核融合科学技術委員会(第34回)議事録

1.日時

令和5年7月24日(月曜日)14時00分~16時00分

2.開催方法

オンライン開催

3.議題

(1)原型炉開発に向けたアクションプランの見直しの検討について
(2)第2回中間チェック・アンド・レビューについて
(3)第32回ITER理事会、第31回BA運営委員会の開催結果について
(4)核融合政策に関する最新情勢について
(5)核融合科学技術委員会における第 12 期の活動について
(6)フュージョンエネルギー・イノベーション戦略の策定を受けた概算要求の検討、及び核融合科学技術分野研究開発プランの変更について(非公開)

4.出席者

核融合科学技術委員会

上田良夫主査、大野哲靖主査代理、石田真一委員、植竹明人委員、尾崎弘之委員、葛西賀子委員、柏木美恵子委員、栗原美津枝委員、小磯晴代委員、兒玉了祐委員、髙本学委員、中熊哲弘委員、花田和明委員、吉田善章委員

原型炉開発総合戦略タスクフォース

坂本瑞樹主査

文部科学省

稲田剛毅研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、髙橋佑也課長補佐、吉原誉夫核融合科学専門官、長壁正樹科学官、梶田信学術調査官

5.議事録

【上田主査】それでは、第34回核融合科学技術委員会(以下、委員会)を開催したいと思います。委員の皆様方におかれましては、御多忙のところ、御参加いただきまして、誠にありがとうございます。司会進行につきましては、委員会主査であります私、上田が担当させていただきます。それでは、議事に入る前に、事務局より定足数及び配付資料の確認をよろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】核融合科学専門官の吉原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、本日の委員の御出欠でございますが、本日の御欠席は、吉田朋子委員でございます。それから、栗原美津枝委員より30分ほど遅れて参加される旨の連絡がございました。また、現時点で、尾崎弘之委員及び柏木美恵子委員がまだ参加されてございません。本日は、全15名中11名の委員に御出席をいただいている状況でございます。現時点で過半数を超えておりますので、定足数を満たしていることを御報告いたします。
 続きまして、本日の配付資料でございます。議事次第の配付資料一覧にお示ししておりますとおり、資料1から10及び参考資料1から6となります。会議中はZoomの画面共有システムを使って事務局より資料を表示させていただきます。また、各委員におかれましては、発言いただく際にはミュートを解除の上、画面の下にあります「手を挙げる」ボタンを押して発言をいただきますようお願いいたします。
 
【上田主査】ありがとうございました。なお本日は、議題1、議題2で原型炉開発総合戦略タスクフォース(以下、TF)における検討結果を御報告いただくため、坂本瑞樹TF主査に御出席いただいておりますので、御承知おき願います。また、議題6は非公開とさせていただきます。傍聴者の方々におかれましては、議題6の開始前に御退出いただきますので、よろしくお願いいたします。委員会は、本委員会運営規則に基づき、議事を公開いたします。御発言は議事録に掲載され、ホームページ等で公開されます。
 それでは、本日の議事に入りたいと思います。まず、議題1「原型炉開発に向けたアクションプラン(以下、AP)の見直しの検討について」です。まず、私よりこれまでの経緯を御説明申し上げます。昨年度、TFにおいて、APの見直しについて御検討いただいております。その後、本年2月に開催されました第11期最後の委員会でTFから検討結果を御報告いただきました。その際、吉田善章委員から御意見をいただいてございます。吉田善章委員からの御指摘は、大きく2点ございました。
 1点目は、現行APにおける「ヘリカル方式」の項目の記載内容は、核融合科学の学際化を推進するという現行の自然科学研究機構核融合科学研究所(以下、NIFS)の活動内容にそぐわないため、当面の修正として、改訂版において、この項目を削除すべきではないかという御指摘でございました。
 2点目は、今後の中長期的な検討課題として、APの目標の絞り込みと包括的・複層的な学術戦略の策定を行うべきという内容でございます。
 このうち、1点目のAP改訂版からヘリカル方式の項目を削除するかどうかの点につきまして、4月に開催されました前回の委員会でTFに付託をして検討を依頼いたしました。その後、TFで御検討をいただき、本日は坂本TF主査より検討結果について御説明をいただきたいと思います。それでは、坂本TF主査、どうぞよろしくお願いいたします。
 
