令和5年10月11日(水曜日) 15時00分~17時00分
文部科学省3階2特別会議室またはオンライン
専門委員 藤崎 一郎【主査】
専門委員 高橋 忠幸【主査代理】
専門委員 石井 由梨佳
専門委員 植木 千可子
専門委員 倉本 圭
専門委員 佐藤 智典
臨時委員 高鳥 登志郎
専門委員 竹森 祐樹
臨時委員 中須賀 真一
臨時委員 永山 悦子
研究開発局長 千原 由幸
大臣官房審議官(研究開発局担当) 永井 雅規
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長 鈴木 優香
宇宙利用推進室補佐 橋本 郁也
(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA))
理事 佐々木 宏
国際宇宙探査センター センター長 山中 浩二
国際宇宙探査センター 技術領域総括 筒井 史哉
国際宇宙探査センター 事業推進室長 永井 直樹
【事務局】 ただいまより第57回国際宇宙探査小委員会を開催いたします。本日はお集まりいただきありがとうございます。
<議事次第に基づいて資料の確認>
【藤崎主査】 では本日の議題に入らせていただきます。本日は与圧ローバの話が中心でございますが、これから入るという話もござましたが、むしろ今全体にどういうことにあるかということをご説明いただいた上で質疑をし、そして特定の議論に入った方がいいだろうという判断のもとに、議題1は「国際宇宙探査およびISSを含む地球低軌道を巡る最近の動向」ということにさせていただきます。これにつきましてご説明をお願いいたします。
<鈴木室長より資料57-1-1に基づいて説明>
【藤崎主査】 ありがとうございました。大変広範なご説明をいただきましたので、各委員からご質問があればお願いいたします。
私の方から7ページのところについて2つ、今の各国の動向ですね。インドは極域に着陸してやっているということの報道がございますけれども、日印関係で情報交換は今後行われていくシステムみたいなものはどんなふうになっているのかが1つです。もう1つは中国という国は完全に独自でやっているのか、ロシアとかあるいは欧州の一部とどんな協力関係があるのか、そこら辺のところはご存じの範囲で、また差し支えのない範囲で教えていただけますか。
他に、委員の方々も私のだけではなく、3人ずつくらい並行していきますのでどうぞ手を挙げてください、ご質問があれば。永山委員、それから中須賀委員、では永山さんお願いします。
【永山委員】 ありがとうございます。よろしいですか。ISSの延長のところでロシアの状況について言及いただきました。資料の中で参加延長を28年までする旨について各極にレターを送付したという記述が、これはタス通信の引用だと思うのですけれども、あるのですが、日本にもこういったレターは具体的に届いているのか、そこにどういうことが書かれていたのか、今回28年までということになった場合、29年、30年のISS運用について懸念点等があるのか、それについてどのように対処されようとしているのかということを教えてください。以上です。
【藤崎主査】 中須賀委員、お願いします。
【中須賀委員】 ありがとうございます。月周りの話なのですけれども、月のいろんな着陸のプロジェクトだけではなくて、例えば月のインフラとしての1つは測位通信ですね、これをどうしていくのかというのは、今、世界中で競争が起こりかけている。これに対しての日本の戦略はどうする、どういうふうにやっていくのかということ、それからそれに向けて例えば早期で実施をしなければいけないじゃないかと思っているのですけれども、その辺の計画はどうかということを聞かせていただきたいと思います。
それから同じく月においては水というのはやはり大事な資源なのだけれども、どこにどれだけ水があるかというのはわからないということで、これは内閣府のスターダストで行っているテラヘルツ波センサの開発が進んでいますけれども、これを早期に打ち上げて月の水マップを作る必要があるのかないのか、個人的にはあると思っているのですけれども、それに向けてのプランを聞かせていただきたいと思います。以上です。
【藤崎主査】 ありがとうございました。高鳥委員、お願いします。
【高鳥委員】 月探査に関して各国がこのようにいろいろと取り組みをしているのですが、連携とか国同士でやることもありますし、競争してやるところもあると思うのですけれども、各国の月探査におけるルール作りみたいなところが必要じゃないかなと思うのですけれども、そういった動きがあるのかというのを教えていただきたいと思います。以上です。
【藤崎主査】 ありがとうございます。ここで一旦切りまして、お答えいただきたいと思います。
【鈴木室長】 まず私から、お答えし、JAXAでもプラスの情報があればぜひ答えていただければと思っています。
インドとの情報共有についてですけれども、LUPEXについては一緒に実施していくので情報共有をしていると認識してございます。中国がそれぞれの着陸機で他の国と協力しているかということについては、今、私には情報がないので、もしJAXAの方で知っていれば発表いただきたいと思います。ただ中国も月探査について自国だけでということではなく、他の国と一緒にやることを計画していると聞いてございます。
