宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会(第44回) 議事録

1.日時

令和4年12月16日(金曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

新型コロナウィルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. イプシロンロケット6号機打上げ失敗原因調査状況について(一部非公開)

4.出席者

委員

主査 木村 真一
主査代理 神武 直彦
専門委員 柿沼 志津子
臨時委員 笠原 次郎
専門委員 熊崎 美枝子

文部科学省

研究開発局長 千原 由幸
大臣官房審議官(研究開発局担当) 原 克彦 
研究開発局宇宙開発利用課長 上田 光幸
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 横井 奈央
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 宇宙輸送技術部門 事業推進部長 佐藤 寿晃
 宇宙輸送技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 隆行

5.議事録

【木村主査】 宇宙開発利用部会調査・安全小委員会の第44回会合を開催いたします。
 本日の会議は、イプシロンロケット6号機の打ち上げに関する議論の5回目になります。
 さて、本日も新型コロナウイルス感染防止のため、前回同様オンラインでの開催となっております。委員の皆様には、御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは、事務局から本日の会議に関する事務連絡をお願いします。
 
【竹上企画官(事務局)】 ありがとうございます、事務局でございます。
 冒頭、事務局不手際によりまして、5分間遅れての開始となりましたことを、皆様におわび申し上げます。
 それでは、事務連絡ですけれども、本日は、調査・安全小委員会に御所属いただいている委員のうち、現時点では4名ですけれども、5名に出席いただく予定にしております。運営規則に定める定足数を満たしていることを御報告いたします。
 次に、本日の資料は議事次第に記載のとおりです。
 オンライン状況について、音声がつながらない等の問題がございましたら、事務局へメール、電話等で御連絡ください。
 以上でございます。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 それでは、今回の小委員会、前回からおよそ1か月程経過しての開催となりました。この間、JAXAにおいては、部品の製造プロセスの詳細であるとか、製造・検査結果の精査など、深く検討いただいて、究明活動を進めてこられたと思います。
 本日は、それらを踏まえた原因究明の進捗状況などについて確認していきたいというのが趣旨でございます。
 また、本日も、案件の性格上、機微な情報を取り扱うことになりますので、宇宙開発利用部会の運営規則第3条に則りまして、そのような情報を用いての詳細議論については非公開とさせていただきたいと思います。あらかじめ御了承ください。
 さて、それでは、議題の方に入ろうと思います。
 資料の説明を、JAXA宇宙輸送技術部門事業推進部の佐藤部長、並びに、イプシロンロケットプロジェクトチームの井元プロジェクトマネージャー、よろしくお願いいたします。
 
