核融合科学技術委員会(第29回)議事録

1.日時

令和4年1月24日(月曜日)16時30分~17時30分

2.開催方法

新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、オンラインにて開催

3.議題

(1)「第1回中間チェックアンドレビュー」について(取りまとめ)
(2)核融合分野令和3年度補正予算及び令和4年度政府予算案について

4.出席者

核融合科学技術委員会

上田良夫主査、五十嵐道子委員、植竹明人委員、大野哲靖委員、尾崎弘之委員、岸本泰明委員、栗原研一委員、栗原美津枝委員、小磯晴代委員、兒玉了祐委員、髙本学委員、高梨千賀子委員、吉田善章委員、吉田朋子委員

文部科学省

真先正人文部科学省研究開発局長、堀内義規大臣官房審議官研究開発局担当、岩渕秀樹研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)、田村泰嗣課長補佐、川窪百合子核融合科学専門官、長壁正樹科学官、近藤正聡学術調査官

5.議事録

【上田主査】それでは,時間になりましたので,核融合科学技術委員会,第29回を始めたいと思います。本日は御多忙のところ御参加いただきまして,誠にありがとうございます。
 今回も新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からオンラインにて開催いたします。
 それでは,議事に入る前に事務局より定足数の確認及び配付資料の確認をお願いいたします。
【川窪専門官】本日の委員の御出欠につきましては,中熊哲弘委員が御欠席です。
 本日は,14人の委員の方に出席いただきますので,定足数を満たしていることを御報告いたします。
 また,本日は,本年1月に着任しました真先正人文部科学省研究開発局長,研究開発局担当の堀内義規大臣官房審議官が出席しています。
 次に,本日の配付資料についてですが,議事次第の配付資料一覧のとおりです。今回も委員の皆様及び傍聴の登録をされた方宛てに事前にメールにて配付資料を送付させていただいております。会議中,遠隔会議システム上では資料を表示しませんので,各自お手元で御確認いただきます。
 以上です。
【上田主査】本委員会は,委員会運営規則に基づき,議事を公開いたします。御発言は議事録に掲載され,ホームページ等で公開されます。
 それでは,議事の1番目,「『第1回中間チェックアンドレビュー』について(取りまとめ)」に入ります。
 前回の核融合科学技術委員会では,「第1回中間チェックアンドレビュー」の第5章,「CR2に向けた課題」について審議いただきました。今回は,第6章「結論」について審議し,取りまとめたいと存じます。それでは,第6章につきまして,岩渕戦略官より御説明よろしくお願いいたします。
【岩渕戦略官】それでは,資料1に基づきまして,チェックアンドレビュー報告書(案)について御説明いたします。
 前回までの委員会で,第5章までを議論してまいりました。だいたい第5章までの議論がまとまり,最後の第6章,結論部分を本日御審議いただき,この報告書(案)をセットさせていただきたいと考えています。
 第6章に入る前に,前回の委員会からの修正部分が第5章までにありますので,簡単に御説明します。資料1の3ページ目を御覧ください。第4章,CR1時点で求められている目標の達成状況のところです。前回の委員会で,第5章について御議論いただいた際,第4章においても加筆をすべきということを1点御指摘いただきました。その御指摘を踏まえて,第4章の最後のところに,「なお,JT-60SAについては」という一文を追加しております。
 続きまして,4ページ,米国,英国における核融合関係企業群の連携の取組についてです。これは表現の適正化を図りました。
 次に5ページ目(3)の中ほどで星印を消していますが,この星印はもともとドラフトの注意書きとして書いていたものですので,削除させていただいています。下の方,産業界の連携のところは,先ほど御説明したとおりです。
 更に5ページ目の下の方にまいりまして,幅広い関係機関による今後の議論についても期待したいという点は,この委員会の主体性をより強調すべきという御意見を頂きましたので,主体性が表れる表現に修正をしております。
 また,5ページ目の最後のセクションは,核融合時代の基盤として,人材育成・確保について触れているところですが,技術開発,研究開発,学術研究により幅広く取り組むとことの重要性も,改めて書き残す価値があるということで追記しました。