関連して各国が取り組んでいるルール作りといたしましては、国連にルールがあるのですけれども、全ての国がルールに合意するのは難しいのが現状です。このような中、アルテミス合意という取組がございます。例えば、月の極域に同じ時期に複数の着陸機を打ち上げたら、ぶつかってしまいます。そういった問題を避けるために事前に計画等を共有した上で進めていったらどうかという取組であり、米国が主導していると認識してございます。
続きまして、ロシアの参加国へのレターについて、日本にもレターは送付されています。資料に書いてあるように2028年までは延長すると記載されておりました。ロシアが28年までの参加で、29年、30年について懸念がないかということについて、ロシアが運用を停止しても、問題なくISSを使えるとNASAが評価してございます。また、今は28年以降のロシアの参加は決まっていないだけということを補足しておきます。例えば、最近の報道では29年、30年についても参加する可能性がある旨について、IACの会議でロシアが述べております。
続きまして、月周りのインフラについて、ご指摘の通り測位通信技術についても重要であり、日本においても技術開発を進めているところでございます。今後どういったタイミングで技術実証をしていくかということについては、予算との兼ね合いもございますが、できるだけ早期にできるように検討を進めてまいります。テラヘルツ波による水マップについて、現在は極域に水があるのではないかと言われているので、まずは浅いところで全体を見るよりも極域について深いところも含めて見る必要があるのではないかと思います。まずは極域から調査し、その後全体を見るなど、水をどうやって探していくのかの戦略をしっかりと検討していく必要があるのかなと思っております。
【藤崎主査】 佐々木さん、ございますか。
【JAXA佐々木理事】 では補足させていただきます。月に関しては仰るところで、全体としてはカバーされていると思うのですが、まずLUPEX、月極域探査のインドとの協力ですけれども、技術的な情報交換につきましてはしっかりと技術情報は交換できるようにしております。そして取ったデータについても今回、ESA、NASAも参加していますので、全体として議論してどう共有するかということも今進めているところでございます。
それから中国のミッションについては、我々の知る範囲では、着陸自体は自国独自でやっておりますが、搭載するペイロード、ミッションに関してはヨーロッパの大学なども参加していると聞いています。
それからロシアの方は2028年までと宣言していますが、それ以降につきましても技術的に確認できれば延長するというふうに発表がありましたが、一応説明を聞いている範囲では段階的に延長するということで、2028年までのサイクルとしてまず発表したと、今後ROSCOSMOSが実際にロシア政府に対して来年以降延長するかどうかを提案して、プロセスに入って、2年後くらいにさらに延長するかどうかということを発表する段取りになっていることは先日うかがいました。
それから通信測位のインフラに関しては、現在のスターダスト計画においてJAXAとして研究開発を進めさせていただいています。今後も文科省と相談しながら、それの実証段階をやるということで議論させていただいていて、今後そういう機会を確保したいというふうに思って検討を進めているところです。
それからルール作りにつきましては、先ほど申し上げたArtemis Accordsで、現在29か国が参加をして議論が進められていて、それぞれいろんなテーマについてNASAを中心にインド等参加して議論が進められて行くということで今後さらに拡大をしていくのではないかというふうに思っております。補足は以上です。
【藤崎主査】 ありがとうございます。委員の方々よろしいですね。今お待ちいただいているのはオンラインの倉本委員ですか。ではよろしくお願いいたします。
【倉本委員】 ちょっと私の方で聞きとれる音声が時々途切れていたので、もしかするとしゃべっていたのかもしれませんが、H3ロケットですね、これは国際宇宙探査に関わる探査機を打ち上げるという役割を担っているところですので、今後の打上げ再開の見通し、方向性について差し支えない範囲で教えていただきたいと思いますが、以上です。
【藤崎主査】 植木委員、お願いいたします。
【植木委員】 どうもありがとうございます。ちょっと大雑把な質問になるかもしれませんけれど、いろんな予算要求されていると思うのですけれども、技術開発とかあるいは新たなところの促進といった項目が出ていますけれども、ちょっとすみませんが勉強不足なので教えていただきたいのですが、日本としてこの技術はインディスペンサブルであるというところを目指すのか、それともある程度国際的な競争力を維持するために、いろんな分野で少しずつ上げていくことを目指すのか、どちらの方向性なのかなというのが1点です。あともうひとつは、掘り起こしのところですけれども、基本的にはJAXA、常に研究されている大学が中心になって新たな研究者とかイノベーションというところを掘り起こすという予算なのか、それとも文科省としても何か機運があって新たなものを開拓していくというところまであるのか、3点目ですけれども国際的な協力がこれから大事になってくると思いますし、やはり日本に期待する声というのはアメリカとか海外としては安心できるパートナーとしてですね、その時にロシアについては2028年度までですがもし長ければパートナーとして続けていくということなのだろうと思うのですけれども、かたや中国と日本とか、あるいは中国はヨーロッパとも進めているということで、日本としての技術開発のパートナー探しというのは、どこが中心になって今後政治的なこととかも含めて、推進していったりとか、慎重になったりとかという意思決定をしていくのでしょうか。
