宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会(第30回) 議事録

1.日時

平成30年3月15日(木曜日) 15時00分~17時10分

2.場所

文部科学省 3階2特別会議室

3.議題

  1. H-ⅡAロケット37号機/38号機の打上げに係る安全確保業務の結果について
  2. イプシロンロケット3号機の打上げに係る安全確保業務の結果について
  3. SS-520 5号機の打上げに係る安全確保業務の結果について
  4. 国際宇宙ステーション(ISS)に提供するISS構成要素及び搭載物の安全確認について
  5. H-ⅡAロケット39号機の打上げに係る安全対策について
  6. その他

4.出席者

委員

主査  山川 宏
専門委員  飯田 光明
専門委員  門脇 直人
専門委員  中西 美和
専門委員  野口 和彦
専門委員  古橋 智久
専門委員  馬嶋 秀行
臨時委員  松尾 亜紀子
専門委員  渡邉 篤太郎

文部科学省

研究開発局宇宙開発利用課宇宙利用推進室長  庄崎 未果
研究開発局宇宙開発利用課企画官  山之内 裕哉
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐  梅津 義博

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 第一宇宙技術部門
  鹿児島宇宙センター所長 藤田 猛
  宇宙輸送安全計画ユニット長 川畑 広文
  鹿児島宇宙センター射場安全グループ長 船川 隆
 安全・信頼性推進部
  システム安全推進ユニット長 鳥井 義弘
 有人宇宙技術部門
  有人システム安全・ミッション保証室 室長 白井 達也
               主任研究開発員 高橋 伸宏
               主任研究開発員 織田 裕久
  HTV技術センター センター長 植松 洋彦
 宇宙科学研究所
  宇宙飛翔工学研究系 准教授准教授 羽生 宏人
  S&MA総括 小林 亮二

5.議事録

【山川主査】  それでは,定刻になりましたので,ただいまから調査・安全小委員会の第30回の会合を開催したいと思います。
 御多忙なところ,参集いただきましてありがとうございます。
 まずは事務局から,本日の会議に関します事務的な確認をお願いいたします。

【山之内企画官】  事務局でございます。本日は,当委員会に御所属していただいている10名の委員のうち,9名の先生方に御出席いただいております。運営規則に定める定足数の要件を満足している状況でございます。
 次に,本日予定しております議題(5) H-ⅡAロケット39号機の打上げについてでございますが,打上げに係る機微情報が含まれており,衛星打上げ会社より情報保全要求があることから,部会運営規則の定めにより,非公開とすることが適当であると認める案件となりますので,審議及び資料は非公開とさせていただきます。委員の先生方並びにプレスを含む一般傍聴者の方には,御理解と御協力と頂きますようお願い申し上げます。
 また,議題(5)のH-ⅡAロケット39号機の打上げに係る安全対策についてでございますが,基本的に同種の打上げ機と同様に,安全対策計画が立てられていることを事務局にて確認しております。これから行いますJAXAの説明では,JAXA内での審査で議論されたことも説明しますので,そのことも参考にして,委員の皆様の御視点からの評価検討と頂きたく,よろしくお願い申し上げます。
 最後に,本日の資料についてでございます。本日の資料はお手元の議事次第の4ポツ資料のとおりでございます。資料の過不足等がございしたら,適宜,事務局までお申しつけください。
 以上でございます。

【山川主査】  ありがとうございます。
 それでは,早速ですけれども,1番目の議題に入りたいと思います。

(1)H-ⅡAロケット37号機/38号機の打上げに係る安全確保業務の結果について

【山川主査】 議題は,H-ⅡAロケット37号機及び38号機の打上げに係る安全確保業務の結果についてでございます。
 H-ⅡAロケット37号機は,昨年12月23日に「しきさい」及び「つばめ」の打上げに成功しております。また38号機は本年2月27日に,情報収集衛星光学6号機の打上げに成功しております。
本日はその実施結果についてJAXAから説明をお願いいたします。

