宇宙開発利用部会 国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会(第46回) 議事録

1.日時

令和4年2月18日(金曜日) 14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省5階第3会議室又はオンライン

3.議題

  1. 星出宇宙飛行士によるミッション報告
  2. ISSを含む地球低軌道活動のビジョンについて
  3. ISSの有用性について[(1)更なる国際宇宙探査に必要な技術の獲得(2)社会的課題の解決、科学的知見の獲得、国際協力等(3)宇宙活動を担う人材を長期的・継続的に育成する好循環 ※民間が主体となった利用へのシームレスな移行も含む]
  4. その他

4.出席者

委員

主査(専門委員)           藤崎一郎
主査代理(専門委員)        向井 千秋
臨時委員                稲谷 芳文
専門委員                金山 秀樹
専門委員                倉本 圭
専門委員                古城 佳子
臨時委員                高鳥 登志郎
専門委員                高橋 忠幸
専門委員                竹森 祐樹
専門委員                中村 昭子
臨時委員                永山 悦子
専門委員                          原 芳久

文部科学省

研究開発局長                           真先 正人
大臣官房審議官(研究開発局担当)            原 克彦
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長     国分 政秀
宇宙利用推進室補佐                       溝田 岳


(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA))
理事                     佐々木 宏
宇宙飛行士                星出 彰彦
有人宇宙技術部門
 ISSプログラムマネージャー              酒井 純一
 きぼう利用センターセンター長            小川 志保
 宇宙飛行士運用技術ユニットユニット長   田崎 一行
 事業推進部主任                        宮崎 和宏

5.議事録

【藤崎主査】 では、定刻になりましたので、ただいまより国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会(第46回)会合を開催いたします。
 では、今日の議題でございますが、議事次第に議題が3つございまして、星出宇宙飛行士によるミッション報告、ISSの有用性、そして、地球低軌道活動のビジョンという3つでございます。
第1議題です。星出宇宙飛行士は2021年4月から約200日間、ISSに滞在されて様々な科学実験を行うとともに、ISS船長も務められました。これは若田さんに続いて2代目ですね。
 
【星出宇宙飛行士】 はい。
 
【藤崎主査】 昨年11月に帰還された後、数か月間、アメリカでリハビリを行い、先日、一時帰国されたところで、今日は私どももこのお話を直接聞かせていただくということで星出さんに来ていただきました。
 では、星出さん、御着席いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。(拍手)
 
【星出宇宙飛行士】 ただいま御紹介にあずかりましたJAXA宇宙飛行士の星出彰彦です。本日はこのような場をいただきましてありがとうございます。
 今日は本当に短い時間ではありますが、ビデオとパワーポイントを使って昨年の約200日のミッションを御報告させていただきたいと思います。その後で簡単に私の所感といいますか、実際の現場での感想をお伝えできればと思います。
 それでは、ビデオのほうをお願いいたします。昨年の4月に打ち上がりましたけれども、これは御存じのとおり、アメリカの民間のスペースX社が開発していますクルードラゴンの運用2号機に当たります。1号機には御存じのとおり野口飛行士が飛行しましたけれども、我々、打ち上げから23時間ちょっとで宇宙ステーションにドッキングするということになりました。
 ちょうどこのとき野口飛行士はまだ軌道上に滞在中でしたので、総勢13名の大所帯の国際宇宙ステーションになりました。野口飛行士からは、「きぼう」船内での作業に当たっていろんな引継ぎ事項を行っていただきました。
 約200日のミッションのうちの約5か月、国際宇宙ステーションの船長を務めさせていただきましたけれども、7人の宇宙飛行士は4か国からなる多国籍のチームですけれども、地上のチームと一緒になって様々な活動を行いました。
 一つは船外活動ですね。これはアメリカ側4回、それからロシア側3回、合計7回の船外活動を行いまして、そのうちの1回は私も実際に船外に出て、全てISSのアップグレードに関わる作業を行いました。アメリカ側は新しい太陽電池パドルの設置に関連する作業、それから、ロシア側は新しく打ち上がった多目的実験モジュールの取付けに関わる作業になります。
 ただ、「きぼう」をはじめとする国際宇宙ステーションで私自身が今回関わらせていただいた実験は全部で127テーマに上ります。そのうち40テーマがJAXAのものになりますが、過去に遡ると国際宇宙ステーション自体で3,000以上のテーマを実施しているところであります。
 特に今回のJAXAの実験では、例えば無重力を細胞レベルで検知するメカニズムの解明、これは寝たきり関係の病気の予防・治療法に役立つ実験を行ったり、あるいは、実験のための実験のような形ですけど、たんぱく質のより効率的な結晶生成手法の開発といったものに関わる実験をやっております。
 それから、今回の小型衛星の放出ですが、これは私も行いましたけれども、実は私が前回、長期滞在をした2012年に第1回目の衛星放出をさせていただいたんですけれども、その頃に比べてもかなり需要が高まっているなと感じました。月1回程度の頻度で衛星が放出されるといったことがあります。
 それから、様々な教育活動ですね。特に今回、アジア太平洋地域の11か国の生徒さんたちを相手にしたロボットのプログラム体験ということで、「きぼう」の実験棟の中でいろんな作業をやりますけれども、それを通じて特に科学に関して皆さんに興味を持っていただくといった活動につながったと思います。それから、今の最後のところは、ちょうど日本は東京オリンピック・パラリンピックの時期でしたので、宇宙でも自由時間を使ってスポーツ活動を行ました。
 11月にスペースXのクルードラゴンで国際宇宙ステーションを離れまして、撮影も兼ねて久しぶりに実際に宇宙ステーションの周りを360度回って、フロリダ沖の海に着水という形で帰ってきました。野口飛行士と同様に、これまでにスペースシャトル、ソユーズ宇宙船、そして今回はクルードラゴンと3種類の宇宙船に乗ることができました。
 それでは、時間も限られておりますが、お手元のパワーポイントの資料46-1を何ページか抜粋して御説明させていただきたいと思います。
       
