参考資料2 科学技術基本計画(関連箇所抜粋)

科学技術基本計画

第1章 基本的考え方

(1)~(3)は省略

(4)基本方針

(1) 第5期科学技術基本計画の4本柱

目指すべき国の姿の実現に向けて科学技術イノベーション政策を推進するに当たり、大変革時代において、先を見通し戦略的に手を打っていく力(先見性と戦略性)と、どのような変化にも的確に対応していく力(多様性と柔軟性)の両面を重視し、政策を推進していく。
その際、我が国の科学技術イノベーション活動が様々な壁に阻まれて国内に閉じこもり、本格的に展開できていない現状を踏まえ、あらゆる主体が国際的に開かれたイノベーションシステムの中で競争、協調し、我が国発のイノベーションの創出に向けて、各主体が持つ力を最大限発揮できる仕組みを人文社会科学及び自然科学のあらゆる分野の参画の下で構築していくことで、我が国を「世界で最もイノベーションに適した国」となるよう導いていく。
このような考えの下、以下の四つの取組を、第5期基本計画の政策の柱として位置付け、強力に推進していく。

1)未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組
大変革時代において、我が国が将来にわたり競争力を維持・強化していくためには、先行きの見通しが立ちにくい中にあっても国内外の潮流を見定め、未来の産業創造や社会の変革に先見性を持って戦略的に取り組んでいくことが欠かせない。
このため、自ら大きな変化を起こし大変革時代を先導していくことを目指し、非連続なイノベーションを生み出すための取組を進める。さらに、ICTの進化やネットワーク化といった大きな時代の潮流を取り込んだ「超スマート社会」を未来社会の姿として共有し、こうした社会において新しい価値やサービスが次々と創出され、人々に豊かさをもたらすための仕組み作りを強化する。

2)経済・社会的課題への対応
経済・社会の構造が日々変化する中で、我が国及び世界が持続的に発展していくためには、顕在化している様々な課題に対し、先手を打って的確に対応していくことが不可欠である。このため、国内又は地球規模で顕在化している様々な課題に対して、目指すべき国の姿を踏まえつつ、国が重要な政策課題を設定し、当該政策課題の解決に向けた取組を総合的かつ一体的に推進する。

3)科学技術イノベーションの基盤的な力の強化
今後起こり得る様々な変化に対して、科学技術イノベーションにより的確に対応していくためには、科学技術イノベーションの根幹を担う人材の力、イノベーションの源である多様で卓越した知を生み出す学術研究や基礎研究、あらゆる活動を支える資金といった基盤的な力の強化が必須である。このため、先行きの見通しが立ちにくい時代を牽引する主役とも言うべき若手人材の育成・活躍促進と大学の改革・機能強化を中心に、基盤的な力の抜本的な強化に向けた取組を進める。

4)イノベーション創出に向けた人材、知、資金の好循環システムの構築
世界的にオープンイノベーションの取組が進む中で、国内外の人材、知、資金を活用し、新しい価値の創出とその社会実装を迅速に進めていくことが、今後の我が国の競争力を左右する。このため、企業、大学、公的研究機関の本格的連携とベンチャー企業の創出強化などを通じて、人材、知、資金があらゆる壁を乗り越え循環し、世界を先導する我が国発のイノベーションが次々と生み出されるシステムの構築を進める。

また、これら四つの取組を進めていくに際して、科学技術外交とも一体となり、戦略的に国際展開を図るという視点が欠かせない。
科学技術イノベーション活動は国境を越えて展開されており、国際的な研究ネットワークの構築状況や、世界に広がる知的資源を迅速かつ効果的に活用していく仕組みをいかに構築できるかが、我が国の国際競争力に大きな影響を与えている。国際環境が大きく変化する中で、我が国の科学技術イノベーション力を活用し、我が国を含む世界の共通利益の追求に向けリーダーシップを発揮することにより、国際的な存在感を高めていくことが求められている。
こうしたことから、科学技術イノベーション政策の推進に当たっては、常にグローバルな視点に立ち、国際協調の中にも戦略性を持って取り組んでいくことが重要である。その際、国際頭脳循環の強化を図るとともに、日本の顔が見えるよう、我が国の科学技術を世界に向けて発信できる仕組みを、科学技術外交戦略の中に位置付けていく。

(2) 科学技術基本計画の推進に当たっての重要事項

上記の4本柱の取組を効果的・効率的に進めていく上で、科学技術イノベーションと社会の多様なステークホルダーとの関係を深化させ、また、科学技術イノベーションの推進機能を強化していくことが不可欠である。

