宇宙開発利用部会 国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会(第27回) 議事録

1.日時

平成30年11月6日(火曜日) 10時00分~11時30分

2.場所

文部科学省 3階特別会議室1

3.議題

  1. 国際宇宙探査の方針(地球低軌道利用の在り方を含む)について
  2. その他

4.出席者

委員

主査(専門委員)           藤崎 一郎
第一主査代理(専門委員)     牧島 一夫
第二主査代理(委員)          角南 篤
専門委員                  金山 秀樹
専門委員                  倉本 圭
臨時委員                    知野 恵子
専門委員                  続橋 聡
専門委員                  中村 昭子
臨時委員                  西島 和三
専門委員                  向井 千秋
臨時委員                  米本 浩一

文部科学省

研究開発局長                             佐伯 浩治
大臣官房審議官(研究開発局担当)                岡村 直子
研究開発局宇宙開発利用課長                   藤吉 尚之
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長         倉田 佳奈江
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室課長補佐    原 真太郎

(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA))
理事                                      若田 光一
理事補佐                                五味 淳
国際宇宙探査センター長                       佐々木 宏
 

5.議事録

(1)国際宇宙探査の方針(地球低軌道利用の在り方を含む)について

【藤崎主査】 時間になりましたので,国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会の27回会合を開催いたします。本日の議題は宇宙探査の方針についてでございますけれども,前回のソユーズ宇宙船での異常事象等につきまして,前回の小委員会以降の状況をJAXAから御説明よろしくお願いします。

JAXA若田理事より資料27-1に基づき説明。

【藤崎主査】 この再突入,小型回収カプセルというのは,今回初めてやるわけですか。

【JAXA(若田理事)】 はい,小型回収カプセルの運用は今回が初めての技術実証でございます。

【藤崎主査】 本件のソユーズ,それから,「こうのとり」について,どなたか御質問,御意見等ございませんか。
どうぞ,角南委員。

【角南第一主査代理】 すごいことですね,再突入して,パラシュートでおりる様子が映像で放送されるのですか。

【JAXA(若田理事)】 かなり広い海域でございますので,直接帰ってくるところの映像を取得できる可能性はほとんどないと思っております。搭載機器からのテレメトリーデータといったものは後日,何らかの形で成果として出させていただきます。
それから,回収船の作業の状態,実際に海上にあるカプセルを回収するようなところは映像として記録しますけれども,実際に飛んでいるところというのは,難しいと思います。

【藤崎主査】 なかなか自撮りできないですね。

【JAXA(若田理事)】 そうですね,近くに一緒に飛行する飛行体があればそういうことはできると思うのですけれども,海上ですので難しいと思います。

【藤崎主査】 ほかいかがでございますか。牧島先生,どうぞ。

【牧島第一主査代理】 ソユーズのブースターのうち1個が2段目に衝突したということですが,その事象から実際にカプセルが噴射して離脱するまで,どのぐらいの時間だったのでしょう。またこれは,宇宙飛行士が自分で判断してスイッチを押すのですか。

【JAXA(若田理事)】 二つ目の御質問から答えますと,ソユーズ宇宙船の緊急脱出システムというのは,クルーは操作できません。これは今回自動シーケンスでそういったことになったと理解しております。本当に短い,1秒とか2秒とか,そういう時間だったと思いますけれども,正確な情報は把握しておりません。

【牧島第一主査代理】 では,自動的に離脱カプセルが作動したということですか。

【JAXA(若田理事)】 はい。
それから,もし発射台で火災があったときは,地上からの指令でエスケープもできます。基本的には自動若しくは地上からの指令でこのシステムは動くようになっています。

【藤崎主査】 全く知らないので聞くのですけれども,こういう組立作業においてセンサーを変形させたというのは,何か今後とも起こりそうな話だと思います。最終的なチェックというのは,いろいろな完成品に,自動車等でもありますけれども,ちゃんとふたが開くかどうかいう,一つずつ全部チェックは行われるのでございますか,それとも,そこはロシアでは必ずしも行われてないということがあるのでございますか。