 <星出飛行士より資料46-1について説明>
 
【藤崎主査】 星出さん、どうもお疲れさまでした。
 皆様、ここにいらっしゃる方、あるいはオンラインで聞いておられる委員の方も、お願いいたします。
 私から初めに2つ。1つは、今回初めてクルードラゴンにお乗りになったわけですけれども、今までとどういう感じの違いがあったか。2点目は、小型の衛星の放出が大分増えたということで、どんなミッションが今増えつつあるのかを、ちょっと教えていただけますか。
 
【星出宇宙飛行士】 ありがとうございます。まず、クルードラゴンの乗り心地といいますか、やはり70年代の技術を使っていたスペースシャトルあるいはソユーズ宇宙船に比べて圧倒的にスイッチの数が減っている。前のスクリーンがタッチパネルのようになっていまして、ほとんどスイッチがない。あるいは宇宙船自体の自動化がかなり進んでいて、もちろん地上からコマンディングはしていますけれども、クルーはどちらかというと運航をモニターしていて、何かあれば介入するという状況になっています。地上で言うところの飛行機の進歩と同じような流れなんじゃないかなと感じました。過去に比べると非常に訓練が少なくて済む宇宙船になりつつあるかなと思います。
 
【藤崎主査】 居住性もいいわけですね。
 
【星出宇宙飛行士】 居住性は、今回は1日弱乗っているわけですけど、実はどうしても体がまだ慣れていない状況でしたのでなかなか難しいところもありました。我々の中でいろいろ話をしているんですけれども、ソユーズあるいはスペースシャトルに比べるとスペース的には狭いというのがあります。ソユーズ宇宙船の場合には帰還カプセル自体はより狭いんですけれども、その上に居住モジュールがついていますので行き来ができるんです。言うなれば2部屋ある。それに対して、もうちょっと大きいけども1部屋しかないという中で、お互いのプライバシーを尊重しながら動かなくてはいけないといった側面はありました。
 それから、小型衛星の放出に関しましては、JAXAの実験作業もありましたけれども、特にナノラックス社の衛星放出ですとか、そういう意味でも、JAXAだけではなくて他国、ほかの企業も含めて本当に裾野が広がっている、活用していっていると感じました。
 
【藤崎主査】 ありがとうございました。委員の方々、せっかくの機会ですからどうぞ。
 永山委員、お願いいたします。
 
【永山委員】 御説明どうもありがとうございました。
 今、お話の中で、まだまだISSは活躍の余地があるとおっしゃいましたけれども、今後、民間の商用ステーションなども打ち上がる予定もあります。民間の宇宙旅行の動きなどもございます。そういう中で、こういった国際協力での低軌道のステーションの存在意義というもので今回、実際に200日滞在されて改めて感じたところがもしあれば教えてください。
 
【星出宇宙飛行士】 ありがとうございます。これだけの大きな施設がすぐにできるかというと、やはり民間の力でもっても恐らく規模的には小さい、よりターゲットを絞った形でのステーションから出発するのではなかろうかと個人的には思います。
 今回、国際宇宙ステーションの大きさ、多機能性、それから協力体制、いろんな国がそれぞれを補完し合っているといったところは船内にいても、あるいは補給機に関しましてもやはり非常に強く感じたところでございます。
 
【永山委員】 もう一点。先ほど複数回、想定外のこともあったというお話があったんですけれども、そういった協力関係という視点から教訓になりそうなエピソードを御紹介いただけるものがありましたら教えてください。
 
【星出宇宙飛行士】 ありがとうございます。恐らく一般に一番知られているのは国際宇宙ステーションの姿勢が喪失したということだと思います。ちょうど多目的実験モジュールがドッキングした後で予期せぬスラスターの噴射があったということで姿勢が傾いたというのがございます。一般的にはどうもステーションがくるくる回転を始めたというふうに捉えているようですけれども、決してそういうことではなくて、予定どおりの姿勢を取らなくなった、少し離れていったので警報が鳴ったということになります。
 中にいる我々は、そういう意味では警報が鳴るまでは全く知らなくて、警報が鳴って初めて姿勢が崩れているんだというところで対処しました。もちろん地上でそういったことに対しての訓練も受けておりますし、手順もありますので、そのときには地上のチームと協力しながら、コミュニケーションを取りながら、地上でやれること、地上では通信が途切れるかもしれないからここの部分は軌道上でやってほしい、そういうのをやり取りしながら、軌道上のクルー全員で手分けをしながら作業を行って回復できたといったものが一つ、例として挙げられます。
 
【永山委員】 ありがとうございました。
 
【藤崎主査】 ほかの委員の方々。高鳥委員、お願いします。
 
【高鳥委員】 どうもお疲れさまでした。200日もの長い間滞在されて、そこで行われたミッション数がすごく多いなと私は素人的に感じたのですが、この程度のテーマ数というのは余裕で実験可能なのか、それともかなりきつきつなものなのでしょうか。それから、その中でも難易度が高かったテーマは例えばどういったものがあるのかを少し教えていただければと思います。
 
【星出宇宙飛行士】 ありがとうございます。127テーマは日本だけではなくて各国、アメリカ、それからヨーロッパの実験等もございましたけれども、程度はいろいろありまして、一瞬何かを交換するというものから何時間あるいは何日間も連続して作業に当たる、自ら手を使って行う実験もございました。
 特に何日間もかけてグローブボックスに手を入れていろんな作業をする、そういった本当にスキルを必要とする実験に関しましては、ある意味、時間的なプレッシャー、それからそれを失敗することによって研究者が得られる成果に影響しかねないといったプレッシャーの中での作業になりましたけれども、大体においてはほかの飛行士とペアを組んで協力しながらやる、あるいはカメラを使って、地上のまさに研究者なり研究者の代理として我々に指示あるいはアドバイスをしてくれる、そういった人たちとの協力でもちろん何事もなく実験は終えることができました。
 
【高鳥委員】 どうもありがとうございました。
 
【藤崎主査】 いかがですか。オンラインの方々、いらっしゃいますか。向井先輩はいかがでしょうか。
 
【向井委員】 私からは特に質問はありません。星出さんの無事帰還、本当にうれしいです。星出さん、おめでとう。史上2人目の日本人コマンダーとして大きなミッションを率いてきた大成功を本当に誇らしく思っています。
 星出さんとは日本の有人宇宙飛行を立ち上げた当時から一緒に仕事をしてきたので、星出さんのように大きな国際プロジェクトをリードできるすばらしい日本人が乗組員だけでなくミッションコントロールセンターの人材等、JAXAの中で育ってきているのは本当にうれしいです。37年の歴史でこんなふうに日本も発達してきたと思っています。星出さんは将来月に行くかもしれないし、今後もぜひ頑張ってください。向井からは以上です。
 
