令和3年6月30日(水曜日) 14時00分~16時30分
文部科学省 3階第一特別会議室 及び オンライン
主査(専門委員) 藤崎一郎
主査代理(専門委員) 向井 千秋
臨時委員 稲谷 芳文
専門委員 金山 秀樹
専門委員 倉本 圭
専門委員 古城 佳子
臨時委員 高鳥 登志郎
専門委員 高橋 忠幸
専門委員 竹森 祐樹
専門委員 中村 昭子
臨時委員 永山 悦子
大臣官房審議官(研究開発局担当) 長野 裕子
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長 国分 政秀
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室室長補佐 溝田 岳
(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA))
理事 佐々木 宏
国際宇宙探査センター センター長 筒井 史哉
宇宙飛行士 野口 聡一
<議題1は非公開のため議題2から議事録を開示>
<事務局よりオンライン会議の注意事項等説明>
【藤崎主査】 では、これから議題に入るわけでございますが、今、議題を入れ替えさせていただきまして、議題2の「国際宇宙ステーション計画とアルテミス計画の概要」と、議題5の「アルテミス計画に関する各国の開発状況」を合わせまして、まず、議題2を国分室長から御説明いただきまして、それから、JAXAのほうから議題5について御説明いただき、その後、質疑応答にしたいと思います。そして、次にISS関係ということで、議題3の「国際宇宙探査及びISSを含む地球低軌道を巡る最近の動向」に移ります。議題4が「野口宇宙飛行士によるISS長期滞在の報告」ですので、3時5分には野口さんに移りまして、もし議題3の積み残しがある場合には、4が終わったところでまた続けると。そして、議題6の月面に参りたいと思います。
まず、議題2、国分さんから御説明いただきます。
<文部科学省国分室長より資料42-3に基づき説明>
【藤崎主査】 ありがとうございました。
では、続きまして、議題5のアルテミス計画に関する各国の開発状況、これは佐々木理事からお願いします。
<JAXA佐々木理事より資料42-5に基づき説明>
【藤崎主査】 ありがとうございました。では、今、国分室長、佐々木理事から御説明のありましたアルテミス計画につきまして、皆様方、委員の方々から、御質問なり御意見があれば伺いたいと思います。
ただ、3時5分から野口さんの報告となっておりますので、野口さんの報告が整ったらどうぞ教えてください。中断させていただいて、野口さんの報告に移りますので。
【国分室長】 すみません。野口飛行士は既にログインされています。私から、僣越なのですが、次の議題のところでまさに野口さんや星出さんを御紹介するページがありますので、そこだけ説明させていただいたほうが良いかと思います。
【藤崎主査】 どうぞ。
<文部科学省国分室長より資料42-4の22~23ページに基づき説明>
【国分室長】 では、宇宙飛行士の御紹介は以上ですので、もしよろしければ、野口宇宙飛行士から御紹介・御報告いただければと思っております。
【藤崎主査】 野口さん、お帰りなさい。どうぞ、よろしくお願いいたします。
【野口宇宙飛行士】 こんにちは。藤崎先生、御無沙汰しております。
本日は、このような形で帰還の御報告、オンラインですけれども、させていただいて、本当に光栄に思います。
委員の皆様も、お時間を取っていただきまして本当にありがとうございます。
向井さんもいらっしゃいますかね。宇宙ステーションからお電話したのが2か月くらい前かな。私は、宇宙にお出かけすると、必ず出先から向井さんに電話をするのがお約束になっておりまして、旅行中にお姉ちゃんに電話をするようなものですけれども。
そういう感じで無事に帰ってまいりました。
今、事務局殿からすばらしいプレゼンテーションで御報告いただきまして、本当にありがとうございます。事前に上司から言われたキーワードは全部入っておりまして、私が言うことはもうほとんどないのですけれども、皆様もお気づきかと思いますが、星出も含めて世界初という言葉がいっぱい出てきましたよね。宇宙船ロケットの再利用、カプセル再利用、3種類の宇宙船に乗るのも初めてと。
