宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会(第46回) 議事録

1.日時

令和5年5月19日(金曜日) 13時30分~15時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. イプシロンロケット6号機打上げ失敗の原因究明に係る報告書(案)について
  2. その他

4.出席者

委員

主査 木村 真一
専門委員 柿沼 志津子
臨時委員 笠原 次郎
専門委員 門脇 直人
専門委員 熊崎 美枝子

文部科学省

研究開発局長 千原 由幸
大臣官房審議官(研究開発局担当) 永井 雅規
研究開発局宇宙開発利用課長 上田 光幸
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 宇宙輸送技術部門 事業推進部長 佐藤 寿晃
 宇宙輸送技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 隆行

5.議事録

【竹上企画官(事務局)】 定刻になりましたので、ただ今から宇宙開発利用部会 第46回調査・安全小委員会を開催いたします。本日もオンラインでの開催でございます。委員の皆さまにはご多忙のところご参加いただきまして、誠にありがとうございます。事務局の文部科学省宇宙開発利用課企画官の竹上でございます。
 本日YouTubeによる公開での開催とさせていただいております。調査・安全小委員会は第11期の終了後、「宇宙開発利用に係る調査安全有識者会合」として調査検討を継続いただいておりましたが、4月28日に開催された宇宙開発利用部会において正式に第12期の調査・安全小委員会が設置されました。今回は設置後最初の会合となりますので、議事進行につきましては、主査にお渡しするまでの間、事務局のほうで進めさせていただきます。
 まずは第12期の小委員会の構成メンバーですが、資料46-1-2に記載の通り、第11期小委員会、さらには有識者会合に引き続き、柿沼委員、笠原委員、門脇委員、木村委員、熊崎委員、神武委員、辻村委員、中西委員の8名の方に就任いただいております。本日は神武委員、辻村委員、中西委員はご欠席となっております。委員の皆さま、有識者会合に引き続きましてどうぞよろしくお願いいたします。
 宇宙開発利用部会運営規則第2条10項において、小委員会はその小委員会に属する委員等の過半数が出席しなければ会を開くことができないと定められています。本日は5名の委員に出席いただいておりますので、過半数に達していることをご報告いたします。
 本日の資料は、お手元の議事次第に記載の通りです。オンライン状況について、音声が繋がらない等の問題がございましたら、事務局へメールや電話等でご連絡ください。
 続きまして調査・安全小委員会の設置について、事務局より説明申し上げます。お手元の資料46-1-1をご覧ください。第12期調査・安全小委員会は4月28日に開催された第74回宇宙開発利用部会において設置が決定されております。小委員会の調査検討事項としては、2.(1)重大な事故不具合等の原因技術課題及びその対応策の調査と、(2)安全対策の評価となっておりますので、何卒よろしくお願いいたします。
 続いて46-1-2の構成委員名簿をご覧ください。今期の主査につきましては、宇宙開発利用部会運営規則第2条5項に従って、宇宙開発利用部会の村山部会長から、前期に引き続き、木村委員をご指名いただいており、木村委員にはご快諾をいただいております。また、主査代理につきましては、同規則2条9項に従って、木村主査から、前期に引き続き神武委員をご指名いただいており、ご快諾いただいておりますことをご報告申し上げます。
 それでは以降の議事進行を木村主査にお渡しさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 
【木村主査】 ありがとうございます。第11期小委員会及び有識者会合から引き続きまして、主査を務めさせていただく東京理科大学の木村でございます。改めまして、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは早速、議題のほうに入りたいと思います。今回の小委員会は、イプシロンロケット6号機の打ち上げ失敗に関する第8回目の会合になります。前回までの7回の議論で、ダイアフラムからの漏えいという直接要因の特定がなされました。またさらにその背後要因の識別と対策の方向性までが示された状況だというふうに理解しております。
 本日はJAXAから、背後要因の分析・対策の補足に関する資料をいただいておりますので、こちらをご説明いただきたいと思います。それではご説明よろしくお願いいたします。
 
