宇宙開発利用部会 国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会(第32回) 議事録

1.日時

令和元年12月16日(月曜日) 15時00分~16時00分

2.場所

文部科学省 3階2特別会議室

3.議題

  1. 国際宇宙探査やISSを含む地球低軌道を巡る動向について
  2. 地球低軌道活動の在り方について
  3. その他

4.出席者

委員

主査(専門委員)           藤崎 一郎
第一主査代理(専門委員)     牧島 一夫
第二主査代理(委員)        角南 篤
専門委員                金山 秀樹
専門委員                倉本 圭
臨時委員                知野 恵子
専門委員                続橋 聡
専門委員                中村 昭子
臨時委員                西島 和三
専門委員                向井 千秋

文部科学省

大臣官房審議官(研究開発局担当)               岡村 直子
研究開発局宇宙開発利用課長                  藤吉 尚之
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長        倉田 佳奈江
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室室長補佐   髙木 朋美

(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA))
理事                                   若田 光一
ISSプロジェクトマネージャ                     筒井 史哉

5.議事録

【藤崎主査】 それでは,ただいまより,国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会第32回会合を開催させていただきます。
事務局,確認をお願いいたします。

【事務局】 それでは,資料の確認をさせていただきます。
お手元の議事次第のとおり,資料を32-1から32-3まで,3つお配りしております。不足などありましたら,事務局までお申しつけください。

【藤崎主査】 ありがとうございました。委員の皆様のご協力を得まして,ゲートウェイにつきましては,非常にタイムリーに提案を,この小委員会として出すことができたと思います。1つ残る大きな議題として,ISSを含む低軌道について今後どうしていくのか,ということを考える必要がございます。これにつきまして,ご説明をいただきたいと思います。

<文部科学省倉田室長より資料32-1に基づき説明>
<説明の途中,資料32-1の17ページ「The 3rd International Moon Village Workshop/Symposium」について,関係者の向井委員より補足>

【向井委員】 特に補足はないのですが,100人くらい集まればよいのではないかなと思っていたのが,倍以上の参加者がありました。理科大で開催したのでアクセスがいいということもあり,企業の人たちに多く参加いただきました。月探査に興味を持っている人が多いことがわかりました。衛星・ロケットのバルブなどのエレメントを作る企業からの参加もありました。以上です。

<JAXA若田理事より資料32-2に基づき説明>
<文部科学省倉田室長より資料32-3に基づき説明>

【藤崎主査】 ありがとうございました。今の資料32-3の4ページ目の点を中心に,ご議論いただくわけでございますが,少しクラリフィケーションというか,2,3点,確認をさせていただきたいところを,私から。
32-1という,最初に倉田さんからご説明いただいた資料の16ページ目のところに,ESA(欧州宇宙機関)は,「ISSについて,2030年までの取り組みを続ける」と書いてございますが,これはアメリカが続けるという前提なのか,全く関係なくそういうことなのか。また,ロシアはどういうことを今述べているかについて,一言いただければと思います。
次に,資料の32-2でございますけれども,若田さんからご説明いただいた4ページ目のところで,有償利用,民間利用についての棒グラフがございまして,これを見ると,大変伸びているということでございますが,これは件数でございますけれども,金額という観点ではどういうことなのか。例えば,1時間/1日いくらという形でやって,何億円とか何千万円とか。費用対効果比ということもよく言われますので,どれくらいの金額で,件数だけではないところで見た場合にはどうなのかという点。
それから,同じ資料の16ページのところに,長期的なISS退役後のLEOの姿が書いてございますが,どのような利用ニーズがあるかということで,オプション1,2,3とございます。これは,ISS自体は存在している,退役していないということで,ただ,公的な関与がなくなった時点において,ISSをどう利用するか,あるいは,ほかのものを政府は利用していくという議論をしているのか。もしくは,ISS自体がなくなるという前提なのか。「退役」というのは,普通は後者だと思いますけれども。この言葉の意味がこの表現ではよくわからなかったものですから,その3点だけを少しクラリファイしていただけますか。本来の議論に入る前の話で少し恐縮ですけれども。