今回、実は、ギネスのほうからも2つ世界記録に認定していただいていて、1つは船外活動。私は、船外活動をライフワークと思っていますけれども、15年にわたって船外活動をやったということで、1つの世界記録と。もう1つは、3種類の違う方法で地球に帰ってきたのは実はガガーリン以来初めてとのことで、種類だけではなくて滑走路と地面と海面ということで、3種類のこの惑星の違う表面に降りてきたということで、大変メモリアルなミッションになったかと思います。
積算の時間はこれから後輩が、油井、大西、金井といった有望な若者、そして今年募集する新世代の人たちがどんどん抜いていくと思うので、積算の日数・時間数はあまり意味がないのですけれども、この世界初というのが、本当に大きな意味でパラダイムシフトに我々は直面していることを示していると思います。
この数年、アメリカの宇宙飛行士は、年に2人とか3人が宇宙に行く時代が長らく続いていたんですけれども、今年はもう既に2桁ですよね。やっぱり、SpaceXは一度に4人乗りますので。私たちが乗っていた乗り物はもう観光宇宙船に造り替えられていて、今年の後半には再利用で観光客4名が宇宙に行く。民間の宇宙利用、宇宙観光旅行が、長らくもうすぐやってくると言われていたのが、まさに秒読みの時代に入ってきている。そういう意味でも、大きなパラダイムシフトを我々は目にしているのだろうなという気がいたします。
委員の皆様、先ほどアルテミス探査計画の説明もありましたけれども、大きな意味で、これから我々は探査の時代に入っていくわけですが、それと同じように、民間活力というか、民間宇宙旅行、そしてSpaceX、AmazonのBlue Originといったあたりのニューパートナーがこの宇宙を牛耳っていく、そういう時代に入ってきているのだなということを感じた6か月間でした。
藤崎先生、また直接お会いしていろいろとお話しするのを楽しみにしておりますけれども、本日はこのような形で御挨拶させていただきたいと思います。
【藤崎主査】 野口さん、どうもありがとうございました。
私から、最初に。クルードラゴンは見ると船内など随分すっきりした形になっておりますけれど、やっぱり乗り心地なども変わるのですか。
【野口宇宙飛行士】 クルードラゴン、本当にお察しのとおり非常にデザイン的にもすっきりしていますし、お気づきになられたかもしれませんけれども、ケーブル類、そして紙が全くないと。私のような昭和のアナログ人間には極めて居心地が悪い乗り物ですね。一緒に乗ったVictor Gloverなど、ふだんからメモ取りは全部ipadでやっているようなデジタル人間なので、ああいう若手にとっては極めて居心地がいい場所なのだろうなと思いつつ、私が最初に乗ったスペースシャトルは、向井先生も乗っていますけれども、本当に紙と紐とケーブルの嵐でしたね。そういうのが全くなくなっていると。
一方で、使いやすいかというとちょっと微妙なところで、私がアナログ人間であるというのもありますけれども、デザイン重視という面は否めないと思いますね。そういう意味では、デザインありきの収納スペースになっていると。閉めたときに美しく見えるというのが第一で、開けやすいとか荷物を詰めやすいかというと、ちょっとそうじゃないというような、一緒に乗った4人のクルーで話しながら暮らしておりました。
取りあえず、以上でございます。
では、ほかの方の御質問も受けたいと思います。
【藤崎主査】 ありがとうございます。私も恐らくそうじゃないかなと思ったので。非常に分かりやすいお話をありがとうございました。
【永山委員】 毎日新聞の永山です。野口さん、お久しぶりです。
今、まさに民間の活力のことをお話しされていました。軌道上か帰還の際の記者会見でも、宇宙に参加する人たちの裾野が広がっていくことへの期待をお話しされていましたが、そのような中で、政府が今後どんな形で宇宙開発に参加していくべきか、政府の役割について、野口さんはどういう風に御覧になってらっしゃるでしょうか。
【野口宇宙飛行士】 永山さん、御無沙汰しております。大変すばらしい御質問をありがとうございます。
