宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会(第54回) 議事録

1.日時

令和7年1月22日(水曜日) 13時00分~14時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.出席者

委員

主査 木村 真一
主査代理 神武 直彦 
専門委員 柿沼 志津子
専門委員 熊崎 美枝子
専門委員 辻村 厚
専門委員 中西 美和

文部科学省

大臣官房審議官(研究開発担当) 橋爪 淳
研究開発局宇宙開発利用課 研究開発戦略官/宇宙利用推進室長 原田 大地
研究開発局宇宙開発利用課 宇宙科学技術推進企画官 阿部 陽一
研究開発局宇宙開発利用課 課長補佐 木元 健一
研究開発局宇宙開発利用課 研究開発戦略官付課長補佐 川端 正憲
研究開発局宇宙開発利用課 研究開発戦略官付/宇宙利用推進室 室長補佐 館下 博昭

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 有人宇宙技術部門 有人システム安全・ミッション保証室 室長 小林 亮二
 有人宇宙技術部門 有人システム安全・ミッション保証室 技術領域主幹 荒木 秀二
 有人宇宙技術部門 有人システム安全・ミッション保証室 技術領域主幹 佐藤 崇行
 有人宇宙技術部門 有人システム安全・ミッション保証室 主任研究開発員 鈴木 禎嗣
 有人宇宙技術部門 有人システム安全・ミッション保証室 研究開発員 田丸 晴香
 研究開発部門 第二研究ユニット 研究領域主幹 上土井 大助

4.議事録

【木村主査】 それでは、定刻になりましたので、宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会の第54回会合を開催いたします。
 本日の議題は例年実施しております、国際宇宙ステーションに提供する機器の安全確認です。
 本日もオンラインでの開催になっております。委員の皆様におかれましては御多用のところ、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 それでは、事務局から本日の会議に関する事務連絡をまずお願いいたします。
 
【阿部企画官(事務局)】 阿部です。
 本日は調査・安全小委員会に御所属いただいております委員のうち、5名に御出席いただいており、運営規則に定める定足数の要件を満たしていることを報告します。
 本日の資料につきましては、議事次第に記載のとおりです。
 オンライン状況につきまして、音声がつながらない等の問題がございましたら、事務局へメール、電話等で御連絡ください。
 事務局連絡は以上となります。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 それでは、早速議題の方に入りたいと思います。本日は議題一つですけれども、「国際宇宙ステーション(ISS)に提供するISS構成要素及び搭載物の安全確認について」ということです。
 まずはこの議題の趣旨について、事務局の方から御説明お願いできますでしょうか。
 