【JAXA(佐藤部長)】 JAXAの佐藤でございます。本日もよろしくお願いいたします。
 今、主査の方からも御紹介ありましたけれども、前回御報告以降も、引き続き、多角的な観点から評価分析を実施してきているところでございますけれども、調査が進みまして、要因分析がかなり深く詳細になっていくのに伴いまして、評価や分析の対象となります確認の視点、あるいはデータの量も非常に膨大となっているということで、JAXAとしては、原因を見逃さないように入念に確認を行ってきている関係で、時間を要しました。前回から1か月以上、お時間を頂戴することになってございます。
 後ほども御報告いたしますけれども、具体的に、微少に配管の圧力が変動したといったようなものが実事象か否かといった問題などにつきまして、過去の号機も含めた分析を行って、抜けがないこと、あるいは間違いがないこと、こういったものを膨大なデータとの整合性を確認しながら進めてきたということで、時間がかかってございます。
 今回、幾つかFTA上の要因を潰した上で、故障シナリオの検討まで行いましたので、御報告をさせていただきたいと思います。
 では、説明はまず、井元プロジェクトマネージャーのほうから行っていただきます。
 よろしくお願いします。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 JAXAイプシロンロケットプロジェクトチームの井元です。
 資料に基づいて説明いたします。
 右下2ページ、お願いいたします。
 まず、目次になっておりまして、1項はまた再掲が多い状況でして、2項のところでパイロ弁の開動作不良、推進薬供給配管の閉塞、それから下流配管圧力の変動、それから故障シナリオの検討ということで、最後に今後の進め方を御説明いたします。
 次のページをお願いいたします。3ページになります。
 右のほうの製造・検査データのところですけれども、これに基づきまして、要因のさらなる絞り込みを実施いたしております。
 それからフライトデータ、その左のところですけれども、推進薬供給配管、下流配管圧力の微増に関する分析を実施しております。
 原因の特定のところですけれども、故障シナリオの推定といったものを実施しております。
 参考として、H3の水平展開の状況の御説明になります。
 次のページをお願いします。
 4ページになりまして、こちらも、打ち上げ結果ということで、再掲になります。
 5ページをお願いします。
 こちらも、6号機の機体諸元ということで、再掲ということで次のページをお願いいたします。
 こちらも、姿勢制御搭載で再掲になりますので、次のページをお願いいたします。
 こちらはFTAの中で、パイロ弁の開動作不良、それから推進薬供給配管の閉塞まで絞り込んだ状況のところを、前回まで御説明しております。
 次のページをお願いします。
 こちらは2段RCSの概要でして、プラスY軸側が機能しなかったもの、マイナスY軸側が機能したもの、正常であったものということで、説明は割愛いたします。
 次のページをお願いします。
 こちらは、パイロ弁のパイロバルブの動作イメージ図を示しておりまして、イニシエータが二つついていると。あと、Primary Chamber Assembly、PCAというところの中にブースターが付いている。それから、バルブ本体があって、その中にラム、仕切り板と、あと推進薬の配管もあります。そういう状況です。
 次のページをお願いします。
 こちらは試験機と強化型の違いを示しております。強化型2号機からはダイアフラム式タンクを搭載しております。
 次のページをお願いします。
 こちらから、原因究明の進捗を報告いたします。
 これまで、製造・検査データの確認、それから追加検証、及びフライトデータ評価を実施いたしまして、詳細な分析を進めているところでございます。
 次のページをお願いします。
 まず、パイロ弁の開動作不良ということで、今回、詳細FTAを展開した後に、製造・検査データの分析の絞り込みを進めておりまして、まず、イニシエータにつきましては、要因ではないというふうに判断しました。
 まず、A-1、製造不良のところですけれども、製造結果は良好であるということを確認しております。それから同一ロットによる試験、これはLot Acceptance Test、LATというふうに、ロット試験というふうにこれから称しますけれども、ロット試験、実際に同一ロットでつくったものを抜取り試験をするというものですけれども、こちらの結果が良好であるということを確認しております。
 それから、保管不良のところでございますけれども、工場の保管状況、保管場所温湿度のところを調査しておりました。こちらにつきましては、良好であるということを確認しております。
 それから射場における点検不良ということで、パイロ弁の供給業者の図面仕様とイニシエータ供給業者の点検規格が違うというところがありましたけれども、こちらに関しては、両者、両方とも合格しているということで、こちらも正常であるというふうに判断しております。
 フライト中の漏洩につきましては、フライト中の異常につきましては、もともとバツということで、今回、その赤字で示したところを更新しております。イニシエータは要因ではないというふうに判断しております。
 次のページをお願いします。
 それから、PCAの不良につきましても、製造不良のところですけれども、こちらも製造結果は良好でありまして、同一ロットによる試験、ロット試験、LATですけれども、こちらも良好であるということを確認しております。
 あと、保管不良に関しましても、工場のところ追加しておりますけれども、こちらは根拠を確認しておりますので、保管不良も要因ではないというふうに判断しております。
 ということで、このPCAの不良につきましても、要因ではないというふうに判断しております。
 それから、Cのバルブ本体(ラム、仕切り板)のところですけれども、こちらは一つだけ、製造不良のところを、今、最後の追い込みをしているところですけれども、まだバツはつけられていないという状況になります。
 それから、こちらも保管不良につきまして、工場のところを調査しておりましたけれども、こういったところの根拠の確認、それから製造データを確認いたしまして、保管不良に関しましては、要因ではないというふうに判断しております。
 それから、PCAとバルブ本体の組みつけ不良のところですけれども、射場で一部、未確認の部分があるというふうに前回まで御報告しておりましたけれども、こちらの工場における確認、PCAの取付け、こういったところの確認結果は良好であるということでして、こちらも要因ではないというふうに判断しております。