【星出宇宙飛行士】 ありがとうございました。若田飛行士に続いて二人目の船長という形で今回、任務に携わらせていただきましたけれども、これはやはり日本の貢献がしっかり認められたおかげだと強く感じております。
 そして、今、管制官の話がありましたけれども、2回目の長期滞在で感じたことは、やはり若い世代が育っている、それからノウハウが積み上げられていると。継続しているからこそいろんなトラブルがあっても円滑に、速やかに対処できている、それだけ経験値、技術力が高まってきたと感じました。
 
【藤崎主査】 ありがとうございました。ほかの方々がなければ、これで第1議題、星出さんの報告を終わりますが、よろしいですか。向井さん、むちゃ振りしてすみませんでした。
 
【向井委員】 いえいえ。
 
【藤崎主査】 きっとねぎらいの言葉があると思ったものですから。それでは、星出さん、どうもありがとうございました。(拍手)
 
【星出宇宙飛行士】 どうもありがとうございました。国際宇宙ステーション、それから有人活動の分野で我々飛行士としても頑張っていきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。(拍手)
 
【藤崎主査】 ありがとうございます。それでは、第2議題に入ります。
 ISSの有用性についてということで、これは佐々木理事、よろしくお願いいたします。
 
<JAXA佐々木理事より資料46-2について説明>
 
【藤崎主査】 ありがとうございました。これからオンラインの方も含めて皆様方の御質問等を受けていただきますが、1点確認でございます。これはこれから議論する一番大事な点でございますが、今の8ページの「ISS運用を2030年まで延長することにより、以下のような効果が得られる」という中の3番目のチェックの最後に「技術移転や事業実証等の期間を確保でき、民間主体の低軌道活動へのシームレスな移行を実現」と。これは、別な言い方をいたしますと、民間により重点を置いた低軌道活動へのシームレスな移行の準備を可能とする、つまりISSを延長することによって民間により重点を置いた低軌道活動へのシームレスな移行の準備ができるということと解してよろしいですか。
 
【佐々木理事】 はい。まだ2030年の姿がはっきりしませんので……。
 
【藤崎主査】 全部それは分かっていますけど、その上で今の理解でよろしいですか。
 
【佐々木理事】 はい、そうかと思います。
 
【藤崎主査】 分かりました。どうもありがとうございました。他の方々、どうぞ。
 
【高橋委員】 今の御説明の中で科学の話をちょっとお聞きしたいんですけれども、ISSのような環境で科学、特に天文観測とかその場の宇宙線観測とかができるとすごくいいと思っています。一方で衛星を使って行うサイエンスも多いと思います。ISSが適しているのはどういう点と考えておられるのでしょうか。
 
【藤崎主査】 ほかの委員の方々はございますか。できれば3問ぐらいまとめてのほうが時間の観点上いいかと思いますので。永山委員、お願いします。
 
【永山委員】 御説明ありがとうございました。2点お願いします。
 最初の技術の実証、それから課題の解決というところでより高度化を目指すと御説明にありました。既にISSで10年、20年の蓄積があるのですが、そこからよりどういう高みを目指していくのか、その具体的な姿がよく見えなかったところがあります。もう少し具体的なイメージがあれば教えてください。
 それから、国が関わるという意味では国際協力が一番大きなポイントになってくると思いますが、日本のプレゼンスが上がってきているというところについて、いろいろな利用が広がっている、アメリカの信頼を得ているということは分かりましたが、具体的に、日本にとって何がどうプラスになっていると実感されているのか、単にきぼうを使ってもらっているという以上に日本のプレゼンスが上がっている具体的な事例があれば教えてください。
 
【藤崎主査】 ありがとうございました。稲谷委員、お願いいたします。
 
【稲谷委員】 2つほどコメントです。永山先生の御質問とも重なるかもしれませんが、特に3ページの技術の実証というところで、多くのことが習得されましたと書いてあるのは確かにそのとおりと思います。申し上げたいのは、これらの多くの成果が、何か次の新しいことをやるときに、十分なのか、そうでないのかが分からないと言うことです。例えば日本が次に自前のステーションを作りますとか、自前の居住モジュールを造り作りますとか、あるいは自前の輸送システムを作るとか言うときに照らして、ISSのお陰で今はここまで来ました、でもまだ足りないのはこれこれですというようなことが理解できれば、例えばこの先の10年間でISSの機会を利用してこういうところまでやればこういうことができるじゃないですか、というような、これからやるべきこととの関係で話が理解されるのだと思います。単にこれだけ多くの成果がありましたというだけではなくて、こういうことをやるにはここまで来ています、ただこれは足りていないので、次の進化のためには、こう言うことをやるべきです、というような表現があると、この先に向けての価値がもっと増すのではないかと思いました。
 ふたつ目は、これは我々も研究成果の評価の場面や、成果がこれで十分かという場面があるのですが、結局、ISSはダラーパーペーパー(論文ひとつにお金がいくらかかっているかの指標のこと)といいますかコストパフォーマンスを言われたときに、非常に大きなお金を使っているのであるからたくさんの成果が出て当然だろうという見方をされる場であるということです。例えば先ほどの5ページなどでシャトル時代に比べて資金獲得数は10倍ですとか論文数は4倍ですとか書かれていますが、これは、少ない機会を利用して実験をしていたシャトル時代と、年中実験が行えるようなISSでの実験機会が飛躍的に増えた状態では,たくさん増えるのがある意味当たり前だという見方も一方ではあるのだと思います。
 そうすると、ダラーパーペーパーのある種の投資効率のインデックスというか、メジャーにしないと行けないのではないかと思います。即ち成果のノーマライズのやり方であって、是非ともよい表現をしていただいて、質の高いのが増えたとか、学術のみならず世の中へのインパクトや効果はいっぱいありましたね、ということがより実感を持って表現されるのではないのかと思いました。これは私たちも研究を評価される、あるいは評価する立場でずっとやってきたので、難しいことではあるとは思うのですが、よいノーマライズの方法や表現の問題と言い換えてもいいかもしれません。そういう表現の工夫で改善されると大変よいかと思ってコメントさせていただきました。以上です。
 
