宇宙開発利用部会 国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会(第19回) 議事録

1.日時

平成29年5月26日(金曜日) 9時00分~11時00分

2.場所

文部科学省16階 科学技術・学術政策研究所会議室

3.議題

  1. 国際宇宙探査の基本的な考え方
  2. 委員からのヒアリング
  3. その他

4.出席者

委員

主査							藤崎 一郎
第一主査代理						牧島 一夫
第二主査代理						角南 篤
専門委員						金山 秀樹
専門委員						木村 真一
専門委員						倉本 圭
臨時委員						知野 恵子
専門委員						続橋 聡
専門委員						中村 昭子
臨時委員						西島 和三
専門委員						向井 千秋
臨時委員						米本 浩一

文部科学省

研究開発局長						田中 正朗
研究開発局審議官					大山 真未
研究開発局宇宙開発利用課長				堀内 義規
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長		庄崎 未果
研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室課長補佐	原 真太郎

(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA))
理事							浜崎 敬
執行役							伊東 康之

5.議事録

【庄崎室長】  では,委員の皆さん,お集まりいただきましたので,ただいまより,国際宇宙ステーション・国際宇宙探査小委員会第19回会合を開催させていただきます。

 本日は,お集まりいただきましてありがとうございます。

 まず,事務局の方から,資料の確認をさせていただきます。

 お手元の議事次第の4のとおり配付しております。不足などございましたら,事務局までお申しつけください。

 続きまして,本委員会の設置につきまして,御説明申し上げます。本日は,第9期の科学技術・学術審議会が発足してから初回の会合となります。本小委員会の設置につきましては,5月9日の宇宙開発利用部会におきまして,資料19-1のとおり決定してございます。

 資料19-1をごらんいただきますと,調査検討事項に2のところありますけれども,(1)ISSの着実な運用及び成果の最大化に向けた取組方策について,(2)我が国としての国際宇宙探査の検討に向けた原則とすべき基本的な考え方について,(3)将来の低軌道利用の在り方や,我が国としての国際宇宙探査の具体的な推進方策等について,これらについて御議論いただくということを考えてございます。

 設置期間ですけれども,小委員会の設置が決定した日から平成31年2月14日までということになってございます。どうぞよろしくお願いいたします。

 次に,資料19-2としまして,本小委員会の委員名簿を配付しております。

 今期より新たに御参画いただく委員の御紹介をさせていただきます。

 順に,御紹介いたします。名簿の一番上にございます,金山秀樹,シー・エス・ピー・ジャパン代表取締役社長でございます。

【金山専門委員】 シー・エス・ピー・ジャパンの代表を務めます金山です。よろしくお願いします。

【庄崎室長】  それから,木村真一,東京理科大学理工学部教授です。

【木村専門委員】 東京理科大学の木村でございます。よろしくお願いいたします。

【庄崎室長】  それから,倉本圭,北海道大学大学院理学研究院教授でございます。

【倉本専門委員】 北海道大学の倉本圭と申します。よろしくお願いします。

【庄崎室長】  中村昭子,神戸大学大学院理学研究科准教授でございます。

【中村専門委員】 中村でございます。よろしくお願いいたします。

【庄崎室長】  どうぞよろしくお願いいたします。

 続きまして,主査の指名についてでございます。宇宙開発利用部会の部会長より,本小委員会の主査を藤崎教授にお願いするということで,御指名を頂いております。

 この後は,藤崎主査から議事進行をお願いしたいと思います。よろしいでしょうか。

 藤崎主査,よろしくお願いいたします。

【藤崎主査】  では,大変微力でございますが,主査を務めさせていただきます。

 第一主査代理には牧島先生,第二主査代理には角南先生をお願いしたいと思いますので,よろしくお願い申し上げます。

 では,本日の議題に入らせていただきますが,議題の紙の1番目,国際宇宙探査の基本的な考え方について,庄崎室長,JAXAの方から御説明を頂きたいと思いますので,よろしくお願い申し上げます。

(1)国際宇宙探査の基本的な考え方

 

 庄崎室長より,宇宙政策委員会の国際有人宇宙探査に係る検討について,資料19-3に基づき説明。

【藤崎主査】  今御説明いただいた宇宙政策委員会のペーパーのことについては,「上記取りまとめに向けた検討を進めていくことを求める」とございますね。その最後に,2枚目の下のところに,「上記のほか」ということで,「別途検討する必要がある」と。

 これは,考え方としては,1.2.及び3.は検討を求められていると。この最後の4行は,求められていないが検討していく必要があるという宇宙政策委員会の認識であって,この最後の4行というか,3行半については,こちらから議論してもいいし,これは必ずしも求められていない,こういう理解でよろしいですか。

【庄崎室長】  はい,そのように御説明させていただきます。

【藤崎主査】  わかりました。では,続けてください。

庄崎室長より,国際宇宙探査に係る各国の検討状況とその重要性について,資料19-4に基づき説明。

JAXA(伊東執行役)より,宇宙探査技術の分析について,資料19-5に基づき説明。

JAXA(浜崎理事)より,地球低軌道活動の考え方について,資料19-6に基づき説明。

【藤崎主査】  ありがとうございました。

 今御説明いただいた「地球低軌道活動の考え方」というのは,先ほど御説明いただいた宇宙開発利用部会の調査検討事項の中の(3)番の「将来の低軌道利用の在り方」ということについての,答える形のひとつ,たたき台ということで理解しております。

 それでは,今,文科省及びJAXAから御説明いただきました3つのポイントなのですが,これについての議論をしたいと思いますが,皆様方,委員の方々,いつものように,御意見のある方は,これを立てていただきますと,その順番に御指名させていただきたいと思いますので,まとめて先ほどの庄崎室長と,それからJAXAの御説明につきまして,探査技術及び低軌道活動について御議論いただければと思います。

 西島委員,どうぞ。

【西島臨時委員】  有人宇宙探査について,例えば19-4の「有人宇宙探査の重要性」というのがあって,そこに「具体的には以下のような効果を期待」ということで,成果を期待という,そのうち有人宇宙探査の重要性と,この効果を期待,その5つが必ずしも有人宇宙探査となっていない,少し総花的な内容になっているのではないかなという気がしたのです。

 一方,JAXAの出された資料19-5は「探査に必要な技術」で,それは有人宇宙探査に必要な技術としてその意義の必要性,この観点は,環境整備や水とかの問題,ここは非常にわかりやすくなっている。有人宇宙探査そのものの重要性と,有人宇宙探査に必要な技術というのははっきり分けないといけない。それから,そもそも宇宙ステーションを核として宇宙に投資するという,国としてのポジショニングについて,その辺を少し言わないと,ちょっと総花的だなというか,有人宇宙探査については,もう少し絞ったような形の重要性と,それから基礎技術はいいと思うのです。ちょっとそこのところが気になったということがあります。

