宇宙開発利用部会 宇宙科学小委員会(第4回) 議事録

1.日時

平成25年8月2日(金曜日)16時~18時35分

2.場所

文部科学省 3階1特別会議室

3.議題

  1. 宇宙科学研究の推進方策について
  2. その他

4.出席者

委員

主査 井上 一
主査代理 永原 裕子
専門委員 秋山 演亮
専門委員 磯部 洋明
専門委員 小川 博之
専門委員 北野 和宏
専門委員 久保田 孝
専門委員 高薮 縁
臨時委員 瀧澤 美奈子
専門委員 常田 佐久
専門委員 永田 晴紀
専門委員 野崎 光昭
専門委員 秦 重義
臨時委員 藤井 孝藏
専門委員 山田 亨
臨時委員 横山 広美
専門委員 吉田 哲也
専門委員 渡邊 誠一郎

文部科学省

研究開発局宇宙開発利用課長 柳 孝
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹内 英
研究開発局宇宙開発利用課長補佐 国分 政秀

5.議事録

【井上主査】  それでは定刻になりましたので、ただ今より、宇宙開発利用部会宇宙科学小委員会の第4回会合を開催いたします。まずは事務局から、本日の会議に関する事務連絡をお願いいたします。

【竹内企画官】   本日の会議の事務連絡として、2点報告させていただきます。1点目は本日の会議の成立についてです。本日は、宇宙科学小委員会に御所属いただいている19名の委員の過半数に御出席いただいておりますので、本日の会議が成立していることを御報告させていただきます。2点目は本日の会議資料ですが、議事次第の4項にお示ししていますとおり、資料4-1「宇宙科学の推進方策について(中間取りまとめ)(案)」でございます。資料の過不足がございましたら、適宜事務局までお申しつけください。事務連絡は以上です。

(1)宇宙科学研究の推進方策について

【井上主査】  それでは議事に入りたいと思います。議題はこれまでに引き続いて、「宇宙科学研究の推進方策について」です。前回までの御議論を踏まえて、永原委員に中間取りまとめの案を起草いただきました。お忙しいところ、永原委員にはありがとうございました。その案に事務局提案を追加したものが本日の資料で、皆様に前もって配られているので御一読いただいているとは思いますけれども、まずは趣旨について永原委員と事務局から説明をしていただいてから議論に入っていきたいと思います。それでは永原委員、お願いいたします。

永原主査代理及び事務局から、資料4-1に基づき説明があった。

【井上主査】  ありがとうございました。それでは、今、永原委員と事務局から説明いただいた中間取りまとめの案について、具体的に議論をお願いしたいと思います。なかなか性急なことにはなりますが、予定では今日の議論でまとめるということですので、この場でできる議論に対して、是非皆さんには御意見を出していただきたいと思います。それでも少し意見が残る場合には、会議後に事務局に御意見を提出いただいて、最終的には私の方でまとめさせていただくという形で動くことになろうかと思います。それでは、時間も限られておりますので、一つ一つの項目ごとに意見を頂いて、取りまとめの立場から私なりにその場その場でできる限りのまとめをさせていただきたいと思います。まずは「はじめに」の部分に御意見を頂きたいと思いますが、最後に全体を見渡してそれぞれの部分と齟齬(そご)が生じていないかどうか戻りたいと思います。それでは、「はじめに」の部分についての御意見がございましたらお願いいたします。

【藤井臨時委員】  紙を1枚用意させていただきましたので、参考資料ということでお配りさせていただきたいと思います。そこにも書いてありますが、これまでの3回の議論では、「はじめに」の一つ目のパラグラフの最後にも書かれている「我が国の宇宙開発利用を先導する役割」ということに焦点が当たった議論が行われたという印象を持っております。その意味で、「はじめに」の文章の中にその点が明記されたということはいいことだと思っております。あとは、「まとめ」のところでもう1回戻って、「これらの施策によってこういうことがより強化される」という記載を入れていただくと、頭としっぽが整理できていいと思いました。文章そのものは結構だと思います。

【井上主査】  「はじめに」と対をなすように、最後に「まとめ」という項目を作った方がいいのではないかという御提案ですか。

【藤井臨時委員】  そうです。「はじめに」そのものはうまく書けていると思います。

【井上主査】  分かりました。ほかにはいかがでしょうか。
 では、最後にまた戻ることとして、次に行かせていただきます。2項の「現状と問題点」ですが、ここも一つ一つの括弧ごとに議論をしていくことが適切かと思いますので、まずは「宇宙科学研究所の将来戦略」について御意見がありましたらお願いします。

【永田専門委員】  短い期間に非常にうまくまとめていただきまして、すごいなと思って拝見しました。その中で、2ページ目の3行目から4行目にかけて、「工学的新規性への要求度が減少し」という文章がありますが、これはJAXA及びISAS(宇宙科学研究所)に期待される機能として相対的な地位が低下しているというニュアンスで理解しました。ただし、この小委員会での議論の経緯を全く知らない人が、初めてこの文章を読んだときに、果たしてこの文章でその正しい意味がきちんと伝わるかという点には少し危惧するところがございます。もう少しこの書きぶりを分かりやすく工夫していただけたらと思います。

【井上主査】  はい、ありがとうございます。今の御意見に対して、何か御意見はございますか。

【小川専門委員】  今のことと関連しますが、宇宙科学研究所の中で工学の方面からいろいろな衛星に携わってきた立場から申し上げますと、M-Vロケットが終わって輸送系が輸送本部に移った後、宇宙研としてはその関係のことがなくなって、ロケットの大型化に伴って理学のやれることが拡大してきたというような流れがなくなったことは確かに事実で、この場でも議論されたことです。実際に、今、衛星は大型化していて、M-Vが終わってからはH-ⅡAを使うようになって、金星へ行くであるとか、ASTRO-H(X線天文衛星)や大きな望遠鏡という話の中で、これに対しての理学の要求も非常に厳しくなっています。一桁の性能向上させる要求であるとか、宇宙工学としてもそれに対応するいろいろな技術の研究を行っていて、それが衛星に反映されています。M-Vロケットが輸送本部に移ることによって、宇宙工学は何か職を失うようなイメージの話が先ほどありましたが、決してそうではありません。我々宇宙工学者としては、衛星の高性能化や大型化に伴って、衛星の開発に非常に貢献しているというところがありますので、少しここの部分の書きぶりは違和感があるというところであります。少し書きぶりを変えていただけるといいと思います。

【井上主査】  ありがとうございました。今の御意見も踏まえて、私なりに整理したいと思います。まず、「工学が何もやれなくなってしまった」というように取られるような書きぶりになっているようですので、そこは少し直した方がいいかと思います。そのほかに、私としては宇宙科学全体にある種の閉塞感があるということに対して、ここで書いておくべき問題点は二つあると思います。一つは、これまでの宇宙科学の一つの大きな柱は固体ロケットの開発だったわけですが、そこには、宇宙科学プログラムは本来競争的なプログラムという考え方がもちろんある中で、もう一つのベースの考え方として、国として日本独自の固体ロケットを作っていくということを研究者主体で行うという考え方、政策的な支持というものが後ろにあって、ある種一つの柱として大きなものでした。それがなくなって、それに相当するものが工学の柱として求められているということが一つです。もう一つは、プロジェクトが大きくなって人員的に手一杯になってきたため、新しいロケット開発に通ずるような新しいものを産み出していく活動が最近は非常に弱まってきているということで、そこは小川委員も異議はないと思います。そういう面を書いておくべきかと思いましたが、いかがでしょうか。

【小川専門委員】  おっしゃるとおりだと思います。ただし、「工学的な新規性の要求」が減少しているわけではなくて、我々はいっぱい要求されてはいるのですが、それに対応できていません。人的にもお金の面でも足りなくなっているのは事実ですので、おっしゃるとおりだと思います。

【永原主査代理】  書きぶりが余り上手ではなくて大変失礼しました。工学としてやることがないと書いたつもりは全然ありませんし、むしろ反対であります。宇宙を引っ張るのは工学だと思っていますので、もっと工学の方々が、「自分たち工学が最先端を拓(ひら)いていて、日本の宇宙にとってなくてはならない存在である。」ということを自らアピールできるような何かを強く打ち出していただきたいという期待のつもりで書きました。日本は今、「これからの宇宙は利用でいきます。宇宙科学は科学として一定枠で淡々とやってください。」と言われているわけですが、「そう言ってはくれたからうれしい。」と思ってしまうと、これはおしまいだと思います。宇宙研以外のJAXAや民間では、「利用のためにいかに安くできるか。」ということを考えていますので、宇宙研の宇宙工学は、「日本の宇宙の中で何が何でもなくてはならない存在であって、ここでしかできない最先端技術を切り拓(ひら)くぞ。」というものをどこまで強く打ち出すことができるかが重要だと思います。それは、理学が要求する何かをサポートしてあげる新規性ではなくていいように思います。むしろもっとアクティブな何かを打ち出していただきたいという期待を込めて工学のことを書いたつもりでした。もしかすると、工学の方々から見ると、理学に要求ばかりされていて、お金も足りない、人も足りない、これではやっていけないというような不満とか問題があるのかもしれませんが、そうではなくて、「もっと我々はすごいことをやろうとしている。」ということを出していただいて、「そのために理学を利用させてもらう。」というぐらい強く打ち出していただくことが、宇宙研が意味のある存在になることにつながり、理学と工学が共に一体となってやる計画がうまく進むのではないかというつもりで書かせていただきました。

【井上主査】  今、永原委員にまとめていただいた方向でよろしければ、書きぶりは少し直させていただくとして、趣旨としてのここの位置付けについてはよろしいでしょうか。

【吉田専門委員】  今のセクションの最後のパラグラフですが、ISASの問題認識の在り方がかなり書かれています。この部分については、ここ数年間、ISASとしては外部の方による検討や研究系再編、客員教員の所長枠を作って戦略的に新分野の取り込みを図るとか、そういう取組を実際にしてきております。そこのところは認めていただいた上での書きぶりにしていただけると有り難いと思います。

【秦専門委員】  当事者ではありませんが、外部の立場からこの最後の文章を読みますと、ISAS自身に問題意識がないように読めました。先ほど御指摘にあったように、外部評価委員会等での指摘、それに伴う内部評価と言いますか幾つか内部検討が行われ、外部評価委員会からの指摘への回答になるべき実行措置も取られているとは思いますが、外部評価委員会の指摘の改善点だけを見ても、ISASの中だけでは解決できない問題が多いと思います。つまり、ISASの中ではなくて、問題の解決を実現するよう支援すべき体制がまだ十分ではないわけです。それは、ある意味ではJAXAの内部の問題かもしれませんし、全体枠の予算の問題かもしれませんし、場合によっては中央省庁である文部科学省以下の支援体制の問題かもしれません。検討は十分に行われているのですが、それを実現する支援体制がないのではないかと私は理解しております。

