宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会(第43回) 議事録

1.日時

令和4年11月11日(金曜日) 17時00分~18時30分

2.場所

新型コロナウィルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. イプシロンロケット6号機打上げ失敗原因調査状況について(一部非公開 ※非公開審議の概要を、本議事録の末尾に添付しています。)

4.出席者

委員

主査 木村 真一
主査代理 神武 直彦
専門委員 柿沼 志津子
臨時委員 笠原 次郎
専門委員 門脇 直人
専門委員 辻村 厚

文部科学省

研究開発局長 千原 由幸
大臣官房審議官(研究開発局担当) 原 克彦 
研究開発局宇宙開発利用課長 上田 光幸
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 横井 奈央
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 宇宙輸送技術部門 事業推進部長 佐藤 寿晃
 宇宙輸送技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 隆行

オブザーバー

宇宙開発利用部会 部会長  村山 裕三

5.議事録

【木村主査】 それでは、定刻を過ぎましたので、宇宙開発利用部会調査・安全小委員会の第43回会合を開催いたします。
 本日の会議はイプシロン6号機の打ち上げに関する議論の第4回目になります。
 さて、本日も新型コロナウイルス感染防止のため、前回同様、オンラインで開催になっております。委員の皆様には、御多用のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは、最初に事務局から本日の会議に関する事務連絡をお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局でございます。
 本日、調査・安全小委員会に御所属いただいている委員のうち、今日は遅れて参加される方もおられますが、6名御出席予定でございますので、定足数要件を満たしていることを報告します。
 また、本日は親部会である宇宙開発利用部会の村山部会長にも御参画いただいております。
 次に、本日の資料は議事次第に記載のとおりです。
 オンライン状況について、音声がつながらない等の問題がございましたら事務局へメール、電話等で御連絡ください。
 事務局からは以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございます。村山部会長も御参加いただきまして、ありがとうございます。
 本日は10月28日に開催した小委員会に引き続き、JAXAより原因究明の進捗状況について報告いただき、議論を進めていきたいと思います。
 また、本日も、案件の性格上、機微な情報を扱うことになりますので、宇宙開発利用部会の運営規則第3条に則り、補足情報を用いての公開議論に関わる詳細議論については非公開とさせていただきますので、あらかじめ御了承ください。
 そうしましたら、議題に入りたいと思います。
 前回までの議論で三つあった可能性の中の二つまで絞り込まれたというお話までいただきました。本日、その後の進捗ということで資料の御説明をお願いしたいと思いますが、JAXA宇宙輸送技術部門事業推進部の佐藤部長並びにイプシロンロケットプロジェクトチームの井元プロジェクトマネージャー、よろしくお願いいたします。
 
