宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会(第41回) 議事録

1.日時

令和4年10月18日(火曜日) 16時00分~17時00分

2.場所

新型コロナウィルス感染症の拡大防止の観点から、オンライン会議にて開催

3.議題

  1. イプシロンロケット6号機打上げ失敗原因調査状況について(一部非公開)

4.出席者

委員

主査 木村 真一
主査代理 神武 直彦
専門委員 柿沼 志津子
臨時委員 笠原 次郎
専門委員 熊崎 美枝子

文部科学省

研究開発局長 千原 由幸
大臣官房審議官(研究開発局担当) 原 克彦
研究開発局宇宙開発利用課長 上田 光幸
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 横井 奈央
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 宇宙輸送技術部門 事業推進部長 佐藤 寿晃
 宇宙輸送技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 井元 隆行

5.議事録

【木村主査】 それでは、定刻になりましたので、宇宙開発利用部会調査・安全小委員会の第41回会合を開催いたします。
 本日の会議は、イプシロンロケット6号機の打ち上げに関する議題の2回目ということになります。
 さて、本日も新型コロナウイルス感染防止のために、前回同様オンラインでの開催になっております。委員の皆様には御多用のところお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。
 それでは、事務局のほうから、本日の議題、会議に関する事務連絡のほうをお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 本日は調査・安全小委員会に御所属いただいている8名の委員のうち5名の委員に御出席いただいており、運営規則に定める定足数の要件を満たしております。よって、本日の会議は成立していることを報告いたします。
 次に、本日の資料ですが、議事次第に記載のとおりでございます。また、オンライン状況について、音声がつながらない等の問題等がございましたら、事務局へメール、電話等、御連絡ください。
 以上でございます。
 
【木村主査】 本日は、10月13日に実施した宇宙開発利用部会との合同会議の継続議論ということで、JAXAより原因究明の進捗状況について御報告いただき、議論を進めていきたいと思います。また、本日の案件の性格上、機微な情報を取り扱うことになりますので、本小委員会の上部部会である宇宙開発利用部会の運営規則第3条に則り、前半は公開、後半は非公開として開催させていただきますので、あらかじめ御了承ください。
 なお、公開、非公開合わせて1時間としておりますが、この案件はしっかりと調査、検討いただくことが必要という観点から、質問については、ある限り延長して実施したいと思いますので、御協力のほどお願いいたします。
 それでは、議題に入ります。
 資料の説明をJAXA宇宙輸送技術部門の事業推進部の佐藤部長、お願いいたします。
 
