宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会(第49回) 議事録

1.日時

令和5年7月31日(月曜日) 16時00分~18時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. H3ロケット試験機1号機打上げ失敗原因調査状況について (一部非公開)
  2. イプシロンSロケット2段モータ地上燃焼試験調査状況について
  3. その他

4.出席者

委員

主査 木村 真一
主査代理 神武 直彦
臨時委員 笠原 次郎
専門委員 門脇 直人
専門委員 熊崎 美枝子
専門委員 辻村 厚

文部科学省

研究開発局長 千原 由幸
大臣官房審議官(研究開発局担当) 永井 雅規
研究開発局宇宙開発利用課長 上田 光幸
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 上田 尚之
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 宇宙輸送技術部門 事業推進部長 佐藤 寿晃
 宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 岡田 匡史
 
宇宙輸送技術部門 イプシロンロケットプロジェクト プロジェクトマネージャ 井元 隆行 
 

5.議事録

【木村主査】 定刻になりましたので、第49回宇宙開発利用部会調査・安全小委員会を開催いたします。
 今回はH3ロケット試験機1号機の打ち上げ失敗に関する6回目の議論になります。
 さて、本日もこれまでと同様、オンラインでの開催となっております。委員の皆様には、ご多用のところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 それでは、事務局から本日の会議に関する事務連絡をお願いします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局でございます。連絡いたします。
 本日は所属委員のうち、6名にご出席いただいております。
 次に、本日の資料は、議事次第に記載の通りでございます。
 オンライン状況について、音声が繋がらない等の問題がございましたら、事務局へメール・電話等でご連絡ください。事務連絡は以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 それでは、H3ロケット試験機1号機の原因究明について、前回の会合からの間、JAXAにおいては、FTAの精査、それから故障シナリオの検討が行われており、1/2段分離試験なども行われていると伺っております。このような検証、評価作業が行われてきておりますので、本日は、そうした原因究明の進捗状況について確認していきたいという風に思います。
 なお、ロケットに関する技術であって、機微な技術情報を取り扱う部分については、参考資料1の運営方針に基づき、そのような情報に基づく議論は非公開とさせていただくとことをご了承ください。
 また本日は、7月14日にJAXA能代ロケット実験場で発生したイプシロンSロケット第2段モータ地上燃焼試験における爆発事故に関する調査状況についてもご報告いただくことになっております。
 それでは、早速議題の方に入りたいと思います。
 まず、H3ロケット試験機1号機打ち上げ失敗の原因調査状況について、資料の説明をJAXA宇宙輸送技術部門事業推進部の佐藤部長、並びにH3ロケットのプロジェクトチーム、岡田プロジェクトマネージャよろしくお願いいたします。
 
