令和5年2月3日(金曜日) 17時30分~19時30分
新型コロナウィルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催
主査 木村 真一
専門委員 柿沼 志津子
臨時委員 笠原 次郎
専門委員 門脇 直人
専門委員 熊崎 美枝子
専門委員 辻村 厚
専門委員 中西 美和
研究開発局長 千原 由幸
大臣官房審議官(研究開発局担当) 原 克彦
研究開発局宇宙開発利用課長 上田 光幸
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 横井 奈央
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一
(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
有人宇宙技術部門 有人システム安全・ミッション保証室 小林 亮二
宇宙輸送技術部門 事業推進部長 佐藤 寿晃
宇宙輸送技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 隆行
【木村主査】 宇宙開発利用部会調査・安全小委員第45回会合を開催いたします。
本日は議題が二つありまして、一つは例年実施しております国際宇宙ステーションに提供する機器の安全確認について、もう一つはイプシロンロケット6号機の打ち上げ失敗原因調査状況についての議題になります。
本日も、新型コロナウイルスの感染防止のために、前回同様オンラインにて開催となっております。委員の皆様には御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
それでは、まず事務局から本日の会議に関する事務連絡をお願いいたします。
【竹上企画官(事務局)】 事務局でございます。本日もよろしくお願いします。
本日、調査・安全小委員会に御所属いただいている委員のうち、今、少し人数が少ないですけれども、途中参加される方を含め7名、御出席いただく予定としております。
本日の資料につきましては、議事次第に記載のとおりでございます。
オンライン状況について、音声がつながらない等の問題がございましたら、事務局へメール、電話等で御連絡いただければと思います。
事務連絡は以上です。
【木村主査】 ありがとうございます。
本日の案件の性格上、機微な情報を扱うことになりますので、宇宙開発利用部会の運営規則第3条に則りまして、そのような情報を用いての詳細議論については非公開とさせていただきますので、あらかじめ御了承ください。
さて、それでは1件目の議題から早速入りたいと思います。
初めの議題は、国際宇宙ステーションISSに提供するISS構成要素及び搭載物の安全管理についてです。
まずは、この議題の趣旨を、事務局のほうから説明をお願いできますでしょうか。
【木元補佐(事務局)】 事務局でございます。
資料45-1-1に従いまして、本日の議題の趣旨を御説明いたします。
1枚目、ISS構成要素と搭載物の安全性に関わる責任と役割分担ということで、NASAと日本の間で役割分担が了解覚書というもので決められております。ここにありますとおり、ISS全体の安全要求の設定とか、日本の安全審査の支援、これらをNASAがやりまして、日本国としては安全審査の実施――これはJAXAが行いまして、NASAがこれを支援するということと、その安全要求を満足していることの認証を文科省が行うと、こういう役割分担になっております。
次のページにダイアグラムがありますが、こちらで真ん中に覚書がありまして、右側がNASA、左側が日本国政府ということで、この間で取り交わされております。
安全審査の実施をJAXAがやりまして、それを、文科省が安全性の認証をするという形になっております。
実際にその認証の具体的な実施方法としては、JAXAが個別のアイテムに対して安全審査を行います。これについては基本指針が定められておりまして、これに対する適合性確認という形で実施されました。
本日ここで調査・安全小委員会が開かれていますけども、この中でこのプロセスが適切であることについてのチェックを実施いたします。これを年1回程度やって、これを維持するという形になっております。
このチェックは、実際に打ち上げ予定の具体的な構成要素と搭載物につきまして安全審査を実施して、その方法や結果などの妥当性を評価することで行いました。
今回、令和4年度としてInt-Ball2――後で具体的な説明もございますが、JEM船内可搬型カメラシステム実証2号機という正式名称でInt-Ball2と呼んでまして、こちらのアイテムにつきまして審査を行った結果で評価を行うことにしております。
以上でございます。
【木村主査】 ありがとうございます。
これは例年やっていることですけれども、我々の委員会の任務として、安全審査のプロセスが適切かどうかということを、具体的な対象として見ていくということです。
この点について何か御質問等ございましたら、お願いできますでしょうか。挙手ボタンにてお知らせいただければと思います。
こちらは大丈夫ですかね。我々、これまでずっとこれを継続してきておりますので、恐らく委員の皆様の共通認識になっているのではないかと思います。よろしいでしょうか。
それでは早速ですけれども、今事務局から説明があったとおり、Int-Ball2、これは初号機がミッションを成功されて、その次ということで私も期待しているところですけれども、これを審査対象としたJAXAの安全審査プロセスが適切であるかどうか、これを本小委員会で議論することといたします。
まず、審査対象であるInt-Ball2について、JAXAの有人宇宙技術部門、有人システム安全ミッション保証室の小林室長から概要説明をお願いできますでしょうか。
【小林室長(JAXA)】 ただ今より資料を提示しますので、しばらくお待ちください。
JAXA有人システム安全ミッション保証室の小林です。
本日、調査・安全小委員会でJAXAから提示します資料は、今提示しておる45-1-2というものと、その付表1からなりますが、こちらの資料のほうで全体をカバーしておりますので、本日の説明は主にこちらで行いまして、必要に応じて付表1を参照するようなことで進めようと思っております。
審査対象は、JEM船内可搬型ビデオカメラシステム実証2号機で、Int-Ball2と称しますが、これを対象としております。
次のページをお願いします。
構成ですけれど、目的と審査対象のシステム説明、そして安全審査結果を含みます安全解析の概要、基本指針に対する適合性の評価結果から結論となります。
まず、この審査対象2章まで進めまして、御質問を受けたいと思います。
次お願いします。
本日の目的でございますが、有人安全審査プロセス、JAXAによるこの審査プロセスの文科省による認証を維持するために、本日Int-Ball2に対する審査結果のほうを示します。こちらの表にあるようにJAXAの中では、有人安全審査会及び機構の安全審査委員会をこのような日付で実施しております。
次お願いします。
有人技術部門、私どもはこの有人安全審査のほうを実施しておるわけですが、このInt-Ball2の安全評価結果について確認いたしました。また、JAXAの安全審査委員会にて有人安全審査会の審査結果、並びに文科省さんによる我が国の安全指針に対する適合性について確認しております。本資料ではこれらの結果について報告いたします。
次お願いします。
最初にInt-Ball2のシステム説明になります。
Int-Ball2は、左下の図のような球形の機体、そして右下のドッキングステーションと言われている、機体へ充電をしたりソフトウエアのアップデートを行う機器からなります。
機体自体は直径20センチ程度、重さは3.8キロ程度のものでして、その中にバッテリやカメラ、あとマイク等を持っています。自分の船内を地上からの遠隔操作で移動し撮影するドローンになります。
航法誘導制御機能として周辺環境を自動でマッピングしまして、自己位置と姿勢を推定し、プロペラ8機を使って移動することができます。
初号機と2号機の違いですけれど、主には大型化したということと撮影機能を改良したこと、あとドッキング機能の追加などになります。
次お願いします。
運用でございますが、宇宙飛行士がJEMの船内でドッキングステーションを取り付けます。その後の実験運用ですけれど、機体に充電することであったり、JEMの中を飛行してクルー作業のモニターを行うこと、また、メンテナンスとしては、移動に使うプロペラモジュール自体は交換可能となっています。
地上からは、コマンドで飛行目標を設定したり、あとは撮影の開始・停止等の指示をします。
Int-Ball2は、この地上からのコマンドを受けて、目標位置に向かって自律的に飛行します。また、バッテリ残量が低いときには自分の判断でドッキングステーションへ帰還することになっています。
その他はテレメトリや映像を監視します。
次お願いします。
こちらが構成品ツリーになります。
機体には、バッテリ、カメラまわり、マイク、プロペラ8機、あとスピードコントローラがプロペラごとにございます。