 以上が第5章までの修正点でございまして,6ページ目が本日御議論いただく,第6章,「結論」です。メインの結論の部分は最初のパラグラフで記載しており,その上で,第2パラグラフ以降は,今後の課題について付記しました。
 第1パラグラフにつきましては,これまでの報告書に関する御議論の中で,ほぼコンセンサスになっている部分がありますが,改めて記載しました。原型炉タスクフォースはということで,CR1段階までの達成目標,達成度について,タスクフォースではだいたい順調に推移しているという評価がなされております。
 このタスクフォースの評価結果を基に,この委員会として追加的な調査を行い, CR1目標とアクションプランの進捗状況の連関についても,これは何度もこの委員会で御議論を頂きました。そうした連関の取りまとめ結果などを踏まえ,CR1までの目標は達成されていると判断したという主文が書かれています。
 第1文,「原型炉TFは」と主語が書かれていますが,3行目にもう一度主語が「原型炉TFは」と記載されているので, 2回目の「原型炉TFは」は削除します。
 第2パラグラフ,「その上で」以降は,主として前回御議論いただいた第5章に書いたCR2に向けた課題について重要なポイントをおさらいしています。CR2に向けた課題については,第5章でまとめたとおりであるということで,5.(1),5.(2)に書いたことを少しリフレーズした上で,CR2に向けた課題への迅速な対応が重要であると,委員会として迅速な対応を政府に求めるという記載になっています。
 さらに,「5.(3)に述べた通り」には,諸外国の情勢などを踏まえ,核融合発電の実現時期の前倒しが可能かについても技術的に検討を深めていく必要があり,その結果として,CR2で達成を目指す目標自体を見直す必要が生じるという点について記載しています。こうした難しい課題もあって,原型炉実現に向けては,研究開発が進んでいるものの,まだ道半ばであり,多くの課題を解決していく必要があります。そのためには,これも先ほどの指摘のリフレーズですが,核融合に必要な技術開発から学術研究まで幅広く取り組み,核融合に必要な広範な人材を育成・確保すること,そして,丁寧に社会の理解を得ながら,着実に歩を進めていくことが肝要であるという認識を記載しています。
 この原型炉に関するチェックアンドレビューですが,我が国のエネルギー安全保障,経済安全保障の確保と,カーボンニュートラル社会の実現という大きな政策的な目標を踏まえれば,原型炉に向けた研究開発の重要性は大きいと確信するという認識を示しています。
 また,原型炉に向けた研究開発における多くの課題を解決していくためには,原型炉設計特別合同チーム,あるいは原型炉タスクフォースなどにおいて,産学官のステークホルダーが結集して取り組んでいくことが重要であることを改めて指摘しています。そして,この原型炉という事業の性格に鑑みて,文部科学省傘下の審議会である核融合科学技術委員会に閉じない幅広い関係機関による今後の議論の深まりに期待をするということで帰結する形になっています。
 こちらにつきましては,上田主査に御執筆していただきまして,上田主査のお考えを十分に盛り込んだ文章になっています。
 以上です。
【上田主査】御説明ありがとうございました。本委員会は今年度において,今回が最後で,この報告書に関する議論も今回で一応最後にしたいと考えています。是非,この機会ですので,委員の皆様方から御意見を頂戴できればと思っております。御意見がございましたら,よろしくお願いいたします。兒玉委員,よろしくお願いいたします。
【兒玉委員】ありがとうございます。おまとめいただきまして,どうもありがとうございます。ものすごく分かりやすい報告書になっていると思うのですけれども,2点,少し気になるところがございます。
 1点は,6章のところの第3パラグラフの「カーボンニュートラル社会の実現といった大目標を踏まえ」のところです。これはものすごく重要だと思いますが,このキーワードを書く場合,原型炉だけだと極めてまずいと思います。実証,いわゆる経済,要するに,カーボンニュートラルというのは,恐らくもうCOP26で市場メカニズムが入ってきていますので,経済性を置いておいてという原型炉だけではなくて,ここは「原型炉・実証炉に向けた」と一言入れておいた方がよいというのが私のコメントです。