【坂本TF主査】本年6月27日に開催されました第30回TFにおいて、現行APからのヘリカル方式の削除について技術的な観点から検討を行いましたので、その検討結果について御説明申し上げます。
 まず、現行APの14項目のヘリカル方式は、ヘリカル型定常核融合炉に向けて、NIFSを中心に進められる研究開発のうち、原型炉に向けた共通の技術基盤を提供し得る内容が記載されておりました。上田主査からもありましたが、NIFSの活動内容とAPのヘリカル方式に書かれている内容とがそぐわなくなったことで、この項目の削除はやむなしという検討結果になりました。
 ただ、APから1つの項目を削除するということは大きな影響を与えると考えられますので、その影響についても検討をいたしました。国内でのヘリカル方式の研究開発で得られた知見は原型炉開発にとってとても重要であります。APからヘリカル方式の項目が削除されても、APのそれ以外の項目にヘリカル方式の研究からの貢献が記載されております。例えば、6項目の炉心プラズマには「LHD、ヘリオトロンJ」という課題が書かれています。このように多くの項目で今後のヘリカル方式の研究活動が原型炉開発に資するものとして期待されることを確認いたしました。
 また、トカマク方式以外の方式としてヘリカル方式とレーザー方式が記載されておりましたので、ヘリカル方式の項目の削除がレーザー方式の記載に与える影響についても検討いたしました。レーザー方式については、現行APにおいて、原型炉の開発に資する研究、レーザー方式と原型炉と共通する技術開発について取り組む趣旨が記載されており、この内容に関しては変更がなく、その研究開発の重要性に鑑み、改訂版においても現行APの方針を継続することが妥当であることを確認しました。
 この検討結果を踏まえて、本年2月の委員会にTFから提出した「核融合発電の実施時期の前倒しに関する検討を踏まえたAPの検討について」を修正いたしました。それがこの資料1となります。修正箇所の概要を説明申し上げます。
 まず、2ページ目、前書きのヘリカル方式、レーザー方式についての記載内容を先ほど申しました検討結果に従って修正しております。26ページ目、構成表からヘリカル方式を削除しました。この削除に伴い、27ページ目の構成表のレーザー方式の番号を修正しました。29ページ目、項目別解説の目次からヘリカル方式を削除し、これに伴いレーザー方式の番号を修正しました。77から78ページ目、APの項目別解説本文のヘリカル方式を削除しました。これに伴い79ページ目のレーザー方式の番号を修正しております。
 
【上田主査】御説明ありがとうございました。それでは、ただいまの説明を受けて、ヘリカル方式の項目を削除することに関して、御意見等ございましたら、よろしくお願いいたします。TFにおかれましては、単にヘリカル方式を削除するだけでなく、その影響等についても議論が交わされたと承知しております。いかがでしょうか。特に御意見がないということですので、ただいま坂本TF主査より御説明がありましたように、ヘリカル方式を改訂版より削除をするということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、この方針について御承認をいただいたものとさせていただきます。
 なお、本AP改訂版の施行時期についてですが、昨年度の委員会において、第2回中間チェック・アンド・レビュー(以下、CR2)以降の活動については、ITERのベースラインの検討状況と国内外の状況を見定めた上で、改めて本委員会で検討することとしておりますので、その点を申し添えておきたいと思います。
 それでは、議題2「CR2について」に入りたいと思います。本件につきましても、前回の委員会において、TFに検討を付託いたしまして、今年度中に検討していただくようにと依頼させていただきました。その後、TFで御検討いただき、本日はTFの坂本主査より検討結果について御説明いただきたいと思います。それでは、坂本TF主査、どうぞよろしくお願いいたします。
 
【坂本TF主査】本件に関しましては、5月30日に開催された第29回TFにて検討を行いましたので、その検討内容を御説明申し上げます。
 資料2を御覧ください。「核融合原型炉研究開発の推進に向けて」において、第1回中間チェック・アンド・レビュー(以下、CR1)を2020年頃に、CR2を2025年から数年以内に行うとされておりました。ここで、CR1が2022年、昨年1月に実施されている状況も踏まえて、実施時期、方法を検討する必要があります。実施スケジュールは、これまでのTFにおいて、CR2の完了を2027年度と想定して議論を進めてきましたので、ITERベースラインが確定しない状況ではありますが、現状では2027年度にCR2を完了するという日程から逆算して、2026年度にCR2を実施し、その2年前の2024年度に中間ヒアリングを行う案となっております。
 実施方針につきましては、4月の委員会で承認いただいた「チェック・アンド・レビュー項目 改訂版」の目標が達成されたかどうかを見ていくことになります。実際には、参考資料1にありますCR1で行われたAPのフォローアップに準拠して、APの一つ一つの課題を詳細にチェックしていくことになります。その担当者案は、資料2の3ページ目に示されているとおりです。ここでは、議題1で「ヘリカル方式」の削除が承認されたことを受けて、ヘリカル方式を削除した案をお示しさせていただきます。担当者案の朱書き箇所は、第11期からの変更箇所を示しております。
 