【井上主査】  ありがとうございました。今、秦委員のおっしゃったことは、この中間取りまとめの基本的なトーンに関わるような部分への御意見だと思います。私自身の持っている印象も、御意見にあったように、ISASや何かの組織の問題というよりは全体の枠組みで良くしていくべきということですので、この中でも支援体制についていろいろと書いていくといいのではないかという気がしております。ここは、今、頂いた御意見の趣旨で修文するということでよろしいですか。

【竹内企画官】  文案を御検討いただけるということで、そういうように進めていただければと思います。私どもとしても、今、議論にありましたような支援体制、ISASだけではなくて周りの支援体制の部分に足りないところがあるということは、恐らくそういうことなのだろうと、御議論を聞いていてそう思いました。その中には、もしかしたら文部科学省に期待される面もあると思います。そういうところについて、具体的にどういうところが問題点でどういうふうな支援が期待されるかということをより明確にしていただけるといいなと思います。そういうところについて、ISASやコミュニティの方々の御意見を受けて明確になってくると、例えば文部科学省ができるところはどこなのか、ISAS又はJAXAができる部分はどういうところなのか、文部科学省やJAXA以外ができるところはあるのかないのかということが議論できると思いますので、具体的にどういうところが問題点でどういうふうにやっていくべきなのかということを、今後の御議論の中で明らかにしていただけるとうれしいなと思います。予算が増えることはうれしいことだと思いますが、単に予算を付けるということではないように思います。

【井上主査】  まさに今から、その議論に入っていくことになると思います。それでは、「このように」から始まる最後の文章については全体を見て修正することにさせていただき、次に進ませていただきます。「大学等における宇宙科学研究拠点」という部分について、御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。

【野崎専門委員】  宇宙科学全体の発展に大学が力を持つということは非常に大事なところではないかと思いますが、宇宙科学は非常に幅広い分野であって、大学では天文学科や物理、惑星科学などがあると思いますし、工学に関しては工学部が絡んできます。そういうところに拠点を作るということは、当然、大学の中での組織改革を伴うわけですが、全国でどれくらいの数の大学がこれに対応できるのだろうかという疑問を感じるところです。それよりは、多様な大学の宇宙科学分野への取組に対して、宇宙研が支援できる体制をもっと強化すべきではないかと思います。大学がイニシアティブを取った小規模プロジェクト、そこには国際協力やロケット、気球も含めて、そういう提案が大学から出てきたときに、宇宙研がそれをサポートできるような仕組みを宇宙研に作る方が効果的ではないかと思います。そのときに、大学から見ると宇宙研に全部の手柄を持っていかれるというような不満があると思いますので、そこは宇宙研が少し大人になって、うまく大学を盛り立てるような体制を取れるようになれば、その方がいいのではないかという気がしております。

【井上主査】  今の野崎委員の御意見に関連して何かございますか。

【吉田専門委員】  私自身、10数年大学共同利用研にいますので、その感覚で申し上げます。書かれていることが、「宇宙研があって大学があって」というところが、私にとっては非常に違和感がある図式です。先ほど、「今、何が困っているのか。」という話をされましたが、私が感じていることは、国立大学が法人化されて大学の顔が見えなければならなくなったということです。それぞれの大学の顔と名前が見えなければならなくなってきたという状況の下で、今までうまく実行できていた大学共同利用研という枠組みが非常にやりづらくなったのではないかと感じております。宇宙研がやること、大学がやること、あるいは大学の研究者と宇宙研の研究者からなる宇宙科学コミュニティがやることについてある程度の区別をつけないと、このあと、ここに書かれている考え方が整理できなくなるのではないかと気になっております。また、この「大学等における宇宙科学研究拠点」の中で書かれている「科学における良い意味での大学と宇宙研の競争関係」ということはどういうことを考えていらっしゃるのか、永原委員に御説明していただければ有り難いと思います。元々宇宙研は大学共同利用研ですから、大学の研究者が御自分の研究をするために、宇宙研という研究の場をうまく利用して研究をなさっていくということが一つのあるべき形であるし、そういうふうに大学共同利用研は設置されているわけですし、我々教育職もそういう立場でいるというふうに私は理解しています。そういう中で、大学と宇宙研の関係が競争関係であるべきというところが、私としてはしっくりこないところがあります。そこのところを御説明いただければと思います。

【永原主査代理】  今の点は、この取りまとめのかなり根幹の問題です。宇宙研と大学の問題ですが、始めに申しましたように、宇宙研だけを強くしても宇宙科学全体は強くならないので宇宙研と大学の両方を強くしなくてはいけないという点がこの取りまとめの根幹に関わっている部分です。宇宙研には大学生がいるわけではありませんので、大学は大学で強くしないと宇宙科学全体は強くならないという意味です。「良い意味での競争」という部分は、科学は当然のことながら競争原理で動いていますので、宇宙研でも大学でも、工学を含めてのサイエンスに関していかにいいプランを出していくか、いかにトップサイエンスを狙おうと思うことを考えられるかというところが競争原理であるべきということです。大学が勝手にロケットを作ったりするということを申し上げているわけではありません。サイエンスにおいて競争原理は絶対必要なことで、それがなかったら進歩はないと思います。競争原理はそういう意味ですので、宇宙研が大学にお金をあげて何かを支援していくということではないと思います。大学は大学で独自に強くならなくてはいけないと思います。特に、学部生は大学にしかいませんので、宇宙研を幾ら強化してもそこに供給される人材を育成していく場を広げていかなければ、宇宙研の将来は先細りです。人材が供給されなくなって、今いる人しかいなくなると困りますので、宇宙研も強化するし大学も強化する。そのためには、サイエンスにおいての基本的な競争原理、科学の根本を働くようにすべきであるということです。

【吉田専門委員】  科学における競争原理が必要なのはもちろんですが、それは宇宙科学コミュニティの中での競争原理であって、大学とISASの間の競争原理ではないのではないかと思います。ISASにいる研究者も大学にいる研究者も、みんな一つの宇宙科学コミュニティを形成しているメンバーであって、その中でいい科学が選ばれて宇宙研という場を利用してそれが実現されるという図式が、日本の宇宙科学の一番基礎となっている在り方だと思っております。少なくとも、大学がいいアイデアを出して宇宙研もいいアイデアを出してそれの競争という図式ではないのではないかと思います。そこのところは大学共同利用という考え方のかなり根幹に関わる部分ですので、少し御検討いただければと思います。

【井上主査】  私も今のことは基本的な考え方に触れるようなところがあると思っています。このあとも「ISASの強化」や「大学の強化」という言葉が出てきますが・・・。今のこととの関連ですね。どうぞ。

【磯部専門委員】  大学側の研究者として発言します。まず、野崎委員が組織改革まで含めてそういうことができる大学があるだろうかと言われましたが、恐らく多くはないと思いますが、私がいるところの立場で恐縮ですが、京都大学は組織改革まで含めて理学と工学を融合した強い拠点を作ろうということで動きだしております。そういうところを日本国内にたくさん作るということは現実的ではないかもしれませんが、そういうことができるポテンシャルを持った大学は、幾つかは出てくるのではないかなと期待しております。次に、大学とISASの関係ですが、競争関係は当然重要ですが、宇宙科学ミッションをISASから独立してやるということは、大学としてはほぼあり得ないと思います。現状を申しますと、大学の中で個々の研究者がISASという場を利用していろいろ研究をしていて、それはそれでうまくいっていますが、そのことが大学全体として果たしてきちんと評価されているか、誰が評価するかによりますが、そういう科学コミュニティがあるということが周りから評価されているかということが1点です。もう1点は、大学という場も一定の特定の分野に強ければ、ある程度の規模の研究者集団がいて、その中で切磋琢磨(せっさたくま)やアイデアの持ち寄りがあって盛り上がっていくことがあると思います。宇宙研に行けば出会えるだけではなくて、大学という場にある程度の拠点があってそこに幾つかの研究者が集まっていて、その中で競争と新しいアイデアを出す仕組みがあるということは、宇宙科学全体として盛り上げるためには重要だと思います。そういう研究者集団がいてそこからどんどん新しいアイデアが出てくるというような大学拠点と、宇宙研が健全な競争関係にあるということはサイエンスの発展のためにはいいことだろうと思います。

【秋山専門委員】  追加補足です。「拠点形成を実現する仕組みが存在していない」と書いてありますが、事実認識として、現実的にはグローバルCEOを使うとか、去年ですと大学の改革経費を使ってやっています。ないという認識は間違っていて、「あるけれども継続して使われていない」という書き方にしないと表現が正しくないと思います。もう一つの問題は、委員皆さんが言われていて私も賛成ですが、大学と宇宙研が人的交流をやりましょうということは書くべきだと思います。それにプラスする問題は資金の流れで、一旦宇宙研に行ったものが配分される形にするのか、宇宙研とほかの大学の拠点に並行して配分されるのか、そこが戦略的なところですので一番のポイントになると思います。人的交流が必要であることには、皆さん異論はないと思いますので、資金の流れが大学に直接行くのか、それとも宇宙研のようなところにまとまっていってそこから必要があれば大学に行くのか、そこのところが問題点だと思います。

【井上主査】  整理させていただきたいと思います。二つのことが混ざって話がされているところがあると思います。一つは、先ほど吉田委員が指摘されたことですが、宇宙科学を動かしている大学共同利用システムという考え方の基礎となっていることは、ISASや大学ということではなくて、研究者グループであるということです。いろいろな分野の研究者グループがいて、そこが宇宙空間を使ういろいろな研究提案を自由な発想で生み出して、それが提案されてその中から優れたものを選んでいくという流れで、その運営していく中心にISASがあるというような宇宙科学プログラムを動かしていく全体の内容についての話だと思います。もう一つは、磯部委員がおっしゃったことですが、そういう活動をするときに、宇宙研ではないところでもいろいろな活動がなされて、それがISASの場での活動とうまく連携しながら動けるような枠組みを作れるといいという話だと思います。二つが混ざっているようなところがあると思いますので、そこは確かに整理をして書いた方がいいと思います。