【木元補佐(事務局)】 承知いたしました。事務局の木元でございます。
 今、画面に映させていただきました、資料54-1-1によりまして御説明いたします。
 1枚めくりまして、まずISS構成要素と搭載物の安全性に係る責任と役割分担ということで、このスライドでは、NASAと日本の間の役割分担、それから、日本国内における文部科学省とJAXAの責任・役割分担について示しております。
 これは、NASAと日本国政府間の了解覚書(MOU)を踏まえて設定されているものです。
 まず、NASAとの間ですが、NASAの役割としては、国際宇宙ステーションの全体的な安全要求の設定及び日本が設定する安全要求が、全体的な要求の中に対して適合していることの確認。それから、日本が行う安全審査の支援、それから、その結果として、ISS全体及びISSの構成要素や搭載品が安全要件を満足していることの認証をNASAの役割として持っております。
 日本国内に目を転じますと、文部科学省とJAXAの間で役割分担がありまして、日本が提供する要素や搭載物に関する安全要求の設定をJAXAが行います。
 これは上の方にもありますが、NASAが設定する全体の安全要求に満足するように設定をいたしまして、それをNASAが確認するという形になっています。
 実際に、日本が提供する要素、構成要素とか搭載物に対する安全審査の活動そのものはJAXAが実施いたします。これは、そのプロセスの途中でNASAが確認を行うという形で支援を行っています。
 文部科学省の役割と言いますと、JAXAが実施した安全審査の結果を見て、安全要求を満足していることの認証を行うということが文科省の役割となっています。
 2頁に模式的に書いてありますけれども、宇宙ステーションを使う各局におきましては、政府間協定というものがありまして、日本国政府もこれを結んでおります。その横に、NASAと日本国政府の間では了解覚書というものがあって、ここで様々な責任分担が決められています。
 その中で、日本国政府から文部科学省が安全性の認証のための協力機関というふうに指定を受けていまして、安全審査を実施するJAXAから報告を受けて、これを認証するという形をとっています。
 実際の具体的な実施方法ですが、JAXAは、日本が提供する全ての要素や搭載物に対して、個別に安全審査を実施いたします。
 これに対しては基本指針が設定してありまして、本日の参考資料として2つ付けておりますけれども、そこにある基本指針と注意事項、そこに書かれている要求、これに対して適合性の確認を行うということになります。
 本日開催しています、宇宙開発利用部会の調査・安全小委員会は、その中におきまして、年に1回程度、JAXAが実施する安全審査のプロセスが適切であることについてのチェックを実施すると。
 そのやり方として、具体的な打上げ予定の構成要素、あるいは搭載物についての安全審査について、方法や結果等の妥当性を評価する。
 今回におきましては、テーマとしまして、DELIGHT(展開型軽量平面アンテナの軌道上実証)、この実験装置につきまして行われた安全審査というものを対象に、そのプロセスの妥当性を評価するということになります。
 ここで再び書いていますけれども、安全対策の評価のための基本指針というものが、そこに書かれている文書として、だいぶ昔の文書ですけれども、宇宙開発利用部会の決定事項として設定されておりまして、これに基づいて、立証対象の形で確認をしております。
 文部科学省としては、本日の結果をもって、日本が提供する要素及び搭載物の安全性を確認するプロセスそのものの認証を行うということで責任を果たすという形になっております。
 本日の議題の趣旨といたしましては、今説明したとおりでございます。木村先生、お返しします。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 これは年1回我々が行っている重要な任務でありますけれども、JAXAにおいて実施されている安全審査のプロセスを、あるexampleを基にして判定をしていく、確認をしていくということが、今回の任務であるということの確認になります。
 この件について、御質問とか御意見等ございましたら、いただければと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。
 これは定常的にやらせていただいていて、毎回我々の任務の分担の部分、これを確認いただいておるところですけれども、よろしいでしょうか。再確認いただいたということで。
 今回は、DELIGHTという搭載機器をexampleとして、JAXAにおいて実施されている安全審査のプロセスが適切かどうかということを判断するというものが我々の任務になります。
 特に御質問等がないようでしたら、いよいよ本題の方に入っていこうと思います。もちろん、DELIGHTそのものについての御質問等もあると思いますけれども、このような役割分担で進んでいくということを確認した上で、説明の方をお願いしたいと思います。
 今、説明があったDELIGHTを審査対象とした、JAXAの安全審査プロセスが適切であるかどうかということを確認するということで、御説明の方をJAXA有人宇宙技術部門有人システム安全・ミッション保証室の小林室長から概要の説明をお願いしたいと思います。小林室長、お願いいたします。
 