 ということで、総括いたしますと、パイロ弁に関しましては、このCのバルブ本体の製造不良のところ、ここだけが今、現時点で残っているという段階になっております。
 次のページをお願いいたします。14ページになります。
 こちらから、推進薬供給配管の閉塞ということで、進捗を御報告いたします。
 まず、三角、このA-2のところ、ダイアフラムによる閉塞。こちら、今、慎重に確認しているところでございまして、現時点、まだバツがつけられていないという状況にあります。
 それから、Cの一番下のところですけれども、パイロ弁内部の推進薬配管の閉塞、パイロ弁内部、こちらは要因ではないというふうに判断いたしました。
 図面、パイロ弁の内部構造、それから製造・検査データ、こちらを確認いたしまして、要因ではないというふうに判断しております。
 ということで、推進薬供給配管の閉塞につきましては、ダイアフラムによる閉塞、これのみがまだ潰し切れていないという状況でございます。
 次のページをお願いします。
 15ページは、そのダイアフラムによる閉塞ということで、ダイアフラムが正常あるいは異常というケースに分けて、FTAを展開しております。まだ、それぞれ完全には潰し切れていないという状況ですので、今後実施いたします試験等によって、要因の特定をしていくということを考えております。
 まず、ダイアフラムの正常につきましては、加速度、それから衝撃・振動による変形、こちらです。それから、ダイアフラムの異常につきましては、脱落、漏洩、破断、こういったところについて、今、慎重に検討しているところでございます。
 次のページをお願いします。
 こちらから製造・検査データの確認結果になりますけれども、フロー図の部分につきましては再掲になりますので、説明は割愛いたします。
 次のページをお願いします。
 こちらもダイアフラムに関するフロー図になりますが、こちらは後ほど出てきますので、少し御説明いたします。
 タンクの内部の模式図を右下に記載しておりまして、赤道リングとダイアフラムの固定リングの溶接、これが最も重要なところになりますけれども、その図のイメージ図を真ん中の下のほうに描いておりまして、丸2、溶接の丸2というところが、赤道リングとダイアフラム固定リングの溶接になります。
 溶接丸1と丸3は下部半球と上部半球の溶接ということで、そういうフローをこちらに示しております。
 その後、タンクを完成した後、RCS全体に組み付ける製造、それからシステムメーカーのMCO試験、また、戻ってきまして、推進薬充填等の作業を実施して射場に持っていくというプロセスですけれども、今回、この青で囲みました「次頁参照」と書いているところを、次のページに追加しております。
 次のページをお願いします。
 まず、左の前ページのタンクが完成した後から、RCSを組み付けた以降のプロセスフローを示しておりまして、耐圧、気密、ダイアフラムの漏洩点検といったところです。それはシステムメーカーに行く前の作業、それから行った後の作業、それから、推進薬の充填、ガス加圧のフローといったものを示しております。
 後ほど、この後から、この製造フローの確認結果をお示しいたします。
 19ページをお願いします。
 こちらは再掲になりまして、ダイアフラムが異常について、製造・検査データを確認したものでして、前回の報告と同じものを記載しております。
 まず、ダイアフラムの製造ということで、単体の製造は良好であるということを確認しております。
 次のページをお願いします。
 こちらから一部更新しておりまして、黒字が基本的に再掲で、赤字部分を更新しているところでして、特に、ダイアフラムの漏洩試験、それから機能試験、それからダイアフラムの漏洩試験、こういった推進薬タンクの中での製造、タンクの製造における漏洩試験、こういったところは良好であるということを確認しております。
 それから、耐圧試験も良好であるということを確認しております。
 その後の、最後のダイアフラムの気密試験、こちらにつきましては、検査記録の妥当性といったところを今、細かい確認をしているところでございます。
 次のページをお願いします。
 21ページになりますけれども、こちらから、タンクをRCS全体に組み付けた後の製造になりまして、こちらも耐圧試験と気密試験は良好であるということを確認しております。
 あと、ダイアフラムの内部漏洩、こちらは先ほどと同じように手順、検査記録の妥当性といったところを確認しているところでございます。
 それから、機械環境試験と気密試験、これ、気密というのは外部漏洩になりますけれども、こういったところは良好であると。
 それから、その後のダイアフラムの内部漏洩、こちらも妥当性を確認しているところでございます。
 次のページをお願いします。
 22ページになりますけれども、こちらはシステム企業から帰ってきた後のRCSメーカーでの点検になりますけれども、圧力センサーというものを再校正している、こちらで加圧しておりますけれども、こちらのデータも確認して、良好であるということを確認しております。
 それ以降の推進薬充填、ガス加圧、輸送、あとタンク圧力データ、これは前回御報告したとおりで変わっておりません。良好ということでございます。
 次のページをお願いします。
 今までは製造データの確認ということで、まだ一部、詳細な確認をしているところでございまして、このページからはフライトデータで、下流配管圧力が微増したといったところの考察を加えております。
 まず、その圧力全体像をこのページに示しておりまして、左の0というのがリフトオフを示しておりまして、150秒過ぎのあたりでパイロ弁を「開」にするという指令を出すんですけれども、その後、本来であればタンク圧力と同じ圧力まで増加するはずなんですが、そこが、1ビット、1分解能だけ増加しているということになります。
 もう少し説明しますと、リフトオフから150秒過ぎまで徐々に圧力が低下していって、パイロ弁開信号の指令とほぼ同時に1分解能だけ上昇していると。
 それから、下のほうに推薬弁のバルブのコマンドを示しておりますが、この推薬弁1というもの、推薬弁は4つあるんですけれども、そのうちの一つを開にすると圧力が低下するという事象。それから、ある一定の圧力を示した上で、それからまた今度、推薬弁の1と推薬弁の3という、ちょっと見にくいんですけれども、推薬弁の1と3が同時に開いておりまして、そのタイミングで圧力がゼロになると。真空圧を示しているということになります。
 それぞれ区間A、B、Cということで、そちらに対するフライトデータの考察を次ページに示しております。
 次のページをお願いします。
