宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会(第52回) 議事録

1.日時

令和5年10月26日(木曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. イプシロンSロケット2段モータ(E-21)地上燃焼試験調査状況について
  2. H3ロケット試験機1号機打上げ失敗の原因究明に係る報告書(案)について
  3. その他

4.出席者

委員

主査 木村 真一
主査代理 神武 直彦
専門委員 柿沼 志津子
臨時委員 笠原 次郎
専門委員 熊崎 美枝子
専門委員 辻村 厚
専門委員 中西 美和

文部科学省

研究開発局長 千原 由幸
大臣官房審議官(研究開発局担当) 永井 雅規
研究開発局宇宙開発利用課長 上田 光幸
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 上田 尚之
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 宇宙輸送技術部門 事業推進部長 佐藤 寿晃
 宇宙輸送技術部門 イプシロンロケットプロジェクト プロジェクトマネージャ 井元 隆行
 経営企画部 部長 川崎 一義

5.議事録

【木村主査】 それでは、定刻になりましたので、第52回宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会を開催いたします。今回は、H3ロケット試験機1号機の打上げ失敗に関する9回目の議論になります。さて、本日もこれまでと同様にオンラインでの開催となっております。委員の皆様におかれましては御多用のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。それでは、事務局から本日の会議に関する事務連絡の方をお願いいたします。
 
【竹上企画官】 ありがとうございます。事務局の宇宙開発利用課 企画官の竹上です。事務局から連絡いたします。本日は8名の所属委員のうち7名にご出席いただいております。次に、本日の資料は議事次第に記載のとおりです。オンライン状況につきまして音声がつながらない等の問題がございましたら、事務局へメール・電話等でご連絡ください。事務連絡は以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございました。H3ロケット試験機1号機の打上げ失敗の原因究明については、前回までのところで背後要因分析の結果と、それに基づく対策、この方向性について、また、原因究明の過程で識別されたH3ロケットの信頼性向上についての取組について、確認させていただきました。主要な論点については前回までで確認できたところですので、本日はいよいよ報告書の取りまとめを行いたいと思っております。また、前回JAXAから口頭で簡単に説明いただきました、イプシロンSロケット2段モータの地上燃焼試験における爆発事故の原因調査状況についても、本日はご報告いただけるということになっております。なお、本日は全て公開の議論となりますので、あらかじめお知らせしておきます。
 それでは、議題1つ目「イプシロンSロケット2段モータ(E-21)地上燃焼試験調査状況について」ということで、こちらの方を先に議論させていただこうと思います。イプシロンSロケット2段モータの能代実験場での爆発事故です。これは節目々々にご報告いただくというふうになっておりますが、その後の原因調査の状況についてご報告いただこうと思います。資料の説明をJAXA宇宙輸送技術部門 事業推進部の佐藤部長、並びにイプシロンロケットプロジェクトチームの井元プロジェクトマネージャー(PM)からよろしくお願いいたします。
 