ドッキングステーションと機体との間は、給電や通信があるわけですけれど、磁石を使ったコネクタを有しています。
機体自身は、またWi-FiでJEMシステムとつながっています。
次お願いします。
審査範囲でございますが、射点としましては、NASAのワロップス飛行施設から打ち上がりますが、その射場での作業は特にございません。JAXAの審査範囲としましては、打ち上がってからInt-Ball2のISSの運用であったり、その後の廃棄、そこまでがJAXAの審査範囲となります。
次お願いします。
また、審査の体制ですけれど、この物品自体の設計や解析、あと安全解析等は、有人宇宙技術センターというところで実施しております。私どもがいます有人システム安全ミッション保証室はこの有人技術センターから独立した組織でして、安全解析の結果を確認しまして、適宜評価を下すと。そういったイタレーションを何度も繰り返した末に、有人安全審査会で安全解析結果を審査するようにしています。私はその審査会の議長を担っています。
また、一部のハザードレポートはNASAの審査パネルのほうにもかかりますし、最終的な安全審査報告書のほうはビジビリティを確保するためにもNASAのデータベースのほうに登録するようにしています。
有人安全審査会やNASAの審査会が終わった後、この安全審査委員会にて機構として安全のほうを判断しています。
審査対象の説明は以上です。
【木村主査】 ありがとうございます。
まず、ここまでのところで何か御質問とかありますでしょうか。もしありましたら挙手のほうでお願いできればと思います。
もし無いようでしたら私から1点だけ確認させていただきたいのですけれども、Int-Ballは既に1回ミッションを達成して、その過程で安全審査がクリアされていると思います。実際に安全に実験も行われたということで、これはよかったと思っているのですが、主にハードウエア的に、Int-BallとInt-Ball2とで際立って異なるところというのを、簡単にまとめていただけますか。先ほどプロペラの交換機能というのは、メンテナンス部分ということで恐らく新しく付け加えられたと思うのですけれども。
【小林室長(JAXA)】 おっしゃるとおりでして、プロペラのメンテナンス機構は交換できる単位にしているのはInt-Ball2ですけれど、そのほかドッキングステーションというのを設けまして、Int-Ballの初号機ではUSBを使ってラップトップから充電するようなことをやっていたんですけれど、2号機では、ドッキングステーションに自分で取りつくことによって地上からのコマンドで充電の開始・停止ができるようにしたというところが一つ大きな違いになります。
また、撮影機能も改良されていまして、4Kレベルの画像を撮ることができるようになっています。
【木村主査】 分かりました。後で多分ちょっと議論になるかなと思うんですけれども、恐らく機能的な更新だと思うのですが、安全面で考えたときに、やはり給電と交換というところが今回については議論のポイントかなと思いました。このような理解でいいですね。
【小林室長(JAXA)】 はい、結構です。後ほど説明します。
【木村主査】 ありがとうございます。
他はいかがでしょうか。ここまでは大丈夫ですか。御説明は非常にクリアだったと思います。
それでは、いよいよ具体的な安全審査の内容のほうに入りたいと思います。
引き続き、御説明のほうをお願いできますでしょうか。
【小林室長(JAXA)】 それでは、スライドの9ページから行きます。このページはハザードの識別について書いております。
まず、ハザード識別は、スタンダードハザードと言われているステーションで規格化されているものと、あとFTAを用いて行いました。今回FTAのほうを提示しております。
なお、その開発ではFMEAも実施しておりまして、故障の影響を評価しまして、安全に影響するとなった場合にはハザードや、ハザード制御といった安全解析にも反映されております。
その結果識別されたハザードについては、次のページをお願いします。
こちらのほうでスタンダードハザードレポートと言っているものと、あとユニークのものがあるわけですけど、スタンダードハザードレポートというのは、ここでは表記上、標準ハザードと書いていますが、ISSプログラムではその制御方法や検証方法が標準化されているハザードがございまして、それがここに挙げているような11件のハザードレポートが識別されております。
また、そういった標準化された方法以外で制御・検証しているハザードとして、合計5件のハザードがありまして、こちらではユニークハザードと呼んでおります。
続いて、それぞれについて概要を説明してまいります。
まず、スタンダードのハザードレポートですけれど、まず1番、2番のほうは、火災であったりオフガスの発生リスクが、これらは適切な材料を選定することで確認しています。
また、スタンダードの4番については、ガラスの飛散になりますけれど、これは適切なコンテインメント、実態はジップロックバッグに入れられて打ち上がりますし、また、軌道上でもクルーがそのガラスに接触できないようにポリカーボネートでカバーされております。そういった封入や、カバーされていることを確認しております。
次お願いします。
続いて、スタンダードの5番はシャープエッジですけれど、検査で有害な鋭利部分がないことを確認済みです。また、退避路を阻害しないようなところに、このドッキングステーションというのは設置しますし、また、飛行中も、クルーが緊急避難するようなことでも阻害しないようなことも確認しております。
スタンダードの6番はタッチ・テンパーチャ――高温部の接触ですが、熱解析で接触温度が規定以内であることを確認しました。
スタンダード8番の騒音についても、騒音試験で問題ないことを確認済みです。
次お願いします。
そしてスタンダードの9番、導通・絶縁のハザードですけれど、接地――グランディングであったり、バッテリの絶縁設計が適切であることを確認いたしました。
スタンダードの10番、不適切なワイヤの選定ですけれど、ドッキングステーションとバッテリ上流のワイヤは適切なサイズのワイヤであることを確認しています。バッテリ下流の電線については、細い電線を使っておりまして、ワイヤサイズの要求からは逸脱しています。この件はユニークのハザードレポートで、後ほど詳細に説明いたします。
11番の電気ショックですが、コネクタを着脱する際の上流のスイッチを遮断する手順であることを確認しました。プロペラモジュールのコネクタ、それ以外は電源側がフィメールタイプであることを確認しています。コネクタモジュールの交換する際なんですが、コネクタ自身が特殊な形状をしておりまして、要求を逸脱しています。この件は、ユニークハザードレポート5番の中で説明いたします。
次お願いします。
スタンダード12で、電磁適合性ですが、こちらは試験で確認済みです。
13番の回転体への巻き込みですが、回転エネルギー、サイズ、回転数が規格を満足することを確認しています。
それでは、ユニークのハザードレポートについて1件ずつ説明していきます。
ユニークの1番は、バッテリの破損です。Int-Ball2はリチウムイオン2次電池のほうを使っております。3個の直列の電池を2並列で使用しておりまして、全体で10.8ボルトの開放電圧、そして6,500ミリアンペアアワー程度の容量を有しています。外部短絡であったり内部短絡、過充電、過放電、あと過度な高温環境を原因といたしまして、そういったリチウムイオン電池が破裂するとか電解液の漏えいが起こらないかを確認しました。二重故障許容で、もしくは環境試験、各種検査でパスしたこと、また、電池の使用条件が電池の仕様内であることを熱解析で確認する、そういったことでハザード制御されていることを確認しています。
次お願いします。
次のスライド17と18は、衝突ハザードを扱っています。
17ページのユニークの2番はクルーとの衝突を扱っていまして、次のページのユニークの3番は、Int-Ball2とモジュールや機器、ハードウエアとの衝突のことを扱っています。
前のページに戻っていただいて、まず、クルーとの衝突ですけれど、Int-Ball2は球形、軽量ですので、衝突してもクルーを負傷させるリスクは極めて低い設計になっています。また、飛行中はLEDが点灯していまして、クルーに認知されやすいことも確認しています。
次のページをお願いします。
ハードウエアとの衝突の件ですけれど、プロペラごとにスピードコントローラを有していまして、これを軌道上で書き換えられないようにしているために最大回転数が抑えられています。最大回転数で飛行しても、クルーの衝突荷重、キックロードよりも小さい荷重であることを確認いたしました。
次お願いします。
ユニークの4番は、この細い線材に大電流を流すことで、線材が高温・熱分解して有毒なガスが発生するというハザードです。
これは有人の場合の特有な要求ではございますが、上流の過電流保護装置で制限された最大電流値まで考慮して、下流のワイヤを選定するということにしています。