【佐藤部長(JAXA)】 佐藤です。本日もよろしくお願いいたします。
 今、木村先生の方からご説明いただきました通り、本日進捗状況についてご報告をいたします。
 前回以降、各種の検証試験を進めてきておりまして、完全にシナリオの絞り込みというところには至っていないのですけれども、特に網羅性を重視してまとめてきたつもりでございますので、忌憚のないご意見をいただければと思います。
 では、説明の方は、岡田の方からよろしくお願いいたします。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 H3プロジェクトチームの岡田でございます。どうぞよろしくお願いします。
 それでは、お手元の資料に沿いましてご説明させていただきます。ページをめくっていただきますと、目次が出てまいります。
 本日のご報告内容は2ページでご説明しますけれども、この目次に沿って、1項は再掲部分ですので、2項からご説明していきたいと思います。
 2ページにまいりまして、今回の1か月間の進捗につきましては、あまりチャート上では大きな進捗がないように見えるところもあるのですけれども、時系列の特徴が一つ掴めたということであるとか、網羅性を我々なりにまとめてきたということを中心にご報告したいと思います。
 16ページにまいりまして、ここからがご説明の中身です。16ページは、従前からご説明させていただいております、FTAの後半部分です。
 ここは、このFTAは、一番左の3.2.3項、PSC2から電源供給している下流機器の過電流から出発しているFTAですけれども、この中で赤字部分について、この1か月間での進捗を反映してございます。
 右側の上から二つ目のセルですけれども、ここはH3のフライト環境の影響の中で、機械的環境に関するH3固有のものですけども、これを△から×に見直してございます。
 それは、木村先生からもご紹介がありましたように、今回実機大の分離試験の第2回目を行いまして、この赤字に書いてございますけれども、2段エンジンの着火に関連する各機器の衝撃環境は、想定範囲内であるということを確認いたしました。これにつきましては、後ほどご説明いたしますけれども、そういったことから、ここを×にしております。
 なお、一つ、もう少し調査をしたいと考えておることがありまして、それは試験後のPSC2の分解点検時に、このPSC2の内部の基板の接続コネクタにわずかながら、ですけれども隙間がありました。これは電気的には問題ない範囲という風に考えているのですけれども、念のため、不着火事象との関連について検討を継続しているところでございます。
 それでは17ページにまいりまして、ここからは、我々が今まで識別してまいりました、シナリオが合計9個ございます。そのシナリオについてのステータスを、まずまとめとしてお示ししたのちに、それ以降のページで、その内容についてご説明したいと思っております。
 全貌としましては、シナリオは9個でございまして、H-ⅡA共通の部分が7個、これは最初の方に出てまいります。それから、H3個有が2個です。新たな事実が一つ判明しているのですけれども、現時点では、シナリオそのものの数は減っておりません。最終的に、複数の要因が可能性として残る場合には、それらの要因全てに対して、対策を講じる予定でございます。
 17ページ、18ページには、共通シナリオNo.8からNo.17、これは主にエキサイタの故障部位で、各電気の部品について、どのようなシナリオでということを以前ご説明したものが載せてありますけれども、右側に今回のご報告のアップデートということで、赤字部分が載せてございます。
 これらのシナリオに関する取り組みの状況ですけども、No.8から17まで共通しての取り組み状況として、これは後ほどご説明いたしますけれども、時系列で一点新しく分かったことがありまして、その分かったことが、これら8から17のシナリオと整合しない可能性があるのではないかということで、見極めをしているところです。ここは慎重に評価を今続けております。後ほどご説明したいと思います。35ページで後ほどご説明いたします。
 それから、次のページにまいりまして、19ページですが、ここも共通シナリオのNo.18ということで、これまでの共通シナリオとちょっと毛色が違うエキサイタの中のトランジスタが定格を超過して使用しているというものでございます。これにつきましても、対策は既に取っているところですけども、現在の取り組み状況として、この赤字の部分ですが、ここに関しては、上流から色々な負荷をかけた状態で、地上試験を行っておりますけれども、フライトを極力模擬しておりますが、これ自体の故障の再現には至っていない状況でございます。さらに深く突き詰めるという観点で、(2)にありますように、エキサイタの内部の回路の電気的動作によって、トランジスタが破損する可能性はないかということのメカニズムを詳細に解析検証して、現在その実力耐性を超える負荷による、故障の再現を追求しているところです。これが現在の状況です。
 それから、下のH3固有シナリオ、ここは大きく分けて二つですけれども、この二つのシナリオの内訳ですけれども、これは黒字の部分をご説明いたしますが、まずシナリオのNo.1は、SEIG、2段エンジンの着火によって、下流機器への電源投入された時に、PSC2内の高圧回路が電流変動を起こして、発振・出力不安定となり、過電圧を出力したと。その過電圧によって、下流のシングルポイントであります、PNPまたはエキサイタのある部分を短絡故障させたというシナリオです。下の2番も併せてご説明いたしますけれども、過電圧を生じたというところまでは同じシナリオに載るのですが、その先、(2)にございますが、PSC2の内部の部品、具体的には低電圧のダイオードなどを短絡故障させて、過電流を発生させたというものでございます。この2点のシナリオにつきましては、次のページで、もう少し具体的にご説明しますので、この取り組み状況、右側の取り組み状況のところはスキップさせていただきます。
 では、今ご紹介しました、固有シナリオ2点についての検討状況、20ページでご説明いたします。上半分はNo.1です。PSC2の高圧回路不安定による下流機器での短絡ということで、これも後ほど、もう少し深く内容をご説明いたしますけども、あらましとしまして、丸1でPSC2の、まず降圧回路の不安定化の要因となりうる候補を絞り込みました。それらに起こりうる故障モードを個別に現在評価しているところです。正常なPSC2と下流機器の組合せでは、降圧回路は不安定とならないということを確認いたしました。これは、のちに28ページで網羅的に確認した結果をご説明したいと思います。
 仮にですけども、丸2ですが、仮に何らかの理由で不安定化が生じた時に、下流機器に過電圧が印加されて、過電流に至るかということを検証したのですけれども、下流機器に過電圧を付加しても、過電流の発生には至っていないという状況でございます。これも試験の結果がございますので、後ほどご説明したいと思います。ということで、この丸1、丸2を通しまして、現在、検討は引き続き行っているところでございます。
 それから、下半分、No.2のシナリオでございます。ご説明の内容がちょっと重複するのですけれども、まず丸1の不安定化の要因となる候補については、評価中ということで、丸2で、顕在化した場合に、今度はPSC2の内部の定電圧ダイオードに過電圧を印加するという試験を実際行いましたところ、短絡故障に至ることを確認いたしました。これも内容は後ほどご説明いたします。
 このシナリオにつきましては、丸3にございますけれども、フライトでの事象が最終的にこのA系/B系の両方で生じておりますので、A系で定電圧ダイオードが短絡故障したのちに、B系に伝播するメカニズムが必要と考えております。これは、正常なPSC2の動作では、部品の故障が両系に内在しないと発現しないということから、他系への伝播のメカニズムというのを今追い求めているという内容でございます。
 ここまでが、シナリオの検討状況でございまして、21ページにまいりますと、前回の特にFTA、前回の小委員会におきまして、特にFTAでの網羅性の重要性につきまして、大変色々なご示唆をいただきました。我々なりに、今回網羅性につきまして、まとめてまいりましたけれども、まだこれは部分の話ではないかなという風に思っているところもありますので、ぜひ今回ご意見をいただければという風に思っております。
 網羅性のポイントは二つ、観点としてまとめてまいりました。まず観点の丸1として、固有要因を導き出す、この固有要因につきましては、丸1と丸2、SEIG時に発生する故障モード、それから、A/B系二重故障に至る故障モード、ここにつきまして、網羅的に抽出して、シナリオ化してまいりました。こういった取り組みに抜けがないかということを再確認するために、アプローチをちょっと変えてみました。
 下に小さな点で書いてありますように、FTAの見方をまず変えてみて、システム内に過電流が生じたことをトップの事象といたしましたFTAを再整理しました。これは22ページでご説明します。
 それから、FTAの個々のノードを展開する際の視点の網羅性を担保するために、ちょっと見方を変えて、SEIGに至る時間軸上のシステムの動きとPSC2の両系の接続状態を網羅的に把握するということが必要だと考えましたので、その整理の結果をご説明します。それが観点の丸1です。
 そして、観点の丸2につきましては、後ほどご説明を深くいたしますけれども、PSC2からの過電圧出力の短絡というシナリオにつきましての網羅的な調査分析と対応策が練られているかということをまとめております。
 では、観点の丸1からご説明します。22ページをお開きいただきますと、PSC2系統の過電流のFTAということで、従来のFTA、これはこの資料でも15ページと16ページで最初にお示ししたFTAですが、これは切り口としては、「機能」とか「部位」から要因展開をしております。したがいまして、過電流をトップ事象とした時には、なかなかその網羅性が確認しづらい構成でございました。
 これを補うために、下の図でお示ししますように、この過電流をトップ事象といたしまして、特に今回注意した点は、各要因に展開する時に、どのような視点でそこを展開していくかと。展開の視点を明らかにすることで、網羅性を確認するというアプローチをとりました。下の図、ちょっと字が細かくて恐縮ですけれども、いくつかの例で説明したいと思います。
 このまず緑ですけれども、これが現在、残されている要因に繋がっております。それから、グレーの部分は棄却した要因です。結果的に、このような色分けになるのですけれども、今回黄色の部分、緑とグレー以外の黄色の部分が、丁度分岐点のところから注釈してございますけれども、ここに注目したということです。
 左側からご説明いたしますと、まず過電流を起点としますと、この過電流を起こして、先にインターフェースを守れなくなったのは、電源なのか、負荷なのか、どちらが異常なのかというところでまず分岐しまして、これで完全性が保たれます。網羅性が保たれます。上半分が負荷の異常、下半分が電源の異常ということで、同じようにして負荷の異常からの分岐は、異常の発生タイミングが定常状態での異常なのか、過渡状態での異常なのか、ここで完全性が保たれます。その下は場所ですね。定常状態で異常が起きたと。では、その場所はどこかという箇所で特定すると。更には、その原因は何かという風にフローダウンしてまいりました。一つ一つの分岐に対しては、必ずその分岐したのちに、そこが網羅されるように、そこは注意を払ってFTAを展開いたしました。
 同じように、電源の異常も同じでして、ここの説明は省略いたしますけども、結果的に残されたものは緑の部分で、現時点の別のアプローチをとりました、要因と共通しているものです。
 過渡的な状態につきましては、次のページに載せてございますけども、これは全てグレーになっていて、過渡的状態での異常、具体的にはこの23ページにあります、ラッシュ電流、あるいはサージ電圧、こういったものを過渡現象とした展開を全てグレーとなっておるという状況でございます。ここまでがFTAの網羅性についてです。
 それから、24ページから26ページにわたりましては、前回ご説明しました、H3固有要因の評価にあたってのシナリオの網羅性です。シナリオというのは、どのようにご説明したかといいますと、一つ目はシーケンスに沿ったシナリオですね。24ページの右下にございます、これは前回ご説明した部分を縮小したものですけれども、SEIGで変化するものを洗い出して、それに対して、シナリオ、そしてその評価を述べたということを前回、この右半分を丸々ご説明いたしました。問題は、注目するべきは、SEIGで変化するものがこれで全てですか、ということですけれども、それにつきまして今回追加でご説明いたします。
 今回の追加は、左半分のシーケンス・オブ・イベントですけれども、これは、2段のエンジン着火、SEIGの前後で動作するもの全てを洗い出したものです。丸1から丸5+エンジンアクチュエータ、これらが全て、このようにONからOFFに動作していくと。あるいは、その状態を保持するというものですけれども、こういった変化したものを全て洗い出しまして、それが前回ご説明したものと紐づくということを確認いたしまして、これも網羅性を再確認いたした結果でございます。