【佐藤部長(JAXA)】 御紹介いただきました佐藤でございます。本日もよろしくお願いいたします。
 木村主査のほうから御紹介いただきましたけれども、前回以降も引き続き鋭意、原因調査を進めておりますので、その進捗を報告させていただきます。
 また、絞り込みがされてきたというところもございますので、本日は水平展開のほうも報告をさせていただく予定になってございます。
 まず、前半は井元プロマネのほうから報告をさせていただきます。よろしくお願いいたします。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 それでは、資料に基づきまして御説明いたします。右下のページを示しながら報告いたします。
 まず、2ページの目次でございます。
 本日の報告内容ということで全体像を示した上で、1項としましてイプシロン6号機の打ち上げ概要ということで、前回のリマインドを兼ねて示してございます。2項につきましては原因究明状況ということで、まだ途中段階ではありますけども、現時点での状況を御説明いたします。3項といたしまして、H3、H-ⅡAの水平展開といったところを示して、4項でまとめを示してございます。
 右下3ページをお願いいたします。
 前回までの報告を破線で書いておりますが、今回、また製造・検査データに基づく原因究明状況を御説明いたします。また、一部、追加検証をしておりますので、そちらの状況も御説明いたします。で、水平展開という形になります。
 次のページお願いします。4ページになります。こちらは打ち上げ結果再掲ということで、説明は割愛いたします。
 5ページをお願いします。こちらも6号機の諸元ということで再掲になりますので、説明は割愛いたします。
 6ページをお願いします。こちらも姿勢制御装置の概要ですので割愛いたします。
 7ページをお願いします。
 こちらが先ほど御説明いただきましたところで、PSDBスイッチ下流からパイロ弁までの系統異常につきましてはバツという形で絞り込んでおりますので、残りのパイロ弁の開動作不良と推進薬供給配管の閉塞、この2点について本日、御説明いたします。
 次のページお願いします。
 こちら8ページにありますけども、RCSの状況で、プラスY側のほうが機能しなかった、マイナスY軸側が機能したものになります。
 次のページお願いします。
 こちらはパイロ弁の動作イメージ図になりますけども、イニシエータ、あと、PCA(プライマチャンバアッセンブリ)とバルブ本体、配管も入ってございます。
 次のページお願いします。
 10ページになりますけども、試験機と強化型の比較という形でリマインドになっております。タンクとパイロ弁の状況の概要図を示させていただいております。
 次のページお願いします。
 こちらからが原因究明状況ということで、前回からまた製造・検査データの確認と追加検証を行っており、慎重に要因分析を進めているところでございます。こちらの2点に関する状況を御説明しております。あと、確認している製造・検査データの一覧も示しております。
 次のページをお願いします。
 こちらからは、2-1項といたしまして、パイロ弁の開動作不良の状況を御説明いたします。
 まず、参考ということで一番下にメーカー体制の概略を示しておりまして、サブシステムメーカーのRCSの製造の下で、部品コンポーネント供給業者ということで「パイロ弁供給業者」という用語が出てきます。こちらにつきましてはバルブ本体とPCAを製造する、あと、イニシエータを組み込んでパイロ弁を完成させるという役割を担っております。その下の「イニシエータ供給業者」というのがイニシエータを製造する、パイロ弁供給業者に納入するという形になっておりまして、その用語が出てきますのでこの図を御覧いただければと思います。
 参考のところですが、イニシエータに関しましては、機能したマイナスY軸側につきましてはイニシエータ2式のうち1式は射場で適合しないという事象が発生しておりますので、別ロット品に交換したという参考情報を示しております。
 FTAの中で前回から更新したものを赤字で示しておりまして、A-2の保管不良につきましては赤字のところを御説明いたします。
 まず、射場における保管温湿度は、パイロ弁の供給業者の図面とイニシエータの供給業者の文書の仕様の範囲内であるということを確認しております。それとあと、保管期間につきましても、イニシエータ供給業者文書の仕様範囲内であるということを確認しております。ただし、工場の保管環境については丁寧に確認しているところでございます。
 次のA-3ですけども、射場における点検不良ということで、こちらにつきましては射場での導通絶縁点検要求の妥当性を確認しているというところでしたけども、この要求につきましてはパイロ弁供給業者の図面の仕様の範囲内であるということを確認しております。一方で、パイロ弁供給業者の図面の仕様とイニシエータ供給業者の点検規格に一部差異がありますので、そこのところの根拠を確認しているところでございます。
 次のページをお願いいたします。
 13ページになりますけども、B-2ということで、PCAの不良の中の保管不良につきまして、こちらはパイロ弁供給業者が製作しておりますが、こちらも射場における温湿度環境はその図面の仕様の範囲内であることを確認しております。ただし、湿度要求に関しましては丁寧に確認をしているところでありますので、「根拠確認中」と記載してございます。保管期間につきましては、パイロ弁供給業者の示す同型式品の作動範囲内であるということを確認しております。ここで、工場の保管環境については確認中ということで、まだ現時点でバツにはできていないという状況でございます。
 それと、Cということで、バルブ本体の不良につきましては、C-2、こちらも保管環境を示しておりまして、射場における温湿度環境につきましては、パイロ弁製造業者の図面の仕様の範囲内であるということを確認しております。こちらもその根拠につきましては確認を丁寧にしているところであります。あと、保管期間に関する仕様についても、念のため今、確認しているところでございます。そのほか、工場の保管環境は今確認しているということでまだ三角というところです。
 そのほか、製造不良等も一部、進捗はしておりますが、まだ完全に潰し切れていないというところで、今、調査中という状況でございます。
 ここまでがパイロ弁の状況でございます。
 次のページお願いします。
 それから、2-2といたしまして、推進薬供給配管の閉塞ということで、こちらはFTAの再掲になります。Aのタンク出口ポートの閉塞のうちA-2のダイアフラムによる閉塞と、Cのパイロ弁内の推進薬配管の閉塞というところ、こちらがまだ三角が二つあるという状況でございまして、本日はこのA-2に関しまして状況を御説明いたします。
 続きの15ページをお願いいたします。
 FTAのA-2のところを分解いたしまして、A-2-1、ダイアフラムが正常であるケースとA-2-2、ダイアフラムが異常のケースに分けております。このそれぞれに関しまして絞り込みを実施しているところでございます。
 その評価の結果の状況というところで、まだ三角ですけども、推進薬タンクの容積が24リットルになりますけども、その推進薬量9リットルということで若干少なめの充填量、これはこれまでずっと同じ充填量なんですけども、この充填状態におきまして、ダイアフラムがフライト中の加速度等によりまして変形して推進薬タンクの液ポートに近接して閉塞させる可能性があるかどうかといったところを念のために今調査しているという状況でございます。
 この推進薬の充填状況につきましては、アクリルタンクを用いまして追加試験を実施しているところでございますけども、1G環境下で水を約9リットル充填させた状態の写真を右側に示しております。左側が液側、右側がガス側ということで、白く見えるものがダイアフラムでございまして、この1G環境下では液のポートからかなり離れているというところまでは確認しております。それがフライト環境下でどうなるかといったところを今確認しているということでございます。
 続いてA-2-2ですけども、ダイアフラムが異常のケースにつきましては、脱落もしくは漏えいによりまして推進薬が液側からガス側に移動するとか、それによりましてダイアフラムが推進薬タンクの液ポートに近接する、閉塞させる可能性があるかどうかといったところを今調査してございます。ダイアフラムに関連する製造・検査データを丁寧に今調査しているところでありますので、次ページ以降でその状況を御説明いたします。
 次のページをお願いいたします。
 まずその前に、フライトデータによる評価ということで、フライトデータではパイロ弁の点火信号送出時にプラスY軸側の下流配管圧力が本来であればタンク圧力に等しくなるところまで上がるんですけども、そこまで上がらないということを前々回、御報告いたしました。
 一方で、そこの最初のパイロ弁のイニシエータの点火タイミングで少しだけ圧力が上昇しているデータが見受けられます。これはテレメーターの計測精度であります1分解能が上がっているというような状況でありまして、上昇率につきましては、ここに圧力上昇分ということで0.076から0.086ということで、その程度の上昇になりますけども、この精度としてはこのくらいの精度はなくてもうちょっとプラスマイナスがあるんですけども、この程度上昇しているデータが見受けられます。
 これが実現象であるかどうかといったところについては今確認しているところでありますけども、仮にこれが実現象であって、なおかつダイアフラムが液ポートに近接しているというケースでは、そのパイロ弁開動作時にダイアフラムが液ポートに引き込まれて閉塞して、この推進薬が僅かにパイロ弁下流に流れ込む、あるいはパイロ弁下流の容積を押し込む、こういったモードでフライトデータと整合する可能性がないことはないということで今、検討しているところでございます。
 ちょっと下の米印のところに飛びますけども、パイロ弁の開動作不良の場合においてもフライトデータと整合するかどうかにつきましても今、並行して検討しているところでございます。
 こういったモードを念頭に置きつつ製造・検査データを確認しているところでございます。
 次のページをお願いします。17ページになります。
 まず、ダイアフラムの正常ケースにつきましては、先ほど御説明したとおりなんですけども、推進薬搭載時のダイアフラム形状を確認するための試験を実施いたしました。水で、なおかつ1G環境下ではダイアフラムが液ポートから離れていることを確認しております。ただし、フライト中の加速度とかパイロ弁を開にするタイミングでは無重力に近い状態になりますので、そういった状態でダイアフラムが液ポートに近接する可能性があるのかどうなのかといったところを今、調査しているところでございます。
 次のページをお願いいたします。
 次からはダイアフラム異常ケースの調査といたしまして製造・検査データを確認しているところであります。
 こちらは前回お示しした製造・組立てプロセスのフロー図を再掲しておりまして、新たな情報といたしましては、推進薬を充填した後、射場に輸送いたしまして各段組立てという中で、RCSはそれまでずっと機軸方向を下向きで推進薬充填、それから点検、整備をいたします。その後、全段組立てということで2段と1段を組み立てる前にそれを反転するということで、推進薬の状態が多少変わりますので、そういったところを特記として御説明しているところでございます。こういったところも頭に入れつつ、製造・検査データの調査をしているところでございます。
 次のページをお願いいたします。
 こちらはRCSのダイアフラムに着目いたしまして、これに関連する製造プロセスのフロー図を示しているものでございます。
 まず、タンクにつきましては、真ん中のところに図を示しておりますが、タンク外側から見たら赤道リングと液側の半球、それとガス側の半球ということで大きく三つに分れておりまして、この赤道リングというところにダイアフラムがございます。
 右の図はその内部を示した図でありまして、液側半球とガス側半球、あと、赤道リングがありまして、ダイアフラムをダイアフラムの固定リングと赤道リングで挟み込んでシール、保持しているところでございますけども、そういうイメージを右の図に示しております。
 さらに、その左の図、A部拡大というところですけども、ちょっと分かりにくいかもしれませんが、溶接1が液側半球と赤道リングを溶接している部分でございます。溶接2が赤道リングとダイアフラム固定リングを溶接している部分、それと溶接3が赤道リングとガス側半球を溶接している部分。
 そのフロー図を赤で示しておりまして、まず、赤道リングという真ん中のところを中心といたしまして、赤道リングを製造して、あと、液側半球、溶接1の部分を溶接いたします。その後、ダイアフラムとダイアフラム固定リングを組み込んで、これは赤道リングとダイアフラム固定リングを溶接するんですけども、この溶接2というところになります。その後、ガス側半球ということで、上半分に相当しますけども、赤道リングと溶接する。その後、RCS本体に組み込んで点検、検査をしていきます。その後、機体システム工場に持っていきまして試験をして、推進薬を充填して射場に持っていく。こういう製造フローになってございます。
 こういったところをちょっと頭に入れておいていただきまして、その次のページからの説明に移ります。20ページお願いいたします。
 ダイアフラムが異常というようなモードがあるのかどうなのかといったところで製造・検査データを今、詳細に確認しているところでございます。
 まず、ダイアフラム単体につきましては、上三つにロットの試験というものが書かれておりまして、材料特性試験、耐久性試験・気密試験、物性確認試験、こういった試験を実施しますが、これら全て良好であるということを確認しております。
 その後、実際にフライトに供するダイアフラムの外観検査、寸法・質量、あと、気密試験、最終外観検査、こういった検査を実施しておりますが、こちらについても良好であるというところは確認してございます。
 その後、推進薬タンクに組み込むんですけども、特に溶接2というところ、赤道リングとダイアフラム固定リングの溶接のところですけども、そこを今、かなり細かく確認しているところでございます。その後のダイアフラム組付け部の寸法、耐圧試験、こちらも確認中でございます。その後の気密試験は良好であるというところを確認しております。
 次のページをお願いいたします。
 こちらはその後の推進薬充填・ガス加圧というところで、こちらにつきましては充填手順、加圧手順、あと、データは良好であるということを確認しております。あと、輸送時の環境についても良好。それから、推進薬タンク圧力データにつきましても、特に変動はないというところで確認しているところでございます。
 原因究明につきましてはまだ途中段階でございますけども、報告は以上になります。
 
