資料6 Future Earthについてのメモ(安成委員資料)

2013年5月24日

安成哲三
(総合地球環境学研究所長 学術会議会員)

 

なぜ今、Future Earth なのか?

 最終氷期が終わり、比較的安定した完新世の気候の下、約1万年前の農業革命により人類の文明が開始されたが、産業革命以降、人類は地球の気候と環境を大きく変えつつある。このままでは、人類の生存基盤である地球の環境自体が危うくなり、「地球の限界」を超えて、地球環境が劇的に変化するtipping pointに近づいているとの指摘もなされている。人類を含む生命圏の持続に向けた統合的な研究と方策が喫緊の課題となっている。

この喫緊の課題への取り組みはこれまでなされてこなかったのか?

 1980年代から国際的な地球環境変化研究の4つのプログラム(WCRP, IGBP, DIVERSITAS, IHDP)がICSU(国際科学会議)などの主導で進められ、その成果の一部はIPCCなどの科学的基礎となっている。しかし、人類活動による気候変化、水・物質循環変化、生態系変化などと地球環境変化は、複雑系としての地球システムの変化として起こっており、多くの研究者コミュニティの協働で進める必要がある。そのためには、上記の4つのプログラムの連携・協働体制の強化が必要である。Future Earthはまず、これらの国際プログラムを統合する枠組みとして提案された。

地球環境変化の統合的研究だけで人類・生命圏の持続可能性の追求は可能か?

 人類・生命圏の持続的な生存基盤の追求には、人類活動による地球環境への影響評価だけでは不十分で、どのような人類社会を目指すべきか、文明の在り方などの価値観を含む考究も必須であり、そのために自然科学と人文・社会科学との文理融合の学際的研究が必要である。さらに、持続可能な社会へむけた転換のためには、科学者と他のステークホールダー(政策担当者、実業者、市民など)との超学際的連携・協働が必要である。Future Earthはこのような学際、超学際的な連携・協働の枠組みも含んで設計されつつある。

Future Earthにおいて日本が期待されている役割は何か?

 地球環境変化は、世界人口の60%以上を占め、人類全体の経済活動の大きな部分を占めているアジアが一大ホットスポットとして進行している。アジアにおける環境変化にどう対処し、どう解決するか、という問題抜きに、地球全体の持続可能性の追求は不可能である。アジアにおける最先進国として、アジアでのこの問題への解決に向けた国際的な共同研究と連携・協働における日本の主導的役割は非常に重要であり、Future Earthの国際コミュニティにおける期待も非常に大きい。

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