下の図にあるようにInt-Ball2の場合には、過電流の保護装置は最大7アンペア、トリップするレベルが7アンペアなわけですけれど、その下の下流はワイヤの許容値は5.3アンペアとなっています。細い線材を扱っているために、仮に負荷が短絡した場合に最大7アンペアまで電流が流れて、ワイヤの許容値を超えてしまうという事象が発生します。ただ、その次の規定といたしまして、被覆材から発生するガスの総量を制限するという要求がございます。ワイヤの線長――質量が安全基準で定められておりまして、Int-Ball2はこの規格を満足することを確認しました。
なお、その細いワイヤに大電流を流すと発火する可能性があるわけですが、ワイヤの被覆は難燃性でして、また、ワイヤ自身もガラスクロステープで巻かれています。周辺の基盤は難燃性のコーティング剤で覆われていると。そういったことで火災の発生のリスクや延焼リスクは極めて小さいと判断いたしました。
次お願いします。
これが最後のユニークハザードですけれど、このプロペラモジュールの交換時に、コネクタに短絡電流が流れた場合に、溶融金属が発生してクルーのやけどに至るといったハザードです。
これは電源側のコネクタがフィメールタイプ、ソケットではないということと――ちょっと小さくて恐縮ですが、下の絵の真ん中の写真がちょうどこの電源側のコネクタになっています。ソケットタイプじゃないことと、シェルが張り出してなくてコネクタがむき出しになっていることが問題です。要求を逸脱していないということで、ただ、交換する際には上流電源をまず遮断するということと、あとピンは1ミリ以下でしてベントするリスクは非常に低いということ、また、コネクタ自身はこのモジュールの裏側にありまして、万が一溶融した金属が発生したとしてもクルーに接触する可能性は低いと、そういったことで問題ないと判断いたしました。
次お願いします。
続いて、ここからは国の安全指針の立証対照表となります。詳細は付表1がありますが、ここでは概要を説明いたします。
今まで御説明した内容とかぶるところが多いために、特異なところだけを抜き出して説明したいと思います。
スライド23まで飛んでください。
ここの宇宙環境対策のところ、隕石・デブリの関係ですけれど、このInt-Ball2は船内の使用でして、船外で使用しませんので適用外としています。
あと、宇宙放射線については、トータルドーズ及びシングルイベントについて解析評価し、問題ないことを確認しています。
あと、高真空・微小重力等の環境についても、船内に使用しますので適用外。ただ、減圧に耐え、再加圧後は正常に動作することについても、この装置自体は実験装置でして、安全に関わらない機器と判断し、適用外にしています。
次のページをお願いします。
汚染ですが、バッテリの電解液が漏えいしないように、適切にスクリーニングされたバッテリを選定して使用しています。
27ページまで飛んでください。
自律性の確保やそのオーバーライドの件ですけど、Int-Ball2は、自分でマッピングして、地上からのコマンドで目標値が与えられると、自分で速度や位置、姿勢を制御して移動していきます。ただ、その地上からのコマンドやクルーの操作で機体の動作を停止させることはできます。
28ページをお願いします。
人間・機械系の搭乗員の保護でございます。いろいろ書かれていますが、サマライズすると、回転体のサイズが小さいことであったり、シャープエッジがないこと、ガラスの保護がなされていること、飛行速度を制限していること、高温にならないこと、コネクタの着脱時に溶融金属が発生しない手順になっていること、そういったことを説明しています。
残りのページも、3項の安全解析のところで説明した内容と重なりますので、本日の説明は割愛いたしますが、総じまして、Int-Ball2に適用されています安全指針に対しては、全て適合していることを確認しております。
結論ではございますが、安全かつ適切に実施されていることを有人安全審査会で確認したということ、安全審査委員会で有人安全審査結果を了承し、また、国の指示に適合していることをJAXAは確認しました。これらによって、Int-Ball2が安全要求を満足すると判断しまして、安全審査を完了した旨、結論づけています。
添付は、Int-Ball2へ適用されました安全要求と安全解析を求めている文書、そして略語集となっております。
また、付表1は我が国の安全指針への立証対照表となっております。そのサマリーを御説明いたしましたので、付表1の説明は割愛いたします。
説明は以上です。
【木村主査】 ありがとうございます。
それでは、ここから御質問等お受けしたいと思います。どなたかいらっしゃいましたら挙手で。
最初に私のほうから一つだけ、私としてはある意味大事かなと思ったところをさらっと説明いただいたので、ちょっと解説をしておきたいと思います。安全審査は基本的にFTAベース、つまりハザードを識別してそこから議論するという形を取られています。一方で、機器を新しくリニューアルしたり機能を更新したりした場合に、ある機器が何かトラブルを発生したときに、それが何を引き起こすのか、何が起きるかという観点、これをFMEA的なアプローチといいますけれども、こういう観点は、ある意味分かりやすく、同時に議論する必要があるのかなと考えます。
今回のケースのように改修があった場合には、このような方法が、発想的にはやりやすいのかなと思っておりました。
先ほどの御説明の中で、そうしたFMEA的なアプローチについては既に、JAXAさんの中でFMEAとFTAの対応関係について既に検討がされていて、例えば、さっきのユニークの5番で御説明のあった電気ショックとか、スタンダード11番とか、そういうところに結果として発生するハザードとして対応ができているというような判断を既にされているということです。これも含めて、安全審査のプロセスとして適切に行われているというように、私自身、判断できますので、そこについては最初に私のほうからコメントの形でさせていただきたいと思います。
ほか、質問いかがでしょうか、この件について。
もし無いようであれば、私のほうからもう一つ。
今回のユニークハザードの件の、ユニークの2、3というのは、確かにInt-Ballに固有のユニークハザードなのですけれども、1で既に恐らく十分議論もできている、方法としては議論できていると思われまして、これは安心できると思います。
今回、本当にこの機器でユニークというところが、ユニークハザードの5のところかなと思っていて、メンテナンスを入れることによってコネクタが影響を受け得るというところだと思うのです。機器の性格上、先ほどFemale(ソケット)にできないという事情があって、Male(プラグ)の場合は電源電圧がかかっているピンがベントする(曲がる)ことでショートするリスクが考えられます。この点について、先ほどの御説明で、起きたとしても、端子が十分短いので大丈夫というところまで確認されているということですね。
【小林室長(JAXA)】 ベントについては、まずピン自体が短いサイズ、1ミリ以下ということで、ベントするリスクが低いと判断しました。
【木村主査】 そもそも曲がりにくいという判断ですか。
【小林室長(JAXA)】 はい。
【木村主査】 了解しました。軌道上で作業をするときに、細かい作業がなかなか難しいので、はめ込みのところのトラブルは、発生し得るかなと思っていまして、そこの部分はコネクタ的に問題ないということで示されたという理解ですね。
【小林室長(JAXA)】 はい。このコネクタも磁石を使っておりまして、かつ周りのプロペラモジュール自体のケーシングがありますので、それによって位置合わせもできるような形になっていますので、クルーが過大な荷重をかけてあてるということはまず考えにくいです。
【木村主査】 なるほど、接触という状況については、かなり無理があるということですね。
【小林室長(JAXA)】 はい。
【木村主査】 あともう1点、今おっしゃっていただいたように、磁石を効果的に使われているということなのですけれども、例えば電磁的(EMC的)電子的に問題がないかとか、その辺については電磁適合性のところで見られているという理解でよろしいですか。
【小林室長(JAXA)】 おっしゃるとおりです。プロペラモジュールを全部回した状態で試験のほうも行っています。有害な電磁波も放出されてないとか、そういったことも確認しています。
【木村主査】 磁石はやっぱり簡易に位置決めができたりして非常に有効な手段だなと思いながら、外部とのインターフェースについて、その辺が少し気になったりするので、そこはちゃんと見られていれば大丈夫かなと思いました。
【小林室長(JAXA)】 自家中毒になってないことも確認済みです。
【木村主査】 そうですね。
ほか、いかがでしょう。
御質問等なければ、この議題、まとめのほうに行きたいと思いますけれども、よろしいですか。
そうしましたら、本日の審議結果、小委員会として特に問題・御異論がないということで、この安全審査のプロセスそのものは問題はないということで御判断いただけたと思っておりますので、次回の宇宙開発利用部会に報告したいと思っております。
利用部会において最終的に決定いただく審議結果、こちらの案を事務局のほうでつくっていただいておりますので、事務局のほうから御説明をお願いしてもよろしいですか。
