宇宙開発利用部会 国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会(第26回) 議事録

1.日時

平成30年10月23日(火曜日) 10時00分~11時30分

2.場所

文部科学省 3階2特別会議室

3.議題

  1. 国際宇宙探査の方針(地球低軌道利用の在り方を含む)について
  2. その他

4.出席者

委員

主査(専門委員)					藤崎 一郎
第一主査代理(専門委員)				牧島 一夫
専門委員						金山 秀樹
専門委員						倉本 圭
臨時委員						知野 恵子
専門委員						続橋 聡
専門委員						中村 昭子
臨時委員						西島 和三
専門委員						向井 千秋
臨時委員						米本 浩一

文部科学省

大臣官房審議官(研究開発局担当)        岡村 直子
研究開発局宇宙開発利用課長	         藤吉 尚之
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長    倉田 佳奈江
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室課長補佐 原 真太郎

(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA))
理事                  若田 光一
国際宇宙探査センター長         佐々木 宏

5.議事録

(1)国際宇宙探査の方針(地球低軌道利用の在り方を含む)について

【藤崎主査】  それでは,時間になりましたので,国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会の第26回会合を開催いたします。
 それでは,本日の議題に入ります前に,先日発生しましたソユーズ宇宙船での異常事象についてJAXAから御説明をいただきます。

JAXA若田理事より資料26-1に基づき説明。

【藤崎主査】  本件につきまして,何か御質問はございますか。

【牧島第一主査代理】 離脱カプセルがうまく働いたのは大変いいことですけれども,今までに離脱が起きたという記憶が、余りありません。過去に何回ぐらい作動したのでしょうか。

【JAXA(若田理事)】  打ち上げ途中の同様の離脱というのは1975年に,やはり2人の宇宙飛行士が搭乗しているときに起きておりまして,無事に生還しております。
 それから,まだ打ち上げ前に,打ち上げ発射台で火災が発生して,緊急脱出システムが離脱して,宇宙飛行士がやはりそのときも生還しているというケースがございますけれども,打ち上げ途中という今回と同じものは前回,1975年の1回だけでございます。

【藤崎主査】  それでは,本日の議題に入ります。
 議題1は,国際宇宙探査の方針,地球低軌道利用の在り方を含む,についてです。
 まず,本日の議論の進め方につきまして,倉田室長からお願いいたします。

【倉田室長】  それでは,本日の進め方でございますけれども,前回のこちらの小委員会で御説明をさせていただきました国際宇宙探査,国際宇宙ステーションを巡る国内外の動向を踏まえまして,現在,JAXAで御検討いただいている国際宇宙探査及び地球低軌道利用の方針について,まず資料に基づき御説明いただきたいと存じます。
 その後,こちらの検討状況ですとか,事前の先生方との連絡調整を踏まえまして,いただいた御意見とJAXAの資料を議論のためのたたき台として落とし込んだ資料を資料3として御用意させていただきましたので,こちらを議論のたたき台として先生方から御意見をいただく,そういった流れとさせていただければと存じます。
 以上でございます。

【藤崎主査】  それでは,JAXAのほうから検討状況について御説明いただけますでしょうか。

JAXA若田理事及び佐々木センター長より資料26-2に基づき説明


【藤崎主査】  それでは,我が国の国際宇宙探査の方針について倉田室長よりお願いいたします。

倉田室長より資料26-3、資料26-4に基づき説明。


【藤崎主査】  ありがとうございます。
 それでは,これから議論に入ります。今日,御発言がなくても,あるいはそのあとにもう一回お考えになった点でもメールで寄せていただいて,それを踏まえて11月6日の次の会合までにまたこのたたき台を改定させていただきたいというふうに思います。
 では,ちょっと私のほうから,たたき台の1枚のところで,アメリカはゲートウェイについて各国に参画を呼びかけており,というふうに書いてございますが,今,政治的にはいろいろアメリカとロシア,中国が対立したり,またヨーロッパとの関係でもいろいろございますけれども,宇宙分離というか,政宙分離というか,余りこれは影響なく今後ともISS体制というものは進んでいく,あるいはプラスアルファ,そこら辺の見通しはどうなのか,どんな国がどういうふうに参加しそうかというところをちょっと教えていただければと思います。
 私にお答えいただく前にほかの方々からも。
 西島委員。

