宇宙開発利用部会 国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会(第67回) 議事録

1.日時

令和7年1月15日(水曜日) 14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省3F1特別会議室またはオンライン

3.議題

  1. 国際宇宙探査及びISSを含む地球低軌道を巡る最近の動向
  2. 今後のISS及びポストISSの利用拡大に向けた我が国の地球低軌道活動について
  3. 今後に向けた民間企業・大学等の技術開発支援について ※非公開

4.出席者

委員

 臨時委員 中須賀 真一【主査】
 専門委員 高橋 忠幸【主査代理】
 専門委員 石井 由梨佳
 専門委員 金山 秀樹
 専門委員 倉本 圭
 臨時委員 高鳥 登志郎
 専門委員 竹森 祐樹 
 臨時委員 永山 悦子
 専門委員 若田 光一

文部科学省

 研究開発局審議官  橋爪 淳
 研究開発利用課長  嶋崎 政一
 研究開発戦略官  原田 大地
 研究開発戦略官付 課長補佐  川端 正憲

(アカデミア)
 同志社大学 高等研究教育院 特別客員教授  石川 正道
 群馬大学重粒子線医学研究センター 教授  高橋 昭久

(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA))
 理事補佐  川崎 一義
 有人宇宙技術部門事業推進部 部長  小川 志保
 国際宇宙探査センター センター長  山中 浩二
 有人宇宙技術部門宇宙環境利用推進センター 利用企画グループ グループ長  芝 大
 有人宇宙技術部門事業推進部 計画マネージャ  宮崎 和宏
 国際宇宙探査センター事業推進室 室長  伊達木 香子
 宇宙科学研究所 学際科学研究系 教授  稲富 裕光
 

5.議事録

【事務局】  本日はお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。事務局の文部科学省研究開発局研究開発戦略官(宇宙利用・国際宇宙探査担当)付の川端でございます。それでは、定刻になりましたので、ただ今より、国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会の第67回会合を開催いたします。
 まず、定足数11名のうち、会場4名、オンラインでの御出席は5名の、計9名の御出席がございます。過半数の定足数を満たしておりますところをご報告いたします。
 また、本日の会議は16時までの2時間を予定しております。よろしくお願いいたします。
 なお、本日は橋爪審議官が他の業務との関係で15時20分ごろに退出となりますことをあらかじめお知らせいたします。
 次に資料の確認をさせていただきます。議事次第をご参照の上、必要資料に不足等ございましたら事務局までお申し付けください。
 また、本日もお手元にマイク兼スピーカーをご用意しております。マイク手前側にあるスイッチを押していただくと、ボタンが赤く光り、御発言が可能となります。一方で、お一人ずつしかスイッチが入りませんので、ご発言後はマイクのスイッチをお切りいただきますようお願いいたします。
 なお、本日もYouTube配信を行いますが、議題3以降は非公開議題となりますので、議題3に入りましたらYouTube配信を終了いたします。以上でございます。
 
【中須賀主査】  主査の中須賀でございます。本日もお集まりいただきましてありがとうございます。今回も引き続きポストISSを見据えて我が国としての地球低軌道活動の確保に向けた議論を行ってまいりたいと思います。今日もぜひ最後まで活発にご意見いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、それに先んじて、まずは議題1として国際宇宙探査及びISSを含む地球低軌道をめぐる最近の動向について、事務局よりご説明よろしくお願いいたします。
 
<原田戦略官より資料67-1-1に基づき説明>
 
【中須賀主査】  ありがとうございました。それでは、皆さんの方から御質問、御意見ございましたら、よろしくお願いいたします。
この最後のLEOのMicrogravity Strategyというのは、米国政府の施策に対してどれだけ訴求力があるのでしょうか。
 
【原田戦略官】  すみません。こちらの方は詳細な分析をこれから我々の方でしていきたいと思っています。こういった科学をやるとか、こういった活動をやるとかいったことが比較的具体的に書かれているところもありますので、基本的にはNASAがおそらくこういった取組を、直接やる部分もあれば、外部のステークホルダー等を使って戦略に書かれていることを取り組んでいくのだろうというふうに理解しております。
 
【事務局】  1点補足させていただきますと、この戦略文書の中で、米国政府のLEO利用をしっかりと実施できるようにするというところがありますので、そういう低軌道環境をつくっていくというところが戦略上に書かれているということですので、そういう方針を出したという意味で影響があると思っています。
 
【中須賀主査】  これは今回初めて? 過去なかった方針でしょうか?
 
【事務局】  以前ドラフト版が出ていたのですが、今回制定版になったというものになります。
 
【原田戦略官】  予算的な裏付けをこちらで分析したのですが、おそらく今後もこういったものをベースにしながら、NASAとしては事業化を進めていくのだろうというふうに考えているところです。
 
【中須賀主査】  ありがとうございます。皆様の方からはいかがでしょうか。
ISSの利用等との関連でいうと、オーストラリアで開かれたAPRSAF-30の中で、アジア各国においてそういった利用を日本が支援しながら拡大していくという話というのは議論されたのでしょうか?
 
【原田戦略官】  先生もよく御存じのとおり、Kibo-ABCなどの取組をAPRSAFで実施しておりますので、今全体の概略をご説明差し上げましたが、APRSAFの中にいろんなワーキンググループがあり、その中にきぼうの利用に関するものもあると承知しております。
 
【橋爪審議官】  そうですね。やはり期待感は非常に大きかったと思いますし、特にきぼうの活用、人材育成なども含めて、大きな効果があるということで、いろいろ議論もございました。オーストラリアの宇宙飛行士の方も登壇されるなど、APRSAFの枠組みを通じて、このアジア太平洋地域の宇宙利用、その関心を高めることも含めてやっていこうということでの大きな関心を感じたところでございますので、引き続きこうした枠組みで我々も広げていければというふうに思っております。
 
【中須賀主査】  そうですよね。ISSとの関係でいうと、日本がアジアでは唯一ですよね。だから日本がいろんな利用を取りまとめて、彼らはどんどん利用することによって、ISSの利用が国内だけではなくてアジア圏で広がっていくということをすることが、正にこのISSだけではなくて、その次のポストISSに向けても大事になっていくだろうと思います。
 例えば、その時代になったら、もしかしたら今度はお客さんとして何かお金を出して使ってもらうという、そういった最初のインセンティブとか経験を与えるという意味で、このAPRSAFはすごく大事だなといつも思っておりまして、今おっしゃったように非常に関心が高まっているということで、ぜひ継続して頑張っていただければと思います。ありがとうございました。他にはいかがでしょうか。では、若田委員、お願いします。
 
【若田委員】  ありがとうございます。APRSAFには私も一部参加させていただきました。本当にアジア太平洋地域の皆さんからの日本に対する強い信頼感というのを、そういったところでお言葉をお聞きして頼もしく感じました。いま中須賀先生からお話がありましたが、ISSで培ったことを今後ポストISSでどういうふうにしていくかといったものを、APRSAFの参加国の皆様からの日本への期待みたいなものというのは何らかの形で議論されたのでしょうか?
 
