宇宙開発利用部会 国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会(第29回) 議事録

1.日時

平成31年4月19日(金曜日) 15時00分~16時30分

2.場所

文部科学省 15階特別会議室

3.議題

  1. 国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会の設置について
  2. 国際宇宙探査を巡る国内外の動向について
  3. 月着陸探査活動のJAXAにおける検討状況について
  4. その他

4.出席者

委員

主査(専門委員)              藤崎 一郎
第一主査代理(専門委員)        牧島 一夫
専門委員                   倉本 圭
専門委員                   古城 佳子
臨時委員                   知野 恵子
専門委員                   中村 昭子
臨時委員                   西島 和三
専門委員                   向井 千秋
臨時委員                   米本 浩一

文部科学省

研究開発局長                             佐伯 浩治
大臣官房審議官(研究開発局担当)                岡村 直子
研究開発局宇宙開発利用課長                   藤吉 尚之
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長         倉田 佳奈江
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室課長補佐    原 真太郎

(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA))
理事                                   若田 光一
理事補佐                                五味 淳
国際宇宙探査センター長                      佐々木 宏

5.議事録

(1)国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会の設置について

【倉田室長】 それでは定刻になりましたので,ただいまより,国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会の第29回会合を開催させていただきたいと思います。
まず初めに資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第記載のとおり配付させていただいております。不足等ございましたら,事務局までお申しつけください。
続きまして,議題1でございます。まず,本日は第10期の科学技術・学術審議会が発足してから初回の会合となります。本小委員会の設置につきましては,昨日の宇宙開発利用部会におきまして,資料29-1のとおり決定しております。委員につきましては,前期から変更ございませんので,委員各位の先生方におかれましては,今期も引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
続きまして,主査の指名についてでございます。宇宙開発利用部会の部会長より,本小委員会の主査を藤崎委員にお願いする,ということで指名いただいております。この後は主査に議事進行をお願いいたしたいと思います。

【藤崎主査】 どうも,藤崎でございます。引き続きまして主査を務めさせていただきます。皆様には引き続きご協力をお願いして,楽しくかつ充実した議論にしていきたいと思います。よろしくお願いします。
前期と同様,第一主査代理は牧島先生,そして角南先生に第二主査代理をお願いしたいと思っております。

(2)国際宇宙探査を巡る国内外の動向について

【藤崎主査】 国際宇宙探査をめぐる国内外の動向ということで,事務局の倉田室長とJAXAから説明をお願いいたします。

文部科学省倉田室長より資料29-2-1に基づき説明。
JAXA佐々木国際宇宙探査センター長より資料29-2-2に基づき説明。

【藤崎主査】 今までの文科省,JAXAのご説明につきまして,何かご質問,ご意見があれば各委員からお願いいたします。

【向井委員】 説明してくださいましてありがとうございます。現状がわかりました。我々委員の立場からすると,JAXAにとって,あるいは文科省にとって,何をいつごろまでに議論すればいいのか,提示いただけると非常に考えがまとまりやすいと思うのですが。情報はいただいたので,我々の役割を教えていただければと思います。

【倉田室長】 まずGatewayに関しましては,アメリカでは2022年から電気推進エレメントを打ち上げるということで,年内には何らかの形で国際合意をしながら,来年ぐらいから開発協力も,という見通しです。欧州も,今年の11月のESAの閣僚会議で参画を図るということを表明しております。そういった流れの中で,日本も遅れることなくという視点も含め,もちろん宇宙政策全体の中でこの宇宙探査をどう進めるかという議論になってまいりますので,そのあたりは宇宙政策委員会とも調整をしながら,というスケジュールになってくるかと思っております。
また,後ほどJAXAからも説明がありますが,月極域探査につきましては,まだインドとの技術的な検討の段階ではございますけれども,やはり先ほどの資料で私からご説明させていただいたように,各国をめぐる月探査の動向が激しくなってきておりまして,特に月の極域あるいは水資源をめぐる探査の動きというのが活発になってきております。そういった中で,できるだけ遅れることのないよう,いつから開発に移っていくか,これからご議論させていただきながら進めていきたいと思っているところです。
以上です。

