宇宙開発利用部会 国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会(第37回) 議事録

1.日時

令和2年9月11日(金曜日) 16時00分~18時00分

2.場所

オンライン

3.議題

  1. 国際宇宙探査の取組について
  2. Gateway利用の基本的な考え方について
  3. ISSを含む地球低軌道活動の在り方について~JAXAからのヒアリング~
  4. 令和3年度概算要求に向けた研究開発課題の事前評価について(非公開)
  5. その他

4.出席者

委員

主査(専門委員)           藤崎 一郎
主査代理(専門委員)        牧島 一夫
専門委員                金山 秀樹
専門委員                木村 真一
専門委員                倉本 圭
専門委員                古城 佳子 
臨時委員                知野 恵子
専門委員                中村 昭子
臨時委員                西島 和三
専門委員                向井 千秋
臨時委員                米本 浩一

文部科学省

大臣官房審議官(研究開発局担当)               長野 裕子
研究開発局宇宙開発利用課長                  藤吉 尚之
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長        国分 政秀
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室室長補佐   髙木 朋美

(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA))
理事                                   佐々木 宏
事業推進部 部長                              川崎 一義

5.議事録

【藤崎主査】 定刻になりましたので、ただ今より、国際宇宙ステーション・国際宇宙開発小委員会の第37回会合を開催いたします。事務局より、連絡事項の確認をお願いいたします。

<事務局より会議の注意事項等説明>

【藤崎主査】 では、議事に入りたいと思います。最初の議題は「国際宇宙探査の取組について」です。国分室長、よろしくお願いします。

<文部科学省国分室長より資料37-1-1、資料37-1-2に基づき説明>

【藤崎主査】 ただいま報告のあった資料37-1-2は、これまで本小委員会で数年間かけて議論し、「第2次とりまとめ」など過去にまとめた資料から関連部分を再整理したもので、目新しいものではありませんが、改めて事務局で整理したということです。
国分室長、こちらをこれから宇宙開発利用部会や宇宙政策委員会に報告するのですか。

【国分室長】 宇宙開発利用部会までは報告する予定です。宇宙政策委員会にどのような形でご紹介していくかは未定です。来週17日に宇宙開発利用部会が開催されますので、早ければそのタイミングでご紹介しようと思っています。

【藤崎主査】 宇宙開発利用部会におきましても、これまで何度もこのような考え方で報告を出しておりますので、やはり再整理したものという扱いになりますが、本件のご報告につきまして、何かコメント、ご質問、ご提起はありますか。
米本委員、お願いいたします。

【米本委員】 民間の関わり方について質問します。資料37-1-1の最後のページ「非宇宙産業を含む民間企業の参画促進」において、ベンチャー企業ispaceが宇宙探査を民間の事業として取り組んでおり、その最初の月着陸がSLIMよりも早い2022年です。続いて2023年には、月面探査を計画しています。
民間の事業なので、どこまで国としてアンカーテナンシーで引き受けられるか未知な部分があるにしても、そういった民間の動きを国としてどう考えるか、省内でご議論がありましたら教えてください。以上です。

【藤崎主査】 他の委員方、何かありますか。西島委員よろしくお願いします。

【西島委員】 資料37-1-2は非常に分かりやすいのですが、これまでの議論を全く知らない人から見ると、有人探査が強調され過ぎているという印象を受けるのではいないかという気もしています。
今世界ではできるだけAIや人工知能などを活用していくことになっているので、例えばサンプル採取地点の決定や複雑な機器操作などは無人ではできないのではなく、無人で多くのことを成し遂げて、さらに高度化を目指しつつも、不測の事態といった場合に、有人というものが活躍するということではないでしょうか。
何か、有人でないと始めから限界があるという「有人探査ありき」のような表現になっている点が気になります。本来ならば、AI、人工知能、ロボットなどの無人技術を宇宙で活用し、高度化されたそれらの技術を地球上に還元して役立てることができることも重要な波及効果です。始めから有人探査ということを強く出し過ぎているのではないかという危惧があります。