 25ページには、二重故障に至る故障モードの評価でございます。これも同じように、右半分が前回ご説明した資料、26ページも前回の資料を再掲してございます。この区分が非常に網羅性が分かりづらいという風に我々も再認識しまして、それを左のようなFTA的に分割して紐付けてみました。
 二重故障を起点といたしまして、このA系/B系がどういう関係性を持っているかということですけども、A系/B系で、同じ要因で両方それぞれが不具合に至るというものがA系/B系で同じ要因というものです。
 連鎖する要因というものがその対極にございまして、その連鎖の中でも直接連鎖するものと何かを介して間接連鎖をすると。それから、直接連鎖をするものも、下流を介した連鎖であるものと、内部で連鎖するものがあると。こういった区分を網羅性を確保しながら行うことによりまして、前回ご説明した想定するモードというものが全てカバーされていることを再確認いたしました。ここまでが網羅性の前半です。
 網羅性の後半でございますけれども、27ページにまいりまして、今度は観点丸2ということで、先ほど軽くご説明させていただきましたけども、過電圧出力による短絡というシナリオにつきまして、これから申し上げます観点で、網羅的な調査・分析と十分な対策立案ができたかということで、まずはA)としまして、PSC2が過電圧を発生させるメカニズムの抽出ということで、ここが網羅的に抽出できているか。それから、このうちで、今回フライトデータ、あるいは地上試験の時にデータとして現れていないものですから、そこに現れないモードというのは、どういうモードがあるのか、ということをまとめて識別いたしました。
 次に、今度は受ける側ですね。過電圧を受けた時に過電流に至る要素は何かということで、これを識別いたしました。そして、対策の十分性はこれらを受けて、どうかということで、順を追って、28ページからご説明いたします。
 まず、A)とB)に関して、ですね。四角で囲んであるところをご説明します。PSC2の内部の駆動電源に関係します、全ての電気素子・部品に対しまして、想定される故障モードを列挙しまして、過電圧となりうるかということと、その故障が検出できない場合があるかと。この検出できない場合というのは、例えば、BITが必ず検知されるであるとか、データに明確に現れるというものですけども、こういったことがない場合があるのかということです。
 結果的には、下にございます、スモールa, b, cの部品の故障モードにつきまして、合致する可能性が残っているということで、今詳細検討を継続中です。次のページで、補足的にご説明したいと思います。
 それから、28ページの下を先にご説明しますと、C)ですね。これらを受けた結果として、システム内の部品の短絡評価として、全ての電気素子に対して、短絡故障のリスクを評価しましたところ、PSC2内部の定電圧ダイオード、それから、PNP/エキサイタのみが、この対象となることを確認しました。
 29ページには、28ページのA),B)でご説明しました、PSC2の降圧回路のブロックダイアグラムをご説明しています。ブロックダイアグラムとして、このFPGAから、FETスイッチ、そしてその前段であります、駆動回路をスイッチすることで、右にあります56V電源、この上流からFETスイッチを介して、右側に矢印が向かっておりますけども、下流に向けてインダクタ、それとコンデンサが関わってきますけれども、これらを通しまして電流が下流に流れます。先にご説明いたしました通り、赤で囲んである部分ですね、FETスイッチ、それからインダクタ、コンデンサにつきましては、仮にここに故障が起きていた場合に、フライトで異常が検知されない可能性があるということで、ここを現在深掘りしているところです。なお、FPGAに関しましては、あとで制御ロジックの適切性についてご説明いたします。
 それから、30ページにまいりまして、最後、対策立案の十分性ですけれども、今までご説明いたしました、A)~C)の検討結果に基づきまして、前回ご説明した対策範囲、下の丸1から丸2,丸3、FPGAの制御応答速度が不足することに対する対応であるとか、安定性余裕が不足する場合の対応、それから定電圧ダイオードの増強、これらにつきましても範囲は十分であったということが、A)~C)の検討結果から改めて分かりました。
 この上記のうちで、上の二つですね。制御定数の設定と、それから回路定数の妥当性につきまして、次のページで簡単にご説明したいと思います。
 まず、全体としてFPGAの制御定数の設定の妥当性でございますが、31ページにまいりまして、このFPGAの全体のフローですけれども、処理フローですけれども、各センサデータが切換器を通しまして、A/D変換されて、FPGAの中に入ってきます。FPGAの中では、制御演算器がございまして、その結果がFETスイッチおよび駆動回路に出力されると。
 こういった中で、観点としては二つですけれども、一つ目は、FPGAの制御サイクルが既定の時間の中で処理をしているかということと、二つ目として、制御系として安定しているかという、この二つの見方でございます。その二つの見方につきまして、32ページから33ページにかけてご説明したいと思います。
 まず、制御サイクルの時間の成立性でございますけれども、先ほどのフローに沿って演算がされ、時間が流れるわけですけれども、こういったタイミングについては、シーケンスに沿ったタイミング設計が行われておりますが、以下の観点から、そのタイミング設計が妥当であるということを、実測によって確認いたしました。
 まず一つ目は、切換器の切換後から、AD変換が行われるまでのタイミングに対して、電位静定にかかる時間は、相対的に短く、安定であるということと、それから下流ですね。制御演算完了から、PWMのデューティ更新、バッファ退避までの時間余裕は十分あると。こういった一連の時間の流れを通しまして、ここに十分な時間が確保できているということを確認しました。
 それから、33ページにまいりまして、二つ目は制御系としての安定性でございます。下に制御演算器の概要をブロックダイアグラム的に載せてございます。フィードバック制御に用いる制御演算則、これは比例・積分制御において使用される各ゲインの設定は、次の観点で妥当であるということを確認しました。
 まず比例ゲイン、積分時間のパラメータスタディの結果、ゲイン余裕、それから位相余裕が十分にあるということを確認いたしました。それから、実機システムに対する外乱入力に対しましては、一巡伝達関数のゲイン余裕、それから位相余裕の実測結果が十分あるということを、システムの動作確認を通じまして確認をいたしました。このような結果から、制御系としての安定性は確保されているということが言えるという風に考えております。
 34ページ、網羅性の確認のまとめでございますけれども、ちょっと繰り返しになりますので、大半割愛させていただきますけれども、観点丸1、観点丸2につきまして、それぞれの検討結果として、全体的には網羅できているという風に考えておりますが、まだまだ網羅性の確認をこれからも引き続き、続けてまいりたいという風に考えてございます。
 それから、35ページです。35ページは、少し毛色が違うのですけれども、時系列の詳細検討を行った結果、新たに一つ判明したことがございます。それについて、1ページでご説明します。
 前回のご説明の時に、「エキサイタON」からA系の過電流検知を開始した時間には、時間のギャップがあって、約10ms、10ミリ秒程度あると。エキサイタONした途端に、異常を検知していないということですけれども、そういったことをご報告しました。
 さらに、そこを突き詰めて検討しましたところ、下の図にあります通り、エキサイタをONして、約4ミリ秒後までの電流値は正常範囲内であるということが判明しました。つまり、このタイミングまでは、電流の大きな変化がなかったということを意味します。
 これらの結果から、エキサイタONの約6ミリ秒から約10ミリ秒の間に、電流値が増加した可能性があります。この分析結果を踏まえて、これまでご説明した故障モードの中で、否定できるものがないかということを、現在詳細かつ慎重に分析を行っているところでございます。
 36ページからに数ページにわたりまして、試験結果を載せてございますのでご説明いたします。36ページには、下流機器の過電圧試験の結果です。これは固有シナリオNo.1に繋がっている、20ページでご説明した内容ですけれども、この左下にございますような試験コンフィギュレーション、電流を発生させる装置の下流に、PNPとエキサイタをぶら下げまして、実際に過電圧をかけました。過電圧のかけ方は、この右下にありますように、様々パターン、そして定格を超える様々な電圧で負荷をかけたわけですけれども、その結果として、過電圧によって、下流の機器であります、PNPあるいはエキサイタを短絡故障させるモードというのは、現在確認されておりません。異常が試験結果としてもなくて、相当な負荷をかけても、ここは壊れることはなかったと。正常な機器でありますと、壊れることはなかったというものでございます。
 それから、37ページ、次の試験すけども、これは定電圧ダイオードの過電圧試験です。定電圧ダイオードは、左下のPSC2の中のA系/B系それぞれに、電圧を過大に生じさせないように、矢印で指しているところに、それぞれ装着されています。PSC2の制御が不安定となり、過電圧が出力されたことを想定して、このダイオード、単体20サンプルを模擬的な評価として、この右下にあるように、直中電源から電圧を直接かけるということを行い、過電圧による降伏電圧の傾向の評価を行いました。
 結果は38ページに載せてございますが、試験結果としては、この20サンプルは、ほぼ一定の電圧で降伏、雪崩的に大電流が発生すると。下の図でご説明しますと、横軸電圧、縦軸電流ですけれども、電圧をずっと上げていきますと、だいぶこれはグラフが重なっているのですけど、ほぼ同じくらいの電圧で、一気に大電流がボンと流れるという現象が起きるということを確認しました。
 したがって、電圧がある一定以上かかると、ここは電流が流れ、且つ抵抗値が全ケース短絡状態であるということを確認できましたので、今回のシナリオの中の一部の構成要素が確認できたということでございます。まだこれは、シナリオ全体がこれで通るというものではありませんので、これは一部の確認ができたということでございます。
 それから、39ページにまいりまして、実機大の分離試験のご説明です。実機大の分離試験につきましては、6月の27日ですかね、6月の下旬に、種子島宇宙センターにおきまして、2回目の試験を行いました。1回目の試験に比べまして、搭載機器の質量を合わせ込むであるとか、あるいはPSC2、注目の的になっておりますPSC2につきましては、実機を搭載するなどして、極力実際の状態に近い状態で、火工品を作動させる試験を行いました。かなり良いデータが、良いというか、実際のデータに近いデータが取れたわけですけれども、この結果として、丸1にありますように、2段機体の各部の衝撃レベルが取れましたので、この結果をもって、実機の衝撃環境条件を適切に見直しいたしました。この結果として、いくつかの機器につきましては、再認定を行って、それが保つということをしっかりと確認する必要は出ておりますけども、このプロセスに入っております。このスラストコーンの上のデータというのは非常によく取れたということも括弧の中で書いてございます。
 それから、丸2番ですけれども、PSC2の実機を搭載したわけですけれども、この搭載した結果として、PSC2を分解しましたところ、冒頭ご説明しましたが、基板間の接続コネクタに、わずかながら隙間がありました。これ自体は、直接何か不着火の原因に繋がるかどうかということは、まだ直接的な繋がりがあるかどうかも含めて確認をしているところです。
 その他、丸3ですけども、これは最後のまとめになりますけれども、全般的に各機器の衝撃環境レベルは想定範囲内でございまして、この想定範囲というのは、4月の27日の会合で、有識者会合にてご説明した、その範囲、1号機の打ち上げ後に改めて想定した範囲というものでございますけれども、システムレベルの故障モードや未知の故障シナリオは抽出されませんでした。
 ということで、最後40ページにまいりますと、まとめと今後の進め方でございます。ここはちょっと読み上げをさせていただきたいと思います。
 原因究明の結果と対策ですけれども、FTAの一部絞り込みを進みましたが、現時点でシナリオの絞り込みには至っておりません。
 これまでの検討の網羅性を整理しました。現在、我々としては、シナリオの範囲に抜け漏れはなく、対策範囲が十分であるということを確認しております。この網羅性につきましては、今回限りということではなく、検討は続けたいと思っております。
 時系列の詳細な評価と分析を進めまして、6msから10msの間に電流値が増加した可能性があるということを認めました。
 現在、要因の特定には至っておりませんので、複数のシナリオの詳細検討を並行して行っております。
 最終的に、この要因が複数可能性として残る場合には、それら全ての要因に対して対策を講じる予定でございます。
 今後の進め方ですけれども、検証作業、それから詳細検討によって、シナリオの絞り込みを進めまして、H3ロケットの打ち上げの再開に向けて、採用する対策を具体的に決めていきたいという風に考えております。
 並行しまして、背後要因の分析と水平展開の整理を進めてまいります。ご説明は以上です。
 
