定める基本文書「ベースライン」の最適化に向けて更新中であり、ITERの核融合運転開始に向け、よりよい組立工程を検討している旨、説明がありました。このベースラインの更新については、2024年中にITER機構からの提案を受け、各極による検証が行われる予定となっております。今回の理事会で印象的だったのは(3)として、JT-60SAの初プラズマについて、理事会に参加する各極から祝意が述べられ、公式の報道発表の中でも触れられているところでございます。
 12月1日の式典の際には、盛山文部科学大臣から岸田総理の発言を踏まえ、国際連携も活用し、原型炉に必要な基盤整備を加速するとともに、小型化・高度化等の新興技術の開発支援を実施することでフュージョンエネルギーの早期実現に向けて取り組んでいく旨、発言しております。当日はEU側の大臣級であります欧州委員と共同プレス声明にも署名し、BA活動を推進することを両政府として再確認するとともに、JT-60SAを活用したJT-60SA国際核融合スクール(以下、JIFS)を強化していくこともこの共同プレス声明に書かれているところでございます。
 12月にスペインで開催されたBA運営委員会においても、3つのプロジェクト、国際核融合材料照射施設の工学実証・工学設計活動(IFMIF/EVEDA)、国際核融合エネルギー研究センター(IFERC)、サテライト・トカマク計画(STP)の進捗状況について報告がございました。この会議でも共同プレス声明に署名した旨、言及があったところでございます。12月1日の式典には、高市科学技術政策担当大臣も御出席しており、同日には協議会の設立、また、安全規制について検討していく旨、発言がありました。
 協議会の概要を10ページ目にまとめております。年末に日経新聞の朝刊で報道していただいたおかげで、多くの企業の方々から問合わせが寄せられているところでございます。政府としては、戦略に基づきまして、今年度中に核融合の分野においても協議会の設立を目指して検討しているところでございます。既にアメリカ、イギリス、ドイツには、そういった業界団体ができている中で、何とかこの機会に日本でも関連産業が多数存在していることから、海外との窓口となるような団体を設立していきたいと考えております。
 具体的な取組としては、産業の創出を目指し、国内外の動向調査や技術の標準化、安全規制も含めた国への政策提言、大学と連携した人材育成、海外の業界団体の連携などに取り組むということを予定しております。1月11日まで発起人参加を希望する企業を募集したところ、現時点で約20社から登録があったところでございます。11ページ目に記載のとおり、ITERのサプライヤーやフュージョン系のスタートアップだけではなく、エネルギー関連の企業や商社、通信会社などフュージョンの可能性に期待する多様な発起人が確保できたと思っております。引き続きこの協議会の設立に向けては、企業の方はもちろん、大学などもアカデミア会員として参画可能なので、関心のある方はお問合わせいただければと考えております。政府といたしましても、この協議会と連携してムーンショット型研究開発制度はもちろん、原型炉に向けた基盤整備を含め、各種取組を推進していきたいと考えております。
 続いて、原型炉実現に向けた基盤整備の検討状況になります。フュージョンエネルギーに関する来年度の政府予算案になっております。原型炉実現に向けた基盤整備に向けては、本委員会でも議論していただいてきたところでありますが、このたび初めてBA補助金の内数として来年度予算案が約5億円計上されております。今後、国会での審議を経て予算が成立した暁には、来年度4月以降から事業を実施することとなります。先月の原型炉開発総合戦略タスクフォース(以下、TF)の審議も踏まえ、原型炉実現に向けた基盤整備の検討を進めているところでございます。
 なお、ムーンショット型研究開発制度については、未来社会からのバックキャスト的なアプローチによる挑戦的な研究の支援を強化する制度となっており、文科省で設置した核融合の挑戦的な研究の支援の在り方に関する検討会(以下、検討会)の最終取りまとめと1月31日に開催されたフュージョンエネルギー国際ワークショップでの議論も踏まえ、3月中には公募を開始することを予定しております。
 原型炉実現に向けた基盤整備について、研究開発から御説明いたします。この基盤整備については、研究開発、人材育成、アウトリーチ活動の3本柱で構成しております。14ページ目にTFでの議論も踏まえた新しい体制図を記載しております。総理の発言でもあったとおり、フュージョンエネルギーの早期実現に向け、国家戦略も踏まえ、QSTを中心にアカデミア、民間企業を結集して技術開発を実施する体制を構築し、将来の原型炉開発を見据えた研究開発を加速していきたいと考えております。現在、TFにおいては、資料右側の体制図のようにQSTを中心としつつ、大学や企業等も参加する実施体制を構築してはどうかということを検討しております。なお、QSTだけで実施することは困難であることから、原型炉開発に向けたアクションプラン(以下、AP)に基づき、項目別に公募を実施するなど大学や企業等の更なる参画を促すための仕組みを導入するとともに、研究開発の進捗や取組状況については、本委員会やTFなどにおいても随時確認していきたいと考えております。
 続いて、人材育成についてです。フュージョンエネルギーの実現には、長期にわたる研究開発が必要であり、そのためには連続的かつ長期的な人材育成・確保が必要であるということは論をまたないと思います。そのため、原型炉開発などに携わる人材を戦略的に育成するとともに、関連人材の母数を増加させるため、BA補助金に原型炉実現に向けた基盤整備を新たに措置したいと考えております。原型炉開発に必要な人材確保に向け、フュージョンエネルギー開発の推進に向けた人材の育成・確保について、本委員会でも議論を取りまとめていただいてきたかと思います。こういった議論も踏まえ、現在、大学共同利用機関であるNIFSを中核機関として共同研究ネットワークや各国との協力事業の枠組み、日米科学技術協力協定などに基づく海外派遣の枠組みなども活用し、大学間連携による総合的な教育システムを構築してはどうかと考えております。
 併せて、大学院教育と国内外の大型研究装置との連携を促進するため、QSTとも連携し、JT-60SA/ITER等を活用した人材育成を実施したいと考えております。また、研究開発の取組と同様、この人材育成の進捗、取組状況についても、本委員会で随時御報告していきたいと考えております。
 16ページ目は、平成30年に委員会で取りまとめていただいた人材の育成・確保についての提言書の概要になっております。この中でも例えば、具体的取組として大学間連携による総合的な核融合教育システムの構築や、ITER機構への院生、若手、シニア等の階層ごとの人材派遣制度の設計などが当時から提言されており、今回、それを具体的な取組に落とし込んでいきたいと考えております。
 具体的な取組の方向性として3点申し上げます。まず、先ほどの提言にもございました大学間連携による総合的な教育システムの構築になります。当然ながら、核融合の分野は、複数分野にまたがる学際的な分野であり、原型炉開発を担う人材を安定的・継続的に育成・輩出するためには、俯瞰的に学習できる教育プログラムを提供するということが重要だというような御指摘があったかと思います。
 また、大学院教育と国内外の大型装置と連携を促進し、国内外の大型研究施設での研究・実験に参画する機会を拡大することにより、専門性の向上や普遍的な技術力の獲得、人脈の形成なども期待されます。そのため、大学共同利用機関であるNIFSを中核機関とし、大阪大学や名古屋大学、九州大学などとの双方向型共同研究ネットワークや、日米、日韓などの協力事業の枠組みも最大限活用し、国内外の大型装置研究や関連学会、今後設立される協議会等との協調により、総合的な教育システムを構築してはどうかと考えております。
 また、その際、大学における履修制度、単位制、参加者の関心、技術の動向などにも配慮し、教育プログラムの設計段階から大学と密に調整を行うことが必要だと考えております。現在、1月30日に開催されたTFの議論も踏まえ、NIFSにおいて大学や学会とも密に調整し、具体的なプログラム・システムを検討していただいているところでございます。3月のTFにも再度NIFSから御報告いただくことを予定しておりますが、本日もこういったプログラム・システムをどう構築していくか、ぜひ建設的な御議論、御指摘をいただければと考えております。
 このTFにおいても、オールジャパンの観点から、JIFSやITER国際スクール(以下、IIS)とのすみ分け、10年後を見据えて必要な人材をどのように育成していくのか、キャリアパスやエンジニアのリカレント教育も見据えて、どういったプログラムが望ましいのか、また、どうやれば魅力的なプログラムになるのかといった観点の御意見をいただきました。これらの御意見を踏まえて、体系的に作っていただきたいということを期待する声が多かったところでございます。