【西島委員】  前に聞いたと思うのですけれども,ISSとゲートウェイは全く性質が違うようなものじゃないかと思うんですけど,ゲートウェイがフルに動いた状況,ISSの今やっているミッションの一部が移せるのか,その利用価値が落ちるのかという,全体のバランス,あるいはゲートウェイがフル稼働したとしても,ISSもフル稼働で運用する意義があるのか? つまり、どこかでとって変わるのか?あるいは一部は変わるのか?ということをお聞きしたい。
 先ほど,JAXAのほうから貢献ということに対して,貢献する割合はISS以下を目途とし,というのは,主語はJAXAだと思うんですね。
 宇宙に関わるISSとゲートウェイの宇宙産業に対する貢献度合いを考えたとき、もしISSがフルに稼働していて、さらにゲートウェイまで実施すると,かなりの予算を確保しなきゃいけないので,その予算をどう確保するかということが課題です。以上を踏まえた、ゲートウェイの貢献というか、意義というのを、お聞かせください。


【藤崎主査】  金山委員,お願いします。

【金山委員】  コメントですけれども,2番目の月・月以遠の国際宇宙探査の基本方針というところで,最初にテクノロジーが語られていて,2番目にデスティネーションの話が出てきていると思いますが,個人的には2番目を先に持ってきてほしいと思います。デスティネーションをはっきりと定めて,そこで何をするのか,その実現のためにこういうテクノロジーが必要だという順番のほうが,しっくりくると思いました。
 あと,民間企業の参入を喚起というところですが,ここでは事業構想実現に向けた実証機会の提供というレベルにとどまっているのですが,アメリカは,民間によるISS貨物輸送サービスが進展したことのアナロジーを,きっとこのゲートウェイにも持ち込むように考えているので,ここではやはり民間企業からのサービス購入といったところまで踏み込んで書いていただくのが,企業から言うと理想的な形だと思います。
 以上です。

【藤崎主査】  ありがとうございました。
 ほかに委員の方々,いかがですか。
 米本委員。

【米本委員】  最初の資料の9ページ,JAXAにおける検討状況について御質問させていただきます。ゲートウェイには,月の有人探査もあるはずですが,無人のサンプルリターンビークルしかない理由をお聞きしたいと思います。
 それから,21ページのISS事業の民間開放について,超小型衛星の放出は,国際的にも途上国が衛星を打ち上げるということにも貢献は多大だと思いますが,これを民間に移管した場合に有償になると,大学の活動に制約になるような心配はないでしょうか。
 同じ21ページの日本のプレゼンス確保について,インドやUAEが有人宇宙飛行に取り組むことと,そうでない日本が技術でプレゼンスを確保していくというのは,言っている意味が違います。つまり,有人宇宙飛行をやりたいインドやUAEは,ISSとは直接関係ない立ち位置ですから,日本のプレゼンスを確保の比較としては,違和感がありました。
 それから,27ページ,これは御説明いただかない参考資料になりますが,民間や学術界との連携について二つ質問があります。月の資源探査等をビジネスで考えるベンチャーがどんどん出てくるなか,JAXAの見方が論点整理だけになっているのは,一体どのような意味なのかを伺いたいと思います。
 同じページで,JAXAのサイエンスのコミュニティは国際宇宙探査に関わっているにもかかわらず,彼らを参加喚起するという言い方は不適切です。つまり,サイエンスが重要と認識しているのであれば,宇宙探査の当事者であるコミュニティも沢山意見があるはずであるから,上から目線で参加しろという言い方はよくないと思います。
 倉田室長のご発言のとおり,ゲートウェイの活用は確かに非常に難しいところがあり,どうしても国際宇宙ステーションの延長上で技術を語るしかないのかもしれません。そうであっても,新しい技術を獲得していくという視点で新しいストーリーを考えられないものでしょうか。例えば輸送系でいえば,ISSへの補給機であるHTV-Xをゲートウェイへの補給機に発展させる話だと。日本の今の状況を考えると,有人宇宙飛行は当面,アメリカやロシアに頼るのは仕方がありません。しかし,未来永劫そうなのでしょうか。未来永劫やらない,その研究すらしないのかは,きちんと言うべきではないでしょうか。
 つまり,今有人宇宙輸送はできないが,日本のプレゼンス向上のために,これから研究をして備えるぐらいは言わないといけないのに,当面はやらないとかいう言い方でお茶を濁すのは,本当に宇宙開発が国の事業なのかと思ってしまうぐらい情けない話です。

