令和8年3月24日(火曜日) 13時00分~15時00分
オンライン会議にて開催
主査 木村 真一
主査代理 神武 直彦
臨時委員 笠原 次郎
専門委員 柿沼 志津子
専門委員 熊崎 美枝子
専門委員 豊嶋 守生
専門委員 中西 美和
専門委員 花本 健二
大臣官房審議官(研究開発局担当) 古田 裕志
研究開発局 宇宙開発利用課長 梅原 弘史
研究開発局 宇宙開発利用課 宇宙科学技術推進企画官 近藤 潤
研究開発局 宇宙開発利用課 課長補佐 木元 健一
(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
理事/宇宙輸送技術部門長 岡田 匡史
宇宙輸送技術部門 事業推進部長 森 有司
宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 有田 誠
(オブザーバー)
内閣府
宇宙開発戦略推進事務局 参事官/準天頂衛星システム戦略室長 三上 建治
【木村主査】 それでは、これから第61回宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会を開催いたします。前回に続きましてH3ロケット8号機の打上げ失敗に関する5回目の議論ということになります。本日も前回同様オンラインでの開催となっております。委員の先生方におかれましては御多用のところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。それでは事務局から本日の会議に関する事務連絡をお願いいたします。
【近藤企画官(事務局)】 事務局から御連絡いたします。本日は途中参加の先生を含めまして、この会合に御所属いただいている8名の委員の先生方全員に御出席いただけることになってございます。また前回までと同様、内閣府から三上参事官にもオブザーバーとして参加いただいております。本日の資料は議事次第に記載のとおりでございます。オンライン状況について音声が繋がらないなどの問題がございましたら事務局へメール・電話等で御連絡ください。事務連絡は以上です。
【木村主査】 ありがとうございました。さて、前回の会合ではFTAによる要因の絞り込み、それから、それに基づく発生シナリオの検討が進められております。さらに、PSSの製造時に生じたCFRPの剥離が問題であるということが指摘されておりました。本日はここから、その後の進捗状況について確認していきたいと思います。早速議題の方に入りたいと思いますが、資料の説明をH3ロケットプロジェクトチームの有田プロジェクトマネージャ、よろしくお願いいたします。
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 本日もよろしくお願いいたします。JAXAの有田でございます。御説明を始めさせていただきます。H3ロケット8号機の打上げ失敗原因究明状況ということで、本日までの状況について御説明させていただきます。めくっていただきまして目次ですけれども、今回は3ポツの是正対策を追加させていただいております。続いて、本日の報告内容ですけれども、この破線で囲まれた範囲が本日の資料の範囲でございます。まず前回に引き続きまして、原因究明としてFTAに基づく要因の絞り込みを実施してまいりました。また、PSS内部に製造工程で生じた剥離の調査を進めてまいりました。この中で、その他のフライトデータとの整合性について評価してきたということで、データに基づく原因究明は9割方終わり、原因の特定についても6割方進捗しているという状況でございます。以上を踏まえまして、PSS製造工程で生じた剥離の対策検討を進めているということで、この是正対策のところにも手がかかったという状況にございます。次、1項に入りますけれども、こちらにつきましては前回からの更新箇所がございませんので飛ばしていただき、30ページまで進んでいただきたいと思います。
30ページから2章の原因究明の項になります。めくっていただきましてFTAです。この最後のポツのところに今回の変更点が書いてございます。1.1.3の「衝撃」、それから1.1.4の「圧力」、1.1.6の「歪」、1.3.1の「爆発・燃焼」、それから2ポツの「内部構造の損傷により発生」の内容に進捗がございましたので、これから御説明を進めてまいりたいと思います。
これらを踏まえました現時点の最新のFTAにつきましては60ページに示しております。では説明に入っていきます。
32ページですけれども、こちらのページは前回お示ししたFTAに対しまして、今回更新をするところを青枠で囲って示しております。お読み取りいただければと思います。
では33ページから御説明に入ってまいります。まずFTA 1.1.4の「圧力」の評価でございます。フェアリング内に圧力が残った状態で、フェアリングを分離することによって、内外圧差等によって、荷重が発生することを想定しておりまして、これについて評価をいたしました。フェアリングの内部の圧力のフライトデータはこちらの左の図に示しますとおりでございます。この減圧の状況については異常が認められておりません。最終的に0kPaまで減圧されております。それで、ここでは現実には考えにくいのですけれども、最悪の条件として、センサの誤差や分解能から、最大4kPa、つまり4/100気圧程度の圧力が残っていたと想定をいたしました。そしてさらに、最悪の条件として、この4kPaの圧力が衛星のある片側の一面にだけ何らかの理由で付加されたと考えました。この場合でも衛星が衛星搭載構造に及ぼす荷重、これを算出してみますと46kN程度ということで、PSSの設計荷重に対しては十分低いということを確認いたしました。
34ページに進んでいただきまして、FTA 1.3のうちの、フェアリング内の液体水素LH2の漏洩というモードでございます。こちらにつきまして、テレメトリーデータを評価した結果、起点となりました事象が発生するタイミングでは、衛星搭載構造内で計測する衛星搭載アダプタ内温度に、LH2の漏洩が疑われるような温度低下は認められないということを改めて確認をいたしました。左の図がそれを示しておりまして、0の時点がフェアリング分離の時点ですけれども、その前後で全く温度の低下の傾向が見られませんでした。またさらにダメを押す形ですけれども、このLH2が、この衛星のエリアに漏洩するモードと言いますと、フェアリングに装着された開頭バネが、このPSS、それからLH2タンクを突き破って貫通するといったモードぐらいしか考えることができません。それで、ここの部分について、開頭バネがまずフェアリングから外れるかということも確認しましたが、基本的に外れることはないということを確認しました。さらに万が一このバネが外れた場合でも下にある金具と干渉して留まるということで、万が一にもこの2段の水素タンクにこの開頭バネが到達するということはありえないということを確認いたしました。以上よりこの故障モードであるLH2の漏洩は発生していないと評価できる結論いたしました。