 それと,細かい点を言うと,先ほど言った有人宇宙探査の重要性を書いている,その効果を期待のところ,丸1,丸2,丸3,丸4,丸5ですが,丸1,丸2,丸4,丸5は比較的すっとわかるのですが,丸3番のこれは質の高い実験というのは具体的に何を考えているのかなというか,少しつかみづらい。具体的には何をしたいのかなという,そういう疑問を持ちました。

【藤崎主査】  ありがとうございました。

 牧島先生,お願いします。

【牧島第一主査代理】  JAXAから提示のあった資料19-5を見ますと,技術として,4項目が挙げられています。この分け方は良いのですが,日本の現在の技術レベルという観点から見ると,この4つの技術は随分ばらつきが大きいと思われます。例えば1番目の重力天体着陸は,日本ではまだ十分に実現できておらず,これから獲得しなければならない技術です。一方,深宇宙の補給という項目では,「こうのとり」が非常に大事な活躍をしていているので,日本はかなり優位な状況にあると思います。したがって4つをフラットに並べるだけではなくて,どれは日本としてまだ遅れているから進めなければいけない技術,どれは国際的にトップレベルに立っているというような,めり張りがついた観点がお聞きできればと思いました。

【藤崎主査】  わかりました。

 知野委員。

【知野臨時委員】  今回まとめていただいたのを見ますと,まず,このISSを再延長することを国際的に検討している段階で,どういう位置づけにあるのかということが1つ。それともう一点,最初の19-4の資料で,米国は「深宇宙探査ゲートウェイ」を月近傍に構築するということで,これはアメリカのリードによって進められているといいますが,各国ともこの方向に動こうとしているのでしょうか。

 というのは,カナダが,将来ミッションに向けて,宇宙飛行士候補の選抜をされているということは,もうこの「深宇宙探査ゲートウェイ」を前提として動きだしているのかどうか。つまり,ISS再延長と,それからこの「深宇宙探査ゲートウェイ」があることがもはや前提になって,国際的に進めていこうとしているのかというあたりをお教えいただきたいと思います。

【藤崎主査】  他の先生,手を挙げてございますか。

 向井先生。

【向井専門委員】 文科省の資料は国際有人宇宙探査,JAXAの資料は有人を抜いた国際宇宙探査で,2種類の言い方をしています。各国の動向を調べてみると,必ずしも,人がいる有人だけではなくて,無人の動向も入っているので,例えば資料19-4の「国際宇宙探査の参加の重要性」というところでは,「有人宇宙探査の重要性」に焦点を合わせているので,議論をする対象の範疇がわかりにくい。もう一点。この資料でJAXAの有人探査技術は理学・工学のうちの工学系の技術の話だけです。一方,資料19-6のISSの考え方では「低軌道の意義・価値」の丸2では,創薬,加齢,超小型の衛星と船外という4つにフォーカスをして,商業活動を進めていく形になると思います。

 そう考えると,2025年以降,例えば他国又は国内外の民間からの実験サービス購入は,場合によると古くなったISSを新興国(例えばUAE等)に売却し,利用権を確保しつつ,ISS以遠の月・火星に方向を定めていく。民間により効果的に入っていただくために,JAXAがどの程度民間利用をマーケティングしているのかが,明瞭ではない。

【藤崎主査】  どうもありがとうございました。

 では,ここまででちょっと切りまして,まとめてお答えいただきましょうか。

【JAXA(浜崎理事)】  まず,再延長の件ですが,私どもが知る限りで申し上げますと,各国ともまだどの方針にすると決めているわけではなくて,幾つものオプションを並行して検討している段階でございます。ISSの再延長というのも,こちらはオプションとして各機関が検討している。ただ,そうすると決めた機関は一つもないというのが現状です。

 それから,独自又は国際協調により新たな拠点を構築するということを考えている国は,ロシアがそうですし,ヨーロッパの中の一部の国は考えているようです。

 それから,アメリカはむしろ,国が持つというより民間に任せてやるというのは,先ほどお話ししたとおりです。

 それから,丸3番,丸4番,他国からの実験サービスを購入すると決めている国,それから,低軌道拠点を持たないと決めている国は,私は聞いておりません。

 ということで,再延長,あるいは組合せですね。独自の宇宙ステーションを持つにしろ,それの実証期間が必要なので,2024年までの間で実証するのは困難なので,そういう形も含めて再延長という,検討を行っていくということだと思います。再延長については以上です。

【JAXA(伊東)】  続きまして,深宇宙探査ゲートウェイの方向に各国が向かっているのかどうかということなのですけれども,NASAがリードでこのディープスペースゲートウェイを発表しておりますけれども,NASAは国際協力でと言っておられますが,これのもとになっているところは,宇宙ステーション参加極,それからそれ以外のISECGというものが宇宙機関の中で議論をして,つくるとしたらこんな感じでつくって,こんなもの,こんなことだったらいいのではないかというようなふうに議論をしてきているものになります。

 したがって,それぞれの国の宇宙機関は,そういうことができるときに自分は何をやるべきかとか,あるいは,それぞれの国の政策としてどういうふうに上げていくかというふうに考えてやっているということは事実であります。

 それから,宇宙飛行士の件ですけれども,カナダは,ステーション,低軌道及びそれ以遠の探査のために選んでいるというふうに報告されています。

 それから,御質問ではないですけれども,NASAは遠くに行く,低軌道以遠の方の宇宙飛行士を募集しているという事実がございます。

【藤崎主査】  先ほど各委員から出た御質問の中に,例えばこの探査技術の凸凹があるのではないかとか,あるいは,質の高い実験は具体的に,有人宇宙探査の場合はどんなものが想定されるのかといったような御質問もございましたし,この宇宙探査と有人宇宙探査は各国,無人の探査ができることと有人のもあるのだけれども,ここに何か統合して書いてあるという御議論がありましたけれども,そこら辺について回答を頂きたい。

【JAXA(伊東)】  まず,技術の方ですけれども,おっしゃるとおりでして,それぞれレベルは違います。ただ,それぞれの意義に関連してやるべきであるということと,やった場合にちゃんと意義のある価値にたどり着けるかどうかといったことを考えておりますが,確かに地上では有利であるけれども,宇宙の場合にはそれを実証したことがないという部分は事実であります。「はやぶさ」は,小惑星へはありますけれども,重力天体へはないと,これも事実でありますけれども,そこは今後整理したいと思います。御指摘はそのとおりだと思います。