【佐藤部長(JAXA)】 佐藤です。本日はよろしくお願いいたします。
今、主査のほうからご紹介がありましたように、前回は直接要因の特定をご報告させていただきました。また、背後要因につきましては、分析対策案の検討を進めて、方向性という形でご報告させていただきました。その小委員会でのご議論などを踏まえ、更なる検討を行いましたので、資料46−2−1の背後要因分析・対策の補足という資料で説明させていただきます。
 表紙ですが、いつもは私と井元のほうで記載しておりましたけれども、全社展開ということで、今回は安全・信頼性推進部部長の杢野も並べて、全社的に確認をした資料という位置づけでございます。
 2ページ目をご覧ください。内容は再掲になります。前回は題名に方向性という文言がありましたが、今回は分析対策ということで書き直しております。おさらいも含めて軽く触れますと、イプシロンがどういうヘリテージを使ってきたかというところを整理した資料でして、左の表にあるように、今回不具合の元となった2段のRCSが基幹ロケットとしてやってきたもの以外のもののフライト実績品であったという識別をした表になっております。
 次の3ページ~4ページも再掲になります。4ページに示している「なぜなぜ分析」を実施した結果として、我々としてはフライト実績品に対する確認不足という形で識別をしております。先ほど構成品のヘリテージの流れをお示ししましたが、この中でM-VロケットおよびH-ⅡAの技術を活用した範囲というのは、実績のある技術をベースとしてイプシロンの仕様に合わせた適用開発を行ってきたということで、開発段階では新規開発品と同様に、約20年来の基幹ロケットの信頼性向上の取り組みを踏まえた設計と製造工程から品質保証の確認を実施してきているものでした。当該2段のRCSについて、このダイアフラム式タンクというのは、もともと別の宇宙機で使用するために開発されたものであり、これをイプシロンに使う際においては、使用条件の違いとしてこのタンクの機械環境試験あるいは耐圧試験等のタンク構造の確認は実施していたのですが、中のダイアフラムシール部分の構成品につきましては、フライト実績を重視して作動原理等を十分理解しての確認が不足していたというところを背後要因として我々は考えておりました。
 5ページをご覧ください。その背後要因の分析を踏まえまして、以下の対策をイプシロンSロケットに反映し信頼性を向上させます。一つ目のレ点についてですが、フライト実績品を使用することは、他の宇宙開発の中でもやっており、そういった意味で使用すること自体は問題ではないのですけれども、当該品の使用条件が想定と異なる場合はもちろんのこと、先ほどご説明した20年来のロケットの信頼性向上に係る開発という目が入っていない場合、開発当時の設計の考え方あるいは使用条件の根拠、製造工程、品質保証工程に立ち返って確認を実施することが必要ではないかと考えております。
 こうして過去の設計等に立ち返る場合につきましては、我々は2003年にH-ⅡA6号機の打ち上げ失敗を経験しましたけれども、それ以降基幹ロケットとして取り組んできた信頼性向上の観点を十分に考慮して、抜けのないように確認を実施するという方針で進めたいと思っております。①~⑤まで書いてあるのは、失敗後の総点検という形で視点を定め、それ以降基幹ロケットとしてはこの辺をしっかりと確認をしてきております。例えば、②メカニズム・動作余裕の確認については、今回のことにも少し関わってきますけれども、もう少し広く網をかけてしっかりと見ていくことで進めたいと思っております。赤字が今回の更新箇所になりますが、今後行うイプシロンSの詳細設計の中で、これらの確認を進めていくということで対処させていただきたいと思っております。