【木村主査】 ご説明ありがとうございました。
 真摯に原因究明のプロセス、それから、各種試験を進めていただき、本当にありがとうございます。取り組みに対しまして、敬意をまず表したいと思います。
 今回も大変、多い資料をいただきまして、大量でしたので、少し私の方で主な構成について、ちょっと確認を最初にさせていただきたいと思います。
 今回大きくは、原因に迫っていくという意味で、固有シナリオの検討状況、それから、これは前回私からも、指摘させていただいたのですけども、網羅性についての検討ということで、この2点、これが大きなご報告の塊ということでよろしいですよね。
 さっき、ちょっと飲み込めなかったのですけど、2-6の試験結果というのは、主には2-3の、H3固有シナリオの検討状況の補強材料というか、実際の試験結果をまとめたもので、ちょっと間に網羅性の確認のところが入っているという、そういう状況ですよね。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 そうですね、構成が分かりづらくて申し訳ございません。その通りでございます。
 
【木村主査】 そういうことですよね。
 シナリオとして、この試験結果のところで、シナリオとして否定されたものも多いのですが、ツェナーダイオード、定電圧ダイオードですね、これのアバランシェ降伏ですね。絶縁破壊というか、それによって導通が起きてしまう可能性というのは、これは残っているという風に確認ができたと。これが、今回の非常に大きなところでしょうか。
 あと、網羅性の確認について、これは大変な作業だと思います。ご検討いただいて本当にありがとうございます。わたくしにとって、この23ページ、24ページのご説明はとても分かりやすくて、論理的に全事象を適切に分析されていると思われまして、全体としての全事象をくまなくちゃんとフォローできているという安心感を持ちました。こういうアプローチはすごく大事かなという風に思います。ありがとうございます。
 これを伺っている時に、実はちょっと私の方で疑問というか、悩ましいなと思ったのは、この次のところで、事象として、SEIG時に発生する故障モード、それからA系/B系の二重故障に至るモードという風に抽出されています。このところのロジックは、おそらくこれまで議論いただいていたのだろうと思うのですけれども、今回の資料ではご説明がなかったように思います。この事象は、結果的に、この二つの事象に落とし込まれるのだ、というロジックが繋がっていると、より分かりやすいのかなと思います。ここのところが、ちょっと実は私自身として気になったポイントではありました。もし可能であれば、ここのところを少しご説明いただけるといいかなと思います。
 ちなみに細かいことですけど、27ページの丸2のA系/B系二重故障に対する故障モード、と記載がありますけれども、これに対応するのは丸1のSEIG時に発生する故障モードですので、おそらく25ページの説明が、これの丸1に対応する説明という理解でよいですね。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 先生、その通りでございます。すみません。
 
【木村主査】 了解しました。そうすると、だから、もし先ほどのFTAを詳細化いただいて、全事象がちゃんと分析されている。そうすると、そこから今度は事象として、SEIG時に発生する故障モードとA系/B系の二重故障に至る故障モードにしかないという、ここのロジックが繋がれば、ここから先は、この二つの資料によって、全て事象が分析されているという風に判断できる、こういうような仕組みだと思います。了解いたしました。
 あと、また今回検討中ですけれども、もう一点今回明らかになったこととして、時系列の詳細検討という中で、エキサイタONの6msから10msの間に電流値が増加しているという、これが分かってきたと。これによって、要は、この情報が足されることで、おそらく故障モードについての情報が増えるだろうということを期待されているという、こういうご説明ですよね。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 その通りです。
 
【木村主査】 全体として了解いたしました。ありがとうございます。
 このように理解すると、先ほど指摘させていただいた部分のロジックが繋がると良いなという風に私の方は思ったのですけど、その辺りのご説明というのは何かありますか。おそらく、これまで議論いただいていたのだと思うのですけれども、ここに載っていないので、私がちょっと失念しているだけだと思うのですけれども。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 そういう意味で申し上げますと、我々、お手元の資料の15ページ、16ページの中から、最後、先ほど先生が仰った丸1,丸2というシナリオに至っているわけですけれども、確かにこのFTAとシナリオの繋がりというのは、すごく表現として難しくて、FTAを完成させるために、このシナリオのイメージが横にある、というちょっと複雑な関係があります。
 ですので、今日先生皆様から、ぜひ色々なアドバイスをいただいて、我々としては、一通りやり尽くしていると思っておるのですけれども、ここの整理学として、明快にその辺が分かるようにしてみたいと思っております。
 