 もう1点は,4章のところの最後,新たに書き加えられたところにECRプラズマの点火,それから,トカマクプラズマの点火,と記載されています。専門家からすると点火というのは自明のように思われますが,点火ほどいいかげんな言葉はありません。アメリカでは,レーザー核融合の場合,点火の定義をしっかりされています。もしそういうECRプラズマの点火,トカマクプラズマの点火がどこかに定義されていれば,それを上げていただいた方が点火という表現は分かりやすいと思います。点火は分かりやすいようで分からない言葉なので,もしそれがあれば良いと思いました。
 以上です。
【上田主査】どうもありがとうございます。最初の御指摘の点ですが,確かに原型炉まで行けば,カーボンニュートラル社会に貢献できるというわけではないという御指摘は正にそのとおりかと思います。「実証炉」に相当する文言を入れるという方向でこの点は考えたいと思います。それから,「点火」についてですが,確かにこれはよくトカマクプラズマ点火条件とか,レーザー核融合の点火条件というところで,実は若干の違いがあり,少し不明確な概念であることは事実ですので,トカマクプラズマの実現とか,一般的な表現に変えさせていただくというのはいかがでしょうか。
 兒玉委員,どう思われますか。
【兒玉委員】結構かと思います。分からない言葉であれば,分からない言葉の方が多分よくて,「点火」と明確にすると,どこかに定義を求めたくなるのが普通みたいで,私もこういうのを聞かれて困っているところもあったので,提案させていただきました。
【上田主査】分かりました。ありがとうございます。それでは,御指摘の点は修正させていただきます。
 栗原研一委員,よろしくお願いいたします。
【栗原(研)委員】ありがとうございます。今の言葉の点で,一つの提案でございますけれども,点火というのは確かに,少しいろいろな意味を含んでいるというところもありますので,先ほど上田主査がおっしゃったように,例えばECRプラズマの生成とか,あるいはトカマクプラズマの生成はいかがでございましょう。
【上田主査】そうですね。生成であれば,もう少しそういう専門的な細かい議論にかからない表現かと存じますので,そのようにさせていただきます。御提案ありがとうございます。
【栗原(研)委員】ありがとうございます。
【上田主査】ほかにいかがでしょうか。
【岩渕戦略官】事務局からよろしいですか。
【上田主査】どうぞ。お願いします。
【岩渕戦略官】原型炉に向けた研究開発のところで,兒玉委員から「実証炉」といった文言を入れるべきとの御意見をいただきましたが,この原型炉以降の炉の名前が実証炉なのか,商用炉なのか。この辺はなかなか定義が不明確な部分があるので,炉というよりは,「将来の実用化に向けて,原型炉の研究開発の重要性は大きいものと確信する」のように修正してはどうかと考えましたが,兒玉委員のお考えと異なりますでしょうか。
【兒玉委員】それで結構かと思います。カーボンニュートラルが出たら,やはり「実用化へ向けた」という一言を入れていく必要があるので,その言葉が入れば結構かと思います。
【上田主査】ありがとうございます。それでは,そのように修正をさせていただきたいと存じます。
 ほかにいかがでしょうか。吉田善章委員,よろしくお願いいたします。
【吉田(善)委員】6ページに記載されている,「原型炉実現のための多くの課題を解決していくためには」の文章ですけれども,それを実施するのは「原型炉設計特別合同チームや原型炉TFなど」であり,そこにおいて産学官のステークホルダーが結集して取り組むということも書いてあります。この多くの課題を解決するためには,もっと大きな,正にオールジャパンの研究体制が必要だろうと思います。これは原型炉設計特別合同チームやタスクフォースだけで解決する問題ではないと思いますが,ここの表現はその2つの組織に限定されているように読めますので,正に,広く学術界を含んだ結集が必要だという表現にすべきであると思います。
 それからもう1点,ここにおいて重要なのが人材育成の問題で,やはりこの取組の現場で人材を育成していくということも強調すべきではないかと思います。
【上田主査】人材育成をもう1回強調するということでしょうか。
【吉田(善)委員】6ページの3つ目のパラグラフにおいて,学術研究まで幅広く取り組み,人材を育成・確保するとともにという部分があり,その後に,「社会の理解を得ながら」と記載されていて,ここはいろいろなことを総括的に書いています。その下のところに,原型炉実現のためには多くの課題を解決していく必要があるということが述べられているので,その課題を解決していくための方策について,もう少し踏み込んだ表現があっても良いと思います。
【上田主査】人材育成という部分についてということでしょうか。
