宇宙開発利用部会 国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会(第30回) 議事録

1.日時

令和元年5月17日(金曜日) 16時00分~17時00分

2.場所

文部科学省 3階2特別会議室

3.議題

  1. 国際宇宙探査を巡る最近の動向について
  2. ISSを含む地球低軌道・国際宇宙探査に関する今後の対応方針
  3. その他

4.出席者

委員

主査(専門委員)           藤崎 一郎
第一主査代理(専門委員)     牧島 一夫
専門委員                金山 秀樹
専門委員                倉本 圭
専門委員                古城 佳子
臨時委員                知野 恵子
専門委員                続橋 聡
専門委員                中村 昭子
臨時委員                西島 和三
専門委員                向井 千秋
臨時委員                米本 浩一

文部科学省

研究開発局長                              佐伯 浩治
大臣官房審議官(研究開発局担当)                 岡村 直子
研究開発局開発企画課長                      林 孝浩
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長         倉田 佳奈江
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室課長補佐    原 真太郎

(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA))
理事                                   若田 光一
国際宇宙探査センター長                      佐々木 宏

5.議事録

(1)国際宇宙探査を巡る最近の動向について

【藤崎主査】 では,定刻になりましたので,ただいまより国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会の第30回会合を開催させていただきます。
事務局より,本日の会議に際して案内をお願いいたします。

【原補佐】 資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第のとおり配付しておりますので,不足などございましたら事務局までお申しつけください。
以上でございます。

【藤崎主査】 では,議題に入ります。
第1議題は国際宇宙探査をめぐる最近の動向について,第2議題はISSを含む地球低軌道・国際宇宙探査に関する今後の対応方針でございますが,どちらも大変関連する議題でございますので,この2つにつきまして,事務局,JAXAからご説明いただきまして,そして,委員の各位と議論をさせていただきたいと思います。
では,倉田室長,お願いいたします。

文部科学省倉田室長より資料30-1に基づき説明。

【藤崎主査】 2ページのところで11社が公募に手を挙げられたということをお聞きしましたが,日本でこれに参加している会社はありますか。

【倉田室長】 このプロジェクトで直接連携するかどうかは別としましても,例えば,ボーイング社ですとかロッキード・マーチン社などは,今までにもいろいろ日本の企業と連携があったかと思います。この11社と何らかの関わりのある日本企業もあるかと思いますが,今回の提案について直接関わりがあるかどうかというところまでは,まだ確認ができておりません。

【藤崎主査】 なるほど。わかりました。

(2)ISSを含む地球低軌道・国際宇宙探査に関する今後の対応方針

【藤崎主査】 次に,こちらの対応方針をご説明いただけますか。

文部科学省倉田室長より資料30-2に基づき説明。

【藤崎主査】 どうもありがとうございました。
今,資料1と2をご説明いただきましたが,JAXA若田理事,佐々木センター長,何か補足はございますか。

【若田理事(JAXA)】 ありません。

【藤崎主査】 それでは,委員の方々,今のご説明につきまして何かご提起はございませんか。
牧島先生。

【牧島第一主査代理】 まず,この月近傍Gatewayについてお尋ねします。3月にアメリカで大きな方針の変更があり,そのためGatewayモジュールの打ち上げ順序やシーケンスが変わるとご説明を伺いました。それに伴って,日本の参画がやりやすくなる部分と,やりにくくなる部分があると思いますが,もしそうした見通しがあれば,ご説明ください。

【藤崎主査】 ほかの委員の方々,いかがでございますか。
倉本委員。

【倉本委員】 2点質問があります。
資料30-2の1ページ目ですけれども,基本的な考え方,それから当面の方針というところがあります。まずは月面での持続的な活動に向けたということなんですが,この両方について,期間の想定を確認したいということと,それから,月面での持続的な活動といったときに,月面に基地を建設して人が常駐するようなイメージなのか,それともGatewayを基地として定期的にアクセスするようなイメージなのか,考え方を伺いたいと思います。よろしくお願いします。