【木村主査】 そこもイメージがつながると良いなと思います。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 そうですよね。
 キーワードは、やはりこの過電流が発生したタイミングがいつか?であるとか、それからA系とB系の検知は事実としてあったのか、ないのか、こういったところを全て場合分けして網羅することによって、これらの組み合わせみたいなものが出てくると思うのですね。
 それらから最後導き出されて、このFTAと組み合わせながら、これが残っているということをはっきりさせられるのではないかと思いますけど、ちょっと先生、まだ頭の中にあるレベルですので、今いただきましたアドバイスで、もう少し整理を続けたいと思っております。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 そこが繋がると、おそらく全体として分かりやすいというか、全体がちゃんと把握されていて、その中で、現在得られている情報だけから、完全に状況を再現するだけの情報が得られるかどうか分からないので、その原因となる範囲が特定できているという説明が多分必要だと思うのですよね。
 さらに、私自身も物を作る方の人間なので、よく分かるのですけれども、物を作っているとどうしても、FMEA的な発想というか、物の方から意識して考えるという方向が、どうしても強くなってしまいます。ただ、FMEA的な考え方はボトムアップなので、全体像をくまなく尽くしているかがわかりにくい。FTAは、全体の事象をくまなくトップダウン的に分析できるというメリットがあるので、これを上手く活かすというのは、こういう時に意識するのが大事かなという風に思いました。すみません、最初に長く時間を取りまして申し訳ないです。さて、ご質問・ご意見等、いかがでしょうか。もしございましたらお願いいたします。笠原委員、お願いいたします。
 
【笠原委員】 ご説明どうもありがとうございます。また、非常に真摯な、丁寧なご説明、検証、大変頭が下がる思いでございます。また、今の木村委員長の観点で、色々お話いただいて、大変色々ありがとうございます。
 私はちょっとまだ理解が追いついていないところが、ちょっとどころかたくさんありまして、ちょっと26ページの図で質問させていただいてもよろしいでしょうか。
 まず、私の理解では、原因の特定に至っていないのですが、漏れがないように、全体の系に対して、十分な網羅性を担保するような考え方で、原因究明が完全にいかなかったとしても、この部分に対して十分な手当をすれば、今後のH3の再開を目指すことができるという風なお考えが一つと。
 あともう一つは、今回実験等で、A系/B系の定電圧用のダイオードが短絡の原因の一つになりうる可能性があるというお話がございました。
 もう一つは、PSC2の下流側に関しては、かなりの負荷をかけても、なかなかそういう短絡に繋がる事象はない、そういう風なお話だという風に理解いたしました。
 あとは、例のタイミングですが、前回は10msだったのが、6~10msの間という、さらに絞り込まれた時系列的な絞り込みがあったということ。それから、具体的な分離試験をして、ほとんど影響はないはずですが、これはコネクタではなくて、実際はかすかに1ミリ程度の、若干の隙間ができたということを理解したつもりでおります。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 その通りです。
 
【笠原委員】 ありがとうございます。
 網羅性のことは、すごく重要だと思うのですけど、すみません、どうしても単純な原因の関連性に関しての質問になってしまうのですが、やはり具体的なダイオードの破壊現象と、それから、やはり6~10msという絞り込まれた時間、そこには、やはり何らかの因果関係というか、関係性を、今の段階で何かお答えしていただくことはできるのでしょうか?ということと、それから、やはりA系/B系に伝播する経路というのは、この絵で言いますと、実際にこの回路が繋がっている、あるいは下流側を介してということをお考えになられているのでしょうか?というところの、もし何か具体的なお話をしていただけるようであれば、ぜひその点がやはり気になりますので、伺わせていただければありがたいなと思います。質問は以上でございます。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 先生、ありがとうございます。
 最初に、全般的にですね、前半でご説明いただきました、一点、一点につきましては、その通りでございまして、我々現在、原因の特定には至っていないので、一つに特定できない場合には、全てに手を打つというのが定石という風に考えてございます。そして、そのあとサマライズしていただきました内容については、その通りでございます。
 今回、先生が仰られた、定電圧ダイオードにつきましては、これはシナリオの一つの、一部を構成する部分ですね。したがいまして、最初から最後までをシナリオとして通すためには、まずいくつかのピースを埋めなければならないという風に考えています。
 その一つは、まずフライトの時になぜこれが起きたかという、そもそも過電圧というものがなぜ発生したか、フライトのデータでは見えていない何かというのは何か、ということから始まりまして、先生が途中で仰られました、ツェナーダイオードが、仮にそれで壊れたとした時に伝播をするというのは、どういう仕掛けかと。この件につきましては、PSC2の内部で一つ経路が見つかっておりまして、これは今シミュレーションなどを通しまして、これが本当に確かな経路、伝播経路かということを確認しているところです。
 ですから、今固有シナリオ2というところに該当するのですけれども、その2を、一つより確かなものにするためには、今申し上げた色々なピースを埋めていかなければいけなくて、その作業を今続けているところでございます。
 
【笠原委員】 本当にありがとうございます。よく分かりました。ご説明、本当にどうもありがとうございました。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
 
【木村主査】 ありがとうございます。そうしましたら、他にご質問はいかがでしょうか。あるいは、場合によってはアドバイスもあるかもしれませんが、いかがですかね。いいですか。大丈夫ですかね。
 おそらく大量のデータもありましたので、咀嚼する時間も必要かなとも思います。また、何かこういうのでアドバイス等がありましたら、また事務局を経由してフィードバックさせていただくこともできるかもしれません。よろしいですか。
 よろしいようですので、そうしましたら、次の議題の方に移らせていただいて、あとで、これは非公開の部分もございますけれども、次の議論の方に移らせていただきます。ありがとうございました。
 
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 どうもありがとうございました。
 
【木村主査】 そうしましたら、次、第2点目ですね。詳細のデータについては、このあと非公開部分で行わせていただくということにさせていただこうと思います。一旦議題を、イプシロンSロケット第2段モーターに移したいと思います。
 それでは、資料の説明を、こちらを再びJAXA宇宙輸送技術部門事業推進部の佐藤部長、並びにイプシロンロケットプロジェクトチームの井元プロジェクトマネージャ、よろしくお願いいたします。
 