 続いて、JIFSの強化です。前半にも御説明いたしましたが、昨年9月、将来の核融合研究開発を担う人材の育成、国際ネットワークの構築を目的として、日欧の学生、若手研究者を対象としたJIFSの第1回を開催しております。この委員会の先生方においても、御貢献いただいた方々も多くいらっしゃると聞いております。参加者は日欧から博士及びポスドク各10名、第一線の研究者24名の講師で構成し、プラズマ物理・核融合工学に関する講義や実習等を実施しております。こちらについては、12月1日の式典の際に大臣、欧州委員からも共同プレス声明に従い、この内容を強化するというところをうたっている中、今年の夏、来年の夏以降も継続的に実施していきたいと考えております。
 ITER機構との連携による人材育成・流動性向上です。こちらについては、ITER計画に参画する人数を増加させることで、将来の原型炉建設に向けた知見を手に入れることは重要であり、そのため、ITER機構が整備している人材派遣制度の更なる活用を含め、学生や若手研究者・技術者をより多くITER機構に派遣するための仕組みを設計し、相対的に少ないと言われている日本人のITER機構の職員の数を増やすための取組を実施していきたいと考えております。
 ただ、記載のとおり、インターンシップ、ポスドクの各種公募が行われております。様々なメニューが実際あります。現在、ポスドクの募集が行われているほか、2月からはインターンシップの募集が行われるため、並行してこういった場も通じながら認知度の向上にも努めていきたいと考えております。本日も多くの大学の関係者、企業の方々にも傍聴していただいておりますが、ぜひ周囲の方々にも、こういった機会があるということを宣伝いただければ幸いに思います。
 続いて、IISの開催です。こちらについては、委員の中でも御承知のおきの方もいらっしゃるかもしれません。2007年以降、各極の学生や若手研究者を対象に南フランスと各極、交互に計12回開催してまいりました。過去、日本でも2008年に九州大学において開催いただきましたが、プラズマ核融合学会とも連携し、全部で100名以上の学生の参画を得て盛会だったと聞いております。今回、本年2024年のこのISSのホストは日本が務めるということになっているということから、今回、組織的に恒常的に実施すべきものということから、大学共同利用機関であるNIFSに全国の大学とも連携、また、学会とも連携した取組を企画していただきたいと考えております。
 ITER参加7極の学生や若手研究者が日本に集結し、共に学ぶ機会、また、国際的な人脈を形成する貴重な機会にもなると考えております。こちらも3月のTFでは日程、場所など、より詳細な内容を報告する予定ですので、傍聴されている大学の関係者の方々もぜひ御参加を御検討いただければ幸いに思います。
 3本柱の最後、アウトリーチ活動についてです。こちらも本委員会で継続的に議論いただいてきた内容になります。「核融合原型炉研究開発の推進に向けて」に基づき設置されたアウチリーチヘッドクォーター(以下、HQ)について体制を強化するとともに、活動の充実を図りたいと考えております。こちら、現在、TF並びにHQでも検討中ですが、社会的合意を形成するまでの活動内容をターゲット層とともに段階的に整理し、戦略的に推進することを考えております。
 こちらのHQの活動につきましても、これまでは先生方、本委員会でも参画していただいている先生方いらっしゃいますが、ボランティアリーに参加していただいたというところもございますので、今回、予算措置になることも踏まえ、改めてHQでも具体的な内容を議論し、先生方の負担を軽減するような形で効果的な取組を推進していきたいと考えているところでございます。
 最後に、ムーンショット型研究開発制度の状況です。こちらについても、前回の委員会でも昨年10月まで議論いただいた検討会の取りまとめについて、御報告させていただいたかと思います。冒頭の国家戦略の紹介でも御案内したとおり、ムーンショット型研究開発制度を活用し、小型化・高度化等の独創的な新興技術の支援策を強化することとしております。このムーンショット型研究開発制度の趣旨については、記載のとおり、政府として未来社会を展望し、困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される野心的な目標を決定するということで、先般、12月末に総理を議長とするCSTIのほうで決定しているところでございます。今後、文部科学省として研究開発構想を決定し、ファンディングエージェンシーであるJSTがプログラムディレクターを任命し、その後、3月中にはプログラムをプロジェクトマネージャー(以下、PM)ごとに公募をかける予定となっております。こういったことが制度の特徴になっております。
 これまでこのムーンショット型研究開発制度、ムーンショット目標として9つ定めてまいりました。今回、この10個目の目標として核融合、フュージョンエネルギーに係る目標を決定したというところは意義深いと考えているところでございます。検討会の議論を踏まえて決定した目標としては、記載のとおり、「2050年までにフュージョンエネルギーの多面的な活用により、地球環境と調和し、資源制約から解き放たれた活力ある社会を実現」するという内容については、前回の委員会でも御報告したかと思います。フュージョンエネルギーを日常の様々な場面で活用し、船や飛行機などの小型動力源やオフグリッド、ロボットなど日常の様々な場面での活用を目指したいと考えております。
 続いて、推進体制のイメージになります。今後、実際の公募に向け、本日、資料2として配付した研究開発構想案も踏まえ、具体化を図っていく予定ですが、検討会ではどのように推進していくべきかについても議論を行いました。社会実装、閉じ込め方式、要素技術の3つのレイヤーをそれぞれ個別に実施するのではなく、今回、縦軸にPMを置き、社会実装に向けてそれぞれの用途や目的、記載されているのは、あくまで例示ですが、社会実装に応じて閉じ込め方式や必要となる要素技術の異なることから、最適なチームをPMの下、構成いただくということを考えております。
 他方、レイヤー3の要素技術については、用途や炉型によらず、必要となる要素技術については、国際連携や標準化も視野に、国益に資する技術については別途支援の対象にしていきたいと考えております。
 今後の推進体制としては、前半5年間のイメージを記載しておりますが、現時点で前半5年間の予算額として基金約200億円確保しております。実際、プロジェクトに必要な金額については、用途に応じて異なることから、柔軟に設定したいと思いますが、革新的な社会実装に向けて研究開発成果を随時反映し、5年目には概念実証を目指していきたいと考えているところでございます。
 続いて、今回のムーンショット型研究開発制度の意義となります。これまで冒頭の研究開発の全体像で御説明いたしたとおり、発電・ベースロード電源に向けてITER、ブロードアプローチ、原型炉、そういった長い道のりの中で様々な困難が生じることも想定される中、今回、ムーンショット型研究開発制度を活用することにより、多様な社会実装をいくつかの山に例えて記載しておりますが、小型動力源や水素製造、工学熱利用などそれぞれの目的に応じた研究をすることにより、黄色くハイライトしている道のように技術の活用や人材の流動性を高めることで技術の蓄積や人材の厚みを向上するとともに、スピンアウトからの産業創出も促進していきたいと考えております。
 最後に、まとめとして先週開催いたしました国際ワークショップの概要並びにムーンショット型研究開発制度への期待を申し上げます。当日は、オンラインで高市科学技術政策担当大臣の冒頭挨拶、また、締めは文部科学副大臣の今枝から挨拶をさせていただきましたが、政策動向の紹介に加え、諸外国の政府関係者としてアメリカ、イギリス、ドイツからの講演、また、パネルディスカッションとしては本委員会の先生にも御参加いただいて、600名以上の参加を得てワークショップを開催いたしました。最後に、私から申し上げたのは、革新的な社会実装、挑戦的な研究開発、そして、ぜひこの機会に多くの仲間を集めていただきたいというところを申し上げて期待として述べさせていただいているところでございます。
 いずれにせよ、政府といたしましては、先週、開会した国会の場でも岸田総理が施政方針演説で述べておりますが、中長期的視点を持って取組、投資促進、規制改革、そういったところも併せて進めていきたいと考えているところでございます。今回のこのムーンショット型研究開発制度については、より多くの方々に関心を持っていただき、申請いただくということを政府としても期待しているところでございますので、様々な場、学会なども通じながら、多くの方々の御参画、関心を強めていきたいと考えているところでございます。
 
