原子力科学技術委員会 群分離・核変換技術評価作業部会(第6回) 議事録

1.日時

平成26年7月30日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館18階 研究開発局1会議室

3.出席者

委員

山口主査,中島主査代理,長谷川委員,峯委員,矢野委員,和気委員

文部科学省

田中研究開発局長,田中審議官,増子原子力課長,西田放射性廃棄物企画室長

オブザーバー

南波日本原子力研究開発機構理事,森田日本原子力研究開発機構原子力基礎工学研究センター副センター長,大井川日本原子力研究開発機構戦略企画室次長

4.議事録

【山口主査】 おはようございます。それでは,定刻となりましたので,ただいまから第6回群分離・核変換技術評価作業部会を開始いたします。
 本日は,御多忙にもかかわらず御出席いただきまして,誠にありがとうございます。
 これより議事に入りたいと思います。本日の議題でございますけれども,お手元の議事次第に書かれているとおり,群分離・核変換技術の課題対応の進捗について,それから,その他ということでございます。
 まず,事務局から出欠の確認と配布資料の確認をお願いいたします。

【西田企画室長】 放射性廃棄物企画室長をしております西田でございます。
 まず出席の確認でございますけれども,本日は藤田先生から御欠席の連絡を受けております。
8名中7名の委員に出席いただいておりますので,定足数である過半数を満たしております。
 続きまして,本日の配布資料でございます。座席表,第6回群分離・核変換技術評価作業部会の議事次第,それから,資料6-1といたしまして,これまでの検討と政策的状況,資料6-2といたしまして,今年度の作業部会の進め方,資料6-3といたしまして,日本原子力研究開発機構(原子力機構)の方から,加速器駆動核変換システム(ADS)による分離変換技術開発の進捗状況,資料6-4といたしまして,ADSターゲット試験施設(TEF-T)検討の進捗状況,資料6-5といたしまして,核変換物理実験施設(TEF-P)の検討の進捗状況。それから,参考資料1,最後に参考資料2として名簿をお配りさせていただいております。
 資料の欠落等ございましたら,会議の途中でも結構でございますので,事務局にお申しつけいただければと思います。
 資料につきましては以上でございます。
 続きまして,山口主査に議事の進行をお願いさせていただく前に,澤田主査代理から日立GEニュークリア・エナジー株式会社の御退職に伴う辞意の御連絡がありまして,7月18日付けで新しく峯(みね)委員に御就任いただいておりますので,お知らせしたいと思います。
 また,今回,澤田先生の御退任に伴いまして,主査代理が空席となりましたため,主査から後ほど主査代理の御指名をお願いしたいと考えております。これは群分離・核変換技術作業部会運営規則の第2条第7項の規定に基づくものでございます。
 それでは,山口先生,よろしくお願いいたします。

【山口主査】 それでは,進行させていただきます。
 最初に,新しく加わっていただいた峯委員より一言御挨拶を頂きたいと思いますので,峯委員,よろしくお願いいたします。

【峯委員】 日立GEニュークリア・エナジーの峯と申します。私は,現在,東京の方で燃料サイクル,高速増殖炉(FBR)関係の事業全体を統括する立場でおりますが,キャリアとしては,入社以来,「もんじゅ」等のFBRのシステム設計を数十年やっていた経験がありますので,今回のADSもかなりナトリウム(Na)に近いような鉛ビスマス(Pb-Bi)等,そういうところで有意義なコメントができればいいかなと考えております。よろしくお願いします。

【山口主査】 よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。
 続きまして,運営規則第2条第7項に,事故があるときに私の代わりにお願いする委員の方を,主査代理として指名することになっております。私からは中島委員に主査代理をお願いしたいと考えておりますが,中島委員,いかがでしょうか。

【中島委員】 山口先生,頑丈そうなので大丈夫だとは思いますけれども,謹んでお受けいたします。

【山口主査】 どうもありがとうございます。
 では,これから中島委員に主査代理として御協力いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 では,ただいまから議題に入りたいと思います。
 今回は原子力機構,それから,事務局の方で資料の用意をしていただいております。それぞれ説明していただいた後に,質疑,議論を行わせていただきたいと思います。
 初めに,議題の1番,群分離・核変換技術の課題対応進捗について,事務局より資料6-1と6-2について,併せて説明を頂きたいと思います。
 では,事務局よりよろしくお願いいたします。

【西田企画室長】 それでは,資料6-1に基づきまして御説明をさせていただきたいと思います。昨年11月の当作業部会の中間とりまとめ,中間的な論点のとりまとめをしていただいて以来,政策的な動きがございますので,それにつきまして簡単に御説明をしたいと思います。
 まずは中間とりまとめ以降でございますけれども,本年4月にエネルギー基本計画が,震災以降初めて改訂されております。そうした中で,高レベル放射性廃棄物処分につきまして,地層処分を進めていくということは依然として変わっておりませんけれども,それと並行しまして,放射性廃棄物を適切に処理・処分し,その減容化・有害度低減のための技術開発を推進する。
 具体的にはFBRや加速器を用いた核種変換など,放射性廃棄物中に長期に残留する放射線量を少なくし,放射性廃棄物の処理・処分の安全性を高める技術等の開発を国際的なネットワークを活用しつつ推進するということでございまして,エネルギー政策の中でもFBR,加速器を用いた核種変換技術の研究開発を進めるということが国の政策としても明示されたという状況がございます。
 現在,資源エネルギー庁を中心に最終処分の進め方につきまして,検討が進められているところでございますけれども,その中においても,地層処分を進めていくと同時に,放射性廃棄物の減容化・有害度の低減の研究開発を並行して進めるという議論になっているところでございます。
 そうした政策的な背景もございまして,これはどちらかと言いますと予算的なものでございますけれども,平成26年6月24日の第12回経済財政諮問会議において,「経済財政の運営等改革の基本方針」というものがとりまとめられております。俗に言う「骨太の方針」というものでございます。資源エネルギーに関する取組に関しましては,放射性廃棄物の減容化・有害度低減のための研究開発,核不拡散の取組,高温ガス炉など安全性の高度化に貢献する技術開発の国際協力等を行うとともに,こうした分野における人材育成についても取り組むということで,今後の予算等の中での重点事項という位置づけがなされているところでございます。
 1枚めくっていただきまして,最近の核変換関係の動きといたしまして,参考資料としまして,作業部会の委員をしていただいております藤田先生の御提案が,総合科学技術会議の革新的研究開発推進(ImPACT)プログラムの中で採択されております。このImPACTプログラムにつきましては,全体予算は550億ほど総合科学技術会議が予算をとっておりまして,各課題について50億円程度で,プログラムマネージャーのリーダーシップによって革新的な研究開発を進めていくという研究制度でございます。
 このたび,藤田先生の方から,理研と原子力機構が協力するような形で総合科学技術会議に提案がございまして,その中で非連続イノベーションのポイントといたしまして,例えばRIビームファクトリーを用いた核分裂生成物(FP)の核変換の取組とか,あるいは,高レベル放射性廃棄物から白金属のような有用物の抽出,リサイクルといったような試験研究を進めるということで採択されているところでございます。
 我々との関係といたしましては,原子力機構はマイナーアクチニド(MA)の核変換を中心に国の原子力政策の一貫として進めさせていただいているところですけれども,藤田先生の方はFPの核変換といったものを,より先進的な部分の研究開発をするというふうに認識しているところでございます。しかしながら,MAの核変換にしろFPの核変換にしろ共通的な技術基盤はございますので,これらの推進に当たりましては,国としても積極的に協力・連携をしてまいりたいと考えているところでございます。
 最近の状況としては以上でございます。
 続きまして,資料6-2といたしまして,今回の作業部会の進め方ということで整理させていただいております。御議論いただきたい論点は,昨年度作業部会の中間的整理の中で,今後,核変換実験施設を整備するに当たって,それがきちんと進めていけるかどうかというレビューを行うということを,中間的な整理の中でまとめていただいたところでございます。それらを踏まえまして,今回,群分離・核変換技術,特に加速器を用いた核変換技術につきまして,現在の取組状況のレビュー及び達成状況を踏まえまして,今後の進め方について御検討いただければと考えております。
 具体的には,TEF-Tの技術的課題の対応進捗状況とその評価,それから,TEF-Pの同じく技術的課題の対応の進捗状況とその評価,また,その他の課題といたしまして,国際協力,連携,人材育成等,前回作業部会の中間整理の中で示された課題についての対応の進捗状況評価について,レビューをしていただければと考えております。
 また,そうしたレビューを踏まえた今後の進め方につきまして,作業部会としての何らかの見解をまとめさせていただければと考えております。作業部会といたしましては,今回のテーマに沿いまして,今回7月30日の会合をさせていただいた後と,8月下旬にその他の課題と作業部会の見解の案をお示しさせていただきますので,御議論いただければと考えております。
 今後の作業部会の進め方案につきましては,以上でございます。

【山口主査】 どうもありがとうございました。
 それでは,ただいまの事務局からの資料6-1,資料6-2の説明につきまして,御質問や御意見などございましたら,お伺いしたいと思います。いかがでしょうか,何かございますか。
 よろしいでしょうか。
 本日は,原子力機構を中心に御検討いただいたTEF-T,TEF-P,その他の課題の進捗状況,特に技術的な側面かと思いますが,これから御報告いただいて審議いただくわけですが,今後の作業部会の進め方というのでは,資料6-2のような形で,一つ重要なポイントは作業部会として見解をまとめるということがあるかと思いますので,そういう観点でいろいろお考えいただいて,本日の審議を進めていきたいと思います。
 特に御意見がないようでしたら,次の話題に移りたいと思います。
 続きまして,資料6-3,6-4,6-5を合わせて,原子力機構から説明をお願いしたいと思いますが,最初に原子力機構の南波理事から一言いただいて,それから説明いただきたいと思います。
 どうぞよろしくお願いいたします。