【橋爪審議官】  ポストISSの議論についてはこれからの部分がありますので、今回はまだそこまで踏み込んでの議論はありませんでしたが、今後具体的化していく中でどうしていくかというのは課題かと思います。
 
【若田委員】  分かりました。ありがとうございます。
 
【原田戦略官】  この小委員会の議論も踏まえながら、我々も今、正にポストISSの議論をさせていただいていますので、今年以降、APRSAF 31等も通じて、ポストISSに向けた取組についても、アジアのみならず途上国の方には、日本のこういったアセットも使いながら宇宙に参画いただくような機会の場として、APRSAFを活用させていただきたいというふうに考えております。
 
【若田委員】  ありがとうございます。
 
【中須賀主査】  ありがとうございます。今の若田委員の御指摘はおそらくそういう雰囲気を掻き立てるだけではなくて、ではこういうスペックとか、こういうことができるようになるともっと使おうとか、そんなイメージを、あるいは彼らからの要望をしっかり集めて、それが今度はポストISSにおけるいろんなステーション等の設計とか、いろんなものにつながっていけばよい、そういうマインドですかね?
 
【若田委員】  はい。本当にアジア太平洋地域の皆さんがやはりきぼう利用でいろんな形で参加されて、そしてやはりJAXAさんとかMEXTの皆さんへの信頼というのは高いので、ポストISSにおいてもやはりLEO利用でやはり日本がアジアでリードしていくために、そういった各国からの要望とかそういったものをうまく取り込んでいくというのは必要かなというふうに感じております。
 
【中須賀主査】  ありがとうございます。とても大事なことかと思いますので、ぜひ次回以降のAPRSAFでどんどんもんでいただければと思います。ありがとうございました。他にはいかがでしょうか。
 アメリカがどうなるかというのは先行き不透明というのはあるのですが、少しトランプ政権になった中でいわゆるアルテミスがどうなるかというのは、例えばイーロン・マスク氏が入ってきたら、彼はやはり火星に行きたいんだろうと思うのですが、多少何か変更があり得そうな予想なのか、あるいは、いや何も変わらないと予想されているのか、その辺はいかがですか。なかなか言いにくいかもしれませんけれども。
 
【嶋崎課長】  個人的な見解になりますが、イーロン・マスク氏をはじめトランジションチームの一部の方が、アルテミス計画を念頭に、月を経由しなくても直接火星に行けるのだという発言をしていることは事実でして、月に関して言及しているのは主にSLSの開発が遅れていることを念頭に、DOGEを含めコスト削減という観点で無駄な政府プロジェクトを一掃するのだという中で影響は出てくるだろうと思っております。イーロン・マスク氏及びスペースX社はもしかすると月のプロジェクトなどは全然やらなくていいということもあるかもしれませんが、一方で、スターシップは月に直接行く能力があるのだというふうには聞いておりますのと、あと大事なのは、これも釈迦に説法で恐縮ですが、アメリカ政府予算案は政権から出されますが、予算は議会が最終的に決めるという中で、月のアクティビティは中国をはじめ様々な国が月における宇宙アセットというのをどんどん展開をしている中で、アメリカ及びライク・マインデッド・カントリーズの宇宙アセットが展開しなくてもよいと思う下院議員、上院議員はほぼいないと思われます。従い、宇宙戦略における月の重要性が揺らぐことはおそらくないのではないか。ただ、具体のGatewayあるいはアルテミス計画の中で、特にNASAの予算をどういうところに分配をしていくのか。インターナショナルパートナーのコントリビューションが増えることについては、逆に価値が上がる可能性がある。やってくれるのだったらどうぞという可能性もあるので、月はやりたいけれど無駄な投資はしたくないというところで我が国がどのように絡んでいくかというふうにも考えられるので、私個人としてはアメリカに行ったこともあって申し上げさせていただくと、アメリカの中で特に月はやらなくてよいのではないかという声があるのは事実ですが、だからといって日本も月に一緒に投資するとまずいのではないかというふうに必ずしも考える必要はないのではないかなというふうに思います。全くの私見でございます。
 
【中須賀主査】  大変よく分かりました。こういうことは今年しっかりとウォッチしていかなければいけない1年かなと思います。ありがとうございました。他、いかがでしょうか。お願いします。
 
【高鳥委員】  今のことに少し関連するのですが、新政権になって結構不透明なところがあると思うのですが、日米が共同でいろいろやってますが、結構負担金というのが今後増えてくるリスクがあるのかどうかといったところが少し気になるところではあるのですが、その辺りのリスクといいますか、もし何か要求されたときにカウンターでこの辺をやりますというような案を既に持ち合わせ臨まれようとしているのか、そこら辺はどういう具合なのかということを、まだ全く不透明だったらそれで結構ですが、教えていただければと思います。
 
【原田戦略官】  ありがとうございます。負担金について、具体的にはアルテミス計画及び既存のISS計画においてお金の出し入れとかは基本的には行っておりませんでして、現在はプロジェクトベースで日本政府として貢献するといった立て付けとなっております。我々が米国政府とコミットしているのは、例えば昨年4月に約束した月面与圧ローバの提供であるとか、あるいはGatewayに関する要素を提供するというところですが、こういったものを着実にやっていくというところにまずは尽きるのと、やはり月面与圧ローバについては米国政府、あるいはNASAが、日本のこれまで培ってきた技術力にある程度信頼を置いてこれの開発を日本側に委ねてくれているものですので、これをしっかり開発することによって月面における日米のパートナーシップを強化していくということに尽きるのかなというふうに思っておりま。もちろん、今後想定しているいろんなシナリオがありますので、ここでいろいろ申し上げることではないのですが、いろんな協力形態があるだろうということも見据えながら、JAXAなり我々の事務方内部でいろんなシナリオを検討していることもございますが、まずは、今約束していることを着実にやることによって、これまでもそういった形で日米間の信頼関係というのは維持・発展してきていますので、そこをしっかりやる。もちろんただそれだけではなく状況に応じて、いろんなオプションを今後やっていく必要があるだろうというふうに考えているところです。
 