【藤崎主査】 ありがとうございました。一旦ここで切らせていただいて、もしオンラインの方でほかにお考えの点があれば次に御発言いただくことにして、佐々木理事、ここでお答えをいただけますか。
 
【佐々木理事】 はい。御質問ありがとうございます。順次お答えさせていただきます。
 まず、高橋先生からは、科学に関してのISSに適しているところという御質問だったと思います。
 3つほど挙げさせていただきますが、まず1つは、人工衛星と比べますと、姿勢制御とか、そういう機能は必要なく、観測に徹することができる、科学者からすると衛星等のいろんなシステムを準備しなくても観測はできるという点がまず1つ、大きなポイントかと思います。それから、もう1点は、宇宙ステーションというのは定期的に補給がされるということ、また人間がいて直すことができるという意味では、何かトラブルがあったとき、想定外のことが起きたときに修理が利く、継続的に観測するといったことで成果が上げやすいという点。それから、最後は、宇宙ステーションは打ち上げてから20年近くたっていますけれども、先ほどとちょっと重なりますけれども、継続的に運用する、常に観測することができるという観点で非常に有益ではないかなと思います。
 一方で、人間がいるといった形で遮られることもありますので、デメリットは確かにあるとは思います。それから、永山委員からの御質問で、一つ目が……。
 
【永山委員】 既に蓄積されたものがあり、そのうえでどういう高みを目指してこの後10年やるのかというところです。
 
【佐々木理事】 例えば水再生、空気再生といったものでいきますと、まずは今の技術レベルからするとゲートウエイ辺りに持っていくために必要な技術といった形で、ある程度補給もできるレベルでの能力、それでも国際的にはトップクラスになるんですけれども、そういう技術開発をしていく。ただ、月面に行くとか火星に行くとなると補給とかサポートがほぼ得られない状態になりますので、これをさらに高効率、補給が要らないような完全な再生技術というところまで持っていかないとなかなか現実にならないという意味で、延長する機会をうまく捉えればそこまで技術を上げていきたいと考えています。
 それから、国際協力のプレゼンスで感じるところということで言いますと、ちょっと個人的でもあるんですが、当初、ISSの場合、「きぼう」の打上げも実は一番最後に回されたといったところがあります。これは日本がユーザーという意味で捉えられていたというのでどうしても後回しになっているというのはあったと思います。ところが、ゲートウエイとか月面の議論をするに当たっては、輸送手段とかは技術的にもある程度信頼されているといったところがありますので、我々が初期の段階から貢献し、使わせてもらえるような議論が進むといった上では、ISSの各国との関係においては明らかにプレゼンスが強いなと思います。
 それから、アジア各国に対しても、これは中国とかいろんな競争がありますのでなかなか難しいところではありますけれども、アジア各国との話合いの中で我々の枠組みに入ってくる一つの強い手段としてISSがうまく使えているという意味では有益になっているなと思っています。
 それから、稲谷先生の御質問で、3ページの右側の図は全てをカバーしていないので、どちらかというと探査に向けた技術のほうをある程度ピックアップして並べているのでちょっと分かりにくかったと理解をしています。ここには行き先のところが書いていないんですけど、例えば低軌道の有人化に向けた技術という観点でいきますと、有人輸送のところ、それからあと、ここにはないんですが、拠点を構築する技術といったところはやはり日本としては不足していると感じております。今回はテーマが国際宇宙探査に必要な技術の実証ということで精査していただいたのでちょっとそこには書いていないんですが、そういうところについてもいろんな議論の中で獲得できればいいなとは思っております。
 それから、最後の研究成果のコストパフォーマンスですが、御指摘のとおりで、本来、費用対効果は常に問われるところだと思っています。これにつきましては、次回、コストも含めた議論がなされると伺っていますので、その中で御指摘のことも取り込みながら御回答させていただければと思います。
 
【稲谷委員】 私の1番目のコメントは、やっぱり次になにをやるのかがこの先大事なこととなってくると思うので、今日の議論ではないかもしれませんが、この先でやるべき事との関係で、足りていないところを同定して次の課題を決めていく、と言うような流れでご説明されるよう是非ともよろしくお願いします。
 
【佐々木理事】 現時点でそこまで踏み込んだ発言はちょっと差し控えますが、今後の議論の中で進めていきたいと思います。
 
【藤崎主査】 ありがとうございました。高鳥委員お願いします。
 
【高鳥委員】 5ページの知の創造・社会的課題解決のところの左上で、対象を有望分野に重点化して、さらに高度な研究ということでどんどん進化して取り組まれているということなんですけれども、2030年とかで考えた場合に、今後これらをさらに進化させていくのか、それとも新たな研究テーマを募集して取り組まれようとしているのかということが1つと、その場合に、テーマの募集はどういうふうに行われるのかということ。あとは、他に様々な事業があると思いますけれども、それらとの連携は考えられているのか。健康・医療ということで考えるとAMEDの事業がありますが、例えばBINDS事業(生命科学・創薬研究支援基盤事業)というライフサイエンス研究の支援を目的とした事業が今年の4月から新たなフレームとして始まろうとしていますけれども、そういった事業との連携も考えられるんじゃないかと思うのですが、その辺りをお伺いしたいと思います。
 
【藤崎主査】 高橋委員、どうぞ。
 
【高橋委員】 先ほどのお答えでもいいんですけれども、方向規制をしないでいいというのは、逆に言うと、方向規制を必要とするサイエンスは難しいということになってしまうと思います。それよりも、むしろISSであるからこそ、こんなにいいサイエンスができるんだというものがうまく識別できるといいんじゃないかなと思います。例えば、普通の衛星ではできないような非常に大きなものが搭載されていたり、ロボットアームが使われていたり、そういうものもあると思うんですね。科学として良いプラットフォームになると思うので、単にサービス面ということではなくて、科学の目的に適したいいことが沢山できるんですよというような言い方ができるといいなと思いました。
 