【木元補佐(事務局)】 今お映ししております調査審議結果の案というものを作成しておりまして、こちらで次回の宇宙開発利用部会のほうに報告し、決定いただく文書として作成しております。
中身ですが、まず目次、この中で調査・安全小委員会のメンバーの皆様の名簿と、この後御審議いただく宇宙開発利用部会のメンバーの皆さんの名簿、それと本日使用した資料が添付される形となっております。
概要と調査審議の方法、そして今日示されましたマトリクスの形で評価されている指針に対しての立証対象というものに関して、これを使って審議が行われたという結果を書きまして、最後の調査審議の結果は基本的に御同意いただいているという形ですが、このままの書き方でよろしければ、これで了承として利用部会のほうに出したいと思います。
加えて、先ほど主査のほうから少し指摘というかポイントのコメントがありましたので、そういったことも審議のポイントとして別紙をまとめまして、併せて提示するということにいたしたいと思っております。
以上です。
【木村主査】 ありがとうございます。
この資料を利用部会に審議結果として上げたいと思いますけれども、御異議ございませんね、大丈夫ですね。
また、先ほど事務局から言及がありました小委員会から利用部会の報告資料の書きぶりとか、その辺りについては私のほうに御一任いただければと思いますが、そのような進め方でよろしいでしょうか。丈夫ですかね。
御異議ないようですので、そのような形で進めさせていただこうと思います。
ありがとうございます。このようなプロセスで、本日の審議結果を次回の宇宙利用部会に報告することにいたしたいと思います。
それでは、1件目の案件はここまでということで、2件目のほうに移りたいと思います。
次の議題がイプシロンロケット6号機打ち上げ失敗原因調査の状況についてということで、JAXAの宇宙輸送技術部門事業推進部の佐藤部長並びにイプシロンロケットプロジェクトチームの井元プロジェクトマネージャー、御説明をお願いいたします。
【佐藤部長(JAXA)】 佐藤です。本日もよろしくお願いいたします。
前回12月に御報告をさせていただきました以降、さらなる詳細な要因を突き詰めるべく、試験、解析、それから製造データの検査、継続してきてございます。絞り込みが少し進んだという状況まで来ておりますので、本日その状況について御報告をさせていただきたいと思います。
説明のほうは井元プロマネから行います。よろしくお願いいたします。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 イプシロンの井元でございます。
それでは、資料に基づきまして説明いたします。
右下2ページの目次になります。
まず1項ですけども、前回までのまとめということで、2項が新しく報告いたします情報になります。
まず、プラスY軸側の下流配管圧力挙動の検証ということで、こちらフライトデータの再現を実施いたしました。その結果といたしまして、前回二つに絞り込みました故障シナリオの検討を2の2項で実施しております。その後、ダイアフラムによる閉塞に関する検討を実施しております。最後はまとめになります。
右下3ページをお願いいたします。
こちら、今御説明したとおりですけども、フライトデータに基づく圧力挙動の分析を実施いたしました。
さらなる絞り込み、それから追加検証結果を踏まえた故障シナリオの絞り込み、こういったものを実施しております。
次のページお願いします。
4項は打ち上げ結果の再掲になりますので、説明を割愛いたします。
5ページ、6ページも割愛させていただきまして、7ページになります。
前回までのまとめといたしまして、パイロ弁の開動作不良と推進薬供給配管の閉塞、この二つに絞り込んだところでございます。
8ページと9ページについても説明は飛ばさせていただきます。10ページも同様です。
11ページをお願いいたします。
原因究明状況ですけども、前回報告時点で可能性が否定できない二つの要因ということで、ここでフライトデータで取得いたしました下流配管圧力挙動の検証といったような試験を実施しまして、再現性を確認いたしました。さらに追加検証及び製造・検査データによりまして、それぞれの要因について故障シナリオの発生可能性を検討しております。その結果といたしまして、ダイアフラムによる閉塞に関して詳細FTAの展開や、またさらに追加試験を行っております。
12ページをお願いいたします。
こちらもおさらいになりますけども、右の図の下のほうのパイロ弁の下流配管圧力センサー、こちらのフライトデータの挙動を示しております。打ち上げ、リフトオフから一段燃焼中、徐々に圧力が降下していきまして、区間Aになります。その後、パイロ弁点火信号送出タイミングで、フライトデータの1分解能ということで0.011メガパスカル程度上昇しているのが区間Bになります。その後、推薬弁を開くんですけども、すっと落ちまして、ある一定の圧力を保持した状態。それから、違う推薬弁を開くタイミングで真空圧まで落ちるというのが区間C、区間Cというのは推薬弁1開動作中に0.022メガパスカル保持しているという挙動になります。区間Bと区間Cというのが後ほど出てきますので、こちらで御確認いただきたいと思います。
13ページお願いします。
まず、区間Bについてですけども、こちらは拡大した図になりまして、再掲になります。こちらは前回の報告におきまして、実事象というふうに判断しております。
それから、パイロ弁の下流から推薬弁までの容積、こちらは約50㏄でありまして、計算上、数㏄の非圧縮性流体が配管に流入しますと、1分解能0.011メガパスカル程度に相当する圧力上昇につながるというふうに計算しております。
続きまして、14ページをお願いいたします。
区間Cのほうです。推薬弁の1の開動作中に圧力が0.022メガパスカルが保持されたと、真空まで下がらなかったといったところに着目しまして試験を実施しております。ポンチ絵を真ん中らへんに書いてますけども、パイロ弁の下流配管を模擬して、推薬弁とスラスターを使って試験をしています。また、実機配管の容量は模擬しております。で、推薬弁を開動作させて圧力・温度データを取得しております。結果のまとめといたしまして、配管内部に窒素ガスや水分を含む空気を封入したケースでは圧力は保持されませんでした。ということで、気体のみの影響ですとか、氷結も想定しておりましたけども、こういったものでは推薬弁の閉塞はないということを確認しております。
それから、配管内部にヒトラジンを封入したケースも実施しておりまして、この場合はフライトと同様に圧力を保持されるという現象が見られました。ということで、これはヒドラジンの反応等によるものと考えております。
大きく、下の四つのケースを実施いたしまして、まず、ケース1として窒素ガス、気体のみの影響ということで確認したところ、これは真空まで低下しました。
それからケース2ということで水分を含む空気、こちらも同様です。
3、4としまして、ヒドラジンを5㏄あるいは10㏄封入したところ、配管の圧力は圧力を保持すると、真空まで落ちないという結果になりました。その結果を次のページ、15ページに示しております。
まず、一番下のデータがフライトデータになりまして、推薬弁の1を開にするとすっと下がるんですけども、途中で圧力を保持すると。フライトでは連続ではないんですけども、累積で4.5秒間、開にしているというものでございます。その上が試験データになりまして、こちらは推薬弁を10秒間連続で開にした状態になります。この緑のものが水分を含む空気、それから赤が窒素ガスということで、こちらはデータがバタバタしておりますが、真空まで下がるとヒドラジンを5ccあるいは10㏄含むものでは真空まで下がらずに一定圧力を保持するということで、こちらがフライト事象を再現していると考えております。
まとめますと、こちら、フライトデータで下流配管圧力が保持された理由につきましては、パイロ弁下流に数ccのヒドラジンが存在していたと考えております。気体のみの場合や水分が存在している場合では圧力が保持されないという結果でございます。
次のページに移りまして、16ページになります。
前回の報告で、二つのシナリオに絞りましたけども、このシナリオの再掲になります。
まず一つ、パイロ弁の開動作不良ということで、ラムが仕切り板を完全に打ち抜けず、仕切り板に微少の隙間が発生して、ブースター燃焼ガスまたは推進薬が僅かにパイロ弁下流に入り込んだというシナリオ。
それから、推進薬供給配管の閉塞に関しましては、ダイアフラムが液ポートに近接し、パイロ弁開動作時にダイアフラムが液ポートに引き込まれて閉塞したと。閉塞までの間に推進薬が僅かにパイロ弁下流に入り込んだというシナリオになります。
この二つのシナリオに対しまして、次のページではパイロ弁のシナリオに関する検証・検討を実施しております。
17ページお願いします。
まず、こちらについては発生可能性はないと判断しております。その理由は、まずこのシナリオの中でブースター燃焼ガスが入り込んだケースにつきましては、先ほど御説明したとおり、気体では先ほどの区間Cの状態と整合しないと、ブースター燃焼ガスが入り込んだケースはないというふうに考えております。