【藤崎主査】 他にご質問はありませんか。それでは国分室長、米本委員と西島委員のご指摘にお答えください。

【国分室長】 まず米本委員のご指摘につきまして、民間の取組の広がりという意味では、先ほど少し口頭でご説明しましたが、宇宙探査イノベーションハブという事業がございます。
こちらの事業には昨年度までの5年間で154機関が参加していると聞いており、うち、非宇宙企業が93社、一部重複しますがベンチャー企業が47社含まれております。本事業に参加した機関は、月面の拠点を構想した上で、JAXAとの共同研究を進めています。
こういった取組が広がりを持っていることに加え、ご紹介のありましたiSpace社の取組や、トヨタとJAXAの有人与圧ローバの共同研究といった大きな動きもある状況と認識しております。
また、月面活動を想定して企業を中心にいろいろな議論が行われていることも認識しており、政府関係者として傍聴する機会もあります。
まとめますと、アルテミス計画が具体化しつつある状況の中で、民間企業の関心や実際の取組が広がってきていると感じているところです。
続いて西島委員からの有人探査が強調され過ぎているというご指摘について、国際宇宙探査は、有人探査と、それに向けた無人探査の組み合わせであると認識しています。ただ、先日JEDI(月探査協力に関する共同宣言)に署名したこともあり、わが国が有人探査という切り口で考えたとき、どういう考え方になるのか、有人のところを切り取って、その部分にフォーカスした形で資料を作った関係から、有人探査に関する考え方になっています。無人の取組は、もちろんさまざまある前提です。以上です。

【藤崎主査】 私から追加いたします。考え方として、一般に、現在、アメリカの影響を受け、民間ができることがかなりあるのではないかという考えが広まり、またAI等もあり、無人探査でできるのではないかというこの2つの考えがかなり強まっているわけですが、先ほどアンカーテナンシーという言葉がありましたが、例えばアメリカであっても、民間と言いながら、実はアメリカの政府機関等を通じて国費が入っている民間がかなり多いという面があります。
あるいはAI等があっても、質の高いものを求めるならば、結局有人探査を行わざるを得ないという部分を過少評価して、民間・無人ということに重点が行き過ぎないようにというバランスは常に持っておかなければいけないという発想だろうと思います。他に、何かご意見はございますか。牧島委員、よろしくお願いします。
【牧島主査代理】 相反するコメントを2つさせてもらいます。1つは、先ほど西島委員がおっしゃった、少し有人探査が強調され過ぎているのではないかということに、私も若干同感です。この辺りは、有人でできることと無人でできることの良い点をしっかり見極めて両者のバランスをとる、というような書き方も大事かなと思います。
もう一つは感想ですが、そうは言いながらも、6年前にこの小委員会が発足した時には、有人探査ということをなかなか言うことが難しくて、基礎研究の世界でも政治の世界でも、有人探査と言ったとたんに、冷たい目で見られるという雰囲気があったと思います。しかし藤崎主査を中心として、我々が活動してきたことで、有人探査についてあまり抵抗なく語られるようになったのは、大変大きな進歩だろうと感慨深く思います。

【藤崎主査】 他の委員方は何かございますか。知野委員、お願いします。

【知野委員】 やはり西島委員がおっしゃられたように、少し有人探査に記載が偏り過ぎているという感想をまず一読して抱きました。
先ほど、有人探査にフォーカスを当てるとこういう内容になるというご説明でしたが、例えば初めてこの文章に接したとき、今、この場にいる人以外の人が読んだときは、そういう事情は分からないわけですから、やはり少しバランスが悪いのではないでしょうか。
今、AIとか、ロボット化とかいろいろ言われている時代に、そちらに向ける目が少ないのではないかという印象を受けると思います。
例えば「AIやロボット技術等では成し得ない柔軟な対応も」とか、少し表現を変えるだけで全く印象が変わってくると思いますので、先ほどのご説明の趣旨を生かしていくためにも、表現を少し変えた方が良いと思います。以上です。