【佐藤部長(JAXA)】 JAXAの佐藤でございます。本日もよろしくお願いいたします。いま木村主査の方からご紹介いただきましたとおり、7月のこの小委員会の方で途中経過ということで一度お話をさせていただきました。その後も原因調査を鋭意進めておりまして、本日そのアップデート情報をお話しさせていただきたいと思います。併せまして、それを踏まえた形で前回H3のSRB-3への水平展開といった状況についても継続調査という報告をさせていただきましたが、その点についても後ほど触れたいと思います。よろしくお願いいたします。では、最初の説明を井元の方から行いたいと思います。お願いします。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 イプシロンロケットプロジェクトチームの井元です。資料に基づいて説明いたします。まず、右下2頁目の目次になりまして、こちらは資料の全体像になります。はじめの方は前回7月末にご報告しておりますが、その頃からの再掲になります。特に3項以降の更新したところを中心に本日は説明いたします。
 6頁目の結果の丸6のところですが、7月のご報告以降、真空燃焼試験棟内外の飛散物の大部分を回収しておりますので、そちらを更新しております。
 9頁目は再掲になりますが、事象の説明になりますので簡単にリマインドを兼ねて説明いたします。まず、56.970秒手前辺りから圧力が変動しはじめて、5 msという非常に短い時間の間隔でゼロまで圧力が低下していると同時に推力は増加しているということ。それから丸3ですが、高速度カメラ画像では56.972秒まで正常で、その1 ms後の56.973秒の画像で黒煙が発生していると。その黒煙が発生しているところでもノズルの出口部は形状を保っているというものでございます。次の頁をお願いします。
 こちらはFTA、再掲になりますが今一度ご説明いたします。FTAの分析状況ということで、2段モータの爆発に関しましてFTAを展開して、「モータケースの破壊」と「ノズル破壊・脱落」の2要因に分解いたしまして、製造・検査データ、それから試験データ、回収品の分析も含みますが、そういったもの全てについて詳細な分析を実施しているところでございます。現時点におきましては、何らかの要因でモータケースに熱的に過大な負荷が掛かって、構造部材が強度を維持するための許容温度を超えたということで破壊に至ったというふうに推定しております。その要因としましては、推進薬の燃焼異常、それからインシュレーションの断熱不良が残っているところであります。その右下にモータの概要を示しておりまして、一番外側にモータケースがあって、ピンク色が推進薬になります。モータケースと推進薬の間にインシュレーション(断熱材)が入っておりまして、右側にノズル、それから左側にイグナイタという点火器、こういった部品で構成されているものでございます。次の頁をお願いいたします。
 FTAですが、前回から更新した部分を赤字で示しておりまして、まず下の方。ノズルの設計不良について△-ということで前回まだ残っておりましたが、設計の詳細確認、それから試験データの分析から、こちらは要因ではないということで×というふうに判断しております。それから上から3行目のところ。モータケースの破壊に対しまして、まだ原因として残っている二つのものが推進薬、それからインシュレーションの異常の二つです。こちらにつきましては3.4項で詳細にご説明いたします。
 そこで12頁目ですが、今一度試験データを全て分析した中からの特記事項を示しております。まず丸1ですが、点火後20秒辺りから燃焼圧力が予測圧力から高い側に乖離していること。それから丸2、点火後33秒辺りから燃焼圧力の上昇幅が拡大していることを確認しております。それから、点火後57秒辺りでモータが爆発しますが、その加速度・ひずみともモータケースの前方側より後方側の方が早く変動しているということを確認しております。それから丸4ですが、点火後57秒辺りで、先ほどご説明したとおりですが、燃焼圧力が低下して推力が上昇すると。異常発生時の燃焼圧力は最大使用圧力以下ということで、設計圧力よりも低い状態で破壊しているという形になります。それから、光学画像も全て確認した結果の特記点といたしまして丸5になりますが、異常発生直後にモータケース、あるいはノズルよりも下側が発光しているということを確認しております。それから、丸6といたしまして異常発生直後にモータケースとみられる破片が飛散して、ノズルはその後飛散しているということを確認しております。それから、回収品を分析しておりまして、丸7ですがモータケースのCFRPの破片を集めてきて、モータケースの後方側の口元というノズルと結合する部材の結合部辺りの破片から、モータケースの下側から破断しているということを確認しております。それから、モータケース後部側も断熱材の破片を拾ってきておりまして、全部拾っているわけではないのですがかなりの部分を回収しておりまして、板厚が予測より小さいということを確認しております。これが何を示しているかということなのですが、熱負荷がやはり設計値・予測よりも大きかったというふうに分析しております。それから最後に丸9ですが、イグナイタ(点火器)の構成品でありますイグブースタというものが、後ほど写真をご覧いただけますが、先端部が欠損しているということを確認しております。次の頁をお願いします。
 こちらは上側が燃焼圧力になりまして、先ほど御説明した丸1の20秒辺りで、点線が予測値になりますが、そこから少しずつ乖離しはじめて、それから33秒過ぎ辺りから乖離の拡大幅が広がると。その下は推力ですが、異常発生時点で推力が上昇しているというものでございます。次の頁をお願いします。
 こちらが光学データになりまして、上の左のところがまだ正常の部分でして、その1コマ後をその右に示しております。こちらでモータケースの下側から発光しているということが分かります。その後、左下に移りましてモータケースとみられる破片が散乱していると。その後、ノズルの部材が飛散しているということを確認しております。次の頁をお願いします。
 こちらは先ほど丸9で示したところですが、右下のモータの先端側に付いているのがイグナイタでして、こちらをまず着火させて、それから主推進薬に着火して燃焼させるというものなのですが、このイグナイタも大きく二つの部品から構成されておりまして、イグケースというものが点火器の主な推進薬になります。その前にイグブースタというのがありまして、このイグブースタをまず着火して、その後イグケースに入っております推進薬を点火させて、さらに、主推進薬を点火させて推力が発生するというものですが、そのイグナイタの構成品でありますイグブースタの金属部材なのですが、その先端部が欠損しているということを確認しております。左に写真を載せております。この欠損部は今現時点見つかっていないというものでございます。次の頁をお願いします。
 こういった状況から、どこからまず破壊したのかということで、FTAを次の頁に展開しておりますが、まず結論から述べております。破壊起点部位の特定のためにモータケース、それからケースとノズルの結合部、それからノズル、こういった3カ所に分解してFTAを展開した結果、結論からいいますとモータケースの後方ドームと呼ばれるところ、右下に構成を示しておりまして、左が前方になりまして、右がノズル、それから後方部になりまして、この後方のところが破壊の起点であるというふうに特定しております。次の頁をお願いいたします。
 こちらにFTAを示しておりまして、詳細の説明は割愛いたしますが、試験データから全て後方ドームが一番先に反応しているということ。それから、ノズルはデータ、それから光学から要因ではないということを確認しておりまして、後方ドームとすれば、燃焼圧力が低下して推力が増加すると。つまり燃焼ガスが噴出してこのような事象になったということと整合するということで、モータケースの後方ドームが破壊の起点であるというふうに特定しております。次の頁をお願いいたします。
 それから、3.4項 原因の検討になります。ではなぜモータケースの後方ドームが破壊したかというところですが、この後方ドームが破壊起点であるということを基に推進薬の損傷、それからインシュレーションの損傷をトップ事象といたしまして、詳細FTAを展開しております。その分析した結果、結論からいいますと、推進薬、インシュレーションの製造不良、こちらの材料ですとか製造といったところは原因ではないというふうに特定しておりまして、原因を以下の二つに絞り込んでおります。まず丸1ですが、モータケースと推進薬の隙間があります。左下の図なのですが、ピンク色が推進薬で、その外側にモータケースがあるのですが、その間に隙間がありまして、その隙間が輸送時の振動によりまして接触している可能性があるということで、仮に接触していたとすると、その荷重で推進薬かインシュレーションが損傷する可能性があるということで、まず一つこの原因が考えられます。
 丸2ですが、右の図になりますけれども、点火器が左側にありまして、その点火器を構成するイグブースタがありまして、その一部が、こちらは金属溶融物になるのですが、こちらが飛散して推進薬かインシュレーションが損傷したと。この二つのケースに今絞り込んでおります。
 この絞り込んだ原因に基づいて破壊シナリオを検討しておりまして、まずシナリオ丸1ということで、繰り返しになりますが、モータの輸送時に、これは縦置きでノズルを下側にして輸送しているのですが、これは断定したような書き方になっていますが、接触した可能性があるということで、接触して損傷すると。それから、その損傷部分の推進薬に着火して、熱負荷が増加して、インシュレーションの燃焼が進行して拡大すると。それから、モータケースが許容温度を超過して破壊に至ると。こういうシナリオがまず1つ考えられます。
 それから2つ目になりますが、イグブースタの一部が溶損・飛散して損傷すると。その後のシナリオは丸1と同じなのですが、インシュレーションか推進薬を損傷させて、その損傷部分の推進薬に着火して熱負荷が増大するといったようなシナリオ。この二つに絞っております。次の頁をお願いいたします。
 こちらが推進薬の損傷をトップ事象としたFTAになりまして、まず、燃焼前の製造段階が原因であるということと、燃焼中の損傷ということと二つに分けております。燃焼前の製造段階での製造不良につきましては、これは全てデータを確認いたしまして、材料データも含めて要因ではないというふうに判断しております。それから、製造した後は輸送して能代実験場で組み立てて試験をするのですが、その輸送以降の組み立て作業も全て確認いたしまして、一点を除いて要因ではないと、その一点というのは先ほど説明いたしました移送時の振動で接触する可能性があるということで、そこがまだ潰し切れていないというものでございます。
 それから、燃焼中の損傷につきましては着火時、それから定常燃焼中。こちらは設計データ、それから試験データから要因ではないというふうに判断しております。最後に、内部構造物が飛んできて推進薬を損傷させるというケースになりまして、そちらも二つに分けておりまして、先ほどご説明した大きい方のイグケースの破損につきましては、こちらも試験後に拾ってきておりまして、これはもう要因ではないと。それから、イグブースタも先ほどご説明したところですがこちらの先端部が欠損しているということで、こちらが溶融して何らかの悪さをした可能性があるということで、こちらもまだ消し切れていないものでございます。次の頁をお願いします。
 こちらはインシュレーション。同じようなFTAになっておりますが、製造段階のものにつきましては、その材料データも含めて製造に異常はないということで原因ではないと。組み立てのところは先ほどご説明したとおりであります。それから、燃焼中の損傷につきましても、着火時、それから定常燃焼中、これは両方とも要因ではないと。このインシュレーションにつきましては、着火時のところは追加データも取得しておりまして、設計時に使用しているデータと同等であるということを確認して要因ではないというふうに判断しております。
 それから、内部構造物の飛散による損傷ということで、こちらも先ほどと同じようにイグブースタの損傷。こちらはまだ原因を潰し切れていないものでございます。ここまでが現状の原因調査状況になります。
 こちらは結論になりまして、今後の計画ということで、今二つの原因に絞り込んでおりますが、この二つに対しまして更に追加検証、解析、それから試験を実施して原因を特定いたします。この原因調査と並行いたしまして、対策も今考えているところですが、そういった検討。それから、3段モータへの水平展開も検討いたしまして、さらに、2段モータの再度の地上燃焼試験を実施することで検証するということを考えておりまして、その計画を設定いたします。以上です。
 
