令和元年8月26日(月曜日) 15時00分~16時00分
文部科学省 3階2特別会議室
主査(専門委員) 藤崎 一郎
第一主査代理(専門委員) 牧島 一夫
第二主査代理(委員) 角南 篤
専門委員 金山 秀樹
専門委員 木村 真一
専門委員 倉本 圭
専門委員 古城 佳子
臨時委員 知野 恵子
専門委員 続橋 聡
専門委員 中村 昭子
臨時委員 西島 和三
専門委員 向井 千秋
臨時委員 米本 浩一
大臣官房審議官(研究開発局担当) 岡村 直子
研究開発局宇宙開発利用課長 藤吉 尚之
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長 倉田 佳奈江
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室室長補佐 髙木 朋美
(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA))
理事 若田 光一
国際宇宙探査センター長 佐々木 宏
【藤崎主査】 それでは,ただいまより,国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会第31回の会合を開催させていただきます。お暑い中,ご参集いただきましてありがとうございます。
まず,事務的な確認について,事務局,お願いします。
【事務局】 資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第のとおりに配付させていただいておりますが,不足などございましたら事務局までお申しつけください。
以上でございます。
【藤崎主査】 では,議題に入ります。本日の議題は3つございますけれども,国際宇宙探査や,ISSを含む地球低軌道をめぐる動向についてご報告をいただいた後,宇宙探査への参画に向けて,小委員会の報告を確認いたします。そして,研究開発の事前評価について,この最後の部分は非公開で開催させていただくことになっております。
では,最初の議題につきましてご報告をいただきます。
<文部科学省倉田室長より資料31-1に基づき説明>
【若田理事】 はやぶさ2におきましては,7月11日に2回目のリュウグウへのタッチダウン後,8月22日にJAXAで記者説明会を実施しております。そのときの概要をかいつまんでお話しさせていただきます。
現時点で,はやぶさ2のリュウグウ出発は,今年の11月から12月頃を予定しております。今後,リュウグウを出発する前の予定ですけれども,9月5日にMINERVA-II2※というロボットを分離するリハーサルを行います。これは,はやぶさ2からターゲットマーカーを2つ分離するというものです。
9月5日のリハーサル後,結果を見まして,実際にそのMINERVA-II2を放出する本番の日程を決定します。それは,9月24日に予定しております記者説明会で公表させていただく予定でございます。現時点で皆様ご存じのように,はやぶさ2の地球帰還は2020年末を予定しておりまして,オーストラリアのウーメラ管理地区ということで,はやぶさ1号機とほぼ同じ場所に帰還する予定で,オーストラリアの宇宙機関等との調整,準備を進めている状況でございます。
以上でございます。
(※)MINERVA-IIには,JAXAが開発したMINERVA-II1と,大学が共同で開発したMINERVA-II2があり,II1は2018年9月21日に分離済。
【藤崎主査】 ありがとうございます。皆様方,ご質問等もあるかもしれませんが,実は,第2の議題である当小委員会の取りまとめ,こちらが本日の主たる議題でございますので,申し訳ございませんが,こちらに移らせていただきたいと思います。
では,小委員会の取りまとめにつきまして,倉田室長からご説明いただきます。
<文部科学省倉田室長より資料31-2-1に基づき説明>
【藤崎主査】 室長,どうもありがとうございました。こちらは,委員の皆様方と当小委員会の場で議論し,あるいは事務局とメールでいろいろ詰めながら,まとめたものでございます。こちらには皆様方のコメントも反映されております。本取りまとめについて,この場で皆様方の合意が得られるでしょうか。採択でよろしゅうございますか。
(「異議なし」の声あり)
【藤崎主査】 では,取りまとめはここで採択させていただきます。
時間が残り20分ほどございますので,各委員から一言ずつ,大体1分強,大変短い時間で恐縮でございますが,時計回りで金山委員から,ご意見をおっしゃっていただきたいと思います。