【藤崎主査】 ありがとうございました。
それでは、今、大変重要なご指摘が4人の委員からありましたので、それを踏まえ、事務局で書き直すというよりは表現の手直しを行い、また委員方に送るようにさせていただきます。何かございましたら、後程メールでご連絡いただければ結構です。
よろしければ、次は議題(2)に移りたいと思います。議題(2)は「Gateway利用の基本的な考え方」、こちらをご説明いただきます。

<文部科学省国分室長より資料37-2に基づき説明>

【藤崎主査】 国分室長、少し確認ですが、5ページでGateway利用調整パネルとあり、こちらはISS参加極を中心とした暫定的な会議ですが、ロシアも入っているのですか。

【国分室長】 ロシアは一応その場に出席はしていますが、積極的には発言していない、オブザーバー的参加だと聞いています。

【藤崎主査】 分かりました。皆さま方、何か、ご質問、ご意見はございますか。木村委員、どうぞ。

【木村委員】 いくつかの研究テーマが既に実施する予定と書かれているのですが、これはどういうプロセスで決まりつつあるのですか。その中で、日本はどういう位置付けにあるのでしょうか。
それから、事務局の説明で、ドロワと呼ばれているユニットがいくつかあって、ここで実験が行えるということだと思いますが、ドロワに実験装置として何らかの、共同実験ユニットみたいなものを日本で提案していくことを想定しているのでしょうか。
時間がかなり限られているとお話があった一方、こういう実験を提案していく上では、コミュニティの中でいろいろな意見を吸い上げていくというプロセスが必要だと思います。多岐に渡る提案が出てくると思うのですが、その辺を何か一つのユニット、もしくは実験装置にまとめるというプロセスと想定されているのでしょうか。以上です。

【藤崎主査】 他にご質問のある方はいらっしゃいますでしょうか。向井委員、どうぞ。

【向井委員】 2点あります。
1点目は利用の方針に関する考え方です。利用自体の国際プラットフォームの設置です。
月周回軌道でないとできない研究・利用をするべきと思うのですが、ESAやNASAは放射線や太陽物理の装置を設置しようとしています。いわゆる国際研究の場を提供するわけです。他国が出したプラットフォームを利用するだけでなくて、日本が場を提供して、リーダーシップが取れる分野も考えるべきかと思います。既に、放射線と太陽物理をNASA、ESAが提供するので、日本が得意とする通信関係とか、光学系のカメラなどを設置することで、天体、地球あるいは熱源の観測などのプラットフォームを日本が提供するとか、あるいは、材料科学、Exposed Facility(曝露施設)など将来の月面利用で使えるようなプラットフォーム設置を考えるべきと思います。また、利用テーマに関しては日本側のプライオリティの中でテーマを選んでいけばよいのではないかと思います。
2点目ですが、実施機関はJAXAで良いのではないかと思います。NASAやESAと協議が必要で、JAXA以外に国内に比肩する組織はないかと思うので。 以上です。

【藤崎主査】 ありがとうございました。大事なご指摘だと思います。他にございますか。牧島委員。

【牧島主査代理】議題(3)にも関係するかもしれませんが、Gateway利用という公募が出た時、応募する側からすると、ISSとどう違うのか、ISSはどうなってしまうのかという疑問を持つだろうと思います。そこでGatewayの利用を公募する時には、それと抱き合わせの形で、ISSは今後このように使っていくという方針を提示することで、両者が重複せず相補的になるという形を見せることができ、納税者に対しても、政府関係者に対しても有効だろうと思います。