【JAXA(藤田)】  より資料30-1に基づき説明を行った。

【山川主査】  ありがとうございます。ただいまの御説明につきまして,御意見,あるいは御質問があればよろしくお願いいたします。
 特段ないようですので,次に進みたいと思います。

(2)イプシロンロケット3号機の打上げに係る安全確保業務の結果について

【山川主査】 次の議題は,イプシロンロケット3号機の打上げに係る安全確保業務の結果についてでございます。イプシロンロケット3号機は,1月18日に「ASNARO-2号機」の打上げに成功しております。その実施計画について,JAXAから説明をお願いいたします。

【JAXA(藤田)】  より資料30-2に基づき説明を行った。

【山川主査】  ありがとうございます。
 ただいまの説明に関しまして,御意見,御質問をお願いいたします。
 特にないようですので,次に移りたいと思います。

(3)SS-520 5号機の打上げに係る安全確保業務の結果について

【山川主査】 三つ目の議題ですけれども,SS-520 5号機の打上げに係る安全確保業務の結果についてでございます。
 SS-520号機は,2月3日に,「TRICOM-1R」の打上げに成功しております。その実施結果につきまして,JAXAから説明をお願いいたします。

【JAXA(小林)】  より資料30-3に基づき説明を行った。
 
【山川主査】  ありがとうございます。
 ただいまの御説明に関しまして,御意見,御質問等ございましたらよろしくお願いします。
 松尾委員,よろしくお願いします。

【松尾委員】  今回のこの報告内容で問題ないとは思いますが,鹿児島県の内之浦の射場では,一つ前のイプシロンについても打上げを行っております。日程的には,1月18日と2月3日となっておりますので,余り離れていないということがあります。二つの異なるロケットを打ち上げることに対して,調整,工夫など,何か特記すべきことがありましたら御説明をよろしくお願いします。

【JAXA(小林)】  まず安全上の観点でございますが,それぞれ作業時に発生する警戒区域,例えば火工品の扱いといった,それぞれのロケットについての安全に対する考え方,警戒区域などが必要なときには干渉しないように,作業上のスケジュールに合わせて事前の調整を行っています。また,人員上や設備上の重なりもございますので,そちらについても事前に調整するプロセスを決めており,情報共有しながら行いました。

【松尾委員】  今回の打上げは予定されていた日程からすると遅れがありましたが,打上げの間隔などについて決まりはあるのでしょうか。

【JAXA(小林)】  まず,逆行手順というのが決められておりまして,12月の状態から逆行する手順に従って保管をしております。そういった逆行手順にのっとり行いました。

【山川主査】  よろしいでしょうか。
 馬嶋委員,お願いします。

【馬嶋委員】  H-ⅡAに関しましては,すごく念を押しておられますけれども,ロケット打上げの安全性について,イプシロンやSS-520では,H-ⅡAの安全確保に関する情報交換とかはなさっていますか。

【JAXA(小林)】  まずこのロケット特有のところというのもございます。例えば飛行中断装置をこのロケットは積んでおりません。そういうところについても基幹ロケットの安全基準を適用し対応するようにしていいます。先ほど申しましたように,人口稠密地域を飛ばないとか,ロケットの2段の点火前の安全確認を行うなどはイプシロンの考え方を適用しております。

【JAXA(藤田)】  安全だけではなくて,ロケット機体の不適合に対する対応も同様です。不適合が発生した場合には,原因究明と対策についても水平展開を行い,JAXAの中で情報共有をしています。打上げの直前のいろいろな準備段階においてもゲートがございまして,その審査会も,相互にかかわりながら進めてきております。

【馬嶋委員】  重複の質問になりますが,SS-520に関しては基幹ロケットの基準をこちらに適用して,安全性が向上したということはありますか。

【JAXA(藤田)】  ベースとなる飛行安全上の解析などは同じようなものです。私が今これを見た限りでは,SS-520は,安全確保上ということで何か特別なことがあったという報告は聞いておりません。