【金山委員】 僭越ながら,最初に意見を述べさせていただきます。
地球近傍の宇宙活動の領域が,今後,月周回,あるいは月面へと拡大することは,産業界から見ても,担当すべき仕事が増えるということ,宇宙産業としての裾野が一層拡大するきっかけになると思います。従来のプレイヤーだけではなくて,新たな会社が次々に参画してくれる。そういう将来を期待しています。
次に,極限環境における有人活動を支えるための技術は,おそらく地上への展開が思った以上に多く期待できるのではないかなと思っています。既存の事業の拡大にとどまらず,新しい事業の創造や,SDGsへの貢献といったことにつながると考えております。
最後に,新たな施策・制度として期待するところは,やはりサービス調達です。このような新たな施策を積極的に活用いただくことは,民間投資の拡大,産業界の参画の呼び水となると思います。
以上です。
【藤崎主査】 ありがとうございました。
木村委員,お願いします。
【木村委員】 東京理科大学の木村でございます。
まず,取りまとめ案に対して賛成いたします。我々は,今,低軌道,ISS,あるいはHTVで培った技術を,新たな目的に踏み出す画期的なところに来ていると思います。その意味で,この取りまとめ案は非常に重要だと思われます。
我々,東京理科大学でも,宇宙で居住するということをターゲットにしまして,さまざまな研究を進めています。今,金山委員からもありましたけれども,こうした大きな動きがあることによって,さまざまな居住に関連する技術が進んでいく。宇宙だけではなくて,宇宙を進めていくことによって地上の技術が,あるいはSDGsに代表されるような地上で問題になっている様々な問題を解決していく突破口になっていくと信じています。その意味でも,この動きは非常に重要なターニングポイントじゃないかなと思います。
また,大学人として,学生の視点から見ますと,我々の人類の活動範囲がまた一段と広がっていく。その中で,日本が非常に重要な役割を果たしていくのだと。こういう意識は学生にとっても非常に力になると思っています。
こういう新しい動きに,学生たちからの宇宙への関心がすごく集まっておりますので,ぜひそういった意味でも,参画への取組を進めていっていただければと思います。
以上です。
【藤崎主査】 ありがとうございます。
倉本委員。
【倉本委員】 北海道大学の倉本です。
一つ,私は科学者なのですけれども,惑星科学の分野を研究しております。これは,惑星科学,あるいは宇宙科学にとって,非常に大きな一歩になると期待をしているところです。
特に,日本は以前,ペネトレータ計画という月の内部を調査するような計画を持っておりましたが,紆余曲折ありまして,うまくいかなかったということがあります。月面に,実際に人間が行くということになりますと,それを目指したサイエンスというものを,実現することが可能になってくる。そういう環境ができてくるのかなと思っています。
それからもう一つ,月をベースとして,月にとどまらず,その先のサイエンスですね,あるいは火星に行くためのステップにするという点もありますし,あるいは月面という環境をうまく生かした深宇宙探査といったようなものも想定されています。さまざまなアイデアがここから湧いてくるのではないかと思っています。
月にとどまらずにもっと広い宇宙の探査の発展にこれが役立つことを期待しております。
それから,人材育成に関しては,木村委員長の発言と同意見です。
以上です。
【藤崎主査】 ありがとうございました。
古城委員。
【古城委員】 私の専門は国際政治ですので,その観点から言いますと,取りまとめ案で述べられていますけれども,今,宇宙空間をめぐる地政学的なバランスというのは,かなり急速に変化しております。その点からしますと,将来,宇宙空間の秩序の構築ということが,非常に大きな課題になると思います。
もちろんビジネスも参画してくるわけですので,そういう主体も含めながら,ルールメイキングをどのようにしていくのかということが大きな課題になってくると思います。
ですので,ルールメイキングの場において,日本が発言権をきちんと確保していくということが重要です。「ゲートウェイ」計画でも,日本は戦略的に既存の技術に基づいた協力関係を構築していくということですので,そういう具体的な技術や科学に裏打ちされた基盤を日本がこれからもきちんと示していくということが,将来のルールメイキングで発言権を持つためには重要ではないかと思っています。引き続き,進めていっていただきたいと思っています。