【小林室長(JAXA)】 ただいま御紹介にあずかりました、JAXAの有人システム安全・ミッション保証室の小林です。
 JAXAの安全審査に関わる今年度のプロセスチェックとして、DELIGHTと呼んでおりますが、この実験装置の安全審査結果や、この参考資料に載っている国の安全指針の適合性について説明いたします。
 DELIGHTは展開型の軽量平面アンテナを軌道上で技術実証するミッションです。
 資料ですけれど、資料54-1-2というところですが、これは本文と、あと付表の構成になります。付表は国の安全指針に対するDELIGHTの適合性を示す適合表ですけれど、ポイントは、この54-1-2の本文の方に全て含まれておりますので、説明は現在投影されている本文の方を使って行います。
 この目次のページになりますが、審議の目的や審査対象であるDELIGHTのシステム構成、また運用の方を御説明して、そこで説明を一旦止めまして、御質問をお受けしたいと思います。
 そのあと、DELIGHTの安全解析の結果、及び基本指針に対する適合性の結果について説明して、最後に結論をまとめます。次の頁をお願いします。
 繰り返しになりますが、JAXAによる有人安全審査プロセスの文部科学省による認証を維持するため、JAXAが実施したDELIGHTの安全審査の結果を示します。
 JAXAでは、こちらにあるとおり、フェーズを分けて、有人安全審査会と安全審査委員会を開催いたしまして、昨年の12月に全てのプロセスを完了いたしました。次をお願いします。
 JAXA有人宇宙技術部門という部門が有していますのが、有人安全審査会ですけれども、そこでDELIGHTの安全評価結果を審査いたしました。
 また、この有人安全審査会の上位の安全審査会として、JAXAの安全審査委員会がございます。こちらは、機構レベルの安全審査会となります。安全審査委員会にて、有人安全審査会の結果と、及び国の指針に対する適合性について確認いたしました。本資料では、これらの上記の結果について報告いたします。次をお願いします。
 DELIGHTのシステム説明となります。DELIGHTは、このHTV-X1号機に搭載されまして、将来の大型宇宙構造物構築のための技術実証を行うペイロードとなります。
 展開型の軽量パネルを展開しまして、展開の挙動や展開後の構造特性を計測することになります。
 また、平面アンテナを持っておりまして、地上からの電波を受けて、その受信レベルを計測し、もう一つ、太陽電池セル、次世代のタイプですけれども、これらの実証も実施することになっています。
 右上の絵は、このHTV-Xに搭載されたところですけれど、HTV-Xの進行方向前方に取り付けられます。打上げ時は、中央の絵にように畳まれた状態で打上がります。この右上の絵は展開したときのものになります。打上げやISSの安全という観点では、このパネルが畳まれた状態を維持する、不意に展開しないことが安全制御となります。
 そのため、合計8か所、真ん中の絵の中で丸印を打ってあるのですが、8か所にあるような1次保持解放機構によってパネルを構造的に保持するようになっています。この1次保持解放機構の基部には、フランジボルトアクチュエータというものがございまして、そこの中に入っている形状記憶合金、こちらの方を温めて、形状を変形させることによって、このボルトに引張力を与えます。このボルトの切り欠き部が破断して、拘束が解かれると、そういったものになります。80℃以上で作動するような設計になるものを使っています。
 この打上げから、ISS係留中を含めて、ISS近傍では誤展開しないようにインヒビットを設けておりまして、アクチュエータに不意に電源が入らないようになっております。次をお願いします。
 こちらはDELIGHTの装置構成になりますが、2つのパネルとアンテナ、太陽電池セル、バンパーからなります。パネルは下真ん中の絵にあるように、2列からなります。この2つのパネルは1列ずつコマンドで展開することになります。1列目のパネルは装置間の間にパネルが、板バネが入っていまして、バネ力で展開いたします。2列目は1列目のパネルの側面に沿ってモータで展開するようなものになっています。
 仮に何らかの影響で1列目が展開しない、もしくは展開が不十分な場合でも、2列目は独立に展開できるようなバックアップの展開モータも持っております。次をお願いします。
 こちらが運用フェーズの説明になりますが、打上げ分離、ロケットから分離いたしまして、ISSまで届き、ISS離脱して、それから遠方に至ってから、この展開実験は行います。
 今回の審査対象範囲としては、DELIGHTというペイロードは収納された状態を維持するということが安全の主眼となります。次をお願いします。
 審査体制・開発体制でございますが、真ん中の研究開発部門宇宙太陽光発電システム研究チーム、こちらの方が、DELIGHTの開発を行っている原局となります。
 それに対して、組織的にも独立しておる、私どもの有人システム安全・ミッション保証室が安全の評価をするという状態をつくっておりまして、これは日常的に行っておるわけですけれど、安全評価報告書の方の準備が整いましたら、有人安全審査会の方に行きまして、安全審査を行います。私がこの議長を行っております。
 有人安全審査会が終わったところで、NASAの方に、この審査資料、安全評価報告書の方は提出いたしまして審査を受けております。
 そのあと、安全審査委員会で機構レベルの安全審査を行うと。このようなプロセスになっております。2項としてはここまでだと思います。
 一旦ここで装置の説明等が終わりましたので、質問をお受けしたいと思います。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 装置の方の概要を説明いただいたということで、ここまでのところで御質問等いかがでしょうか。展開構造物の実験装置であるということと、それからHTV-Xの最初の実験ペイロードとして、これが今後の展開に非常に重要な役割を果たすと思われるのですけれども。熊崎委員、お願いいただけますでしょうか。
 
【熊崎委員】 横浜国立大学の熊崎でございます。お世話になっております。
 勘違いしているところもあるかもしれませんので教えていただきたいのですけれども、安全確保の考え方として、参考資料2において基本は人員の安全を第一に考えており、それに関わることをハザードとして考えると書かれています。このDELIGHTにおいて、どういった事象がハザードとして考えられているのでしょうか。あるいは、いわゆるユニークハザードということに該当するから、今回審査対象になったのでしょうか。
 
【小林室長(JAXA)】 どういったハザードがあるかは、次の3項以降でまた詳しく説明いたしますが、例えば、展開物が不意に開いてしまうと、HTV-X側の姿勢制御とかに影響を与えて、HTV-Xの姿勢制御を誤ったものにしたことによって、ISSに衝突してしまうとか、もしくは、例えば、展開物が何らかISSの構造物に接触するとか、そういったことが結局最終的には宇宙飛行士の生命にも影響しますので、ハザードと捉えています。
 