【吉田(善)委員】そうですね。オールジャパンの研究者が集結するとともに,更に人材を育成していく必要があるというイメージがあった方が良いと思います。
【上田主査】そうですね。
【岩渕戦略官】事務局ですが,よろしいでしょうか。
【上田主査】お願いします。
【岩渕戦略官】まず1個目の御指摘ですが,合同チームやタスクフォースなどにおいてということで,合同チームタスクフォースだけでなくて,ほかの場で産学官のステークホルダーを結集するということも意図したつもりで,「などにおいて」と書いたつもりではあるものの,確かに改めて御指摘を受けますと,合同チームとタスクフォースに非常に重きが置かれているかのような感じもいたしました。修正案としては,「原型炉設計特別合同チームや原型炉TFを含め,産学官のステークホルダーが結集して取り組む」といった形ではいかがでしょうか。吉田委員のお考えと異なりますでしょうか。
【吉田(善)委員】それでいいと思いますが,もう一つの案としては,「原型炉タスクフォースなどが中心となり,オールジャパンの研究,人材育成体制を構築し」という書き方もあると思います。
【岩渕戦略官】事務局からよろしいでしょうか。
【上田主査】お願いします。
【岩渕戦略官】吉田委員御指摘の2点目,「産学官のステークホルダーが結集して取り組む」という部分については,人材育成も当然含まれますが,技術開発あるいは今後の社会とのリスクコミュニケーション,こうしたものも全て,この「産学官のステークホルダーが結集して取り組む」ということですので,人材育成のみをこの文章で書き出すということが妥当なのかということについて言えば,もう少しこれは包括的な意味を持っていると考えています。
 以上です。
【吉田(善)委員】分かりました。そういう意味では,「などにおいて」がややそこに限定している感がありますので「などが中心となり」という表現が良いと思います。
【上田主査】そうですね。
【吉田(善)委員】そこにおいてステークホルダーが結集するというと,原型炉合同チームや原型炉タスクフォースというものが「において」になってしまいます。そこに必ずしも属していないアカデミアの人も結集するというイメージの方が良いと思います。
【上田主査】先ほど言われた,「TFなどが中心となり」という表現ではいかがでしょうか。
【吉田(善)委員】そのような表現が良いと思います。
【上田主査】はい。それでは,そちらの表現に修正させていただきたいと思います。
 ここで改めて「人材育成」という言葉をまた出すと,少しそこに焦点が当たり過ぎる感じがすると思うので,今のところは修正を加えさせていただければと思います。
 ほかにいかがでしょうか。大野主査代理,お願いいたします。
【大野委員】先ほどの吉田委員のコメント,大変結構だと思いますが,先ほど岩渕戦略官の提案の方がより大学を含めたものが目立つかなという気がしたのですが。「中心」というよりも,「原型炉TFなどを含む産学官ステークホルダーが結集して」の方がより学の方も吉田委員の意図にかなうような気がしたのですが,違いますでしょうか。
【上田主査】なるほど。必ずしも「中心」というだけではなくて,ほかに大きな広がりがあると。必ずしも,それを合同チームやタスクフォースがコントロールするというか,中心で束ねるというイメージではなくてということですね。
【大野委員】はい。「など」も含むだと,もっと広がりがあるように見えるかなと思ったのですが,吉田委員の御意見を伺えますでしょうか。
【吉田(善)委員】私の勝手な個人的イメージかもしれませんが,やはりこういう大きいプロジェクトは,ヘッドクォーターが要りますよね。その中心があって,かつオールジャパンとして幅広くそういう人が協力しているような体制を構築するというイメージかなという気もしますが,それは特にこだわりがあるわけではありません。
【大野委員】是非吉田委員が言われるように,学とかそういうところがオールジャパンという体制に入れ込めば良いと思ったのですが,吉田委員が「中心」ということで結構であれば,私はそれ以上強く申し上げることはございません。
【上田主査】それでは,「中心」という表現で,かつ,それが大きな広がりを持つということを意識して書かせていただくという方向でまとめたいと存じます。
 大野主査代理,ありがとうございました。
 それでは,ただいま御指摘のあった点の修正を含めて,最終版としたいと思います。今後の内容の取りまとめ,修正に関しましては主査に御一任いただければ有り難く存じますが,よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 それでは,次に,チェックアンドレビュー2に向けた今後の作業見込みについて,岩渕戦略官から御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
