宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会(第51回) 議事録

1.日時

令和5年9月25日(月曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. H3ロケット試験機1号機打上げ失敗原因調査状況について
  2. その他

4.出席者

委員

主査 木村 真一
主査代理 神武 直彦
専門委員 柿沼 志津子
専門委員 門脇 直人
専門委員 辻村 厚

文部科学省

研究開発局長 千原 由幸
大臣官房審議官(研究開発局担当) 永井 雅規
研究開発局宇宙開発利用課長 上田 光幸
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 上田 尚之
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 理事  布野 泰広
 宇宙輸送技術部門 事業推進部長 佐藤 寿晃
 宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 岡田 匡史

5.議事録

【木村主査】 それでは定刻になりましたので、第51回宇宙開発利用部会調査安全小委員会を開催いたします。今回はH3ロケット試験機1号機の打ち上げ失敗に関する8回目の議論になります。本日もこれまで同様にオンラインでの開催となっています。
委員の皆様にはご多用のところ、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。事務局から本日の会議に関する事務連絡をお願いいたします。
 
【竹上(事務局)】 事務局、文科省企画官の竹上です。事務局から連絡いたします。本日所属委員のうち、5名にご出席いただいています。次に本日の資料は議事次第に記載の通りでございます。オンライン状況につきまして、音声が繋がらない等の問題がございましたら事務局へメールや電話等でご連絡ください。事務連絡は以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございました。
H3ロケット試験機1号機の打ち上げ失敗の原因究明調査です。こちらは前回故障シナリオを大きく三つに整理した上で、その全てに対して対策を実施することで、再発を防止するという考えがJAXAから示されまして、小委員会としてこれを妥当と評価させていただきました。
本日は原因究明結果に基づく背後要因の分析、対策の方向性、また原因究明の過程で識別されたH3ロケットの信頼性向上への取り組みについてご報告いただけると聞いています。報告書取りまとめに向けて大詰めのため、本日重要な議論となります。皆様ぜひよろしくお願いいたします。なお本日は全ての議論を公開ということで実施させていただきますので、あらかじめお知らせしておきます。
それでは、早速議題に入りたいと思います。H3ロケット試験機1号機打ち上げ失敗の原因調査状況について、資料の説明をJAXA宇宙輸送技術部門、事業推進部の佐藤部長並びにH3ロケットプロジェクトチームの岡田プロジェクトマネージャ、よろしくお願いいたします。
 