【佐藤部長(JAXA)】 御紹介いただきました事業推進部長の佐藤です。本日はよろしくお願いいたします。
 先日13日に緊急会合ということで、布野理事のほうから発生事象の概要をお話しさせていただきました。本日、その後の原因究明状況をお話させていただきたいと思います。
 最初に、ちょっと資料が前後してしまうんですけれども、お手元の資料の参考としてつけています23ページのほうで、今の我々の取組状況の体制を先に御紹介させていただきます。
 前回も左上にあります山川理事長をトップとした対策本部を立ち上げて進めていますというお話をさせていただきましたけれども、その下に、布野理事をチームリーダーに、代理として私と技術統括の藤田が入って原因究明チームを立ち上げてございます。
 この中で、下にあるチームメンバー各部署から有識者を集めて原因究明を進めているところで、その中のイプシロンプロジェクトチーム、本日、この後、説明しますイプシロンプロジェクトマネージャーの井元さんも、この中でやっていただいているというところでございます。
 JAXA総力を挙げて取り組むということで、現在、チームリーダー等を除きまして、総勢59名の体制で各種の調査に当たっているところでございます。また、事前にちょっと質問もいただきましたけれども、必要に応じて外部からの参加も検討していくということで、59名固定ということではなくて、進めたいと考えてございます。
 また、右に今回の機体の取りまとめをしておりますIHIエアロスペース社さん、こちらのほうでも体制を組まれているということで、そこと今連携をして進めております。また、真ん中辺に三菱重工さんと書いてございますけれども、水平展開という観点も含めて、三菱重工さんとも連携をしながら進めていくという形で取り組んでございます。
 先日、御説明した後にいただいたコメント等も、いろいろ本日盛り込んで資料を作ってございますので、全般御確認いただければと思います。
 それでは、説明のほうは井元プロマネのほうから実施させていただきます。よろしくお願いします。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 イプシロンロケットプロジェクトチームの井元でございます。
 資料の説明をいたします。右下のページに基づいて実施いたします。
 次のページをお願いいたします。
 まず、こちらが目次になっておりまして、ゼロ項として、原因究明と是正に対する全体像を示した上で、本日の報告内容を御説明いたします。
 続いて、1項といたしまして、6号機で発生した事象を1-4までで御説明いたします。2項としまして、原因究明の状況、3項として、今後の進め方という形になっております。
 次のページをお願いいたします。
 それでは、早速、全体像を御説明いたします。
 まず、打ち上げ失敗を受けまして、フライトデータの評価に着手しております。フライトデータに基づいて、事象の把握をしているところでありまして、このフライトデータに基づく原因究明をまず実施しております。このフライトデータのみに基づく、その事実に基づいて原因究明を実施したところまで本日御説明いたします。並行して、製造・検査データに基づく原因究明も実施しておりますが、こちらにつきましては、次回以降、御説明いたします。それらを合わせまして原因の特定をして、是正、水平展開を実施していくというものでございます。
 次のページをお願いいたします。
 6号機の概要、打ち上げ結果ということで、こちらにつきましては前回御説明したところでございますけども、12日に打ち上げまして、2/3段分離可否判断の時点で地球を周回する軌道に投入できないということで、指令破壊信号を送出して、打ち上げに失敗しております。
 シーケンスにつきましては、こちらに書いてありますとおり、後ほど秒時が出てきますけども、大ざっぱなところを頭に入れていただいて、後ほどの説明を聞いていただけるといいかと思います。
 続いて、6ページお願いします。
 こちらも前回資料の再掲になります。姿勢制御のところだけ御説明いたします。
 1段につきましては、TVC、略称は後ほど御説明いたします。TVCとSMSJで姿勢制御をしておりまして、2段につきましてはTVCとRCSで、2/3段分離の前にスピンモーターを作動させまして、3段はスピン安定ということで、姿勢安定を図っているという形になっております。
 次のページをお願いいたします。
 今御説明した姿勢制御の場所、あと名称を示しておりまして、下から、1段のTVCということで、ノズルの方向を変更させて、推力の方向を変更させて姿勢を制御するという機構、それと固体モーターサイドジェット、SMSJという形のものがあります。2段につきましては、2段のTVC、それとガスジェット装置、RCSというふうに称しております。あと2段にスピンモーターというものを搭載しております。
 次のページお願いいたします。
 こちらは、フライトイベントに基づいて姿勢制御の説明をしております。
 繰り返しになりますが、1段はTVCとSMSJ、2段についてはTVCとRCSで、2/3段分離の前にスピンモーターを作動させると。TVCにつきましては、ノズルを稼働させることでモーターを制御する推力の方向を変えるシステムでございます。1段と2段にそれぞれ登載しておりまして、燃焼時のピッチ軸とヨー軸の制御に使用いたします。
 SMSJ――Solid Motor Side Jet――固体モーターサイドジェットですけども、こちらにつきましては、1段モーター後部に取り付けられておりまして、1/2段分離までの3軸制御の機能を有します。ただし、1段燃焼中につきましては、ロール軸のみを制御を実施いたします。
 RCS――Reaction Control Systemにつきましては、2段モーターに搭載している1液式のガスジェット装置でありまして、1/2段分離からスピンモーター点火までの3軸制御を実施いたします。ただし、2段モーター燃焼中はロール制御のみを実施いたします。