【倉田室長】 まず,1点目の欧州の状況でございますが,特にアメリカが延長した場合は,と条件がついていたわけではございませんが,やはり物理的にアメリカが延長しませんと,欧州単独で続けることは難しくなります。アメリカが,先ほど冒頭でご紹介させていただいた通り,2030年までの延長法案を出している状況を踏まえ,延長されるであろうとの想定の下,欧州としても2030年までの延長を期待する,そういう趣旨での発表になってございます。
また,ロシアでございますが,公式に発表されていることはございませんが,いろいろなこれまでの会見等での発言によりますと,2025年以降もISSを使っていく意向を示している状況でございます。

【藤崎主査】 わかりました。ありがとうございます。

【若田理事(JAXA)】 有償利用,民間利用につきまして,4ページのところでございます。具体的な収入に関しては,すみません,私の手元にございませんけれども,実際に収入に関連するところが有償利用を行うときの,クルータイムという観点からは,現状,「きぼう」の利用におきましては,5%から10%程度が有償利用に使われている状況でございます。
米国も,この6月から有償利用を進めると,方針として打ち出されておりますけれども,当初目標が5%ということで,我々は既に,2008年の運用開始から,「きぼう」における有償利用の検討を進めておりまして,このような5%とか10%というクルータイムは,使っているというのが現状です。

【藤崎主査】 金額はアメリカと同じような設定になっているわけですか。

【若田理事(JAXA)】 金額に関しては,我々は基本的に実費,打ち上げ費ですとか,そういったものですので,米国と厳密には同じ取り方をしているわけではございません。
それから,16ページのオプション1,2,3でございますけれども,このLong-Termというところ,これは,NASAの資料と同じものです。こちらは,フリーフライヤー,先ほど倉田室長からも,Long-TermとしてISSがなくなった後,フリーフライヤーという形で民間主導の拠点ができているとありましたように,このLong-Termに関しては,ISSは既になくなっている前提でございます。その段階において,どういったニーズがあるか,どういったオプションがあるかを,オプション1,2,3という形で書かせていただいています。

【藤崎主査】 本当になくなったとき,そうすると,オプション1は何をベースに,どこで行うことを考えているのか。何か新しいLEOがあるという前提で,オプション1があり,オプション2も他国がそういうものをつくっているという前提ですか。

【若田理事(JAXA)】 はい。そのように想定しております。

【藤崎主査】 わかりました。どうぞ,向井先生。

【向井委員】 資料32-3のページ4の1点目に「ISS終了後」とありますが,2024年ということですか。例えば,3点目の「ISSの運用が延長される場合」というのは,2030年と考えていいのですか。

【倉田室長】 こちらは事務局から回答させていただきます。現時点で,まだ運用をいつまで行うかは決まっていない状況で,2024年までの運用を各国で合意している状況になっております。他方で,アメリカは現在,2030年までの運用の延長法案を出しており,欧州もその意向を示しています。運用終了が2030年という見込みが出ている状況でございますが,現時点では決まっておりませんので,そういう中で,運用終了は2025年となる可能性もありますし,2030年となる可能性もあります。

【向井委員】 決まっていないものの,延長されない場合の2024年までの間で考えるべきで,延長された場合には2030年ですね。その枠組みの中で考えるということですね。そうすると,NASAの計画では2030年以降にフリーフライヤーが上がり,その施設を利用する,という枠組みで考えてよいということですか。

【若田理事(JAXA)】 最後のご質問に関しましては,フリーフライヤーは,ISS退役後にメインで活動することを目指しますけれども,必ずしもISSの退役後に踏み切るものではないといいますか,その前に,技術実証を含めて準備等を米国は進めている形になっていると思います。例えば,AXIOMですとか,そういったものは,既にISSの退役前から準備をしていると認識しています。