【中須賀主査】  ありがとうございます。いかがでしょうか。では、そろそろこれで終わりにしたいと思います。御質問、御意見ありがとうございました。
 それでは、議題2に移りたいと思います。今後のISS及びポストISSの利用拡大に向けた我が国の地球低軌道活動についてです。今日の本題でございます。これまでJAXAや宇宙関連企業等からのヒアリングを行ってまいりましたが、今回は大学等のアカデミアからこのポストISSを見据えた現ISSの科学的利用促進の取組をご紹介いただきたいと思います。最初に、同志社大学高等研究教育院の石川特別客員教授より資料の御説明をお願いいたします。石川先生、どうぞよろしくお願いいたします。
 
<石川教授より資料67-2-1に基づき説明>
 
【中須賀主査】  石川先生、ありがとうございました。それでは、御質疑、御討論よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。高橋先生、お願いします。
 
【高橋主査代理】  ご説明ありがとうございました。微小重力実験は非常に大切なものだと思います。少しお聞きしたいのですが、先生が話された内容は非常に多岐にわたっていて非常に印象的なのですが、学会の規模というのはどのくらいなのかということをお聞きしたくて、これだけ広い規模だとすると多くの研究者が宇宙への応用を意識しながら自分たちの研究も進めていったらよいなと思うのですが、その辺はいかがなものなのでしょうか。しっかりと先生が説明されたような研究者たちが集まるような状況になっているのか、やはりまだ非常にある種限られた人間だけが宇宙を考えているのか、学会の規模とも関連しながら教えていただけますか?
 
【石川教授】  ご指摘ありがとうございます。まず学会の規模でありますが、現在我々の日本マイクログラビティ応用学会だけに限っていえば150名ぐらいですが、既に40年の歴史を持っておりまして、今はどちらかというとISSに実験が集約されて、テーマ数も減る傾向にあります。ピーク時で見ますと300名を超えておりました。
 もう一つ私としてはぜひ主張したいのは、我々は日本マイクログラビティ応用学会とあえて応用学会という名前を冠して40年店を開いております。これは微小重力で全く新しい科学が培われるというよりも、既存のそれぞれの物理学会、化学会、化学工学会、応用物理学会、そういったところで発明・発見されたものを、微小重力という場、宇宙という環境を使って、さらにそれにユニークな発見、あるいは技術を作り上げていきたいという、こういう思いで応用学会という名前を付けております。ということで我々の学会は、その都度プロジェクトを中心に、初めは毛利さんが行った第1次材料実験(ふわっと'92)のテーマに関する研究者が多く集いました。それが終了することによって、次はフリーフライヤーとか、日本のマイクログラビティ研究もファンディングが非常に充実した時期がありまして、この時にピークを迎えて、その時は本日ご紹介したようなテーマがたくさん芽生えたと。現在はELF、それから燃焼科学にほぼ集約して、材料科学者、それから燃焼科学者に限られたメンバーが宇宙実験で非常に活動をしていると。
 そういう意味で次のプロジェクトが起こっていけば、我々の場で、我々の知識の幅で、インターナショナルジャーナルということで最近インパクトファクターも取得して、オープンジャーナルということで公開して、知識の共有、データベース化も図っております。そこを通じてアジアともつながっておるわけでありますが、こういった非常に流動的、アメーバ的な運営形態をしておりますので、プロジェクトの進捗に応じて我々は柔軟に対応できるのではないかと自負しております。以上の説明でいかがでしょうか。
 
【高橋主査代理】  全くそのとおりだと思うのですが、一方で先生の資料に書かれた研究分野は物理学にしろ、化学にしろ本当に非常に広い分野に及んでいます。もしもこれからISS、ポストISSと、どんどん宇宙での環境が可能になってくると、今まで宇宙にも行かなかったような人たちが宇宙に可能性を感じて、基礎科学の人たちが入ってくる余地もあるのではないかと思います。宇宙での微小重力環境を使った分野をもっと広げるという観点で、特に基礎科学の人を入れていくと実は学生とかいろんな人たちが入ってき得るので宇宙を発展させるという意味ではよいと思うのですが、その辺何か作戦というのですか、お考えがあったらお聞かせいただけないでしょうか。
 
【石川教授】  ありがとうございます。その一つの試みは、宇宙惑星居住科学という、少々大風呂敷な看板なのですが、これを立てました。この下に現在大学・学会も含めて7つか8つぐらいの機関から賛同いただいて、それぞれ持ち回りでシンポジウムを開くとか、相乗りをするとか、テーマを共有するとか、そういう運営を宇宙惑星居住科学連合という名称を使って進めております。この中には教育活動も我々は入れておりますし、そういう意味での受け皿としては用意している状況であります。ただ、我々は願わくはやはり宇宙科学、微小重力科学は宇宙試験プロジェクトとタイアップしていくことによって多くの研究者を引き付ける。要するに宇宙実験というのはやはりまだ親近感がないし、なかなか経験・ノウハウも要るということを皆さんも既に知っておられますので、そういった位置情報を提供するということも可能でありますし、更には、プロジェクトの進捗評価、現在はELFとか燃焼科学については、学会の中で活発なセッションを設けており、そういう海外の研究者も入ってきつつありますので、そういった活動を更に活性化していきたいと考えております。ですので、まずは認知をしていただいて、お声掛けいただければ、いろんなメンバーがいろんな観点でアドバイス、場合によっては参画できるのではないかというふうに思っています。
 
【中須賀主査】  ありがとうございました。オンラインから3名御質問が出ていますので、永山委員、石井委員、竹森委員の順番でお願いします。それでは、永山委員、お願いいたします。
 
