宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会(第64回) 議事録

1.日時

令和8年7月6日(月曜日) 10時00分~12時00分

2.場所

オンライン会議にて開催

3.議題

  1. H3ロケット8号機打上げ失敗の原因究明状況について

4.出席者

委員

  主査     木村 真一
  主査代理   神武 直彦
  臨時委員   笠原 次郎
  専門委員   柿沼 志津子
  専門委員   豊嶋 守生
  専門委員   中西 美和

文部科学省

  大臣官房審議官(研究開発局担当)  古田 裕志
  研究開発局 宇宙開発利用課長  梅原 弘史
  研究開発局 宇宙開発利用課 宇宙科学技術推進企画官  田渕 敬一
  研究開発局 宇宙開発利用課 課長補佐  木元 健一


(説明者)
  国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
  理事/宇宙輸送技術部門長  岡田 匡史
  経営企画部長  三保 和之
  宇宙輸送技術部門 事業推進部長  森 有司
  宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ  有田 誠
  チーフエンジニア室長 小島 寧

5.議事録

【木村主査】  それでは第64回宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会を開催したいと思います。本日の議題、H3ロケットの8号機の打上げ失敗に関する議論になります。今回も、オンラインでの開催となっております。委員の皆様におかれましては御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。それでは事務局から本日の会議の事務連絡を願いします。
 
【田渕企画官(事務局)】  改めまして本日は開催が遅れ申し訳ございません。開催にあたりましてまず事務局から御連絡いたします。本日は調査・安全小委員会に御所属いただいている8名の委員のうち6名の委員に御出席いただいております。花本委員が本日御欠席で、熊崎委員がもしかしたら入れるかもしれないという状況でございます。本日の資料は議事次第に記載のとおりです。オンライン状況につきまして何かしら問題がございましたら事務局にメール・電話等で御連絡いただければと思います。
 本日の小委員会では、H3ロケット8号機打上げ失敗の背後要因分析や再発防止対策等についてJAXAから御報告いただきます。最終まとめに向けての適切な内容となっているか、委員の皆様より専門的・第三者的見地から忌憚のない御意見を頂戴できればと思います。事務連絡は以上です。
 