【JAXA(若田理事)】 今回,その事故調査レポート自体がまだ公開されてないというところもございまして,今御質問いただいたようなところというのは,我々としても確認したいところでございますけれども,今後,NASAを含めた関係国,それからロシアとの調整の中で,そういった原因の究明というか,再発の防止のための確認を進めていきたいと思っております。今,藤崎主査がおっしゃられたことも含めて確認してまいりたいと思っております。

【藤崎主査】 ありがとうございました。
もしほかにございませんでしたら,本日の議題に入りたいと思います。
議題1は,国際宇宙探査の方針(地球低軌道利用の在り方を含む)についてでございます。
議論の進め方について,倉田室長からお願いします。

【倉田室長】 本日の進め方でございますけれども,まず最初に,前回のこちらの小委員会で頂きました御質問・御意見,特にISSからどのようなLessons Learnedがあったのか,どのように今後活かしていくのか,ISSとゲートウェイとの関係,あるいは違い,月面で行う活動とゲートウェイがどのように関係していて,ゲートウェイの影響を受ける部分とそうでない部分,また,今後の国際宇宙探査の活動に関しまして,特に民間サイドにどういうインセンティブがあるのか,そういったところをもう少し分かりやすくしたほうがよいのではないかといった御意見を頂いたかと存じます。これらにつきまして,JAXA及び事務局から補足の説明を最初にさせていただいた上で,メールでも事前に御相談をさせていただきました中間まとめ案につきまして,まず事務局から簡単に御説明をさせていただき,再度,御意見を賜れればと存じます。
よろしくお願いいたします。

【藤崎主査】 それでは,JAXAから。

JAXA佐々木センター長より資料27-2-1に基づき説明。
倉田室長より資料27-2-2に基づき説明。

【藤崎主査】 ありがとうございました。
前回,ISSとの比較等についていろいろ議論がございましたので,また各委員に御意見あるいは御質問をお願いしたいと思いますが,最初に。先ほどの御説明ですと,ISSにおいては,無重力状態を使った宇宙医学やタンパク質結晶等の科学実験も行いましたが,今度のゲートウェイにおいては,宇宙医学ですとか,民間に還元されるようなタンパク質結晶ですとか,そういうような実験はあまり行わない,ここは単なる宇宙探査への拠点であって,成果の地上への還元は行わないという理解なのでしょうか。それとも今後,また別のことも出てくるのでしょうか。そういう点も後でまとめてお答えいただければと思います。
ほかの先生方,いかがでしょうか。
どうぞお願いいたします,西島委員。

【西島委員】 今回,ISSとゲートウェイの違い,資料27-2-1の6ページの図の中にイメージとして大変よくまとまっていると思います。
最初に,4ページのところにISSから得られた教訓ということで,「現在,JAXAとして重要と考えている主な項目」とある,この「現在,JAXAとして重要と考えている主な項目」というのは幅広でしょうか,それとも,ISSに対して,それともゲートウェイに対してなのでしょうか。「現在,重要と考えている主な項目」は何に対してなんでしょうか,まず確認したい。
それと,それとも関係するのですが,1番と5番に「早期の」という言葉が書かれていますが,この「早期の成果創出」とか「民間企業の早期の参画」というのは,もちろん民間企業というのは創薬とかいろいろあると思うのですが,この「早期」というのは,あまり前面に出すと非常に近いものに結果を求めて,国民はそういう早期の成果に慣れてしまって,何か次々出てくるのではないかと思うものです。しかし,私たち民間企業からすれば,これだけの投資をした国家的な宇宙事業において,JAXAが「早期に成果を出す」などと言う必要はなく,国として長期的な視野に立った,非常に波及効果の高い基礎・基盤的な大きな成果を狙うべきと思っています。従って,この「早期」というのをあまり書き過ぎると,自分の首を絞めることになるのではないかなと思います。日ごろから民間企業にいる立場としては,成果を出す時期をよく問われておりますので,ISSは非常に長期でものを考えている,腰を据えたものだと,ひとつ示していただきたいなと思います。

