核融合科学技術委員会(第33回)議事録

1.日時

令和5年4月25日(火曜日)14時00分~16時00分

2.開催方法

オンライン開催

3.議題

(1)第12期核融合科学技術委員会の運営について(非公開)
(2)原型炉開発総合戦略タスクフォースの設置について
(3)フュージョンエネルギー・イノベーション戦略の策定を受けた検討課題について
(4)第12期核融合科学技術委員会における検討課題について
(5)第11期からの継続案件の検討について

4.出席者

核融合科学技術委員会

上田良夫主査、大野哲靖主査代理、石田真一委員、植竹明人委員、尾崎弘之委員、葛西賀子委員、柏木美恵子委員、栗原美津枝委員、小磯晴代委員、兒玉了祐委員、花田和明委員、吉田善章委員、吉田朋子委員

第11期原型炉開発総合戦略タスクフォース

坂本瑞樹主査代理

文部科学省

千原由幸研究開発局長、林孝浩大臣官房審議官(研究開発局担当)、稲田剛毅研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、髙橋佑也課長補佐、吉原誉夫核融合科学専門官、長壁正樹科学官、梶田信学術調査官

5.議事録

【吉原専門官】文部科学省核融合科学専門官の吉原でございます。本日は、御多忙のところ、御参加いただきましてありがとうございます。定刻になりましたので、第33回核融合科学技術委員会(以下、委員会)を開催いたします。
 本委員会の主査につきましては、科学技術・学術審議会研究計画・評価分科会運営規則第5条第3項に基づきまして、分科会長が指名することになっております。分科会長より上田委員が主査に指名されておりますので、議事の進行につきまして、上田主査にお願いしたく存じます。上田主査、どうぞよろしくお願いいたします。
 
【上田主査】よろしくお願いいたします。それでは、始めたいと思います。研究計画・評価分科会長の指名により主査を務めさせていただきます上田でございます。本日は、議題1で予定しております本委員会の運営については、非公開とさせていただいております。議題1になりましたら、傍聴者の方々には一度御退席いただきますので、御了解のほどよろしくお願いいたします。
 本日は、第12期最初の委員会の開催になります。議事に先立ちまして、文部科学省の千原研究開発局長より御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
【千原局長】上田先生、ありがとうございます。ただいま御紹介をいただきました研究開発局長の千原でございます。第12期最初の委員会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げさせていただきます。初めに、上田主査をはじめとする委員の先生方におかれましては、大変御多忙の中、委員会の委員に御就任をいただき、厚く御礼を申し上げます。さて、近年、主要国ではカーボンニュートラルの実現に向けまして、核融合エネルギー開発に関する独自の取組を加速させています。また、核融合ベンチャーへの投資も活発化しているところでございます。我が国におきましても、本年4月14日に開催されました統合イノベーション戦略推進会議におきまして、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略が決定されました。このような状況の中、昨年度は本委員会におきまして核融合発電の実施時期の前倒しの可否や原型炉開発に向けたアクションプラン(以下、AP)、原型炉研究開発ロードマップ(以下、ロードマップ)の更新などについて御検討いただきました。今年度は、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略の策定を受けた文部科学省における対応や原型炉開発の主体、第2回中間チェック・アンド・レビュー(以下、CR)の実施方針や方法等について御検討をいただきたいと考えております。これらは今後の核融合政策において大きな意味を有する重要な課題であると認識しております。この第12期の委員の先生方は、大学、研究機関、産業界、ジャーナリストなど様々なバックグラウンドをお持ちの方々で構成されております。核融合エネルギーの早期実現に向けて、全てのステークホルダーが一丸となって取組を推進していただきますよう、委員の先生方の活発な御審議をお願い申し上げて、私からの御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【上田主査】ありがとうございました。続いて、事務局より委員及び事務局出席者の紹介と配付資料の確認をお願いいたします。
 
【吉原専門官】それでは、第12期委員会の委員に御就任いただいた方々を御紹介させていただきます。資料1に名簿がございますので、記載順にお1人ずつ御紹介させていただきます。お一方、1分以内で簡潔に御挨拶をお願いできればと存じます。
 それでは、大阪大学大学院工学研究科教授、上田良夫主査、よろしくお願いいたします。
 
【上田主査】ただいま御紹介にあずかりました大阪大学大学院工学研究科の上田でございます。本委員会の主査を務めさせていただきます。よろしくお願いいたします。前期は第1回中間CRの報告書等で委員の皆様方には御議論、ありがとうございました。また、今期につきましても先ほど千原研究開発局長より御説明がありましたように、様々な検討課題がございます。お忙しいところ申し訳ありませんが、御議論のほどよろしくお願い申し上げます。なお、私自身は核融合の研究を学生時代から現在までずっと続けておりまして、その主なテーマは高温のプラズマとそれを取り巻く容器の壁の相互作用、すなわち、プラズマが壁の容器に触れた時にそこでどういうことが起きるか。その知見を基にいかにその壁材料を長寿命化できるか、あるいはプラズマを安定に保持できるか、そういう観点から研究を進めてまいりました。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】ありがとうございました。続きまして、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(以下、QST)量子エネルギー部門長、石田真一委員、お願いいたします。
 
【石田委員】御紹介、ありがとうございます。この4月にQST量子エネルギー部門長を拝命しました石田でございます。よろしくお願いいたします。今期からこの委員会の参加になります。今までは、那珂研究所ではJT-60SAの実験、それから、六ヶ所研究所では炉工学、あるいは産業展開に携わってまいりました。引き続きよろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】ありがとうございました。続きまして、一般社団法人日本原子力産業協会常務理事、植竹明人委員、お願いいたします。
 
【植竹委員】御紹介、ありがとうございます。私は3期目の参加となります。私ども原子力のほうの産業を代表する団体ということで参加をさせていただいておりますけれども、核融合のほうも産業化、産業政策がこれから大事になってくるということでございますので、引き続き産業の観点から発言をさせていただければと思っております。よろしくお願いします。
 
【吉原専門官】ありがとうございました。続きまして、名古屋大学大学院工学研究科教授、大野哲靖委員、お願いいたします。
 
【大野委員】名古屋大学大学院工学研究科の大野と申します。4月からは名古屋大学低温プラズマ科学研究センターのセンター長も兼務しております。研究としては、上田先生の研究に近い研究を上田先生とともに行ってきているということもございます。前回から引き続き委員を務めさせていただきますけれども、皆様、よろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】ありがとうございました。続きまして、神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科教授、尾崎弘之委員、お願いいたします。
 