【上田主査】御説明ありがとうございました。ただいまの御説明のとおり、中間ヒアリングを2024年度、CR2の実施を2026年度、それを受けて2027年度に委員会で最終的な取りまとめ、評価を行うという御提案でございました。それでは、ただいまの御説明に対しまして質問等ございましたらよろしくお願いいたします。前回のCR1からちょうど5年という期間をおいて実施するということで、妥当な提案かと存じます。それでは、特に御意見がないようですので、承認いただいたものとさせていただきます。
 続きまして、議題3「第32回ITER理事会、第31回BA運営委員会の開催結果について」に入ります。それでは、事務局からの御説明、よろしくお願いいたします。
 
【稲田戦略官】資料3を御覧ください。第32回のITER理事会の開催結果でございます。この理事会は、6月21日から22日、フランスのカダラッシュで行われまして、今回もコロナ禍の影響下ではありますが、対面による議論が行われました。具体的な内容でございますが、建設活動の進捗に関して、各極及びITERサイトにおいて機器の製作・搬入が順調に進捗していることを確認するとともに、一方、御承知のとおり、新型コロナの影響緩和、真空容器・熱遮へい板の修理、将来のリスク軽減などの戦略を踏まえたベースラインの見直しを現在行っています。ベースラインの見直しはこのままいくと単純に遅れてしまうことになるので、可能な限り影響を少なくするという議論が行われ、その更新作業は、2024年中の承認を目指すことが今回確認されてございます。
 その中身でありますが、ITER機構においては核融合運転を最速に達成するような工程の組替えを行うことを考えております。例えば、増強ファーストプラズマという概念の導入です。今までは、ファーストプラズマを起こす際には、必要最小限の状態で、まずは気密性等を確認して、ファーストプラズマを起こした後、直ちに加熱の増強等に入るというスケジュールでした。これに対して、スケジュールの遅延を可能な限り短く、特に実際に意味のある科学的な運転を可能な限り早くしようと思うと、一旦真空の確認をして、もう一度真空容器を開けて増強するという慎重なスケジュールよりも、あるものについては組み込んだ上で、幾つかの試験をファーストプラズマと一緒に行うという概念がございます。これが増強ファーストプラズマと言われる概念です。
 この他にはプラズマに対向する第一壁の材料の変更等などが提案されております。今後、これらの変更点、あるいはベースラインの見直しに関しては、技術的な評価、科学技術諮問委員会(STAC)などが行われた上で、専門家レビューを行いまして、今後、2024年の改訂版を目指していきます。
 その他に関しましては、新執行部の体制の強化が定まったことと、核融合エネルギー実現において、ITERの取組の持つ意味が再度重要であることを確認しました。また、様々な問題が起こっており、この問題に対してどのような対応をして、どのようなことが問題になったかという経験自身が大変貴重な教訓として、様々な計画を走らせているベンチャー企業等々に対して正の影響を与えることもありますので、安全規制、技術的教訓などについて積極的に情報提供をしていこうということを今回取りまとめてございます。
 続きまして、第31回幅広いアプローチ(以下、BA)活動の運営委員会の結果でありますが、これに関しては、国際核融合材料照射施設の工学実証・工学設計活動(IFMIF/EVEDA)事業、それから、国際核融合エネルギー研究センター(IFERC)事業、サテライト・トカマク(STP)事業、いずれも順調に推移しており、特にサテライト・トカマクであるJT-60SAは5月30日に統合試験運転を再開し、秋頃のファーストプラズマを目指しているという状況が確認されてございます。併せて、これが動き始めるということもありますので、国際的な人材育成を企図しまして、国際核融合スクールの第1回を9月から行うことや、その活動を支えた皆様及び地元の皆様に対しての感謝の意を表明するとともに、次回の会合を今年12月にスペインで開催することを決定しております。
 