【永田専門委員】  今、議論になっている部分ですが、この小委員会で行われた議論の中でも宇宙研がやっている内容はかなり特殊で、宇宙研は日本国内においては唯一無二で、脅かす研究所がない存在です。そんな中で、宇宙研はより強くなっていかなくてはいけない、研究所としてより強化していかなくてはいけないというドライビングフォースをどう確保していきましょうかということで、こういう話が出てきたと記憶しています。競争原理が働いていないというところは、コミュニティの中でよりよい研究をやっていきましょうという競争が働いていないという意味ではなくて、宇宙研を脅かす研究所がないという状況の中でよりよくしていくドライビングフォースをどう作っていきましょうかという問題だと思います。そのために、宇宙研も強化しましょう、大学も強化しましょうという方向には、私は賛成です。ただし、まとめの方向としては賛成ですが、そのような意味が「よい競争関係が存在せず」という文章から読みとっていただけるかというところには不安を感じます。その趣旨が分かりやすいような書き方にしていただければ問題ないのではないかと思います。

【井上主査】  今の点についても、私は二つのことがあると思います。一つは、宇宙科学全体のプロジェクトを動かしていく頻度が下がってきているために、以前からある程度の規模を持っていたグループは結構実績を持っているので比較的継続してプロジェクトをやっていくことができるけれども、新しいものや新しい分野が入ってくるときには非常に待たされて、10年待ってやっと何かがやれるとか、今となっては10年待っても動かないという状況になっていて、それぞれの分野がうまく動かなくなってきているという中で大学がますます動きにくくなっているという問題があると思います。そのようなことが、「大学等における宇宙科学研究拠点」に書かれていることの背景にあるのだと思います。もう一つは、永田委員のおっしゃったドライビングフォースに関することで、宇宙科学というものは、2003年以前は文部省の中の学術の下に置かれていてビッグサイエンスとして戦ってきたわけですが、2003年以降は文部科学省の科学技術の予算枠の下に置かれて、その中で宇宙科学がどういう存在意義を見せるのか、いろいろな意味での学術という姿で動けていたところとは違うところで宇宙科学がどういうやり方をしていったらもっと強くなっていけるのかという問題で、これはISASの問題というよりはJAXAの中のISASの問題という言い方になるのかもしれません。そういう二つの問題があります。後者はかなり大きな問題で、そこは藤井委員もおっしゃったように、宇宙工学が柱になって宇宙開発利用というものに貢献するということを言っていくということにつながっていくような気がします。

【渡邊専門委員】  ISASが持っている大学共同利用システムを、形式的にというだけでなく、いかに実質的に機能させていくかが重要だと思います。実質化に大事なことは、ISASと大学等との間で人の循環をきちんと作ることと、ISASの予算から、単に目先のプロジェクトだけではなく、将来のミッションの基盤となるワーキンググループや研究開発にいかに投資していけるかということです。そういう資金が十分に確保され、人的交流が十分になされていれば、それは非常によく機能する共同利用システムになりますが、残念ながら現状は余りうまくいっていないと感じます。お金に関して言えば、プロジェクトの大型化に伴い、ますます実行中の探査に集中投資しなくてはならなくなり、基盤育成に回すべきお金が縮小されている状況だと思います。そういった中で、理想的な大学共同利用システムを作り上げていくには、大学とISASの補完的な役割を十分意識すべきと思います。ここで書かれている拠点という言い方は少し違い,むしろ大学は教育・研究という宇宙科学の基盤に関して、長期的な機器開発などをISASと人事交流を含めた強い連携を取りながらやっていく組織を幾つか用意することだと思います。基礎開発が実を結んできたらISASに移ってプロジェクトを走らせて、プロジェクトが終わったら大学等に戻って若い学生に探査の魅力を伝えていくという形の連携の受皿になるようなところを大学等の側にきちんと作らないと、真の意味での大学共同利用システムができ上がらないと思います。

【磯部専門委員】  人的交流やISASと大学の連携を強化することは極めて重要で、それに関連して、藤井委員の提出された文章の中に、「大学側も成果として評価する仕掛けが必要である」というように書かれています。大学の中にいる個々の宇宙科学コミュニティの研究者が大学から評価を受けるためには、大学は大学で大学改革として研究力強化をしなくてはいけないとか、トップ100位内に10校は入れとかいろいろ言われていますので、大学として宇宙科学研究者を応援したら大学としても研究力が上がってランキングも上がってというような、それが本当にいい評価基準であるかどうかは別として、そういう目に見える形で大学としてその大学内の宇宙科学をサポートしやすくなるような形にできるとよりいいと思います。

【藤井臨時委員】  今、磯部委員は、私の資料の(2)を参照していただいたと思います。渡邉委員は「宇宙研に異動して」と言われましたが、極端に言えば、小規模のプロジェクトでは宇宙研に異動することなく、物理的に相模原に移動するだけでそれを大学の先生方が主導的に動かすというやり方まで含めて考えられないものでしょうか。そのことをここに書いたつもりです。最初に野崎委員もおっしゃいましたが、ここは、大学等における宇宙科学研究拠点というよりも、現状に即したISASと大学の連携活動を強化し、よりそれを上手にやる仕組みを導入するということが一番大きなポイントのような気がします。相模原キャンパスは開発の現場で、そこの大切さは秦委員や産業界などたくさんの方々がおっしゃってきました。そういう観点から、人が宇宙研に物理的に集まるということ、もちろん大きなプロジェクトの場合は異動してくることもあると思いますが、異動せずにできるような仕組みやそのことを大学側もしっかり評価するような仕組みを考えて、その予算を大学につけるか宇宙研につけるかはうまく考えていただければいいことですので、大学の強化というよりは宇宙研と大学が共に行動する部分をどう強化していくかという観点で書いていただくといいかと思います。

【井上主査】  皆さんのおっしゃっていることは、かなり近いことをおっしゃっているように思います。そういう意味では、永原委員にまとめていただいた「拠点」という意味合いは、ISASと大学との全体のネットワークといいますか、いろいろなものがうまく動いていくように大学側にうまい仕掛けを置いていくという意味合いでまとめられるといいと思いますが、永原委員はいかがでしょうか。

【永原主査代理】  ここは、研究者や実際にミッションに関わる人以前の問題だと思っています。大学の立場から申しますと、若い人をいかに引きつけられるかというためは、そこにアクティブな現場が必要です。大学で先生が一生懸命に宇宙のことに関わろうとしていて、いつも先生が大学にいないで宇宙研に行っているとなると、若い人を引きつけることができません。大学でもかなりの部分をやれるぐらいの規模があってこそ、そこに若い人が寄ってくるわけですので、そういうことを意識してそういう拠点を作りましょうと言っています。宇宙研とけんかをできる相手を作りましょうと言っているわけではなくて、若い人、大学生を巻き込みたいと思います。実際にミッションをやるごく一部の人が宇宙研に行っていることは全然問題ありません。今までのとおり、それはやっていただければよろしいのですが、それでは不十分なところにもう一つ更なる仕掛けを作りましょうということです。例えば○○大学には宇宙の実際のこういうことをやっているという強い部分があるので、そこに若い人が集まってこられるような雰囲気の場所を意識的に幾つか作って、学部生という人材を早い時期から巻き込む仕組みを作りましょうという意図です。実際にそこが宇宙研に対抗してミッションを計画するということはあり得ません。決して共同利用システムに矛盾するようなものではなく、宇宙研と勝手に計画をつくるようなものを考えているわけではありません。全体を掘り起こして、若い人を含めていくというつもりです。

【山田専門委員】  永原委員が書かれているように、そこまで踏み込んで、単に共同利用の中での宇宙研と大学との関係ではない「拠点形成を実現する仕組みが存在していない」とこの推進方策に書くということは、そういう仕組みを考えるということだと思います。そのときの拠点という場合に、もう少し具体的なコンセンサスが議論される必要があると思います。例えば、次世代の衛星であるとか、ミッションを含めた基礎開発や基礎研究に軸足を置いたような拠点を作りたいのか、ミッションの規模は大小あってバルーンも含めるのかとか、PI(主任研究者)グループをそこに置けるような拠点を作りたいのか、それともデータディストリビューションに軸足を置いたような拠点を大学の布陣として作りたいのか、そういう幾つかの具体的なイメージが議論された上で、それを実際の日本の現状と照らしてそういうことが可能かという議論の上でないと、拠点の形成という議論はできないのではないかと思います。

【永原主査代理】  私は、むしろそれを含めて、それぞれどこかの大学が、「うちはこういうことで基礎開発がやれる。」とか、「うちはデータアーカイブがやれる。」というように積極的に手を挙げていただくといいのではないかと思っていますが、「うちはこういう計画で拠点になります。」というふうに手を挙げていただくのではまずいですか。余り強くデフィニッションしてしまうと、データアーカイブと決めるとそれができるところは一つか二つしかないですし、基礎開発と言えばそれができるところはあそこしかないということになりかねませんので、大学からの提案どおりで良いではまずいですか。

【山田専門委員】  この文章でそれを定義する必要はないと思いますが、この文章で最後に、「仕組みが存在していないから仕組みを作ろう」と書こうというのであれば、そういう具体的な方策が議論された上での文章が必要だと思います。先ほど野崎委員がおっしゃったことと関係するかもしれませんが、私は、本当にそういう拠点を作れる現状と実情がないと言っているわけではなくて、どういうふうにサマリーしたのでここではこういう提案ができるというところをもう少し明確にしなくてはいけないのではないかと思います。

【井上主査】  私も、新しい仕組みが入った方がいいと思った部分があります。これまでの宇宙科学の共同利用は、最初に申し上げたように、それぞれのグループが「自分たちはこういうことをやりたい。」ということで計画を考えて、それを提案していろいろなところと競争的に資金を取り合って、選ばれたら自助努力でそのミッションを仕上げるということが基本的な考え方で動いてきたわけです。それは恐らく今後も基本的な考え方となるべきだとは思いますが、一方でインフラという言葉がありましたが、宇宙科学のためのインフラを用意していく立場として見ると、今までは、「あなたたちが自分でちゃんとやれなかったらだめですよ。」と言って上がってくるのを待っていたわけです。しかし今やそうではなくて、もう少し広くいろいろな活動の中から新しい芽を拾い上げて育てて次の新しいものを作っていくような活動を仕組みとして入れていかないと新しい展開が期待できないのではないかという意味で、新しい仕組みが入った方がいいのではないかと思いました。その部分について、大学に掘り起こすための機能を担ってもらうということを、私は考えていました。具体的にどういうやり方をするかはなかなか難しいことですが、ある程度の小さなプロジェクトは、それぞれがいろいろな工夫をするときにISAS側がそれを助けてあげて、新しい芽が掘り起こされるようにするとか、いろいろなことが考えられると思いますがいかがでしょうか。これは基本的なところで、このあとにも出てまいりますので、よろしければ次に進ませていただいて、次の「新規学問分野の開拓」というところに御意見をお願いしたいと思いますがいかがでしょうか。