以上です。
【藤崎主査】 ありがとうございました。
角南代理,お願いいたします。
【角南第二主査代理】 私も古城先生と全く同じ意見でございます。あえて私からつけ加えるとすると,ISSとの違いで言うと,ここにも書かれてありますように,インドとのパートナーシップというのが入っています。新たな力を持った国が宇宙の世界にどんどんできてくる中で,インドとはしっかりと対話をして,月探査だけではなくて,全体的に大きなビジョンを共有しながら取り組んでいくことが必要だと思います。それから,今年はAPRSAF-26を,名古屋で,我が国がホストをいたします。アジアとのパートナーシップということをもう一回しっかりと築き上げていって,この「ゲートウェイ」構想に対する日本の考えというものを,ここでしっかりと共有していただきたいと思っています。
後回しになるのではなくて,最初からビジョンを共有しながら,しっかりとアジアにおけるパートナーシップを丁寧につくっていくことが,古城委員がご指摘したような今の我々が置かれている流動化している国際情勢の中で,非常に重要で,これは日米だけの話ではないと思っています。我々はアメリカの提案に対して答えているというだけではなくて,日本の宇宙というものに対するビジョンをしっかりと,パートナーを増やしていく形で共有していっていただきたいと思います。
【藤崎主査】 ありがとうございました。
牧島代理,お願いします。
【牧島第一主査代理】第一主査代理の牧島です。この委員会も本日,31回目になりました。初回が2014年でしたから,非常に長く続いている稀少な委員会といえます。毎回,自主的に喧々諤々の議論が戦わされ,その中で本日この取りまとめが提出できたことは大変意義が大きいと思います。日本の産官学の足並みが揃い,有人も含めた宇宙活動に対して大きな一歩を踏み出すことができたという,画期的なものと言えるでしょう。藤崎主査のリーダーシップに感謝しつつ,我々もやってきた甲斐があると思っています。
【藤崎主査】 ありがとうございました。
知野委員,お願いします。
【知野委員】 日本でも,次は月を目指すべきだということがずっと言われ続けてきたのですけれども,なかなか具体的に動き出しませんでした。ただ,今回,アメリカの動きがあり,かつ世界各国でも同様の動きがあり,国際協議もしてということで,話が進んできたと思っております。
かなり大きなプロジェクトでありますから,長く時間はかかるし,費用もチェックしなくてはいけないとか,国際情勢の変化によって,大きな変化が起きるかもしれないとか,これまでのISSの教訓を踏まえまして,逐次見ていかなくてはいけないのではないかと思います。そして,それを一般の人々にも,今どういう状況になっており,何を目指しているのだというあたりをきちんと説明していくという,その積み重ねが必要ではないかなと思っています。
以上です。
【藤崎主査】 ありがとうございました。
続橋委員,お願いします。
【続橋委員】 元経団連の続橋です。宇宙の意義については,皆さんおっしゃったので別なことを言いますけれども,まさに今,米中問題,今日も,トランプ大統領は,関税率を5%上げると言っていましたけれども,この間貿易問題5Gに関連してさらに宇宙ということで,月というのは一つの象徴的な場所なのかと思います。
そういう意味では,やはり日本が月に対して積極的に貢献していくというのは非常に重要ですし,逆に考えると,そういう環境ですので,日本が貢献しているということをうまくとって,文科省さん,積極的に予算取りができるのではないかなと期待しております。
以上です。
【藤崎主査】 ありがとうございました。
中村委員,お願いします。
【中村委員】 神戸大学の中村と申します。今回の「ゲートウェイ」計画というのは,人類の活動の場を広げるという見方もできますし,地球の周りを回っていた人間の基地が,別の天体の周りを回る基地になるという中に視点の転換みたいなものがあると思っていまして,そういう時代に若い人が育っていくと,また新しい科学技術の発展などにつながるのではないかと期待しています。
以上です。
【藤崎主査】 ありがとうございます。
西島委員,お願いします。
【西島委員】 製薬企業の西島です。これまでのISSにおいての経験とか知見を活かして,これに書いてありますが,先頭集団で進めていただいたと思います。直接ではなくても,こういった最先端技術を進めることが,医療を含めたライフサイエンスにも十分波及効果をもたらすと期待しています。