【佐藤部長(JAXA)】 では、今投影されておりますけれども、イプシロンSの方の2段モーターの調査状況をご説明したいと思います。
 こちらの方、このような中でまた爆発というかたちで起こしてしまいまして、地域の方を含めて非常にご心配をおかけしているところです。完全にこちらの方は、まだ起きたばかりというところですけれども、今鋭意調査を進めておりまして、イプシロンのみならず、固体モーターということで、H-ⅡAのSRB-A、あるいはH3のSRB-3、そういったものに対する水平展開というものも同時並行で進めているというところで、本日その状況についてご説明をさせていただきたいと思います。
 ではまず、井元の方から説明いたします。お願いします。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 イプシロンロケットプロジェクトチームの井元でございます。
 6号機失敗と同様に、しっかり原因を究明して、対策を反映して、信頼性の高いものにしていきたいという風に考えております。
 めくっていただきまして、右下2ページ目、目次になります。概要と、あと今回の2段モーターの地上燃焼試験と、参考として今後の計画及び進め方についてご説明いたします。最後に水平展開の状況になります。
 右下3ページになります。まずイプシロンSロケットですけども、H3ロケットとのシナジー効果を発揮いたしまして、国際競争力を強化するということで、6号機までの打ち上げと並行して開発を進めてきているものでございます。
 左側に6号機までの強化型、それから、右側にイプシロンSということで、その比較を示しております。今回、爆発事故を起こしてしまったものが、2段になりまして、1段につきましては、SRB-3を適用しているということ、あと3段については、6月3日に地上燃焼試験を実施して、良好に終了しているという状況で、今回2段についてのご報告になります。
 右下4ページをお願いいたします。こちらは強化型の2段モーターとイプシロンSの2段モーターの比較を示しておりまして、ロケットの打上げ能力最適となるように、推進薬量を増やしているということと、強化型までの成果、それからSRB-3の成果を活用して、高信頼性・低コスト化を追求していくといったようなことを目的として、開発を進めているものでございます。
 まず大きな特徴といたしまして、強化型からイプシロンSへの変更点としまして、推進薬量が、こちら15トンから18トンに増やしております。それから、真空中推力ということで、約470kNから約610kNというところで増やしていると。燃焼時間につきましては、強化型の130秒から、イプシロンSの2段では120秒ということで、大きくは変更なしということで、燃焼圧力も高めになります。
 こちらに書かれておりますけども、外側から見ますとモーターケースとノズルとTVCという、スラストベクトルコントロール、姿勢制御をする装置、アクチュエーターですね。こういったものが構成要素としてあります。
 続きまして、5ページをお願いいたします。こちらから、2段モーターの地上燃焼試験の概要になります。まず、試験目的はこちらに書かれている通りでありまして、設計の妥当性を確認することを目的としておりました。試験場所といたしましては、秋田県の能代実験場、真空燃焼試験棟になります。供試体ですけども、真空燃焼試験棟というところで試験はしましたけども、大気圧下で試験をするということで、ノズルの内部流れの剥離防止といたしまして、実機よりも短いノズルを使用しております。計測項目としては、約170点になります。
 実機と燃焼試験の仕様、モーターの仕様の比較を右下に記載しておりまして、基本的にノズルが短いこと以外は、例えば、モーターケースですとか、推進薬、そういったものにつきましては、実機と同じ形になっております。
 続きまして、右下6ページ、試験の結果を示しております。点火日時につきましては、7月14日金曜日9時でございます。結果ですけども、まず予定時刻に点火をいたしまして、燃焼試験を開始いたしました。
 点火後、約20秒辺りから燃焼圧力が予測圧力から乖離を始めておりまして、どちらかというと高い側に乖離しているという状況であります。
 丸3といたしまして、この点火後、約57秒の時点で、燃焼圧力が約7.5MPaになりまして、モーターが爆発したというものでございます。この燃焼圧力につきましては、最大使用圧力が8.0MPa、それから耐圧試験の圧力10.0MPa以下ということで、こちらのモーターケースにつきましては、耐圧試験であります、10MPaで実際に試験をかけたものでありまして、それ以下で爆発が発生しているというものであります。
 丸4としまして、モーター爆発まで、ノズル駆動、先ほどご説明したTVCですね、このTVCの作動は正常でありました。
 丸5になりまして、モーター爆発によりまして、真空燃焼試験棟で火災が発生して、消防隊による消火活動によって、約2時間後に鎮火いたしました。
 丸6ですけども、2段モーターの大部分は、立ち入り規制区域内である真空燃焼試験棟内外に飛散しております。安全の観点、つまり建屋の安全の観点から、真空燃焼試験棟外の一部の飛散物を回収しております。内部については、まだ安全を確保するために、一部そのままになっているという状況です。
 それから、被害状況ですけども、人的被害、それから第三者の物的被害は、今のところ被害の報告はございません。JAXA施設の損傷ですけども、真空燃焼試験棟及びその内部設備の損壊、それから、実験場内の隣接建屋の破損ということで、窓ガラス、扉等が破損しているという状況でございます。
 続いて、7ページになります。こちらは、爆発前後の真空燃焼試験棟の外から見た映像になります。こちら、左側が正常な状態で、その60分の1秒後にワンフレーム進むのですけども、その直後の状況になります。つまり、17ms後くらいのデータで異常な燃焼が確認できるものになっております。つまり、非常に短い時間の間で、このような事象が発生しているということでございます。
 それから、8ページに移りまして、真空燃焼試験棟の損壊状況の写真を示しておりまして、左側に建屋全体の図、それから内部の状況を示したものでございます。
 真空燃焼試験棟は、爆発直後の状況を示しておりまして、このあと、秋田県に大雨が降りまして、天井等が一部落ちてくるという状況でありまして、現在、安全化のための検討を実施して、8月上旬にその処置を実施するという状況でございます。
 続きまして、9ページをお願いいたします。圧力・推力データになります。
 右上の図が、圧力と推力の状況で、まず圧力ですけども、水色と濃い青のものになります。56.970秒の直前辺りから、多少揺れが発生しまして、圧力が降下するという事象が確認できております。
 それと並行いたしまして、推力が上昇すると。この推力の校正範囲が500kNでして、それを超過してしまうと。この1ms後以内に超過するという、非常に極めて短時間での瞬時での事象ということが分かります。
 それから、56.973秒後辺りからも大きく振動しておりまして、この辺りから圧力計測につきましては、あまり信憑性がないというデータになっております。
 それから、高速度カメラの画像を下に示しておりまして、56.972秒くらいまでは、ノズルの中の、ノズルからの燃焼ガスの流れ、こちらは正常を示しております。
 その1ms後に、黒煙のようなものが見えて異常な状態、そのさらに1ms後の56.974秒の時点で、もう見えなくなっているという状況が確認できました。
 この56.973秒の時点、こちら、ノズルの出口の形状がかすかに見えておりまして、この画像ではちょっと分かりにくいのですけども、拡大して比較いたしますと、このノズルの出口部は形状を保っているということまで確認できております。
 続きまして、10ページ目、FTAということで、原因のところになります。今、現時点、製造検査データ、試験データの評価を継続して実施しているところですけども、まず2段モーター爆発について、FTAを展開いたしまして、モーターケースの破壊、それからノズルの破壊・脱落、この二つの要因に分解しております。
 現時点においては、何らかの理由でモーターケースに熱的に過大な負荷がかかって、構造部材が強度を維持するための許容温度を超えたということで破壊に至った可能性が高いという風に分析しております。
 供試体起因といたしましては、モーターケースの中にあります、推進薬の燃焼異常、それから、推進薬とモーターケースの間にあります、インシュレーション、こちらの断熱不良が要因として今残っているところであります。詳細については、継続して調査を進めているところであります。
 続いて、11ページをお願いいたします。こちらに、2枚にわたってFTAを展開しておりまして、まずモーターの爆発に対して、モーターケースの破壊を1次要因として抽出しております。
 それに対しまして、モーターケース以外のところからの負荷が大きかったというのを2次要因として書いておりまして、そのうちの一つが、内圧の課題になります。こちらにつきましては、破壊時の圧力は、耐圧保証圧力以下であるということで、要因ではないという風に考えております。
 それから、モーターケースに係る外部の荷重、こちらが過大、につきましても燃焼前のモーター装着状態は正常でありまして、試験データであります、変位とか歪がありまして、そちらをデータ評価した限りでは、過大な外部荷重はないということで、こちらは正常であるということを確認しております。
 それから、熱負荷の過大ということで、推進薬の燃焼異常、それからインシュレーションの断熱不良、こちらは今、詳細、設計ですとか、製造、それから輸送して能代での組み立て、こういったところの詳細を今確認しているところでございます。それから、一番下の外部の入熱過大。これは燃焼ガス等で、外側からモーターケースが炙られて、熱が過大になったというものにつきましては、画像データ、それから試験データ、温度、外表面温度、こういったところから、要因ではないという風に判断しております。
 続きまして、12ページをお願いいたします。2段モーター爆発のモーターケースの破壊のうち、モーターケースそのものの強度不足につきまして、こちらは、設計不良、製造不良、組立不良、全て確認いたしまして、試験データ、それから製造・検査データ、あるいは組立作業の結果、そういったところから要因ではないという風に判断しております。
 続きまして、ノズルの破壊・脱落、こちらも過負荷と強度不足に分けておりまして、この過負荷につきましても、内圧過大、それから外部荷重過大、熱負荷過大、こういったところは全て要因ではないという風に判断しております。
 それから、強度不足につきましては、設計不良、こちらはちょっと時間の関係で、まだ今細かい確認を継続しているところではありますけども、試験データであります、変位とか歪は正常であります。それから、画像データから異常発生時に、ノズル出口部は形状を保っているという観点で、このノズルの設計不良であるという可能性は、今極めて低いという風に考えております。それから、製造不良、組立不良につきましては、全て確認いたしておりまして、要因ではないという風に判断しております。
 最後に13ページ、現時点のまとめになりまして、まずイプシロンSロケットの開発計画についてですけども、こちらは、まず2024年度下半期の実証機打ち上げを目指して開発しているところでございまして、今回発生した爆発事故の影響につきましては、原因調査と並行して開発計画を今検討しておりまして、再精査した上で、打ち上げ時期の見直しが必要かどうか、今検討を進めているところでございます。
 今後の進め方といたしましては、今回発生した事象の原因調査を進めて、2段モーターの再試験が必要であるという風に考えておりますので、試験計画を早期に再設定いたします。それから、原因調査の進捗を踏まえつつ、イプシロンSロケットへの水平展開として、1段モーター、それから、3段モーターの評価を実施いたします。イプシロンSに関しましては、説明は以上になります。
 