【藤崎主査】 金山委員。

【金山委員】 資料30-1の10ページの一番下のところで,第1段階は,必要最低限のモジュールでミニGatewayとすることで,2028年から2024年への前倒しに対応するとあります。例えば,2024年にリターン トゥ ザ ムーンを達成したとなると,その後に待っているのは,Gatewayの第2段階への移行,月面有人活動,そしてISSの運用利用の3つが並行して走るようなるかと思います。予算的にも,一体どうやってこの3つを並行して進めていくのか,どこにプライオリティーを置いていくのか,というのが非常に重要になっていくと思っています。淡々とGateway第2段階に進むのか,それとも月面の活動に重点的に注力していくのか。日本が月面活動に重点を置くならば,国際協力の中で日本はどのように月面活動に貢献していくのか見極めが必要になると考えています。

【藤崎主査】 ありがとうございます。
では,ここで一旦お答えを。

【倉田室長】 まず,牧島委員よりご質問いただきました点でございますが,先ほども金山委員からご紹介がありました資料30-1の10ページ目で,NASAからは2段階体制でこのGatewayをつくっていくという方針が示され,必要な予算も要求されたところでございます。一方で,では具体的にどうするのか,全体の姿ですとか計画は,まだ示されていない状況でございます。
そういった中で,先ほどもございましたが,例えば,2024年までの着陸に向けて,最小限のモジュールというのがどういう形なのか,そこにどういう貢献があり得るのか,日本としてどういう参画があるのかというところについても,引き続き国際調整の中で確認していきたいと思います。また,その後,第2段階で完成形を目指すということでございます。そうしますと,前回ご紹介させていただきました有人滞在技術の居住棟での貢献,あるいは補給ミッションでの貢献といったことが,第2段階で出てくるかと思っております。そういったところでも,全体の方向性がどうなるのか,あるいはスケジュールがどうなるのかということを確認しながら,日本としてどうすることが戦略になるのかを,まさにこれから調整していくことが必要かと思っています。
そういう中で,参画しやすくなるというのは,なかなか難しいところがあります。できるだけタイムリーに貢献として必要なことをしていくことで,プレゼンスを示せるところはどういうところなのかを見極めながら,それによって戦略的な参画,費用対効果が高い参画というものを得ていくことが重要なのかなと考えております。いずれにしましても,まだ具体的な計画が示されていない状況でございますので,そういった中で,また先生方にもご照会をしながら助言をいただければと思っております。
また,倉本委員からご指摘のありました期間でございますけれども,確かに具体的にこれらが当面何年ということが示せていないところがございます。2ページ目は将来ビジョンということでございますが,ここに描いてあります絵も,おそらく2050年か,もう少し先の姿になるかと思っております。そういった2050年に向けた技術的な見通しを得ていくには,当面の今後10年間を集中的に行っていくことが重要ではないかということで,ここの4点を書かせていただいております。
また,日本として,月面の基地なのか,Gatewayなのかといいますと,そこはやはり月面ということで,これまでもご議論いただいていたかと思っております。2ページ目はビジョンでございますけれども,こういったものを念頭に,月面で何らかの持続的な活動をしていく,その中でGatewayを効果的に活用していく,という形で考えております。
また,金山委員のご指摘のとおり,2025年以降,3つのことが走っていく可能性がございます。どういうバランスで参画していくことが,日本にとって最も戦略的なのかという点についても,引き続き考えていかなければと思います。また,そういった観点でも,ご議論いただけたらと思っております。
若田理事,もし補足がございましたら。