【尾崎委員】神戸大学の尾崎でございます。よろしくお願いいたします。私の専門は経営学で、スタートアップ経営、オープンイノベーションなどのテーマをずっと研究しております。今、核融合は基礎研究から事業化の段階に入ってきていることは、皆さん御承知のとおりですが、今までの大学発ベンチャー等の研究成果によって、この委員会に貢献したいと思います。内閣府の有識者会議にも参加いたしましたが、国家戦略が公表されて、今後、肉づけして具体論をどう作るかという非常に重要な年だと思っております。そういう観点でこの委員会にも参加したいと思っております。よろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】ありがとうございました。続きまして、フリージャーナリスト・キャスター、葛西賀子委員、お願いいたします。
 
【葛西委員】葛西でございます。今回、この第12期から初めて参加させていただきます。私は青森出身で、振り出しは、ふるさとの青森で、青森放送のアナウンサー、夕方のニュースキャスターでございまして、その時にキャスターをしながら、経済やエネルギーなどの記者を兼務して、この業界を取材させていただいたのがきっかけで、バックエンド、原子力、原子燃料サイクル、それから、青森県六ヶ所村にITER誘致の時もちょうど取材させていただいておりまして、それが御縁で今もエネルギー関連の番組や取材などをさせていただいております。青森放送、それから、大阪の朝日放送、フリーになって、もうかれこれ30年ぐらいでございます。近年は福島第一原発の事故で避難された皆さんがふるさとに帰還される際に皆様方の住民対話集会の司会、ファシリテーターという形で10年ほど前から、飯館村、川内村、浪江町、大熊町など福島県の浜通り地方を中心に50回以上、帰還事業に参加させていただいております。私、この核融合、フュージョンエネルギーの技術知見は全くございませんので、研究開発内容について広く一般に広報するアウトリーチ活動ですとか、関連施設の建設、それから、拡充などに伴ってステークホルダー間の対話の推進活動、そういった際に微力ですが、皆様に貢献できればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】ありがとうございました。続きまして、QST量子エネルギー部門ITERプロジェクト部NB加熱開発グループグループリーダー、柏木美恵子委員、お願いいたします。
 
【柏木委員】柏木と申します。私は、ITERとJT-60SAという2つの大きな核融合装置の加熱装置の開発研究と調達を担当しております。平成27年から約4年間、本日の議題にもあるAPなどを作成する際に原型炉開発総合戦略タスクフォース(以下、TF)委員として参加させていただいておりました。また、昨年度は内閣府の有識者会議の委員として、核融合国家戦略の骨子作りに参加させていただきました。その際は、私の観点としましては、いかにメーカーを取り込んで核融合産業を発展させていくかということや、やはり人材育成というのが、常日頃大事だと考えているところですので、その辺りにつきましてコメントさせていただきました。今回、初めてこちらの委員会に参加させていただくことになります。よろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】ありがとうございました。続きまして、株式会社価値総合研究所代表取締役会長、栗原美津枝委員でございますが、本日は御都合により15時頃から御出席される予定となっております。
 続きまして、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構名誉教授、小磯晴代委員、お願いいたします。
 
【小磯委員】小磯でございます。よろしくお願いいたします。私は、素粒子物理実験用の加速器の研究開発及び実用運転に長いこと関わっております。核融合を直接研究対象としたことはございませんが、核融合の研究開発につきましては、非常に大型のプロジェクトであること、長期にわたることなど大型の加速器の研究開発と相通じることもあると思います。第10期、第11期と続けまして3期目の委員として参加させていただくことになりました。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 
【吉原専門官】ありがとうございました。続きまして、大阪大学レーザー科学研究所長、兒玉了祐委員、お願いいたします。
 
【兒玉委員】御紹介いただきまして、ありがとうございます。大阪大学の兒玉です。私は、おそらくこの中で数少ないレーザー核融合の専門家として、これまで30年以上携わってきております。レーザー核融合というのは、皆様御存じのように昨年、核融合の点火という大きな成果もあり、それだけではなくてレーザーの汎用性が基で様々な産学連携が行われております。それから、学術研究も宇宙から文化財調査にわたる幅広い研究がでるというレーザーの汎用性を大いに活用いたしまして、幅広い研究をやっておりますので、産学含めて学際的なアプローチ、そういう側面からこの委員会で何らかの貢献ができればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】ありがとうございました。続きまして、一般社団法人日本電機工業会専務理事、髙本学委員でございますが、本日、御都合により御欠席でございます。
 続きまして、電気事業連合会原子力部長、中熊哲弘委員でございますが、本日、御都合により御欠席でございます。
 続きまして、九州大学応用力学研究所教授、花田和明委員、お願いいたします。
 
【花田委員】どうも御紹介いただきまして、ありがとうございます。九州大学の花田と申します。よろしくお願いいたします。今期から委員として参加させていただきます。私自身は学生時代からITERやJT-60SAと同じトカマク型の実験、大学ですので小型の装置ですけれども、それに関わっておりまして、現在は九州大学にございますトカマク型の少し変形した形の球状トカマクでプラズマに関する実験をさせていただいております。主には、いかにして長い時間プラズマを作るかという電流駆動という技術と、その時に生じるプラズマと壁の間の相互作用といったことをテーマに研究を続けております。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】ありがとうございました。続きまして、大学共同利用機関法人自然科学研究機構核融合科学研究所長、吉田善章委員、お願いいたします。
 
【吉田善章委員】吉田善章です。私は、2年前から核融合科学研究所(以下、NIFS)の所長を務めております。この委員会も2年前から参加させていただいています。核融合研究が新しいフェーズに入っていこうという中で、学術研究機関がどういう役割を果たしていくべきなのかということを考えるため、NIFSが音頭をとって核融合科学のパラダイム転換について学術界を挙げた議論を進めているところです。そういった議論が今後、大学等の研究を活発化させて、核融合科学を新しい時代に進化させることの役割を大学共同利用機関法人として果たしていければと考えております。この委員会でも、そのような観点からいろいろな議論をしていただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】ありがとうございました。続きまして、大阪公立大学人工光合成研究センター教授、吉田朋子委員、お願いいたします。
 
【吉田朋子委員】大阪公立大学人工光合成研究センターの吉田朋子と申します。よろしくお願いいたします。私の専門分野は、固体材料等様々なエネルギーの量子線との相互作用によって生まれる新しい化学反応や、その際の物質の構造変化や電子状態の変化などを主な研究としております。その観点から、固体化学からの視点で何かお役に立てることがあれば幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】ありがとうございました。本日は、現時点で全15名のうち、12名の委員に御出席をいただいております。
 続きまして、事務局の紹介をさせていただきます。まず、文部科学省研究開発局研究開発戦略官の稲田剛毅でございます。
 