先ほど御説明させていただいたような国際探査計画、アルテミス、ゲートウェイ、MMXなども含めてですが、当然ながら、国家として主導していく宇宙開発は続いていくと思います。一方で、従来から言われていますとおり、低軌道の利用に関しては民間活力を使っていくと。そのプレイヤーがようやく出そろいつつあるというところではないでしょうか。
日本でも、もちろん産官学含めて次の宇宙探査計画を引っ張っていくわけですけれども、片や、星出さんの次の日本人はもしかすると民間人になる可能性が今ありますので、そういう意味では、日本人が宇宙に行くからには、JAXAあるいは国家として面倒を見ていく必要があるんじゃないかとも思っています。これは、私の一方的な思いですが、当然ながら国の政策を実施する機関としての責任はありますけれども、日本人が宇宙に行くときに、それは国の政策と関係ないからと言って放っておくのは、いかがなものかとも思われますので、そういう意味で、いろんな形で民間人が宇宙に挑戦する姿を応援する機関であってほしいですし、少なくとも私は応援していきたいなと思っております。
【永山委員】 ありがとうございました。
【藤崎主査】 ほかの委員の方々、いかがですか。あるいは野口さんのお姉さん、何かいかがでございましょう。
【向井委員】 野口さんお帰りなさい。お姉ちゃんと言っていただいて本当に光栄で、仲間として誇りに思っています。コロナ禍でなければ、ビールでも飲みながらお話を伺いたいところです。
クルードラゴン第1号機へ搭乗した勇気と、3種類のロケットに登場し、3種類の手段で帰還した経験に敬服です。
これまでのような国主導の宇宙開発から商業化で多くの人がより簡単に宇宙に行ける時代に突入してきているので、野口さんはパイオニア的存在と思います。これからも期待していますので、どうぞ頑張ってください。また機会があれば、ゆっくりお話を聞かせてください。
【野口宇宙飛行士】 向井先生、どうもありがとうございます。これからも永遠のお姉さんとして我々を見ていただければと思います。
我々の活動も、毛利さん、向井さん、土井さん、そして若田さん、先輩方の輝かしい御経験があって、今の我々につながっていると思いますので、そういう意味では、本当に向井さんのフライトの功績もすばらしいなと思います。
3種類の宇宙船に関しては、私はちょっと違う考えもありまして、御存じのとおり我々日本は有人カプセルを持ってないんですけれども、カプセルを持っていない国の飛行士が、アメリカ人・ロシア人も成し遂げていない3種類の着陸、帰還方法を成し遂げたことは、これは、科学技術の勝利ではなくて、まさに外交の勝利ですよね。外交で勝ち取ってきた飛行機会がこのような形で世界記録になっていますので、科学技術の力も大事ですけれども、まさに外交手腕でそういうのを取ってきたというところは、誇るべき成果だと思います。
恐らく、ゲートウェイにおいても、これから実際に日本人宇宙飛行士の月面着陸の機会とかを外交的な交渉で取っていくのだと思いますけれども、そういう意味では、これからもビークルはないけれども、実績は世界に誇るものがあるというのを、人材だけは誇れるという、そういう日本の力が今後も続いていくといいかなと思います。
【藤崎主査】 ありがとうございました。
【高鳥委員】 私、今日から委員を務めております高鳥と申します。
日本製薬工業協会という製薬団体で活動しておりますが、iPS細胞を使った臓器創出の実験をやされていることについて恥ずかしながら存じ上げてなかったのですが、宇宙空間における細胞培養や薬に関する実験には、たんぱく質の結晶化、あとは動物の飼育など様々あると思うんですけれども、そういった中で、細胞培養で臓器をつくるというこの実験というのはどのくらい大変だったのでしょうか。
あとは、宇宙空間でこういうライフサイエンスの実験をする場合には、どういったものが適しているのか。そのあたりについてお考えがもしあったらお聞かせいただきたいと思います。よろしくお願いします。
【野口宇宙飛行士】 高鳥先生、御質問誠にありがとうございます。