【藤崎主査】  もしございましたら,また後でメールでお願いしますが,ほかに。
 知野委員,お願いします。

【知野委員】  ありがとうございます。
 今回御説明いただいたこの資料26-2を見ますと,とにかくいろいろなことが入っていて,とても予算がかかるのではないかと。JAXA全体がもう宇宙探査庁みたいな感じになるぐらいのお金が要るのではないかなというぐらいに感じたのですけれども,その辺で全体像というのはどのぐらいのものであるとか、金額はどうだとか,描いていらっしゃるのでしょうかというのが一つ。
 それから,この御説明ですと,HTV-XはISSとそれからゲートウェイと,両方に行くということになりますよね。つまり,お金が倍かかるということでしょうか。一部HTV-Xをゲートウェイのほうに切りかえられないかという交渉をするという御説明も入っていますけれども,ここは,宇宙ステーションで一番お金のかかるところです。H3とかHTV-Xを開発して、費用を減らすと掲げてはいらっしゃいますけれども,まだその辺がどういう形で実現できるかわかっていない中で,どのように運営していこうとされているのでしょうか。両方を維持するということになったら,かなり大変になると思いますので,その辺が一つです。
 それと,御説明の11ページや前のほうにもありますけれども,各国・機関とも自国の宇宙飛行士が参加できる程度の貢献を目指すとありますが,参加できる程度の貢献というのは,つまり,どのぐらいの貢献でしょうか。質的なものというか,量的な,どのぐらいの費用負担に相当するものが必要になるのかなどといったところが1点です。
 あと,放っておけば2020年代に各国が月で水や資源を探す,遅れてはいけないとありますが、これに関しては,例えば国際協力していくとか,そういう余地はないということなんでしょうか。ここも教えていただけたらと思っています。
 以上です。

【藤崎主査】  私から申し上げるのはあれでございますが,恐らくこれを書いているときに,JAXAでも文科省でも,いろいろもっとやりたいとかいう点はあっても,予算とか政府全体の方針,科学探査との関係その他で,ここら辺の表現になっているのかなという部分もあり,確かにごらんになると,これじゃ全体がどうだというところが恐らくある部分が出てくるのかなとは思いますが,とりあえず今,御質問いただいたものについて,文科省とJAXAにお答えいただいて,それで第2ラウンドに入ります。