 まず、こちらが区間Aになりますけれども、リフトオフゼロ秒ですけれども、その後徐々に低下しております。
 こちら、アナログではございませんでデジタル値でして、段階的に、本来であれば徐々に落ちるんですけれども、デジタルデータを示しておりますので、段階的に落ちていくと。段階的に落ちていく途中で、ギザギザといいますか、上がったり下がったりしますけれども、これは、閾値の近傍で上がったり下がったりしているものでありますけれども、大局的に見ると、徐々に圧力は低下していると。
 こちらにつきましては、外気圧力の低下といったところと、飛行中の振動の影響によりまして、圧力が徐々に低下しているということで、物理的に整合しているという形になります。
 次のページをお願いします。
 続いて25ページですけれども、こちらが今、着目しているところでございまして、パイロ弁開の指令信号、1秒おきに出ますけれども、その最初のほうで圧力が上昇していると。上昇するというのも、本来であればこのタンク圧力と同圧になるべきところなんですけれども、1分解能だけ上昇しているという形になります。その後、一定になっていると。
 次のページをお願いします。
 その後、Cのところになりますけれども、推薬弁を開にする、推薬弁の1番というものを開にするタイミングで圧力が低下しているというものになります。その後、一定の圧力を示しておりまして、その後、推薬弁の1と3の開のタイミングで圧力が低下する、このX∔257秒と書いてあるところですけれども、こういった減少を示しているというものです。途中で一定圧を示ししておりますけれども、こちらは保持されている状況、こちらは原因を今考えている、調査しているところでございます。
 次のページをお願いします。
 こちらが1分解能上昇したところの考察になりますけれども、今回、以下に示す理由によりまして、実事象というふうに判断しております。
 まず、一つ目の理由といたしまして、先ほど御説明いたしました区間Aでのリフトオフ以降の圧力の微減といったところ、それから区間Cで推薬弁を開くタイミングで圧力降下は正常であるということで、こちらは実事象を示しているということで、圧力センサーは正常に動作しているというふうに判断しております。
 二つ目の理由ですけれども、実事象でない場合は、電気的な要因とし、以下に絞られます。それぞれ、三つのように絞られますけれども、いずれも本事象とは整合しないということが理由になります。
 まず、一つ目ですけれども、ノイズによる計測値のシフト、これは実事象でない、ノイズで計測値がシフトしたのではないかというところですけれども、パイロ弁の点火信号、こちら送出するときに電流が流れますけれども、その電流を受けて計測値がシフトするという可能性はなくはないということですけれども、この場合は、点火電流がなくなれば元に戻る一過性のものであると。過去の事例もありますけれども、そういったものでして、今回、元に戻ってない、一定の圧力を示しているということで、この事象とは全く関係ないというふうに考えております。
 2番目として、グラウンドの変化によりまして、こちらも計測値のシフトする可能性はあります。こちら、グラウンドが変動しますと計測値がシフトする可能性ありますけれども、本事象発生時にはグラウンドとして機体との接続状態に変化がないと、それと電気的にグラウンドが変動するような操作等はしていないということで、本事象とは異なるというふうに判断しております。
 最後の3番目ですけれども、デジタル変換閾値近傍での計測値のシフトということで、アナログ信号、センサ信号が、デジタル変換閾値を少しでも超える、あるいは下回ると、デジタル値は1分解能上昇するということで、センサ信号が閾値付近であれば継続値がシフトするという可能性はあります。
 ただし、本事象発生前の圧力データ、リフトオフから徐々に低下しているという状況から、本事象発生時点の圧力信号、こちらは閾値付近ではないというふうに判断をしておりまして、本事象とは異なるということで、総合しまして、今回のこの1分解能上昇というのは、実際に圧力が上昇したものであるというふうに判断いたしました。
 次のページをお願いします。
 こういった事象が実事象であるというところをもとに、今回、故障シナリオを二つ考えて、推定しております。
 現時点、パイロ弁のバルブ本体の不良というものがまだ完全否定できていないというところと、あとダイアフラムによる閉塞が否定できてないという2点の観点、それから、パイロ弁開指令で圧力が微増したというところからシナリオを立てております。
 まず一つ目、パイロ弁の開動作不良ですけれども、PCAの作動、イニシエータとPCAは要因から排除しておりますので、PCAは正常に作動したというふうに考えております。その作動後に、その真ん中の棒をラムというんですが、それが推進薬を閉じている仕切り板があるんですけれども、これを不完全な状態で打ち抜く、完全に打ち抜けないという状況で仕切り板に微小な隙間が発生して、ブースターの燃焼ガスまたは推進薬が僅かにパイロ弁下流に入り込んだというシナリオ、そういったものを今、一つ推定しております。
 それから二つ目、推進薬供給配管の閉塞ですけれども、こちらはダイアフラムが液ポートに近接して、パイロ弁開動作時にダイアフラムが液ポートに引き込まれるということで閉塞するというシナリオ。で、その後に、閉塞までの間に推進薬が僅かにパイロ弁下流に入り込んだ、流れ込んだというシナリオを推定しております。
 次のページをお願いします。
 ここまでが現時点御報告できるところでありまして、まとめになります。
 まず、一つ目ですけれども、製造・検査データ等を用いまして、イニシエータとPCAの作動不良は要因でないというふうに判断しております。それから、パイロ弁の推進薬配管の閉塞、こちらも要因ではないというふうに考えております。
 2番目ですけれども、その結果、パイロ弁のバルブ本体の作動不良、もしくはダイアフラムによる閉塞、この二つに絞り込んでおります。
 3番目ですけれども、フライトデータの+軸側下流配管圧力の1分解能上昇。これは実事象というふうに判断しております。
 上記を基に、二つの故障シナリオを推定しております。
 今後の予定といたしましては、故障シナリオの発生可能性を見極めるということで解析試験を追加実施いたしまして、シナリオの確度を向上させて、後継ロケット等への対策を反映いたします。
 それから、打ち上げ失敗の背後要因、直接的ではない、間接的な原因になりますけれども、そういった分析を行いまして、同様の事象が発生しないよう対策を講じることとしております。
 イプシロン側については以上になります。
 