【若田理事(JAXA)】 牧島委員からご質問いただいたように,今回,アメリカの方針が変わるということで,我々のやりやすさが変わってくるのかどうなのかということですが。今,倉田室長からお話しいただきましたように,我々が重点項目として開発していくべき技術――有人滞在技術,深宇宙補給技術,重力天体着陸技術,重力天体探査技術,その4つの観点から計画を本質的に進めてきておりますので,その観点からぶれることはないのかなと思います。ですから,アメリカが2028年の有人着陸を多少前倒しにしますというのも,Gatewayと月面の活動をトータルで見ますと,我々が進めていかなければいけない技術開発というのは,当初我々が長期的展望を持って技術研究を進めているものから外れるものではありません。米国の動きはありますけれども,きちんと一歩一歩ぶれずに進めていくことはできるのではないかなと思います。

【藤崎主査】 ほかの委員の方々,いかがでございますか。
古城委員,お願いします。

【古城委員】 ISSのことについてお伺いいたします。アメリカは,ISSの延長については,今のところ前向きになっているという理解でよろしいのだろうかということと,その場合,ISSは,これまで国際協力のもとでやっていると日本は捉えているんですけれども,アメリカは国際協力を維持していくと考えているのかどうか。
それから,もう一点,30-2の資料で,このISSについて,今はISSの利用を増やして他国との連携を図らないといけないという方針ですが,このISSの利用というのは,今までの実験利用,あるいは衛星の放出とか,そういう全てを利用と考えていくのか,それとも利用については何か重点を置くことを今後考えないといけないと思うのか,そのあたりを教えていただきたい。

【藤崎主査】 ほかの委員の方々,いかがでございますか。
向井委員。

【向井委員】 細かく説明してくださって,ありがとうございました。何点か意見があります。
初めに,アメリカが月着陸を加速していることに関して,日本はもともと月着陸や月探査に興味を持ってGateway計画参加を検討しているので,アメリカが日本の技術や協力を期待しているのであれば,日本にとっては追い風になると思います。うまくこのチャンスを使えばいいと思います。
次に,MOUがかなり複雑になると予想します。現在はGateway計画をISSの5極に参加を呼びかけていますが,資金面等を考えると,UAE等に参加国を広げてMOUを組む形になると予想されます。また,JAXA・インドの例にあるように,各国の2国間協定のMOUも進むと思われます。
また,月着陸は,NASAがリードし,これまで信頼関係のあるISS5極―これにロシアが入るかどうかはわかりませんが,この枠組みで着陸計画が加速するものと思います。
つまり,いわゆるGateway計画は参加国を広げ,月着陸計画は従来のISS参加国で進めることになる可能性があると思います。
さらに,MOUが複雑になると予算の組み方が非常に複雑になると思います。いわゆるGateway計画,月着陸を含む月探査計画,そして,ISS計画という形での予算枠組みになるかと。
ISSに関しては2025から2030ということで進んでいくにしても,その後のISSはどうなるのか,民間ステーション,宇宙旅行を含めて,誰がどのように利用していくのか。今後の利用計画の洗い出しを加速し,民間に渡していくというような枠組みをつくり,国の予算の軸足はGateway計画や月探査計画に移行していくべきと思います。
Gateway計画では,HTVの輸送手段と滞在技術等でのプライオリティーを決めて,着々と進めていくものと思います。アメリカが提唱している2024年の有人月着陸は,日本の関与規模によりますが,このための予算枠組みが必要と思います。つまり,ISS計画,いわゆるGateway計画,そして,月着陸を含む月探査計画の枠組みで予算のプライオリティーを考える必要があると思います。
最後に,議論はあるかと思いますが,かつてケネディ大統領がムーンショットとして有人月着陸を提唱し米国民を鼓舞したように,どこかの時点で日本人の月着陸を目標として明示するべきと思います。総花的に攻めるより,日本人月着陸目標を切り口として,派生する技術開発,産業界や学術界の参画など,計画遂行のための戦略を考えると,具体性が出るかと思います。どの時期で具体的な目標を出すか,今回の工程表の中に入れ込むようにするのか,委員や文科省をはじめとする関係者で考えていくべきと思います。
以上です。