【藤崎主査】 ありがとうございます。それでは国分室長、木村委員、向井委員、牧島委員からご提起があったので、ご説明ください。

【国分室長】 木村委員から、公募のプロセスについて質問があったかと思います。
まず、JAXAであればJAXAが国内コミュニティに対して公募していく想定です。それでよろしいかということもご議論の中の一つだと思いますが、コミュニティから提案を募り、それらをまとめてブラッシュアップした上で国内として最も有益なテーマを選定していくことになると考えています。
ただ、どの様なテーマが公募にかかるかなど、具体的なことは何も決まっていない状況ですので、現段階ではそのプロセスの在り方を方針に書き込んでいくくらいができることかと思っています。
次にドロワについてですが、ご指摘の通り、ドロワに搭載する装置や試料などを提案していただく形かと思われます。
向井委員からのコメントで、プラットフォームの話と、利用の話は別だというのは確かにご指摘の通りでして、ハードとして何を設置するかと、そのハードを使ってどのような利用を行っていくか、この2つに分けるということについては、たぶんその通りだと思います。
例えば通信とかカメラといったテーマの方向性や、プライオリティ付けにつきましても基本的な考え方の中で書き込めたらと考えています。
もう一つ、まとめ役をどこがするかに関して、JAXA以外にどこがあるのかというご指摘だと思いますが、おっしゃる通り、JAXAは国内唯一の公的な宇宙機関でありますから、基本的にはISS計画の時と同様にJAXAが適当であると思いますが、現段階において、どこからもマンデート(権限)が与えられてない状態ですので、この小委からのご提案ということで、JAXAに暫定的に担ってもらうということを基本的な考え方に盛り込めたらと思っています。
暫定的というのは、現在Gatewayについて法的拘束力のある取極を調整しており、将来的にはこの中にきちんとまとめ役についても書き込まれる想定ですが、取極締結まではどこにもマンデートがない状況のため、JAXAでよろしいでしょうか、ということも、こちらでお諮りしているところです。
牧島委員からご指摘ありました、ISSとの相補性という観点も、ご指摘の通りだと思っています。次回までにまとめる基本的な考え方の中で、例えば、ISS等との相補的な役割分担を作っていくこと、ですとか、向井委員のおっしゃっていたような、月面との関連性によるプライオリティ付けみたいなものを考え方として書き込めればと思います。

【藤崎主査】 ありがとうございました。向井委員どうぞ。

【向井委員】 今ご説明があったものより、私の言いたかったことは、もう一段階強い表現です。
プラットフォーム提供に関しては、考えていくというレベルではなく、国際競争として、ESAとNASAが放射線と太陽物理という月近傍研究として非常に面白い分野の研究施設利用を采配できるわけです。日本も日本が采配できる施設を考えるべきかと思うのです。光学系、5Gを含む通信関連の装置を既にESAとNASAが提案しているプラットフォームに追加していくくらいのつもりで考えるべきかと。
それと、牧島委員のISSと被らない方向というのは大賛成で、月周回軌道でないとできない利用を考えるべきと思います。

【藤崎主査】 ありがとうございました。他に委員方はありますか。木村委員、どうぞ。

【木村委員】 付け加えになってしまうのですが、先ほどの向井委員のコメントと、最初の質問の意図が非常に関連すると思ったので、あえてコメントだけさせていただきたいと思います。
例えばドロワを1個使うとか、装置を1個作って実験を何かやりましょうというときに、コミュニティに拘束をかけないで何をやりましょうかと投げてしまうと、いろいろなアイデアが出て来て、それを統合してまとめるには、このタイムラインからすると、時間が非常にかかってしまうのではないかと危惧しています。
そうすると、むしろ向井委員がおっしゃるように、何らかの戦略的な意味合いから、お題を決めながら、検討していくというアプローチがないと、戦略的にヨーロッパやアメリカと伍していくことは難しいのではないかという意図で、ある程度お題を決めながら進むというアプローチが必要かなと思いました。

【藤崎主査】 ありがとうございました。木村委員、向井委員から、ESAとNASAがいいところを既に取っていると、日本が出遅れてはいけないというご指摘がありました。
光学とか通信とか、他に何かあるかもしれないですが、そういうところで、日本が提案できるところに、どれくらいのスパンで、戦術的、戦略的にはどんなタイミングで何をまとめられるという感じでしょうか。

