原子力科学技術委員会 群分離・核変換技術評価作業部会(第4回) 議事録

1.日時

平成25年10月23日(水曜日)10時00分~12時00分

2.場所

文部科学省 東館18階 研究開発局1会議室

3.出席者

委員

山口主査、澤田委員、田中委員、中島委員、藤田委員、矢野委員

文部科学省

田中研究開発局長、田中研究開発局審議官、増子原子力課長、西田放射性廃棄物企画室長

オブザーバー

上塚日本原子力研究開発機構理事、大井川日本原子力研究開発機構研究推進室長

4.議事録

【山口主査】みなさんおはようございます。定刻となりましたので、ただ今から第4回群分離・核変換技術評価作業部会を開始いたします。本日は御多忙中にもかかわらず、御出席いただきまして誠にありがとうございます。これより議事に入りたいと思います。本日の議題は、お手元の議事次第に書かれておりますとおり、「群分離・核変換技術に関する加速器駆動システムの開発ロードマップ」、「前回作業部会での指摘事項について」、そして、「群分離・核変換技術に関する中間的な論点のとりまとめ素案」という順に進めさせていただいて、最後にその他について挙げております。それでは、まず事務局から出欠と配布資料の確認をお願いいたします。

【西田室長】放射性廃棄物企画室長の西田です。それでは、出欠の確認をさせていただきます。本日は、長谷川委員と和気委員のお二人から欠席の連絡を頂いておりますので、8名中6名の委員に御出席いただいております。これは定足数である過半数を満たしております。続きまして、本日の配布資料の確認をさせていただきます。まず、議事次第、座席表、資料1「ADS階層型概念関連技術の研究開発段階」、机上配布となっております紙面にドラフトと書かれた資料、資料2「加速器駆動核変換システムによる分離変換技術の開発ロードマップ」、資料3「第3回作業部会での御指摘事項について」、そして、もう一枚机上配布の参考資料として、ビームの窓なし概念の説明資料、最後に、資料4「中間的な論点のとりまとめ素案」をお配りさせていただいております。配布資料は以上です。資料の欠落等ございましたら、事務局の方にお申し付けください。以上です。

【山口主査】資料の方はよろしいでしょうか。それでは本日の議題に入りたいと思いますが、その前に、各委員から最初に一言ずつ御挨拶を頂いております。田中委員につきましては今日御出席いただいて、大分遅れてしまって恐縮ではございますが、御挨拶を一言いただければと思いますので、よろしくお願いします。

【田中委員】4回目になって初めて出席するというのはみっともないことではございますが、この群分離・核変換技術評価作業部会ですが、廃棄物をどういうふうにして特性を変えていくのかという大変科学技術的なところがありますし、またいろいろなサイエンスのところまで関係あるところです。しっかりと検討をしていき、また、「もんじゅ」などについても、マイナーアクチノイド(MA)に関するものと比較しながらやっていくというようなことだと思います。実は、この上の原子力科学技術委員会主査もやっておりますので、いろいろな幅広い観点からコメントできたらと思います。どうぞよろしくお願いします。

【山口主査】どうもありがとうございました。それではただ今から議題に入りたいと思います。恐れ入りますが、プレスの方は所定の位置にお戻りくださいますようお願いいたします。前回と同じように、事務局と日本原子力研究開発機構(原子力機構)から資料を用意していただいております。それぞれ説明していただきまして、その後で質疑、議論を行わせていただきたいと思います。初めに、議題の1番目「群分離・核変換技術に関する加速器駆動システムの開発ロードマップ」について、こちらは資料1と2を合わせて原子力機構から説明をお願いいたします。

【大井川室長】原子力機構の大井川です。理事の交代がありまして、上塚理事が今日初めてですので、理事から一言よろしいですか。

【山口主査】上塚理事、一言よろしくお願いします。

【上塚理事】原子力機構理事の上塚でございます。お時間を頂きまして、この機会に御挨拶を申し上げたいと思います。私、機構理事の中では、原子力基礎工学研究、あるいは福島技術本部に関連した業務などを担当させていただいております。10月1日付での横溝理事の退任に伴い、今回からオブザーバーとして出席させていただくことになっておりますので、よろしくお願いします。それと、原子力機構は9月26日に改革計画を文部科学大臣に提出させていただいております。この改革は原子力規制委員会による「もんじゅ」に対する保安措置命令であるとか、あるいはJ-PARC事故が直接の契機になったものでありますけれども、安全管理体制の強化などにとどまらない事業の合理化を含む、いわゆる痛みを伴うような大胆な改革を進める必要があるというふうに認識しております。そういう中で、放射性廃棄物の有害性と低減などを目指した分離変換技術の研究開発というのは、福島への貢献、あるいは原子力の安全性向上などと並びまして国民の皆さまからは期待を頂いている重要な研究開発であるというふうに私は考えております。本日は、先ほど御紹介ありましたけれども、中間的な論点のとりまとめ素案が審議されるということになっているようですが、この評価部会の結果を、私どもの次期中期計画、あるいは今後の研究計画に適切に反映させたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

【山口主査】どうもありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。では、原子力機構から御説明をお願いいたします。