【上田主査】稲田戦略官、御説明ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に対しまして、質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、続きまして、議題4「核融合政策に関する最新情勢について」に移りたいと思います。それでは、事務局から資料の御説明をよろしくお願いいたします。
 
【稲田戦略官】資料5を御覧ください。フュージョンエネルギー・イノベーション戦略において、産業化に向けて、ビジネスの予見可能性を高めて、民間企業の参画を促進するためには、安全規制や国際標準化の重要性がうたわれており、核融合の安全に関する議論を国際的に進めるという事項でございます。これに対してAgile Nations(アジャイルネーションズ)という枠組みを使い、これまで2回議論を実施しました。その結果については、今年の11月に勧告を取りまとめることを企図しているという内容です。その内容は、基本的には科学的で合理的な規制を行っていくことを現在議論しているということを、情報として申し添えます。
 続きまして、資料6「核融合中性子源について」でございます。核融合の中性子源に関しましては、原型炉研究開発ロードマップに基づいて、仮に研究開発を進めるのであれば、どうしても中性子照射に関して、早くどのように行うのかを議論しないと、照射がボトルネックになって計画全体が遅れるというような状況にあることを踏まえて、ここをどうするかということを議論した内容でございます。具体的に言うと、DONES、日本の核融合中性子源(A-FNS)と並びまして、IFMIF/EVEDA事業、BA活動の結果、成果として出てくるものですが、DONESのほうが建設が早いということもございまして、DONESにおいて適切な照射を実施してはいかがかという検討が進んでいるという内容でございます。いずれにせよ、実施可能性がどの程度あるのかについては、詳しく議論を行った上で、DONES計画の進展を踏まえ、核融合中性子源に関しても、APの各課題の推進策とともにTFにおいて検討する予定になっているということを併せて御報告するという内容でございます。
 最後に、今年度の概算要求の内容が含まれますので非公開としておりますが、手元にある方は資料8を御覧ください。フュージョンエネルギー・イノベーション戦略においては、ゲームチェンジングになる小型化・高度化のような研究開発についてどのようなアクションを行うかが議論されてございまして、これに関して、ムーンショットという内閣府の施策を利用して研究開発を進めてはどうかという議論が現在進んでございます。具体的に言うと、核融合の挑戦的な研究の支援の在り方に関する検討会(以下、検討会)が行われてございます。6月から議論を始めまして、7月に第2回、8月にもう1回検討した上で、概算要求までに、仮にムーンショットの施策を利用して研究開発を進めるとするならばどのような課題を行うのかという議論を行い、その内容について公開をした上でホームページ等において皆様方の御意見を賜るべく、パブリックコメントにかけることを現在考えてございます。この内容に関しては後ほど御説明いたしますが、以上がフュージョンエネルギー・イノベーション戦略に基づく予算要求等々に絡む現状を御報告させていただいたところでございます。
 
【上田主査】御説明ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に関しまして、質問等がございましたらよろしくお願いいたします。柏木委員、よろしくお願いいたします。
 
【柏木委員】3点ほどございます。まず資料5についてお願いがございます。既に2回ほど会合をされていて、11月に勧告に向けてまとめていくという内容をお伺いしたのですが、各会合の概要や、日本も報告したとありますので、日本がどのようなことを報告しているかについて、委員会やTFの参考資料などとして共有していただけるとありがたいのですが、いかがでしょうか。
 
【稲田戦略官】御承知のとおり、国際的な議論として行っていますので、その内容については、一般に公開するものではありません。ただし、ITERの誘致の際に、仮に日本で核融合の実験炉を造る時にどのような法体制を検討していたのか、また、それを踏まえて、現在どのように法体制を整えるべきかを議論している状況であるといったことをプレゼンしました。議論の結果、国際的にどのように打ち出すかに関しては、国際的な状況も踏まえる必要はありますが、次回の会合等で中身について御説明させていただこうと思います。
 
【上田主査】よろしくお願いいたします。
 
【柏木委員】2点目は、資料6で、内閣府のムーンショットのお話もされていましたが、中性子源の話をムーンショットとも絡めるという意味合いのことをおっしゃったのでしょうか。
 