【馬嶋委員】  基幹ロケットの技術をSS-520 5号機に適用して安全性を増したということはありますか。

【JAXA(羽生)】  設計の段階でいろいろ修正も加えてきているのですけれども,イプシロンにかかわることも含めて,技術の確認の場でいろいろ出ていたりしてきていますので,直接的にこれだということではありませんが,そういった設計の考え方に対しての意見交換はいろいろしております。こちらのSS-520で得たもの,あるいはイプシロンで得たものは,安全確保も含めてJAXA内で共有しながら開発を行っているところです。

【馬嶋委員】  やっぱり母体が違って,それで発展していますので,やはり日本国として考えると,情報共有は,非常に大切なことです。是非とも相互に技術を交換して,開発を続けていただきたいと思います。

【JAXA(藤田)】  はい。今後もそのように対応してまいります。

【JAXA(小林)】  今回,このロケットは基幹ロケットに比べて非常に小型ロケットとなります。その小型ロケットにも適用できるような,例えば,艤装設計など,今回4号機の失敗原因になりますが,そういったところについては艤装設計のガイドラインを作成しました。5号機の成果を受けて共有していきたいと考えております。

【山川主査】  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 ないようですので,次に移りたいと思います。ありがとうございました。

(4)国際宇宙ステーション(ISS)に提供するISS構成要素及び搭載物の安全確認について

【山川主査】 次は,4番目の議題ですが,議題は国際宇宙ステーション(ISS)に提供するISS構成要素及び搭載物の安全確認についてでございます。
 まずは,議題の趣旨,審査対象の設定について,文部科学省から説明をお願いいたします。

【事務局(庄崎室長)】  より資料30-4-1に基づき説明を行った。

【山川主査】  ありがとうございます。
 ただいまの資料30-4-1の説明につきまして,まずは御意見,御質問があればお願いいたします。
 よろしいでしょうか。
 それでは,今から具体的に審議を進めてまいりますけれども,その中でもし審議の趣旨等について疑問点がございましたら,その都度,御質問をしていただければと思います。
 それでは早速ですけれども,審議に入りたいと思います。
 先ほど資料30-4-1に書かれておりました小型回収カプセルについて,JAXAがどのように安全性を判断したかについて審議をしたいと思いますので,JAXAから御説明をお願いします。 

【JAXA(白井)】  より資料30-4-2に基づき説明を行った。

【山川主査】  ありがとうございました。
 それではただいまの御説明に関しまして,御意見,御質問があれば,よろしくお願いします。

【野口委員】  御説明ありがとうございました。私の質問は,4ページの安全審査の進め方と書いてあるところです。フェーズ3 の5のところに,残存リスクの評価ということで,ハザードの制御方法の検証結果を評価して,ハザードの残存リスクが十分に低いレベルに制御されているということを確認するという手順があります。このフェーズ3 の手順について,例えば17ページにその結果が書いてありますけれども,標準ハザードの1番で結構ですが,これに関して残存リスクというのが何であり,十分に低いレベルというのはどういうことであるか,どのように確認されたかということを説明いただけますか。

【JAXA(白井)】  1番は,火災が起こらないということのステージでございます。この表にあります通り,材料的には燃えない材料を使うということでございます。
しかし,設計によっては使用できないこともありますし,途中で設計が変わったりすると,リスクが上がったりもしますので,それはその都度確認をしているということになります。

【野口委員】  質問の内容としては,基準があり,その基準を満足しているということを確認したということは全部の資料に書いてありますけど,この残存リスクの検証結果を評価して,残存リスクが十分に低いレベルに制御されているということを確認するということがどういうことなのかというのがよくわかりませんでしたので質問しています。行っていることを見ると,基準どおりやっていることを確認するということは終わっていると思いますが,このフェーズ3 として何をやっていらっしゃるのかよくわかりませんでした。