 6ページに参ります。今、イプシロンSへの反映をご説明しましたけれども、これは全社展開的に他のプロジェクトへの水平展開ということでまとめました。6ページと7ページは全て新規で今回記載しております。他のプロジェクトに展開するにあたり、まず既存のプロジェクト及び今後立ち上がるような新規プロジェクトに対してフライト実績品を使用する場合は、以下の3つのレ点のような問題提起を共有し、プロジェクト内において対象品目の再確認を行っていただくと。ただし、全てのプロジェクトというわけではなく、部門内プロジェクトという、JAXAの中で各部門長のレベルで実施される比較的小規模なプロジェクトあるいはシステム開発を伴わないような研究開発を行うプロジェクトは、ある程度目的や意義に照らして個別に評価要否を検討するということで、非常にリスクの大きいプロジェクトを対象にして進めていくということで、若干濃淡をつけての展開をしたいと思っております。問題提起の視点ということで3つ記載してありますけれども、フライト実績品のうち、信頼性確保に係る開発の目が入っていないもの、かつ不具合を生じた際のミッションへの影響度が大きいものについて、管理すべき対象品目として識別できているかどうかが一つ目。次の段階として、識別された品目の適用について、十分な根拠を以て開発されているか、あるいは実績が十分か、こういった観点で信頼性の評価に必要な技術情報の取得、ベンダー等との情報授受を行うための体制が整っていて、得られる情報に基づく評価が開発を請負っていただく業者等におきまして、適切に行われている結果をJAXAとしてしっかり入手できて確認できているか、というのを次に考える。その上で技術情報の取得やベンダー等との情報授受の体制が整っていないということが明らかになった場合、その対象品目の使用の是非を含め、リスクが許容できる状態になっているかどうかを確認すると。こういった三つの流れでそれぞれのプロジェクトで確認をするということを展開したいと思っております。一番下の四角い所になりますが、上記の観点で社内で水平展開を行い、確認の場所としては、プロジェクトはフェーズ毎にマイルストン審査等を行います。そのマイルストン審査等のタイミングにおいて評価を行う形にしたいと思っております。また、開発を通じて独立的な評価やモニターを行っている第三者部門として安全・信頼性推進部等が当該評価結果を確認するという2枚仕立ての対応をすると考えております。
 7ページになりますけれども、それ以外に仕組みとして取り込みたいということで、2つほど記載しております。まずはLessons Learnedとしての継承ということで、JAXAの中では、プロジェクト活動で得られた知見・教訓を蓄積しており、ナレッジシェアとして組織内に共有する取り組みを進めております。当該データベース「LINKS」が整備されており、今回のイプシロンの事例を登録して、後のプロジェクトに向けて確実な継承を図りたいと思っております。また、プロジェクトのマイルストン審査において、今回のもの以外も含めた過去の膨大なLLがあるわけですけれども、この取り組み状況を審査することにしてございます。今回のイプシロンの事例を重要なLLのリストに含め、審査において確実に評価されていることを第三者の視点も含めて確認していくことを仕組みとして定着をさせたいと考えております。もう一つは人材育成の活動という形で記載していますけれども、JAXAの中では、プロジェクト業務を行う職員に対しシステムエンジニアリング/プロジェクトマネジメントという視点、あるいは安全・ミッション保証(S&MA)に関する必要な知識を有する人材を育成するために、様々な研修を企画・運営しております。多様な研修がありますが、これらの研修において今回のイプシロンの事例を教訓事例として取り上げ、プロジェクトに携わる人がしっかりと身につくように浸透を図るという形での対応も併せて実施していきたいと思っております。資料の説明としては以上になります。
 