【稲田戦略官】稲田でございます。よろしくお願いします。
 
【吉原専門官】続きまして、補佐の髙橋佑也でございます。
 
【髙橋補佐】よろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】続きまして、専門職の髙木将仁です。
 
【髙木専門職】お願いします。
 
【吉原専門官】続きまして、係員の樋口優人です。
 
【樋口係員】よろしくお願いいたします。
 
【吉原専門官】最後に私、核融合科学専門官の吉原誉夫と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【稲田戦略官】これに加えまして研究開発局として林大臣官房審議官及び、先ほど御挨拶しました千原局長が本日は参加しておりますが、事務局は研究開発戦略官付において担当しておりますので、何か御不明な点がございましたら、事務局のほうまでお問合わせいただけるとありがたいと思っております。
 
【吉原専門官】続きまして、本日の配付資料でございます。議事次第の配付資料一覧に示しております資料1から9及び参考資料1から3が本日の配付資料となります。会議中はZoomの画面共有システムを使って事務局より資料を表示させていただきます。また、各委員におかれましては、御発言いただく際にはミュートを解除の上、画面の下にあります「手を挙げる」ボタンを押して発言いただきますようお願いいたします。
 なお、本日は議題5「第11期からの継続案件の検討について」におきまして御説明及び質疑対応のため、坂本瑞樹第11期TF委員にも御参加いただいておりますので、御承知おき願います。
 
【上田主査】ありがとうございました。それでは、これから議題1に入ります。この議題につきましては非公開とさせていただきますので、傍聴者の方は一度、御退室いただき、議題2が始まる頃に再度お戻りいただければと思います。議題2以降は全て公開でございます。議題2の開始は午後2時30分頃を予定しております。よろしくお願いいたします。
 
(議題1 非公開)
 
 
【上田主査】それでは、ここから公開の議題に入ります。議題2「TFの設置について」に入ります。TFにつきましては、当委員会の下に設置することになっており、APの改訂を含む第11期からの継続案件の検討や原型炉設計合同特別チームの活動や大学等が行う原型炉開発に向けた共同研究等についての助言、技術的な検討、あるいは助言を行っていただきたいと考えております。それでは、詳細につきまして事務局から説明をお願いいたします。
 
【吉原専門官】資料4を御覧ください。議題1で承認をいただきました本委員会運営規則第2条に基づき、TFを設置いたします。TFでは、先ほど御説明いたしましたとおり、こちらに示しております調査事項合計6点を調査内容といたしまして、設置期間を本日より令和7年2月14日までとさせていただきます。私からの説明は以上でございます。
 
【上田主査】ありがとうございました。ただいまの説明に対しまして御質問、御意見等ございましたら、よろしくお願いいたします。よろしいですか。それでは、第12期も引き続きTFを設置することといたします。TFの委員につきましては、後日、主査である私から指名させていただきますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、次の議題3「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略の策定を受けた検討課題について」に入ります。本年4月14日にフュージョンエネルギー・イノベーション戦略が決定されました。まずは本戦略の概要とこれを受けた今後の検討課題について、稲田戦略官から御説明をお願いします。よろしくお願いいたします。
 