 スピンモーターにつきましては、固体推進薬を用いまして、2/3段分離前にロール軸の周りにスピンを与えて、姿勢安定を図りまして、3段の燃焼をするという形になっております。
 次のページをお願いいたします。
 こちらに、発生事象の内容ということで、6号機の飛行状況全般を記載しております。後ほどデータを用いて説明いたしますけども、まずこちらで、文字に基づいて御説明いたします。
 まず、飛行状況につきましては、打ち上げた、リフトオフした後、1段モーターの燃焼、フェアリング分離、1/2段分離、2段モーター燃焼、こちらは全て正常でありまして、飛行経路はノミナル経路に対して正常範囲にありました。
 2/3段分離可否判断の時点で目標姿勢からずれまして、地球を周回する軌道に投入できないと判断いたしまして、リフトオフから388秒後に飛行中断に至っております。
 この2/3段分離可否判断というものは、3段の燃焼中はスピンによって機体姿勢の安定を確保しております。そのために、2/3段分離前に3段が軌道投入可能かどうかの判定をいたしまして、分離の可否を判定して、否であれば打ち上げを止めると。可であれば、そのまま飛行を継続するというシステムになっております。
 事態発生後、速やかに関係省庁等へ飛行中断の連絡を行いまして、指令破壊による破片の落下予測域を航空局・海上保安庁さんに通報いたしまして、安全確保に努めております。また、航空局及び海上保安庁では、電子的な警報手段によりまして、国際的な周知を図っているということで、同警報が発信されていたことを確認しております。
 なお、指令破壊後の破片につきましては、予め計画されました第2段落下予想区域内に落下したと解析しております。
 それが飛行状況になりまして、機体の状況をその下に書いております。
 まず、1段モーター燃焼中のTVC制御及びSMSJによる姿勢制御、こちらは正常に行われました。続いて、2/3段モーター燃焼中までのTVC制御、こちらも正常にいっているということを確認しております。その後、推力がなくなった後、TVCの制御が効かなくなるんですけども、RCSのみによる制御に移行しまして、その際に3軸全ての姿勢角誤差がRCSの制御終了まで拡大していたというデータを確認しております。これが2段燃焼終了後の姿勢異常という形になっております。
 さらに、RCSのデータを確認したところ、2系統ありますけども、そのうちの1系統、+Y側というところ、もう1系統、-Y側というのもあるんですけども、+Y側の方の圧力が既定の圧力まで、正しい圧力まで上昇していないということを確認しておりまして、2系統のうちの1系統がRCSとして機能しなかったというところまで確認しております。
 次のページをお願いいたします。
 続いて、飛行データを基に状況を御説明いたします。
 まず、左側ですけども、ロケット現在地のデータを示しております。こちらにつきましては、あらかじめ予想された経路上を飛行しているという形になっております。右の図につきましては、各地点でロケットの飛行を中断した場合のロケットの落下予測点を示しておりまして、こちらも、予め計算したばらつきの範囲内であり、ノミナルのほうに近い形で飛行していることを確認しております。
 次のページをお願いします。
 こちら、左側が高度、横軸がダウンレンジ、縦軸が測地高度でございまして、こちらもノミナルより若干低めではございますけども、バラつきの十分範囲内であるということを確認しております。右の図は、慣性速度を示しておりまして、こちらもノミナル、ほぼノミナルのデータになっております。
 次のページをお願いします。
 飛行中断は2段燃焼終了後、推力がなくなった後の2/3段分離直前でありまして、指令破壊後の破片につきましては、あらかじめ計画された第2段落下予想区域内に落下したと解析しております。四角で囲まれた上の部分が、1段の落下予想区域、下のフィリピンの東方沖にありますのが、2段の落下域になりますけども、こちらのほうに機体が落下したと解析しております。
 次のページをお願いします。こちらから、姿勢制御に関する説明になります。
 左の真ん中の図に、2段と3段とAロードを搭載した図を示しておりまして、その後方に2段のTVCとRCSという姿勢制御装置を搭載して、基軸方向に対して、ロール軸、ピッチ、ヨー軸を示しております。それに対しまして、右の図、こちらはノズルの後方から見た図になりますけども、RCSにつきましては二つの系統があります。
 まず、右側、RCSの+側、こちらが機能しなかったというふうに推定しているものでございまして、-Y側、こちらは機能したところになります。それぞれ4つのスラスタ、推薬弁を搭載しておりまして、合計8基のスラスタを装着しております。
 左下の図でございますけども、1/2段分離以降の、どこが何を制御するかということで、2段の燃焼の前までにつきましては推力がありませんので、TVCでは制御ができませんので、RCSの3軸制御になります。2段燃焼を開始してから、ピッチとヨー軸につきましては、2段のTVCで制御いたします。ロールに関しましては、RCSでロール制御すると。2段の燃焼を終了しまして、推力がなくなった時点で、RCSの3軸制御に移行して、スピンモーター点火直前まで制御いたします。
 次のページをお願いします。
 こちらは、左から横軸が時間ですね、リフトオフがゼロ秒になっておりまして、388秒で飛行中断に至るんですけども、100秒過ぎ辺りまでが1段の燃焼になります。見ていただいて分かるとおり、縦軸が姿勢角誤差になっておりまして、一番上がヨーの姿勢角誤差、ヨー軸ですね。真ん中がピッチ軸の姿勢角誤差、一番下がロールの姿勢角誤差ということで、これの誤差がゼロに収束するというところが正常になります。