【木村主査】  ありがとうございます。それでは早速議題の方に入っていきたいと思います。前回の会合では、PSSの製造工程で生じた内部剥離が、フェアリング分離時の衝撃などにより進展し、PSSが破損したことが主要因として特定されました。また、これを踏まえて今後の実用衛星搭載機ではファスナ結合方式のPSSを採用する、それから今日の話題にもなりますけれども、30形態試験機では補修方式のPSSを活用して追加のフライトデータを取得するという方針を確認いたしました。また先ほど企画官からお話がございましたが、今回の失敗の背後要因の詳細な検討、これが必要であることも確認いたしました。
 H3ロケットの30形態試験機の6号機については、皆様御案内のとおり6月12日に打上げが成功いたしました。私自身はYouTubeで拝見しておりましたが、この過程で追加のデータの取得も良好であると聞いております。本日は取得データの評価結果及び背後要因分析と再発防止対策の検討状況について、確認していきたいと思います。それでは資料の説明をH3ロケットプロジェクトチームの有田プロジェクトマネージャ、それからチーフエンジニア室の小島室長、よろしくお願いいたします。
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】  木村先生ありがとうございます。それではH3ロケット8号機打上げ失敗原因状況について、御報告させていただきます。
 次のページお願いします。これが本日の目次でございます。0としまして本日の報告内容、1としまして補修方式を適用したPSSを用いましたH3ロケット6号機の打上げ結果の御報告、それから2として背後要因の分析結果、3として再発防止に向けた是正対策ということで御説明してまいります。なお、本日はロケット開発に関する部分につきましては、私、有田の方から、それから全社的な内容に関するところについては、チーフエンジニア室の小島室長から御説明する形で進めさせていただきたいと考えております。
 めくっていただきまして、本日の報告内容でございます。今、木村先生からもありましたことの繰り返しになる部分が多くなりますけれども、再度御説明いたします。4月22日の宇宙開発利用部会で決定されました調査・安全小委員会の中間報告書で下記をまとめていただきました。三つありまして一つ目、当面の重要なミッションを確実に打上げるために是正対策としてファスナ結合方式のPSSを適用することは妥当であるということ。二つ目として、30形態試験機のフライト機会を利用し、補修方式のPSSを適用して追加のフライトデータ取得を行うことは原因究明の評価を裏付け後続ミッションの確実性を増すために必要かつ重要、三つ目が、再発防止に向けた背後要因分析とそれに対する是正対策検討については今後詳細に実施されることが必要、という三つでございました。上記を踏まえまして本日は、補修方式のPSSを適用した30形態試験機、H3ロケット6号機のフライトデータの評価結果と再発防止に向けた背後要因分析とそれに対する是正対策の検討結果について御報告してまいります。
 次のページをお願いします。ここからが1項になります。次のページお願いします。まずH3ロケット6号機30形態試験機の打上げ結果の概要でございます。打上げの日時は先月、6月12日、時刻が9時53分59秒と予定した打上げ時間帯の先頭の時刻で打ち上げることができました。打上げ場所は種子島宇宙センターでございます。搭載衛星は試験機でございましたので、性能確認用ペロードVEP-5と呼んでいるものを主衛星としまして、その他に小型副衛星を6基搭載いたしました。投入軌道は太陽同期軌道SSOでございました。
 次のページをお願いします。こちらが6号機30形態試験機の概要でございます。30形態試験機は固体ロケットブースタを装着せず3機の液体ロケットエンジンのみでリフトする日本では初めての大型液体ロケットという形態でございました。二つ目のところ、8号機の失敗を受けまして補修方式の対策を施したPSSを搭載して打上げを実施いたしました。三つ目、原因究明の評価を裏付けまして、後続ミッションの確実性を増すための追加のフライトデータ取得を実施いたしました。
 6ページをお願いいたします。このページでは6号機に対して行いました対策、それから水平展開の実施結果を御報告してまいります。最初にPSSの補修方式、こちらは前回御報告しておりました内容のおさらいになりますけれども二つございます。PSSのスプライスとスプライスの間、スプライス間と呼んでおりますが、ここに対しては剥離の有無によらずスキン及びハニカムコアを除去した上で全体を補修いたしました。また、スプライスの下につきましても剥離が見られておりましたので、その剥離の発生箇所につきましては同様の方法により補修をいたしました。その後に実施しました補修方式PSSの検証結果でございます。補修を実施いたしましたPSSの部分構造供試体というものを制作し、6号機のフライト荷重に対する認定試験を実施いたしまして、飛行中の真空環境、それから静荷重、これはフライト荷重の2倍以上でございましたが、その静荷重と、それからそれに合わせフェアリング分離を模擬した衝撃荷重を付加し、これに耐荷することを確認いたしました。また、その後破壊試験まで実施し、接着部や補修部といったものではない一般部で破壊することを確認いたしました。また、フライト品に対する確認といたしまして、真空と6号機のフライト荷重の1.25倍、これは下に書いておりますプルーフファクタと称している係数でございますが、この1.25倍の負荷をかける試験を実施し、補修部に剥離が発生または進展しないことを確認いたしました。その試験の様子が右の写真に載せてございます。それからフェアリングの点検結果でございます。8号機の失敗の原因究明の直接原因の水平展開としまして、これは注のところに書いてございますように、失敗の直接原因となりましたPSSと同様の構造様式や製造工程を持つものとしてフェアリングを抽出しておりましたので、フェアリングのスプライス部全体の追加点検を当面の全号機に対し行うこととしておりました。そこで6号機についても点検をいたしましたが、6号機用のフェアリングにつきましては剥離は生じておらず、補修は不要でありました。また、フライト時の空力加熱に対する余裕を確保するために、スプライス部に追加の断熱処置を実施してフライトに臨みました。
 7ページをお願いします。こちらのページではPSSとフェアリング以外の新規要素に対する水平展開を御説明してまいります。前のページで述べました直接原因に対する水平展開、フェアリングに対する水平展開に加えまして、より広範囲の水平展開として以下の観点で新規に採用した要素、例えば材料ですとか製造の技術、こういったものに対するものですけれども、これが十分な要素試験や基礎データに基づき工程設計されているかを改めて確認いたしました。この水平展開の範囲ですけれども、H3で導入した全ての新規要素、それからプライムの内作品であるか、パートナーの製造品であるかを問わず、H3の全てのサブシステムやコンポーネントを範囲といたしました。水平展開の観点は、新規要素の採用時には開発過程においてリスク識別と評価を実施してきていますが、8号機の失敗と原因究明結果を受けまして以下の観点を強化した上で有識者を含めた複数の目で製造工程の再確認を実施いたしました。一つ目がH3で導入した新規要素によるその前後工程への影響評価というものです。少し言葉では分かりにくいので具体例で御説明いたしますと、今回PSSの不具合がスプライスの接着工程で発生しましたけれども、そのスプライス接着工程によって、前工程であるパネル接着工程でのパネル接着部分に剥離を生じてさせてしまったといった前後工程へ悪影響を及ぼしてしまったということで、こういったものが他にないかというものも調査しました。二つ目が製造プロセスで工夫した工程による影響評価です。これも具体的に御説明しますと、今回PSSのスプライス接着を確実に行うためにスプライス部の温度コントロールが重要であると認識しておりまして、ヒーターの端の方にもきちんと熱がかかるようにということで、断熱材を設置することできちんと温度が下がらないようにするという工夫を行ったのですが、これが逆に災いしまして、温度が上がりすぎるという結果を招いております。このような良かれと思って実施した工夫が思わぬ悪影響を及ぼしていないか、こういった影響を評価するというものです。三つ目が認定試験後の点検内容の妥当性評価です。こちらにつきましては、今回PSSでは認定試験後に非破壊検査等を実施しておらず強度試験の結果をもって良しとしていたわけですが、そのような認定試験後の点検が十分に行われていれば、今回のようなことにならなかった可能性もあるということで、この点検の内容が十分であるかの評価をいたしました。その結果、最終的な結論といたしましては、追加で対策すべき事項は識別されませんでした。一方で製造品質の向上に資するような改善事項についてはいくつか抽出されておりまして、これらにつきましては継続的に品質向上活動として取り組んでまいりたいと考えております。
 8ページをお願いします。このページからがフライトの評価結果でございます。打上げ結果でございますが、打上げシーケンスは右の表に示しておりますように、今回30形態という新しい形態で、フライトの直前まで、エンジンが正常に立ち上がるまでしっかり機体を発射台に固定しておく必要があるということで、ホールドダウンシステムという新しいシステムを適用しております。これが正常に機能をするというところを皮切りにリフトオフし、1段、2段、それから各衛星の分離、こういったものが右の表に示しますようにほぼ予定どおりのシーケンスで正常に行われました。そして、衛星の軌道投入ですけれども、計画どおりの軌道に投入ができまして、左の下に示しますように、軌道投入精度も今までの号機に比べましても非常に良い精度で投入できたことを左下の図で示しております。
 9ページお願いします。このページがこの1章の要となるページでございますけれども、今回8号機の結果を踏まえまして、6号機で追加データを取得いたしました。その結果を書いてございます。まずPSSにいくつかの歪センサを追加しておりましたが、この計測結果から飛行中に発生した歪みに異常な挙動は見られず、許容値内に十分収まっていることを確認しました。このことから補修の方法は妥当であり、またファスナ結合方式と共通のPSSの強度設計手法も妥当と考えられると評価しております。また、その他にも追加取得したフライトデータの分析結果から、中間報告の段階では複合要因としての発生の可能性が完全には排除できないとして、FTA上でですね、三角マイナスとして残しておりました三つの事象、これがいずれも起きていないことが確認できました。一つ目がフェアリングの分離衝撃ですけれども、今回は衝撃を正確に計測できるセンサを搭載いたしまして、フェアリング分離時の衝撃加速度を計測いたしました結果、過去のフライトや開発試験で取得したデータと有意な差はないということで、過大な分離衝撃が発生していないことが確認できました。それから二つ目、フェアリングの内圧です。今回真空付近の圧力計測の精度を向上したセンサを搭載いたしまして、フェアリング内の減圧履歴を計測した結果、フェアリングの分離時点で有意な圧力の残留や発生はなく、フェアリング内圧の異常が発生していないことを確認いたしました。最後にフェアリング内の温度ですけれども、推進薬の漏洩の可能性を示します温度の変化や、フェアリングやPSS温度の想定外の変化は見られず、推進薬等の爆発や燃焼が発生していないことが確認できました。
 10ページお願いします。こちらから2項の背後要因の項に入ってまいります。
 次のページお願いします。最初にこのページで全体のサマリということで、本項では潜在リスクの抽出ですとか、再発防止の徹底等を目的としました背後要因分析結果と評価について報告いたします。サマリですけれども、背後要因分析としまして2段階の分析を実施いたしました。第1段階としましては、不具合の事象が検出されないまま打上げに至った経緯につきまして、H3ロケットの開発プロセスに潜在する技術的な要因分析を行いました。続いて第2段階としてプロジェクトマネジメント、知識管理、リスク管理及び人材・能力といったH3ロケットに限定しない組織全体の視点からの背後要因を分析いたしました。これらの分析結果から、上記の管理項目は規定されたルールに基づき運用されており、必要な検査項目の設定根拠となる潜在リスクの抽出における観点の整理・網羅の仕方に課題があると総合的に評価をしております。以降詳細な分析結果を示してまいります。
 12ページお願いします。こちらのページから要因の特定について御説明してまいります。まず要因特定のプロセスですけれども、PSSの破壊に至るCFRPスキンとアルミハニカムコア間の剥離、これを打上げ前に検出できなかったことをトップ事象と捉えまして、H3ロケット開発プロセスに潜在する技術的要因を以下の手順により分析してまいりました。まずPSSに剥離を生じたままフライトさせたことは単なる製造や検査の不備ではなく、開発を含めた複数の工程をすり抜けて発生してしまったと考えております。したがって、製造フェーズ・開発フェーズのそれぞれの経緯に立ち戻ってバリエーションツリーという解析手法を活用しまして、問題点がどこにあったのかを識別します。下の図でいう左下のところですけれども、バリエーションツリーの解析によっていわゆる排除ノードというものを設定いたします。そして問題点がどこにあったかを識別し、識別した問題点に対して続いて真ん中にありますなぜなぜ分析を行いまして要因を抽出し、抽出された要因を特定していくといったプロセスを取りました。
 13ページをお願いします。バリエーションツリーという分析方法の御説明になります。こちらはこれまで中間報告等でも御報告しておりましたFTAに対し、このFTAというのは従来どちらかというとハードウェアを対象とした解析手法なのですが、この分析手法の欠点を補いまして、事象の関連を時系列的に記述することで事故の細部を検討しようという事故の事例分析手法です。いわゆる「事象のチェーン」の流れを捉えて事故や不具合の発生過程を記述するものです。これはJAXAの技術標準でありますJERG-0-018Aというヒューマンファクタ分析ハンドブックに示されているものです。この中で通常どおり行われた作業は通常作業として真ん中にありますように黒い四角で識別をいたします。不具合が発生した、もしくはその要素が内在した作業等、時間経過に沿って登場する関係者を識別しつつ記述しまして、どの工程にて不具合の発生や連鎖を断ち切ることができたかを検討することで問題点を浮き彫りにする手法です。通常と異なる作業をこの真ん中に示しますように変動要因として赤い四角の枠で示します。さらに、そのうち不具合の発生や連鎖を断ち切ることができた可能性のある作業、これを排除ノードと呼んで右端にありますように赤い太い四角で囲って、なおかつ右上を丸で囲むといった形で識別をしてまいります。このようなバリエーションツリーによる分析の結果、製造フェーズにおいては設定されたプロセスどおりの製造検査が行われており、実機製造フェーズでこれらの不具合を排除、ブレークすることは困難であったと評価しております。一方で開発フェーズでは複数の過程において本事象と関連するような仕様の決定ポイントや検査ポイントが識別されておりまして、これらのうち本事象を排除すべきポイントを排除ノードとして識別をいたしました。
 次のページお願いします。こちらが作成しました開発フェーズのバリエーションツリーでございます。書き方をまず御説明いたしますと、時系列は下から上の方に流れていくとお読み取りください。具体的に言いますと、基本設計、詳細設計、認定試験という具合に下から上の方に時系列が進んでまいります。横軸を見ていただきますと登場人物が書かれておりまして、JAXA、プライム、それから製造・開発パートナーという登場人物が出てきて、パートナーの中は宇宙技術部門や材料や製造、品証といった細かいところまで識別をし、それぞれの登場人物が関わってきた範囲のイベントを上の方に時系列的に並べております。その評価を右側の欄に記述しております。最初のフェーズとして開発計画の立案や業者選定ということで、ここはJAXA、プライム、パートナーとも関わっているところですが、ミッション要求からフローダウンしたフェアリング、PSSへの要求を設定して業者選定をしていったフェーズでございます。このフェーズではまだ詳しい技術的な内容の検討は三社の中では行われておりませんでした。その後業者選定の後、基礎試験ですとか成形試験等が行われまして、基礎試験等で成立性を検証して製造工程がシンプルにできるプリプレグを用いたOoA、いわゆるOut of Autoclave、 Autoclave を用いないスプライス接着方式を選択したというのがこのフェーズになります。これらをまとめた結果として基本設計審査・PDRが行われました。このPDRで先ほど申し上げたOoAスプライス接着方式というものを正式に選択することを決めましたが、この方式の選定時にリスク評価を実施してはいたのですが、内部で剥離が発生するという具体的な不具合モードについては識別には至っておりませんでした。ただしやはりこの段階でも内在する不具合の潜在的な識別ができた可能性はあるということで、排除ノードとして識別しております。その後時間が進みまして詳細設計のフェーズに入ってまいります。その中ではパートナーの中で製造設計、OoA試作試験、製造要求審査が行われまして、この中で例えばスプライスを2分割にすることや、ボイドの発生やコンター形状による成形のリスクからフェアリング仕様で成立性確認が可能であることを決めたりとか、それからスプライス接着時の温度を均一化するために副資材、断熱材ですが、これを用いることを決めるという重要な工程を経ておりますけれども、最終的にはこれらの内容をまとめた詳細設計審査、CDRを行いまして、この段階でこれら全てについて審査を行うという場であったわけですが、今回のような不具合モードの識別には至らなかったということで、ここを排除ノードと識別しました。そしてさらに時系列を進みまして、PM品の製造、試験前の確認会、試験の実施と進んでいくわけですが、いずれの場面におきましても内部の剥離モードをリスクとして識別できず、試験後の検査工程の設定がなされない状態で、最終的に試験後の検査に至っております。認定試験においては、計画どおりの挙動を示したことから試験後の非破壊検査は実施せず、この工程のまま製造工程のフィックスに至りました。最終的にここは不具合を検知する最後のチャンスであったのですが、これができなかったことで試験後の検査のところを排除ノードと識別しております。
 15ページお願いします。これらのバリエーションツリーの解析からなぜなぜ分析を行ったのがこのページでございます。まずトップ事象としてはCFRPのスキン/アルミハニカムコア間の剥離を打上げ前に検出できない状態でフライトをさせたというものです。なぜ1のところですけれども、なぜ検査で検出できなかったのかということです。OoA接着後の製造工程にスプライス間の非破壊検査の工程を設定しなかったことが浮かび上がります。続きましてその下にあるなぜ2というところですけれども、なぜスプライス間の非破壊検査を設定しなかったのかということで、開発試験後の検査で内部剥離モードを想定しなかったことで、NDI、非破壊検査ですとかタッピングといった打音検査を実施しなかったため開発において不具合を検知することができず、製造検査工程をフィックスすることになります。これを受けてなぜ3のところですが、構造体の認定試験というのは終極荷重に耐荷することを要求しているということで、各部の歪計測の線形性やゼロ戻りを評価することで有害な永久変形が発生していないことをもって構造の健全性を評価可能と従来から考えていたことで、認定試験後の非破壊検査を実施いたしませんでした。今回は認定試験で評価基準を満たしたために追加の検査が必要とは考えませんでした。また、強度試験後にフェアリング固有の要求、これは下のアスタリスクにありますけれども、例えばその後に分離放てき試験や射場の総合試験で引き続き使用するために供試体を保持する必要があったことから、総合的な評価として破壊試験は実施しないという計画にしたというものです。ここから導き出される要因は、新規技術を適用した構造体の開発において潜在リスクに気づかなかったことで、確立した開発手法が適用可能と考え、認定試験後の検査で最終確認することがなかった、ということでした。
 そして、なぜ1のもう一つの要素として、そもそもなぜ剥離が生じてしまったのかというところです。新規技術でありますOoA接着方式といったものを選定しましたが、それによるスプライス間の剥離不具合が生じ得る製造工程としてしまったことになります。ではなぜ剥離が生じ得る製造工程としたのかというところですが、これは詳細設計段階の過程でスプライス部の設計変更、これは2分割にしたということですが、これを実施した結果、スプライスとスプライスの間がある仕様となりました。そして、なぜ3のところですけれども、開発試験の結果及び設計解析結果からスプライス接着工程にはこのボイドの発生のリスクがより高いと考えておりまして、仕様や形状によって最もリスクが高いのがフェアリングの形態であると考えておりました。この試作試験に注力することでPSSの検証もカバーできると考えたためにPSS形態での試作試験は実施しなかったというのが実態でございました。その結果PSSのスプライス間に潜在するリスクの識別に至ることができませんでした。ここから抽出される要因としましては、新規技術適用のリスクのうち開発過程で識別した高リスクの排除に注力したため、別の潜在リスクの識別とその検証が十分でなかったことが挙げられると考えています。それから、なぜ3のところもう一つございまして、H3の開発目標である競争力の確保のために新規技術であるOoA接着工程を採用しました。この開発の過程で製造設備上の制約からスプライスを2分割にする仕様変更を行う必要が生じたわけですけれども、これによってより複雑な製造設計に踏み込むこととなりました。これには断熱材の適用も含まれます。そこに潜在するスプライス間のパネルの高温化リスクには類似の不具合の経験がなかったため具体的な不具合モードの識別と検証につなげることができませんでした。ここから抽出される要因としましては、新規技術の適用に際し開発途中での仕様変更によって複雑な製造工程設計が必要となる場合の影響評価が十分にできなかったということを挙げております。
 16ページお願いします。以上からH3ロケットの開発におけます今回の不具合に対する要因の特定としてのまとめのページがこちらでございます。繰り返しになるところもありますが丁寧に御説明してまいりたいと思います。大きく二つの要因があります。一つ目が、H3ロケットの開発目標や製造設備の制約などから難易度の高い新規技術を採用することとなり、それに伴うリスク識別の実施はしていたのですが、他によりリスクが高いと考えた形態の試験で包含されると考えまして、PSSの本不具合モードの識別に至ることができませんでした。さらに細かいところで一つ目、競争力確保のために新たに採用したOoAスプライス接着に対しては例えば工程FMEAやLessons Learnedを活用して成形済みのパネルを高温化することによる損傷リスク、これはかなり初期の段階から識別していたのですが、内部で剥離が発生するといった具体的な不具合モードまでは識別できていなかったということ、二つ目がその他にボイドの発生やPSSやフェアリングがコンター形状であるといったことによる、コンター形状というのは円錐台であるとか、オジャイブと呼んでおりますような丸みを持った円錐形状でして、こういったものであることによる成形不良発生のリスクがフェアリングの方がより高いと識別をしておりました。ここで識別したリスクは、フェアリングの試作試験でPSSの条件も包含可能と判断したものですから、PSSの簡単な円錐台形状での試作試験は実施しないことにつながっておりました。三つ目ですけれども、製造設備の制約でスプライスパッチの積層とOoA接着工程を別工場で実施する必要があったという事情からスプライスを2分割としましたが、二つのスプライスの端の温度をスプライス中央部の温度と同程度にコントロールするためにスプライス間に断熱材を被せておりました。結果的に二つのヒーターに挟まれた部分の局所的な高温化のリスクを識別できていなかったために、適切な対策を講じることができず高温化を招く結果となりました。二つ目、大きなところですけれども、認定試験にて計画どおりの挙動を示したことで試験後の非破壊検査は実施せず、また強度試験後に供試体を別の試験に活用する必要があったため破壊試験を実施しない計画としており、開発プロセスを通じて本不具合を見抜くことができませんでした。細かいところ三つあります。一つ目がパネル成形時の検査と接着後のスプライス部の検査の組合せによって全体の健全性が確認可能と評価しておりました。二つ目が構造系開発で行う強度試験におきましては構造体にかける負荷と、それに対応して変化する各部の歪みの量が比例関係、いわゆる線形性があることの確認や、負荷を除いた際に歪みの値が0に戻ることを確認することで有害な永久変形が発生していないと評価することが一般的で、これによって構造の健全性を評価してきておりました。PSS開発の強度試験でもこれらには全く問題が見られなかったことから内部欠陥の検査を実施することに思いが至りませんでした。ただし、これはロケット開発一般にあてはめるというわけではなく、例えばエンジン開発では認定試験後に切断検査を行う、ですとか、電気系の開発では機能試験を認定試験後に実施して健全性を確認するといったことは実施しております。三つ目としてフェアリングやPSSにつきましては強度試験の後に分離放てき試験等を実施する必要があるといった固有の要求がございます。これには射場の総合試験での使用といったものも含まれます。このことから供試体を保持する必要があるということで総合的な判断として破壊試験は実施しない計画としておりました。
 次のページから小島室長に説明をバトンタッチいたします。17ページお願いします。
 