【佐藤部長(JAXA)】 それでは、3項の水平展開を佐藤のほうから御説明させていただきます。
 まず、前提条件という形で示してございますけれども、今、井元のほうから報告したとおり、射場での取扱い等のところが大方潰せてきているということで、いずれも部品、コンポーネントに係る事象ということで識別がされてきたかと我々としては考えてございます。
 2ポツになりますけれども、この識別を踏まえまして、H3ロケット及びH-ⅡAロケットについて、最後に残っている、可能性が否定できない全ての要因について影響評価を行った上で対処していくという方針で検討を行ってございます。
 H3及びH-ⅡAとイプシロンの違い、それからFTAを踏まえた影響評価の対象項目を次のページにお示ししてございます。次のページをお願いします。
 イプシロン、H3、H-ⅡAそれぞれのRCSの構成を示してございます。それぞれロケットのシステムによって違いがございます。例えば配管の径とか、そういうのは違うところがございますけれども、今回、イプシロンのほうのFTAで残っているところということで、この赤で囲まれたタンク、それから推進薬の遮断弁に着目してこの後、御説明をしたいと思います。
 タンクでいきますと、イプシロンがダイアフラムを使ったタンクを2式使っているところ、後ほど系統図等でまた御説明しますが、H3はそれは1式、H-ⅡAは同じく2式ですが、それぞれ設計や形状が異なるものを使っている。
 それから、タンク容量についても違いがありまして、特徴的という点では、イプシロンが24リットルタンクに対して9リットルの充填量で飛ばしているというところで、H3、H-ⅡAにつきましてはタンク容量に対してかなり充填量は多いというところが特徴になります。
 また、遮断弁のところ、パイロ弁の搭載数はそれぞれ違いますけれども、H3は、前回もお示ししましたが、製造元が同じなんですけれども製品そのものは違う、ただ作動原理は同じだということで、この後、説明をさせていただきます。H-ⅡAのほうにつきましては製造元も作動原理も異なるという特徴がございます。
 では、次のページをお願いいたします。
 評価の結果の概要ということでまずお示しします。上はH3、下はH-ⅡAになってございます。
 まず、H3の1ポツ目、これはイプシロンのFTAで言う閉塞のほう、A-2の要因に関わるダイアフラムの評価の概要になりますけれども、推進薬を充填した後、あるいはパイロ弁が開するときにダイアフラムが推進薬の液ポートのほうに近接しないという評価をしておりまして、閉塞の可能性はないと評価をいたしました。詳細は後ほど説明いたします。
 また、推進薬のリーク、あるいはダイアフラムの破損、脱落が発生しないよう、製造の中で確実にスクリーニングできるプロセスを取っているということを再度確認してございまして、フライトに異常を持ち込むリスクはなく、H3ロケットに関する懸念は排除されていると評価をしているところでございます。
 また、パイロ弁の開動作不良のFTAで残っているもう一つのところ及び閉塞の中で一つ残っている推進薬供給配管のパイロ弁内の閉塞、この二つの要因に関わりますパイロ弁につきましては、先ほど表でもお示ししましたが、H3とイプシロンは製品としては異なるものの製造元が同じ、それから作動原理が同じというところで、今この時点で懸念を排除できない状況にありますので、これを踏まえまして、H-ⅡAロケットで使っているパイロ弁と交換をする方針で検討を進めてまいりました。後ほどまた御説明しますが、一部、技術評価を継続中の部分がございますけれども、適用可能な見通しと判断してございます。
 下はH-ⅡAですけれども、今のH3とほぼ同じ説明になりますけれども、配管の閉塞のほうにつきましては、H3同様に、懸念は排除されると評価をしてございます。
 パイロ弁につきましては、仕組みが異なるということ、それから製造の異常も確実にスクリーニングできるプロセスとなっていることを確認しておりますので、こちらの懸念も排除されるという評価をしてございます。
 以上が評価概要になります。
 次のページをお願いします。
 この図は前回参考でおつけしたものを少しリバイスしたものでございます。H3の構成としては右の図を見ていただければと思いますが、赤い点線で囲まれた三つのモジュールで構成されてございます。このうち一番上のタンクモジュールというタンク、配管、それからパイロ弁までのこの塊がカートリッジ式になってございまして、工場で充填して持ってきて射場で取り付けるという方式ですので交換をすることが可能なものになってございます。同じようにヒドラジンを使用しておりまして、射場での安全確保のために飛ばすまではパイロ弁で遮断をしているというところは同じになります。
 また、右の図で言う中継配管、それからスラスタモジュール、この部分は既に工場で機体のほうに艤装されて持ってきまして、先ほど言ったタンクモジュールを充填した状態で持ってきて、最終的に射場で組み付ける、そういう方式になってございます。
 次のページに行きまして、これに対しまして、先ほど概要でもお示ししましたけれども、懸念がまだ完全に排除できないという可能性を考えまして、H-ⅡAロケットで使っているパイロ弁と同じものに交換する設計変更を実施することとしました。
 先ほどの系統図の右にもう一度返ってございますが、緑で囲われたところが変更点になります。かなり狭い範囲ですけども、パイロ弁と前後の配管、それからそれをブラケットに取り付ける部品、こういったものの交換をするということ、それから、H-ⅡAで使っているパイロ弁は同時に着火する方式ということで、秒時に差をつけたイプシロン、H3と違う形になりますので、電気信号を同時に送る方式に見直すという設計変更を行います。
 繰り返しになりますが、一部、まだ技術評価を継続してございますけれども、また最終的には確性のための試験を行う予定でございますけれども、右図で御説明したように非常に限られた範囲で変更する、これがロケットシステム全体に及ぼす影響はないということで適用可能な見通しと考えてございます。
 次ページ以降で評価の内容をもう少し詳しく説明いたします。
 ほぼ語っているところですけれども、6号機では、FTAの絞り込み状況を踏まえまして、推進薬の遮断弁とダイアフラムという二つに対して、イプシロン、それからH3の設計仕様の差に着目して影響評価を行いました。
 下に今回評価する対象部品ということで示してございますが、まず、左側にあるイプシロンの評価対象部品という欄ですけれども、前回も御説明しましたが、パイロ弁がバルブの本体、それからイニシエータ、PCA、こういう三つの構成品で成り立ってございます。これに対しまして、バルブの本体に相当するものはH-ⅡAのパイロ弁そのものになりますけれども、イニシエータとPCAの両方の機能を一つで実現するパワーカートリッジ――PCと書いてあります――というのがこちらで使っているパイロ弁の着火部分になります。ということで、構成が少し減るということになります。それから、ダイアフラムを含んだタンクは、形等は違いますが構成品としては同じということで、この三つに着目して評価を行ってございます。
 次のページをお願いします。
 中身を説明する前に、もう一度繰り返しになりますが、まず、それぞれがどういうものかというのを少し解説してございますけれども、今回設計変更いたしますH-ⅡAのパイロ弁は冗長構成のパワーカートリッジという火工品を装着してございます。このパワーカートリッジを着火させて発生する高温高圧ガスでパイロ弁の中の摺動部が移動して流路を開通させる機構となっております。この辺がイプシロンのものとは設計仕様が異なってございます。実績といたしましては、H-ⅡAの初号機から使ってございまして、フライト実績としては100式以上ありますということをまず記載してございます。
 それから、火工品、パワーカートリッジが二つ目ですけれども、電気着火を行って高温高圧ガスを発生させるという意味では同じですけれども、イプシロンはイニシエータ、それからブースターという二つで伝爆していく機能でしたが、これが合わさったものを一つの部品で達成しているというものでございます。これも実績としてはセットで100式以上使っているというものになります。
 次に、タンクにつきましては、形は球形ではなくて、球形の半殻二つの間に少し長胴部が入った俵形をしております。ダイアフラム式という意味では同じになります。イプシロンのところで先ほど説明がありましたが、その赤道部分のところにダイアフラムを装備しておりまして、加圧ガスによって押し出して推進薬を供給するという部分については同じになります。ただ、イプシロンとは設計仕様が異なる、それからH3では加圧ガスはヘリウムを使用するという点が異なってございます。
 タンクの直径、ガス・液ポートの形状、ダイアフラムのシール部はH-ⅡAと同じものにちょっと長胴部を足したというだけの違いになってございます。また、ダイアフラムの材料もH-ⅡAと同じで、サイズのみ異なるというのが構成になってございます。