大変すばらしい観点で、先ほど事務局殿から御説明いただいた資料にも入っていますけれども、人工臓器創出を目指したiPS細胞を使った立体培養は、実は今回の一つの大きなハイライトで、我々も一生懸命宣伝していますが、ある意味、我々以上にNASAがすばらしい挑戦であると宣伝していまして、iPSを使う溶媒中に疑似的な水の流れをつくりつつ、全体としては無重力でうまく立体的に細胞が育っていく姿を観察するものです。恐らく既にサンプルが地上に戻ってきていますので、これから大学で研究成果が出てくるのを私も楽しみにしているところです。
【高鳥委員】 どうもありがとうございました。
【藤崎主査】 野口さん、本当にお疲れさまでした。どうもありがとうございました。また、お目にかかりましょう。
【野口宇宙飛行士】 どうも、藤崎先生、本当にありがとうございます。それから、委員の皆様もまた対面でお話しする機会があるのを期待したいと思っております。事務局の方々もありがとうございました。
では、これで私は失礼させていただきます。ありがとうございました。
【藤崎主査】 ありがとうございました。
では、皆様方、先ほどアルテミス計画について、国分室長、佐々木理事から御報告がありましたので、アルテミスについて、御質問、御提起があれば順次し、そして、その次にISSを含む低軌道利用について国分さんからお話をいただいてまいります。アルテミスをまとめまして、いかがでございましょうか。何か御質問、御提起がありましたら。
どうぞ、金山さん。
【金山委員】 金山です。
資料42-3の3ページから4ページにかけて、米国・カナダ間の了解覚書には、「ゲートウェイを利用した月科学、技術実証及び商業活動機会」と具体的に書かれている。一方、日本を見るとさらりと「ゲートウェイの利用機会」という一言にくくられているのですけれども、この日本の利用機会の中には商業活動機会が含まれると思ってよろしいでしょうか。
【国分室長】 ありがとうございます。
商業活動機会につきましては、去年の議論のときに1度、ゲートウェイの利用について状況を御報告したり考え方をまとめていただいたりなどしておりましたが、ゲートウェイの利用についてはISSと異なりまして、ISSは先ほど御説明しましたように12.8%の機会がもう確保されている状況なのですけれども、ゲートウェイはサイズがISSと比べてかなり小さいこともありまして、どういうふうに利用していくかは都度国際的な協議の中で決めていくことになっております。
したがいまして、我が国としてどういうふうにその協議に向かっていくかという作戦が必要だということで、JAXAを中心にアカデミアと民間等の国内の状況をまとめて、JAXAが国際協調の場で交渉してくると。そういった形の考え方にしたものです。そういう意味では、その利用機会の中には当然民間の方々のアイデアも入ってきますし、アカデミアの方からアイデアも採用して、日本としてインテグレートした上でJAXAが交渉してくる、こういった形になっております。
【金山委員】 はい、分かりました。ありがとうございます。
【藤崎主査】 ほかにいかがでございましょうか。
どうぞ、永山委員、お願いします。
【永山委員】 今の御質問に関連してですが、宇宙飛行士の搭乗機会について、CSAは2回、ESAは3回となっていて、日本については回数が入っていないのも、同じような理由になるのでしょうか。
【国分室長】 ありがとうございます。
日本人宇宙飛行士の活動機会につきましては、このMOUの中では「Crew Opportunities」とだけ書いております。これは、日本がこれからHTV-Xで補給していく頻度や物資量、そういうものを都度決めながら、それに応じた活動機会を確保していくということに基本的にはなっていくと思われますので、MOUの中でその人数を決めてしまうのではなくて、その下位文書を作って、プロジェクトの進捗に応じて活動機会を少しずつ確保していくような形になっております。ほかの国は、MOUに1回とか2回、3回とか書いてあって今後どうするかは存じ上げてないのですけれども、日本は少なくともそういうふうにステップ・バイ・ステップで確保していくという方向で今、調整しております。
【永山委員】 分かりました。ありがとうございました。
あと、もう1点ですが、アメリカがバイデン政権となったことによって、このスケジュールに何らかの影響が出るのではないかという予測もあったのですが、今どのような状況になっているのでしょうか。
【国分室長】 ありがとうございます。