続きまして、1.3.1「爆発・燃焼」の評価でございます。前回の御報告では、衛星から推進薬が漏洩して燃焼するということを想定して、これの可能性がないということを御説明いたしましたけれども、今回は、ロケットに起因する水素ガスの爆発というものを想定いたしました。想定した条件ですけれども、フェアリングの内部にこの圧力の計測精度から算定される最大量の水素ガス、要は圧力センサでは検知できない量の水素ガスが漏洩して、フェアリング分離時に、分離されたノッチボルトが飛散した際の火花の発生などにより1箇所で着火して、分離時点で残留している空気と燃焼が進行するということを前提とした条件で解析を行いました。その結果がこの下の真ん中に示している図でございます。この結果でございますけれど、その左下の図に示しますように着火した領域付近では燃焼が広がりますけれども、圧力波の伝播に追従して、高温域の拡大ですとか、真ん中に示しております燃焼ガスの生成といったことは見られず、燃焼がフェアリング全域に進行することはないということが分かりました。また、衛星搭載構造や衛星に作用する横方向荷重をこの右下の図で示しておりますけれども、荷重が最大となる時刻の圧力分布を示しております。この圧力分布から算定した横方向荷重は、最大で15kN程度ということで、これはPSSの設計荷重に対して十分低いということで、水素ガスが空気と混合して燃焼するということはPSS損傷の直接要因にはなりえないと判断できると結論づけました。続きましてもう1つ「爆発・燃焼」の評価でございますけれど、今度は火工品の破裂ということで、フェアリングの分離機構に仕込まれた火工品の破裂というものを想定したものです。こちらにつきましては、2つの要素試験を行いまして、結論としてはエネルギー的にPSSの破壊には至らないと評価をいたしました。1つ目の試験が真空環境下でのSUS管、これは分離機構の一部をなす火薬が入っている部分ですけれども、このSUS管の破裂試験というものでございます。真空環境下でこの分離機構を作動しまして、SUS管にこの写真に示しますようにあらかじめスリット、亀裂ですね、こちらを入れておいて、意図的にこの管を破裂させました。当然ながら通常時はこの亀裂がございませんので、破裂する可能性が極めて低いと考えてございますが、これをあえて意図的に破裂させました。そうしましたところ、真空中でMDFF(火工品)の周りに発生するガス圧の計測をいたしました結果、想定を上回る圧力発生はなく、この場合のフェアリング内の圧力の増加分は50Paという非常に低い圧力以下であり、これがPSS構造を破壊させるものではないということを裏付けました。2つ目の試験が真空環境下でのノッチボルトの切断試験ということで、同じく真空下で分離機構を作動させまして切断されたノッチボルトのナット部、こちらが真空中で飛散する速度やエネルギーを評価いたしました。こちらにつきましても通常時は、飛散防止カバーというものがございますので、正常時にはナットは飛散しない構造にはなっております。この結果飛散したナットがPSSに衝突したとしましてもPSSが受けるエネルギーは0.4J程度ということで、やはりPSSの主構造を破壊させるようなエネルギーに到達しないということが確認できました。
次が、FTAの2ポツ、製造工程でPSS内部に生じた剥離についての説明になります。ここから4ページほどは、前回お示ししたものから変わってございませんので割愛させていただいて、41ページから追加の御説明になります。こちらに書いてございますように、こちらの剥離につきましては、前回の小委員会で以下の評価を重点的に進めるということを述べさせていただいておりましたので、こちらについて御説明してまいります。目次的に御説明していく内容を列挙しております。丸1として1つ目が事象の発生メカニズムで、3つの内容からなっております。1つ目が製造時の剥離の発生メカニズムということで、こちらには、8号機まで起きずに8号機で初めて発生した要因を含んでおります。2つ目がフライト中に剥離が進展するメカニズムです。3つ目がフェアリング分離時に、短時間で破壊に至るメカニズムでございます。丸2としまして、フライト時のデータとの整合性ということで、1つ目が画像に見られた白飛びとの整合性、2つ目が衛星のMLI(多層断熱材)やパネルの剥がれとの整合性、3つ目が、フェアリング分離検知が早かったという特異性との整合性でございます。順を追って説明してまいります。
42ページです。説明に入る前に、製造済みのPSSの調査状況について改めてまとめましたので、御説明いたします。PSSはこちらの真ん中の写真に示すような円筒系の構造をしておりますが、4つの位相で接着されて4つのパネルが組み合わされ、組み立てられている構造になっています。前回まで御説明をしておりました「スプライス間」と言っている部分、このA-A断面で示しているものですけれども、2枚のスプライスに挟まれた領域でこれまで剥離が見つかっておりました。その結果をまとめたのが左の表でございます。凡例を御説明いたします。この並んでいる丸とかバツは、左側がPSSの外側、右側が内側の検査結果を示しています。そして丸が剥離なし、三角が剥離あり、バーが未確認を示しています。右の表を見ていただいて分かりますとおり、PMと称している開発供試体の他に、5つのシリアルナンバーで示しております実用のPSS、これらの検査結果を示しておりますけれども、ほとんどのPSSで外側に剥離があるということがお分かりいただけるかと思います。一方内側については05番の1点以外は剥離がないといった状況です。後ほど詳しく述べますけれども、今回新たにスプライスの直下のところの剥離についても調査を始めました。こちらにつきましては、現時点では1つの供試体の検査しか終わっておりませんけれども、12番の供試体について、やはり外側の3位相について剥離が発見された状況にございます。順を追って御説明してまいります。
43ページです。ここで改めて、このPSSの製造検査の工程につきまして、御説明いたします。PSSは4枚のパネルでできているということは先ほども述べましたけれども、まず製造段階でこのパネルを1枚1枚成型していくわけですけれども、完成した段階でこのオレンジ色の領域、つまりPSSの全面に関して、断面図で示しますように、パネルの上下面を貫くような形で超音波を透過させる「透過法」という方法を用いて、剥離の有無を検査しておりました。これによってパネル1枚1枚が健全であるということを確認した後に、組立・接着工程に入っていくということになります。そして、このように4枚のパネルを組み上げて、この青い部分でスプライスして接着をしていくのですけれども、この部分については、接着がきちんとできていること、それからスプライスの層の中に剥離がないこと、こういったことを確認するために、上面からだけ超音波を当て、返ってくる超音波を検査することで剥離の状況を見る「反射法」という方法を上下面ともに使っているというもので、これらの合わせ技で全体としての品質を確保するという考え方でおりました。しかしながら今回、この熱影響を受けた範囲で剥離が発生し得ることが分かりましたので、従来は実施していないスプライスのある部分につきましても、パネル単体と同様に透過法を用いて、スキンとコアの間に剥離がないかということを検査することにいたしました。パネル単体ですと、この検査はロボットのような治具を使い自動的に行うことで非常にスピーディにできるのですが、組み立てられた状態でこの追加検査をやる必要があるということで、人手を使って上下面にプローブを当ててやる必要があり、非常に時間がかかってしまうため、現在まだ1つしか終わってないというところでございます。右下の図は、これまでの検査の状況をサマライズしたもので、従来御説明してきた打音検査で発見されたスプライス間の剥離というのはこの範囲になります。そして今回追加した部分はこちらの色の濃い茶色のスプライスの下の部分を追加して検査をしているということを示しております。
