資料1-4 米国の核廃棄物減容及び有害度低減に関する動向

平成24年11月30日
日本原子力研究開発機構

現在の基本的な考え方

○ 大統領諮問委員会であるブルーリボン委員会レポート(2012年1月)の提言に基づき、核廃棄物の減容を念頭とした再処理技術、燃料サイクル用プラント(高速炉)技術に関する研究開発を維持・継続、最終的にプルトニウム利用をしつつ廃棄物の減容化(再処理後ガラス固化)、あるいは使用済燃料直接処分の両方を将来の選択肢として保持している。

ブルーリボン委員会(BRC)周辺の状況と最終レポート概要

○ 現オバマ政権が示したユッカマウンテン計画中止の方針を受けて組織されたBRCは、「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の貯蔵・処理・処分及び燃料サイクルを含めたバックエンド政策の包括的な評価・検証」を実施、2012年1月に最終報告を行った。
⇒ 廃棄物政策に係る提言と合わせ、燃料サイクル技術に対する研究開発継続の必要性に言及

○ 最終報告における8つの勧告要約
1) 透明性があり、基準及び科学に基づく新たなアプローチによる、将来の廃棄物管理施設の開発
2) 廃棄物管理プログラムの履行に特化し、成功するために必要な権限と資源を有する新たな連邦公社の設立
3) 原子力発電所を有する電力会社が支払っている、放射性廃棄物処分基金の年間廃棄物管理費用の分離を含む適切な運用
4) 新たな地層処分施設を構築するための早急な取組みの実施
5) 一箇所あるいは複数の集中中間貯蔵施設を構築するための早急な取組みの実施
6) 集中貯蔵施設や処分施設への使用済燃料や高レベル放射性廃棄物の大規模な輸送の早期準備
7) 先進的な原子炉及び燃料サイクル技術に関する研究開発・実証(RD&D)のための、人材育成を含む、安定的かつ長期的な支援
8) 原子力施設及び核物質の安全性、セキュリティの懸念に対応する国際取組における米国のリーダーシップの発揮
○ BRCレポートの燃料サイクル報告部分(11章先進的原子炉及び燃料サイクル技術について)の概要

【原子炉及び燃料サイクル技術の比較結果】

1) 重大かつ広範囲の基準の観点(安全性、コスト、セキュリティなど)から、既存の燃料サイクル技術とRD&Dプログラムの評価を行った。過去10年間行われてきた膨大な研究に基づき、数多くの原子炉と燃料サイクルの選択肢を評価した。最終的に軽水炉(LWR)のワンススルー戦略に対する3種類の代表的代替方法を特定し、先進的原子力エネルギーシステムの比較を試みた。

  1. 軽水炉技術のワンススルー燃料サイクル:ベースライン
  2. 軽水炉技術で混合酸化物(MOX)燃料を用いる改良型オープンサイクル
  3. 高速炉を用いる閉じた燃料サイクルシステム
  4. 高温ガス炉でのワンススルー燃料サイクル

2) その結果、明らかに他より優る技術がないと結論し、全ての選択肢を残しておく方針を継続すべきと提言した。

【原子力エネルギーのRD&DとDOEプログラムの現状分析】

1) 現状で燃料サイクル技術を絞り込むことは時期尚早である。
2) 先進的原子力エネルギーシステムは安全性、コスト、セキュリティなどの広範囲の政策目標の観点から大きな利益をもたらす可能性がある。
3) 既存の原子力発電技術の安全性と性能を改良し、複数の評価基準 (安全性、コスト、資源の利用と持続可能性、廃棄物管理、核不拡散及び反テロリズム) の観点で大きな利益をもたらし得る原子力エネルギーのRD&Dを継続するべきである。

  1. ワンススルー燃料サイクルの一部として配備されている既存の軽水炉技術と、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の貯蔵及び処分技術の安全性と性能の短期的改良。
  2. アクチニドを連続的にリサイクルでき、ウランをより効率的に使用する受動的安全特性を実証する高速炉や、超高温の実現による水素生成やその他の目的でプロセスヒートを供給する溶融塩またはガス冷却原子炉、安全性を改善した革新的設計のモジュラー炉などである。