【南波理事】 原子力機構理事の南波でございます。昨年の第1回,第2回,第3回の会合に出席させていただいております横溝理事の後任として,昨年の10月からJ-PARCセンターを担当させていただいております。
 皆様よく御存じのように,原子力機構では昨年の10月から1年間を集中改革期間として改革を進めているところでございます。本件に関しましては,「もんじゅ」における点検漏れ,さらに,J-PARCセンターのハドロン施設における放射性物質漏えい事故に端を発した機構改革でございますが,この中で,私どもが組織をより強くし,研究開発を進められる組織にしていくことを進めております。
 その改革の一貫といたしまして,今年の4月から事業を大きくくくる形で,6部門制を発足させております。本件に関係するところでは,原子力基礎工学並びにJ-PARCセンター,こういった分離変換技術全体を統括する部門として原子力科学研究部門を発足させております。これに関しましては,前回並びに前々回出席させていただきました上塚理事が部門長として所掌させていただいております。
 さて,今回の加速器駆動核変換システムによる分離変換技術開発に関連しましては,この施設に関連するJ-PARCセンターは,皆様よく御存じだと思うのですが,旧日本原子力研究所の中性子科学計画と高エネルギー加速器研究機構の大型ハドロン計画の2つを組み合わせて,J-PARCセンターとして大強度陽子加速器施設を東海に建設したわけでございます。
 東海に建設するに当たってはADSと言いますか,加速器駆動核変換システムは,原子力施設でもございますので,東海に設置するのが適当であろうということで,残念ながら第1期の計画の段階ではできなかったわけでございますが,先ほど西田室長さんから御説明がありましたとおり,現在,エネルギー基本計画あるいは経済財政運営の基本方針等でこの推進が明記されております。
 原子力機構といたしましても,このADSのプロジェクトはJ-PARCセンターの中での,原子力機構における,私どもの松浦理事長の言葉を借りれば悲願であるという,非常に重要なプロジェクトと位置づけておりますので,本件に関しましても,この加速器を用いた核変換技術の対応の進捗について評価等よろしくお願いしたいと思っております。
 さて,資料6-3でございますが,1枚めくっていただきまして,1枚目に加速器駆動核変換システム(ADS)の開発のロードマップを示しております。横軸が時間で,縦軸はそれに必要なADSシステムの出力の規模をあらわしております。先ほど申しましたように,J-PARCに関しましては,建設の推進を始めた段階ということになるわけですが,これまでもループ実験,京都大学臨界集合体実験装置(KUCA)での実験等の基礎試験を進めております。
 2008年にJ-PARCセンターが立ち上がり,施設が稼働を始めたわけでございますが,今年度,J-PARCはいよいよリニアックの出力1 MWを達成する状況になっています。このエネルギーの一部を使いまして,J-PARCの核変換実験施設の中でPb-Biの核破砕ターゲット技術,あるいは,核変換の炉物理等の研究開発を進めていきたいと考えております。これに関しましては,2025年から30年ごろに実用段階に進めるかどうかの判断を行い,その後,実用のADSプラント等の設計,建設等に進めていければと思っております。
 原子力機構におきましては,平成17年,2005年に核燃料サイクル機構と統合いたしまして,原子力機構が発足したわけでございますが,その中で,これまでの核変換の部分に関しては,ADSのみならず,FBRあるいは核燃料サイクルの技術等の蓄積もございますので,これを更に組み合わせて,全体をよりよいものにしていければと考えているところでございます。
 では,以下の詳細に関しましては,前川の方から説明させていただきます。

【前川リーダー】 原子力機構J-PARCセンターの前川と申します。引き続きまして,次のページの線表から説明させていただきます。
 このページは,本作業部会で検討すべき課題と今後の見込みをまとめた線表でございます。真ん中から上に,TEF-T及びTEF-Pについて建設に当たり検討すべき課題と評価のポイントをまとめています。
 次ですが,平成26年ころにチェック&レビューのTEF-T課題評価というのがありまして,これがこの作業部会に当たります。ここで評価を受けまして,また,現在製作しています試験機器類等を活用して,来年夏までにクリアすべき課題を解決,できれば最速で平成28年に着工するという検討です。
 TEF-Pにつきましては,来年までに新規制基準や核セキュリティへの対応方針について規制当局と調整し,平成28年に評価を受けるとともに,設置許可手続を行い,平成30年着工を目指しています。また,並行してTEF-Pで使用するMA燃料の供給体制を考えます。そして,両TEF施設を数年以上運転して,ADS実用化の判断に必要な実証データを取得した後,平成40年ころにFBRとの比較評価を踏まえ,実用化の判断を頂くということになっています。
 表の下段には,国際協力や人材育成,産学連携等の昨年度作業部会での御指摘への対応をまとめて記載しており,これらについては次回の作業部会で進捗状況を御報告いたします。
 昨年の作業部会以降のTEF-T及びTEF-Pの研究開発進捗状況をまとめたものが2ページ及び3ページにあります。なお,これらの内容については,次の資料6-4及び6-5でそれぞれ詳しく紹介しておりますので,ここでは項目を述べるにとどめさせていただきます。
 まず,TEF-Tですが,1として,陽子ビームが入射する窓材の開発のための可能な限り高い照射量が得られるターゲット設計。2として,ADSのターゲット材及び冷却材として使用できるPb-Bi共晶合金(LBE)及び構造材料の腐食防止に重要な酸素濃度制御機器や,流量・圧力・液位といったパラメータの計測機器の開発。3として,ターゲット保守では,Pb-Biの特徴的な予熱・保温設備付き循環系の遠隔保守技術の確立。4として,TEF-Tで照射した材料試験片の照射後試験を行うため,原子力機構の既存施設と連携し,円滑に照射後試験が可能となる環境の構築。以上でございます。
 次のページに進みまして,TEF-Pの進捗状況です。1としまして,TEF-PではMAを含む燃料で構成した未臨界炉心に陽子ビームを導入し,未臨界炉心の物理的性質や,ADSの運転制御性を調べるものであり,原子炉等規制法の規制を受けるため,新規制基準に適合した安全性の高い施設設計が必要です。2として,最新の核物質防護規則を取り入れた施設設計及び核物質管理体制の構築。3として,施設で使用するMA燃料製造が課題の一つであるため,実験に必要なMA量の見積りと確保の方法,プルトニウム(Pu)との混合酸化物調整法,燃料ピンの製造法等の検討。4として,放射線量・発熱量の高いMA含有燃料取扱い技術の確立。5として,炉物理・核データの分野では,パルス陽子ビーム入射時の未臨界度計測技術開発や,少量のMAによる核データの検証。
 これらがTEF建設に当たり解決すべき課題の概要であります。
 次のページではTEFに関する研究開発以外の研究開発について進捗状況を簡単にまとめています。なお,詳細につきましては,参考資料1にまとめていますので,お時間があるときに御覧いただければと思います。以下,このページのポイントを御説明いたします。
 まず,群分離ではMAをランタノイドとともに抽出する工程以外の開発,つまり,MAとランタノイドの分離について,ソフトドナー抽出剤,ハイブリッド抽出剤といった新しい抽出剤の有望な分子構造を見いだしました。
 燃料製造/乾式再処理の分野では,軽水炉燃料用の挙動解析コードを参考に,MAを高い濃度で含み,かつ,窒化物である燃料用のふるまいコード開発に向けた技術調査,コード整備方法の検討を行いました。
 次に,原理実証段階に移行するためのMAの調達,MA燃料製造設備の整備,実用燃料ピン設計では,これらの検討を開始いたしました。
 次に,相当量のMAを使用する物性測定やサンプル照射試験等を効率的に進めるため,既存の熱物性測定装置に加え,機械物性測定装置の整備に着手し,また,MA含有燃料照射用サンプルの製造及び照射試験内容の検討に着手しました。
 国内外の研究機関等と協力し,幅広い可能性に柔軟に対応できるように研究開発を進めることに関連し,MA核変換用燃料として可能性のある,ウランを含有せず高濃度でMAを含有する酸化物分散型燃料について,欧州及び原子力機構内の研究開発状況の調査に着手し,また,FBR用金属燃料の乾式再処理研究で実績のある電力中央研究所との共同研究によって情報交換を実施しました。
 次に,実用ADSの開発について,燃焼反応度変化を最小化して加速器出力変動幅を抑制するため,燃焼特性解析用に3次元燃焼解析コードを開発しました。
 安全性の高いADSプラント概念を構築するため,プラント動特性解析コードを整備しました。
 また,ビームトリップ頻度の低い信頼性の高いADSとして,ビームラインを並列化した加速器概念を構築しました。
 次のページからは,7月10日,11日に開催されましたJ-PARCのTEFに関するテクニカルアドバイザリー委員会(T-TAC)について御紹介します。J-PARCでは,J-PARCを運営する原子力機構と高エネルギー加速器研究機構の2者により,J-PARC全体の運営,利用及び施設整備にかかる重要事項に関して審議する国際諮問委員会が設置されています。T-TACは国際諮問委員会の下の一専門部会という位置づけであり,核変換実験施設に係る技術一般の評価を行うため,今年新たに設置されたものです。
 委員はここに記載のあります7名の方々で,主にターゲット施設関連技術にお詳しい先生方にお願いしております。また,TEF-Pについて評価いただくため原子炉物理が御専門の福井大学の竹田先生に加わっていただいております。
 T-TACは2日間にわたって開催され,初日から2日目の朝にかけて原子力機構からTEF建設に向けた準備状況について御報告し,これを受けて,2日目の午後に議長からサマリーの報告がなされました。正式なレポートはまだ届いていないのですが,本日は暫定的なサマリー報告のみを御紹介いたします。
 次ページに移りまして,まず評価のポイントとしまして,J-PARCから,ここに記載のあります4項目を委員に提示しました。TEF-Tの概念設計及びTEF-Pとの共存の適切性,基本パラメータ,LBE中性子生成ターゲットシステムの実現可能性,安全性。以上4点です。
 頂いた評価の概要としましては,全体としてJ-PARC核変換実験施設建設に向けて現在行っている技術開発を今後も推進するようにとの評価を頂きました。
 また,様々な指摘事項を頂いておりまして,それらを次のとおりまとめています。
 陽子ビーム輸送系では,大きな問題はないのですが,工事の実施に伴うJ-PARC全体への影響を検討すべきだ。
 ターゲット設計ではPb-Bi流れの滞留域はない方がよい。また,ビーム窓からの赤外線によるビーム形状の測定を推奨する。
 Pb-Biループの1次系につきましては,高温腐食試験ループで試験を行って,その結果をターゲット設計に反映すべきだ。TEF-Tループの系統的な安全解析をすべきだ。
 Pb-Biループの計装については,流れ場における長期の酸素濃度計の試験を実施すべきだ。
 多目的利用については,TEF-Tの本来目的に影響せぬよう,多目的利用の設計は慎重にすべきだ。
 最後に,TEF-Pにつきましては,MAを含む燃料手配の方法を確立すべきだ。また,様々な形態のMAの燃焼効率を測定するための計画を立案すべきだ。
 以上でございます。