【向井委員】 資金源があれば,いつまでも低軌道を維持しながら,月,火星を探査すればいいのですが,予算が限られているので,地球低軌道施設運用の期間を限定して,資金を月探査にシフトすることになると思います。ISS終了後は,フリーフライヤーで宇宙利用を実施するほうが維持費は安いです。宇宙ステーション全体の経費380億円位の資金をシフトさせて月探査も行うのか,他の予算が使えるのか等の条件がわからないと今後の予定を考えるのが難しいかと思います。

【倉田室長】 最後の予算の観点でございますが,資料32-3の最後の資料,6ページ目に,これまでの予算の推移を載せております。特にISSについて枠というものがあるわけではないですが,ご指摘のとおり,ISSの「きぼう」を組み立てておりました時期は,400億円台でございましたが,その後は効率化を図りまして,2019年度につきましては,312億円となっております。また,現在来年度要求している内容としましては,その横に258億円とあります。ただ,このうちのHTV-Xは,国際宇宙探査の予算とも考えられますので,少し下のほうに欄を移しています。合わせますと,366億円という要求額でございます。そのような状況でございますから,あくまでこれは毎年の予算編成の中で決まっていくものでありまして,枠というものがあるわけではありません。ただ,これを2倍,3倍にできるかというと,なかなか難しい財政事情もございます。そういう中で,ISSから国際宇宙探査をどのようにシームレスにやっていくかというのは,1つの課題だろうというような状況でございます。

【向井委員】 つまり400億円弱ぐらいの中で,シームレスに両方やりたいというオプションを考えてください,ということですね。

【倉田室長】 そうせざるを得なくなっている,というのはあるかもしれません。そのような中で,どのようなオプションがあるか,あるいは,やはりそのような枠ではなかなか両方は難しいというのもありますので,どのように効率化できるか,そのようなことも含めて,オプションの整理についてご議論いただきたい思っております。

【藤崎主査】 西島委員,どうぞ。

【西島委員】 今のローテーションのところなんですけれども,少し混乱しています。ISSが2024年までで終了した場合に,今の,民間利用も含めて伸びているという状況を,代替することで対応可能なのか。それとも,サイズとかいろいろな制約で,かなりサンプル等をセレクトしなければいけないのか,というのがまず1点。
もう1つは,ではISSの運用が延長されて,例えば2030年までとなった場合に,国際協力の宇宙環境利用の主体も民間事業者に移管されるとして,この民間事業者による施設の維持・管理が,本当に実現可能なのかということ。
それから,産業界からすれば,JAXAや国が維持している「きぼう」に対して,テーマを提案して利用していますけれども,民間事業者というのは,今までと同じような形で,利用契約とか知的財産関連契約とか有償利用細則等とか,その辺のルールが明確でないと,先が見えません。企業からすれば,今いい成果がでてきていて,特に動物実験とか,機会が増えていけば使ってみたいという波及効果が考えられます。しかし,後々のうまくいったときを見据えて,民間事業者が来て,利用条件枠の変更,有償利用経費の桁が違う,なんてことになる懸念があると,現場と違って会社の経営上層部は,少し関わるのを待て,というような止めも入るんですね。その辺を十分に配慮しつつ,将来構想について発信の仕方を考えないといけないかなということです。

【若田理事(JAXA)】 今,西島先生からご意見をいただいたようなことは,今回のRFIの中でもきちっと意見として,例えばアンカーテナンシーの必要性,そういったところで残っているのかなと思います。ですから,実際の利用に対する投資の意欲を継続していただくために,安定した利用環境の提供というのが重要と認識しております。その中で,23ページにも書かせていただいておりますけれども,民間利用を拡大することで,現状以上に民間の関わり,その利用率を拡大していきたいと思っております。そういう意味でも,2030年のポストISSで,目指す姿をきちんと見せた上で,今,民間利用による利用拡大をしていく,そのために安定したISSの運用の継続が必要だと,そういう形で進めていきたいと考えております。