【佐藤部長(JAXA)】 それでは、最終の30ページになります。参考としてH3ロケットへの水平展開結果を載せてございます。
 前回報告をしました際に、一部の技術評価を継続していること、及び最終的な試験によって機械的環境への耐性による確認を行う予定とさせていただいておりました。その結果の報告になります。
 まず、残っていた技術評価といたしまして、フライト中の熱環境に関する評価を行いまして、こちらのほうは11月16日に設計確認会を実施して確認を行ってございます。また、もう一方の最終的な試験といたしましては、左下に写真がございますけれども、タンクモジュールのエンジニアリングモデルを使いました音響試験を行いました。この試験によりまして、交換したパイロ弁を含む設計変更による機械環境への耐性を確認してございます。
 これらの総合評価によりまして、今回の設計変更によって、RCSのサブシステム、あるいはそれがロケットシステム全体への影響、こういうものを及ぼさないということを確認をしたというところでございます。
 1号機のFM品、こちらのほうにつきましては、パイロ弁の交換作業を既に交換完了しておりまして、今後、タンクモジュールへの充填、それから、それを輸送して射場での組み付けを行うということを進める予定になってございます。
 下の写真をちょっと説明いたしますけれども、左の写真で、上に瓦型のタンクがございまして、丸で囲ったところをパイロ弁というふうに書いております。ちょっと詳細は、申し訳ないんですが非公開のほうで示させていただきたいんですけれども、これがRCSのサブシステムの固まりになります。これを自分の上にセットいたしまして、音響をかけて、各箇所の振動のデータを確認したと、こういう試験になってございます。
 右側が試験結果でして、パイロ弁の機器仕様が上にある線ですけれども、各軸の振動ともそれ以下であったというものを示してございます。
 説明は以上になります。
 