【稲田戦略官】資料5-1を御覧ください。まず、核融合の国家戦略に関しましては、去年のこの委員会でもいろいろ議論させていただきましたけれども、今般、4月14日に取りまとめをいたしましたので、その内容について御説明をさせていただきます。
 一番大きく変わったのは表題であります。「核融合」という文言が「フュージョンエネルギー」という形に変わっているのが一番大きいところで、これは核融合というと、どうしても核分裂との対比で、その差異だけに注目が集まってしまうのですが、新エネルギーとして考えた時にフュージョンエネルギーというのは、例えば、水素エネルギーであるとか、太陽光発電であるとか、他のエネルギーソース等々と合わせた上でどういうふうにするかという議論をしなければいけないものです。それから、核融合と核分裂は、原理的に大きく異なりますので、核分裂と同じ視点でこれを理解しようと思うとなかなかその理解が追いつかないところもあります。このため、新しくフュージョンエネルギーという概念でくくった上で、しかしながら、人材やインフラなどについては、核分裂の知見を十分使っていくということは重要でありますので、その内容を記載し、また、国民の皆様に対してもフュージョンエネルギーとは一体何なのか、核融合とは何なのかということを十分説明しないと、これは夢のエネルギーですけれども、全くもって安全でクリーンなエネルギーいうわけでは決してないので、そういうところについてもきちんと説明をしていくということを念頭に置いて名前を変えております。
 資料上部にある四角で囲った3点が、この内容を要約しているところで、最初の「フュージョンエネルギーを新たな産業として捉え、構築されつつある世界のサプライチェーン競争に我が国も時機を逸せずに参入」とは何かというと、核融合発電というと、ややもすると発電の実現、これは今世紀の中盤ぐらいになると思っているのですが、その後どうするかというところに議論が集中しがちなのです。しかし、実際はそうではありません。例えば、施策やその研究開発においてもかなり巨額なプロジェクトでありますので、これを念頭に置いたサプライチェーンなり何なりというところもでき上がりつつあります。ITERにおいては、例えば、欧州においてそれに基づくサプライチェーンが構築されていて、あるいはこれからアメリカやイギリスにおいてベンチャーが何らかの研究開発をして、その実証を作るというのであれば、それにサプライチェーンができます。同様に我が国も実証炉を造るとなればできますし、他の国などもそうなるだろうというところでありますので、それを待たずして、今から競争が始まっていますよという問題意識で作っているところです。資料の緑色の箇所2点が、現在の我が国が世界に置かれている状況です。エネルギー安全保障の確保というのは非常に重要視されている中において、核融合に昔から携わっている方は非常になじみ深いと思うのですけれども、カーボンニュートラルであるとか、燃料がどこでも手に入るとか、あるいは燃料の供給が止まったら、直ちに止まるという安全性を持っているとか、あるいは環境保全性というのは、長期寿命の核廃棄物などが出ないという利点があること、何よりも核融合で一番大きいのは、今までどのような資源を持っているかがかなり重要なファクターになってきたのですが、先ほど申し上げたように資源の偏在化がないようなものを使いますので、資源ではなくて技術が重要であるというところがポイントとなっています。
 このようなバックグラウンドの下に諸外国においては、非常に大きな研究開発投資が始まっておりまして、特に民間における投資が大きくなっています。資料の右上に示された緑色の棒グラフはアメリカの投資なのですが、2021年には、一気に2,000億円ぐらい、為替レートによっては3,000億円ぐらいの資金が投入されているというように非常に盛り上がっている分野であります。
 これに対して、我が国としての戦略を作りまして、資料の中央部分に記載した内容を目指して大きく3つの柱を立てています。1つは産業の育成戦略です。もう一つが技術の開発戦略です。最後に、それを推進するための体制をどうするかという3つでございます。まず、産業の育成政策に関しましては、大きく分けて「見える」、「繋がる」、「育てる」の3つのキーワードでなっています。
 最初に「見える」というのは、核融合というものは非常に大きなシステムを作るものです。したがいまして、技術を持っている人はあちこちにいて、それが散らばっているのですが、持っている人も、その技術を持っているかどうかはよく分からない状況です。例えば、計測器のメッキ、あるいは各種の配線をどのように設置するのか、物と物を繋げる溶接はどうするか、こういう技術は中小企業でもたくさん持っています。ところが、それが核融合の技術であるとは認識していませんし、どのタイミングでどのぐらい参入できるか、あるいはその市場をどういうふうに育てていくのかというところが見えないと、なかなかその産業に参加しようということになりません。したがいまして、いつまでに何が必要で、どのようなことが行われるのかということを可視化するため、技術マップ及び産業マップを作ってターゲットを明確化し、そのタイムスパンを適切にするために原型炉の早期実現と、それがいつできるのかというところを示していきます。これが見える化です。
 「繋がる」というのは、それが1個1個ばらばらでは話になりませんので、核融合産業協議会等を作ることによって繋いでいくということを示しています。
 「育てる」というのは、自動的に育っていくという世界でもありませんので、産業育成政策や事業を推進する時の一番のリスクというのは、後になってリスクが可視化されるということです。これは事業の参入の大きな障壁になります。特にこのようなエネルギー産業においては、安全規制や、その他の規制などがどのようになるのかが見えてこないと、なかなか参入できないというところがありますので、この辺りをきちんとやるということです。なお、それも我が国独自というよりも、世界中のスタンダードで作っていくことが重要でありますので、その国際的な議論を行っていくということが「育てる」の内容です。
 技術の開発戦略に関しては、資料の右肩「フュージョンテクノロジーの開発戦略」に書いてありますが、下から4点に関しては、今まで委員会でしっかり議論していただいたことが一番実用化に近いところであって重要ですので、それをしっかりやっていくということです。ITER計画、BA活動によりコアの技術を獲得し、原型炉を見据えた研究開発を加速します。フュージョンエネルギーに関する学術、これも基本中の基本ですから、しっかりやっていきます。あるいは原型炉の開発については、どういうことを具体的にやって、どのように筋書きを書いていくかということを踏まえてAPをきちんと作っていくということを書いています。加えて、今般、新しくできたのがゲームチェンジャーとなり得る小型化・高度化等の独創的な研究開発の支援の強化です。というのは、核融合に関しては、かなり早期に選択と集中が進んでおりまして、トカマク型が原型炉に対して最も適切であるということで、研究開発をこれに注力しておりますが、兒玉先生の先ほどの御挨拶にありましたように、他の技術あるいはトカマク型を使うというのは、グリッドに接続する中型、大型の炉を造るのであれば一番適切な技術ということなのですが、求めるものが変わってくると、その最適解というのは変わってくることがあります。したがいまして、この辺りについてどうするかという議論をきちんとして、今後、その支援を強化していくということを開発戦略として書いています。
 次に、資料下部の推進体制に関してですが、内閣府が中心となって、研究開発だけではなく、それの社会実装まで含めて考えますので、オールジャパンで行いますよという話です。それから、原型炉の開発に向けては、どこの機関が中心となるのかは極めて重要です。これは技術と蓄積を考えたQSTを中心とすることと今回しているのですが、それを中核にアカデミアと民間を結集して技術を開発する、フュージョンテクノロジー・イノベーション拠点を設立し、それを強化していきます。原型炉開発に向けて、非常に長い期間を要しますので、キャリアパスの明確化、人材育成をどうするかということの2つです。
 最後に、このような長期のものは、国民からの理解を得ることが非常に重要になりますので、国民の理解を得るためのアウトリーチ活動を実施するということを推進体制の柱にします。この3つが合わさってフュージョンエネルギーの実用化に向けて、我が国の持っている技術的優位性を活かした上で、市場の価値をつかむ産業化を進めていくということを念頭に置いています。戦略の本文は資料5-2にありますので、お時間がある時に、お目通しいただけるとありがたいと思います。
 それを踏まえてですが、資料5-2の中にはこの戦略における各項目の実施主体、すなわち、どの省庁で対応するかが書いてありますが、文部科学省で対応するところに関しましては、当然、そのバックグラウンドとしては委員会の議論が重要でありますので、その部分について抜き出したものが資料6です。
 1つは令和6年度概算要求に係る事項として、原型炉開発研究や人材育成プログラム、技術イノベーション拠点、アウトリーチヘッドクォーターをどうするか検討することとなっていますので、概算要求に反映させることを念頭に6月までにTFで議論した上で、7月の委員会において事務局より報告するということを考えています。2番目が先ほど申し上げました核融合の未来の可能性を拓くイノベーションへの挑戦的な研究の支援の在り方です。これに関しては、直ちにやるというよりも、きちんと議論をした上で、学術的な議論等々も必要だと思いますので、研究開発局長の下に検討会を設置して検討した上で、11月の委員会において、その結果について議論いただき、その内容について決めていくことになります。これは例えば、内閣府の行っているムーンショットの予算等々も念頭に置いているのですが、この準備というところも、これに含めて議論をさせていただこうと思っております。3番目が原型炉研究開発の主体に関してです。まずは実施体制をQSTを中核に作るということはこの戦略にも書いてあるのですが、では、具体的にどのような体制で、いつまでに何をするかというようなところの線引き等に関しては、これから事務方として検討いたしますので、それが適切であるかどうかについては、この今年度の委員会において議論を開始していただけるとありがたいと思います。以上です。
 
【上田主査】ありがとうございました。非常に多岐に様々な観点から検討されております。さらに、その上でこの委員会でもいろいろなことを検討する必要が生じていると考えてございます。それでは、まず、ただいまの御説明に対しまして御質問、あるいは御意見等ございましたら、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。柏木委員、よろしくお願いいたします。
 
【柏木委員】ありがとうございます。質問としましては、この資料6の1.の概算要求に向けてTFで議論するというところにつきまして、今回の国家戦略の中では文部科学省が担当する項目が多数あるかと思うのですけれども、その辺の強弱や優先順位についてはどの段階で検討されることになるのでしょうか。
 
【上田主査】では、よろしくお願いします。
 
【稲田戦略官】その内容に関しては、基本的には今年度の最後の委員会において議論いただくことを考えております。これは次の議題の資料7について御説明させていただこうと思っている内容でありますけれども、今年の概算要求から直ちに何をやらなければいけないのか明示化されていて、早く概算要求してくださいという事項がいくつかあります。これが1.に書いている事項でありまして、この部分については早急に議論を進めた上で実施していきます。一方、例えば体制をどうするかであるとか、原型炉の研究開発をどうしていくかといった話というのは、R&Dの進め方によって、いつのタイミングでどう予算がかかってくるかが、まだ現時点では見えていないようなところがありあます。そういうものに関しては、その議論が進んだ後で今年度の最後の委員会において、その内容について確認し、概算要求は、基本的には前年度に要求することになりますので、その都度議論をいただくことになろうかとは思います。
 