1)科学技術イノベーションと社会との関係深化
イノベーションの創出に当たっては、多様な価値観を持つユーザーの視点が欠かせなくなっており、また、科学技術イノベーションが社会の期待に応えていくためには、社会からの理解、信頼、支持を獲得することが大前提である。このため、科学技術イノベーション活動の推進に当たり、社会の多様なステークホルダーとの対話と協働に取り組んでいく。

2)は、省略

第2章 未来の産業創造と社会変革に向けた新たな価値創出の取組

(1)省略

(2)世界に先駆けた「超スマート社会」の実現(Society 5.0)

(1) 超スマート社会の姿

超スマート社会とは、
「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会」
である。
このような社会では、例えば、生活の質の向上をもたらす人とロボット・AIとの共生、ユーザーの多様なニーズにきめ細かに応えるカスタマイズされたサービスの提供、潜在的ニーズを先取りして人の活動を支援するサービスの提供、地域や年齢等によるサービス格差の解消、誰もがサービス提供者となれる環境の整備等の実現が期待される。
また、超スマート社会に向けた取組の進展に伴い、エネルギー、交通、製造、サービスなど、個々のシステムが組み合わされるだけにとどまらず、将来的には、人事、経理、法務のような組織のマネジメント機能や、労働力の提供及びアイデアの創出など人が実施する作業の価値までもが組み合わされ、更なる価値の創出が期待できる。
一方、超スマート社会では、サイバー空間と現実世界とが高度に融合した社会となり、サイバー攻撃を通じて、現実世界にもたらされる被害が深刻化し、国民生活や経済・社会活動に重大な被害を生じさせる可能性がある。このため、より高いレベルのセキュリティ品質を実現していくことが求められ、こうした取組が企業価値や国際競争力の源泉となる。

(2) 実現に必要となる取組

超スマート社会の実現には、様々な「もの」がネットワークを介してつながり、それらが高度にシステム化されるとともに、複数の異なるシステムを連携協調させることが必要である。それにより、多種多様なデータを収集・解析し、連携協調したシステム間で横断的に活用できるようになることで、新しい価値やサービスが次々と生まれてくる。
しかし、あらゆるシステムの連携協調を可能とするような仕組みを一気に構築することは現実的ではない。このため、国として取り組むべき経済・社会的課題を踏まえて総合戦略2015で定めた11のシステムの開発を先行的に進め、それらの個別システムの高度化を通じて、段階的に連携協調を進めていく。
まずは、個別システムのそれぞれに対して設定されている達成すべき課題を踏まえ、産学官・関係府省連携の下、それら11システムの高度化の取組を着実に進めるとともに、各取組の間で好事例や問題点等を共有し、相互活用を図る。
また、それら11システム個別の取組と並行して、複数のシステム間の連携協調を可能とし、現在では想定されないような新しいサービスも含め、様々なサービスに活用できる共通のプラットフォームを段階的に構築していく。特に、複数のシステムとの連携促進や産業競争力向上の観点から、「高度道路交通システム」、「エネルギーバリューチェーンの最適化」及び「新たなものづくりシステム」をコアシステムとして開発し、「地域包括ケアシステムの推進」、「スマート・フードチェーンシステム」及び「スマート生産システム」などの他のシステムとの連携協調を早急に図り、経済・社会に新たな価値を創出していく。
その際、システム全体の企画・設計段階からセキュリティの確保を盛り込むセキュリティ・バイ・デザインの考え方に基づき推進することが必要である。
以上を踏まえ、国は、産学官・関係府省連携の下で、超スマート社会の実現に向けてIoTを有効活用した共通のプラットフォーム(以下「超スマート社会サービスプラットフォーム」という。)の構築に必要となる取組を推進する。
具体的には、複数システム間のデータ利活用を促進するインターフェースやデータフォーマット等の標準化、全システムに共通するセキュリティ技術の高度化及び社会実装の推進、リスクマネジメントを適切に行う機能の構築を進める。
また、三次元地図・測位データや気象データのような「準天頂衛星システム」、「データ統合・解析システム(DIAS:Data Integration and Analysis System)」及び「公的認証基盤」等の我が国の共通的基盤システムから提供される情報を、システム間で広く活用できるようにする仕組みの整備及び関連技術開発を進める。
さらに、システムの大規模化や複雑化に対応するための情報通信基盤技術の開発強化、経済・社会に対するインパクトや社会コストを明らかにする社会計測機能の強化を図る。
加えて、個人情報保護、製造者及びサービス提供者の責任等に係る課題への対応、社会実装に向けた文理融合による倫理的・法制度的・社会的取組の強化、新しいサービスの提供や事業を可能とする規制緩和・制度改革等の検討、適切な規制や制度作りに資する科学の推進を図る。
また、これらの取組と並行して、超スマート社会サービスプラットフォームの構築に資する研究開発人材や、これを活用して新しい価値やサービスを創出する人材を育成する。
なお、これらの取組は、我が国の重要な課題である健康長寿社会の形成にも資するものであることから、総合科学技術・イノベーション会議は、健康・医療戦略推進本部との連携・協力を進めるとともに、ICT関連の司令塔である高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部及びサイバーセキュリティ戦略本部との連携を進める。その上で、総合科学技術・イノベーション会議は、超スマート社会サービスプラットフォームの構築に向けた産学官・関係府省の連携体制を整備するとともに、毎年度策定する総合戦略において取組の重点化や詳細な目標設定等を実施する。