【国分室長】 具体的に今何をというところまでは中々議論しにくい、向井委員のおっしゃっていた通信とかカメラはもちろんあるのですが、ドロワに何を搭載できそうかよくわからないまま公募しても仕方がないので、今後、具体的な条件が明らかになる都度、国内公募も条件を付けて行っていくことになるかと現段階では考えております。
従いまして、例えば条件をまとめる際は、適宜本小委員会に報告するとか、本小員会で相談しながらとかそういった文言を基本的な考え方に入れておいた方がよいと考えています。
また、木村委員がおっしゃっているように、素早く提案を決めていかなければならないということも、考え方の中に盛り込んでおくべきかと感じています。以上です。

【藤崎主査】 いろいろ委員方からご議論があるのは、公募と言っても方向性を出して公募しないといけないわけで、事務局で考え方をまとめられるでしょうから、そのタイミングをできるだけ早く明快なプロセスでまとめましょうというご提案だと思います。こちらを引き取っていただいてよろしくお願いいたします。

【国分室長】 承知いたしました。

【藤崎主査】 では、牧島委員から先ほど少し関連のあるご発言がありましたが、議題(3)「ISSを含む地球低軌道活動の在り方について」の議論に入りたいと思います。国分室長、よろしくお願いします。

<文部科学省国分室長より資料37-3-1に基づき説明>
<続いて、JAXA佐々木理事より資料37-3-2に基づき説明>

【藤崎主査】 ありがとうございました。国分室長からの今後の進め方と、JAXA佐々木理事の説明を併せて皆さま方からご意見、コメントを伺いたいと思います。
先ほど向井さんから手が挙がっていますが、その前に、私が一言だけ。資料37-3-2では2040年代の地球低軌道活動についても言及しているわけですが、ISSについて私どもはこれまで繰り返し、アメリカに振り回されてきた部分がありました。
今、ESAやNASAあるいは米国政府と話し合っている限りでは、今後、月面活動やGatewayが実現しても、2025年以降、あるいは2040年以降でも、まだこの地球低軌道活動というのは、ISS参加極で政府も関与した形で行われていくという見通しなのか、そのあたりはどういうお話をされているのかもご紹介いただければと思います。
では、向井委員お願いします。

【向井委員】 例えば私たちが宇宙飛行士になった1985年には、地球低軌道に行くことが画期的な時代でした。現在は月周回軌道にまで行ける時代になって、地球低軌道に対する価値観は、国際的にも変わってきているような気がします。
そのような状況や、先ほどの国分室長と佐々木理事の説明も踏まえて、次回の資料に入れていただきたいことがあります。
まず、私は佐々木理事のご説明の中で、特にページ5の2040年以降のLEO(地球低軌道)の目指す姿というのはよくまとまっていると思います。こちらをベースにすると、ISS自体があるべき姿であって、ISSを建設し、みんなに利用してもらうべくこれまでJAXAは活動してきたと思います。ISSはこういうことにも利用できる、ああいうことにも利用できる、利用してくださいといった、ISSの利用としてこうあるべきという姿もよくできていると思います。
しかし、今JAXAが考えなければいけないのは、ISSを含む地球低軌道活動に対して、総合的な観点からJAXAがどうあるべきかであると思います。これはおそらく、いろいろなご意見があると思いますが、私のイメージとしては、利用や研究の軸足は月周回軌道に移していく形にして、地球低軌道に関しては、ISSという国際研究施設の運営者として施設をきちんと運営していく、それを利用していただくイメージです。もちろん利用者の中にJAXA職員や研究者が入っていても良いと思いますが。
私はISSに対するJAXAのあるべき姿をビジョンだとかコンセプトのレベルで数十年訴え続けてきているのですが、どうしたら利用が進むのかまでは至らなかったというところもあります。ISS・地球低軌道から月に軸足を移すことによって、利用を含めたISSを客観的に見るほうが、ISSだけよりも良いアイデアがJAXAとしても出ると思います。
また、ISSの利用は民間の参入が鍵で、いかに民間に参入してもらうかを考える必要があります。これはこれまでもJAXAがやってきたことですが、もう一段深くISSの施設を利活用してもらって、どのようにしたらお金が稼げるかまで民間の人たちに自由に考えてもらう場を作る必要があると思います。民間は投資金額に対して、一定期間内に儲けが出なければ継続できないので、民間の利用料がJAXAにどんどん入ってくるぐらいの、いい意味でのお金の儲け方、利活用を考えるべきと思います。
例えば西島委員とよく話をするProtein Crystal Growth(高品質タンパク質結晶生成実験)も、10年も20年も前から研究面では良い結果が出ているにも関わらず、実際に成果が利益になっているかというと、全然なっていないわけです。私の最大の懸念は、このままでいくと、2020年代、30年代も同じ状況が続くのではないかということで、今までの発想の延長でいったのでは、やはり駄目だと思います。
まとめますと、ISSのあるべき姿は大体できているので、ISSに対して、月探査を念頭に入れたうえでのJAXAのあるべき姿を、次回までにまとめていただければと思います。以上です。

