宇宙開発利用部会 国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会(第36回) 議事録

1.日時

令和2年8月7日(金曜日) 14時00分~16時00分

2.場所

文部科学省 5階3会議室及びオンライン

3.議題

  1. 国際宇宙探査やISSを含む地球低軌道を巡る最近の動向について
  2. 月探査協力に関する文部科学省と米航空宇宙局の共同宣言について
  3. ISSを含む地球低軌道の在り方に係る今後の検討の進め方および産業界ヒアリング(非公開)

4.出席者

委員

主査(専門委員)           藤崎 一郎
主査代理(専門委員)        牧島 一夫
専門委員                金山 秀樹
専門委員                木村 真一
専門委員                倉本 圭
臨時委員                知野 恵子
専門委員                中村 昭子
臨時委員                西島 和三
専門委員                向井 千秋
臨時委員                米本 浩一

文部科学省

大臣官房審議官(研究開発局担当)               長野 裕子
研究開発局宇宙開発利用課長                  藤吉 尚之
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長        国分 政秀
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室室長補佐   髙木 朋美
前大臣官房審議官(研究開発局担当)               岡村 直子

(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA))
理事                                   佐々木 宏

5.議事録

【藤崎主査】 定刻になりましたので、ただ今より、国際宇宙ステーション・国際宇宙開発小委員会の36回会合を開催いたします。事務局より、連絡事項の確認をお願いいたします。

<事務局より会議の注意事項等説明>
<藤崎主査より委員の交代並びに肩書変更、事務局新任者紹介>

【藤崎主査】 長野審議官、国分室長の順にご挨拶いただけますか。

【長野審議官】 初めまして。8月1日付で着任し、官房審議官をさせていただいております長野でございます。皆さま方にご指導いただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

【国分室長】 7月から宇宙利用推進室に着任しました国分と申します。よろしくお願いいたします。

【藤崎主査】 それでは、議事に入ります。今回は、3つの議題、(1)ISSを含む地球低軌道の最近の動向、(2)月探査協力に関する文科省とNASAの共同宣言、(3)ISSを含む地球低軌道の在り方に係る今後の検討の進め方及び産業界ヒアリングがあります。
それでは、第1議題につきまして、前回2月18日の小委員会以降の動向を事務局からご説明ください。

<文部科学省国分室長より資料36-1に基づき説明>

【藤崎主査】 ありがとうございました。
二点、私から確認させていただきます。
一つは、米国大統領選挙で民主党の候補がかなり有利になりつつあります。もちろん結果は分かりませんが、民主党の政策綱領では、宇宙についてどのような方針を出しているのか。オバマ前大統領からトランプ大統領に政権が交代したときは方針が大きく変わりましたが、その辺りはどうなのか。議会の動きについて、今どのような情報を持っておられるか。いかがですか。

【国分室長】 現在米国議会におきましては、アルテミス計画も含めた全体のNASA予算について下院を通過したところです。また、同時に、ISSの延長に関する法案も提出されているところで、こちらも審議中です。
下院の、民主党の政策要綱案の中では、今の政権のアルテミス計画に対し、大きく反対するメッセージは出ておりません。今審議されている、NASA予算においても、計画そのものよりは予算の多寡についての議論に集約されると認識しています。結果として、NASAの増額要求に対しては、民主党の前年同との意見が通った形で下院を通過したと聞いております。
今後上院で審議される際は、また状況が異なってくると考えております。
今のところですけれども、全体を通して、民主党がアルテミス計画を含めたNASAの宇宙開発計画に大きく反対している状況ではないと認識している状況です。

【藤崎主査】 ありがとうございました。
第二点として、先ほど、UAE(アラブ首長国連邦)の火星探査機打上げの話、「はやぶさ2」の話、「クルードラゴン」への野口さん搭乗の話、あるいはSLIM、月着陸の話等がありました。
工程表のような具体的な話ではなく大ざっぱな話として、こういうものがどんな形で大きな絵図に当てはまっていくのか。日本の月探査、その一歩先の火星探査に進むに当たって、これらがどのような要素となるのかを、今日ではなくて今後の課題としてお示しいただいたほうがいいのではないか。
もちろん、リュウグウと火星は、重力天体という意味では全然違いますけれども、しかしリュウグウのほうが1.5倍遠くにあるということもあって、UAEが行くのであればという議論も出てくるでしょうから、日本の絵姿を少しお示しいただければと思います。
これから、皆さま方にご質問あるいはコメントを頂きたいと思います。いかがでしょうか。では、西島委員。