【木村主査】 ありがとうございました。
 大変詳細な、膨大なデータがありますけれども、本当にたくさん検討をされて、いよいよ、要因としても絞り込まれてきたというふうに思います。この間の作業、本当に敬意を表したいと思います。
 また、H3ロケットへの水平展開の結果についても御報告いただいて、我々としても関心を持っていたところなので、すごく安心いたしましたし、良いことかなと思っています。感謝いたします。
 それでは、御質問、御意見等ございましたら、挙手にて御連絡いただければと思います。いかがでしょうか。
 
【木村主査】 笠原委員、お願いいたします。
 
【笠原委員】 笠原でございます。本当に詳細な調査、改めて敬意を表します。
 まず、質問なんですけれども、今回、Y軸下流配管圧力の変動のデータをお示しいただいて、パイロ弁が微小に開いていることと整合するデータだというふうに認識いたしましたが、ちょっと確認させていただきたいんですが、23ページの区間Bというところがポイントかと思うんですが、区間Bの終わりと言ったらいいんでしょうか、少し上の、圧力のブルーのラインがちょっと上がっているところが、パイロ弁が開いたために、下流の圧力センサが上昇したと、そのように考えられているのでしょうか、というのが一つ目の質問です。
 二つ目は、そうだとすると、今、二つの事象を、タンクなのかパイロ弁そのものなのかというところまで絞り込まれていらっしゃいますが、すいません、印象的に、やはり流れる量というのが、タンクのほうが詰まったと考えても、かなり大量に流れてしまうような印象を持ってしまうんですが、その辺り、それでもやはりタンクのほうが可能性が残っていらっしゃるんでしょうか。つまり、今、少し空いたというふうな事柄が明らかになってきて、その場合、そういうことが明らかになったから二つの事象のどちらが、可能性が高いのかなというようなところが考えられるのではないのかなと思いまして、質問させていただきました。
 以上でございます。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 まず、こちら区間Bです。その次の次のページに拡大版があるんですけれども、25ページ。
 まず、ここで言いたいのは、圧力が微増したというところだけになります。パイロ弁が開いたか開かなかったかにつきましては、シナリオのほうで説明しております。
 まず、ここで、圧力が上昇したんですけれども、これは、分解能がかなり粗いものでして、しかもデジタル出力しかできませんので、このどこら辺に上がっているか、分解能のこの2倍のところと上がってないところの間に、どこかに入っているという推定をしておりますが、これが一定ではなくて、もしかしたら変動している可能性はゼロではないということで、ここは恐らくといいますか、上がったであろうということを考えております。
 それに関しまして、二つのシナリオがあります。
 次の次ですかね。28ページになりますけれども、まず、パイロ弁の開動作不良というところに関しましては、基本的にはこの場合は、パイロ弁は開いていないというのが基本であります。ただし、微小のクラックみたいなのが入って、途中でこのラムというものが止まる、もしくは仕切り板というものがちょっとがっちりしていて、ラムは当たったんだけれども止まってしまって開かなかった。開かなかったんですが、微小に下流配管にブースターのガス、もしくは推進薬が少し流れ込んで止まった、というものが一つ目になります。
 それから二つ目が、パイロ弁は開いたと。こちらちょっと、明に書いてないので分かりにくいですけれども、こちらは、パイロ弁が開いたんですけれども閉塞して、微小のところが流れたというところになります。
 御質問にありましたとおり、これが大量に推進薬が流れると、この微増というものは説明ができませんので、ほとんど流れてない。10cc程度ですね、数ccから10cc程度流れたら、この圧力上昇が起こるというふうに推定しておりまして、つまり、大量に流れるとこの事象は説明できません。ということで、もともとこのダイアフラムの場合ですけれども、ダイアフラム原因の場合ですけれども、そこがこの出口ポートからかなり離れている状態でパイロ弁が開くと実事象に合わないということで、このシナリオの最初のところに書いておりますけれども、ダイアフラムが何らかの要因で液ポートに近接している、もしくはもう覆いかぶさっているような、そういうモードのときにパイロ弁がぐっと開いて、その差圧によって詰まるとか、そういうようなモードを今考えている。そうすると、このシナリオに合致する可能性があるというところでございます。
 左の場合は、こちらはパイロ弁が開いてないということで、少し何らかの要因でこの下流配管に何かが、推薬弁もしくはこのPCAの燃焼ガスが流れ込んだ、というようなシナリオになっております。
 以上です。
 