 それから,有人・無人の件でございますけれども,ここは,日本の政策上の整理という話と,各国があるいは各極といいますか,ヨーロッパは例えば,E3Pもあって,有人と無人,ステーションを運営しているような局と,それから宇宙科学を担当している局がより協力して,全体としての効率性を上げるようにと長官がリードしているというような方向に向かっています。

 それから,ISECGという15機関の中でも,全てが有人というわけではなくて,無人で行くという個別のプロジェクト案もあれば,最終的には月やあるいは火星に有人でということを念頭には置きながら,その途中における無人活動というのも当然あるというような議論をしておりますので,そういう面で「有人」という言葉が入ったり入らなかったりというのは難しいところです。

【藤崎主査】  質の高い実験について,具体的に何か想定されているかという御質問と,更に今御質問があった,日本の技術をマーケティングして,それによって資金を得て,更に進んでいくというような議論があるのかという御質問もあったのですが,そこら辺について,これはJAXAの御担当だけの話ではないかもしれませんので,何かコメントはございませんか。

【庄崎室長】  私の方からお答えできるものに関して言うと,幾つか頂いた御意見は,ちょっと今後を含めて整理させていただく中でお答えできるものもあるかなと思ったのですが,例えば今御指摘いただいた,質の高い実験の点とかということですけれども,必ずしも体系的にまだ整理しているわけじゃないのですが,例えば月でも火星でも何でも,人間が行って実際に何か試料を持ち帰ったとするときに,例えば地上に持ち帰れる総量が決まっているときに,実際,人の目で比較してベターな部分だけ選別して持ち帰るですとか,そういった簡易な分析を深宇宙の方で行えることという可能性は1つあるかと思います。もう少し,事例については調べてみたいと思っています。

 あとは,今御指摘のありました,ISSの民間利用の見通しについてですけれども,少し御説明の中にもありましたけれども,例えばアメリカにおいても,そういった方向性を追求はしているのですけれども,まだ実現する見通しが立つところまで行っていないという中で,日本でも少し同じような状況なのかなと。

 もう少し,そのニーズがあるかどうかわからないのですけれども,掘り起こしですとか,あるいは,ここで言うアメリカなどで取り組まれていて,それが本当にうまくいくのかというところは,もう少し勉強が必要なのかなと。今すぐ回答は持ち合わせていないのかなというふうには思っています。

 あと,もう一つ,国際宇宙探査,有人宇宙探査のところですけれども,先ほどのJAXAの御説明につけ加えて申し上げられることがあるとしますと,ちょっと先ほど御説明しました宇宙政策委員会の資料にもあるのですが,宇宙基本計画,それから,その工程表において,全体的に「国際有人宇宙探査」という言い方をされてというところがございます。

 ただ,一方で,先ほどもありましたように,国際的に必ずしも国際宇宙探査というものを有人・無人できっかり分けられないということもありますので,国際動向を整理するとき,あるいは一般的なその考え方を整理するときは,まず,国際宇宙探査という観点から入らせていただいて,その中でも有人について留意すべき点があれば,それについても御議論いただくということかなというふうには考えています。

【藤崎主査】  わかりました。

 今まで続橋委員,角南委員,他にいらっしゃいますか。それから米本さんで,それから,金山さん,木村さんですね。よろしくお願いいたします。時間の関係がありますので,皆さん,できるだけ手短に答えてください。

【続橋専門委員】 はい,わかりました。資料19-5でございます。

【藤崎主査】  もう一つ,各委員から御提起のある問題については飛ばさないで,お答えいただけなければお答えしていただけないで結構ですから,何かおっしゃってください。

【続橋専門委員】 19-5の2ページ,必要な技術の分類分けなのですけれども,なかなか一般人が見たときにわかりにくいということがあります。もう一つ,必要性の波及効果のところです。第四次産業革命とかSociety5.0を進めていこうという中で,情報通信社会,IoTとかAIとかロボットは重要です。そこで,例えばロボット技術を大いに発展させるとか,IoTによっていろんな情報がとれるとか少し触れた方が,Society5.0などをより進めることができると思います。どんな感じで一般的に効果があるのかワンクッション入れた方がいいと思います。

 例えばここで他分野への波及効果とありますけれども,この中で総論的な,いわゆるいろんな分野のイノベーションが期待されるというのは真ん中にする,個別分野で,例えば放射線を使うというのは具体的波及効果にするといったような形で整理するのがわかりやすいと思います。

 もう一つ,質問なのですけれども,同じく19-5の2ページ目,いろんな技術が必要だというところで,この右側の下の方の無人回収に傍線が引っ張られています。一般的に考えたらはやぶさの技術はすばらしいと思うのですけれども,実際にはそうでもないのですか。

【藤崎主査】  じゃ,角南委員,お願いします。

【角南第二主査代理】  外交,安全保障,国際協力の意義のところが,やはりちょっとまだ議論が足りないというところがあると思うのですね。

 それで,やっぱり一つ,外交という観点で言えば,これは基本的には我が国と価値を共有するという意味での国際協力というのがあるのだと思うのですね。やっぱり,宇宙空間というものを,自由で,オープンで,アクセスを常に多くのアクセスを認めるというかですね。それから,ある意味ではその国,あるいは特定のところがこれを独占するようなことではなくて,常にその自由理念というか,そういったものを共有する国々と,やっぱりこの分野についてはしっかりとガバナンスを構築していく,これに貢献するみたいな何か外交的価値は多分あるのだと思うのですよね。それが我が国がやはり宇宙を利用できる国としてやはり協力していくということが,そういう何かあって,それから,安全保障的な観点で言えば,やはり低軌道に関する我々の生活の活動も非常に身近になってきている中で,この有人宇宙探査をすることによってしか得られない技術というものが,非常に多義性のある技術であって,これが低軌道における安全保障上に非常に資するというようなものを考えていけば1つ,例えば安全保障のところももうちょっと具体的に,ただプレゼンスとかというのではなくて,多義性の技術を獲得する,それも本当に多分今後の,特に低軌道なんかで容易ではというような技術なんか,例えば輸送手段なんかもそうかもしれないですけれども,例えばそういったことを,技術的な観点もこの安全保障というところに入れていけば,もう少し具体的に書けるのではないかなと思いました。

【藤崎主査】  米本委員,お願いします。

【米本臨時委員】  JAXA資料「宇宙探査技術の分析」について質問があります。宇宙探査に必要な技術項目があって,次のページでいきなり「日本が開発する意義・必要性」の項目が書かれています。重力天体以降の4つの技術項目しかやらないように受けとめられますが,その通りで良いのでしょうか。