ページめくっていただきまして44ページです。ここから発生メカニズムについて御説明してまいります。まずは最初に発見されたスプライス間のものです。これにつきましては、実機パネルを用いたスプライス接着工程の再現試験を行いまして、接着工程の前の乾燥のための第1回の加温の時点で、実機で見られたものと同様の剥離が発生するということが分かりました。このことから以下のメカニズムで発生したと考えています。まずヒーターで加温した際に2つのヒーター間のパネル温度が想定以上に上昇していることが分かりました。右下の図の青の破線で示しました領域でこの2つのヒーターの端部、それからその間の範囲が規定温度より高温化していることがまず分かりました。そして、この想定以上に温度上昇した範囲で試験片を切り出して確認したところ、この部分の接着の強度が低下していることが確認されました。ということで、強度低下した部位で、ハニカムコア内部の空気が、接着時の加温による膨張等でスキンを面外に引き剥がそうという荷重が働きますので、これに耐えられずに接着部が破壊してスキンがハニカムコアから剥離したものと考えております。
続きまして45ページ、スプライス下に生じた剥離の発生メカニズムです。先ほど申し上げましたとおり、このスプライス接着工程で、加温されたスプライス間のスキン/コア間で発見されましたので、同じく熱影響を受けていると考えられますスプライス下のスキン/コア間についても状況を確認する必要があると考えまして、製造済みのPSS一式に対して、これまでは適用していなかった透過法による詳細調査を実施しましたところ、左の下に示すような4つの箇所に計6個の剥離を検出いたしました。このスプライス下につきましては、この温度が規定温度に制御できているということが確認できておりますので、この剥離につきましては先ほど御説明したスプライス間とは異なり、過加熱により発生とは異なるメカニズムで発生していると考えられます。一方、この剥離箇所についてはハニカムコアの継目部などの近傍に限られるということも分かっていまして、この特異性にも着目して剥離のメカニズムを検討しているところです。詳細調査の内容、先ほど御説明した内容と重複しますので説明は割愛いたしますが、打音検査でもある程度のことが分かるということが分かってまいりましたので、今後これも併用してスピードアップを図っていきたいと考えています。
続きまして46ページ、同じく剥離の発生メカニズムに関して、8号機で初めて発生した要因について検討してきた結果をお示しします。8号機のPSSの製造検査記録を網羅的にさらに追及して、確認していったところ、このOoAスプライス接着を行った時期が9月ということが分かりまして、高温多湿の環境下で一定時間保管されていたことが分かりました。一般的に、接着剤というのは吸湿の影響により強度が低下することが知られております。このことから、8号機の特異性として吸湿の影響を評価する必要があると判断しまして、加速吸湿試験という要素試験を行いました。その結果、吸湿がない場合に比べて、吸湿させた場合には約25%強度が低下するということが分かりましたので、この結果、8号機のPSSは剥離がより発生しやすい状態であった可能性があると考えられます。右の表は、この8号機に含まれていた水分量を推定する上で重要となる絶対湿度が書いてございまして、他の号機に比べて大きいということを読み取っていただけるかと思います。
続きまして、フライト中に剥離が進展するメカニズムに進みます。こちらにつきまして、試験の検証を進めておりますが、その状況ですけれども、剥離部の周辺を部分的に真空負荷した際に、剥離が拡大することを、実機のPSSの剥離部を部分的に真空にすることによって確認することができました。
次に解析評価の状況ですけれども、フライト中の真空環境下でコア内部に密閉された空気との差圧によって、スキンを引き剥がす荷重が発生して剥離が拡大し得ることを確認しました。右の図に示しておるのが解析結果で、こちらの1番右の図に示していますが、この中に1気圧の空気が入っていることを想定し、このようにスキンが外側に膨らんでいき剥離が広がっていく可能性があるということを確認いたしました。今後の計画ですけれども、実機のパネルを制作しまして、剥離が発生したパネル全体を真空チャンバに入れて、どのように剥離が拡大していくかということを観察しようということで、準備をしているところでございます。
次いっていただきまして、フェアリングの分離時に短時間で破壊に至るメカニズムでございます。試験検証といたしましては、このクーポン供試体という非常に小さい供試体ではあるのですけれど、こちらに実機と同様の熱負荷、それから飛行中の静荷重、こういった人工欠陥をクーポン供試体に対して与え、そこにフェアリング分離と同様の衝撃を付加いたしました。そうしたところ瞬間的に剥離が進展するということを確認いたしました。それから解析の評価の状況ですけれど、右の下の図に示しますように赤い部分で示す剥離領域が拡大すると、右の青いところを示しますように、より低荷重で、広範囲のスキンが座屈に至るということを確認しました。これは広範囲のスキンが座屈することによってパネルが剛性を喪失して荷重を支えられなくなることによって、瞬時にこれが円周方向に拡大しまして、瞬時に全体破壊に至る可能性があるということを示唆していると捉えております。今後の計画としては、今申し上げたモデルをさらに詳細化し、破壊力学的な剥離進展評価が可能な解析を今進めているところです。要素試験によるモデル検証と合わせて、破壊メカニズムをこれによって特定していく、もう少し申し上げますと、このフェアリング分離時の衝撃によって、PSS全体の破壊が生じ得るということを解析的に示していくことを考えています。
49ページに進んでいただきますと、製造済みのフェアリングの調査状況について御紹介いたします。フェアリングにつきましてはPSSと同様にスプライスの接着工程を実施しております。右の図に示しますように、スプライスと同じような長さのスプライス、これを片側に9枚貼ることで、この1/4殻を接着しているという共通点がございます。これにつきましても剥離の有無を調べる必要があるということで、調査を進めているところです。その結果を左の表に示していますけれども、製造済みのものとPM品合わせて、現在までに外側を中心に検査を進めておりますけれど、現時点で剥離は確認されていないという状況です。フェアリングにつきましては全長が長いために、アクセス性が確保できるものから順次進めているという状況です。そういった関係もありまして、スプライスの下についてはまだ調査が進んでいないという状態です。フェアリングについて剥離が見られない要因として、考えていることを書いています。フェアリングで用いているアルミハニカムコアは、PSSと異なっていて、水没性を確保するためにハニカムコアの中に穴が開いているといった仕様になっています。このため、加温による内圧の上昇がない、つまり加温した時に中の空気が膨張しても外に逃げていってしまうという構造であるために剥離が生じていない可能性があるのではないかと考えています。今後水平展開としてこの評価もまとめていきたいと考えております。
50ページ、ここからフライト時のデータとの整合性丸2に入ります。最初にこの右の写真に示すように画像に見られた白飛びということで、8号機におきましては、このように白飛びが長く継続して、フェアリングが開頭してもこの先にあるはずの宇宙空間が見えないという状況が長く継続しているということが特異的な事象でございました。またこの時のカメラと太陽、地球の位置関係は右下の図に示しますように、太陽は衛星の影になっていて、地球は、フェアリングが開いた後には一部が見えてくる、そういった位置関係にございました。