【藤崎主査】 石井委員、お願いします。
【石井委員】 2点、質問させていただきます。1点目は今最初にお話があった、中国の国際関係のところですけれども、すみません、もしかしたらお答えの中でカバーされていたのかもしれませんけれども、ご覧の通り中国が出しているインターナショナルルナリサーチプロジェクトというのがありまして、そこで多数の国の参加を募っているという現状判断だと思っています。ロシアとかベネズエラとか南アフリカとか、最近だとアゼルバイジャンも参入したということで、中国なりに中国の味方になるような国を募っているという状況かなと思います。先日も、国家航天局がアナウンスメントで嫦娥号について国際協力をオープンにするといったStatementも出ていると思います。そのロシアと中国に関しても、ロシアは結局ウクライナ戦争を背景にしてヨーロッパと協力しにくくなってしまったことがありますので、中国との関係を強めていって、インターナショナルルナリサーチプロジェクトについても、2021年にjoint statementを出しているという現状があるかなと思いますので、今後予想されるのはアルテミス計画に参加していく国と、中国が出しているプロジェクトに参加している国とで、競争するということがあるのではないかなと思っていますが、もしそれについてお考えがあれば教えていただければと思いました。
2つ目はロシアのISSの参加なのですけれども、ISSは2030年以降、最終的には地球に向けて廃棄するということになっていると思うのですけれども、その廃棄のコストについて、まだ配分は決まっていないと聞いていますけれども、ロシアはどれくらい負担してくれるのか、教えていただければと思います。以上です。
【藤崎主査】 ありがとうございました。竹森委員、お願いします。
【竹森委員】 ありがとうございます。ちょっとざっくりした意見、質問なのですけれども、本件は国際宇宙探査ということで、大きなストーリーというか、MMXはアメリカでの火星に行きたいというような目的、火星に行くというのがひとつ目的とするならば、月を手段とする、月が手段であればそこでいろんなインフラの実証をすると、それを手段にして火星に行く、そのためにロケットをこうしようとか、有人もこうしようとか、非常にシンプルなストーリーがあるかなと思っています。それはひとつのサンプル的なケーススタディなのですけれども、日本として国際宇宙探査でどこまで行こうとしているのか、何を目的にしているのか、そのために例えば月をどうするのか、ロケットをどうするのか、国際協力はどうするといったような、何か大きな幹がないと、いろんなことをやって科学技術を実証しますだけだと予算が終わってしまうと終わってしまう。そういう大きなストーリーがあれば例えばビジネスに展開するということもできるかなとも思うのですけれども、その辺り私が不勉強なだけなのかもしれませんけれども、大きなストーリーというかそういうもの、その先にMMXでどういうふうに続けようとしているのか、その辺りもしお考えがあればお話いただければと思います。
【藤崎主査】 ありがとうございました。ではここで一旦切りまして、お答えいただきたいと思います。
【鈴木室長】 まずH3ロケットについて、どこが問題だったのかということと、その対策について宇宙開発利用部会の下の委員会での検討は終わってございます。これを踏まえ、打上げ再開について検討中と理解してございます。
続きまして、日本としてどういった技術に注力していくのかについて、今後の産業競争力を考えると、日本が強い分野に注力していくということは重要です。加えて、打上げ能力のように日本として持っておかないと他の国が日本に使わせないと言われたら困るような技術もあります。日本が強くて、ぜひそこを伸ばしていくべき技術、例えば、科学分野でははやぶさのサンプルリターン技術などかと思いますが、日本として最低限は絶対に持っておかないといけない技術をまずは優先してやっていこうと思っております。ただ、それだけでは新しい技術ができないので、新しい技術を幅広く、大学等も含めて開拓をしていくということかなと思ってございます。
続きまして、掘り起こしについてですけれども、JAXAが積極的にこれまで宇宙をやっていなかったような方も含めて異分野の方々に声をかけて一緒に研究開発をする取組を実施しています。
続きまして、国際協力についてのご質問ですが、パートナー探しをどのようにやるかについて、これはいろんなやり方があるかと思ってございます。ISS等ではどの国と一緒にやっていくか決まっています。大学等での共同研究であれば研究者が一緒にやるところがスタートになるということもあるかと思います。ロシアや中国については技術漏洩等の問題もありますので、プロジェクト等を開始する前には慎重に検討するということかなと思ってございますし、現在のところそういった国々との共同プロジェクトは国としては実施していないという状況と思っております。