 それでは、評価したポイントを少し説明してございます。後ほど非公開の中で一部、説明を補足させていただきたいと思います。
 まず、イニシエータPCAがPCで一体ということになってございますので、ここではAとBのFTA項目を合わせて表記させていただいてございます。
 1番上に太字でまとめを書いてございますけども、我々としては、製造異常は事前に確実にスクリーニングできるプロセスになっているということ、それから保管あるいは寿命の要求の根拠も今明確になっていると考えてございます。また、工場、射場における点検基準につきましてもそれぞれ齟齬がなく整合しているということで、影響はないと評価しているというのが全体の評価の考え方になってございます。
 まず、その下、製造不良の項目につきましては、イニシエータとPCは設計仕様が異なりますというところでございまして、このPCの開発をしたときに検証した結果に基づき設定されております製造・検査工程が確実に異常をスクリーニングできるプロセスとなっていることを確認してございます。この点は後ほど非公開の中で少し補足をさせていただきます。
 次に、保管不良につきましては、射場、それから工場における保管の要求――保管の状態とか温湿度につきましては、開発時に仕様として設定して、根拠は明確になっていることを確認してございます。また、工場、射場が保管要求を満足できる環境となっているということ自体も確認してございます。
 また、保管寿命につきましては、こちらも開発時に仕様として設定したもので、その根拠も含めて明確になっているという評価をしてございます。
 次に、射場における点検不良というところになりますけども、こちらも開発時に定められた点検基準と同じ条件でPC単体の導通・絶縁抵抗を測定するという形で行っておりまして、こういう部分は問題なく測定できるということを確認してございます。
 以上がPCに対する評価になってございます。
 それから、バルブの本体部分につきましてですけれども、こちらも同様に製造の異常は確実にスクリーニングできるプロセスになっているということ、それから、保管、寿命の要求根拠も明確になっているということを確認してございます。また、まだイプシロンのほうで少し残っておりますOリングにつきましても、外観点検も実施して記録が全て確認できるということで、影響はないと評価してございます。
 細かく内訳でいきますと、まず、製造不良につきましては、イプシロンのものとはパイロ弁の設計仕様が異なりますというところで、こちらのほうは開発時の検証結果に基づき設定されました製造・検査工程で確実にスクリーニングできるプロセスとなっております。こちらは後ほど非公開で少し補足いたします。
 それから、保管不良も、先ほどと同様になりますけども、工場、射場における保管の要求は開発時に仕様として設定し、その根拠も明確になってございます。また、工場、射場が保管要件を満足できる環境となっていることも確認してございます。
 それから、保管寿命につきましては、開発時に仕様として設定してございまして、こちらも根拠が明確になっていると考えてございます。
 それから、PCA・バルブ本体組付け不良に対しましては、Oリングにつきましては工場で外観点検を実施している、また射場での組み付け時も外観点検を実施しておりまして、これが検査記録により確認できるということで、影響はないと判断してございます。
 では、次のページをお願いします。
 次に、推進薬供給配管の閉塞というFTAに対しての評価になります。先ほど井元さんのほうからありましたA-2-1、A-2-2にそれぞれ対応した形で記載してございます。
 これはポツのほうを先に御説明しますが、先ほど表でも御説明しましたが、H3のタンクの容量74リットルに対して、試験機1号機の値ですけども、打ち上げ前に72リットルを充填する、そういうかなり満タンに充填するというものになりますので、液側が多いのでダイアフラムはガスポート側に貼り付いた状態になります。ということで、パイロ弁が開をするまではダイアフラムは今回閉塞の可能性が残っている液のポート側からは最も離れた位置にあるということで、今回のモードと考えられている液ポート側を塞ぐ、そういった近接をすることはないと評価してございます。
 パイロ弁が開をしたときに、配管のところを推進薬が瞬間的に少し流れることで閉塞をするモードというのを先ほど説明させていただきましたけども、このとき流れる量はタンクの全推進薬量に対しては非常に微量であるということで――このデータも後ほど数値をお示ししますけれども、開をしたときに、ほぼガス側に貼り付いているダイアフラムが変形して液ポートに近接することはないという評価をしてございます。
 ということで、閉塞の可能性はないと全体として評価をしてございます。
 一方、ダイアフラムが異常になった場合のケースということで下に示してございます。
 ポツから入りますけれども、まず、設計仕様が異なりまして、開発のときに設定いたしました製造・検査工程でこちらは確実にスクリーニングできるプロセスとなってございます。
 二つ目になりますけれども、タンクとダイアフラムを固定している箇所の寸法を、シール面圧を確実に確保した上で健全性を確保するという手順を取ってございまして、さらに液ポート側からの加圧による漏えい点検とガスポート側からの加圧による漏えい点検の両方を高圧あるいは低圧、この2条件で実施して確実性を高めているというプロセスになってございます。また、充填時にタンク内でもし液側からガス側に推進薬の内部漏えいがあった場合、作業者が確認できるというプロセスも取ってございまして、全体としては製造異常は確実にスクリーニングできるプロセスになっているということ、それから、推進薬が液側からガス側へ漏えいしてダイアフラムが液ポートに近接するというモードについてもないだろうということで、こちらの可能性もないと評価してございます。
 もう一つ、パイロ弁のFTAに少し残っているパイロ弁内の推進薬配管の閉塞というところが一番下のCになりますけれども、説明はほぼ同じでして、開発時に検証した結果に基づいた製造・検査工程の中身を確認して、それは確実に異常をスクリーニングできるプロセスとなっているということを確認しておりますので、こちらについても影響はないという判断をしてございます。
 以上がH3の評価になります。設計変更によって排除できるであろうと我々としては評価をしたところでございます。
 次のページはH-ⅡAのほうの評価になります。このページも前回参考でおつけしたものとほぼ同じになります。
 構成としては、タンク、パイロ弁が二つの系統になっているという違いはございますけれども、こちらも実績としてはH-ⅡAロケットの初号機から基本仕様としては同一設計で来ている。また、使っているパイロ弁やPCはH-ⅡAの初号機から同一設計というものになってございます。
 では、次のページをお願いします。
 ここはH3と同様にイプシロンとH-ⅡAの仕様の差に着目して影響評価を行いましたけれども、下の表を見ていただくと分かりますけれども、最初のイニシエータ、PCAの作動不良というFTAのモードに対してPC(パワーカートリッジ)を対象に評価をしましたけれども、基本はH3と同じ評価になります。バルブ本体についても先ほどのH3と同じ評価になってございます。
 それから、次のページ、推進薬供給配管の閉塞というところですけども、タンク容量がちょっと違いますけれども、37リットルのタンク容量に対して充填量が36リットルということで、ダイアフラムが液側に近づかないという評価につきましてはH3と同じですし、製造プロセス等の確認も十分できるということで、評価としてはH3と同じになるということで評価をしてございます。
 以上、長くなりましたけども、今後の進め方として今回のまとめを書かせていただきました。
 まず、イプシロンの原因究明のほうですけれども、今回、2段のRCSが機能しなかった要因として可能性が否定できておりませんパイロ弁の開動作不良及び推進薬の供給配管の閉塞、この二つの推定要因について、さらなる要因の絞り込みを行いました。この結果、いずれも部品コンポーネントに係る事象として識別をしております。完全には潰し切れておりませんが、ここまで追い込んできたと考えてございます。
 また、原因究明事項のH3、H-ⅡAの水平展開につきましては、H3では、H-ⅡAで実績のあります仕組みの異なるパイロ弁に交換することでH3ロケットに関する懸念は排除されると評価してございます。H-ⅡAにつきましても、こちらのほうは違ったパイロ弁を使っているとかで仕様が異なってございますので、いずれの要因についても懸念は排除されると評価いたしました。
 今後の予定になります。引き続き視野が狭くならないように俯瞰的な視点を確保しつつ、追加の検証等を進めたいと思います。また、それを含めて原因特定に向けた分析等を引き続き行いまして、後継ロケット等にも対策を反映していく予定ということでまとめさせていただきます。
 まず、説明は以上になります。
 