【南波理事】 それでは,引き続き6-4の説明をさせていただきます。

【佐々サブリーダー】 J-PARCセンター核変換セクションの佐々と申します。資料6-4につきまして説明させていただきます。
 表紙に続きまして,2ページ目です。これは今,前川の方から6-3の中でお話しさせていただいたものを絵に落としたもので,今日お話させていただく項目の目次に相当するものでございます。いろいろな構成要素について並行して検討を進めておりますが,今日はこの吹き出しに記載したものについて御紹介させていただき,中でも赤字の部分について重点的に御報告させていただきたいと考えております。
 3ページにまいりまして,核破砕ターゲットについてでございます。資料の体裁ですけれども,それぞれの項目について,何を目指して,今まで何をしてきたか,そして,今後どうしていきたいかというような流れで資料をまとめさせていただいております。
 まず,ターゲットでございますけれども,目標としましては,可能な限り高い照射量が得られる核破砕ターゲットを設計する。寿命としては1年程度もつようなことをクライテリアとして検討してまいりました。
 これまで詳細な解析モデル,ターゲットのみではなく周辺の構造物等を入れたモデルを作成しまして,そこに陽子ビームが投入されたという状態での詳細な核特性を検証しております。その中で,核破砕ターゲットの中に入れるサンプルの照射量を算出し,今後の試験計画の策定にこれを適用してきております。
 このときに得た発熱密度分布を基に熱流動-構造解析を連成して実施いたしまして,このターゲットで許容し得る陽子ビームの入射条件を設定しております。
 このときの計算結果が右にお示ししたグラフでございます。横軸がターゲット容器の中で発生する最高の温度,縦軸がそのときにかかる最大の応力を示しております。赤い線,青い線と2本ありますのは,中には流すPb-Biの流れが速い場合,遅い場合に相当いたします。遅い場合の方が温度が高い方に行くことがおわかりいただけると思います。線上に引いてあるドットはそれぞれビームの密度を表しており,数字が上がっていくほどビームをより収束させて,局所的なビームにしていくという照射の仕方を設定しております。
 使用可能範囲というピンクのところは,FBRのSUS316,ステンレス鋼の使用限界を示しているものでありまして,こちらと比較して条件を設定しております。Pb-Bi流速が遅い場合ですと,大体20μAの照射量で,Pb-Biの流速を倍に上げるともう少し収束させてあげられて,30μAという少し高い照射強度が得られるという結果が出ております。この20μAというのが一つのポイントになっておりまして,これが我々の今目指している実用ADSで策定されている最高のビーム密度に相当しているところでございます。ちなみに,J-PARCの水銀ターゲットはこれが6μAぐらいということで,比較的高いところをねらっているものであるということを御理解いただければと思います。
 戻りまして,この条件の下では陽子ビームを連続して照射する場合ですけれども,J-PARCの場合にはパルス照射になって,若干,強度的には厳しい方向になります。そこで,J-PARCのパルスの条件を想定しまして,ビームがパルスで当たった場合の健全化を解析で改めて確認し,それをリファレンスの条件にできるだろうと考えているところでございます。
 現況といたしましては,このリファレンスの形状について,ターゲットの試作機を製作しております。冷却系のモックアップループも製作中ですが,これと接続しまして,照射がない状態で機能するかを検証していくことを考えております。その検証を踏まえて,27年度中にはリファレンス設計を確立していこうと考えております。
 次にまいりまして,系統の計測制御技術。これは2ページで御紹介させていただきますが,最初は一番重要だと考えております酸素濃度制御です。材料が腐食しないためにPb-Bi中の酸素の濃度を適正に制御する必要があるというのが一般的に言われています。そこで,まずは酸素の濃度を測るセンサについて,2種類の酸素濃度センサ,右の写真にお示ししております,ドイツ製のものとベルギー製のものを用いて,酸素濃度を精密に測ることができるだろうかということから検討をスタートさせております。
 これを基にしまして,流れのない小型のポット,数リットルぐらいの鉛の入ったポットの中に酸素センサをつけまして,その少量のPb-Biに対して酸素濃度が制御できるかという検証実験をしております。その検証結果が右下のグラフでございますけれども,左側の点線が4月9日をあらわしておりまして,右側の点線が4月15日のデータでございます。1週間ほどのデータですけれども,赤い線がSCK,ベルギー製のセンサが出力した信号でございます。
 こちらを見ていただきたいと思いますが,青い線がある一定のPb-Bi中の酸素濃度が,例えば10のマイナス7乗%ですと,センサは350 mVの出力を示す。あるいは,10のマイナス4乗ですと,センサは130 mVぐらいを示すということですが,この範囲の中で酸素濃度を適正に管理できている。通常ですと,酸素が消費されて酸素濃度が減っていく方向になるわけですけれども,このピークが出ているところで酸素を供給している状態になります。
 酸素を供給する期間は酸素濃度が高い方に上がりまして,それが落ちついてしばらく6乗ぐらいのところで推移する。また,あるところで条件設定をしまして,そこから酸素を入れると少し下がって,また落ちつくというようなことを繰り返し,制御できているということで,10のマイナス4乗から10のマイナス7乗の範囲で十分制御できていることが確認できたというのがこの成果です。
 現在,これを,小型のポットではなく,流れるPb-Biの中で同じことをできるか検証する準備をしているところでございます。また,センサはどちらもヨーロッパ製で,これを安定して供給するために国産での試作も実施しております。あわせて,このセンサを効率よく校正する装置を準備しております。
 今後につきましては,流動下での酸素濃度制御を確立するとともに,センサの国産化と,そのセンサを安定して利用可能な状態にする校正装置を運用する技術を確立していこうと考えております。
 次に,その他のパラメータ計測について御説明いたします。主に流量と圧力,液位を御紹介いたしますけれども,冷却系の状態監視に不可欠な計測の開発と高温への適用性を確認するという作業を進めております。
 これまでの成果としまして,FBR技術を応用した超音波式の流量計を試作して動作試験を実施しております。右図の下の横に長い写真が超音波流量計のセンサが設置されている箇所でありますが,Pb-Biの流れの中にセンサを入れまして,超音波によって流量を測るという技術でございます。これについては,今,予備試験を進めているところで,おおよそ妥当な値が出てきているということがわかっております。
 次に,水銀のキャピラリ式,キャピラリというのは圧力を伝えるチューブのことを申しますけれども,中に水銀を封入したものを使ってPb-Biの系統の中で圧力を見ようということで,右上の写真のものを適用しています。温度が使用範囲外になりますが,高温できちっと作動するかを検証して適用性を確認しているところでございます。
 また,Pb-Biの液がタンクの中でどのぐらいの高さになっているかということを確認するために,FBR技術の応用になりますけれども,連続式で液の高さが測れる液位計について,これはもともとNa用のものですが,Pb-Biの中でちゃんと動くかということを検証しているところでございます。これがわかりますと,Pb-Biが少量漏えいしたということを想定しても,いち早く検出できるということでこれを適用して,その精度等を確認しているということでございます。
 検討の現況でございますが,超音波流量計につきまして,こちらの写真はPb-Biの流れの中にセンサを入れている形のものですが,Pb-Biに接触しないタイプのものができないかということで,より安全性,メンテナンス性が高いものの試作を進めているところでございます。
 また,圧力計につきましては,J-PARCの水銀ターゲットがもう稼働しておりますので,そこで耐放射線性が検討できないかを議論しているところであります。
 また,それぞれの機器につきましては,モックアップループを製作しておりますので,そこで流動下での機能試験も改めて実施しようということで準備をしております。
 今後の展開としましては,27年度までにそれぞれの計測技術を確立し,これを設計に反映していくということを考えております。また,圧力計につきましては,フィルタ部の閉塞や,流量計測の補助的な役割といったものにも使えないかということで,異なる方法で重要な物理量を測ることを,設計に反映することを考えております。