次のページいっていただきまして、このPSSが破壊するという事象とこの白飛びの関係を考える上で考えたメカニズムがこちらでございます。PSSの損傷によって、この図に示しますように丸1のところで、ハニカム内に閉じ込められていた空気が真空中に噴出するということが考えられます。2つ目として、この空気は断熱膨張によって温度が瞬間的に下がって、空気に含まれている水分が霧状になるということが考えられます。そして、フェアリングの開頭挙動によってフェアリングの隙間から太陽光が入射してフェアリングの内面に反射をする、またはフェアリングの隙間から地球のアルベド放射光が入射して、カメラの前面を照らすといったことで、丸4に示しますように、この霧で光が散乱されてカメラに映ったのではないかというのが想定したメカニズムでございます。こちらを2つのアプローチで検証しております。1つ目が、解析、コンピューターグラフィックスによる再現でございます。右の写真を見ていただきますと、この青枠で囲ったところが、5号機で捉えられた実写です。一方、右側のグレーの枠で囲んだ部分はCGでして、左右見分けがつかないくらいよく再現できているのではないかと思います。カメラに映ります対象物の質感ですとか見え方などをほぼ再現できたものと考えています。このモデルを用いまして、8号機の再現解析を実施したのが左下の図です。ここに先ほどお話ししたシナリオに沿った霧を含んだガスを生じさせたケースを解析しました。そうしたところガスの濃度に応じてこれを濃くしていくと画面全体が白飛びする映像となり得ることを確認しました。一方丸2で、カメラの前に構造体が突き出してくるといったような状況や丸3のような、細かい飛散物がカメラの前に出てきた場合には白飛びは発生しないということが確認されました。続きまして2つ目のアプローチが実験的なアプローチです。フライトと同一のカメラを用いまして、フェアリングを模擬したこの箱の中に、この霧を再現するためのミストを噴射した状態で、光源は太陽光をスリットから入れるという形で再現を試みました。この結果、右下の写真のようにガスのある状態では太陽光を隙間から入射させると前面に近い広い範囲で白飛びが発生することが分かりました。一方でガスがない状態では白飛びは広がりませんでした。以上から霧を含んだガスによって、太陽光が入射して散乱し、広い範囲で白飛び映像となりうることを確認いたしました。
では、このようなガスが霧を含んだガスが発生し得るのかということについての考察を54ページから述べております。まず、PSSから放出されるガスがどのぐらいの量であったのか、1番小さいケースから1番大きなケースまで想定しました。これは右の写真に示しますように、PSSの破壊した範囲を、1番小さいケースはスプライス間の20cmくらい、1番大きいケースではPSS全体の高さの2mくらいを想定して、中間のケースはこれの平均値を取ったもので、それぞれのパネル内の容積を出しているのがこちらの表になります。続いて、ハニカムの中にどのような空気が取り込まれていたかということを、工場のある岐阜の気象データから分類したものがこちらでして、気温と相対湿度から絶対湿度を求めるという形で、単位体積あたりに含まれる水分量を最小から最大まで出したものです。それから、フェアリング内にこれが広がるエリアとして想定したのは、カメラの直上ということで、約90cmの高さ、10m3の円環状の空間にまき散らされるということを想定いたしました。そうしますと、その結果として、次のページの左上に示すように、最小のケースで空間に0.02g/m3、最大のケースで0.84g/m3といった、霧が放出されるということが分かりました。次にこの霧がどのような粒径になるかいうことを、これは文献値を用いて想定したもので、最小のケースが3μm、最大のケースで10μmとなります。ここから、この霧がどのような濃さであったかというのを、トラベルトの式と呼ばれる経験式を用いて、霧のどのくらい先が見通せるかといういわゆる視程というもので評価をいたしました。この経験式に、上記で求めた値を代入して算出していきますと、最小のケースでは視程700m、最大のケースでは5mとなりました。気象庁が出している霧の定義にしたがいますと、100m以下の視程は濃霧と定義されるということだそうでございます。これから考えますと、以上の結果から中間ケースでも視程は30mですので、この中間のケースであっても濃霧に相当するような霧が生じていた可能性があり、先ほど来申し上げていたような現象が起こりうる可能性はあるのではないかということです。今後もこれについて、定量的な評価をできる限り進めていきたいと考えてございます。
続きまして56ページ、衛星のMLI(多層断熱材)、それからパネルの剥がれといった画像で見られたものとの整合性でございます。特異事象は、上の写真に示すようなMLIの膨らみ・剥がれ、それからパネルの剥がれといった状況、さらには、衛星から内部から外部に向けてガスの流れとこういったものが見られたというのが特異事象でございます。推定メカニズムといたしましては右下の図に示しますように衛星及び衛星搭載構造の一部が機体内に落ち込んだことによって、LH2タンクの上部にありました加圧配管を損傷させてヘリウムガスが流出し、流出したヘリウムガスは衛星の方に侵入していき衛星の横の面から吹き出したと考えられます。このことは衛星の温度データ等と整合しています。これを解析的に評価し、加圧配管から流出したヘリウムガスの圧力によって、この衛星のパネルが破壊し得るということを示したのがこちらの真ん中のグラフです。横軸がフェアリング分離時刻を基準にした時間、縦軸が内部の圧力で、衛星の内部の圧力が上がっていく様子がお分かりいただけるかと思います。そして約0.9秒過ぎにパネルの破断圧力を超える圧力になりパネルが吹き飛ぶということが解析的にも示され、画像と整合していることが分かります。また、MLIが先に剥がれていったということとも整合していると考えられます。
続きまして57ページ、フェアリング分離検知の特異性でございます。フェアリングの分離時刻が従来よりも早かったということを御説明しておりますけれども、これについてのFTAをこちらで展開しております。最初にフェアリングの挙動に異常があり早く分離したのではないかという点、こちらについては、画像の分析からフェアリングの開頭時間は他号機と同等であると評価できまして、これは要因ではないと考えています。次に、QDコネクタブラケット(PSS側)の変形等によって想定より早くコネクタが引き抜かれたというもので、こちらについては後ほど御説明いたします。それから、QDコネクタの収録装置までのハーネスが断線したというモードについても後ほど御説明しますが、こちらについては可能性がないということでバツをつけました。最後に想定以上の環境、具体的には衝撃が考えられますけれども、これによって外れたのではないかという点でございます。次から御説明してまいります。