【木村主査】 ありがとうございました。ただいまの説明までで、背景要因に対する具体的対策のところまでJAXA様から全てご報告いただいたと思います。ありがとうございます。
本日の議題で非常に重要なポイントですけれども、本日報告書を取り纏めたいと考えております。ここまでのJAXAの報告内容を踏まえて、小委員会としてこれまで確認を進めてきた原因究明内容、さらに今後の再発防止に向けた提言等も含めて、報告書として取りまとめることが本日のミッションでございます。
 実際に本日に至るまで、私も含めて委員の皆さまと事務局の間で報告書の取りまとめに向けた意見交換を行わせていただきました。その内容を含めた形で、事務局のほうで報告書の文案という形でまとめていただいております。おそらく、皆さんのご意見を全て盛り込んだ形でまとめられていると思いますが、まず事務局のほうから説明をお願いできますか?
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局でございます。それでは資料46−2−2を用いてご説明したいと思います。調査・安全小委員会報告書(案)でございます。
 主査からもご発言があったとおり、委員の皆さまと事前に意見交換をさせていただき、取りまとめたものになります。内容を改めて簡単にご説明したいと思います。
 1ページ目は目次になっています。全体構成ですけれども、まずは調査審議の経緯、次に調査審議の概要となっており、今日この場ではご説明しませんが、46-2-2別添として、JAXAのほうでこれまでの8回における報告事項の内容をまとめていただいた報告書がございます。こちらを別添として、小委員会の報告書にも添付させていただきますので、この調査審議の概要のところでは、特に重要な部分を抜き出して記載する形をとっております。また(6)のところは、小委員会の先生方からご意見いただいた内容を記載しており、最後にまとめという構成になっております。
 簡単に以降かいつまんでご説明したいと思います。まず1ページ目の調査審議の経緯についてです。2つめの段落、10月13日、宇宙開発利用部会及び調査・安全小委員会は、イプシロン6号機打ち上げ結果についてJAXAから報告を受け調査審議を開始し、以降、調査・安全小委員会さらには有識者会合で、計8回にわたり、専門的見地からの調査検討を実施したということ。また、最終的にJAXAから提案された直接要因及び背後要因、並びにそれらの要因への対策の妥当性について小委員会として確認し、特に背後要因対策及び水平展開については、JAXAと委員との意見交換を通じて再発防止策が策定されるに至った。このような全体の経緯を記載し、その下に1回目~8回目の会合でどのようなことをやったかということをまとめて記載しております。
 2.から調査審議の概要になっております。まずは(1)で原因究明作業の流れを記載しております。ここは今後に残していく報告書ですので、しっかりと経緯をまとめさせていただいております。1ポツ目、イプシロン6号機で2段燃焼終了後の姿勢異常が起こったということ。2ポツ目には、これに対してFTAを実施した結果、2段RCSガスジェット装置の片方が機能していないことが原因であるということを特定したということ。その次に、詳細なFTAをさらに展開し、①計測異常、②信号系統の異常、③パイロ弁の開動作不良、④推進薬供給配管の閉塞の4つの要因に分解した上で、まず、①及び②が要因ではないと判断したということ。次のポツで、「+Y軸側下流配管圧力」で1分解能の圧力上昇さらには推進弁開動作中の圧力保持が見られたことの検証に基づき、③パイロ弁の開動作不良が要因ではないと判断され、最後に残った④推進薬供給配管の閉塞における故障シナリオを最終的に特定していただいた。それを踏まえて直接要因がダイアフラムシール部からの漏洩、背後要因は、フライト実績品に対する確認不足と識別、という経緯をまとめさせていただいているところです。
 (2)からは、この審議会でこれまでの間にあった報告や、委員の先生方に確認いただいた内容をまとめております。(2)は直接要因です。(3)は直接要因対策および水平展開ということで、イプシロンSロケットへの是正措置の方向性、衛星への水平展開の結果、さらに③でH3ロケットおよびH-ⅡAロケットへの水平展開の結果をまとめております。
 (4)は背後要因で、フライト実績品に対する確認不足の部分についてまとめております。
 (5)は背後要因対策および水平展開として、本日佐藤部長から説明があったイプシロンSロケットへの対策、他プロジェクトへの水平展開、経験・知識継承の取組をJAXAの報告書から抜粋する形でまとめさせていただいています。
 (6)は今後の対策に向けた留意事項ということで、これまでの小委員会における皆さまのご意見について3つのポツにまとめております。