【佐藤部長(JAXA)】 続きまして、最後の頁になりますが水平展開の状況という形でSRB-3に対する評価を追記してございます。前回7月にご報告させていただいた時に、SRB-3につきましては、材料の一部である推進薬のバインダ、あるいはインシュレーションそのもの、これらが共通であることを踏まえて、基本的に設計が大きく違うので問題ないということでしたが、影響評価を継続することとしておりました。先ほど井元の方から説明しましたとおり、原因調査の進捗によって材料には異常がないということが確認できたということで、まずこの点に関してのSRB-3の懸念はないと評価しております。なお、2号機用の準備もしてございますが、この2号機用のSRB-3につきましては、万全を期すために推進薬異常等の残る要因に関して製造・検査データの再確認をいたしました。この点に関しましても懸念はないというふうにまず評価いたしました。
 先ほど説明のあった中で原因が二つに絞り込まれたということを受けまして、それぞれに対する影響評価も実施いたしました。下に表で整理してございますが、まず1点目のモータケースと推進薬の隙間が小さいために輸送時等の振動による接触荷重で損傷したと。こういう一つのシナリオにつきましては、モータケースと推進薬の隙間の形状、この辺はモータごとに設計されます。このSRB-A、SRB-3につきましてはイプシロンの2段(E-21)の隙間形状と設計が大きく異なるというものでございます。この形状の違い、あるいは輸送形態もSRB-A、SRB-3は横置きで運ぶというところもございまして、隙間の接触は発生しないということを解析で今回確認をいたしました。
 また、実績といたしまして過去の地上燃焼試験、SRB-Aですと14回、SRB-3が3回ですが、これを通じまして試験後の供試体確認を含めてインシュレーションが正常に機能しているということを検証したということ。それから、フライトでの実績ということでSRB-Aが100本以上、SRB-3が1号機の2本。これも良好に完了しているということも併せまして、SRB-A、SRB-3に懸念事項はないというふうに評価してございます。
 2点目のイグブースタの一部が飛散して損傷したということに対しましては、SRB-AとSRB-3に使ってございますイグブースタはE21と同一仕様ではございます。ただ、そのイグブースタから先、主モータに点火するためのイグナイタという塊の部分の仕様が大きく異なってございます。一方、SRB-AとSRB3のイグナイタはほぼ同一仕様というところでございます。このイグナイタ設計が大きく違うという仕様の違いによりまして、イグブースタそのものへの加熱量も大きく異なってきますが、解析によってSRB-A、SRB-3のイグブースタについては溶融しないということを今回確認してございます。
 また、実績の方ですが、これも先ほどの話と同じで地上燃焼試験でのイグブースタの溶損・欠損の確認、それからフライトの実績、こういったことを踏まえまして問題はないというふうに評価をいたしました。説明は以上になります。よろしくお願いいたします。
 
【木村主査】 ご説明ありがとうございました。そうしましたら、御質問、御意見等を受けたいと思いますが、いかがでしょうか。ご質問ある方はいつものように挙手にてお願いできればと思うのですが。笠原委員、お願いいたします。
 
【笠原委員】 ありがとうございます。御説明を本当にどうもありがとうございます。詳しく非常に適正にご調査されてまとまっているというような印象を受けております。早速なのですが質問は、13頁目の圧力と主推力の履歴のところを見ておりまして、原因として今推定されているのが推薬とインシュレーションという二つの物質だと思うのですが、そこが仮に何か痛んだとして、こういう圧力や主推力の上昇・変化とどういうふうにつながるのかというのが、少しイメージがつきにくくもあるのですが、要するに今日の御説明では一部分が欠けて熱が伝わりやすくなったというふうな印象を受けたのですが、この燃焼圧力や主推力の上昇というと、やはり燃焼する面積といいますか燃料の使うスピードが上がらないとこういうふうな圧力上昇や推力上昇につながらないのではないかというふうな印象を受けたものですので、そこの関係性ですね、つまり損傷とその結果なぜ推力や圧力の上昇につながっているのかというのが結び付かなくて質問させていただきますが、よろしいでしょうか。以上です。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 先生の御推察のとおりでありまして、なぜこの燃焼圧力と推力が上がっているかというところになりますが、設計よりも燃焼面積が広がらないとこういう事象につながらないというものであります。そうしたときに今最も確からしいと考えておりますのは、先ほどご説明したモータケースの後部ドームの隙間です。そちらに推進薬の方にもインシュレーションを付けておりまして、そこのインシュレーションが何らかの要因で損傷して燃焼面積が拡大するというのが最も確からしいであろうと。それが20秒近辺から何らかのものが発生して、その後33秒以降その燃焼面積がぐっと拡大したというふうなところを今推定しているところでございます。
 
【笠原委員】 ありがとうございます。つまり、最初は少し傷が付いても、そこからインシュレーションがバーッと剥がれて面積が拡大してということもあり得るというような印象を持ちました。少し納得しましたので、どうもご説明ありがとうございます。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】  ありがとうございます。最初は少し損傷したと。そこからまた熱が流れますので、熱が流れることによって面積が、15秒弱ぐらいだと思うのですが、そういったものの中で後部のインシュレーションが更に焼損が拡大していくと。そういったようなことを推定しております。
 
【笠原委員】 よく分かりました。どうもありがとうございます。
 
【木村主査】 熊崎委員、お願いいたします。
 
【熊崎委員】 非常に丁寧にご説明くださりありがとうございます。今の笠原先生への回答で充当するのかもしれませんが質問させていただきます。破壊起点の場所がモータケースの後方だということを特定されて、その後でFTAを展開されているわけですが、その際に、この特定した後の展開でのトップ事象が、インシュレーション損傷と推進薬損傷を起点として展開されています。ですが、11頁目の方ではインシュレーションの断熱不良と推進薬の燃焼異常が未解決の項目であるというような御説明になっています。インシュレーション損傷=インシュレーションの断熱不良だというのは推察できるのですが、推進薬損傷とは推進薬の異常燃焼という意味でしょうか。推進薬の損傷が推進役の異常燃焼につながると今のところお考えになっていて、損傷の他に異常燃焼が起きた原因は潰されているということでよろしいでしょうか?
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 まず、先ほどのその燃焼圧力が上昇したということに関しては、何らか推進薬の燃焼面積が拡大しないとこのような事象は発生しないというものでございまして、その推進薬がどこかで異常燃焼しているということを考えています。その原因といたしまして、先ほど一つの例といたしましてそのインシュレーション、こちらが考えやすい例として話しましたが、もう一つ、推進薬に例えばですがクラックみたいなところが発生して燃焼面積が拡大するといったようなところも現時点ではまだこの二つの要因に基づく推定としましては消し切れていないというところでありまして、そこについては今後の原因究明の中で要因としては潰していくというようなことを今考えています。
【熊崎委員】 ありがとうございます。例えば推進薬の中がポーラスになっているといった形で表面積が広がっている可能性もあろうかと思います。このような可能性は、FTAにある製造上の確認はできている、という記載、つまり推進薬の製造・検査が良好だということにより否定されているという理解でよろしいですか?
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 おっしゃるとおりです。その製造不良に基づく原因というのは排除しております。
 
【熊崎委員】 分かりました。ありがとうございました。
 
【木村主査】 ありがとうございます。他はいかがでしょうか。神武委員、お願いいたします。
 
【神武主査代理】 どうもありがとうございます。輸送時の振動による荷重でというところですが、輸送時の振動というのは今までそれに関するデータをセンサーで取り続けていらっしゃるのか、取り続けていないとするとそのデータが今は無いわけですので、もう一度振動を掛けることによって再現するかとか、そういう辺りを今後追加検討、そして試験を行うということでしょうか? 今後の計画という辺りをもう少し教えていただければと思います。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 まず、今回の能代への輸送では、輸送コンテナの中に加速度計を入れて計測しております。そこで最大で大体2 G程度の加速度が掛かっているというデータが取得できておりますので、そういったもので仮にここが接触した場合にどのような応力になるのか、あるいは擦れるみたいな現象に対してインシュレーションがどうなるのかといったようなところを解析若しくは試験で確認していくという予定でございます。
 
【神武主査代理】 分かりました。そうしますと、今までの別の同じ物に対する振動というのはどれだけ今まで掛かっていたかというところもデータとしては有るわけですね?
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい。これ以外にも強化型ですね、この前の6号機のフライト品、それからその前の燃焼試験でも能代に輸送しておりますので、そういったデータは取得しているものがございます。
 
【神武主査代理】 分かりました。そうしましたら、その辺りのデータからなぜ今回その結果に至ったかというところをこれから追加確認されるという理解ですが、そのとおりでよろしいでしょうか。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい。そのとおりです。
 
【神武主査代理】 ありがとうございます。
 
【木村主査】 ありがとうございます。他にもしなければ、私から2つだけ質問させてください。今回二つの原因にある程度絞り込まれたということで、かなり検討されて進められたのだなと思って感心していました。御尽力に敬意を表したいと思います。そのときに、二つの原因それぞれについて少し気になるところがあります。私の不勉強で申し訳ないですが、まずイグブースタの方は今回固有のものなのでしょうか、それともある程度一般的なものなのでしょうか? それがまず1点目の質問です。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 まず、このイグブースタそのものはSRB-A、SRB-3、それから強化型6号機までのイグブースタ、それから3段モータと共通で使用しているものであります。
 