まずQDコネクタのブラケットの変形があったのではないかというモードです。こちらにつきましては、PSSの上部が破損した可能性が高いと考えています。残ったPSSの下部が弾性変形をして、こういうことが起きたのではないかと考えています。右下の図に示しますように、QDのブラケットが50ミリ程度、この図で言うと左側に変位をした場合、このPSSの角度に直して5.6度相当ですけれども、こういったような変形があった場合には、フェアリング側と繋がっていたワイヤーが引っぱられてQDコネクタが抜けて分離検知に至った可能性があるのではないかということです。これが実際にあったとすると、このQDブラケットと同じような高さに、90度位相は違いますけれど搭載カメラが載っておりましたのでこちらも振れていた可能性があります。前回の御報告では、このカメラの画角は事象発生後も大きく変わっていないと御報告しておりますが、事象発生直後の短時間に限るとこの分離画像は白飛びのため非常に不鮮明であるということで、これが起きていたとも起きていなかったとも判断が難しい状況でございます。私どもとしてはこのPSSの弾性変形が起きた可能性について、引き続き検討を続けている状況です。
続きまして59ページです。ワイヤーハーネスが断線したというモード、こちらがありえないのではないかということでバツをつけた理由について御説明してまいります。QDのラインは赤で示していまして、もう1つ、PAFからの加速度や温度センサのワイヤーハーネスのラインを緑で示しています。こちらのラインはQDコネクタの近くに来た後、PSSの内部を通るような形になっていまして、ほぼ同一のラインを通って2段の方に行っております。ということでほぼ同じラインですので、片方のラインだけが破断したというのはなかなか考えにくいです。それからPSSの上部が破壊したと考えていますけれども、これによってワイヤーハーネスが引っぱられて、QDコネクタの線がQDから引き抜かれたというモードについても考えましたけども、これにつきましては、試験してみたところ、これを機体に固定しているタイラップの方が破断しやすいということで、これが破断した場合にはワイヤーハーネスに余長が生まれてしまうので、QDからワイヤーハーネスを引き抜くような力は発生しえないことが確認できました。こちらも要因になりえないということで、バツをつけております。
以上御説明してまいりました本日時点のFTAということで、60ページに最新のものをまとめてございます。まず「衝撃」と「圧力」と「爆発・燃焼」につきましては先ほど御説明してまいりましたが、この*1のところに書いていますように、これらのモードが単独で要因となることは可能性としてないということが分かりました。ただし、2ポツのPSSが自ら壊れるといったモードに対しては、複合要因としてはこれになりうる可能性がまだ残っているということで、三角として残しています。また1.1.6の「歪」というモードですけれど、こちらにつきましては、衛星と衛星分離部のいわゆる誤解放、誤離脱を想定しておりましたけれども、そこについているセンサのラインが、1・2段分離後以降に断線したということと整合しないため要因とはならないと評価できますので、こちらについてはバツをつけています。これが現時点の最新のFTAとなってございます。今後2ポツが単独で発生し得るということが確認できましたら、1ポツ側の三角についてはバツにできるものと考えています。
続きまして61ページ、発生シナリオの項です。こちらは62ページのサマリーの1から4のものにつきまして、先ほどFTAの中で御説明した評価を書いていまして、単独で生じうる直接要因とはなりえないということを書いています。シナリオのこの絵については従前から変えていないので、説明は割愛いたします。
最後に69ページ、是正対策でございますけれども、RTFに向けた対策は現時点では2つの案を候補として検討を進めております。1つ目が左下の図に示しますように、製造済みのPSSの全ての剥離箇所、それから接着の強度が低下した範囲を補修し、剥離がない状態でフライトに供する案です。もう1つが右下にあるファスナ結合案でして、PSSのパネル結合方式を従来の接着からファスナ結合に変更いたしまして、スプライス接着時の熱負荷を排除するとともに剥離の発生や進展を機械的に防止する案でございます。今後両案の技術的な成立性、質量等へのインパクト、それから実機反映計画等を検討して対策方針を決定してまいりたいと考えています。
続いて71ページ、今後の計画ですけれども、体制については従来と変更ございません。
72ページに今日のまとめと今後の計画を書いています。本日はFTA及び発生シナリオを用いて要因の絞り込みを進めました。そして、PSSに製造工程で生じた剥離が起点となり、これが進展することで事象に至ったことが直接要因である可能性が高く、その他の映像を含む取得データとも整合し得ると評価しておりまして、今後メカニズムの詳細を継続してまいりたいと考えております。その他のFTAの項目やシナリオは、単独では事象に至らないということを確認いたしました。是正対策といたしましては、補修案とファスナ結合案を検討しておりまして、現実的な成立性、質量等へのインパクト等の観点でトレードオフを進めてまいります。原因の特定につきましては、再現試験、解析によって、詳細なメカニズムの評価を進めてまいります。是正対策につきましてもトレードオフを進めてまいります。水平展開につきましては今回のPSSと類似の製造プロセスを用いている箇所の評価を進めてまいりたいと考えています。私からの御説明は以上になります。
【木村主査】 ありがとうございます。有田プロジェクトマネージャ、大変詳細な御説明いただきまして本当にありがとうございます。またこの間、非常に多くの検討作業、それからいくつかの要因の特定にあたっては検証実験も実施していただき敬意を表したいと思います。
今回ボリュームがありましたので、若干蛇足とは思いますけれどもサマライズすると、FTAに従って原因を絞り込んでいっていただいたと。その中で特にPSS内部の剥離について前回も話題になりましたけれども、重点的に検討いただくことで、フェアリング分離時の衝撃がきっかけになって剥離が進展して破壊に至ったのではないか、というシナリオが一番現状からすると蓋然性が高いと見られているというお話をいただきました。多くの点で合意できるところが多いかと思います。今回の検討で、前回御説明いただいたスプライス結合の接着のところ、なかなか難しいのだろうなと思いました。正直実は勉強になったところではあるのですけれど、これが今回の直接要因かどうかは別にしておそらく次では対策をしなければならないだろうということまでお考えいただいて、対策のところも、接着案とファスナ固定案というのを既に検討されていて、これをトレードオフしながら考えていこうという方針が示されたかと思います。ありがとうございます。
私の方から最初に2点ほど伺いたいことがあります。1つは画像についてで、私は画像に関心があるもので、白飛びについて今回色々検討いただいて、霧を含んだガスに対して太陽光がちょうどその方向にある、これは、実は映像の方からも確認できるので、太陽光源がおそらく真正面に来ているだろう、そしてこれが入射することによってブルームが起きて白飛びが起きたのだろうという、このシナリオはおそらくありうるだろうと思っています。ただこの時に、ちょっと実はよく分からないのが、この霧を含んだガスがこの状態で一定程度留まっていたと思います。実験の方でも箱の中に封入した形で再現されたと思うのですけども、ここに留まるメカニズムや要因は何があったのだとお考えでしょうか。
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 木村先生ありがとうございます。こちら26ページ、前々回ですかね、お示しました画像の変遷でございますけれども、留まったと申しましても非常に短い時間であることには違いがありませんので、約0.5秒、あるいは0.6秒くらいの時間しか留まらなかったと考えています。