【倉田室長】  私のほうから,こちらのほうでお答えできるところをまず回答させていただきたいと思います。
 まず,米国が各国に参画を呼びかけているという状況でございますが,日本だけではなく,もちろんヨーロッパ,またISS5極,ロシアですとかカナダ,欧州にはもちろん呼びかけておりますし,それ以外の国々にも,先日のIAC,国際宇宙会議などの機会を活用して,各国にぜひ参加していただきたいと,オープンであるというようなスタンスでNASAは発表しております。また,どういう形で参画をしてくるのかというのは,今後の議論,どういう構成をとっていくのかというのはあるかと思いますけれども,NASAとしては今,限られた国だけ声をかけているのではなく,広くオープンだというメッセージを発しているというのが状況でございます。
 また,ISSとゲートウェイをどのように両立していくのかということでございますが,もちろん,まずゲートウェイとISSはまたその機能は違うのではないかというのは,これはおっしゃるとおりでございまして,規模感も6分の1と減りますし,地球低軌道と月の周回では放射線環境も含めて環境も異なりますので,その中でやる実験,あるいはゲートウェイにつきましては,どちらかというと月面での活動を支えるという機能となりますので,行われる実験も異なってくるものと思われます。やはりそれぞれの重要性というものをもう一度見直しながら,プライオリティをつけながらやっていくという形になるのかと思っております。
 その一方で,おっしゃるとおり,今後のほかの先生方からも御意見をいただいているところでございますが,予算につきましては,やはり最低限のコストで最大の成果を得るという大きな方針を掲げなら,我々としてこれまでISSで活動にある程度の割合の予算を投じてきているわけでございますが,その範囲を大きくは超えない範囲の中でどこまでのことができるのか。その中で,もちろんISSにつきましては,HTV,今度はHTV-XをH3ロケットで打ち上げるということで,大幅なコストの低下が見込まれます。また,HTV-Xにしますと,物資の運べる量もふえますことから,打ち上げ回数も減ったりですとか,いろんなことで相乗効果でコストの削減が見込まれるということ,そして先ほどの産業界の参画を得てというところで,ISSにかかる費用を最大限コストを抑えつつ,一方でゲートウェイというものに取り組んでいく。
 ただ,ゲートウェイのほうもすぐにこの活動経費が,例えば来年から巨額な経費が必要だという状況でもございませんので,これは,先ほどもJAXAのほうからも説明ありましたけれども,ほかのH3ロケットですとか,さまざまなものの資金需要のほかのものとの関係も総合的に見ながら,そこを必要な経費を確保していくということかというふうに考えておりますが,ここはまだまだ,ISSの今後の話ですとかゲートウェイ全体につきましては,少し我々もまだ流動的なところもありますので,そこは全体を見ながらという形になるところは,どうしても仕方がないところがございまして,この文章も少し抽象的な書き方になっているのも,ちょっとそのような点もございまして,歯切れの悪い説明になっているのではないかというふうにも承知しておりますけれども,そういう,繰り返しになりますが。

【藤崎主査】  すみません。もう少し簡潔に御説明ください。

【倉田室長】  はい。また,技術の観点につきましては,JAXAのほうからと思っております。

【JAXA佐々木センター長】  技術的なところで,米本先生のほうから御指摘いただいた有人の輸送の技術というところなんですが,今,当面,2026年度までの構築ということで考えているので,そこまでには有人輸送というところまでは踏み込んでいませんが,このゲートウェイが完成した後に,その後に,先ほども目標とする姿に書かせていただいたような,有人の離着陸船というのは今考えています。この技術をどうやって進めていくかという観点は,逆に有人離着陸船の必要な要素を分析をして,その必要な技術を,手前であるHERACLESというこのミッションにおいて段階的に獲得をしていくという考え方で,有人ロケットというのは,なかなか規模も大きいですし,難しいんですけれども,離着陸船という規模の中で,有人の輸送技術というのを獲得していきたいと。すぐには難しいと思いますが,2030年代を目指してやっていきたいというふうに考えています。
 それから,最終の参考のページの中で二つ質問がありましたが,一つの論点の整理ということですけれども,我々の理解としては,宇宙資源というところの研究会というのも存在しておりますし,大きな宇宙としてのいろんな研究会等もあります。ただし,探査という観点の範囲で幅広く検討するというのはないと思っていまして,資源に限らず,宇宙探査をどういうふうに使っていくかというところについてのコミュニティを構築したいというふうに考えていて,今まさに,本年度においてそういうコミュニティの構築の準備を進めさせていただいているというところです。
 それから,学会のコミュニティのほうは,参加喚起というのがちょっと上から目線ということで,これは申しわけなかったんですが,我々としては,昨年から宇宙研の理工学委員会の中で国際宇宙探査の専門委員会をつくっておりまして,コミュニティの議論を,いろんな意見,出し方含めて,議論をいただいていると思っていますし,先日はワークショップを開催させていただいて,理工学委員会に限らず,幅広い方にいろんなこういうミッションの,ミッションそのものを御存じない方もまだいらっしゃいますので,まずはそういう情報発信から,参加をしていただくというところを,コミュニケーションをとるところから進めたいというふうに考えていますし,先日のワークショップでも,そういう意味では,もっと幅広く情報が欲しいという声がいろいろありましたので,これについては頻繁に開催していきたいというふうに考えております。
 あと,知野委員の予算の話,もう文科省さんに御報告をいただきましたが,HTV-XのISSミッションとそれからゲートウェイのミッションというのが大きく違うというところは考えていませんで,HTV-X自体がある程度ゲートウェイを念頭に置いた設計をさせていただいています。打ち上げ能力,それから補給能力を調整することによって,大きな変更なくミッションは達成できると。ただ,今後,効率化の観点でどこまで対象にするかというのは検討課題と思っております。ただ,基本的な技術はもう確立していますので,そういう意味では,HTVの開発段階のような大きな開発費なく,ゲートウェイの補給というのはできるんじゃないかというふうに我々は思っています。ただ,おっしゃるとおり,前提としては,HTV-XとH3の開発というのがやっぱり確実にできて,目標どおりできるというのが前提になるというのはおっしゃるとおりで,それはJAXAとしてはしっかりとやっていくというふうに考えています。