【木村主査】 分かりました。ここには何か新規の要素があるというわけではないということですね?
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 そうですね。これそのものには新規の要素はなくて、その外側のイグケースというメインの点火器はそれぞれ設計が異なるというものであります。
 
【木村主査】 なので、環境的に異なった状態で起動されるということでしょうか。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい。熱入力とかも全く異なるものであります。
 
【木村主査】 分かりました。どこが怪しいというふうに考えているかということも含めて理解できました。もう一点は、先ほどのお話でモータケースとの隙間量といいますか余裕について、これは個別の事象になりますというお話をされていました。それぞれ安全を見て設計をされているのだろうと思うのですが、ここがもし問題になるとすると、設計の手法とか、そこで用いるべきモデルとかパラメータとか、その辺りの見直しというのはむしろ必要になるかという印象を受けたのですが、これはそういう理解でよろしいでしょうか? つまり、これまでの実績のある形態でこれくらいであるというのに対して、それを検証、設計していくモデルと、ここでは用いられているモデルというものがもし同じであるならば、そこは同じように見直しが必要ではないかという、そういう疑問です。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 まず、当たるか当たらないかというところで大きく一つ分かれ目が出ると思うのですが、そもそも当たらない設計にするという方法があります。もう一つは、当たっても応力が分散されて、推進薬あるいはインシュレーションの破壊する応力よりも十分小さいものにする。そういう二つの方法があるかと思います。この可能性については解析と試験できっちり確認していきたいと思っています。
 
【木村主査】 分かりました。ありがとうございます。ここの部分はおそらく個別にそれぞれ設計が異なってくるので、包括的に原因を考えるとすると、それらの根っこにあるモデルみたいなものを押さえていくというのは非常に重要かというふうに思いまして、今のような質問させていただきました。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 おっしゃるとおりです。
 
【木村主査】 ありがとうございます。そうしましたら、御質問等他はよろしいでしょうか? 笠原委員、お願いいたします。
 
【笠原委員】 今の木村主査の御質問に関係して一点だけ質問させてください。今のイグブースタのところなのですが、イグナイタというのはイグケース、イグナイタ主装薬、イグブースタの三つでできているというふうに理解しました。もし正常に作動しますと、このイグナイタ主装薬というのがイグケースの右端の穴から放出されて、高温のガスのようなものが放出されて点火に至って、正常であればイグケースやイグブースタというのは現状おそらく金属だというふうに私が見たところ感じますが、全くその形状が変わらずロケット全体の燃焼終了までこの形状は保たれるというのが正常な状態で、今回欠損部というのはそうならなかったというふうに理解してもよろしいでしょうか。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 まず、イグケースにつきましては複合材でできております。イグブースタが金属材料なのですが、先生のおっしゃるとおりでありまして、基本的にそのイグケース、イグブースタというのは溶損なり何なりせずに残存するのが設計思想でありまして、実際のところイグケースについては、他のモータになりますが例えば3段モータとかは外側は特段損傷をうけていないと。今回回収したものも、爆発した後の燃焼というものがあったのでなかなか判断は難しいのですが、その外側については正常に保っているであろうと。これが設計結果でもありますし、通常の状態になります。それから、イグブースタについても本来であれば溶損なり欠損すべきでないというものでございます。
 
【笠原委員】 ありがとうございました。よく理解できました。ご丁寧な説明を本当にどうもありがとうございました。
 
【木村主査】 ありがとうございます。他はよろしいですか? 大丈夫ですかね。ここまでの検討並びに調査等大変熱心にやっていただいて、改めて敬意を表したいと思います。どうもお疲れ様でございます。ありがとうございます。そうしましたら、この議題はここまでということで、次に移りたいと思います。
 次の議題は、「H3ロケット試験機1号機打上げ失敗の原因究明に係る報告書(案)について」です。原因究明についての議題ですが、前回までの8回の議論で三つの推定故障シナリオの抽出と対策の設定、それから背後要因の識別と対策の策定、さらには信頼性向上のための取組といった一連の議論を進めてまいりました。小委員会としても、これまでの確認を進めてきた内容、それから、今後に向けた留意事項というのを含めて、本日報告書を取りまとめたいと考えております。実際、本日に至るまでに私を含めた委員の皆様は、事務局を通じて、報告書の取りまとめに向けて意見交換を何度もさせていただきました。その内容も含めて事務局で報告書の文案という形でまとめていただいております。これまでの皆さんの御意見を全て盛り込んだ形でできているかと思いますので、事務局の方から説明をお願いできますでしょうか。
 