【佐藤部長(JAXA)】 本日もよろしくお願いいたします。今、木村先生の方からご紹介いただきました通り前回直接原因に関して三つのシナリオを最終的に立てまして、それぞれについて対策を行っていくという報告をさせていただきました。
今回イプシロンと同様ですけれども、この直接原因を踏まえましてJAXAとして背後要因の分析をして、それの対策案の方向性を今回報告させていただきたいと思いますのでよろしくお願いします。また、いろいろな原因究明の過程で気づいた観点での信頼性向上策と、こういったところも少しまとめてございますので、ご意見をいただければと思います。それでは説明は岡田の方からさせていただきます。よろしくお願いします。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 H3プロジェクトチームの岡田でございます。よろしくお願いします。
それではお手元の資料51-1に沿ってご説明していきます。ページをお開きいただきまして目次と本日の報告内容が出ていますけれども、今佐藤部長から説明させていただいた通り、背後要因分析・対策、信頼性向上という切り口での取り組みを中心にご説明していきたいと思います。
ページは飛びまして14ページに参ります。14ページ自体は再掲でございまして、前回ご説明いたしました原因究明結果と対策をおさらいとしてご説明するページです。ただ、ここに書いてある内容で、本来そのシナリオとして何が起きているかっていうことのご説明ができておりませんので、これについては後ろの30ページ以降の参考資料のページを使ってご説明していきたいと思います。
シナリオは三つ整理いたしまして、一つ目のシナリオこれはH-ⅡA/H3の共通のシナリオでございます。エキサイタ内部で軽微な短絡がSEIG後に短絡が生じていて、それがSEIG後に完全に短絡したというものです。31ページをご覧いただきますと、シナリオのあらましが記載されています。エキサイタの製造時に、狭小部分、距離の狭い部分などがその短絡地絡を生じやすい状態に作り込まれていたことが、具体的には振動とか衝撃など打ち上げによる状態によって、軽微な短絡や地絡の状態になりました。しばらくして6msぐらいまでは電流値は比較的に小さかったですけれども、抵抗値の大きさによる発熱などでその接触部の状態が変わって過電流を発生させるに至ったというものでございます。これがシナリオの一つ目でございます。
シナリオの二つ目のご説明のため、14ページに戻っていただきます。これはエキサイタの中で通電したときに過電流状態が発生したというものです。具体的には34ページにまた記載がございます。エキサイタの中には1次側にトランジスタがあります。このトランジスタ自体が今回の原因究明でわかったこととして、動作時に最大定格以上の電圧が印加されるということがわかりました。これが作動を繰り返すことによってその電圧の耐性が低下して、最終的にはフライト中にこの電圧がそのトランジスタに印加されたときにその電圧に耐え切れずに降伏したというものでございます。そして最終的に過電流が発生したというものです。
三つ目のシナリオを39ページにてご説明いたします。これまではH-ⅡAとの共通部分でしたけれども、H3固有ということで、PSC2のA系の内部で過電流が生じてその後B系に伝播していったというシナリオでございます。フライト中の環境等によって何らかの部品の一部が故障して、それをトリガーにして次に起きたことが、定電圧ダイオード、これがあの保護回路として装着している定電圧ダイオードが短絡しました。過電流が生じたために冗長切り替えをしましたけれども短絡電流がA系のリターンラインからB系のリターンラインに分流して、B系にも影響を及ぼしました。B系も同様に過電流異常に至ったという流れでございます。
こういった三つのシナリオにつきまして冒頭木村先生よりもご説明いただきましたけれども、前回ご報告したことで私たちはその背後要因分析に入りました。15ページをご覧いただきたいと思います。
15ページにはその背後要因分析をそれぞれの要因に関して一つずつ結論としてここを載せています。ここからご説明しますと、ここまでの検討経緯がわかりづらいために順番を変えまして、16ページ以降に1要因に1ページでなぜなぜ分析をした結果として背後要因を導いた過程をお示ししていますので、これをご説明したいと思います。
16ページに、まず背後要因分析の一つ目の分析です。エキサイタの内部で軽微な短絡。SEIG後に完全に短絡したというものです。まず事象ですけれども、エキサイタの短絡地絡による過電流は、先ほどご説明した通りです。製造時にそういったのも短絡・地絡を起こしやすい状態になり、打ち上げ環境下で顕在化したというものです。
これをまず一つ目のなぜ丸1で上と下と二つに分けています。上の方からご説明しますと、上の方は設計的な話です。下は製造的な話です。上はその設計的な不具合ポテンシャルを有していたというのが一つ目の「なぜ」です。この設計的な不具合ポテンシャルといいますのは、下に米印で脚注載せていますけれども、狭小なエリアに組み込む必要があるために短絡地絡の可能性があるといったような隙間がそもそも存在していたというものです。
それをもう一つ掘り下げまして、「なぜ丸2」で実際に過去の製造で絶縁不良の不具合に対して是正を適切に適正に行うということがシナリオの中いくつかのケースの中にはそういった事例もありますけれども、その都度対応十分にしているというふうに解釈しています。抜本的な設計変更で1からの見直しというのは不要というふうに考えておりました。むしろ、その設計変更するということ自体の方が高いリスクがあるというふうに判断をしながら運用してまいりました。それをもう一段掘り下げます。
「なぜ丸3」の上のように考えた理由の一つといたしまして、組み立て後にエキサイタ内部をレジン、充填材で固めるなどしてSEIG後の運用段階では状態の変化が生じることはないと考えています。従来から実績がありますが、絶縁抵抗検査によって不具合のポテンシャルは検出しきれると考えておりました。また下にもありますけれども組み立て後に同じようにレジンで固めるということからこういった固めたところに関しての隙間は変化することなく、設計変更は不要と考えました。
次に下の段の製造の部分について説明します。製造時に同じく不具合ポテンシャルがあったところを目視等で定量的に評価しなかったというものです。「なぜ丸2」になぜそうしなかったかということについて記載していますけれども、製造絶縁抵抗の検査それから工程管理ということを我々徹底して作り込んでいましたので、製品は保証できるというふうに考えておりました。なぜそのように考えたかということですけれども、「なぜ丸3」に行きましてH-Ⅱ以来の打ち上げ実績と、実績の一つにカウントできる燃焼試験の中で、不具合は顕在化しておりませんので、従来の検査方法は妥当と考えてこの検査方法を使っていました。この「なぜ丸3」で三つ出てきたものをサマリーにしましたのが、この背後要因の結果です。これが15ページ載せてありまして、H-Ⅱ以来の実績を重視したこと、それから製造後の運用段階で設計上の狭い部品間などの状態が変わらないと考えていたために、製造検査それから設計に対する対策を抜本的に行うことがなかったというものでございます。これが一つ目の背後要因分析の結果です。
二つ目の背後要因分析は、17ページに記載されています。エキサイタでトランジスタによる過電流状態が発生した事象は、今述べたものでございます。「なぜ丸1」で、このエキサイタの基本的な設計はH-Ⅰロケットに搭載したLE-5以来十分な実績があるということで、エキサイタの過負荷、具体的には耐電圧の超過への可能性やリスクに気がつかなくて使ってきたというものでございます。
ここからの「なぜ」の二つ目は上と下にわかれます。まず、一つ目の理由、上の方では設計評価に焦点が当てられており、エキサイタ内の昇圧回路およびトランジスタの装着部分の回路は開発時に適切に検証されたことが確認されています。過渡時の部品の適合性について再評価が不要との判断がなされました。「なぜ丸3」にて掘り下げますと、必要な部品適合性評価というのは最初の開発で適正に実施していると考えておりました。またその下に参りまして地上の点検そしてフライトにおいて十分これも実績があるということから、私たちとしてはこれが使えるものであると判断しています。
それから「なぜ丸2」の下は、製造は開発時と同性能の計測器、具体的には計測の分解能の低いものをずっと使い続けていましたところ、結果として鋭いピークのあるような「顔つき」の電圧の計測ができなかったというものです。仮にこれができていれば、これは何かという気付きがあるかもしれませんが、この点についてもう一つ詳しく説明します。ロケットの製造プロセス自体は、工程が認定されたものであり、これは製造工程の認証です。実際に使用される計測器についても、この工程認証に合わせて認証されるべきとの判断がありました。そのため、高精度な計測器への交換は必要ではないと考えられました。むしろ、新しい装置を使用することによる製造上の問題を回避すべきとの観点から、この判断が行われたのです。
同じくその背後要因としてサマリーにいたしますと、基本的な設計および製造工程がH-Ⅱ以前に確立されて、それを運用し続けている電気系機器をH3に適用する際に、部品適合性評価に不足がないかの確認がなかったというものでございます。これが二つ目の配合要因の分析結果です。