【上田主査】よろしいでしょうか。
 
【柏木委員】ありがとうございました。おそらく、実施体制のところで当面QSTが中心になるようなことが書かれていたかと思うので、そこが強化されないと、実質的・実効的なところが難しいのかなという感想です。
 
【稲田戦略官】御指摘のとおりです。一方において、予算をつけて、そのついた予算をどう使うかというのは、おかしいですよね。本来、何々をやるから、それのために必要な予算はこういうものであってと要求するのが概算要求でございますので、その意味においては何をやるかという中身の議論が先行し、それに対して予算要求を適切にしていくというところになろうかと思います。
 
【柏木委員】はい。ありがとうございました。
 
【上田主査】ありがとうございます。他に、いかがでしょうか。植竹委員、よろしくお願いいたします。
 
【植竹委員】ありがとうございます。今の御質問と同じところなのですけれども、この資料5-2のフュージョンエネルギー・イノベーション戦略の10ページに関連して、2つ目のポツ、この「原型炉の開発に向けてQSTが中心に」という、今、御指摘のあった段落ですけれども、ここに書かれているように4行目の「ただし」以降、「原型炉開発の主体のいない現状においては、まずはQSTを中心としつつ、民間企業も参加する実施体制を構築する」という、この関連で先ほど戦略官から御説明のあった資料6の3.の課題につながっていると理解しているのですけれども、先ほどの資料6の3.の文章をもう1回御覧いただくと、ここは「原型炉研究開発の主体」と書いてあって、戦略本体とは日本語が違います。フュージョン戦略では「原型炉開発の主体」となっていて、「研究」という言葉は使われていないのですけれども、原型炉は実証炉でもあるということで、開発をして産業にバトンタッチしていくというところが肝だというふうに前回、この委員会でも議論があったところですけれども、研究開発の主体なのか、開発の主体なのかで意味が一緒だということなのかもしれませんけれども、言葉はそろえたほうがよいかと思います。
 
【上田主査】ありがとうございます。少し確かに言葉が不一致なところが気になりますが、事務局はいかがでしょうか。
 
【稲田戦略官】基本的におっしゃるとおり、開発の主体をどういうふうにするかという議論であります。開発の主体がどの法人になるかというところは、法人格をどうするかという議論等がありますので、基本的には、開発主体をどうするかという議論を開始するという内容でございます。
 
【上田主査】ということは、資料6の3.は原型炉開発の主体というような意味合いでしょうか。
 
【稲田戦略官】そうですね。開発の主体であり、その前段階として、もちろん、R&Dも並行して行った上で、その次に建設になってきますので、当面の間は研究開発でやりますが、それは開発の主体をどうするかの議論の一部です。
 
【上田主査】ということで、植竹委員、よろしいでしょうか。
 
【植竹委員】はい。今の御説明であれば、繋がるのかなと思います。要は、この資料5-2の10ページのところで、今御紹介した段落のことをここの資料6の3.は言っているのだという共通の理解ができたと思います。ありがとうございました。
 
【上田主査】ありがとうございます。他にいかがでしょうか。今後、様々なところでこれらの課題でこの委員会で取り扱っていくに当たって、御意見、御質問の機会はあるかと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、これと関連いたしますが、次に議題4「第12期委員会における検討課題について」に入りたいと思います。それでは、稲田戦略官に御説明をお願いいたしたいと思います。
 
【稲田戦略官】それでは、御説明させていただきます。第12期の本委員会の検討課題です。本日の議題に関しては、こちらに書いてあるとおりでありますが、今後、この5月、6月においてTFを2回ぐらい検討して、ロードマップ、第2回中間CRの実施方針、時期等々の検討をするということと、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略の策定を受けた概算要求の検討をするということを考えています。
 前段に関しましては、現在、第2回中間CRについては、ITERのファーストプラズマと連動していまして、それが終わってから1、2年ぐらいでやるということになっているのですが、現在、御承知のとおり、ITERのファーストプラズマを含む部分に関して、ベースラインの見直しの議論が進んでいます。その検討状況によっては、ファーストプラズマの時期が後ろ倒しになる可能性があるので、その時に第2回中間CRは、そのファーストプラズマの後ろ倒しに基づいて、単純に後ろに回してしまうのか、それとも第2回中間CRで、必要な技術というのはどういうものであって、ファーストプラズマは、それぐらいになると、工学的な設計なり形になっているというところなのですけれども、より精密に議論した時に、ここの部分ができていればやるべきなのかとかいうスケジュール感を御議論いただくことを内容とします。
 2番目の概算要求に向けて検討しなければいけないものについては、先ほど例示した点を事務局としては洗い出しているところですが、そもそもそれでいいのかも含めまして、専門家であるTFの皆様方に御議論いただき、概算要求の検討に繋げるということをここに書いているところです。7月においては、親委員会である本委員会において概算要求の検討を行うとともに、11月の委員会においては、その並行して議論されたもの、様々されているフュージョンエネルギー・イノベーション戦略を受けた対応の検討、そして、本委員会は研究計画・評価分科会の下に設置されていますので、分野別研究開発プランの中間評価の実施は、当初の予定から何年か先送りされています。令和6年1月に関しましては、11月の委員会で議論を深めた上で、原型炉開発の主体の検討について着手します。また、さらに、第2回中間CRについて技術的検討を踏まえた上で議論をいただくということを考えています。以上であります。
 
【上田主査】ありがとうございました。ただいまの説明に対しまして御質問、御意見等ございましたら、よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、ただいま御説明がありましたように、第2回中間CRの実施方針・実施時期・方法等の検討につきましては、TFで御議論いただき、本年度最後の委員会で御報告をお願いいたしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。また、フュージョンエネルギー・イノベーション戦略の策定を受けての概算要求等の対応についてもTFで御議論いただきますようにお願い申し上げます。本議題については、以上でございます。
 それでは、続きまして議題5「第11期からの継続案件の検討について」に入りたいと思います。第11期に開催された最後の委員会では、TF主査から原型炉開発に向けたAP、CR項目、ロードマップの改訂の方向性についての検討結果を報告いただき、それに基づいての意見交換が行われました。これを受けまして、本日は今後の対応について検討を行いたいと思います。最初に、APの改訂案の検討を行いたいと思います。APの改訂案につきましては、資料8を御参照願います。11期最後の委員会で吉田善章委員よりAPの改訂案について御意見をいただいております。本日は、まず吉田善章委員から改善をしたほうがよいと考える点について御説明をいただき、その御意見についての意見交換を行いたいと考えております。吉田善章委員、御説明、よろしくお願いいたします。
 