【熊崎委員】 分かりました。そうなると、標準ハザードとしては、損傷を想定されて今回の審査対象として取り上げられているという理解でよろしいでしょうか。
 
【小林室長(JAXA)】 今、私どもが説明いたしましたことは、確かに典型的なハザードのこと、こちらが持っているユニークなハザードについてちょっと説明したのですけれど、そのほか、これは電気が入るものですので、電磁放射がISSの機器に誤動作させないとか、構造的に破壊しないとか、そういったこともハザードとして、これ自身が構造破壊しないこともハザードとして捉えて確認しています。
 
【熊崎委員】 分かりました。ありがとうございました。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 ちょっとだけ私の方からも補足させていただくと、ここでの安全審査の対象としては、国際宇宙ステーションでの係留フェーズ、打上げから実験のところまでではなく、ステーション近傍での安全確保というところでの安全審査のプロセスを確認しましょうという、そういう役割分担になっております。厳密に言うと、打上げ時から、実験実施時まで、安全としては関連するのですけれども、ここでの任務分担としては、ステーション関連という、そこでのハザードについて議論します、というところが対象となっているということを、ちょっと付記させていただきます。ありがとうございます。
 
【熊崎委員】 ありがとうございました。
 
【木村主査】 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。御質問等ございますか。柿沼委員、お願いいたします。
 
【柿沼委員】 すみません、この機器について詳しくないので教えてほしいのですけども、これは通常は畳まれていて、必要なときだけ展開し、あとは畳まれているというような機器になるという理解でよろしいでしょうか。
 
【小林室長(JAXA)】 今回の実験装置としては、展開されたあとは、もうそのまま展開する状態を維持します。可逆的なものではないです。ISS係留中や、ISSから遠方にいたって実験が始まるまでは畳んだ状態を維持しまして、コマンドで展開させると、そういったことを考えています。
 
【柿沼委員】 分かりました。必要なときにちゃんと展開する、あるいは、それまでにはしっかり展開しないで保管されるというところが一番重要という理解でよろしいでしょうか。
 
【小林室長(JAXA)】 はい、そのとおりになります。
 
【柿沼委員】 分かりました。ありがとうございます。
 
【木村主査】 安全審査という意味では、このあと具体的なハザード対策等、抽出と対策が出てくると思いますので、小林室長の方、説明の方を続けていただいてもよろしいでしょうか。
 
