核融合科学技術委員会(第32回)議事録

1.日時

令和5年2月1日(水曜日)14時00分~16時00分

2.開催方法

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

(1)第31回ITER理事会の開催結果等について
(2)原型炉開発総合戦略タスクフォースにおける検討を受けた今後の核融合科学技術委員会の対応について
(3)核融合戦略骨子案について
(4)核融合関係令和5年度政府予算案について

4.出席者

核融合科学技術委員会

上田良夫主査、大野哲靖主査代理、五十嵐道子委員、池田佳隆委員、植竹明人委員、尾崎弘之委員、岸本泰明委員、栗原美津枝委員、小磯晴代委員、兒玉了祐委員、高梨千賀子委員、髙本学委員、吉田善章委員

原型炉開発総合戦略タスクフォース

笠田竜太主査、東島智委員

文部科学省

稲田剛毅研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、髙橋佑也課長補佐、吉原誉夫核融合科学専門官、長壁正樹科学官、梶田信学術調査官

5.議事録

【上田主査】時間になりましたので、核融合科学技術委員会(以下、委員会)を始めたいと思います。本日は御多忙のところ御参加いただき、誠にありがとうございます。今回も新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、オンラインにて開催をさせていただきます。司会進行につきましては、本委員会主査の私、上田が担当させていただきます。
 それでは、議事に入る前に、事務局より、定足数及び配付資料の確認をお願いします。
【吉原専門官】核融合科学専門官の吉原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まずは、委員の御出欠についてでございます。本日の御欠席は中熊哲弘委員、吉田朋子委員の2名、そして、栗原美津枝委員が14時30分目途に途中参加される予定でございます。全15名のうち12名の委員に出席いただいております。過半数を超えておりますので、定足数を満たしていることを御報告申し上げます。
 続きまして、本日の配付資料でございます。議事次第にお示しさせていただいております資料1から11及び参考資料1から3が本日の資料となります。会議中は、Zoomの画面共有システムを使って、事務局より資料を表示させていただきます。また、各委員におかれましては、発言をいただく際にはミュートを解除の上、画面の下の手を挙げるボタンを押して発言いただきますようお願いいたします。
 なお、今回は、議題2「原型炉開発総合戦略タスクフォース(以下、TF)における検討を受けた今後の委員会の対応について」におきまして、御説明及び質疑対応のため、笠田竜太TF主査、東島智TF委員にも参加いただいておりますので、御承知おき願います。事務局からは以上でございます。
【上田主査】本委員会は、委員会運営規則に基づき、議事を公開いたします。御発言は議事録に掲載され、ホームページ等で公開されます。
 それでは、議題1「第31回ITER理事会の開催結果等について」に入ります。事務局の稲田戦略官から御説明よろしくお願いいたします。
【稲田戦略官】資料1と2を御覧ください。2022年11月16日から17日にITER理事会が開かれました。本理事会においては、2022年10月17日にピエトロ・バラバスキ氏が機構長として着任されたことを歓迎するとともに、それまで暫定機構長を務められてきた多田副機構長に対して謝意を表明しました。
 資料1には記載がございませんが、この理事会に先立ち、2名の副機構長を選考するというプロセスが進行してございます。資料2でございますが、副機構長の選考の結果、量子科学技術研究開発機構(以下、QST)那珂研究所の鎌田副所長が科学技術担当として、また、ITER理事会の議長を務められた中国のルオ氏が庶務管理担当の副機構長として着任するということが決まっておりますので、理事会の結果と併せて御報告いたします。
 理事会における進捗状況についての報告内容でございます。1つは、ITER建設活動の進捗に関しての報告がございました。建設の進捗率については、77.5%(2022年9月末現在)であるということで、プラスの側面としては、世界初の機器の製作・搬入が進捗しています。例えば日本では、一番大きな構造物で最も製作が困難だと言われていたトロイダル磁場コイルの9基のうち7基目が検査後、ITER機構に向けて輸送が開始されます。主要な機器において、施設の建屋の建設活動が進捗されたことが報告されています。
 一方、この進捗率77.5%は、実は以前と比べると思ったより進んでいません。これが何かというと、その次の技術的挑戦とベースラインの更新というところでございます。ベースラインというのは日程やコストを規定する基本文書で、これを見直して遅れの影響を最小限にとどめ、なるべく早期のファーストプラズマ及びその運転を行うということです。2022年6月の段階で、コロナによる物流の混乱あるいはサプライチェーンの混乱等に基づいて計画の進捗に遅れが見られるということ、さらにその搬入済みの機器の不具合が幾つか発見されました。具体的には、真空容器のゆがみ及び熱遮蔽板の腐食が発見されました。大きな修理が必要であることが判明し、理事会として、直ちに対応する必要があることから、修理方針の策定後、速やかに必要な修理作業に取りかかることが指示されております。
 ただし、建設の遅れにどの程度影響があるのかというところに関しては、その各々の修理及び技術的な検討を行った結果、その詳細な日程及びコストの影響というものを評価し、ベースラインにそれを反映することで判明します。これは何かと申しますと、2点あります。
 1点目は単純に各々発見された不具合を積み上げていくと、かなりの遅れになりますが、よくよく検討すると、それは並行して修理を行うことができるタイプの不具合であるなど、適正化することです。
 もう1点は、もともとのベースラインの見直しの中で議論がされていたのですが、コロナ等における遅れが一定程度見られることは事実です。この建設の遅れをどこかで取り返さなければならないという問題意識を持って、その運転開始後の実験プラン、1個1個を確認していくということになっていました。これらの見直し等を踏まえて、実験計画を組み直すというところも含めた上で、全体として最も合理的で成果を得るということを予定しております。その結果、実証炉の実現に重要なDT運転に関しては、実は早まるのではないかという話があります。他方において、DT運転開始というイベントそのものよりも、そのための検討や研究開発実績のほうが実証炉の建設判断に資するということも考えられます。いずれにせよ、ベースラインの見直しの内容が判明してからでないと、我が国の実証炉のスケジュールにどのような影響を及ぼすのかについて、やや不確定性は増したということがこの理事会の結果として言えることだと認識しております。
 3番目の内容としまして、ITER機構の予算でありますけれども、2023年の暫定予算が提示され、理事会に了承されました。一方、修理に関しては直ちに開始することが必要ですが、どういう修理をしてどこまで行うのかに関しては精査が必要です。ここについては、補正予算等が組まれることが予定されています。以上です。
【上田主査】それでは、ただいまの御説明に対しまして、質問等がございましたら、よろしくお願いいたします。特にないようですので、次の議題に移りたいと思います。
 それでは、議題2「TFにおける検討を受けた今後の委員会の対応について」に入ります。本委員会の開催は、2022年6月以来、今年度2回目となっております。6月の委員会ではTFに対して、「1.核融合発電の実現時期の前倒しの可否について」、「2.第2回チェック・アンド・レビュー(以下、CR)の達成目標について」、「3.アクションプラン(以下、AP)の見直しの必要性について」、「4.原型炉研究開発の優先順位について」、の4点について検討をお願いいたしました。
 これを受けまして、本日は、項目ごとに、笠田TF主査から検討状況について御報告をいただき、意見交換を行いたいと考えております。まずは、「核融合発電の実施時期の前倒しの可否について」に関する御説明をお願いしたいと思います。
【笠田TF主査】資料3に関しまして、最初に全体像を申し上げます。2ページ目までにこれまでの経緯、3ページ目に検討の前提となる原型炉計画の目標の検討結果について、4ページ目にどれだけ前倒しが可能かをまとめたものです。参考資料として、APの項目別の検討結果が並んでいます。「0.炉設計」から「12.社会連携」まで、従来のAPの概要を説明しておりまして、その次のページに、今回の検討結果の前倒し案を示しています。以上がこの資料の全体像になります。
 1ページ目は、委員会の下でTFがどういったことを仰せつかって、検討しているのかということです。基本的には、APの策定に当たって、本委員会に対してAPを提示するというところが重要な役割です。それを実際の原型炉合同特別チームと情報交換することなどが、重要な役割となっております。
 続きまして、2ページ目です。TFにおける検討の経緯は、資料のとおりでございます。まず、2017年12月に「原型炉開発に向けたAP」を作成しました。それを基に、2018年7月に「原型炉研究開発ロードマップ(一次まとめ)」(以下、ロードマップ)を作成しました。2022年1月に「核融合原型炉研究開発に関する第1回中間CR報告書」を作成しております。この中で、CR2に向けて核融合発電の実現時期の前倒しが可能か検討を深めること、前倒しを行う場合、CR2時点での達成目標の原型炉研究開発の優先順位を再検討することを指摘されまして、本年度のTFで検討した次第でございます。
 今回の原型炉計画の前倒しの検討におきまして、最終的な目標は同じですが、当然、目標の設定が変わってきます。それは、段階的に原型炉の性能を上げていく(運転領域を広げていく)として、第1期(発電実証)、第2期(定格発電実証)として定めて、計画を再検討しました。第1期は、第2期目標を速やかに達成できるようにしつつ、増殖ブランケットによる発電を早期に実施するマイルストーンとして設定しております。こちらは資料の表にそれぞれの目標の検討した結果を示しております。第1期目標では、ITERからの技術ギャップが小さい「低出力及びパルス運転」ということによって早期発電実証を可能にします。その後、第2期目標で従来の目標である商用炉段階に向けた「定格出力及び連続運転」による発電実証につなげていくといった、段階を2つに分けたところが特徴です。それに伴い、電気出力に関しましても、第1期目標はパルス運転ですし、第2期目標は従来どおりの定常運転ということになります。また、稼働率に関しましても、第1期は保守シナリオの実証をすること、第2期で実用に供し得る稼働率を示すという目標を達成することになります。核融合炉は自分で自分の燃料を賄わなくてはいけないということで、三重水素自己充足性(TBR)が重要ですけれども、第1期ではTBRが1を超えることを確認し、第2期で実証をするということになっております。