【木村主査】 それ以降は、霧が晴れていって、これがその霧が拡散していった過程であろうと、そして0.5秒くらい、500ミリ秒くらいであれば、ある程度段階的に出てくるにしても、そのくらいの時定数はあり得るかなということですね。了解しました。ありがとうございます。
もう1つ、これは気が早いのかもしれないのですけれども、私自身は原因究明のためだけに時間をかけてもなかなか前に進まないというか、そこから新たな情報を次のトライアルで取りに行くということは非常に重要だと思っています。次のトライアルをする時に何を情報として取るのか、あるいは何を試すのかという内容が次は出て来るのかなとも思うのですけれども、ここまで特定されてきた上で、追加的な情報として次のフライトでどのような情報を得るか、あるいはセンサを何か追加するとか、そういう考えがあれば伺いたいのですがいかがでしょうか。
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。次のフライトにどういった対策を持って臨むのかというところは現時点、検討中ではございますが、いずれの方式を取るにしましても、今回の事象が追認するようなデータが取れないかということで、実はこれまでPSSの歪みデータは取ったことがございませんでした。実際にどういう荷重を受けて、どういった歪みがこのPSSのCFRPの表面に発生しているのか、といったデータはなく、特に真空環境がこれに対してどういう影響を及ぼしているのかといった実データはこれまでございませんでしたので、今そういった歪みのデータを取るということをやりたいということで準備を始めているところです。
【木村主査】 なるほど、分かりました。この事故ということで気づきがあって、それによって次のフライト機会で何らかの情報を得て、それがその次のさらに先の設計とか対策に活きてくることが非常に重要かなと思いました。その時に、是非、何らかのモデル化みたいなものが並行して進んでいて、解析的な部分が一緒に対になって、単に起きた・起きないというレベルの情報から、もう少し詳細なモデルの突き合わせまで行けるかなと思います。そのあたりも是非工夫されると良いのかなと思いました。
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい、ありがとうございます。今歪みのことだけ申し上げましたけれども、その他にも温度ですとか、できれば画像ももう1チャンネルぐらい取れないかとか、そういったことで出来る範囲でデータの拡充を進め、先生おっしゃるような、シナリオ的に語れるようなデータの拡充をしたいと考えてございます。
【木村主査】 そうですね。画像について言うと、次のフライトまでのタイムラインで可能かどうかは別にして、近年やはりHDR技術などもかなり進んできていて、ダイナミックレンジをかなり広く取れるカメラが出現してきているので、そういったものがこういう現象の場合にはすごく力を持つかなということを強く感じているところではあります。次というのは多分タイムライン的に乗らないかもしれないですけど、将来的には合わせて考えられるといいのかなと思います。
それでは委員の先生方、最初にちょっと時間を取ってしまいましたけれども、御質問・御意見等ございましたらお願いできますでしょうか。笠原委員お願いします。
【笠原委員】 御説明本当にどうもありがとうございます。大変詳細な御説明で、ここまでの御尽力、大変敬意を表します。ありがとうございました。
まず第1点目は、非常にシンプルな質問なのですが、今お見せいただいている69ページの右下の図が、これまでのスプライスを、ファスナと呼ばれる金属的な結合でもって抑え込んでいる構造で、これはもう本当に見るからに強力に2枚のパネルを結合している印象を受けるのですが、今回用いられているファスナを使わない構造というのは、いわゆる接着剤やそういったもので止めているのみになっていまして、それが本当に右側のファスナ構造と同等もしくはそれ以上の強度を持っていたのでしょうか、というのが1点目の質問でございます。
2点目は今日の御説明でありましたお話で、初期に、4kPa以下まで圧力低下がありますというお話を聞かせていただきまして、その後、白飛び、つまり霧が生じたというお話がございまして、そこが今回の剥離の話とどのように整合するのかというのが分からなかったです。つまり、その開頭前に既に剥離が生じ、ある程度進展していて、そしてハニカム内のガスがノーズコーンの中に入っていて、それは4kPaなのかもしれませんが、それがドンと開いた瞬間に白飛びが行われたというストーリーで勝手ながら理解しようとしていたのですが、どういう繋がりがあるのか、現状での御見解があるようでしたら教えていただければと思います。以上2点でございます。
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 笠原先生ありがとうございました。まず1点目ですけれども、このスプライス接着による結合での組み立てで、ボルト結合に比べて強度が出ていたのかということですけれども、こちらにつきましては、設計、それから実機大のPSSを用いた強度試験で、強度が十分に出ていることは確認しておりました。ただ今回はこの部分に剥離が発生したりしていますので、この設計どおりの強度が出ないと考えられており、剥離がなければ十分な強度を持ちうる設計ではあったと考えております。まず1点目、これは御回答になりましたでしょうか。
【笠原委員】 はい。承知いたしました。ありがとうございます。
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 次に2つ目でございますけれど、分かりにくい説明で申し訳ございません。私どもが今考えておりますのは、26ページに、先ほど申し上げた白飛びの時系列のデータがございますけれども、PSSの破壊というのは、いわゆる脆性材料の不安定破壊といったものが剥離を起点にして、ほぼ瞬間的、具体的になかなか難しいところありますけども、おそらく10数ミリ秒とか数十ミリ秒とかいう非常に短い時間で起きた可能性が高いと考えています。つまりこちらの図で起点と言っている部分の、1つ目の画像の中でもうPSSの破壊は全て起こってしまっていたくらい早い現象だったのではないかと考えております。そうしますと、その起点となったのはおそらくフェアリングの分離衝撃が最後の一押しになったと考えておりまして、それまでPSSで剥離していたと言っても完全にちぎれてスキンが飛んでいっているというわけではなくて、一部くっついていてまだ空気はコンテインされた状態であったのではないかと考えています。ただしもう剥離していますと強度が保てませんので、そこをフェアリング分離衝撃の最後の一押しがかかったところでスキンが一気に座屈して破壊していき、そうしますと中にコンテインされた空気が一気に外に吹き出すと。その少し前にはフェアリングが開き始めていますので、開き始めている隙間から太陽光が入射してそのPSSから吹き出した霧を含んだガスに散乱して、このような白飛びが見えてきたのではないかと考えてございまして、フェアリングが開く前に剥離をしてガスが徐々に出ていたというモードではないのではないかなと考えておるところです。御説明になりましたでしょうか。
【笠原委員】 はい、分かりました。フェアリング開頭直後で全ての事柄が行われたということを今理解いたしました。腑に落ちました。大変丁寧な御説明をどうもありがとうございました。以上でございます。