【小林室長(JAXA)】 分かりました。
 それでは、スライドの8から説明を続けます。こちらからは、まず3項は安全解析の概要となります。
 ISS自体、歴史というか、20年以上の運用を行っておりますので、ISS共通の標準ハザードと言われているものと、あとはFTAを使いまして、この装置特有のハザード、ユニークハザードと呼んでおりますが、それぞれ識別しています。
 結果的には、標準ハザードといたしまして、この有害な電磁放射というものと、あとはモータを持っていますので、回転体の破片の飛散というものを識別しました。また、この装置特有のものとして、構造破壊や意図しないパネルの展開といったものが指定されております。
 なお、DELIGHT自身はHTV-Xの曝露側、外側に取り付けられます。HTV-X自体、宇宙飛行士の船外活動の計画がございませんので、船内特有のハザードや、宇宙飛行士に関連するハザード、直接宇宙飛行士に関連するようなハザードは識別されておりません。次をお願いします。
 それぞれ、どんな制御、どんな検証が行われたか、といったところをハザードごとに手短に説明していきます。
 まず、電磁適合性にしましては、ISSが設定しております、電磁適合性の要件に適合した設計とするということで、電磁適合性試験の方を実施いたしまして、問題ないことを確認いたしました。
 回転体関係では、非常に小型のモータですので、回転サイズ及び回転数がいずれもISSの規定値に満足しているということを確認しています。次をお願いします。
 こちらは構造破壊のハザードとなりますが、まず構造評価としては、収納状態、ISS係留して離脱するまでは、収納状態を維持しますので、この収納状態の構造評価がISS安全の対象となります。このパネルの保持解放機構の安全余裕が正であることを解析で確認したということと、あと振動試験も行っておりまして、構造の耐性を確認しております。
 また、3つ目のブレットにあるとおり、複数のカメラとか、アンテナとか、太陽電池セル、こういったガラスを含むようなものもあるわけですけれど、こういったものが打上げ荷重等で破損しないことを構造評価で安全余裕が正であること、また繰り返しになりますが、振動試験でも確認しております。次をお願いします。
 これは意図しないパネルの展開ハザードとなります。左下の絵ですけれど、これはちょっと小さくて分かりにくいかもしれません。こちらがISSに近づいていくときのHTV-Xのコンフィグレーションとなります。
 この係留自体は、HTV-Xの左の絵の丸印で囲んだところがHTV-Xですけれど、これの左下側がISSの方に向きまして、DELIGHTが載っている曝露部分は、ISS係留中は地球方向を向くようになります。
 なので、もし不意に右の図のようにパネルが不意に展開したとしても、地球方向にパネルは展開しますので、特にISSの構造物と接触することはありません。ただ、それはコンティンジェンシーですので、そういったことにならないように防止しております。
 保持解放機構自体が、打上げ荷重や熱環境への耐性を持つことを試験で確認したということと、装置の形状記憶合金に対するヒータではございませんが、コントローラー等の機器の保全のためにヒータをほかにも持っております。そういったほかのヒータがオン故障したとしても、形状記憶合金の方が作動するような温度にはならないということを確認しております。
 また、もう一つは電気的にはインヒビットを持っておりまして、電気故障やオペミスに対しても、3つのインヒビットで適切にアクチュエータに対する電源を切っていることを確認しています。
 右の絵がインヒビットのスケマとなりますが、左側のHTV-X側に1つのインヒビット、右側のDELIGHTの内部に2つのインヒビットがありまして、DELIGHT側のインヒビットを含めて、ステータスは全て地上でモニタできるようになっています。次をお願いします。
 4項は、国の指針に対する適合性について説明した部分となります。次をお願いします。
 基本的な考え方ですけれど、まずDELIGHTに対するハザードを識別したということと、安全確保の方法として(2)にあるような、ハザードの除去から、最小化することであったり、運用の制御であったりといったハザード制御の優先順位の方もこちらの指針にある考え方に沿って設定されていることを確認しております。次をお願いします。
 まず、有人活動の特殊性への配慮といった点では、そういった特性に配慮した構造設計や安全設計を行っていることを確認しております。
 放射線に対しても、放射線の影響が懸念されている部品については、トータルドーズやシングルイベントに対して、解析評価を行っておりまして、対策が講じられていることを確認しています。
 高真空や外部熱環境に対しても、熱真空試験によって確認しております。次をお願いします。
 また、誘導環境ですけれど、振動条件の方がHTV-X側から提示されておりまして、正の安全余裕を有するということと、振動試験で振動条件に耐性があることを検証しております。
 (ウ)の振動等ですけれど、機器から発生する電波が、他の機器や搭乗員に影響するレベルではないということを電磁適合性試験で確認いたしました。次をお願いします。
 まずは保全の関係です。軌道上環境の保全の、デブリに対する要求ですけれど、この保持解放機構の方ですが、展開したときに、何か脱落部品を発生することはないということを、そういった設計であることを確認しております。
 また、DELIGHT自身のミッションは、先ほどから説明しているとおり、ISSから離れてから実施しますので、特にISSに対するデブリというものも発生することがないようにしております。
 構造ですけれど、打上げや軌道上荷重に対する耐性がある設計をするということと、あとフラクチャーコントロールと呼んでいる破壊管理の方も行っております。次をお願いします。
 安全・開発保証でございますが、パネルの展開機構に対しては、独立した3つのインヒビットを設置しておりまして、誤展開を防止する設計としております。
 また、故障検知としては、3つのインヒビットを持っていることと、それのステータスモニタが可能だということを確認しております。次をお願いします。
 自律性の確保ですけれど、DELIGHTのインヒビット自体は、地上管制の有無に関わらず、インヒビットの状態を維持する設計であります。
 また、自動機能に対するオーバーライドですけれど、インヒビット自体は、自動で解除する機能を有しませんので適用外となります。
 品質保証でございますが、品質のエビデンスの方は、試験であったり、解析であったり、あとは図面等、そういったエビデンスの方の確認を通して、検証が適切に行われていること、またその品質記録が残っていることを確認しております。次をお願いします。
 誤操作の防止といった点については、先ほどからも繰り返し申し上げておる3つのインヒビットを設置しまして、1つのコマンドで複数のインヒビットが解除されないことも確認しております。次をお願いします。
 開発体制、安全確保の体制ですけれど、体制のところで御説明したとおり、開発部門と、あとはそこから独立した安全開発保証部門があって、その2者によって開発の方を行っているということ。
 あとはDELIGHTの開発・運用に携わる者たちに、教育や訓練がなされて、安全確保に係る事項の周知徹底が図られております。次をお願いします。
 こちらが結論となります。まず、有人安全審査会において、ハザードの識別や制御方法の設定、検証結果を審査しまして、安全解析が適切に実施されているということを確認いたしました。
 また、安全審査委員会において、有人安全審査会の審査結果及び国の指針に適合していることを確認しました。
 これによって、DELIGHTが安全要求を満足していると判断し、安全審査を完了いたしました。
 次の頁は、適用文書及び審査文書、あとは略語集となっております。付表-1は、適合立証対照表そのものになっております。
 説明は以上です。
 