【小島室長(JAXA)】  チーフエンジニア室の小島が説明を行います。なお、チーフエンジニア室はプロジェクトマネジメントシステムズエンジニアリングの視点からJAXA全体を横並びで見ている部署となります。2-2項の背後要因分析、2-1項の要因の特定結果を踏まえて組織全体の視点からの分析を説明していきます。冒頭ですけれども、宇宙開発における特に重要となるプロジェクトマネジメント、知識管理、そしてリスク管理、人材・能力に関して組織全体の視点から分析を行っています。なお、プロジェクトマネジメントと言いますと知識管理、リスク管理、人材・能力も含まれるとお考えになる方も多いと思いますが、ここではそれぞれのカテゴリーに関しましてルールが個別に定められていますので、このルールに不備があったかという視点で分析を行っております。結論を先に申しますと、この四つについて評価を行いましてリスク抽出の方法に課題があったと評価しています。それではこのページのプロジェクトマネジメントからまず説明していきます。JAXAでは審査会の進め方や独立評価体制の構築を含むプロジェクトマネジメントプロセスを組織としてルール化しておりまして、全プロジェクトに対してQCD(品質・コスト・スケジュール)の厳格な管理を行っているところです。バリエーションツリーの中でも出てきました審査会ですけれども、まずは開発メーカによる技術審査、そしてJAXAプロジェクト事業部門における審査、その後にJAXA全体における経営審査と、階層構造になっておりまして、各審査会ではプロジェクトの人員に加えまして専門技術や安全信頼性技術など多くの有識者が異なる視点で独立評価を行っているという状況です。さらに長年の宇宙開発で得た技術成果を蓄積分析評価し標準化した共通技術文書、これは設計工程試験の標準文書を含みますが、これらを適用することでミッションの信頼性や品質が担保されるように開発を進めているところです。これらのルール、共通技術文書に関して本不具合を事前に回避できるかという観点から確認を行った結果、要求事項の充足性については問題は確認されませんでした。最後のところですが、H3のプロジェクトにおいてもこれらをきちんと適用しているということ、あとは本不具合との関係について再点検を行った結果、プロジェクトマネジメントの規定上に今回の事象を招いたような不備は認められませんでした。
 18ページお願いいたします。最初に知識管理というところです。不具合や再発防止策を含む知見、ナレッジについてはタイムリーな各プロジェクトへの展開と共にきちんとデータベース化されている状況です。プロジェクトは開発フェーズごとの審査会で確認・評価しまして、必要に応じて開発計画への反映することがルール化されておりまして、H3ロケットにおいてもこれはきちんと守られているという状況です。さらにプロジェクト間、関連組織間で不具合情報を共有する仕組み、会議体も整備されておりまして、最新の知識データベースを再確認した結果、今回の事象に該当または事象の発生回避に有効と考えられるような過去の教訓は確認されませんでした。以上のことから知見の共有・参照の手順そのものに不便はなかったと評価しております。その次のカテゴリーで、リスク管理というところです。まずプロジェクトでは製造前に適用技術の成熟度、TRLと言っていますが、これらを評価しまして試作等によって段階的にTRLを向上させ、打上げ前にフライトに供するレベル、TRL8と呼んでいますけれども、これを達成する計画を立てています。また外部環境の不確定性も含めましてリスクを識別し管理計画を策定することもルール化されております。これらの手順についてはH3のプロジェクトでもきちんと適用されていまして、スプライスの接着時のパネルの高温化リスク、そしてリスクを低減する対策としての温度管理の必要性もこれは識別されていたところになります。一方で、開発初期段階においてこれらのリスクは識別されていたのですが、後工程で生じたスプライスの2分割というようなコンフィギュレーション変更後における部分的な高温化の可能性については当時の知見や検討の範囲からは抽出・評価ができておりませんでした。このため新規開発に対しては、副資材、断熱材の適用等、新たな要素が加わった際に派生し得るリスクについては多面的・網羅的に展開してリスクを抽出する手法について改善すべき課題があることが確認されました。リスクの検査項目、これは剥離が内在した部分の検査とも関連しているのですけども、こういうところの必要性とも関連していることも踏まえまして、今後のさらなる開発確実化に向けてリスクの技術的な評価能力の強化やリスク識別の観点をより体系的に整理活用することが組織的に強化すべきポイントと評価しております。
 19ページお願いいたします。次が人材・能力というところです。メーカも含めましてプロジェクトメンバーそして設計・製造・試験・品質管理を担うエンジニア、いろいろな方が関わっていますが、必要な技術力を維持向上するための教育研修プログラムがきちんと整備されまして、マネジメント研修や専門技術研修を継続的に実施している状況です。本不具合を踏まえまして取り組み状況を確認した結果、プロジェクトメンバー等はこれらの教育研修プログラムを受講していることを確認しています。また、人材育成、技術力維持の上での制度的な不備はこれらの結果を持って認められませんでした。一方で、開発中の審査や確認において想定すべき観点を体系的に整理して、より多的なリスク評価というものを行っていれば潜在リスクを打上げ前に抽出できた可能性があります。ここでもう少し多角的という意味なのですが、括弧内ですけれどもインタフェース先を含む全体のリスク、これは今回のことで言えばスプライスだけではなくて先のコアまで見ておくとか、そして次が設計/製造/試験といった全工程でのリスクをエンドtoエンドで見るような観点、あとは熱/構造等の複合分野の境界条件でのリスク、これらに配慮する視点に立っての評価というものを多角的なリスク評価と呼んでいます。こうした可能性を高めるために技術者の経験や見識を効果的に引き出していくことが課題だと認識しています。また、本知見をデータベース化しまして関係者へ周知するとともに、プロジェクトメンバーや評価者に対する継続的な教育研修を通じましてさらなる開発の確実化を図ることが重要でして、組織としても取り組むべきポイントとして評価おります。以上です。
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】  続いて20ページお願いします。こちら3章に入りまして再発防止に向けた是正対策でございます。
 次のページお願いします。まずロケット開発における視点での再発防止策でございます。8号機の失敗につきましては開発時のリスク評価に不足している点があったことから、今後の部分的な開発改良開発、これは高度化のブロックアップグレード、それから新規のロケット開発に向けましては新規の技術開発要素ですとか変更要素に対して、開発の初期段階や仕様変更時に開発全体を見渡し、リスクや不具合モードの識別を抜けなく実施して必要な試作試験などを計画することが重要だと考えております。ただし、大規模システムにおける開発初期段階でのリスク抽出は熟連の技術者であっても未知の未知、いわゆるUnknown Unknowns、こうしたものを特定しなければならないという非常に難易度が高いタスクであるとも考えています。机上検討の段階でシステム全体や製造工程全体を俯瞰して検討することには限界があるとも考えられますので、技術者の技術や経験則を体系的に引き出すためのトリガーとなるチェックリスト、これは下のアスタリスクにありますけれども、体系的となるようにリスクカテゴリを設定し過去の経験を一般化した形で広くチェックできるような項目を設定するようなものをイメージしておりますが、こうしたチェックリストの整備を進めるとともに今後のロケット開発においてブラッシュアップを継続していきたいと考えます。また、JAXAやメーカにおける審査会の技術的な評価能力を一層強化する観点から、特に新規開発要素の多い開発項目につきましては実際の開発経験を有します専門家の参画を拡充し、第三者的視点での審査の強化や技術的地見や経験則に基づく多角的かつ実行的なチェックが行われる体制に強化してまいたいと考えております。さらに、開発プロセスをそれでもすり抜け、フライトにて不具合が顕在化することを防止するために認定試験後の検査、これは例えば破壊試験による余裕の確認ですとか非破壊検査や切断検査による内部状態の確認などを指しますけれども、こうしたものを確実に実施してまいりたいと考えております。
 