三つ目については18ページで述べられており、これはH3ロケット固有の事象です。先ほど説明したように、A系の電力系統の故障がB系に伝播する現象が発生しました。この問題には定電圧ダイオードが介在していました。A系の電源電圧異常は、下流の機器を過電圧から保護するために設置された定電圧ダイオードが、電源電圧が異常モードで上昇する可能性までに対する耐性を持っていなかったことが原因です。なぜその最大電圧までの耐性を有していなかったかということについて掘り下げますと、「なぜ丸2」の上は設計で試験にあたり、この過電圧に対して、異常検知から電源遮断までの間に保護するということが目的になっているダイオードが、この間にかかりうる最大の印加電圧を前提とした設計になっていなかったというものです。もう一段掘り下げまして、「なぜ丸3」です。なぜ、その最大の設計電圧を考慮していなかったかについて説明します。電源電圧が異常時に示すべき早期の挙動には、さまざまなモードが存在し、電源電流値や電圧電流値の継続時間などが含まれます。しかし、安全装置への設計評価が、すべてのモードを考慮に入れて検証されていなかったためです。つまり、あらゆるモードを事前に完全に想定していなかったということが原因でした。それから下の段に行きまして、試験の方ですけれども、同じくその異常検知から電源電圧遮断までの間のこの保護するダイオードに対して、そういった異常を模擬した試験を実施していなかったというものでございます。最大電圧がかかるような、模擬試験を模擬していなかったということでございます。「なぜ丸3」にて、電力系の故障模擬試験というのは実際に大電流を流すということで、供試体自身を破損するリスクが高くまた安全上も問題になることもあるということで、安全装置そのものに関して全ての試験により評価するには至りませんでした。もちろん必要な試験によっては行っていまして、網羅的に試験をすることはリスクが高く、そこを選択しながらの試験をしてきたというものでございます。背後要因にて、システム異常時の挙動において起こりうる事象に対し、こういった下流機器保護の目的で設置している部品・安全装置が耐性を有するかの確認が完全ではなかったというのが分析結果でございます。
今三つの分析の結果をご説明いたしましたけれども、それを受けまして19ページと20ページで対策についてご説明していきます。これも背後要因の三つに分けまして、それぞれについてご説明していきます。
まず丸1ですけれども、1番目の背後要因に関して、下の小さな赤丸にて今ご説明しました背後要因分析の再掲でございます。その下の上記を踏まえ、H-Ⅱから使い続けている機器に対し、製造しにくさ等により不具合ポテンシャルを内在しているものがないかを確認いたします。さらに具体的な視点として下に三つ挙げてございます。視点の一つ目は、H-Ⅱからの継続使用です。二つ目の視点として、製造および検査の難易度が高い部品が挙げられます。具体的な例として、狭小なエリアに組み込まれており、高度な技術と注意が必要な部品があります。さらに、組み立て後の検査も難しく、SEIG後のフライト環境において状態が変化する可能性のある部品も考慮されます。これらの三つの要因がAND条件で該当する部分に焦点を当て、水平展開を進めていく予定です。
それから背後要因分析の二つ目赤丸部分のエキサイタの通電で過電流状態についても、H-Ⅱ以前に基本的な設計を確立して運用続けている電気系の機器に対して開発時に評価した部品の適合性評価を再確認して、評価が不十分な点がないかを確認します。視点としては、同じく二つに具体化しておりまして、H-Ⅱ以前に基本的な設計が確立されて運用され続けている電気系機器をそのまま新しいシステムに適用しているもの。それから部品適合性、これのディレーティングなど、再評価を実施していないもの。例としては過渡的なサージ電圧による短絡、それから部品の故障がミッションクリティカルな不具合に繋がるもの、こういったものが該当いたします。
20ページに関する背後要因分析の三つ目の視点について説明します。これはH3ロケット固有の問題です。前述の二つ目からの続きとして、通常の動作では機能しない安全装置が故障した結果、ミッションに影響を及ぼす可能性があるものについて、安全装置の設計と検証の妥当性を確認します。具体的な視点として、異常時の機能を持つ部品や機能、例えば、停電時に関連する定電圧ダイオードやバルブなどについて、システムが異常時に共同して起こりうる事象に対する耐性があるかどうかを確認します。19ページの1行目に記載がありますがこういった確認を行って、ロケット開発への対策を講じるというふうに事を考えてございます。ここまでが背後要因分析と対策の方向性についてのご説明でした。
次に21ページからは信頼性向上の取り組みとして、直接的な要因ではないですが、原因究明活動を通じて、H3ロケットの信頼性向上に資する改善点を抽出いたしました。そして信頼性を向上させてより運用しやすいロケットとしていくという活動でございます。まずそれが二つありまして、一つ目が計測データの充実。二つ目が以前からご示唆いただいておりましたけれども冗長切り替えロジックの改善です。この取り組みに加えまして今後のロケット開発の確実化という少し広い対象にいたしまして、ロケット電気系の開発の強化というものを考えています。順次ご説明してまいります。
22ページ目に関する計測データの充実化について、改善点の抽出の観点から説明いたします。今回、テレメータデータからさまざまな情報を取得し、原因の究明を進めましたが、情報が限られていたため、原因箇所を特定し、切り分ける作業には時間がかかりました。何回かに分けてご説明をした理由として、掘り下げてテレメータデータのその前後関係などを整理していく中で徐々に見えてきたことがあるということで、段階的にご説明もしてまいりました。テレメータデータに関して、従来の設計思想について基本的な点を説明します。伝送量には制約があるため、最初に安全上不可欠な情報として、ロケットの打ち上げ後にフライトがどのように進行したか評価することが基本です。この情報は必ず確認されなければならない要素の一つとされ、打ち上げ号機に依存しないデータとして設定しています。これから超過していく部分、特に運用の初期段階には特別に追加しながらロケットの設計の妥当性を確認するということの意味も含めまして、特別な計測します。このときには、データの収集機器とセンサーを追加してデータを取得していくといった二つの考え方で設計に盛り込んでいます。今回そういう中で、改善の内容といたしましては、打ち上げ前の検証、それからフライト中のオペレーションの中で過電流または過電圧事象が諸発生した場合に原因箇所の切り分け特定が容易になるようにということで、先ほど申し上げました伝送量制約がありますが、この中で工夫をしまして取得データの最適化を行います。具体的にその下に改善例、大きく分けてこの二つご説明します。四つ載せてある中の上二つは恒久的な改善。下二つが2号機のみの改善です。上の方の二つについて具体的にはPSC2のエンジン駆動電圧の取得レートを向上させます。以前は8Hzでデータを収集していましたが、今後は32Hzでデータを収集するように変更します。この変更の目的は、今回の事象に限らず、過電圧が原因で発生する可能性のある事象をより容易に切り分けるためですそれからV-CON2A/2Bの電源バスの電流の取得レート向上。これも同じ目的で、64Hzから256Hzに向上させるということで容易に切り分けができるようにしました。下二つは今回の1号機の原因究明の対策効果の確認という目的で二つです。PSC2とPNP間の高速の電流モニターの特別計測512Hzですので、私たちの持ち合わせている最高のサンプリングタイムで取っていきます。それから同じくPSC2とPNPのエンジン駆動電圧の特別計測の追加。これも同じく512Hzです。512Hzでとれば前後関係は見えてくると思います。ただ「※1」の位置にありますけれども、実際実装したときに他の計測項目に影響が出ないことを確認して、それを打ち上げの前で検証確認できて初めて搭載が判断できると思っています。まずは何とか搭載していきたいと考えています。それから「※2」のところエンジン駆動電圧といいまして、エキサイタおよびバルブの一部の電圧を指してございます。
23ページでは一つ目の信頼性向上の取り組みについて説明しています。二つ目は冗長切り替えロジックの改善です。改善点の抽出の観点といたしましては、これまでご説明してきました冗長系設計の思想。これは間違いないと考えていますので、その思想を損なわない範囲でミッション継続の可能性を向上するというものでございます。冗長系設計思想のおさらいをさせていただきます。まず、故障伝播防止に関しては、冗長化した範囲内で故障が検知された場合に、その故障が他の系統や下流に伝播しないようにすることが基本です。PS2のエンジン駆動電源に関しては、下流のエンジン機器に対して並列冗長性を適用することで、ロケットの高速制御時にタイムクリティカルな状況が発生する可能性があることを考慮しています。
したがってA系B系両方をホットな状態で作動させながら並列冗長を適用するということで、動作が切り替わってもそのまま瞬時に続けられるような冗長設計を取るというものでございます。従来の設計ですけれども、先ほどご説明したように故障伝搬防止のために極力早く遮断するということから過電流過電圧の遮断機検知機能を実装しています。B系についても、これB系が先に異常になる場合も想定しましたので、基本同一のロジックを軸としておるというのがこれまでの設計です。24ページ改善の内容として、今のような考え方の中から可能な限り、システムがロバストになるようにということで、まず二つの視点で改善点を抽出しいたしました。
一つ目の視点は、故障モードをよく具体的に考慮しまして、かなり具体的に掘り下げた上で、検知条件を再評価したというものです。そこには過電流と過電圧と、あるいはもう一つ後でご説明しますけれども、重複の部分というのを三つ識別しています。まず過電流は、下流機器の異常故障に起因するものが基本ですので、この過電流機器、下流機器の耐性があるということと、実際に電流が流れても上流機器の維持ができる期間であれば、その期間遮断の時間が延長できるのではないかと考えました。