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
【木村主査】 はい、ありがとうございます。今の件で補足というか議論させていただきたいポイントが2つあります。1つは、先ほどの最後の一押しが何だったのかというところで、おそらくフェアリング分離時の衝撃であろうというお話がありました。おそらく、その時に剥離が進展して、コンテインされた空気が放出されたと。そこで細かい確認なのですけれども、先ほどの御説明で、フライト中フェアリング開頭前からフェアリング内の圧力は落ちていたというお話をされていたかと思います。圧力センサの値ではそれを拾っていないと。だからおそらくその可燃性のガスが漏れるとかそういうことは起きていないだろうというお話だったと思うのですけれども、それはセンサで拾えるようなガスの放出ではなかったという理解です。ここで何らかのガスが出てきた時に拾える可能性もあったのではないかと思ったのですけども、それは、分解能的には非常に微小であるからないだろうということですね。
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 今木村先生おっしゃっているのは、PSSの内部からということですね。
【木村主査】 はい、そういうことです。
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 これにつきましては、先生がおっしゃるように、このセンサに捉えられないぐらい非常に微小だったか、もしくは、あれだけの白飛びを起こすということは、徐々に漏れていってしまうとなくなってしまいますので、それなりの量のガスが破壊の起こる瞬間まではコンテインされていて、最後の一押しのフェアリング分離で破壊されて、PSSのCFRPスキンが座屈して破壊していく過程で、ガスが外に放出したのではないかと、そのように考えております。
【木村主査】 分かりました、ありがとうございます。それが1点目です。センサでは捉えられない、縦軸から考えるとそれよりは非常に低い現象なので、これとは解釈的に不整合を起こさないということで理解しました。
あともう1点は、笠原委員の質問にコメントしておいたほうがいいかなと思ったのは、先ほどのファスナで固定するやり方というのはH-IIAまでで実績をお持ちだと聞いております。今回接着にトライされたというか新しいチャレンジをされたというところが、若干やはり難しかったところなのかなというのは否めないかと思うのですけども、接着に切り替えられたのはおそらく軽量化であったり製造工程の簡略化であったり、そういったところを狙ってチャレンジされた部分であって、H-IIAまでの製造過程からチャレンジがあり差異になった可能性があるという、そういう理解でよろしいですよね。
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい。構造につきましては前回お示しました39ページに書いてございますが、先生がおっしゃるとおり、H-IIAはボルトで結合する方式でした。そしてH3では軽量化と、それからこの部分についても低コスト化というのを図るということで、接着方式を採用したという経緯がございました。
【木村主査】 すごく明快に分かりました。そこのところも、何かいい方法が取れれば良いというところだったのですけども、そこも、よくよく考えないといけないところですね。ありがとうございます。そうしましたら、神武委員お願いしていいですか。
【神武委員】 ありがとうございます。今、木村先生、笠原先生が御質問されたところに重なるのですが、46ページの部分で、今回いろいろな条件があり、8号機がその条件にはまってしまったので今回不具合が起きたということで、こういう条件でなければ不具合は起きなかったのだと理解はしました。それを踏まえていくつかのシナリオを挙げていただいていますが、今後の予定としてはどのように進められるか、もう少しいつぐらいに何が解明されて打上げまでどれぐらいの可能性が、スケジュールとして最短ではいつ頃打上げられそうかなど、まだ解明中だとは思うのですが、もし言及できる点があれば教えていただければと思いますが、いかがでしょうか。
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 神武先生ありがとうございます。今まさにこの対策が2案ございますけれども、これのトレードオフと言いますか、69ページのこちらの補修案でいきますと、もう既に5体完成しているものがございますので、この補修案が成り立てば比較的早いリターン・トゥ・フライトが可能だという可能性があります。一方ファスナ結合案につきましては、新たにパネルを作らなくてはいけない部分だとかに時間がよりかかるところがございます。それから重量的にも若干不利になるところがございます。こうしたところをよくよく検討して、この2案をよく比べながら、良いところを取りながら、どういった日程でリターン・トゥ・フライトに繋げていくか、まさに鋭意検討しているところでございます。現時点では大変申し訳ありませんが、その見通しを申し上げるのは難しい状況でございます。
【神武委員】 状況は理解いたしました。一方、全てを完璧にというところの最善を尽くすというお考えも分かるのですが、この打上げを早くしないと、宇宙に行ける手段という意味ではH3が打ち上がらないとなかなか前に進めないというところもあるので、その辺の議論は多分これからされていくという理解ですが、そういうことでよろしいですか。
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。もうまさにおっしゃるとおりで、たくさんのお客様にお待ちいただいて、大変心苦しい状況でございます。私どもとしても、1日も早いリターン・トゥ・フライトを目指して、ただし、信頼性の確保というのがやっぱり大前提になるとは思いますので、ここに決して妥協することなくしっかりやりたいと考えてございます。
【神武委員】 分かりました。非常に難しいトレードオフだと思うのですが、頑張っていただければと思います。ありがとうございます。
【木村主査】 ありがとうございます。では豊嶋委員、お願いします。
【豊嶋委員】 ありがとうございます。ちょっと海外からなのでビデオ・オフで質問させていただきます。2点確認させてください。1点目は、私の認識が合っているかどうかわからないのですが、51ページのハニカム間の空気で白飛びという話と、56ページの衛星パネルのヘリウムガスの圧でパネルが破壊したという話が、連動しているといいますか、ハニカム間の空気でそんな白飛びになるような事象になるのか、これまでも衛星筐体も含めハニカムは色んなところに使われていましたので、そこが感覚的に合わないので、やはりその白飛びはパネルのヘリウムガス圧が関係しているのではないかとも思ったのですが、その辺の相関について、認識不足があれば教えていただきたいのが1点目です。
それからもう1つ。46ページで、夏の期間で空調オフという話があったのですけれども、こういう問題は、既に当てはまる状況がある事象だと思うのですけど、もちろんこれから保管環境の条件と言いますか、そういったものの管理を強化される対策は打たれるのだと思いますが、これ特有でいうことで済ませられるか、全体にも影響してきて、本当に絞り切れるのかなという気もするのですけど、今後の話も含めて見解をお聞かせ願えたらなと思いました。よろしくお願いいたします。