資料42-4でも少し御紹介する予定ではございますが、バイデン政権になった後に、まず日米首脳会談が4月に開かれておりまして、資料42-4の8ページですが、こちらの中で、まず大きなフレームワークとして、「日米両国は、民生宇宙分野の研究及び技術開発における協力を深化する」とした上で、「民生宇宙協力(アルテミス計画、小惑星探査等)」という形でアルテミス計画を名指しした上で、お互いに協力をしていくことが両国の間でコミットされた形になっております。
これを踏まえて、アルテミス計画はどのくらいのスケジュール感でやっていくかという政策的なメッセージはNASAからこれまで出ていないのですが、逆に言いますと、これまでのマイルストーンやスケジュールを変更するというアナウンスも出ておりませんので、今の段階では、先ほど御紹介したようなマイルストーンのスケジュールで行われていくことになっております。
【永山委員】 分かりました。ありがとうございました。
【稲谷委員】 これは質問というかコメントなのですが、私も、アルテミス計画をどう見たらいいかと考えております。問題意識としては、先ほどのSpaceXとか民間がどういうところに入ってくるのかという観点に、これから将来も含めて3種類くらいのカテゴリーに分かれるかなと考えています。
1つは、国が仕様を決めてこれを発注して納品するというような、従来形式の宇宙開発のやり方で実行する方法。2つ目は先ほどの月の着陸船がどっちの話になるのか分からないのですが、ある種民間の活動に対して独自分をある程度許して、それを国が支援するというカテゴリー。3つめはさらに進んで、民間が独自にやる。これは、SpaceX、Blue Originなどを見ていくと、全部を明らかにしてやっているのかがよく分からない。民間の独自性みたいなものが配慮される。
その3つくらいのカテゴリーに分かれるかなということが、このアルテミス計画の進行あるいはその先のほうでどうトランジションしていくのかということは問題意識として持っています。その意味で、先ほどの月の着陸船のところは2番目のカテゴリーのような形で進めるというふうに、オブザベーションとしては理解していいのか、その辺はまだ進行中のことであるとも言えるので、はっきり見えているのか、これからなのか、その辺はどんな感覚で御覧になっているのか、オブザベーションがもしあれば教えていただければと思います。
【国分室長】 ありがとうございました。
NASAの計画、アルテミス計画は民間の活用を最大限していくという大前提で進めておりますので、御指摘のとおり、大体3つくらいのカテゴリーに分かれていると思っています。まさに、月着陸船などは、先ほどの3つでいうところの2つ目に当たるのではないかと考えております。
そういった形で、我が国の活動はどういうふうに当てはめていくかということですが、今日の議題6に月面活動に関する基本的な考え方ということで、内閣府が、民間活動も含めて月面活動をどういうふうにやっていくか、あと、月に関する宇宙科学をどういうふうにやっていくかというところをまとめたものがございますので、後ほど御紹介させていただきたいと思います。
【稲谷委員】 分かりました。そういうカテゴライズと国の仕事からのトランジションの中で、日本はどこにどういう考えで関与して行くのか、国がやるのか、民間がやるのか、そういう取り組み方の対応みたいなものが見えれば、図柄として俯瞰して見るに理解しやすいかなと思ったので伺いました。ありがとうございます。
【佐々木理事】 先日アメリカに行ったときに、SpaceX、それからBlue Originと会合をしたのですが、資料42-4の15ページにありますように、月着陸ミッションに関しては、やはり民間とのパートナーシップの枠組みでやるということが大方針ではあると思っています。
ただし、相手によって、SpaceXとBlue Originでも取組が違っていて、やはり国がやるだけじゃなくて、民間のほうもどれだけやる気があるかというか取り組もうとしている方針があるかによって、その進め方は大分変わってくるのかなと思っております。SpaceXは自らやるというのが強く出ていて、印象的には、Blue Originのほうは月着陸船に関してはより確実にNASAと協力してやろうというふうに。これは私の印象の部分が多分にあるのですが、会社によっても大分アプローチは違うかなとは思っています。