【木村主査】 御説明ありがとうございます。
 詳しく説明いただきまして、さらに詳しい内容は付表の方に具体的な内容として記載されているということですね。御質問等はいかがでしょうか。まずこの案件について、いくつか固有なものもありますので、その辺で質問等があったら併せていただければと思いますが、いかがでしょうか。熊崎委員、お願いしてよろしいですか。手が挙がっていると思います。お願いいたします。
 
【熊崎委員】 御説明ありがとうございました。
 質問として2点ございます。今お見せいただいている資料の13頁から14頁のあたり、適合性評価結果、9枚中の2枚目ですかね。評価結果概要に、「回転体への巻き込まれ」、と書いてあります。今までの議論では「回転体の破片の飛散」が対象になっていたと思います。こちらと同じと考えてよいでしょうか。受ける印象が少し違うような気が致しますので、確認したいということが1点。
 もう1点は、誤展開した場合の問題点についてあげられていますが、開いていろいろな実験をすることがミッションかと思いますので、逆に開かなかったときにもミッション上の問題になろうかと思います。通常の手順で開かず強制的に展開する場合、人の関与があるのかどうか、そのときにハザードが生まれないのか、その場合、審査対象になるのかどうか、ということについて教えていただければと思います。以上です。
 
【小林室長(JAXA)】 御質問ありがとうございます。
 まず、1点目の回転体の巻き込みと書いているところですけれど、書き方が統一されていなくて申し訳ありません。回転体のハザードとしては、2つ考えています。「巻き込み」も「飛散」もどちらもあります。こちらものについて、対策を確認しているということで、そういったエネルギーを持っていないということと、あとはきちんと回転体自身もモータケースに封入されているということを確認しています。
 2点目の、ミッション、開かなかったときの対処として、人によるインターベーションがあるのか、といった点ですけれど、こちらのミッションの方は、ISS係留しているとか、ISSの近傍では行わないということが前提としてミッションが組まれておりまして、これはISSからも遠方になってから、このミッション、開くという対処を行います。
 そのため、船外活動をして人が開くとか、そういったことはありませんで、コマンドで展開。ただ、バックアップの手段を持つというようなことはしているようですが、全て地上からのコマンドで対処いたします。
 
【熊崎委員】 ありがとうございました。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 熊崎委員の御指摘は、ミッションを成立させるというものと、安全の対策を取るというものは、相反する部分も実はあるので、そこに対して非常に示唆的なコメントでした。
 今回の場合、ステーション近傍では絶対開かないようにするという方針なので、そこでは、人のインターフェースはないということで、今回のケースについてはよいかなと思います。ほかにいかがでしょうか。
 もし、ちょっと間が空くようでしたら、私の方から少し質問させてください。まず、全体としてハザードの識別、それから、それに対する議論として、網羅的にきちんとなされていて、プロセスそのものは非常に良いかなと思って聞いておりました。
 2点、この件に固有という感じがするのですけれども、質問させていただきたいことがありまして、一つは、先ほど飛散について、破片を出さないというところについて、回転体のところで議論されていたようですけれども、インヒビットが、これは破断を利用しているのですよね。これはざっと話だけを聞くと、破断に伴う破片等の発生というものは、これはどこかで抑えられているという理解でよろしいでしょうか。
 
【小林室長(JAXA)】 絵では分かりにくいかもしれませんが、スライドの5の真ん中の絵です。
 それぞれ1列目、2列目のパネルの展開図の一番右側、左端の方には、細い棒が立っているように見えると思うのですが、こちらがボルトの受け側になります。
 破断したボルトは、こちらの方に全て保持されている状態になりますので、破断によってデブリが生じないようになっております。
 
【木村主査】 なるほど、分かりました。
 これの閉空間で抑えられているという理解でよろしいですね。
 
【小林室長(JAXA)】 はい、そのとおりです。
 
【木村主査】 分かりました。
 もう一点は、これは実は非常に細かい議論になるのですけれども、3インヒビットを用意されていて、誤動作が同時に発生しないようにしているという、この説明はOKなのですけれども、ちょっと一抹気になりますのは、先ほど柿沼委員からのコメントの中でありましたけれども、これは非可逆な過程ですよね。インヒビットを破断によってシーケンシャルに外していくという過程なので、これは嵌めなおすことができないという意味では、シーケンシャルな過程になります。
 一般的に、3インヒビットと言ったときには、同時に発生する確率が低いので、3インヒビットでハザードをミティゲーションするという考え方になっているかと思うので、若干シーケンシャルに行われていることによって、事情は若干変わるかなと思うのです。
 その部分についての対策として、以前伺ったときに、モニタが適切にできているということと、運用上それが独立しているということを併せて担保されているという話だったと思うのですけど、その辺りの御説明を少しいただけますか。
 