【永山委員】  石川先生、丁寧な御説明を頂きありがとうございました。3点伺えればと思います。1点目は、今の御説明の中で非常に幅広い分野の研究プロジェクトをご紹介いただいたのですが、日本がせっかく積み重ねてきたこの40年の蓄積ということを考えたときに、ぜひ大事にしなければいけない分野、若しくはこれは世界の研究者とは違う日本の強みであるというような研究分野がどの分野になるのかということをポイントとして教えていただきたいのと、それを今後伸ばしていくために何か課題として感じていらっしゃることがあれば教えてください。
 2点目ですが、挙げていただいた4つの研究分野の中で、水・空気浄化分野については、地上では日本は非常に強い分野なんだけれども、なかなか宇宙分野のコミュニティに研究者が入っていただけないということを御説明の中でおっしゃっていたのですが、それはどういう理由からなのか、どの辺が課題になっているのかということを教えてください。
 最後に3点目として、まとめのところでも書かれていましたが、最終的には月面でのいろいろな研究の実用化ということを目指されているのだと思うのですけれども、それをこの地球低軌道、ほぼゼログラビティの中で実験をしていくということが、この0.17Gは0Gと1Gを補間するというところ、どういう意義があるのか、そのLEOでの実験の意義というところをもう少し砕いて教えていただければと思います。以上3点、よろしくお願いします。
 
【石川教授】  分かりました。まず強みということでは、現在のISS運用においてある種の予算の削減の中で集中と選択の結果として顕著に出ています。一つは静電浮遊炉です。あともう一つは燃焼実験装置。この二つは現在も生き残って、米国の研究者の参画もELFについてはありますし、燃焼科学についてはNASAとのジョイント研究がずっと続いているという意味で、ほぼ他国をリードしているテーマになっております。この部分はある意味で順調に今研究が進んで、ELFについては惑星のその場資源利用に向けた新しい資源を対象として物性科学を解明しようとかテーマ開発も行われています。今の実績ではガラスの科学においては非常に大きな貢献をしていると。それから、惑星地球科学ですね。マントルとか高温・高圧の通常サンプルを採れないような所を模擬的に予測するという意味で、酸化物を使った物性計測、これは今ELFの独壇場になっていて、他の国が特にドイツは磁性浮遊ということでスタートしたのですが、磁性は磁性を持っている材料でないと扱えないということで、結果的にELFは酸化物を中心に、それから磁性を持たない材料まで計測が可能ということで、非常に脚光を浴びつつあるという意味においては、これを更に発展させたいと思っております。
 それから燃焼装置については、燃焼は脱炭素に向けても省エネ技術、ボイラー技術、それから月面ではやはり越夜、あの寒い時間を過ごすためには蓄電池はもとより、やはり熱・電気が絶対必要だと我々は確信しておりますので、そういったところのハンドリングに向けてプロジェクトの拡大を目指したいと。これについてはある意味では認知を頂いておりますので、引き続きフラグシッププロジェクトを含めてテーマ開発をしていきたいと思っております。引き続きの支援が頂ければ進められるかなと思っています。
 次の浄化に関するところですね。この環境技術は日本では空調技術とかその他の重工会社のボイラーとか発電技術とか、そういったものを含めて非常に幅広いところがあって、地上でのビジネスが非常にビジーなせいか、なかなか宇宙にこれまで目を向けていただけなかったという実態があります。相手にされなかったということですね。そういう意味で今、民間宇宙利用というのが活性化する中で、ちょっとやってみようかなという企業さんがちらちら出てきております。例えば私の周りですとダイキン工業さんとか、そういった企業さんがやってみたいという声を上げるようになりましたので、何とか逃がさないようにしたいなというのが実態でありまして、この辺は皆さんは非常に安定した量産化技術を持っておりますので、しかも低コストで軽量ですね、しかも省エネですよね。だからこういう技術を使わない手はないというふうに思っておりますので、新規プロジェクトの立案が非常に今は肝かなと。それでうまくはまれば必ず有力な企業さんが入ってくるという状況にありますので、ここに集中して知恵を出していただくワーキングとかを設置していただいたら、私もやぶさかではありませんし、進めることは可能かと思います。
 それから最後は月面の低重力についてLEOの0Gの研究と何の関係があるのですかというようなところですが、我々が無重力実験をやっておりますと、重力下での比較対照実験ということで0G科学というものを構築してきたわけですが、それが1Gである場合と、それから6分の1G、場合によっては10Gとか多重力ですね、そういったものと比較することは非常に有益であると。と申しますのは、物理現象によって敷居となる重力があるのですね。要するに非常に高品質の無重力、10-4Gとか10-5Gが要る物理現象もあれば、実は界面現象は10-2Gとかは6分の1Gって結構クリティカルでして、省エネとかのそこでの極限技術というのは、その環境に合わせてギリギリ調整するものでありますので、一つのリミッティングケースとして0Gを知っておくというのは必須であり、それとの比較の中で一次技術というのが一番我々としてはこなれた習熟した技術でありますので、これをどこまで簡略化できるか、あるいはより変形すべきか、そういったものを極めるところで6分の1Gというのは非常に魅力的。それが私が申した0Gと1Gをつなげる6分の1Gの価値でありまして、特にここに環境維持技術、それから流体を使った熱エネルギー技術ですね、この領域が入っているというのが私が狙っているところであります。この部分は、我々が持っているある種の勘でありまして、ぜひそういったところを、LEOの研究を含めて深めて実証していけば、それが発展として月面での基盤技術、生活技術、リサイクル技術とかそういった環境技術含めて、なる可能性があると見込んでます。それは同時にこれから迎える地球温暖化という中で、脱炭素の技術も同時に波及する、正しくスペース・地球デュアル技術といったところを狙える分野でありますので、産業界、先ほどの2つ目の浄化技術の企業さんの勧誘等を含めて狙っていけるのではないかなというふうに期待を掛けております。いかがでしょうか。
 
【永山委員】  大変丁寧な御説明を頂きまして理解が進みました。ありがとうございます。1点だけ確認なのですが、1点目の今後強みを生かしていく、将来につなげていくところで、支援というお話をおっしゃっていましたが、それは資金的な支援でしょうか、それとも時間的、その機会の支援を増やしてほしいのか、どの辺りを先生はポイントとして支援とおっしゃったのでしょうか。
 
