参考資料1 社会と科学技術イノベーションとの関係深化に関わる推進方策の検討作業部会(第1回、第2回)における各委員からの主な意見

1.背景

【ELSIについて】
●科学技術は、社会や人間に恩恵をもたらすのと同時に、悪用・誤用されるなどの用途の両義性というものがある。ELSIの問題の中でもこのようなことが含めて考える必要があるのではないか。

【基本理念について】
●なぜ「責任ある研究・イノベーション」を基本理念として推進方策を打ち出すのか。「理解増進活動」から「責任ある研究・イノベーション」へ転換されたことを、もう少し明確に示した方がよい

【防災などの分野への対応】
●新興分野だけでなく既知の分野(防災分野など)も対象とした方がよい。科学技術イノベーションの概念を広げる形になる。システムのイノベーションやガバナンスのイノベーションを含めた意味のレスポンシブル・イノベーションと捉えた方がよいのではないか。

2.基本的な考え方

●責任ある研究・イノベーションの推進主体は誰を指しているのか。大学や公共研究機関だけが対象ではなく、企業の研究者もレスポンシブル・イノベーションの担い手であるため、その視点を入れるべきではないか。

3.責任ある研究・イノベーションとは

●「責任ある研究・イノベーション」の概念のベースに、予見的ガバナンス論があることから、不確実性下の意思決定や不確実性下の科学者の情報公開というものが関係するので、そのようなことも含めて議論が必要ではないか。

●科学者の「責任」の意味は以下のとおり3つの責任がある。(1)内部責任(科学者共同体内部を律する責任)(2)製造物責任(科学が社会に出たときの成果の保証)(3)応答責任(国民からの問いかけに対して応える責任)の3種類である。

●「責任ある研究・イノベーション」は(科学者の3つの責任で言うと)(3)の応答責任という考えに近いと考える。そのため、責任ある研究・イノベーションを考える際には、「責任分担の在り方」と「応えあう仕組み」をどのように構築していくのか考えることが必要ではないか。

●3つの責任の(1)「内部責任」と(2)「製造責任」を視野に収めながらも、今、あえてこの推進方策を議論する意味は、科学に多くのステークホルダーが関わる中で応答関係を深めながら研究やイノベーションを進めるべきという考えが重要だという背景がある。

●震災後4年経ち、今一度、科学者の社会の中での振る舞い方の指針となるものを示せたら良いのではではないか。

●「応答責任」にしっかり向き合うことが、今、我々が震災から4年が経ってこれを議論する一つの意義であると考える。

●「責任」の意味は、科学者の責任だけの話ではなく、その他の社会のステークホルダーにも役割と責任がある。応答責任はそれぞれの主体にある。

●各ステークホルダーが、責任の意味を「責任を取る」という意味に誤解されないように、明確に記載する必要があるのではないか。

●JST社会技術研究開発センターでは、責任ある研究・イノベーションの先駆的な取組が実施されているため、「科学技術と人間」領域、「安全安心」領域、「犯罪からの子どもの安全」領域などを照会した方がよい。

4.具体的な取組

【対話支援組織】
●対話支援組織について以下の2つを追加していただきたい。
・グローバル化に対応した国際的な協働を支援する機能。
・単発的な対話の取組としないために、その結果を集約、分析し新しい議論の探索など静脈的な機能。

【ELSI研究等の推進のための組織的な機能の充実】
●現代社会の状況を鑑みると、対話支援の組織的な機能とELSI研究等の組織的な機能を区別するより、一体的にして充実する必要がある。

【ELSI研究の等の推進】
●研究開発プロジェクトの中には、ELSIの取組をプロジェクトに反映させることになじまない分野もある。また、リスクまで含む幅広いインパクトを評価項目として設ける」について、評価の仕方を加点評価とするような配慮が必要だと思う。押しつけではなく研究者の自発的な取組を支援するという見せ方のほうがよい。

●ELSI研究等の評価を適切に行うため、どのような手法で社会的影響を予見しているのか、研究者の評価自体をどのように行うのかなど評価指標や評価手法の開発が必要ではないか。

●ELSI研究において、既に顕在化している問題や将来顕在化することが予想されるも問題を文理協働で探索する活動が必要ではないか。

【人材育成と確保】
●職業としての人材の養成と確保について、どの程度推進方策で推すのかという程度問題に配慮する必要がある。また、職能としての人材育成等は取り組むべきではないか。

●リスコミの推進方策でも人材の養成と職能としての人材育成については、同様の議論があったが、「職能が重要」という結論であった。ただ、将来的に考えると、職業として成り立つような仕組みを作る必要があると考える。

【科学技術リテラシー】
●リテラシーは、分野横断的に汎用性のある科学についての知識が必要であると考える。
不確実性、暫定性の問題など科学の本質を理解することが求められており、それが対話や共創にも結び付く。

【アウトリーチ活動の推進】
●研究者は、科学技術コミュニケーション活動を行う上で、様々な障壁あるとの調査結果がある。もっと自発的に活動を行えることが理想である。

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