続きまして、日本の宇宙探査の目的ですけれども、アルテミスミッションを日本も米国と一緒にやっていくということを表明していますので、米国と同様に、まず月に行ってその後火星に行くことを目標としています。すべての技術開発を日本が担うことはできないので、先ほどご意見のあった月の測位通信のような日本に強みがあるところなど、どこを日本が担うかをしっかり検討し、火星等につなげていく方針です。
MMXについては有人の火星探査等に情報を提供する他、科学的な価値があるということで実施しています。研究者の皆さまがこういった部分については科学的な価値があって、日本の技術でこんなに大きな科学成果が達成できるといったことを検討し、他のミッションと優先順位を検討し、MMXを実施すると決めたものと認識しています。まとめますと、MMXがアルテミスミッションに貢献はしますけれども、アルテミスミッションだからやっているということではないのかと思っています。予算説明資料には一緒に入っているので、若干わかりにくいと思います。
中国が今後月に向けて国際的な仲間作りをして米国のアルテミス計画と競争になっていくのではないかということについては、私たちとしてもそのようになっていくのかなと思ってございます。10、15年後がどうなっていくのかわからないところもありますが、まずはアルテミス計画をしっかりと実施していきたいと思ってございます。
ISSの廃棄処分の時のコスト分配ですけれども、ロシアがはっきりいくら払うということ等が、現段階で決まっているということではないですが、ロシアも応分の負担をするという考え方です。ISSについては各極の負担の割合がだいたい決まってございますので、その中でロシアもしっかりと役割を果たしていくということだと思います。デオービット等するのであればロシアはその責任は果たしていくと聞いてございます。私からは以上です。
【JAXA佐々木理事】 1点補足をさせていただきます。技術のところですけれども、どういうところを狙っていくかということに関しては本委員会で数年前に取りまとめていただいた重要な技術ということで、やはり日本として得意な技術、それから波及効果の高い技術というところで、取り上げられてセットされていますので、我々としては、今はそれをベースに補給技術であるとか、生命維持に関わる有人滞在技術とか、着陸技術、探査技術ということで、それを中心として取り組ませていただいているところです。今後インフラに関しては通信測位といったような得意な技術がありますので、そういうところを取り組んでいくんだろう考えています。
あと目標に関しては、政府の方でも議論いただきましたけれども、やはりアルテミス計画に参加するということで火星を目指したところで、まずは月でどう実証していくかということで検討を進めていますけれども、1点、昔、国際宇宙探査フォーラム第2回が日本で行われましたけれども、その際に純粋に月の実証だけではなくて、やはり産業化とかそういうものを視野に入れて検討するということが示唆されていましたので、我々としてはそういうことも考えながら進めているということです。
あとそれに関連して掘り起こしという観点では、JAXAは宇宙系を中心に大学研究者と連携をしてきましたけれども、イノベーションハブというスキームで様々な民間企業、特に宇宙に携わっていなかった民間企業の参画で研究開発するといったところ、それからJ-SPARCという形でも様々な民間の取り組みについて協力するというスキームを使って、様々な掘り起こしを進めさせていただいています。そういう形で特に探査でありますと、重力のもとで活動しますので、地球の様々な技術を活用できるということで踏み込みながら進めさせていただいています。以上です。
【藤崎主査】 ありがとうございます。中須賀委員。
【中須賀委員】 ありがとうございます。追加で質問、申し訳ございません。まずISSの利用拡大について、2030年以降日本がどういうスタンスでISSに関わるかということの前提となるのは、どういうふうにISSが利用できるか、どういう産業が興るかとかいろんな面でですね、そういったことを今、徹底的にある種、ISSで調査して試していかなければいけないだろう、今そういうフェーズにあると思います。それを早くやらないと30年以降、またよくわからない状態で宇宙ステーションに関わらなければいけないと。本当にニーズがないのか、あるいはやり方が悪いからあまりニーズが出てこないのかということをやはり明確にしていかなければいけないだろうと思うのですね。そういった時に今回の予算の中でこのISSの利用を徹底的やっていくということに向けてどういう舵を切られたのか、あるいは切らないのであれば今後どうしていくのかということについてのご意見をいただきたいなと思います。