【石川教授】  ありがとうございます。私は今、物質科学のきぼう利用推進有識者委員会で委員長をやっていますので、ぜひ必要になれば、ポストISSで今のELF、それから燃焼実験装置のバージョンアップを果たしたいと。やはり使い込んでいきますと、ここをこうすればよかったよねという技術課題がいくつか挙がってきて、これを改良することによって更に実験精度がよくなる、更に競争力が高まる。そういった意味で、もう一回それをリファービッシュする機会をポストISSで与えていただきたいと。それを頂ければ、現在それを支えている科学者、それから企業さん、エンジニア、JAXAさんの職員さんも含めて今はまだおりますので、そういった方々のノウハウと経験を集約して、次の世代に、あるいはビジネス界に、企業さんに、トランスファーできる。宇宙実験はともかく経験とノウハウ、実績の要る分野でありますので、この技術を今トランスファーする仕組みを作ることが非常に重要であるというふうに思っております。そういう意味で、支援いただけるものは何でも頂けたらよいと思っておるわけでありますが、いかがでしょうか。
 
【永山委員】  ありがとうございました。以上です。
 
【中須賀主査】  ありがとうございます。あとまだ3名質問があって、時間が大分押しておりますので、簡潔に質疑をやっていただければと思います。では、石井委員、お願いいたします。
 
【石井委員】  石井です。本日は貴重な御報告を頂きましてありがとうございました。2点ございまして、なるべく簡潔にご質問したいと思いますが、1つ目は、最後にあった日本に優位性のある地上技術の橋渡しというところとの関係で、優位性のある技術については既にご説明いただいたと思うのですが、これをそれからその惑星居住科学というところにつなげていくためにどういった課題があるのか、もう少し教えていただければと思いました。
 また、特に2016年以来NASAが既に民間企業と、惑星における居住システムとか設計について協力しているという、既に検討が進んでいるという中で、そういった取組と照らした場合に、どういったところで優位性を確保できるのか、もう少し詳しく教えていただければ幸いです。
 2点目は、既にアメリカとかドイツ等との共同研究をされているというお話がありましたが、そういった国際的に研究協力をしていく上で感じていらっしゃる政策的な課題があれば教えていただければと思います。よろしくお願いします。
 
【石川教授】  まずは最初の方の橋渡しなのですが、この部分は私の経験からすると、当初は毛利さんのふわっと92材料実験の時に日本の実験装置をNASAそれからアメリカの研究者に売り込みに行きました。売り込んでいた時にけんもほろろにいわれたのは、実績ないよねと。フライトしていないよねと。相手にならないよという。宇宙実験の世界で実績がないというのはこんなにつらいことなのかという思いを痛烈に感じまして、やはりその認識は特に宇宙業界では強いと思うのですよね。特にアメリカとかロシアとか経験のある所からすると、どんなに高度でも実績のない実験装置なんて相手にならないと。要するに故障したら大変なことになるよねと。それだったら性能が低くても故障しない、故障したらいつでも対応できる方がよいのだという、非常に安全サイドに振っているということがあると思うのですよね。ですので、まず日本の企業さんの技術を宇宙実験をさせて、それがLEOであろうが月面であれば何でもよいのですが、ともかく飛ばせて、耐震設計させて、輸送に耐えて、人の手が離れたところである期間ちゃんと作動して、データ出して、結果出すと。この実績を積ませない限り相手にされないという思いが強いのですよね。ですので、とにかく先導的プロジェクトというのは経験を積んでいただきたいと。それがあれば次に行けますと。それがなかったらもう相手にされませんと。この閾値を超える経験を積んでほしいなと。これが課題だと思っております。
 国際協力、海外の人たちと渡り合う中で、これまでどうしても国の壁があったと。我々は中国の研究者と初期は非常に仲良くできたのですよね。ところがある時からその人たちが皆いなくなって突然若い人たちが来て、何かすごく英語ぺらぺらの中国の若い研究者が入ってきて相手にされなくなったのですよね。やはりこの政治の変化というのは痛烈に感じたし、まだ当分続くのだろうなと。でもそれは終わるよと。いつかはまた協力するときが来るという思いを持っております。ですので、正しく競争と協調。切磋琢磨と、それから協力していくという、この二つのパスを絶えず用意していくというのが、私がぜひ日本の宇宙開発であってほしい姿だなと思います。協調できる人も相手にはいますし、だけどできない人もいるし、プロジェクトによってはシャットアウトされることもあるし、場合によっては入れ込まれるが体よく単に協力させられるだけというようなこともあり得るかもしれないので、その中で我々は採るべきものを採っていく、そういうしたたかさを養っていく、そういう人材育成も必要かなと思っております。
 
【原田戦略官】  石川先生、丁寧なご説明どうもありがとうございます。あと二人ほど質問があるのですが、時間の関係で、次の議題の方に移らせていただければと思います。大変申し訳ございませんが、質問を後ほどお送りさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【石川教授】  すみませんでした。ありがとうございます。
 
【中須賀主査】  先生、ありがとうございました。すみません、竹森委員、倉本委員、後で書面で送っていただいて、先生に送らせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、次に群馬大学重粒子線医学研究センターの髙橋教授より資料の御説明をよろしくお願いいたします。
 
<高橋教授より資料67-2-2に基づき説明>
 
【中須賀主査】  髙橋先生、ありがとうございました。それでは、御質疑、御討論よろしくお願いいたします。高橋先生、どうぞ。
 
【高橋主査代理】  大変興味深いお話ありがとうございました。少し技術的な質問なのですが、4頁に新規治療薬シーズの創出と書いてあるのですが、これは微小重力がある種の影響を及ぼすような実験になっていると思ってよろしいのでしょうか?
 
【髙橋教授】  はい。そのとおりです。微小重力によって起こる筋萎縮や、また、骨粗しょう症等を防ぐ、そういったものを宇宙での実験の基礎研究的な生命の仕組みも紐解くことによって、こういった薬のシーズの創出につながったものとなります。
 
【高橋主査代理】  特に放射線防護とか、がんの治療薬とかというところでは?
 