【竹上企画官】 それでは、事務局より今画面上に出ています資料52-2-1に沿って簡単にご説明させていただければと思います。まず目次でございます。1.調査審議の経緯、そして2.審議の概要ということで原因究明作業の流れ、そして直接要因対策及び水平展開、背後要因及び対策、信頼性向上の取組。ここまでが原因究明の内容です。加えて(6)今後の対策に向けた留意事項。そしてまとめという形の構成を取らせていただいております。
 続きまして、1頁目でございます。いま木村主査からご案内ありましたように、委員の皆様とは既に本文に関する意見交換をさせていただいておりますが、かいつまんでご説明したいと思います。1.調査審議の経緯でございます。H3ロケット試験機1号機が3月7日に打上げが失敗したということ。その後8日、宇宙開発利用に係る調査・安全有識者会合、まだ小委員会は設置されておりませんでしたのでその時は有識者会合でしたが、そこで調査検討を開始し、その後計9回にわたって調査検討を実施したということ。そして、最終的にJAXAから提案された直接要因及び背後要因並びに要因の対策の妥当性について小委員会として確認し、検討の網羅性やH3ロケットの信頼性向上の取組についてJAXAと委員との意見交換も通じて確認するに至ったということ。また、宇宙開発利用部会においても適時に原因調査状況報告を受けたと記載しております。その下に小委員会の9回の会合の開催状況の要点をまとめさせていただいているところでございます。
 2頁目、調査審議の概要でございます。ここでは、小委員会での調査検討を通じて整理されたJAXAの原因究明結果及び対策内容の要約を、(1)~(5)についてまとめているということを記載しています。詳細については、今日説明しませんが、別添のH3ロケット試験機1号機打上げ失敗の原因究明に係るJAXAの報告書をご参照ください。イプシロン6号機の原因究明報告書と同様の作りとさせていただいていますので、図表等はこちらを参照いただければと思います。加えて、本文に戻りまして今後の取組において反映又は留意すべき委員からの指摘事項を(6)にまとめていると記載しております。
 まず、(1)原因究明作業の流れでございます。ここは詳しめに振り返りの説明をさせていただければと思います。H3ロケット試験機1号機第2段エンジンが着火しなかったことによって軌道に投入できないと判断されたと。これについてフライトデータに基づく事象把握を行った結果、第2段エンジンが着火指示を正常に受信した直後、2系統あるPSC2(2段推進系コントローラ)がA系、B系ともに電源異常を検知し、下流機器への電源供給を遮断したことがまず明らかとなりました。その後、電源遮断に対するFTAを実施していただきまして、発生要因を「過電流誤検知」「消費電流過大」「PNP系統の下流機器の過電流」「RCS系統の下流機器の短絡又は地絡」「電圧過大」この五つに順次絞り込みを行っていただきまして、発生要因を「PSC2から電源供給している下流機器(PNP系統)の過電流」に特定したということを記載しています。なお、原因究明の過程において過電流が生じたことは実事象であったと評価し、H3ロケットのエンジン駆動電源供給系統は採用した並列冗長設計の考え方に基づく設計意図どおりに作動していたと結論付けたというところも重要ですので、追記させていただいております。
 次のプロセスですが、過電流発生の詳細要因を、H-IIAロケット共通要因とH3ロケット固有要因に識別し、共通要因に係る故障シナリオをまず18個抽出していただきまして、これを最初9個にまで絞り込みまして、その後順次絞り込みを行い6個、最終的には大きく分類して2つのシナリオになっていますが、これを最終的に抽出したということ。また、H3ロケットの固有要因に係る故障シナリオについては当初2個を抽出しまして、最終的に1つ。結果として合計3つのシナリオを最終的に抽出していただきまして、加えて、こちらも今回重要でしたが、シナリオ等の検討の網羅性に関する確認作業を進め、これらの検討に漏れがないと評価したということも追記させていただいております。
 次のポツ、抽出した故障シナリオのいずれかが直接要因となり、エキサイタまたはPSC2が損傷することで第2段エンジンの不着火事象が発生したと評価した。その上で全てのシナリオに対策を行うことで再発を防止することが妥当であると結論付けたということ。
 最後のポツですが、3つの故障シナリオについて背後要因を識別するとともに、背後要因から導かれる対策を示したということ。加えて、打上げ失敗の直接的な要因ではないものの、原因究明活動を進める中で明らかとなったH3ロケットの信頼性向上に資する改善点を抽出したと。以上、これまでの調査審議の流れの要点をまとめさせていただいております。
 (2)直接要因でございます。直接要因としては3つの故障シナリオを最終的に抽出したということで、シナリオⅰはエキサイタ内部で軽微な短絡があり、着火信号後に完全に短絡したというシナリオでございます。シナリオの詳細はその下に記載しております。説明は割愛します。また、次の頁の括弧内になぜこのシナリオの可能性が残るかということも今回付記させていただいております。同じように2つ目のシナリオⅱは、エキサイタへの通電で過電流状態が発生したということ。また、シナリオⅲ、PSC2・A系内部での過電流、その後B系への伝播。これのみH3ロケット固有要因でございます。これら3つのシナリオも記載しています。
 最後のポツです。検討の網羅性を確認しながら、それぞれの故障シナリオについて様々な条件で再現試験等を実施した。その結果、故障発生のメカニズムが部分的にではあるが再現しており、このため、これらのシナリオのいずれかが直接要因となり、エキサイタ又はPSC2が損傷することにより第2段エンジンの不着火事象が発生したと結論付けたという、まとめを記載しております。
 続きまして、(3)直接要因対策及び水平展開でございます。まず丸1、試験機2号機以降への是正対策ということでございます。ⅰでございますが「エキサイタ内部で軽微な短絡、着火信号後に完全に短絡」のシナリオに対しては、エキサイタ内部の電気部品の絶縁強化及びX線CT検査強化を実施ということ。2つ目のシナリオⅱに対しては、トランジスタに印加される電圧が定格内となるように部品選別を実施。シナリオⅲに対しては、PSC2のA系、B系双方の低電圧ダイオードを削除ということ。また、追記事項として対策の妥当性の最終確認として上述の各種対策を施した機器を組み合わせ、2段エンジンの着火が可能であることを確認するためのシステム検証試験を再打上げまでに実施するということも付記させていただいております。
 丸2、H-IIAロケットへの水平展開でございますが、共通要因に関する発生可能性を否定できない故障シナリオ全てへの対策を設定することで、H-IIAロケットは懸念が排除されると評価したと。4回目の小委員会の評価結果を記載させていただいております。これは47号機、無事打上げ成功に至りました。
 (4)背後要因及び対策でございます。まず丸1、背後要因ですが、3つの故障シナリオに対してなぜなぜ分析を実施した結果、背後要因を識別したということで、1つ目のシナリオに対しては、H-IIロケット以来の実績を重視したことや、製造後の運用段階で状態が変わらないと考えたため、製造・検査や設計に対する対策を行うことがなかったということ。シナリオⅱについては、基本的な設計及び製造工程がH-IIロケット以前に確立され運用し続けている電気機器をH3ロケットに適用する際に、部品適合性評価に不足がないかの確認がなかったということ。シナリオⅲについては、システム異常時の挙動において起こり得る事象に対し、下流機器を保護する目的で設置している部品が耐性を有するかの確認が完全ではなかったということ。
 また、追記のシナリオⅰとシナリオⅱの2つの補足事項として、H3ロケットは、H-IIAロケット6号機の失敗以降、約20年来の信頼性向上の取組を基に開発を進めてきたが、この機器は30年以上前のH-IIロケット以前に基本的な設計及び製造工程が確立された機器として200個近くのフライト実績がH-IIA/H-IIBロケットを通じて継続しており、不具合ポテンシャル等が内在するか立ち戻る観点での開発には至らなかったと分析されるということも補足しております。背後要因対策につきましては、各シナリオに対してH3ロケットを含めた今後のロケット開発において反映・確認していくべき点をⅰ、ⅱ、ⅲという形でまとめて記載をしております。
 次に、(5)信頼性向上の取組でございます。今回、直接的な要因ではないものの、原因究明活動を進める中で、H3ロケットの信頼性向上に資する改善点、あるいはH3ロケットを含めた今後のロケット開発の確実化を図るための活動として、丸1、丸2、丸3の取組を抽出しております。まず丸1、H3ロケットの計測データの充実化ということで、ロケット特有の伝送量制約の中で、今後打上げ前の検証やフライト中のオペレーションで過電流又は過電圧事象が発生した場合に、原因箇所の切り分けや特定が容易になるよう取得データの最適化を行うということで、後続号機共通の恒久的な改善策、あるいはH3ロケット試験機2号機に限る対策、この二つについて記載をしているところです。
 丸2、H3ロケットの冗長切り替えロジックの改善ということで、今回、冗長設計は意図どおりに作動していたわけですが、今後ミッション継続の可能性(ロバスト性)を向上させるための更なる改善策、こちらも2つのポツとして記載をしておるところでございます。
 また、ロケットの電気系開発の強化ということで、ⅰ、ⅱに記載されているように電気系専門家の知見の活用であるとか、あるいは電気系エンジニアの確保であるとか、これを今後の開発体制及び技術開発プロセスに反映していくということを記載しております。
 (6)今後の対策に向けた留意事項でございます。こちらはこれまでの9回にわたる小委員会、あるいは宇宙開発利用部会、そして報告書をまとめるにあたっての皆様との意見交換、そうしたところでご指摘いただいた内容・留意事項を大まかに4つの切り口でまとめさせていただいております。
 読み上げる形にはなりますが、1つ目がリソースに関する御指摘でございます。「宇宙分野のプロジェクトにおいて、予算・人員その他のリソースの確保は不可欠であり、特に(5)丸3で掲げたような取組をはじめ、人的リソース強化に向けた取組をJAXA及び企業等においてまずは着実に進めていく必要がある。プロジェクトの立案・推進に当たって、リソース配分やスケジュール策定に関わる意思決定者は、その制約の中においても、今般の再発防止策を含む各種の開発上の考慮が無理なく適切になされるよう、プロジェクトの実情に十分に配慮して、リソース配分等の決定を都度行うべきである」という点。
 2つ目、これは情報科学技術の手法の活用という切り口でございます。「今回、得られたフライトデータから、かなり緻密な検証作業が行われたが、ロケットから地上への伝送量の中でのデータの時間分解能等が限られていることにより、原因箇所の切り分け等に時間を要する場面があった。今後、(5)丸1で示したように、ロケットの特性に応じた的確なデータ計測の充実を図っていくことはもちろん、将来のロケット開発の検討に当たって、データ解析の自動化や製造情報との関連付け、そのためのシステム整備等のデジタル化の取組を通じた更なる効率化を目指していくことが、ロケットの信頼性向上のみならず、作業者の負担軽減にもつながると考えられる。情報科学的手法の活用に必要となる人材育成・研修の充実を図っていくことにも期待したい」と記載しております。
 3つ目、こちらは実績品への対応の切り口でございます。「今回識別した背後要因は、イプシロンロケット6号機打上げ失敗の背後要因として識別した『フライト実績品に対する確認不足』とは異なる要因ではあるものの、少し広い観点で見れば、実績品に対する開発時の取扱いに関係する事象であり、今後、両ロケットそれぞれの再発防止策に取り組むことはもちろん、後述のJAXAの『マネジメント改革検討委員会』において、開発における実績品の取扱いへの考え方も再度整理することが望まれる。その際、JAXA及び関連企業が、設計の考え方や作動原理等への立ち戻りも含めたロケットの品質安定と信頼性向上に向けた取組を、如何に連携・協働しながら不断に進めることができるかについての議論も期待したい」ということを記載しております。
 最後4点目、スピード感でございます。「宇宙分野の原因究明作業には、技術的事象に対して謙虚であることや、徹底した姿勢等が必要とされると同時に、民間企業を含む世界の宇宙開発は、顧客のニーズやスピードを重視し、失敗しても短期間に再開し、打上げ頻度を高くすることで信頼性を増す傾向が見られることから、原因究明及び対策検討作業については、合理的にスピード感を持って当たることが今後も重要と考えられる」と。4点、まとめさせていただいております。
 最後に、報告書全体のまとめでございます。H3ロケット試験機1号機打上げ失敗に係る直接要因について、JAXAから各種データあるいは試験結果等を含む調査結果の提出を受け、委員との間で質疑応答を経て、検討の網羅性についても確認した上で、JAXAの報告の内容は合理的な説明がなされており妥当であると認めたということがまず1つ。2つ目、可能性を否定できない全てのシナリオに対策を設定するという今回の直接要因対策及びH-IIAロケットへの水平展開策については、原因究明作業に一定のスピード感が求められる中で、リスクを十分に低減した上での合理的な判断であり妥当であると認めたということも記載してございます。次に、背後要因分析及び対策、H3ロケットの信頼性向上に資する取組については、JAXAからの提案を基に委員との間で意見交換を行い、今般の事象を受けた再発防止策、信頼性向上策として合理的なものであり妥当であるとの心証に至ったと記載しています。4点目、文部科学省、JAXA及び関連する企業においては、原因究明結果に基づく再発防止策や信頼性向上の取組に万全を期して取り組んでいただきたいというメッセージ。宇宙開発利用部会及び小委員会としても、取組の実施状況をしっかりとフォローアップしていく。また、2.(6)に記載したように、今回の調査審議を通じて、今後の取組において反映又は留意すべき重要な示唆も得られた。こういった観点も教訓として、宇宙分野全般の関係者も含めて、今後に活かしていただくことを期待するという点。またJAXAにおいては、イプシロンロケット6号機及びH3ロケット試験機1号機の打上げ失敗等を受けて、後ほどJAXAから補足説明いただきますが、マネジメント改革検討委員会を設置しているところであると。今般の教訓の反映に向けて当該委員会における的確な議論を経て、具体的取組につなげていただくことを期待するということ。最後に謝辞という形で、まとめさせていただいております。
 また、資料52-2-2として、こちらは概要を原因究明報告結果として簡単に1枚まとめています。こちらの説明は本日割愛しますが、こういう資料も用意しておりますのでご紹介をさせていただきます。すみません、少し長くなりましたが、説明は以上でございます。
 