【藤崎主査】 ありがとうございます。
中村委員。

【中村委員】 質問ですけれども,資料30-1の2ページの新規支出の内訳で,探査技術とサイエンスを合わせて2億ドルほど積まれているのですが,NASAの全体の予算からすると1%なんですけれども,私たちの感覚で言うと,かなりの予算がサイエンスにも新たについています。これはどういう内容なのか,もし情報があれば教えていただきたいのと,日本はぶれずに日本の伸ばしたい技術を伸ばしていくということなんですけれども,やはり影響があると思うので,今後も,どういう方向にお金がつけられていくかというのを,教えていただければと思います。

【藤崎主査】 向井委員,中村委員からのご質問にお答えいただければと思います。

【倉田室長】 どうもありがとうございます。
ISSでございますけれども,まず1点,利用のコストの部分の記載について,私の説明が行き届かなかったところがあったかと思いますが,現在,ISSの「きぼう」の中では,いろいろな実験ですとか,民間企業による衛星放出も含めたさまざまな利用が行われています。一方で,もちろん日本人宇宙飛行士の滞在ですとか,日本としての権利,あるいは全体の電気ですとか,そういった運用の一部を日本も負担しております。そういうことを補給で負担している関係にございます。そういった負担はそのままの形で,利用だけぎゅっと減らして,予算を減らすということは,全体としての費用対効果はどうなのか,というところを検証していく必要があるという趣旨で,こちらを書かせていただいております。そこは全体のバランスということであったと思いますが,そうしたコストの構造を踏まえつつ,どういった割合で,どこにどう予算を集中していくことが最も効果的なのか,ということを検証していく必要があろうかと思っております。
また,向井委員からご指摘のありました月面の着陸に米国が集中し始めたということは,冒頭ご説明させていただきましたように,月面を主体でやるという方針でございましたので,それは追い風であると,そのように思っています。一方で,MOUとなるのかどうかは別ですが,全体のGatewayを含めた月探査をどういう形で国際的な枠組みにしていくのかというのは,まさにこれからの議論と思っておりますので,ご指摘いただいた点を踏まえて,調査をして参りたいと思っております。
また,日本人の宇宙飛行士の月面着陸という点についても,戦略的な要素の一つでもあるかと思っておりますので,そういった点についても検討していきたいと思います。引き続き,ご議論いただけたらと思います。それによって,もちろんアカデミア,あるいは産業界も加わっていただくということを思っております。
また,中村委員からご指摘のありましたNASAの追加予算について,例えばでございますが,資料30-1の最後のページのように,以前一度ご紹介させていただいたのですけれども,NASAの科学局が中心になって,CLPSと呼ばれます科学ミッションの探査機を月に送ることを計画しております。NASAとしても,特に月の極域に関する科学的な探査をやっていく必要があるという問題意識を持っているようで,今回の16億ドルの追加予算を発表しました。NASAのブリーフィングペーパーの中には,この科学予算については,特に月極域の科学的な探査の検討のために充てたい,ということが書かれております。具体的には,おそらくこのCLPSミッションで今後いろいろな探査機を月に飛ばしていく中で,そういった月の極域を目指した探査をするのではないか,これは推察が入りますけれども,そのようなことが考えられると思います。
なお,このCLIPSプログラムは,探査機はNASAの科学局が用意しまして,打ち上げは民間の事業者を調達する形がとられています。
以上でございます。
もしよろしければ,若田理事。

【若田理事(JAXA)】 最初に,向井委員からおっしゃっていただいた利用に関しては,費用対効果のところはきちんと精査していかなければいけないと思います。たんぱく質の結晶成長ですとか,Cubesatの放出とかありますけれども,当然,全体の中で,国が主導してきた利用から,有償利用を含めて商業利用の拡大というのが必要なのかなと思っております。これまでも,Cubesatに関しましては,昨年度,民間事業者を2社選定いたしました。既に民間移管できる成熟した利用に関しては,そういったJAXA主体じゃなくて民間主体という形で事業を進めております。そういったところを地道に拡大していく必要があるかなと思っております。