 誤差になりますので、目標姿勢と実際の姿勢角の差分という形で、目標姿勢が変わると誤差が増える。あるいは、目標姿勢が同じで姿勢角が振れて、意に介さず振れてしまうと誤差が増えるという、その相対的なものを示しておりまして、見ていただいて分かるとおり、1段の燃焼終了までは、まずは誤差というのは適切に収束しております。5号機との比較を示しておりまして、5号機の正常のデータも併せて示しております。
 ピッチ軸のところは、1段の燃焼終了後に、2段燃焼前に、1/2段分離の前に、目標姿勢、ターゲット姿勢を変えますので誤差が増大しておりますが、その後というところで、適切に姿勢が制御されていることが分かります。その後、2段の制御に移りますけども、1/2段分離した後、2段の制御に移りますが、300秒よりちょっと前の時点で2段の燃焼が終了いたします。そこまでは姿勢制御は正常に行われているということが、この図から読み取れます。
 その後、RCS3軸制御の段階に移った後に、ピッチとロールの誤差が増大し始めるという事象が確認されます。その後、2/3段分離の前に姿勢ターゲットを変更します。それは、3段燃焼の方向を適切に目標を定めて、そちらのほうに制御するという形になるんですけども、5号機の赤の線につきましては、適切に誤差が収束していることが分かるんですけども、6号機の方につきましては、誤差が増大しているというデータが読み取れると思います。
 こういう状況で、この誤差がゼロになるんですけども、スピンモーターが点火するので制御をやめているところなんですが、スピンモーターの点火まで誤差が拡大しているというデータになります。ここが異常であると判断しております。
 次のページをお願いします。
 こちらがRCSの制御終了、それとスピンモーター点火時点、リフトオフ後370秒時点ですね、目標値、目標姿勢とのずれ量が約21度であるということが解析で分かっております。その後、スピンモーターは計画どおり正常に燃焼しまして、下の方のスピンレートは適切な値が出ております。
 ここで言う21度という目標姿勢とのずれが、スピンの後も計測されております。この21度に関しましては、右の図に書いておりますけども、簡単に言うと、スピン安定後の、その速度ベクトルがあるんですけども、その速度ベクトルを目標姿勢に対して、目標姿勢を変えます。少し変えるんですけども、そこで誤差が出て、その誤差分が21度になっておりまして、姿勢が制御できてないという形になります。
 この21度なんですけども、その解析の3σ誤差につきましては、0.91度以内ということで、1度よりも低い値でというのが正常な範囲内ですけども、それを大きく超えて誤差が出ているという形になっております。ちなみに、これまでの試験機から5号機までの実績につきましては、この値は0.1度から0.5度という実績がございまして、今回の値が、姿勢が異常になっているという状況になっています。この結果を受けて、3段燃焼終了後に軌道に投入できないという判断に至っております。
 次のページをお願いします。
 続きまして、2段のRCSの系統概略を示しております。
 まず、2系統ありまして、左側が+Y軸、右側が-Y軸の図を示しております。その真ん中にパイロ弁というのがあるんですけども、射場では安全確保をするために、推進薬をパイロ弁――遮断弁になるんですけども、これで遮断しておりまして、飛行中、フライト飛行、リフトオフから151.5秒後に誘導制御計算機――OBCと称しておりますけども、そちらからの信号によりましてパイロ弁を開にすると。で、パイロ弁で遮断しておりました推進薬をスラスタと呼ばれる推薬弁のところまで満たして、このスラスタを開閉することによって姿勢制御するという機能を有しているものでございます。この誘導制御計算機からの信号によって推薬弁を開閉させて、推進薬を触媒反応させて、燃焼により推力を発生させるというものでございます。
 タンクの上に圧力センサーがそれぞれ一つずつと、パイロ弁の下流側に圧力センサーPと書いてあるところがありますけども、圧力センサーが一つずつ搭載しているということになります。
 次のページをお願いします。
 こちらは圧力データを示しております。リフトオフから151.5秒後と、152.5秒後にパイロ弁の開信号を出します。本来であれば、このパイロ弁開信号のどちらか、これ冗長を有しているものですけども、どちらかの信号によってパイロ弁が開作動し、タンク側からパイロ弁下流配管に推進薬が流入することによって下流配管圧力がタンク圧力まで上昇する、こちらが正しい動作になります。
 6号機では二つRCSのうち、片側の-Y軸側、左側ですね、-Y軸側は、この正しい圧力強度を示しておりますけども、もう片方の+Y軸側、こちらにつきましては、Power Sequence Distribution Box、2段に搭載する電気駆動装置からのパイロ弁点火信号送出部分ですね、このパイロ弁の下流配管圧力がタンク圧力まで上昇しないと。つまり、推薬弁まで、スラスタまで推進薬が供給されていないということが分かります。
 次のページをお願いします。
 こういったデータを基に、FTA、Fault Tree Analysis、故障の木解析を実施いたしました。飛行中に取得したフライトデータのみに基づいて、事実に基づいて要因の絞り込みを行いました。まず、2段燃焼終了後の姿勢異常ということで、一次要因として四つ挙げております。
 2段のTVC異常、こちらにつきましては、先ほどのデータでお示ししたとおり、2段のTVC制御期間中、正常に制御できているということが示されております。
 2段のRCS異常、こちらにつきましては、2段燃焼終了後のRCSのみのフェーズで、姿勢制御フェーズで姿勢誤差が増大しているということ。あと、パイロ弁の点火信号送出後も、+Y軸側の下流配管圧力がタンク圧力まで上昇していないということが確認されておりますので、これが要因と考えております。