【大井川室長】はい、それでは資料に従いまして説明していきたいと思います。まずは資料1「ADS階層型概念関連技術の研究開発段階」です。これまでの部会においても、幾つかコメント等を頂いておりまして、今どういうところにいて、何が終わって、これから何をしないといけないのかを明確化してほしいということでした。ということで、今我々が考えている現状と、今後の課題というのをまとめた資料になります。
2ページです。群分離・核変換システムの研究開発段階ということで、実はもうこれまでにも何度か説明させていただいておりますけども、原子力学会の「分離変換・MAリサイクル」研究専門委員会におきまして、NASAだとかJAXAで活用されている技術成熟度(TRL: Technical Readiness Level)というものの評価手法を用いて、我が国のMA分離変換に係る核技術分野の現状達成度だとか開発段階を整理してございます。この専門委員会での検討に、現状の部分、それから我々の検討の部分というのを足して更新をかけたものになっています。左下の表ですけども、基本的な考え方としては、開発段階を大きく分けると三つ、「概念開発段階」「原理実証段階」「性能実証段階」というふうになりまして、それぞれがまた幾つかに分かれています。大体九つの段階になっているという考え方です。この資料は、右にありますように、幾つかの段階に分けて整理していまして、青色の所が実施済みの段階、黄色の所が実施中の段階、それから各項目についてダッシュが既に終了した項目、それから○が付いている所が現在実施中又は一部実施中の項目、それから中ポツ・で書いてあるのが未実施の項目ということになります。それから、角カッコでくくってありますのは実験施設等になりまして、青字で書いてあるのが既存施設、赤字が将来計画です。それから、項目が赤字で記載されているのは、今後の研究開発において特に重点的な検討が必要な項目と考えているものになっています。それでは、具体的に見ていきたいと思います。
3ページ、MA分離回収の研究開発段階ということで、大きく二つの項目に分けてございます。一つが、高レベル廃液からのMAと希土類元素の一括回収、それからもう一つが、MAの希土類元素からの分離です。左側のMAと希土類元素の一括回収に関しましては、大体、抽出フローシートの定量評価等が終わりまして、現在、プロセス最適化検討等を行っている、それから、機器設計のシミュレーション技術等にも着手しているという、そういう段階になります。今後は、小規模のホット連続試験だとか、非常に重要なところとしては工学規模の試験を行っていく必要があると考えています。それから右側の、MAの希土類元素からの分離については開発段階がまだ初期の段階にあるということになっています。コールドフローシート試験による分離条件の確定等までは終わっているのですけれども、溶媒放射線分解評価だとか劣化物の影響評価などは現在進行中で、今後はMA含有模擬液によるフローシート試験を行っていき、その後、小規模のホット連続試験等を行って、先ほどの左側の項目と同じように工学規模試験というのを行っていかないといけないと思っております。その後、既存施設を利用した数g~数100 g(MA)/dayの数日~1か月程度の連続試験をやっていって、その後、工学規模での試験というのに移っていくことがこのMA分離回収の今後の課題になっているかと思っております。性能実証段階がありまして、最終的な商用運転ということになりますが、ここでパイロットプラント的なものがいるかどうかというのはまだこれから検討していかないといけないところかなと思っております。
それから4ページですけれども、核変換専用MA燃料製造・性能実証の研究開発段階ということになります。燃料製造と燃料性能評価の二つに分けてございますが、燃料製造に関しましては、高濃度のMA燃料製造プロセスにおける制限因子の評価等までは終わっていますが、現在、燃料製造工学装置の開発要求明確化を行っています。今後は、高濃度MA燃料の照射サンプルの製造を行っていかないといけない。それから窒化物のラボスケールの製造試験が行われていますが、照射用というところまではまだいけていないということで、その辺が今後の課題になってくると思っております。それから性能評価に関しましては、基礎物性データベース構築と諸量評価というのを現在やっていまして、特に高濃度MA含有燃料のふるまいコード整備というのを現在やっており、これが重要だというふうに思っています。その後、その燃料のサンプル照射を行っていくということが必要になってきまして、この後、サンプルの製造から照射というのが非常に重要になってくると思っています。数g~数十gサンプルの照射燃料を製造していくというのが次の段階になってくるかなというふうに思っています。その後は、商用運転までには、やっぱりこれもパイロットプラント的なものが必要になってくるかどうかという検討が必要になってくるのですが、燃料のピン照射だとか集合体照射というのを経ていく必要があると考えております。
次に、5ページですけれども、核変換専用MA燃料乾式再処理技術に関する研究開発段階です。こちらは三つに分けておりまして、前処理(ピンせん断等)、それから電解精製・MA回収・燃料再加工、それから廃棄物処理(ゼオライト処理)です。この両側の二つですけれども、前処理と廃棄物処理に関しましては基本的には電力中央研究所(電中研)さんがやられております、金属燃料に関する取り組みをリファーさせていただくという形で、原子力機構としてはここの所に注力して行っているわけではないということです。我々としては真ん中の電解精製・MA回収等についての取組を中心的に行っておりまして、現在プロセス条件の最適化、主要工程の要素試験だとか、小規模ホット連続試験を行っているという状況です。それから実用条件での工学試験というのは、これは我々というよりは、金属燃料の取組がメインで進められているところを我々も協力できるところはしていくということで進めていきたいと思っております。その下、原理実証段階の所、赤で書いてあります、「実廃液や実使用済燃料を用いた、数g~数100g(MA)/dayの数日~1か月程度の連続試験」というのが、今後の非常に重要なステップになってくると思っております。工学規模でのプロセス試験だとか、機器設計、システム設計、モジュール最適化等、工学的なものを想定したR&Dが必要になってくると思っております。
6ページは、ADSの研究開発段階ということで、まずADSの核工学については、二つの項目、炉物理とMA装荷炉心というふうに分けました。炉物理に関しましては、未臨界体系での基礎試験、模擬実験等が終わっておりまして、未臨界度測定手法の開発だとか、それからDT中性子源を用いたかなり大規模な模擬試験、VENUS-F、FCA、KUCA等を使ったような、そういうものが今行われているという状況です。今後は、核変換物理実験施設(TEF-P)を用いた未臨界度測定手法の実証だとか、ADSの模擬試験、それから実験炉用の未臨界度測定手法の確立等を行っていく必要があると考えております。それから、MA装荷炉心に関しましては、核データの測定等を今行っており、あるいはほぼそろってきているという、そういう状況になっていると思いますが、MAサンプルの照射試験がまだ現在実施中で、今後はそのTEF-Pを用いた臨界実験装置による部分装荷のMA実験というのをやっていかないといけないと思っております。性能実証段階に赤で書いておりますMYRRHAというのがありまして、ベルギーのこのMYRRHA計画が上手くいきますと、かなり性能実証段階にかかってくるというところだと思っています。ただし、MYRRHAでは全炉心MAを使えるわけではないということで、集合体装荷ぐらいのところまでかなというふうに思っております。
それから7ページは、ADSの炉工学に関するもので、熱流動、構造、運転制御、遮蔽というふうに分けておりますが、これは、原子力機構としてはそれ程注力したR&Dが今できているわけではなく、かなり工学的な所が多いというふうに考えております。鉛ビスマスの流動試験等は現在行っておりますが、集合体のLBEとありますのは、鉛ビスマスの流動試験をやっていかないといけないというふうに考えております。それから、運転制御に関しましては、ADS模擬実験の安全解析だとかをやっていっているという状況になっています。それからTEF-Pを使った運転制御の試験も行っていかないといけないと思っています。この炉工学に関しましては、やはりベルギーのMYRRHA計画が上手くいきますと性能実証段階までかなり進ませることができるというふうに考えておりまして、非常に重要なポイントと思っております。
最後8ページは、ADSのターゲットとそれから加速器ですけれども、これは核破砕ターゲットについては熱流動、材料、それから加速器という三つに分けております。熱流動に関しましては、鉛ビスマス流動試験等を実施しておりまして、実用化に向けた各種測定技術開発というのをやっていっているという状況です。それからもう既に御説明していますけども、スイスで行われましたMEGAPIEの実験で、ビーム窓のモックアップ試験というのは基本的にはできているという状況で、今後はADSターゲット試験施設(TEF-T)を用いてLBEを用いたビーム窓のターゲット領域モックアップ試験を行っていく必要があると思っております。これは材料に関してもそのとおりで、実機条件でのビーム窓材料の陽子照射というのをTEF-Tでやっていかないといけないというふうに考えております。それから加速器に関しましては、要素技術の実験室規模の試験というのが終わっておりまして、実用規模展開というのをやっていかないといけないという状況で、J-PARCの加速器の開発だとか、MYRRHAの加速器の開発というのが重要になってくると思っております。これらも併せてMYRRHA計画が上手くいきますと、性能実証段階に近い所で技術が実証できるというふうに考えております。以上が、今の我々が考えております研究開発段階になります。
この開発段階の検討に基づきまして、我々としてロードマップというのを考えています。机上配布しておりますのは、今、説明しました資料の基となっておりますより詳細なTRLの検討資料ですので、お時間あれば見ていただければと思っております。 
続きまして、資料2の「加速器駆動核変換システムによる分離変換技術の開発ロードマップ」を説明させていただきたいと思います。今申し上げたことを要約したような形になっていますが、開発の現状と当面の技術課題ということで、まずサイクル関係、分離とそれから燃料関係、この部分をまとめますと、MA分離に関しましてはMAの希土類元素からの分離プロセス確立が最優先事項だということが分かっています。それから、プロセス実廃液試験による適用性評価に向けた検討というのを現在実施中で、発生廃棄物に関する検討等も実施中であるということです。今後は分離性能だとか、溶媒のリサイクルに関する技術検討を実施し、フローシート評価の結果を踏まえて、プロセスの最適化と総合実証試験というのを目指していかないといけない。この総合実証試験というのは、今後目指していく一つのキーになるのではないかと考えております。それから、MA燃料製造に関しては、物性のデータベース整備だとか、燃料製造装置概念検討等を実施中です。今後ということで、分離プロセス総合実証試験、上の試験で得られるMAを用いた照射サンプルの製造と照射、それから燃料挙動を解析するコードの開発ということに取り組んでいこうと考えております。それから、乾式再処理に関しては、電解・MA回収に関する工程の要素試験及び模擬物質を用いた工学規模試験等を実施中で、今後は再処理システムの設計・最適化及び実規模モジュール試験、照射済み試料を用いた試験が課題となってくると考えております。 
3ページ、ADSに関しては、四つに分けていますけど、まずMA装荷炉心の物理に関しましては、未臨界度の測定技術だとか、MAデータの整備、こういうのを実施中であるということです。それから、陽子ビームとMA装荷高速炉の模擬炉心を結合した炉物理実験というのが今後の課題になっていまして、これをJ-PARCの核変換物理実験施設で行っていきたいと考えているわけです。それから核破砕ターゲット・液体重金属利用技術という点では、各種の計測技術の開発だとか、MEGAPIEの照射後試験等を実施中で、今後は運転条件を模擬した環境下での要素技術開発と陽子ビームを用いた照射試験ということで、こちらはJ-PARCのADSターゲット試験施設を使った実験が必要だと考えております。それから、ADSプラント概念及び安全・制御技術ということで、安全、プラント要素概念の検討だとか、安全機器概念の検討・検証を実施中で、今後は実用規模に外挿可能な機器開発並びに高出力運転による実証というのが課題で、これに関してはMYRRHA計画への参加をもって進めていきたいと考えているわけです。ADS用加速器に関しましては、J-PARC加速器の運転データ、経験によりまして信頼性の検証だとか向上策の検討というのを行っているのが現状です。実用ADSに向けた超伝導加速器開発だとか安定したビーム制御が今後の課題ということで、これはJ-PARCを用いた開発だとかMYRRHAの加速器を用いた開発というのがキーになってくると考えております。
こういう状況を踏まえまして、4ページ、5ページに今後の研究開発のロードマップというものを作っております。まず4ページの方が、分離と燃料サイクルに関して作ったものです。左からMA分離、核変換専用MA燃料製造、それから乾式再処理というふうに区切っております。上から下に向かって開発段階が流れていき、大体の目安の時間軸が左に記載してございます。それから、白い四角が大体終了している、ほぼ終了している部分。それから黄色が現在実施中及び今後の中心部分ということで、赤字で書いてある所が現在実施中、黒字が今後の中心ということになってきます。それから紫の所は更に将来の部分ということです。ここで◎や☆印は取扱いの規模というものを示したものになっています。MA分離を見ていただきますと、現在プロセスの実廃液試験等を行おうという段階にありますが、いろいろなものをひっくるめまして、プロセス最適化した後、先ほど申し上げましたプロセス総合実証試験というのに取り組んでいくというのが我々の当面の目標になっていくのかなと思っております。ここで出てきましたMAを右側にある核変換専用MA燃料製造の照射サンプル製造工程に回していくことで考えています。その前に、その燃料プロセス、製造プロセスの概念のところでは、フィードストックだとか乾式再処理回収した物での試験を行っていくということが必要になってくると思っております。それと並行しまして、物性データベースだとか、ふるまいコードの整備というのを行っていき、先ほどありましたMA燃料のサンプル照射等を行っていくと思っております。ただ、そこで照射した後のMA燃料を再処理していく試験というのは、右側に赤い矢印で書いてある流れですけども、そちらの方は少し将来的な部分になっていくのかなと思っていまして、それまでの間に主要工程の要素試験だとかフィードストックを使った小規模の連続試験、それから模擬物質工学規模試験というのを完了させていきたいというふうに思っております。この辺では、分離のところでは2025年以降のところの紫で囲んであるところですが、工学規模のプロセス実証という段階を経て、実用プラントというふうに流れていくと思っております。ただ、工学規模のプロセス実証というのが新たにこのためだけの施設というのを作らないといけないのか、実用プラントとほぼ同じような規模で移行を想定したようなもので作っていくのかというのは今後検討していくことが必要かと思っています。それから、MA燃料製造のところで紫になっている部分で、MA調達という四角がありますが、これは、実は黄色のプロセス総合実証試験から出てくるMAというのはキュリウム(Cm)も含んでいる、相当アクティビティの高い物になりますけれども、それとは別に、今、原子力機構で持っておりますプルトニウム(Pu)の中に蓄積しているアメリシウム(Am)を抽出しまして、キログラムオーダーの抽出を行ってR&Dに回していくことを考えていきたいと思っておりまして、MA調達という部分が横の所にでています。そのMAを使って燃料集合体ピンだとか燃料集合体の製造を行っていきR&Dをしていくという流れがどうしても必要になってくると思っております。その後、実用プラントの方に移っていくということになっていくと思っております。乾式再処理に関しましては、先ほどの使用済燃料を使った試験というのを経まして、実用プラントの方に移っていくということで考えております。
続きまして、5ページの方はADSに関するロードマップになっています。ADSに関しましては、炉物理、MA核データ、プラント、安全・制御、LBE熱流動・ターゲット、LBE用材料、そして、加速器というふうに分けておりまして、色使い等は先ほど説明したとおりです。こちらの方はハッチングをかけた緑色で塗った部分というのが評価を踏まえて進めていく部分ということで、左からJ-PARCの核変換物理実験施設(TEF-P)と、真ん中が照射試験用ADSであるMYRRHA計画、それから右側がJ-PARCのADSターゲット試験施設(TEF-T)ということになっております。炉物理だとか核データについてTEF-Pを使って、それからプラント、安全制御等についてはMYRRHA計画を使って、それからターゲットに関してはTEF-Tを使ってということでR&Dを進めていきたいと思っております。その他、高速中性子の照射、材料についての照射を常陽だとかMYRRHAを使っていきたいと書いてあります。それから加速器に関しましてはJ-PARCを使った信頼性向上から超伝導加速器開発、そして全体的にこれ技術の流れとしましては、初号機プラントというところに持っていきたいと思っております。初号機というのは、ADSの出力規模としてはフルスケールの800 MWtということで考えておりますが、燃料としましては、最初はMOX燃料で一部MAを添加するような、そういう燃料を使うというところからスタートするのかなと思っておりまして、それの技術をこれらのR&Dで培っていくということで考えております。その後、先ほどの分離と燃料サイクルの方から供給されますMA燃料製造だとか再処理の技術からMA燃料が供給されてMA装荷炉心というふうになっていくと考えています。大体以上がロードマップに関する説明です。