【小林室長(JAXA)】 ありがとうございます。
 我々、安全側としては、このインヒビットが同時に3つともオンになってしまって、意図しないときに展開してしまうということを最悪状態として考えておるわけですけれど、それぞれのインヒビット自体は、独立に設置されておりまして、1つの故障、1つの誤コマンドによって、複数のインヒビットがオンになることがないようにしています。
 ただ、時間を何らか置いて、故障が進行していったケースのときには、主査がおっしゃるように、モニタがこれは地上でできておりまして、各インヒビットのオンオフステータスの方を地上でモニタできますので、仮にこのインヒビット1がオンになったとしても、電源自身は、アクチュエータに対する電源は切られていますが、地上では、これは何か変なときにオンになったということが分かりまして、その後の運用を検討することはできます。
 
【木村主査】 分かりました。
 そこのところは、若干通常の3インヒビットの考え方と異なるかなと思いましたので、そこも併せて、安全体制が取られていると判断できると思います。ありがとうございます。
 チャットの方で、神武委員から質問をいただいております。
 「ISS構成要素、搭載物が有するハザード種の数や特殊性、ユニークハザード、新規性等を総合的に勘案し、令和6年度はDELIGHTを審査対象とする」とありますが、総合的に勘案されたという点、もう少し詳しく説明してください。新規性という辺り、技術的成熟度について、成熟度が低いと認識されている箇所があるようであれば教えてください、ということです。これはいかがでしょうか。
 サンプルとして、このDELIGHTをピックアップされた理由ということですね。
 
【小林室長(JAXA)】 分かりました。
 ここ数年、ライフサイエンスの関連の実験ペイロードがプロジェクトの対象になっておりました。その前に、「きぼう」の曝露部で行われる実験を対象にしたものも行って、審査対象としておったわけですけれど、こちらの方を今回、展開物というものは、新規性があると思いますので、今までの審査対象のいろいろなペイロードの種類を勘案して、新規性を見て、こちらのペイロードの方は選択しています。
 技術成熟度といった点では、これは技術実証の安全という面では、非常に成熟された技術を使っておるわけですけれど、展開機構や新しい太陽電池セルとか、そういったところについては新しい技術となります。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 神武委員、よろしいでしょうか。これは今回、HTV-Xの曝露部での実験という意味では、非常にユニークであるのと、これから先おそらく、この件をきっかけに、こういった利用の形態が増えていく可能性はあって、そのときに、展開についての安全解析、これをサンプルとして我々が議論しておくということは非常に意味があるかなと思います。HTV-Xを活用した初めての軌道上実験という意味合いもあり、今後HTV-Xを活用した実験を考えていくうえでも、ここでの議論は意味があるかなと思います。よろしいですね。
 ほかに御意見はいかがでしょうか。よろしいですかね。
 今申し上げたように、これは今後活用されていく上でも、ここでの審査が正しく行われているかどうかということを、ここで判断しておくことは非常に意味があるかと思います。
 そうしましたら、こちらの説明資料についての説明でよいと思うので、ここからは、本日の審議結果について小委員会としてまとめに入る形でよろしいですね。小林室長からの説明は全て完了しておりますね。
 
【小林室長(JAXA)】 はい。
 
【木村主査】 それでは、本日の審査結果について、小委員会として、次回の宇宙開発利用部会に報告させていただこうと思います。
 利用部会において、最終的に決断いただく審議結果の案について、本日事務局の方で資料案を作っていますので、説明をお願いできますでしょうか。
 