 スピンモーター異常に関しましては、スピンモーター点火前にもう既に異常が発生しているということと、スピンモーターの燃焼パターン、あと、ロールレート、こういったものが予測と一致しているということから、要因は排除されます。
 あと、計測異常も考えましたけれども、こちらにつきましては、制御に必要な慣性センサー、IMUですけども、こちらの出力が飛行中断まで他のセンサー、これは2段になりますけども、そのデータと一致していることを確認しております。ということで、こちらも要因がつぶれるということで、2段のRCSの片側に異常が発生しているというふうに特定しております。
 次のページをお願いします。
 +Y軸モジュール、RCSの+Y側、こちらの下流配管圧力がPSDBからのパイロ弁点火信号送出後もタンク圧力まで上昇していないという事象に関しまして、FTAを展開いたしまして、こちらもフライトデータに基づきましてFTAを展開してございます。
 まず、計測異常につきましては、下流配管の圧力、こちらは上昇しておりませんが、その後、推薬弁を開にした後、真空圧まで下がっていることを確認しておりまして、計測は正常であったと。つまり、計測異常は要因ではないと判断しております。
 それから、このパイロ弁の信号系統の異常ということで、それも二つに分けておりまして、誘導制御計算機、OBCからPower Sequence Distribution Boxのスイッチまでの信号系統につきましては、フライトデータから、正しく作動していることを確認しておりますので、こちらも要因から排除できると考えております。
 それから、PSDBスイッチよりも下流側ですね、その下流側からパイロ弁までの信号系統の異常につきましては、フライトデータからは判断できないという形になります。これは後ほど、次のページで御説明いたします。
 続いて、パイロ弁の開動作不良ということで、こちらにつきましては、このパイロ弁の性質上、フライトデータとしてモニターしていないということで、こちらについては現時点で不明という状況でございます。
 推進薬供給配管の閉塞ということで、こちらについても閉塞のデータを計測しておりませんので、それについても現時点で否定できないということで、こちらの三角の三つの要因に現時点で絞り込んでございます。
 次のページをお願いします。
 パイロ弁の点火信号系統の御説明になりますけども、右にRCSの系統、その左に信号系統を示しておりまして、まず、誘導制御計算機、OBCからPSDB2A/2Bのスイッチ、こちらにつきましては、フライトデータを左下の図に示しておりますけども、こちらでスイッチが作動していることを確認しております。
 それと、PSDB2Aから-Y軸側に入る、パイロ弁に入る側、こちらは作動してるということを確認しております。これ、黒で示してるところですね。
 それ以外のところにつきましては、現時点フライトデータとしては存在しておりませんので、この赤の系統については、フライトデータからは作動が確認できてない範囲になります。
 それと、+Y側の圧力上昇がないということで、それまでタンク下流から、その圧力系統で、黄色で示してるラインにつきまして、ここのどこかで完全に閉塞していると。少し流れてるではなくて、全く閉塞してるという状態であればこの現象が発生しますが、このどこかで閉塞しているとそういう現象が発生しますので、そちらについてもデータがないということで、可能性としては否定できないという形になっております。
 次のページをお願いします。
 続いて、パイロ弁の概要でして、パイロ弁の作動イメージ図、これはイメージ図ですので、動作の説明、メカニズムを説明するための図になります。
 この緑のところが推進薬の流れる配管になっておりまして、仕切り弁があります。この仕切り弁で、上流と下流を完全に遮断するというものになっております。イニシエータと書いてるものが二つありまして、これは冗長系になっております。どちらかが作動すると、このブースターというところの下方、これも火薬になりますけども、イニシエータも火薬ですが、イニシエータのどちらかが作動するとこのブースターが作動して、このラムというものを押し下げると。このラムを押し下げて、仕切り板を開にするという仕組みでありまして、そういうバルブの御説明になります。
 次をお願いします。
 これまで分かったことと今後の進め方について、まとめております。
 まず、フライトデータのみを基に2段燃焼終了後の姿勢異常に対する要因分析を行いました。その結果として、RCS、その+Y側、こちらのRCSが機能しなかったということが判明しております。こちらが姿勢異常の原因箇所として特定しました。
 こちらが機能しなかった要因として、+Y側のRCSの下流配管圧力がタンク圧力まで上昇していなかったと。これまでの原因究明の結果、この上昇のきっかけとなるパイロ弁点火信号送出後に、以下の三つの要因の可能性が否定できない状況ということで、PSDBスイッチの下流からパイロ弁までの系統異常、それとパイロ弁の開動作不良、推進薬供給配管の閉塞。ここまで特定しております。
 引き続き、フライトデータの詳細な分析を実施いたします。それと、最初に御説明いたしました製造・検査データの確認を進めまして、さらなる原因究明、是正対策/水平展開の検討を進めていく所存でございます。
 参考といたしまして、H3の1段CFT、こちらは、今回の現象とは直接関係しておりませんので、計画どおり11月に実施予定ということになっております。
 それと、参考ではございますけども、今回、6号機の特徴といたしまして、イプシロンSロケット適用に向けて開発中の冗長複合航法システム、RINS、こちらの飛行実証につきましては、当初よりリフトオフから2段に搭載しておりまして、リフトオフから2段スピンアップ前までのフライトデータを用いて評価する計画でございましたけども、評価に必要なフライトデータを良好に取得しております。今後、詳細データ評価を実施する予定でございます。
 説明は以上になります。
 