【西島委員】 民間はISSが延長された場合,使うと思うんですけれども,その民間が使う窓口機能が民間だということですか。

【若田理事(JAXA)】 そうですね,はい。

【西島委員】 そこが,要するに,ISSの国際協力と同じようになったとき,JAXAと同じような情報発信源というか,強い母体を持つかが問題で,民間で受けるところがあればいいんですけれども。一般論から言うと,おそらくなかなか難しいですよね。それができるのであれば,たとえば,今のSPring-8等も民間事業者が主体運用に関わると思いますが,それが難しいから,共用促進法で,SPring-8& SACLA,J-PARC,スパコン富岳とかが,国主体で運用されている。即ち,SPring-8は,本体部分は国が保有・主体運用して,使用部分の維持管理を対象としてリーズナブルな経費で有償利用されている。大規模先端施設の本体技術を守ってるのは国の部分ですから。そこの部分がぐらついて,特に私たちからすると,ISSが地上から400キロ先といっても,空のものですからね。それを民間事業が主体となって,本当にうまくいくのか。それこそ,今度動くスパコンの富岳が,何年か動いたら民間事業者に移管されて,例えば富士通とか日立が受け取って,国が関与するよりもいい,というような実績が上がればよいですけれども,おそらくそうはならないですよね。地上の施設でそれをできないときに,宇宙でそれをやっていくと言い出したときに,大丈夫かという声は一般論で出てくると思うんですよ。

【若田理事(JAXA)】 情報発信のプロセスに関しては,ご指摘のとおり,これまで公募による科学研究の場合というのは,当然,JAXAが主体としてそういったものを広く発信させていただいておりましたけれども,既に,超小型衛星の放出ですとか,船外利用に関しても,事業者に作業を移管しています。それらのミッションの成功に関しましては,当然,委託した先の判断になります。そういった情報発信も,やはり今後,民間移管を拡大していく中で,プロセスをきちんと考えていかなければならないというのは,ご指摘のとおりだと思います。

【藤崎主査】 ほかの委員の方々はいかがでいらっしゃいますか。
続橋委員。皆さんもどんどん立ててください。

【続橋委員】 資料32-2の21ページですけれども,今後の利用需要というところで,一番上に,短期滞在旅行事業が年10人から20人とあります。いわゆる宇宙観光みたいなことが新しく想定されていると思うんですけれども,結局,料金次第になります。例えば,今,宇宙ステーションに行くのに10億円かかるというのが,十数年後には1億円になっているとか,数千万円は厳しいかもしれないですけれども,仮に,10分の1にロケットによる輸送費用が安くなるとなれば,これが10人から20人じゃなくて何百人になるかもしれない。ビジネスとして成り立つとなれば,PFI的な形で運営してみよう,という人も出てくるかもしれないと思います。
逆に,民間の需要が大き過ぎると,今度は研究ができないということになれば,例えばリソースの半分までは民間でいいけれども,あとの半分は公的なところに回して,折半してやりましょうとか,そういうことを考えると思います。民間の需要を増やすためには,どのくらい料金が下がりそうか,10分の1なのか,2分の1なのか,を考えておかないと,なかなか議論にならないと思っています。

【藤崎主査】 ありがとうございました。
牧島先生。

【牧島第一主査代理】 まず質問です。資料32-3の4ページ目に3つ論点があり,その3番目に,「宇宙環境利用事業の主体は民間事業者に移管し,国・JAXAは1ユーザー・顧客となるような形態に遷移していくためには」とあります。これはあくまで「例えば」であって,そういう可能性もあるけれども,ほかの可能性もあるということでよろしいですか。
次に私の意見です。この小委員会では,シームレスに低軌道からゲートウェイにつなげていくということを決議したわけで,それをきちんと実現する上では,現在の形のISSの運用を急激に減らしたり変更することなく,しっかり維持していくことが非常に大事だと思っています。それには理由が4つほどあります。
1つは,まず,ゲートウェイでさまざまな技術的な問題が出てくる可能性がありますが,それを最も的確に試験し,解決できるのはやはりISSだろうと思うからです。
2番目に,西島委員や続橋委員が言われる通り,民間がやるといっても,そう簡単に,すぐにできるものではありません。企業としても安定してISSが続いているというアンカーテナンシーがあることで初めて,宇宙にある程度の投資を続け,また人材を配置し続けることができると思います。
3番目に,基礎研究の手段として,最近は個々の衛星が非常に巨大化しており,研究の行き詰まりを招いています。こうした状況の中で,ISSを使った超小型衛星や小型衛星の放出は1つの突破口になるので,基礎研究の立場からもISSの安定した運用は非常に大事だと思います。
4番目には,宇宙活動を支えるためには,宇宙機の打ち上げの現場で,しっかりと現場経験を積んだ若手が常に育ち続けることが必須なわけで,そのためにもISSは非常に好ましいプラットフォームだと思います。
特に3番目と4番目は,文科省が宇宙の主務官庁であるための根拠でもありますので,この部分は大事に考えていただいたほうがよいと思います。