 次に,ターゲットのメンテナンスについてお話させていただきたいと思います。ターゲットのメンテナンスで一番重要となりますのは,操作はすべて遠隔操作になるというのがこの核破砕ターゲットの特徴になっております。加えて,Naのように予熱設備が必要ということで,遠隔による予熱・保温という,従来十分な経験のない技術開発が必要になっております。そこにつきまして,既存の技術を含めて適用性を確認していくことにしております。
 これまでJ-PARCの水銀ターゲット用の遠隔操作に対応したフランジについて,Pb-Biループの適用性を検証する機器を準備してきております。これは下の要素技術試験装置という写真が該当いたします。ここに一つ,FBR技術を応用した装置として,Pb-Bi循環系の予熱・保温を行うパッケージヒーターと呼ばれる装置を入れて,循環系統の温度保持が正しくできるかということを確認しております。
 このパッケージヒーターの写真は,右上の吹き出しの中に入っているものでございますが,円筒形を半分に割ったようなもので,中の空洞の部分に配管のフランジが入るという仕掛けになっております。外側には保温材が入っていて,保温材とフランジが入る部分の間にヒーターが仕込まれているという装置でございます。これはもともと「もんじゅ」などで使われているもので,原理的にはうまくいくと考えていますが,まずは確認するために,パッケージヒーターをこの装置に入れて温度特性等を見ました。
 あわせて,要素技術試験装置の写真の右側にマニピュレーターというアームが見えているのがおわかりいただけるかと思うのですけれども,このアームを使ってパッケージヒーターをハンドリングできるかという試験をしております。この試験の結果いろいろな課題がわかりました。「もんじゅ」の場合にはハンズオンのメンテナンスで取り扱う状態のものでしたので,遠隔で扱うといろいろ課題がございまして,これについての対応をしたパッケージヒーターを現在改良しているところでございます。
 また,高温での遠隔フランジそのものの適用性についても試験をしています。また,温度が非常に高くなってくると,配管の熱延び等をどうしても吸収しないと漏れが生じる可能性が高いということも明らかになってきましたので,そこを吸収するような構造についても検討しています。
 今後は,冷却系モックアップループを用いて遠隔保守の検証試験を行うとともに,保守の概念を確立し,27年度中には対応する要素技術を確立したいと考えております。
 7ページにまいりまして,ホットセルの設備ということで,照射後試験について。これは前回の評価部会の際に,試験するだけではなく,照射後試験まで含めた一体的な仕組みを考えておくべしという御指摘を頂きまして,そこについて検討したものでございます。目標としましては,既存施設と連携し円滑に照射後試験が可能となるような環境を構築するということで,これまでに既存施設における試験機能等を整理しまして,今後必要となる試験機器については整備を始めたところでございます。
 また,J-PARCの既存施設での照射試験片切り出し手法について,こちらをTEF-Tでも使えるということの確認をしているところでございます。
 右の図を御覧いただきたいと思いますが,こちらでTEF-Tの中でどこまでやればうまくつながるかということを御紹介しております。下の緑色で示した2つの施設は既存の施設であります。実用燃料試験施設あるいはWASTEF施設というのは,原子力科学研究所の敷地内にある施設でございます。そこに試験装置等をインストールしている状態です。
 この施設を使って照射後試験を行うのに,TEF-Tでどこまでやればいいかというのが一番上に書いてございますが,ターゲットからサンプルになる部分を切り出す。あとは,切り出した部分の内部観察を行う。さらには,切り出したものから実際に試験を行う形のサンプルに加工する。ここまでをTEF-T内の機能として持たせることができれば,照射後試験が非常に円滑に進むということが見えてきております。
 今後につきましては,ターゲット保守と整合するような照射後試験関連装置のセル内への配置を煮詰めていくことを考えております。
 8ページ以降は,その他の検討事項について概略だけ御紹介させていただくという形をとらせていただきたいと思います。
 施設設備の検討としまして3つ上げております。1つは,遮蔽体の設備ということで,セルや多目的照射エリアなど,隣接するそれぞれの部屋に応じた遮蔽構造を設定するということで,ターゲットや遮蔽体の詳細な粒子挙動解析モデルによる解析を実施しているところでございます。
 今後につきましては,この施設配置と整合するような合理的な,あるいは,コストミニマムという意識も当然中にはございますが,遮蔽構造の配置概念を構築していくということを進めているところでございます。
 放射性物質の処理設備につきましては,事故時を含む施設の放射性物質の閉じ込め機能確保から,核破砕反応によって生成する物質の解析と,水銀ターゲットの経験から対象になる物質がどれかという選定作業を進めているところです。
 今後につきましては,水銀ターゲットの設備をベースにしまして,PoはじめPb-Biで特有に考えておかなければならないものの処理設備を付加した設備の配置を検討していくことを目指しております。
 また,安全解析につきましては,事故時の系統・設備の挙動を解析し,必要な安全対策,設備を設置することを目指しまして,安全解析コード,RELAP5と呼ばれるコードを用いまして,Pb-Biでこれを適用できるように改良しまして,その検証作業までを実施してきております。今後は系統機器類からの事故事象を設定し,これに基づく安全解析を行って,必要な安全対策を検討していくという作業に移りたいと考えております。
 次のページで,陽子ビームラインの検討ということで3項目御紹介いたします。1つは,多目的利用ですが,主ターゲット,Pb-Biの照射ターゲットと両立可能な広範な科学技術研究に資する施設概念を提案できればと考えております。そのために,メインターゲットで分岐したビームとメインのビームがそれぞれどのような相関を示すのかという解析を現在実施しているところでございます。
 今後につきましては,それぞれが干渉しないようなビームラインと実験エリアを提案できるような配置を検討しているところでございます。
 また,J-PARCの線形加速器からビームを取り出す技術につきましても検討を進めておりまして,リニアックから安定してビームをTEF-Tと,他施設というのは既にJ-PARCにある既存の施設でございますが,ここに振り分ける設備を設置するということを目標としまして,複数の取り出し概念の中で最適な方法を選定し,それに対応する電磁石を今試作しているところでございます。
 試作電磁石につきましては,その磁場特性を検証するとともに,その駆動に必要な電源の設計を今後進めていくことを考えております。あわせて,加速器が停止する期間が最短となるような施設の設計の進め方についても検討を進めているところでございます。
 次に,レーザーによる微小出力の陽子ビームの取り出し。これは原子炉施設である核変換物理試験施設に,高い精度で出力の低いビームを取り出す機構を設置することを目指しまして,設置するものでございます。現在は取り出しの大本になるレーザー光源の安定性,あるいは,一回の照射中でどのぐらいの耐久性を持つのかという試験を実施しているところでございます。今後は,これを用いて安定してビームを取り出せるラインの配置を検討していこうと考えております。
 最後に,それぞれの項目はどのようなスケジュール感を持って進めているかということを簡単に説明させていただきたいと思います。横軸に年次をとっておりまして,縦軸にそれぞれの要素技術をどう進めるかということを記載しております。今日御紹介したものの項目の番号も併せて項目の脇に記載いたしております。
 試験に関しましては,ほとんどのものについてはできるだけ27年度あるいは28年度中に完成して,すべて設計に反映していこうと考えております。一部の装置につきましては,その後も試験を継続しまして,例えばターゲットの流動試験ですと,照射後試験,実際にターゲットの中で照射したサンプルと同じPb-Biで流動の中にもあるけれども,照射がされていないサンプルをつくるのに使用しまして,照射による効果を際立たせるような試験のために,サンプルをつくるのに継続して使っていく。あるいは,材料試験につきましては,もちろん設計にも使いますけれども,その後の施設のアップグレードなどにも役立てていこうというようなスケジュールを立てております。
 まとめといたしまして,昨年度中間とりまとめとの指摘に沿いまして,次のステージを目指す施設概念の検討を進めてまいっております。
 J-PARCにおける既存の水銀核破砕ターゲットの設備設計を参考にして,Pb-Bi特有の課題に対応した設備概念を加えて施設の概念を構築しているところでございます。
 ターゲットループとともに多目的利用の検討やビームラインの配置等も併せて実施させていただいております。
 以上でございます。