 それから,細かい話になるかもしれませんが,重力天体着陸機で想定しているエンジンの燃料としてLNGまでは理解できます。しかし,液体水素を利用する想定は,本当でしょうか。

 最後に,文部科学省に伺いたいことがあります。この国際宇宙探査にかかわる議論において,委員やJAXAからの意見,それから国際情勢の分析に基づき検討を進めています。しかし,文部科学省としては,国際有人宇宙探査において何を目指しているのかという戦略はないのでしょうか。どういう方向に向かいたいのか何か考えがあるのであれば,お考えを伺いたいと思います。

 以上です。

【藤崎主査】  ありがとうございました。

 金山委員。

【金山専門委員】 地球低軌道の活動をどう定義する,位置付けるかです。アメリカは特にそうですし,ヨーロッパも同様なのですが,彼らは有人火星探査をファイナル・デスティネーション,最終目的地としています。それを何年に達成したいか設定し,そこに至るまでのマイルストーンとして何が必要なのかという中の要素としてISSが位置付けられていると思います。

 ところが,日本の場合,世界の動向を見ながら考えましょうというようになっている中で,低軌道をどうしようかという話をしても,なかなか方向性が決まらないと思います。もちろん自力で全部費用を負担して,技術も開発してということは難しいので,必ず国際協力という枠組みは必要だと思うのですが,日本としての絶対的な判断,日本はここを将来目指すというビジョンを持って,それに到達するために低軌道をどう利用しよう,費用をどうしようと考えることが,ロジカルなステップだと思います。

 以上です。

【藤崎主査】  ありがとうございました。

 木村委員,お願いします。

【木村専門委員】 これまでに出ている質問に共通する部分が大きいのですが,最初の1ページ目のところで,関連する技術項目を挙げていただいた上で,幾つかの項目に特にフォーカスしておられるということですね。この資料で,特に色づけしているところと色づけしていないところを,どういう根拠で仕分されているか,まずその説明が必要だと思います。

 先ほど「はやぶさ」などで実績のある無人でのサンプルリターン技術は入らないのですかという質問がありました。多分これらの項目を識別された意図が何かあって,それをちゃんと説明しないと,その後の資料につながらないのではないかなと思います。これが1点目です。

 もう1点は,関連した話ですけれども,技術のマッピングというのは基本的に戦術の問題であって,飽くまでも戦略のレベルは別の議論です。逆に言うと,何を目指すかということが決まらないと,恐らく技術のマッピングというのはできないのではないかと思います。ですから戦略的に何を目指すかということを考えないと,恐らくどの技術がどう重要なのかというのをレーティングをするのは難しいのではないかなという印象を受けます。

 以上です。

【藤崎主査】  ありがとうございました。

 中村委員,お願いします。

【中村専門委員】 一言だけ。「有人宇宙探査の重要性」の「具体的には以下のような効果を期待」のところの丸4ですね,「国民の関心の一層の向上」という後に,次世代育成とか人材育成とか,ただふわっとここに市民や国民の関心としかありませんけれども,そうではなくて,何か次世代育成のことなんかが入らないのかなと思いました。

【藤崎主査】  ありがとうございました。

 では,お答えいただく前にちょっと私の方からも一言だけ。恐らくこの2枚ございますのは,いろんな議論が各国にあるにせよ,大きな流れは,いずれより遠くへ,そして始め無人,次いで有人ということに流れが流れていくので,そこからはみ出してしまっては難しいから,どういうふうにやって,この流れに乗りながら自分の計画を立てていく。しかし,そのときに大事なことは恐らく,自分の独自のものを,技術を持っていないと,誰からも,単にお金を出してくれという相手になってしまうので,きちんとした日本の価値を持っていないといけない。それこそが外交であり,安全保障であろうという,恐らく発想で皆さん考え,そこのところは違わないのではないかなという感じがいたします。

 1つ,ちょっと伺いたいと思いましたのは,そっちの方はこれで結構でございますが,この「地球低軌道活動の考え方」でございます。この「日本がとりうるオプション」のうちで,丸2の独自又は国際協働により新たな拠点を構築という,独自の拠点を構築するという場合には,そこに輸送を含めて日本が持つということが前提で,独自という言葉があるわけでございましょうか。

 つまり,どこかに拠点があって,そこへ,日本だけで持っているわけで,日本だけで運ばなくてはなんていう意味で運ばなくてはいけなくなることを想定しているのか,これは逆,そういうことは想定していない,無人のものを考えているか。

 それから,丸3と丸4の関係でございますが,丸3は国内外の民間から実験サービスを購入すると。で,丸4も,低軌道を持たない場合に,国内外から具体的な実験サービスの提供の計画ということになるのですけれども,この2つの実験サービスの提供というのは違うものを何か意味しているのか,同じことなのか,この丸3と丸4の関係がよくわかりませんので,それをちょっと1つクラリファイを。

 以上,たくさん御議論がございましたが,簡単に1つずつ,文科省も含めてお話しいただければと思います。

【JAXA(伊東)】  それでは,19-5の資料について,御質問とかなり関係していると思いますので,まず,ちょっと表題が探査に必要な技術というものですが,これは過去数年間に議論いただいておりまして,今後我が国が国際宇宙探査の中で,先ほど主査が言っていただいたように,魅力あるパートナーとして官民でその研究開発を進めるべき技術という言い方が多分正しい表現で,そういう観点で,大きくコメントすると,優先度高く技術開発,研究を進めるべきものと,そういう整理をしたというふうに考えております。

 従いまして,この色づけですけれども,薄いグリーンの色づけに特に意味があるわけではなくて,ややオレンジっぽくかけたところを優先度を高く技術開発,研究をしていくということが今後,国際的に宇宙機関の間で話し合っているロードマップの中で,日本が参画をしていく上で,持っているべきではないか,という整理。したがって,はやぶさ2は当然実績がありまして,ここを今,急速に追加の技術開発をする必要が低いという意味で挙がってはいない,そういうことでございます。

 それから,これ以外の分類がないかというのも,あるいは,これしかしなくていいかという,そういう観点でもございません。

 それから,もう一つ,Society5.0への貢献という,全般的に貢献するような部分と,それから,1つ1つの個別の技術だけというところは,今すぐお答えはないのですが,少しそういう成果もやっていきたいと思います。

 それから,もう一つ,LNGと液酸液水という,ここなのですけれども,月や火星のその資源を使って全体をどう持続するか,効率的な探査を展開するかというような観点で,今,火星という前提とするとトレードオフして,メタンがいいかなと,国際的に議論されています。

 ただ,月に限定しますと,当然蒸発率が高い,保存性が悪いというところはあるのですけれども,メタンの資源を確保するのは難しいだろうということで,まだ液酸液水も捨てていないというので,トレードオフ対象として残っています。