【小島室長(JAXA)】  次に22ページ再発防策、組織全体の視点、というところになります。まず一つ目ですが、H3ロケット8号機の不具合に関する直接的な対策については安全信頼性推進部から信頼性技術情報を関係各社及びプロジェクトに展開を行っております。今後はJAXA、関係各社にて同様の不具合が内在してないことは各プロジェクトの審査会にて対策の実施可否を確実に確認していきます。二つ目ですが、新規技術採用に際しましては、初期の開発時点で十分に見える化できなかったリスクについてはその後の製造試験で課題が発見しない場合、審査会において抽出することは非常に難しくなる傾向にあると分析しています。これまでの本不具合の原因究明、再発防止対策に関する検討状況も踏まえまして、以下をLessons Learned案として社内の知識共有システム、LINKSと呼んでいますが、これに追加することを検討している状況です。その具体的なLessons Learned案を御説明していきます。下の四角の中ですが、新規技術を採用する際は開発初期段階で以下のリスク評価・対策及び開発中のフォローを確実に実施すること。まず一つ目、部位の抽出、新規技術がインタフェースする全ての部位を網羅的に注意すること。二つ目、耐性評価、各部位に対して組立製造試験の各工程に加わる熱的・機械的・電気ストレス、これはバラつきを含む不確定性を考慮した最悪ケースを考慮する必要がありますが、これらのストレスへの耐性を評価すること。三つ目、リスク評価と対策検討、評価結果に基づき許容値内の場合においても成立条件、これはマージンを含みますが、そしてその妥当性は見える化し、関係者間での共有を十分に行うこと。また許容値を超えるリスクに対しては設計変更や工程改善等の対策を行うこと。四つ目、開発中のフォロー、開発の進捗に伴いコンフィギュレーション変更がある場合、想定していない非線形や不連続部分が生じ、ストレス範囲やレベルが成立条件外となりリスクが顕在化する可能性があります。開発全般にわたり耐性評価時のリスクと成立条件については十分ウォッチし、必要に応じて成立条件の再評価を行うこと。さらにその影響が懸念される場合は検査での確認を基本とし、検査は当該部位まで十分に行うこと。以上がLessons Learned案となります。1番下ですが、このLessons Learnedについては社内の研修等に取り込みまして全社的な周知徹底を図る方針で今準備を進めているところになります。以上です。
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】   22ページお願いします。ここから2ページにわたりまして参考としてつけております。一つ目が先ほど開発フェーズにおけるバリエーションツリーをお示ししましたけれども、このページでは製造フェーズのものを示しております。1番上に書いてありますとおり、製造フェーズでは設定されたプロセスどおりの製造検査が行われておりましたので、この段階で不具合を排除、ブレークすることは困難であったと考えておりますので、排除モードの識別は行われていないというものでございます。
 次のページお願いします。最後のページになりまして、TF1の失敗後の対応と今回の要因との関係ということで、TF1の時に今回のことがなぜ抽出されなかったかというところを示しております。下の二つの目のポツのところにございますように、TF1失敗の対策の観点は計画された製造工程の実現性や故障伝播設計の妥当性でありまして、今回のPSSにおける、製造工程や検査の前提となるリスク抽出結果自体の確認には至らず、観点が違ったということを書いてございます。長くなりましたが以上が御説明になります。よろしくお願いいたします。
 