(3)「超スマート社会」における競争力向上と基盤技術の強化

(1) 競争力向上に必要となる取組

超スマート社会において、我が国が競争力を維持・強化していくためには、世界に先駆けてこうした取組を進め、ノウハウや知識を蓄積することにより、先行的に知的財産化や国際標準化を進めていく必要がある。また、構築されるプラットフォームを常に高度化し、多様なニーズに的確に応える新しい事業の創出を促進するとともに、このプラットフォームや個別システムに我が国ならではの特長を持たせ優位性を確保していくことが重要である。
このため、国は、産学官・関係府省連携の下で、超スマート社会サービスプラットフォームの技術やインターフェース等に係る知的財産戦略と国際標準化戦略を推進する。
また、超スマート社会サービスプラットフォームの構築に必要となる基盤技術の強化や、個別システムで新たな価値創出のコアとなる我が国が強みを有する技術を更に強化していくことが必要であり、具体的な技術領域と推進方策については次項に示す。
さらに、課題達成の実証を完了したシステムのパッケージ輸出の促進を通じ、我が国発の新しいグローバルビジネスの創出を図り、少子高齢化、エネルギー等の制約、自然災害のリスク等の課題を有する課題先進国であることを強みに変える。
あわせて、超スマート社会サービスプラットフォームを活用し、新しい価値やサービスを生み出す事業の創出や、新しい事業モデルを構築できる人材、データ解析やプログラミング等の基本的知識を持ちつつビッグデータやAI等の基盤技術を新しい課題の発見・解決に活用できる人材などの強化を図る。

(2) 基盤技術の戦略的強化

1)~2)は省略


3)基盤技術の強化の在り方
1)及び2)に掲げた基盤技術の強化に当たっては、超スマート社会への展開を考慮しつつ10年程度先を見据えた中長期的視野から、各技術において高い達成目標を設定し、その目標の実現に向けて取り組むべきである。
その中で、技術の社会実装が円滑に進むよう、産学官が協働して研究開発を進めていく仕組みを構築することが重要である。特に、基礎研究から社会実装に向けた開発まで、研究開発をリニアモデルで進めるのではなく、社会実装に向けた開発と基礎研究とが相互に刺激し合いスパイラル的に研究開発することにより、新たな科学の創出、革新的技術の実現、実用化及び事業化を同時並行的に進めることのできる環境を整備することが重要である。
加えて、世界中から優れた人材、知識、資金を取り入れて研究開発及び人材育成を進めるとともに、AI技術やセキュリティ技術の領域などでは、人文社会科学及び自然科学の研究者が積極的に連携・融合した研究開発を行い、技術の進展がもたらす社会への影響や人間及び社会の在り方に対する洞察を深めることも重要である。また、こうした研究開発環境の実現に向けて、優れたリーダーの下、国内外から優れた人材を結集し、研究開発プロジェクトを柔軟に運営できる体制の構築も重要である。
総合科学技術・イノベーション会議は、重要な基盤技術について、上述の内容を踏まえた上で、各府省を俯瞰した戦略を策定し、効果的・効率的な研究開発の推進を先導する。その際、各重要技術領域における研究開発の進捗状況を評価し、メリハリを付けながら進めるとともに、技術動向や経済・社会の変化に対し、技術領域や目標の適切な見直しも含めて、弾力的に研究開発を推進する。