【上田主査】ありがとうございました。様々な内容を分かりやすくまとめていただきまして、非常に理解が進んだかと思います。内容としましては、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略を踏まえた政府の予算案に続きまして、現在、TFで御検討いただいております原型炉実現に向けた基盤整備、内容としては、原型炉研究開発、人材育成、アウトリーチ活動、それから、最後にムーンショット型研究開発制度についても御説明いただきました。
 それでは、これから質疑応答に移りたいと思います。委員の方から御質問、あるいは御意見等あるかと思いますので、よろしくお願いいたします。それでは、まず大野委員、よろしくお願いいたします。
 
【大野委員】御説明、ありがとうございました。まず、人材育成について伺いたいのですが、人材育成は10年規模の長いスパンが必要だと思うのですけれども、その長期的な支援が担保されているかという点がまず1点ございます。また、多くの大学が参加できる仕組みにしないといけないということも考えるところではございます。
 例えば、国内外の装置を使うという意味でも、大学院生や若手研究者を長期に派遣できるような仕組みが恒常的に作られて、大学の学生若しくは若手研究者が利用できるようなに長期にわたって維持されるといいと思います。
 最後なのですけれども、特に大学院生の場合は、やはり学位取得が1つの重要な位置づけになりますので、この仕組みが、学位取得と競合しない、それを奨励するような仕組みであるといいと思いました。
 
【馬場戦略官】大野先生、御指摘、ありがとうございます。もともとこの人材育成についても、当初、概算要求の時点においては、公募をして採択するということを予定しておりました。ただ、やはり先生方にお話を聞くと、例えば、5件程度、各大学から提案があったとしても、そのうち採択ができるのは1件、2件しかないということもあるし、5年間の中で中間評価や事業評価で終わってしまうという実態がございました。これを踏まえて、今回、BA補助金の枠組みの中で措置することができたというところは意義があるかなと思っています。
 今回、BA補助金で措置することによって、恒常的とまでは言いづらいところではありますが、継続的にこういった取組について実施するということはできると考えております。その進捗状況については、この委員会においてもチェックをして、より改善をしていくということが恒常的にできるというところは、1つ大きな魅力だと思っています。現在、NIFSにおいては、TFでの御指摘も踏まえて全国の大学との議論も重ねながら、具体的なプログラムを作っていただきたいと考えておりますが、その際、NIFSの1つの魅力としては、例えば日米科学技術協定に基づいて、人の派遣というものを数十年間やっていただいている、そういったような実績やつながりがあるので、そういったものも生かしながら、より魅力的なプログラムを作っていただけるといいかなと思っています。
 加えて、こういったプログラムを作っても、魅力的ではないと意味がないと思っています。また、学生、研究者や先生方にとっても、送り出しやすいということを考えると、御指摘いただいたとおり、大学の履修制度や、学位などのニーズに適切に適合したものを作っていかなければいけないのではないかと思っています。大学共同利用機関として学会、協議会、そういったところも含めて、より魅力的なプログラムを作っていっていただきたいと思いますし、その内容については、また別途3月のTFでの議論も踏まえて、この委員会でも本日の御意見も踏まえて御提案、御報告していきたいと考えております。
 
【大野委員】ありがとうございました。よく分かりました。よろしくお願いいたします。
 
【上田主査】それでは、髙本委員、よろしくお願いいたします。
 
【髙本委員】ITER計画における主要機器担当の役割やJT-60SAを稼働させる我が国というのは、フュージョンエネルギー開発に重要なポジションを今担っていると思います。この技術的な優位性を維持しながら、さらに世界市場をリードしていくためには、スタートアップ企業も含めた民間投資の増大が必須になってまいります。旺盛な民間投資の増大のためには、事業性予見の向上が必要であり、その点でここの基盤の開発向上でございますけれども、重要な要因を占めるのが社会受容性の拡充と安全性を含めた規制の国際標準化推進と思います。
 HQを中心とする活動の充実も重要でございますが、これらの活動と並行しまして規制当局との議論も進めておくべきだと考えます。特にフュージョンエネルギーは、海外諸国との連携をベースに開発を今実行中でございますので、日本特有の安全基準とならぬよう、国際基準、比較を意識しながら、関連諸国との連携、あるいは日本の規制当局との議論を並行して進めておくべきではないかと思いますので、ぜひ検討をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
 
【馬場戦略官】御指摘、ありがとうございます。今の御指摘、ムーンショット型研究開発制度に限らず、幅広く重要なポイントかと思っています。当然ながら、政府においてもそういった気持ちでやるつもりではありますが、今回、でき上がる協議会の主な取組の1つには、実は明示的に記載しておりまして、主な取組の2つ目かと思います。フュージョン技術の標準化や安全規制も踏まえた国への政策提言というところ、やはり国だけで議論していても前に進まないので、協議会からも積極的に提案いただき、よりよい関係をこの場でも作っていきたいと思っています。これまでも実際、各社、個社さんからは話は来ているところなのですけれども、やはり個社レベルではなくて、業界全体としてどういくかというところを考えていくきっかけにしたいと思います。
 もちろん、政府としても、Agile Nations(アジャイルネーションズ)の枠組みを活用してイギリス、カナダ等々とも国際的に調和された規制の重要性というところについても話が出ていますし、今、アメリカのほうでは、これまでCOPの場でケリー特使からフュージョンエネルギーに関する国際連携の強化というところが打ち込まれている中の5本柱の1つがまさにこの規制の調和、そしてもう1つは、サプライチェーンというところを同志国とも連携を強化する旨、うたわれています。我々としては、そういった同志国との議論も踏まえて安全規制標準化というところを、取組をぜひ産業界の皆様とも議論しながら進めていきたいと思っておりますし、学会の方々とも話をしていきたいと今考えているところでございます。引き続きよろしくお願いいたします。
 