【髙橋教授】  放射線に関しても、それらの候補となる薬が地上で放射線を当ててみると放射線防護効果があったということを後にも研究が進んだと聞いております。また、園下先生のがん治療標的なのですが、これも本当に不思議なことで、がんの治療薬が微小重力になると効きにくくなるかもしれないというような地上での研究をされて、ただ、それはあくまでも地上の模擬のを微小重力環境の装置を使ったものであるので、それが本当に宇宙の微小重力でどうなるか、それを確かめたいということで今度、大西宇宙飛行士にISSでその実験をしていただく予定となっております。
 
【高橋主査代理】  日本だけではなくてよいのですが、ISSでこういう治療薬の実験が行われて、それが最終的に死の谷を越えて本当にお薬に使われるようになったというのはどのくらいあるものなのですか。
 
【髙橋教授】  そこは具体的に本当に薬になったかどうかまでリサーチできていないのですが……
 
【中須賀主査】  どうですか、JAXAさんの方から。
 
【JAXA小川部長】  薬になったものというのはまだ上市されたという意味ではないかと思います。上市の手前のいわゆる第3相の臨床試験まで行っているものというのはありますが、上市まではまだ行ったとは聞いておりません。
 
【高橋主査代理】  米国も含めてですね。日本は限られていると思うのですが。
 
【JAXA小川部長】  米国は確かERDか何かがあったと記憶しているのですが、日本ではまだないです。すみません、米国の方の情報までは把握できておりません。
 
【高橋主査代理】  日本のアクティビティが必ずしも活発ではなくて今状況がこうなのか、その辺のところを教えていただきたいと思いました。アメリカはISSを使って沢山の成果が出て、治療薬までつながっているようなことになっているのでしょうか。
 
【JAXA小川部長】  アメリカも一から宇宙実験で研究していますが、そこから上市まで至ったというのはないと認識しております。既に薬になっていたものをマウス等に投与して試験を行ったというような実績については記憶にございます。その意味では先生が今おっしゃったように、日本がアメリカに劣るというものではないと思いますし、むしろメイド・イン・ジャパンではありませんが、宇宙環境でのタンパク質結晶生成からゼロから始めて、構造を解析し、その中から薬の治験に当たるようなものまで進展しているものがあるという意味では、日本の方が進んでいると自分としては自負しているところです。
 
【高橋主査代理】  分かりました。ぜひ宇宙を使ってほしいって思っている者なので、その観点で質問なのですが。もう一つ質問があって、学会の話が出ていたのですが、分子イメージング学会とか癌(がん)学会とかで宇宙のセッションがある、私は記憶にないのですが、こうした学会とのリンクはないのでしょうか? 例えばがんを研究されている先生に聞いても、宇宙で何をやっているのかとか、日本がマウスの実験が得意だよとかという事実は少しも御存じなくて、その辺いかがなものでしょう。
 
【髙橋教授】  ありがとうございます。正に宇宙でがん研究というのは、実際にこれからなのです。マウスを使った担癌実験は世界で誰もやっていない。それを僕がやりたいというので今準備をさせていただいていますので、先生、ぜひお待ちください。
 
【高橋主査代理】  ごめんなさい。そうすると、戻ってきてから解剖するのですか? それともISSの船内でin vivoで見るのですか?
 
【髙橋教授】  今回JAXAが発光イメージング装置を打ち上げていただきましたので、非侵襲的にがんの進行、肺転位を光らせて見てみたいということ。僕自身のアイデアとしては、宇宙に行くと微小重力になって免疫のもとになる免疫組織、胸腺が萎縮するということが報告され、これまでにもがんの進行が進むだろうということはいわれていたのですが、誰もそれを確かめたことがない。JAXAはマウスを飼育できる装置もあり、なおかつこの発光イメージング装置を打ち上げているので、この研究をしないわけにはいかないというので、今準備をさせていただいていますので、ぜひ宇宙実験の移行審査をしていただければと思っています。よろしくお願いいたします。
 
【高橋主査代理】  ありがとうございました。
 
【中須賀主査】  お時間の関係であと1問ご質問あればと思いますが、いかがでしょうか。どうぞ。
 
【若田委員】  非常に御示唆に富むコメントをたくさん頂きましてありがとうございます。先生がおっしゃったように、やはりシームレスにISSからポストISSにつながっていくということとか、そういったところを含めてポストISSの実験の民間公募を早めるとか、それから、宇宙実験後の解析等に関してまた支援が必要だということがあると思いますので、やはりISS、きぼうを使い尽くすというのと、ポストISSで実験を継続するというのは、実は相反する命題である可能性があると思うんですよね。最後まで2030年までISSに全力投球してしまうと、そこで終わった時にギャップが生じてしまうというのがあると思うのですが、例えば米国のISSのナショナルラボとかの取組とかがあると思うのですが、この今日ご提案いただいたものの中で、やはりシームレスに低軌道をライフサイエンスで継続していくときに一番力を入れなければいけないところはどこになるでしょうか。
 
【髙橋教授】  装置ではないでしょうか。やはりプラットフォームとなる装置をしっかりとビジョンを持って作っていただく。そして、どんな装置ができるのかというのが分かってくれば、また提案した内容もそれに合わせて実験計画を変えることもできますので、そういう意味でも今からポストISSに向けた、もうとにかく低軌道を使った宇宙実験というものは公募してもよいと思います。それが民間に移って、その装置がどうなるかによってまたそれは研究者も知恵を絞りますので、少なくとも準備期間というのはどうしても必要なので、ISSが終わってからポストISSの公募を始めたのではもうそこにギャップができてしまうので、今から。もう5年しかない。今でも申請してから宇宙実験できるまで4年間掛かる。僕なんか8年も掛かりそうです。そういう意味でも今から公募は必要だと思いますので、大きな枠でぜひ宇宙研究の公募をスタートしていただきたいと思います。ありがとうございます。
 
【若田委員】  ありがとうございました。
 
【中須賀主査】  ありがとうございました。まだあるかもしれませんが、お時間ですのでこれで終わりにしたいと思います。髙橋先生、どうもありがとうございました。
 
【髙橋教授】  皆様、ありがとうございました。
 
【中須賀主査】  それでは、続きまして次の議題に移りたいと思います。今後の地球低軌道活動に関する取りまとめの方向性について、事務局より説明をお願いいたします。
 
<原田戦略官より資料67-2-3に基づき説明>
 
【中須賀主査】  ありがとうございました。それでは、皆さんの方から御質問、御意見ありましたらよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。
 
【高鳥委員】  どうもご説明ありがとうございました。3頁のところの科学研究・イノベーション創出機能の強化のところに書いてある研究開発ラボ体制の構築というのは具体的にどのようなものなのかをお聞きしたく、アメリカでISSナショナルラボとかがあるのですが、そういったものを日本でもやろうとしているのかということと、後は、もしそういうことであれば、ISSナショナルナボの話だと民間企業も巻き込んだ形でいろいろ取組を進めるという話が確かあったかと思うのですが、そういったことも想定しているのか、それはオープンイノベーション共同研究というところにつながっていくのか、その辺の関係というのを教えていただければと思います。
 