【木村主査】   ありがとうございます。大変詳細な解析をしていただきました。私の方で理解を簡単に再理解したいと思います。まず、大きく議題として二つあって、30形態試験機のフライト結果についての話で、30形態試験機の実施にあたってすでにPSSについて追加的な試験なども行われ、かつフライトデータから原因究明の要因として確証を得るデータを得られたという、これは大変心強いことだと思います。また、この成功については事前にPSS等についての見直しをかけた上で実施されたとのことで、そのあたりの御尽力にも大変敬意を表したいと思います。具体的な話はまた後で色々と質問が出るかもしれません。
 今回のもう一つの大きな重要ポイント、ここがすごく大事なポイントでもあるのですけれども、背後要因分析ということで議論を進めていただきました。こうした事象が発生した場合、対象となるものだけではなくて、それを教訓にしてメタな情報を得るというのは、これを機会にシステム全体としてよりレジリエントになっていく上で非常に大切なプロセスだと考えます。そういった意味で今回チーフエンジニア室も一緒に全社的な視点で御議論いただき、それからシステムエンジニアリングとしての視点から見直しをいただいているというのは非常に高く評価できるポイントだと思います。
 今回競争力確保のためにスプライス接着というチャレンジをされた。端的に言うとそこのチャレンジに関する部分での検査によって未然に防げる可能性があった不具合が検査をすり抜けてしまい、これはどうしてかというところが論点の中心になるかと思います。こうした議論においてはチャレンジを下げた方が良いのではないかとか、試験をもっとやっておけば良いのではないかという議論になりがちなのですけれども、そうするとコストの増大や競争力の問題等、様々な問題が結果的に発生してしまうということで、そうした視点から今回解決方法はおそらくリスクの適切な識別であると私もこれは同意いたします。闇雲にその試験をやるのでもなく、闇雲にチャレンジを恐れるのでもなく、それに伴うリスクをどうやって適切に識別するかを中心に議論いただいたのは本当に利にかなっていると私も判断します。その対策としてリスク抽出をより充実させるためにチェックリストの整備、それから体制的な充実、これも重要だと思いますけれども、適切な判断だなと考えます。それからあともう一つ、それでもすり抜ける予期しないリスクというのはある意味いろいろなシステムに関する永遠の課題でもあると思うのですが、最後の砦として認定試験後の検査で確実な実施に踏み込むと、これがもう一つ重要なポイントかと思います。
 私から二つほど質問させていただきたいポイントがあります。先ほど背後要因分析のところで、今回のケースについてJAXAの方でプロジェクトマネジメントに関するルールを整理いただき、それに則って判断した時にプロセスそのものに間違いがあったわけではないと結論されており、これが正しいと思うのですけれども、一方このルールそのものについての妥当性や見直し等は全社的に行われているという理解でよろしいでしょうか。これが1点目です。2点目は、人材の確保拡充という意味でLessons Learnedで展開をしようというところであったり、あるいは研修で展開しようとお話しになっていると思うのですが、なかなかチャレンジングな内容がないと、見通しを立てるとか、チャレンジに対するリスクを正しく認識するというのはなかなか難しいプロセスなので、定期的にプロジェクトのチャレンジングな部分に対して人材を割り当て、適切にそこで実際にプロジェクトを動かしていくというプロセスが必要なのではないか。つまり人材の直接的な参画とか活用とかいう部分についてもおそらく必要なのではないか。これは背後にはチャレンジが定期的に必要ではないかという意図にもなるのですけれども、そういった点いかがでしょうかというのが2点目です。
 
【小島室長(JAXA)】  木村先生御質問ありがとうございます。1点目について御回答します。プロジェクトマネジメントのルールの妥当性の見直しは全社的に行われているかというところなのですけれども、これは定期的に行っているというところになります。今回の事象を踏まえて再チェックを行い、結論から言うと今のルールを大きく変える必要はないと思っています。プロジェクトマネジメントを含め規定はあまり縛りすぎると自由度がなくなったりするので、基本的な、例えば業務のカテゴリーの要求分析だとか目標の設定だとか、あとはそのどのように審査会を回していったら良いのか、システム開発、運用についてはどのようにコンフィギュレーション管理するか、調達マネジメント、企業との契約等、そういったことを大きく規定しているところが主立ったところですので、そこについて見直しを即座にしなければいけないという状況ではないと思っております。
 
【木村主査】  なるほど。はい、分かりました。このルールに基づいてきちんとやられていてそこに不備は認められなかったという分析は正しいと思うのですけれども、それの背後にはこのルールそのもの妥当性っていうのがしっかりあって、それは全社的に確認されているという理解でよろしいということですね。
 
【小島室長(JAXA)】  はい。1点だけ補足させてください。宇宙開発の体制が、民間も入り、変わりつつあるというところもありますので、最新状況や本不具合等についても考慮した上できちんとフィードバックをかけて全社的な目で、ルールに対するチェックをタイムリーにかけていこうと考えております。
 
【木村主査】  ありがとうございます。それはとても大事なことかと思います。見直しつつより良いものにしていく、そしてそれに則って信頼性の高い開発を進めるというのはすごく大事なことかと思います。
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】  2点目については有田の方から御説明します。あくまでもロケット開発という限りがついてしまうかもしれませんけれども、先生がおっしゃっていただいたとおり、今回のようなことが仮にあったとしても、新規技術へのチャレンジのへの歩みは止めないと、意識して、もうリスクのあることはやらないということは技術の後退を招くことにもなりますし、国際的な競争力の強化ということを考えてもライバルたちはどんどん先に行っているという現実もありますので、チャレンジの歩みは止めるべきではないと考えています。そのような中でありますので、適切に若い人材も、そういうところにきちんと配置をして経験をより多く積ませていく、そこに経験のあるものがきちんと入ってリスクに対しての識別、先生もおっしゃっていただいたリスクの識別にできるだけ思いが至るような形で開発を続けていくと。そういった環境を、今回のことも踏まえてより強化してまいりたいというのが今の率直な思いです。
 