【JAXA若田理事】  西島委員から御指摘いただきましたISS,ゲートウェイの両立のところですけれども,ゲートウェイが動き出したときにISSをどう使うかというような御質問ございましたけれども,資料の21ページで御説明させていただきました通り,ここに書かれているような形で,地球低軌道の利用というのは,探査が進んだとしてもなくなることはないと考えております。これはアメリカ,ヨーロッパ,ロシア,インドとか中国も含めてですけれども,そういった国が地球低軌道を活用していくことになると思います。ゲートウェイのほう,やはり距離が遠いので,同じ例えば実験を微小重力実験するような場合も,打ち上げコスト等を考えますと,やはり低軌道で無重力を使ったものというのは,今後も続くのではないかなというふうに考えております。
 それから,米本委員から御指摘ありました超小型衛星の放出の件ですが、これは低軌道を経済活動の場にするという大きな流れの中で,JAXAが確立した事業を民間に開放するという方針で実施しております。その結果として,例えば大学がキャパビルでいろんな形で超小型衛星を放出していただいているということで,そちらのほうに制約が来るんではないかということですが,現時点で,2020年の段階で,民間事業者に解放するリソースは70%,それ以外の大学との連携,国連宇宙部との連携,そういったものは30%残すという形で,いわゆるJAXA的な枠,それは維持しておりますので,これは当初そういう形でやらせていただいて,今後の動向を見てこの辺の割合は検討していきますので,その大学との連携というのがゼロになるということはないというふうに考えております。
 それから,同じように米本委員からお話がありました有人宇宙技術のところですけれども,例えば今回のHTV7号機にはカプセルを搭載しておりまして,これは揚力誘導という初めての方式を採用しております。実験サンプルを持ち帰るということが目的ですけれども,そういった基礎技術というのは,将来,有人宇宙活動をするということについて国として方針が定まれば,そのための一つの技術になるというふうに思っておりまして,できる範囲の技術開発研究というのは進めていっているという状況でございます。
 私のほうからは以上です。

【JAXA佐々木センター長】  すみません,一つ言い忘れましたが,金山委員からサービス導入という御提案がありましたので,これにつきましては,過去においても宇宙ステーションでは,輸送サービスといったものも視野に入れて議論を進めてきました。ただ,課題としては,長期的な計画ができない状況にありますので,やはり長期的に何機輸送するとか,そういうところをちょっと検討して,今,現段階だとなかなか難しいと思いますけれども,サービス導入というのは我々としては非常に望ましい姿ですので,そういうのはぜひ検討していきたいとは思います。

【藤崎主査】  ありがとうございました。
 先ほど知野委員が言われました,日本が参加できる貢献割合というのは一体どういうことなのかというのは,なかなか恐らくはっきり言えないのでしょうが,私の理解では,縦と横とあって,縦というのは,これまでの貢献割合というのが一つ,横というのは,よその国との割合,こういうことを参考にしながら,その場その場でできるだけ考えていくしかないということで,あんまりはっきり今ここで打ち出せない。で,こういう感じなのかなという感じがいたしました。私が答えるべき問題ではございませんが,先ほどの中で余り議論が出なかったものですから。
 それでは,ほかの委員の方々,また,足りない点はございますけれども,今まで御発言のなかった委員の中でございましたら。牧島先生,向井先生,続橋委員,中村委員と倉本委員と。では,牧島委員からお願いいたします。