【藤井臨時委員】  私のメモの3番目になります。書かれている文章は、私が第1回の会合で話したことに近いですが、「新規学問分野の開拓」という項目タイトルを見ると少しニュアンスが違うという印象を持ちました。私が申し上げたことは、宇宙工学という狭い領域の研究者コミュニティにとどまるのではなくて、異分野で優れた成果を上げている方々がたくさんいるので、そういうものに目を向けて、それを宇宙科学にどんどん取り込んでいくようなことを強化していくということでして、そのために必要であれば何らかの仕組みを導入すべきだということを申し上げたつもりです。文章そのものはそれに近いことが書かれていますが、項目タイトルが「新規学問分野」と書かれているので少し印象が違うという気がします。もし書かれていることの意図すること自体が私の申し上げていることと全然違うのであれば、現在の記述は記述これとして、もう一つ私が申し上げたことを追記していただきたいというお願いです。

【永原主査代理】  ここで書きたかったことは、この小委員会でも始めの頃にいろいろな方がプレゼンしてくださったときにこういうことをかなり指摘されていましたが、例えば素材であるとか通信であるとか、そのほかの何かでもいいのですが、従来は宇宙に関わっていなかった国内のほかの研究所などが、「今後は宇宙にも加わりたい。」と積極的に乗り込んできてくださるようなことを期待しているということです。人文系にもそのようなことを期待するという御意見もありましたけれども、私は人文系から突然に具体的なことが出てくるとは難しいと思いますので、現実的にはほかの科学あるいは工学の分野から、「宇宙に関わると自分たちとしても新しく得るものがあるから一緒にやりたい。」と手を挙げてくださるような仕組みづくりを期待しています。私は、拠点の一つがそういうものであってもいいのではないかと思っています。

【藤井臨時委員】  文言に違和感があるので、少し変えていただければと思います。

【永原主査代理】  はい。

【渡邊専門委員】  この部分も非常に重要なことですが、問題は、実現の方策が「呼びかけましょう。」だけで終わっているという点だと思います。これは、後ろの3項の「今後の方向性」とはうまくつながっていない。新しい方向や他の学術分野に宇宙利用を広げるときにどういう方策があるかを具体的に提示すべきです。そのための一つの方法として、学問とプロジェクトの将来計画の立案を行う定常的に行う場を大学等に置くことが考えられます。欧米ではディケイダルサーベイ(decadal survey)といって、それぞれの学問分野が10年後20年後を見通しながら学問や探査・観測の展開を考えていくことをかなりインテンシブにお金も使っていっています。日本はそのような内発的な戦略検討が弱い。そういうものをシステマティックにやると自然に、宇宙利用の展開が見えてくると思いますので、まさにディケイダルサーベイを行う場を置くべきです。あるいは、国際協働ミッションを育てていくような場という形もあると思います。新しい学問分野を広げていく方策を是非具体的に盛り込んでいただければと思います。

【井上主査】  3項の「今後の方向性」に似た御意見だと思いますので、3項で今のような議論をしていただいてから戻ってくることにしたいと思います。次の「宇宙分野の専門人材の育成」については何か御意見はございますか。

【吉田専門委員】  プロフェッショナルの育成という面では、これまでの議論の中で、特別なシステムを作るというよりはいろいろな小さいプロジェクトの現場でメーカーも研究者も一緒になって、特にインハウスで物を作っていくことが大切ではないかと思います。もう一つ、産業界のメーカーの方から、プロジェクトの初期段階からメーカーが参加していくことが契約の公平性という面の中で難しくなっていて、最初にいろいろと学べるところにメーカーが参加しづらくなっているのではないかという御指摘も頂きました。そういうところは是非書き込んでいただきたいと思います。

【井上主査】  そこは「今後の方向性」に入ってくると思います。

【秦専門委員】  今のことは「今後の方向性」に書かれていますか。ちょっと読み取れなかったのですが。

【井上主査】  そうですね、むしろ「今後の方向性」のところに書き込んでいくべきですね。

【秦専門委員】  書くべきだと思います。人材育成と違って現場の参加の話ですよね。

【井上主査】  おっしゃるとおりです。そのことは後ろで議論することにしましょうか。そうすると、ここに書かれていることは大筋でよろしいでしょうか。では続いて、「宇宙分野への興味・関心の拡大」についてはいかがでしょうか。

【横山臨時委員】  非常に分かりやすく適切にまとめていただいと拝見しているのですが、科学コミュニケーションを専門とする者として、細かいことですが3点ほど申し上げたいと思っております。
 1点目ですが、最初に永原委員から御説明がありましたように、裾野の拡大を焦点に当ててお書きになっているということで大変賛同しております。その上での意見ですが、一文目に「宇宙開発利用を支える社会的環境の醸成はすぐに達成するものではない。」と前提としての文章がございまして、そのあとすぐに、裾野の関心に話が移っているわけですが、よろしければこの間に一文を入れていただきまして、「国民が宇宙科学とともにあるためにコミュニティが一丸となり情報発信に努める。」という文章を入れていただくと有り難いと思います。背景を簡単にコメントしたいと思います。事務局からも指摘がありましたように、「はやぶさ」の活躍などもあって、昨今の社会的環境として宇宙科学に対する後押しは非常に良い環境にあると思いますが、一方で少し心配な側面もございます。どういうことかと申しますと、外部の私から見ておりますと、ISASにおかれましては的川先生がそういった情報発信活動を率いてこられて、今また、坂本先生が一生懸命がんばっておられる状況でして、外部から見ていても活発な御活動だと拝見しており、先生方におかれましてはこれまでの御議論のように忙しい日々をお過ごしになっておられると思います。一方、宇宙という同じ分野で国立天文台の活動を見ておりますと、そのような活動の中核になる先生たちがいらっしゃると同時に、教員やスタッフも一丸となって非常に活発な情報発信活動をされておられると感じております。ここで注意すべきことは、お忙しい先生全員にそういうことを強制するのではなく、ただ気持ちとしてはコミュニティが一丸としてやるということで、特にトップに立つ方がそうしたコメントをしてくださることで、コミュニティがそうしたことに取り組むことが重要であるといった雰囲気を醸成していただくことが重要であると思っております。そこで是非一文目の次に、「国民が宇宙科学とともにあるために、コミュニティが一丸となり情報発信に努める。」という文章を入れていただきたいと思います。これは「今後の方向性」の(4)にも共通することです。
 2点目は、4ページの1行目に「理解増進活動」という言葉がございますが、この言葉は使わないでいただければと存じます。この言葉は我々のコミュニティでパブリック・アンダースタンディング・サイエンス(Public Understanding Science)と呼んでおりますが、歴史的にはイギリスで85年くらいから使われていたのですが95年にこうした考え方が一部破たんし、サイエンスコミュニケーション(Science Communication)とかインタラクティブコミュニケーション(Interactive Communication)という言葉を使うようになりました。もちろん「理解増進」という言葉は理科教育的なニュアンスでお使いになっていることは重々承知しておりますが、それは科学情報の発信の側面の一部であり、少し広い視野から見ると現在の社会に適用できる部分は限定的です。従いまして、「宇宙科学のプログラムに触れる機会を増やす」という書きぶりが安心かと拝見しております。
 3点目ですが、戻りまして3ページ目のタイトルですが、「宇宙分野への興味・関心の拡大」とございます。何も引っかかるところはないかと思いますが、うるさいことを申しまして恐縮ですが、興味関心の拡大ということは科学全般においてはその分野を支援することには決してつながっておりません。もちろん、興味関心を持っていただきたいということで情報発信をするわけですが、「興味関心の拡大」イコール「コミュニティへの支援」というニュアンスが前提にある書きぶりにどうしても思えますので、よろしければ「宇宙分野へ触れる機会の拡大」という書きぶりにしていただければ、うるさい人たちが読んでも素直に読める文章になるのではないかと思います。

【井上主査】  ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。
 それでは、似たような議論を繰り返すことになるのかもしれませんが、「今後の方向性」ということについて、まずは「(1)ISASの強化」の1番目の「長期戦略の策定」について御意見をお願いします。

【藤井臨時委員】  質問させていただいてよろしいでしょうか。最初の項目の2行目の「開発」はどこにかかってくるのでしょうか。「輸送システムの開発や・・・・など、・・・システムの開発研究」と書かれているのですが、どこがどうかかるか分からないので、まずそこを確認させてください。「開発」と具体的に書いてあって、最後に「開発研究」ときているのでかなりニュアンスが違うものが並んでいるように思います。

【永原主査代理】  文言は藤井委員に適切に修正していただければよろしいかと思いますが、私自身が考えていたことは、「もはや宇宙研はロケットとは関係ない。」と切り捨ててしまわず、やはり将来的にもロケットに関わる部分を何らかの形で持つべきということです。どういう形で具体的にどう関わるかについての文章は、藤井委員に御提案いただければよろしいのですけれども、そのことを明確にしたいと思っています。そうしないと、宇宙研は宇宙を使っているだけになってしまって、存在価値が下がってしまいますので、先ほどの話の繰り返しになるわけですが、切り拓(ひら)く部分につながるような文章を提案いただければと思います。「開発」と「開発研究」に、特段の意味合いはありません。

【藤井臨時委員】  最初の「宇宙開発利用を先導する」ところですね。そうすると、そこは文章を少し変えていただくということでよろしいですね。

【秋山専門委員】  ここの部分はむしろ宇宙研の所長にお聞きした方がよろしいかもしれませんが、確認したい点があります。今、「予算の一定枠」の議論があるわけですが、私の理解では、一定枠には輸送系の開発費は入っていないと思っているのですが、ここにこのように書いてしまうと、イプシロンロケットの改良費は宇宙科学の一定枠の中に入ると思われる恐れがゼロではなきにしもあらずと思うわけです。「いや、それでいいよ。」とおっしゃるのであれば問題はないのですが。若しくは、「輸送系の基礎研究は宇宙研でやりますが実用に関しては別ですよ。」ということもあろうかと思いますので、輸送系の基礎研究はやりますという表現にした方がいいかどうかは、宇宙研がどうされたいかという意思を反映させた方がいいのではないかと思います。

【常田専門委員】  イプシロンロケットの高度化については、是非輸送本部と協力して宇宙研が中心になって遂行したいと思います。ただし、その費用負担は次期基幹ロケットと一体的に考えて輸送本部を中心に対応していただく方向だと思っていますが、そこにはテクニカルなこともあると思いますので、文章では何かを示唆するようにはならないようにと思います。秋山委員先生の御指摘とおりだと思います。