【藤崎主査】 ありがとうございます。
向井委員,お願いします。
【向井委員】 東京理科大学の向井千秋です。私は,1985年に日本の第1期の宇宙飛行士として仕事を始めたときは,日本人がいよいよ地球低軌道,400キロくらいの軌道に行けることに大変感激しました。今,34年後,今度はその地球低軌道から,いよいよ離れて月,火星に行けるというエキサイティングな時代に,この委員会に参加していることを大変光栄に思っています。
私が高校時代に見たアポロ計画,月に着陸した人たち,その感激を私たちのこの年代でまた経験することができる。そういった「ゲートウェイ」への参画に関して,取りまとめのリーダーシップをとってくださった藤崎主査に感謝するとともに,その議論に参加できる委員の役をいただいたことに大変感謝しています。
また,マイクログラビティサイエンスやライフサイエンス研究の観点から見ますと,0G での研究は,これまでの歴史が長いロシア,アメリカの実績に負けてしまいがちでしたが,月は1/6G なので,ロシアやアメリカにしても研究実績が少ないので,日本はこれまでの宇宙ステーションの研究を基盤に国際的に戦っていけるだけの力を持ってきていると思います。
私は医学が専門ですが,月面開拓医学の分野では,1/6G は重力としては,人間にとっては多分小さ過ぎるので,人工重力研究の分野が推進されると思います。また,ヴァン・アレン帯の外に出ますので,放射線被ばく量が増大することが予想されるので,月面での放射線防護技術が今まで以上に注目されてくると思います。より高度な有人宇宙技術が求められるので,衣食住を含めた生活技術の研究をすることで,地球技術への貢献や持続可能な社会形成に役立つ研究ができる点も期待しています。ありがとうございます。
【藤崎主査】 ありがとうございます。
では,米本委員,お願いします。
【米本委員】 東京理科大学の米本です。国際宇宙ステーションに一区切りをつけて,月を周回する「ゲートウェイ」へ転換する議論に関われたことは非常に光栄だと思っています。
日本が国際宇宙ステーションに多大な貢献をしたというのは間違いなく,それで終わりにせずに,更に「ゲートウェイ」という新しい国際共同の枠組みの中で日本のプレゼンスをぜひ発揮していただけるように応援していきたいと思っています。
実は,宇宙飛行士として国際宇宙ステーションに行けた向井さんがうらやましいと思っています。次は,日本製の宇宙船に乗っていけるような時代を私たちがつくっていかなければなりません。以上です。どうもありがとうございます。
【藤崎主査】 皆様,どうもありがとうございました。皆様方と,牧島先生がおっしゃったように,何度も議論を重ね,そして,その中で本当に充実した意見の交換ができたということは,大変ありがたいことでございます。そして,抽象的な形ではなく,できるだけ明確に意思表示をしていこうということで,意見の一致がございまして,ここまで参りました。
先ほどの取りまとめの中に,マラソンの例えが書いてございまして,一旦先頭集団から脱落すると,なかなか追い付けないため,何とか食らいついていかなければいけないという話がございました。もう一つ,スポーツの三段跳びに例えますと,一時,アメリカは初めから月にジャンプしようという話をしておりましたが,現在は,まずホップで「ゲートウェイ」に行き,次に月に行くというステップになっております。このように,少しずつ積み重ねていきますと,日本もついていくことができ,ついていく中で,技術力も強化されます。どこまでついて行くか,そこまでは,まだはっきりしていないのですけれども,当面の目標は明確で,日本も協力ができるものになりました。
先ほど,まさに角南先生がおっしゃったとおり,アメリカだけでなくインドなど,いろいろな国とよい協力体制を作りながら,一国ではどうしてもできない,もしくは効率的でない宇宙探査を一緒に進めてゆき,そして,日本もその一角を担いつつだんだん強くなっていくという道を指し示していくことができれば,まさに我々の意の通ずるところではないかと思います。
では,皆様方,本日の小委員会で採決しました取りまとめでございますが,中間ではなく最終報告として方針を明らかにしていただきまして,ありがとうございました。
以降は,先ほど室長からお話がございましたように,評価のほうに移りますので,公開の部はここで終了したいと思います。改めてありがとうございました。
(了)
研究開発局宇宙開発利用課