 この検討の結果をまとめたものが、4ページの図です。基本的には、第1期の低出力及びパルス運転に必要な技術開発を前倒しして、重点化していくことが基本理念となっております。2035年のITER燃焼実験の直後から原型炉建設に着手、10年後に原型炉発電の実証を目指すことで、現在の計画から5年程度の前倒しが可能であるということを検証し、資料に示しております。前倒しのスケジュールに関して、CR2まではそのままですが、そこから工学設計・実規模技術開発の段階を3年前倒しします。製造設計に入り、製造設計を終えたところで移行判断を行うというところが、従来スケジュールと異なるところです。これによって建設開始を5年前倒しし、発電実証、運転開始も5年前倒すという検討結果になっております。
 以下、参考資料です。前倒し案の「0.炉設計」のところを御覧ください。製造設計の時期のタイミング等、前倒しされております。以降、「1.超伝導コイル」、「2.ブランケット」、「3.ダイバータ」、「4.加熱・電流駆動」、「5.理論・シミュレーション」、「6.炉心プラズマ」、「7.燃料システム」、「8.炉材料と規格・基準」と続いています。特徴的なものは、「8.炉材料と規格・基準」の前倒し案では、パルス運転ということになりますので、中性子照射場というものが変わってきます。当初の計画では、核融合中性子源(A-FNS)の建設時期がもっと前にありましたが、これを先送りして、その間は、DONES等を用いて、技術を高めていくあるいは、データを取得するということになっています。続いて、「9.安全性」、「10.稼働率と保守」、「11.計測・制御」、「サイト整備」がございます。ここで重要なことは、この「サイト整備」というところが特出しになっていることです。やはり、前倒しするということをきちんと踏まえた活動を早期に開始しなくてはいけないということです。こちらを特出しして、今回、新たに前倒し案としてお示ししております。「12.社会連携」についても、当然のことながらこれまで以上にこの活動を前倒ししなければならないのですが、基本的にはアウトリーチヘッドクォーターを中心にこういった活動を推進していくということになっております。参考資料として、JA-DEMOの概念設計の基本設計が終了した段階でのパラメータ等が示されております。あとは、CR項目です。こちらも資料に示しているとおりです。
【上田主査】このTFでの検討に対しまして、まず、私から、委員会における今後の対応案というものをお示しします。その後、意見交換という形にさせていただきたいと思います。
 資料4を御覧ください。TFの委員の皆様方あるいは関係者の皆様方には、大変な御苦労であったと思い、感謝を申し上げます。
 委員会といたしましては、1つ目にあるとおり、このようなTFで検討された技術的な検討の結果及びAPの更新案については、受け入れるということにしたいと思います。
 2つ目ですが、「核融合発電の実施時期の変更」ということが重要なポイントとなってございます。先程、稲田戦略官から御説明がありましたように、ITERのベースラインの見直し、方針の検討が行われているという状況を勘案いたしまして、これらの検討状況を見た上で、判断する必要があるだろうと思います。今回は、この実施時期の変更をするかどうかということに関する決定を保留することを提案いたします。
 最後の3つ目ですが、これを受けてAP更新案につきましては、そのうち第2回中間CR以降の活動については同CRを経た上で、改めての検討とさせていただきたいと思います。すなわち、本日の委員会でこの後、CRに関する検討を行いますが、これは、あくまでこの第2回中間CR前の部分についての話でございます。もちろん、第2回中間CR以降のことについて意見交換をしていただくことは問題ありません。最終的にAPを委員会で決定するということになりますけれども、その対象になるものは第2回中間CRまでのものということにさせていただきたいと思います。たとえ実施時期がどうなろうとも、APに沿って核融合研究開発、原型炉開発を進めていかなければなりませんので、そういう意味で当面の進め方については決めなければなりません。そのため、このような対応にさせていただきたいと思います。
 それでは、ただいまの私の説明、あるいは、その前の笠田TF主査の御説明に対しまして、御意見あるいは御質問がございましたら、よろしくお願いいたします。
【五十嵐委員】上田主査から御説明があったように、5年前倒しが決定ではないという点を踏まえた上で、御質問させていただきます。いろいろこうすれば可能であるという検討結果を示していただいたかと思います。5年前倒しというと、核融合研究開発のような長期にわたる計画では大きいことかと思いますが、人やお金といったリソースについての検討はこれからという捉え方でよろしいのでしょうか。一方で、素人から見ますと、幾ら人やお金をつぎ込んでも、新しい技術の研究開発なので、スケジュールどおり時間をかければできるというものではないのではないかと思いますが、その中でTFとしてどこが一番難しいとお考えになっているか、そういう部分があれば、教えていただきたいと思いました。また、御説明の中にあったように、サイト整備について前面に出されたのは、現場がある問題なので非常に重要だと思います。安全面や経済面の検討も、技術と併せてしっかりと議論して進めていただきたいというのが私の希望です。
【笠田TF主査】まず、初めの人と資金、リソースに関して、そこの検討は具体的には行っておりません。今回は、必要な技術のベースを積み上げて検討を行っております。資金面はともかく、少なくとも人材育成あるいは人材確保は、今後、計画を具体化していく上で必須のところと思います。核融合のコア技術の部分は、確かにプラズマ核融合に関連した人材が必須だと思います。その周辺領域に行けば行くほど、多様な産業界の力、あるいは、場合によっては学術的なところも必要になってくるところは明確になっております。要するに、いろいろな分野の方に興味を持ってもらえるような発信というものは大事かと、個人的に考えております。
 2つ目については、非常に難しい要素技術があるかという質問だったと思います。まず、私が一番難しいと思っていることは、やはり、統合化だと思っています。個別の技術においても、クリティカルパスになり得るような難易度の高いものはあると、今回のまとめの中で私は感じております。当然、「0.炉設計」も相当難しい検討をされていると思います。今回、第1期と第2期と分けて、パルス運転から定常運転にしていくということを行います。パルス運転でも、核融合発電を世に知らしめるということの重要性を鑑みているというところもあります。ただ、パルス運転が定常運転に変更されるということは、私は特に材料の専門家ですので、材料に係る負荷の考え方も変わってくるところはございます。今後、そういったところをきちんと実証していく必要があると考えております。ただ、これまで欧州等ではパルス炉というものは考えてきましたし、日本でもそういうことも考えていたので、基盤となるような技術的知見の蓄積というものは進んできていると考えております。
 「1.超伝導コイル」は、我が国は非常に優れた技術を持っているので、前倒しに対しても比較的冷静かつ厳しいところはありますが、何とかなる、何とかするというような力強いコメントもいただきました。
 「2.ブランケット」に関しましては、現状、六ヶ所研究所に統合試験するための基盤も構築されていますので、こういったITER-TBMを造っていくような経験を踏まえて行っていくというようなところが、着実にできていると考えております。
 「3.ダイバータ」がやはり、難しい部分であると認識しております。非常に高熱流速かつ高粒子束を受け止めるというところで、ITERの技術の延長で行うというところはございます。ここが、実際に中性子が飛んできたところでどこまで使えるかというところは、今後、照射試験等も踏まえて行っていく必要があるというところを示しているところでございます。
 「4.加熱・電流駆動(NBI)」に関しましても、資料の14ページに書いてあるとおり、セシウムレスの負イオン源、高効率の中性化セル、定常運転可能な排気システムの技術開発というものは、これまで予備的検討はしてきているとは思います。しかし、本格的な開発という観点では、これから本格化しなくてはいけないところだと思いますので、やはり、難易度は高いところだとは思っております。
 「4.加熱・電流駆動(EC)」は、こちらも日本が得意とするところなので、対応できると私は考えております。
 「5.理論・シミュレーション」は、スーパーコンピューターが重要です。プラズマのシミュレーションだけではなく、今後は、炉全体の大規模シミュレーションが大事になってきます。それに特化したスーパーコンピューターをしっかりと維持、発展させていくことは、非常に重要な観点かと思います。
 「6.炉心プラズマ」は現場に頑張っていただくしかないので、JT-60SA等でしっかりと技術開発をしていただくことが大事だと思っています。
 「7.燃料システム」は、原型炉ともなると三重水素を使う量が多くなりますので、安全にしっかりと管理していくという地道な技術開発、あるいは、どういったプラントであるべきかという考え方はしっかりと構築していく必要があると考えております。
 「8.炉材料と規格・基準」に関しましては、先ほど申したとおり、A-FNSというものが先送りになっている部分はありますけれども、中性子照射場の確保は、従来以上に大事になってきております。核融合ではない中性子源の確保と、ヨーロッパとの共同というものの方向性について検討していく必要があると考えております。
【上田主査】それでは植竹委員、よろしくお願いいたします。
【植竹委員】第1期の期間の長さは、大体どのぐらいと想定されていますか。
【笠田TF主査】原型炉が運転開始してからどの程度というところまでは、ここでは示していません。
【東島TF委員】今回の資料に示していないのですけれども、TFとしては、この第1期の目標はできる限り速やかに達成をして、第2期に移行すべきであるということが議論されました。その期間は、長くても5年ぐらいかと。ですので、第1期の目標は5年ぐらいで達成して、第2期に向けて、再度、改造をしていきますが、しかしこの期間にこだわらず、技術的に可能な範囲で、できるだけ早くするという議論でございました。
【植竹委員】以前、発言させていただきましたが、前倒しという大きな利益を得るわけですが、失うものも同時にあるのであれば、それも認識しながら我々は進めていくべきだという議論をさせていただきました。端的に、前倒しで得るものだけで失うものはないならよいのですが、我々委員が認識しておくべき前倒しによるデメリットを教えてください。
【笠田TF主査】前倒しによって失われるものというのは、全体と考えると、ある意味、全体最適化をしたという考え方もできるタイプの前倒しです。私の専門に関わるというわけではありませんが、やはり、A-FNSは、前倒しする前では、建設時期がもっと早かったわけです。「8.炉材料と規格・基準(材料)」を御覧ください。従来の案では、原型炉の建設に間に合うように中性子源ができていなくてはならないのですが、今回の前倒し案ではパルス運転にするということで、そこまでの中性子照射は必要ないので、中性子照射は原型炉の建設の後に行うということになっております。要するに、その期間では中性子源に関する照射の部分をどうするかというところが失われています。これは、中性子照射場というものが、日本国内もほぼ失われている状況です。高速実験炉「常陽」について、間もなく再稼働が期待されていますけれども、どういう利用になるかについては、これから検討しなくてはいけません。海外炉も非常に厳しい状態になっていて、価格の高騰等も想定されます。そういった中で、どうやって照射していくかということは安全性、規格・基準の設定等、様々なところにリンクしていますので、ここをしっかりやっていく必要があると考えております。