一方で過電圧につきましては電源供給機能自体の故障ですので、すぐに遮断する必要があるため、遮断時間の延長はしません。先ほど触れました重複の部分ですけれども、これ後で具体化しますけれども、同じものを二つのところで見ているものについてはこれを省いて、余計な動作をしないということができるというふうに考えました。
二つ目の視点としてA系B系機能の差別化ということで、先ほど同じロジックにするということの範囲の中でも、過電流に対する検知機能というのはできるだけ異なる動作とするように見直しをするというもので、結果として今からご説明するようなものが抽出されました。
まず一つ目エンジン駆動電源ですけれども、これ右の上の図もあわせてご覧いただきたいと思います。B系の過電流検知遮断機能は異常検知してから遮断までの時間を今まで8㎳でしたがこれを1秒にいたします。この緑の吹き出しの部分がここの部分の説明ですけれども、正常動作が維持可能な時間というのが、この1秒であるということです。これによりまして短時間の短絡から、一時的な短絡から復帰するような事象。下にありますようなソフトショートのような事象は我々開発の中などで、こういったものを観察することはありますけれども、こういったものが生じた場合にもミッションの継続の可能性が高められるというふうに評価しています。
二つ目が、エンジン制御系の電源でございます。制御系の過電流検知遮断機能。これは今回の検知箇所ではありませんが、上の図で言いますと赤の吹き出しの部分と青の吹き出しの部分です。V-CON2A/2とPSC2で同じものを見ているということから、今V-CON2A/2Bの機能、これ青の方の機能で包絡されるために、PSC2側の機能の赤の部分を削除するというものでございます。こういったことを通しましてシステムをよりロバストにするように改善をして、次の打ち上げから改善を図っていきたいというふうに考えています。
それから信頼性向上の3番目ですけれども、ロケット電気系開発の強化を今からご説明する通りに考えたいと思っています。まずH3ロケットですけれども信頼性、そして運用性の向上並びにコスト低減の観点から、これまでのロケットに比べて電気系を刷新しています。今回今ご説明しました冗長系の適用も含めていますけれども、より複雑なシステムを開発してまいりました。
他方で今回の打ち上げ失敗のことも含めまして最終的な検証の段階で、電気系の課題というのがいくつか確認されています。これらの課題の解決にあたりまして、実際様々な電気系の専門家の参画を得ました。様々と申しますのは、ロケット系の電気専門家以外ということも含めています。これらを踏まえますと、二つの方策が考えられると思っています。
まず一つ目ですけれども、特に開発の初期段階において多面的な知見を活用します。その開発の初期段階というのは、下のフェーズの図を示した図、これはJAXAの開発プロセスを示していますけれども。大体その基本設計の終わりぐらいまで開発の初期段階と私たちは称します。ここでは設計の中で信頼性が作り込まれるということで、エンジニアリングプロセスの中で非常に重要なフェーズです。ここに幅広く電気系の専門家は具体的にはさっきも先ほど申し上げました衛星部門や研究開発部門、あるいはここには書いてございませんけども有人の部門からの知見を得て、これを設計に考慮して取り込んでいくということです。最終的な検証段階で一層信頼性の高い開発ができていた可能性があると思っています。
二つ目ですけれども、開発の規模と質に応じたJAXA並びに企業の方々のロケットの電気エンジニアの確保ということで、今(1)でご説明しました設計を確実に反映していくと非常に重要なエンジン設計プロセスだと思っています。こういったところで信頼性の高いシステムを構築する。あるいは検証の最終段階でくまなくその設計を検証していくということのできる力量を持つ人材を、開発の各フェーズに対応して柔軟に確保すると。これ当面のH3ロケットまだ残りの開発打ち上げも含めて開発ございますので、ここも含めてのご説明になります。やはりこのプロジェクトで人材がフェーズ毎に少し柔軟に増えたり減ったりすることっていうのは開発の難易度やその状況にフィットできると思っています。今まで未着手というわけではありませんが、より柔軟にすることによりましてこういった事象に対応できるのではないかと思います。最後に今後のロケット開発の確実化を図るためにこれらを開発体制および技術開発プロセスに反映していくということを考えています。
最後26ページまとめですけども、今までのちょっと繰り返しになりますのでポイントだけご説明しますと、まずの三つのシナリオにつきましてそれぞれの背後要因を分析いたしました。この丸1から丸3です。対策の方向性でございますけれども、その方向性として視点を抽出いたしましたこの三つのシナリオに対応して、これに基づきロケット開発への開発対策を講じます。最後ご説明しました信頼性向上の観点では、この以下の二つです。計測データの充実化。そして冗長切り替えロジックの改善の観点から信頼性向上に資する改善点を抽出していますので、これを取り組むということと、最後にご説明しました電気系開発の強化を図ってまいりたいというふうに考えています。長くなりましたがご説明は以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございます。背後要因から今後の対策ということで、少し広い概念まで含めてご議論いただきありがとうございます。議論に移る前に最初に私の方から三つほど質問も含めてコメントをさせていただきます。
まず背後要因分析のところで、特に第1・第2の項目のところで、実績品に対する取り扱いというような論点が出てきました。これは奇しくもイプシロンのときにもやはり類似の議論が出てきています。もちろん原因自体はそれぞれにおいて違うこと、それぞれ対策は必要だと思いますけれども、少し広い観点で見たときにその実績の取り扱いや、そういった部分について、全体として少し広い考えや対策が必要ではないかと印象を持っています。報告書の中でも、そのようなメンションをさせていただくことになると思います。今回のH3で出てきた問題、それからイプシロンで顕在化した問題。それの少し大きな意味での背後要因という意味で議論が必要と思いましたというのが1点です。おそらくJAXAさんの中で議論していると思いますが、少し委員会としてもコメントさせていただく必要があるかなというのが一点です。
2番目は、情報の取り扱いについて、私もとても重要だと思っています。コメントさせていただいたこと非常に真摯に受け止めていただいて、次のフライトに向けて具体的な対策をとられていることは、非常に良いことで万全に進められていると思います。もう少し広い視点で考えた場合に、日常でシステム等を扱う場合に故障解析や、あるいはその設計過程における情報を、いわゆる世の中的にはDXと言われている取り組みが進んできている中で、テレメータ情報の充実と解析も今回重要だと思います。そういった視点で情報化についてもう少し降り踏み込んで今後検討される事を期待いたします。これは今すぐではなく長期的に取り組まれるべき内容と思いますし、これについてはおそらくリソースも必要なので、文科省さんも含めて、この辺りにロケットの情報化あるいはDX化ということを視点にして、リソースも含めて今後より積極的に取り組まれることが必要と印象を持っています。こちらもご検討いただき、報告書の中で少しメンションさせていただければというふうに私は思っています。
三つ目の冗長系の考え方についてです。冗長系に関して、皆さんが成功を望んでいる観点から、なぜ冗長系が今回の事象を救えなかったのかという疑問が生まれることは理解できます。しかし、この点については委員会内で議論され、先ほど岡田プロジェクトマネージャが説明した通り、この冗長系は本来電源系にトラブルが起きたときに、極力救うことを目的に設定されているので、今回の事象は電源系のトラブルに起因しており、残念ながら今回の冗長系救うことには無理があります。対象となる推進系自体がシングルであるため、この点に関して対応が出来ないのは無理からぬことであり、元々異なる事象に対処することを想定しています。これは認識として正しいと思います。要は電力会社を停電に備えて2ヶ所と契約していたのだけれども、お家の中で漏電が起きていたとしたらそれは漏電が本当に解消されない限り、やはりそれは救えないということは確かだろうと思います。
ただ今回より踏み込まれて、その状況の中でも違った観点で判定を行う、つまり、二つの系を持っているのだから、そこを違った観点で判定をするということで、よりロバストにしようという取り組みをされたと理解しています。時間というファクターを持ってこられて、その時間というところで、瞬時の事象とそれから比較的継続する事象という二つの観点で見てやることによって、同じ視点で見ていると同じ判定が出ると素直に考えられるので、そこをより広い視点での判定にすることで、よりロバストにされたという取り組みだと思います。これは非常に理にかなっていて、非常に効果的な考え方だと思います。どうしても条件の考え方についてはこれまでもいろいろとご質問等もあったところでもあるので、少し解説も含めてさせていただいたという感じです。
私の方からは以上ですが、今の件に関して何かちょっとコメントとかありましたら、お願いできますでしょうか。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 私の方からでよろしいですか。
 