【原田戦略官】  ありがとうございます。これは我々の素案ですので、今日の委員の皆様からの御指摘を頂きつつブラッシュアップしたいと思っています。御指摘のとおり当然アメリカのISSナショナルラボの仕組みのようなものも参照しつつ、先生にご指摘いただいたとおりオープンイノベーション的な機能もございます。正にここで科学研究やイノベーションの種を作る力を付けながら、ものになりそうなものは民間事業者の方や、あるいは別の大学とか国研の方に入っていただいて、それぞれの得意とする分野でつなげていただく。民間事業者の方はそういった種を作ったものをやっていただく、さらに事業化をしていただくというような仕組み作りをやりたいと思っています。ただ、ISSナショナルラボといったような取組も参照としますが、やはりアメリカは巨大な予算を持ってやっているところもありますので、我々はなかなかそこまで資金的な余裕があるわけでもなく、うまくどうやれるかというのは限られたパイの中で効果的・効率的な体制をどうすべきかをこの小委員会も含めて検討していきたいと考えているところです。
 
【中須賀主査】  それでは、オンラインから永山委員、お願いします。
 
【永山委員】  ありがとうございます。ご説明ありがとうございました。挙げられているポイントは確かに本当にこれはそれぞれ進めていかなければいけないなと思いながら拝見したのですが、先ほどの群馬大学の高橋先生のお話にもありましたが、やはりJAXAさんに求められているミッションが非常に幅広くなって、さらに今後民間の事業者さんが多く参画されるとなると、それぞれの方に伴走していくという形も必要になってくると思います。
 また、一方で宇宙戦略基金の方の運用というものもJAXAさんはやられるようになっておりまして、従来のJAXAさんのノウハウももちろん重要なのですが、そういったトランスレーショナルな分野に長けた方ですとか、そういった組織ですとか、JAXAの方でかなり整備していかないと、うまく回っていかないのではないかな。民間の方来てくださいといっても、先ほどの先生方のお話にもありましたが、ノウハウも分からない、メリットも分からない、どうしてよいかも分からないしという方たちをどういう形でJAXAさんがフォローしていくのか。そのための実際の具体的にいいますと人的体制というのをどう考えていらっしゃるのか。その辺りをやはり書き込んでおかないと絵に描いた餅になりかねないかなというのが心配な点ですが、いかがでしょうか。
 
【原田戦略官】  ありがとうございます。御指摘のとおりでございます。JAXAは今様々な業務を抱えており、ISSのみならず探査もやっておりますし、ロケット、衛星もありまして、人的なリソースが逼迫しているのが実態ですので、そういう意味では例えば先ほどの質問とも関連しますが、ラボの体制について、いきなりJAXAが丸抱えをするわけではなくて、バーチャルなラボラトリーといいますか、関係する国研など大学の方との例えばクロスアポイントメントといった形のやり方を最初は取らざるを得ないのかなと思っております。
 関連するのですが、4頁目で書かせていただいた伴走支援というのも、ここの助言機能のところに若干相反することが書いてあるかもしれないと思っているのが、JAXAが自らやるというよりは、JAXAで例えば営業活動とかは得意ではございませんので、こういった営業活動的なものに関してはこれまでの小委員会でも最近プレスリリースされたSORAxIOのような取組や、あるいはSpace BDさん、JAMSSさんのような、ああいった利用の裾野を広げたいネットワーク、あるいはクロスユーさんも発表いただきましたが、そういった営業活動を得意とされる方々もいますので、そういった方とうまくパートナーシップをして、協力する体制をうまく作るということが大事かと思っております。餅は餅屋でやるといいますか。商社さんのような方も最近は関心を持っていただいておりますので、バリューチェーン作りみたいなところはそういったところでやる。そのためには当然リソースが必要になるためそこは我々としても努力しなければいけないのですが、そういった形で全てJAXAが丸抱えするというよりは、できるところは餅屋である程度やりつつ、うまい仕組み作りというのを知恵を使ってやらざるを得ないかなというふうに考えております。
 補足的になりますと、丸3の総合的な基盤の強化というところで、事業者さんからのヒアリングでこれまでご意見頂きましたが、そもそも低軌道を何に使えるか分からないといったところや、言葉を翻訳する方がいないといった意見もございましたので、言葉がかみ合わない一般的な事業者と宇宙をやっている人の橋渡しをする、トランスレートするような人材育成支援を書かせていただいているのは、そういう人材を大規模に育てるというわけではないのですが、できればそういった人材育成をこの施策プログラムパッケージとさせていただくことも今検討しているところでございます。
 
【永山委員】  ありがとうございます。もちろん餅は餅屋に頑張っていただいて協力いただくというのはとても重要だと思うのですが、やはり日本にとって宇宙の研究機関というのはJAXAさんしか基本的にはないわけですので、やはりそこの体制をきちんと整備していく、強化していくということも避けては通れないのではないか。これだけ宇宙分野に対する期待が大きくなっているので、将来は実際大きくなるということを考えた場合には、そこの体制強化ということもできれば書き込めればよいのではないかなと個人的には思いました。以上です。
 
【中須賀主査】  ありがとうございます。正にその体制はすごく大事で、どういうある種のコンソーシアムといいますかコミュニティの設計をしていくかですよね。JAXAさんはもちろん入って、営業する人も必要で、それから投資家みたいな人も入ってくる必要がある。このお金は国のお金だけではなくて、何か種が出てきたらスタートアップを作ってそこに投資をするような、こんな世界も作っていかなければいけない。その辺の設計はおそらくものすごく大事で、ぜひそこをいろんな人の話を聞きながら作っていっていただいて、この小委員会等でも議論させていただきながら完成していきたいなと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。高橋先生、どうぞ。
 