【藤崎主査】 ありがとうございました。
金山委員,お願いします。

【金山委員】 資料の32-2の23ページに,2025年以降の目標として,「科学研究利用,宇宙技術研究開発主体から有償利用(民間利用)を拡大」とあります。Space BDさんの事業もそうですけれども,超小型衛星放出事業,船外実験サービス提供事業が先行して行われているのですが,これは,日本政府がISSというプラットフォームに莫大な資金を投じて作られた基盤があって初めて成立する事業です。そういうことがなければ,あの種の事業は生まれてこなかったと思います。
今後このような先行事業が,ISSに依存しなくとも民間が無人のプラットフォームを作って,今のISSと同じくらいの費用で利用できるという時代が来るのが,一番望ましいと思っています。無理やりいつまでもISSの利用を民間がずっと引きずるというのは,あまりよくないのではと思っています。
なぜかというと,ここに,丸1有償利用/民間利用,丸2宇宙技術研究開発,丸3公募による科学研究利用/教育とありますが,先ほども西島委員からの話がありましたように,丸2,丸3を本当に民間が請負うのは難しいと思います。民間は利益に直結することを求めがちですが,これらは,単純に,儲かるからやる,儲からないからやらない,という話とは全然違う世界なので,ISSの利用の延長も含めて,きちんと政府が考えていかないといけないことであろうと思いました。
以上です。

【藤崎主査】 ありがとうございます。
知野委員,お願いします。

【知野委員】 同じく資料32-2ですけれども,19ページのいただいた意見を読みますと,官需によるアンカーテナンシー,回収・帰還技術とあり,民間側には国に頼りたい,という意思があるように見えます。また,同じ資料の3ページで,公募による科学研究利用のお話が出ていて,「きぼう」利用の半数以上が公募による大学等のアカデミア研究とあります。半数以上というのは,何か量を制限しているんでしょうか。あるいは,着実に需要があるのは,ここしかないんじゃないかな,というのが,この資料を読むと感じるのですが,これは国がやるということを想定してまとめられているんでしょうか。

【若田理事(JAXA)】 今,お話ししてもよろしいでしょうか。

【藤崎主査】 少し待ってください。ほかにございませんね。
それではどうぞお願いいたします。

【若田理事(JAXA)】 知野委員からのご質問に対しましては,もともと国際宇宙ステーションでの実験というのが,有償利用は当初かなり少ない状態で,日本が初めてやったというところもございますが,大きな割合というのは公募による利用ということでございました。相対的には,10年前に比べますと,公募の割合は低くなっておりまして,我々が米国に先立ちまして,有償利用を拡大してきていると,そう捉えていただければと思います。
ただ,その有償利用,民間利用を広げていく中で,先ほど金山委員からもご指摘がございましたけれども,パイチャートの,特に丸2,丸3のところは,民間から,最初から民間で実現することは難しいといわれております。ISSを延長する場合には,アンカーテナンシーの部分を残しつつ,徐々に民間,有償利用を広げていく,そういった両方を立てて考えていかないといけないと思います。