【藤崎主査】 どうぞ,知野委員。

【知野委員】 今回の宇宙会議でのペンス副大統領の発言を受けて,NASAは近日中に計画を見直すとありますけれども,この近日中というのはどれぐらいの時期でしょうか。

【倉田室長】 こちらも報道ベースではございますが,まずは今月の末,あるいは5月の頭に議会で何らかの報告をするのではないかというのが,アメリカでは報道されています。また,そういったことをNASAもインタビューで答えたという報道がございます。現在議会は来週ぐらいまで休会中とは聞いておりますが,その議会の休会が明けて何らかの動きがあるのではないかと注視しています。もちろんNASAも政府内での調整などいろいろあるかと思いますので,そういったところも注視していきたいと思っています。

【牧島第一主査代理】 先ほどJAXAから,国際宇宙探査ワークショップやシンポジウムの報告がありました。私が聞き落したのかもしれませんが,今後これをどういうふうに発展させていくか,そのあたりの方針があれば,お聞かせください。

【佐々木センター長(JAXA)】 それぞれのミッションに対して,今,提言をいただいております。もう既に計画に取り込んだものもありますが,引き続き,例えば月極域の探査において,どういうサイエンスができるかといったご提案をいただいていますので,それを取り込むようにして,プロジェクトをより価値あるものにしていきたいと思っております。

【牧島第一主査代理】 このシンポジウムは,例えば毎年開催するというような計画なのですか。

【佐々木センター長(JAXA)】 はい。常に進捗も踏まえて,またいろいろなフェーズで定期的に開かせていただきたいと思います。

【藤崎主査】 ほかの委員の方々,いかがですか。
もし,特にございませんでしたら,次の議題「月着陸探査活動のJAXAおける検討状況について」に移り,最後にもし,まとめてご意見があれば皆様方から何かおっしゃっていただくということで。
では,次の議題をよろしくお願いします。

(3)月着陸探査活動のJAXAにおける検討状況について

JAXA佐々木国際宇宙探査センター長より資料29-3に基づき説明。

【藤崎主査】 ありがとうございました。こうやって月の開発というか探査を進めていくことになったときに,規範については1967年の宇宙条約は一応あるんですけれども,その後の月協定にはほとんど誰も参加しなかった。この前のISEFの東京会議では,国際的な規範について少し議論していくべきである,という日本の主張が宣言にも入っていました。このあたりで少しイニシアチブを日本としてとっていくというような議論は考えられるのか。宇宙条約という50年前の条約で足りるということでいいのかどうか。あるいは国連等を使ってそれをもう一回確認する等,ちょっと規範の問題はどうなっているのかということで,東京宣言から後のフォローアップをお聞かせいただければと思います。
ほかの委員の方々,今のJAXAのご説明について何か。西島委員。

【西島委員】 期待される成果となっていますけれども,技術的観点とか国際協力というのは,月に行って作業をするということであれば,それは必要だと思うのですけど,科学的観点ということが,おそらく重要なのですけど,どうしても国際宇宙ステーションの2024年を考えると,科学的観点というのがどこまで,この先,つまり月においてどこまで考えているのかというのがまず一点聞きたい。それから,戻ってしまうのですけど,カナダのGateway参画表明の中で,大統領が科学者に対し,「地球上ではできない最先端研究を行う機会を提供する」とされているし,科学経済開発大臣の「地球上の課題解決のため宇宙技術の利用及びスピンオフ」という発言は,カナダの国民や研究者に対するかなり先のことを見ているというふうに思います。それに匹敵するものが,Gatewayでも,月でもいいのですけど,日本ではどこまで議論されているのか,ちょっと教えていただけますか。

【藤崎主査】 ほかに委員の方々いかがですか。
牧島先生。

【牧島第一主査代理】 インドとの共同ミッションというのはたいへん良いことだと思いますが,政府レベルでこういうものが決まっても,それがスムーズに運ぶかどうかは,現場レベルでどのぐらいお互いに相手をよく理解し,腹を割って仕事ができるかによると思います。JAXAでは比較的,定期的な人的交流のようなものを何か考えておられるのか,お聞かせください。

【藤崎主査】 米本委員。

【米本委員】 関連してインドとの協力における日本の立ち位置について質問があります。インドが主導するのかどうかによって,役割分担する日本の成果の出方が違うと思います。その辺をどのようにお考えでしょうか。それから,予算規模的に,全体額と,インドと日本の比率も教えていただけないでしょうか。