【JAXA(白井)】  フェーズ3 につきましては,最終的に制御方法が,検証結果の確認となります。それを行って,最終的に,その残存リスクというか,フェーズ3 で終われば安全審査としてはクローズとなります。その後何か不適合が発生したりとか,設計上の変更が発生したりする場合には,もう1回審査をやり直すということになります。完全にそのフェーズ3 で終わっているということではなくて,それ以降での発生する不適合があれば,そこでもう1回調査し直すということです。

【野口委員】  それでは質問が二つあります。一つはいろいろなリスクという言葉を使ってありますが,実態的にはリスク評価というより,判断基準に書いてある通りのチェックを行っており,リスク評価になっていないのではないかという視点です。だから悪いと言っているのではありません。でもそうであれば,ハザード基準どおりに行っているかどうかを審査しましたと書いていただきたい。リスクの評価をしましたというと,どんなリスクを評価したのか。しかも,わざわざ,残存リスクの評価としてフェーズ3 の審査会もあるわけですよね。そうするとフェーズ1 ,2 を行って,フェーズ3 のこの審査って,何の審査をやっているかが実はよくわかりませんでした。気にしているのは,いろいろステップがあって,それぞれ意味があるように書いてあるのだけど,実際的にはフェーズ1 ,2 ,3 って書いているけれども,2 でおしまいになっておりフェーズ3 って非常に形骸化しているんじゃないかとか,そういう心配をしているということです。

【JAXA(織田)】  よろしいですか。フェーズ3 で,その5番の残存リスク評価だけを行っているわけではなく,その前のハザード制御と検証,こちらをフェーズ3 で行います。そちらがメーンでして,この4と5を合わせてフェーズ3 です。

【野口委員】  4と5を合わせてフェーズ3 ということですね。わかりました。

【JAXA(白井)】  フェーズ3 はハザード制御方法の検証を行った後,その結果を確認するというのがフェーズ3 です。

【野口委員】 そうすると少なくとも残存リスクの評価ということとはそぐわないと思います。やっていることとして,一般的な安全評価の指標の形式に合わせてやった方がよく,指標を深化させるときに,そのやっている内容がどういうことだということをちゃんと評価していくことが大事です。

【JAXA(高橋)】  残存リスクのことですが,可燃性の材料につきましては,フェーズ1 のときには実際に使う材料というのは明らかでないので,可燃性の材料があるかもしれない。つまり,火災のリスクが高い状態になります。フェーズ2 のところで使う材料を一通りリストアップしまして,可燃性の材料がないことを確認することを検証方法として設定します。フェーズ3 のところでは,実際にでき上がったハードウエアがありますので,そのでき上がったハードウエアを全て基準に従った材料を使っていることを確認することをします。そして最後,フェーズ3 のところで,使っている材料を確認することで,リスクが下がるという評価をします。

【野口委員】  やはり基準を守っているかどうかのチェックであって,わざわざここでリスク評価という言葉を使うのであれば,その材料自体が本当に燃えないか,又は,どういう条件であったら燃えないとかのいろいろな検証があり,普通,リスクゼロということを言うのは非常に大変なことになります。今のやり方でいけないと言っているのではなくて,やっぱり審査内容,検証内容にふさわしい言葉を使うことが,こういう審査を形骸化させないためには重要なことだと思います。

【JAXA(白井)】  はい。わかりました。リスクという言葉を出してしまったので,内容的には我々が申し上げたとおり,フェーズ3 というのは制御方法が,効果的な方法であるかを確認することになります。それから設計変更が発生したときには,もう1回フィードバックして,再評価するということを含めてリスク評価と言っております。

【山川主査】  ありがとうございます。
 ほかに。お願いします。

【渡邊委員】  宇宙ステーション関係は日本が実績を積んだある段階から,日本で審査しています。NASAが支援というふうになっているのですが,この小型回収カプセルについて,NASAは具体的にはどういう支援をしたのでしょうか。単に審査会に参加するだけということでしょうか。