【植竹委員】「サイト整備」前倒し案のところを特出しされていて、候補地の選定が2026年ぐらいから始まっています。これは、34ページの「12.社会連携」の実施活動のところとリンクするわけですけれども、ここの部分になるとやはり、立地というのは高レベル廃棄物の立地の話を見ても明らかなように、社会的インパクトは大きくなってきます。ですので、後ほど議論される実施事業者の顔が見えないと、なかなか厳しいだろうと思いますので、後でここに関連して発言させていただきたいと思います。
【上田主査】他に御意見はございますか。吉田善章委員、よろしくお願いいたします。
【吉田善章委員】資料3で示されているAPについてですが、これは、スケジュール表のようなもので、はたしてAPと呼べるものでしょうか。その実現可能性に関する議論がないです。どこにボトルネックがあるのでしょうか?イノベーションしながら開発していくというプランには、いろいろな「if文」がついていると思います。そのif文がついている所で、Yesなら前へ進むけど、Noだったら止まるということを言っているのか、それとも迂回路があるのか?つまり、フローチャートの論理的な構造になっていないです。こういう水準で議論をしていると、どういうレベルの意思決定でゴーをかけていいのかというところが非常にあいまいです。APという場合には、まず様々な作業事項をリストアップした上で、実行可能性を分析して、どこにボトルネックがあって、そのボトルネックのところにif文があって、そのif文のところで論理的に分かれていくという構造でなくてはならない。そのような計画になっていないと、本来の意味のAPになっていないという気がします。このことがおそらく、社会が核融合技術というものに対して感じている不確実性の大きな原因だと思います。
 資料4で示している今後の対応案のところで、ここで合意しようという内容は、第1期と第2期ということで分けて、第1期で、まず、パルス運転で実現し、第2期において、定常運転を考えることかと思います。しかしながら、この2つの期の実際の日時については、やはりITERの遅れが原因でまだ定まりません。そこで、この段階では判断を保留するという対応案というように読めるのですが、そういう理解でよろしいでしょうか。
 もう1つは、AP更新案というものは、この後の資料に示されているもののことを指しているのでしょうか。今後、核融合の開発を進めていくために、内閣府でもいろいろな議論が進んでいる中で、前倒しして進めるというようにアップデートしたAPと、資料5以降のAPは整合していないように見えるので、ここで言っているAP更新案というのは何を示しているのでしょうか。
【上田主査】まず、今の御質問についてお答えいたします。笠田TF主査から説明された前倒し案の中には、第1期、第2期の計画というものが盛り込まれております。基本的に、この部分について、受け入れるかどうか、決定を保留するということです。つまり、第1期、第2期の形で進めるかどうかということについても、本日の段階では、決定を保留するということです。APの詳細については、この後で笠田主査より御説明がございますので、その部分につきましては、そこで御意見を頂戴できればと思いますが、これでお答えになっていますでしょうか。
【吉田善章委員】分かりました。資料4に書いてあることは、第1期、第2期に分けている案も、まだ保留するということですか。
【上田主査】はい、そういうことです。
【吉田善章委員】分かりました。
【上田主査】他にございますか。特になければ、この対応案という部分について、御承認をいただければと思いますが、よろしいでしょうか。それでは、御承認をいただいたものとさせていただきます。その上で、AP見直しの検討に関しまして、再び、笠田TF主査より御説明をお願いしたいと思います。
【笠田TF主査】それでは、ここで、資料5、6、7について御説明いたします。この資料5から、順次、説明していきます。
 資料5が、先ほど吉田善章委員から御質問のありましたAP改訂案についてお示しする次第となっております。文章としては長いのですが、ここに骨子がありますので、説明をさせていただきたいと思います。はじめに、2050年のカーボンニュートラル達成を目指して、核融合エネルギーに対する期待がかつてないほどに高まっています。米国では商業核融合発電の実現を加速するための10年戦略を策定することを宣言し、安全規制体系の整備に向けた動きを始めています。英国では国家核融合戦略を発表し、2040年代の核融合発電の建設を目指すとしています。中国においては、ITERと同規模の工学試験のCFETRの建設を独自に進め、2030年代までに原型炉に改造する計画を進めています。民間セクターにおいても、欧米を中心に我が国でも核融合スタートアップ企業に対する投資が活発化している状況にございます。
 我が国では、本委員会に設置されたTFにおいて、2017年12月に「核融合原型炉研究開発の推進に向けて」を策定し、資料に示している(1)、(2)、(3)とともに、同年12月には、原型炉の技術開発課題の項目ごとに、今回お示しします、解決のためのAPを作成し、実効的なフォローアップと時宜を得た体制整備の進捗確認を実施することとしております。要するに、こういったAPというものは、その計画の進捗に応じて改訂をしていくということが、TFのミッションと定義づけられているわけです。APにおいて、手戻りあるいはストップしてしまったところは、このTFで議論して、改訂あるいはより高度な判断につながっていくものと私は思っております。2018年にはロードマップを示しまして、開発の重要度と緊急性、国際協力の観点に基づいて整理されています。
 その後、原型炉の目標は数十万キロワットの電気出力、実用に供し得る稼働率、燃料の自己充足性に見通しを得るための概念設計の基本設計が特別チームによってまとめられております。2021年度の本委員会においては、第1回中間CRの報告書が取りまとめられ、達成目標は、おおむね達成されているという評価をいただいたところでございます。この中で、先ほど申し上げたとおり、実現時期の前倒しが可能か検討を深めること、前倒しを行う場合、第2回中間CR時点での達成目標や原型炉研究開発の優先順位を再検討することが指摘されました。
 それを受けまして、TFでは、今年度、この「前倒し」を検討した結果をまとめました。検討に当たっては、先ほど申し上げたとおり、まず、前倒しの検討の前提となる原型炉計画の目標や実施時期の変更について議論しました。続いて、APの項目に加えて、新たに「サイト整備」を取り扱って、前倒しに伴う変更点を議論しました。なお、「13.ヘリカル方式」と「14.レーザー方式」については、前倒しによる変更がないため、今回は対象としませんでした。最後に、前倒しに対応する第2回中間CR及びAPの見直しを行い、加えてロードマップの更新について検討しました。
 2番は、既に説明したとおりでして、結果的に、第1期、第2期に分けることによって、「マイルストーン」を新たに設置して、現在の計画から5年程度の前倒しの可能性が示されたということになります。
 3番に、核融合発電の実施時期の前倒しの検討として、前倒しのAPを検討しました。まず、検討の基本となる項目である「炉設計」において、以下のような前倒しの実施が必要となることが示されました。移行判断までに製造設計を完了するため、ITER技術ベースに概念設計段階で高水準まで進め、炉本体設計を3年短縮します。コスト評価、候補地選定、建設サイト評価・選定を2、3年前倒しで実施し、製造設計の開始前に完了させます。建設サイト評価に必要となるため、安全規制法令及び安全評価についても3年前倒します。中性子照射データの取得のために、第1期(パルス運転)においてもデータベース更新を継続します。
 以上の炉設計の前倒しを基に、各項目の前倒しを検討したAP構成表及びAP項目別解説を改訂したものが、ここの後に続くわけです。これまでのAPと同様に、AP構成表は、APを表形式で示したものであり、AP項目別解説は、項目別の補足説明を附属するものです。
 本検討の中で示された項目別の特に留意すべき点について、以下に列記します。
 「0.炉設計」では、立地要件が設計において重要であり、候補地候補選定を前倒しする必要があります。
 「1.超伝導コイル」では、導体の試験をはじめとする一連の試験の前倒しとそれに必要な試験設備の整備が必要です。
 「2.ブランケット」では、新たに採用する保護リミターと、増殖ブランケットからタービンへつながる発電システムを開発・整備することが重要です。
 「3.ダイバータ」では、第1期目標に対応すべく銅合金系冷却ユニットを採用するなど、前倒しにより大きく変更する一方、第2期目標に向けて低放射化フェライト鋼F82Hを用いる冷却ユニット開発を実施することが重要です。
 「4.加熱・電流駆動システム」に関しては、第1期はECHを主加熱とすることによって前倒しできますけれども、第2期目標に向けてNBI加熱の定常化に関する研究開発を実施することが重要です。
 「5.理論・シミュレーション」では、核融合研究開発用のスパコンが重要です。
 「6.炉心プラズマ」では、JT-60SAにおいて統合試験中のインシデントがございました。このために、プラズマの生成が遅れていますけれども、ここから得られた経験をITERや原型炉へ水平展開して有効活用することが重要であることが指摘されました。
 「7.燃料システム」に関しては、許認可データ取得に必要な三重水素大量取扱施設の段階的な整備が必要です。また、第2期目標に対応する燃料サイクルシステムの研究開発を実施することが重要です。
 「8.核融合炉材料と規格・基準」に関しましては、A-FNS建設時期を後ろ送りする一方で、第1期目標に対応できる中性子照射場の確保が重要です。やはり、三重水素の閉じ込め境界である炉構造と構造規格が重要であるということが再認識されましたので、新たに小項目として追加しました。
 「9.安全性」は、核融合炉に関する世界的な対応が非常に加速していますので、安全規制法令や安全設計に関する前倒しが必要であることが指摘されました。
 「10.稼働率と保守」については、項目に変更はないものの、必要な検討の前倒しの重要性が指摘されました。
 「11.計測・制御」は、必要な検討の前倒しのみならず、常に最新の知見を取り込んでいく重要性が指摘されました。
 「12.サイト整備」は、新たに加えて特出しされましたけれども、諸活動の前倒しが極めて重要であると認識されました。
 「13.社会連携」は、やはり、前倒しには社会との連携活動の充実とともに、ますますその重要性が増すことが指摘されています。
 これらを総合的に検討した結果、項目別に留意事項の検討をさらに深めるべき事項はありますけれども、第1期目標の達成に必要な技術開発を加速・重点化することによって、2035年のITER燃焼実験の直後から原型炉建設に着手し、10年後に原型炉発電実証に至ることとなり、現在の計画から5年程度の前倒しが可能であるということを結論づけました。
 4番の核融合発電の実施時期の前倒しを受けた第2回中間CR及びロードマップの見直しについて、TFにおける審議の結果、第2回中間CRの見直しの際に考慮すべき点として、以下の3点が指摘されております。