【木村主査】  ありがとうございます。大変心強く思います。この手のことは座学で知識として学んでもなかなか活用するのは難しいものものだと思うので、実践的な部分で経験があるかないかというのは非常に大きいと思うのですね。その辺り是非これからの組織運営みたいなところも含めて考えていただけると良いのかなと思います。出だしのところで時間を取ってしましたが、御質問お願いできますか。神武委員お願いします。
 
【神武委員】  御説明ありがとうございます。まずはこの間の6号機の打上げの成功おめでとうございます。やはり成功しないことにはなかなか前に進めないので私も安心しました。2点質問があります。1点目は16ページの要因の特定の辺りなのですが、要因を特定していただいて、なぜ今回不具合が起きたのかことを書いていただいていますが、具体的に書いていただいたところは非常によく分かったので、これに対して今後同じようなことが起きた場合のためにどのようにしていくかというところがちょっと私十分理解できなかったのですが、その辺り教えていただけますか。もしくはこれから検討されることであればそれを教えていただきますでしょうか。
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】  神武先生、ありがとうございます。それぞれに対する対策という御質問と理解しました。それについては21ページの方に書いておりまして、大きくは二つです。開発の初期段階を含めて設計段階、開発段階でこのリスクの識別ができなかったというところが大きなポイントの一つです。ここに対しては本当にいわゆるUnknown Unknownsに対してリスク識別をするというのは非常にハードルの高いタスクだと思っているところもあるのですが、そこに対してはまだ具体的にはこれからということになりますけれども、いわゆる今回のことを含めた反省点、こういったものを明文化した、あるいは抽象的な形になるかとは思うのですけども、そういう形でのチェックリストの整備、それから専門家の参画をより充実させるといったことで、できる限りリスクを抽出することができるようにしよう、ということが一つ。それからもう一つは最後の最後の段階ですり抜けていくものを防ぐために認定試験後の検査を充実させていくと。こういった大きくは二つという内容を考えております。お答えになりましたでしょうか。
 
【神武委員】  分かりました。例えばUnknown Unknowns、分からないことが分からないことを特定するってロジカルに考えるとそれは不可能なことだと思うので、そのあたりの意気込みというのは是非にとは思うのですが、分からないものは分からないのだという前提のもとに、どちらかというとなんとなく気持ちでなんとか抑えるぞというよりも、もう少しこう、そういうことは起こりうるという前提で仕組みを作っていただいた方が良いのかなと今日のお話を聞いて思いました。2点目、これで最後なのですが、2点目もそれにちょっと近いところがあって、これは小島さんへの質問になるのですが、是正対策というところで、例えばプロジェクトマネジメント、18ページ目ですね、組織全体の分析というところをされて問題が見つけられなかったことではあるのですが、これもともするとスローガンのようになってしまうと思うのです。これいつもやっていらっしゃることだとは思うので、今回このような事象があったからやらなくてはいけないことではないなく、JAXAの皆さんはすでにやってることだと思うのですが、今回特に力を入れてやられたこの分析について一つ具体的に教えていただければと思いますが、いかがでしょうか。
 
【小島室長(JAXA)】  神武先生、御質問ありがとうございます。一般的にはプロジェクトマネジメントというと開発が始まる前から始まり、開発後に打上げ、打上げ後の運用も含め、全てが対象になってしまい、それらの全般に対するチェックというのでは組織的に有効な反映事項が見つからないと思いました。一方でプロジェクトマネジメントに関して、我々はきちんとルールを定めており、例えばプロジェクトマネジメントに関する規定、ハンドブック、マニュアル等、JERGを含めQCDに関するメーカへの適用文書があるので、これらのルールに問題ないかというアプローチで詳細チェックを行いました。神武先生のおっしゃられている「問題なかったからそれで良いのか」という観点については、1番初めの木村先生への御回答と重なる部分もありますが、今のところルールとしては問題ないように見えましたが、宇宙の開発環境も変わっているところも踏まえて、このままこれを適用し続けて良いのかというような未来予測もした上でルール評価をタイムリーに行っていこうかと考えているところになります。少し曖昧な御回答になってしまいましたが、このような御回答でよろしいでしょうか。
 
【神武委員】  はい。そうですね、ともすると本当にスローガンになってしまうのでそこをアクションに落とし込むことを継続的に行うというところが大事だと思いまして、簡単ではないですけれども、是非、委員のメンバーも含めてどちらかというともっと巻き込んでいただいても良いのではないかと思っておりますので、その辺りも検討いただけると、日本の集合知をもってして良いものに進めていけると思うので、御検討いただければと思います。どうもありがとうございます。
 
【小島室長(JAXA)】  分かりました。よろしくお願いいたします。
 
【木村主査】  ありがとうございます。そうしましたら笠原委員、お願いします。
 
【笠原委員】  御説明どうもありがとうございました。またH3の6号機打上げ、本当に素晴らしく、拝見させていただきました。おめでとうございます。本日は非常に詳細に全体像や原因やあるいはマネジメントのあり方ですね、詳細にまた精緻に、御報告いただきまして誠にありがとうございます。非常に感銘を受けながら拝聴させていただきました。私も述べたいことは木村主査や神武委員と全く同じような観点でございまして、予測の難しい巨大システムに対する対峙の仕方に関してどうあるべきかなということを非常に考えさせられながら拝聴させていただきました。
 私が唯一加えさせていただきたい視点というのは、例えばOut of Autoclaveや2分割の問題やフェアリングの方に注力せざるを得なかったと、いずれもリソース的な問題というか、要するに余力というかですね、十分な経費や人材があれば、開発の余力があればまた違った展開があったのではないかという気持ちがしております。つまり表には出てこないのですが、日本の宇宙開発全体の開発へのパワーをもっともっと上げていかないといけないのかなと思っております。なおかつですね、開発した最終結果は不確実性が高くて最終チェックの重要性というのは、改めて今回のお話を聞かせていただいて極めて重要なのだなと。最後出来上がったものに自信があったとしても、内在している、自然現象ですので、予測できないという前提に立った最終チェックを行う必要性がやはり高いのだなと。また、それは明文化されてはいるのですが、特にLessons Learnedの最後のところですね、その影響が懸念される場合は検査での確認を基本とし検査当該部位まで十分に行うことと。まさに本当に最後の砦を死守される勢いを感じる部分でございます。すでに委員の先生方が御指摘されて、かつお答えをいただいている部分なので、私はコメントとして申し上げますが、まさにこの部分、検査をしっかり行うことによって今後の最終防衛線を張っていただくことで、今後の打上げというのは極めてスムーズに行われるのではないかと感じる次第でございます。以上でございます。どうも御説明ありがとうございました。
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】  笠原先生ありがとうございます。御指摘のとおりですね、十分な余力があればというところはある意味御指摘のとおりの部分もあるかと考えます。また最終チェックの重要性は本当に私ども今回のことで身に染みて感じているところでございまして、これについては開発費に多少のインパクトが出てくるというところは要素としてはあると考えていますけれども、やはりここを徹底していくことはやはり今後は必要だと考えておりますので、今後の開発に活かしてまいりたいと考えます。ありがとうございます。
 