【南波理事】 それでは,引き続きまして,資料6-5, TEF-P検討の進捗状況に関して,辻本から説明させていただきます。

【辻本リーダー】 原子力機構の辻本です。TEF-P検討の進捗状況について説明させていただきます。
 資料をめくっていただきまして,2ページにTEF-Pの課題に関する対応状況の概要をお示しさせていただいております。課題といたしまして,1から5まで挙げさせていただいておりますが,そのうちの1から4に関しては,昨年度のこの評価作業部会の中間とりまとめで御指摘いただいた事項であります。5に関しては,ADS開発の課題ということで挙げさせていただいております。1から5に関しまして,これ以降これまでの成果,現在の状況,今後の展開ということで説明させていただきたいと思います。
 まず3ページですけれども,最初の課題といたしまして,新規制基準への対応ということです。皆様御存じのように昨年12月18日に研究炉に対してもいわゆる新規制基準が規制庁から施行されております。TEF-Pに関しても,これは原子炉施設になりますので,新規制基準に適合した安全性の高い施設設計を実施する必要があります。
 これまでの成果でございますけれども,TEF-Pで使用するMA燃料の量を基にいたしまして,耐震設計上の重要度分類の予備検討を実施いたしました。もともとTEF-Pは既存の原子炉施設である高速炉臨界実験装置(FCA)の燃料,施設にほぼ準拠したものを使用することを想定しております。現在,FCAに関しては耐震設計上の重要度分類が終わっておりまして,我々はBクラスと評価しています。ただし,TEF-PではFCAの燃料に加えて新たにMA燃料を使用することがあります。したがいまして,この想定しておりますMA燃料を使用した場合の耐震設計上の重要度分類ということで,予備的な検討を実施しているところです。
 それから,施設・設備仕様に関しては,新しい規制基準が出る前に我々はTEF-Pの設計を進めているところですけれども,これに対しまして,新しい基準に対応して設計変更が必要なもの,あるいは,追加増強が必要な項目をこれまでに抽出しております。
 現在の状況ですけれども,TEF-Pの施設・設備仕様に対しまして,新規制基準に対応した設計変更等の検討を現在実施しているところです。それから,TEF-Pは東海の原子力科学研究所に設置することになりますが,東海の原子力科学研究所の設計地震動とか津波遡上高さといったものは現在検討中です。ただ,隣接する原電の東海第二発電所で既に新規制基準への適合性確認審査申請が出されております。
 参考ですけれども,右に示しましたように,東海第二発電所では設計地震動としてM9.0で901 galというものを想定しています。さらに,津波遡上高さとして約17mという想定をしておりまして,原子力科学研究所においても東海第二発電所の値を参考にして現在検討を実施しておりまして,TEF-Pに関してもこの想定値が出てから施設の耐震設計を進めていきたいと考えております。
 したがいまして,今後の展開といたしましては,東海原子力科学研究所の想定地震動あるいは津波遡上高さを考慮いたしまして,新規制基準に適合した設置許可申請書を作成していきたいと考えているところでございます。
 続きまして,核不拡散・核物質防護・核セキュリティについての,これまでの成果及び今後の展開について説明させていただきます。これにつきましては,最新の核物質防護規則を取り入れた施設設計及び核物質管理体制を構築するということが目標になります。
 これまでの成果ですけれども,IAEAから最新の核物質及び原子力施設の物理的防護に関するガイドラインが出ておりますので,これを参考にいたしまして,施設設計で対応が必要な項目を抽出しております。これに関しまして,TEF-P及びTEF-Tの区域設定につきましては,我々だけではなくて原子力科学研究所全体で考える必要がありますので,これまでに核変換実験施設の区域設定を検討する検討チームを原子力科学研究所内に立ち上げています。
 現在の状況ですけれども,右に示しましたように,この検討チームで施設設計の具体的な立入り制限区域とか周辺防護区域の検討を実施中であります。これにつきましては,核セキュリティということもありますので,簡単な図で示してありますけれども,内部では具体的な出入管理とか周辺防護区域の設定といったものの検討を実施しているところでございます。
 それから,MA燃料等につきましては,炉心装荷位置の把握とか,核物質管理用の自動識別装置のモックアップ装置を現在作成中でありまして,来年2月には完成する予定となっております。
 今後の展開ですが,最新の核物質防護規則を取り入れた施設設計を行うとともに,燃料識別装置のモックアップ試験等を反映いたしまして,核物質管理体制を検討していきたいと考えております。
 続きまして,TEF-Pで使用を想定しているMA燃料の製造に関する検討状況を御説明させていただきます。先ほど申しましたように,TEF-Pでは既存のFCAの燃料を使うことを前提としておりますが,それに加えて新たにMAを反映した燃料を製造することを考えております。
 FCAの燃料は板状燃料ですけれども,MA含有燃料に関してはピン状燃料を使用することを想定しております。現在,そこに示しましたような条件の下に必要なMAの量を推定いたしました。特に優先的に実験が望まれるアメリシウム(Am-241)に関して,燃料ピンの概略仕様を基に必要な量を評価しましたところ,Am-241が約30㎏必要だということを我々は推計しております。
 原子力機構の施設内には,これまでに製造したMOX燃料のスクラップがありますが,その中に含まれているAm-241の量を推定したところ,Am・Pu燃料ピンを製造するのに必要なAm-241は含まれているということで,必要な量は確保できる見通しを得ております。
 ページをめくっていただきまして,実際にMA燃料の原料となるAm・Pu混合酸化物粉末の必要量を確保するということで,どういったプロセスでAm・Pu混合酸化物粉末を作成するかということの検討を実施しております。先ほど申しましたように,原料としては,経年化したMOX粉末からAmとPuの混合酸化物を作成するということで,既存の技術の応用で構成可能なプロセス概念を構築いたしました。
 そこの図に示しましたようなプロセス概念で原料となるMOX粉末からAm・Puの混合酸化物粉末を作成するプロセスを検討いたしまして,現在は必要なMA燃料を確保するための混合粉末を作成するのに必要な施設・装置の概念検討を実施しているところでございます。
 今後の展開ですけれども,このプロセスを最適化するための基礎データの設計を進めるとともに,工学機器の設計等を進めていきたいと考えております。
 さらに,燃料粉末から試験用のAm・Pu燃料ピンの製造手法も検討しておりまして,次のページになりますが,原料粉末から最終的な製品である燃料ピンまでの製造プロセスを検討しております。燃料の形態としましては,現在,酸化物,これは酸化マグネシウムに分散させたAm・Pu混合酸化物,あるいは,窒化物のどちらかを最終的な製品とするということで,候補概念として挙げております。
 現在の状況ですけれども,来年度から試験用の燃料ピンを製造するための装置検討に備えまして,燃料ピンの機械的物性,あるいは,試験用の燃料棒を製造するための装置を進めているところでございます。
 今後の展開といたしましては,コールド物質あるいはMA含有燃料の小規模試験によりまして,必要な製造手法を確立していきたいと考えているところでございます。
 続きまして,MA燃料の管理・取扱いということで,TEF-Pに装荷するMA含有燃料の取扱い技術に関する現在の状況について説明させていただきます。
 MA含有燃料は放射線量・発熱量も高く取扱いが非常に困難と考えております。これまでTEF-Pが参考にしております既存のFCAでは,すべての燃料は人が手で扱って,炉心への装荷もすべて人手で行っていました。しかしながら,MAが含まれた燃料に関しましては,線量や発熱量が高いということで,人が扱う場合は被ばく量も高くなるということで,遠隔での取扱いが必要だと考えております。
 そこで,我々は遠隔で炉心にMA燃料を装荷する装置の概念検討を実施いたしまして,現在,遠隔でMA燃料を炉心に装荷するためのモックアップ装置を製作中でございます。さらに,MA燃料が炉心装荷中の冷却性確保のための空冷によるモックアップ装置も作成中でありまして,この2つのモックアップ装置は両方とも来年2月には完成予定であります。
 今後の展開ですが,製作したモックアップ装置を使ってMA燃料の取扱い方法を確立し,装置設計に反映していきたいと考えております。
 続きまして,ADSの炉物理・核データの課題ということで,まず1つ目といたしまして,未臨界度計測技術の開発について説明させていただきます。これの最終的な目標といたしましては,実用ADSに適用可能なリアルタイムでの未臨界度計測システムの開発でございます。
 現在までの成果ですけれども,京都大学原子炉実験所の臨界集合体(KUCA)を使わせていただきまして,パルス状の陽子ビームを使った未臨界度測定法を開発いたしまして,KUCAにおいて実証試験を実施いたしました。そこに示してあるグラフは,2つの炉心で未臨界度を段階的に変えた場合に,未臨界度を適切に測れるかという試験をした結果でありまして,計算値と合わせても非常によく一致する結果が出ております。
 今後の展開ですけれども,これを高速中性子体系へ適用できるような検討を実施いたしまして,最終的には実機ADSへの適用性を検討してまいりたいと考えております。
 最後になりますけれども,炉物理・核データのもう一つの課題といたしまして,少量MAを用いた核データの検証を進めてきております。これは,昨年度,原子力システム研究開発事業という公募事業で採択されまして,私ども原子力機構と京都大学が共同で提案させていただいた課題の中で実施している課題の一つであります。
 この中では,先ほど申しましたKUCAを用いまして,Pb-Bi冷却ADSを模擬した炉物理実験を実施することを計画しております。昨年度はPb-Biの反応度測定実験を実施いたしました。今年度以降は,KUCAにおいてウラン・Pb-Bi燃料体を炉心中心領域に装荷した模擬体系を構築いたしまして,静特性・動特性による炉物理パラメータの測定を実施することを考えております。
 さらに,電着膜に蒸着した少量のMAサンプル,これはNp-237・Am-241を想定しておりますけれども,こういった核種の少量サンプルを使用した反応度測定実験を来年度以降計画しているところであります。
 最後になりますけれども,TEF-Pの建設に向けた計画ということで,今実施しております課題につきましては,主にTEF-Pの設置許可申請書に反映させていきまして,建設に向けて進めていきたいと考えているところです。
 MA燃料に関しては,製造にもかなり時間がかかるということで,長期的な目で見てもらっておりますけれども,TEF-PにMA燃料が確実に装荷できるように検討を進めてまいりたいと考えているところであります。
 以上で説明を終わらせていただきます。

【山口主査】 どうもありがとうございました。
 それでは,ただいま説明いただきました3つの資料につきまして,審議に入りたいと思います。御意見や御質問など是非御発言ください。何かございますか。
 非常に広範な内容をお話しいただいたので,どこからというのがなかなか難しいところもあるのですが,特にTEF-Tでいろいろ指摘事項を頂いているというのも議論の上では参考になるところかなとも思いますので,その辺も見ながら進捗状況を。それから,進捗状況は幾つか重点的に説明いただいたということもあって,2~3行だけ説明があってよくわからないというところもあろうかと思いますので,そういう確認も含めて,まずはどういう点でも結構だと思います。お気づきの点,御発言ください。
 どうぞ,中島委員。

【中島主査代理】 細かいところを幾つか。まずは,6-4のTEF-Tのセンサを試験されておりますが,私も専門ではないので教えていただきたいところですけれども,例えば4ページで酸素濃度の測定をやって,これに海外のものを使われておりますけれども,これらセンサ自身の精度とか時間応答性能というのは当然ながら別途確立しているというか,測定されているということでよろしいですかね。

【佐々サブリーダー】 はい。ドイツ製のもの,ベルギー製のもの,それぞれ特性について押さえています。

【中島主査代理】 あと,これは日単位の時間幅で振ってあって,あるところでわっと酸素を供給して抜けて,どこかで飽和するというのを見ている。これは腐食という観点ですから,時間応答としてはこのぐらいのオーダーで見られれば十分な性能であるという理解でよろしいでしょうか。

【佐々サブリーダー】 はい,おっしゃるとおりです。

【中島主査代理】 それから,その次のプロセス計装でのFBR技術を利用した液位計ですけれども,これの原理はどういうものかということと,その精度はどの程度のものかというのを教えていただけますか。

【佐々サブリーダー】 これは中にコイルが入っておりまして,その電位で位置を検出するということで,割と細かい精度まで見えるようにはなっております。

【中島主査代理】 磁場ではなくて,電位でということですか。

【佐々サブリーダー】 そうです。磁場のかかっているところの電位差で見える。

【中島主査代理】 わかりました。
 今度はTEF-Pの方で教えていただきたいのですが。最初に新規制基準の対応というところで,SSの話とかも出ておりますけれども,現在,FCAではBクラスしかないということで。まずTEF-PでSクラスがあるかどうかというのがひとつ判断で,SクラスがあればSS地震動のことも考えなくてはいけないということですけれども,Sクラスがあるかないかは,確か何もしないときに周辺で5mSvの被ばくが起こり得るかどうかということなのですが,そこの検討はどうなっているのでしょうか。

【辻本リーダー】 実際に実施いたしまして,最も保守的な場合,すべてのMA燃料が破損すると。しかも,建屋,それから閉じ込め等の基本性能が期待できないという場合には,敷地境界で5mSvに相当するような放射線量に……。

【中島主査代理】 そうですか。海岸から敷地までは相当距離があるような気はするのですけれども,それでも線量が高くなってしまうのですか。

【辻本リーダー】 例えばAmが30㎏という場合はかなり線量が高くなりますので,予備的な検討ですけれども,そういう評価になっております。

【中島主査代理】 飛んでいく要因がないような気もする,化学形とか例えば温度条件とか,酸化物だったらそんなにも遠くまで行かないだろうと気もするのですけれども。

【辻本リーダー】 そこは今申しましたように最も保守的な評価ですので。

【中島主査代理】 Sクラスがあるとないとで,扱いというか設備設計は全然違うので,保守的であることはいいと思うのですけれども,精査する価値は十分あるかなとは思います。
 それから,MAとして当面問題となるAmをまず先行してということですが,それ以外のMAについて入手のめどあるいは製造の技術というのはどういうことになっているのでしょうか。