【藤崎主査】 その御意見,よく分かります。
牧島先生。

【牧島第一主査代理】 資料27-2-2の一番下に,「大学・JAXA」とピンク色で書いてあるのですが,これだと取ってつけたようで,上の黄色いところとほとんどつながりが見えません。唯一,右の黒い矢印で示された「共通インフラ」というところだけで接点があるように,誤った印象を与えてしまいます。
この小委員会では,中間とりまとめ作成などの中で,基礎研究と国際宇宙探査の関係をよく整理してきました。基礎研究は独自の動機で行われるけれど,その成果や技術はできる限り国際宇宙探査にもパイロット役として使ってもらえるのがよい,また逆に,国際宇宙探査ミッションが制定されたときには,基礎科学の研究者もそれを是非利用すべきである,こうして互いにwin-winの関係を作ることが大事である,という立場で,この小委員会は活動してきたと思っていますので,そうした相乗効果が分かるような絵に修正していただければと思います。

【藤崎主査】 知野委員,どうぞ。

【知野委員】 資料27-2-1の3ページ,4ページのISSから得られた教訓なのですけれども,特に4ページ目,「日本として教訓をまとめる段階と考えている」とありますけれども,その教訓というのは「JAXAとして重要と考えている主な項目」,これが教訓だという御認識なのでしょうか。教訓のイメージがよく伝わってこないので,具体的にどういうものを教訓と考えているかを教えていただければと思います。

【藤崎主査】 分かりました。
米本委員お願いします。

【米本委員】 資料の5ページ目について,ISSは宇宙飛行士の滞在人数が6人で,ゲートウェイは4人とあります。ISSでは年間2,190日分の食料,消耗品が備蓄されていますから,今回ソユーズの事故があっても,次に60日以内に打ち上げるので,多少は不都合があってもISSの運用に関しては問題ないと思われます。
一方,ゲートウェイでは40人日から120人日分の備蓄しかありません。4人で割れば一人当たり10日から30日分です。今回ソユーズで事故が起こった後,その2か月後に代替機を打ち上げています。ゲートウェイに係留した宇宙船に故障等の問題が生じた場合,2か月後の代替機の打上げでは,食料等の備蓄が不足するのではないでしょうか。このような観点から,NASAのゲートウェイ運用の考え方をお聞きしたいと思います。
それから,資料の6ページについて,私が前から心配している点について指摘があります。当初より,ゲートウェイは,ISSに参加の5局による国際協力で進めると説明を受けています。しかし,この資料になって初めて,「パートナーシップの更なる拡大の可能性」という表現に変わりました。ゲートウェイは,ISSに比べたら6分の1という小さい規模で運用を開始しますが,火星を目標にした国際宇宙探査の中継基地として発展するにつれて,国際共同パートナーはどんどん増えることは確実です。そうなっても日本が国際的な立ち位置を確保できるのか,またどのような想定をしているのか考え方をお聞きかせ下さい。
次に,資料9ページにおいて,SLIMは着陸の技術実証機として期待されておりますが,2023年にインドとの協力関係で実施する月極域探査では技術的に何を目指すのか,更には,2026年のESAとカナダとの国際共同プロジェクトであるHERACLESでは,どのような技術を分担するのか,日本が目指す技術戦略のシナリオが不明です。最初は無人のサンプルリターン機しか積まないというゲートウェイが,いずれ有人の月面着陸機に置き換わる時に,日本が何を提案できるのか,全体の長期的なシナリオが欲しいところです。
それに関連して,まだ御説明頂いていない資料27-3-1まで飛んでしまって申し訳ないのですが,「(3)国際協力による月への着陸探査活動の実施」において,なぜHERACLESが既にESAやカナダとの協力関係で計画が具体的に進んでいるにも関わらず,インドだけ固有名詞で記載されているのか御説明いただきたいと思います。
最後は,資料27-2-2についての質問です。民間の技術獲得のシナリオにおいて,宇宙輸送に期待しての将来像が描かれていますが,その範囲は限られています。なぜ官主導の宇宙輸送がないのか,その理由をお聞きしたいと思います。

【藤崎主査】 ありがとうございます。
今の米本委員が言われたインドやカナダとの協力について,どのようなことを技術的に,あるいは資金的に分担していくのかとか,獲得していくのかというところを,きちんとした形ではなくても,少し御説明いただくと明確になるのかもしれませんね。
それでは,ここでとりあえず切りまして,まとめてお答えいただきたい。