【木村主査】 御説明ありがとうございました。
 ここからは議論に入りたいのですけど、その前に1点補足させていただきたいと思います。
 今回、特にH3に対してパイロ弁の交換等を検討されているというお話をいただきました。十分検討されての話だというのは理解しております。ただ、一般的にリスクを発見したときにリスクを取り除くことも問題なんですけれども、システムを変更することによるリスクも併せて検討する必要があるというのを、私のほうで強く意識しております。ただ、今こちらで御紹介いただいた公開情報の内容の中には残念ながら幾つかの必要な情報が、まだ含まれておりません。
 先ほど説明の中でもあったと思うのですけれども、これはH3等の機微な製造情報に関係するものなので残念ながら公開の場では取り扱うことかできないと思います。この取扱いについては私も理解しておりますので、非公開の資料として後ほど改めて御説明いただこうと考えております。
 従いまして、委員の皆様にはその際にしっかりと御確認、御議論いただく、その上で御判断いただくというようなプロセスにさせていただきたいと思います。まずは公開資料を基に可能な限り議論を進める必要はあるのですけれども、その後、非公開資料を確認した上で全体の妥当性等を改めて確認いただきたいと考えております。委員の皆様、ぜひよろしくお願いします。
 それと、もう一つ、これは事務局に1点お願いですけれども、そういった意味で、特に本日の議論は、非公開部分での議論が非常に重要になるかなと思っております。ですので、非公開部分の議論の概要についても何らかの形で公開できるように、後ほどでも結構ですので工夫いただければと思うのですが、いかがでしょうか。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局でございます。
 非公開部分の議論の概要につきましては、後ほど予定されている記者の皆様へのフォローアップ・ブリーフィングの場でも説明させていただく予定にしていますし、今後公開する議事録のほうにそのフォローアップ・ブリーフィングで説明する内容を掲載するようにさせていただきたいと考えております。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 それでは、今回も大変詳しく説明していただきまして、大分追い込んできていただいたのと、水平展開の問題がございます。今のJAXAからの説明内容について御意見、御質問等がありましたらお願いできますでしょうか。いつものように挙手ボタンでお願いできればと思いますけれども、いかがでしょうか。
 笠原委員、お願いいたします。
 