  • 「4.原型炉に関わる材料開発」の「第2回中間CRまでの達成目標」は、核融合発電の 実施時期の前倒しに対応したA-FNSの記載にすべきである。また、定常化のための材料開発のCRについて、「原型炉段階への移行判断」の項目を見直しすべきとしました。
  • 「3.ITERによる統合化技術の確立」の「第2回中間CRまでの達成目標」は、「ITERの運転開始」と「ITERの機器製作・据付・調整に関わる統合化技術の取得」の2つの記述をまとめて簡潔明瞭な表現にすべきです。これは主査である私から特に要望しました。
  • 「原型炉段階への移行判断」の前に開始する必要があり、かつその後の変更が難しい項目などには、第3回中間CRを設けるべきです。ただし、第3回中間CRの具体的な項目は、第2回中間CRの実施を受けて検討すべきです。

 ロードマップの見直しに当たっては、以下の7点を考慮すべきという意見が出されました。こういったCRというものを、しっかりとやっていくということが、吉田善章委員の質問に対する答えになっているのかと個人的には考えております。

  • 「3.核融合中性子源」は、核融合発電の実施時期の前倒しに対応した記載にすべきです。
  • 「4.原型炉研究開発」の第4段階の「社会受容性と経済性の見通しを得た工学設計の完了」は、核融合発電の実施時期の前倒しに対応した記載にすべきです。
  • 「2.JT-60SA」のBA活動(フェーズ2)の矢印や各段階は、現状に合わせた記載にすべきです。
  • 第3回中間CRの実施についての記載を盛り込むべきです。
  • 「サイト選定」について記載すべきです。
  • 「4.原型炉研究開発」では、2035年の「原型炉段階への移行判断」の前に、製造設計を行う旨の記載を盛り込むべきです。
  • 「8.社会連携活動」の「原型炉に向けた社会連携活動の実施」は、核融合発電の実施時期の前倒しに対応した記載にすべきです。