【JAXA(佐々木センター長)】 JAXAからお答えします。
藤崎主査からのゲートウェイの利用方法の御質問に対してでございます。今,ゲートウェイで実験しないと決めているわけではなく,例えば無重力環境に加えて放射線環境が地球周回軌道に比べて非常に影響が大きいという中で,これに関しての研究は非常に注目をされているところです。このように,研究・利用という形でゲートウェイを使うという可能性はあると思います。ここの資料で整理させていただいたのは,純粋に無重力環境だけであれば,やはり輸送コストの観点を考えると,ISSのほうが利用には向いているだろう,という趣旨でございます。
それから,西島委員から御質問のあった,この教訓は探査に対してなのか,ISSに対してなのかという点,こちらはあくまでも探査への教訓です。国際協力で探査を進めるに当たって,ISSで得たものの中から,現在,探査に向けて検討,または反映しなければいけないものをリストアップしているところです。これは網羅的にやっているわけではなく,2009年当時から整理されてきたものからピックアップしつつ,運用で得た教訓も加えているという状況ですので,これについては引き続き整理をさせていただきたいと思っているところです。
それから,「早期」という言葉,使い方がよくなかったかもしれませんが,「早期に成果を創出」と言っている趣旨は,始めてからすぐに成果を創出するのではなく,20年後になって実験を開始して,それから成果創出に向かうというようなことではなくて,もっと手前の段階でいろいろな成果創出の機会を確保するという趣旨で「早期」と言っています。
それから,「民間企業等の早期の参画」と言っているのも,早期に何か実験をするというよりは,まず計画段階からいろいろな民間企業の意見を入れていくという趣旨で書かせていただいていまして,早く参加してもらって早く成果を出せと言っている趣旨ではございません。その辺は御理解いただければと思います。
それから,知野委員の御指摘ですが。

【知野委員】 一般に教訓を得たという場合は,例えばこういうことが不足していたから次はこうしなければいけないとか,何かそういうことだと思うのですが,ここにあるのは教訓というイメージとは少し違うのではないでしょうか。例えば,「民間企業の早期の参画」にしても,最初から民間企業に声をかけずに国だけで進めていたから無理があったり,不便なこともあったので,今後は最初から声をかけなければいけないとか,何かそういう形で教訓を示していただかないと。これは項目が並んでいるけれども,一体何が教訓なのかが分からないし,むしろISSの教訓がないような印象を与えるような書きっぷりになっていると思いますので。

【JAXA(佐々木センター長)】 説明が悪かったかもしれませんが,こちらは項目しか挙げてないので,はっきりと書いていませんが,それぞれISSの反省点といいますか,そういうものがあった上で探査の計画に反映すべきというところと,一方で,結果的にかもしれませんが,ISSでこういうことがよかったというところもある意味教訓になるだろうと思いまして,その2種類のものが混在しております。教訓として反省も踏まえて整理をさせていただいています。それについては今後,きちんと委員会のほうで御報告をさせていただければと思います。
それから,ゲートウェイの40人日とか120人日の食料・消耗品というものが大丈夫かという御質問,現在,ゲートウェイの計画は,大半の食料を大きなOrionという宇宙船に搭載して持っていくのと,事前に食料等は送っておいて,その前提で行くという形になっていまして,後から補給が来るのではなく,先に送って使うという計画になっていますので,食料等の不足には至らないと考えています。
それから,技術的なシナリオですが,9ページ目で書かせていただいていますが,先ほどまでの議論で,重力天体に関する技術として,離着陸技術とそれから表面探査技術,この二つの柱を指摘していただいているかと思っています。それを,やはりどちらかだけに絞るのではなく,将来の探査を見て両方大事だという観点で,まずSLIMの着陸技術というところを確立しようと。その次に,月極域探査におきましては,今度は表面探査を主に技術を磨きたいと思っています。
なぜインドかということもありましたけれども,インドは,来年早々に着陸ミッションを予定しております。例えば米国等になりますと,なかなか対等な関係にならないのですけれども,インドの場合は対等に進められるということもあって,我々としては表面探査技術を中心にインドと協力して進めることを考えています。ただし,SLIMでできなかった極域という地域,こちらは暗いとか,そういう条件がある着陸点ですので,そのあたりについては,SLIMで得た日本の着陸技術を発展させてインドに提供するといった調整を考えております。
その後に,2026年を目途にサンプルリターンをということで,こちらより前まではゲートウェイの進捗の影響を受けずにそれぞれの技術を磨くのですけれども,サンプルリターンは,ゲートウェイとのスケジュール調整が必要になります。SLIMの成果を確実に反映するタイミングで,着陸のミッション,着陸技術の最終的な蓄積を考えております。
これらの技術の成果を踏まえて,我々としては,次のステップ,ここには書いてございませんが,例えば有人を目指した離着陸の開発に進んでいきたいと,そのような技術的なシナリオを考えてございます。
それで,ESA,カナダと,なぜインドかというところがもう一つありまして,2020年の前半におきましては,ESAは常にロシア等との協力で進めております。我々としては,インドが特に月極域を中心に見ておりますので,目標が一致するという観点でも,ここでインドと組むと整理させていただいています。