【笠原委員】 笠原でございます。
 大変詳しい御説明と、それから、できる限りの原因究明をなされているということは強く感じながら聞かせていただきました。大変お疲れさまです。
 質問は2件ございまして、H-ⅡAのパイロ弁を使うということで、私もそれは非常に妥当だなと感じながら聞いてはいたんですが、PCと言われるものが冗長型になっているということで御説明いただきましたが、冗長である部分がどこまでなのかなというのがやはりとても気になりました。つまり、今回、イプシロンはイニシエータまで冗長型であって、その後のブースター以降はシングルと理解をしております。H-ⅡAのパイロ弁はどの辺りまで冗長なんでしょうか。つまり仕切り弁まで二つ搭載されているのかどうか。今お示しの図では仕切り弁は一つなのかなと理解しているんですが、その辺りを御説明いただきたいというのが1点。
 もう一つは、今回、圧力のデータに確かな変化があったというのは非常に重要な追求の結果のデータだと認識しております。2A側の点火のときにこの圧力のデータが少し変化をしている。2B側の点火のときには変化をしていない。この二つの事実というのは、仮にバルブ、要するにパイロ弁が開いたということを考えますと、最初の点火で開いてしまうと、2Bのほうで仮に点火しても開いたものをさらに開けるわけですので変化はしないのは整合している、AとBで時間遅れて点火をするんですけど、二つ目の点火というのは一つ目が開になったら念のために冗長型として点火している、そういう信号と理解してよろしいんでしょうか。つまり、ここにも書かれてあるとおり、やはり弁は開いたのではないか、そういう整合性を確認させていただきたいと思います。
 以上2点でございます。
 