【佐藤部長(JAXA)】 では、14ページに参考として、水平展開の状況を示しておりますので、佐藤の方から説明をさせていただきます。
 水平展開といたしましては、イプシロンの2段モーターと同じく、コンポジット推進薬を用いる固体モーター、これはH-ⅡAロケットのSRB-A、それからH3ロケットのSRB-3がございます。これに対する影響評価を実施いたしております。
 先ほど、井元の方から説明のありました通り、今FTAを展開して、要因の絞り込み実施中のところ、以下の丸1,丸2が供試体要因として、二つ残っているというところですので、これに対するSRB-A、SRB-3との共通点、差異を明確にした上で、懸念が排除できるかの確認を実施するということを進めてきております。
 下の表に、それぞれのモーターの共通点/差異をまとめてございます。一番左のE-21がイプシロンの今回の2段モーター、真ん中がH-ⅡAのSRB-A、右側はH3のSRB-3。SRB-3は、イプシロンの1段も兼ねておりますけれども、この三つに対しての差異を示してございます。
 それぞれ大きさ等も全部違うところですけれども、真ん中の推進薬の欄を見ていただきますと、一つ目の形状あるいは燃焼速度といったところは、それぞれのモーター固有の設計がされているというものでございます。
 組成のところですね。組成につきましても、それぞれのモーター固有の設計になってはいるのですけれども、材料ですね、燃料であるバインダが、それぞれ共通であるという特徴がございます。
 それから、製造・検査の進め方についても確認をしてございますけれども、それぞれのモーターで、やはりそこは違うと。共通点はないという整理になってございます。
 もう一つ、インシュレーションですね。こちらについても、同じように整理してございますけれども、真ん中の段、材料につきまして、2段モーターとSRB-3が共通であるという特徴がございます。SRB-Aは全てについて異なるという状況になってございます。
 15ページにつきましては、それを元にいたしまして、まずH-ⅡAのSRB-Aの整理をいたしました。結論としては、上の3行に書いてございますけれども、今回の事象からの反映が必要な懸念事項はないという評価をしてございます。万全を期すために、47号機用のSRB-Aについて製造・検査データを再確認いたしまして、こちらの方も問題はないという結論になってございます。
 少し表の説明をいたしますけれども、上が推進薬、下がインシュレーションということで、分けて書いております。
 まず一つ目、1ポツ目につきましては、先ほどの表と同じで、推進薬の形状、組成ともに異なり、製造・検査工程を含め共通要因の観点では懸念がないというところです。
 2ポツ目の1段落目は、イプシロンの2段モーターは、まだ開発段階であると。今回の試験が初めてで検証も完了してない状況というのに対しまして、SRB-Aにつきましては、既に14回の地上燃焼試験の実績がございます。また、フライトとしても90本以上の実績があるというところで、その辺の設計の確からしさというのは十分高いというところがございます。また、フライト中のテレメータデータをとってございますけども、燃焼圧力履歴につきましても、設計上想定されるバラつきの範囲内であるということを確認してきております。ということで、設計、製造の妥当性は。十分に検証済みであると考えております。
 念のためと言いました、47号機用の製造検査記録につきましても、再確認の結果、良好に製造されているというところを確認してございます。この推進薬の確認は、実機の推進薬からサンプリングで取ったものについて確認をしていると、手法も記載してございます。
 下のインシュレーションのところですけども、基本は今、推進薬のところで書いたのと同じことが書いてございます。
 2ポツ目の後半になりますけれども、フライトで、モーターケースの温度計測をしてございまして、断熱性能は、今までの打ち上げにおいては、全て正常であるということを確認しているということで、インシュレーションにつきましても、設計、製造の妥当性は十分に検証済みであると考えております。
 また3ポツ目になりますけれども、47号機の製造検査記録を確認しましたけれども、こちらも、テストピースによる確認になりますけれども、十分に良好に製造されているということで、冒頭の懸念はないという評価を行ってございます。
 最後のページ、16ページが、H3のSRB-3についての評価になりますけども、基本的には、今回の事象からの反映が必要な懸念事項はないと考えておりますけれども、先ほどの材料等で一部共通点があるということで、イプシロン側の原因調査の進捗を踏まえて、評価を継続するということで、今は考えてございます。
 表の中身は、先ほどSRB-Aとの比較で書いたものとほぼ同じ記載がございますので、お読み取りいただければと思いますけれども、2行目の後半ですね、推進薬を構成する材料の一部が共通であるというところが、一つ評価のポイントになります。
 また一番下のところになりますが、SRB-3につきましては、今まで3回の地上燃焼試験を実施いたしました。またフライト実績としては、1号機で飛んだ2本というところで、フライトでのテレメータデータ上は、燃焼圧力履歴等は、十分バラつきの範囲内であったことを確認しているということで、設計、製造の妥当性は検証済みであるというところは言えるかなという風に思ってございます。
 インシュレーションにつきましても、同様のことが記載されております。こちらの方は、もう少し評価を続けたいという風に考えてございます。説明は以上になります。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 ご説明、まだ調査開始されたところという部分もあると思いますけど、早速、水平展開もいただきまして、ご説明いただきました。ありがとうございます。
 原因としては、FTA上、おそらく熱関連のところではないかという風に今は目されているということですよね。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい、そうです。
 
【木村主査】 ありがとうございます。ご質問、ご意見等いかがでしょうか。笠原委員、お願いいたします。
 
【笠原委員】 井元プロジェクトマネージャ、佐藤部長、本当にご説明どうもありがとうございます。詳しく現状が分かりまして、水平展開等、非常に慎重になされていて、まさに適切な対応をされているなと強い印象を持ちました。本当に、どうもお疲れ様です。ありがとうございます。
 それで私は、一点だけ質問がございまして、9ページのところの推力と燃焼圧力の詳細な履歴をお示しいただいているところですが、この燃焼圧力があまり変わっていないにもかかわらず、推力が500kNよりも少し小さいところから、一挙に800kNを超えるような推移を見せていると、計測されているところが、ちょっとどうしても理解というか、どういう風なことが起こったのだろうかと、非常に、正直不思議に思っております。圧力が一定なのに、推力だけが上がるというのは、よほど、何かそれをノズルのスロート部が大きく開かない限りは、このようなことは何か起こるイメージをちょっと持てないのですが、どのようなお考えを今のお持ちなのかというのを、お聞かせいただいてもよろしいでしょうか。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
 まず、520kN以上、それを越える範囲の数値そのものの妥当性については、これは校正範囲を超えておりますので、参考になると思います。
 一方で、推力が大きく上がっているというのも事実でありまして、ここのところの今考察が重要かなと思っています。
 一つ、仰る通り、ノズルスロートが脱落するとか、そういうことが考えられるのですけども、そうした時には、こういう爆発が起こる、瞬間的に起こることはございません。
 一方で、モーターケースの下側の方ですね、横と下が、下というか、ノズル側がありますけども、そこが大きく開口するとか、そういう事象を考えると、圧力が一気に解放されるのですけども、燃焼しているがために、さほど落ちないとか、そういった事象も考えられるかなと思っております。
 ちょっと今言ったのは、一つの推論でありまして、これだけではないかもしれませんけども、そういったようなところを中心に、今考えているところであります。
 