【藤崎主査】 ありがとうございました。金山委員、お願いいたします。
 
【金山委員】 金山です。どうもよろしくお願いします。
 5ページ目の新たなビジネスサービスの創出についてです。確かに過去4年、民間の参画の拡大というところが数値でよく表れていると思いますが、一つは、海外、例えばヨーロッパやアメリカもこれと同じようなプログラムを国として持っているのかということと、二つ目が、もしもそうでしたら、例えば民間の参画というところが日本は欧米に比べて非常に多いとか、そういうところがもしも分かりましたら教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
 
【藤崎主査】 それでは、よろしくお願いいたします。
 
【佐々木理事】 ありがとうございました。
 まず最初の御質問ですが、我々のISSは2024年を前提にやってきましたので、なかなか幅広くお声かけして新たな取組をしようというのができてはいなかったのですが、延長されれば、我々だけでは分からないいろんな分野がございますので、そこはしっかりといろんなところとコミュニケーションを取って、連携した形で幅広く新しい分野に取り組んでいきたいと思います。そのためにもプラットフォーム化して、今までやってきたことは民間とかに移管して、我々としては新しいのに取り組むような体制を整えていますので、そういう形でやっていきたいと思います。AMEDさんについては、いろんな分野で我々も意見交換を始めさせていただいていますので、実際にやっている小川のほうから。
 
【小川きぼう利用センター長】 横からすみません。有人部門「きぼう」利用センターのセンター長を拝命している小川と申します。よろしくお願いします。
 我々、「きぼう」利用を行うだけでも、米国に比べるとリソースもそんなに多くはないので、誰かと連携をして成果を出していくというのは非常に大事だと思っております。先ほど言ったように、こちらの絵に出ておりますけれども、例えば創薬のほうであれば、今、高鳥先生にお話しいただいたように、AMED、昔で言えば理化学研究所などが担当しておりました創薬基盤ネットワークとかと連携をつなげると。今は、先ほどおっしゃっていただいたように、BINDSにおける仕組みができておりますので、宇宙を組み込みができないかというのを、AMEDだけではなく、そちらのほうに参画するであろう大学や研究機関とも一緒になってネットワークを組む、そういったような形にまずしております。
 健康長寿のほうなども、我々、宇宙で実験できる数はそんなに多くはありませんが、逆に地上では東北メディカルメガバンクといったようなコホート研究の大きなデータを持っているところがありますので、そういったところとしっかり組んでいく、それで地上と宇宙の成果を創出していくというような形で広げていくのをこういった図に表させていただいております。
 
 【佐々木理事】 あと、金山委員のほうから御質問があった民間の利用参画ですが、民間利用に着手したのは日本が一番最初だと思います。そこはしっかりと先駆者としてやってきたんですが、やはり、「きぼう」については小川さんのほうからいいですか、米国とかの民間の今の様子をお願いします。
 
【小川きぼう利用センター長】 米国のほうは、ISSナショナルラボという考え方の下、インプリメンテーションパートナーのいろんな企業を巻き込んで利用を支援する体制というのはできております。そういった点ではJAXAのほうは今、小型衛星、それから船外利用、あと、たんぱく質というところで事業者を認定して広げてきたところなので、興味を示している国内の企業さんはいらっしゃいますので、ぜひともそういったところと対話を続けて民間利用の事業を広げていきたいと。まだまだ伸び代があると私自身は思っております。
 それから、ちょっとまた話がずれますけれど、高橋先生からお話のあったISSだからこそできるサイエンス、ハード的には観測機器に専念できるというところがあるんですけれども、この説明の中にちょっと出てくるかもしれないんですが、全天エックス線監視装置のような広く全天を見るという観測装置が船外についていまして、これの強みは逆に地上の天文台あるいは人工衛星と専門的なネットワークを組むことで全地球的、網羅的な観測網をつくるといったことがございますので、やはりそういったISSの強みのサイエンスもどこかしらあると思いますし、実はそういったところでこれから先できることは何があるだろうというのは国内の大学、いろんな研究者の方々と対話を始めてアイデア集めをしているところであります。ありがとうございます。
 
【佐々木理事】 高橋先生のコメントに関しては、ISSならではの強みが何かないかというところでいろいろアドバイスをいただきましたので、今後いろいろと考えていきたいと思います。ありがとうございました。
 
【藤崎主査】 高橋委員、お願いいたします。
 
【高橋委員】 もう一つ、全体を通じてお願いがあります。きっと次の宇宙ステーションを造っていくに当たっていろんな技術的な課題があると思うんですね。その技術的な課題というのは、宇宙をやっている人たちの中だけで解いていく課題というよりも、逆にそういうのと縁がない人たちに新しい研究のテーマを与えるようなものもあると思います。こんなことができたら次のISSはもっと魅力的になるというようなアピールの仕方、課題の提示の仕方があるといいと思うのですが、そういうものはあるのでしょうか。
 
【藤崎主査】 お願いします。
 
【佐々木理事】 そういう意味では、我々としてはいろんな仕組みで宇宙の専門でない方に対して興味を持ってもらう、それは事業の観点、それからあと、サイエンスの観点で多くの人にお声がけはしています。延長が決まれば、ISSの延長される6年であれば6年間の活用方法というのはそういう形で幅広く御意見を伺って進めていきたいと思います。
 
【高橋委員】 活用というよりは、もっと魅力的にするための技術開発とか技術的課題というのが宇宙の研究者とか技術者以外の人たちに浸透するようなことがあると新しい技術分野が開くのではないかなと思いますし、地上のいろんな分野で、そういう新しい技術が育ってきていると思うんですね。そうした地上の新しい技術開発の流れとのリンクが取られるといいなと思いました。
 
【佐々木理事】 ありがとうございます。ちょっと質問を誤解しました。探査でも同じような取組を始めていますが、低軌道の活動に関しても幅広い課題を設定していろんな意見を集めるという取組はぜひさせていただきたいと思います。
 
【藤崎主査】 ほかにありませんか。議題2、ISSの有用性については、佐々木理事に御説明いただきましていろいろ討議をいたしました。それではこれで第2議題は了したいと思います。佐々木理事、ありがとうございました。
 