第3章 経済・社会的課題への対応

国内、そして地球規模で顕在化している課題はますます多岐にわたり、複雑化している。目指すべき国の姿として掲げた「持続的な成長と地域社会の自律的な発展」、「国及び国民の安全・安心の確保と豊かで質の高い生活の実現」及び「地球規模課題への対応と世界の発展への貢献」を実現していくためには、科学技術イノベーションを総動員し、戦略的に課題の解決に取り組んでいく必要がある。
このため、国内外で顕在化する様々な課題の中から、目指すべき国の姿に向けて、課題解決への科学技術イノベーションの貢献度が高いと判断される重要政策課題を抽出するとともに、各政策課題の解決の鍵となる取組や技術的課題を提示する。こうした取組や技術的課題を中心に、産学官・関係府省が連携し、社会の多様なステークホルダーとも協働しながら、また、府省及び分野の枠を超えて横断的に取り組むSIPを最大限に活用しながら、研究開発から社会実装までの取組を一体的に進めていく。その際、研究開発成果の迅速な社会実装と国際展開、さらには競争力の向上のために、知的財産と国際標準化の戦略的活用を図っていくことが重要である。あわせて、東日本大震災をはじめ、各地の災害からの復興状況等を鑑み、国、地方自治体等が一体となり、新技術や被災地の新産業につながる科学技術イノベーションの取組を進めていくことが重要である。
なお、経済・社会の状況は年々変化しており、各課題の解決に向けて、特に重点的かつ緊急的に取り組むべき事項は変化し得る。このため、各課題の解決に向けた研究開発の推進に当たっては、本基本計画に掲げた事項を軸としつつ、毎年度策定する総合戦略において更なる取組の重点化や詳細な目標設定等を実施する。
本基本計画の最終年度である2020年度は、東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、「大会」という。)の開催年であり、大会を、国内外に我が国の科学技術イノベーションの成果を発信するショーケースとして活用するとともに、我が国産業の世界展開や海外企業の対日投資等を喚起し、2020年度以降も我が国全体で経済の好循環を引き起こす絶好の機会として位置付ける。このため、訪日客のコミュニケーションや移動のストレスを取り除く多言語翻訳技術、新たな感動を創出する映像関連技術等、大会に向けて取組を加速していくべき我が国発の科学技術イノベーションに資するプロジェクトについて、企業の参画を促しつつ着実に推進する。

(1)持続的な成長と地域社会の自律的な発展

(1) エネルギー、資源、食料の安定的な確保

1)エネルギーの安定的な確保とエネルギー利用の効率化
2)資源の安定的な確保と循環的な利用
3)食料の安定的な確保

(2) 超高齢化・人口減少社会等に対応する持続可能な社会の実現

1)世界最先端の医療技術の実現による健康長寿社会の形成
2)持続可能な都市及び地域のための社会基盤の実現
3)効率的・効果的なインフラの長寿命化への対策

(3) ものづくり・コトづくりの競争力向上

(2)国及び国民の安全・安心の確保と豊かで質の高い生活の実現

(1) 自然災害への対応
(2) 食品安全、生活環境、労働衛生等の確保
(3) サイバーセキュリティの確保
(4) 国家安全保障上の諸課題への対応

(3)地球規模課題への対応と世界の発展への貢献

(1) 地球規模の気候変動への対応
(2) 生物多様性への対応

(4)国家戦略上重要なフロンティアの開拓

第4、5章は、省略

第6章 科学技術イノベーションと社会との関係深化

人類の歴史は、科学技術と社会システムとの相互作用により塗り替えられてきたが、科学技術が急速に進展するにつれて、両者の関係が一層密接になってきた。大変革時代とも言うべき状況下において、科学技術イノベーションにより、未来の産業創造と社会変革への第一歩を踏み出すとともに、経済・社会的な課題への対応を図るには、多様なステークホルダー間の対話と協働が欠かせない。このため、科学技術と社会とを相対するものとして位置付ける従来型の関係を、研究者、国民、メディア、産業界、政策形成者といった様々なステークホルダーによる対話・協働、すなわち「共創」を推進するための関係に深化させることが求められる。
そのためには、国、大学、公的研究機関及び科学館等が中心となり共創の場を設けるとともに、各ステークホルダーが共創に向けて、それぞれの能力をより高めることが重要である。その際、ステークホルダー間の信頼関係の構築が欠かせないが、その前提となるのが研究の公正性の確保である。