【人材育成】

1) 米国の原子力業界や他のハイテク分野での労働力の必要性は今後高まると予想され、最近の産業界の調査では今後5年間に全国の原子力発電会社の労働力の半数を交代させる必要があることが指摘されている。
2) 効果的な廃棄物管理プログラムや存続しうる国内原子力産業に必要とされる人材を輩出するため、高度な科学、技術、工学及び数学の訓練に対する連邦、労使共同及び大学の支援を拡大するよう提案する。

【結論】

○ 現在利用できるか、合理的に予想できる原子炉と燃料サイクルの技術開発は、少なくとも今後の数十年間、廃棄物管理の課題を基本的に変える可能性はない。現状で燃料サイクル技術を絞り込むことは時期尚早である。
  <主要な理由>
   1) 米国の使用済燃料の量が膨大であって、現状のいかなるシナリオでも再利用の可能性が非常に低い物質が含まれている。
   2) 革新型原子炉及び燃料サイクル技術あるいは廃棄物処分施設を開発し、配備するには長期間を要し、最短でも数十年のオーダーである。
○ 将来のさまざまな時点で社会的利益をもたらす可能性のある原子炉と燃料サイクル技術は、持続的な安全性、経済性、環境及びエネルギー確保の目的から極めて有望であり、官民が研究開発の投資を継続する価値があるし、RD&Dを継続するべきである。

以上

【参考】BRC委員会組織までの米国の主要な関連経緯

○ 1993年:カータードクトリンによるプルトニウムモラトリアム(プルトニウム民生利用を行わない)方針のもと、1983年の原型炉計画(CRBRP)中止を含み縮小してきた高速炉や燃料サイクル開発について、クリントン政権下でその研究開発も行わないことを決定し、高速増殖炉の設計研究を含めた高速炉と燃料サイクルに関わる研究開発はすべて中止した。
○ 核拡散抵抗性に優れるとの謳い文句でIFR計画(Integral Fast Reactor:高速炉(金属燃料)・乾式再処理・燃料製造の一体型燃料サイクル)を推進してきたが、このような政策変更のため1994年に中止した。ただし、 EBR-2使用済燃料(金属燃料)の再処理施設については、乾式処理施設(Treatment Facility) の位置づけで、その運用を進めることとした。
○ 原子力の研究開発予算を全くゼロにした施策の問題点を認識し、クリントン政権末期、2000年に、将来の燃料サイクルにかかわる研究開発の必要性を考慮し、安全性、経済性、核拡散抵抗性等に優れる第四世代原子炉(Gen-4)概念の検討を目的とした、「第四世代原子力システム国際フォーラム」(GIF)を設立した。
⇒ 日本は6システム概念のうち、SFR(ナトリウム冷却高速炉)等4つのシステム協定に署名して活動中。SFRにおける総てのプロジェクト(先進燃料(AF)、安全と運転(S&O)、機器設計と周辺装置(CD&BOP)、MA燃焼実証(GACID)、システム統合と評価(SI&A))に参加。
○ 2001年: ブッシュ大統領に政権が移った際、国家エネルギー政策(NEP)を発表し、温室効果ガスを排出しない原子力エネルギーの利用拡大を支持し、核燃料サイクル技術や次世代原子力技術の発展促進に言及した。
○ 2003年: 使用済燃料の発生量を減らし、高い核拡散抵抗性を持つ核燃料サイクル技術、及び使用済燃料の長期にわたる放射能毒性と熱負荷を大幅に低減できる核燃料サイクル技術の開発プログラムである先進核燃料サイクルイニシアティブ(AFCI)を開始した。
○ 2006年: 核不拡散を実現するための、6ヵ国の燃料サイクル国と燃料利用国を区分し、今後の原子力利用を促進するグローバル原子力エネルギーパートナーシップ(GNEP)構想を発表。先進リサイクル炉(ARR=SFR)、先進核燃料サイクル施設等の設計研究を推進した。
○ 2009年: オバマ政権発足後、上記のGNEP計画は9月で終了。GNEPに代わる協力として、原子力新規導入国への支援、原子力の平和利用推進を目的とした国際原子力エネルギー協力フレームワーク(IFNEC)を2010年に発足させた。

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