【山口主査】それでは今の説明資料につきまして御意見、御質問を伺いたいと思います。何かございますか。中島委員どうぞ。

【中島委員】幾つか教えていただきたいのですが、この資料1、3ページ目のスライドで、原理実証段階では数g~数100 g(MA)/dayで1か月程度の連続運転想定ということですけども、これが実際の実機レベルとしてはどのぐらいの規模に拡大するものかをまず教えてください。

【大井川室長】MAの取扱いですから、実機だと年間1トンのMAになります。ですから、大体200日稼働とすれば5 kg/dayです。

【中島委員】割とかなり近いところまで行うということですか。

【大井川室長】そうです。

【中島委員】それから、6ページのADS関連のところで、MAサンプル照射試験が実施中という位置づけになっているのですが、これはどこで、常陽とかでやっているのですか。

【大井川室長】はい。常陽、あるいはかなり昔の実験になるのですけども、イギリスのPFRで照射したというのもあります。

【中島委員】あとこれと同じく上の段階では、MA等の核種の核データ測定が終了という位置づけにはなっているのですけども、後のロードマップ等を見るとまだMLFを使って行うということもありますので、後の方が実態としては正しいかと思うのですが。

【大井川室長】チェックを付けていますが、当然、核データというのは常にアップデートしていくという活動が必要だと思っています。

【中島委員】あともう一点、同じ資料1で、7ページ目のところに運転制御とか安全性とか、あるいはロードマップのところにも安全制御というのがありますけども、これをやるには多分その前の段階のページにあるような炉物理とか核データで、例えば未臨界度の測定精度はこのぐらいまでいけるよというベースがないと多分、運転制御も仕方も変わってくると思います。その成果によって。どれだけ裕度を見なくてはいけないとか、あるいはこの手法であればこのぐらいギリギリ狙っても大丈夫とか。そうするとやっぱりそことのリンクがもう少し強く出ていいかなと思うのですが。その資料2のロードマップ、5ページ目を見ると、ここのレベルの段階ではまだそれぞれ独立にやっていて、最後にTEF-Pのところで合流するような形なので、多分、実際にはこの核データとか炉物理の技術が安全制御の検討にフィードバックされて、あるいは逆に安全制御の検討の結果から要求事項としてこれだけの精度が欲しいというのが出てきて、そこは実態としてはそうなっていると思いますけど、ちょっとこの絵の描き方としては、これでは何となく独立にやっているように見えるので、注意していただきたいと思います。以上です。

【山口主査】よろしいですか。

【大井川室長】最後の点、了解しましたということで、当然そのように今進めているところです。

【山口主査】今のような御意見が出るので、例えば核データなんかはまさにおっしゃるとおりだと思うのですが、単に○×を付けるような話というよりも、もっとベースとして蓄積していくような類いの話と、それから一つマイルストーンをきちんと仕上げていく話と、この資料をどうするという話ではなくて、少し書き方を工夫されてもいいかもしれません。どうぞ、藤田委員。

【藤田委員】MA分離回収のところで、資料1の3ページ目ですね。実はこのTRLを評価したときは、私も一緒に参加していたのですけど、一つミスがあるなというふうに感じたのは、ここで実は概念開発検討のところで新抽出剤、基礎データ評価と書いてありますね、資料2で、4ページ目を見ていただくと、このMA分離のところの最初の段階でトレーサ試験というのを入れています。実は、資料1に戻ると、原理実証試験で既存施設を使ってこのような大きな量のMAを使う試験をする前に、やはり概念のところでトレーサを使って成立するかどうかをきちんと評価してからこの原理実証にいかないと、ここの概念開発検討の段階で成立してないのに原理実証してしまうことになります。その例というのが、実はFaCTの方で御存じだと思うのですけれど、ウランの晶析は問題なかったのですけど、プルトニウムの晶析にセシウムが入ってしまうという事実が、この原理実証試験というのか、ある程度大きな試験になってからはっきり分かったというような例がありました。これはTRLの方できちんと評価するときに、概念開発検討でやはりトレーサで実際の物を使って確認しておく、プロセスの性質を確認しておくというのが必要だと思います。この資料1の概念開発段階のところにきちんとトレーサ試験で確認というようなことを記述していただいた方がいいのかなと思いました。今日のメインの主題ではないのですけれども、研究開発を進めるときにこういう放射性物質を扱う研究開発を進める場合というのは、どうしても模擬物質でやるというのが前提ですけれども、その段階である程度の模擬物質で成立性が確認されたら少量でもトレーサでも構わないので、きちんとこの概念開発段階で確認していただくというのがよりプロセスを確実に実証できるのではないかというふうに思います。この場合は表現だけだと思うのですけど、もう既にやっていらっしゃるので、加筆をお願いします。もう一つはですね、資料2ですけど、やはりこのロードマップを作るときにはチェック&レビューというのが絶対必要だと考えています。どの段階で全体を通して、あるいは個々のテーマを通してチェック&レビューをして、上手くいくと思っていても、やはりやっていく段階では上手くいかない、開発が頓挫するというものもあるので、そのときは見直しをするその時期をきちんと明記していただいた方がより良い物になりますし、その段階で見直して規模が小さいうちに改良できるというのもメリットだと思います。2点お願いしたいと思います。

【山口主査】今の点、何かコメントございますか。

【大井川室長】まずはMA分離に関しては、そういうトレーサを使った試験というのをやっているということなので、ちょっと表現上見えていないので、それは我々としてはしっかり書きこんで忘れないようにしたいと思います。それからチェック&レビューに関しては当然そのように進めていきたいと思っていまして、今このロードマップそのものでは見えないのですけども、当然、黄色から紫色に変わるところでは大きなチェック&レビューが必要になってくると考えております。黄色の中でも、箱が一個変わるというのは段階が一つ上がるというふうに考えていますので、そこのところではチェック&レビューをしていきたいと思っています。

【藤田委員】それでお願いですけど、そうしますとチェック&レビューをきちんとここでやるというのと、どういう項目に対してチェック&レビューをするかというのもここに明記していただいた方がいいと思うのですけれども。

【山口主査】今の話は、要はプロジェクト管理ですね。基礎的な試験からもう少しスケールアップした試験なり、模擬性を上げた実際の試験というステップに行くときに、当然外挿のプロセスが入るわけですので、今、藤田委員がおっしゃったような手戻りになるという話も出てくるのですが、あまりやりすぎていると段階が非常に煩雑というか多くなってくるという点が一つ。そういうことを踏まえると、藤田委員の御指摘は、今のロードマップの図というのは時間軸のスケールが5年置きぐらいに書いてありますので、当然この一つの箱ごと、あるいはもう少しきめ細かくなるかもしれないのですが、チェック&レビューをするという趣旨だとは思いますが、今の藤田委員の御指摘として、そういう一つ一つ段階を追って実現性のあるところに近づいていくときに、どういう着眼点を見てプロジェクト管理をして、一つのプロジェクトをそこで立ち止まってもう一回再検討するところの指標となるような物理量なり、あるいは現象なりというものがきちんと把握できているのかという問題だと思うのです。ロードマップというのは、一つはプロジェクトの全体像を分かりやすく説明するという趣旨が私はあると思いますし、一方、プロジェクト管理というふうになるともうちょっとテクニカルな面で細かな面に入っていくと思いますので、ちょっとどういう表現にするのか、これに何でもかんでも入れるのかは別にしても、今の藤田委員の御指摘は少し長期的に見て、やっぱり技術者の担当されている目で見てどこら辺が重要なターニングポイントと言いますか、なるかというような予測というか、それと理解というのがちゃんと見ながら進められているかというのは、何らかの形でチェック&レビューのときに見せていただく方がやっぱり良いと思います。それが一つ一つ次のステップに行くかどうかの判断をするときに非常にテクニカルな面でも理解をいただけるというベースになると思います。この表の中に、今、藤田委員からの御指摘のように皆そのチェック&レビュー項目を入れるのが良いかはまた別途判断いただいて、御検討いただければと思います。今の点はでもよろしいですよね。

【大井川室長】はい、当然我々もこういうのを進めていく上ではそういう取組が必要だと思っていますので、やっていきたいと思います。

【山口主査】はい、ありがとうございます。他にはいかがでしょうか。どうぞ、澤田委員。

【澤田委員】資料1と2の対応付けといいますか、例えば資料1の3ページ、MAの希土類元素からの分離のところで、原理実証段階の一番上に工学規模試験というのが赤字で書いてありますけど、これは資料2のこのロードマップでいくとどこに当たるのかなと。良く見れば分かるのだと思うのですけども、ちょっとそれがすぐ分からないのですが、例えばそれはどこに当たると見ればよろしいのですか。

【大井川室長】はい、工学規模試験はプロセス実証試験とそれから装置コールド試験、この辺が工学規模というものになってくるのかなと思っています。その前の段階でも工学規模への外挿を念頭に置いた試験という意味では少し入ってくるのかなと思っています。

【澤田委員】そうすると、プロセス相互実証試験とかその辺に当たるのですか。

【大井川室長】はい、そう考えています

【澤田委員】そうですか、わかりました。そういう意味ではこのTRLのこの各段階とこのロードマップとの対応付けがもう少し何か分かると良いかなと思いました。あとそれからもう一つ、照射試験というのが何箇所か、例えば資料1の4ページに照射試験というのがでてきますが、この照射試験には当然その照射後試験、例えばPIEをやるようなものもここには含んでいると考えてよろしいのですか。

【大井川室長】はい、当然そのように考えています。

【澤田委員】はい、わかりました。そういう意味で、既存の施設でそういった試験ができる場合もあるでしょうし、新たな施設の計画もまた、作らなければいけないということもあるので、もうちょっとその辺の施設計画というか、必要な施設はどうかと今のかっこ書きで幾つか書かれてはいますけども、余り多く書かれていないのですが、特に将来的な施設が更に何か追加が必要であるというようなことがあればやはり見せておくべきではないかなと思いました。