【井上主査】  言い方は気をつけなければいけないのかもしれませんけれども、私としては、これからの宇宙空間の使い方に対して、宇宙工学としてこういうものを作っていきたいということを考えていく中には、将来輸送系は当然のものとして入らざるをえないわけですので、国の屋台骨としての輸送系というわけではなく、将来の宇宙空間の使い方の新しい可能性を切り拓(ひら)いていくというニュアンスでうまく書ければいいと思います。

【秋山専門委員】  全く異論ないです。心配していることは、一定枠の中に入り込んでほかを圧迫するということにならないでほしいというだけです。宇宙研は輸送系の開発を是非やるべきだと思いますので、全く同意見です。

【山田専門委員】  本質的ではないかもしれないですが、冒頭に永原委員がおっしゃったこともあって輸送系のところを強調された形になっていると思いますが、項目の内容と並びの順番を考えると、3つ目の「我が国の独自性を生かした世界を牽引(けんいん)し得る宇宙科学ビジョンの明確化」というものが本来は上に来るべきだと思います。そのあたりを意識的に書かれているところがあるのかもしれませんが、そのあたりを少し整理して、重点を置くべきところが明確になるように並び変えた方がいいかと思います。

【吉田専門委員】  「長期戦略」というものとは別に、今、もう一つ言われていることとして「ロードマップ」という言葉がありますが、これは同じものを意識しているのか、違うものを意識しているのかどちらでしょう。これらは、4項の「当面の取組」のところに出てくる言葉で、「ロードマップ」と「長期戦略」が別のものとして書かれている言葉になっていますので、どういう意図かをはっきりさせておく必要があるかと思います。

【永原主査代理】  「長期戦略」は、冒頭で説明したように、日本の宇宙の枠組みが変わった状況の中で今後宇宙研はどういうスタンスでいくのか、何を目指して、自分たちがどうあるべきかについてはこういうふういきますということを明確に述べることだと思います。これは、枠組みが変わったわけですから、意識的にアピールしないといけないと思います。恐らくやられてはいるのだと思いますが、外には見えてきていませんし、私はコミュニティの一人ですが、「日本の宇宙の枠組みが変わりましたので、宇宙研は今後こうやって行きます。」という強烈なアピールは、残念ながら私の耳には届いていませんので、やはりこれを是非やっていただきたいと思います。「ロードマップ」は、その「長期戦略」の上で、時間がたっていく中で具体的にどういうことをやっていくかを考える仕組みであろうと私は認識しております。

【吉田専門委員】  そういうことだとすると、「長期戦略」を作り、またISASをどうしたいのかを決めるのは、私は宇宙科学コミュニティだと思います。ISASが決めるのではなく宇宙科学コミュニティが、宇宙の枠組みが変わったときにISASをどういう位置づけにするのか、どういうスタンスでもっていくのかという議論をするべきだと思います。ナイーブな大学共同利用という考え方が、もはや成り立たなくなってきていることはよく分かっていますが、宇宙科学コミュニティとしては、自分たちが持っているISASという一つの財産をどう位置付けてどう使っていくのかを決めるのは宇宙科学コミュニティだというスタンスを崩してはいけないのではないかと思いますがいかがでしょうか。

【永原主査代理】  私はむしろ所長に伺いたいと思いますが、どんな組織であっても、「自分たちの組織はこうあります、こう行きます。」と述べないような組織、「皆さん、決めてください。」という組織はないのではないかと個人的に思いますが、所長はどのようにお考えでしょうか。

【常田専門委員】  吉田委員がおっしゃるとおり、今までは宇宙理学委員会・工学委員会のメカニズムを通じて、宇宙科学コミュニティと宇宙科学研究所のインタラクションがうまく機能してきました。ボトムアップと言われるように、コミュニティがある種の戦略を、それは暗黙的な了解だったかもしれませんが、持っていた面があると思います。しかし、このような議論がされている現状に鑑みると、やっぱり宇宙研がその責任において、JAXAや文科省やその他のファクターを考慮して、ある種の戦略というものを、それがどういうものかということもありますけれども、出していく必要があると思います。それはトップダウンで「あれをやれ、これをやれ。」ということではなくて、宇宙理学委員会・工学委員会のメカニズムを使ったインタラクションの上に修正・発展させていくべきものだと思います。したがって、コミュニティが決めるのか宇宙研が決めるのか誰が決めるのかという議論ではなくて、誰もが満足する戦略をたてていくべきで、この小委員会もそういうメカニズムの一つだと認識しています。

【井上主査】  私は吉田委員のおっしゃっていることに賛成で、主体は宇宙科学コミュニティだと思います。現在のISASの大学共同利用システムは、JAXAという形になったことで元々の形から少し違った部分が入りましたけれども、最後に誰かが方向を決めなければいけないというときに最後に決断を下すのはISASの所長なわけです。ただし、ISASの所長はコミュニティが入れ替えることができるわけです。基本的な考え方として、コミュニティの代表が入っている運営協議会という組織が作られていて、そこが所長を選んでいて、所長はコミュニティの要求に応えられなかったら変わるということで、担保されているわけです。誰かが決めないといけないので最後は所長が決めますが、所長にいろいろなことをやってもらうと言うのはコミュニティです。これは基本だと思います。ですから私は、「(1)ISASの強化」という言葉は「宇宙プログラムの強化」という言い方にした方がいいのではないかと思っています。皆さんの賛同を得ないといけない話だと思いますけれども。ほかに、いかがでしょうか。

【久保田専門委員】  宇宙工学分野の求心力ということについて永原委員から最初にお話がありましたが、宇宙工学が新しいミッションを創出するようなことを期待するというような、そういうことをエンカレッジ(encourage)するという御意見でした。実は「はやぶさ」以降、宇宙工学ワーキンググループでは、ソーラーセイルという電力を使ってより遠くに行くものとか、ピンポイント着陸なり火星航空機みたいなもので更に自在に探査するということや、新しい熱設計の考え方を取り入れて高機能化を進めるといったようなことをしてきています。そういった活動や研究開発を進めてはいるのですが、それが余り外に出ていないわけです。「はやぶさ」のミッションが決まったのは95年96年ですけれども、それ以降次の工学ミッションは実は全然できておりません。そういう研究開発体制や組織体制という点は、ある意味ワーキンググループでかなりはできているのですが、外に出るような実ミッションが、それは大型でも小型でもいいのですが、そういうものができていないというところが大きな問題かと思いますし、これは輸送系も関わる問題だと思います。これは丸3にも関わることですが、研究開発体制や組織体制の改革ということではなく、うまく外に見える形、あるいは次に役に立つような実証ミッションにつなげるといったところを少しアピールすべきかと思っております。そういう意味では、井上主査がおっしゃったような「宇宙科学プログラムの充実」なり「強化」というタイトルは、そういう点と合うと思います。

【井上主査】  ありがとうございます。それでは、次の「多様かつ柔軟な計画の立案」というところはいかがでしょうか。

【秋山専門委員】  小手先かもしれませんが、それでも重要だと思うことは、4ページの最後の「積極的な参画及び衛星の相乗り打上げや国際宇宙ステーション…」というところに、「イプシロンロケットの積極的な利用」という一文を入れてはどうかと思います。その理由は、国全体としてはイプシロンを使っていきたいという意思があったと思いますので、その中で宇宙科学コミュニティが積極的なユーザになるという意思を表明することは、イプシロンの改良を進める上で重要な後押しになると思います。もう一つ、ものすごく予算が肥大化してH-ⅡAなどの大型ロケットを使うミッションばかりになりつつある中で、改良されたイプシロンを使って、ある意味宇宙研が一番論文数を出している中型ミッションをやっていくという二つの意味から、「我々はイプシロンを使います。」と意思表示することは重要だと思います。

【井上主査】  確認ですが、具体的な文章で言うと・・・

【秋山専門委員】  4ページの最後ですが、「積極的な参画及び衛星の相乗り打上げや」の後に、明示的に「イプシロンロケットの積極的な利用、」を追加して、「国際宇宙ステーション…」とつなげてはどうかと思います。

【井上主査】  計画の中身として、もう少しいろいろなものを入れた方がいいということですね。分かりました。

【渡邊専門委員】  おっしゃることはわかるのですが、構成上は丸1にイプシロンロケットが書かれていますので、丸2の「多様な機会」とは、イプシロンロケット以外のやり方を指すことになるので、丸1にも丸2にもイプシロンロケットが出てくるのには違和感があります。

【秋山専門委員】  書き方の工夫がいるということはそのとおりだと思いますが、1のところのイプシロンは研究開発としてやりますよという話ですので、積極的にミッションに使っていくという話とは違うのかなと思って2で書くことかなと思いました。確かにおっしゃるとおりで、1にもイプシロンが書かれているので、1に一緒に入れ込んで書いてしまうということも一案だとは思うのですが、1では、イプシロンだけではなくて再使用ロケットも含めて輸送系というものを宇宙研の工学は絶対に手放さないで基礎研究をやりますよと言っているところがポイントだとすると、ユーザとして使うと言うところは2ではないかと思います。

【吉田専門委員】  私としては、むしろ「高頻度」ということにできるだけ意図がいくような色合いに書きたいと思います。メインロードについては長期戦略なりロードマップでいろんなプロジェクトが議論されるわけですが、そういうところに載らないような小規模なプロジェクトやミッションがいつでもたくさん走っている状態を作るというところに力点を置いて書いていただけるとバランスがとれるというふうに思います。そのときに、具体的な方法を余り書いてしまうといろいろな制約を受けてしまいますので、丸3に「競争的・挑戦的に進める小規模計画の増加」と書いてあるのですが、是非この言葉を丸2に入れていただいて、小規模のプロジェクトを、それには衛星相乗り打上げも含まれるかもしれませんしISSからの放出も含まれるかもしれませんが、それらも一つにして小規模プロジェクトを増加させる、あるいはそういう枠組みを作るということを書いていただけるといいと思います。

【永原主査代理】  その点は、実は意識してそこには含めませんでした。小規模の計画を増やすことは今でもできることで、この小委員会のような外部からわざわざ申し上げなくても、今の宇宙研の範囲で自分たちが調整してできることだと思います。丸2で書いたことは、今まで考えなったようなことを、頭を自由にしていろいろな機会を捉えてやることをお考えになってはどうかという助言のつもりです。今、宇宙研が自分たちで相談して、現状を変えてやっていただけるのであれば、あえてここでわざわざ言う必要はないと思うわけです。今だって、小規模なものをやってはいけないとは誰も言っていませんし、何をどうやるかは宇宙研自身が決められているわけです。ここで言いたかったことは、人材育成のチャンスを増やすために多様な機会を増やしてはどうかということで、今までは自分たちはそういうことには関わらないと思っていたことに違う視点でチャレンジをされてはどうかというつもりでしたので、「高頻度」化のための小規模のことは書いていないという仕組みです。