【JAXA(白井)】  おっしゃるとおり,小さな開発品につきましては,もうJAXA側で審査ができるということにはなってございますが,今回の新しいカプセルは非常に大きな開発品になるものですから,ここはNASAに,我々のわからないところの支援を受けております。

【渡邊委員】  この件に関しては単にNASAが支援したというだけでなく,NASA自身も審査したのですか。

【JAXA(白井)】  そうです。

【渡邊委員】  わかりました。それからもう1点,細かいことですが,ガラスの破損というハザードが出てきていますが,このガラスはどこに使われているのでしょうか。

【JAXA(白井)】  搭載カメラの中に小さなガラスが入っています。

【渡邊委員】  カメラですか。

【JAXA(白井)】   はい。 
    
【渡邊委員】   わかりました。

【山川主査】  ほかにいかがでしょうか。
 中西委員,どうぞ。

【中西委員】  御説明ありがとうございます。有人システムということで,人間が介在するエラーがあると思うのですけれども。先ほど御紹介いただいた付表-1の(2)のハザードの中にヒューマンエラー等が含まれていますが,今御説明された中ですと,例えば27ページの不適切な使用という箇所は,ヒューマンエラー,人間の不確実な行為がかかわっていると思いますが,これに関する検討というのは,いわゆるヒューマンエラーの発生確率を低減できるということを確認していると理解していいのでしょうか。ここの文言だけを見ますと,どちらかというと手順を整えたというような,もしくはそのやり方を改善したというような,そのように読めるのですけが,その点はいかがでしょうか。

【JAXA(白井)】  手順につきましては手順書をしっかり作って,その手順を理解した者によって訓練する。それを含めてしっかり運用,制限,評価ということを行っていますので,単に手順をつくって終わりということではなくて,そういったフォローアップをするということです。

【中西委員】  ここは詳しくは書いていないですけれども,そういうことを開発側ではされていると理解してよろしいですか。

【JAXA(白井)】  確実に行えるように,そういう手順書を準備するようにしています。

【中西委員】  わかりました。ありがとうございます。

【山川主査】  ほかにいかがでしょうか。
 馬嶋委員,お願いします。

【馬嶋委員】  HTVの新たな役割があるという事ですけれども,例えば8ページの概要ですけれども,例えば丸7を見ますと,「地上からHTVへ分離コマンドを送信することにより,分離機構系を動作させHSRCをHTVから分離させる」とありますが,地上からというのは,技術的に可能なのかということについて確認したい。
一番気を付けなくてはいけないこととして,大気圏に突入する際は,通信が通じないタイミングがあり,地上からとしか書かれていませんので,その場合は大丈夫なのか気になりました。

【JAXA(白井)】  カプセルの方のリエントリーの解析をしております。最後の軌道離脱のところになると思います。

【馬嶋委員】  地上から分離コマンドを1回送信することによって,自動で働いて,きちんと分離されるということですか。

【JAXA(白井)】  そうです。HTVにコマンドを送って,HTVからカプセルの方に信号を送って,それで分離離脱され,以降はカプセルのタイマーで姿勢制御をします。

【JAXA(織田)】  もう少し補足しますと,HTVに結合している段階では,HTVを通してカプセルにコマンドが伝えられることになります。

【馬嶋委員】  地上からHTVを通して,コマンドがカプセルにですか。

【JAXA(織田)】  HTVを経由します。宇宙ステーションから,HTVが離れて大気圏に突入する前に,カプセルに電源を入れて,カプセルが起動します。カプセルを起動した後に,分離コマンドを送信して,これに従い作動します。
HTVからカプセルへコマンドが送られてきます。