【笠原委員】 ありがとうございました。
 非常に納得いたしましたし、ご検討を慎重にされているということをよく理解いたしました。ご説明どうもありがとうございました。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
 
【木村主査】 ありがとうございます。そうしましたら、熊崎委員、お願いいたします。
 
【熊崎委員】 ご説明ありがとうございました。聞こえますでしょうか。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい、少し小さいですけども、聞こえております。
 
【木村主査】 若干ボリュームを上げられるとありがたいです。
 
【熊崎委員】 今聞こえますか。
 
【木村主査】 より良くなりました。
 
【熊崎委員】 ご説明ありがとうございました。
 先ほどの笠原先生と同じく、圧力と推力データについて教えてください。圧力のデータは、非常にガタガタしており、時々10MPaを超えています。もし聞き間違いでしたらすみませんが、先ほどのご説明では、圧力はあまり信用ならないと仰っていたように受け止めました。
 一方でFTAのご説明では、内圧の過大はなく、その理由が破壊時の圧力は耐圧の保証圧力以下であったため、とのことでした。この辺をどういう風に理解すればいいのか、今一度ご説明いただけないでしょうか。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 すみません、ちょっと説明がよくなかったかと思うのですけども、時間軸のところで、56.972秒から56.973秒の間辺りまでは、ある程度信頼できるのではないかという風に考えております。
 それ以降の56.973秒よりも少し前のところから大きく上下動しているところがあります。ここのところについては、圧力が落ちていっている過程だと考えているのですけども、ここのその上下動については、あまり信憑性がないのではなかろうかという風に、今考えるところでございます。
 例えば、計測ラインがちょっとおかしくなっているとか、そういう要因も考えられまして、ここの大きく上下動しているところが、全て実際の現象を表しているかどうかにつきましては、まだそこは確からしいと思うのは、ちょっと早計かなという風に考えているところです。
 
【熊崎委員】 分かりました。
 大きく上下しているところは、確実性がないということですが、耐圧保証圧力以下だと考えられているということですね。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい、そうです。
 ここは今、圧力データが今二つしか記載しておりませんが、全部で四つ圧力データがありまして、全て56.969秒ちょっと過ぎる辺りまでは、ほぼ一致を示しております。
 それ以降についても、同じような傾向を示しておりまして、この圧力は、少なくとも、この56.969秒辺りまでの圧力というのは、確からしいという風に判断しております。
 
【熊崎委員】 分かりました。ありがとうございました。
 
【木村主査】 ありがとうございます。よろしいですかね。では、続いて、神武委員、お願いいたします。
 
【神武委員】 どうもありがとうございます。
 地上試験の過程での色々な技術データを取るという意味では、こういったことも一つの糧にしていただければと思うのですが、2点ありまして、1点目は、今までのものと、今回のもので示していただいたものは理解したのですが、技術成熟度という意味で、unknownな要素というのは、結構あったものなのか、今までの仕様のものと、今回の仕様のものには大きなチャレンジがあったかというところを1点教えていただきたいのと、あと試験棟がかなり損傷を受けているようですけれども、試験環境という意味で、今後どのような対策を取られていくかという辺り、今回は安全上も特に大きな被害はないということであったようですけれども、この試験設備という意味での今後の見通しについても教えていただければと思います。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 まず1点目ですけども、この2段モーターの強化型とイプシロンSの比較という観点で、まず燃焼圧力を大きくしております。ただし、SRB-3とか、SRB-Aとかよりも、圧力が低い状況ですので、大きく飛躍がある技術ではないという風に考えております。
 ということで、まず設計のところですとか、あと製造のところ、あと能代での特殊な工程等に関して、そこに重点を置いて調査をしているところでございます。
 それから、2点目の試験設備につきましては、今回、人的被害、それから第三者の物損みたいなところはなかったのですけども、やはりより安全確実に試験を実施するというのが重要であるという風に考えておりまして、その安全対策といったものは、さらに強化しないといけないという風に考えております。
 その観点で、能代の真空燃焼試験棟で試験をする場合の設備の改修ですとか、安全対策にどのくらい時間がかかるかというのが一つのポイントになってくるのではないかという風に考えております。とりあえず、以上になります。
 
【神武委員】 ありがとうございます。
 後者については、これから改めて設計検討されるということで理解いたしました。ありがとうございました。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい、その通りです。
 
【木村主査】 よろしいでしょうか。ありがとうございます。他はいかがでしょうか。
 すみません、私からもちょっと一点だけ。こういった燃焼の方は、私は素人なのであれですけれども、圧力の計測をされていて、これはどういう感じで計測されているのかなというのがちょっと気になりました。計測している位置であるとか、あるいは計測の方法みたいなものを少し教えていただくことはできますか。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 まず、このPCというものが、モーターケース圧力になりまして、これはモーターの上部ですね、ノズルと反対側の方に金属部分があるのですけども、そこから圧力を二つ計測しているものです。今回PC1しか載せておりませんが、PC1とPC2があります。
 それから、PIGというのが、イグナイタのところの圧力になりまして、こちらちょっと図が分かりづらくて申し訳ないのですけども、今表示されている10ページの下のところに、イグナイタというものがあります。ここの内部の圧力ですね、これをまた、これも二つ計測しているものでございます。
 
【木村主査】 分かりました。ありがとうございます。
 これは、異常燃焼したりなんかした時に、例えば、燃焼によって影響を受けてしまうとか、そういうことはやっぱり考えられるのですかね。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 そうですね。
 まず、圧力配管とか、それから電気ケーブルとか、そういったものが熱によって炙られるとか、そういったようなことは十分考えられます。
 
【木村主査】 なるほど。
 先ほど、後半のところで信頼性が無くなっているのではないかと仰っているのは、そういう理由なわけですね。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい、おっしゃる通りです。
 
【木村主査】 ありがとうございます。他はいかがでしょうか。ご質問等ございましたら。
 まだこれは、これから解析の方とか、進められるのだろうと思います。第一報として、お話風聞伺いました。大変真摯に取り組まれているということで、大変敬意を表したいと思います。どうもありがとうございます。
 
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 どうもありがとうございました。
 
【木村主査】 もうよろしければ、ここから非公開の方に移りたいと思います。
 では一旦ここで、事務局から事務連絡をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局でございます。
 会議資料と議事録の公開について申し上げます。
 本日の会議資料は、文部科学省のホームページに、既に掲載させていただいております。また議事録につきましても、ここまでの内容は公開となりますので、委員の皆様にご確認いただいたのち、文部科学省ホームページに掲載させていただきます。
 また、途中で主査からもご案内がありましたが、もし本日追加のコメント等、委員の方からございましたら、事務局の方にメールでご連絡いただければと思います。
 本日の会合ののち、事務局よりプレスの皆様向けにフォローアップのためのブリーフィングを行う予定としております。
 なお、次回の調査・安全小委員会につきましては、8月後半以降の開催で調整予定でございます。委員の皆様には、後日日程調整のご連絡をいたします。事務連絡としては以上です。
 
【木村主査】 それでは、ここまでで公開部分の会合を終了とさせていただきます。一般の方やプレスの方はここまでとなります。傍聴どうもありがとうございました。

―― 了 ――

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