【木村主査】 ありがとうございます。大変丁寧に説明していただきまして、ありがとうございました。この短時間に、解析を進められて、情報がかなり増えたことに敬意を表したいと思います。
 こちらの御説明について、御意見、御質問等をお受けしたいと思います。御質問等ございます方は、挙手にてお願いできますでしょうか。
 それでは、笠原委員、お願いいたします。
 
【笠原委員】 笠原です。本当に丁寧に御説明いただきまして、誠にありがとうございます。
 質問はですね、RCSは、2段の燃焼終了以前から既に使用されていたという認識を持たせていただきました。にもかかわらず、つまり、既に2段燃焼前に片側の+Y側の機能が不全であれば、その辺りから既に姿勢の安定に何らかの影響があったのではないかなと感じたんですが、この姿勢の、この表からは、その時まではそのような姿勢の誤差が現れていないと理解いたしましたが、この点に関しましてはどのような御認識をお持ちなのか、まずお聞きしたいと思います。
 以上でございます。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 14ページ御覧いただきまして、おっしゃるとおり、1/2段分離以降、2段の燃焼まで、まず、RCSで3軸姿勢をいたします。姿勢制御いたします。そちらについては、基本的に1/2段分離の外乱を取り除くという目的で制御しておりまして、結果としまして1/2段分離外乱というものがほとんどなかったということで、姿勢制御としては大きくは支障なかったということで、異常は発生しておりません。
 その後、2段の燃焼を開始しまして、RCSはロールの制御をいたしますけども、2段のTVCの初期値を制御というもので、基本的に大きなところは制御をいたします。あと、ロールだけにつきましては、こちらは二つ冗長を持っておりまして、結果としては、その冗長が機能してない。どちらかがロールが、頭の一つのスラスタが作動すれば制御が効くということで、姿勢は安定しているということを評価しております。