それからもう1点はAPRSAFです。今回も非常にたくさんの人数が集まって盛大だったと思いますけれども、どちらかというと私は何回も見ていますけれども、日本は場を提供していて、その場を使って欧米の人達がどんどん商談とかいろんな共同研究のネタを作って、そこで連携をスタートしているように見えます。これはある意味日本としてはすごく勿体ないなと思っていて、日本としても場を作るだけではなくて、この機会を活かしてどんどんアジアに、あるいはオセアニアに連携を広げていくことに使うべきだと思うのですね。そういった論点で、ここに書いてある利用実証、データの利用実証であるとか、あるいはコンステレーションみたいな、こういったことを具体的に進めていくことが、日本にとってプレゼンスを高めるのにすごく大事かなと思っていて、そういったことについての今後の計画、例えば次回パースでやるAPRSAF-30でどういうことをやろうとしているかということについて何かご意見があったらいただきたいと思います。以上です。
【藤崎主査】 ありがとうございます。佐藤委員、お願いします。
【佐藤委員】 産業界の立場として少しご意見させていただきたいと思うのですが、その意見を申し上げる前に、先に少し述べさせていただきたいと思っております。
今回H-ⅡAロケットが無事に打ち上がりまして、搭載されておりました衛星2基が無事に打ち上がり、今のところ正常に遷移しているということは大変喜ばしいと思いますし、製造を担当しました産業界としてもある意味ほっとしているところでございます。このあとさらに無事にミッションが遂行されていくことを祈願しておりますし、またこのあとH3に向けても早期に原因究明、対策が進まれて積極的に打上げを進められるような環境になるべく、それに対しても大変期待するところでございます。
ご意見申し上げたい点でございますが、先ほど来、月探査に関わる議論がなされています。宇宙の月探査の目的というのは2つあろうかと思います。サイエンスも一つ重要なことでございますし、あるいは実は重要なこととしては安全保障というのもあるのだというふうに私は理解しております。また月に関わる今後、将来に向けての新しい産業振興もあるのだと思うのですが、産業界の立場で言いますと、月探査に関わる産業がどれくらい今後振興していくのかということに対しては、まだまだ予見性が厳しい、難しい領域であるという風に私は理解しております。そういった観点から月探査あるいはそれに係る面での、「こういった計画があって、プログラムがあるから」や「産学官が入る」という単純な理由ではなかなか産業界として、難しい面もやはりあるのかと思っております。そういった意味で言いますと、産業形成を高めていくということであるならば、将来の月に関わるような宇宙空間の利用価値がどういうふうになっていって、どんなことに産業が生まれていくのかという、そういうポテンシャルがあるのかという青写真をぜひ共有させていただいて、そのビジョンのもとに国費としてのプログラムも走るし、あるいは産業界からの参画を促すタイプの施策を行っていく、そういった建付けになるかと思っておりますので、そういったビジョンのもとに産業界としても国益にも貢献するものであると思いますし、また将来の産業化に向けても連携を深めていければ思っております。以上です。
【藤崎主査】 ありがとうございました。他に委員の方々ございませんですね。ではお願いいたします。
【鈴木室長】 ご指摘ありがとうございます。ISSの利用拡大ついては、今回概算要求額としては1億円を計上しています。その中でまずできることをやります。また、先ほどの予算要求のところでお話したJAXAのファンディング機能の強化というところで、技術開発の支援を実施する方向ですので、技術開発とセットで利用者の開拓もできると考えています。また、JAXAの「きぼう」の利用時間を使うというところであれば、概算要求として予算に明記していなくてもJAXAが利用時間を安価に提供すればできると思います。委員の皆さまからもぜひやるべきだと言われたと思ってございますし、文科省としても重要だと思っておりますので、具体的なやり方については検討中ではございますけれども、しっかり実施していきたいと思っています。次の委員会では、具体的な進め方について委員の皆さまのご意見を伺いたいと思ってございます。
続きまして、APRSAFについて、ご指摘の通り今後APRSAFの場を通じて共同プロジェクト等を作っていくということが重要だと思っております。また、日本や海外にやりたいという人を見つけるということも重要だと思っております。次のAPRSAFがうまく活用できるよう今から検討するということが重要だというご指摘だというふうに受け止めさせていただければと思います。
月探査のビジョンについて、産業のビジョンについては文科省だけでは作り切れないということもございますので、内閣府とも相談してやっていく取り組みかと思っています。また、ISSについても最初の段階から利用が見通せていたということではないと思ってございます。現段階では、例えば月にどれくらい水があるのかなども全くわからないため、ビジョンをはっきり書くのは難しく、実証をしつつ分かっていくことも多いと思いますけれども、ご指摘の点、内閣府とも相談して、何ができるか検討できればと思います。
【藤崎主査】 ありがとうございました。
それでは第1の議題は以上といたしまして、次に有人与圧ローバについてですか、これに入りたいと思います。それではお願いします。
<鈴木室長及びJAXA筒井総括より資料57-2-1及び資料57-2-2に基づいて説明>