それから、パイロ弁が、微小な隙間が発生して推進薬が僅かに入り込んだケースに関してですけども、仕切り板の上下流方向、両方に隙間が発生するということと、その後、閉塞する、漏れがなくなるということになります。そうした場合に、こういう現象が発生する場合ですけども、微少の隙間が発生するときに戻る可能性があるということで、その発生する時間につきましては、数ミリセック、10のマイナス3乗秒程度のオーダーというふうに考えておりまして、この作動時間内でパイロ弁下流に流出する推進薬量につきましては、こちらも10のマイナス3乗㏄オーダーということで、フライトデータから数cc程度流入したというふうに考えておりますので、区間Bの1分解能の上昇、それから区間Cの0.022メガパスカル保持といったところと整合しないと。この二つの理由、それからこの後御説明しますけども、製造・検査データが良好であるというふうに確認しておりますので、この発生可能性はないというふうに判断しております。
次のページお願いします。18ページになります。
この18ページ、ここはイニシエータの作動不良ですので、前回から変わりありません。
19ページをお願いします。
この19ページにつきましても、PCAの作動不良、こちらも前回から要因ではないと判断しておりまして、このバルブ本体の作動不良、製造不良のところだけ三角で残っておりましたけども、追加の製造結果の確認によりまして良好であると判断いたしました。
それから、同一ロット品によるLAT試験は良好ということで、製造不良もないということで、パイロ弁につきましては要因ではないと判断しております。
続きまして、次の20ページお願いします。
推進薬供給配管の閉塞ですけども、ダイアフラムが液ポートに近接した状態で、パイロ弁開動作したときのダイアフラム閉塞可能性を確認するための試験、これを閉塞確認試験と呼んでいますけども、これを実施した結果、結論から言いますと閉塞するケースが確認されました。
大きく二つのケースで検討しておりまして、まずケース1に関しましては、フライトとはちょっと違うタンクの置き方になりますけども、液の出口ポートを下に向けまして、ダイアフラムの切れ端といいますか切ったもの、試験片を水の底に置きまして、水を充填して加圧して、このパイロ弁、模擬パイロ弁ですが、これ電磁弁になるんですけども、開にするという試験を実施しました。その模擬パイロ弁までのタンク出口配管、それからパイロ弁からの配管については、形状、容積、こういったものを実機と同等ということで、模擬パイロ弁はパイロ弁ではなく電磁弁になるんですけど、作動が早いバルブを使いまして試験を実施いたしました。
その結果、3ケース実施しておりまして、この表に書いておりますが、さらにちょっとリブについての説明を右上にしておりますけども、こちら液側に閉塞を避けるためのリブといったものがついているダイアフラムなんですが、こういったもので液ポートに推進薬が供給されなくなることを防ぐようなものです。それが液ポートの出口中心にリブがあるケースが1aということで、こちらは閉塞なしという状況です。模擬パイロ弁を開にした3秒後に配管圧力がタンク圧まで上昇ということで、閉塞はありませんでした。
それから1bということで、液ポート中心にリブがない、リブをちょっと避けたところで試験したところ、こちら閉塞が発生いたしまして、配管圧力が0.01メガパスカル上昇すると。さらに、その下流配管から約3㏄の水を採取いたしました。このときの、ダイアフラムに係る差圧につきましては1.9メガパスカルになります。
それから、1cとしまして、液ポート中心にリブがないということ、それから、ダイアフラムが、公差内ではありますけども、少し薄い肉厚のダイアフラムを使って試験を実施いたしました。そうしたところ、こちらも閉塞が発生いたしまして、下流より4.5ccの水を採取しております。こちらは特記事項が1点ありまして、こちらは約3分後に試験片が破断して、閉塞解消と。3分というのは180秒程度でありますけども、このときの差圧が1.9メガパスカルということで、そういうデータを取得いたしました。
それから、2番目のケースとしまして、フライトと同じようなタンクの置き方で、実機大のダイアフラムを試験したものになります。2aと2bがまず一つ目のダイアフラム、2cと2dがまた違うダイアフラムで実施いたしました。
推進薬の代わりといたしまして水を2リットルから4リットル充填いたしまして、4リットルではダイアフラムが出口ポートから少し離れた状態ですけども、それから水を3リットルから2リットルに少なくしていきますと、徐々にダイアフラムが出口ポートに近づいていくという状況でありまして、その際、まず、2aで水4リットルを充填したものについては閉塞はありませんでした。
それから、2bにつきましては、水を3リットル充填した状態、これは閉塞が発生して、模擬パイロ弁を閉にした後、しばらく時間が経ってから閉塞が解消するという事象が発生しております。この場合は配管圧力は0.04メガパスカル上昇すると。そして配管から11ccの水を採取すると。約1.9メガパスカルの差圧がかかりましたけども、ダイアフラムは破断しないというものでございます。
それからダイアフラムを変えまして、2cになりますけども、水を3リットル充填したものでは、閉塞がありませんでした。
2dでありますけども、水を減らしてさらにダイアフラムを出口ポートに近づけた状態では、一時的に閉塞が発生して、配管圧力が約0.01メガパスカル上昇したと。こちらは模擬パイロ弁開後約20秒後に配管圧力がタンク圧力まで上昇するというケースになります。こちらも約1.9メガパスカルかかりましたけども、ダイアフラムは破断していないというものでございます。
これが結果のまとめになりまして、そのデータを21ページに示しております。
左がフライトデータになりまして、試験結果、こちらの模擬パイロ弁を開にしたところ、約0.01メガパスカル、圧力が上昇するというデータが得られました。結果のまとめですけども、こちらは区間Bのフライトデータと同等の結果になりました。それから、配管から3から11㏄の水を採取したいということで、フライトにおいてパイロ弁下流にヒドラジンが数cc流入したと考えられること、それから、実機タンクの出口ポートからパイロ弁上流までの配管容積は7ccであるということと整合するということで、ダイアフラムによる閉塞につきましては、パイロ弁配管圧力のフライトデータの挙動と整合するという結果になりました。
続いて、22ページをお願いいたします。
こちらFTAになりますけども、推進薬供給配管の閉塞につきましては、ダイアフラムによる閉塞であると絞り込んでおります。
続いて23ページをお願いいたします。
こちら詳細FTAになりますけども、このFTAに基づきまして追加試験を実施しております。その前に、まずダイアフラムが正常の場合ですけども、加速度による変形、振動・衝撃による変形。それから、ダイアフラムが異常である場合は、ダイアフラムの脱落、ダイアフラムシール部からの漏えい、それからダイアフラムの破断ということでFTAを展開しておりまして、それぞれについて追加試験を実施しております。かなりのことが分かってきておりますので、その次のページ24ページに、実施した試験とその結果のサマリーを示しております。
こちら、ダイアフラムによる閉塞の可能性、発生の可能性の見極めと要因の絞り込みのために実施した追加試験の結果、サマリーになります。
まず、閉塞確認試験につきましては先ほど説明したとおりでありまして、説明は割愛いたします。
それから、漏えい模擬試験といたしまして、ダイアフラムの下部に意図的に漏えいを発生させたところ、漏えいした水は液側からガス側に移動しまして、ダイアフラムが液側球殻に張りつくという状況になりました。
それから、開発供試体による追加検証といたしまして、過去に、数年前に開発した供試体がそのまま残っておりましたので、QTタンクとデルタQTタンクという二つのタンクがありました。こちら、非破壊検査、それから分解点検、それから追加試験等を実施した結果が右に書いてありまして、まず丸1ですけども、このQT・デルタQTタンク、両方ともダイアフラムの組込溶接といったものは正常であるということをCT検査で実施いたしました。
それから、ガス側の半球を切断いたしまして、液側とダイアフラムのみ残した状態で漏えい試験を実施したところ、漏えいはないということを確認しております。
それから、過去の試験で、QTタンク、開発試験でかなり過負荷をかけたんですけども、分解点検の結果、このQTタンクのダイアフラムは健全であるということを確認しました。
それから、丸3といたしまして、まだヒドラジンは充填してないんですけども、差圧等を印加したダイアフラム、こちらは全て部分的に塑性変形――永久的な変形ですね、たるみのようなもの――を確認いたしました。伸びているということです。
それから、丸4ですけども、破壊圧まで印加したタンク、こちらの溶接幅のデータを取得しております。追加の寸法計測を実施しておりますので、詳細評価を今実施しているところであります。