【藤崎主査】 ありがとうございました。
では,米本委員,お願いします。

【米本委員】 各委員からの指摘と重複するかもしれませんが,ISSの民間利用が具体化する中で,JAXAや政府が,ある程度までは民間企業を支援する必要があると思います。具体的な計画や考え方があれば,教えて下さい。民間がISSを利用する等,低軌道の活動をJAXAから請け負うことができれば,文部科学省やJAXAは,Gatewayの開発に注力できると思います。
次の質問は,嫦娥4号が月の裏側に降りて以降,現状の状況についての事です。NASAは中国に対して通信で協力しているということですが,このような事をきっかけに協力関係が強くなって行くような気がします。Gatewayが発展し,火星以遠の深宇宙探査に利用される時代になると,国際宇宙ステーションの規模ではやっていけないことは明確であり,中国も仲間入りすることを想定しておかなければなりません。
最後はコメントですが,月面に日本の宇宙飛行士を送り込みたいというのは,向井委員の意見と同感です。しかし,アメリカの宇宙船に頼るのではなくて,日本人は日本の有人宇宙飛行船で月に降りて貰いたいと思います。これは毎回言っている事です。

【藤崎主査】 ありがとうございました。
知野委員,お願いします。

【知野委員】 4年前倒しということですけれども,これは相当大きな変更であると思います。そして,それに伴って,どんどんいろいろと変更が出てくるのではないか。例えば,Gatewayなんかも存在感がどんどん失われていくのではないか。また新しい何かが考えられていくのではないかという思いもしています。
国際宇宙ステーションがここまで費用対効果が問われることになったのは,やはりアメリカから変更が一方的に通告されたことや,計画を見直したりとか,アメリカで予算が認められなかったりとか,そういうことを繰り返しているうちにお金もどんどん増えていったという歴史があると思います。今回も月着陸を4年前倒ししますよと通告されたのだと思いますが,それによって全体がどのように変わってくるかというあたりを,政府としてはどの程度見通していらっしゃるのか。変化についてアメリカに確認する手段は,どういうものなのか。国際宇宙ステーションは,ある意味これだけアメリカがいろいろ変更したりしてきたわけですけれども,協定があり,かつMOUもありながらこういうことが続いたわけです。そうしますと,今回も相当変化するということを頭に入れておかなきゃいけないと思いますが,歯止めとなり得る手段については,ISSと同じでいいのか,あるいはもっとほかの手段が考えられるのか,など何かそのあたりに知恵を絞る必要があるのかなと思っているんですが,その辺どうお考えでしょうか。

【藤崎主査】 ありがとうございました。
西島さん,続橋さん,よろしいですか。はい,どうぞ。

【西島委員】 産業界から言うと,ISSというのはかなり親近感がありますが,Gatewayというのは国家レベルという感じで親近感が乏しい。多くの国民と同様に,産業界では,Gatewayのポジショニングを理解することが難しい。ISSとGatewayを同時進行することに多くの国民が反対はしないが,理解を求める工夫は必要でしょう。今後の進め方を時間軸に沿って,うまく説明しないと。例えば,どう考えても日本人が月に降りるのは相当先ですし,一方,ISSは現時点でかなり利用されている。このような状況下,ISSの将来計画を明確化する前に,いきなりGatewayへの関与,月の周回,月面着陸等を進めると,宇宙関連事業に何か不信感を持ってしまいます。皆さんがおっしゃっているように,限られた予算をどのように配分して両事業をどのように推進するのか,国民にうまく説明することが重要です。おそらくISSへの参画に際しては,国民の理解と産業界の利用等が上手くかみ合ったとの印象ですが,今回はどうでしょうか? どう説明したものかと少し悩んでしまいます。