【馬嶋委員】  それはほぼ自動に自分で向きを変えますよね。

【JAXA(織田)】  そうですね。分離した後は,カプセル側の方で姿勢制御をします。

【馬嶋委員】  そのようにできている。

【JAXA(白井)】  はい。誘導するシステムがカプセルの中にありますので,それにより所定の場所に誘導するようになります。

【馬嶋委員】    姿勢制御は自分で行っているのですね。

【JAXA(白井)】  そうです。

【山川主査】  次に飯田委員,お願いします。

【飯田委員】  感想となりますが,ハザードの全部を確認しているかの質問となります。取り出されたハザードの数が,これだけ大きいシステムであるにもかかわらず非常に少ないような気がしますので,見逃したハザードはないかということをまず1点お聞きしたいのと思います。
 FTAで解析されていますが,これはハザードの最終事象からさかのぼっていくわけですね。逆に一つの機器が故障した場合とか,操作を間違えた場合など,結局どうなるかを下から積み上げていく,そういう解析と,ここに書いてあるFMEAというのが多分これに当たるのではないかと思うのですけど,それに関してやられているかどうか。そこにヒューマンエラーも考慮されているかどうか。二つを教えていただきたい。

【JAXA(白井)】  おっしゃるとおり,FMEAの解析を行っております。FTAとFMEAを併せてハザードを識別している次第です。先ほどフェーズの説明を行いましたが,フェーズ1 でまずそのハザードを識別するところがございまして,そこでハザードを初期の段階から確認しているという次第です。フェーズ2 はその次のステップですが,そのフェーズ2 ,フェーズ3 に上がったときにも前フェーズの再確認を行います。

【飯田委員】  フェーズ2 においてもフェーズ3 のところでもFMEAの結果とかを参考にしながら,ハザードのとり逃しがないかどうかを審査はされているということですか。

【JAXA(白井)】  そうです。それを含めて再確認を行っています。

【山川主査】  よろしいですか。次に古橋委員,どうぞ。

【古橋委員】  御説明,ありがとうございました。
 私の方からは,運用ですとか保全ですとか,そういったことに関しては人がかかわると思いますが,人という観点から教育ですとか訓練,そういったことを含めた実践運用,保全はなされているかについて,教えていただきたいと思います。

【JAXA(植松)】  おっしゃるとおり,非常に複雑なシステムで,搭乗員がおられなくても作業もありますし,それから地上に,海上に戻ってきたときにそれを回収しなくてはいけないというような意味合いもございまして,搭乗員がやる作業につきまして,先ほど少し御説明しました訓練等をやっております。それから,当然,その設計の段階で,手順書をつくりまして,その手順書を使って実際の宇宙飛行士に組み立て手順を確認していただくというようなプロセスを踏みながら設計を固めていきます。それから運用のところで回収運用に関しましても,先週まさに実施しておりますが,実際に回収を行う訓練をいたしまして,また回収カプセルを実際に海に投下して,投下した状態からその船を使って回収するというようなリハーサルも行っております。
 また,おっしゃるとおり,運用とか保全について,非常に複雑なシステムですので,一通り,何が起きるか解析を行った上で,回収カプセルの運用を行う予定です。

【古橋委員】  実際に関わる人も,いろいろな特性を持った人がおり,本人の適性,能力,技能などを考慮した上で手順の内容も変わるかと思いますが,そのあたりの考え方はいかがでしょうか。

【JAXA(植松)】  当然,搭乗員に対しましてはそういった技能を持った搭乗員がそういった作業の業務に当たりますし,また地上での運用に関しましても実際に開発,あるいは製造にかかわった人間が最もそのハンドリングになれておりますので,そういった方を中心に今後の回収作業等も実施する予定ですので,実際につくった人間を確保したまま,そういった作業に当たらせています。

【古橋委員】  わかりました。私も悩むところでございますので,引き続き,よろしくお願いします。

【山川主査】  ありがとうございます。
 野口委員,どうぞ。

【野口委員】  また最初の質問に戻るのですけれども,3ページに,本報告では,基本指針に対する適合性も含めて,安全性評価結果について報告すると書いてありますが,適合性以外については,例えば今回の報告ではいかがでしょうか。