【木村主査】 はい。お願いいたします。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 今回もご示唆いただきましてありがとうございます。
今回の原因究明の結果として、イプシロンとの共通性のような話題というのは確かにJAXAの中でも議論が進んでいます。イプシロンとの違いもありますので、今回例えば丸1のシナリオですと、使い続けている機器に対して製造しにくさのようなものや、不具合ポテンシャルのところにちょっと踏み込んだような結果になっています。そういった違いはありますが、やはり以前から使っていた枯れた技術をよしとしていくということとあわせて、その枯れた技術をどういうふうに発展させていくか。その辺りの大きな議論というのが必要と個人的に思っています。ここはJAXAの中であまり議論しているわけではありませんが、私自身はそのように考えています。
 
【木村主査】 難しいところですよね。岡田さんがコメントされたように変えることによるリスクっていうのが存在しています。また実績品を活用することでコストや、ある種のリスクは低減できるということもこれは事実です。どちらかというと、これまでそちらにシフトして考えられてきていたというところで、ただそれを使い続けていくときにやはり見直しというか、何かクリティカルなところがないかというチェックはおそらく必要と感じています。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 そうですね。製造を通じて、そこは私たちもいわゆる小さな改善というのを図りながら進めていったわけです。それでもその中で内在したままになっていた部分が、今回そのシナリオの1とか2のうち、特に1に表れたと思っています。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい。それから先生、二つ目に。
 