【井上主査】  今の議論は、恐らく丸3の議論をしてから最後に整理した方がいい話だと思いますので、丸3に進みたいと思います。「組織改革」ですが、いかがでしょうか。

【秦専門委員】  最後の行に出てくる「計画段階からデータアーカイブに至るまでのあらゆる段階での民間企業との連携強化を可能とする仕組みづくり」ですが、これは大変いいことなのですが、その解決策は組織の改編ではありません。これは体制なり制度を変えることであって、組織をいじくることではないわけです。それではどのように書き換えると良いかとなると、実は代案はありませんで、「多様かつ柔軟な計画の立案」の項に移すという方法も一案と思います。

【井上主査】  時間も迫ってきましたので、少し議論を先導させていただくような感じになりますが、私が思ったことは、丸3で整理することは「プロジェクトの低価格化」というようなことではないかと思います。ベースとなっている問題意識は、頻度が上がらないということですので、先ほどの「高頻度」に対しては、プロジェクトをスリム化するとか、インハウスの能力を高めるとか、民間企業との連携を強化するとか、まさに小規模計画を増やすとか、柔軟な評価システムを入れることで余計なところにかかっている負担を削るとか、そういう種類の意図でここをまとめるのがいいのでないかと思います。「組織改革」という言葉では少し強すぎるというか体制づくりのような話になりますので、私は、そこは修正する方がいいと思っていたところです。いかがでしょうか。あとは、「組織改革」には二種類のことが書かれてあって、一つ目二つ目と、三つ目以下は違うことが書いてありますので、三つ目以下については先ほど申し上げたような整理をして、一つ目と二つ目は結構大きな話を含んでいますので、別の形に整理した方がいいと思いますが、いかがでしょうか。

【野崎専門委員】  二つあって、まず、学術会議の議論が理学・工学委員会で今まで議論してきたこととどういう関係になるのかというところが少し見えなくて、理学・工学委員会での議論を更に上から何か規制するようなことを学術会議に求めているのでしょうか。もう一つは、次の「大学における拠点形成」の方に書くべきことなのかもしれませんが、大学が強くなる、それが拠点形成という形でもいいかと思いますが、それと同時にISASの支援体制を充実させて、その連携を図ることが重要だという意見がたくさんの委員から出ていたと思うのですが、大学とISASの連携を更に強めるような人事交流といったような具体案など、その連携のことがどこにも触れられてないのでどこかに書いておくべきと思います。

【井上主査】  いかがでしょうか。私の提案は、(2)の「大学における拠点形成」というところを「ISASと大学が一体になった宇宙科学の推進」あるいは「裾野拡大」というニュアンスのテーマに置き換えて、丸3の一つ目と二つ目はそこで整理してはどうかというものです。この中間取りまとめに「組織を改革する」と書くためには、今の組織のどこが悪いからこういうふうに変えなさいということを示さないと、ISAS側がこれに応えて考えていくときの方向が見えないことになると思います。したがって、もう少し自分の考え方を述べさせていただきますと、ここはむしろ、基本的な考え方としてISASと大学が一体となった宇宙科学プログラムを進めることについて書くべきで、その考え方の第1点は、ISASを中心とする大学共同利用システムと宇宙理学委員会・宇宙工学委員会等を中心とする競争的計画選定システムの再認識だと思いますので、そういう考え方を皆さんがよければここで再認識することにしたいと思います。それが基本的な考え方として動いている中で、それに変えるべきことがあれば御意見を言っていただければと思います。その上で、第2点として、これまでいろいろと議論があったように、戦略的に進める宇宙空間利用技術の新規開発と宇宙空間利用の敷居を下げていくこと、それから、結果として大学と一緒になってやる部分が広がっていくことにつながるわけですけれども、研究分野ごとに宇宙空間を利用する部分の重要性や必要性を訴えるようなことをやっていく活動を強化し、そういう活動を支援していくための人員を大学等に置いていく。それから学術会議との関係ですが、学術会議における話を通して学術コミュニティ全体からのそのような宇宙科学の進め方について支持を頂くというスタンスだと思います。要するに、入り口が二つあるようなことにはなってはいけませんので、大学共同利用システムとして理学委員会・工学委員会が窓口となって計画を選定してきているわけですから、計画選定について学術会議が何か言ってくるという筋ではなくて、宇宙科学コミュニティから上がってきてあるレベルまで達したものについていろいろな他の分野の計画、あるいは地上での計画も含めて、学術会議全体でそういう計画にはこういう価値があるというようなある種の支持、あるいはエンドースを頂くというスタンスだと私は思います。そういう整理はいかがでしょうか。

【永原主査代理】  今、井上主査がおっしゃったことは、宇宙の計画として何か衛星を打ち上げることをうまく進めるためにはそういう考え方で全然問題ないと思いますが、再三申し上げているように、あえて大学の拠点形成ということをここで言っている理由は、何も宇宙研との関係を悪くしようという意味ではなくて、大学も強くして宇宙研も強くすることで全体として宇宙科学が進むということですので、大学の部分を宇宙プログラムに置き換えるということはまずいと思います。実際、プログラムを進めることは全然問題なくて、そうやって連携して進めていただければよろしいし、学術会議のエンドースをもらうことも全然問題なくて、今でもそういう仕組みのはずですので更にうまくやってくださいということなのですが、それにつけ加えることとして、周辺をもう少し強化する仕組みとしての「大学における拠点形成」ということをあえてここでピックアップしているわけです。したがって、それをプログラムに置き換えるとミッションの話になってしまいますので、それではこの取りまとめの一番重要な柱が欠けてしまうということになると思います。

【井上主査】  宇宙科学プログラムという言い方をすることがいいか悪いかという言葉使いは別の問題として、私としては「組織改革」に書いてあった一つ目と二つ目をどういうふうに整理するかと観点で申し上げたわけです。それが、少し中途半端な言い方になったのかと思います。もちろん、(2)に永原委員が書き込もうとしてくださったことは、今、おっしゃったようなことで、それは書き込まなければいけないことだと思います。

【渡邊専門委員】  学術会議は学問のディシプリン(discipline)に従って、高エネルギー物理学とか天文学といった学問分野が今後どうなっていくのか、それに対してどういう戦略が必要かということを考える場なので、その中には宇宙からのサイエンスは重要な部分を占めますが、同時に地上からの観測であるとか実験であるとか、そういったことが全部組み合わされた総合的判断がなされます。そういう意味では宇宙科学もほかの科学と同じように学術会議において検討されるべきです。ただし、その中で、具体的なプロジェクトについてはフィージビリティや技術的な部分など専門性を持って判断すべきところがあるので、それは共同利用機関であるISASの理工学委員会が責任を持って判断するというメカニズムを持っているわけです。この判断が、ある意味で学術としての判断と縦横の関係となって、結果として宇宙科学ミッションが両方からきちんと位置づけられるという形が必要だと思います。アメリカでNAS(米国科学アカデミー)がやっているディケイダルサーベイとNASA(米国航空宇宙局)のセレクションという関係もそういう構造で整理できると思います。ですから、両者は矛盾するものではなく、むしろ学術会議との関係をきちんと整理した上で、理学委員会・工学委員会は今後も役割を果たしていくべきというような書き方が良いと思います。

【井上主査】  全く異議はございません。ほかにはいかがでしょうか。そうしますと、言葉使いをどうするかということは考えるところですが、(2)は、私は宇宙科学プログラムという言葉を使いましたが、ISASと大学が一体となった宇宙科学の推進と広い支持の獲得という言い方でもいいのかもしれません。そこに書き込んでいくことについては、大学等における宇宙科学の分野拡大とか、萌芽(ほうが)的プロジェクトの立ち上げ支援とか、大学等における専門人材の育成とか、青少年というよりはむしろ大学ですので学部生への興味啓発とか、民間への広報活動の支援とか、そういうような機能を持つように大学を強化することで全体を底上げしていくということが私の持つイメージです。いかがでしょう。ここが、結局は議論してきたところで、大学にどういう「拠点」を、あえて「拠点」という言い方をさせていただきましたが、どういう形でISASと大学が一緒になって動いていくためのインタフェースと言いますか、「拠点」でやるものを考えていくかといくところにいきつくと思います。

【磯部専門委員】  今の議論は(2)の「大学における拠点形成」の議論になっていますか。その前の「組織改革」ですか。

【井上主査】  「大学における拠点形成」の議論に移っています。

【磯部専門委員】  それでは、ここについて簡単に三つ述べたいと思います。まず、大学とISASの連携はすごく重要ですが、ここでは競争関係だけの書きぶりになっていますので、大学とISASの連携は重要であって、なおかつ一体化してやりながらも一定の競争関係があるような研究機関であるべきというように、その両方が大事だということを明示的に書かれた方がいいと思います。二つ目は、大学に拠点を形成する目的として2項目書いてありますが、ここに明示的に人材育成を書いていただければと思います。それは(3)にも関わる事柄ですが、人材育成は大学における非常に重要な役目ですので、ここは重複してでも明示的に人材育成を書いていただきたいと思います。三つ目は細かい点ですが、「大学院生が一定の責任ある立場」とありますが、後ろの事務局から提案されている文章では「大学院生を含め若手研究者が」となっているように、大学院生だけでなく「含め若手研究者が」を付け加えた方がいいと思います。

【久保田専門委員】  ISASと大学との連携もあるかと思いますが、先ほど永原委員がおっしゃったように、大学独自で自ら宇宙工学とか宇宙理学を進めるということも一つあってもいいと思っています。何年か前ですが、大学が独自に缶サットあるいは小型衛星を作って学ぶということをやったのですが、大学生は非常に興味を持ちました。実際に打ち上がるものを自分たちで作れるということで学生の人気も非常に高いし、そこでやっていくことで学ぶことも非常に多くなります。そういった人たちが育って宇宙研に来ると、即戦力としていろいろなことができます。そういった意味で、大学での小型人工衛星づくりは、実際にこれはロシアのロケットでしたが打ち上げましたので、実践に学ぶということは非常によかったと思います。逆に大学の方は論文が書けないとか、新規性のあるものはできないというところで非常に苦労はしていたみたいですが、大学と宇宙研の関係だけではなくて大学独自に特徴のあるもの、あるいは新しいものを作っていくということはあっていいのではないかという気がします。