【牧島第一主査代理】  2点ございます。
 一つ目はコメントですので,お答えいただく必要はありません。今まで国際宇宙探査に対し,JAXA宇宙科学研究所の皆さんがほとんど関心をお持ちではなく、大変危惧をしておりました。他方その間にこの委員会では,国際関係が主導する探査と学術主導の探査という二本柱が,なるべくお互いに相補ってうまくいくよう調整の努力をしてきたと思っております。それが多少とも効いたのかもしれませんが,JAXAに宇宙探査センターが作られ,また先日,宇宙探査のワークショップが開かれるなど。かなり大きな進展がありました。私はよかったと思っておりますので,ぜひその方向で頑張っていただきたいと思います。
 2点目として、ISSと月近傍ゲートウェイは,違うところもあるけれども,似たところも多いと思います。そこでISSに日本が参画をした結果,こういう成果があったという面だけでなく,どこに問題があったか,また次にやる時どうすればもっと成果が上がるかという教訓をまとめ、それを踏まえた改善の方向を示すと、前向きによい話になると思います。それは、技術的な面,人的問題,国際協力の面など、多面的だと思いますが。

【藤崎主査】  ありがとうございました。
 向井委員,お願いします。

【向井委員】  5点あります。
1点目,2ポツの基本方針。ここは技術観点でまとめてあるので,4ポツの月面探査の方針と一緒にし、我が国の優位性を発揮できる技術や波及効果が大きく伸ばしていける技術、及び、その応用としてまとめたほうが、スッキリすると思います。初めに世界的動向の中の日本,次に日本の基本方針には技術中心だが探査も入っており、国際協力によるゲートウェイへの参加方針、そして、最後に国際宇宙ステーションからどのように月探査や技術開発にシフトしていくかという観点でまとめたほうがすっきりするかと思います。
 2点目,産業界の参加要請がありますが、投資を含め産業界にとって魅力となるような表現を入れたほうが良いと思います。3点目,ゲートウェイに関してですが,ゲートウェイに参加したほうが費用対効果が良いことを表現するべきです。また、日本人宇宙飛行士の存在価値に関してもより強い理由を入れるべきと思います。このゲートウェイに関しては,山に例えれば、富士山頂で定期的に観測ができる状況ができた(これがISS)。次にエベレスト頂上で定期的に観測するために,8合目あるいは6合目に利用者が共同で断続的に使える場所をゲートウェイとして作ると費用対効果が良いということかと思います。4点目,宇宙基本計画の工程表に具体的に反映できる内容を検討することが必要と思います。5点目,ISSから月の技術開発や探査への移行の仕方を考えるべきと思います。私は,ゲートウェイとISSを予算的に二本立てで考えるのではなく,連続として考えるべきと思います。ISSがなくしてはゲートウェイの技術開発や,日本のプレゼンスもできなかったと思います。例えばHTV-XがISSに行くことは,ゲートウェイに行くためのテスト飛行として考えればよいと思います。ISSの科学研究も,その成果の出口を月面・火星に向けていく。例えば、ISSの重力発生装置を使ったマウスでの研究ですが,微小重力の影響だけでなく、可変重力やその閾値を研究することで、月面で必要な生体情報の研究につながります。
ISSへの民間投資を増やし、公的資金を月探査や技術研究にシフトさせる具体的な工程表を作ることで、より多くの人が議論しやすくなるものと思います。
 以上です。

【藤崎主査】  ありがとうございました。
 続橋委員,お願いします。

【続橋委員】  たたき台で2点です。
 一つ目は,2ページ目の3ポツのところの三つ目の白,「なお,調整に際しては」というところなんですけれども,貢献割の割合という言葉を入れなくても良いという感じがします。言いたいのは,費用対効果が最大限得られるということと,月面着陸の機会が確保できればいいということだけと思います。経済規模に応じた割合を踏まえつつと書いてあるんですけれども,日本の経済はどんどん小さくなっているので,割合を踏まえつつというのは,昔より小さい貢献にするというふうにもとられかねないので,わざわざそれを言わなくても良い,という気がいたします。これが一つ。
 二つ目は,3ページ目の5ポツのところ,宇宙ステーションのところです。ここの二つ目の白丸です。ここは,宇宙ステーションが次のゲートウェイへの必要な技術の確保と,それから民活によるコストの効率化という二つなんですけれども,確かにゲートウェイへのステップ   もありますけれども,もう一つ,低軌道は非常に注目されているので,いろんな活動が出てくると思います。低軌道そのものの魅力があるということと,それから民活の活用のところも,コストの効率化だけと読めるのですけれども,それだけではなくて,むしろ民活による幅広い新しい宇宙ステーションの利用が,これから数十年考えると大事です。それによって新しい民間も,ベンチャーも含めて,宇宙ステーションにかかわってくると思います。
 以上です。