【木村主査】 情報管理、ごめんなさい。お願いします。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 そうですね。情報DXはJAXAの中でDXについては私が主体ではありませんけれども、そういう活動がどんどん高まっています。ロケットが一つのその取り組みの悩みといいますか、システムが巨大でして、そこに対してどういう切り口でそこに入っていくかということがすごく悩ましく考えないといけないと思っています。H3ロケットの開発の当初もモデルベースという考え方に立てないかということで、私達も取り組みを一度検討しましたが、同じような理由で採用には至ってない部分が多くあります。ぜひいろいろなアドバイスをいただきながらJAXA全体として考えていくことだと思っています。
 
【木村主査】 DXというふうな観点で見たときに、悩ましいのは巨大であるということとそれから打ち上げ回数とか実証回数が非常に限られていることだと思います。逆に考えますと、その実証機会が少ないからこそ、何か情報で補わなければいけないという考え方もあります。そこはトレードオフだと思いますが、ぜひ検討されるといいかなと思います。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
もう一つですね、ロケットのかなり複雑な例えばエンジンの流れ場のような非常に複雑な振動と流れをカップリングしたようなものも取り扱っているものですから、その辺の現象も含めてどういうふうにデジタル化していくかが考えどころかなというふうに思っています。
それから三つ目の冗長化ですけども、これは私たち冒頭ご説明しました通り、次の冗長化そのものは違うものではないと思っていますが、まだ手を入れる余地があると感じています。1回この設計を回させていただきました。もちろんこれからの運用の中で更なる工夫ができるところがあればそれはロバストの方向に舵を切っていきたいと考えている次第です。以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございます。最初のところで三つも質問させていただきまして時間をとってしまいました。委員の皆様ご意見ご質問等ございましたら、お願いできますでしょうか。
門脇委員、お願いいたします。
 
【門脇委員】 門脇でございます。ご説明どうもありがとうございます。背後要因含めてH3の2号機以降の成功に向けた取り組みをもう早速始めていらっしゃるということを聞きしましたので非常に期待をしているところでございます。
今の木村先生から御指摘があった中でDX化っていうお話がありました。私もH3が大変大きな巨大なシステムで非常に難しいことを理解しています。これはH3のプロジェクトというよりも、JAXAさんとして例えばシンプルなものから取り組んでいくっていうようなことをお考えになられているのではないかと感じています。そのような取り組みはありますでしょうか。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 直接私が携わっているわけではないですけれども、研究特に研究開発部門などで小規模なシステムを扱っているところもあります。またこれまでのシミュレーションとかかなり高度な技術を取り扱っている研究部門があります。そういったところを中心としておそらくJAXAのDXっていうのは少しずつ進められていると考えています。
活動としてはあるのですけれどもこのロケットとしてどう取り組もうというところがやはり悩ましい点です。JAXAとしてそのDXの重要性っていうのは認識して活動に入っているところです。
 
【門脇委員】 ありがとうございます。
システムの規模はだいぶ違うと思いますけど、先ほどおっしゃったそのモデルベースの開発という点を見ても、自動車ではやられているメーカーさんもありますね。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 そうですね。
 