【山口主査】よろしいですか。

【大井川室長】まさに施設に関しては我々だけでなくて原子力機構全体として検討していかないといけないというふうに思っていまして、特にMAの取扱量が増えてきますと、既存の施設ではもう対応できなくなってきます。ただ、そのために新しい施設を作るのかというのもあって、その辺のせめぎ合いがかなりありまして、まだこういうふうに進めていきますというところまで提案できていないのが実情で、それがまさにロードマップでいくと紫色で書いてある段階になってきます。だから、これからこの黄色の段階で、今後必要になってくる施設もしっかりと検討して、次の大きなチェック&レビューにはそういうのも含めて提案させていただく流れになってくるのかなと思います。

【山口主査】はい、そうですね。今の話は今から20年くらい先の話なのでちょっとどういうふうに書き込むかは難しいのですけど。どうぞ、中島委員。

【中島委員】それに関連してですけども、黄色いところが終わったところでチェック&レビューしてその先の方向性を決めるということなのですが、今もちょっと20年先だとかお話がありましたけども、もし原子力施設として新しく何か作るのであれば、やっぱりもう御存じの通り、相当なリードタイムというか、時間がかかりますので、やっぱりそこはある程度はそれもこの工程の中に含めるのか、あるいはもうちょっと前倒しして何かやるとか、多分そういうことをやっぱり時間スケールの中に入れておかないと駄目かなと思います。

【大井川室長】はい、実は原子力機構の中で、2030年位までのもう少し詳細なスケジュール表みたいなのを検討していまして、その中で可能であればこんな施設が必要というような議論はさせてもらっていて、恐らく5年後ぐらいにはもう少し具体的にこういうのを作りたいという話ができるのではないかなと思っております。

【山口主査】私、20年後ぐらいにと申し上げたのは、やっぱりこれの意義というのは一つの技術オプションとしてしっかり技術開発しておくということに意義があって、やはりそのほかに高速炉での減容減毒というのもあるわけですし、廃棄物の問題とも絡んでいて、最初にやっぱりグローバルピクチャーというのが別にいるのではないかというお話を申し上げたのは、この黄色で書いてあるところの部分の成果によって実際にどういう施設を作るのか、またそこは相当の予算を投資しないといけない話なので、単純にこのロードマップだけで決まる話でもないと思いますので、むしろ逆にその黄色とこの部分の進捗にかかっていてそこが非常に良くできればその先の施設建設が現実味を帯びてくるということにもなってくると思いますので、今の段階で全体像をというのはなかなか難しい面はあろうかと思いますが、決してのんびりやる話ではなくて、それはやっぱり成果が出た時点できちんと出せるものは示していくというスタンスでやっていただきたいなと思います。どうぞ、田中委員。

【田中委員】はい、今の山口主査の考えと近いのですけども、やっぱり「もんじゅ」等でのMA変換とかを含めて、どういう比較をしながら選択肢の一つとしてやっていくとすると、いつの時点でどういう項目が分かっていればそのときに選択できるかという観点から遡ったロードマップみたいなのがあった方がいいのかなと思いました。

【山口主査】その辺は是非よろしく御検討ください。どうぞ、何かありましたら。

【大井川室長】はい、今、山口主査と田中委員からありましたけども、高速炉を使った方法と、比較するというのもあるのですけれども、特に燃料サイクルの部分、それから分離の部分は共通する部分が多いので、そこを原子力機構としてやっぱりちゃんと一体的に検討して先ほどありましたような施設を今後どういうふうに展開していくのかという検討に生かしていかないといけないというのをまず考えています。それからもう一つ、ADSについてFBRとの検討で今後どうするのかというのを決めるというのはやはり我々としてはADSのロードマップにあるJ-PARCだとかMYRRHA計画というのをしっかりと対応した上で、この技術を見極めたいと思っています。恐らくチェック&レビューというか比較検討の時期というのはそういう、これらの施設が上手く動く、動かないというとこが明確になってきた時期なのかなというふうに思います。

【山口主査】はい、分かりました。そういう意味では、いわゆるクロスカッティングといいますか、そういうものをもうちょっと意識していただくと非常に効率的にプロジェクトを進められる。アメリカなんかでは最近もう、クロスカッティングのようなもので非常に共通要素のある物は優先して実施するというような考え方で、選別しているみたいなので、是非少し御検討いただければと思います。他にはいかがでしょうか。一点、MA調達で、国内で調達するというお話だったのですが、少しその辺の見通しといいますか、「もんじゅ」の方は、確かGACIDでアメリカからMAをという話があって、ここ結構重要なところになると思うのですが、見通しはどうなのですか。

【大井川室長】はい、実はこのあとの資料で少し触れていますので、もしよかったらそちらの方で説明したいと思います。

【山口主査】はい、わかりました。他にはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。今非常に重要な意見をたくさん頂きましたので、是非内部でも御検討いただいて各要素試験、技術の進捗の方を着実にお願いいたします。それではどうもありがとうございました。続きまして2番目の議題で「前回の作業部会での指摘事項について」というものがあります。資料3を原子力機構から説明していただいて質疑に入りたいと思います。では、説明をお願いします。

【大井川室長】はい、それでは前回の作業部会での指摘事項についてということで、まず2ページです。実用ADSにおけるビーム窓あり/なしの概念の比較ということで、ビーム窓ありの概念というのは大体イメージできると思うのですが、ビーム窓なし概念というのはなかなかイメージできないということで、机上配布で申し訳ないのですけども、参考資料を御覧になりながら見ていただければと思います。基本的に、ビーム窓なし概念というのが、ついこれまではヨーロッパを中心に検討されていた概念で、ここにあります実用ADSというのは、ヨーロッパだとEFITと呼ばれているものが検討されていたのですけども、それでは炉心の真ん中に大きな穴があいていて、そこを鉛ビスマスが逆U字に流れるような形になってそこに自由液面ができて陽子ビームが入射するという、そういう非常に大掛かりな構造になっています。それからMYRRHA計画、それからXT-ADSという言い方もされるのですけども、それでは少し細めの管のところを滝状に鉛ビスマスが流れていって、そこに自由液面ができて直接陽子ビームを当てるという、そういう構造になっていました。そういうことで、2ページの表になりますけれども、照射による材料損傷という意味では、ビーム窓の部分というのがありますと陽子・中性子による損傷が大きいということになります。一方で窓なし概念の方は、窓はないのですけれども、その鉛ビスマスを炉心の中で回さないといけないということで、系統機器がありますのでそれの中性子による損傷が大きくなるということです。それから、熱負荷は当然ビーム窓のところが大きくなります。ビーム窓なし概念はあまり大きくならない。それから、核破砕で生じます生成物なのですけれども、ビーム窓ありの場合は炉心内に比較的容易に閉じ込められますが、ビーム窓なし概念の場合にはビームダクト内、すなわち加速器の真空側に拡散していってしまうということで、これについては対応が必要になってきます。それから機器構成は、先ほど言いましたように、ビーム窓なしの場合には複雑になってくるということ。それからメンテナンスに関しても窓なし概念というのはポンプだとかが入ってきますので、煩雑になってくるということです。それから交換頻度の例としましては、我々が考えていますのは2年、それからビーム窓なし概念の場合は3年というふうになっています。この辺はそんなに、詳細に考えられた2年、3年ということではないと思います。それから必要なR&Dとしましては、窓あり概念は当然窓材の照射試験とか候補材の選択ということでまずはTEF-Tでやっていこうと思っています。それから窓なし概念の方は概念そのものの実証、それから液面・液位の制御方法、真空の維持方法というようなところが必要なR&Dになってきます。実績としましては、MEGAPIEで実績があるというのは窓あり概念、それから窓なしの方はベルギーで電子線を鉛ビスマスに当てて安定性に取り組んだ例があります。
そういうことで、3ページの方はMYRRHAプロジェクトで、これまで窓なし概念というのが記載されていたのが、窓ありに変わった経緯です。こちらの方はMYRRHAプロジェクトチームの方にメールで少し聞いたものを示しています。検討の初期では、MYRRHAではサイクロトロンで350 MeV-5 mAというエネルギーが比較的低い陽子ビームを使うという設計でした。そのために電流密度が高くなって窓あり概念では工学的に成立しないという判断で、窓なし概念の検討が進められたということになっています。その後の検討で、加速器が600 MeV-3 mAということになり、ターゲットが窓部に与える熱負荷と電流密度が低下して窓あり概念でも成立する見込みが得られたというふうに言われています。この窓なしと窓ありに変えたときに、単に5 mAが3 mAに減ったというだけではなくて、その照射する面積というかそういうのも変わっていますので、このμA/cm2というのが大体50μのところまで低下させることができているというのがMYRRHAの現在の検討になっています。それから同時期に行われましたMEGAPIEの実験では、590 MeV-1.8 mAということで、600 MeV-3 mAというのと電流としては半量ぐらいなのですけれども、エネルギーとしても非常に近く、これで4か月の運転に成功しました。当然何回もビームトリップして、熱サイクル疲労なんかもビーム窓の部分にかかっているのですけれども、それでも健全性が保てたということで技術としても実証されたと考えられています。あとはどれだけの電流を受け入れられるかということが工学的にやっていかないといけないことで、今は窓あり概念の方に変わっているという経緯になっています。特にその窓なし概念は先ほど言いましたシステムが複雑になるということ、それから配管などの照射量が多く、定期的な交換が必要であるということ、それから大きな部分としては規制当局との議論の中で、窓なし概念では反応生成物等の封じ込めに対する懸念が示されたということがありまして、MYRRHA計画では現在、窓あり概念に変更されているということです。
続きまして、各実験施設の詳細についてもう少し説明が必要ではないかという御意見があったと思いました。4ページはTEF-Tで行います主な実験項目ということで、大きく三つに分かれていまして、「陽子・中性子による構造材の照射損傷」、「重照射下での液体金属と構造材との共存性」、それから「液体核破砕ターゲットの運転制御」という項目が大きな項目だと思っています。それぞれビーム窓の寿命予測、腐食に関する試験だとかをやっていくということになります。
そのために考えておりますターゲットというのは5ページにあります、ターゲットの実寸法として15 cmφで60 cmの長さというもので、この写真でいきますと左から陽子ビームが入ってきまして、一枚ビーム窓を経てから、照射試験片が並んでいまして、そこに陽子が導入されると、鉛ビスマスが流れていまして、そこで核破砕反応が起こるというものになっています。照射の試験片ホルダがありまして、これを取り出して試験片を交換することで、試験を行っていくということになります。
6ページが、照射試験の実際の計画案で、順調に建設が進めば2017年から試験的な照射が可能になってくると思います。当初はビーム強度を低く、それから冷却材温度も低めで調整運転を行っていき、徐々にフルパワーへもっていくというふうに考えております。それから照射後試験に関してのコメントも頂いたと思います。照射後試験の主な流れというものを下に示していますけども、照射が大体年間4,500時間行うことができまして、それを冷却1~2年してから洗浄して切りだすところまでをTEF-Tの施設内でできるようにしたいと思っております。その後、切り出した試験片を既存のホットラボにて試験してデータベース化していくということで、このホットラボに関しましては既にMEGAPIEでも試験片だとか、その後J-PARC MLFから出てくる試験片等にも適応していくということで継続的に使用を続けていきたいというふうに考えております。以上がTEF-Tに関するところです。 
TEF-Pに関する試験項目としましては、「核破砕中性子源で駆動される高速未臨界体系の核特性予測精度と計測手法の検証」、「加速器駆動システムの特性試験」、それから「MA及びLLFPの核変換特性」ということです。上の項目としましては、核破砕中性子と高速未臨界というのがキーワードになりまして出力分布測定だとか高エネルギー粒子の影響評価なんかを行っていくことになります。それから加速器駆動システムの特性ということで、フィードバック制御の実験だとか、エネルギー増倍率の評価だとかを行っていくことになります。それからMAとかLLFPの核変換に関しましては、非常に短パルスの陽子を使えますので、飛行時間法による断面積データの測定だとか、反応率、反応価値の測定などを行います。それから最終的にはMAを装荷した炉心のシミュレーションを行っていくというところまで持っていきたいと思っております。
そのための実験施設として8ページのようなものを考えておりまして、これはJAEAに既存の高速炉臨界実験装置(FCA)に準拠した設計にしております。既存の施設とほぼ同じような形を採用するということで、できるだけR&Dのところは減らして、MAだとか加速器による運転のところに集中したいというふうに思っております。左側の図ですが、炉心が二つに分かれていまして、右側の移動側集合体が動いて固定側集合体の方に近づいていって密着し、炉心が臨界になっていくという実験装置になります。この炉心というのは右側にありますように、四角の格子管が何本も積み重なっているような形で、そこに燃料引き出しに板状燃料を入れて装荷していく構造になっています。その真ん中の集合体についてピン状の燃料が挿入できる蜂の巣状のものに交換できるようにしておいて、MAがたくさん入っていて、冷却が必要な場合はこういうピン状燃料を使って実験したいというふうに思っています。陽子ビームは左側の図でいいますと、左側の炉心、後ろの方から導入するというようなことでやっていきたいと思っております。
それで先ほど山口主査からありましたMAの調達に関して、9ページになります。ここではTEF-Pの実験用ということで整理していますけれども、まず原料調達が重要ですけども、原子力機構保有のPuの原料がありまして、その中に含まれるAmの利用を想定しています。この場合に多量に取り扱うことが困難なCmを含まないということでMAが比較的取り扱いやすいAm-241になっています。それから、これを上手く精製すれば、Pu原料の方は「もんじゅ」などの燃料としても利用が可能と思っております。それからMA分離に関しましては、既存施設を用いた実験室規模での抽出作業によりAmを得ることが可能であると考えております。その場合は100 g(MA)/年ぐらいになってしまいますので、限定的な量にはなります。大規模の分離を行う場合には、専用設備の整備というのが必要になってくると思っております。それから、ただこういう専用の設備を整備した場合には、得られたAmはTEF-P用の燃料ピンのみでなくて、高MA含有ペレットの調整試験だとか物性試験等の燃料製造開発、それからMA含有照射用燃料の原料として供給するということで、例えば「もんじゅ」の集合体にも使えるというふうに思っております。国内外の研究機関へ供給していくということで、ここがキーになってMA研究を盛んにしていくということが可能になると思っております。それからMAピンの製造に関しましては、小規模に製造を行う場合は既存セルで手作業により年間数本くらいであれば可能であるのですけれども、大規模、例えば一年間に200本のピンを作るというようなことをする場合には、既存施設に多くの工程が自動化された設備を整備していく、あるいは新しい施設というのが必要になってくるのかなと思っております。 
10ページは核変換実験施設(TEF)の建設に伴う主な経費、付加的経費の見込みということで、和気委員からだったと思いますが、コストの織り込みで他にもいろいろあるのではないかというコメントがありまして、我々なりに少し考えてみました。まず、新規制基準への対応に関しましては、まだ原子力機構において耐震や津波への対応というのが決まっているわけではないので、今のところでは未定ということにさせていただいております。それからMA燃料製造、先ほど説明しました小規模であれば既存設備の若干の改造ということで10~15億円で可能かなと思っております。それに対しまして、年間200本製造というようなことをやっていこうとすると、下の注記に書きましたけれども、100億円規模の整備費が必要になります。ただしこれはTEFのためだけではなくて、「もんじゅ」も含めたMAの核変換研究のための施設ということになってくると思います。陽子ビームを特に導入するためのLINACの改造というのが必要になってきまして、それが15~20億円ぐらい必要かなと思っておりまして、合計しますと25~35億円+新規制対応というのが付加的に必要な経費かなと思っております。それから年度ごとの経費に関しましては研究開発費としまして5億円ぐらいと思っております。それから運転維持費として17億円が年間必要になってきまして、内訳としましてはTEF-Tの運転維持ということで8億円、それからビームラインについて、TEF-Pとビームラインで各1億円、それからLINACの改造によります追加分ということでまだちょっと精査できていなくて検討中と書いてありますが、年間7億円ぐらいが必要になってくると思っております。以上です。