【藤崎主査】  中村委員,お願いします。

【中村委員】  二つほどJAXAの資料に対しての質問なんですけれども,一つは,4ページ目の国際宇宙探査技術バックキャストイメージが,これがちょっとよくわからないんですね。目標が,これはいつぐらいの目標で,これ全部を目標としているのか,それと2030年の間のところがすごくぼやっとしていて,むしろこれ,バックキャストじゃなくて,今から積み上げていったら2030年,ここぐらいを目指しますように見えてしまうんですけれども。
 ということが一つと,もう一つ,先ほどからゲートウェイがやっぱりどういうメリットがあるかということがよくわからなくて,一方で,このたたき台のほうでは,通信中継拠点とか遠隔操作拠点とかになりますと書かれているのですが,将来の月着陸機とか月探査被ばくとかとの関係というのは,具体的には何か見えてないんでしょうかというあたりを質問したいです。

【藤崎主査】  ありがとうございました。
 倉本委員,お願いします。

【倉本委員】  3点ほどあります。
 一つ目は,先ほど話がありました,科学コミュニティとの情報共有を引き続きぜひお願いしたいということです。
 もう一つは,先ほど工程表というキーワードがあったのですが,全体を見ていって,ゲートウェイというのは確かに非常に大きな要素ですけれども,このゲートウェイの検討に律速されるものとそうでないものというのが,余り分けられてないような気がしています.ゲートウェイは他国が主導しているものですので,これに万一遅れが出たときにも,ここは日本としてやるといった,そういったものが明快になっていくといいかなと思いました。
 三点目ですが,他国の実施する例えば月面探査というのがたくさんある中で,ミッション間の連携という観点がちょっと落ちているのではないかという気がいたしました。例えば月面にネットワーク的な観測網を構築するとか,そういった観点も大事かと思いました。
 以上です。

【藤崎主査】  ありがとうございます。
 それでは,文科省,JAXAからお願いいたします。

【倉田室長】  ご意見いただきまして,まことにありがとうございます。
 こちらの議論のたたき台についていただきました御意見につきましては,こちらのほうでいただいた御意見を踏まえて,後ほどちょっと修文をさせていただきまして,先生方にまたメールを含めて御相談をさせていただければというふうに思っております。その上で,特に,あと工程表との関係につきましては,先ほど,もちろん,まず工程表に行く前に,倉本先生も御指摘ありましたが,ゲートウェイによるもの,そうじゃないものというのもちょっと含めて,一度整理をさせていただいた上で,そこについても御説明をさせていただければというふうに思っています。
 ちょっと技術的なところをお願いします。