【藤崎主査】  文科省の方から国家戦略をということが,米本委員と金山委員からお話がございました。

【庄崎室長】  大きな方向性としては,主査にちょっと最後おまとめいただいたようなことなのかなというふうに思っています。

 今の各国の動向ばかり見ていてもというような例もありますけれども,日本において,その限られた資源の中で,やはり一定のプレゼンス,これを進めていきたいという気持ちはございまして,そういった中で,国際的にどういうことに向かっていて,であるからこそ,日本はどうすればプレゼンスを示せるかといったところも御議論を頂いて,それが金山委員や木村委員におっしゃっていただきましたように,恐らくそれがある程度見えてきた段階で,技術ですとか具体的な施策というのが中身がマイルストーンみたいなものが詰まっていくのだと思われますけれども,きょうの段階では,そういった材料をまずお示しさせていただいているということかなというふうに思っています。

【藤崎主査】  各委員,今大体,文科省とJAXAの方からお話がございましたが,次に進んでよろしゅうございますか。はい,どうぞ。

【JAXA(浜崎理事)】  先ほどの資料19-6の,下のオプションの丸3番と丸4番でございますが,これは恐らくはっきり書かれておりません。心としては,丸3番が拠点を持たず,持たないけれども,サービスを購入する事業を建設的に組み上げる場がJAXAも含めて行ってきているといったイメージをここで丸3番。

 丸4番は,低軌道拠点を持たずに何もしないという,そういう気持ちで書いたので,中途半端な文章になっています。

【藤崎主査】  では,以上で御説明,これをしまして,議論2の委員会のヒアリングに移りたいと思います。

(2)委員からのヒアリング

【藤崎主査】  今回ご参加いただきました金山委員,倉本委員から,宇宙探査検討に当たっての御説明を頂きたいと思います。

 では,金山委員,お願いいたします。

金山委員より,宇宙探査に対する産業界の期待について,資料19-7-1に基づき説明。

【金山専門委員】 この36億ドルというのは一番上のCOTSというプログラムにかけたお金です。32億ドルはCRSというプログラムです。

【藤崎主査】  この2つは別なのですね。

【金山専門委員】 はい。前者は官民協力でロケットのファルコン9と無人補給船ドラゴンというISS物資輸送システムを費用を分担して開発しましょうというものです。後者のCRSは,その開発が終わったものを用いた輸送サービスをNASAが調達するものです。

【藤崎主査】  投資が行われたわけですか。

【金山専門委員】 これらの実績が認められて,SpaceXがベンチャーファンド及び投資家から集めることに成功した額が約11億ドルです。

【藤崎主査】  すみません,その集めることができたのは11億ドルなのですけれども,36と32はどこから来ているのですか。

【金山専門委員】 NASAです。

【藤崎主査】  NASAですか。全部,NASAですか,これは。

【金山専門委員】 はい。

【藤崎主査】  自社投資のある程度の部分と……。

【金山専門委員】 空軍がスポンサーとなったエンジン開発については除きました。

【藤崎主査】  わかりました。

【藤崎主査】  それでは,続きまして,倉本委員からお話を頂きまして,その上で議論をしたいと思います。よろしくお願いいたします。

倉本委員より,学術としての宇宙科学探査と国家プロジェクトとしての有人宇宙探査について,資料19-7-2に基づき説明。

【藤崎主査】  ありがとうございました。

 では,このお二人の今御説明いただいたことにつきまして,皆様方からの御意見をお願いいたします。牧島先生,西島先生,それから木村先生,角南先生,米本先生,向井先生で。

 では,取りあえず,ここまでにいたしまして,牧島先生。

【牧島第一主査代理】  金山委員のお話は,非常に面白かったのですが,1点お伺いしたいことがあります。ビジネスとして宇宙探査が成り立つというときに,潜在的に軍需,すなわち軍事技術の存在が大きいのでしょうか,それとも,それはなくても成り立つものでしょうか。

【藤崎主査】  次,西島委員。

【西島臨時委員】  こういう発言もあったということで。宇宙空間で重工業をやるという,その最大のメリットはどこにあるかということ。例えば宇宙資源の有効活用ということなのか,あるいは,そうではなくて地球環境を守るという点なのか,その辺の,そういう意味で活動する一番のメリットは何なのかなと。

【藤崎主査】  その際に,費用対効果の点をちょっとつけ加えて説明をしてください。

 次は,木村委員です。

【木村専門委員】 私も今の意見を大変興味深く伺ったもので,特に倉本先生の方の資料について,私もすごく無人探査とその辺の関係が深いので,とてもよくわかります。

 特に,御懸念されている有人と無人との関係といいますか,リソースの食い合いというようなところが,御懸念される気持ちもわかります。

 ただ,私は実は,やっぱり有人としての大きなストラテジーがあったときに,科学探査というのがその中でうまく,例えばパスファインダーのような役割を果たすことによってサイエンスとしての意味がという,かつそれが有人がテリトリーを広げていくのにすごく有用な情報を得ることができると思っていて,その辺はすごく重要な気がするわけですね。

 だから,そこをうまく,特に先ほどの話でいくと空間よりは惑星,特に月というようなところが非常にターゲットとしては具体的に見えていると思うのですけれども,そういったところで,科学探査をするパスファインダーとしての役割と,有人がうまく組み合わされることで,お互いにそのリソースをうまく活用できるという仕組みを目指していくというのは,非常に重要じゃないかなと思っています。

 以上です。

【藤崎主査】  角南委員,お願いします。

【角南第二主査代理】  金山委員のすごく重要な点が幾つかあったと思うのですけれども,特に,新たな事業成長プロセスのところの,調達保証というところが,かかわるもの,ベンチャー,それから産業基盤としても一番重要なポイントが抜けて,この調達保証をやるためにもちろん法整備をするのですけれども,こういうところがないと,結局,宇宙産業の将来はないというぐらいのイメージがあるのですけれども,それをやるために,こういった長期戦略のビジョンが必要でという金山委員のロジックが,もう少しそのまま我々のこの委員会でも,やっぱり意義のところにうまく乗ってくると,多分非常に,ただ産業的な意味がありますよとかというのではなくて,まず目指すことが必要で,そしてそこからのビジョンが下りてくることによって,結局,その政府調達というか,調達保証も可能になるわけで,それがないと,要するに開発の支援ばかりやっているのです。作業の発展につながらないという,このロジックを少し入れていただくと思います。