【木村主査】  ありがとうございます。そうしましたら中西委員、お願いしてよろしいですか。
 
【中西委員】  慶應大学中西です。詳細な御説明どうもありがとうございました。なぜこのリスクは存在したのかということだけではなくて、どうしてそのリスクを抽出できなかったのかというところと、そのリスクを存在しないと信じ続けられたのかについても、かなり分析をされてまた分かりやすく説明をしていただいて非常に状況がよく分かりました。
 私から御質問させていただきたいのは二つのなのですけれども、一つはまず事前のリスク抽出に関してで、これまでのいくつかの不具合事例に関連しても少し思っていたところなのですが、今回のようなこういう新技術と仕様変更が組み合わされるような複雑なシステムの場合は、事前に故障モードを列挙するようなFMEAにはもうかなり限界があるのではないかとも思っておりまして、部品点数も非常に多くなっていますし工程も非常に多い、そしてステークホルダーも多いということで、なかなかこのFMEAだけで網羅的にやっていくこと自体もかなり難しくなっているのではないかと考えられます。それでいくつか、例えばSTPA、システムズ・セオリティック・プロセス・アナリシスですとか、それからFRAM、ファンクショナル・レゾナンス・アナリシス・メソッド、のような、システム全体の相互作用なんかも分析できるような手法等も出てきていますので、そういったものも少し活用しながらうまく組み合わせて事前のリスク抽出をしていくとFMEA一辺倒ではなくて、なんか上手くいかないかなということを少し思っているのですけれども、今後の開発プロセスにおいて、いくつかのそういう手法を現在使われているのか、もしくは使う可能性があるのかというところを、可能でしたら教えていただきたいと思います。それから、これも一つの思いつきベースですけれども、FMEAをするにしてもこれからはAIがかなりうまく使えるのではないかというようなところもあって、その辺の取り組みがあれば教えていただきたく、そうすることによって人が適切なところに注力することができるというような、良い点もあると思いますので、そのような取り組みがもしあれば、もしくは検討されている部分があれば教えていただきたいというのが一つ目です。
 それからまとめてもう一つ申し上げたいと思うのですけれども、先ほどからお話あるようにその未知の未知というものに対してのリスク抽出とかチェックというものを、100%を目指すことができても実現することは困難だというのは本当にそのとおりだと思いまして、今後の再発防止のとこで多角的・体系的にというお話があったのですが、先ほどのバリエーションツリーアナリシスの図を見せていただくと、多角的にチェックするような体制そのものはもともとあったように思いますので、専門性の深さに過度に依存しすぎないような、相互に、脆弱かもしれないようなところに声を上げることができるような、そういうある種のスキルの周知というようなことも、人材育成等の研修等に含めてはいかがかなことを思ったのですが、その辺りについても取り組みがあれば教えてください。私からは以上です。
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】  中西先生、ありがとうございます。大変示唆に富んだアドバイスをありがとうございます。まず一つ目につきまして、おっしゃるとおりですね。FMEAというのは結局設計者が想像できるエラーモードを抽出することから始まりますので、まさに未知の未知に対応できる手法でないというのはおっしゃるとおりで、ここに限界があるのはおっしゃるとおりだと思います。先生がおっしゃっていただいたような新しい手法につきましては、まだ残念ながら私ども勉強途上というようなところで、現状はですね、その適用するというような計画には至っていないところですけれども、是非先生にも色々教えていただいて、その辺取り込めることがあれば今後取り込んでいければと考えます。また、AIについても言及がございましたけれども、1号機の失敗の時にいわゆるデジタル技術の導入というのがロケット分野で遅れているのではないかと、木村先生からも御指摘をいただきまして、その後私どもとしてデジタル技術というものの導入と言いますか試行を進めておるところでございます。その中で、一般にあるAIですと外には出せないような情報を入れ込むことができませんので、いわゆる自前のAIのシステム、閉じたシステムとしてのAIの構築というものの試行を始めているところです。ただ、残念ながらこのリスク抽出というのに使えるほどの段階にはまだ至ってないというところですけれども、JAXAの中での色々な知見あるいはメーカも含めての色々な知見をその中に投入していくことで、将来的にはそういった活用もできるようにしていきたいということで取り組んでいる最中でございます。まず一つ目についてのお答えは以上のような感じでございます。
 
【中西委員】  ありがとうございます。先ほど神武先生がおっしゃっていたようにできるだけ委員も含めてお手伝いできることがあれば是非させていただきたいと思いますので巻き込んでいただけるとありがたいと思います。
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】  よろしくお願いいたします。ありがとうございます。二つ目は小島さんからお願いします。
 
【小島室長(JAXA)】  2点目について御回答致します。多角的なチェック、専門性の深さに依存しすぎない、スキルの人材育成の研修というところは、おっしゃるとおりで重要と考えています。背後要因分析において全社的な評価を行った際に、一人のパフォーマンスがいかに優れていても、その人的リソースには限界があることもあり、22ページ目のLessons Learnedにも記載したように、許容値、成立条件、つまりどうなったらコンポーネント、サブシステムは危険な状態になるのか、壊れるのか、不安定な状態になるかという許容値、成立条件等の物理条件を関係者でまずは周知し、それを開発の最初から最後まで共有しつつ、チェックリストも活用して、誰もがそれらのリスクについて気づいていくようなそういう開発が良いと思っています。そういう観点で本事象を踏まえた、改善点について研修に取り込もうと思います。
 
【中西委員】  はい。ありがとうございます。やはり未知の未知に対する気づきというのは、少し素人的な、あ、なんかこれ大丈夫かな、と思うようなところが、実は重要なリスク抽出に繋がっていったりするようなところがたくさんあると思いますので、是非そういったことをうまくやっていっていただくと良いかなと思いました。どうもありがとうございます。以上です。
 
【木村主査】  中西先生ありがとうございます。専門的なところからついていただいて本当に感心いたします。情報化のところは前から言っているように、やはりこれから先必要ですよね。そこの重要性を指摘いただいて本当にありがたいと思っています。ありがとうございます。それから、むしろナイーブな視点の方が重要、という中西先生の御意見、これすごく大事な視点ですよね。これは何かしらこれから議論していく上でも参考になるかなと思います。ありがとうございます。そうしましたら続いて豊嶋委員、お願いしてよろしいですか。
【豊嶋委員】  豊嶋でございます。ありがとうございます。複合要因今回かなり難しい問題だったと思うのですけれども、かなり検討されて、私が良いなと思ったのは、一般部品で破壊テストするとか、その辺まで踏み込まれているところ、コスト高との兼ね合いにはなると思いますけど良かったと思っています。私から一つコメントさせていただきたいと思ったのは、不具合って非常に難しい問題で、一般論から言っても表に出にくいし、出しにくいというか、性質から言って組織レベルだけではなく個人からも不具合って言いづらい性質のものだと思います。JAXA内からもそうだし、関わっているベンダーからもそうだし、出にくい原因だったり状況をどうやって対応したら良いかを私も考えたのですが、不具合を言い出してしまうとコストが高くなったり企業イメージなどのダメージに繋がったりといろんなことあると思います。皆さんスペースXがロケット失敗したら関係者が喜ばれている状況をいっぱい見られたと思うのですが、やはり不具合にマイナスのイメージが多いので日本ではこういう状況にはならないと思うのですが、この文化を変えていくか、その不具合に何か個人的なレベルでもインセンティブを与えていくようなことはできないでしょうか。例えば担当者レベルでも新しい発見とか知見、情報が得られたら、その知見を評価して、その個人に対してもポジティブに加点していくような、いろんなインセンティブがあると思うのですが、そういうインセンティブを与えるようなシステムを人材教育に具体的に取り入れていくのはどうでしょうか。一人一人が、例えば現場ではいろんな金属や複合材料を接着するにはどうするとか、そういう専門家の方が実際現場で働かれて接着作業をされて、「あ、これぐらいだったら大丈夫」と確認されていると思うのですが、例えば現場の人の感覚で「あ、これ不安なので念のためもしかして確認してみた方がいいかも」というようなことを言い出しにくい、あるいは工数が増えるとかという根本の流れというか性質があると思うのですが、そういうのを変えていくことができないかと。本日も、何回か最新の宇宙開発の手法を取り入れるという言葉が出ていましたけれども、最近の宇宙開発をどう取り入れていくかというところにも一部繋がるとは思うのですが、スペースXは失敗を喜びというかポジティブ評価に変えているような文化で世の中を変革してきている訳ですので。巨大システムのチェックを全部は網羅しきれないというところを、逆に一旦1番下のボトムで支えている個人から見つけていけるような、何かそういうことにインセンティブがあるような評価システムにしていくとか、そういうことをプラスで評価していくことを今後は考えていってはどうか。そういう文化になったとしても、もちろん失敗はしない方がいいのですが、失敗に繋がるようなことを個々の人やパーツから草の根的に上げていけるようになるように取り入れていくようなことを考えていくと、またこれまでの開発方向と違う軸で大規模システムの堅牢性というか、よりリファインされていく可能があるかなと思うので、もしもう考えられているかもしれませんが、こういった内容を人材教育含めて取り入れられるといいかなと思いました。私からは以上になります。
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】  豊嶋先生、ありがとうございます。おっしゃっていただいたのは例えばスペースXの取組など考えると正にそのとおりかなと思いました。そこまではちょっと至ってないかもしれないのですけども、今私どもとしても、H3のですね、何かまだ弱点がないかことを抽出する活動として、直接不具合ということでは必ずしもないのですけれども、作りにくい、作る上で苦労しているようなことはないかというようなことを、それこそベンダーの隅々までプライムの三菱重工を中心に現場の声を掬い上げていく、そういった活動に取り組んでいます。そういう中で、それを言ったから減点を受けることは決してないように、そしてそういった現場からの声を私どもとしても掬い上げて必要があれば、必要と認められればそこにはリソースを投入していくといったような活動を正に進めているところです。インセンティブというところまでいっているかというところはちょっとありますので、そのあたりも含めてですね、この活動にそういったインセンティブといった面も含めて取り入れていくことで、先生の言っていただいたより堅牢なシステムを目指していけるのではないかと私も思いましたので、是非取り組んでいきたいと考えます。
 