【藤崎主査】 大事な点でございました。やはりこれから20年先までとなると、今の延長線だけではなく、もう少し幅広い視点で考える必要があると、各国もおそらくそう考えていると思います。
向井委員から、今回でなく次回でもよいとのことでしたので、お答えを準備いただければと思います。他の委員方はいかがですか。牧島委員、どうぞ。

【牧島主査代理】 今までと違う路線という意見には大賛成です。
2024年以降はある意味で拾った命で、いわば余生ですので、今までとは違った使い方をするべきだろうと思います。一つの可能性は、それを徹底的に人材育成の――人材育成というと平板に聞こえるかもしれませんが、高校生、大学生、大学院生、企業の若手のOn the Job Trainingの――厳しい訓練の場にする案です。例えば、大学生や大学院生が、何かISS関連のプロジェクトに携わって一定の成果をあげたら、卒業までに「宇宙技能士」といったような資格を取ることができ、就職するときにそれを資格の一つに書ける。すると「宇宙に出ていきたいけれど、方法がわからない」という企業は、「そういう経験を持つ若い血を、社員として採ろうじゃないか」と考えるようになり、非常にポジティブに回っていくと思います。そのような仕組みをぜひJAXAに考えてもらいたいと思います。
具体例として、ご存知のように、30年くらい前から、高校生、大学生、大学院生を対象にした衛星設計コンテストという催しが、毎年開催されており、私はずっとその委員をしています。ここには宇宙に関心をもつ若者たちがさまざまなアイデアを持って集まってきます。
そこで例えばこのコンテストで「設計大賞」を取ったグループには、ある条件付きでISSの船内利用やISSからの衛星放出の道を優先的に開いてやれば、普通は「どうやったらISS使えるんだろう」と戸惑うのに対して、「こういう道がある」と示すことができます。こうすることで、これまで以上に多くの若手が希望を持って集まり、鍛えられ、世の中に出ていく。これがISSの商業利用を拡大する最大の方法の1つだと思います。
手をこまねいていると5年10年すぐに経ってしまいますが、この方法を速やかに実施すると、おそらくワンラウンド5年くらいで、見違えるように違う世界になると思います。ぜひこれを考えていただきたい。