【続橋委員】 ISSは,民間利用を進めるというのは,その通りですが,どこまで本格的にやるかが重要です。箱物ですから,PFIみたいな形で,買う人がいるかどうかという問題はあるんですけれども,民間所有を含めてやるのか,それとも,あくまでも所有は公的なものが主体で,利用のほうだけ民間がするというのか。アメリカはどう考えているのでしょうか。今や思い切った民間人がいますので,価格にもよりますが,買おうとするかもしれないです。いずれにしても,方向性は民間だと思いますが,どこまで民間を介入させていくかというのは良く考えないといけない,と思っています。
あと,大阪万博の開催が2025年です。新聞に,目玉として火星の中継をやるといった記事も出ていました。2025年というのは,例えば,向井さんがおっしゃったように,日本人が月におりて行くのを万博会場で中継するというイベントも考えられるかもしれません。その費用は,国の科学技術予算と全然違うところから持ってくるという発想がないと,いろいろな計画を全て科学技術予算だけで賄うというのは,難しいのではないかと思います。

【藤崎主査】 ありがとうございました。
今のアメリカのトランプ政権というのは,おそらく宇宙の問題だけでなく,いろいろな分野で,貿易もご承知のとおりでございますが,かなり独断でどんどん新しい球を投げてくる。しかし,だからといって我々もこれに呼応しないと,勝手に向こうが行ってしまって,日本が協力しないでどこかで取り残されてしまう。我々としては,おそらく本当のところはもう少し別なやり方があるのではないかと思いつつも,ついていきながら,そして,自主性と継続性をどう確保しながらやっていくかという,若干複雑な方程式の中で,文科省もJAXAもやっておられるんだろうと思います。おそらく各委員から出ている質問も,そういう気持ちを代弁してのことなのではないかと思いますが,いかがですか。

【倉田室長】 まず,ご指摘のございました今回のアメリカの大きな方針の変更でございますけれども,私どもも3月末にありました発表を事前に聞いていたかというと,そうではなかったのが事実でございます。その後につきましては,ISSでの長年のJAXAさんのご尽力もありまして,JAXAとNASAの信頼関係の中で,もちろん欧州もそうだと思いますし,カナダもそうだと思いますが,いろいろなレベル,いろいろな層での調整を継続して行っております。
そういった中で,先ほども申しましたように,今回のこの大きな方針の変更で,2024年という目標は示されましたが,具体的にどうするのかというのは,まだこれからというところもあります。引き続き,これまでの調整を活かしながら,どういう形でこの目標を達成しつつ,双方戦略的に取り組めるかということを,議論していくのかと思っております。
また,おっしゃるとおり,トップダウンで方針が変更されるリスクは,もちろんあるかと思いますが,実は,Gatewayの国際的な法的枠組みをどうしていくかということは,まだ決まっておりません。ただ,今までISS5極のパートナーの中で議論してきた,ということもありますので,そこをベースにするのであろうことは想定されております。一方で,まだ決まっていない中で,向井委員からもありましたように,その枠組みをどうしていくかはこれからの議論かと思っております。
その中で,歯止めみたいなところをどうしていくのか。もちろん,今のISSもコンセンサス形式にはなっておりますので,必要なことについての議論に,日本も異論をとなえることはできます。今までもいろいろな議論をしているところではございますが,そういう枠組みをしっかりとつくっていくことが重要ではないかと思います。
また,西島委員からも,限られた予算をどのように配分していくのか,今いろいろと取り組んでいただいている企業の方々に,引き続き,ISSで民間活力を活用した事業に取り組んでいただきつつ,議論していく必要があるかと思います。
なお,国際宇宙ステーションの利用を,今後,どういう形で広げていくかというのは,非常に重要な観点かと思っております。昨年から小型衛星の放出については,民間2社に事業を移管しました。それによって,例えば,先日発表があったガンダムみたいな,これまで我々ではなかなか思いつかなかったような,民間ならではのアイデアの利用が拡がっていくことで,よりいろいろなビジネスが拡がっていくことも考えられると思っています。今回の民間移管はまだ試行的に始めているところでありますが,それによって,より層が拡がっていくということで,我々としては,そういった動きを加速させていくことが重要かと思っております。
また,続橋委員からもご指摘がありました万博の利用ではないですけれども,やはりそういった大きなことも活用しながら,政府だけの予算ではなく,産業界,あるいは,いろいろな可能性を活用しながらやっていくこともご指摘のとおりかなと思っております。そのあたりは引き続き検討していきたいと思います。