【藤崎主査】 向井委員。

【向井委員】 民間利用を進めるためには,投資額が少なくて,リターンが早いものを考えないといけないと思います。科学利用に固執することなく,軌道上で映画を撮影するようなエンタメ等で民間に利用していただければ,ISS利用を考える民間企業もたくさんあると思います。他の例では,宇宙郵便局といった装置を軌道上に置いて,宇宙を経由した絵葉書が配達されるという付加価値で課金するなど,新たな施設を作ることなくお金が儲かるからくりをつくらないと,民間は入りにくいと思います。

【藤崎主査】 ほかの委員の方々,何かご意見はございますか。
どうぞ,中村委員,お願いします。

【中村委員】 コメントなんですけれども,いただいた資料を見ますと,今後のISSの利用を考える上で,2025年から30年の間に,ほかの国のサービスを,日本の企業なり日本の関係者がどういうふうに利用できそうか,ということが欠けているかなと思うので,今後議論するに当たって,そういうのも整理していただければありがたいと思います。

【若田理事(JAXA)】 回答させていただきます。今回のRFIに関する資料の,16ページでございますけれども,今,金山委員,向井委員からもご指摘のあったように,オプション1のような,クイックに結果を出せる,小規模な低軌道のプラットフォームを運用することも考えられます。また,中村委員からご指摘いただいたように,オプション2のような他国のプラットフォーム,これは米国であったり,ロシアであったり,ヨーロッパであったり,その中にもいろいろな選択肢があると思います。そういったものを利用することで,さまざまな利用を進めていくということも,オプションとして検討しております。今回のRFIは,オプション1に限ったものでございますけれども,JAXAの中でオプション2,3についても既に検討を進めております。オプション2,3に関しましても,今後必要に応じて民間企業からのご提案をいただくということも検討はしていきたいと思っております。

【藤崎主査】 倉本委員,お願いします。

【倉本委員】 議論がRFIについてということで,将来,民間の利用を拡大させることに集中しているわけですけれども。一方で,資料32-2の22ページ,これは2025年以降の「きぼう」の進め方ですから,少し手前の部分ではあるんですけれども,ここに3つ大きな柱が設定されていて,これは必ずしも民間利用に限ったことではなくて,ほかの要素を含んでいると。そうすると,今,民間が主体と考えている2030年以降,ここに書かれている柱については,どういう方針でどうしていくのか。併せて,考えを説明してもらってもよろしいでしょうか。

【若田理事(JAXA)】 今のご質問に対しては,ご指摘のとおりでございまして,22ページに掲げております「きぼう」の意義ですが,この3本の柱というのは,ISSを継続していく場合には不変のものであると思っております。意義の1つである,日米協力という形での利用拡大が,広義の意味での安心安全な社会をつくっていくと考えております。
インドや中国は宇宙利用を進めており,特に中国は,宇宙ステーション等を建設して,地球低軌道の利用を進めております。対して,「きぼう」が世界に誇れることの1つが,宇宙利用技術,利用成果だと思います。我々は既に獲得しているノウハウ,そしてアセットを最大限に活用していくことで,国際プレゼンスの確保,産業振興,科学技術イノベーションといった「きぼう」の意義を果たすことができると考えます。特に,この中の産業振興のところが,先ほどから申し上げております有償利用とか,民間利用の拡大ということですので,実は,この大きな3つの柱の中の一部を,具体例として紹介させていただいていることになっております。
また,ご指摘のように,この3つの柱は,きちんと3つともが重要だということを,民間も含めた関係者のコンセンサスを得た上で,進んでいく必要があると思います。

【倉田室長】 1点補足です。民間の利用を促進するということと,サービス事業者が民間となり,そこを通じて調達するという,2つの流れがあると思っております。アメリカでも,やはり,民間を通じて調達をしております。科学研究に国費を投じるわけですが,それを,NASAを通じてではなく,ナショナルラボというサービス事業者を通じて行い,このように資金の流れを変えることで,効率化を図っているところもございます。今回,その2つの観点が,こちらの資料でも混線してしまったところがあると思いますので,次回以降,資料も工夫させていただきたいと思います。

【藤崎主査】 今のナショナルラボというのは民間でございますか。

【倉田室長】 一応,NASAの外にありまして,非営利にはなるんですが,いわゆる民間という位置づけになります。

【藤崎主査】 資金は?