【岩渕戦略官】事務局より御説明いたします。ただいま取りまとめを頂きました,チェックアンドレビューの報告書ですが,この報告書,今後のCR2に向けた作業の見通しにつきまして,現時点において事務局で考えている点を御説明いたします。
 まず今回の報告書の第5章において取り上げたとおり,発電開始時期の前倒し可能性,こうしたものを今後検討していくべきであるといった内容になっておりますので,この報告書を踏まえ,今後,1年程度をかけて,この発電開始時期の前倒しの可能性という問題について検討を深めていただく作業が必要となってまいります。この1年程度かけて行う追加的な検討については,QSTを事務局として,先ほども議論がありました原型炉設計特別合同チームにおいて,現場レベルでの技術的な検討を始めていただくということになります。
 また,現場レベルの検討の結果につきましては,原型炉のタスクフォースに報告を頂き,このタスクフォースにおいては,国内外の情勢を踏まえながら,御審議いただきたいと思います。特にCR2の達成目標自体についての変更があるのか,あるいはアクションプランについて変更があるのか,こうした点が審議の内容となってくると考えています。
 タスクフォースの議論を踏まえた上で,議論の経過をタスクフォースから委員会に報告をしていただき,本委員会として審議した結果,特にCR2における達成目標自体を見直す必要があるという結論になった場合には,この委員会において,CR2達成目標の変更を決定していただくことになります。
 以上のようなプロセスで,今後,CR2に向けた課題についての深掘り検討を進めていきますが,正に先ほど御議論がありましたとおり,この合同チーム,タスクフォースにおける審議の過程で,幅広い御意見をよく聞きながら作業を進める必要があるという点が正に議論されたところですので,こうした点をよく踏まえながら今後の検討をしていくことに尽きると思います。
 事務局で想定している作業の見通しは以上でございます。
【上田主査】御説明ありがとうございました。ただいまの御説明に対しまして御質問等ございましたら,よろしくお願いいたします。
 岸本委員,お願いいたします。
【岸本委員】先ほどの御説明とも関連しますが,結論の第3パラグラフの,CR2では,「達成を目指す目標自体を見直す必要も生じる」と記載されています。その後,「原型炉実現に向けては……道半ばである」という流れになっています。目標自体を見直す必要が生じるというのは,核融合研究が広い社会の関心を引いて加速する可能性があり,そのために目標を見直す必要も生じてくるといった,いい兆候であると受け取っていいのか,一方,原型炉実現は,未だ道半ばであり,多くの課題を解決していく必要があると記載されています。そのとおりの認識ですが,「いい兆候」と「未だ道半ば」といった表現の前後関係が少し分かりにくい印象があるので,その点を確認させていただければと思います。
【上田主査】御意見,ありがとうございます。まず基本的にその達成時期が今,21世紀中葉となっているところを,カーボンニュートラルが2050年ということ,あるいは世界の様々な国で核融合に資源を投入して加速の検討を進めている状況を勘案した上で,日本もある程度,そんなに大幅な加速というわけではないものの,少しでも加速できる方向に行けないかということで,まず原型炉実現の年限をある程度前倒しがもしできるとすれば,それに合わせていくということです。岸本委員がご指摘されたよい方向と言うべきか分かりませんが,ある程度前倒しをしたとすれば,それに合った形と現在の状況の両方を考慮した上での見直しになります。だから,よいというのはどのように理解するかにもよりますが,少しでも早くできるような形で考えられるものであれば考えたいということでございます。
【岸本委員】御指摘のようにいい状況というように見て取れた後に,道半ばであるという記載があることについては,そのとおりであるものの,トーンが下がった印象を少し受けました。カーボンニュートラル社会の実現に向けて核融合実現の重要性は大きいといった記載にした方が,流れとしては良いと思った次第です。このままで特段の異存があるわけではありません。