【辻本リーダー】 それ以外で一番問題なのがNp(ネプツニウム)-237でございます。Np-237については,今のところそれだけの,例えばキログラムオーダーのものが入手できる見込みはないという状況です。ただし,原子力機構ではありませんが,ロシアのBFSという臨界集合体がありまして,そこでは10㎏程度の燃料を使ってNp酸化物を使った実験があります。その実験結果を我々も入手しておりまして,Np-237につきましては,完全ではありませんが,そういったデータは応用可能だと判断しております。そういった意味でもまずはAm-241ということでございます。また,将来的にはNp-237を入手したいと考えているところです。

【中島主査代理】 アメリカでも昔Npの臨界実験があったと思いましたが。
【辻本リーダー】 PLANETという非常に小型の実験装置で,Np-237の金属球を用いた実験です。ただ,これもOECDがまとめておりますベンチマークに載っておりますので,そういった形ではデータも応用可能だと思っております。

【中島主査代理】 わかりました。ありがとうございます。

【山口主査】 よろしいでしょうか。
 その他にはいかがでしょうか。どうぞ,長谷川先生。

【長谷川委員】 6-4のターゲットの件についてちょっと伺いたいのですが。寿命1年程度と設定されているのですけれども,何を目安に寿命がきたと判断するのでしょうか。

【佐々サブリーダー】 これはパルスの繰り返し応力……。

【長谷川委員】 それは使用条件の方ですよね。材料の方からすれば,例えば原子炉の圧力容器であれば,モニタリングサンプルを持ってきて実際に試験をして,ある基準を超えたらこれはもう寿命だとやっているのですけれども,この場合の寿命というのは,使用している方で「これで寿命だ」と言っているけれども,本当にそれが大丈夫なのか。もっと使えるのではないかという,良い方と悪い方両方考えられるのですけれども,それについてはどういうふうに考えるのですか。

【佐々サブリーダー】 今一つだけお答えしてしまったのですが,その他にも例えば中性子の照射量とか,腐食量をどこまで見込めるかと。今,ビーム窓の部分は非常に薄い設計にしておりまして,腐食量が見込めない状態になっています。酸素制御がうまくいけばそこは見込まなくても大丈夫だろうと思うのですが,まだそこまでの自信が我々にない。そこを織り込んで,そこが入れ込めるような厚みのスタイル,大体それで1年ぐらいもてば良いかなという目安として考えているところです。

【長谷川委員】 ということは使いながらモニタリングができるということですか。実際ビームを当てているときにどうやって肉厚を評価していくのか。あるいは,定期的にビームを止めて,そのたびに評価する,というのがいいのですけれども,とにかくここが破れてしまったら元も子もない話なので,事前に想定したやつよりも早くダメージを受ける可能性が一番困るわけですね,最初立ち上げのときというのは。ですから,そのときは止めて測って,止めて測ってとやるのか,あるいは,ずっとやりながら遠隔でそれを評価していって,だんだん危なくなってきたとかいうことを考えるか,その手法について伺いたいのですが。

【佐々サブリーダー】 まずはおっしゃったとおりで,寿命1年は想定はするのですけれども,寿命限度一杯に使うということは最初からはやらないで,数箇月程度で止めてみて,外してみるというような手順で試験を進めていく形になっております。

【長谷川委員】 実際に使ったときに,先ほど言ったモニタリング試験のようなものがこの設備でできるかどうかということについてはどうなのでしょうか。

【佐々サブリーダー】 減肉をオンラインで測るというのは難しいと我々も思っていますので,そこについては直接,減肉を測るのではなくて,例えば水銀ターゲットで進めている音響で測ったりとか,違う手法でその変化を把握する方法,その辺をうまく使えれば使っていけると思っております。

【長谷川委員】 とにかく加速器とターゲットの間の隔壁の部分で,ここがバウンダリとしては結構シビアなところですし,かなり膜厚も薄いところで,そこが壊れると全体にかなり大きなダメージがいくので,止めないと測定できないままにせず,運転中に,先ほどおっしゃった音響でも結構なのですけれども,そういうのをあらかじめ用意しておくことが,今この試験のときはいいのですけれども,実際のADSを使い始めたときに止めなければわからないということでは困るわけですよね。
 だから,寿命をin situで,肉厚,減肉でもいいですし,あるいは,この温度でやっていくとスエリングとか起こしてくるから,多少その他の物性も変わってくるかもしれませんけれども,それを常にモニタリングするというような手法を何らかの形で手当しておく必要があるのではないかと思うのですが。

【佐々サブリーダー】 実際のところ今おっしゃったようなオンラインの問題もありますので,これというのが出るものではないですけれども,まずは実際のADSでの寿命評価がまさにこの試験施設の試験目的でもありますので,この試験施設を経てそれがちゃんと評価できるようになって,実機につながればいいと我々も考えております。
 もう一つ,ビーム窓の破損についてですが,先ほどのオンラインモニターとのトレードオフになってしまうところがあります。設計中のPb-Biターゲットや,現在J-PARCの中性子源で使われている今の水銀ターゲットもそうですが,ターゲットの外側に水をめぐらすジャケットをもう一つ,セーフティハルと呼ばれているオーバージャケットをつけています。それが覆ってしまいますので,外側からは直接見ることができない。ただ,それがあることで,一番厳しい部分が破れてもPb-Biは外に出ません。そういうような対策はとれる。ここは試験ですので,当然,安全対策を優先してということで,セーフティハルを設けて試験していこうかなと考えています。

【長谷川委員】 セーフティハルはビームを通らないのですか。

【佐々サブリーダー】 通ります。

【長谷川委員】 ということは,逆に言うとセーフティハルの方がビーム窓よりも前,上流側にあるわけですね。

【佐々サブリーダー】 そうです。

【長谷川委員】 そうすると,場合によってはセーフティハルの方が温度が低くてビームが強くてということになると,セーフティハル自身も安全性が担保されないといけないことになると思うのですよね。あるから大丈夫ではなくて,逆にそっちがより厳しい条件になっているという可能性があると思うのですよ。

【佐々サブリーダー】 その辺,資料でも御紹介させていただきましたが,詳細な解析モデルの中にセーフティハルを,その手前にある加速器等のバウンダリのウィンドウ等を全部入れた状態で解析した上で議論はさせていただいています。

【長谷川委員】 核破砕ターゲットのTEF-Tのやつは横置きターゲットですよね。本来考えているADSは大体みんな垂直入射ですね。ですから,ジオメトリーが違うことによって流れとか腐食の状況はかなり変わってくると思うのですけれども,それについてはどういうふうに,将来のADSを見越してやるとすると。つくるのだったら横置きが作りやすいのだろうけれども,最後は垂直入射にして,そっちの方が条件が緩いのかどうか,もっと厳しくなりはしないかということについてはどういうふうにお考えですか。

【佐々サブリーダー】 この検討は割と早い段階で我々もやったのですけれども,ターゲットの大きさと流速を比較しまして,重力のかかる動きが違うわけですから,その影響が出るかなとみてみました。今の流速条件,ここにお示ししてあるような流速条件であれば,重力の影響はほとんどないだろうと考えています。
 横置きでおっしゃるとおり流れの向きも,今は材料に冷たいLBEが先に当たって,温かくなって出て行くということを考えているのですけれども,実際のADSだと温まりながらビーム窓を冷やしていくという流れになりますので,それを模擬したようなターゲットもつけてみて試してみる。これは材料研究がある程度進んだところで行う予定ですが,候補が出てきた段階で実際の流動状況を模擬したターゲットに置き換えて試験をしてみたいと考えています。

【長谷川委員】 今ちょっとおっしゃいましたけれども,私は流れがどっちだったかとさっきからよくわからないので,資料をひっくり返したのですけれども,この試験のものの場合は冷たい冷却材が先に窓に当たって中心部に流れ込んでいくのですね。

【佐々サブリーダー】 そうです。

【長谷川委員】 本当のADSは下から沸き上がって出て行く方ですよね。

【佐々サブリーダー】 加熱された後に窓に当たります。

【長谷川委員】 だから,完全に流れが窓に当たる条件が逆転していて……。

【佐々サブリーダー】 そうです。

【長谷川委員】 なおかつ,そこに当たる環境の条件が,ビームが当たったものを全部含んでから窓に当たる場合と,窓に当たっているところの,例えばPb-Biが一番フレッシュな状態とではかなり違うと思うのですよね。

【佐々サブリーダー】 おっしゃるとおりです。

【長谷川委員】 その意味からすると,最終的なADSを目指すのであれば,流れが逆転するとか,縦と横が変わるとか,こうすればいいですというのを何らかの形で今の段階でシミュレーション,数値解析だけではなくて,何らかの形でモックアップをつくってやっていかないと,システムがガラッと変わるわけですね。単にスケールアップではなくて,逆転する場合もあるわけなので,その辺についてある程度見通しを立てていかないと。ターゲットの安全性にかかわるところですので,その辺はもう少し慎重に。計算すればいいというふうにはいかないような気がするのですね。

【佐々サブリーダー】 はい。順次やっていきたいと思うのですが,まずはわかりやすいところというか,変動要因のより少ないところで,温度の低いところから安全を確認しながら,進めていくということで。おっしゃるようなターゲットの形状についてもデザインを今進めているところですので,順次そちらの試験も進めていきたいと考えております。

【長谷川委員】 もう一つは酸素濃度制御についてです。先ほどから伺っていると酸素濃度計測の話であって,制御というと増やしたり減らしたりできる話で,積極的に減らすためのシステムはこの中に入っているのですか。これは自然に酸素がなくなっていきますよという話に伺ったのですけれども,積極的に酸素を減らすシステムはここについているのですか。

【佐々サブリーダー】 酸素濃度については,濃度的な制御でこの値の範囲におさまるように選択しています。自然にと申しましたのは,何もしなければ酸素がプアーな方向に向かうというのが現象的には明らかなことなので,どちらかというと酸素を入れることによって一定値を保つ制御が必要になるわけですけれども,こちらのグラフで谷のピークになっているところで酸素を吹き込む操作をしています。

【長谷川委員】 ということは,腐食を防ぐのにちょうどいい酸素濃度のレベルがあると,少なすぎても駄目だということですね。

【佐々サブリーダー】 ある幅に押さえる必要がありまして,少なすぎると鋼材の近傍にできる酸化被膜がどんどんなくなっていきます。酸素が多すぎますと,どんどん厚肉になっていって配管自身の閉塞につながるということで,ある一定の幅にすることで酸化被膜が一定の状態に保たれる。
 それが10の4乗から7乗とここに載っていますが,TACでは5乗から7乗に制御しろと言われていまして,このピークをもうちょっと狭くエレガントに制御しなさいということを言われていますが,今の状態で狙っているところにはコントロールできています。