【藤崎主査】 それでは各委員の方にご質問をいただきますが、私の方から簡単に2~3問。1つは、これは試用機というのはいつ頃できて、いくらくらいで、何台くらい作るような感じで、だいたい全体のプロジェクトというのは、日本の工程としてどんなふうに考えているのかというのが1点ですね。2番目は、これを見ると実はすごく普通にあるトラックみたいに見えますけれども、9ページに書いてあるレゴリスというのですか、砂に沈み込まないようにしなければいけないとか、落ちてしまったらメンテをどうするのだと、少し先に何か棒で照らしながら進むような、あるいはつつきながら進むのか、どんな形で、こんな凸凹が恐ろしいところに、どんどん普通に進んで行ってしまっていいのかどうかというので、どんなふうにそういう先の探査をしながら進む体制があるのかというのをちょっと教えていただければ、普通の道を走っているのとはだいぶ違うだろうと思うので、その点をちょっと教えていただければと思います。
皆さま方、どうぞ、ご質問があったらお願いします。札を挙げてください。中須賀委員、植木委員、竹森委員の順にお願いします。
【中須賀委員】 これの中で要するに、人が何日か滞在する、ある種ECLSS的な技術というのもここで開発されるのだろうと思うのですけれども、いわゆる自前で再生をしていくのと補給をするというのは、このシステムの中ではどのように役割分担をされているのかということを教えてください。
それからもう1点は通信ですよね。見通しが効かないところまで離れた時に、この通信は先ほどのLNSS的な月周りの衛星を使った通信というのを前提にされるのか、あるいは何かもっと別のやり方をやられるのか、それを教えてください。以上です。
【藤崎主査】 植木委員、お願いします。
【植木委員】 どうもありがとうございました。大変、これが走っているところを想像するとワクワクする形で伺っておりました。2つ質問ですけれども、使い方としては2人の有人がある程度の期間、この中でも生活できるということで、考え方として何台かあって、そこでコミュニティのような形で2人ずつ乗ってということも考えているのかどうかということと、あともう1つは私は競争というのはイノベーションにとって絶対的に大事だと思っていますので、先ほどの話で中国の話も出てきましたけれど、本来地上の戦略的な安全保障上の問題はありますけれども、やはり競争しながら人類が先に行くためには競争は大事だと思うのですけれど、そういう観点で言うと1社対応ということで、トヨタ1社が公募してきたということで、バッテリの方はホンダもいうことですけれども、これはトヨタしか技術的に応募できる能力がないからそうなったのか、それとも他のところは関心がないからなのか、なぜ1社だけという、できれば複数社で進めていっていると基盤というか、足腰が強い体制になるのかなと思います。そこはどうなのか。
【藤崎主査】 ありがとうございました。竹森委員、お願いします。
【竹森委員】 ありがとうございます。今のご質問にも関係するのですけれども、私も非常にこれはワクワクして、非常に楽しみだなと思っております。再生型燃料電池もいろんな技術が積み込まれているので、これが走ることによって日本の技術をというのは非常に素晴らしいと思う一方で、ちょっと2つほどなのですけれども、1つすごいシンプルな質問で、これができたらNASAは買ってくれるのですかね?これができたら日本は自力で、自金でこれを走らせ続けなければいけないのか、できたこの車はNASAが買ってくれるのか、ちょっとその辺りNASAとの契約というかやりとりはどうなっているのかを教えていただきたいというのと、もう1つは自動車会社がこれを作るというのは、何か言葉が変ですけれど、男気的なのはわかるのですけれど、ビジネスとして何万台とか作っておられる車会社がこれをやるモチベーションというか、先ほどもトヨタ1社なのかというのがあったと思うのですけれど、民間側のモチベーションというのは一体どこにあるのかというあたり、それを可能な範囲で教えていただきたいと思います。
【藤崎主査】 ありがとうございました。それではここで、私のさっきの質問に加えてメンテのところをどんなふうにやっていくのかという中で、2人とか3人ということでメンテ要員が相当いるのではないかという感じがしますからその点も含めて先ほどの質問についてお答えいただきたいと思います。私と中須賀委員、植木委員、竹森委員、あと他の方もあるかもしれませんが、第1ラウンドはここでお願いいたします。
【JAXA筒井総括】 それではお金の規模と仰っていたかと思いますが、今検討している最中で現時点では申し上げることができません、すみません。いつ頃かということについては、2029年とかその辺りを目指して開発を進めたいというふうに思っています。
それから、トラックというふうに仰いましたけれど、確かにトラックくらいで、概ね15tくらいの重量になります。それでそのまま不整地のところを走っていくと非常に危険なのは仰る通りで、基本的には地図が、リモートセンシングで得られる月面の地図を使って、基本的なルートパスを決めた上で走らせる、自動的な経路形成をするというのが一つ大きな意味でありまして、その上で実際の月面には石があったり、岩があったりするわけですので、それを避けるように、ライダーというのがどこかに書いてあったかと思いますけれども、ライダーで障害物を見つけてそれを避けながら小さい制御や回避操作をしながら走っていくというような考え方になっています。