【稲田戦略官】そのような意味合いではございません。まず、中性子源に関しましては、昨年来議論が行われています炉の前倒しの議論等を考えるならば、炉の材料の照射は早急に実施する必要があります。それに対する対応として、A-FNSの建設を待っていると間に合わなくなるので、早急な手当てが必要であるということに基づいての内容でございます。それとは別にムーンショットの話は、同様に戦略の中に書いてあるゲームチェンジングをするような研究としてどういうことを行うかという内容でありまして、これは実証炉の研究開発に関連するものもありますが、並行して別のものとして検討しているところでございます。
 
【柏木委員】ありがとうございます。3点目ですが、全体に関わることで、今回の会議は、特に今まで行ってきたAPに対しての御説明が多いのですが、最近、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略が発足した背景にもあるように、各国の核融合の動きが非常に盛んになってくる中で、ベンチャーや、先ほどの革新的技術というものが非常に世間的にも目立ってきております。私が最近懸念しているのは、我々が何年もかけて培ってきたAPが世間一般からどのように見えているかということを気にしています。このAPが、ITERやJT-60SAなど、核融合の技術の非常に要のものを日本が作っていくということで、時間かけて取り組んでいるわけなんですけども、我々が時間かけて取り組んでいるものに対して、今、新興の技術やベンチャーなどが出てきており、そちらのほうが政府主導の計画よりも動きが速いので、一般的には評判がいいと思います。その中で、我々のAPが時代遅れになるように見えてはいけないと思います。そういったことを最近心配していまして、APでは、従来培ってきたものを絶対やらなければいけないと思うのですが、新興の技術については、先ほどムーンショットという内閣府の施策を利用して研究開発を進めるといった話もあります。我々もそのような新しい技術に対してのアプローチも一緒に考えた上で、従来の確固たる核融合技術の議論をしていかないと、我々だけ取り残されたような形にならないかということを心配しています。そのようなことをどこで議論するのかという問題はありますが、長年かけて培ってきたAPを時代遅れに見させないようにするためにも、現行のAPに記していない技術についても委員会やTFで議論できるような形にして、全体として日本がフュージョンエネルギーの実現に向けて攻めていくというようなAPを追加するというような見せ方があるのではないかと思います。
 
【上田主査】私から一言お答えして、それで、もし必要なら事務局から付け加えてください。先ほどの坂本TF主査のAPの見直しのところで少しだけ補足で申し上げましたが、現行のAPは、CR2までが今のところ認められているものであり、その先についてはまだ確定はさせていません。確定させていない理由は大きく2つあります。1つは、柏木委員から御指摘いただいたような国内外の動向、あるいはスタートアップの新しい技術開発をどのようにAPに取り込んでいけるのかという点です。もう1つは、ITERのベースラインの見直しを現在検討中であり、それが決まらないと、例えば、原型炉への移行判断等々に影響するということです。このようなITERの状況も見極めながら、CR2以降にAPの見直しについて検討を始めて、国外の状況に遅れることなく、必要な部分は取り込みながら原型炉開発を進めていくようなAPを作ると、私は理解してございます。事務局のほうからもし追加で何かあればお願いいたします。
 
【稲田戦略官】上田先生のおっしゃるとおりだと思います。その上で、事務的な説明と補足をいたしますと、このAPはあくまでも国が実施する原型炉の開発に向けたAPです。したがって、このAPに記載されていないような外側の研究開発をどうするかという議論があってもしかるべきだと思います。ただし、これはAPの範疇を超えますので、仮にその辺りについて議論を進めるということであれば、その外側を議論することにどのような対応が必要なのかを御議論いただくということになろうかと思います。これが第1点目です。
 その上で、国が実施する原型炉に関しても、上田先生が御説明されているように、新しい技術を入れるということもありますし、炉型についても幾つかのものがAPに書いてありますように、内容の一部については変更することがあり得るという前提において作られていますので、その内容についての議論は適宜行われるものと理解しております。また、先ほど申し上げた全体の議論に関しては、このAPに関してはその範疇ではありませんが、この委員会における議論の範疇には当然入ってきます。例えば、各国政府やベンチャー企業等でどのような研究開発をしているのかといった、核融合に関する情勢を委員会等でお知らせしているのは、概算要求に向けての議論をしていただくにあたって、そのために必要なバックグラウンド、情報を皆様に御提供した上で、何が必要なのかという議論をしていただくためでございますので、そのように御理解いただけるとありがたいと思います。
 