 ・宇宙分野のプロジェクトには、予算・人員その他のリソースや、スケジュールの制約は付きものであり、また、フライト実績品の使用自体は問題ではなく、むしろ有効活用できる利点があるものの、今後のプロジェクトの立案・推進に当たって、リソース配分やスケジュール策定に関わる意思決定者は、今般の再発防止策を含む各種の開発上の考慮が無理なく適切になされるよう、プロジェクトの実情に十分配慮して、リソース配分等の決定を都度行うべきである。
 ・今回、フライトデータにおける1分解能の圧力上昇という微細な情報に原因究明上重要な意味があったり、原因究明に当たり非常に多くの製造・検査データの調査分析が必要となったりする場面が見られた。ロケットの特性に応じて的確にデータ計測を行なっていくことはもちろん、データの計測や解析に、実効的な範囲で計算・シミュレーション技術やAI技術等の活用を図っていくことが、ロケットの信頼性向上のみならず、作業者の負担軽減につながると考えることから、情報科学的手法を活用したシステムの整備・向上に取り組んでいくことや、必要となる人材育成・研修の充実を図っていくことを期待したい。
 ・宇宙分野の原因究明作業には、技術的事象に対して謙虚であることや、徹底した姿勢等が必要とされると同時に、民間企業を含む世界の宇宙開発は、顧客のニーズやスピードを重視し、失敗しても短期間に再開し、打上げ頻度を高くすることで信頼性を増す傾向が見られることから、原因究明及び対策検討作業については、合理的にスピード感を持って当たることが重要と考える。という留意事項をまとめさせていただいています。
 最後にまとめですけれども、まず1つ目は、直接要因について、委員との間の質疑応答を経て、JAXAの報告の内容は合理的な説明がなされており妥当であると認めたということ。また、後継のイプシロンSロケットへの是正処置及び他機種へのJAXAの水平展開についても妥当であると認めたということ。2ポツ目は、背後要因分析及び対策について、JAXAからの提案を基に、委員との間で意見交換を行った結果、再発防止策として合理的なものであり妥当であるとの心証に至ったこと。また3つ目、フライト実績品であっても、設計の考え方・作動原理等を十分理解しないまま活用した場合、リスクを有することを認識できたことは大きな教訓である。再発防止策の確実な実行を通じて、今回の教訓の反映を如何に実効的なものとし、且つ継続的に取り組んでいくかが極めて重要と考えるということ。また今後の話ですが、文科省、JAXA及び関連する企業においては、原因究明結果に基づく再発防止策に万全を期して取り組んでいただきたい。宇宙開発利用部会及び小委員会としても、取組の実施状況をしっかりとフォローアップしていくということ。また先ほどご説明したような留意事項も得られましたので、宇宙分野全般の関係者も含めて、こういった観点も今後に活かしていただくことを期待するということ。
 次のポツですけれども、このイプシロン6号機の原因究明中に、H3ロケット試験機1号機の打上げ失敗があり、係る原因究明作業は途上である。小委員会として、両基幹ロケットの打上げ失敗に共通するような背後要因がないかといった観点も勘案しながら、H3ロケット試験機1号機の原因究明作業を進め、その結果を踏まえ、背後要因分析に関して更なる検討を加えることも排除せずに臨みたいと考えているということ。最後は謝辞になっております。
 このような形で、小委員会報告書としてのまとめを記載しております。またもう一つ資料をご紹介します。資料46-2-3という形で一枚紙の概要を用意しておりますが、こちらは今後様々な場面で報告等を行っていく時に使用させていただくことを予定しております。内容については、1.経緯、2.概要、原因究明の流れ、直接要因及び対策、背後要因及び対策、3.まとめを記載したもので、先ほどご説明した内容をダイジェスト的にまとめたものでございますので、紹介させていただきます。事務局からの説明は以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございます。先ほども申し上げたように、既に皆さま意見が盛り込まれている状況だと思います。私自身のコメントも適切に文章でまとめていただき、本当にありがとうございます。冒頭のJAXAの説明や、事務局の説明も含め、何かご意見やご質問等がありましたらお願いします。ここまでの小委員会の中での議論や、それぞれコメントしていただいた内容について、適切に文章にしていただけているように思いますので、これを基にして、資料46-2-2の報告書(案)を小委員会として決定したいと思いますが、よろしいでしょうか?
 異議もないようですので小委員会として、こちらを報告書として決定させていただきたいと思います。こちらの報告書ですが、次回の宇宙開発利用部会において主査である私から、部会に対して報告させていただく予定でございます。委員の皆さまにおかれましては、本件、非常に長い期間ご協力いただきまして、ありがとうございました。無事報告書としてまとめることができました。
 本日でイプシロン6号機の原因究明に関する会合は最後となりますが、委員の皆さまから、これまでの振り返りあるいはメッセージなど、何かコメントをいただけるようでしたらお願いします。笠原委員、お願いいたします。
 