【笠原委員】 ありがとうございます。
 左のほうが、燃焼ガスが流れ込むということも可能性の中に含まれている、ということ認識いたしました。
 右側の図の御説明も、どうもありがとうございます。
 それにつきましても、ちょっと、そんな10cc程度だけが流れるというのが、可能性としては少し低いのかなという印象は持ちました。
 本当に御説明ありがとうございました。了解いたしました。承知いたしました。
 
【木村主査】 ありがとうございます。私も関連して幾つか。
 ここまでシナリオを絞り込まれて、大分迫ってきたなという印象を持っておりまして、ここは確認するのが結構大事なのかなと思っておりますので、むしろ細かい質問をさせていただければと思います。
 先ほどの圧力センサの図は、今回、区間A、B、Cで分けていただき、データそのものをお見せいただいて、これはすごく私のほうとしてもイメージがわきました。
 ワンディジットでありながら、区間Aでは境界値でちゃんと変動しつつ下がっていっている。これはデータとしては、確かに動いているというのは非常に分かりやすいです。おそらくこういう挙動をするものだろうとイメージできます。かつ、その後、変動していないと見える。グランドレベルの変動であったり、電気的な因子か何かであった場合には、恐らくもっとノイズとしては乗るだろうというふうにも推定されます。恐らくこれは安定しているので、そういったノイズのような変動要因によってこのワンディジットが上がったとも考えにくい。これは論理的に正しいと私も思います。なので、これらの電気的なセンサについて、恐らく加圧はあったのだろうという御結論を出されている。私は、当初このワンディジットの部分だけ見ていると、どうなのかなという感じを思ったんですけれども、この全体の流れの中で見たときに、ワンディジットについては、恐らく信頼してよいのだろうなという、この印象は私も同感です。
 その一方で、実はちょっと悩ましいのは、ダイアフラムの閉塞にせよ、パイロ弁の不良にせよ、これが1ディジットで安定して止まっているというところに、すごく不思議な印象を感じざるを得ないかなと思っています。先ほどの笠原委員のコメントも、恐らくそこが気になっておられるのだなと思います。
 ダイアフラムの閉塞という事象の場合、ぴたっとそこで止まってそのまま維持されているものだろうかというところが少し疑問としては残る。ただ、詰まりようによってはあるのかもしれないなというふうに思います。そこの辺りをちょっと、少し深掘りする必要があるのかなという印象を持っています。あと、先ほどの、パイロ弁が少し開いたというシナリオも確かにあり得る。あり得るけれども、非常に微小に開いた状態で詰まるというのも、これもよく考察しないとなかなか分からないかな、というところがございます。このあたりもう少し、考察等があれば教えていただきたいと思います。
 あと、もう1点。実は、これは別のところなのですけれども、イニシエータとPCAについて、今回除外できたというのは非常にすばらしいことだと思います。このときに、ちょっとうるさいことを言うと、これは抜取り検査で確認をされているという理解でよろしいですね。
 そのもので評価をするわけにはいかないという意味で、実際、FMそのものを事前試験をした結果なのか、それとも抜取り調査でやられた結果なのかというのを、一応確認する必要がある。そのときに、抜取り調査で確認をしたということになりますと、母集団のほうのばらつきというものについての、事前評価が必要になるだろうと思われます。場合によっては、それは非公開のデータのほうを、非常に機微なデータに相当しますので扱われるのかもしれないのですけれども、それについて何かコメントができることがあれば教えていただきたい。
 この2点が私からの質問です。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA))】 ありがとうございます。
 まず、1点目になりますけれども、おっしゃるとおり、ダイアフラムの場合ですけれども、引き込まれた後、恐らくといいますか、このデータからは、もうそれ以降一切流れていないというところ、というふうに推定しておりまして、そういう状態がそもそも維持されるのかといったようなところ、ここがキーポイントになってくると思います。そういう観点で、今、実際のそのダイアフラムを使った試験といったものを、今、計画しております。
 最後のところで、追加の解析試験というふうに申しましたけれども、その中で、そういう事象が本当に発生するのかといったところの確認をいたします。これは、なかなか解析だけでは難しいと思っておりますので、そういった実験の中であり得るのか。そういったことを確認いたします。次回、そういった結果を御報告いたします。
 それから、パイロ弁のところなんですけれども、確かにかなりレアなケースというふうに考えておりますけれども、こちらにつきましても、何らかの解析もしくは検証といったものを今考えておりますので、そういったところも、次回、御報告できるといいかなというふうに考えております。
 それから、2点目の御質問ですけれども、イニシエータとPCA、これはフライトをしたものに関しましては、実際に作動することはできません。おっしゃるとおりです。これは、同一ロットの抜取り試験というものの一つ、この要因を排除した要素ではあるんですけれども、実際、非公開のほうで御説明いたしますけれども、その前の事前の点検を入念に実施しているところがありますので、その結果を基に、ここのフライト品に対しては正常であるという判断をしておりますので、そちらは非公開のほうで御説明いたします。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 そこがおさえられるとさらに絞り込みが進んで、検討として非常にすばらしいと思います。
 非公開の情報ということで、ただ最後にサマリーとしては公開させていただければと思います。我々が伺って、判断させていただき、公開可能な要点を共有いただくということで進めたいと思います。恐らく、ちゃんと検討されているだろうなということを思った上で、非常に重要な部分なので、確認させていただきました。ステップを踏みながらいきたいと思います。
 さて、ほかの委員の先生方、いかがでしょうか。比較的細かいところも含めて、物によっては非公開のほうに回るかもしれませんけれども、ここで確認されることがありましたら、お願いいたします。
 笠原委員、お願いいたします。
 