【長谷川委員】 積極的に減らすシステムはなくても,どっちかというと吹き込んでいって一定にする方が必要な技術であると,そういうことですか。

【佐々サブリーダー】 ドイツでPb-Biのループを結構長い期間運転していますが,そこでも同じ現象で,どちらかというと回していれば酸素は減る方向に動くというところから,ドイツでも酸素を吹き込む操作を主体として制御しています。

【長谷川委員】 どこかで酸素はくっついているわけですよね。それがこのターゲットのどこかわからないけれども,低温部なのか高温部なのか,どこかで吸着しているという。一番肝腎なところにおいてはこの幅におさまるようにする。そのために必要な技術はむしろ減らすよりも,吹き込むか何かして一定に保つ。センサと吹き込む技術があればいいと,そういう理解でよろしいですか。

【佐々サブリーダー】 はい,そういうことでございます。

【長谷川委員】 わかりました。ありがとうございます。

【山口主査】 その他にはいかがでしょうか。どうぞ矢野先生。

【矢野委員】 ターゲットの話が出ていますので。それについて心配なことを御指摘いたします。窓に当たるビームの密度をこれ以上小さくするなというやり方はあるのですけれども,これ以上上げるなというのはなかなか難しいのではないかと思うのです。
 つまり,この前のJ-PARCの事故ではないですけれども,すべての電源が安定してずっと動くとは信じ難いのです。いろいろなトリップがかかるような仕掛けをしたとしても,たくさんのフォーカシングレンズが並んでいて,どこでどう間違うかわかりませんので,数倍のビームフォーカシングにパッと変わってしまうということはあると思った方がいいと思うのです。そうすると,どれぐらいの時間,どれぐらいフォーカシングが強くなってしまった場合に,今の薄い窓が一体何秒ぐらいもつのか。
 それでももたなかった場合は破れるわけですよね。破れてどうなるのか。実機のADSを考えるわけですから。何が起こるのか。これに答えを用意しておかないと危なくて,実機はつくっていいのかどうかわからなくなるのではないかと思うのです。そういう大故障が起こったときに,一体何が起こって,それは安全という範囲の中で終結するのかということを真剣に考えておかないといけないと思います。

【辻本リーダー】 例えば実機ADSでビーム窓が破れた場合どうなるのかというのは,私どももそこが一番心配なところでして。飽くまで解析ベースではあるのですけれども,そういった解析はやっております。何が起こるかというと,ビーム窓が破れて真空のダクトの中にPb-Biが侵入するわけですね。そのレベルは振動するのですけれども,最終的には炉容器内の液面レベルに落ちつきます。そうしたときに何が起こるかというと,まず真空は破れますので,それ以上ビームはこなくなります。
 なおかつ,今まで真空だったところにPb-Biが入ってきますので,反応度的には正の反応度が入ることになります。ただし,そのレベルは未臨界が臨界になるようなレベルではないです。したがって,核的な安全性は保たれますし,出力はすぐに落ちてしまう。ですから,加速器の装置を保護するという意味では非常に致命的ですが,安全上例えば放射性物質が大規模に外に漏れるとかいうおそれは今のところないと考えます。ただし,飽くまでそれは解析ベースの話ですので,本当にビーム窓が破れたときにどういう現象が起こるのかというのは,検証実験は必要だと思っております。

【山口主査】 その他にはいかがでしょうか。どうぞ和気先生。

【和気委員】 個々の要素技術の専門的内容についてはよくわからないというか,評価しにくいのですが,ADSという先進技術が国内あるいは国際社会にどういう貢献をするかという枠組みで見るとき,エネルギー基本計画でも明記されておりますように,国際協力あるいは国際技術協力を前提に,研究開発を進めていくのが一番効果的だし,効率的だし,より安全だろうということは専門技術に素人な私にも理解できるところです。最初に御説明があったADSロードマップにおいて,国際協力による技術実証施設の整備が,2020年前後から具体化していくというようなイメージ図が描かれておりますが,国際技術協力に幾つもの段階があるとすれば,国際協力は既にスタートしているだろう,より進行しているだろうと,それをきちんと確認し,評価した方がよいかと思います。
 ところで,こういう言い方は変かもしれませんが,個々の研究者は往々にして自己の問題意識やテーマに拘泥し,その結果,国産技術,固有の技術に過度に執着するという側面があると思います。実際には,海外のいい技術を使うことができるのであれば,あえて日本で技術開発の対象になるような要素技術にこだわらなくてもいいという判断もあるのではないかと思います。
 例えばわかりやすい例で言いますと,ターゲット試験のところの4ページの国産センサをつくるというところで,ドイツ製やベルギー製のものではなくて,国産のセンサをつくる技術を確立するのだということが一つの研究目的になっていますが,既に海外でそれなりに使える技術あるいは設備機器があるのであれば,どんな形にせよこれを使って,日本サイドでは比較優位のある要素技術に特化していくような,そういう国際技術協力全体の絵がどこかにあるのではないか,あるいは描かれるべきでないかと思います。
 今はここしか気づかなかったのですが,その他にもこのような国産にこだわらないでもいけるものがあるのかもしれない。そうしないと,あるところから唐突に国際協力というのが出てくるのはどうもおかしいような気がするので,国際技術協力の,特に具体的なところはもうあるのだろうと思うので,是非その辺を確認しながらやっていっていただきたいというのが1つ。
 もう一つの質問は,全体のロードマップの検討する議題と今後の見通しのところで,2026年とか2027年の前後でFBRとの比較評価という課題が出てきます。この比較評価という問題ですが,これから10年先に相当程度結論に近い形の評価結果が出るという見込みなのか,どういう技術的知見が整えば比較評価ができるのか,今後10年強という時間軸はどこから出てくるのかなど,もう少し御説明いただければ有り難いなと思います。

【南波理事】 最初の御質問で,国際協力の部分に関連してですが,ADSに関連いたしましては,国際的にも大変注目されているベルギーのMYRRHAプロジェクトが動いております。ここで書いている実証試験というところはそういったものを想定して記載したものでございます。
 それから,2つ目の個々の装置あるいは部品等の部分に関しましては,後ほど佐々の方から補足してもらいますが,こういったところの必要なものに関しての技術開発等は進めているところでございます。
 最後のFBRとの関連部分,今現在,こういったものを消滅処理させるに当たっての手法として,基盤の技術はかなり近いものがあるわけですが,ADSを使ったものとFBRで消滅処理というような2つの考え方がございます。その基盤のところは同じものがございますので,並列して進めていくわけですが,最終的な炉の体系としてどちらがふさわしいのかというのは,検討の上で詰めていくものであると考えております。
 では,補足をお願いします。

【佐々サブリーダー】 それでは,資料6-4の4ページのセンサについてでございますけれども,このセンサについては特別なものがありまして,御覧いただいている写真の白い部分がセラミックでできております。非常に破損しやすいものでして,系統の中に複数本を一遍に入れておいて,壊れたら取り替えるのではなくて,その他のものの2~3台を使って測定するというような形で進めていかなければいけない。
 そうすると,それなりの数が必要になってくるわけですけれども,これはどちらも研究所の名前ですが,それぞれがインハウスでつくっていまして,安定供給してくれるかという質問に対しては,保証できないと断られてしまいました。購入できればよかったのですが,独自に大量に抱えておかないといけないという性質のものでしたので,国産を目指すことを考えています。一方で,それを使う技術につきましては,先ほどドイツの技術のお話をさせていただきましたが,技術についての協力に関しては現在も進めているところでございます。

【西田企画室長】 ただいま和気先生から御質問があったことの補足につきまして。FBRとADSの分離変換技術の比較検証につきましては,原子力機構に取り組んでいただいて,技術的な状況とかコスト的な見込みの他に,政策的な状況も評価する上では必要だなと考えております。我が国として核燃料サイクル政策を将来どのようにするのか,今はFBR,加速器,両方並行して研究開発を進めるということでございますけれども,将来どういう形の核燃料政策あるいは原子力政策をするかによって,どちらの技術をより重点的に取り組むべきかというあたりはまた新たな指標として出てくると思いますので,今後そういうことも踏まえた判断をしていくということを考えています。

【山口主査】 私が言うのも何ですが,FBRとADSはこうやって比較して決定するような話とは違って,もともとのミッションを踏まえると,こういう形でロードマップの中にFBRとの比較評価というような大きな枠組みの書き方をするような話ではないとは思いますが,廃棄物の減容を行うという趣旨でどちらの技術がより適用性なり実現性があるかという分析は意味があろうかとは思います。
 その他に何かございますか。どうぞ峯委員。

【峯委員】 私,Naシステムは設計にずっと携わってきたのですが,Pb-Biのループがどんな特徴があって,どんなふうに違うのかというのを理解していないので,質問なのですが,最初に運転温度は何度ぐらい。

【佐々サブリーダー】 このターゲット施設の場合には,Pb-Biの温度としては,初期は摂氏250度から300度ぐらいで,実際の運転で一番高くねらって,これはノミナルの温度ではありませんが,ビームが当たって一番高くなるところでのPb-Biの温度で550度ぐらい,温度差は大体100度前後ということを考えています。融点は125度でして,そういう意味では系統設計とかヒートバランスはNaとかなり近い形がとれます。