それから、デルタQTタンクは水を9リットル充填いたしまして、工場から射場、内之浦ですね、を往復輸送いたしまして、その後のダイアフラムは健全であるということを確認しております。
それから(d)、こちら今回追加実施した試験ですけども、組込溶接検証試験ということで、液側の半球の赤道リング、こちらは既存のものを使いまして、固定リングというものを新たにつくりました。それからダイアフラムについては、かなり傷とかバリ跡みたいなのがある、フライトでは使えないダイアフラムを組み込んだ検証試験になります。
ダイアフラムの組込みと溶接、こちらもCT検査の結果正常であるということと、漏えいはありませんでした。ということで、ダイアフラムに傷ですとかバリ跡等があっても、ダイアフラムの組込溶接が正常であれば漏えいはないということを確認しております。
それから、溶接のときに熱・温度データを取得いたしまして、その影響があるのではないかということで確認したんですけども、ダイアフラムの組込溶接が正常であれば入熱による影響はないというふうに確認しております。
それから、こちら6号機と同じ条件でテストピースと実物のタンクの溶接を実施しまして、相関データを取得しております。こちらは寸法計測を今実施しているところですので、詳細評価中でございます。
丸5といたしまして、これは上の(c)も同じなんですけども、気密試験においてダイアフラムが固定リング等に密着してシール部以外で機密を保持し得るということを確認しました。
それから、輸送模擬試験ということで、アクリルタンクを使いまして、ヒドラジンに水を充填しまして、近場をウロチョロといいますか荷重をかけて振動・衝撃をかけたんですけども、ヒドラジン未浸漬のダイアフラムでは、輸送中に発生する程度の変形であれば元に戻ると。弾性変形は弾性範囲内であるということを確認しております。
それから、シール性確認試験とヒドラジン浸漬試験につきましては、今実施中ということで、今後確認いたします。
こういった試験結果から分かる事象というものを25ページ以降、次のページ以降にまとめております。これまで分からなかったことがかなり分かってきております。
まず、確認された事項と、今後確認が必要な事項に分けて、記載をしております。
まず、確認された事項といたしまして、まずダイアフラムが正常のケースです。
丸1、こちらは漏えい模擬試験等、これまでアクリルタンクに何回か水を充填しておりますが、その全てにおいてヒドラジン未浸漬のダイアフラムを装着したタンクに水を9リットル充填した場合に、一次環境下ではダイアフラムは液ポートから離れているということを確認しております。
それから丸2、こちらは輸送模擬試験、先ほど御説明したとおり、ヒドラジン未浸漬のダイアフラムでは輸送中に発生する振動・衝撃による変形は弾性範囲内であるということで、液ポートに近づくことはないという状況です。
それから丸3としまして、ヒドラジン未浸漬の差圧等を印加したダイアフラムでは、全て部分的に塑性変形しているということで、こちらは変形していないダイアフラムよりは、出口ポートに近づく側の可能性を示唆しているものでございます。
それから、今後確認が必要な事項といたしまして、ヒドラジン浸漬の影響、こちらはまだ確認しておりませんので、それと、あと一段燃焼中の加速度が大体3.5Gかかるんですけども、こういったものが印加されてゼロGに移るんですけど、そういう過渡的な状況の中でダイアフラムが液ポートに近接するかどうかといったところを確認する必要があるということで、今考えているものは二つあります。ヒドラジン浸漬後のダイアフラムの特性データということで、弾性率とか永久伸び、こういったものの取得の実施を計画しております。それから、ヒドラジン浸漬後のダイアフラムを使用した加速度を印加して、ゼロGに移る、地上環境下ですので1Gしかできないんですけども、そういう過渡的な状況の中でダイアフラムがどのような挙動を示すかといったところの確認を実施いたします。
26ページをお願いします。
続いて、ダイアフラムの異常の中の脱落に関しての検討状況です。
まず、確認された事項、確認した事項といたしまして、右にダイアフラムのポンチ絵を描いております。まず、上のほうですけども、ダイアフラムが固定リングと挟まれたところからすっぽ抜けるモード、脱落するモード、これと、固定リングの溶接部が脱落するという二つのケースを考えておりまして、まず上のすっぽ抜けるケースですけども、こちらは最大出口隙間に換算したものと最大引張荷重が出ますので、それから過去の試験データを基に脱落限界以下であるということを確認しておりますので、このモードでの脱落というものはないと判断しております。
それから、今後確認が必要な事項といたしまして、溶接のところ、組込溶接検証試験を実施して、あとQTタンク等相関データが取れますので、こちらで6号機と同じ溶接条件で溶接したものとの比較によりまして、この6号機の溶接の健全性を評価するということを今考えておりまして、詳細な確認をしているところ、追加の計測をしているところでございます。
次のページお願いします。
27ページで、ダイアフラムシール部からの漏えいということで、確認された事項といたしまして、開発試供体であるQTタンクとデルタQTタンク、それから今回新たに実施いたしました組込溶接検証試験供試体、こちらのダイアフラムの組込溶接は正常でありまして、漏えいはないということを確認しております。
それから、ダイアフラムの組込溶接が正常の場合、溶接工程前後のシール部の寸法変化は小さいということを確認しております。
それから、丸3としまして、ダイアフラムに傷・バリ跡等があってもダイアフラムの組込溶接が正常であれば漏えいはないということまで確認しております。
今後は6号機のプラスY軸側タンクの製造のデータの特異性に基づきまして、ダイアフラムシール部からの漏えいが発生するかといったところ、それからシール性の試験を実施しておりますので、そういったところから要因があるかといったところの確認いたします。
次のページをお願いします。
要因の最後になりますけども、破断につきまして確認された事項として。まず、製造中にダイアフラムに印加される差圧に対しては、6号機は破断していないというふうに判断しております。
まず一つ目、これは先ほど御説明した閉塞確認試験の中で、出口ポート近傍に関しましては、差圧が1.9メガパスカル程度が破断限界ではなかろうかと推定しております。これは1.9メガパスカルで肉厚が薄い、もっとも薄い、公差の範囲内で薄いダイアフラムでのみ破断しまして、その他のケースで1.9メガパスカルでは破断しなかった事実があります。
それから、開発試験の中で、QTタンクで液側から差圧0.8メガパスカル、液側から0.4メガパスカル、差圧ですね、印加したものについては破断していないという分解点検結果を得ております。さらに、6号機のプラスY軸側タンクにつきましては、製造中に印加した最大圧力は0.2メガパスカルであるということで、破断に至る圧力は印加されていないというふうに判断しております。
それから、分かった事項としまして、QT及びデルタQTタンクということは、過去にヒドラジン未浸漬でフライト環境よりも非常に厳しい試験を実施しておりますけども、破断していないということまで確認しております。
それから、9リットルの水を充填して、工場から射場の往復輸送を実施したデルタQTタンクのダイアフラムは破断していないということまで確認していますけども、今後、念のためですけども、破断に対してこれが厳しい条件になっていたかといったところを確認いたします。
こういったところが確認された事項と、今後確認が必要な事項ということで識別いたしました。
29ページをお願いします。
最後まとめになります。今後の進め方といたしまして、まずまとめです。
最初、追加検証及び製造・検査データの確認結果により、パイロ弁の開動作不良は要因でないと判断しております。それからダイアフラムによる閉塞に関しまして追加検証結果によりまして、プラスY軸側パイロ弁のフライトデータの挙動を再現するということを確認しました。丸1としまして、ダイアフラムが液ポートに近接した場合に、パイロ弁開動作時にダイアフラムが一旦液ポートに引き込まれて、下流配管圧力が1分解能上昇するというケースが見られました。
それから、丸2としまして、下流配管にヒドラジンが数㏄流入した状態でスラスタ部の推薬弁を開動作すると、下流配管圧力が真空圧まで下降せず一定圧力を保持するというのが再現できたと考えております。
上記によりまして、要因及び故障シナリオとしまして、ダイアフラムによる閉塞に絞り込んでおります。
最後のページになります。
今後の予定といたしまして、詳細要因でありますダイアフラムが正常ケースと異常ケースに対しまして、今実施しております追加検証等を完了させて以下を確認すると。
繰り返しになりますけども、正常ケースでは推進薬充填後のダイアフラムの変性、物質性の変化。それから、飛行中の加速度の影響等によりましてダイアフラムが液ポートに近接する可能性があるかということ。それから、異常ケースにつきましては、脱落シール部からの漏えい・破断が発生する可能性があるかと。
最後に要因として絞り込まれたダイアフラムに関しましては、詳細要因の特定結果に基づきまして、後継ロケット等への対策を反映して、背後要因の分析を行って、同様の事象が発生しないよう対策を講じることとしております。