【藤崎主査】 古城委員。

【古城委員】 月探査をめぐって各国の動向が非常に活発になってきているということでした。中国が月の裏側に着陸したということですけれども,そこで得られた,科学的に基本的なデータとかですね,そういうのはほかの国と共有はされているのか,それとも全くされていないのか,ちょっと教えていただければと思います。

【藤崎主査】 ありがとうございます。では,ここでちょっと切りたいと思います。
先ほどの私の発言を補足しますと,アメリカがどんどん自分だけのことをやっていくことを,我々はどんなふうに見ていくかということが少し気になったものですから,ああいう発言をいたしました。
それでは先ほどの委員の方々の発言につきまして,文科省,JAXAにお答えいただければと思います。

【倉田室長】 まず藤崎主査よりご指摘がありました,ISEF2のフォローアップの観点でございますが,例えば月をはじめとする宇宙資源に関して,法的な観点で検討するため,内閣府にもワーキンググループができまして,昨年の6月ぐらいに一度論点を整理してございます。今後もこういった国際動向,あるいは今,ハーグで,政府レベルの会合ではないんですけれども,ソフトロー的にいろいろな産学官の関係者が集まってどういうあり方があるかというワーキンググループを設けてございます。そこに現在JAXAからもオブザーバーとして参加し,そういうことを通じて日本としても情報収集などしながら,内閣府とも連携して今後の法的な側面も含めて議論をしていくものと思っております。
また,先ほどのカナダの例ではないですが,ワークショップでも,地球の課題解決に向けた,月,あるいはGatewayの中での研究についても,報告があったと記憶しております。詳細はJAXAからも報告があるかと思います。
また先日,例えば探査ハブなどでJAXAが月での無人施工技術のような,無人で重機を動かし,それが地球上の課題も解決するということで,そういった形での取り組みは既にされていますけれども,そういった観点で我々も引き続き検討を進めていきたいと思っております。
また,インドとの協力の考え方につきまして,現在は対等な立場ということでありますが,インドが主導ということではなく,日本がかなり主導するような形でやってきているものと思っております。予算規模についてはまさに今,検討中でありますが,そう大きくならない規模でほぼ対等な金額になるように調整を進めています。もちろん,それぞれの国でつくると,人件費の問題などもありますが,現在,例えば着陸機を日本がやるとなりますと,それなりの金額がかかるところをインド側にやっていただくことで半減できる,そういったメリットがあると思っております。
また,中国から月裏側のデータについては,まだあまり出てきていないところだと思いますが,一方で,中国の「嫦娥」については国際協力でつくった科学観測機器がいくつか搭載されております。例えば,協力相手になったドイツとか,そういうところにはいろいろなデータが行っているような報道もありますので,まずは協力したパートナーにデータが提供され,今後,論文等を通じてデータが出てくることもあるかと思います。JAXAからも詳細な報告があるかもしれません。
以上です。

【佐々木センター長(JAXA)】 それでは私から補足説明させていただきます。
西島委員からありました科学について,この提言にいろいろと書いていただいておりますけれども,特に惑星科学の観点でいいますと,月での水の由来,それから月の内核といったところが特に中心となって,サイエンスを当面進めるということになります。あわせて,Gatewayも含めて,有人の居住の観点でのいろいろなサイエンス,もしくは技術開発といったものが,次に来るといった形になろうかと思っております。当面は人間がすぐに行って何かをするということではないので,まずは惑星科学の観点での地球や月の成り立ち,それから水,生命の由来といったところが,中心となるかと思っております。
それから,牧島委員からお話がありましたインドとの関係ですけれども,現状かなり頻繁に出張して会合で議論させていただいていますが,ビザの関係でなかなか向こうが日本に来ることは少ないという現実がありまして,そういう面で,多くは我々が行くことになろうかと思います。まだ私案ですけれども,本格化する段階では駐在員も含めてきちんと直接会って話せるようなチャンネルをつくりたいと考えております。
それから,米本委員からの技術の件ですけれども,やはり対等でいろいろな交流があるとは言いつつも,全てがオープンにはできないところがありまして,こちらとしてもいわゆる機微な技術については出せませんし,その辺は向こうも同じような事情があると思っています。ただ我々としては,最終的には日本で打ち上げることになっていますので,全く見えないということではなくて,最終的には日本に持ってきてインテグレーションをするという観点では,我々のほうが情報を受け取りやすい構図にはなっているかと思っています。
それから,古城委員からの中国の話につきましては,倉田室長からお話がありましたように,段階的に出てくるものだと思っていまして,着陸してしばらくの間は関係者だけで共有されていて,段階的にサイエンスのデータが出てくるのだろうと思っています。ただ月面の,特段難しい,私が言ってはいけないのかもしれませんけど,難しいところにおりたわけではないので,すごくびっくりするような情報というのはまだ来てないです。