【西島委員】 6ページの低軌道の商業化というのは、具体的にどのぐらい見通しが立っているのか。ISS(国際宇宙ステーション)あるいはISSの後継といったポジショニングも含めて、お話しいただければと思います。

【国分室長】 米国議会においても、ISSを2025年以降延長するかは現在審議中です。今後、どこまで延長するかの延長幅も下院では2028年、上院では2030年と、まだ不明確な状況です。加えて、ISSの寿命を考えるとISS退役後も含めて議論されなければならないと認識しています。
本日の3つ目の議題にも関係しますが、低軌道全体の商業化については、米国においても、どのように民間利用を広げていくかが大きなテーマの一つであるとの理解です。その一方で、私の知る限りでは、ISSの運用費全体を民間に払ってもらう完全民営化までは難しいと考えられておりまして、そういった状況の中どこまで民間利用を広げられるのか、どこの国でも今後検討されていくと認識しています。

【西島委員】 質問は、6ページの2番や3番はもちろん重要ですが、産業界の話をすると、低軌道の商業化はどこまで先を見ていいのかがなかなか説明しづらい状況です。長いスパンのスケジュールは出ていませんよね。

【国分室長】 ご指摘の通りです。三段階あると思っております。まず米国でISS延長を決定するステージ、次に、各参加極に対して延長するISSへの参加が呼びかけられるステージ、最後に各参加極から参画するのであれば参画が表明されるステージです。まだいろいろステップがあると思っており、各参加極ともなかなか将来が見通し切れていないという状況と承知しています。
検討しにくい状況ではありますが、いずれにしろ我々としても民間利用拡大の方策を考えていかなければならないため、検討は進めていきたいと考えております。

【藤崎主査】 牧島先生、お願いします。

【牧島主査代理】 現在、アルテミス計画に関する国際協力はどのような状況でしょうか。

【国分室長】 アルテミス計画は、Gatewayの建設に関わる部分と、月面での活動に関わる部分とベースが2つに分かれております。月を周回するGatewayを建設していくということについては、ISS計画のフレームワークの中で検討されていまして、こちらについては現在カナダ、ESA、日本が参加を表明しています。
一方、月面につきましては、また別途、米国が個別に声掛けをしている段階です。日本のほか、オーストラリアやUAE、ルクセンブルクなど、さまざまな国に米国から声掛けがなされているという認識です。両者のフレームワークは異なっています。

【牧島主査代理】 後者の月面活動について、日本は比較的早く協力を表明したと思ってよろしいでしょうか。

【国分室長】 早いかどうか一概に言えませんが、日本は昨年10月にアルテミス計画への参画を米国政府に伝えております。日本は現在、米国と協議し協力を具体化していくフェーズに入っています。こちらは文科省だけではなく、政府一丸となって対応・調整している状況でございます。

【藤崎主査】 米本委員、お願いします。

【米本委員】 質問が三つあります。一つ目は、資料9ページの米国のオービタル・サイエンシズ社についてです。この会社は商業補給サービスを担っていると承知していますが、なぜGatewayの居住・貨物要素の設計を行うことになったのでしょうか。ノースロップ・グラマン社の完全子会社であることと関係するのか、経緯をご存知であればお聞きしたいと思いました。
二つ目は,資料11ページ目のNASAアルテミス計画に関連する主要な契約についてです。契約社は米国籍の企業しかいないのでしょうか。
三つ目は,資料12ページの中国の有人活動に関する動向についてです。以前の小委員会において,中国が自国の宇宙ステーションに欧州等のペイロードを載せるという国際協力の話があったと思います。最新の情報があれば教えて戴けないでしょうか。