御参考までに。
【藤崎主査】 ありがとうございました。
次の議題に移りますが、一言だけ。
今の稲谷さんの御質問との関係、佐々木さんの御発言で申しますと、実は、これまでの議論の過程で、国と民間の分担についても相当議論してきて、かついろいろ調べた結果を御報告いただきますと、さっき国分さんもお述べになりましたけれども、アメリカが実は民間だと言っているものもNASAでないということで、National Institutes of Health(NIH)という機関に発注して、これは国の予算なのですが、それがNASAに来ているものを民間に入れているようでございます。その点も考慮しなければいけないようです。
それから、日本の民間の場合には、民間企業の方がおられるのに失礼ですが、イーロン・マスクのようにわっとできるような会社ではない。したがって、これからは民間の時代だという議論をよほど注意して対処しないと、大分アメリカと日本のそういう関係は違うのだと。アメリカも中身をよく見てみるとそうじゃないと。
メディアがこの誤解を盛り上げて、民間民間というふうにやっているところがあります。これはマラソンみたいなもので、最初の先頭集団に常にいなきゃ、引き離されちゃったら二度と戻れない、だから、やっぱり相当ナショナル・プロジェクトとして歯を食いしばっていかなければいけないのではないかという気がしております。
ですから、ここで一言だけ申し添えておきます。
そこで、次の議題でございます。最後に、皆様方幾らでも御発言の機会がございますので。議題3の国際宇宙探査及びISSを含む地球低軌道を巡る最近の動向、ここは、先ほど一部だけ国分さんのお話がございましたが、国分さん、この資料についてお願いいたします。
<文部科学省国分室長より資料42-4に基づき説明>
【藤崎主査】 ありがとうございます。
皆様方からいろいろ御質問、御提起あると思いますが、私から2点だけ。
この資料42-4は非常に包括的で、宇宙探査及びISSを含む地球低軌道というけれども、月も火星もいろいろなものが入っていますね。今後、やはり我々の議論としては、ISS・地球低軌道、月、アルテミス、火星というふうに議論の対象を絞って、そこで各国の動向がどうかというふうに見ていったほうが、整理の仕方としてすっきりすると思います。
もう一つは、資料の中で日本はMMXプロジェクトとして火星の衛星に今後進むとなっていますが、これはほかの国がやっていないこと、火星の衛星に行くと分かることがあるから、あえて衛星に行くのか、あるいは、重力体である火星にはなかなか行けないので、衛星にしたのか、なぜ火星本体ではなく衛星に行くのかというところを、一言御説明いただければと思います。
【佐々木理事】 MMXの立ち上げの頃に関与しておりましたので一言だけ述べさせていただきますと、フォボス・ダイモスに関する科学的な意義というのがこのミッションの非常に重要なポイントになっております。科学的な意味からして、あと宇宙科学研究所で検討している太陽系内の水の輸送を調査するという大きな目標の中で位置づけると、フォボス・ダイモスのほうに向かうという……。
【藤崎主査】 つまり、火星にも行けるんだけれども、あえて衛星に行くんだという。
【佐々木理事】 はい。そこが、まずポイントになると思います。
ただし、打ち上げ能力、降りるということになると、やはり制約はおっしゃるとおりありまして、そこが考えているポイントにはなります。
これは、私がお答えするよりも、倉本先生にお答えいただいたほうがいいと思います。
【倉本委員】 実は、フォボス・ダイモスを狙うというのは、「はやぶさ」「はやぶさ2」と続いてきたサンプルリターンですね。小天体からのサンプルリターン技術を展開していくという方向性で生まれてきたアイデアです。フォボス・ダイモスは、火星の誕生と同時にできた天体、つまり火星誕生の記憶も現在までとどめている天体だと理解されておりまして、この「はやぶさ」シリーズで培った技術を、そちらのほうにアプライしていくことで、火星本体がどうできたかということも含めて、科学的な知見が引き出せるという狙いで組み立てたものになっています。