【佐々木理事】 ありがとうございました。
 
【藤崎主査】 では、第3議題に移りたいと思います。第3議題は、ISSを含む地球低軌道活動のビジョンについてということでございますが、これは、国分室長、よろしくお願いします。
 <国分室長より資料46-3について説明>
 
【藤崎主査】 ありがとうございました。今の御説明につきまして、率直に申しますと、事務方と私が昨日相談をしたときに実は私の考えとちょっと違ってございまして、これは表現の問題かもしれませんが、これをこういうところで言っていいだろうかと思ったら、おまえがそう思うなら言ってもいいよと室長から御許可があったので、ちょっと私の考えを整理させていただきます。
 私の考えは、結論としてはISSの延長は必要であるということを明確にするその理由は、まず最初に、今、佐々木理事から御説明があった知の創造ミッション、あるいは新ビジネスの創出等のミッション、さらに、官民協力というか、民間移行へのプラットフォームとしてISSが使える、まずこのミッションがあることが第1でございます。2は、このISSのドンガラは20年以上たっておりますが、まだ使える。それであればグリーンフィルドで何か新しく始めるよりもこれを使っていったほうが費用的に少ない。3番目、米露がこれをまだ使いましょうと言っている。この3つの条件がそろった中でほかのオプションはあり得ない。費用対効果から言ってこのISSを使っていくことが一番効果的ですという結論が1つあると。
 第2点の柱としては、他方、さっき御説明があった2030、2040ということももちろん見据えなければいけない。そのときには2つの流れがあって、1つは、ゲートウエイ、月、火星とどんどん深宇宙へ進んでいくという流れの中でLEO、低軌道をどう考えるか。2番目は、官から民へ少し重点を移していくときに低軌道、LEOをどう考えるか。この2つの視点から考えて、ISSがあと6年間あるとして、その先、低軌道はどう使っていくのか。ゲートウエイや月へ行くけれども、プラットフォーム、訓練の場としてあるのであればどういう形がいいのか。民間主体がいいのかどうか。そういう形で整理すると少なくとも40年を目がけてLEOはどうですかと言うよりも分かりやすいんじゃないかと。
 ただ、率直に言いまして、私がそういうことを言っていいかどうか分からないですけど、政策委員会とか、そういうところとの関係で今はそこまで言わないほうがいいということであれば別な整理でも――私はまとめ役でございますから自分がこんなことを言ってはいけないのかもしれないんですけれども、ちょっと発言をさせていただいた上で、まだ時間は30分ございますので、皆様方がそれぞれどういう形でこの低軌道活動のビジョンというものをお考えになるか御議論いただければ。
 繰り返して申しますとあれですけれども、ISSの延長と問題とビジョンというのは2つあるけれども、ビジョンがあるからISSをやるんだということではなくて、そちらはほぼ自明と考えていいんじゃないのかと私は思いますが、もちろん考え方の整理はいろいろございますので、私はまとめ役でございますから、皆様方の御意見を伺ってまとめさせていただきます。以上でございます。どうも失礼いたしました。
 
【事務局】 事務局ですけれども、次回、草案、たたき台みたいなのを御紹介させていただきたいと思うんですけれども、いずれにしろ本日いろいろ御議論いただきましたものはそういったところに基本的には反映していこうと思っていますので、本日の場はぜひ忌憚のない御意見をいただければと思っています。
 
【藤崎主査】 その意味で、先ほど主査が言ったことは全く違うとおっしゃっていただいても全然結構ですから、どうぞ御遠慮なく。この後30分間で皆様方で議論して、ぜひ事務局に素案をつくる考え方をできるだけ提供していただくとありがたいと思います。あるいはJAXAのほうからももちろん御発言いただいて結構ですから。向井先生、どうぞ。
 
【向井委員】 藤崎先生、どうもありがとうございます。私も藤崎先生の考え方に賛成です。ISSがなぜ必要かというと、日本はアルテミス計画に国際協力体制で参加しています。この計画遂行のために技術検証の場として低軌道のプラットフォームが必要です。ISSはこの目的で使うべきです。低軌道から月面に行くには放射線を含めて数々の困難があるので、アルテミスをベースとした技術や運用の検証で使うべきかと思います。これが1点。
 もう1点。アルテミス、あるいは火星探査を含めて、地球低軌道のプラットフォームは、利用が有人であれ無人であれ、必要になると思っています。この将来的にはプラットフォームの所属や運用体制は民間が主軸で行い、プラットフォームを国に貸すくらいのつもりでやっていくことになると期待しています。利用は民間が、未知の探査は国がすすめる体制が必要と思います。
 
【藤崎主査】 ありがとうございました、向井先生。
 ほかの先生方はいかがですか。稲谷先生、お願いします。
 
【稲谷委員】 今、探査に向けたいろんな技術ということだったと思うんですが、一方で、アルテミス計画というのは宇宙ステーションのこの先の時間の流れと並行して動いていくということだと思います。ISSが終わるまで時間をかけてやるというものでよいのか、あるいはアルテミス計画でものごとが構築される時間的な流れとの関係において、いつまでには何をやらないといけないかというような、相互の進捗の連動というか同期という観点で考える必要があるのかないのかが、少し気になりました。
 それから、2点目ですけれども、前回か前々回かの議論で、ISSは終わった後にどういうことにつなげるかといえば、民間の宇宙活動を活発にして、そちらが低地球軌道での宇宙活動の主流になっていくという状態をつくって終わるというようなことの具体像の案を何かお考えですかという質問をさせていただいたと思います。この延長しますという時点での議論にそれがまた終わりを迎えたときにどういう状態をつくっていくということも入れるのか入れないのかで延長の中身も議論が変わってくるかと思います。この点はこれからの議論ではあると思いますけれども、考えておく必要があるかと思いコメントさせていただきました。
 
【藤崎主査】 今の稲谷先生の御発言について、文科省あるいはJAXAから何か御説明はございますか。
 
【佐々木理事】 それでは、JAXAから。これは多分、前回議論させていただいた内容かと思います。前回は、我々として想定しているのは、2040年代ぐらいの先を見据えたときに、国が全て関わって運営するということではなくて、高い目標としては国の支えがなくても低軌道活動が自立的に運営されるという姿を置いて、それを目指して何をすべきかを検討するというのが我々としては問題提起しやすいということでお話をさせていただきました。
 