【上田主査】そうですね。岸本委員の御指摘の点は同じように感じますので,その前からの文章の流れで,5.(1),(2)を受けて(3)を書いた上で,一般的な視点ということにしたので,「原型炉実現に向けては」というところからパラグラフを改めた方がいいのかもしれません。ここのパラグラフがくっついているので,少し文章として違和感があり,岸本委員の言われるような若干トーンが下がった感じを持ってしまうのかなと思います。例えば,3つ目のパラグラフの5.(3)のところは,その前のパラグラフにくっつけて,「原型炉実現に向けては…」という記載は全体の報告書のまとめのような部分なので,改めて新しいパラグラフで始める形にすれば,文章としての違和感は少なくなると思いますが,いかがでしょうか。
【岸本委員】今までの論理展開がありますので,現状のままでもいいようには思いますので,上田主査にお任せしたいと思います。
【上田主査】ありがとうございます。
 ほかに。髙本委員,よろしくお願いいたします。
【髙本委員】第1回中間チェックアンドレビューの報告書の原案をつくっていただきまして,大変ありがとうございます。報告書について修正を求めることではございませんが,今後1年間の活動の方針も御説明がございましたので,その部分についてコメントをしたいと思います。
 報告書の5ページ(3)のところに,「これまで核融合にあまり関わりのなかった企業においても…」という表現がございます。これを達成するためにはやはり技術的にできている部分,あるいは,できていなく,非常に困難な部分というふうに課題ごとに要素を分けながら,そこの部分に協力いただける企業がいるのかという呼びかけ,アウトリーチ活動との連携も含めた発信が必要だと思います。そのことも是非今後の活動において検討していただきたいと思います。
 つくるという部分の企業技術連携もそうですけれども,投資を呼び込むというところも必要であると考えますので,諸外国のものを勉強しながら,日本流の投資,日本版の投資活動を参考にするような活動が必要かと思います。
 以上です。
【上田主査】ありがとうございます。今後の産業,広い意味で産業界との連携あるいは投資を呼び込むという部分は非常に重要と考えています。今後更に産業界の方々,特に現在,いろいろな形で強く御協力いただいている企業だけではなく,それ以外の様々な企業にも御理解いただいて,必要な御協力をいただけるように,アウトリーチのような活動を今後進めるということを考えています。御意見ありがとうございました。
【髙本委員】ありがとうございました。
【上田主査】ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。
 はい。ありがとうございました。
 それでは,続きまして,議事の2番目,「核融合分野令和3年度補正予算及び令和4年度政府予算案について」に入ります。これも岩渕戦略官から御説明をお願いいたします。
【岩渕戦略官】資料2に基づきまして,御説明いたします。核融合分野の令和3年度補正予算及び令和4年度政府予算案の概要です。
 まず1ページ目,令和3年度補正予算でございます。タイトルは,「核融合発電の実現に向けた基幹技術の研究開発」,令和3年度補正予算額は98億円です。核融合関係について,今年は例年と比べて非常に大きな額の補正予算の措置を決定しています。
 この非常に大きな額が認められた背景ですが,核融合の実用化に向けて2020年頃から核融合エネルギー開発に関する諸外国の取組が加速してきており,核融合ベンチャーへの投資の活性化や,核融合機器に関する国際競争といった情勢変化が出てきています。こうした中で,ITER計画等を活用して,研究開発を加速し,国際的な技術優位の確保を図る必要があるという点を満たすために,核融合発電の実現に向けた基幹技術の研究開発をITER及びBA活動の中で行っていこうということです。
 98億円の内訳を申し上げますと,ITERの関係が60億円,BAの関係が38億円ということで,中ほどの事業内容のところに記載しています。ITERの計画の中で,日本調達機器の研究開発を加速し,核融合実用化に必要な技術を他国に先駆けて獲得するという目的のために,60億円計上していますが,具体的には右の図に示した基幹技術の開発を行うということです。
 BAの関係での補正予算が38億円で,JT-60SA,将来の核融合炉の小型化に資する高圧力プラズマの研究開発において,右の図に示したような技術の獲得のために予算を組んでいます。
 以上が補正予算の御説明であります。