【藤崎主査】 ありがとうございました。それでは古城委員、お願いします。

【古城委員】 コメントというよりも質問です。
1つは、ISSは、資料37-3-2の現状認識でもあるように、国際協力の強化という点から、今までこの委員会でも存在意義を見出してきたわけですが、このISSにロシアは今後どのように関わっていくのでしょうか。
先ほどGatewayではオブザーバー的で、会議に参加はしているけれどもほとんど意見を言っていないということでしたが、ISSとロシアの今後の関係はどうなるのか、何か感触があれば教えていただきたいと思います。というのは、ISSの2025年以降の地球低軌道活動は、特にアメリカとの協力を強くするために有力な場であると位置付けられています。当初、ISSで取られていた国際協力や、ISSの位置付けとかなり変わってきていて、もちろん国際情勢が大きく変わっていますので、その影響もあると思います。そのことについて、お聞きしたいというのが1点です。
もう1点は、ISSは評価されるときに、国民の目線から言うと、費用対効果にかなり問題があるといつも言われています。これに加えて、今後Gatewayにもコミットするとなると、さらに費用が膨らみます。これまで費用対効果に関して、なかなか説得できなかったというのは、成果が出てそれが大きなものにつながっていくことが見えにくかったためだと思います。私も、他の委員がおっしゃっているように、やはりここでもう1回、費用対効果の効果をどういうものと考えるのかを、新たな視点を加味して見直したほうがいいのではないかと考えています。以上です。

【藤崎主査】 ありがとうございました。米本委員、お願いします。

【米本委員】 資料37-3-2の5ページについて質問いたします。
その前の4ページの現状認識は、全くご説明のとおりと理解しております。議題(1)で指摘した民間参入については、少し誤解があったかもしれませんが、主査のご発言のとおり、やはり宇宙開発全体は国が主導していくのは当然のことながら、その中で民間の役割がどうあるべきかをよく考えていく必要があるという意図で発言させていただきました。
それを前提として、本題の5ページに戻ります。これまでにも度々意見させていただいたように、2040年代、AIの発展によって無人ロボットの宇宙探査への活用はより一層発展することは確実ですが、(地球低軌道が持続的な社会・経済活動の場となって)人が滞在する可能性が十分に予見される以上、滞在に必要な技術をよく理解していかなければいけないと佐々木理事からの説明にもありました。
20年後のその時代になっても、我が国は米国の有人宇宙船ドラゴンに頼るのか、あるいはロシアの宇宙船ソユーズに頼ることを想定しているのか、我が国が独自の有人宇宙輸送を持つべきか,持たざるべきかという話をなぜ避けるのかという問題を提起してきました。2040年代になって、アメリカに頼り続けることがいつまでもできるのか保証されている訳ではありませんし、今はなかなか厳しい状況にあるアメリカと中国との関係も歴史とともに変わる可能性も十分に想定した上で、我が国がどのような有人宇宙輸送戦略を持って戦っていくべきか真剣に議論していく必要があるのではないでしょうか。
すなわち資料の5ページに2040年代の地球低軌道活動において目指すべき姿として有人滞在が書かれておりますが、そこに我が国の技術に欠けているものが、はっきり見えているのではないでしょうか。徹底的に議論した結果、我が国はやらないという結論ならまだしも、よく議論をしたくないのが現状です。これまで小委員会の中では100回ぐらい言っていると記憶しておりますので、今回は101回目の指摘となります。以上です。

【藤崎主査】 ありがとうございます。

【米本委員】 追加で発言させて下さい。民間事業である旅客機の国際共同開発に対して、日本は国として莫大な資金支援をしてきました。純国産旅客機のスペースジェットでも1兆円近い開発費を投入したと報じられていますが、経済産業省も凡そ500億円を投資しています。したがいまして、国を挙げての巨大なインフラ事業整備にたいして、国主導でどのように民間を後押しして、全体の経済を回していくという原理原則を実践してきています。
そういった観点で、宇宙開発の機軸となる宇宙輸送,特に有人宇宙輸送の技術開発に対して、民間をどう支えていくかを本当に真剣に議論していただきたいということもあえて付け加えさせてください。以上です。

【藤崎主査】 ありがとうございました。知野委員、お願いします。

【知野委員】 JAXAとしては、アメリカがISSの運用を延長した場合、わが国も参加を継続するという結論を出されていますが、先ほどの費用対効果の話ではないですが、やはりここで効果というだけではなく、費用のところが一般の人にとっては問題になってくるのだと思います。
先ほど資料37-3-2の3ページで、宿題としてコスト負担の方策というものが出されたとご説明をいただいていますが、これは改良型HTVの活用だけでは少し弱いと思います。
アメリカが延長を決定したら、続けるに当たって、このぐらいの費用を何によって削減するなどの説明が当然必要になると思いますので、そのあたりをいただけたらと思います。以上です。