 (1)共創的科学技術イノベーションの推進

(1) ステークホルダーによる対話・協働

第3期基本計画以降、科学技術コミュニケーションを政策的に誘導してきたこともあり、サイエンスカフェなど研究者が自ら参画して行うアウトリーチ活動の取組が広まった。その一方で、東日本大震災やそれに伴う原子力発電所事故、近年の研究不正の発生等により、科学技術と社会との関係が問われるようになってきている。
今後は、アウトリーチ活動の充実のみならず、科学技術イノベーションと社会との問題について、研究者自身が社会に向き合うとともに、多様なステークホルダーが双方向で対話・協働し、それらを政策形成や知識創造へと結び付ける「共創」を推進することが重要である。このため、国は、大学、公的研究機関及び科学館等と共に、より効果的な対話を生み出す機能を充実させ、多様なステークホルダーを巻き込んだ円卓会議、科学技術に係る各種市民参画型会議など対話・協働の場を設ける。その際に得られた意見等については、新たな価値の創出、社会的課題の特定や解決に向けて、国の政策形成の際に考慮する。また、シチズンサイエンスの推進を図るとともに、研究者が国民や政策形成者等と共に研究計画を策定し、研究実施や成果普及を進めるような方法論の創出と環境整備を促進する。

(2) 共創に向けた各ステークホルダーの取組

科学技術においてステークホルダー間の共創を進めるためには、社会側のステークホルダーである国民の科学技術リテラシーの向上と共に、研究者の社会リテラシーの向上が重要である。
特に、新しい科学技術の社会実装における対話や、自然災害・気候変動等に係るリスクコミュニケーションを醸成するためには、国民が、初等中等教育の段階から、科学技術の限界や不確実性、論理的な議論の方法等に対する理解を深めることが肝要である。また、科学館、博物館等の社会教育施設が果たす役割も大きく、そうした場において、研究者等と社会の多様なステークホルダーとをつなぐ役割を担う人材である科学コミュニケーター等が活躍し、双方向の対話・協働においても能動的な役割を担うことが期待されることから、国は、こうした取組について支援する。
また、科学教育において、新聞、テレビ、インターネット等のメディアが果たす役割は小さくない。メディアは、科学技術情報を、その不確実性や専門家の見解の対立も含めてできる限り客観的に提供するよう努めることで、国民の科学技術リテラシー向上、ひいては共創の醸成につながるという意識を持つことが期待される。
他方、研究者は、多様なステークホルダーに対して、分野を超えた知識・視点を駆使して研究内容等を分かりやすく説明することが求められる。また、研究者としての見識を広げ、自らの研究と社会との関わりの重要性について認識を深める観点から、人文社会科学及び自然科学の連携や、博士人材に対する企業へのインターンシップ等の効果的活用が望まれる。さらに、大学及び公的研究機関等における人事評価や、資金配分機関における研究プロジェクトの評価においては、論文数等による一面的な評価だけでなく、多様なステークホルダーとの対話・協働の取組や、研究成果による社会的インパクト等を多面的に評価する仕組みの導入が求められる。

(3) 政策形成への科学的助言

自然災害や気候変動への対応、医療など超高齢社会への対応、サイバーセキュリティの確保など、政策形成において科学技術が果たす役割はこれまで以上に大きくなっている。
このため、研究者は科学的助言の質の確保に努めるとともに、科学的知見の限界、すなわち、不確実性や異なる科学的見解が有り得ることなどについて、社会の多様なステークホルダーに対して明確に説明することが求められる。一方、研究者は政治的意図に左右されることなく、独立の立場から科学的な見解を提供できることを、各ステークホルダーが認識することが期待される。また、科学的助言は政策形成過程において尊重されるべきものであるが、それが政策決定の唯一の判断根拠ではないことを各ステークホルダーが認識することも重要である。なお、我が国における科学的助言の在り方については、近年の国際的動向も踏まえ、その仕組み及び体制等の充実を図っていく必要がある。

(4) 倫理的・法制度的・社会的取組

科学技術の社会実装に関しては、遺伝子診断、再生医療、AI等に見られるように、倫理的・法制度的な課題について社会としての意思決定が必要になる事例が増加しつつある。
新たな科学技術の社会実装に際しては、国等が、多様なステークホルダー間の公式又は非公式のコミュニケーションの場を設けつつ、倫理的・法制度的・社会的課題について人文社会科学及び自然科学の様々な分野が参画する研究を進め、この成果を踏まえて社会的便益、社会的コスト、意図せざる利用などを予測し、その上で、利害調整を含めた制度的枠組みの構築について検討を行い、必要な措置を講ずる。また、国及び学会等は、先端研究の進展に伴い、必要に応じて倫理ガイドライン等の策定を行うことが望まれる。
さらに、社会における科学技術の利用促進の観点から、科学技術の及ぼす影響を多面的に俯瞰するテクノロジー・アセスメントや、規制等の策定・実施において科学的根拠に基づき的確な予測、評価、判断を行う科学に関する研究、社会制度等の移行管理に関する研究を促進する。なお、これらの取組については、研究開発活動と連動させながらその推進を図る。

((2)は省略)

(第7章は、省略)

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