メンテナンスに関しては、基本的には年に1回有人のクルーが来ることを前提にして、必要なメンテナンスはそこでやるというのが前提になりますので、そこまでは自分で何とかもたせないといけないようなシステムになります。それが一つ目の質問に対する回答となります。
それからあと中須賀先生からECLSSの関係のことを、自前でやるのと再生で、自前と言いますか、補給でやる部分と再生でやる部分の切り分けになりますけれども、これくらいの規模のシステムですと再生するのにかかるエネルギー、システムのコストと言うのですかね、質量とかが、とてもバランスが取れるようなものではなくて、概ね補給した方が得であるというような計算になりますので、空気であるとか水であるとかはいわゆる毎回の有人ミッションのたびに補給して持って行くというシステムの構成になります。ただ再生型燃料電池は、これはECLSSとは違いますけれども、再生型燃料電池は水があって、酸素と水素に変わっていく、その循環は、循環されていますので減っていくわけではなくて、そこを補給する必要はありません。
通信に関してはお察しの通り、地球ダイレクトの通信も当然考えていますけれども、地球の裏側にいくこともありますので、通信衛星、月面を回っている通信衛星とのリンクであるとか、ゲートウェイとのリンクであるとか、そういったところも合わせてパスとして持つように考えていますので、かなりのいわゆる通信パスが2つありますというふうにも、今ですと5つくらい、Xバンド2つ、Sバンド2つ、Kaバンド1つそんな感じで、ちょっと今はまだ決まっていませんけれども、そのくらいの感じでいろんな通信パスを持てるように考える予定にしています。
それからこのローバは2人が住むようにしていて、もともとは我々が最初検討していた時には複数台を導入してタンデム走行していくとかそういうことを含めて考えていましたが、今これを運ぶのは、運んでくれるのはNASAになっていまして、今NASAとの間では1台のみとなっております。が、できれば複数台、導入されることを期待したいところではあります。
なぜ1社採用なのかということなのですが、全体システムの検討の、先ほど全体システム概念検討の公募で申し上げました、この時は2社公募をかけまして、その時にはトヨタ以外のところにも声をかけたりして、応募を募った、どうぞ応募してくださいとしたのですけれども、結局トヨタしかこなかったというのが実態でした。というので今1社のみが手が挙がっているという状況となっています。
【植木委員】 それは1社しか応募しなかったのは能力なのか、それともインセンティブが企業側に魅力、関心がなかったのか、どういうことなのでしょう。
【JAXA筒井総括】 1つはやはり難しい、走行システムというのと宇宙システムというのの、両方が掛け合わさったシステムですので、どこの会社にとっても新しいシステムであると考えます。そこがひとつハードルが高いと思われたのではないかなと思います。先ほどのご質問の中にあったかもしれないのですが、トヨタ1社で、自分たちですべてやり切ろうと思っているわけではなく、トヨタの下と言いますか、トヨタは先ほどの勉強会の、報道機関向けの説明会の中に書いてありますように、三菱重工と協力してやっていくというふうに言っていまして、すなわち居住と宇宙のシステムといいますか、人が生きていく部分のところはMHIと協力してやっていきたいということになります。
開発したものについてNASAが買ってくれるのかに関しては、文科省さんのほうからお願いします。
【鈴木室長】 NASAが買うということではなく、日本の貢献としてローバを開発、運用していきたいと考えてございます。例えば、ISSであれば「きぼう」を日本が開発、運用しています。アルテミス計画では、ゲートウェイは国際協力で開発していますが、月まで行く宇宙船、ロケットはNASAが開発しています。宇宙服についてもNASAが開発しています。日本の貢献としては、唯一無二の貢献として、有人与圧ローバで貢献したいと考えています。
【JAXA筒井総括】 最後にトヨタがなぜこんなにやる気があるのかということの解説は、正直トヨタの中でも、正直このプロジェクトを立ち上げるのは難しいとよく言われます。ですが、ひとつ話をしますのは、トヨタというのは今まで車を開発してきていて、車というのは形が見えていて、例えばシステム開発、システムの上段からこうフローダウンして開発してやっていくような開発というのはあまり馴染みがない開発であるというふうに仰っています。こういったまっさらな新しいところからシステム開発をするということについての手法を学ぶという観点もひとつあるというふうなことを仰っていました。それだけでは当然ないと思いますけれども、それぞれの思いもあってやっていただけているというふうに思います。
【藤崎主査】 ありがとうございました。他の委員の方、石井委員、佐藤委員。では石井さんからお願いします。