【笠原委員】 笠原でございます。木村主査、どうもありがとうございます。
本日の報告書を再度確認させていただき、今回の事例を適切に報告している内容だと再認識いたしましたし、今回のような委員会に参加させていただき、私自身非常にいろいろなことを学ぶことができました。大変感謝申し上げる次第でございます。
 最後に一言だけ言わせていただきたいことは、本小委員会の趣旨とは外れるかもしれませんが、宇宙開発は世界的に見ても非常に競争が激しくなっている中で、日本の宇宙開発をもっと力強く応援していかなければいけないと強く感じております。リソースを充実させる様々な手を打って、次回失敗しないように行っていくことは明確になっていると思いますが、そのためにはJAXAや、取り巻く環境の方々を応援し、速やかにプロジェクトを前に進めるようなバックアップが何より必要だと思っております。それは国民の皆さまからの力添えでもあると思いますし、私自体も応援したいと思っております。ぜひ、そういう声を広げていきながら前に進んでいただきたいと思っております。もう少しぶっちゃけた話で言いますと、やはりお金がないと何事もベンチャーのようには進んでいかないと思うので、こういう体制でありながらもベンチャーに負けないように、戦略的な費用の獲得や配分をしっかり行えることが必要ではないかと思っております。
 もう一つは、今後のロケット開発でH-ⅡAの次号機の打上げ等が迫ってきていると思います。そちらも影響がないよう、速やかに打上げに臨めるように、多くの方々から力添えを得られることを強く望んでおります。そういう皆さまの力が非常に必要な時期なのだということを強く感じております。
 