【国分室長】 一点目、HALO(ミニ居住棟)につきましては、今回の契約では(基本)設計について、(ノースロップ・グラマン社の完全子会社であり、ISSへの輸送機Cygnus宇宙船の開発経験を有する)オービタル・サイエンシズ社がNASAから受託したという認識です。
二点目、米国以外の企業の参画状況という意味では、例えばNASAの商業月輸送サービス「CLPS」に関しては、CLPSの入札資格を持っているDraper研究所のチームの中に日本のispace社が入っています。
三点目、中国の宇宙ステーションに対する他の国の参画状況ですが、資料が手元にないため、改めて別の機会にご説明させていただきます。

【藤崎主査】 他の委員の方々にご質問がございませんようでしたら、議題2に移りたいと思います。
議題2は、月探査協力に関する文部科学省と米航空宇宙局の共同宣言について、説明をお願いいたします。

<文部科学省国分室長より資料36-2に基づき説明>

【藤崎主査】 ありがとうございました。日本と米国がアルテミス計画においてどのように協力していくか、文科大臣とNASAの長官の間で合意ができたという報告でございました。こちらについてご質問がある方いらっしゃいますか。
知野委員、お願いします。

【知野委員】 3ページのところで、日本人宇宙飛行士の搭乗機会や月面活動の機会は、今後、日米間で取り決めていくとありますけれども、これはタイムスケジュール的にはいつごろ決めると考えればよいでしょうか。

【国分室長】 先ほど申し上げましたフレームワークがそれぞれGatewayと月面活動とで異なっておりまして、Gatewayにつきましては、現在ISSの政府間協定(民生用国際宇宙基地のための協力に関するカナダ政府、欧州宇宙機関の加盟国政府、日本国政府、ロシア連邦政府及びアメリカ合衆国政府の間の協定)の下での取決め締結に向け米国と調整中です。具体的な時期は未定ですが、日米ともになるべく早い締結をと考えており、例えば何年もかかるというような状況ではありません。
一方、月面での活動に関しましては、先に述べたように ISS計画のフレームワークでの活動ではないため、フレームワークの検討から始めなければならないため、Gatewayよりも時間がかかる見込みです。
このような背景もあり、フレームワークの整備と並行して日米間の協力を進めるため、今回、法的拘束力のない文書ではありますが、日米の具体的取組について合意する共同宣言の署名が行われました。

【藤崎主査】 倉本委員、お願いします。

【倉本委員】 日本側の貢献として位置づけられている月面データの共有についてですが、データやおそらく試料採取も将来的に行われると思いますが、こういったデータや試料の共有をぜひ双方向で行っていただきたいと考えております。
この書き方だと、日本のデータを米国に提供するという一方向しか書かれていないように思えます。

【国分室長】 こちらの資料は日本側の貢献事項として書いている関係からご指摘のように読めてしまうかもしれませんが、先ほどの資料36-1でご説明したとおり、NASA側も月極域探査機を打ち上げますので、持続的な月面探査活動を国際協力で行っていくに当たっては双方向でのデータ共有がされるものと考えております。

【藤崎主査】 ここは大事な点ですね。それでは、金山委員お願いします。

【金山委員】 同じく月面データについて、もちろんJAXAさんの宇宙機が取得してくるデータが中心になると思いますが、ispaceさんのように、民間が自分でローバーを降ろしてということを考えていることから、月面のデータバイ(Data Buy)が国、あるいはJAXAさんが行っていくことは現実的にあり得るとお考えでしょうか。

【国分室長】 科学探査を除く探査活動については、現在政府の中でも検討中です。文科省/JAXAが行う科学探査に関しては、宇宙条約(月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約)の中でも認められておりますが、民間の活動でどこまでできるかについては、今の段階では規定しているものがありません。それをどういったフレームワークの中で位置付けていくかということについて、内閣府、経産省、外務省等の関係省庁で協議しているところです。

【藤崎主査】 他の委員の方々、特にございませんでしょうか。もし、ないようでしたら、第2議題は以上とさせていただきます。
公開の会議はここまでとなります。事務局から何かご説明はございますか。

【事務局】 次回の小委員会の開催予定につきましては改めてお知らせさせていただきます。これ以降は非公開となりますので、傍聴の皆さまはご退室をお願いいたします。

(了)

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研究開発局宇宙開発利用課