【髙本委員】ありがとうございました。よろしくお願いいたします。
 
【上田主査】ありがとうございました。それでは、尾崎委員、よろしくお願いいたします。
 
【尾崎委員】原型炉の基盤づくりということで、非常に重層的な政策が並んでおり心強いと思います。どうやって人材や知財をインテグレーションして原型炉に近づけていくかですが、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略でも議論されました原型炉建設の前倒しの検討があると思います。これをぜひ実現する方向で動いていただきたいです。
 そのためには、今、TFで原型炉についていろいろな議論がされているわけですが、これを予算や政策に落とし込んでいく仕組みが必要です。QSTが全体を統括する方向ですが、そのQSTが今の形の組織でいいのか、それとも現状と違う形になるべきなのか、そういった議論を加速化させていただきたいと思います。
 
【馬場戦略官】戦略に書かれている内容を踏まえて、今回、QSTを中心とした実施体制にしている背景といたしましては、やはり技術なり知見、そういったものを統合していかないといけないと考えています。こちらはもともと公募して広くという話もありましたが、やはりどこかに集めていかないと統合できないだろうというところで、戦略に基づいてまずはということでやっていきたいと思っています。
 ただ、尾崎委員御指摘のとおり、進展に応じ、適切な体制としていくというところが必要だと思いますので、TFでも今後議論を積み重ねながら、バックキャスト的にどうやっていくべきなのかというところは考えていきたいと思います。
 また、先ほどの髙本委員の御質問ではないのですけれども、総理からの発言があったとおり、本当に見える化しないと海外からの投資も呼び込めないところではありますので、そこに、信頼に足るような体制、仕組みというものをこの委員会やTFで議論しながら作り上げていきたいと思っております。
 
【上田主査】ありがとうございました。それでは、長壁科学官、よろしくお願いいたします。
 
【長壁科学官】原型炉実現に向けた基盤整備となっていて、ある意味、フュージョンエネルギーを実現するという観点で、ITERなどは確かに実現するというのは非常に大事なんですけれども、原型炉の場合は単に実現するだけではなくて、その後、これは商品として日本が売っていくもの、核融合炉の原型になるものなので、国際的な競争力という観点を少し考慮したほうがいいのではないかと思います。そういう点では、単純に実現するだけではなくて、国際的に競争力のある原型炉を実現するというところの観点も加えていただきたいなというのが1つコメントでございます。APなどにおいても、そういう観点を盛り込んだ形で今後検討していく必要があるのではないかと思います。
 もう1つは、この大学等を含めた公募についてなのですが、単年度になってしまうと認識していますが、新たに例えばこの原型炉開発に関連した研究を行う場合、新たにマンパワーを増やすために人を雇うということを考えると、単年度では期間が短すぎてやりにくいので、できれば複数年度ということも今後の視野に入れていただけるとありがたいと思います。
 
【馬場戦略官】AP、今、限られている予算の中で何を優先的にやるかというところについて、前回、QSTから提案があった中で、長壁科学官からは、日本の特徴なり強みを生かすような戦略も考えるべきではないかという御指摘だったかと思っています。
 その場でもやはり議論になったのは、限られた中で優先順位をつけるというところで、今は現状、パイを食い合うという形にならざるを得ないところはあるのですけれども、今回、大事なところとしては、まずは体制をしっかり作っていただきたいと考えています。日本全国の大学や企業の方々が参画しやすいような仕組みをQSTのほうで作っていただくというところは、TFの中でも意見が強かったところかと理解しております。そういった部分も含めて考えていきたいと思います。
 また、単年度については、先ほどの人材育成と同じようにBA補助金でやれる話ではあるので、我々としては長期間やれる取組かと思った部分もあるので、より多くの大学、企業が参画しやすいような取組に変えていきたいと思います。いずれにせよ、4月から予算案が認められれば執行する形にはなるので、それまでに、よりいろいろな方々を巻き込めるような仕掛け、仕組みを作っていきたいと思います。
 
【上田主査】それでは、栗原委員、よろしくお願いいたします。
 
【栗原委員】今回、原型炉の実現に向けた基盤整備ということで予算がつきましたけれども、その中でQSTを中心とした実施体制と、人材育成という2つがありますが、私は、この2つの連携が大変重要だと思います。QSTは、原型炉の実現に向けた研究開発を進めていく一方、人材育成は別のところが全く違う形で動くというのは、あまり現実的ではありません。人材育成は、その目的である、原型炉の実現を見据えたものである必要があり、そこに向けて連携していただきたいです。
 それから2点目に、原型炉の開発については、世界に勝っていくということが大変重要かと思います。日本でどのように原型炉が実現していくかの見通しがより具体的になること、かつ時期がより早めることができるのであれば、そこを見せていくことが何よりも人材確保の面でもプラスになると思います。その意味で、どういうロードマップで原型炉が実現していくのかという点について、時期の前倒しが以前の議論にもなっていましたが、時期も含めて議論ができれば良いと思います。
 
【上田主査】ありがとうございました。最初言われたように人材育成、原型炉まで一体となって、連携しながら進めていくという御意見には私も賛同いたします。また、原型炉のロードマップにつきましても、来年度ぐらいからITERのベースラインの決定をにらみながら議論を進めていく予定にしております。そこの中でも原型炉の実現の前倒しなども、加速なども含めて議論していくことになろうかと思います。事務局から何かコメントございますか。
 
【馬場戦略官】栗原委員の御指摘、ありがとうございます。今回、やはりBA補助金、もともとQSTが1つの受け皿になっているというところもあり、両機関にしっかりと、大学とは違って国立研究開発法人、また、大学共同利用機関である意義や意識を踏まえて、このような研究開発、人材育成にも取り組んでいただきたいと考えているところでございます。QSTの場合、国立研究開発法人でもあるので、やはり目的に向かって実現する推進力は持っています。また、ITER機構や、BAの枠組みの中で欧州との強い連携があるというところで、それも生かしたJIFSやITERへの派遣は、しっかりやっていただきたいということを思っている一方、大学共同利用機関は、むしろ、大学のために存在しているところもありますし、連携というのは、これまで数十年にわたってやってきたところも最大限生かしていただきたいというところです。NIFSが国内はもちろん、海外で、20~30年間協定に基づいた人材派遣、共同研究を行っていますので、このようなお互いの強みを生かした取組をしていきたいと考えております。
 ただ、栗原委員、上田主査が御指摘のとおり、大事なのは、そこの連携なり一体感という部分だと思いますので、本当に原型炉に向けて10年後、どれだけの人数が必要なのか、どう育成しているのか、そういったところはバックキャストに考えていかないといけないと思っています。
 
【上田主査】それでは、柏木委員、よろしくお願いいたします。
 
【柏木委員】フュージョンエネルギー・イノベーション戦略が出てきて、非常にいろいろな施策が動いているというお話を聞いて、本当に心強く思ったのですけれども、具体的にどういうふうに動いていくのかというのを教えていただきたいかなというところがあります。
 例えば協議会についてですが、今年度協議会ができて、来年度以降の活動になっていくのかなと思うのですけれども、これだけのことを実施するためには、事務局やそれを準備する方が必要になってくると思います。具体的な方向性についてお示しいただければと思います。
 また、メーカーやシニアの方など、いろいろな方を巻き込んで行う必要があるので、実際、実施体制が本当に進んでいくのかについても御教示いただきたいです。
 また、先ほど出ていましたQSTを中心とした実施体制でも同じようなことが言えるかなと思いますが、今回の戦略でQSTが中心的な組織になっていくといったときに、新しい業務が増えるということは、それに向けて組織を強化し、皆さんの御期待に応えられるような体制づくりにしていく必要があると思いますので、どう取り組んでいくのかとか、そういうところを注視していきたいと考えています。
 