【藤崎主査】 よろしいですか。

【JAXA(五味理事補佐)】 まだお答えしていないものがあったと思います。
最後の御質問で,官の輸送はないのかということですけれども,もちろん官の輸送はあろうかと思います。環境が整いましたら,民間さんにもお願いする部分はお願いしたいなというふうに考えてございます。
あと,国同士のパートナーシップは拡大していくと思います。ISEF2にも45の国・機関が参加いただいたように,今後ますます探査に関心を寄せる国は増えてくると思います。ほとんどのミッションは国際協力になっているのではないかと思っておりますので,日本がリーダーシップをとって,政策を進めていきたいと思います。
以上です。

【倉田室長】 それでは,事務局からも何点か補足で回答させていただきたいと思います。
まず,牧島委員からも御指摘いただきました,大学・JAXAが行う基盤技術の取組については,もう少し,取ってつけたような感じではなく,しっかりとwin-winの関係を作りながら,相乗効果を生じてきているという点は,御指摘のとおりかと存じます。少し絵も工夫して反映させていただきたいと存じます。
また,ISSからのLessons Learnedですが,こちらは事務局からの説明が不足しておりまして恐縮ですけれども,こちらは前回の小委員会で,やはりISSでの活動を一度総括して,その上で探査にもその教訓や反省,課題等を生かしていくべきではないかという御指摘を頂きました。こちらは1~2週間で総括できるような簡単なことではございませんので,今回の項目はあくまでも例としてJAXAから御提案いただいているものでございます。今後このような項目も含めて,数か月程度お時間を頂いて,JAXA,そして文科省でも一度整理をした上で,また来年こちらの小委員会でも御報告させていただく,そのような形をとらせていただければと思っております。
資料27-3-1にも,今後その総括をすべきである旨を書かせていただいておりますけれども,そのような形で今後の探査の取組につなげていくことにさせていただきたいと思います。教訓はもうこれだけだ,という資料ではないことで御理解いただければと思います。
また,民間との役割分担につきましても,やはり様々なビジネスが今後期待をされるわけでございます。その中で産業界とも会話をしながら,どういったビジネスが今後期待されて,その上でどういったところは官主導で行う必要があるのか,そういったところを対話をさせていただきながら,役割分担等を進めていくという意味も含めまして,このような図にさせていただいたところもございます。引き続きこちらも御意見を賜ればと思っております。
もしよろしければ,委員からも御指摘・御質問のありました,資料27-3-1を御説明いたします。

【藤崎主査】 資料27-3-1は後でまとめて議論させていただくとして,いろいろほかの委員の方からもし御提起があれば,特に
向井委員はこのISSの教訓の話を前回少し総括したほうがいいのではないかという御意見がございましたけれども,ほかの委員の方々も何かございましたら,ここで少しお話しいただいて,それで資料27-3-1に移りたいと思います。なければこれで資料27-3-1に移りますが。

【向井委員】 この時点では,先ほどの項目は知野委員の御指摘のとおりで,おそらくこれからこの項目に関してLessons Learnedに入っていただくと思います。特に私から指摘や質問は現時点ではありません。

【藤崎主査】 ほかの委員の方々,よろしゅうございますか。
米本委員。

【米本委員】 ゲートウェイの食料や消耗品等の備蓄の質問に対してお答え頂きました件で,いくら宇宙船のOrion自身に備蓄能力があるとしても,何十日分も持っていけるとは思いませんので,本来120人日分の食料や消耗品しか備蓄できないないゲートウェイに,やはり日本の宇宙飛行士は行かせることはできないというのが私からのコメントです。