【木村主査】 詳しくご説明いただきましてありがとうございます。今の説明の中でも言及がありましたが、JAXAにおいてマネジメント強化のための新しい取組が始まっているということです。その内容について、JAXAから簡単に補足説明を頂きたいと思います。JAXA経営企画部の川崎部長、資料の御説明をお願いできますでしょうか。
 
【川崎経営企画部長(JAXA)】 ご紹介いただきました川崎です。本日はどうもありがとうございます。冒頭、これまでの委員会におきまして、このH3ロケットの報告書の取りまとめをしていただきまして本当にありがとうございます。感謝しております。このマネジメント改革委員会につきましては、9月28日に理事長の命によって設置されておりまして、その概要についてご説明させていただきたいと思います。1枚めくっていただけますでしょうか。
 今日はH3ロケットの打上げ失敗の原因究明等の話を進めてきてございますが、これに先立つ形としてはイプシロンロケット6号機の打上げ失敗、さらに加えて、昨年11月に報告させていただいていますが、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針不適合事案といったものもありました。そういうことを踏まえて、それぞれのプロジェクト・研究について再発防止を進めているところでございます。ただし、我々としてはこの度重なる事情についてやはり真摯に内省することが重要であるということで、これを糧にして我々としてはより強い組織に進化したいという思いがありまして、理事長のリーダーシップをもって全組織を挙げて改革を実行しようということで、この委員会を立ち上げております。その際、これまでは個別のプロジェクトの実証調査等をやっていたのですが、その背景に共通する要因、今日の報告書の中でもいろいろ書いていただいていますが、そういったところも踏まえて、組織に共通するような問題であるとか、あるいはマネジメント上課題がないかとか、そういったものを含めて調査を進めまして、これを我々は内部統制と呼んでいますがJAXAのマネジメント・内部統制における課題を明確にし、特にその意識改革、我々職員自身それから経営層も含めて、でございますが、そういった改善策を検討するということを目的としまして、28日付けでマネジメント改革検討委員会を立ち上げております。後ほどご説明いたしますが委員長は鈴木副理事長となってございます。こちらの委員会の検討状況につきましては今後、宇宙開発利用部会等において報告をする予定でございます。次の頁をお願いいたします。
 この頁に背景を書いてございますが、今申し上げたとおりこの背景としてはやはり一連のトラブルを受けて我々としてもマネジメント改革や内部統制の改善が経営課題であるというふうに認識しているということがございます。特にこの二つの基幹ロケットの打上げ失敗、それから伴う衛星の喪失というのは、この我々宇宙政策の目標達成に向けた実施全体に対して影響を及ぼすものだったということで、さらに、医学系指針の不適合事案ということは、これはプロジェクトとは違うのですが内部統制上の法律の遵守という意味からいいますと信頼性低下ということで、二つ合わせてJAXA全体の信頼性低下につながったということで、これらを二度と生じさせないためということで、経営課題として取り組んでいるところでございます。
 もう一つ書いてございますのは、昨年度のJAXA事業に対する主務大臣評価において非常に厳しい評価を頂いていまして、この中では下の「法人全体について」という評価のところから抜粋しておりますが、この法人マネジメントに対して意識改革を含めた改善が必要だというふうに書かれております。このようなことを踏まえまして、この委員会を設置したものでございます。
 次の頁に体制が書いてございます。正に今JAXAの中で先ほどの内部統制を含めた全体の体制と同じなのですが、理事長の下に今回はマネジメント改革検討委員会、それから二つの分科会、一つは開発マネジメント改革検討分科会と、それから内部統制環境改革検討分科会、この二つを設けていますが、この三つの委員会・分科会で我々は今後検討していくこととなります。これは全て理事長の下に動いてございまして、この活動については適宜理事長と意見交換をしながら進めていくことになりますが、大きく分けてマネジメント改革検討委員会の方は主として役員のレベルの委員会となります。これは経営課題の話、あるいは経営上の問題を見るもの。それから、開発マネジメントについては具体的なプロジェクト。それから内部統制は法律、法的コンプライアンスとかそういったものを見る分科会となってございまして、それぞれ分科会長を置いて、それから構成メンバーを、こちらは組織の部長級を充てて検討を進めるということになります。ただし、この委員会につきまして非常にオープンに進めていきたいという思いがありまして、これはJAXAに籍を置く全ての職員が、全ての議論であるとか資料にアクセスできるような形で意見交換を行っていまして、既にオンライン上でございますが300人以上の職員が参加し、様々な意見を、問題提起を含め、発言させていただける状況でございます。
 次の頁に主な役割分担も書いてございます。繰り返しになりますが、このマネジメント検討委員会につきましては経営上の課題の抽出であるとか、それから、分科会で現場の方での検討事項を識別することを行うものとなります。特にJAXAの全体マネジメントにつきましては、今日の報告書にありましたようにリソース配分、これは人とお金の話があります。それからスケジュール設定であるとか組織風土といったものの在り方の精査であるとか見直しをするというものでございます。また、共通事項としましては、こちらは大臣評価の中でもいろいろ指摘されていることでございますが、ALOS-3をH3の初号機に搭載した時のJAXAとしての振り返りであるとか、それから、JAXAの活動についての戦略のグランドデザインとか長期視点の総合戦略、これは具体的に申しますと例えばH-IIAからH3へのトランジションに対する考え方が適当であったかといったものとか、それから、それらを支える内部統制、これは法的な遵守であるとかリスクマネジメントとかそういったものがありますが、それが今JAXAの規模と社会的重要性を鑑みると必ずしも十分ではなかったのではないか、というふうな御指摘がございますので、そういったものについて議論を進めているところでございます。
 それから、開発マネジメントにつきましては、衛星やロケットの個別のプロジェクトに対するリスクマネジメントやプロジェクトマネジメントといったものの課題を分析してまいりますが、ここにおいては開発企業との関係も非常に重要だと思いますので、企業も含めた形でうまく議論をまとめていきたいと思ってございます。それから、ロケットや衛星の開発の方で組織風土とか意識面においての問題や懸念点はないのかということも振り返りたいと思ってございます。
 また、内部統制の方は基本的には法律遵守を中心とするものでございますが、そういったものに対する意識改革もやはり必要ではないかということと、それから、ヒトに係る研究につきましては、これは一つのきっかけと考えておりますが、これを見ながら我々の研究を支える支援体制というものが十分であるかというもの。それから、今はJAXAにおいて出資機能とかいういろいろな新たな機能も付加されておりますので、そういったものの透明性の確保の在り方とか、利益相反の考え方とかそういうものも検討してまいりたいと思っています。このような活動につきましては、今年度末に報告書を取りまとめたいと思ってございます。検討状況につきましては、この宇宙開発利用部会や、それから、主務大臣評価のプロセスに参加した先生方とも適宜情報共有しながら、多くの意見を取り入れてまいりたいと思ってございます。
 参考資料は、イプシロンロケット6号機の報告に書かれているところでの提言であるので、それは参考で入れてございます。また、最後の頁は主務大臣評価からの提言事項等がありますので、こういったものを全て見ながら皆で議論を深めてまいりたいと思ってございます。説明は以上となります。
 