【上田主査】柏木委員、いかがでしょうか。
 
【柏木委員】ここで従来のAPと今後の取組について議論することはとても大事だと思いますが、新興技術について委員会などで紹介される予定はありますでしょうか。従来の議論というよりは、先々のことも見据えた情報提供などがあってもいいのではないかと考えます。
 
【稲田戦略官】先ほど議論しています検討会の結果については、2つの有識者会合に対して報告をしようと思っています。
 1つは、内閣府の「核融合戦略」有識者会議、これは内閣府のフュージョンエネルギー・イノベーション戦略を作った皆様に対しても、このように考えているのですが、いかがですかということを確認することを考えております。
 もう1点が我々として重要ですが、それが技術的に適切なのかどうか、今までの研究開発との整合性でどうなのかということを御議論いただく必要がございます。当然、当委員会でも議論いただくことを考えてございまして、検討結果も報告する予定でございます。その意味ですと、この委員会においては大所高所からの御議論をいただけるとありがたいと思います。
 
【柏木委員】ありがとうございました。
 
【上田主査】植竹委員、よろしくお願いいたします。
 
【植竹委員】先ほど戦略官から御説明のあったムーンショットに関わる部分で、検討会の御紹介があったと思います。その検討会と委員会との関係性や整合性、若しくは内閣府の有識者会議との関係性について、これまであまり委員会で説明されてこなかったと思っています。その辺りが不明確で、ミッションやメンバー、立てつけなどについて御説明いただければと思います。
 
【稲田戦略官】当該検討会に関しては、もともとムーンショットの立てつけが、実現は難しいが、それを行うことによって世の中を大きく変えるような研究開発を行う時に、技術を起点として議論するのではなく、目標からバックキャストで議論をするということを要求されてございます。そのような観点から、環境などを含めての大きなビジョナリストを集めて議論をするとともに、実はこの委員会の委員の方にも何人か参画をいただいておりますが、技術が分からない方ばかりですと困りますので、技術面が分かる方も半分ほど入れる形で構成されている検討会です。当該検討会のメンバーや会議資料等についてはホームページで公表しております。皆様方にも後ほど提供しますので、実際の検討結果についての報告は次回の会合になりますが、それまでに一度御覧いただけるとありがたいと思います。
 このように、本検討会は、未来のビジョンからバックキャストして何が必要とされているのかについて議論するものですが、当然、その未来が技術的に実現不可能である場合や、あるいは、我々が目指しているものと大きく違うということになると、国としての政策の整合性が取れないことになりますので、このような点をチェックするために、先ほど申し上げた内閣府の有識者会議及び当委員会には中間取りまとめが終わった後でその議論を審議いただく予定でございますので、その際に詳細については御説明させていただこうと思います。
 
【上田主査】それでは、資料の提供をよろしくお願いいたします。植竹委員いかがでしょうか。
 
【植竹委員】今の御説明でもよく分からないのですが、核融合に関する文科省のあらゆる予算に関する議論も含めて委員会が所掌していると思っていたのですが、委員会の傘の下にないところで、議論が行われるということには違和感があります。その辺り、皆さんいかがでしょうか。
 
【上田主査】吉田善章委員、よろしくお願いいたします。
 
【吉田善章委員】今の植竹委員の御発言、それから先ほどの柏木委員の御発言の両方に関係しますけれども、現在、核融合研究が激動期にある中で、いわゆるJA-DEMOに向けた原型炉開発についてのAPをシャープなものにしていくことが必要です。同時に、いろいろな時間スケール、それから規模を持った様々な研究をうまくAPと連携させていく必要があります。ある場合にはゲームチェンジャーになるような革新技術があるかもしれません。そういったものを含めた総合的な研究開発の体制を構築していくことが大変重要だと思います。そういった意味で、原型炉開発に対するAPと並行して、何らかの、グランドプランのような俯瞰的なプランも持つことが必要なのではないかと思います。これは前回も発言させていただいた内容ですが、もちろん限られた時間の中でそういうものを作っていくことは難しい仕事だと思いますが、APとしてはシャープなものをきちんと作っていくと同時に、いろいろなものを俯瞰的に見て、総合していくという2つの視点が必要だと思います。そのような検討がなされれば、2人の委員が御指摘されたような点についても対応できるのではないかと思います。
 先ほどの植竹委員のおっしゃられた概算要求については、全てがこの委員会の傘下にあるわけでは決してありませんで、大学の研究者等でも様々な活動がなされているわけで、そういったものも含めた包括的な情報を分析して全体の戦略を考えていくような形で進めることが有効なのではないかと思います。そのような観点があれば、例えばムーンショットのような野心的な研究が、原型炉開発というある意味では非常に大きな慣性を持っている、又は持ちかねない計画とうまくいろんなチャンネルで情報交換しつつ計画を進めていくことができる思います。そのような検討をする機会や、仕組みを考えていただけるとありがたいと思います。
 