【国分室長】 まず、稲谷先生の1点目につきましては、2030年というのは月を拠点化していくというフェーズに入ってきているので、そこに向けてどこまで行くか。さっきの議題2のJAXAさんからの説明の中で若干明示されなかったかなと思ったのが、(1)のところで、アルテミス計画のための技術の実証という意味で丸い図が示されていると思うんですけれども、赤い丸のところまでが2024年までで獲得できる技術となっていて、それより外側の黄色い点線になっているところは、2030年まで延長するのであればここまで技術を進展させることができる、この黄色い点線のところまでで月やそれ以遠の深宇宙探査に向けた基本的な技術がかなり獲得できるのではないかという図になっていると理解していますので、2030年にどこまでISSでやっていくかというのは、アルテミスの観点との時系列で言うのであればそこなのかなというのが1点目だと思います。
 それから、2点目はISSから民間のステーションにどういうふうにつなげていくか、もしくは民間ステーションに頼っていいのかというところの論点だと思うんですけれども、それに向けては、この小委員会の結論の出し方としては、ISSを延長するかしないかという二択の結論だけが出てくるものではなくて、延長するのならどういうことをミッションとして課していくのかという付け出し、延長しないんだったらどういうことをこれからやっていくべきかという付け出し、こういうところをセットで出していくのが一つの結論の出し方としてあり得るんじゃないかと理解しています。
 
【稲谷委員】 前回、その終わり方を具体的に見せることが分かりやすさにつながるのではないかとコメントをさせていただいたところ、そこは何かある特定なことを言うことは今の時点ではまだ尚早であるというような議論であったとは思うのですが、どこかではその議論もしないといけないのではないかなと思いましたので再度、御質問しました。
 
【藤崎主査】 分かりました。オンラインの方も含めまして、ほかの先生方、どなたか御意見があれば。向井先生、お願いいたします。
 
【向井委員】 すみません、もう一点よろしいでしょうか。
 ISSは利用の話もありますが、国際プレゼンスの懸念を述べてもよろしいでしょうか?
 
【藤崎主査】 どうぞおっしゃってください。
 
【向井委員】 国際プレゼンスに関しては、先ほどの資料では、人材育成、教育を含め、アジア地区のリーダー的な役割等のポジティブな内容なのですが、私の認識ではNASAは2030年でISSを終了すると。また、ロシアはなるべく早くにISSを終了して中国と組みたいという動きがあると思います。これはISSだけでな、国際社会も分断してきしています。月の探査を考えると、多分、二極化というか、ロシアと中国は手を組んで、NASAを中心にしたアルテミス参加国という枠組みになるかと思います。ゲートウエイ計画は、ロシアを除くISSのIP(International Partner)4極―日本、カナダ、アメリカ、ヨーロッパ、これらの国で遂行しようとしています。ですから、このゲートウエイの4極に日本が現在入っているということが国際社会の中で非常に大きな役割を示していると私は思っています。この意味でもISSをテストベッドとしてアルテミス計画やゲートウエイ計画の成功に向けた技術検証を施行してほしいです。
 
【佐々木理事】 ロシアのことだけ、そこを少し補足させていただきますが、現在、ISSの延長に向けて議論は始まっているんですが、その中では、ロシア側はロスコスモスという宇宙機関がやっていますけれども、ロスコスモスにつきましては、技術評価をして……。
 
【藤崎主査】 今の向井さんのお話はその後の考えで、足を洗って中国と手を組みたいというようなことを言っているんじゃないですかという話のほうですね。
 
【佐々木理事】 はい、それに対しての御回答なんですが、最終的には政府の判断ですのでそこはまだ決まっていませんが、我々が宇宙機関同士として話している中では、ロシアはISSについては少なくとも2030年に向けてしっかりと継続するということで政府と話を進めているとは伺っています。
 
【藤崎主査】 延長はするんだけど、その後のことはまだ見えないですね。
 
【佐々木理事】 その後は見えないです。ロシアのほうも、技術的にも難しい状況もあるということだそうです。それから、ゲートウエイ、それから月に向けても、報道ではよく中国とロシアということがありますけれども、ロシアはまだそこまでは全く決めていなくて、特にヨーロッパとか、そういうところとも協力しながら単独で検討を進めたい、今後、米国との議論はするというふうになっています。
 
【藤崎主査】 分かりました。高橋委員、どうぞ、お願いいたします。
 
【高橋委員】 先ほど見せていただいた最後のところでビジョンをつくりというようなことがありました。ちょっと教えていただきたいのは、そもそも低軌道での宇宙開発が持続可能な人類社会をつくっていく上で必要であるということが前提となっていて、そのためにISSのようなものをどう運用していったらいいだろうかという議論だと思っていてよろしいですね。
 
【藤崎主査】 今、国分さんがお答えになるだろうと思いますが、基本的には、その点も含めて何が必要なのかということ、先ほど佐々木さんから御発言があったような知の創造、あるいはビジネスチャンス、そういうものが6年間で全てなくなってしまうわけではないでしょうから、初めからありますという議論ではなくて、恐らくLEOは必要だろうということも含めて検証して、議論して、だからという格好にはするんだろうと思います。
 国分さん、何か補足されることはありますか。
 
【国分室長】 このページにございますとおり、去年、一旦、中間取りまとめを行った時には、そもそも地球低軌道活動は2025年以降も必要なのかというのも含めて検証した上で、必要だろうし、2040年というのはもっと活発になっているだろうということをこの黒字の文章で中間地点として置かせていただきましたが、もちろん委員の皆さんも代わっていますし、黒字も赤字も含めて改めて考えていただければとは思っています。今のところ、これまでの議論の中では低軌道というのは何かしら必要で、2040年はこういうふうになっていくのではないかということで事務局としてこのたたき台を提案させていただいておりますので、様々御意見をいただければと思います。
 