【吉田専門委員】  更にその規模をもっと大きくして、一定規模のMoO(Mission of Opportunity)によるような外国衛星の観測機器の供給とか、そういうレベルまで大学がPIとなって実施できるというところまでいくと、拠点として大学で実際に衛星のプロジェクトを動かせるところまで持っていけます。短期的にそれが実現できるかどうかは分かりませんが、ここでビジョンを言うのであれば、そこまでビジョンとして書いてもいいのではないかと思います。

【井上主査】  おっしゃっているようなことをやろうとすると、まさにそこに関わる専門技術者的な部分を一緒に共有すると言いますか、宇宙科学全体でそういう人材を大学あるいは別のどこかで一緒に育てるという種類のことをシステマティックに考えながらやっていくことが必要になってくると思います。もう一つ、先ほど久保田委員がおっしゃったようなことは、将来的にプロとなっていくような部分まで考えに入れた人材教育をISASと大学が一緒になって、ある種のカリキュラムというようなやり方を共有しながらやっていくことが考えられてもいいのではないかと思います。

【永原主査代理】  「大学における拠点形成」を考えるときに、実はこれは人材の流動化の一つとして重要であろうと思っています。人材と流動化ということは誰でもした方がいいと言いますが、普通の大学の理学部や工学部との間での交流ですと、今日いろいろなことが専門化していますので、宇宙研に長くいた人が大学に移ることはなかなか実際には難しいわけですが、こういう拠点を作ることで、拠点は特別のファンディングで特別の人事ができますので、上手に人を流動化させることができるのではないかと思います。そのようなうまい仕組みに使えないかという期待を持って、拠点というものを考えました。そこまで書くと、幾らつけて人数はどのくらいかという話になってしまいますので、余り具体的には書きませんでしたが、背景にはそのようなことも想定しています。

【井上主査】  定刻の6時を過ぎてしまっていますが、少しだけ延長させていただくことをお許しいただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。司会をやりながら自分の考えをいろいろと言ってしまったので、(2)の「大学における拠点形成」の議論の入り方が不鮮明だったかもしれません。ほかにはいかがでしょうか。

【渡邊専門委員】  予算化にも直結しますので、きちんと考えなくてはいけない問題をあえて指摘します。「宇宙」の名を冠した競争的資金が1個増えただけでは、戦略的な宇宙科学を支える大学の強化には結びつかないのでしょう。この拠点形成が何を目指すのかということを明確しなくてはならないわけですが、一方で、そこを明確化にしすぎるとそれを担える大学はほとんど一つか二つしかなくなってしまって、競争的資金の意味合いがなくなってしまいます。そこで、大学側に提案も含めて応募させるということをおっしゃったのだと思います。何かいいアイデアでいいものを出せばそれをセットで認めますよという形にするならば、その制度設計はここで議論している強化に本当につながるような形でデザインしていかなくてはいけないと思います。ここに書かれていることは総論としては良いのですが、これを予算措置する際には、「これは一体何を目指すのか、特に短期的にはまずどこを強化していくのか」ということをシャープに示すべきだと思います。

【井上主査】  もっともな御指摘だと思います。何か御意見はございますか。私が思い描いていることは、既に宇宙工学の研究室が存在するような大きな大学に、萌芽(ほうが)的なものとかある種の分野として既に動いているようなものについて、そこがインタフェースとなって宇宙空間を利用する何かを作っていくといったことです。その前提として、こんなものを作っていこうという長期的なものがなければいけませんが、そういうものに則しながらやるとこういう利用ができるはずだという工学的な使わせる側のモチベーションと、それを使いたい側の要求の二つをうまくコーディネートするような窓口といったようなものです。さらに、そこは宇宙科学の宣伝や広報活動もやるし、あるいは宇宙工学の専門技術者を作っていくようなところについても一緒に考えていくような種類の観点も合わせ持つような何かであって、具体的にどういうふうに動かすかについてのいいアイデアがすぐに思い浮かぶわけではありませんが、そんなイメージのことを私は思っています。つまり、利用させる側の観点から利用を増やすということで、「こんなものを作っていこうと思っているのでこんな使い方はできませんか」というようなことがモチベーションになって動くようなものです。逆に、そういうモチベーションではなく、単に競争的に「俺はこれをやりたい」、「あれをやりたい」という言い方だけで出ていくようなやり方だと、自分が成果を上げてそれでおしまいということになってしまうような気がします。そうではなくて、長期的にそこがネットワークとして有効に動くために、使わせる側が「こんなことをやれないか」、「あんな使い方はできないか」で動いている方がうまく動くような気がしますが、いかがでしょうか。

【磯部専門委員】  既に強いグループがあってそこがやりたいことをがんがんやるというだけではなく、宇宙を使って新しいことをやる人を発掘するようなアプローチも大切だと思います。そのためには、競争的資金をぼんと出してそこに応募してという形ではなくて、長期的な視点が必要です。長期的に拠点を大学に作ろうとすると、組織改編という話になり、それは数年で簡単にやれる話ではないですが、大学も組織改編をしないと新しく大きな拠点を作ることは難しい段階ですので、そういうことが現実的に大学の中で可能となるようなスキームでやっていくことが重要だと思います。

【永田専門委員】  今の井上主査の御説明で、最後のところに書いてある「拠点以外の大学に所属する大学院生等にも広く門戸を開いていること」という一文がようやく腑(ふ)に落ちました。今の宇宙研のように全国の大学が使いに来る拠点を増やしたいという、大学の拠点が新しくできたときに、その拠点を外から使いにいくような仕組みもその中に入れ込むというニュアンスとしてこれは読めばいいということでしょうか。一応確認です。

【井上主査】  この部分は私が書いたわけではないですが、そういう意識は、先ほどの説明でもあったと思います。

【永原主査代理】  広げていくことが重要だと思っています。拠点と言っている以上は、10も20も作れるわけではありませんので、それは少数のつもりです。単に思いつきで「こんなことをやってみたい。」では拠点にはなりません。それなりの実績があり覚悟があって、自分たちの組織はある程度変えてでも概算要求を出していくというところに、本気で拠点を作ると言ってくださるところにこのお金を配らないとばらまきになってしまいます。ただし、そこだけで閉じられてしまうとよろしくないので、特に若い人に対しては門戸を開いてやる気のある人は受け入れるという柔軟さがあってもよろしいのではないかということはあってもよいと思います。

【永田専門委員】  分かりました。研究拠点として共同利用機能も有するということですね。

【永原主査代理】  共同利用とするかどうかまでは、ここでは考えていませんでした。

【渡邊専門委員】  そのときに、ISASと機能が重なってしまわないよう、いかに補完する機能を与えるかが大切ですので、ISASが持っている機能の中で何かを移すのか、今ISASが担いきれてないどの部分を実現するのか等をこの場でもう少し明確にしていただきたいと思います。あるレベルの漠然としたアイデアで枠を決め、あとは募集が出てから決めようという形ではうまくいかないと思います。

【永原主査代理】  この件は事務局とも事前に相談をさせていただきましたが、何を言ったとしても、100万円か500万円でやるつもりなのか、5,000万円なのか、5億円なのかによって全然考え方が違ってきてしまいます。私としては、相当本気で大きい金額を与えなければ拠点というものはできないと思っています。しかし、今、目の前に迫っている概算要求に突然に巨大なお金が必要と言っても、準備する側も当然それは難しいので、今年は手始めとして予備的なものとしてやれば、新たに準備するところもそれなりに1年2年かけて本気で準備をしていくのではないでしょうか。何か仕組みを作らないと、突然ある日いきなり変わるというわけにはいきませんので、そこは兼ね合いだと思います。渡邉委員がおっしゃることはまさにそのとおりで、熟慮はもちろん必要ですが、とりあえず中規模のところで構いませんので、何もやらないよりは何か姿勢を表に見せていくことが重要なのではないかと思います。これ取りまとめたときに、それをどういう形で実現していくかということは事務局が追加してくださった部分ですが、どういう形でまとめたことを実現していくかという何らかの取組ということも見据えたつもりで書きました。そこは、事務局のお考えを聞いた方がよろしいのかもしれません。

【渡邊専門委員】  もう一つ、これは常田委員にお伺いしたいことですが、現在でもISASは大学と連携協定を幾つか結んでいます。ここでの議論と密接に関係すると思われますので、ISASとしての考え方や、より良い形に対するビジョンがあれば、説明いただきたいと思います。

【常田専門委員】  JAXA全体として大学との連携は推進しています。これは個別ケースによって状況が違いますが、連携内容は比較的緩やかなものです。ここで議論していることはもう少しハードな連携の拠点形成だと思います。その中身のイメージは、先ほど山田委員から提起された基礎開発を行う拠点、あるいはPIインスティテュートとしてある観測装置等を責任持って分担する場合、サイエンスセンター等をやる場合というように、そこまで具体的なイメージを与えてしまっていいかということも今の段階であると思いますが、私自身は大学における拠点形成を具体的に言えと言われれば、そういうものをイメージします。したがって、連携としては非常に重いものです。一方、中型の科学衛星1機を例に取ってみましても、今までの宇宙研は搭載ハードウェア及び衛星を作って力尽きてしまって、データ解析は五月雨的にやっていました。しかし今は、一つの科学ミッションがパッケージとなって、データ解析、シミュレーション、他分野との協力というように、非常に広範に影響を及ぼす存在になっています。そういう意味で、宇宙研の中でそういうものを中途半端にやるよりも、ある種のミッションによっては拠点ができてトータルで宇宙科学を支えていくということは今後の姿の一つかと思います。もちろん、分野によっては宇宙研の中で全部やるということも当然あっていいわけで、そういうイメージを持っていますので、恐らく渡邊委員のおっしゃったイメージとは似ているのかと思います。

【山田専門委員】  コンセンサスという意味での意見ですが、今、大学側で拠点を作るという考え方で議論がなされていますが、一方で、ISASの一つの拠点機能をロケーションとして大学に置いて大学と連携するという形や、JAXAの別の組織とするという形もあるかもしれません。そうではなくて、大学側に大学のものとして拠点を置くということが本質的だとお考えでしょうか。

【常田専門委員】  単純に「ひので」(太陽観測衛星)の例を考えています。「ひので」は国立天文台と宇宙研の共同事業のような性格がありまして、主力の望遠鏡は国立天文台とメーカーで作りました。それのサイエンスセンターも天文台に置くし、ほとんどの記者会見、成果発表も天文台で行いました。それは拠点です。搭載ハードウェア以外のところでも、天文台は宇宙研からお金をもらわずに自分でやりくりしてかなりのお金を投資していました。そういう例が天文台だけではなくて、小型ミッションでもいいので、大学にもっと広がっていけばいいなということを、宇宙研の外にずっとおりましたので身に染みてそういったことの重要性を感じています。それを宇宙研に全部やれというのはできません。