【藤崎主査】 ほかの委員の方々,いかがでございますか。
知野委員。

【知野委員】 インドとの協力に関して,アメリカのNASAとの協力を比較されていて,「JAXAの位置づけは『Provider』となり,技術開示がされないなど情報共有の点で不都合がある」ということですけれども,情報が共有されないということで具体的にはどのような不都合が生まれているのでしょうか。

【藤崎主査】 ほかの委員の方々,いかがでございますか。次のラウンドで大体終わりかなと思いますので,もしご質問,あるいはご提起があれば。
倉本委員。

【倉本委員】 技術的な話ですけれども,極域探査の狙いとしては,永久影の冷たいところにある土壌の中にどれだけ氷があるかを探ることです。一方で,エネルギー源は日照を使うということで,日照域と永久影が隣り合っている場所を狙うことになると思います。そのあたりのご説明をいただけますか。戦略的にどういうスタンスなのか。

【藤崎主査】 ほかの委員の方々,よろしゅうございますか。もしなければ,今の知野委員と倉本委員のご質問にお答えいただければ。

【佐々木センター長(JAXA)】 どのような不都合がというのは,まだ具体的に月面ミッションにおいて調整しているわけではないので,米国とはそういうことはないのですけれども,過去の経験から言いますと,技術的な点に関しては,インターフェース以外は基本的に技術情報を開示しないというのが米国の考え方です。特に探査機,衛星も含めてですが,その中で我々が新たな知見を得るような情報提供はされないというのが基本的な理解です。それはインドとChandrayaan-1で協力した際にも,同様の経験をしていると言われていますので,お互いにそういうことで話はしました。そういう経験はあるということでございます。ただ今回,今後どうなってくるかはまた別の話だと思いますので,過去はそうでしたということです。

【知野委員】 追加で,欧州との共同計画を考えていらっしゃいますけれども,欧州に関しても同じ問題が出てくるのでしょうか。

【佐々木センター長(JAXA)】 私だけの経験かもしれませんが,NASAとの技術調整よりは,ESAとの技術調整のほうが,具体的に多くのデータ開示をしていただいていると思っております。HTVの開発のときも,ESA,ATVとの協力というのは非常に密にできて,ヨーロッパの機器開発を含めた協力も十分できているというふうに私は思っています。
あと,倉本委員からご質問があった場所ですけれども,おっしゃるとおりで,日照域に降りてすぐそばに永久影がある,といったところを探して降りなければならないという認識で,したがってその場所というのは非常に限られています。そういう意味では,早く行かないといいところがなくなってしまうので,早くそこにたどり着くことが重要だと思っております。

【藤崎主査】 ほかにいかがでございますか。
以上でございましたら,今後の進め方について倉田室長,お願いできますか。

【倉田室長】 先ほどの議論で向井委員からスケジュール感についてご質問がございましたけれども,例年でございますと,5月,6月の宇宙政策委員会で,年末の宇宙基本計画工程表の改訂に向けた中間まとめについて議論がございます。今後,この国際宇宙探査に関する取り組み,具体的にはGatewayの考え方,あるいは先ほど説明のありましたインドとの月極域探査,そういったものについて,引き続き国際動向を見ながらこちらの委員会でもご議論いただきまして,検討状況ですとか,進捗状況を,内閣府での議論に反映することができればと思っております。
また,その後は概算要求の上,年末の工程表の改訂に向けて,そのときの状況も見ながら,ご相談の上,進めていければと思っております。そういった中間まとめと年末の工程表という,日本での政策決定における大きなマイルストーンが二つございますので,そういったものを意識しながら議論を進めていただくことができればと思っております。そういう中でこちらの委員会でもご見解をいただきたいと思っております。

【藤崎主査】 以上で第29回国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会は終了としたいと思います。どうもありがとうございました。

(了)

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