【高橋委員】 ビジネスという言い方はいいか分からないのですが、ここは何となくそれの継続というような読み方に取れてしまって、人類が持続していくためにこういう活動が非常に重要であるというようなところはどこを見ると分かるんでしょうか。
 
【国分室長】 2個目のビジョンの黒字のところはそこも含めた形で書いたつもりではあったんですけれども、「深宇宙探査等に向けた持続的な研究開発基盤として宇宙環境利用が定着し」というところの宇宙環境利用というのは当然、先ほどのアカデミックなものも含まれていますし、人類にとってというのは、そもそも人類の活動領域の拡大というのが宇宙基本計画の中で大前提となっていますので、宇宙環境利用が定着というところにはそういった意味合いも含めて記載していたつもりではありますが、よりよい修正があればぜひ御提案いただければと思います。
 
【高橋委員】 基本法のほうに根っこがあると思って議論すればよろしいのですね。分かりました。ありがとうございます。
 
【藤崎主査】 永山先生。
 
【永山委員】 ありがとうございます。既にアルテミス計画の議論等が始まっていると思いますが、向井さんがおっしゃっていたように、アルテミス計画やゲートウエイに向けたテストベッドとしてISSが不可欠であるということは、関係各国間で共有されている認識と考えていいのでしょうか。
 
【藤崎主査】 どうぞ国分さん、お願いします。
 
【国分室長】 これも実は去年までで一度議論になりましたが、まず、我が国としては、宇宙基本計画に実証の場として使っていくんだということが明記されています。同様に、アメリカも政策ペーパーの中でその記載がございますし、欧州もロシアもそういう発言をされているというのを1回、去年・一昨年の中では確認しておりますので、各国ともアルテミス計画のテストベッドとしてISSが重要であるということは共通の認識になっていると理解しています。
 
【藤崎主査】 ありがとうございました。倉本委員、お願いいたします。
 
【倉本委員】 1つ、すごく基本的なことの再確認をしたいんですけれども、2030年というのはやはり1つのターニングポイント、つまりアメリカは現在のISSからは完全に手を離すということ、これは前提条件として考えていいということでしょうか。
 
【藤崎主査】 どうぞ答えてください。
 
【国分室長】 日本時間で今年の1月1日にNASAが発表した米国政府としての方針としまして、2030年までISSを運用する、このことは民間による低軌道空間の運営・利用につながっていくんだということで発表がございましたので、基本的には、米国としては2030年で一旦、区切りを迎えると理解していると思います。
 ただ、1点だけ、すみません、向井先生のおっしゃった部分で若干、事実誤認等があったのでちょっとこの場を借りて補足させていただきますが、NASAは2030年が終わったら地球に落っことすという報道があるのは承知しているんですけれども、それはNASAがコスト試算の推移を議会に提出する必要があったペーパーの中で、アサンプションと書いていたんですけれども、仮に2031年1月に地球に落っことすとした場合に、その前後の宇宙ステーションの運用に係る経費は幾らコストダウンしますという試算をしたというものでございまして、2031年1月に地球に落っことすということが計画として具体的にあるわけではございませんし、そもそも日本の所有物である「きぼう」は日本の財産ですから、これを勝手におっことすという話がいつの間にか決まっているということはないと理解していただければと思います。
 
【倉本委員】 ああ、そうですか。分かりました。実は私もその報道に接していて、そういうことだとかなり大変なことだなと思っていたところがあるんですが、条件は分かりました。なぜこの質問をしたのかといいますと、やはりその辺の前提条件が何かというものをしっかり見据えた上でないと、2030年まで延長したときにISSの中で何を進めていくのか、あと、特に2030年で現状のISSが仮になくなるというようなことがあったりしますと、2030年までにどうやって次のものに移行させていくかという議論もかなり真剣に行わないといけないかなと思いましたので質問しました。どうもありがとうございます。
 
【藤崎主査】 ありがとうございました。今、国分さんから説明したとおりですけれども、御承知のとおり、米国は政権が代わりますと全く違うことを言い出す。オバマ政権のときは月じゃなくて火星だと言い、トランプ政権になると月に戻り、そして今度は、アルテミス計画についての年限もバイデン政権になって変わったりいたしますし、一定の前提としては考えておく必要はございますが、こちらでは常に頭の中には柔軟性も必要だろう、その2点をもって議論するんだろうと私は思っております。
 今日は星出さんの御説明、佐々木さんの御説明、そして国分さんから今後のビジョンについてのお話がございました。国分さん、最後に、次回以降はどういうふうに進められるかの展望を簡単にお話しいただけますか。
 
【国分室長】 今私が御説明した最後のページですけれども、スケジュールがございまして、次回は3月中旬ぐらいを想定していますが、最後の論点である費用対効果やコストパフォーマンスについてといったことをまず御議論いただこうと思っています。その上で、その同じ第3回に、これは非公開でやるかもしれませんが、最終提案に向けたたたき台を私どものほうから提案をさせていただいて、それをまさにたたき台として御議論をいただきたいと思っています。
 この小委員会としてはこの上の宇宙開発利用部会の最終決定としてこういう提案でよろしいのではないかという案をつくるところまでがミッションでございますので、この最終提言案を4月中旬頃に決定いただき、その後、宇宙開発利用部会のほうでこれを最終的な提言とするかについて御審議をいただくと。
 また、これだけだと政府の決定に至りませんので、この後、内閣府の宇宙政策委員会のほうで他省庁の御意見とかも含めた多角的な視点からホールガバメントとしての御議論をいただいた上で、最終的にはこの夏までの間に政府決定を目指したいと思っています。
 
【藤崎主査】 今のは、4月中旬頃にこの小委員会として最終提言案を発表するということですね。
 
【国分室長】 はい、そのとおりです。
 
【藤崎主査】 はい、分かりました。それでは、今日は大変長きにわたりまして皆様方に御参加いただきましてありがとうございました。これをもちまして本日の会合を終えたいと思います。事務局から何か補足はございますか。
 
【事務局】 事務局でございます。本日の議事録につきましては、後日、文科省のホームページに掲載させていただきます。また、次回の小委員会の予定につきましては、日程調整の上、改めてお知らせさせていただきます。以上です。
 
【藤崎主査】 ありがとうございました。では、以上で閉会いたします。

(了)

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