【山口主査】どうもありがとうございました。それでは今の資料につきまして御質問など。どうぞ、矢野委員。

【矢野委員】窓なし窓ありの話ですけど、まず一つ、私は窓なしの方がデザイン上スマートだなと思っているのですけど。窓を付けてしまって封じ込めるということですが、もしここが破れた場合は何も起こらないのですか。

【大井川室長】はい、破れた場合には隔離弁というのを二つ用意してあって、それを検知しながら隔離弁で抑えて加速器側に行くのは止めるという構造の想定になっています。

【矢野委員】それは窓なしでも多分同じようなことをしますよね。

【大井川室長】窓なしは常に破れていますので。

【矢野委員】それで言うと、窓なしであったとしても段々真空度が上がっていくはずです。もちろん、中にできるFPが蒸気になっていくので、それは循環か何かしなきゃいけないのは確かなのですけども。ビームに対する影響はないですよね。

【大井川室長】窓なしの場合でしょうか。

【矢野委員】はい、窓なしの場合。作動排気系のようなもので、確かに仕掛けは複雑になり、いろいろ必要になるのですけどね。窓ありの場合は、窓に長い照射もすることになるし、いきなりならならないし等々あって、大変な開発が必要なのだろうと思いますけど、窓なしであればそれは必要なくなります。ただ、仕掛けはおっしゃるとおり余計なものを幾つか設けないといけなくなります。ただ、窓なしの利点はビームパワーを上げられることです。

【大井川室長】いや、そう簡単ではなく。

【矢野委員】簡単でないのは分かります。でも、ビームパワーは原理的には上げられる。ここでそういう議論を長々とする気は当然ないのですけど、窓ありが反対と言っているわけではないです。窓なしというのもなかなか魅力的なデザインコンセプトだなということを分かっていただきたいなと思います。

【大井川室長】我々も加速器と核破砕ターゲットの単体であれば、窓なしができるのであれば窓なしを追及するという手もあると思うのですけども、原子炉の中に入れるとなると、やはり機械的な窓なしを成立させるためのメカニズムというのは相当大変で、机上配布しました資料のようなポンチ絵は描けるのですけども、本当に成り立つのを示すというのは相当大変に思います。

【矢野委員】よく分かります。ただ、ポンチ絵の魅力というのがあります。これは技術的にやりきってしまったら、遥かに窓ありよりは良いという最初の美しさというのがあるのですよ。そういうことを言っているだけです。

【山口主査】いろいろ議論されているのはそれぞれに一長一短あっての評価だと思います。いずれにしても、今のターゲットであるTEF-Tの試験を踏まえて、恐らくレビューとかまたされると思います。今そういう御意見があるのは、それはおっしゃるとおりだと思います。田中委員どうぞ。

【田中委員】矢野委員のコメントと関係するのですけども、MYRRHAだったら結果的に窓ありにしたというような話なので、そのときの一番のクリティカルだった判断はなんであるのかということと、実際、実証システムとしたときにもそれが本当にそのままクリティカルさが適用できるのかどうか。

【大井川室長】MYRRHAの窓ありに変えたというのは3ページにあるのですけれども、やはり彼らの判断基準としてMEGAPIEで実証されたということが非常に大きかったのだと思います。彼らはいついつまでにMYRRHAを実現させたいといったときに、もう既にある技術を使うと言えるか言えないかというのが一番大きいのかなと思います。我々もこれで、MYRRHAでの窓ありがちゃんと動けば、今後は実機にも適応できますという流れになっていくわけです。ここでMYRRHAが上手くいくかどうかというのが今後の実機への判断につながっていくと考えています。

【田中委員】そのときの実機というのは、どういったものを狙うかによるのですけども、今、矢野委員がおっしゃったように、本当に窓なしでもいろいろな作動排気などでやっていると同時に原子力施設とか、あるいは放射性物質の閉じ込めとかというような観点で、まずクリアできるのであればちょっと検討に値するのかなと思いました。

【大井川室長】実は我々も、前にも申し上げたのですけども、窓なしについて全然排除しているわけではなくて、我々の本当の立ち位置はヨーロッパで窓なしを追及し、我々は窓ありを追及する。両方で良い方が実現したら良いということだったのですが、彼らは窓なしを見放しているので、我々としてはゼロから窓なしを開発するというところまでは至っていないのです。先ほど矢野委員がおっしゃったように、窓なしの魅力も当然我々も分かっているので、それは並行して考えていきたい。

【山口主査】はい、もう一つは最後の予算で、新規制基準への対応が未定となっているのですが、やっぱり原子力施設で見たら隔離をして放射性物質を閉じ込めるとか、あるいは影響を抑制するというのがやっぱり基本概念だと思うのです。それで信頼性を確保していく。それとも今、田中委員がおっしゃったような原子力のそういうものとしてとか、閉じ込めの性能としてとか、やっぱりそういうところがここであっさりと未定と書かれているあたりがもう少し今、矢野委員の御指摘にすっきり答えきれないところだと思います。まだちょっとどうやって閉じ込めをするのかという観点から共通する答えがしっかり出ていないとこかなという気もするのです。