【笠原委員】  ありがとうございます。整合している、それ以前の燃焼とも整合しているということがよく分かりました。
 あと1点質問させてください。
 原因の三つのうち、今、考えられている原因の三つのうち、一つ目と二つ目は、私の理解からは、上位系統というか、2系統で行われているものであって、三つ目の閉塞状態というのは、まあ、一つの原因、要するに冗長系を持たないような系になると、そのように御説明いただいたように理解していますが、それは正しいでしょうか。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 まず、一つ目のパイロ弁までの系統ですね、こちらは冗長系があります。正しいです。
 真ん中のパイロ弁につきましては、イニシエータまでは冗長がございますけども、その下のブースターというところからはシングルになっておりまして、全てが冗長というわけではございません。配管はシングルです。
 
【笠原委員】 非常によく理解できました。御説明、本当にどうもありがとうございます。
 以上でございます。
 
【木村主査】 ありがとうございます。私も最初の質問は非常に気になっておりましたので、よい質問だと。ありがとうございます。
 他に御質問いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 私から1点だけ御質問させてください。
 今のところに関連してなんですけれども、配管の閉塞ということも考えられると伺いました。少し踏み込んで考えると、閉塞というのは具体的にはどのような可能性があり得るんでしょうか。それはどのような事象として想定し得るものでしょうか。
 
【井元プロジェクトマネージャー(JAXA)】 まず、一番考えられるのは、氷結です。ただ、そこは温度に基づいて判断できると考えております。
 もう一つは、コンタミみたいなものがあるかなと。全ての配管、どこかで引っかかるとかですね、全く流れないとか。かなり圧力高いんですけど、全く流れない状況になるとか。あとは、パイロ弁の中のところで何か、それもコンタミになるかもしれませんが、そういったようなところで流路を閉塞してしまうとか、そういうのは考えられなくはないと思っています。
 
【木村主査】 ありがとうございました。よく分かりました。
 ほか御質問いかがでしょうか。よろしいですかね。
 
(「なし」の声あり)
 
【木村主査】 はい。とても丁寧に説明をいただきまして、時間も大分押しておりますので、ここまでで公開の部分の審議のほう、終了したいかと思います。よろしいでしょうか。
 
(「異議なし」の声あり)
 
【木村主査】 はい。ありがとうございました。
 そうしましたら、以降は非公開となりますので、ここで一旦、事務局から事務連絡のほうお願いいたします。
 
【竹上企画官(事務局)】 事務局でございます。
 会議資料と議事録の公開について申し上げます。
 本日の会議資料は既に文科省ホームページに掲載させていただいております。また、議事録につきましても、ここまでの内容は公開となりますので、委員の皆様に御確認いただいた後、文科省ホームページに掲載させていただきます。なお、次回の小委員会につきましては、来週の開催を目処に、今後調整の上お知らせいたします。
 事務連絡としては以上でございます。
 
【木村主査】 ありがとうございます。
 そうしましたら、一般の方はここまでとなりますので、ここまでの傍聴ありがとうございました。

(プレス、傍聴者退席)


―― 了 ――

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研究開発局宇宙開発利用課