【門脇委員】 これはメーカーさんのご努力もお願いしなきゃいけませんが、できるところからやっていくという逃げられないお話ではないかと私も感じます。今後に期待をしたいと思います。
それからもう一つご質問があります。テレメータの話で伝送量の制約があることを私も重々承知しています。これダウンリンクの帯域を広げることなど、そういうようなことは考えていらっしゃいますでしょうか。既に上限近くまで使っている状況でしょうか。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 電波の世界ですので帯域を広げるっていうのは容易ではありません。使える周波数を獲得すること自体が非常にやはり毎回苦労をしているところです。先生がおっしゃるようにその帯域を広げる活動もあると思いますが、一方で例えば圧縮技術などのより多くの情報を得るような方法は例えばないのかと最初に思いました。非常にこの帯域を広げるっていうのは容易ではないと思いました。
 
【門脇委員】 私も無線通信が専門ですので、その辺りは理解しています。周波数があっても例えばアンテナの利得を上げなきゃいけないなど、技術的にいろんなところに影響があることもよくわかります。できる範囲の中でいかに必要なテレメトリの項目を増やしていけるかっていうようなことも継続的に考える必要があると思った次第でございます。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 おっしゃる通りです。
 
【門脇委員】 私から以上でございます。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。余談ですが、先生が最初にお話しいただいたモデルベースの話について、私も自分の勉強として車のワイパーをモデルベースで設計したらどうなるか試したことがあります。それだけでもかなり苦労いたしまして、ロケット1本というのはどういうことになるだろうとそのとき実感した記憶がございます。
 
【門脇委員】 ありがとうございます。
 
【木村主査】 ありがとうございます。まさに通信の専門家のコメントで大変勉強になります。
モデルベースの方は私も追加でコメントしますと、自動車で既に実用化されていますね。宇宙開発のときにいつも問題になりますが、大量に出てかつそれがそのマーケットとして非常に流通していて、コストがかけられる状況であり、台数が出ているからそれのためにDX化を図った方が結果的に価値になり、ドライブがかかるっていう意味合いにおいて、自動車は非常に理想的なのですが、ロケットは非常に悩ましいターゲットであることは確かだと思います。複雑であって回数や情報も非常に限られていて少ない。一方その部分は何か情報で補わないといけないと思います。非常に明らかに難しい課題をそのままお渡している気がしますが、他の兼ね合いをちょっと考えられるといいと思います。モデルベースで全部作ることが無理だとしても、あのテレメトリの取り扱いや、その辺のデータベース化などをある程度工夫していくところを一つでも行うことで、状況がだいぶ変わってくるかなという期待はあると思います。
他はいかがでしょうか?神武委員お願いいたします。
 
【神武委員】 どうもありがとうございます。
度重なるご報告とここまでのあのご努力に改めて敬意を表したいと思います。2号機以降のH3ロケットの打ち上げがうまくいけばというふうに思いますが、最後なのでいくつかコメントがあります。
まず1点目としては、やはりJAXAおよび企業のロケット電気系エンジニアの確保というところはスローガン的になっているところがあると思います。今回の件を含めて何か具体的な対策を考えているようでしたら、一つ教えていただきたいと思います。イプシロンロケットやH3の今後の打ち上げもあり、もう少し視野を広げると日本にもロケットを打ち上げる宇宙ベンチャーの会社もいろいろありますので、その中でロケットの電気エンジニア、アビオニクス系の人材を継続的に育成していくことは重要だと考えています。
あとはもう一点のモデルベースのところ先ほど議論ありましたけれども、目的ではなくて手段として有効なところに適用するべきだと思います。衛星では結構使われているというところと、ロケット系の企業でもメーカーさんの方ではもうモデルベースでコンポーネントの設計等をやられているところもあるとは思います。もし広げていくとしたら、ロケットのどのような部分かお考えがあれば、2点目教えていただければと思います。
あと3点目として、もう万全の対策をとられていることは理解しましたが、2号機以降の打ち上げにおいて、結局打ち上げてみなければわからないところもあると思います。そのあたりがもしあるようであれば教えてください。以上3点です。
 
【佐藤部長(JAXA)】 神武先生、ありがとうございます。1点目2点目ちょっと私の方から回答させていただきます。
JAXAおよび企業のロケットのエンジニアの確保は難しい問題で、常に私たちも悩みながら取り組んできています。今全社で今回の背後要因分析を踏まえた開発の強化っていう話をさせていただいています。手前でも少し他の部門の方でロケットのOB、ロケットから出ていって他の宇宙機をやっている方もいらっしゃいます。その方に目の前のところを手伝ってもらうっていうところは最初の入口として、経営の方でご対応いただいているというところがあります。将来の展望に向けて、今後のプロジェクトや人員確保について検討しています。たとえば、電気の領域では、衛星や有人ミッションでの経験者もおり、また研究開発部門でも研究を行っている人が、これらの経験や専門性を活かし、ロケットプロジェクトにも参画していくことで、社内でも回るような形でやれるように、経営側とも協議しながら進めていきます。あと先ほどからご議論いただいているモデルベースでのお話ですけれども、研究開発部門を中心に革新輸送系の議論を進めています。その中でモデルベースの開発手法というのも取り入れていくということで今検討を進めているというところで、具体的には私も今把握していませんが、今後輸送系に向けた取り組みの中でその辺りも議論されていく予定でございます。
 
【神武委員】 ありがとうございます。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 3点目、2号機打ち上げてみないとわからないところはないかというご質問だと理解しました。テストアズユーフライ、フライアズユーテスト(Test As You Fly, Fly As You Test)という言葉通りにいけば、本当に地上で全てをやり尽くしたいという気持ちでいます。前回ご説明いたしましたが、最後私たちがシステム検証として、2段のできるだけの関連装置・機器を真空状態の中で作動させて、エキサイタの動作まで含みますけれども、実際に私たちのその今回手を打つその対策であのエンジンが正常に動作するかということを、かなりシステムレベルの高いところで検証いたします。
また既に6月には1段の分離の試験も行っています。およそフライトで遭遇するような環境や動作は、かなりの部分は実証した上で2号機に臨めるというふうに思っています。100%ではないのは事実なので、そこに対して何らか補う必要があるかどうかっていうのはもう最後の最後まで打ち上げの直前まで考え続けると思っています。地上でできることは全て手を打った上で打ち上げたいと思っています。
 