【木村主査】 ご説明ありがとうございました。先ほど申し上げたましたとおり、本日のメインのミッションはこの報告書について確定するというところにあります。この報告書について既に皆様からの御意見は全て盛り込まれている状況かと思います。この間にあった議論を私もいくつものポイントを確認させていただいて、確かにここで議論してきた非常に重要なことが全て盛り込まれているなと。文言も含めて完成の領域にあるかと思いますが、事務局から最後に説明にあった報告書の概要ペーパーあるいはJAXAからの補足説明も含めて、何かここで御意見、御質問等があればお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。大丈夫ですかね? これで確定させていただきたいと思っているところですが、よろしいですか? 笠原委員、お願いいたします。
 
【笠原委員】 ありがとうございます。報告書を再度今日読ませていただいて、本当に完成度の高い報告書にまとめていただいたというふうに感じております。今回の委員会に出席させていただいて、心より感謝申し上げます。それはやはりハイレベルな調査・分析と、それをまとめてこのような形で報告されているという姿自体に非常にハイレベルなものを感じておりまして、私自身も大変自分の中で勉強なりましたし、素晴らしいリカバリーの取組だと感じております。
 一点だけ申し上げたいのは、報告書の中でも最後の方の今後の対策に向けた留意事項の中でリソース的なところをお話がきちんと明示されているところではあるのですが、先ほどのJAXAの今後のマネジメント改革の方でもリソースのお話をたくさん取り上げていただいて有り難いところではあるのですが、配分という言葉がやはり少し気にはなりまして、制限のあるリソースというところがそもそも非常に根本的な厳しい状況を招いた原因だと思っていますので、そのリソースをやはり拡大することが私はとても重要だと思っています。それはやはり国民や世界を巻き込んで応援されるべきプロジェクトだと思いますので、そういうところに、この報告書に全く異存はないのですが、今後も私も応援したいですし、いろんな形でリソースが拡大するようなことをいろんなところに語り掛けたり働き掛けたりしたいと思っております。ということで、商売的ではないのですがやはりいろんなところで今こういう輸送系のプロジェクトが応援されて初めてリソースの全体の拡大ができると思いますので、そういうことを今後自分自身の活動としてはしっかりとできるように頑張りたいと思っています。すみません、感想みたいな形ですが、やはりそこが気になりますので、応援していますので、ぜひ今後とも文部科学省、JAXA、関連の企業には前進いただければと思います。長くてすみません。 以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございます。竹上さん、何かありますか?
 
【竹上企画官】 御指摘を踏まえてしっかりと文科省として取り組んでいきたいと思います。ありがとうございます。
 
【木村主査】 ありがとうございます。私もこの報告書の中で、最後のところでリソースの件、それからあと他のところも私は特に言及させていただいたのですが、そこも含めて今後取り組まれる活動、これから先拡大するべきだというところ、これを踏まえてリソース面でも拡大していく必要があるなという思いを込めてこれは提言させていただいているかと思います。報告書の文言としてはこれかなと思うのですが、笠原委員の方でおっしゃっていただいたようにここでの委員会でメンバーとして活動されてこられた委員の皆様は応援団だと思っておりますので、様々な形でそういった思いを今度形にしていくような取組につながっていけばよいかというふうに思っております。笠原委員、ありがとうございます。他はよろしいでしょうか? 辻村委員、お願いいたします。
 
【辻村委員】 JR東海の辻村です。今回この委員会に参加させていただきまして、私は専門が鉄道ですので、なかなかこの宇宙の分野というのは門外漢だったのですが、いろいろ非常に勉強になりました。私も鉄道の方で事故防止だとかそういうことをやってきたのですが、そちらにも非常に参考になるというような中身でございました。いろいろ今回聞いてきまして、佐藤部長をはじめJAXAの方々の粘り強い原因究明をされたということに関しまして本当に感謝したいと思っていますし、ぜひこういうことが一つの失敗事例あるいは事故の原因究明のプロトタイプとしていろんなところで話ができればと思います。それからあと本当に今回思ったのは、今回の調査をされた方、事故の原因究明された方の粘り強い取組が実ったというふうに思いますので、自信を持って次のプロジェクトに向けて、現行のプロジェクトに向けて、更に自信を持って技術者として頑張っていただければと思っていますし、ぜひとも我々も含めてしっかりとそういう方々を応援していきたいというふうに思います。以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございます。大変ポジティブな御意見を頂きましてありがとうございます。他にはいかがでしょうか。大丈夫ですかね? 神武委員、お願いできますでしょうか。
 