【大井川室長】今のお話は、実用ADSのことでしょうか。

【山口主査】そうです。将来を見据えたときに、MYRRHAの話を見ると結局、許認可性ではないかと、それとOperation abilityに相当劣るのではないかと、結局その二つですね。そうすると、今新しい原子力施設としての放射性物質の閉じ込めなんかをどうやって確保して説明していくかというのが許認可性に答えることになるのだろうと思います。そこが今のフェーズではまだそこまでの段階に至ってないということで、ちょっと今、田中委員からもそういう御指摘もあって、その辺も視点の中に入れながら見ていただくのがいいのかなと思います。

【矢野委員】ちょっといいですか。

【山口主査】はいどうぞ。

【矢野委員】J-PARCでこのターゲット試験は是非やった方がいいのですけど、気を付けていただきたいのは、この前のJ-PARC事故のようなことが起こり得ないとは言えませんから。ターゲットの中にどんどん放射能ができますから、どこかの窓が破れるとかということが想定されるのであれば、二重、三重の防護をよろしくお願いしたいと思います。

【山口主査】その点はよろしいでしょうか。

【大井川室長】はい、閉じ込めっていうのはしっかりやっていきたいと思います。当然、将来のADSに関してもそうですし、この実験施設についてもそれはしっかり考えていこうと思っています。

【山口主査】はい、ありがとうございました。他には何かございますか。どうぞ、藤田委員。

【藤田委員】最後のページの予算についてです。上のいわゆる25~35億+新規制対応と年度毎経費というのは別ということなのですね。そうすると、研究を進めるのに必要な研究開発費は毎年5億、維持費が17億、それとは別に上の金額がトータルではかかるという理解でしょうか。

【大井川室長】はい、上の方の25~35というのは、このTEFを整備していく上で必要な付加的なお金ですから、これは一回だけですが、下の年度ごとの経費というのは大体R&Dを進めていくためには年間幾らぐらいが必要ですということです。

【藤田委員】そうすると上の経費っていうのは、いわゆる初年度とか割と初期のときにこういう大きな金額がまとまって必要で、続けていくのが下の金額ということでしょうか。

【大井川室長】はい、LINACの改造の部分はかなり初期で必要ですけれども、MA燃料製造については、少し経費としては後になってくるのかなというところです。

【藤田委員】:分かりました。

【山口主査】多分、和気委員の御指摘は、MYRRHAとの比較においてこういう数字は含まれていないけど、後々また増えましたとなりませんかという御指摘だったと思います。恐らくその都度のチェック&レビューでは、当然次のステップへ進むのかという面ではコストのその都度の見直しというのもされると思います。なかなかこういうふうに幅が大きすぎると、どういうものだというのは上手く言えないですね。よろしいでしょうか。どうぞ、中島委員。

【中島委員】少し細かいところで恐縮ですが、7ページのですね、TEF-Pでの試験項目の一番下のところで、MAとLLFPの核変換特性というのがあって、そのLLFPは、これはサーマル(熱中性子)でということだと思うのですけれども、減速場での研究をやるということですが、これは先ほどのポンチ絵の中のFCAのような場の中に減速場を設けて、そういう実験もできるようにするということですね。

【大井川室長】はい、そのように考えています。

【中島委員】分かりました。ありがとうございます。

【山口主査】では大体よろしければ、今日もう一つ重要なテーマがありますので、そちらに移りたいと思います。三番目の議題で、資料4「群分離・核変換技術に関する中間的な論点のとりまとめ素案」を事務局から説明を頂いて議論させていただきたいと思います。それでは事務局の方から、よろしくお願いします。