【吉田善章委員】ありがとうございます。前回の委員会でも指摘させていただいたことを少しまとめて述べさせていただきたいと思います。このAP、それから、ロードマップが研究の進展、また、世界的な情勢の変化の中で、これからどういうふうにアップデート、さらにアップグレードされていくべきかという観点からの意見です。まず、AP、いわゆる行動計画というものはどういうものなのかということですけれども、これは特定の目標を達成するために、まず第1にやるべきタスク、それから、第2にその担当者、それから、実施体制と必要なサポートと、それから、第3に項目ごとのスケジュール等、実現可能性ということを整理したものであって、そのAPに基づいて目的を達成する実現可能性が客観的に評価できる、そういう資料でないといけないと思います。今の場合、目標は、いわゆるJA-DEMO、すなわち国家プロジェクトで実施すべき原型炉開発であります。その実現を、2050年くらいを目途として立案してみるということだと理解しています。このような前提から見ますと、ここに提案されているものの中には、必ずやらなくてはならないことと同時に、目標達成との関係が曖昧なものまでが同じ水準で羅列されていると感じます。そのために責任が明確な行動計画と見えないのではないかという危惧を持っています。我が国として勝てる作戦のためのシャープな、すなわち選択と集中を強く意識したAPにすべきではないか。これからの核融合研究の急速な進展ということを考えるならば、ぜひそういうふうなAPにしていくべきではないかと思います。他方で、別の観点から、核融合研究全体のグランドプランのようなものも作成してはどうかと思います。先ほど資料6に今後検討すべき3つの課題の中にも述べられていましたけれども、これからイノベーションを進めていく必要があるわけで、そのような挑戦については、異なる時間スケール、あるいは異なるステークホルダーごとに物事の価値は変わってきます。したがって、それらを総合する複層的な戦略を持つということも必要であると思います。言うまでもなく、原型炉開発だけが核融合研究だという考え方を払拭しないといけないわけで、そのためにも原型炉APの目標は絞り込む。総花的なものにしないということが大事なのだと思います。2050年を目指す原型炉のAPに記載されていないからといって、研究の価値がないというわけではないわけで、そのような誤解を除くような配慮も必要なのではないかと思います。
 以上の観点に基づいて具体的な修正として提案したいことが2点あります。まず第1に、当面の対応として、資料8に出ているAPの改訂案につきまして、14のヘリカル方式の節があるわけですけれども、これはNIFSの旧体制におけるヘリカル型定常核融合炉に向けたプロジェクトの研究計画を述べたものになっています。これは先ほど述べましたように、デファクトスタンダードとしてトカマク型の原型炉を開発するというシャープな目標の下では、このAPからは削除すべきだと考えています。他方、原型炉開発に必須の項目のうちで、NIFSで研究開発すべき事項と「ヘリカル型の実験装置」を用いて行う研究もありますが、それらはこの14節以外のところで記載されているので、それをさらに具体化して記述していくという修正が必要かと思います。それからもう一つ、先ほど述べましたように、今後の中長期的な検討課題として、このAPの目標を絞り込むということと同時に、逆に今度は包括的・複層的な学術戦略の策定ということを並行的に検討するというふうにして進めてはどうかと考えます。以上です。
 
【上田主査】ありがとうございました。今、吉田善章委員から御説明いただいたポイントは、1つはAP全体の記載方針、具体的に言うとAPに関わるコアの部分を絞り込むということと同時に、包括的な戦略、学術戦略をまとめるという、こういう形にしてはどうかということ、そしてもう1つは、もう少し具体的にヘリカル方式の部分を削除してはどうかという、この2点に関する御意見と理解をしております。それでは、まず、委員の皆様から、この御説明に対しまして御質問、あるいは御意見等ございましたら、よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。ただいまいただいた御意見は、非常に重要な御意見と理解をしています。ただ、APの改訂、記載見直し、あるいは目標絞り込み、あるいはグランドプランのような、もう少し別のまとめを同時に立ち上げるという、内容につきましては以下のように考えます。この後でロードマップの改訂に関する話が出てきますが、その基になっている1つの要因として、ITERのベースラインの見直し等、社会情勢、核融合開発を取り巻く社会情勢が今少しずつ変わっているということがあります。それをロードマップに取り込んで改訂するということになりますので、APの改訂に関してもこのような社会情勢を踏まえてある程度時間をかけて行うべきと考えます。当然、吉田善章委員から今御提案いただいた内容も、それに沿って進めていくものでございますので、すぐに何か対応できるというものではなく、ある程度時間をかけて検討していかなければならないということでございます。したがって、APの全体の記載方針の変更等の部分につきましては、今後のそのような大きな検討課題の中で少しずつ検討をしていきますので、今ここで具体的なアクションについては提案をしないということにさせていただきたいと思います。一方で、項目14のヘリカル方式の項目の見直し、具体的に言うと削除という御提案でございますが、これにつきましてはAPを、もともと詳細に御検討いただきましたのはTFですので、一度TFで御検討いただいて結論を出していただきたいと考えております。ですので、これをTFに持ち帰って御議論をお願いしたいと思います。一応、時期といたしましては、秋頃までと考えておりますが、直近で5月、6月にTFが開催されることになってございますので、そこの議論の中に加えていただければと考えてございます。そのようなことでよろしいでしょうか。TFで御検討いただくということでお願いできれば幸いでございます。
 それでは、次にCR項目の検討に移りたいと思います。CR項目の改善の方向性につきましては、第11期のTFで御検討いただいております。TFでの検討につきましては、参考資料1のとおり検討いただきまして、このような意見をいただいております。本日は、このTFでの検討を踏まえて、第11期TF委員の坂本委員より改訂案のたたき台について御説明をいただく予定でございます。それでは、坂本委員、よろしくお願いいたします。
 