【佐藤部長(JAXA)】 ありがとうございます。まず1点目は佐藤のほうから回答させていただきます。
 パワーカートリッジ、それからH-ⅡAのパイロ弁の中身は後ほど非公開で断面図を示させていただきます。
 簡単に言いますと、パワーカートリッジという部品はイニシエータとブースターが一体になってございます。そういう観点でいきますと、PCが2個、冗長でついておりますので、イプシロンで言うとブースターまでが冗長になっているというものになります。
 弁のほうは少し遮断の方式が違いますので、これは図を見ていただかないとなかなか説明しづらいので非公開でお示ししますが、弁体そのものはシングルというところは同じになります。
 まず1点目はよろしいでしょうか。
 
【笠原委員】 はい、理解いたしました。どうもありがとうございます。
 
【木村主査】 では、2点目を。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 続きまして、2点目の御質問に関してですけども、まず、パイロ弁が開いたケース、パイロ弁が開かなかったケース、この二つはまだ両方とも現時点で潰し切れていないところであります。
 ということを御説明した上で、まず、パイロ弁が開になるというケースにつきましては、御質問のとおり、最初のパイロ弁の開のタイミングで上がっておりますので、こちらでパイロ弁が開になったと。2回目の1秒後の点火信号のときには既に開いておりますので、そちらにつきましては開いていないということで、パイロ弁が開になったという事象とは最初の点火信号で開になったということを示しているものでございます。パイロ弁の開のケースは御質問いただいたとおりのものです。
 一方で、パイロ弁が開かなかったというケースに関しても、今、いろんなケースを考えておりまして、最初に点火信号が出たんですけども、そのときに何らか故障モードみたいなのがあって、パイロ弁下流の圧力が上昇しないかといったようなところもまだ完全に潰し切れていないという状況でございます。
 ということで、これが上がったということでパイロ弁が開いたというところにはまだ結論づけていないというものでございます。
 
【笠原委員】 大変詳しく御説明いただきまして、深く納得しております。私の質問の内容とはレベルの違う探査をされているということは改めて認識いたしました。どうもありがとうございました。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 次に、先ほどの圧力テレメトリの話は私も関心がちょっとありましたので、もしよければ、続けて私からもイプシロン関係で3点ほど御質問させてください。
 1点は、圧力センサーのほうの上昇が見られたのですけれども、これはかなり僅か、当初、見逃すというか、あまり意識に上らないぐらいのレベルの上昇かなと思うのですけれども、これはテレメトリの刻み幅から言って、有意に上がっていると考えられるものなのでしょうか。それが1点。
 それと、ダイアフラムがもし閉塞するというような事態であるとするならば、テレメトリからは瞬時に止まっているように見えるんですけれども、このような早い時定数で閉塞が起き得るのでしょうかというのが2点目です。
 三つ目が、ダイアフラムの試験を打ち上げの前に検証されているという説明がございました。これは原理的に試されているのか、それともこのダイアフラムを使って、つまりフライトに供したそのものを評価されたのか、どちらか教えていただければと思います。
 以上、3点お願いできますでしょうか。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 まず1点目ですけども、こちらは1分解能ということで、非常に微妙なところで圧力が上がっているように見えるものでございます。こちらにつきましては、実現象かどうかといったところに関しましても今まさに検討しているところでありまして、本当に微妙なところで変わったのかどうなのかというところであります。一方で、点火ステータスオン信号と同時に上がっているということは何らか関連があるであろうというところに着目して今検討しているところであります。そこの判断は現時点ではまだついていないというものでございます。
 
【木村主査】 了解しました。ありがとうございます。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 それと、すみません、先に分かりやすいほうで、3点目の御質問、ダイアフラムのところなんですけども、ちょっと私の御説明がよくなかったかもしれませんが、これは前回の御報告の後に実施した試験でございます。ということで、こちらはフライト品のダイアフラムではございません。
 
【木村主査】 了解。これは再現試験という意味合いですね。モデルケースを再現してみたと。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 そうですね。再現というか、推進薬を充填したときにダイアフラムがどうなるのかといったところを念のために確認したという位置づけになります。
 
【木村主査】 なるほど。はい、了解しました。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 それと、すみません、2点目の質問がちょっと頭から飛んでしまいまして。もう一度お願いいたします。
 