 最後に、今回のAPの改訂は、核融合発電の実施時期の前倒しの検討を受けたものであり、2045年の原型炉による発電実証(第1期目標)が技術的に可能であることを示しました。しかしその前提としては、APの時系列展開において最大のクリティカルパスであるITER計画の着実な進展に努めるとともに、責任をもって実施することが期待される各機関・組織がAPの各項目/小項目を着実に実施できるようにする必要があります。また、今回のAPの改訂では、責任をもって実施することが期待される各機関・組織として新たに原型炉の実施事業者を加えましたが、それには事業化に不可欠な実施事業者の設立に向けた体制作りの議論の加速とともに、適切な社会連携活動を実施して原型炉建設に対する国民理解を得ることが極めて重要です。加えて、核融合エネルギーへの投資が活発化していることも踏まえ、スタートアップ企業のみならず、民間セクターにおける幅広い活動を取り込んでいくことも重要となっております。
 資料6が、具体的にAPの構成表と改訂案となっております。こちらは非常に細かい表になっておりますので、詳細は述べませんけれども、先ほどの前倒しの検討のところを、従来のAPの表のフォーマットに合わせて示しております。資料6の説明は省略いたしますが、御質問を受けた形で説明するほうがいいと思います。 
 資料7は、従来、APの項目別解説がついていたのですけれども、先ほどの資料6だけでは中身が分からないので、それぞれに対して簡潔ではございますけど、説明書きが記されております。これも今回の改訂案に合わせまして改訂をしております。一部は大幅に記述が加えられているところもあると思いますので、御確認いただけると幸いです。
【上田主査】それでは、APについて議論をさせていただきたいと思いますが、念のため、前提条件について、先ほど確認したことの繰り返しで申し上げます。今、一応、APを改訂するという方向で進めていますが、あくまで、これは、第2回中間CR、おおよそ2025年頃あるいはそこから数年以内に行う予定でございますが、そこまでのAPを現時点で改訂するということでございます。もちろん、そのAPを考えるに当たりまして、その早期の実現あるいは先ほど御質問のあった第1期、第2期という開発の流れというものを意識はしております。ただ、先ほど吉田善章委員から言われました、ifに当たるものでいえば、最大のifは、ITERの特にDT運転が、ほぼ予定どおり進むのかどうかというところでございます。やはり、ITERの結果が原型炉の建設判断に対して非常に重要な要素となっており、そこのところが現時点で少し不明確になっています。もちろん、原型炉までどの方針で進めるかというところを見通した上で、第2回CRまでのAPを考えていますが、本日、改訂の対象になっているところはここまでであるということをまず御理解ください。ただそうはいっても、それ以降の部分等についても御意見等があれば、出していただければ幸いでございます。
 御意見、御質問等、何かございますか。吉田善章委員、お願いいたします。
【吉田善章委員】今、御説明いただいた中には、この実施主体というものをどうするかということが重要だというコメントがありました。しかしながら、このAPにおいて誰がアクションをするのかという主語の部分が、やはり、きちんと分析されていません。というのは、例えば、今の御説明の中にあったように、ヘリカル方式については前倒しに関係ないので従来から変更していないとのことですが、核融合科学研究所(以下、NIFS)の関係者としては疑問が残ります。つまり、NIFSとしては、大きく方向を転換して、核融合科学に対する関わり方についてはコミュニティを挙げて議論をしました。NIFSとして核融合の研究にどのように関わるのかということは、非常に急速に大きく変化しています。そのことが盛り込まれていないということは、つまり、このAPのアクションを取る主体は、NIFSを含め、この議論に参加している核融合コミュニティの多くの大学の研究者たちは主体として入っていないのでしょうか。そういういろいろな取組がどのように行われていて、研究主体がどのようにアクションを取っていくのかということを含めた主語を持っているAPにしないと、非常に抽象的だと思います。QSTだけがAPを実施するというプランであるのであれば、それもあるのかもしれません。そうであれば、他の機関は関係ないので改訂する必要がないという主張のように見えかねません。日本を挙げての取組であるということを前提としたAPであるとするならば、ここにアップデートするべき内容は非常に多くあると思います。もちろん、大きな不確定要素がITERにあることは確かですが、APの不確定要素は全てがITERに還元されるわけではありません。もっと様々な項目について、ITERの進捗とは独立に進めるべきものがあります。現に国際情勢としては、いろいろなベンチャーが立ち上がる中で、様々な核融合産業の社会実装が進んでいます。そういったこともしっかりと分析しながらAPを立てていかないと、宙に浮いた非常に抽象的なAPになってしまいます。場合によっては、QSTが独立して推進するAPなのかと見えてしまいます。だから、そこのところの分析を含めた抜本的なアップデートをする必要があると思います。
【上田主査】まず、私から一言述べさせていただいて、その後で、必要ならば笠田TF主査も御説明ください。まず、このAPは別にQSTだけで行うということになっておりません。資料6のAP構成表改訂案を見ていただきますと、それぞれのアクションに対して、どういう機関あるいは大学等が関係するかということが明記されております。例えば、APの具体的な「Q」、「N」、「大」、「特」であるとか、その省略で書かれているものは、「Q」はQST、「N」はNIFS、「産」は産業界ということです。まず、基本的にオールジャパンで進めるということを前提に、このAPは書かれているということは申し上げたいと思います。
【吉田善章委員】それは承知していますが、そうであるならば、ここにはやはり改訂すべき項目が非常に多くあると思います。
【上田主査】そのことについてはTFで検討をされていますが、笠田TF主査から御説明願います。
【笠田TF主査】まず、APにヘリカル方式、レーザー方式とございますけれども、これはヘリカル方式、レーザー方式のそれぞれの研究の中で、トカマクを中心とした原型炉の計画に対して貢献できる部分という意味合いであることを確認させてください。それを踏まえた上で、各項目に関しましては、上田主査からございましたとおり、「Q」、「特」、「N」、「大」などがあります。これは、基本的には、実施が期待される機関であるという弱い書き方になっております。APは、特にQST以外に関しまして、大学には大学のミッションがありますし、NIFSにはNIFSのミッションがあるので、それと整合した部分で共同研究、共同開発を行うのが当然です。ここは、そういった弱い書き方になっていることは、APを作ったときからのある種の課題です。オールジャパンでやっていくという意味で原型炉設計合同特別チームができたという経緯は、皆さん御存じのとおりかと思います。
 もう一方で、原型炉の実施主体というものをオープンで議論する段階というのがどこなのかは、私の立場からは申し上げられないところでございます。例えば、規制というものを考えたときに、規制当局に対してこういうものを造るのでよろしいですかと聞ける者は、あくまでも実施主体である事業者となります。その事業者として、適切な機関はどうあるべきかについては本委員会で検討していただく事項だと考えております。したがって、TFの中では共通認識のようなものは置けますけれども、そこは我々が議論をしても仕方がないので、表立ってそこは申し上げていないというところは御理解いただきたいと思います。
【植竹委員】先ほど、実施事業者の話をしましたけれども、今、笠田TF主査がおっしゃったとおり、そこの部分は非常に重要だと思っています。これまで、この実施事業者という概念が、このAPに書いていなかったことが不思議だというぐらい、事業の成功にとっては最も重要な要素だと思います。その実施主体が運営主体だという概念という理解でいいのか、そこには建設という概念も入っているのか、まずそこを明らかにしていただけますでしょうか。
【笠田TF主査】先ほどの私の回答と同様に、これはあくまでも我々が検討する上で、何となく想定しているものというレベルでしかお話ができません。原型炉を建設するという段階に行くのであれば、実施主体、事業者がきちんとなくてはできません。それは植竹委員のおっしゃるとおりだと、我々も考えております。
【植竹委員】つまり、工事を発注する主体がいないと工事は始まらないということです。
【笠田TF主査】規制するにしても、規制される側がいないと、どうしようもないです。
【植竹委員】分かりました。いわゆる実施事業者に相当するものということですね。
【笠田TF主査】はい。多分、これから議論を詰めていくというか、もっと大きな動きがなければそのような話にはならないというか、TFのミッションではないと少なくとも考えております。
【植竹委員】その上で、建設主体でもあり、運営主体でもある実施事業者の要件を定義することが最も重要だと思います。それは、誰が、いつ、どのように議論するのかということを、我々は共通認識を持ちたいと思います。その要件について、少しだけ、私の私見を申し上げておきます。やはり、商用炉の手前の炉ですから、原型炉と実証炉を兼ねたような炉ですので、もんじゅの失敗、反省をしっかり踏まえた議論が必要だと思います。どうしても商用炉の手前、地元と向き合うという事業者になるわけですので、端的に言うと、商用炉を保有して運用する胆力を持った事業者でないと難しいと思っています。もんじゅと同じ失敗を繰り返さないように、実施主体は(研究開発寄りではなく、)商用炉寄りの要件を設定するといった議論が今後、期待されていると思っています。初めはQSTプラスアルファで始めることになるのかもしれませんが、なるべく可及的速やかに、そういう本来あるべき正しい方向に戻していくべきだと思います。
【栗原委員】いろいろな検討課題について御検討をいただき、かつ今後のためのいろいろな示唆をいただいた内容だと思いました。次の原型炉の実施事業者に関してです。ここは、実施事業者としてどうあるべきか改めて議論しなければいけないと思います。TFで議論するのか、どこで議論してどのようなプロセスで決めるのかという別の問題はありますが。次の商用炉に結びついていくことが重要だと思う一方、商用炉として民間事業者が現実的にこの原型炉をやるわけではありません。多額の研究開発的な資金が必要だということを踏まえて、いかに効率的、効果的に実施できる組織にすべきということを、考えながらやらなければいけないと思います。大きな研究開発ですから、一定の組織体制とガバナンスも必要だと思います。一方で、その後の商用炉につながるような人材育成や技術の共有、あるいは、データ及び成果に対してのアクセスといったことについても、考えてなければならないと思いました。
 2点目は、第3回中間CRの在り方です。先ほどの資料2の4ページのところで見ますと、第3回中間CRは製造設計から建設の間の移行判断とがありますが、ここがCR3になるというイメージでしょうか。それとも、もっと前の段階になるのでしょうか。
【上田主査】最後の質問にお答えしますと、製造設計の直前にCR3を入れます。移行判断は、建設の直前に行うことを想定しております。
【栗原委員】分かりました。ここも、今回決められてはいないですが、CR3の実施時期も今後、前倒しされる可能性があると考えればよろしいですか。
【上田主査】建設の前倒しとCR3はセットで、その時期に行うことが決まります。ただ、先ほど申し上げたように、本日の委員会ではそこまでは決定しません。それは、CR2のときにCR3を記載するかどうかということを最終判断させていただきたいです。
【栗原委員】そこのところについて決定はしないまでも、確定ではないものの、この前倒しスケジュールが今後のある程度の見通しといいますか、この前倒しスケジュールを目指しましょうと考えていくことでよろしいのでしょうか。といいますのは、この前倒しスケジュールに関わる方々、産業界等もそうですけれども、今後のスケジュール感を常に意識しながら進めていくと思います。決定ではないものの、これが可能なのかどうかということをしかるべき時期に判断をしていくということで、よろしいのでしょうか。
【上田主査】現時点では、そういうことになります。ただし、CR2などそれぞれのタイミングで状況を見極めた上で適切な見直しを行うことはあり得ますが、現在は、栗原委員が言われたような方向で考えるということです。
【栗原委員】分かりました。
【岸本委員】資料5の「1.はじめに」のところですが、見直しをする理由について、米国で10年戦略を策定している、英国でも国家戦略を発表している、中国もCFETRの建設を進める、日本でも民間セクターがという文面があります。これらについては、時代背景としては非常に喜ばしいことである反面、核融合が実現するかどうかということは科学的論拠の下に行うことで、先ほどから議論になっている不確定要素等があると思います。したがって、核融合の社会的な要請や動向が急速に進展しているからといって、それに流されるものではなく、研究者の中では、科学の原則を踏まえて、厳密に見ていくということが議論の前提になっています。しかし、それに関して、「これらの動向を慎重に見極めつつ」のような表現はなくていいのかと少し思いました。
【上田主査】これはTFの方々が前倒しを前提に、いろいろ検討された資料でございます。これを受けて、委員会がどう考えるか、どう対応するかということで、本日の会議で幾つか御説明をさせていただきました。世の中の動向、特に現時点では、ITERのベースラインというものをまず注視してございますが、そういうものを勘案しながら進めていくということでございます。
【岸本委員】ITERのベースラインに関しましては、技術的、科学的なものとセットで、研究者の合意の下にコミュニティが注視しています。それでも、遅れる可能性もあれば、仕方がないことだと思います。一方、民間企業の場合は、必ずしも情報が完全に公開していない状況で広報されている側面もあります。投資が集まっているからといって、科学的な論拠があるとは必ずしも限らないわけです。科学者の集団として議論を進めていくにあたっては、あくまで「慎重に見極めつつ」ということが重要だと思いました。そういう趣旨でございます。
【上田主査】今、まさに岸本委員の言われたとおり、科学的なことをきちんと確認をしながら議論を進めている、それはTFの皆様方もそのように進めていると理解をしております。
【兒玉委員】前倒しのところで、技術面は議論をされていると思いますが、人材の問題があまり見えておりません。やはり、前倒ししようと思ったら、お金もそうですけれども人もかなり増やす必要があると思いますが、人材育成に関しましてどのようにお考えでしょうか。
【笠田TF主査】検討の中では、当然、そういった話題も出てきます。しかし、まずは必要な技術ということに対して委員会から付託されました。当然、先ほどの岸本委員の御指摘はもっともで、そういう科学技術的な検討をしっかりとできる仕組み、あるいは人材が必要であるということで、CRというものはそういったことも含めて行っていくところだと思っております。人材に関しましては、お金があれば人は集まってくると思います。これは私の個人的な考えですけれども、国の予算だけで研究を進めるとどうしても限界があるし、人材も集まってきません。実際に民間セクターの投資が集まり出すと、思いもしなかった企業が参画してきたりなどといった可能性はあると思います。私も兒玉委員も大学の人間で、人材育成する側の人間ですので、原型炉をどう位置づけるかということを今後、議論していただくことも必要になると思います。個人的な見解で申し訳ありませんが、かつての昭和、平成の巨大、大規模プロジェクトとは変えていかなくてはいけないイメージかと私は思っています。
【兒玉委員】後半の個人的な見解は、私も全く同感でございます。アウトリーチ人材の育成というのは資料に出ていますが、技術継承の人材育成が全く見えなかったので、かなり心配なことかと思ったのでコメントいたしました。
【植竹委員】資料5の5ページに「実施事業者の設立に向けた体制作りの議論の加速」という記載がありますけれども、これは、いつ、誰が、どこで議論するのでしょうか。
【上田主査】まず、私の個人的な意見でございますが、実施事業者主体に関しましては、文部科学省だけで対応できるものではないと思っております。今、内閣府が関係省庁も少しずつ巻き込みながら、核融合の国家戦略について議論を進めております。逆に言えば、委員会の場だけで、そのことを議論して進められるものではないと考えてございます。
【稲田戦略官】実証炉の体制をどのように考えていくかということに関しましては、これは研究開発が主体であるので、おそらく国が主体になるとは理解しております。その意味において、政府が行う研究開発主体をどのように議論していくかということは、今後、行政としてしっかり考えていくつもりでございます。
 一方、委員からたくさん御指摘がありますように、JA-DEMOが原型炉であるとともに実証炉という位置づけを持つことは、研究において重要です。単に技術だけを作成すればいいのではなくて、その作った技術を民間企業あるいは実施主体に対して適切に引渡していくことが極めて重要です。ここに関しましては、実証炉の体制を広めていくという議論の中で、どのように民間事業者を巻き込んでいくかについて議論がされるものと考えております。その件に関しては資料10にありますが、内閣府の中でも議論が行われております。先に説明しますと、実証炉の体制についてはQSTを中心として考え、民間企業及び産業界をどう巻き込むかについて議論を進めることを内閣府から指摘されています。
【植竹委員】ということは、この委員会では先ほど申し上げた実施事業者に求められる要件を定義する、若しくは、それの定義に関する意見を、内閣府の有識者会議にインプットするようなミッションはしなくてよいという理解でよいでしょうか。
【稲田戦略官】内閣府の有識者会議に対してのインプットはしなくてよいのですが、内閣府が取り組む課題を具体的に実現化するということは、当然、文部科学省に課される業務であります。その業務をどのように考えていくかを、専門家の御意見を承るという観点においては、専門家の皆様方に御意見をお伺いしますし、その内容について我々としては重視しているということになります。実施主体者について、今後、審議をいただくことは、当然、あり得ると考えております。
【上田主査】他にございますか。それでは、APの見直しにつきましては、委員の方からの御意見なども考慮しつつ、基本的には、笠田TF主査から御説明いただいた方針で進めたいと存じます。
 続きまして、CR項目の更新に係る検討状況を笠田TF主査より御説明いただきます。なお、参考資料2にCR項目の現行版をお示ししておりますので、こちらも御参照をお願いします。
【笠田TF主査】CR更新の検討に関しまして、資料8にまとめております。主に3つございます。