【高橋主査代理】  関連してなのですが、当面の取組の方向性のところで、丸1は研究のことが書いてあるのですが、そうすると高いレベルの研究をやるというのが指導原理になるわけですよね。そうすると例えばトップダウンでやるのかとか、ボトムアップでやるのかとか、その双方に必要なピアレビューというのが出てきて、そういうことをきちんとやらないと余りうまくいかないのではないかと思います。下手をすると足の引っ張り合いになってしまうし、日本では人口が少ないので、評価する人たちはお互いが競争相手だったりするような状況も生じているような中で、どうやったら世界のトップに行くような研究をやるかということについて、ぜひご検討いただけたらと思います。正直なところ、現在この辺がうまくいっていないと思います。これを機会に何か新しいやり方をできるとよいなと思うので、よろしくお願いいたします。
 
【原田戦略官】  ありがとうございます。3頁目の研究開発ラボの再生で、実はこの小委員会でも何をやるかというのは我々としてもこの小委員会において、戦略的にある程度トップダウンで決めるところはあるかと思っております。これまで石川先生なり髙橋先生から頂いたものとか、あるいは民間事業者の方が関心がある、日本の得意とする事業分野においてやりたいことというのは、ある程度戦略的にやるというところで、ここの小委員会において少し議論を継続させていただきたいというふうに思っております。他方で、使い尽くすという観点では、全て決めるのではなくて、ある程度どういったものが売りになるのか、強みになるのかといったことを試す場というところの、そのポートフォリオマネジメントをやれるようにしたいと考えております。
 
【中須賀主査】  ありがとうございました。今のところで、どの分野までやるかというのをこの小委員会で議論するのですか? いや、そこはもっともっとちゃんと調査をしたり、いろいろ分かっている人たちとの間で議論を戦わせた上で決めていくべきものであって、それを起こすための仕組み作りをこの小委員会でやることはよいとは思うのですが、そこで決めてしまうと、本当に議論が十分尽くされていない状態で決めることになりかねないかなということ、少しそこは不安なので、そこはうまくやっていただきたいなと思います。
 
【原田戦略官】  分かりました。当然全てを決めるということではなく、これまでプラットフォームの議論、正にこれまでのISSの実績等も踏まえながら、継続は力なりというコメントもございましたが、そういったところをある程度継続させつつ、当然先生がおっしゃるとおり全てを100%決めるのではなくて、どこを伸ばすべきかというところなど、できるところをちゃんと起こすというやり方で進めさせていただければというふうに考えます。
 
【中須賀主査】  それでは、オンラインから石井委員、これで最後にしたいと思いますが、よろしくお願いします。
 
【石井委員】  ありがとうございます。1点目は今の議論とも関係するのですが、官民連携の在り方についてもう少し詳しい書き込みがあるとよりよいのではないかと思いました。今トップダウンという話が出ましたが、ただ、そのポストISSにおいては企業主導でやっていかなくてはいけないところが大きくなりますので、というのが1つ。
 後は、ヒアリングの中で、もう民間の側でもいろいろ模索しているということも出ましたので、そのヒアリングの成果がもう少し正面に出てくると、より充実したものになるのではないかと考えました。
 もう1つは、政府としてできることとして、国際的なルールメイキングがあると思うのですが、これは正にヒアリングの中でいくつか要望があったと認識しています。例えばJAMSSさんのヒアリングの中でNASAやCLD企業との間で日本企業の不利にならないような枠組みを調整していくことが要望として出されていたと思うのですが、そういったこともやっていくといった、その方向性も示されているとよりよいのではないかと考えました。以上です。
 
【原田戦略官】  ありがとうございます。6頁目の4ポツ以降で、各主体の役割分担といいませんが在り方ということで、基本的なやり方は物事に応じてある程度不断に見直す必要があるというふうに考えていますが、JAXAの在り方としましては、基礎的、基盤的な研究はある程度例えばJAXAが担いつつ、ビジネスにつながるものは民間と共創する、基礎科学においても、ある程度それを得意とする研究者の方、国研とか大学がいれば、ある程度共同研究を行う等という形で、もう少し御指摘のとおり精緻に記載したいと思います。
 また、政府の役割としましては、制度整備ということがございまして、こちらの方は関係国、パートナー国との関係性もありますので、なかなか我々だけでこうするという方向性を今かちっと決められるわけではないのですが、今後のポストISSに向けて必要な取組ですので、そこも記載させていただいていただきたいというふうに考えます。以上です。
 
【石井委員】  ありがとうございました。
 
【中須賀主査】  以上で質疑を終わりたいと思いますが、これはこの後どういう形でブラッシュアップしていくのですか。
 
【原田戦略官】  冒頭申し上げましたが、今期のISS小委員会が第12期なのですが、これが2月(来月)の上旬までとなっていますので、一旦そこでその方向性という形での何らかのピン留めというわけではないですが、報告書的な体裁にさせていただければと思っています。他方で、先生もご指摘いただきましたが、そのより精緻なアクションプランみたいなものを延長戦のような形で次期の小委員会で継続できるかどうか、そこは事務的にも検討させていただければというふうに思います。
 
【中須賀主査】  はい。ただ、余りもう時間がないので、どんどん時間が経ったらISSの終点に近付いてきますから、なるだけ早く議論していきたいと思います。
 
【原田戦略官】  承知しました。来月に向けては、こういった場もありますし、メール等のやり取りも含めて調整をさせていければというふうに思います。
 
【中須賀主査】  ありがとうございます。それでは、以上で議題2を終わりにしたいと思います。議題3に入りますが、その前に事務局よりご連絡をよろしくお願いします。
 
【事務局】  事務局です。議題3は非公開議題となりますので、YouTube配信をここで停止させていただきます。その前に2点、事務局よりご連絡いたします。1点目ですが、きぼう利用シンポジウムについてです。映像が映るかなと思いますが。来月の2月3日にJAXA主催できぼう利用シンポジウム2025が東京ポートシティ竹芝で開催予定でございます。詳細はWeb等を見ていただければと思いますが、ぜひご参加いただければなと思っております。
 あと2点目ですが本日の議事録は非公開部分を除いて文科省のホームページに公開いたします。また、資料は非公開資料を除きまして既にホームページに今掲載しております。次回の小委員会においても引き続きポストISSについてご議論いただく予定でございます。具体的な日時は、日程調整の上、改めてお知らせいたします。では、ここから配信を停止いたします。
 
<議題3は非公開>
 
【中須賀主査】  それでは、皆さん今日も活発に御意見いただきましてありがとうございました。以上で本日予定していた議事は終了でございます。これで本日は閉会といたします。どうもありがとうございました。

(了)
 

 

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研究開発局宇宙開発利用課