【木村主査】 先ほどの現状確認という話がまだなので何とも御質問しづらいところではあるのですけれども、ダイアフラムに原因があって閉塞したという場合に、テレメトリに見られる現象自体は非常に早い現象として見えるんですけど、これは理屈として合うものなのかなと思いました。どうでしょう。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 分かりました。
 まず、ダイアフラムがこの液の出口ポートからかなり離れている、例えば流路がかなりあるといったような状況でパイロ弁が開くと流量がかなり流れます。つまりこの程度の圧力上昇では済まないというところで、万が一、パイロ弁が開いてダイアフラムが原因であるという場合、こちらのケースについては、ほとんど出口ポートに近接する、もしくはかぶさっているぐらいの状況で起こる可能性がゼロではない、その可能性は否定できないというところで、その際には結局、ダイアフラムの上流側には1.9メガパスカル、20気圧弱程度の圧力がかかっておりますので、一方でパイロ弁の下流は大気圧よりも少し低い状態ということで、パイロ弁が開になると一気に流量が流れる、もしくは圧力差が出るというところで、もしかしたらダイアフラムが閉塞した可能性はあるのではないか、今の時点では否定できないのではないかと考えております。
 
【木村主査】 了解しました。考え方の一つとして御検討されているという理解ですね。ありがとうございます。
 ほかには御質問はいかがでしょうか。
 もし続いてがないのであれば、私のほうから、今度はH3展開のほうについての話でもう少し質問させてください。
 ここは質問の仕方が適切かどうか分からないのですけれども、今回、H3においてH-ⅡAで実績のあるパイロ弁に変更されようとしていると伺いました。H-ⅡAのほうのパイロ弁というのは100回以上あってすごい信頼度があるというのは非常によく分かったのですけれども、H3で別のパイロ弁に換えられた理由はここでお聞きしてもよいものでしょうか。置き直すというときにそこは問題にならないのかというのが次の質問になります。
 
【佐藤部長(JAXA)】 ありがとうございます。
 システム設計をする中で、要求仕様、あるいはコスト、それから当然、実績、こういったものを総合的に判断していろいろ選んでいるというのはロケット全般にあります。その中でH-ⅡAからH3はそこを換えたというのが事実になってございます。そうやって総合的に検討した中できちっと設計はしまして、H3ではこれでいけるということでここまで来ていたというのが現状の状態になっております。
 
【木村主査】 分かりました。ありがとうございます。
 ほか、御質問はいかがでしょうか。
 申し訳ないですが、私のほうでもう一つだけよろしければお願いしたいと思います。
 1点は、これはシステム的な設計に関わるところなのかもしれないのですが、イプシロンに関して、先ほどダイアフラム、タンクの中の充填量がイプシロンの場合、極端に低かったというお話がありました。まずこれがなぜなのかなというのが一つありまして。特殊なケースであるので、これはトラブルのもとになり得るかという観点で事前に検証されていたかどうかというところについて、あるいは容量が少ないことに伴う問題、リスクみたいなものの検証というのはされていたかどうかというところが1点です。
 もう一点は、前回もこれは可能ならというお話で御質問させていただいたのですけれども、パイロ弁なりを工業製品として考えたときに、リスクファクターは恐らく製造上は持っているんじゃないかなと思われます。そのような値あるいは数値を手に入れられる可能性があるかどうか。これは今後の対応を考えるときに一つの指標になるかなと思うのですけれども、そちらはいかがでしょうか。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 まず最初の御質問ですけども、イプシロンの2段に搭載していますRCSなんですけども、おおよそ100秒ちょっとの作動になります。前回あるいは前々回御説明したんですけども、1・2段分離外乱の3軸制御、2段燃焼中のロール制御、それから2段燃焼終了後の姿勢ターゲットを変えたときの3軸制御、この三つのフェーズで姿勢制御をいたします。事前に開発の段階でいろんな解析をしますし、あと、フライト実績もあるんですけども、その関係で推進薬としてはほとんど使わない、多くても半分とか、そのくらいしか使わないというような解析が出ておりまして、それにマージンを持ってもこの9リットルで十分であろうというところで考えております。事実、これまでの5機、あるいは6号機も同じなんですけども、推進薬使用量というのは非常に小さいというようなところでございます。そういうところでこの充填量を決めているところであります。
 一方で、開発のときなんですけども、推進薬が入って、推進薬がどんどんなくなってダイアフラムに近づくんですけども、その定常状態では流量が非常に小さいというようなところで、そういった排出試験は十分実施しているもので、こういうような事象にはならないというところまでは確認しているところでございます。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 あとは、先ほど信頼度に関するパラメーターみたいなのは如何でしょうか。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 すみません、そこにつきましては前回御質問いただいた点かと思いますけども、引き続き確認させていただきたいと思います。
 
【木村主査】 やはり工業製品なので、100%動作するということは多分、製造側としても保証しているわけではなくて、ある種のリスクをどのぐらいで見積もるかというのは持っているはずだと思うのです。その辺りをもし共有できるのであればそこは一つの指標として考える必要があるのかなというのは印象として持ちます。システム設計する上でやっぱり基本となるパラメーターの一つにはなり得るかなと思うので。
 ほかはいかがでしょうか。時間も少し下がってきてしまいましたが、もしよろしければここで公開の部分について一旦閉めさせていただきたいと思いますが、よろしいですか。大丈夫ですね。
 そうしましたら、これ以降は非公開になりますので、一旦ここで事務局から事務連絡のほうをお願いできればと思います。
 
【竹上企画官(事務局)】 ありがとうございます。
 会議資料と議事録の公開について申し上げます。本日の会議資料は文部科学省のホームページに既に掲載させていただいております。また、議事録につきましても、ここまでの内容は全て公開となりますので、委員の皆様に御確認いただいた後、文部科学省のホームページに掲載させていただきます。
 なお、次回小委員会につきましては、今月下旬以降をめどに調整の上、お知らせいたします。
 事務連絡としては以上です。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 それでは、一般の方はここまでとなります。ここまでの傍聴、大変ありがとうございました。

(プレス、傍聴者退席)

宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会(第43回)における非公開審議の概要について (PDF) 


―― 了 ――

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