  • 表の中の「4.原型炉に関わる材料開発」の「第2回中間CRまでの達成目標」において、核融合発電の実施時期の前倒しに対応した核融合中性子源の取扱いの記載にすべきです。また、核融合発電の実施時期の前倒しにより見えなくなる定常化のための材料開発のCRについて、「原型炉段階への移行判断」の項目を見直すべきです。整合が取れるようにすべきということです。
  • 「3.ITERによる統合化技術の確立」の「第2回中間CRまでの達成目標」において、「ITERの運転開始」と「ITERの機器製作・据付・調整に関わる統合化技術の取得」の2つの記述をまとめて、簡潔明瞭な表現にすべきです。これは、中身はほとんど一緒なので、それでよいのではと私が主に意見したことです。
  • 核融合発電の実施時期の前倒しにより、「原型炉段階への移行判断」をする前に開始する必要があり、かつその後の変更が難しい項目などには、第3回中間CRを設けるべきです。ただし、第3回中間CRの具体的な項目は、第2回中間CRの実施を踏まえて検討すべきであるという意見が出ております。

【上田主査】参考資料2のCRの現行版について、今、笠田TF主査の御説明にあったように、少し見直しをしたいということでございます。本件につきまして、御質問、御意見がございましたら、よろしくお願いいたします。基本的には大きくは変わらないのですが、ITERの項目の見直し、中性子源の取扱いの部分です。「4.原型炉に関わる材料開発」のところについて、見直したいということでございます。
 それでは、ただいまの笠田TF主査の御説明に沿った形で、CR項目の見直しを行い、次期の最初の委員会において、改めて御説明をさせていただきたいと存じます。
 続きまして、次は、原型炉研究開発ロードマップの更新に係る検討状況について、笠田TF主査から御説明をお願いいたします。
【笠田TF主査】資料9は現行のロードマップに対する意見でございます。こちらは、7つの御意見がありました。

  • 「3.核融合中性子源」は、核融合発電の実施の前倒しに対応した記載にすべきです。
  • 「4.原型炉研究開発」の第4段階の「社会受容性と経済性の見通しを得た工学設計の完了」は、核融合発電の実施時期の前倒しに対応した記載にすべきです。
  • 「2.JT-60SA(BA活動の一部)」のBA活動(フェーズ2)の矢印や各段階は、現状に合わせた記載にすべきです。
  •  第3回中間CRの実施についての記載を盛り込むべきです。
  • 「サイト選定」について記載すべきです。
  • 「4.原型炉研究開発」では、2035年の「原型炉段階への移行判断」の前に、製造設計を行う旨の記載を盛り込むべきです。
  • 「8.社会連携活動」の「原型炉に向けた社会連携活動の実施」は、核融合発電の実施時期の前倒しに対応した記載にすべきです。