【木元補佐(事務局)】 事務局でございます。
 今、画面の方にお示ししております、資料54-1-3、ここに、本日の調査検討結果を受けて、宇宙開発利用部会で報告させていただく調査審議結果の案と、そこで決定していただく調査審議結果の案というものを作っております。
 内容としては、構成としては、この目次にありますように、まず今回実施しました安全審査プロセスの評価の概要と、そのやり方についてと、結果という形で、参考資料として、利用部会の委員の皆様の名簿と、本日実施しております、調査・安全小委員会の委員皆様の名簿と、冒頭御説明いたしました、この議題の趣旨、それを示しました役割分担についての議論の資料を付けております。それから、付録として、今日、小林室長から御説明いただきました、実際の安全確認についての資料を付けるという形になっております。
 本文ですけれども、概要として本日実施していただきました、安全審査のプロセス評価と、それを受けて実施する宇宙開発利用部会での審議ということの中身をまとめたものだということを述べて、実際に調査審議の方法としては、2段階となることを示します。まずは、本日の調査・安全小委員会第54回で、内容について、JAXAからの説明をもとに調査検討いただいて、その結果として、皆さんに同意いただければ、このプロセスとして妥当であるという結論をもって、宇宙開発利用部会の方に持っていきます。
 宇宙開発利用部会では、その結果を受けて、調査審議を行って、同じような判断になれば、その通りの結果となります。
 ここでは、その結果として、JAXAが実施したDELIGHTに係る安全審査の方法や結果などについて、安全審査体制及びプロセス、安全解析及びそれへの対処の観点から調査審議した結果、JAXAが実施したDELIGHTに係る安全審査の方法や結果等は妥当であると評価する。
 それをもって、JAXAが実施している安全審査のプロセスや考え方は適切に機能していると判断する、という結論で報告をまとめようと考えております。
 以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 まず御同意いただけるかどうかの確認が、必要な気はしますけれども、今回特に異論をいただかなかったと思いますので、DELIGHTの安全審査に係るプロセス、これが適切に実施されている、ハザードの識別が適切になされ、それに対して適切に議論がなされているということ。
 それをもってして、この点をサンプルとした、JAXAで実施している安全審査のプロセス、これは妥当であるという判断を、この委員会として出したいというふうに思っております。この点については御異論ないでしょうか。大丈夫でしょうか。
 ありがとうございます。ここで資料54-1-3、これを利用部会の審議結果案として示したいと思っております。
 また、先ほど事務局から言及のあった、小委員会から利用部会への報告資料の書きぶりについて、若干修正等が必要な場合には、主査である私に御一任いただければと思いますが、そのような進め方でよろしいでしょうか。
 ありがとうございます。ここまで御議論いただきまして御異論ないということですので、先ほど説明したようなプロセスで、本日の審議結果を、次回、宇宙開発利用部会に報告することといたしたいと思います。
 これで、本日議事としては全て終了です。皆様ありがとうございます。
 続きまして、事務局から事務連絡がありましたら、お願いできますでしょうか。
 
【阿部企画官(事務局)】 事務局です。
 会議資料と議事録の公開について申し上げます。本日の会議資料は、文部科学省のホームページに既に掲載させていただいております。
 また、議事録について、委員の皆様の御確認をいただいた後、文部科学省のホームページに掲載させていただきます。
 事務連絡は以上です。
 また、今期第12期の委員の皆様の任期につきましては、今回が第12期としての調査・安全小委員会の最終会となります。引き続き、委員をお願いさせていただく方もおられますけれども、まずは、ここまでの小委員会運営への御協力に対する感謝の意を表しまして、大臣官房審議官の橋爪より、一言委員の皆様に御挨拶をさせていただければと思います。
 
【橋爪審議官】 大臣官房審議官で宇宙を担当しております橋爪でございます。
 木村主査はじめ、委員の皆様には、本日も活発な御議論をいただきましてありがとうございました。
 第12期の小委員会としては、最後の会合ということでございますので、一言御挨拶申し上げさせていただきます。
 まず、昨年度に引き続きまして、JAXAの安全審査プロセスについて妥当性を評価いただきまして、ありがとうございました。
 また第12期といたしましては、第11期から引き続きまして、イプシロンロケット6号機、さらにはH3ロケット試験機1号機につきまして、打上げ失敗に関する原因究明と、それから対策検討の活動に精力的に御参画をいただきました。この点についても、心より御礼を申し上げます。
 おかげさまをもちまして、H3ロケットについては、2号機でReturn to Flightを果たしまして、今のところ4号機まで連続で打上げ成功ということでございます。
 さらに実績を重ねるべく、来月の5号機打上げに向けて準備中というような状況でございます。
 一方、イプシロンロケットにつきましては、6号機の原因究明対策と、その結果をイプシロンSロケットの設計に反映するというところまではたどり着いてございますけれども、イプシロンSロケットの開発につきましては、まだなお困難に直面している状況でございます。
 JAXA、それからメーカーの皆様とともに、実証機打上げに向けて、引き続き、私どもといたしましても、全力で取り組んでまいりたいと考えております。
 改めまして、先生方にはお忙しい中、本小委員会の第12期の活動に御参画いただきまして、ありがとうございました。
 また、この小委員会自体は続いてまいりますので、引き続き御指導いただく先生方もおられると思いますし、その他の場面でもいろいろと御指導いただくことが多くあろうと思います。引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 簡単ではございますが、これで御礼の御挨拶とさせていただきます。ありがとうございます。
 
【木村主査】 橋爪審議官、どうもありがとうございました。
 それでは、本日はこれで終了とさせていただこうと思います。皆様御参加いただきましてありがとうございました。

―― 了 ――

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研究開発局宇宙開発利用課

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