【木村主査】 ありがとうございます。笠原先生のご意見について、私も同調する部分が非常に多く感じており、先ほどの報告書の中でも、(6)のところにそういう意図も含めて書かせていただいたと思っております。
 やはり適切なリソースは必要であり、そこが不足することによって遠因としてこういうトラブルになり得るということは、我々も委員会の中で懸念したことではあります。ベンチャー等との比較になってはしまいますが、例えば、情報技術の活用やシミュレーション技術などの、ある種効率化を図っていくことも必要だと思います。それに対してもおそらくリソースは必要で、十分なリソースをそこに与えることによって初めて、より効率の良いシステムが出来上がり、こういった仕組みも今後はおそらく必要になってくると思われます。まさに重要なポイントだと思います。この委員会として原因究明のプロセスを一緒に走っていく中で、そういった観点での気づきを、我々の中での意見として出していきたいと思っております。ありがとうございます。
 門脇委員、お願いいたします。
 
【門脇委員】 NICTの門脇でございます。木村主査を始めとして、皆さん大変細かいところまでたくさんのデータを沢山解析をされ、原因の特定ができたことは非常に重要で意味のあることだと感じております。大変お疲れ様でございました。このイプシロンロケットというのは、宇宙に対する関心がどんどん高まっている中で、打上げコストの低廉化、それによって比較的低コストで小型の衛星を身近に上げることのできるチャンスが増えるという意味でも非常に重要なプロジェクトだと認識しています。したがって、この後イプシロンがSシリーズという形でどんどん実用に供されていくことを、何とか早く実現していただきたいという気持ちでいっぱいでございます。今回の事故原因の調査をする中で私が感じていたのは、限られたデータを分析していくことの大変さでした。これは報告書の(6)のところにも書いてありましたが、必要なデータはしっかりと測っておかなくてはいけない。またLessons Learnedについても、いつでも見直ししていけるような形で整理されていなければいけないということもあろうかと思います。報告書にはそういうことも含めて、水平展開や基本的な考え方をきちんと整理して記載されていると思いますが、これを実作業にどれだけ着実に落とし込んでいくことができるのかが実は一番大事なところだと思っています。それに加えて、携わる方々の意識づけも大事だと思います。例えば、情報システムのインシデントと同じで、分かっているつもりでもやはり繰り返し意識づけをしていかないとなかなか直りません。ですから、そういうこともしっかりやっていただくことについても、ぜひお願いしたいと思います。また、ベンダーとの情報の流通の仕方も非常に重要で、宇宙用部品等を、全部を国内で賄うということは難しく、海外のベンダーを使うことも非常に多いわけです。そういう中でしっかりと情報共有ができるかどうかというのは非常に重要なポイントだと思いますので、念には念を入れてしっかりと意思疎通をはかれる体制を築いていただきたいと思っています。いずれにしろ、今回我々が経験してきた原因の特定に至るプロセスを含めてもう一度見直した中で、リスクの低減という意味でどういう体制を取りどういうシステムを作っていくのかというのは、JAXAさんだけではなく我々も含めた形で改めて見直していく必要もあるのではないかと感じました。
 先ほど笠原先生もおっしゃいましたが、宇宙産業は世界的に激しく動いている状況ですので、立ち止まることなく前に進むために、こういう地道な活動もしっかりやっていく必要があることを改めて感じました。また、事故は無いに越したことはないのですが、私たちもリスク低減という観点でも作業を継続するということをやっていきたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 
【木村主査】 門脇委員、ありがとうございます。情報の取り扱いと、これからの運用、実際にどのように運用していくのか、そこまでどのように落とし込むかという意識づけのところまで含めてコメントをいただきました。
 他にご意見あるいはメッセージ等ございましたら、挙手いただければと思いますが、いかがでしょうか。
 おそらくここまでの議論や報告書の中で、皆さまのお気持ちも含めてある程度反映できているかなと思っております。これまで、JAXAや事務局の文科省含め、非常に大変なプロセスだったと思いますし、真摯にご尽力いただき、各技術的な内容も含め、微細なところまで取り組まれてきたことは素晴らしいことだと思います。本当にお疲れ様でした。
 また委員の皆さまも、問題があって集まっていただき、頻度高く委員会を開かせていただきました。正直言いますと、調査・安全小委員会が忙しい状況というのは、世の中的にあまり良い状況ではないと思いますが、だからこそとても大事な任務だと思います。そういった意味で委員の皆さまのご尽力に本当に感謝いたしており、原因究明のプロセスが非常にスムーズに進んでいったことは本当に皆さまがご尽力のおかげだと思っております。このプロセスは、H3ロケットも含め、まだまだ続くところがありますので、委員の皆さまにおかれましてはもう少しご協力いただければと思っているところです。
今回の原因究明プロセスは、私自身にとってもいろいろと示唆的だったと思いますし、いろいろなことを学ばせていただきました。当初、最初の時点で思っていたことと最後の結論というのは、完全に一致しているわけではなく、最初の思い込みというものは、私も含めて多分あったのだろうと思います。また、このトラブル自体は潜在的に存在しており、いつ顕在してもおかしくなかったというところもあります。そういう意味では、いろいろ意味で示唆的だったのではないかと思っており、私自身大変勉強させていただきました。不具合やトラブルというのは、普通に人間が考えていると気づかないような問題を、神様がより完全なシステムを目指すためにくださったプレゼントだと思うようにしております。おそらく潜在的に何か持っていたものを、ここで皆さんと一緒に議論することで、より良いシステムに結びついていくプロセスになっていけば良いのではないかと思っております。
 以上でイプシロンについての議論を締めさせていただこうと思いますがよろしいでしょうか。それでは議事は以上となります。事務局のほう事務連絡があればお伝えいただけますか?
 