【豊嶋委員】  はい、ありがとうございます。やはり個人からも言い出しにくいし、企業単位になっても言い出しにくいしで、それがコスト高や企業ダメージに繋がったり、いろんな要因がある中でスペースXのやり方に勝つことは難しいのですけど、個人個人への評価と、もっと大きい意味では日本として、失敗はいけないのですけど、それはそこで新しいことが見つかった事をより価値があることとして許容して、「よくやった、でも次こうやっていったらその先が見えるので、この失敗無駄じゃなかった」と皆さんが思っていけるようなことに繋がる、何かきっかけを掴んでいくようなプロセスが踏めるとすごく良いなと個人的に思っています。自分の業務やプロジェクトに対する教訓としてもどう変えていったらよいかと日々思っていることなので、いろんなところでそういうことを積み上げていき、しっかりしたプロジェクトの成功やいろいろなことに繋げられるような環境を醸成していける活動に繋がっていけばいいなと思っています。是非よろしくお願いいたします。
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】  ありがとうございます。先生のおっしゃっていただいたことに直接関係するかどうかはあるのですけれども、今回こうした失敗あるいは不具合ということにはなってしまったわけですけれども、そこからここに至るまでこの開発や製造を担当してくださったパートナーメーカの方々は、本当にここから目をそらしたり逃げたりすること一切なく、また自分たちのその製品の不具合を隠すといったことも一切なく本当に真摯に正面から取り組んでくださっています。そういった姿勢を私も打上げ前の記者説明などの場で、そういった本当に皆さんの真摯な協力があって今日があるのだということを御説明してきております。そういった形で皆さんの御理解をいただきながら、このH3をより磨いていく活動に繋げていきたいと考えておりますので引き続きよろしくお願いいたします。
 
【豊嶋委員】  ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
 
【木村主査】  ありがとうございます。豊嶋委員のマインドセットを変えていくのにインセンティブを活用するというアイデアは非常に私も面白いなと思いつつ何かうまく活用できると良いですね、すごく新鮮な、かつなんか効果がありそうな提案かなと思います。ありがとうございます。神武委員、挙手されていますでしょうか。
 
【神武委員】  先ほど中西委員がコメントされていた手法の話でSTPAという話とかありましたけれども、その流れでちょっとコメントできればと思ったのですが。
 
【木村主査】  はい。お願いします。
 
【神武委員】  CASTという手法がありまして、いろんな事故とか不具合で世界的にはよく使われていて、JAXAの皆さんは御存じかもしれないのですが、2ヶ月ほど前に日本の宇宙ベンチャーであるispace社に対して、MITのオリビエ・デ・ウェック先生と私が議長になってこの手法を取り入れて提言を出したりしています。なので、皆さんおっしゃっているようにいろんな方法があって、ここの委員の皆さんも色々な領域の専門家でいらっしゃるので、是非まず色々なもの取り入れるのは取り入れられた方がいいと思いますので、それをうまくAIを使うなんていうのも本当にこれからのやるべきことであると思うので、是非御検討いただければと思います。ispaceの取り組みは公開できる範囲で公開もされていまして、御存じかなと思いましたが少しコメントさせていただければと思いました。以上です。
 
【小島室長(JAXA)】  神武先生、ありがとうございました。CASTという手法を含めについては対象とする事象により取り入れられる、取り入れられない等、特性があると思いますので、御相談させていただきながら、前に進めていこうと思います。よろしくお願いいたします。
 
【神武委員】  はい。取り入れないという御判断も、御理解の上での御判断は非常に素晴らしいことだと思うのですが、知りませんでしたということになってしまうともったいないと思いましたのでコメントさせていただきました。ありがとうございます。
 
【木村主査】  ありがとうございます。一通りよろしいですかね。私も一言、原因究明と再発防止についてはもうこれでよろしいかと思うのですけど、別の視点から、この話をどこでしようかなと思っていた話があるのでコメントさせて下さい。今回の打上げ失敗の時に、映像が非常に良く残っていてそれが今回の不具合の原因究明であったり、いろんな意味で価値をとても高く持ったと思っています。映像に関連する仕事をしていて大変示唆的な事象だったと思っているのですが、軌道上では照度条件が激しく変動するので映像が肝心なところで白飛びするというところがあったかと思います。今私の方で関連する研究で、軌道上で相手の衛星を発見して接近する時にHDRカメラ、ハイダイナミックレンジカメラを使いますと、例えば車載用のカメラでは、相手のヘッドライトで照らされながらナンバープレートを読むことができる非常にダイナミックレンジの広いカメラが今世の中で民生技術で非常に広がっていると思います。そういうものの活用もこれから先考えられると良いのかなと、不具合と直接は関係ないのですけれども、こういう状況監視のニーズは多分これから先も増えていくと思うので、そういったところも検討されると良いと思いました。どこかのタイミングでこれはコメントさせていただくといいかなと思っておりました。
 
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】  木村先生、ありがとうございます。御指摘の点につきましては私どもも非常に感じているところでありまして、今、岡田理事の肝いりでそのあたりの研究開発を加速しようということでやっております。前回の画像でもいわゆる送信のレートに限りがあることでどうしても画像の鮮明度という意味ではなかなか満足なものではないというところもありますので、まずはそこをなんとか改善、今のいわゆるRFリンクのリソースの中でもう少し何とかならないかを検討しているところです。その中にあわせて今言っていただいたような、よりものがはっきり見える、白飛び等を起こさないような、そういったものも取り入れていくことができればと思いますので、是非このあたり先生からも御知見いただけると大変ありがたいです。
 
【木村主査】  ありがとうございます。気になっていたところでもありましたので、この件コメントさせていただきました。
 皆様方、御質疑等よろしいでしょうか。今回非常に詳細に御検討いただきましたし、さらに先生方の方から非常に示唆に富むコメントをたくさんいただいたかと思います。御審議を踏まえ、中間報告の内容と今回のJAXAからの報告、それから先生方から出たコメントなどもうまく反映させる形で8号機打上げ失敗の原因究明活動のまとめとしたいと思いますが、皆さま御異議ございませんでしょうか。
 
(異議なしを確認)
 
 この間、本当に御協力いただきましてありがとうございます。それでは本日の評価結果、それからこれまでの議論も含めて、小委員会として次回の宇宙開発利用部会にH3ロケット8号機打上げ失敗の原因究明の最終報告として、報告するものといたします。小委員会から宇宙開発利用部会へ報告する報告書の書きぶりについては主査の私が取りまとめ、後日書面にて皆さまにお諮りしたいと思っております。これは書面審査のプロセスで進めたいと思いますが、その点よろしいでしょうか。
 
(異議なしを確認)
 
 ありがとうございます。後日、ある程度まとまった段階で書面にて展開させていただきますので是非御協力の方引き続きよろしくお願いいたします。
 以上で本日の議事は終了になります。最後に事務局から連絡事項をお願いいたします。
 
【田渕企画官(事務局)】  ありがとうございました。事務局の田渕です。本日の会議資料については、文部科学省のホームページに既に掲載しております。また、議事録については、委員の皆様に御確認いただいた後、文部科学省のホームページに後日、掲載させていただきます。また本日午後、事務局よりプレスの皆様向けにフォローアップのための記者ブリーフィングを行う予定です。
 宇宙開発利用部会への報告内容につきましては、先ほど木村主査からもございましたとおり、委員の皆様に書面での御確認をお願いすることになります。最終まとめに向けまして、引き続き委員の皆様のお力添えのほどよろしくお願いいたします。本日もどうもありがとうございました。事務連絡は以上です。
 
【木村主査】  ありがとうございました。それでは以上を持ちまして閉会といたします。本日も長時間にわたり誠にありがとうございました。
 
(了)

お問合せ先

研究開発局宇宙開発利用課