説明は以上になります。
【木村主査】 ありがとうございます。
大変、詳細に検討を進められて、大分、問題のほうに迫ってきたということだと思います。
ちょっとだけ確認させていただくと、今回実験の中でヒドラジンは恐らく入ったということが確認できたということから、パイロ弁が問題であることは考えにくいというふうに導かれて、そこからダイアフラムが、では如何なる状況の中で閉塞を起こし得るかというところを今確認していただいている、こういう理解でよろしいですね。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 そのとおりです。
【木村主査】 ありがとうございます。非常に重要なところだと思います。
御質問、御意見等ございましたら、ぜひ挙手にてお願いできますでしょうか。
笠原委員お願いいたします。
【笠原委員】 笠原です。どうも御説明、誠にありがとうございます。大変丁寧な御説明等、また、原因究明の御努力に心から敬意を表します。お疲れさまです。
まず、2点確認させていただきたいことがあります。
ダイアフラムの漏えい試験、1.9メガパスカルでは漏れなかったと、1.7メガパスカルでは漏れたということがございますと理解したんですけど、これは実機でいわゆる加圧している圧力がやはり1.9メガパスカル近傍だったのかどうかということが一つ質問です。
もう一つの質問は、やはりリブの存在があった場合にはどんどん漏れていく、閉塞しないというふうに理解しましたが、実機ではやはりリブが存在しているわけで、というふうな理解でよろしいでしょうか。
その2点でございます。よろしくお願いいたします。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 実機に関しましては、1.8メガパスカルのフライトデータを示しております。こちら、20ページに書いておりますのはダイアフラムの差圧を示しておりまして、ダイアフラムの下流の圧力が上がっているために差圧がちょっと小さくなっていると。これは、ダイアフラムが破断するかどうかといったような観点で差圧を示しておりまして、試験では全て上流は1.9メガパスカルゲージで実施しております。
【笠原委員】 ありがとうございます。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 それから、リブに関してですけども、リブは出口ポートの上に来るという基本的な考えで設計しているものなんですけども、今回たるみというか永久変形が見られたということ、それから、これはまだ分かってはおりませんが、ダイアフラムの浸漬の影響、こういったものでリブが完全に出口ポートの真上に来るというような、確実に来るというような状況ではないということが判明しておりまして、確かにリブがあるとリブの影響でなかなか閉塞しづらい状況になるというところまで確認しておりますけども、出口ポートがリブのないところに来る可能性もありまして、そうしますと閉塞が発生する可能性があるという結果になっております。
【笠原委員】 ありがとうございます。リブと呼ばれているのは、今お示ししていただいている図のように、ダイアフラムの子午線というんですか、それに沿ったところにしかないわけですね。細かにあるわけではなくて、非常に大きな構造として存在して、しかも出口ポート近傍に集中しているというか、1本太いのがあって、ほかの方向にもちょっとあるのかもしれませんが、そういうふうな理解でよろしいですよね。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 ここに書かれております線が全部リブになっておりまして、一つはずっと続いたもので、その90度対向するところに少し長いものがあって、30度刻みで少し短いものがあるというものです。
【笠原委員】 承知いたしました。その一番中心部のものは、まさに中心を通っていますが、それ以外のものには少し隙間があるということも理解いたしました。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 そのとおりです。
【笠原委員】 取りあえず、私のほうから以上でございます。ありがとうございました。
【木村主査】 ありがとうございます。またありましたら、後でまたコメントをいただければと思います。
ほかはいかがでしょう。御質問ある方、挙手をお願いできればと思いますが。
いいですか、私のほうからちょっと。重要な点なので確認させていただきたいと思います。
先ほどの14ページのところのサマリーが分かりやすいかなと思うのですけれども、液が――この場合ヒドラジンですね――が入っていないと圧がかからないということですね、現象的には。今、フライトデータから考えると、単に圧が一過的に上がるのではなくて、ずっと保持されているから、押し続けられているいうのであろうというところから、多分液体が入らない限りそれは起きないので、パイロ弁が閉まっている、あるいは中途半端な開け方をするとか、そういうのは考えにくくて、液体はここの中に充填するぐらい、すなわちパイロはが完全に開いた状態になっているだろうという理解ですね。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 すいません、ちょっと質問が途中で途切れたので、的外れになるかもしれませんが、15ページを見ていただきますと、フライトデータにおきまして、推薬弁は累積で4.5秒、開になったり閉になったりということで、途中からは閉になっているという状況であります。
多分、御質問の趣旨は、ここの圧力が一定になっていることなんですけども、パイロ弁に関しましては、まず、完全閉であればここはあり得ません。完全開も当然ないんですけども、中途半端な開になってそれから閉まるという事象が発生したときに、区間Bと区間Cの説明ができるという形になります。
そうしたときに、例えば半分ぐらい開いてしまうとここの事象は圧力がかなり上がってしまいますので、非常に短い時間に非常に小さい隙間が発生して閉じてしまったと。これもあまり考えにくいものではあるんですけども、仮にそういうものが発生した場合、それは17ページに書いているんですけども、この推進薬が僅かに入り込んだケースということで……
(音声中断)
17ページをお願いします。
ちょっと途中から切れたようですけども、大丈夫でしょうか。どこから駄目になったでしょうか。
17ページをもう一度説明いたしますと、このケースが発生する場合は、ほんの微少に隙間が開いて戻るというケースです。
ちょっと通信状態が悪いようですけども、聞こえますでしょうか。
【木村主査】 大丈夫です。聞こえております。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 そうした場合に、隙間が開いて戻るというケースですね、そして漏れがなくなるというケース……
(音声中断)
【木村主査】 今、大丈夫です。
私の方でフォローさせて頂きますと、このケースだと入り込むのがそもそも僅かなので、加圧できるほどのものにならなかったという理解でよろしいですね。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 はい、おっしゃるとおりです。
【木村主査】 もう1点だけ、実は確認させていただきたいのが、パイロが開いていたとしたときに、継続的に押し続けていますよね。それ自体は説明はできるという理解でよいですね。先ほどの1.9メガパスカル出ている、実験上それが出ているというところが、詰まりながらも加圧はしているという、詰まった状態で加圧もしているという状態であるという理解でいいですね。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 今はダイアフラムの御質問ということですか。
【木村主査】 はい、そうです、ダイアフラムのほうです。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 ダイアフラムが出口ポートを閉塞させるのは、ずっと継続するというふうに考えております。このフライトデータではですね。
【木村主査】 そこで1点だけ確認したかったのは、閉塞した状態でも実験的にも下流側に加圧している状態で閉塞しているという理解でいいですね。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 ダイアフラムの下流ですね。
【木村主査】 そのとおりです。
【JAXA(小林)】 ダイアフラムの下流は、パイロ弁の下流圧と同じ圧力になっていると推定しております。
【木村主査】 なるほど。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 どこがいいですかね、例えば、12ページを御覧ください。