【馬場戦略官】協議会については、正直、我々が驚くぐらい多くの多様な企業から関心をいただいたというのが実情になっています。今現在、各社さん、何をやりたいのかというところを聞きながら、発起人会の方々、約20社の方々を中心に今検討しています。その中で、特に人材育成、本当に原型炉を踏み出すとしたときに、どれだけの人材が本当に必要になるのか、それをどう確保していくのかというところは関心が強いところではあるので、このような問題意識も踏まえながら、人材育成にもつなげていきたいと思っています。
 いずれにせよ、まだ本当にこの協議会自体、どう事務局を含めて作っていくのかというのはこれからではあるので、何とか形にはしていきたいと思っています。ただ、やはり今の時点でも、例えばこの海外の協議会との連携というところについては、実際、各国、アメリカからもいろいろなイベントを共催でやりたいとか、そういった話がある中で、3月末にも在米日本国大使館でイベントをしようかというような議論も今しているところでもあるので、認知度も上げながら、いろいろな方も巻き込みながら事務局も強化していきたいと考えています。それは当然、QSTも同じだと思っておりまして、いろいろなタスクだけが増えて予算も人も限られているというのがこれまでの状況ではあったと思います。
 今回、アウトリーチ活動を含めて、我々としてはお願いするだけではなくて、先ほどの人材育成もNIFSにお願いするからには、その必要な人材も雇っていただいて構いませんよということで追加的な予算、また、ムーンショット型研究開発制度も予算的には追加になりますので、ぜひそういったものも生かしながら、間違っても先生方の負担だけが増えていくというところは避けて、いろいろな方を魅力的に巻き込めるようなものを作れるかどうかというところを企業の方も含めて議論していきたいと思っています。御指摘を踏まえながら、今後どうするか、まさにこの審議会の議論を踏まえて政府としても取り組んでいきたいと思っています。
 
【上田主査】それでは、吉田善章委員、よろしくお願いいたします。
 
【吉田善章委員】NIFSが何箇所か出てきて、責任を大きく感じているところです。ここで紹介いただいたように、パッケージになった十全な計画で進めていただいている中で、共通的な課題は、人材育成ということを、タイムラインを意識しつつ考えていかないといけないということです。卵から育てるという人材育成ももちろんあるわけですけれども、人材を引きつける、いろいろな働き方の多様性を許容し、フュージョンエネルギーへのコミットメントの多様性、バックグラウンドの多様性を拡大することで、コミュニティーを大きくすることが非常に重要だと思います。
 例えばムーンショット型研究開発制度も、多様な分野からの参画の契機になるということが大きな効果として期待できます。核融合に関して、100%エフォートから10%エフォートまで、様々なエフォート、関わり方でコミットする人を増やしていかないと、到底、原型炉開発、それから、実用化という大規模な事業の要請に対応できません。今まで核融合に携わっていなかったけれども、こういう問題があるのであればコミットしてみよう、そういった人材を引きつけるような形で、今までの核融合とはあまり縁がなかった人たちも巻き込んで行く必要があると考えています。
 産業界にも核融合にコミットしてもらうためには、これがどういう分野なのかということをまず知ってもらわないといけません。ムーンショット型研究開発制度でも、そこが一番重要なテーマになるのではないかと思っております。NIFSは大学共同利用機関として,様々な分野の人たちの結節点となる場を提供しつつ、研究アクティビティーを組織化する活動をしていきたいと考えています。
 大学にはアカデミアの論理があり,それは原型炉開発の論理と完全に一致しているわけではないので、その間のある種の翻訳というか、橋渡しをしていくことも重要ですので、そういった役割をNIFSが担い、またプラ核学会などにも協力していただく必要があろうかと思います。
 
【上田主査】NIFSには重要な役割を担っていただいておりますので、今後、大学も、あるいはQST、あるいは産業界、いろいろなところを巻き込んで、それぞれが成長、発展していけるようなシステムをぜひ作っていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。それでは、栗原委員、よろしくお願いいたします。
 
【栗原委員】NIFSとQSTと協議会、この3つが三位一体で組織を超えて交流するということは、真っ先にやったほうがいいのではないかなと思います。ぜひ御検討いただきたいと思います。
 
【上田主査】ありがとうございます。NIFSやQSTの方には、十分御認識いただいているかと思いますし、私もそのように期待しています。吉田善章委員、コメントはございますか。
 
【吉田善章委員】もう既にNIFSで原型炉研究開発共同研究を募集して、JT-60SA、QST六ヶ所研究所、QSTが運営しておられる施設・設備を活用して、大学の研究者が共同研究を行う。一昨年からこのような組織づくりを立ち上げているところです。今後、できればそこにも予算を獲得して、大学の人たちがもっと活躍できるような形に持っていきたいと思っております。
 
【上田主査】石田委員、よろしくお願いいたします。
 
【石田委員】今御説明いただきまして、委員の方々からもQST、頑張れというふうに声援をいただいたと思っております。研究開発は、QSTを中心にそれを執行していくということになりましたので、今までは、原型炉設計合同特別チームを六ヶ所研究所を中心としてやってきましたが、そういう体制を今後、それに合わせながら、どういうふうにオールジャパンの体制で進めていくかというのをQSTの中でもしっかり考えて、4月以降の執行に備えていきたいと思っています。
 それからあと、人材育成についても、まさしくNIFS、大学等、それから、QSTとしっかり二人三脚で行くということは非常に大切で、QSTはどちらかというと垂直統合的な組織ですね。それに引き換え、NIFS、大学は水平分担、分業といいますか、そういうそれぞれの強みを生かして、先ほどNIFSから話がありました学際化とか、そういう異分野の方々を取り込んでいただけるというような話もありました。それから、我々のほうはQSTで開発しましたITER、JT-60SA、そういうところの産業界の連携というのが非常にありまして、そういう方々のチャネルもあるということで、そういうことをむしろ学生とか、若い人に見せることによって、将来の希望やどういう方向に行くべきかというのを具体化しながら、若い人たちの獲得に向けて取り組んでいきたいと思います。
 また、先ほど人材育成のところで御提案がございましたが、その期間限定で強化するというのではなくて、原型炉開発と並走して、持続可能で成長可能な、そういう教育システムができていけばいいなと思っております。その時は資料には、「QSTと連携し」とありますので、ぜひそういう構想段階で一緒に御相談させていただきながら、我々の人、物、事、そういうことを一緒に相談して、この教育システム、将来につながるような教育システムにしていただけたらいいな、いきたいなと思っていますので、よろしくお願いいたします。
 
【上田主査】QSTもぜひよろしくお願いいたします。それでは、花田委員、よろしくお願いします。
 
【花田委員】例えば先ほど吉田善章先生からもあったように、他分野の方が入ってきていただく、あるいは若い学生にこの分野に入ってきていただく、入口になるところが大学になるのかなと思います。そういったところにいる学生や若い方々から見てシームレスに今の原型炉開発や将来のことが見通せる、あるいは産業界で、研究や開発を続けていくということがシームレスに見えるような仕組みが魅力的です。ぜひそういった最終的な形が見通せるような制度を、QST、NIFS、大学もそうですけれども、あと協議会がシームレスにつながっていて、こういうことをやれば、こういうところへつながっていけるのだということが見えるような形に制度設計されていくということをぜひ期待したいと思います。
 