【峯委員】 そうですね。沸点がかなり高いのですよね。

【佐々サブリーダー】 そうです。沸点は高いです。

【峯委員】 なので,ベーパーとか蒸気圧に関しては比較的マイルドということですかね。Naに比べたら。いずれにしろ,類似した現象に対する設計上の配慮はほとんど同じような課題がかぶっているのかなという気がします。
 今日の資料6-4で何点か気になったのですが。5ページで超音波流量計を挙げられていますが,確かにFBRでは高温でも耐えられるような超音波流量計の開発があるのですが,基本的に数十年の実績があるのは電磁流量計なので,特別コンパクトにしたいとか,配置上難しいとか,特殊な理由がない限り電磁流量計を使うことがいいのかなと思っているんですが,Pb-Biの場合に電磁流量計を使えないような理由があるのかないのかというのが質問です。
 それから,その次に連続式液位計で少量の漏えい事象の検知が可能と書かれているのですが,確かに液位変化で漏えい検知を間接的に見るというシステムもNa炉でも取り入れていますが,少量の漏えい検知はガスサンプリング式とか接触式などを複数多様化してつけておりまして,今回のPb-Biも実機でポロニウム(Po)とか核破砕したものもあるんですかね。そうすると,かなり微小な漏えいを早期に検知して,検知した後に早期にドレンするのが鉄則なのですけれども,そういうシステムがこのループでも必要になってくるのではないかなと思うのですが,その辺の設計思想は,Na炉をベースにして,その違いについて考慮されるようなアプローチをされた方がいいのかなという気がしました。
 それから,4ページの酸素濃度の管理は,ドイツのループでは放置すると濃度が下がっていくので酸素を入れるというお話なのですが,試験ループのお話ですかね。Na炉実機の場合は,何十年運転すると毎年開放したり,ものを入れたり,燃料を入れるたびに相当酸素が入ってきまして,いかにして酸素とか空気混入を防ぐかというのがメンテナンス上相当苦労している状況なのですね。
 放っておくと高い濃度のレベルで安定してしまうので,コールドトラップという,ある部分を冷やしてメッシュで捕獲する部分と,高温の摂氏500度の部分,燃料被覆管が一番厳しくて3ppmでしたかね。余り下げてもいけないし,上げてもいけないという非常に厳しい濃度管理を要求されているのですが,コールドトラップでの捕獲した部分と,全体の溶出と捕獲のバランスで管理しているという状況があるので。それは解析コードも含めて整備を相当力を入れてやっていたという経緯もあるので,これは肝になる重要な部分だと思いますので,相当力を入れてその辺少し分析された方がいいのかなという気がします。

【佐々サブリーダー】 ありがとうございます。分析に関してはもっともっと詰めていかなければならない点はあると思います。その辺はまさにドイツなどが先行しておりますので,協力しながらというところになるかと思っております。
 最初に電磁流量計についてですけれども,我々はPb-Biのループは既に数基持っているのですけれども,最初は電磁流量計を採用しました。ところが,Pb-Biの場合は,鋼材とのヌレ性が均一になるのに非常に時間がかかったり,いいヌレがなかなか出なかったりとか,そういう現象が起きました。そうすると信号出力がなかなか安定しないということが一つ問題として,我々の実体験としてPb-Biの場合に非常に安定性が悪いというのが見えてきたところから,方式を変えた方がいいかなというのが一つの考え方です。
 もう一つは,電磁流量計の場合ですと,校正の手順が少し煩雑になる場合がありまして。校正の手順を全部遠隔でやるというのはなかなか大変だと考えております。超音波流量計ですと,バックグラウンドノイズだけ押さえてあげれば,校正はそんなに要らないというところもありまして,メンテナンス性と信号の安定性ということから,電磁流量計はPb-Biに無理かということで,超音波式を採用しているという状態です。

【峯委員】 微小漏えい……。

【佐々サブリーダー】 微小漏えいについては,液位だけではどこから漏れたかわからないので,それぞれの場所に接触式のセンサをめぐらす形を考えております。すみません,今回もう少し具体的な設計はお示しできていないので,そういう御懸念を頂いてしまうんですけれども,プローブの一つとしてこれを使うということで,安全系についてはその他のものと組み合わせて設計していくということは考えております。

【峯委員】 今のお話で,電磁流量計に関しては,Naループでも同じようなヌレ性,初動時にヌレ性が悪くて性能が出ないというのは普通に起こる現象なんですが,その原因というのは,ステンレスの表面の酸化被膜がNaとなじむまでに,特に低温だと相当時間がかかるということで,確か摂氏300度ぐらいまで上げるとかなり短時間に被膜の不純物がとれて,Naがなじんでいくという経験もありますが,Pb-Biの場合はそれがかなり厳しいのかどうかというのは,差があるかもしれないのですが。
 それから,超音波流量計は高温のセンサが非常に難しいのですけれども,摂氏200度とか250度ぐらいであれば,実用化できるのかなと思いますが,高温の場合はちょっと難しいかなという気がします。

【佐々サブリーダー】 ありがとうございます。ヌレ性に関しては,おっしゃるとおりで,温度を上げると確かになじむが早いという現象は見えているのですが,それにしても劇的によくなるまでに非常に煩雑な手順になるというところもありまして。また,酸化被膜を常時,腐食防止の観点から形成したいという思いもあります。そういう相乗効果でいい状態をなかなかつくり出せないというのも一つの問題点としてございます。

【峯委員】 わかりました。

【佐々サブリーダー】 それから……。

【峯委員】 酸素濃度は,別途,私も勉強したいと思いますが,原理的に常に酸素を吹き込めばいいというのは,何十年考えるとバランス上どこかで狂ってくると思うので,とるのと温度のバランス,溶出とトラップと腐食のバランスを,温度によって相当変わるので,系統全体を解析するツールを開発された方がいいと思います。

【佐々サブリーダー】 わかりました。そのように進めていきたいと思います。

【山口主査】 いかがでしょう,その他にはございますか。
 
【西田企画室長】 今後のスケジュールの中で,規制対応がスケジュールに対する影響が大きいと思うのですけれども,先行しているTEF-Tにつきましても,何か規制対応でやっているような取組,スケジュールに影響しそうなものが何かあれば御説明いただければと思います。

【佐々サブリーダー】 規制対応という点で申しますと,ターゲット施設に関しましては,放射線障害防止法の適用施設ということになります。ですので,今回の新規制基準で何か大きく変わったかという点から言いますと,大きくは変わっておりませんが,一方で原子炉等規制法は当然ですが大きく変わっております。
 先ほども核セキュリティのところでお話がありましたが,建物が隣接しているという観点から,原子炉施設の方の要求として隣接する建屋が原子炉に影響を及ぼさないことというルールがございます。そちらに対して,それを担保する必要があるということで,次年度から地盤調査を要求させていただいているのはその点も踏まえた形での要求ということで,新規制基準対応としては,直接のターゲット施設の法令ということではないんですが,将来を見越した規制の対応が必要だという観点から,この新規制基準対応というものを入れさせていただいているところでございます。

【山口主査】 よろしいですか。
 今日は非常にいい御意見をたくさん頂いたと思うのですけれども,議論を伺っていて,これから次のフェーズとして試験装置の試作・製作に入っていくわけですよね。それに当たって,今日御説明いただいた検討の中身が本当にポイントを突いているのかというのが今ひとつクリアになっていないのではないかと懸念するのです。
 例えば,最初に出たターゲットの健全性の話でも,あの計算結果をお見せになって,最高温度と応力のグラフを出されて,ヒートインプットをどれぐらいに制限すればいいとかいうのを出されましたよね。果たしてターゲットの健全性がピークの温度と応力で整理できるのか。応力は当然温度分布で決まってくるわけですし,流動に影響されるし,ああいう話で簡単にデザインウィンドウを決められるのかと。
 あと,腐食の話も非常に重要な話なのですが,現実にT-TACの中でも長期間の酸素濃度計の試験をすべきという指摘が出ている。腐食の問題を扱うのにもかかわらず,先ほど中島委員の御指摘に対して腐食の観点から長期に酸素濃度をどうコントロールするか。峯委員も同じことを指摘されていたのですが,ドイツではMEGAPIE(Megawatt Pilot Experiment)とかですかね,いろいろ経験があって,あれは酸素被膜をつくるために温度制御,それから流速がローカルに速くなると,被膜が壊れてしまって腐食が進むので,流速をどうするか非常に苦労したわけですね。
 そういういろいろな問題点を解くべき方向性を考えていく上で,和気委員が御指摘になった国際的ネットワークという問題なのだと思うのです。単純に酸素濃度計にドイツ製を使うか日本製を使うかという話ではなくて,ノウハウとか知見をどう扱っていくかという問題なのだと思うのです。
 安全の話も今日たくさん御意見が出たのですが,それについては何があったかというと,RELAPを改良して,RELAPを使って安全解析をしますという話があるのですが,その前にADSのシステムを持ってきたときの安全上のデザインベーシスイベントは何なのだろうかとか,考慮すべき事故のシナリオは何なのだろうかと,その分析が全然なくて,RELAPで安全解析をやりますという話になってくると,本当に大丈夫なのかという気になってくるんですよ。
 今日いろいろな御意見を頂いたところはいずれも非常にポイントを突いたところだと思いますので,問いに対してこの技術はこうですという答えではなくて,次の試験に進むフェーズの前段階として,重要なポイントはこう押さえられていますよというような説明の仕方をちょっと工夫していただいた方がいいのかなという印象を持ちました。

【山口主査】 今日大体御意見いただきまして。最初にお話しましたとおり,この作業部会では今後の進め方について作業部会としての見解をまとめるというのがミッションとしてございますので,そういう観点でもう一度是非委員の方には資料を御覧いただいて,それから,原子力機構の方には今日の御指摘についてどういう形で今後進めていくのかというのを,もう少し体系的に分析がなされているということをお見せいただくのが,両方の御意見とかあんまり細かな話に入り込まないように,全体のプログラムを進めていく上でマッチングするいい方向性かなと思いますので,是非その辺次回までによろしくお願いしたいと思います。
 それでは,以上で本日予定しておりました議題は終了となりますが,最後に事務局から連絡事項がありましたら,お願いします。

【西田企画室長】 本日はありがとうございました。
 本日頂きました御意見等を踏まえまして,次回の資料の中身,進め方等につきましてはまた御相談をさせていただきたいと考えております。
 次回作業部会では,今回の他にも国際協力,連携,人材育成,その他の課題の進捗状況につきましても,併せて御説明をさせていただければと考えております。
 また,今回の会議の議事録につきましては,出来次第メール等で委員の皆様には御相談をさせていただきたいと考えております。
 事務局からは以上でございます。

【山口主査】 それでは,いろいろ活発な御議論を頂きまして,どうもありがとうございました。以上で第6回の群分離・核変換技術評価作業部会を終了いたします。ありがとうございました。


―了―

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研究開発局原子力課放射性廃棄物企画室

(研究開発局原子力課放射性廃棄物企画室)