【西田室長】はい、それでは資料4につきまして、これまでの委員の方々からの御意見、それから原子力機構からの説明等を踏まえまして、中間的な論点のとりまとめの素案というのを事務局の方でまとめております。「はじめに」では、作業部会での検討に当たっての経緯などを説明しています。原子力委員会が平成20年から21年にかけて検討しました分離変換技術検討会の結果の中で、概ね5年ごとに基礎データの充足や準工学・工学研究の発展・進展等について状況を評価することが適当というふうに指摘されていることを踏まえまして、この作業部会で検討をして、今回中間的な論点のとりまとめを整理したというような流れです。
続きまして「Ⅰ.群分離・核変換技術評価における基本的考え方」として原子力政策との関係についてここで言及しております。この群分離・核変換技術につきましては、これまで核燃料サイクルの技術の一環として取り組まれたことがありますので、今の原子力政策との関係、考え方といったものをここで整理をしています。まず、原子力委員会が最近の考え方として、核燃料サイクル政策の選択肢というものを平成24年6月に取りまとめております。この中では原子力比率に応じてどのような取り方があるかということを評価しておりますけれども、原子力比率が0%の選択肢以外では再処理・直接処分併存、若しくは全量再処理の選択が有力であるというような御指摘。それから高レベル放射性廃棄物の最終処分の選定作業は、国がリーダーシップを発揮して強力に推進していくべきであること。それから2ページ、再処理が行われる場合には、廃棄物処理技術としての高速炉(FR)の位置づけや、又は第四世代炉候補等との比較について検討が必要であること。将来の不確実性に柔軟に対応できるように、高度再処理、FR技術等の基礎・基盤研究は継続することという御指摘を頂いております。それから、日本学術会議が24年9月ですけれども、これも原子力委員会からの意見照会に応じまして提出された回答の中で、高レベル放射性廃棄物の処理について将来可能となる選択も視野に暫定保管という概念が提示されるなど、将来の政策的な柔軟性への対応といったものが課題となっているところです。さらに、現在、既に使われている原子力発電所において、現在の貯蔵量を含めてガラス固化体約2万5,000本相当の高レベル放射性廃棄物が発生するということ。今後、こうした高レベル放射性廃棄物の処分について環境との調和において高いハードルを克服していくことが必要であるという考え方です。こうしたハードルを克服し、また将来における政策的な柔軟性を確保するためには、放射性廃棄物の処理・処分に関する研究開発を着実に推進し、技術的なオプションを増やすとともに、より環境に調和しやすい形での処理・処分の方法を提示し、最終処分が円滑に進むように努めていくことが重要であるというような考え方を整理しております。次に二番目としまして、今回の作業部会の調査検討の観点です。これまでの群分離・核変換技術の取組につきましては、高速炉での照射試験など、高速炉サイクルの研究開発の一環としての実施が中心であったところです。続きまして3ページ目、一方で、他の技術的選択肢でも社会的受容性の高い新たなバックエンド概念が構築できることを示すことにより、将来の政策的な柔軟性が広がることが期待されるのではないか。今回、高速炉サイクルによる分離・変換技術につきましては「もんじゅ研究計画作業部会」において研究計画を取りまとめているところですので、本作業部会におきましては、これまで実験室レベルにとどまっていた群分離技術及び陽子ビームを用いた核変換技術について、現時点における研究開発の進捗状況や、工学規模での研究開発を可能とする出力規模の高い核変換実験施設の整備の必要性や有効性、整備計画の妥当性等を中心に検討を行った。また、群分離・核変換技術は多様な分野の研究者・技術者の力を結集して長期間にわたり取り組む必要がある技術であることを踏まえ、我が国の原子力工学・核物理分野における技術レベルの向上、人材育成の観点からの取組とともに、国際協力での取組への在り方についても併せて検討を行ったというふうにまとめています。
続きまして、「Ⅱ.群分離・核変換技術に関する研究開発状況」につきまして、まず群分離・核変換技術の位置づけについて整理をしています。これは、これまで我が国の原子力政策の中で取りまとめられた群分離・核変換技術に関する記述等を、経緯等を整理しているところです。4ページ、群分離・核変換技術について、将来の導入効果と将来イメージでどのようなものになるのかを簡単にまとめています。分離変換技術検討会、これは原子力委員会の検討会ですけれども、この導入効果につきましては①潜在的有害度の低減、②地層処分における要求の軽減、③廃棄物処分体系の設計における自由度の増大といったようなことが指摘されています。これらの導入効果に関する見解につきましては、現在でも変わっていないということです。この分離・変換技術につきましては、大きく分けて高速炉サイクルの中で実施する発電用高速炉利用型と、今回、ここに書いておりますADSを用いた階層型の二つがあります。このADSを用いた核変換技術につきましては、将来の様々な状況に柔軟に対応できる可能性を有していることから、高速炉サイクルの研究開発と並行して研究開発を進める有望な技術的な選択肢であるというふうにさせていただいています。今後ADSを用いた核変換技術について工学規模での技術的成立性の確認に取り組むことが必要でありますけれども、我が国の原子力発電システムへの群分離・核変換技術の導入について検討する段階では、発電用高速炉利用型の均質サイクルの概念と、ADSによる階層型サイクルの概念について技術的な成立性、費用対効果の点に関して相互比較評価を行った上で判断されることが適当であるというような御指摘をさせていただいています。三番といたしまして、群分離・核変換技術の研究開発状況です。これにつきましては原子力機構で説明があった資料等に基づきまして記載をしているところです。群分離につきましては、実験室規模でのホット試験、工学規模でのコールド機器開発、模擬高レベル廃液による試験等によって知見を蓄積し、実燃料、実液による試験の実施可能性を見極めた上で工学規模試験に移行するべきであるというふうに評価しているところです。これに対して、これまでMA、ランタノイドともに高レベル廃液から回収する工程については、模擬廃液を使用したフローシート試験が実施され、Amの回収率が99.99%以上達成されていること、MAをランタノイドから分離する工程においては、新規抽出剤が開発されるとともに、水溶性錯化剤とTDdDGA抽出剤を組み合わせた抽出系による分離が確認されていること。核分裂生成物の分離については、抽出クロマトグラフ法や電解法の基礎データが取得されていることを記載しております。ADSにつきましては、同じく原子力委員会の報告書につきまして技術課題として「ADSが実現する時代に発電システムに要求される安全性、信頼性、経済性といった性能目標の達成を妨げない、若しくは達成に寄与できる加速器の性能・コストが実現していること」、「ビーム窓の工学的成立性を確証すること」、「未臨界炉心の制御等の炉物理的課題を高い信頼度で解決すること」及び「鉛・ビスマス冷却炉の設計及び安全性を高い信頼度で確証すること」を課題として挙げられているところです。現状では、ADS用加速器についてはJ-PARCのLINAC運転データから推定したデータを基に、加速器に求められている信頼性向上の方策が検討されていること。ビーム窓の工学的成立性については、使用条件における外力、熱応力、除熱、腐食等の観点からの検討に基づき、成立の見込まれるビーム窓の概念が提示されていること。未臨界炉心の炉物理的課題解決については、京都大学のKUCAとFFAG陽子加速器を用いたADS模擬体系において、未臨界度を測定する技術開発を実施していること。鉛ビスマス冷却炉については、高速炉などの安全解析コードを用いた動特性解析が実施されていること、試験ループ群を用いて鉛ビスマス利用技術の開発が進められていることなどを記載しております。続きまして6ページ、燃料サイクル及び燃料についてです。ADS用燃料及びそのサイクルにつきましては、技術的課題として「窒化物燃料の乾式再処理による燃料サイクルシステムの実用性を示すこと」、「所定の使用条件下での燃料性能及び高燃焼度を達成する窒化物燃料が製造できることを高い信頼度で確証すること」が挙げられています。これにつきましては、乾式再処理プロセスデザインに不可欠なMAの基礎データベース、特にデータベースが不十分であったCmのデータが整備されたこと、窒化物燃料固有課題の陽極技術について、電解残渣からのPuやMAの回収法が考案され、プロセス原理が確認されていること、周辺工程に含む実用的な乾式再処理プロセスフローの概念が構築されたというふうにしております。さらに、高速炉用金属燃料再処理技術として、乾式再処理技術の工学規模での実施に向けた研究開発が実施されており、使用済金属燃料からMA回収が電中研によって実施されていることを記載しております。ADS用燃料につきましては、不活性母材含有MA窒化物ペレットの調製条件が確立され、Cmを含むペレット調製に成功したこと、ADSの燃料設計に不可欠な誤差評価を含む物性評価式の整備に着手し、熱物性と固溶度の評価式が開発されていること、さらに、高MA含有燃料での固有課題である、自己照射損傷による格子定数変化や熱物性変化が定式化されていることを紹介しております。続きまして、FP核変換につきましては、I-129やTc-99といった長寿命核種を核変換する方法が検討されているが、概念検討にとどまっているというような形になっております。続きまして、J-PARCの核変換実験施設(TEF)については、大強度陽子ビームでの核破砕ターゲットの技術開発及び材料の研究開発を行うADSターゲット試験施設(TEF-T)と、低出力で未臨界炉心の物理的特性探索とADSの運転制御経験の蓄積を目指す核変換物理実験施設(TEF-P)で構成されています。TEF-Tについては、実用ADSに相当する陽子ビーム条件での材料照射試験が実施可能な鉛ビスマスターゲットの概念が提案されていて、次のステージに向けた検討及び研究開発が進められていること、TEF-Pについては、既存の高速炉臨界実験装置(FCA)での知見・経験及び燃料等の資産を有効に活用し、MA含有燃料の使用と小出力陽子ビームの導入が可能な施設概念が提案されており、次のステージに向けた検討及び技術開発が進められていることなどを紹介しています。
「Ⅲ.国際協力による研究開発の推進」について、本技術の研究開発につきましては、核不拡散の枠組みの下で国際協力によって推進することが適切であること、我が国は、この技術の基盤となる核燃料サイクル技術、高速増殖炉技術、大強度陽子加速器技術などを既に有しており、国際貢献の観点からも、これらの技術の研究開発を先導すべきであるとしております。ADSに関する国際協力では、液体金属核破砕ターゲットの開発試験(MEGAPIE実験)により、液体鉛ビスマスを用いたメガワットクラスの核破砕ターゲットの4か月にわたる照射試験に成功しており、現在、ターゲットの解体を終え、使用材料の照射後試験を各国で分担して実施中であること、原子力機構は、EUROTRANSに参加し、実用及び実験炉級のADSの設計研究、加速器-未臨界炉の結合実験、核変換用先進燃料の開発、材料と液体重金属技術、核データ等に関する貴重な知見を得ているところです。さらに、原子力機構はベルギー原子力研究センターとの協力取決めを結び、実験施設の設計研究、被覆管及びビーム管の材料研究、鉛ビスマス技術等に関する情報交換、人材派遣、共同研究を実施していることころです。また、OECD/NEAでは、1990年より隔年で情報交換会議が開催されるなど、先進燃料の熱力学データベースの整備及び専門家グループを立ち上げるなど、この分野の国際協力の推進に積極的であることを紹介しております。そして2.工学実証に向けた国際的な取組につきましては、ベルギーでは熱出力50~100 MW規模の照射試験用ADSであるMYRRHAの建設を計画していること、ベルギー政府は建設費のうち40%を拠出することを決めており、残りの負担を諸外国に呼びかけているところです。原子力機構は、本年2月にMYRRHAプロジェクトに対する関心表明を発出し、MYRRHAではMA核変換は行われないものの、ADSの開発において必須となる実験炉級ADSの段階として、極めて有効な知見・経験を得ることが期待されます。また、J-PARCの核変換実験施設との関係につきましては、TEF-Tでは将来の実用ADSに向けたビーム窓材料の開発・寿命評価に向けたデータを取得する施設として、MYRRHAの高度化に向けたデータも取得することが期待されていること、MYRRHAの本格運転までにビーム窓材料の試験データ等の提供が期待されているところです。また、TEF-Pについては、核変換用ADSの炉物理試験や核データの積分検証などを通じまして、将来の実用ADSや高速炉のためのデータを取得できると考えているところです。したがって、J-PARCの核変換実験施設とMYRRHAの成果を相互に補完することで、核変換技術の実用化に向けた課題の効果的な克服が可能となり、ADSに関する研究開発の加速を図ることが期待されているところです。
続きまして、「Ⅳ.群分離・核変換技術に関する研究開発への評価」についてです。まず、研究開発の課題と今後の取組としまして、群分離技術については実験室規模でのホット試験、工学規模でのコールド機器開発、模擬高レベル廃液による試験等についてロードマップの課題に沿った成果が得られ、さらに、プロセス実廃液試験による適用性評価に向けた検討が行われているなど、概ね、原子力委員会の指摘事項に沿った研究開発が進められているとしております。課題としては、MAをランタノイドとともに抽出する工程以外の開発段階が低い状態にとどまっていること、工学規模へのステップアップに向けた実験に移行するためには、トレーサ量を超える濃度のMA溶液を取り扱うデータの取得が課題であること。今後、実廃液試験によるデータの取得を進めるとともに、産業界と連携して工学規模への展開を見通すための技術開発を進めることが期待されるという記載をしております。続きましてADSにつきましては、原子力委員会の指摘事項に沿いましてJ-PARC リニアックの運転データから推定したデータを基にしたADS用加速器に求められる信頼性向上方策の検討、成立が見込まれるビーム窓概念の提示、未臨界炉心の炉物理的課題解決に向けた京都大学原子炉実験所のKUCAの計測手法に係る成果の活用、鉛ビスマス冷却炉に関する動特性解析等の取組が進められているところです。ADSの大きな技術課題である陽子ビーム窓の成立性検証に向けて、J-PARCの核変換実験施設計画の下、ADSターゲット試験施設が提案されており、次のステージに移行していくことが適当であるとしております。また、J-PARCの核変換実験施設の計画の下、核変換物理実験施設(TEF-P)が提案されております。同施設は原子炉施設として提案されておりますが、新規制基準に沿った安全審査が行われることになるため、そうした点についても考慮しつつ次のステージに移行することが適当であると書いております。また、最後、MYRRHA計画につきまして、国内での研究開発の取組状況も踏まえつつ、適切な規模での参画について、ベルギー等、関係国との調整を進めることが適切であると書いております。燃料サイクル及び燃料についてですが、これも分離変換技術検討会での指摘事項に沿って、乾式再処理プロセスデザインに不可欠なMAの基礎データベースの整備、電解残渣からPuやMA回収法等のプロセス原理が確認されるとともに、周辺工程を含む実用的な乾式再処理プロセスフローの概念が構築されていること、さらに、高速炉用金属燃料再処理技術開発として、乾式再処理技術の工学規模での実施に向けた研究開発が実施されており、使用済金属燃料からのMA回収が電中研によって実施されているなど紹介しています。このADSの導入シナリオを考えた場合に、高濃度でMAを含有する酸化物燃料なども視野に、高速増殖炉の取組や欧州と連携して幅広い可能性に柔軟に対応できるように研究開発を進めるべきであるという点、また、相当量のMAを使用して、物性測定やサンプル照射試験などを進める必要があり、既存施設の有効利用と、新規施設の戦略的な整備を有効に組み合わせて研究開発の活性化を図ることが重要であるというような記載をしております。最後、全体に関する評価ですが、ADS、燃料サイクル及び燃料の各分野について技術成熟度の検討を行った結果、概ね、研究開発段階から原理実証段階に移行することが可能な研究開発段階であり、工学規模の次のステージに移行することが期待されるとしております。次のステージに移行するに当たっては、相当量のMAを用いた実験について、既存の施設だけでは実施が困難であることから、今後、本技術の研究開発を進めるに際しては、既存施設の有効利用と、新規施設の戦略的な整備を効果的に組み合わせて、研究開発の活性化を図ることが重要である。その際、高速炉サイクルを用いた方法と、ADSを中心とした階層型概念で共通の課題については一体的に取り組むことが必要であるという指摘をしています。続きまして、2.ロードマップについては、平成21年の分離変換技術検討会において原子力機構の示したロードマップが現状を踏まえて適切に更新されており、妥当と判断しております。今後、施設整備計画等の具体的な策定に当たっては、今後の研究開発の取組状況を適切に反映していくとともに、図中の「更に将来の部分」の取組については、今後の原子力政策の見直しや高速炉サイクルによる核変換技術等他の分野も含めた研究開発の進捗状況を踏まえつつ、適切なタイミングで実施について判断されるべきであるというような形で、途中のチェック&レビュー項目などについても記載をしているところです。12ページは、先ほど原子力機構に紹介いただいたロードマップを添付しております。
続きまして13ページは、「Ⅴ.基礎基盤研究の推進と人材育成」の一番目としてユーザーコミュニティでは、TEF-Tの多目的利用について、ユーザーコミュニティ構築のためのワークショップが開催されるなどの活動が行われており、実験施設の最大限の有効利用を図る観点から適切に取り組まれていること、実験提案を広く国内外から募集する取組や、学会の関連する部会で横断的に実験施設のあるべき姿を検討する活動が行われており、より多くの研究者の参画を促す観点から、今後も継続していくべきとしております。さらに、二番目としては、基礎基盤研究の充実と人材育成について、群分離・核変換技術は、概念検討段階から原理実証段階に移行する過程にあり、基礎研究を行う大学などからプラント技術開発を行う産業界まで、原子力機構を中心に連携を強化する必要があること。この際、長期の研究開発期間を必要とすることを踏まえ、基礎基盤研究の充実を図るとともに、原子力工学・核物理等の理学系をはじめとする幅広い分野の研究者との連携や、基礎基盤研究と工学技術開発との連携の構築が極めて重要であるということを指摘しております。また、本技術は、高レベル放射性廃棄物の処理処分の負担軽減という人類共通の課題への挑戦であり、若い世代にアピールできる原子力の研究開発課題の一つと言えること、本技術の実現には、長期間にわたる広範囲な科学技術分野の横断的な連携が必要であり、より多くの若い研究者・技術者が活躍できるよう人材育成の仕組みを強化する必要があること、国は、原子力機構と連携して、若い世代の挑戦に応え得る環境を整備していくことが必要という点を指摘しております。
最後に、「Ⅵ.引き続き検討が必要な事項」として記載しています。将来に向けて相当量のMAを取り扱える施設の整備が必須であり、引き続き、MAの調達を含めたMA取扱い施設の整備の在り方について検討が必要であること、それから、J-PARCの核変換実験施設につきましては、次のステージに向けて進むことが適当であるが、段階に応じて進捗状況をチェックすることが必要であること、FPの核変換技術を含めた技術的進歩や全国的な推進体制の構築について、今後、広く検討することが重要であること、それから、ベルギーのMYRRHA計画への参画については、原子力機構だけではなく、大学や産業界も含めた国としての対応が重要であり、貢献に関する交渉の状況等について、適宜報告を受ける必要があること、最後に、群分離・核変換技術評価作業部会としては、これらの進捗状況について、必要に応じて報告を受けるとともに、技術評価については、引き続き調査検討を行っていくというふうにまとめております。中間的な論点とりまとめ素案の説明は以上です。