【上田主査】御意見、ありがとうございました。そのように進めていただけるよう、私も期待しております。兒玉委員、よろしくお願いいたします。
 
【兒玉委員】私も研究科に所属しているのですけれども、これだけ素晴らしいことをやる、だから若い人は行くだろうと思っても、そんなことはありません。そういう中で、どのように若い人、学生を引きつけるかというのを、シームレスにここだから見えるような、そういうものをぜひ構築していっていただければと思います。
 
【上田主査】ありがとうございました。今の御意見も今後の検討に生かしていただければと思います。植竹委員、よろしくお願いいたします。
 
【植竹委員】ITERの理事会の御報告の資料の2.の(2)ですけれども、2行目に「新型コロナ感染症や世界初の技術的挑戦により発生した遅延から回復」という文章がありますけれども、この遅延からの回復というのは、どういう内容でしょうか。
 
【馬場戦略官】ITER機構の中で検討している取組であって、いろいろな工程の見直しなどをすることによって、スケジュールなどに影響はないように今検討しているというような状況になっております。現時点で、そういった検討をしているというような段階になっておりまして、来年度にはITER機構から具体的な提案がされるというところを今待っているというような状況になっております。真空容器を作って、最初から全部計測装置を入れてからやるのか、後に入れるのか、そういったところなどをいろいろと組み換えなどをしながら、何とか核融合運転開始に向けて取り組んで検討しているというふうに理解して、我々も同じように待ってはいるというような状況になっております。
 
【植竹委員】遅延から回復したよということではなくて、回復を目指していきますという意味ですね。分かりました。
 
【上田主査】ありがとうございます。吉田善章委員、よろしくお願いいたします。
 
【吉田善章委員】これは少し細かいことですけれども、ムーンショット型研究開発制度の説明図で、1つ誤解を招かないように確認としておきたいと思います。タイムラインを描いている27ページでは、レイヤー1、2、3という形でわかりやすく整理されています。ムーンショット型研究開発制度は、まず5年間が予算化されていて、その5年で何を達成し、それが次の段階にどのように貢献すべきかのイメージが描かれています。後半5年はレイヤー3がないように見えます。しかし、ここで意図されているところは、前半5年の計画の中でレイヤー3のアウトプットがレイヤー2、レイヤー1にこういうふうに伝わっていって、それがもっと遠い将来に生きていくということです。もし後半5年に継続され、それが予算化されてステージゲートを通過するとすれば、やはりレイヤー3の研究もまた新しい形としてまた行われていく。そういう理解でよろしいでしょうか。
 
【馬場戦略官】御指摘のとおり、前半5年間、今、予算は確保できていて、後半5年間は、その状況を見てまた数年後に措置をするという流れになっています。ムーンショット型研究開発制度のメリットとしては、2つ申し上げると、1つはやはり基金ということで柔軟な執行ができるというところ、もう1つのメリットとしては、それはポートフォリオを自由に組み換えることができるということなので、外部環境的に、例えば海外のスタートアップで、こういう技術が出たとか、逆に日本でこういった発展があった時にも柔軟に組み換えることができるというところかと思います。
 ただ、あえて言うと、今回、バックキャスト型でやっているので、いわゆる最長10年間支援はできるのですけれども、10年後に成果は出ますというようないつもどおりのものは、我々としてはせっかくの機会なので違う形にしてもらいたいなということで、今はあえて5年としています。ただ、吉田善章委員がおっしゃるとおり、後半5年も必要な部分が、技術が出てきて、取組が進捗しているようであれば、そこは柔軟に対応していきたいと思っております。
 
【上田主査】花田委員、よろしくお願いします。
 
【花田委員】JIFSを強化するという話があったと思うのですけれども、私、最初のところからJIFSの取組にずっと参加して議論させていただいております。JIFSのほうで最初にやっていた議論は、せっかくJT-60SAという装置の下で議論をするわけですから、かなりJT-60SA、あるいはトカマクというものに特化した教育をしっかりやるべきだろうという話でずっと進んできて、私もそれに賛成して、それに参画してまいりました。今回、強化とおっしゃっている部分は、もう少し広く、いわゆるスクールとしてこれを位置づけようというような強化を考えておられるのか、それともやはりある種、特化した、目の前にある大型装置というものを活用したスクールという形での強化ということを考えておられるのか、その辺りがもし何か分かっていることがありましたら教えていただけないでしょうか。
 
【馬場戦略官】後者をイメージしています。JT-60SAを最大限活用したスクールになるだろうということを予想しています。一方、スクールみたいなものは、前回、100人ぐらい、九州大学でまさにやっていただきましたが、ITER、トカマクかもしれないですけれども、より多くの方々に御参画できるようなものになっていくと思いますし、また、今後、NIFSで検討いただくものについては、全国の大学と連携してということになりますので、球状トカマクであったり、レーザーであったり、そういったところも活用しながらやっていくようなものになっていくのではないのかなと思っています。
 イメージとしては、より広くあり、さらにITERスクールもあって、さらにその中でトカマクなり、ITERの人たちがJIFSに来るというところで、いずれにせよ、これまで全国の大学は、それぞれ立派なことをしているんですけれども、ばらばらになりがちだったところをより体系的にしていく時に、JIFSについては議長の関係もあるので、JT-60SAを最大限活用いただいたほうがいいのではないかなと思っています。一方、これまでの議論でもあったとおり、過去の委員会の中でも九州大学の装置は書いていないですけれども、LHD、JT-60SA、GEKKOなども活用し、かつ、海外の装置も活用しながらやっていくというところは、JIFSではなく、こちらの取組でやっていただくというところで、対象やプログラムというのをぜひこの機会に体系的に整理いただいて、キャリアパスを産業界も含めて作り上げるというのが大事なミッションかなと思っています。
 
【花田委員】どうもありがとうございました。
 
【上田主査】それぞれの教育プログラムがやはり特色を持って進めるということが必要かなとは思います。それでは、小磯委員、よろしくお願いいたします。
 
【小磯委員】今回、御説明、それから、委員の皆様の御意見を伺いまして、人材育成のための基盤強化、これにとても力が入っているなということで、今後に対して大変力強いものを感じました。
 長期にわたる研究開発計画ですので、やはり人材育成に関しても、それにふさわしいような長期的なキャリアパスを思い描けるようなものを形づくって、それを目に見えるにしていただければと思います。テーマ自体は非常にチャレンジングで面白いものだと思いますので、短期のポストを渡り歩くというようなことだけではなく、長期的に大きな目標に向かって腰を据えて研究に専念できるような基盤があると、若い方たちを引きつけるという意味でもプラスになるのではないかなと思いました。
 
【上田主査】貴重な御意見、ありがとうございます。そのような視点は、私も同感でございますので、ぜひ検討の際に、今御指摘のあった視点なども考慮して、いろいろなシステムをお考えいただければと思います。
 柏木委員、お願いいたします。
 
【柏木委員】先生方の長年の御努力でようやくJIFSが開催できて、感動したのですけれども、これを継続していくためには、やはりある程度、専任の方というか、事務局とかがないとなかなか負荷が高いのだなということも横で見ていて感じましたので、他のスクールも同じかと思うのですけれども、これが継続的にできるような枠組みも同時に考えていただけると良いと考えます。
 