【上田主査】それでは、ただいまの御説明、ロードマップの見直しに関しまして、御質問、御意見がございましたら、よろしくお願いいたします。先ほどのCR項目の見直しとも少し関係がございますし、その他、JT-60SAのスケジュールなどに合わせ、第3回CRというものを入れ込んではどうかというような御提案でございます。特に御意見がないようでしたら、ただいまの笠田TF主査の御説明に沿った形で、ロードマップを改訂させていただきますが、第12期の最初の委員会で、改めて御説明、御確認をお願いしたいと思います。
 続きまして、議題3「核融合戦略骨子案について」に入ります。本議題は、内閣府の有識者会議における検討内容の報告となります。それでは、事務局の稲田戦略官から御説明よろしくお願いいたします。
【稲田戦略官】私は内閣府の重要課題の分野別の参事官の身分を持ってございまして、内閣府の参事官として御説明をさせていただきます。この核融合戦略の骨子案を策定した有識者会議というのは、内閣府の総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)の機能として、イノベーションを社会実装することに関して、政府横断的な調整機能を持ってございます。今回の核融合戦略に関しては、文部科学省が核融合技術を出し、それを世の中に実用化するというところをミッションにしていることに比べて、内閣府では、社会実装をするために研究開発及び産業界並びに人材育成等も含めて、どのようなことを求め、どのように考えていくかという戦略を作る観点から、議論を進めてまいりました。今般まとまりました核融合骨子案に関しては、以下のとおりです。
 まず、背景状況として、気候変動の深刻化やエネルギー市場の安全保障の観点から、資源を持たない日本に対して、その点をきちんと対応することが重要であります。この状況を改善するために、核融合というのは、従来的な意義として、安全かつその環境保全性等々の関連から、重要だと言われていましたが、エネルギー安全保障としての重要性が非常に高まっています。
 一方、これは内閣府としての観点もありますが、核融合科学技術というのは、核融合のための科学技術があるわけではなくて、様々な広い分野の技術を核融合に使って、産業を創っていくという役割を持ちます。かつ、本日も議論がございましたけれども、ITER計画による技術の進展、民間投資の増加、あるいは、スタートアップする研究開発の加速等によって、核融合の産業化が進んでいています。その産業化というのは、単純に研究開発だけではなくて、それをやるためのサプライチェーンであるとか、その他様々なことも含まれています。この構築されている核融合に関するサプライチェーンについても、我が国として、時機を逸せず参入することが必要であって、将来的な核融合の産業エコシステムの基盤を、今から構築することが重要であり、新たな意義が生じています。
 この観点から、我が国は、今のところ、技術の優位性もありますし、今後の市場獲得においては、新たな国際協調や技術安全保障も考慮した戦略が必要です。
 資料10の2.は、現在、議論中ですが、核融合技術を実用化することで、「我が国の優位性を活かし、国家として戦略的に産業としての核融合の勝ち筋を掴むことが重要」という形に書き換えることになると思います。ということを達成し、民間企業の呼び水となる具体的なアクションを盛り込んだ国家戦略を策定することを、内閣府では検討しています。
 具体的なビジョンの達成に向けた戦略の基本的な考え方に関しましては、資料2ページにある3点です。ここは、核融合エネルギーの実現が重要で、産業育成は、その達成手段であるということになります。骨子案の中では、核融合産業の育成戦略として、「見える」では、その戦略の対象を明確化するときに、産業の予見性を高め、核融合業界に参画する民間企業を増やすことを示しております。例えば溶接などが、核融合技術であるかどうかということは、技術を持っている民間企業からしたら、よく分からないというのが正直なところです。核融合産業の対象を可視化することによって、自分たちが将来的に参入する余地があるのか、あるいは、潜在的な強みはどういうところがあるのかというところを、しっかり見せていくことが重要です。次のところが「繋がる」であります。産業の個別の技術については、一個一個だとそれは単なる産業の要素技術ですが、「繋がる」ことによって、その強みを生かし、産業のサプライチェーン等を構築するということになります。他の分野とマッチングすることで、新しい産業や核融合産業の種を作るということで、「繋げる」ことを重要視します。「育てる」として、成果を、製品・サービスとして社会実装できるよう支援するということを目指していきます。
 続きまして、核融合の開発戦略です。一つは、核融合の実証時期に関する問題です。本日、議論をいただきましたが、核融合がいつ実現化するかという社会の関心事項は非常に強いです。本日のAPの見直し等におきましても、これは、一旦、前倒しすることを緩めて、後から取り返すことは大変でありますので、現在の前倒し案を前提とした当面のアクションを認めていただいたということは、内閣府としても大変ありがたいと考えております。核融合発電の実証時期を明確化することによって、企業等の期待にしっかりと応えていきたいです。
 続きまして、研究開発の戦略と体制でございます。これは3ページのところに書いてありますが、後ほど、今日議論いただいた内容を踏まえて、しっかりと明確にしていくことが必要です。次の黒丸が、本日の委員会では、あまりない議論ですが、新興技術を組み立てて、世界で最も早く核融合を実現するということであれば、今、我が国の議論されている実証炉のプランになると考えます。後から来る民間企業や他の炉系もそうですが、後から明らかになる技術で、ゲームチェンジャーが起こるという可能性があり、ここをどのように考えていくかを、今後、議論することになっています。核融合の戦略の推進体制等でありますが、推進体制に関して、先ほど来、議論に入っています、実証炉の実施体制をどうするか、あるいは、研究機関は、大学だけではできるものではなく、民間を含めてどのように強化していくのかという推進体制が示されております。人材育成に関して、どう早く見積もっても、研究者世代として、3、4世代、エンジニアとしたら、4、5世代は、今後、育成していかなければいけませんので、長期を見越した人材育成が必要です。さらには、アウトリーチ活動に関して、どのように国民の理解を得ていくかというところについて議論をすることが必要です。具体策に関しては、今後、議論されていきますが、核融合産業の育成戦略に関しては、先ほど、「見える」と言われるところに関して、この資料4ページに記載されている各々のところを更に深めることによって、具体的な内容を、今後、深く示していきます。3ページ目の「繋がる」に関して、現在、産学官の場である核融合エネルギーフォーラムで活動していただいております。これは、主体として、NIFSとQSTが事務局を務める任意団体であります。体制として、大変弱いところがありますので、機能を拡充し、産業の協議会的のような強い体制を作ることを考えています。「育てる」に関しましては、スタートアップを含めた民間企業等が保有する技術シーズと産業ニーズのギャップを埋める支援について、具体的に言うと、いろいろなアイデアがあったとしても、その資金について議論していきます。安全確保に関する基本的な考え方を策定することについて、今、核融合は、世の中のどこにもありません。したがって、規制当局から見ると、どのようなものか分からないので、見せてもらってから考えるというのが基本姿勢だと思います。したがって、開発している側が、どのような技術と規則性を持って、どのように安全確保しているのかについて、しっかり示していくことが必要です。これが、ビジネス側からみれば、後から安全規制がすごく厳しいものが出て、隠されたリスクが顕在化するということを防ぐためにも、非常に重要でありますので、安全確保に関する基本的な考え方を策定していきます。安全規制等々に関しては、研究者が正しいと思ったら、それでいいという世界でもありません。そのため、国際的な規格を取ることも含めて、国際的に有志国間での議論に適切に参加することによって、科学的で合理的な規制をすることを考えています。
 続きまして、核融合技術の開発戦略でありますが、2番、3番というのは、皆さんが御議論いただいていること、そのものであります。1番目のところが、先ほど少し申しましたけれども、ゲームチェンジャーとなり得る小型化や高度化であるとか、独創的な新興技術に関しては、文部科学省の支援だけでは、不十分なところがございます。オールジャパンで、どのように支援していくかということを、今後、書き込んでいきますというところです。核融合の推進体制等に関して、研究開発を中心とする文部科学省だけでなく、規制や産業育成という観点も出てきますので、内閣府が政府の司令塔となって、推進するということです。原型炉の開発に関しましては、開発要素が高いということでありますので、国の予算が中心だと思いますが、QSTを中心とした上で、アカデミアや民間企業の力を結集して、技術開発を推進することです。その次の段階を考えると、民間企業を育成する体制を構築することが求められます。ここから個別の話になりますが、核融合の技術というのは、危険物質を使ったり、あるいは、放射能を出したりするという研究があります。こういうものは、大学か研究機関でもないと、民間企業が突然始めるということは、難しいところがございますので、研究開発するイノベーションの拠点をQSTに作っていく、あるいは、その次のキャリアパスがありますが、建設だけではなく実行するのに必要な人材も含めて、産学官で計画的に育成することです。その人材を育てるということは、もちろん、現場の訓練もありますが、やはり、大学等の研究機関、教育機関の役割が非常に重要です。人材育成を強化するとともに、全部、日本で行うのかどうかというところに関しては、いろいろ議論がありますので、他国からの優秀な人材を獲得する枠組みというところも、しっかりと考えることが重要です。最後に、国民の理解を得るためのアウトリーチ活動を適切にしていくということを議論し、この内容について示していく予定です。ここまでは、内閣府の参事官としての発言です。