【藤崎主査】 何か若田理事,ございませんか。

【JAXA(若田理事)】 今,米本委員のおっしゃっている,その安全の管理は非常に重要なところでございますけれども,宇宙船の運用の形態,例えばスペースシャトルは2週間の食料しかなくて飛んでいたというケースもありますので,そのミッションの中で当然安全を含めた上で適切な食料搭載量,そういったものを考えていく必要があると思っております。
それから知野委員,それから向井委員からも御指摘のありました,ISSからの教訓につきましては,ここに探査に適用すべき教訓といった形で項目でまとめさせていただいておりますけれども,当然,我々もそのLessons Learnedというのはかなり短いスパンでPDCAを回しております。インクリメントという,1年を4分割して,半年ごとにその利用の成果に関してきちんとそのLessons Learnedを学んで,次のインクリメントにつなげていくという形です。例えばその利用に関しましては,タンパク質の結晶成長みたいな実験というのは,定時性とか本当に高頻度でやっていかなければいけないとか,そういった教訓を生かして,「きぼう」利用戦略という形で実際にまとめて利用を行ってきております。
そういう形で,短いスパンでPDCAは回しておりますけれども,やはり「きぼう」の完成から10年を迎えるに当たりまして,その短いスパンで回してきました教訓を,総括する形でまとめる必要があるなと思っておりますので,それは今,倉田室長からもお話がありましたけれども,まとめたいと思っております。

【藤崎主査】 もしほかに。はい,米本委員どうぞ。

【米本委員】 若田さんからスペースシャトルを例に御回答頂きました。私が指摘しているフェーラーモードとは,ゲートウェイに係留されているOrionが何らかの故障等の問題があって,宇宙飛行士を乗せて地球に戻れないというケースを想定しております。その場合,宇宙船のOrionの故障等の問題を解決して,新たに別の宇宙船を仕立ててゲートウェイに向かわせないといけなくなりますので,それが日数的に一番クリティカルであると考えての指摘です。すなわち,一人当たり30日分プラスOrionの備蓄だけで宇宙飛行士の安全が守られるのかを疑問に思いました。スペースシャトル単独航行の場合は,フェーラーモードによっては地球に帰還すればよいし,あるいは軌道上に滞在して代替機の派遣を待っていたとしても,食料や消耗品の時間的な問題は少ないのではないでしょうか。もちろん,ISSに向かって航行し,ドッキング,係留されれば,その備蓄の問題はISSとの足し算で考えればよいことになります。このような考え方から,ゲートウェイの食糧や消耗品等の備蓄運用は本当に大丈夫なのかと疑問を投げかけた次第です。

【藤崎主査】 何かございますか。

【JAXA(佐々木センター長)】 一つだけ。ソユーズの打上げで帰れないのではなくて,帰る手段は,今ISSについているソユーズなので,それはいつでも帰るというのが今,宇宙ステーションの運用のルールになっています。したがって,その帰るソユーズ自体が機能しなければ,帰れないというのは純然たる事実です。それはおそらく,状況としては変わらないのではないかと思います。

【JAXA(若田理事)】 続けさせていただきますと,Orionがソユーズと同じように,ライフボートとしての機能も果たすという,基本的にはそういう方向で安全は確保できると思っております。スペースシャトルのときには,スペースシャトル自体がライフボートとしての機能を果たせないケースが,例えば耐熱材が損傷しているような場合にはありましたので,そのときには次の追加のスペースシャトルを打ち上げないとクルーがレスキューできないというシナリオは存在していたので,その辺の議論がありましたけれども,基本的にはソユーズにしてもOrionにしても,その乗っていった船で帰ってくるというのが前提になっていますので,それを維持できるように安全の確保を進めているという状況であります。

【藤崎主査】 それでは,事務局から,資料27-3-1,中間まとめについて,これまでの議論を踏まえた修正案を提示いただいておりますが,こちらのポイントと今後の段取りについて,倉田室長からお願いいたします。