【上田主査】非常に有益な御意見をたくさんいただけたと思います。今後、ムーンショット研究開発構想などに関係する部分については、ぜひ事務局で取りまとめていただければと思っております。また、原型炉実現に向けた基盤整備に関わる部分につきましては、本日の御意見を踏まえて次回のTFでぜひ御検討いただきまして、4月以降の適切な執行につなげていければよいのかなと思います。よろしくお願いいたします。
 それでは、続きまして議題2に移りたいと思います。「学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想(ロードマップ2023)について」でございます。最初に事務局から本プロジェクトの位置づけについて御説明いただき、続いて兒玉委員、吉田善章委員から取組の概要について御説明をいただきます。質疑応答は最後にまとめて行いたいと思います。
 それでは、まず事務局から御説明、よろしくお願いいたします。
 
【馬場戦略官】まず事務局から冒頭、学術研究の大型プロジェクトの推進に関する基本構想、いわゆるロードマップ2023と呼んでいますが、こちらの概要や位置づけについて説明した後、兒玉委員、吉田善章委員からフュージョンに関わるロードマップ掲載計画について御説明させていただければと思っております。
 こちらの学術研究の大型プロジェクトについては、ノーベル物理学賞受賞にもつながったスーパーカミオカンデ等の大型プロジェクト、これから最先端の技術や知識を結集して人類未踏の研究課題に挑み、世界の学術研究を先導する画期的な成果を挙げているところは御存じのとおりかと思います。他方、このような大型プロジェクトは、長期間にわたって多額の経費を要するため、長期的な展望を持って戦略的・計画的に推進していく必要があることから、国として大型プロジェクトの優先度を明らかにする観点から、ロードマップを定期的に策定しているところでございます。
 昨年、公募を実施した結果、申請のあった47件の研究計画について、幅広い分野の専門家によるきめ細かい審査を実施し、このたび12月に審議会の作業部会において、下段に記載している12計画を記載したロードマップ2023を文部科学省として策定したところでございます。こちらについては、概要、12項、記載しております。この中で上から3列目になります。左側は大阪大学レーザー科学研究所のパワーレーザー国際共創プラットフォーム、また、右側はNIFSの超高温プラズマの「ミクロ集団現象」と核融合科学についてです。
 事務局としては、冒頭、研究開発、全体像の中でも御説明しましたが、本委員会については、こういった技術的な部分について俯瞰的に、ITER、BA、学術研究の動向、人材育成も含めて俯瞰的に議論をしていきたいと考えているところでございます。こういったロードマップ2023に掲載されたというところについて、両プロジェクトの認知度向上ではないのですが、傍聴されているコミュニティーの中の方は皆さん御存じたと思うのですけれども、コミュニティーの外の方も含めて周知していきたいと考えておりますし、また、委員会の先生方からは、ぜひ有益な建設的な御意見をいただきたいということも本日、せっかくの機会でもあるので、両所長が委員を務めているということで、兒玉委員、吉田善章委員から、それぞれの概要をお伺いしたいと考えております。
 
【上田主査】それでは、続きまして兒玉委員から御説明、よろしくお願いいたします。
 
【兒玉委員】本日は、このような機会をいただきまして、どうもありがとうございます。我々の計画、略してJ-EPoCH計画と申しますが、世界一の高繰り返し大型パワーレーザー、大型レーザーで繰り返しというのは、現在まだ世界になくて、それをいち早く作って、それによって初めてできる学術、1つは量子真空の探査、それから、フュージョンプラズマ、超高圧の固体の中を探索していこうという、極限的な量子科学の開拓に関する計画です。
 もともと今から7~8年前にコミュニティー会議が開催されまして、それ以降、数年かけましてレーザー学会とも併せてコミュニティーの意見を取り入れて、どういうパワーレーザーが日本にあればコミュニティーとしていいかという議論をしました。その結果といたしまして、やはり繰り返しが必要だろうということになって、2018年に全体の合意ができて、その方向で研究開発とともに、いろいろなものを詰めていこうということになりました。おかげさまで、高繰り返しのレーザーということになったのですけれども、日本の技術を使いまして、2000年、2020年ぐらいから急激に上がっていますけれども、技術的なブレークスルーもございまして、結果的に10キロワット程度のパルスレーザーが実現できるようになりました。結果として、これを100台並べればメガワット級になりまして、世界のどこにもないような、従来の10万倍の繰り返し、それから、10倍以上の電気効率のレーザー施設が現実的に、技術的にはできるようになってきたということでございます。
 ちなみに、資料にある右側の図は、世界のパワーレーザーの競争軸でございまして、瞬間的なピーク強度若しくはエネルギーで世界が戦っているのに対して、平均出力、繰り返しというのを日本が先駆けてやっていこうという計画です。
 そのために産業界の力が不可欠でございまして、おかげさまで産業界の多数の方々からの協力・支援をいただけるようになってきております。そのベースになるのが、延べ184社からなるフォーラム、産業界との共創の場がございまして、そういうところから、こういうパワーレーザーに対する賛同をいただいております。ただ、それだけでは駄目で、やはり独自の技術が、日本や学術界にはありますので、そういう意味では、圧倒的に世界一を目指したいというのがございましたので、学術界にある最先端技術、これも取り込んでいくという計画で、結果的に連携機関といたしまして、資料に記載しているような機関が一緒になって、世界一の装置を造るという計画でございます。
 それと、それをどう使うかということに関しましては、現在、大阪大学のほうでパワーレーザーの共同利用・共同研究拠点として動いています。他にも国際連携体制や産学連携体制が整っております。さらに国際連携に関しましては、パワーレーザーのネットワークが世界にありまして、実はそれぞれ地域ごとにネットワークができております。アメリカはアメリカ、それから、ヨーロッパはヨーロッパでありまして、今、我々が取り組んでいるのが、個々の研究所ではなくて、それぞれのネットワークと我々のネットワーク、つまり、ネットワークとネットワーク、面と面との連携をいよいよ始められるような段階になっています。こういう中で世界の国際競争力のある、先ほどのレーザーを使って新しい学術を開拓しようということです。
 高繰り返しですのでいろいろな使い方ができます。高繰り返しを基に今までできなかったこと、その典型的なものを資料に挙げているのですけれども、例えば固体状態で1億気圧というのはかなり究極的にレーザーを制御する必要があります。そのためには繰り返しでフィードバックをかけるシステムが必要であるということで、1億気圧の固体を実現するというのが1つのテーマです。これは、格子点と格子点の距離がドブロイ波長と同じぐらいありますので、つまり、格子点ではなくて波と波が固体を形成している、そういう今まで人類が見たことがないような状態が、実は数字の上ではできるようになってくるということでございます。
 それから、この委員会でも重要であるフュージョンプラズマ、これに関しましては、2つの出口が考えられまして、1つは繰り返しができます。1ヘルツ数分間稼働すれば計算の上では電気が発生できるぐらいの熱量を収集できます。それで何が可能かというと、やはりミニチュアの炉ができます。ミニチュアの炉ができるということは、いろいろな知財をそこで抑えることができます。それから、炉材料の開発やトリチウム増殖が現実的にできるようになるということで、炉工学を始めることが本当にできるようになります。
 それから、もう1つは炉心プラズマです。これはやはりレーザープラズマ、いろいろな意味でプラズマというのは非線形で複雑なのですけれども、大量のデータを基にしたデータサイエンスをベースにした、その不安定性の物理の理解等を一気に進めることができるということで、核融合のプラズマの理解、あるいは進めるという意味でも、このJ-EPoCH計画は大変重要だろうと考えています。ただし、エネルギーが大きくないので、エネルギーが大きくないとできないような燃焼物理に関しましては、幸いアメリカのNIFとMOUを結んでおりまして、ワーキングを開始しております。
 要するに燃焼物理の実験を一緒にやろうということが、おそらく来年ぐらい、今年中にはワーキングを終結し、ある程度まとめて来年度ぐらいからできるのではないかという段階に来ております。エネルギーがたくさんあるのは、1日一発しかないんですけれども、そういう海外のものを使って進めていきます。また、たくさんのデータをベースにしたものに関しましては日本で行う、そういう位置づけでございます。
 最後は、今までの経緯をまとめたもので、2015年から始まって、今回、ロードマップに採択していただいたということで、コミュニティー会議から開始したものが、J-EPoCHのユーザー会議に変わって、今、動き始めているということでございます。
 