【井上主査】  私は少し違うイメージを持っています。プロジェクトが進んでそれぞれの分野でいろいろなことをやっていくときに時限的に拠点を置くことは、別の考え方でやればいいと思います。ここで議論していることは、宇宙科学を動かしているときのインフラとして、大学というものにいろいろな役割を担ってもらうための仕組みを入れようとしていることだと思っています。プロジェクトが動き出したときには、そのたびにいろいろな工夫をしていけばいいと思います。ここではむしろ、萌芽(ほうが)的な研究とか、専門人材を作っていくとか、広く広報活動をいろいろな大学でやっていただくとか、そういう種類の底辺づくり、裾野づくり、基礎体力づくりといった部分をISASと大学が一体になって動かしていくような仕組みを新たに作らなくてはいけないのではないかということが私の問題意識ですので、常田委員とは少し違うニュアンスのような気がします。
 そろそろ議論をまとめなくてはいけません。事務局側には、今度の概算要求に向けてある種の玉が出せるのであればこの場でまとめてほしいという意図が非常に強かったわけですが、これまでの議論だけでは、はっきりとこういう書き方をしてほしいということは、なかなかまとめられるものではないような気がします。少しぼんやりとした言い方で、しかしある種のことを盛り込んでおくということは可能でしょうか。

【柳課長】  ありがとうございます。今日の議論でもあったように、大学とISASの連携の強化ということと、井上主査がおっしゃったような裾野づくりという観点から申し上げると、具体的にどういう大学を公募するかという話は残りますが、基本的に今日の共通認識としては、大学とISASがもう少し関係を深めていくということかと思います。その関係というものは、バーチャルな意味でのネットワークかもしれませんが、どういう形でその環境を作っていくかについては今後更に検討していくとして、今は、大学とISASの連携を強めることによって宇宙科学コミュニティ全体が力をつけていく、総力のかさ上げを図っていくことがいいことではないかというところまでは共通認識で、そのための連携相手としてどこを選ぶべきかという議論だと思います。連携などをやって力をつけていきましょうということを言っていただければ、更に検討していきたいと思います。後ろに書かせていただいたことは具体的に概算要求につなげられればいいとは思っていますが、それが最終的に残るかどうかは、宇宙の予算は非常に厳しい状況ですので何とも言えないところです。ただし、何もやらないと何も変わっていきませんので、先ほどの御意見にありましたように、まずは第一歩として呼び水あるいはケーススタディいったような何かお金の枠を作りながら、各先生たちにはどういうところを選定すべきかについて改めて御意見を伺いたいと思います。とりあえず、何かそういった宇宙科学コミュニティ全体の総力をかさ上げしていくような連携の強化を図っていくために大学側に何かしましょうという感じで、今日はまとめていただければ十分ではないかと思います。

【渡邊専門委員】  それは分かりますが、私が非常に難しいと思うところは、そういった競争的資金で各大学に募集を行えば、自分の大学はもうこういうことができていますよと言うでしょうし、それはコミュニティ全体のためですと言うでしょう。それでいいのですかということです。ISASは、コミュニティに対する責任を十分自覚して今まで拠点としてやってきたという伝統がありますが、大学は必ずしもそうではありません。そこにコミュニティ全体のための拠点を置くには、サービス機能を明確にして募集しないといけません。それを先ほどから申し上げているわけで、このくらいの形で連携が言えていればいいでしょうということではありません。一例を言いますと、先ほどから宇宙の利用を他分野に広げていくべきと言われていますが、それを行う余力はISASにはないと思います。新しい分野への拡大を図る機能を広報や国際協力とつなげながら、実現していくような拠点があれば、それはISASと補完的になります。本当にそういうことをコミュニティのために背負う提案がありますか、という募集にすればいいと思います。それなりに実績がないと手を挙げられないと思いますが、そういう実績の上に更にコミュニティのためにこのようにサービスすると宣言してもらうということです。是非そういう公募をお考えください。

【井上主査】  必ずしも競争的にということではないということですか。渡邊委員がおっしゃっていることは、競争的あるいは公募を前提におっしゃっているように思いましたが、それがいいのかどうかも含めてということですか。

【渡邊専門委員】  あくまでも特定の大学を強化するということではなくて、コミュニティ全体を強化するためにはどこにどういう機能を付与するのかということです。それを明確にするのであれば公募にこだわる必要はないと思います。

【井上主査】  それはおっしゃるとおりです。時間がかなり超過していますが、(3)と(4)が残っていますので、今ここでこれだけは言っておきたいということがあれば言っていただきたいと思います。

【秋山専門委員】  (4)ですが、「小中学生、高校生及び大学生に対する様々な理解増進の取組を強化し、多様な規模の教育を広く支援するプログラムをつくること」とあって、これはこれでいいのですが、問題は、このプログラムを支える基盤である教える人であるとかやる場所が不足している点と思います。特に中学と高校では問題になっています。したがって、「プログラムを作り、これらを支援する共通基盤を整備すること」としていただければ有り難いと思います。

【井上主査】  おっしゃるとおりです。ただし、「プログラムを作る」という言葉がいいのかどうかは、少し考えるところかもしれません。

【秋山専門委員】  プログラムと言わないと、単発になってしまうように思います。

【井上主査】  プログラムと言うと強いかなと思いますので、先ほどから議論があったように、大学にそういう人を置いていくということも一緒に考えていいのではないかと思います。誰が何をどうやって、誰がどういうモチベーションでこういうことを進めていくかということを考えておかないと、お金だけ置いても結果的に何もならないということもあり得ますので。

【北野専門委員】  (4)についてですが、宇宙工学、宇宙理学あるいは天文学といったものは、最先端科学の中でも特に若者、次世代の人々に人気の高い分野だと思います。そこで、最新の成果を目に見える形でアウトリーチする、最新の科学として日本がこういうことをやっているということを広く知ってもらい、それによってより多くの人たちに宇宙科学を応援してもらえる、ひいては最新科学に追い風を送ってもらえるようにできたらいいのではないでしょうか。例えば、様々な探査プロジェクトがあって多くの研究者の方々がいらっしゃいますが、そういう方たちは装置の開発や送られてきたデータの解析に非常に多忙で、なかなかアウトリーチに十分手が回りきらない。大切なことだと分かっていても、時間の制約からできないことがあるのは事実です。ですから、現場の研究者の方々を支援して、アウトリーチを広く行えるような人やお金などの枠組みがあるとよいと考えます。このことは教育というだけではなく、更に国外に向けてのアウトリーチを進めることにも役立つでしょう。是非とも、いま最先端でプロジェクトに携わっている人たちを支援し、アウトリーチすなわち「届く」システムを作って、次世代にそしてより多くの人たちに宇宙科学への興味をいだいていただけるようになれば良いと強く思います。

【井上主査】  大変重要な御指摘を頂きました。ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。

【藤井臨時委員】  大学の拠点について、情報提供だけさせていただきます。ここで議論してもいろいろな意見があるように、拠点の在り方については宇宙研の中でも議論をしています。昨年、私が会長をやっていた運営協議会にワーキンググループを作って、名古屋大学の藤井良一副総長に主査をお願いして、大学拠点の在り方や、全体の宇宙科学を推進する中でそれをどうしていったらいいのかという議論をスタートしていただいています。ですので、その議論を加速していただいて、その結果をここで披露していただければと思います。当初目標としていた8月にはとても間に合いませんので、概算要求をどうするかはお任せしますが、どこかの段階でそれに基づいて議論をするとよいのではないかと思います。

【井上主査】  そこで議論を進めていただいているのであれば、是非お願いしたいと思います。

【藤井臨時委員】  なかなか進んでいませんで、途中で止まっている可能性もあります。今は稲谷先生が会長です。本日、たまたま傍聴席で聞いておられます。

【井上主査】  かなり具体的に、ある程度の方向づけをしていかないとなかなか議論が進まないところもあるかと思います。最後の「事務局追加案」と書かれたところは、これは今日の議論を反映して改めるという考え方でよろしいですか。これについて、今、我々が何か意見を言うことは必ずしも効率的ではないと思います。

【竹内企画官】  本日頂いた御意見を基にして、前半の部分は変わる部分があると思いますので、それに応じてということになります。

【井上主査】  30分ほど超えてしまいました。私としても、どうまとめればいいのか迷うところもありますが、課長がおっしゃったような方向で、ここで皆さんの議論が一緒だったと思える部分を修文したいと思います。あとは、今日どうしても言い残したことがあるとか、何か御意見を言わずにはいられないということがありましたら、個別に事務局の方に言っていただくということでよろしいでしょうか。

【柳課長】  今日は非常に多くの御意見がありましたので、それを事務局としては反映したいと思います。余り時間もありませんので、追加の御意見があるようでしたら来週の水曜くらいまでに、例えば具体的にこういう修文はどうかということでも構いませんので、御連絡いただければそれを反映して直したいと思います。その上で、今日は非常に御意見が多かったので、この後で御連絡いただくものがあればそれも考慮した上で、事務局でそれを反映したものを一度皆さまにサーキュレートさせていただきたいと思います。委員皆さまのそれぞれの本意があると思いますので、事務局で作ったものを送らせていただいて、それに対しての意見を踏まえて最後に主査と相談させていただくというように、一度皆さまの御意見を伺う機会を作った上で、主査預かりという形にしていただければ有り難いと思います。いきなり主査に全て預かっていただくということではなく、一度皆さんにさらした上でもう一度御意見を頂いて、その御意見を踏まえながら主査に御判断いただけると有り難いと思います。

【井上主査】  今の課長からの御提案でいかがでしょうか。大変有益な御議論を頂き、まだまだ議論を深めるべきところもありますが、そういう形で進めさせていただきたいと思います。まとめたものは、宇宙開発利用部会に報告するという予定が入っておりますし、また、適切な時期が頂けけるようでしたら宇宙政策委員会の宇宙科学・探査部会にも報告するということについても検討したいと事務局も言っておりますので、そこについてはあらかじめ御承知おきいただければと思います。それではこの議題についてはここで終わらせていただきます。その他ということで連絡事項があればお願いします。

(2)その他

【竹内企画官】  事務連絡ですが、本日の会議資料は公開となりますので文部科学省のホームページに掲載させていただきます。また議事録につきましても、委員の方々に御確認していただいた上でホームページに公開させていただきますので、よろしくお願いいたします。以上です。

【井上主査】  本当なら全体的におさらいをする方がいいのでしょうが、時間が余りにも超えてしまいましたので、省略させていただきたいと思います。司会進行がまずくて申し訳ございませんでした。それでは本日の議事はこれで終わりにしたいと思います。ありがとうございました。

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