一方で、日本は、かつて「のぞみ」計画ということで火星探査を狙ったのですが、残念ながら失敗したという苦い経験がありまして、火星圏に日本が進出していく先鞭として、これまで成功を重ねてきた小惑星探査、これを伸ばしていく延長線上に位置づけると。そして、その次に火星本体もやっていくと。そういう組立てで考えております。
【藤崎主査】 ですから、2024年に火星衛星への探査機の打ち上げ、また、その10年以内くらいに本体も考えていくということでございますかね。
【向井委員】 中国の宇宙ステーションの利用計画に関して、2点質問があります。1点目が、国際協力でどういう国々が参加しようとしているのかという情報はあるでしょうか。2点目は、利用計画に関して搭載する機材はどんなものを考えているか、どのような研究をしようとしているのかという情報は入手できているでしょうか。
以上です。
【藤崎主査】 お願いします。
【国分室長】 ありがとうございます。
国際協力という観点から、我々が知り得た範囲では、中国はこの宇宙ステーションの計画について国連と協議しておりまして、国連のフレームワークを使ってオープンに利用について一緒に協力していく国を探していると聞いております。
ただ、具体的に搭載計画がどういうものかというところまでは、私は把握してないので、もしJAXAさんで御存じであればと思います。
【佐々木理事】 我々も、それ以上までは入手していません。
【向井委員】 はい、ありがとうございます。以上です。
【古城委員】 ISSの2024年以降について、今日のNASAの授権法のご説明の中で、30年まで延長することが要請されているとのことでしたが、今後、下院で審議されていって、決まるのはいつ頃かというのは分かりますでしょうか。
それから、アメリカの議会で審議が難航するようなことになるのかどうか、その辺りの見通しを教えていただければと思います。
以上です。
【国分室長】 ありがとうございます。
まず、見通しのスケジュール感ですけれども、我々も、NASA側やいろいろな方に聞いてはいるものの、米国側からは、やはりスケジュール感に関しては分からないという回答しかまだ得られておりません。下院でいつ頃法案が提出されるかというところから、見通しを今後見極めていかなければいけないとは考えています。
ただ、一方で、次の質問にありましたとおり、紛糾するかどうかという観点からは、この法案は、実は去年も出ていて上院と下院それぞれで議論されていたものの、時間的に間に合わずに一旦議会が閉会した関係で廃案となったと。そして、もう1回出し直しになっていると承知していますが、去年の議論の中で大きな紛糾したような状況があったということは全く聞いておりません。
ただ、ISSの延長幅につきましては、上院は今回も2030年までと去年と変わらないのですが、下院については去年出ていた法案の中で2028年とされておりまして、この年限のずれについては、下院で審議された後、もし期限にずれがあるままですと、両院協議会に持ち込まれて決められていくのかなと考えています。
以上です。
【古城委員】 はい。どうもありがとうございました。
【藤崎主査】 ほかにもしございませんでしたら、次の月面活動に関する基本的な考え方について、国分さんから御説明を受けたいと思います。
<文部科学省国分室長より資料42-6に基づき説明>
【藤崎主査】 このペーパーは内閣府の事務局がまとめたペーパーであるから、私どもが議論したりコメントするペーパーではないわけですね。
【国分室長】 はい。私から御紹介という形で。
【藤崎主査】 今、いろいろここで御質問とか御提起とかいうのは、やっても意味がないんだろうと思います。
一つだけ私から伺いたいのは、2ページ目の真ん中に、「現在の知見から重要な科学的知見をもたらす地点の月サンプルを取得し」の後に、「太陽系形成期や地球冥王代の様相を理解することが出来る」と書いてありますが、これは、本当は冥王代の様相をよりよく理解できる可能性があるという程度の話ですよね。「理解することが出来る」というまで、このサンプル調査で、今から言い切れるようなものじゃない。ただ、こんなことを議論するような場ではないので、これはコメントいたしませんが、えらく言い切ったものだなという感じがいたしました。