【上田主査】御説明、ありがとうございました。続きまして、吉田善章委員、よろしくお願いいたします。
 
【吉田善章委員】まず経緯から御説明したいと思います。戦略官の御説明でありましたように、サイエンスの分野の、いわゆるビッグサイエンスの研究について、国が優先的に進めるべきとするものは、ロードマップに記載されていることが求められます。
 そうした制度の中で、3年前に作られた前回のロードマップ2020から、実はNIFSから提案されたLHDの後継計画が外れるという事態になって、この3年間、国のビッグサイエンスの重点分野から、核融合研究が外れるという事態になっておりました。このことは、この分野の中核的な研究機関であるNIFSとして非常に深刻な問題として捉えて、ビッグサイエンスの中に核融合を位置づけ直さなくてはならないということで、2021年からコミュニティーを挙げた大議論を行い、分野外からも多くの方にコミットしていただきました。そういった議論に基づき、NIFSの抜本的な体制の改革と同時並行で、このロードマップ2023に向けた提案を練り上げたということであります。
 今回、提案したものが幸い、ロードマップ2023に採択され、核融合研究がビッグサイエンスの重点分野のリストに復帰することができたということです。今回提案した計画は、核融合研究が大きな激動期にある中で、サイエンスとしての核融合研究というものがどうあるべきかということを訴えたものです。超高温のプラズマのサイエンスのフロンティアを実験とシミュレーションと理論を総合して切り開いてゆく。その取組から、核融合のイノベーションの科学的な指導原理を作っていく。特定の閉じ込め形式の優劣がどうこうということではなくて、様々な可能性を探求するのチャレンジのベースとなる学理を作る。これが学術研究機関の役割だということを述べています。
 NIFSが、LHDで培ってきた非常に高精度の計測技術をより発展させ、ミクロ集団現象、専門家の言葉で言うとキネティックエフェクトということですけれども、プラズマ中の電子及びイオンの速度分布関数を高精度で計測しプラズマの物理が理解できるようにすることで、これまでのプラズマ物理から一段進んだ時代を切り開く、それで世界のプラズマ研究をリードしていきたい、そういう計画です。この図は文科省のホームページに公表されています。
 タイムスケジュールはこのように計画されています。これまで25年あまり運転してきたLHDは、2023年度から3年間は学術研究基盤として運用し、それをもってLHDの運用は終了いたします。LHDのプラズマ生成部は、30立方メートルのプラズマ体積をもつ大きな超伝導装置ですけれども、これをコンパクトに改造する。ただし、LHDが持っているデータシステム、加熱装置、計測装置などは、有効に利用し、発展させていくということで、プラズマの生成部はコンパクトでありながら、高精度であるという、大型というよりも高精度の方向に発展させる、そういった方向でサステーナブルなビッグサイエンスをやっていこうということが基本的な戦略です。ロードマップは、10年間の計画ですので、具体的には2026年度から、この次の計画にシームレスに続けていきたいと考えているところです。
 この資料にLHDの実験棟のイメージを示しています。LHDの横に組立スペースがありますけれども、そこにコンパクトな次期装置を構築していく。どこのビッグインスティテュートも同じようなことをやって、組立スペースを持っているような実験棟の中を、あっちを使ったり、こっちを使ったりという形でやるわけですけれども、そういうような形で次の装置につなげていきたいと考えております。
 最後のページがまとめです。これは核融合研究が大きく進展し、ベンチャー企業もいろいろな計画を提案するというような状況の中で、イノベーションの指導原理となる科学的な知見を確立する。これが学術研究機関の役割ですし、そういった中で優秀な人材を育成されます。日本の核融合研究が世界的なリーダーシップをとるためには、ビッグサイエンスとしてレベルの高い研究を行う必要があります。そういう研究の拠点として、このようなプロジェクトを推進していきたいと考えています。
 
【上田主査】それでは、ただいまの事務局、兒玉委員、吉田善章委員の御説明に対しまして質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。大野委員、よろしくお願いいたします。
 
【大野委員】兒玉委員に質問、よろしくお願いします。非常に魅力的な計画で、それで、レーザー開発が非常に重要な要件だと分かったのですけれども、最終的にこの高繰り返しといったときに、どこまでを考えられているのでしょうか。
 
【兒玉委員】技術的にあるのは、現在の激光XII号と同じエネルギーを100ヘルツにするということです。この技術は、ほぼできました。それはモジュール性にするので、それができれば、それを増やせばいいという段階です。では、核融合の視点からいくと、その先はどうなるのかというと、100ヘルツは多過ぎます。ただ、メガワットというのは、平均出力ですので、熱的な問題とかいうのもここである程度見据えていけて、将来的には核融合炉になった時には、10ヘルツぐらい落として、その代わりエネルギーを上げるということになります。
 
【大野委員】最先端の機器なので、知財が結構重要かなと思うのですが、民間も含めてたくさん入っているので、知財管理とかいうのは、どういうふうな考え方でやられているのでしょうか。
 
【兒玉委員】実はいろいろな企業が入っているんですけれども、一番重要なのが、先ほど言いましたブレークスルーがあったというところは、熱の逃がし方のところです。要するに励起して、それを冷やしてまた励起しという繰り返すためには、熱をいかに取るかという問題なのですけれども、そこに関しましては、実は論文化しておりませんし、出しておりません。
 
【大野委員】すごい苦労があることがよく分かりました。
 
【上田主査】他に、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、ありがとうございました。両計画の今後の発展を期待いたします。
 それでは、続きまして議題3に入りたいと思います。この議題は非公開の議題でございます。大変申し訳ございませんけれども、傍聴者の方におかれましては、御退室いただきますよう、よろしくお願いいたします。
 
(非公開議事)
 
【上田主査】本日用意をしております議事は、以上でございます。この他に何か特に報告、あるいは審議すべき案件を、委員の方、お持ちであれば御発言、お願いいたします。いかがでしょうか。特に発言はないと判断させていただきます。
 それでは、本年度の委員会は、今回で最後の開催になります。委員の皆様におかれましては、お忙しいところ、御出席賜りまして誠にありがとうございました。
 それでは、本日の委員会は、これで閉会いたします。改めて、御多忙の中、御出席、ありがとうございました。
 
―― 了 ――

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