 以降、文部科学省の戦略官として発言いたしますが、以上のことが、内閣府から各省に対して要請されます。有識者会議で行われた議論について見るべきところはたくさんありますし、ほとんどの事項に関しては、我々の問題意識と同じところであります。したがいまして、核融合戦略骨子案の具体的な方策を考える際に関しましては、委員会に対して、適切に御相談をさせていただき、議論を深めていただいた上で、案を作っていこうと思いますので、引き続き御指導を賜れるとありがたいと思います。
【上田主査】それでは、ただいまの御説明に対して質問等がございましたら、よろしくお願いいたします。
【植竹委員】4ページの下から5番目のところです。「原型炉開発に向けてQSTを中心に」という文章です。「民間企業を育成する体制を構築」ということがミッションとして書いてありますけれども、ここでいう民間企業というのは、先ほど、資料5で議論した、実施事業者の設立との関係はどのような関係になっていますか。
【稲田戦略官】ここは、2つあります。1つは、おっしゃるとおり、その原型炉の次の体制を構築することを考えます。
 もう1つは、研究開発を行うに当たって、要素技術部において結構なベンチャー企業が生まれるということが期待されています。したがいまして、そのスピンオフの企業を育てるという機能についても期待をしているというところでございます。
【植竹委員】今、おっしゃった原型炉の次の体制というのは、どのような意味でしょうか。
【稲田戦略官】原型炉の次は、普通であれば実証炉です。実際にこのJA-DEMOのプランで、次はいきなり実証炉ということになります。しかし、実証炉を実施する企業が空白だと、この作った技術を引き継げません。したがって、そこの部分について、どのようなことをするのかを、今後検討していくという話であります。
【植竹委員】今おっしゃったように、原型炉と実証炉は、一体なわけですけれども、途中で、実施事業者が替わるわけにはいかないと思います。
【稲田戦略官】おっしゃるとおりです。
【植竹委員】次という概念がないと思います。
【稲田戦略官】内閣府と文部科学省の一番大きな違いというのは、内閣府が重要視していることは実証炉です。したがいまして、原型炉、実証炉の次の体制というところも、議論の中に入れているというところであります。
【植竹委員】ということは、商用炉ということですね。
【稲田戦略官】そのとおりです。あるいは、商用炉の前に、もう1つ段階を踏むかもしれませんが、その場合は、その対象ということになります。ここから先は、技術的不確定性が大きいので、まだ見えていないと、私は思っています。
【植竹委員】いや、私が先ほど発言したことは、今おっしゃったような商用炉の一歩手前の引継ぎできるような体制から、最初から始めないと、途中で体制が替わるということはあり得ないと思います。今おっしゃった原型炉の次の体制という概念そのものが、おかしいような気がしました。
【稲田戦略官】それは御指摘のとおりです。したがいまして、TFの議論の中では、事務局で、委員に度々申し上げたことは、原型炉といいつつ、実証炉的な役割を持ちます。そのため、どのような体制で進めるのかについては、誰が運営主体になって、どのような経済性を持つのかというところも念頭に置いて、議論をすることが必要だと従来から申し上げています。
【高梨委員】この戦略が示されて、本委員会としてはこの具体的な内容を肉づけしていくというような立場になるのでしょうか。第12期になると思いますが、本委員会がなすべきこと、しなければならないことは、どういうことかをまず教えていただきたいと思います。
【稲田戦略官】内閣府というのは各省及び政府全体に対して、どういうことを期待してどのような方向を出すのかという内閣調整機能や司令塔としての機能であります。
 一方、この委員会に対してお願いしている文部科学省としましては、内閣府からの司令塔機能を受けて、具体策を考えるということは我々の機能であります。我々は具体策を考えることにおいて、有識者たる皆様方に、自分たちの考え方が正しいのかというところをお諮りし、その方向について定めていくことでございます。文部科学省から皆様方にお伺いしたいことについては、来年度以降、国家戦略が策定されてから、具体的にこのようなことを考えていますが、いかがでしょうかと伺うことになろうかと思います。したがいまして、内閣府の有識者会議が、直接、皆様方に指定するという形を取ってはいませんが、文部科学省という行政組織を通して、皆様方に投げかける疑問点、論点を提示するという関係になります。
【高梨委員】それでは、現在、示されている報告内容を踏まえつつも、この実際に携わっている諸先生方、委員会の方々、TFも含めて、再度、練り直すということが、可能だということですね。つまり、戦略というのは、あるべき姿と現状との間を結ぶものだと思っておりますので、あるべき姿が異なっていれば、あいまいであれば、戦略は出てこないと思います。委員の方々が、いろいろな御意見を出すことで、より鮮明なものになっていくのではないかと思いましたので、先ほど質問をさせていただきました。
【稲田戦略官】それに関する基本的な考え方でございます。戦略に関しても、これは、現在の戦略であって、何年後については、見直しが入りますので、その見直しのタイミングで、技術者や、あるいは産業界も含めての様々な意見を反映した上で、改訂していきます。これは、内閣府としての回答です。一方、文部科学省としての説明をしますと、この有識者会議自体は、技術の委員会ではありません。技術に関してはこの委員会でありますので、有識者会議の委員は技術に詳しい人ばかりではありません。
 一方において、技術を全く分かっていない話をされても、それは困るので、この有識者会議の中には、この委員会に参加されている委員の方が何名かいらっしゃいます。よく分かっている技術者、研究者の方を推薦することによって、技術的な側面も反映できるような体制で議論をしておりますので、今おっしゃったようなところが、スムーズにいくように、今後とも努めてまいりたいと思っております。
【長壁科学官】4ページの推進体制の文章がそのまま内閣府に提出されるのでしょうか。それとも、これをたたき台にして、私たちがこれから肉づけをしていくということでしょうか。
【稲田戦略官】この骨子案は、内閣府の有識者会議が検討している骨子案でありますので、これに関して、我々は何かを言うという立場にはありません。この骨子案は、あくまでもこういう方向で書きますということを議論した結果であります。これを踏まえて、本文については、今後、提示されていきます。この議論に関しては、先ほど申し上げたように、この委員会からも何人かが参加してございますので、当然、専門家としての意見を言う機会はございます。
【上田主査】それでは、議題4「核融合関係令和5年度政府予算案」について、稲田戦略官よりお願いいたします。
【稲田戦略官】資料11を御覧ください。核融合の予算というのは、大きく分けて、ITERの計画に伴う予算と幅広いアプローチと呼ばれる予算でございます。この内容は、今年行うのに必要な所要の予算を補正予算も含めてではございますが、適切に確保しました。具体的には、2022年度よりも少しだけ減っています。その内容としては、先ほどITERの報告で申し上げたように、ITERの予算というのは、暫定予算という形で、一部になっています。今後、補正が組まれる予定ですが、その活動が一部であるということから、分担金が減額された内容でございます。以上が、ITER計画を進めるのに必要なR&D及び幅広いアプローチのための活動費用について、適切に予算を確保いたしましたという報告でございます。
【五十嵐委員】次年度の予算は、資料のとおりであるという御説明でしたが、先ほど来の議論にございますように、核融合をめぐる状況は大きく変わってきております。国家的に取り組むということになると、この予算もその次の年度以降は、かなり大きく変わるという理解でよろしいのでしょうか。これまではITER計画とBA活動の2つが大きな柱でしたけれども、文部科学省として担うべき部分、例えば、基礎研究や人材育成などといった部分が、今後大きく増えていくと考えさせていただいていいのでしょうか。戦略の骨子はいろいろございましたが、それぞれ専門家の皆さんのより深い議論が必要だと考えます。これまでもTFなどで丁寧に積み上げていただいた議論がございますので、そういったものがきちんと反映されて、文部科学省としての役割を果たされることを期待しています。
【稲田戦略官】まず、国の予算制度というのは単年制でありますので、その年に必要な予算は政策的に議論された上で決定されます。これが大前提ですけれども、戦略を策定するということは、やはり重要な政策的なものでありますので、予算要求に関しても、戦略を踏まえた上での適切な予算要求になっていくことは期待されます。その上で、文部科学省の役割を増やしていかなければいけないというところに関しては、新しいことをするということもさることながら、ITER計画やBA活動、あるいは、実証炉に向けての活動が増えていくことと、人材育成等、新たなものがあります。今後、適切に議論し、予算要求につなげてまいりたいと思います。これが1点目です。
 2点目ですが、これに加えて、文部科学省以外の取組、特に内閣府独自としてイノベーションや社会実装を進めるというための様々な予算を持っています。これに関して、核融合の予算が増えていくことも期待されます。したがいまして、将来的には核融合の予算というのは増加傾向になりますが、財務省との折衝等を踏まえていかなければいけませんので、9月の概算要求及び12月の政府予算案のタイミングで、適切に皆様方にも報告をさせていただこうと思います。
【上田主査】他にございますか。本日用意をしております議題は以上ですが、これ以外に、報告、審議すべきこと、あるいは、御意見等がございましたら、お願いいたします。それでは、特にないようですので、本日の開催をもちまして、第11期の委員会は終了となります。委員の皆様の御協力に感謝申し上げます。また、核融合発電の前倒しの可否等を御検討いただきましたTFの皆様にも、感謝申し上げます。今期の委員会では、第1回中間CR報告書をまとめさせていただきました。そこでは、今後の原型炉開発に向けて、現在の立ち位置を確認するとともに、今後の研究開発の進め方について、意義ある議論をさせていただけたと思ってございます。核融合エネルギー開発の道のりは、まだ長く、着実に課題をこなしていく必要がございます。今後とも、ぜひともよろしくお願い申し上げます。それでは、本日の委員会は、これで閉会いたします。御多忙の中、御出席いただき、ありがとうございました。

―― 了 ――

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