【山口主査】どうもありがとうございました。この作業部会での議論が非常に良く反映していただいていると思いますが、いろいろ御意見もあろうかと思います。何かございましたら、御発言ください。田中委員どうぞ。

【田中委員】大体この方向でいいのかなと思うのですが、例えば11ページにあるロードマップの管理とか、実証段階で何をチェックしないといけないのかという留意事項も書き込んだ方が良いのかなと思いました。共通の課題について、FBRでかなり研究が進んでいますので、あるところで比較評価するとしても一方がかなり前に進んでいるということを意識しながら、どういうことをやらないと比較評価できないのかといった観点も大事かなと思います。また、廃棄物がどれだけ減容されるか、あるいは長期的に変化するかというのがあるのですが、これは核変換効率と分離に依存するのですけども、やっぱり適宜、分離がどこまでいけそうか、あと一歩で目標としている核変換効率になるのかというようなことも考慮して、本当の廃棄物がどうなるのかということをいつも意識して、その図を再評価して、目標設定とかも同時にやっていかないといけないと思います。

【山口主査】ありがとうございます。今の田中委員の、また御意見いただきたいと思うのですが、先ほどの廃棄物がどうなるのかというのを意識していくというお話は、11ページの評価の最後、全体というのがあるので、そこにそういうキーワードが入ってもいいのかなと思います。他にはいかがでしょうか。どうぞ、藤田委員。

【藤田委員】今の田中委員のお話でもう少し個別のテーマと言いますか、前回のときに原子力機構さんからMA分離での回収率の設定等で、段階的にMAだけじゃなくてFPもこういうふうに回収するとどうなるということを御提言いただいたのですけど、あの辺も含めて今のところに、やっぱりMAだけでなくて実際に高レベル廃棄物をドラスティックに減らすというとどうしてもLLFPにある程度手をつけなくてはいけないのですけれども、それが本当に技術的とか経済的に成立するかということを、それはデスクワークで構わないと思うのですけど、その辺の評価も一般の人に分かるような表示をしていただきたいと思います。

【山口主査】はい、LLFPの話は分離変換技術検討会のレビューで課題があるみたいな話が少し書いてあるだけでしたね。

【藤田委員】書いてあったのですよね。

【田中委員】6ページにそこのところが書いてあると良いと思います。サイエンス系とか理学系の方々が、コンプトンによる(γ, n)反応とかに関心があって、もちろんそれが本当にどこまで可能かどうか。あるいはADSでも、熱の発生はちょっとさて置いて、長半減期の核変換もメインのターゲットにしたときにどこまで有効なのかとか、そういう評価もどこかでしておいた方がいいのかなと思います。

【山口主査】なかなか難しいですけどね。

【田中委員】でも、結構若い方々は関心ありますよ。

【山口主査】ただやはり、この報告としてはLLFPの話に触れないというのは、やっぱり片手落ちになってしまうので、是非お願いします。他にはいかがでしょうか。どうぞ、澤田委員。

【澤田委員】この先、非常に長い研究開発が必要になるわけですが、当然研究開発の中にはリスクが伴うわけです。個々のリスクについて、こういうところに書くべきとは思いませんけども、そういうリスクに対して、今後どういう対応をしていくのかというようなことは少し書き込んでおいた方が良いのかなと思いました。何でそんなことを思ったかと言いますと、8ページに、ベルギーは総額9億6,000万ユーロ拠出すると書かれているのですけども、つい最近、Nuclear Engineering Internationalの記事には来年決めるみたいなことが書いてありました。特に国際協力ということで相手があることなので、もしMYRRHAが上手く動かなかったらどうなるのかというのも当然出てくるわけですから、そういったようなことも少し触れておかれた方がいいのではないかなと思いました。

【山口主査】この報告書で、今澤田委員から御指摘があったようにあまりディテールまでは書かなくてもいいとは思うのですが、ある意味ではこれがしばらくのガイドになるような報告書なので、少し一般性のあることが書かれている方が多分いいのかなと思います。他には何かございますか。どうぞ、藤田委員。

【藤田委員】先ほど、山口主査と田中委員が話された高速炉による核変換とこの(群分離・核変換)位置づけという話を、ある程度一般の方に分かる形の説明が必要かなと思いました。実はですね、9月の末から10月の初めに、Global 2013という国際会議がアメリカのソルトレイクシティであったのですけど、そこではですね、(群分離・)核変換はいわゆる再処理高速炉路線でない国の、保管技術という観点での発表が多かったのです。万が一、再処理高速炉というのが上手くいかなくなったときの高レベル廃棄物低減等にはやはりリスクヘッジとして絶対必要で、一つのものだけをやるのではなくて、研究開発というのはリスクを考えて幅広く基礎研究しておくという観点で重要なので、ここは高速炉か核変換かというのではなくて、きちんとその目的を明確にして、一般の方たちにも分かりやすく説明を入れていただくのがいいのかなと思います。

【山口主査】内容としてはそういう主旨のことが書いてあったと思うのですが、恐らくいろいろなところに分散しているので。

【藤田委員】知っている人は分かるのですけど、一般の方がパッと読んだときに、高速炉との関連をすごく疑問に感じてしまう。

【山口主査】そういう趣旨の御意見ですので、見通せるところに書いていただいた方が良いかと思います。他にいかがでしょうか。はい、中島委員。

【中島委員】人材育成のところで、我々大学のところでいろいろ書いていただいたのでよろしいかと思うのですけど。最初のところのユーザーコミュニティで、TEF-Tは多目的利用ができるということですが、TEF-Pの方についても、例えば計画段階でいろいろな外の人の意見を聞くとか、あるいは大学から学生なんかを派遣させて一緒に設計研究も含めて実験をやれるというような仕組みを構築していただけると有り難いと思います。よろしくお願いします。

【山口主査】この作業部会でも、大学や産業界と連携する話があったかと思います。今の中島委員のコメントは、大学がダイレクトに参加できるような仕組みを提言するというような話ですね。他にはいかがでしょうか。最初に田中委員から方向性として良いのではないかという御意見いただきましたが、いかがでしょうか。この作業部会でのとりまとめとして、幾つか今日コメントは頂きましたけども、全体としての結論、まとめ方としてよろしいでしょうか。どうぞ、田中委員。

【田中委員】結構だと思うのですけども、経済産業省の方でも、廃棄物についてワーキンググループを作って議論していますので、文部科学省的にはどういうことを書けばいいのかという観点も気にされた方がいいのかなと思いました。

【山口主査】今の点は、省庁をまたがるような話で、よろしくお願いします。

【田中局長】はい。これは先方にもちゃんと報告してやっていこうと思います。

【山口主査】はい。大体よろしいでしょうか。今、田中委員からもお話ありましたけど、とりまとめに反映するためには、いつまでにメールでコメントしたらいいでしょうか。

【西田室長】はい、次回の作業部会の開催を、30日に予定しておりますので、できれば今週中あたりを目途にコメントをいただければと考えております。

【山口主査】今週中ということでよろしくお願いいたします。それではどうもいろいろ御審議ありがとうございました。何とか論点のとりまとめということで方向性が見えてきましたので、今週中にもし追加で御意見ありましたらメールで事務局まで送っていただいて、もう一度その御意見等を踏まえて議論する場があろうかと思います。以上で、本日予定しておりました議題は終了となりますが、事務局から連絡事項ありましたらお願いします。

【西田室長】ただいま、次回の作業部会の日程について少し言及しましたが、来週は10月30日(水曜日)を予定しております。また詳しい連絡は後ほどさせていただきたいと思います。また、本日、頂いた御意見、更に追加の意見があれば今週中にお願いできればと思います。また本日欠席された委員の方々にも連絡の上、文章等で御意見を伺いたいというふうに思っております。そうしたことを踏まえまして報告書の中に反映の上、次回改めてお諮りしたいと思います。また、本日の議事録につきましては出来次第メールで御相談させていただきたいと思います。事務局からは以上です。

【山口主査】はい、ありがとうございました。それではまとめということで、研究開発局田中局長から御挨拶を頂きたいと思います。

【田中局長】どうもありがとうございました。私たち、今月は核燃料サイクルの問題をどう考えていくのか、将来にわたって当然、田中委員から言っていただいたとおり、高速炉というものの行く末をきちんと見通す必要があるということはありますけども、それだけで我々として自信を持って、日本、あるいは世界に対して原子力政策、エネルギー政策をやっていくというわけにはいきませんから、是非、将来の可能性のある技術としてきちんとした取組を進めていきたいというふうに思います。30日がこのとりまとめということでありますけれども、それを頂いた後は我々全力を持って、そのプランを実行すべき進めて参りたいというふうに思います。これからも多分、いろいろなところで御指導、あるいは御助言いただきたいと思いますけれども、よろしくお願いいたします。

【山口主査】どうもありがとうございました。それでは以上をもちまして、第4回の群分離・核変換技術評価作業部会を終了いたします。長時間にわたりまして御審議いただきありがとうございました。

―了―

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