資料8 環境エネルギー委員会及び地球観測推進部会における持続可能な地球環境研究に関する主な意見について

第7期環境エネルギー科学技術委員会(第1回)(平成25年4月26日)における持続可能な地球環境研究に関する主な意見

<トランス・ディシプリナリー、文理融合>

  • フューチャー・アースにおいて使われる「トランス・ディシプリナリー」とは、社会とディシプリンの連携、学と社会の連携。

  • 省際、国際、特に学際の「際」を超えるための様々な方法論や制度を検討し、それらを使っていかに課題解決していくかが、フューチャー・アースを通じて我々に課された宿題。

  • 文理融合は目的ではなく、変化のトレンドやリスク分析、今後の展望・対応と技術的なギャップの特定等を行うための「手段」として考えるべき。
    トランス・ディシプリナリー研究は、社会に実在する問題と科学をどうつながるかが鍵。

  • エネルギー利用と環境負荷との不可分な関係性や、社会制度との兼ね合い等、人的や社会的要素を考慮した環境研究の枠組づくりの機運も高まっている。

  • 一機関ではなかなか人的に難しい、将来シナリオの策定や環境技術の現地への実装を目指した研究に、皆で取組む必要あり。
    健康、生物多様性、食料・水の安保等様々なリスクを人類が共有していることを広く国民に理解してもらい、リスクを総体としてとらえるのがフューチャー・アース。限られた分野の研究者だけでなく多様なメンバーが参画できるフレームワークが大切。

  • 現在民間セクターでも、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)等において、科学的な知見をどう社会に生かしていくか、ステークホルダーをどのように巻きこむか、そしていかに企業のビジョンやアクションにつなげていくのか検討中。

  • 国際社会科学会議(ISSC)に日本で加盟している団体組織が、日本学術会議も含めないのは課題。

<国際的なプレゼンス向上、事務局誘致>

  • 観測からモデリング、影響評価、対策まで幅広い研究のラインナップが揃い、国費も投入されているが、日本の国際的なプレゼンスはまだ高いとは言えない。個々のプロジェクトの成果を1つにまとめ世界の場にも持って行き、且つ、日本国内でも役に立つ形にする方策を考える必要がある中で、フューチャー・アースは非常にいい機会。

  • フューチャー・アースを活用し、特にアジア諸国を巻き込むことで、温暖化交渉等で失われている国際的プレゼンスを改善すべき。トランス・ディシプリナリー研究は他国もほとんどできていない。日本が枠組みの原型を作ることが重要。

  • フューチャー・アースが対象としている地球規模課題は、各国個別にではなく国際的に研究を行うことが重要。このような国際的な取組の中で我が国がリーダーシップを発揮することは国策に合致。本部事務局の誘致も1つの鍵。早急に動く可能性があることを鑑みると、関係機関、予算を含め早急に検討が必要。

  • フューチャー・アースはこれまで欧州が中心となって議論が進み、GECの本部も全て欧州にある(WCRP(スイス)、IGBP(スウェーデン)、DIVERSITAS(フランス)、IHDP(ドイツ))が、国際事務局に加えて地域毎に設置されるリージョナルオフィスのアジアオフィスを誘致するという選択肢もある。

<省庁縦割りの改善・打破、オールジャパン体制の構築>

  • エネルギー分野における文科省・経産省の共同事業のように、環境分野では、文科省と環境省との連携施策が今後重要になる。

  • 成長戦略でも省庁縦割りの改善が1つの鍵。ガバニングボードや戦略検討チームは国のプロジェクトにおいて必須としていくべき。

  • オールジャパン体制構築において、文科省は、結論を最初から決めないサイエンスの中立性を基礎とする立場にあるのが強み。

  • リスク情報創生プログラムや推進費Sシリーズ、RECCA等を通じて、温暖化の影響・適応研究のオールジャパン体制が構築されつつある。

<その他>

  • 国際的に同じような動きがある中で、日本に立脚したテーマ設定の視点や考え方が必要。

  • 文科省は基礎基盤の形成・維持、将来の芽出しや普遍的な知見の追及と同時に、社会的期待に応えるため、社会的実装や出口を目指すベクトル作りが重要。

  • 問題解決型の環境研究を幅広く推進する立場に長年いて、人材不足を痛感。次世代の育成方法の検討が非常に重要。

  • フューチャー・アースは、フラッグシップだけやっても全体が盛り上がらずに失敗に終わることを危惧する声も聞かれるが、やらなければ始まらない。

地球観測推進部会(第1回)(平成25年5月7日)における持続可能な地球環境研究に関する主な意見

<フューチャー・アースへの対応>

  • 4プログラムについて、エネルギーをかけてきたわりに、課題解決という出口に向かって解が得られてこなかったということに対する、ノーというものが突きつけられたとも考えられる。

  • 4プログラムの統合については、それぞれの研究者や内部での方針決定者間で方向性が随分違っている。フューチャー・アース立上げに際し、うまくいったところ、いかなかったところを把握し、どう見直すか明らかにする必要あり。

<フューチャー・アースと観測の関係>

  • フューチャー・アースにおける課題解決は、知を社会に役立てるという決意を持って科学に取り組もうというものであって、新しい知の創造は不可欠であり、そのための観測はフューチャー・アースの中でも正当化される。

  • フューチャー・アースは、課題解決に向けての観測という、観測の在り方そのものが変わってくる部分がある。

  • 地球観測の側面からは、全て課題解決でいいのか、きちんとした議論が必要。

  • 地球観測の場合は、既に分かっていることではなく、観測によって新しいものを見つけ出していくことも含まれないと、非常に狭くなってしまう。

  • フューチャー・アースは出口を絞った課題解決型であり、施策のために効果を測る制御型の観測(モニタリング)が主流になり、発見型でなくなる可能性がある。政策のため、出口のためだけの観測と発見型の観測をうまく切り分けて目的をそれぞれ明確にしてやっていく必要。

  • 課題解決型というのは、そこへの道筋を見せるということであり、それに貢献する地球観測の重要性というのは十分認識されている。地球観測の方であまり課題解決型という言葉に縛られる必要はない。

  • 現行の地球観測の推進戦略でもニーズ主導を謳っていたが、フューチャー・アースの議論の中でもあるように、科学から社会へ知を受け渡しながら社会の発展に寄与するため、新たな戦略においては分野連携やトランス・ディシプリナリーの視点を強く意識すべき。

  • 例えばIGBPとIHDPがどこまでうまくいっているかということについては、分野によっては話がつながりやすい場合もあって成功例は幾つかあったが、全部が成功例だったわけではない。ただデータをとる、あるいは科学的な興味だけでやるという方向ではなく、出口を見なければいけないという意識はこれまでも持っていた。

<GEOSS等との関係>

  • 「地球システムの変化をモニターし、予測する」という内容はGEOSSとリンクしないといけない。

  • GEOSSのような政府間の話と、フューチャー・アースのようなアカデミアの動きをどのように絡ませるのかが重要。

  • フューチャー・アースとGEOSS、WCRP、GFCS等との関係をについて、それぞれが独立に何を行うのか、それをどう絡み合わせるのか、データフローに混乱が生じないように注意する必要。

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