 続きまして,次のページ,令和4年度政府予算案です。ITER計画等の実施ということで,令和4年度政府予算案214億円を要求しております。昨年度と比べて,5億円の減になっていますが,令和4年度の補正予算案と並行して,この令和3年度の補正予算の98億円がありますので,この214億円と98億円を足して,前年度と比べると,非常に大きな予算増の予算案を国会に現在提案しています。
 令和4年度政府予算案の内容については,ITER計画において令和4年度173億円,BA活動おいては41億円という内容で組んでいます。ITERについては,ITERの調達活動ということで,ファーストプラズマのために必要な超伝導コイルの関係,そして,ファーストプラズマ後に必要となってくる基幹技術であるダイバータ等の開発のための予算,BAにつきましては, JT-60SAのほか,六ヶ所村で行っているIFMIF/EVEDA,IFERC,こうした活動に対する予算を含めて,41億円を計上しています。
 なお,NIFS,核融合科学研究所においても,令和4年度,前年と同様の予算を,国立大学法人運営費交付金の中で要求しています。
 以上です。
【上田主査】ありがとうございました。
 それでは,ただいまの御説明で御質問ありましたら,よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは,どうもありがとうございました。
 本日用意しております議事は以上ですが,このほか,特に委員の皆様から報告あるいは審議すべき案件はございますか。もしございましたら御発言よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは,最後に,文部科学省研究開発局の真先正人局長より御挨拶をお願いしたいと存じます。真先局長,よろしくお願い申し上げます。
【真先局長】1月に文科省研究開発局長を拝命しました真先でございます。昨今,新型コロナウイルスにより,対面ではなく,ウェブでの開催となり申し訳ございません。また,機会を捉えまして,先生方に御挨拶したいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日も含めまして,上田主査を始め,委員の先生方,また,科学官,学術調査官におかれましては,本委員会での様々な議題につきまして,いろいろ御議論いただきまして,誠にありがとうございます。今年度の核融合科学技術委員会では,第1回の中間チェックアンドレビューについて大変多くの時間をかけて御審議いただきました。現時点までの目標は達成されているという報告書をまとめていただきました。この報告書を踏まえまして,今後,原型炉に向けて研究開発を推進してまいりたいと思います。
 また,カーボンニュートラル社会に向けて,核融合発電の実現に向けた取組が正に国際競争に入ったことも受けまして,豊富な燃料,固有の安全性,高い環境保全性を特徴とする将来のエネルギー源として,国民の理解を得つつ,核融合発電実証の実現時期の前倒しが可能かどうかも踏まえまして,検討を続けていきたいと考えています。
 更に,本報告書では,発電に向けた様々な課題を御指摘いただきました。我が国としましても,ITER向けの調達活動の中で基幹技術の確保に速やかに取り組む必要があること,その取組を支えていくために幅広い人材を育成・確保することなど,様々な御指摘を今後の政策に生かしてまいりたいと思います。
 本委員会での審議結果については,幅広い関係機関による様々な議論にインプットしていきたいと思います。
 結びとなりましたが,委員の皆様のこれまでの熱心な御議論に心から御礼を申し上げ,また,来年度の本委員会における活発な御議論を引き続きお願い申し上げまして,私の御挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。
【上田主査】真先局長,ありがとうございました。
 それでは,皆様のおかげをもちまして,第1回中間チェックアンドレビューを取りまとめることができました。大変貴重な御意見を頂くとともに,様々な御議論を尽くしていただきまして,誠にありがとうございます。心から御礼申し上げます。
 それでは,本年度の核融合科学技術委員会はこれで閉会いたします。来年度も引き続きよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
 
―― 了 ――
 
 

お問合せ先

研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付

川窪、鈴木
電話番号:03-6734-4163

(研究開発局研究開発戦略官(核融合・原子力国際協力担当)付)