【倉田室長】 資金は国が出しております。

【藤崎主査】 そうですよね,ですから民間ではありませんよね。

【倉田室長】 そういう意味では,研究費は国が措置しております。ただ,NASAが全て,例えば実験のお世話をしているわけではなく,ナショナルラボを通じて実験をしているという形をとることで,効率化して,NASAは宇宙の業務に専念する。そのような役割分担等も進んでおります。そういった点について,もう少し資料も示していきたいと思います。

【藤崎主査】 角南先生。

【角南第二主査代理】 今の点は非常に重要なポイントで,単純に民間と国,という分け方はできないと思うんですね。民間の利用はもちろんありますが,アメリカでは国研を民間に運営させることにより,効率性を担保しています。ただ,同じグラウンドで民間企業同士が競争しているわけではありません。現在日本の民間企業がアンカーテナンシーと言っていることとは別次元の話です。やはり日本は,アメリカのやり方と,それ以外の国のやり方をしっかりと学び,同じ土俵に立つような場所をつくった上で,日本の民間企業が投資リスクを取りやすいように整えないと全然進みません。
アメリカの企業は様々な形で公的資金を使いながら競争力を維持しています。日本にはそのような環境がない中で,民間利用というのだけが出てくると,日本の企業もなかなか第一歩を踏み出しにくいかと思います。

【藤崎主査】 ありがとうございます。これは釈迦に説法でございますけれども,宇宙開発・探査は,あくまで国民の支援を受けて行う,国家的事業であって,民間で到底背負い切れないものである,という基本認識があり,したがって,ある意味では防衛とか安全保障に近いということだろうと思います。
そこで,今まさにご議論いただいたように,アメリカの場合,ほかの機関を通じてやって,NASAではないけれども,基本的には公的なお金が出ているものを,いわば民間と呼称することもあると。ですから,第一に,日本はアメリカの民間とは企業体質が全然違いますし,民間の流行りということには,気をつけていかないといけない。
もう1つは,特に民間の場合は,成長産業に投資していくというのは,中でも説明がつきますけれども,率直に言って,ISSは衰退産業でございまして,時限が見えているようなものについて,投資をしていくということは,なかなか難しい面があるだろうと。ですから,そこを肩がわりさせていこうという議論をあまりいたしますと,ミスリーディングになります。けれども,本当に我々の考えているような,探査や開発には結びつかない可能性があるので,この民間利用ということについては,非常に気をつけて,整理して対処しなければならないというのが,大方の意見ではなかったかと思います。よくご承知だろうとは思いますけれども,この点は念のために確認させていただきたいと思います。

【倉田室長】 ご指摘ありがとうございます。本日いただいたご意見を,事務局でも整理させていただきます。先ほど述べましたように,宇宙基本計画工程表でオプションを整理するということにもなっておりますので,引き続き,どういった形で文科省として提案ができるか,また次回以降もご審議をいただければと思います。

【藤崎主査】 繰り返しになりますけれども,民間という言葉を入れないようなオプションはあり得ないので,民間利用ということはきちんとやっていかなければいけなくて,しかしそれが,本当に何か,かなり重要な要素になってきていることではなくて,あくまでそれは,subsidiaryといいますか,補足,付加的なものであるということが,はっきりするようにしていくべきであろうというのが,おそらく今日の意見の集約ではないかと思います。
今日は,大変有意義な意見交換ができたと思いますが,何か今後についてのご意見はございますか。

【倉田室長】 次回以降につきましては,改めて事務局よりご連絡をさせていただきたいと存じます。また,本日のご議論を踏まえて何か,本日は時間が限られておりましたので,ご質問やご不明な点,あるいはご意見等がございましたら,事務局までお寄せいただければと思います。ありがとうございました。

【事務局】 もう1点,本日の会議資料と議事録ですが,後日,文科省のホームページに掲載させていただきますので,議事録に関しては,後日皆さんにご確認いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

(了)

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課