【神武委員】 どうもありがとうございます。このイプシロンロケット、H3ロケットと、短い期間に複数回失敗してしまったというのはある意味大変残念なところはあるのですが、これからぜひうまくいくようにというふうに思っていますし、ロケットに関する部門だけではなくてJAXA全体でよりよくしていくのだという一つのきっかけをつくられてスタートされているのは素晴らしいと思いますので、ぜひ頑張っていただければと思いますし、私たち委員の立場でできることはさせていただきたいと思います。
 一点コメントとしては、やはり宇宙業界並びにロケット部門という意味で世界を見渡すとすごい勢いでいろいろな活動が進んできていて人材も増えてきている中で、日本もSBIR等でベンチャー企業に文部科学省並びにリモートセンシング等でいいますと経済産業省等がかなり大きな金額を今回用意して、ロケットの場合には4社選定されていくわけですが、やはりそちらの方々と話をすると人材が足りていないというふうに聞いています。そういう意味では、今回の知見をJAXAの中でというところがまずありますが、それをいかに日本のロケット関係者の人材育成につなげるかということで、やはりプレーヤーの質と量を増やしていく必要もありますので、まずH3ロケット、イプシロンロケットが成功するということも大事なのですが、その上でそれ以外の企業、そして人に展開していくというところもぜひ視野に入れて進めていただければと思います。以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございます。分野全体についての応援コメントという感じだと思います。他はいかがでしょうか。よろしいですか? まずは今日の非常に重要なミッションとしては報告書をオーソライズするというところにありまして、そこをまずは済ませてしまおうかと思います。皆様から感想等を既に頂いているのですが、ここで資料52-2-1の報告書ですね、これは今(案)を付けておりますが、これを小委員会の報告書としてまとめたいと思いますが、いかがでしょうか。御異論ないでしょうか? ここで確定しますと(案)が取れまして報告書としてこれが発行されるという形になると思います。大丈夫ですかね? 御異議ないということでよろしいでしょうか。御異議ないようですので、本委員会の報告書としてここで案を取らせていただきます。ありがとうございました。ここが非常に今日の最も重要なミッションでございますが、本報告書は本日付けで書面開催されます第79回の宇宙開発利用部会において審議され、問題なければそのまま宇宙開発利用部会として決定されるというプロセスになると思います。ここまでで一応審議の非常に重要なところは済ませていただいたのですが、この間皆様から先ほど既に御感想を頂いている部分もあるかと思うのですが、何か他に御感想とか、応援メッセージでも構わないのですが、ありましたらここで頂ければと思いますが、いかがでしょうか。柿沼委員、お願いできますでしょうか。
 
【柿沼委員】 この度このようにまとめることができたということは、本当に調査においてJAXAと関連企業が非常に膨大な検証をしてくださいまして本当に感謝申し上げます。結果として今回に関しては三つのシナリオを一つに決めることに執着せず、いろいろな観点をきちんと検証できたということがやはり大変意義があると考えております。また、原因がフライトの実績といいますか、そういうこれまで長期に使われてきたものに対する考え方、これはやはりこういうロケットだけではなくていろいろなものを作っていく、あるいはこれから長期的に使うものを作っていくということに、非常に重要な経験を私たちはしたのではないかと考えております。再発防止にあたり技術面だけではなくて、組織の意識改革も含めて検討してくださっているということで、この分野が更に発展することを祈念しております。また応援しておりますので、よろしくお願いします。ありがとうございました。
 
【木村主査】 ありがとうございます。正にそこのところ、今回スピード感と且つ実現していくという意味で網羅性ということでまとめられたこのやり方というのは一つの考えとして非常に重要かと思いました。ありがとうございます。他はいかがでしょうか。何かございますか。大丈夫ですか? もしよろしければ私からも最後にコメントといいますか、本当にこの間の委員の皆様の御協力、それからJAXA、メーカーをはじめ大変真摯に取り組まれた結果だと思っていまして、またフライトに戻れるという非常に大事なターニングポイントに来ているかと思います。
 私自身は実は成功、失敗という二元論はすごく好きではなくて、あるのはチャレンジと、それによってもたらされる結果ですね。その結果が意図どおりであったかどうかということは別にして、その結果から何をくみ取って次のチャレンジにつなげるかという、そのプロセスが最も大事なのかなというふうに思っています。今回非常に大きなシステムでデータも多く、いろんなところを気にしなければいけないと思うのですが、打上げに伴って現れた事象を皆さん真摯に追い求めて、ある種のここから得られる十分な知見というのをここでくみ取ったというふうに思っています。その結果がこの報告になっていくのだろうと思うのですが、今正にそれをくみ取ったところで、次のチャレンジに向かうべきタイミングに来たかというふうに思っております。
 この間本当に皆様にご協力いただきまして、私自身もすごく良い勉強ができました。非常に有意義な議論であったかというふうに思います。これをぜひ次に展開していければよいかと思います。この経験の積み重ねが多分よりよいものにつながっていく道なのだろうというふうに思っております。ありがとうございます。改めまして感謝の言葉でここまでの議論をまとめさせていただきたいと思います。そうしましたら、本日の議事はここまでということになります。事務局の方から事務連絡があればお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 
【竹上企画官】 本日はありがとうございました。会議資料と議事録の公開について申し上げます。本日の会議資料は文部科学省ホームページに既に掲載しております。また、議事録につきましても、委員の皆様にご確認いただいた後、文部科学省ホームページに掲載させていただきます。なお、本日この後13時より、文部科学省におきましてH3ロケット試験機1号機対策本部の第3回会合を開催いたします。また、この後速やかに宇宙開発利用部会を書面開催し、小委員会の報告書を部会としても決定いただく予定です。なお、対策本部終了後、本日の小委員会及び対策本部第3回会合に関して、プレスの皆様向けにフォローアップためのブリーフィングを行う予定です。事務連絡は以上ですが、本日、H3ロケット試験機1号機打上げ失敗に関する会合としては最後になりますので、事務局を代表して大臣官房審議官の永井より一言ご挨拶させていただきます。
 
【永井審議官】 審議官の永井でございます。本調査委員会におきましては、H3ロケット試験機1号機打上げ失敗に係る原因究明のための会合としては今回が最後ということでございますので、一言御挨拶を申し上げます。H3ロケット試験機1号機につきましては、本年3月7日の打上げ失敗以降、今回も含めて合計9回にわたって本調査委員会を開催いただき、その間、委員の先生方におかれましては、JAXAが進める原因究明等に対しまして専門的見地から御確認や御助言、そして幅広い御提言等を頂いてまいりました。大変恐縮ながら日程的に急な開催や御多忙の中での開催・調整もあったかと存じます。イプシロンロケット6号機に係る原因究明の時もそうでございましたが、私ども事務局からの大変無理なお願いに対しましても大変温かく協力的にご対応いただきましたことを、心より感謝申し上げます。
 お陰様で本日報告書の取りまとめの運びとなりました。委員の先生方の専門的な御知見からの御指導はもちろん、宇宙開発利用に係る調査・安全面での御協力、御尽力に対して、改めまして敬意を表しますとともに、心より御礼を申し上げる次第でございます。文科省といたしましては、原因究明結果に基づく再発防止策を真摯に受け止め、そして信頼性向上策も併せまして、JAXAが万全を期して実効性ある取組を進められるようフォローアップを進めてまいる所存でございます。
 振り返りますと、イプシロンロケット6号機、そしてH3ロケット試験機1号機と基幹ロケットの打上げ失敗が続き、国民の皆様の期待にもお応えできず、私どもとしても心苦しい状況が続いてまいりましたが、最後に木村主査からも結果から得られた知見をくみ取って次にチャレンジしていくことが重要という話もございました。一つひとつ解決しまして取組を前に進めていくことが重要だというふうに考えているところでございます。
 文科省といたしましては、最後に委員の先生方の皆様からもいろいろな叱咤激励でありますとか温かいお言葉を頂いて、非常に本当にうれしく思ってございます。JAXAと共に基幹ロケットの打上げ再開や宇宙開発利用の推進に向けて引き続き全力で取り組んでいくという、そういった思いを今回新たにしているところでございます。私からの御挨拶は以上でございます。本日は大変ありがとうございました。
 
【木村主査】 ありがとうございました。以上で本日の委員会をこれで締めさせていただきたいと思います。皆様、どうもありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課

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