【神武委員】 わかりました。ありがとうございます。
最初の佐藤さんのお話の中で、ここはなかなか難しいのかもしれないですが、幸い日本にもロケットに関するスタートアップがいろいろ生まれてきていることと、そちら人材が潤沢ではないという意味では、日本全体でのロケットエンジニア、アビオニクス系のエンジニアを育てていくかというところでの一つのきっかけになると思っています。もちろんロケットのシステムが違いますので、衛星と比べてオープンにできることに制約があるとは思いますが、逆に経験をいろいろなところで積むことでJAXAにとってもロケットでアビオニクス系エンジニアの経験値という意味では高まるのではないかなと思っています。そのあたりはどのようにお考えになるか、少し教えていただければと思います。
 
【佐藤部長(JAXA)】 ベンチャー含めた活動がロケットに関しても非常に広がってきているという今状況かと思います。神武先生おっしゃったようにその中でエンジニア不足は課題として皆さん認識しているところだと思います。革新輸送を今ちょうど議論している中で、テーマを設定して、それに必要なエンジニアに参加してもらって、資金含めて広げていくことが大事だと思います。それにベンチャー側で確保した人の支援という形でJAXAの人がうまく入れるような形を作って、その支援の中でロケットだけじゃなくて他の衛星を経験した方にも知見をいただくというような、これが日本の中でうまく大きく回るような形になるといいのかなと思っています。
いずれしても今後のプログラムをどう立てていくか等も非常に密接に関連するところかなと思いますので、そういう形で議論を進めていきたいと思っています。
 
【神武委員】 ありがとうございます。最後にコメントとして、今回のような議論を例えば大学も巻き込むことで、大学の授業の教材として取り上げることができると思います。これは箱庭的なものではなく、実践的な事例であるため、学生の実践的な教育にも寄与すると感じています。このようなプロジェクトを通じて、産学官連携を促進していくのもよいと思います。これはコメントです。どうもありがとうございます。
 
【佐藤部長(JAXA)】 ありがとうございます。
 
【木村主査】 神武委員、ありがとうございます。
こういう問題についてアカデミアがどう協力できるかっていうところもおそらく日本全体として考えていく価値のあることかなと思っています。ご提案だと思います。ありがとうございます。
他ご意見、ご質問等ございましたら、挙手ボタンでお願いできればと思います。
周辺まで含めて、あるいは今後のロケットをどういうふうに取り組むかというような話題も出てきまして、総合的に議論できたかと思います。どうもありがとうございます。
ここから報告書をまとめていくプロセスに入っていくと思いますけれども、引き続き委員の皆様におかれましてはどうぞよろしくお願いいたします。それでは本日の議題は以上ではありますけれども、最後に今年7月に、能代ロケット実験場で発生したイプシロンSロケット用の2段のモーター爆発事故について、小委員会として原因調査の節目で報告いただきたいというふうに考えています。その時期についてはちょっと調整されると思いますけれども、前回からしばらく経ちました現況について、口頭で結構ですのでJAXA様から簡単にご報告いただければと思いますが、佐藤部長、お願いできますでしょうか?
 
【佐藤部長(JAXA)】 私の方からイプシロンSの2段モーター爆発事故のその後についてですけども報告させていただきます。
前回の報告以降、試験データあるいは製造検査データの確認、や回収した実際のモーターの破片と、そういった調査分析を進めています。その結果として、今回の爆発の起点となった場所をモーターの後方側の胴体ではなくて少し丸まった後方ドームの部分と今特定しています。
前回少しお示ししましたけれども要因として推進薬の燃焼異常、インシュレーションの断熱不良ということを二つお示ししました。これらについてシナリオとして、こういう形であれば再現できそうだというところを今二つに絞り込んでいるところでございます。このシナリオをさらに特定していくために今後追加の解析、あるいは試験による検証を行って絞り込んでいきたいというふうに考えているところです。報告できるところになりましたら報告をさせていただきたいと思います。
なお前回参考で提示いたしましたH3のSRB3への水平展開の評価も原因調査と並行して行っています。こちらの方はH3のリターントゥフライトにも関わってくるというふうに考えていますので、こちらの方は次回の小委員会の方で評価結果をお示したいと考えています。以上になります。
                                               
【木村主査】 ありがとうございます。次回の調査安全小委員会で、こちらでまた詳しく説明いただきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。本日の議事はここまでになります事務局から事務連絡があればお願いいたします。
 
【竹上(事務局)】 本日もありがとうございました。
まず会議資料と議事録の公開について申し上げます。本日の会議資料は文科省のホームページに既に掲載されています。また議事録につきましても、委員の皆様にご確認いただいた後、ホームページに掲載させていただきます。
次回の小委員会でございますが、本日いただいたご意見等も踏まえまして、H3ロケット試験機1号機打上げ失敗に係る報告書を取りまとめていただく予定としており、10月中の開催に向けて調整を進めたいと思います。開催候補日が見えてきた段階で委員の皆様には、日程調整のご連絡を差し上げたいと思います。また、今回非公開部分はございませんでしたが、この後プレスの皆様向けにフォローアップのためのブリーフィングを行う予定としています。事務連絡としては以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございました。それでは本日はこれで閉会といたします。皆様どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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