こちら、パイロ弁が開くと、ダイアフラムの下流からパイロ弁の上流、それからこの推薬弁までの圧力は同じ圧力になります。ということで、ダイアフラムが仮にタンクの出口に詰まっているというふうにしますと、ダイアフラムの上流につきましてはタンク圧と同じになる、1.8メガパスカル程度。ダイアフラムの下流につきましては、このデータで示しております0.1メガパスカル程度の圧力になります。
【木村主査】 なるほど、了解しました。なので、詰まりながらも僅かながら加圧している状態が維持されているという理解ですね。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 えーと……、加圧というところですけど、圧力は僅かながら…。
【木村主査】 僅かながら押しているという状態ですね。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 どちら側を押しているというイメージでしょうか。
【木村主査】 パイロ弁側。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)JAXA(小林)】 パイロ弁側を押している……。
【木村主査】 テレメトリで、圧力はこの間一定であるというところをお聞きしておりまして。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 ダイアフラムの閉塞のときはパイロ弁が完全に開になるということでして、その場合、パイロ弁を押しているというのは、配管の中に圧力がかかっているという観点では落ちているという形になるんですけども、イメージとしてはそういうことです、おっしゃるとおりです。
【木村主査】 ありがとうございます。了解しました。
そうすると、今の現象を非常によく表していて、なおかつパイロ弁が今回の問題からは除外されるだろうというところの結論は非常に妥当だと判断できます。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 ありがとうございます。
【木村主査】 笠原委員、お願いいたします。
【笠原委員】 ありがとうございます。今のところに関連してですけど、ダイアフラム、パイロ弁の数ミリセカンドオーダーでしか隙間が発生しないというふうに考えられているところが、理由がよく分からなくて、最初に聞いたときもそうだったんですけど、なぜそんな短いオーダーしか隙間が発生しないのかなというのがちょっと疑問です。
ついでにちょっと発言させていただきますと、要するに数㏄の推進剤がパイロ弁下流に行って、その後閉まればいいわけですので、例えばパイロ弁が僅かに開いて、その後流動があるわけですので、それに応じて何らかの閉じる操作が発生したりすると、そういう可能性はちょっと排除できないのかなという気もちょっとしたんですが、その辺り、つまりパイロ弁の動作が非常に短時間でしか発生しない、何かそうお考えになっている根拠はあるんでしょうか、その点をちょっと確認させてください。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 分かりました。この17ページの下の図に仕切り板のポンチ絵が書かれていますけども、まずラムが下に仕切り板を押し下げます。それで僅かに開いて、もしくはかなり開いてという二つのケース、かなり開くということはそこで塑性変形、破断という事象が発生しておりますので、閉まる力はないです。ということで、その場合は上流圧と下流圧がほぼ同じ、すぐ同じになるだろうということで、1ビット、1分解能上昇したことと整合いたしません。
それから、微少に開いて弾性力か何かで上に押し上げる、自分の力で、仕切り板が。そういう力が発生する可能性はゼロではない。解析でも少しは戻るであろうという解析が出ておりますけども。その場合の弾性力による高速の……
(音声中断)
運動、挙動ですね、それについては数ミリセックオーダーであるというふうに解析から出ております。
【笠原委員】 ありがとうございます。要するに、仕切り板の弾性的な動きが非常に高速なので、数㏄出すような時間がかからないというふうに理解いたしました。
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 はい、おっしゃるとおりです。
【笠原委員】 ありがとうございます。
【木村主査】 ありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。
時間が今、大分下がってきておりますが、もしあればお受けします。よろしいですかね。
この後非公開部分も議論させていただく必要がございますので、この後、非公開に入らさせていただこうと思います。
その前に、3番目の議題にその他というのがありまして、事務局から御説明をお願いしてもよろしいですか。
【竹上企画官(事務局)】 事務局でございます。
今、資料を出していますけれども、文科省における第11期科学技術学術審議会の下に設置されております研究計画評価分科会、あと宇宙開発利用部会、そしてこの調査・安全小委員会は、来る2月14日をもって委員の任期は一旦満了となり、12期としていずれの会議も設置できるまで、公式な活動が形式上休止となります。
一方、本日JAXAより御報告がありましたとおり、イプシロンロケット6号機の打ち上げ失敗原因調査につきましては、故障シナリオに基づく原因の特定及び背後要因を含めた再発防止策策定までもう少し時間が必要な状況でございまして、外部有識者の皆様による確認を継続して実施していく必要がございます。
そこで、11期から12期への移行期間におきましても、イプシロンロケット6号機の打ち上げ失敗の原因究明状況を確認し、また、それに加えまして、この間発生可能性のある宇宙関連の事故・異常事象などに対応できる体制を有することを目的に、現在の調査・安全小委員会と同一メンバーによる有識者会議の方向を示しておりますけれども、この会議を別途立ち上げることといたしました。2月1日付で設定しております。
当小委員会の委員の皆様には、既に本取組に関して御内諾いただいているところでございます。現在、その手続を進めさせていただいているところですが、この場で御報告をさせていただきます。
【木村主査】 ありがとうございました。
委員の皆様、事務局から御説明ありましたように、有識者会議ということでもう少しお付き合いをよろしくお願いいたします。これは非常に重要な案件ですので、ここまで一緒に議論いただきまして、引き続き、最後まで一緒に御協力いただければと思っております。
引き続き事務局のほうから事務連絡をお願いいたします。
【竹上企画官(事務局)】 この後、非公開の議論に移る前に御連絡でございます。
会議資料と議事録の公開につきまして申し上げます。本日の会議資料は文科省ホームページに既に掲載させていただいております。また、議事録につきまして、公開部分につきましては、委員の皆様に御確認いただいた後、文科省のホームページに掲載させていただきます。
次回会合です。恐らく、ここに記載されております有識者会議の形式になると思いますけれども、2月または3月の開催を予定しておりますので、日程調整の上、改めてお知らせいたします。
事務連絡は以上となりますが、第11期としては本日の小委員会が最終回となりますので、事務局を代表しまして、大臣官房審議官の原より、委員の皆様に一言御挨拶させていただければと思います。
【原大臣官房審議官(研究開発局担当)】 御紹介いただきました、研究開発局で審議官をしております原でございます。
本日も御議論いただきまして誠にありがとうございました。
今お話があったように、今期としては最後の会合ということで一言御礼を申し上げます。
まずは昨年度に引き続きまして、JAXAの安全審査プロセスについて妥当性を評価いただくという活動をしていただきましてありがとうございました。
また、加えて昨年10月以降は、イプシロンロケット6号機の打ち上げ失敗に関する原因究明活動に本当に精力的に御参加いただきまして、誠にありがとうございます。
短い期間での会議日程の調整、それから遅い時間帯での会議の開催など、御不便をおかけしたと思いますけれども、おかげさまで、故障シナリオもほぼ絞り込まれてきておりまして、さらに検証を進め、要因の特定と対策に向けてあと一歩のところまで来ることができたというふうに考えてございます。
2月14日でこの委員会の任期が切れますけれども、先ほど事務局からお伝えしたように、また、主査のほうからお話しいただいたように、次の体制が整うまでの間、有識者会議という形で継続させていただきたいと考えてございます。先生方には引き続き有識者会議にも御参加いただけるというふうに伺ってございます。ぜひよろしくお願いいたします。
任期の変わり目ということで、改めて御礼を申し上げさせていただきます。本当にありがとうございました。
【木村主査】 ありがとうございます。委員を代表いたしまして御丁寧に御挨拶をいただきました事に御礼申し上げます。
委員の皆様、もう少し、この件もありますので、ぜひ御協力をお願いしたいと思います。
そうしましたら、ここで非公開のほうに移りたいと思いますので、一般の方はここまでになります。ここまでの傍聴ありがとうございました。
―― 了 ――
研究開発局宇宙開発利用課