【坂本TF委員】筑波大学の坂本です。よろしくお願いします。CR項目の改訂案のたたき台について御説明します。第11期TFでの検討の結果、CR項目の改善の方向性の提案として、参考資料1に書かれている内容を前回の委員会でお伝えいたしました。参考資料1の主な点は1ポツと2ポツでして、核融合発電の実施時期の前倒しに対応した核融合中性子源の取扱いの記載にすべきこと。この前倒しにより見えなくなる核融合炉の定常化のための材料開発のCR項目について、「原型炉段階への移行判断」の項目を見直すこと。「ITERによる統合化技術の確立」の項目について、現在書かれている2つの記述をまとめて簡潔明瞭な文章にすることということです。そこで、改訂案のたたき台として、こちらの資料9にありますように、3の「ITERによる統合化技術の確立」の第2回中間CRまでの達成目標として、「ITER運転開始に必要なITERの機器製作・据付・調整に関わる統合化技術の取得」という1つの文章にまとめました。この意図は、第2回中間CRの段階においては、ITERの運転開始というよりは、ITERから原型炉開発のための統合化技術を取得することができたかどうかということが次に進むための重要なマイルストーンであるからです。
 また、4の「原型炉に関わる材料開発」に関しては、第2回中間CRまでの達成目標の1ポツで特出しされていた「80dpa」を削除しています。この「80dpa」の意味は、定常核融合において発電ブランケットの交換の目安となる値です。第11期において発電時期の前倒しという案を御提案した際に、第1期と第2期に分けて、第1期においては低出力、パルス運転による早期発電実証のための規格基準を取得するということでありまして、それに必要な照射量、すなわち、80dpaよりも低い値のデータを統計的なデータセットとして取得することが重要であるということで、そのようなデータを取得して重照射データの検証をすることが必要という観点からの改訂案となっております。4の3ポツ目の「核融合中性子源の建設」に関しましては、現在、国内での建設、核融合中性子源の建設が見通せていない状況も勘案して、第2回中間CRまでの段階としては、建設開始ということではなく、建設に向けた研究開発が実施されているかどうかということが重要との判断です。ただし、原型炉段階の移行判断を行う際には、核融合中性子源の建設が開始されていることが必要であることから、第2回中間CRまでの達成目標に中性子源の建設開始と書いてあったものを原型炉段階への移行判断に移しております。そして、この原型炉段階への移行判断のフェーズにおいては、核融合中性子源の建設が開始されていて、その中性子源を用いて照射データ取得計画が作成されていることによって移行判断ができるという考えでこのように改訂案のたたき台を作りました。以上でございます。
 
【上田主査】ありがとうございました。それでは、ただいまの説明に対しまして御意見、あるいは御質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。前回、昨年度の最後の委員会でこのように変更したらよいのではないかという御提案に基づいて変更がなされているということかと思いますが、よろしいでしょうか。植竹委員、よろしくお願いいたします。
 
【植竹委員】ありがとうございます。今の資料9の3と4の御説明には全く異議ないのですけれども、気づきの点で、資料9の6、右端の「原型炉段階への移行判断」において、ここに社会受容性と実用化段階における経済性の見通しを得て設計を完了していることがクライテリアになっているわけですけれども、先ほど御説明のあった資料5-2 フュージョンエネルギー・イノベーション戦略の4ページと5ページのところを見ていただけますでしょうか。4ページの一番下のところから5ページにかけて、ここにフュージョンエネルギーの社会的位置づけを明確にするということで、内閣府の仕事になっているわけなのですけれども、研究開発の延長でフュージョンエネルギーの社会実装を捉えるのではなく、将来からバックキャストとしてフュージョンエネルギーの位置づけを明確にするため、関係省庁と協力しながら社会的・経済的有用性やコスト目標の検討を行うとあります。これはまさしく、資料9のCR項目の中の6の経済性の見通しを得る、もしくは社会的受容性を得るというところのクライテリアの話を戦略側で書いてありまして、しかも、そのクライテリアを決めるのは内閣府ということになっていますので、文部科学省サイドだけでこの6の原型炉移行の判断ができないということになってしまっていると思います。この経済性の見通しというのは、先ほどのコスト目標の検討と直結していますので、ここをどうさばくかが今少し気づいた課題です。いかがでしょうか。
 
【上田主査】ありがとうございます。非常に重要な御指摘かと思います。特に今回の内閣府での有識者会議の御検討の結果と我々、この文部科学省の委員会での対応というのをどういうふうに進めるかということについて、確かにここは今、植竹委員より御指摘がありましたように、我々だけで全て判断できる話ではないと考えますが、この辺のところ、事務局から何か御意見ございますか。
 
【稲田戦略官】これは明確でして、内閣府において、この社会実装、実用化を考えることになります。社会実装、実用化を考えた時にどのぐらいの目標でなければならないだろうという議論を今後していくということが書いてあります。当然、文部科学省というのは、社会情勢を踏まえて適切なものが、満たしているかどうかというのを、それに基づいて判断するということになりますので、ここで言う社会的受容性による経済性の見通しというのは、その見通し、すなわち何かというのは、コスト目標が、その段階で達成できるのではなくて、実用段階で達成できるという技術的な先見性というか、見通しが立つかどうかは踏まえられますが、基本的には内閣府の求めているものに対して、その技術性などがきちんと達しているかどうかをこの委員会では見ていくことになろうかと思っております。内閣府が目標を決めて、その目標に対して文部科学省が、それを達成できるのか、あるいは現在は達成できないとしても、この開発をしたことでその次の段階では達成できるので、これは建設することが適切であるという技術的な検討ができるかのいずれかではないと、いわゆる経済的な見通しを得てというところが難しいということですね。
 
【上田主査】分かりました。ということで、この部分の書きぶりは、このままでいいのではないかという御指摘かと思いますが、植竹委員、いかがでしょうか。
 
【植竹委員】そういうことかと思っておりましたけれども、文章を変えなくても今のお話は読めるということでよろしいでしょうか。内閣府の示す目標にリンクを張っておかなくてよろしいでしょうか。文部科学省、こちらの経済的見通しという言葉の形容詞として。
 
【稲田戦略官】両者とも技術的、専門的、あるいは経済の専門家の議論を踏まえて検討いただくものなので、この目標が大きく離れるということはあまり想定しておりません。なので、特段、リンクは張っていませんが、もちろんこの目標なり何なりを見直していくというのは、今回も改訂しているように、第2回中間CRの時も見直しますし、その後も見直していくということでありますので、それらより前であっても、よりこう直したほうがいいというところがありましたら、当然直すことを躊躇するものではないと思います。ただし、我々として重要なのは、内閣府も検討するのですが、文部科学省としても、委員会は一番専門性の高い方々が集まって議論している委員会でありますので、この委員会としてどういう目標を立てるのが適切なのか独自に検討しておくことは必要なのではないかとは思っております。
 
【植竹委員】今の御指摘、大変重要だと思っていまして、内閣府若しくは経済産業省かもしれませんけれども、要は、社会実装ということは電気料金から回収をして成り立たせる必要があるわけです。そのためのターゲットコストみたいなものがあって、そこは文部科学省としてはなかなか見えないところだと思うのですけれども、そちらからバックキャストしてくる目標と研究開発サイドから積み上げてボトムアップしていくコスト目標とが乖離していると社会実装できないという答えになってしまうので、そこのことを今、戦略官はおっしゃったのだと思います。研究開発サイドから積み上げた時の経済性の見通しと社会実装するための必要なコストターゲットとのマッチングが必要だという議論を今しているのだと理解していまして、この話が皆さんの共通理解になっていれば、私はよいと思います。
 