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 豊嶋先生ありがとうございます。まず1つ目につきましては、先ほどの26ページの図に戻らせていただきますが、白飛びと言っている状況がこちらの写真で言いますと、下の右から2つ目ぐらいまでは残っているということで、これは先ほど申し上げた大体0.5秒くらいまでの領域でございます。一方、衛星のMLIが膨らんだり、パネルが飛んだりといったのは、ここからさらに後の現象でございます。ということで、先ほど申し上げましたように、白飛びというのはPSSの内部にコンテインされていた水分を含んだ空気が外に出てきて、そこに太陽光が散乱して発生したものではないかなと考えております。一方、そこから先の、MLIですとか衛星のパネルが吹き飛んだという事象については、このPSSの中から出てきたガスとしては、場所的に整合しないというところもございますので、やはり2次的に発生した要因ということで、先ほどお示ししましたように、ロケットの加圧配管の破壊によって2次的に発生したものと考えております。時間的にもMLIの膨らみは、先ほどの0.5秒くらいから起きているのですけれども、ここの衛星が落ち込んできて加圧配管を破壊するまでに900mm程度の距離がありますので、落ち込んでくるにも時間がかかりますので、この程度の時間がかかってガスが噴出したと考えております。ですので、PSSの破壊が非常に早い現象であったということに比べて、これらの事象は比較的にゆっくり、500ミリ秒後から起きているということで、ここは事象として異なった原因で発生しているものではないかと考えているというのが1つ目の回答となります。
【豊嶋委員】 ありがとうございました。時間の連れで、そういった判断ができるということで認識いたしました。ありがとうございます。
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。それから2つ目ですけれども、おっしゃるとおり、46ページに示した湿度の管理につきましては高温多湿の状況で一定期間パネルを保管していたというところが事実でございますが、このパネルをファスナで結合しているH-IIAの時代も、特に保管の環境についての規定がなく、それでも全く問題なくフライトしてまいりました。今回は、この吸湿の管理がされてなかったパネルにもう一度温度をかけて接着をするという工程が良くなかった可能性があるのではないかと、つまり、吸湿している状態の接着剤に熱をかけることで強度が低下することが分かっていますので、ここのところが思いが至らなかった部分ではないかと考えております。と言いますのも、こうしたPSS含めCFRPの製品ができた後に湿度コントロールをしなくてはいけない、そうしないと性能が発揮できないというようなものですと、例えばロケットを外に出すことすらできない、飛ばすことができないということになってしまいますので、そういったものではないわけですので、その後の接着工程があったということが課題であったと考えています。お答えになりましたでしょうか。
【豊嶋委員】 ありがとうございます。おそらく、スペースXとか、ウクライナの方のロケットも基本的には普通の環境に置いてあって、それを次々打上げられるような品質管理で、そこまで環境にお金をかけなくてもできるのが今後当たり前になってくると思うので、そういった部分でこれもそういう方法なのかなと理解しました。問題は多湿の部分で、そこに対応すれば、そういう方向でピンポイントと言いますか、その部分、しっかり対応して、保管条件も維持しながら詰められるということかなと理解しました。
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい、ありがとうございます。
【木村主査】 私からもう1件、すみません今ので思い出したのですけど、豊嶋さんの質問の最初の方の話で、状況としては理解していたのですけれど、PSS内部に、製造時に入った1気圧の空気がそのままコンテインされていたという状態は、ある意味ちょっと意外でもあり、かつそこの気圧差などで、最後のトリガはフェアリングの分離衝撃かもしれないですけれど、何か負荷がかかっていた可能性もあるかなと実は思っていまして、圧がかかり続けていた状態というのはあまり好ましくないかなと思いました。1つはここが気密になっているというのは少し意外で、もし簡単に加工できるのであればベントできるようにしておくことで、気密の問題は解決できるのではないかと想像したのですけども、それは難しいものでしょうか。
【有田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。木村先生もよく御存じと思いますが、衛星とか長期間宇宙空間にいることが最初から想定されているような宇宙機につきましては、パーフォレーテッドコアという穴が最初から開いている気密性を持たないハニカムコアが使われるのが通例です。一方ロケットの場合には、先ほどのグラフに示しましたように、リフトオフから百秒くらいで気圧0の真空になっていくということで、この間でパーフォレーテッドコアの中から空気が完全に抜けるかというと、必ずしもそうではないというところもありまして、ロケットでは従来、このようなパーフォレーテッドコアを必ず使わなければならないといったような設計基準は設けてございませんでした。
実際にH-IIAでも、このような気密性のあるものを使って飛ばしてきたという経緯もございました。それから、ここを穴あきのものにすると、実際にこれを接着する段階で、ここのガスが引かれてしまって、表面のスキンが中に落ち込んでしまうといったような副作用もあるということで、現場の声としてはできれば避けてほしいという声があったと聞いております。ただ、今回のこういった事象に鑑みまして、今後作っていくものについてはロケットについてもやはり何らか考えるべきではないかなというところもございますので、このあたりは、よく考えてまいりたいと思います。
【木村主査】 なるほど、製造上難しい部分もあるのでしょうね。どこかしら、ベント穴が開いていればそこから抜けてくれそうな気もしなくはないと素人考えでは思ってしまうのですけども、そのあたり是非、製造過程の最適化というところも多分関係すると思うので、参考までに考えていただけるといいのかなと思います。ありがとうございます。
他はよろしいでしょうか。
だいぶ具体的な議論が進んでいきたかと思います。御質疑、参加いただきました先生方、ありがとうございました。ここまでで、議論は終了とさせていただこうと思いますが、事務局の方にお戻してもよろしいですか。事務連絡の方お願いできればと思います。
【近藤企画官(事務局)】 木村先生、委員の皆様ありがとうございました。事務連絡です。会議資料と議事録の公開について申し上げます。本日の会議資料は、文部科学省のホームページに既に掲載させていただいております。議事録についても公開となりますので、委員の皆様に御確認いただいた後ホームページに掲載させていただきます。本日この会議の後に、事務局よりプレスの皆様向けにフォローアップのための記者ブリーフィングを行う予定です。次回の調査・安全小委員会の開催につきましては今後の原因究明状況に応じての開催となります。委員の皆様には候補日が見えてまいりましたら改めて日程の御連絡をいたします。事務連絡としては以上です。
【木村主査】 はい、ありがとうございました。それでは以上で、本日の会議を終了しようと思います。皆様どうもありがとうございました。
(了)
研究開発局宇宙開発利用課