【佐々木センター長(JAXA)】 嫦娥4号ですけれども,中国は,独自で通信衛星を上げています。NASAが協力したのは,我々が知っている範囲では,周回衛星から撮影をして,どこに降りたかを公表したというのはありますけれども,予算を使って特別に援助したというのは,組織としてはないと考えています。あとは,サイエンスの研究者が参加しているということです。
昨今の状況としては,観測結果として,Natureに科学系の論文の発表が始まっているところです。

【藤崎主査】 一通り各委員からご提起をいただき,お答えもいただきました。先ほど少し申しましたように,なかなか難しい状況の中で進んで行かざるを得ないのでございますが,かといって静止しているわけにもいかないので,やはり情報をできるだけとっていただいて,そして,計画的なところに日本が入っていくということを,ぜひ引き続きご努力いただきたいと思います。
牧島先生,どうぞ。

【牧島第一主査代理】 ISSの今後の利用の方針について,皆さんからご発言があったように,民間に移していくことはもちろん結構だと思いますが,もう1つ2つ,別の視点としてJAXAに検討いただきたいことがあります。
例えば,我々がGatewayに重点を移していっても,小型衛星の放出の例のように,Gatewayでは非常にやりにくく,ISSの方が適しているというものがあると思います。そうしたテーマを挙げていけば,Gatewayができてきても,やはりISSは大事だという主張が強化できると思います。
もう一つ,こういう場合には,非常にチャレンジングで価値が高いけれど,リスクが高いため,これまでは選定の段階で落とされてしまったような課題を拾い上げて,実施するという発想がありえます。リスクとは,事故が起きるという意味ではなくて,実験してうまく成果が出るかわからないという意味です。リスクは高いが,成果が出たら非常におもしろい面があるという,挑戦的な課題を拾い上げるという方針です。
先ほど資料30-2の5ページで, ISSの継続利用のためにはあらゆるオプションを想定し検討を進めると書いてありますが,さすがにこれでは一般論すぎるので,Gatewayを進めながら独自にISSを使うときには,的を絞ったセールスポイントを見つけていくことが重要と思います。今日お答えいただく必要はありませんが,ご検討ください。

【藤崎主査】 ありがとうございます。
今,先生も少しお触れになりました民間との関係につきましては,民間ということをよくいう傾向はございますけれども,他方,特に日本におきましては,費用対効果がかなり短期的に上がってこないと,なかなかできない部分があります。そこを国家のプロジェクトとしてやっていくという側面もございますから,ISSも含めまして,やはり民間ができないところを相当国が補完してという,これまでの文科省,JAXAの方針は維持していただきつつ,ぜひお願いしたいと思います。
文科省,あるいはJAXAから何かございますか。

【若田理事(JAXA)】 牧島委員のコメントで一言。地球低軌道に関しては,民間の利用が拡大していくという方向になっていくかなと思いますけれども,同時に,アンカーテナンシーといいますか,国は研究基盤としての地球低軌道の利用はずっと続けていかないといけませんし,X線天文観測のMAXIであったり,CALETであったり,世界の最先端の科学的成果というのは,「きぼう」を使った利用から出てきております。そこは我々がこれまで獲得した技術,お家芸みたいなところもありますので,確実に継続していく必要があって,それで国際的なプレゼンスが維持できると思いますので,民間利用と国としての研究基盤のバランスをきちんと考えていく必要があるかなと思います。

【藤崎主査】 では,以上で第30回の委員会を終了したいと思います。どうもありがとうございました。

(了)
 

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