【上田主査】ありがとうございます。基本的には、そういうことではないかと思いますが、ただ、戦略官も少し言われましたように、これは移行判断の際の基準、項目ということですので、場合によっては、その辺の状況を見ながら、今回も第1回中間CRを終わった時期で、第2回中間CRの項目を改訂したように、何らかの見直しをする可能性はございますが、現時点では、これで大きな問題はないのではないかと考えてよいかと思いました。本件も含めまして、他に何か御意見・御質問はございますでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、このCR項目の改訂案については、御了解いただいたということにさせていただきます。TFにおいては、この達成目標に基づいた第2回中間CRについて、その実施方針、実施時期及び具体的な実施方法等について御検討いただくようお願いいたします。 そして、本年度最後の委員会で検討結果を御報告いただけますと幸いでございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、最後になりますが、「ロードマップ」改訂案の検討に移りたいと思います。現行のロードマップは参考資料2にお示ししております。ロードマップにつきましては、昨年、TFで改訂の方向性について御検討いただいたところでございます。今後、改訂のタイミングをいつにするかということについては、国内外の状況を踏まえて判断しなければいけないと考えております。特にこのロードマップの中で重要なポイントにITER計画、例えば2035年移行判断のところにITERのDT燃焼着火、燃焼制御・工学試験という項目が取り込まれておりますが、ここら辺のところが、当然、ITERで何か見直しがあるならば見直す必要がありますし、その辺の情勢を踏まえてロードマップを適切に必要ならば見直すという必要があります。ですので、今現在、ITERではベースラインの見直しが行われている状況でございますので、このベースラインの検討が終わってITERが今後どのようにITER計画を進めていくかという方向性が見えてからでないと、ロードマップを改訂するのは難しいと考えますので、当面、ロードマップの改訂は保留とさせていただきたいと思います。この方針につきまして、委員の皆様の御意見をお伺いできればと思っております。何か御意見ございましたら、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。尾崎委員、よろしくお願いいたします。
 
【尾崎委員】意見というよりは質問ですが、原型炉をITERに紐づけて考えなければならないのは御指摘のとおりで、同時に原型炉デザインの前倒しの議論は行われましたが、具体的な決定はされていないと理解しています。では、どのタイミングで前倒しする、しないということを決めるかがポイントです。文部科学省で決めるのか、内閣府で決めるのかという問題もありますが、これはどう理解するべきでしょうか。
 
【上田主査】まず、私の理解から述べますと、基本的にはやはりITERに依存しているところがある以上、ITERのベースラインがはっきりしない段階では、その前倒しするか、しないかというところも決定までは至らないのかなと理解をしております。事務局のほうから何か御意見ございますか。
 
【稲田戦略官】基本的にはおっしゃるとおりだと思いますので、それは大きく分けて2つの段階にチェックポイントがありまして、1つは2035年の第4段階である原型炉の建設に向けての移行判断、ここに関して完全にITERができていないと何ともしようがないという話でありますので、ここについてはITERの状況と完全に連動します。一方、その前の段階に中間CR、今、第2回中間CRと言っている段階があるのですが、ここでは、次の段階、すなわち、工学設計や実規模技術開発に移行するのかというところで、技術的判断をすることになると思います。この判断においては、少なくともITERの状況がどうなっているかも踏まえまして、今後どのようにこの工学設計なり何なりをしていくかについて議論が行われますので、少なくとも前倒しをするか、しないのか、しないのだったらどういうものになるのかについては、この第2回中間CRまでに技術的な検討を行い、その結果を受けて、我々としての政策判断をしていくことになろうかと理解しています。
 
【上田主査】ありがとうございます。尾崎委員、いかがでしょうか。
 
【尾崎委員】はい。承知しました。
 
【上田主査】ありがとうございます。それでは、柏木委員、よろしくお願いいたします。
 
【柏木委員】ありがとうございます。先ほど説明を受けましたCR項目の改訂案のところで、資料9の3のところは「ITERの運転開始」ではなくて、「ITERの運転開始に必要な」というふうに文言が変わったところがあったかと思います。先ほどのロードマップは分かりやすいように2025年のITER運転でCRが行われることになっているのですけれども、先ほどの文言と照らし合わせると、各技術があるレベルに達していたらいい、つまりその第2回中間CRの項目の「運転開始に必要な技術」という項目に置き換わっていくのかなと思いました。ただ、このロードマップの改訂はITERのベースライン改訂を待ってからでもいいのではないかというのは、そのとおりかなと思いました。質問としては、先ほどの資料9と本当は紐づいているのではないのかなと思った次第です。
 
【上田主査】今、柏木委員から御指摘がありましたことはそのとおりで、本来は紐づいているものですので、このCR項目の改訂というのは、基本的にITERのファーストプラズマと第2回中間CRを同期させないという改訂です。今御指摘のように厳密に言えば、もう既にロードマップに少し沿わない形で進めているということをある意味決めてしまっているところはあるので、その点、その後にロードマップを改訂するとなると、その部分については後からの改訂ということになってしまうので、少し時間的におかしな感じがするところがあるのは、確かにそのとおりではありますが、御指摘のとおり、プラズマ点火という部分は、第2回中間CRの項目のところで、重視をしないという方向で行きたいということであります。
 
【稲田戦略官】事務局から少し補足、よろしいでしょうか。
 
【上田主査】はい。お願いします。
 
【稲田戦略官】このロードマップに関しましては、まさにTFにおいて、この5月、6月に議論いただく第2回中間CRをどのタイミングにして、何を確認するのかというところに紐づけられているというふうに考えております。現時点においては、その議論が行われていませんので、前のものをそのまま残しておりますが、先ほどお示ししましたようにTFにおいて第2回中間CRの実施方法について検討いただいた後、これを踏まえて本委員会において、ここの改訂をするということは当然あり得ると思っています。一方で重要なのは、これはあくまでも原型炉研究開発のロードマップであって、原型炉をどう設計するかの観点から見た時に、ITERがどうするかという話であって、ITERがどうなっているのでロードマップを変えるという、そういう世界ではございません。ロードマップについては原型炉を開発する上でどういうふうに考えるかというところでTFにおいて御議論いただけるものと理解しております。以上です。
 
【上田主査】ありがとうございます。柏木委員、よろしいでしょうか。
 
【柏木委員】ありがとうございます。
 
【上田主査】他に御質問、御意見等ございましたら、よろしくお願いいたします。それでは、特に御意見もないということですので、ロードマップの改訂は保留するということで、いつどうするということまでは、ここでは何も決めません。とりあえず保留するということを、ここでは決定をさせていただきます。
 それでは、本日用意いたしました議題は以上でございますが、特に委員の皆様から御報告、あるいは審議すべき案件がございましたら、よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、特にないということのようでございますので、本日の委員会は、これで閉会とさせていただきます。御多忙の中、御出席いただき、誠にありがとうございました。
 
―― 了 ――
 

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