【石井委員】 ご説明ありがとうございました。先ほど競争の重要性について植木委員からご指摘があったわけですけれども、今後考えられることとして、例えばアメリカの民間企業が同じものを開発するということも考えられるわけですよね。つまりそういった競争相手が出てきた時に日本の与圧ローバをNASAが継続的に運んでくれるのかどうかということが気になったのですけれども、2020年に出された共同宣言を見ますと有人与圧ローバの開発とその概念検討については今後文科省とNASAとの間で取り決めていくということになっていたと思います。他方でゲートウェイ、それからそのもとになっているISS協力等で、このしくみを見ますとコンポーネントについては協議で決めると、決めるのだけれども、最終決定権はNASAから出ている議長にあるというふうになっていたかと思います。そのしくみがもし仮に与圧ローバの開発の協定についても応用されることがあるとすると、競争力のある、例えばアメリカの民間企業からそういった車が出てきた時にどっちが得かな、となったりしないのかなと思ったのですけれども、そういったところは考えられていらっしゃるのか、あるいはもう共同宣言、与圧ローバについては日本が貢献するということは決まっているので、そういうことは特に予定せずに、ローバの開発をしっかりと立てて、それを着実に月に持っていくということを着々とやっていくという、そういう何というのか、その辺のお考えをお伺えできればと思いました。
【藤崎主査】 佐藤委員、お願いします。
【佐藤委員】 ご説明ありがとうございます。今回、有人与圧ローバについてご説明いただいたわけなのですけれども、こういったモビリティというのは、今回どちらかと言えばローバ側が自分でマルチ的にしながら頑張って動いていくという部分をかなりカバーしているように感じられたのですけれど、一方でやはりモビリティについてはインフラ側と連携してそれによって安定で効率よく、あるいは何かあっても事故等を回避しながらという、インフラとの連携のところがとても大事だと思っております。それは通信もそうですし、測位もそうですし、あるいはエネルギーに関するインフラも重要ではないかと思うのですけれど、もしかしたら月面のものもあれば、月周回上の、軌道上のものもあるのかもしれない、いろんな形態があるのかもしれません。質問は有人与圧ローバが前提としているインフラについて、そのインフラの部分というのは日本国としてはどのように関わる、関わらないのかもしれませんけれども、どのように関わって、あるいはそこのインフラの整備する部分のいわゆる時間的なイメージ、先にやはりインフラが整備されたあと、こういった有人ローバの実際の、これを月で動かすということを進めていくのではないかと推測するのですけれども、その辺りのインフラ側とローバ側の時間的な順番関係とか、あるいはそこにおける日米もしくは他のパートナー国との分担の考え方についてご享受いただければと思います。
【藤崎主査】 今、石井委員と佐藤委員からご質問がありましたが、オンラインの方も含めて他にございますか、何か。なければもうこれでお答えいただくようにしたいと思いますが、よろしいですか。それではお願いします。
【鈴木室長】 最初の質問については文科省からお答えいたします。ご指摘の通りでございますので、今後実施取決めを結びまして有人与圧ローバについて文科省、JAXAで開発し、運ぶのはNASAということをしっかり取決めたいと思ってございます。2台目、3台目がどうなるのかということについては分かりませんが、力のある米国の民間企業が作りたいと言ってNASAがそちらを選ぶということもあるかもしれませんが、1台目を開発し、実力を見せて、今後もとなることが期待できるかなと思っていますし、1台目以降は研究開発費を削減し、値段が下がることが望ましいと思ってございます。また、現状ではかなり開発費がかかると思われ、開発費について日本の貢献として文科省で今後予算要求をしていきます。NASAが予算措置をせず、民間が単独で開発するのは難しいかと思います。
【JAXA筒井総括】 後半の方ですけれども、インフラとの連携ということでしたが、事前に必要なインフラは通信のインフラのみでして、それについては、最低限はゲートウェイがあるということ、少なくともゲートウェイは飛んでいるはずというのが前提で、それ以外にできれば先ほどの議論の中でもありましたようにLNSSといった、月版のGPSというものが先行で飛んでいることが本当は望ましいと思っています。ただ、それがなくても運用ができるようにというのが別の航法のシステムを考えているということで、何とかカバーしようとしているものです。それ以外についてはインフラが先行で必要なものというのは基本的には月面インフラとしてはなくて、あとはNASA側が提供する有人輸送であるとか物資輸送であるとか、そういったものがあれば基本的には運用できるというふうに考えてはいます。以上です。
【藤崎主査】 他に委員の方々、もうございませんですね。よろしゅうございますか。それではこれで第2議題、有人与圧ローバについてはよろしいと思います。次回以降のことについてちょっとだいたいの姿はどういうふうにどうされるかを室長の方からお話いただけますか。
【鈴木室長】 次回については年明けに開催しまして、その時期には政府予算が決まっておりますので、それに基づいてポストISSに向けた技術開発をどうやっていくのかという検討もできればと思ってございます。まだ日程調整等もしておりませんが、皆さまがお越しいただける日に設定し、また、他に議論する必要があることがあれば議論したいと思っております。
【藤崎主査】 では委員の方々よろしゅうございますね。どうもありがとうございました。それではこれで本日の会議を終了したいと思います。
(了)
研究開発局宇宙開発利用課