倉田室長より資料27-3-1に基づき説明。

【藤崎主査】 こちらのレポートですけれども,まだこれからいろいろ皆様に御議論いただくのですけれども,もし極めて簡単にポイントを言うとすると,簡単な文書で3点に絞られて,一つ目は今後は月がまず対象になる。そして,月面着陸探査を中心に捉える。二つ目は,アメリカ提唱のゲートウェイがまず視野に入ってくる。こちらについては費用対効果を検討しつつ,宇宙飛行士のゲートウェイの建設参画とか,月面着陸の機会を確保できるように留意しつつ検討する。三つ目として,ISSについては,今後ゲートウェイとの費用の兼ね合いを見つつ,各国の検討状況を見て検討する。簡単に言うと,非常にいろいろございますけれども,こういう整理ですよね。どうでしょうか。

【倉田室長】 正にそのとおりに,現在はまとめさせていただきました。

【藤崎主査】 せっかくたくさんの記者の方がおられるので,そのポイントについて。御覧になればお分かりになりますけれども,もう1回確認させていただこうと。
皆様方,こちらについて,これからまたメール等では調整いたしますが,今ここでちょっと御議論をして,おっしゃっておいたほうがいいということがあったら,是非おっしゃってください。
向井委員。

【向井委員】 骨子はよくまとまっていると思います。ただ,宇宙ステーションですが,宇宙ステーションありきの思いで書かれているので,軸足を宇宙ステーションに置きすぎている書き方になっていると思います。現在の宇宙ステーションは, 2025年以降に延期したとしても,どこかで必ず終焉を迎えるので,宇宙ステーションは永遠ではないという観点からの記述を文末に入れておいたほうがいいのではないのかと思います。
つまり,国際宇宙ステーション利用に関しては,民間からの資金導入を期待し,国費は探査に移行する。国際宇宙ステーションのように低軌道の施設が今後も必要なのであれば,現在の宇宙ステーションのような大掛かりのものではなく,数回のドッキングで完成し,微小重力の科学利用を推進できるような2代目の宇宙ステーションを考えていく,くらいの項目を入れるべきと思います。現在の国際宇宙ステーションは終焉を迎えることを前提に,次の計画向かうビジョンを入れるほうが良いと思います。
以上です。

【藤崎主査】 牧島先生。

【牧島第一主査代理】 いま室長が言われた1ページ目の第1章,「はじめに」の(2)「我が国の国際宇宙探査の方針を巡る議論の背景」の最初の○のところが,ちょっと引っかかります。3行目に「ISS計画参画時から状況は大きく変化した」,次の次の行では「改めて打ち出し」と書かれています。これだと,当初の計画にはいろいろまずい点があったので,もう一遍仕切り直しをしようという風にも,誤読されてしまいそうな懸念をもちます。
ここはやはり,ISS計画に参加をすると同時に,独自の日本の宇宙開発戦略を遂行することによって,非常にプラスな結果を築いてきたといった,もう少しポジティブな書き方をしていただけないでしょうか。最後は予算獲得の話になるわけで,その時に関係者がみな胸を張って,これはすばらしいことだと思いつつ読み進められるような形にしていただきたいと思います。

【藤崎主査】 はい,角南先生。

【角南第一主査代理】 さきほど米本委員がおっしゃった点について,文章の中にインドだけが出ているので確認なのですが,これは例えばJAXAとISROの間でMOUみたいなものがあり,フォーマルな協議が存在しているのか。先日モディーさんがいらして,そういう中で外交上でもこれはきちんと議論され,2023年に向けて協力しましょうということが,どのレベルでのアグリーメントがあるのか。なぜインドだけかという点が説明されてないので,ほかに何かあるのか。技術的な話で協力するとか,インドが狙っているミッションとうちのミッションがたまたま合うので,という説明でいいのか。
また,これを一緒にやるとなったときに,進捗状況を見ながら予算的な処置をしていくとか,インドとの協力がうまくいきませんでしたというとき,それはそれでまた外交上大きな影響があるようにも思いますので,現時点でアグリーメントがどの辺にあって,だからこそ,あえてここにインドまで書いていて,ほかの国の名前が出てこないのか,その辺のところを聞かせてください。