【JAXA佐々木センター長】  まず,中村委員からのバックキャストのところと,それから月着陸船,ゲートウェイの活用ですけれども,バックキャストにつきましては,目標は2030年代後半から2040年代ぐらいを想定して,これは,もともとは前のページに書かせていただいたような姿を前提に引いていますので。とはいえ,素直にバックキャストでずっとやっていくというところは,なかなかできないです。現状のいろんな活動と結びつけると,残念ながらこういう形で,どっちから見たのかわかりにくいという御指摘な形なんですけれども,我々としては,それぞれ今やっている技術と将来の姿をつなぐような,そんな形で今,準備させていただいています。
 それから,倉本委員からのご質問について,ゲートウェイが作られた後の活用として,月面に有人を送る際の中継基地ということで,ゲートウェイのところの11ページになりますと,ただサンプルリターンビークルと書いてあるところがありますが,ここが,一つの例なんですけれども,ここに月の着陸船を係留しまして,まずちょっと行きやすいゲートウェイまでOrionで人間が行った上で,ここから月面の着陸をすると。ここは人も含めて着陸するというような構想をゲートウェイ完成後に考えていまして,そのためにゲートウェイというのが中継基地になると。それぞれ月面の離着陸システムも,将来的には月面で例えば水等の燃料を使うことによって再使用できるようになれば,それぞれのシステムが再使用化が可能ということで構想をしています。そういう意味でのゲートウェイというのは中継基地ということになろうと思います。
 あと,倉本先生のご指摘のとおり、全体に若干バラバラ感があるというところ等がありますけれども,やはり我々としては,ゲートウェイだけじゃなくて,月面・火星という全体の探査を担うとことで,ゲートウェイを使い,また月面に向けた準備も進めていかなきゃいけないということを考えており,そういう観点での御提案になっています。確かにそれを一個一個見ると,金山先生がちょっと薄いかなというところで,そこはもう少し全体像をというのを再度,常に念頭に御説明させていただければと思います。
 それから,ネットワークという意味では,例えば極域に限っては,これは先ほど御質問ありましたけれども,国際的に競争をしつつも対話はしています。対話の中では、それぞれが同じ場所に行くんじゃなくて,やはり幾つかの場所に分担していくというのをある程度念頭に置いています。ただ,国際的な競争という意味では早い者勝ちであり,やはり行く技術を持ってないと発言力がないという意味では,急いで準備を進めるべきというふうに思います。将来的には,有人が行く場所と無人小型機で探査する場所とを融合させることで,月面全体である意味ネットワークをつくって観測できるのではというふうには考えています。

【JAXA若田理事】  牧島委員のほうから御指摘ありましたISSとゲートウェイ,違うところもあるけれども,ISSの運用等で問題があったことというのがどんなことかという御質問がございましたけれども,やはりISS,利用成果,今日も御紹介させていただきましたけれども,そういった利用成果が出ている,そのために必要な輸送コストというのが問題点として出ていまして,それを削減するということが課題だと思っております。ですから,HTVにかわってHTV-Xを導入することでそのコストを下げるということ。あとは,やはり自動化・自律化をするということで,クルーが常駐していなくてもさまざまな活動ができるということ。これは「きぼう」におきましても,宇宙飛行士が実際に実験に参加しなくても,例えばロボットであるとか,自動化・自律化によって作業が効率化すると。そういったことはISSで学んだ教訓かなと思います。国際宇宙ステーションが常駐ということに対して,ゲートウェイに関しては,先ほど資料にもございましたけれども,1年間で30日程度の日数ですので,そこでやはり自動化・自律化で対応していくというようなことは,ISSの教訓かなというふうに思っております。
 それから,向井委員からありました,ISSとゲートウェイの二本立てというよりも,ISSなくしてゲートウェイが確立できないといったことは,技術実証の場という観点からは非常に重要なところだと思います。日本の優位性・波及性の高い技術として,例えば有人滞在技術,二酸化炭素除去とか,そういったものをISSを活用して実証しないと探査に使えませんので,そういった形でISSの必要性というのは,きちっと言葉にしていく必要があるかなというふうに思っています。
 それから,こちら続橋委員のほうからLEO活用の魅力に関して御質問ございましたけれども,先ほど超小型衛星の事業の民営化等,お話をしました。それと同時に,やはり新しい民間の方が利用していただくために,JAXAが確立した事業を民営化するのではなくて,最初から事業共創という形で,さまざまなアイデアを持ったベンチャーを含めた民間の方と,それを事業化するための取り組みというのを,J-SPARCという形でこの5月から進めておりますので,そういった活動を強化して,やはりISSの利用,それが幅広い層に伝わっていくように努力してまいりたいというふうに思っております。
 以上です。

【藤崎主査】  それでは,いろいろ御意見をいただきましたので,段取りといたしましては,今日いただいた御意見を踏まえて,事務局のほうからたたき台第二案を皆様にお送りいたしまして,そして,それに対するまた御意見を頂戴し,そしてたたき台第三案といったものをつくりまして,次の会合が11月6日でございますので,それで大体煮詰めていきたいと,こういうふうに思います。では,どうもありがとうございました。

(了)

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課