これは、委員の皆様方、単に御説明を受けたということでございますので、ここで議論はいたしません。
最後の議題7ですが、この7につきまして、何か事務局から御提起がございますか。
【国分室長】 はい、ありがとうございます。
参考資料としまして、宇宙開発利用部会に今年の2月9日に諮ったものですが、ISSを含む地球低軌道活動の在り方に関する中間取りまとめというものがございまして、こちらは、先ほど来話題になっております宇宙ステーションISSの2025年以降の在り方を含め、地球低軌道活動についてどういうふうに考えていくかというものをまとめたものでございます。
ISSについては、先ほど説明したとおり、まず米国でもまだ法案が通っていないという状況の中で各国も含め、ESAですとか各国の動向もきちんと見極めながら議論していく必要があるとは思っておりますが、一方で、大体の方向性が見えた段階から議論を開始したとしても、なかなか議論として遅れてしまうのではないかと。そういう観点から、この中間取りまとめの中では、今後、ISSの延長に関して、どういうふうにしていくかということを議論していくに当たって必要となる論点までを、中間取りまとめとしたものでございます。
具体的には、6ページで、今後、延長の可否判断をしていくに当たって必要な検証項目を6つ書き上げさせていただいております。1つ目は今後の柔軟なビジョンがきちんと見えていること、2点目は国際宇宙探査に必要な技術の獲得がISSの運用の中で見込まれるかどうかということ、3点目がISSの利用価値が社会的課題や科学的見地、国際協力といった形で見込まれていること、4点目が若手の観点から、宇宙活動を担う人材育成に関する好循環が構築できていること、5点目が民間が主体となった利用へのシームレスな移行が見込まれること、そして、そのための方策が実施可能であること、最後に費用対効果の向上のためのコスト削減の方策の実施が見込まれること。この6点を必要な検証項目としてまとめたものでございます。
次のページに今後の展望もございます。米国でのISS運用延長決定後に最終取りまとめに向けた検討、議論を行うと書いていますが、この議論をした段階から米国の状況がまだ見えてきておりませんので、いつ最終取りまとめに向けた議論が開始できるかどうか分かりません。ただ、そう遠くない将来に、この後半の話の議論をしていただくことになるだろうと思っておりますので、まずは、この中間取りまとめをここまでやったということと、今後各国の動向も見ながら議論を再開させていただきたいということについて、委員の皆様に再度御認識いただければということで、私から情報共有させていただいた次第です。
以上です。
【藤崎主査】 ありがとうございました。
せっかく委員がいらっしゃるので、大体この年内はどんな感じで進むというような、大まかなイメージを提案いただけますか。
【国分室長】 現在の運用期限の2024年は大分近づいておりますので、我が国として、もしやるのであれば予算要求や必要な開発研究などもしていく必要がありますし、そういうことを考えると、そんなにゆっくり議論をしていくわけにはなかなかいかないだろうと思っております。いつ頃からスタートできるかということをあまりここで言える状況にはないのですが、そんなに遠くない将来には、そんなに遅くないスピードでやらなければいけないだろうなとは思っているところでございます。
【藤崎主査】 分かりましたと言いにくいですけど、そういうことで承っておきましょう。
最後に、長野さん、何かお言葉がありますか。
【長野審議官】 いえ、私は大丈夫です。
【藤崎主査】 それでは、今日は、今年度の第1回の会合でございますが、議事は終了いたしました。事務局から御連絡事項があれば、お願いいたします。
【国分室長】 本日の議事録につきましては、非公開審議部分を除いて文科省のホームページに公開いたします。また、資料については、既にホームページに掲載しているところでございます。
次回の小委員会の予定につきましては、日程調整の上、改めてお知らせいたします。
【藤崎主査】 それでは、これをもちまして、本日は閉会といたします。
どうも、皆様ありがとうございました。
(了)
研究開発局宇宙開発利用課