【藤崎主査】  わかりました。米本委員,お願いします。

【米本臨時委員】  最初の金山委員からの資料について質問があります。宇宙を新産業の場として活用していくというところで,放送衛星や気象衛星等の市場が発達してきています。それを超えてどのような宇宙を利用するマーケットが出現してくるのでしょうか。そういう分析が必要だと思います。国のお金でいろんなことをやる場合には,高度な民間技術がどんどん使われていくのは当然です。しかし,民間が投資するということは,そこに何か市場があって利益が必要です。マーケットの分析はどこまで進んでいるのでしょうか。

 それから,倉本委員から説明戴いた宇宙探査についても質問があります。私もJAXA宇宙科学研究所の宇宙工学委員会のメンバーの一人ですので,宇宙理学委員会との議論を通じて,月着陸実証機SLIMや火星衛星探査計画MMXの進捗状況を聞く立場にあります。前者は,宇宙工学員会のボトムアップ的プロジェクトですし,後者は宇宙科学研究所のトップダウンでスタートしたプログラム的なプロジェクトですが,いずれも宇宙科学研究所の独自プロジェクトです.しかし,本小委員会における国際有人宇宙探査の議論において,どういうわけかこれらの宇宙探査プロジェクトを政治的に利用されているような印象があります。

 この小委員会の議論は政治的に考える場ではありますが,やはり科学的な見地での宇宙探査の実行組織である宇宙科学研究所の存在を無視することはできません。しかし,この小委員会での国際宇宙探査についての議論は,宇宙科学研究所には知らされていないのではないでしょうか。宇宙科学研究所の理学委員である倉本委員の見解は如何でしょうか。

 それで,国際有人宇宙探査と言いながらも,サイエンスとしての活動が無視されているのではないかという懸念があります。国際有人宇宙探査という外堀が埋まってしまったところで,宇宙探査の実施機関である宇宙科学研究所に後付けで何かやれみたいなことにならないか心配です。

 この心配は,本当は文部科学省に聞かなければいけないところなのですけれども,宇宙探査の実施機関である宇宙学研究所がここに誰も来ていなくて大丈夫でしょうか。

【藤崎主査】  向井委員,お願いします。

【向井専門委員】 2点。1つ目は,金山委員の話ですが,私は目的地を決めるとことに大賛成です。

目的地を決めれば,より明確なビジョンを出していける。

今の予算から考えたら,選択肢としては,LEOにとどまるか,月か月近傍くらいかと。火星は有人を念頭に置いたパスファインダー的な探査かと。ISSの存続有無の議論にも,目的地を月あたりに決めて議論するべきと思います。

 2点目は,先ほどの米本委員や倉本先生の御意見に関連したものです。私が「国際宇宙探査」と「国際有人宇宙探査」という言葉の定義にこだわった指摘をしましたが,そもそも有人・無人を区別して議論しているのは日本くらいです。区別していることで国益を損なっていると私は思っているのです。

 内閣府の宇宙戦略委員会がこの委員会に質問している内容が「国際有人に限定」の感があります。ところがISEFにしても,JAXAにしても,文科省にしても,考えている内容は「国際宇宙探査」です。つまり,有人だけでなく宇宙科学探査の範囲が入ってこないとおかしいのです。

 このあたりの意識統一ができていないために,「有人を入れると無人の宇宙探査の予算がなくなる」というような議論を20年来続けてきています。そのメンタリテイを変えないと国益を損なう。そのことを指摘したかったために,「国際宇宙探査」と「国際有人」という言葉の扱う範疇を明確にして議論するべきと思いました。

例えば「国際有人」で考えるのであれば,まず目的地を決めて,人が到達できる範囲での宇宙天体に関してそこを有人で行うのか,ロボットなどの無人で探査するのかを考えるべきと思います。現時点で人が到達できない目的地の探査予算を確保するために,有人か無人かという議論では,総論の域を出ません。

【金山専門委員】 わかりました。では,牧島委員から御質問がありました軍事,安全保障の問題ですけれども,少なくとも,月へと宇宙経済圏が広がるとしても,軍事,安全保障にマーケットとして依存することはないと思っています。

 ただ,宇宙技術が軍事か非軍事かというのは,誰が何の目的で使うかによって異なるものなので,きっと軍事で培われた技術がそのまま非軍事で利用されるという今までのパターンは変わらないと考えます。

 次に西島委員から頂きました宇宙資源利用について,費用対効果も含めて本当にどれだけ有効なのかという御質問ですが,このビジネスは,月に水が存在するということが大前提で成り立っています。しかし,水がどこにどれだけあるかいまだはっきりとわかりません。きっとあるだろう,永久影のところにあるのではないか等,様々な意見がありますが,それはまだわからない状態です。これから探査を進め,存在が確認され,水を抽出できれば,それを電気分解して水素と酸素に分けて,燃料に使えます。地球から運ぶよりも,月から持って行く方がはるかに輸送のコストが安くなるだろうということで有望視されていますが,まだその程度の検討ぐらいしかできていません。幾ら投資したらどの程度のリターンがあるというところまでは,それほど深く検討されていないと思います。

 米本委員から,マーケットはどこにあるのか,検討はどこまで進んでいるのかという御質問ですが,民間でも幾つかラフな検討は進められています。ユナイテッドローンチアライアンスという,デルタ及びアトラスロケットを運用している会社が,ロケット上段のエンジンを月への輸送用に改造した場合に,事業にどのような広がりが出てくるのだろうというスタディを行いました。その結果,現在の世界宇宙市場で大体20兆から22兆円程度ですが,大体2030年になると100兆円程度になると試算していました。

 まず,宇宙活動がLEOからだんだんと月へと拡大していく間に,LEOに民間の宇宙ステーションができたり,静止衛星に燃料を注入して寿命を延ばすといった活動が行われ,更に進むと,今度は地球と月の間に有人拠点を構築する等,段階的に様々なことが達成され,それらを全部合計すると,宇宙市場は2030年頃に100兆円規模に達していると言われています。

 月への宇宙活動拡大において確実性の高い商売は特に輸送と通信です。月の測位のシステムがあれば月面での活動が飛躍的に進展すると思います。例えばそういうところをいち早く作ると,商売として成立する可能性があると思います。

【藤崎主査】  倉本委員,お願いいたします。

【倉本専門委員】 まず,木村委員の方からありました,有人と区別することは少し議論がしにくい状況となっているという御指摘なのですけれども,私も個人的にはちょっと同じような心境です。というのは,やはり,日本以外のときでは区別はせず連続的に考えているのですね。それで,ある種の有人のロードマップを見たときに,科学探査的なものと,いわゆる有人探査的なものでまず組み合わさって学んでいるのですけれども,日本の場合は何かそれを組み合わせるのはちょっと,何か微妙に縦割りというふうなところがあって,ちょっと考えにくくなっているという要素は確かにあるのだろうなと思います。ただし,それは,これまでの予算の成立経緯というものがあって,徐々に改善していくかなという。