【竹上企画官(事務局)】 木村主査、ありがとうございます。事務局でございます。会議資料と議事録の公開について申し上げます。本日の会議資料は文部科学省ホームページに既に掲載しております。また、議事録につきましても委員の皆さまにご確認いただいた後、文部科学省ホームページに掲載させていただきます。なお、本日この後16時より文部科学省におきまして、イプシロンロケット6号機対策本部の第3回会合の開催を予定しておりますので、本日決定いただきました報告書について報告させていただく予定です。また対策本部終了後に、本日のこの小委員会及び対策本部第3回会合に関して、プレスの皆さま向けにフォローアップのためのブリーフィングを行う予定としております。
 また、木村主査からも発言がありました次回の宇宙開発利用部会につきましては、来週中の開催を調整中であり、本日決定いただいた報告書について木村主査から部会に報告いただく予定としております。
 事務連絡は以上ですが、イプシロンロケット6号機打上げ失敗に関する会合は、本日が最後となりますので、事務局を代表して、大臣官房審議官の永井より一言ご挨拶させていただきます。
 
【永井審議官】 大臣官房審議官の永井でございます。木村主査はじめ委員の皆さまには、調査・安全小委員会の委員をお引き受けいただきましてありがとうございます。
 本日報告書がまとまり最後のような感じもしますが、実は新しい期が始まって最初の会議でもありますので、まずはご就任いただき本当にありがとうございます。
 その上でイプシロン6号機についてですが、先ほどお話しがあったとおり、昨年10月からの打上げ失敗以降、8回もの会議を開いていただきありがとうございました。また、JAXAの行う原因調査等について、専門的見地からご確認やご助言をいただき、調査検討を進めていただきました。日程的には非常に急な開催や、ご多忙な中での開催調整など、かなりご無理をお願いしたと私どもも自覚しております。事務局も非常に恐縮しておりますが、温かくまた大変協力的にご対応いただき本当にありがとうございます。おかげさまで、本日報告書の取りまとめに無事漕ぎ着けることができたわけでございます。委員の先生方におかれましては、多角的専門的な知見はもちろん、宇宙開発利用に関する調査安全面でのご尽力に対して本当に感謝を申し上げます。文科省としては、この原因調査結果に基づく教訓や再発防止策、フライト実績品の活用といったことも大きな課題として挙げられておりますが、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
 また先ほどのご議論でもリソースの問題についてありましたが、これは私にとっても非常に大事な宿題をいただいたと思っております。教訓を実作業に如何に落とし込むか意識づけるか、ベンダーとの情報共有等、先ほどのご議論でも様々なご示唆をいただきましたし、今後前を向いて進んでいくようにという温かいお言葉をいただき、私どもとしても本当に感謝をしてございます。文科省としては、今後JAXAに万全を期して実効ある取組を進めていただくということになりますが、私どもも一緒になってフォローアップをしてまいる所存です。なお、H3ロケット試験機1号機の打上げ失敗の原因究明につきましては、まだ途上でございます。文科省としてもイプシロンそしてH3を含め、宇宙開発利用の推進に向けて引き続き取り組んでまいる所存ですので、委員の先生方にも引き続きお力添え、ご指導を賜りますようお願いいたします。
 本日は誠にありがとうございました。
 
【木村主査】 ありがとうございました。それではこれにて本日の議事の締めさせていただきます。ご参加いただきまして、ありがとうございました。

―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課

Get ADOBE READER

PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要な場合があります。
Adobe Acrobat Readerは開発元のWebページにて、無償でダウンロード可能です。