【上田主査】植竹委員、いかがでしょうか。
 
【植竹委員】確認ですが、核融合に関して、俯瞰的かつ総合的なグランドプランを作るのは本委員会だと私は思っていましたが、必ずしもそうではないという意味でしょうか。
 
【吉田善章委員】私が今申し上げたのは、TFにおけるAPの検討と同時並行で、本委員会でそういう検討も行われるのがいいのではないかということです。
 
【植竹委員】それなら私も同意いたします。ありがとうございます。
 
【稲田戦略官】少し補足をさせていただきます。核融合に関する予算のうち、文部科学省に関する部分については当委員会で取り扱っています。ただし、どこまで関与するかに関してはかなり濃淡があります。先ほど申し上げましたように、学術のように学者の皆様が自由な発意に基づいて行うような研究開発、例えば、科研費は特にそうですけれども、このような予算の内容に関しては必ずしもこの委員会で取り扱っているわけではありません。それともう1つ、政策的に加速するものとして文部科学省以外の予算もあります。例えば内閣府と協働で行うものもあります。このように、今までの予算に追加的に予算を確保して議論をする場合は、この委員会の関与については濃淡があります。ただ、いずれにせよ、全体としての予算の整合性や、あるいは核融合の実現に向けてどのように研究開発を進めていくのか、その中で何を加速し、原型炉につなげていくのかというようなことの判断は当委員会で実施されるものと理解しております。
 
【上田主査】植竹委員、何か御発言はございますか。
 
【植竹委員】予算的にはいろいろテクニカルなこともあるのだろうと思いますので、それは結構なのですが、やはり本検討会がどういう立てつけなのか、我々は少しも分かっておりません。文科省の下にある検討会なのか、内閣府と合同の傘下の検討会なのかということも分からずに議論をさせていただいているので、紹介していただくなり、承認を得てから検討会での検討が始まるのが筋だと思った次第です。
 
【上田主査】本件については、今後、様々議論を進めて、この委員会としても、原型炉までのAPを、吉田善章委員から御指摘いただいたように、シャープに検討していくとともに、核融合エネルギーの実用化に向けたもっと広い視野で核融合研究の今後の展開、進展に関する議論を当然進めなければならないと考えております。これに伴い、委員の方にはいろいろ御議論いただくと思いますが、よろしくお願いいたします。それでは、他に御意見ございませんでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、続きまして、議題5「委員会における第12期の活動について」に入ります。皆様御存じのとおり、委員会は、科学技術・学術審議会の傘下にある研究計画・評価分科会の下で活動しております。このたび、研究計画・評価分科会より各委員会に対して、第6期科学技術・イノベーション基本計画等を踏まえた第12期の活動内容について所定の様式に記載し、同事務局に提出するよう依頼がございました。本件は、8月に開催される次回の研究計画・評価分科会で報告される予定となってございます。それでは、本日は、委員会からの報告事項について、事務局案を作成いただきましたので、事務局から御説明をよろしくお願いいたします。
 
【稲田戦略官】資料7に基づいて御説明させていただきます。本委員会における第12期の活動についての規定するものでございます。所定の様式は、丸についての(1)、(2)と書いてある最初の一文、すなわち、各部会・委員会に関する研究及び開発等に関するもの、これを具体的にどう書くかということです。それから、(2)の自然科学の「知」と人文・社会科学の「知」の融合である「総合知」の創出・活用に向けたものの2つに関してどのように記載するかということを求められるものでございます。資料7は基本的に第11期のものをベースにした上で、(1)の箇所、研究開発計画として、特にフュージョンエネルギー・イノベーション戦略が策定されたこともございますので、ここの部分について改訂を加え、APやロードマップの見直し等を行うことによって核融合研究開発に向けて必要な検討、研究開発を行うという研究開発に対する内容として書いてございます。後段の部分の自然知については、これは大所高所の議論でございまして、前のものと内容はさほど変わるものがないということを認識してございますので、前回の記述を参考とさせていただいています。
 