【笠原委員】 笠原でございます。
 もう1点、実は、お考えを聞いておきたいことがございまして、ここまで事象を絞り込んで、非常に合理的に冷静に議論が進められていて、本当に納得するところなんですが、一方で、やはり対象となる部品というかコンポーネントというか、それはかなり絞り込まれていて、それに何らかの不具合があった可能性が高いというふうに認識をより深めているのですけれども、その情報をどの程度公開するのかということは、もちろんH3の水平展開等されていて、そういう部分では本当にすばらしいと思うんですが、今後の、こういうロケットの開発のためのことを考えると、やはり情報共有というか、そういうことも重要だなと感じるところでございまして、非公開というか、公に示さないというのであれば、やはりそれなりの理由というか、それはやっぱり示す必要があるのかなという気が正直しております。ですので、やはり、公開されないというのも、言葉としては立派な、そういう気持ちは分かるんですけれども、やはりそこにも冷静な何か説明をしていただきたいところがございまして、このような質問をさせていただきます。
 一言で言いますと、やはり事実として、どなたがつくられたものが、今こういうことになっているのかということに関して、どういう合理的な説明によってなっているのかということを、ちょっと問わせていただきます。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 まず、技術の流出を防ぐ必要があるという観点と、こういった成果を還元していくという二つの側面があるというところで、そこの折り合いをつけないといけないというふうに考えております。次回は、どこまで公開できるかといったところもよく考えた上で、御報告したいと思います。
 
【笠原委員】 ありがとうございます。よろしくお願いします。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 そうですね、これがシナリオまで整理された上で、今度は対策というところも議論に上ってくるかなと思っています。絞り込みとともに、やっぱり今後に向けてという話は非常に重要かと思いますので、その辺を次、議論できればいいのかなと思います。
 また、今回の事象はやはり、ある意味、言葉がよいかどうかなんですけれども、良い教訓でもあり得る。ここのところは、恐らく私も含めて、最初に議論し始めたときにはあまり重視してなかったポイントかもしれないのですけれども、議論を進めていく中で、ある部分クローズアップされてきているというところもあって、それは非常に重要な情報なのかなと思います。こういうところがうまく共有できるような仕組みというのを考えていくのはすごく重要かなと思っております。
 いかがでしょう。ほか、御意見、御質問等ございますでしょうか。大丈夫ですかね。
 そうしましたら、御説明、また御審議のほう、ありがとうございました。
 こちらのほうで公開部分は終了とさせていただいて、以下、非公開にさせていただこうと思います。
 一旦ここで、事務局のほうから事務連絡をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 ありがとうございました。
 会議資料と議事録の公開について申し上げます。
 本日の会議資料は、文科省ホームページに既に掲載させていただいております。
 また、議事録につきましても、ここまでの内容、公開となりますので、委員の皆様に御確認いただいた後、文科省ホームページに掲載させていただきます。
 なお、次回の小委員会でございますけれども、来年1月以降の開催を予定しておりますので、日程調整の上、改めてお知らせいたします。
 事務連絡としては、以上でございます。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 一般の方はここまでとなります。ここまでの傍聴、ありがとうございました。

(プレス、傍聴者退席)

―― 了 ――

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課

Get ADOBE READER

PDF形式のファイルを御覧いただく場合には、Adobe Acrobat Readerが必要な場合があります。
Adobe Acrobat Readerは開発元のWebページにて、無償でダウンロード可能です。