【JAXA(佐々木センター長)】 まず,宇宙機関同士のISROとJAXAの間では,検討を進めるというアグリーメントを持っています。これは昨年から,トップはJAXA-ISRO間ですが,その下として月極域探査に関する技術検討の合意をしておりまして,これを継続してやっていくと。また,当然,開発まで決まっているわけではないので,開発をしますとまでは合意してないのですが,その手前までの検討を進めるという合意をしております。
この内容については,先日の日印首脳会談の共同声明にしっかりと書き込んでいただいて,両首脳が月極域探査に向けて検討することを改めて確認した,というふうに記述していただいていますので,ある程度認識をされていると思います。

【藤崎主査】 知野委員,お願いします。

【知野委員】 2点あります。
最初の1点目は,先ほどの,日本としてまずいところがあったようなネガティブなトーンという御指摘なのですけれども,全体を見ますと,ポジティブなトーンが出てきております。「状況は大きく変化した」と入れることは私はとても大事だと思います。「主体性・戦略性」という言葉もそうです。国際宇宙ステーションの立ち上がりからずっと取材してきた者としては,やはり宇宙ステーションに関しては,アメリカの都合によって遅れや変更が続いたりとか,いろいろな問題があったと思います。その当時まだ日本の宇宙開発が弱かった,弱い立場にあったからそういう状況になったというように私も見ておりますので,やはりこの間に参画することによって力もつけ,実績も生み,状況は変わったのだと,だから今度は主体性・戦略性を持ってという,そこはやはりはっきりと,今までとは違う,前とは違うのだということを書いたほうがいいと思います。
それからもう一つ,5ページ目のところの下から二つ目の○の費用対効果の最大化のところですけれども,これをそのまま読みますと,HTV-Xに関しては早期にその効果を享受できるようにということは,これは着実に開発することが重要であることはそのとおりなのですけれども,その後に続くHTV/H2Bについては確実な半減というふうにあります。当初聞いていたのは,HTV-Xに関しても費用はHTVの半減だということで,これを造ることによって費用は節約できるというようなお話でしたので,この書き方だとHTV-Xは別,HTVとH2Bが半分になるというふうにしか読めないので,ここは少し書き方の工夫が必要ではないかと思いました。
以上です。

【藤崎主査】 ほかの委員の方々,いかがでございますか。もうよろしゅうございますか。
それでは,文科省かJAXAから,今の御指摘について。

【倉田室長】 まず,5ページ目の下から二つ目の○は,知野委員の御指摘のとおりでございまして,こちらは誤記でございます。現在開発中のHTV-X,そしてH3での打上げによりまして,輸送単価の確実な半減を今目指しておりますので,こちらは修正させていただきます。

【藤崎主査】 JAXAはよろしいですか。

【JAXA(若田理事)】 向井委員から御指摘がありましたISSにいつか終焉が来るというのは,当然我々も認識しておりまして,やはりこれまでの経緯,各国の動向を見ましても,LEO利用がISSの後になくなるということはないと考えております。ですから,そのLEOの利用をどういう形で進めていくのが妥当なのか,技術的な検討はJAXA有人部門でもやっておりまして,そのうちの一つのオプションが,ISSを継続するという,オプションはその中で出てくるというふうに認識しております。
ですから,ISSの後のポストISSのLEOの利用の可能性,例えば同じような400キロの高度に,これがコマーシャルの宇宙ステーションであったり,国が主導するような国際協力のものであるとか,いろいろなシナリオがあると思いますけれども,技術的にどういうシナリオが成り立つのかといったことは,JAXAの中でも検討しているところであります。

【藤崎主査】 もしほかにございませんでしたら,今日の議論を踏まえて,また修正するということで。もしできれば,ここに書き込むかどうかは別として,先ほど申し上げたように,最初のところに,このレポートは何かということのポイントを書いていただくと,上の方に説明するときに一言で分かりますので,少し工夫していだたけるといいかなとは思います。
それでは,今後ほかの点につきまして,倉田室長,何かございますか。

【倉田室長】 今後の流れにつきましては,まずは本日頂きました御意見を踏まえまして,先生方ともう一度メールを通じて御相談をさせていただければと存じます。また,その中で,今後こちらの小委員会の上にあります宇宙開発利用部会,また,内閣府の宇宙政策委員会でも検討状況を報告させていただければと存じます。
以上でございます。

【藤崎主査】 以上で,本日の議事は終了いたしました。どうもありがとうございました。

(了)

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