【上田主査】御説明ありがとうございました。ただいまの御説明に関しまして、御意見等ございましたらよろしくお願いいたします。柏木委員、よろしくお願いいたします。
 
【柏木委員】先ほど、吉田善章先生がおっしゃったグランドプランというキーワードが非常に分かりやすくて良いと思いました。そのような幅広の活動を取組の中にキーワードとして入れていくということを検討するのは大事だと思いますが、その辺りはどのようにしていけばよろしいですか。この中にいきなり入れると少し急な感じもしますが、いかがでしょうか。
 
【上田主査】いきなり入れるというよりは、もう少しこの委員会の中で議論して、どのような形でそれを実際に見えるような形にしていくのかについては、議論が必要だと思いますので、この段階で研究計画・評価分科会の報告に入れるのは少し早い気が私はしておりますが、事務局から何かコメントございますか。
 
【稲田戦略官】おっしゃっている内容に関しては、資料の中で「核融合研究開発に向けて必要な検討などを行う」の「など」の内容に包含されていると考えますが、特出しして、議論を行うという強い意識があるのであれば、大変心強いメッセージとなりますので、必要に応じて追記いただくことは一つの方法だとは思います。ただ、上田主査がおっしゃったように、どの方向かについてはまだコンセンサスを得ていないことを鑑みて、中立的な書きぶりである現在案を準備させていただいたという状況ではございます。
 
【柏木委員】本委員会での議論を経て、方向性を確認してからこういうところに織り込んでいくということだと認識しました。
 
【上田主査】ぜひ、この委員会で議論をした上で、来年、再来年辺りのこの書類に対してもう少し強い表現ができるようになるといいと思いました。御意見ありがとうございました。兒玉委員、よろしくお願いいたします。
 
【兒玉委員】少し細かいことですが、(2)の中で、「核融合に関するアウトリーチ活動」や、その後、「核融合の社会的価値」、「核融合エネルギー開発」の核融合は、宇宙で起こる核融合を含めてではないですよね。核融合エネルギーのことですよね。核融合という言葉がフュージョンエネルギーや核融合などいろいろな形で単語が使われていて、少し理解しにくいところがありましたので、ばらつきを無くしたほうがいいのではないでしょうか。
 
【上田主査】御意見ありがとうございます。御指摘のとおりかと思いました。特に(2)の最後のパラグラフの頭の核融合エネルギー開発のところは、これはフュージョンエネルギーと書いたほうがいいと思いました。ただいまの御指摘を受けて、もう少し適切に文言の選択、あるいは修正をしたいと思いますので、本件に関しましては私と事務局に御一任いただけませんでしょうか。御意見ありがとうございます。他にございますでしょうか。事務局から何かございますか。
 
【稲田戦略官】御指摘のとおりフュージョンエネルギー・イノベーション戦略が策定されましたので、用語の整理を再度行った上で、修正案を上田主査に御提示させていただこうと思います。
 
【上田主査】ただいまの皆様からの御意見を踏まえて私と事務局で修正しますので、今後の対応に関しましては御一任いただけますと幸いでございます。
 続いて議題6に移りたいと思いますが、これからは非公開の議題となります。傍聴者の方におかれましては、大変申し訳ありませんが、御退室いただきますようよろしくお願いいたします。
 
(非公開議事)
 
【上田主査】以上でこちらの準備した議題は全て本日御議論いただきました。委員の皆様方から何か御発言等、あるいは報告等ございましたら、よろしくお願いしたいと思いますが、何かございますでしょうか。
 それでは、次回の委員会の日程につきまして、事務局からお願いいたします。
 
【吉原専門官】次回の委員会は11月に開催する予定としております。日程調整の上、追って開催日時、議題等を御連絡申し上げますので、どうぞよろしくお願いいたします。また、本日の会議の中でも言及がございましたとおり、8月の第2週を目途に検討会の中間取りまとめに関しまして、メールで書面審査を依頼させていただきたいと考えてございますので、御承知おきをいただければと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 
【上田主査】それでは、本日の委員会はこれで閉会いたします。御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございました。
 
―― 了 ――

お問合せ先

研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付

髙木、樋口
電話番号:03-6734-4163