 それから,用語のデフィニションというようなこと,それを実は私もそう思っていまして,単純に国際探査というような形になってしまいますと,宇宙研が実施している探査は実質上国際探査なのですね。ですので,背景を知らない人が聞いてしまうと本当に混同しかねない。そこは区別していただきたい。ここで議論している内容は国際探査,有人につながっていくような準備段階としてのものが国際探査という意味で使っているのかなというふうに私は理解していますけれども,ちょっとその辺のきちっとした言葉の定義みたいなのが必要というふうに思っています。

 それから,その目的地ですね。今後20年単位の方針を定めて,その上で設計をしていくというのが考えられます。

 それから,米本委員の御指摘,これは多分,牧島先生なんかも意見がおありなのではないかと思いますが,確かに宇宙研として表に見える形で宇宙研あげての関係の仕方みたいな議論はないような気がします。

 ただ,惑星科学の方の話でいきますと,やはり月の水資源の探査のところで,JAXAの筑波との検討が充実し始めているところもありまして,内部ではそこそこ,ある程度あると認識しています。

 私自身のこれに関する考え方ですけれども,これは先ほど木村委員の御指摘にあったとおりで,科学探査というものが,やはり将来の月に進出,本当に可能なのかどうかと見極めの上では非常に役割を果たしていくものと思います。

【藤崎主査】  ありがとうございました。

 では,以上お二人の委員からの質問とコメントがございましたので,議題3の,その他に移りたいと思いますが,庄崎室長の方から。

【牧島第一主査代理】  基礎研究と国際有人探査をどう整合させるかについて,この委員会として,以下のような3つのポイントを提案させていただきます。

 第1に,基礎科学研究は一般的に無人でやるのが有効で,費用対効果が良いという共通認識をもつこと。ただし2番目に,そのような無人探査も,有人探査に対するパスファインダーとして十分に位置づけられるべきだということ。3番目に,もし基礎研究とは別のロジックで有人探査が実現した場合に,それはやはり基礎研究にとって非常に大きなメリットになるので,研究者はそれを是非,積極的に使うようにするべきであること。

【藤崎主査】  2番目をもう一回おっしゃっていただけますか。

【牧島第一主査代理】  2番目は,科学主導の無人探査であっても,それは国際有人探査の非常によいパスファインダーになるので,あらゆるセクターがそのことを意識するのが良かろうという意味です。

【藤崎主査】  有人がパスファインダーになるのもあるのですけれども,そうじゃなくて,おっしゃっているのは,無人の方がと。

【牧島第一主査代理】  はい,無人でやることがそのまま有人探査のパスファインダーになり得るし,そのように位置づけることは,日本にとって大事であると思います。私は,日本は有人探査をやるべきではないと言うつもりはなくて,無人探査をやるときにも,それがそのまま有人活動へのパスファインダーとして同時に位置づけられるよう考えるべきと思います。

【藤崎主査】  知野委員ですね。

【知野臨時委員】  先ほど,目的地を早く決めることが大事だというお話がありました。それは本当にそのとおりだと思います。次は月だというのは,もうかなり前から何度もいろいろな懇談会などで出てきて,決して今回の提案が新しいことではないわけです。では幾ら提案が出ても,実現しないのはなぜなのだろうという,そのところの分析が必要なのかなと思います。また課題の4番のいち早く日本としての目的地を示すと書かれていますけれども,これは,いち早く日本として独自にということを前提にされているのでしょうか。

 というのは,やはり税金を使って実施するのかどうか,あるいは民間に頼るのか,あるいはNASAのように民間に対して国がお金を出していくのか,ということがあります。税金でとなってきた場合には,いち早くということももちろん大事なのですが,やはりきちんと探査を行うとなると,国際情勢がどんどん変わってくるので,その辺を見ながら,どうやって実現していくか,常にフィードバックをかけていかなきゃいけないと思います。その辺のところはどのように考えられておられるのでしょうか。いち早くの意義を教えていただけないでしょうか。

【藤崎主査】  申し訳ございません,ちょっと私,議事を進行いたしますので,御発言は,指名された場合だけにお願いいたします。

 実は,今日ちょっと私の議事進行が遅れておりまして,そろそろ11時が近くなってまいりました。その前に,皆様方はまだ御議論があると。向井委員も,米本委員もじっと見つめて,言いたいこと,質問があると感じていますので,実は今後の進め方についてちょっと議論をした上で,それを11時までに済ませまして,残られる方の中でまたきょうの議論を続けるということを。もう帰らなければいけない方は,その前に帰っていただく必要がございますので,ちょっとここで一旦切らせていただきまして,今後の進め方について,庄崎室長,お願いします。

庄崎室長より,国際宇宙探査の基本的な考え方に盛り込むべき項目(案)について,資料19-8に基づき説明。

【藤崎主査】  より具体的には,今の流れに沿って事務局で案をつくっていただいて,今後,メールベースで調整をしながら,次回までに大体提起できますと,こういう感じですね。

【庄崎室長】  できれば,はい,そのようにしたいと思います。

【藤崎主査】  では,ほかに今後の進め方について何かございますか。

 次回は,6月28日ですね。

 では,この点が極めて重要でございましたので今特に中断して申し上げましたが,大体11時に近くなりましたので,若干延長して今の議論を続けさせていただきますが,もし日程の都合上,退席される方は,もうそれで結構でございます。

 では,今御提起が牧島先生と知野先生からございましたが,米本先生。

【米本臨時委員】  倉本委員からは,私の質問にダイレクトに答えてもらえなかったような気がします。要するに,倉本先生,牧島先生が,本小委員会での国際有人宇宙探査に関わる論議を宇宙科学研究所の宇宙理学委員会に報告されると考えてよいのでしょうか。

【牧島第一主査代理】  よろしいですか。

【藤崎主査】  はい,結構です。

【牧島第一主査代理】  どこかでやはり,私や倉本委員などが宇宙研の宇宙理学委員会の席上で,こういう話をしなければいけないと思います。それは,この委員会の委員のうち,宇宙理学と呼ばれる分野を専門にしている者の責任だと思います。

 米本先生がおっしゃるように,宇宙科学研究所が,ここで議論されているようなことに対して無頓着であるということは,私も非常に大きな問題だと思っています。

【米本臨時委員】  宇宙科学研究所が無頓着ではなくて,この小委員会が伝えてないだけです。宇宙科学研究所は,宇宙探査について,日本の戦略的な立場でも計画を考えているのですが,それとは別の筋で議論されているということだと思います。