【藤崎主査】 ありがとうございました。他の委員の方々はいかがですか。本日のご質問で、JAXA、あるいは文科省に検討いただいてからお答えいただいたほうがいいことと、すぐお答えいただける、例えばロシアとISSの関係だったらすぐお答えいただけますが、いくつかご提起のあった基本的なことは、今すぐお答えいただかずに、もう少し内部でご検討いただいてから、次回、お答えいただいたほうがいいだろうと思います。
それでは、国分室長と佐々木理事に、今この場でお答えできる点については、お答えいただきたいと思います。この場でのお答えが難しい場合には、次回、内部でご相談いただいた上で、お答えいただきたいと思います。
では国分室長、どうですか。

【国分室長】 ロシアについてですが、ロシアはISS延長に関しての立ち位置がまだはっきりしていないという状況だと思います。以上です。

【藤崎主査】 佐々木理事、いかがですか。

【佐々木理事】 簡潔に回答させていただきます。
藤崎主査からのご質問ですが、現在、各極も延長に向けて議論をしていますので、その中で地球低軌道活動についても、やはりISS参加各極と民間の両方で、ポスト ISSを目指すという議論を進めているという認識でおります。
向井委員からご指摘のあった観点について、我々としてはその観点も込めたつもりなのですが、はっきり書かれていない部分もありますので、ご意見を踏まえて見直していきたいと思います。
古城委員からのロシアについてのご質問ですが、国分室長の回答に補足させていただくと、ISSはロシアが参加しないと成り立ちませんので、ロシアは継続するものと技術的には理解しております。
古城委員と知野委員からの費用対効果に対するご指摘ですが、HTV-Xの導入によって、2024年までの延長に関しては、(従来のHTVと比較して輸送単価が)開発費も込みで従来どおり、開発がなくなった段階では大幅に削減できる見込みを持っています。
米本委員からのご指摘ですが、ここはJAXAが決められることではないですが、2024年までの延長を決めた10年前は、JAXAはドラゴンより(技術的に)先を行っていましたので、負けないぐらいの技術力はあると思っていますので、今有人活動をするとは言えませんが、それに向けた技術開発は今後10年もやっていければと考えているところで、本日の資料に書かせていただいております。
牧島委員のご意見については、検討させていただきます。

【藤崎主査】 先ほど来の委員のご提起は、例えばHTV-Xだけでなく、もう少し全体の費用対効果の問題を考えるべきであるとか、あるいは牧島委員が言われたOn the Job Trainingの問題であるとか、米本委員の長年のご持論の問題について、今すぐお答えいただかなくて結構ですから、次回、向井委員が言われた点についても総合的にもう1回整理してご回答いただければ結構でございます。

【佐々木理事】 承知しました。ありがとうございます。

【藤崎主査】 本日の(1)から(3)までの議題、「宇宙探査の取組」、「Gateway利用」、「地球低軌道活動」はここまでとしたいと思います。
ただ、最初の議題の「宇宙探査の取組」につきましては、始めから有人探査と書くのではなく、無人探査の有効性も書きながら、有人探査のことを表現も工夫して書くべきであるというご指摘はそのとおりだろうと思います。これについては、来週木曜日(9月17日)に利用部会に上げる前に、事務局と相談し、もう少しバランスの取れた形にしまして提出したいと思いますので、ご了承いただきたいと思います。
それでは、公開の会議はここまででございますが、何か事務局からご報告はございますか。

【国分室長】 次回の小委員会の開催予定につきましては、日程調整の上、改めてお知らせいたします。本日の公開議題の議事録は、後日、文科省のホームページに掲載いたします。
これ以降は非公開になりますので、傍聴の皆さまは速やかにご退出願います。

(了)

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課