【堀内課長】  今の点については,国の全体の政策については,文部科学省が責任を持っているというふうには思っておりますので,ここまでの議論というのは,当然のように,ISASも,伝えるというというよりか,考えていただく分もあるかなと思っていますので,ここに牧島先生だとか倉本先生に伝えていただく,それはコミッティの責任としてそれもあるかなと思いますが,行政の方の考え方としても,ISASの方に,こういった議論についてどうお考えかということについては相談したいというふうには思います。

 あと,今ここで少し議論が十分ではなかったかなと思うのは,全部ここの議論でISASの活動というものが決まっていくわけではなくて,文科省とすれば,ボトムアップで基礎研究であるとか,また人材育成であるとかというものは別途,重要だというふうな認識のもとにいろいろなことを決めておりまして,そういう意味で,この有人の活動をすると宇宙研の予算が減らされるという,短絡的に考え方はちょっと,僕らとすれば,違うのではないかと考えているので,そういったところを含めて,ISASとのコミュニケーションは文科省としてもちゃんととりたいというふうに思っています。

【藤崎主査】  ありがとうございます。

 私は実は,向井さんのことをちょっと誤解していらっしゃいましたが,先ほど牧島先生が3原則をおっしゃったのですけれども,向井委員は,今まで有人と無人を余り分けないで各国はあれするので,日本の分け方が若干恣意的であるから,そこは無人,しかし無人は有人のパスファインダー,有人のことを基礎研究も使うべきだ。余り分け過ぎると問題だという御議論ではなかったのかなと思ったので。そうすると,御意見は違うわけでございます。同じなのですか。

【向井専門委員】 同じです。有人・無人を分け過ぎてしまうと,国際的にも同調していません。国際宇宙探査は,基礎科学を入れたレポートにするべきですが,現在のレポートは宇宙ステーション的な話がほとんどで,有人の意味合いが強すぎると思います。

【藤崎主査】  わかりました。今御議論がございましたが,倉本委員,あるいは金山委員,先ほどのに何かつけ加えてございますか。

【倉本専門委員】 いや,特にはありませんが,私の方から上の方には話をしたいと思いますし,向井先生と牧島先生の御意見に賛成しています。

【金山専門委員】 私も,宇宙探査を有人・無人で分けることは海外では余り聞いたことがない。探査という1つの軸の中で目的に応じて使い分けられているのだと思います。

 あとは,知野さんの御質問ですが,なぜいち早くという言葉を使うかということですが,もう一つの質問を教えてください。

【知野臨時委員】  プラス,独自です。

【金山専門委員】 独自ですね。いち早くということですが,最近は新聞の報道などで毎週のように,宇宙というキーワードが出てきます。政策投資銀行が宇宙に投資するとか,民間が事業アイデア募集で賞金を出すという話が,この数か月間,ほとんど毎週のように取り上げられています。このようなことは今までありませんでした。

 今まで宇宙にかかわってこなかった会社も,宇宙に何かかかわって,そこにもしかしたら商機があるかもしれないと考えるようになってきました。また,日本経済はバブル崩壊後ずっと沈んでいましたが,経済が回復して宇宙への投資を考える余裕が出てきたのではないかと思います。宇宙に投資をしようという機運は確実に高まっています。多額の税金を使うのでしたら,きちんとしたロジックを立てないといけないと思いますが,政府が宇宙探査の方向を示すことをしていただかないと,民間が先行投資というリスクをとるのはなかなか厳しい。

海外の動向を見ながらでないと日本が意思決定できないということがいつまでも続くと後手にまわることになる。2年も3年も,場合によっては5年たっても同じような状況では,きっと今と同じような投資はできないような環境になっていることもあるので,できるだけ早く日本のスタンスを決めていただきたい。

 できればISEF-2で,日本の目標を打ち出していただくと民間にとって宇宙探査に取り組む励みになる。難しい話かもしれませんが産業界としてはそういうことに期待しております。

【藤崎主査】  どうぞ,知野委員。

【知野臨時委員】  先ほども申しましたが,月は何度も,いろいろな懇談会なり審議会なりで,次の探査の候補として挙がってきましたが,でも,今の状況です。つまり,何かそれを実現していくためのシステムとか制度とか,どうやったらいいのだろうかというのが疑問としてあるのですけれども,その辺はどうお考えなのでしょうか。

【金山専門委員】 宇宙ビジネスのやり方が変わってきているのではないかと思います。従来は民間は政府のコントラクターでしたが,例えば先ほどのSpaceXは政府とのビジネスのやり方を変えてきました。

 また,昔だったらできなかったことが今だからできるということがいっぱいあります。地上の情報処理能力,例えばクラウドコンピューティングやマシンラーニング,AI等の発達がなかったら,観測衛星コンステレーションが取得する膨大なデータを処理することができない。今から10年前は技術的に不可能だったことが,今は可能になりました。宇宙及び地上双方の技術の進化により宇宙ビジネスは大きく変化しています。

【向井専門委員】 問題提起として,「国際プレゼンス」という言葉の意味するところが古いと思います。ここに出ている国際プレゼンス,JAXAが使っている言葉も,それは国主導の国際プレゼンスを意味していますが,これからは,民間をいれた国際プレゼンスで考えるべきです。例えば車業界では「トヨタ」という名前が日本の国際的なプレゼンスになっているのがその一例です。

【藤崎主査】  いろいろ御議論いただきまして,ただ,方向性としては,実は次は月であるということは,この前もその前の報告でも,2019年の月というようなことは出ておりますし,基本的な方向性はもう出ているわけでございますけれども,どこまで,また,どういう書き方をするかということはあるのだろうと。

 今のいろんな御議論を踏まえて,もう少し,今までお諮りしたものにつけ加える点があるかどうか,手直しをできる点があればやはり文科省の方で少し考えていただいて,また案をここで頂くということで,本日は非常に有意義な議論がたくさんできたと思いますので,これを少し整理いただきたいと思います。

 では,最後に一言,事務局の方から何かございますか。

【原補佐】  事務的なことについてお伝え申し上げます。

 会議資料につきましては,公開とさせていただきます。

 議事録につきましては,委員の皆様に御確認を頂いた後,文部科学省のホームページに同様に掲載させていただきますので,よろしくお願いいたします。

 次回の会議につきましては,6月28日,水曜日の15時から予定しておりますので,よろしくお願いします。

【藤崎主査】ISEF2について今後,政府の予算のほかに民間協力とか,特に最近非常にサイドイベントの民間サイドの話とか,あるいは学会との関係とか,少し御説明いただければと思いますので,よろしくお願いいたします。

 どうもきょうはありがとうございました。時間が超過いたしましてすみません。

(了)


お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課