【JAXA(白井)】  この指針と今回の内容については,ずれが出たということはなく,指針に対する評価を主に行いました。

【野口委員】  わかりました。今回は基本的に適合性の評価が主だったということですね。

【JAXA(白井)】  はい。先ほどのハザードの識別,それからプロセス,管理体制とか,こういうものを含めて安全評価を審査いたしました。その結果,指針に対する適合性についてまとめた報告書となります。

【野口委員】  わかりました。15ページを見ていただけますか。表を見ていくと,「電池の故障」がありますね。それに対して検証というのは,試験をやって電池に異常がないという検証をしたということです。例えばこのときは,残存リスクゼロとすると,検査して異常がない電池を組み込むと,電池は故障しないというロジックになります。しかし,ここで保証しているのは,搭載前に故障している電池を除いたということでしかないです。

【JAXA(織田)】  現状のところ,試験だけ書いておりますが,実際には,設計の確認についても行っておりまして,設計,それから試験を含めて問題ないことを確認しています。そのものだけで確認しているわけではありません。

【野口委員】  設計において,もともとその誤差が出るような設計だと大変なことになります。普通,ものが壊れるときは,設計としては壊れないように作っており,事前に前検査もして,それでもいろいろなことが起きて,いつか故障するということを評価するために,リスク評価を行います。言葉遣いはとても大事であり,我々としても適合性を検証した結果を確認してと言われると理解できるのですが,これで安全ですと言われると,疑問を感じます。
こういう適合性を検証しているということが,安全性を担保するという仕組みになっているということで考えると,淡々と済む話ですが,このような精密機械の安全性評価の検証としては,基本的な適合性の確認と,先ほど述べた本当の意味での残存対応リスクをきちんと評価して,リスクが十分小さいということで検証するということでは,大きな違いがあります。そういう意味で安全かと言われたときに,基準に対する適合性の評価はやっていますという話にしかならないような気がします。

【JAXA(白井)】  そういう意味では簡潔な記載にしているため,ハザードの識別と制御に主眼をおいた内容となっているかと思います。

【JAXA(高橋)】  補足となりますが,23ページのところに,ユニークハザードというものが書かれておりまして,ここにハザードとなるものはどういうものかといったときに,電池の破裂によるハザードというものを識別してございます。そのハザードがどういった原因で出るのかというところの原因というのを三つ書いてございまして,一つ目が内部短絡,二つ目が外部短絡,三つ目が熱的な異常,それから最後に過放電という四つの原因を識別しています。それぞれの原因に対して,制御のところで内部短絡については環境試験で電池に欠陥がないことを確認しています。外部短絡についてはヒューズを設定するとか,そういった個々の原因に対してのハザード制御を行っています。それらの検証をフェーズ3 で確認する,このような形で段階を追って評価しているというのが現状でございます。
 これでリスク評価,リスクとしてどうかというところは,十分な答えになりませんが,安全の考え方としては何が一番ハザードなのかというのを識別したうえで,そのハザードが起きる原因全てを識別し,それに対して制御,検証するということで評価しております。

【野口委員】  実はこれも気になっておりました。23ページでいうと,「図面で確認した」「設計結果を確認した」というのは,要は設計図面どおりできていると壊れない。故障しないという前提の話ですよね。だから機器単体の話ですよね。でも電池は,電池だけの単体であるわけじゃなくて,人の干渉とか,いろんな状況によっていろんなことが起こるわけであり,ただそれを評価するのは普通リスク評価,リスク分析というのですけど。今やっていらっしゃることで,例えば90%とか95%とか,そのものが要因というのをはじいているということはよく理解しているつもりです。先ほどのリスクは十分に小さいというのを,こういう精密システムでどのレベルをもって十分に小さいと考えるか。やっぱり基本的な思想の問題にも関わると考えており,話を聞いておりました。今までこういうことできているという実績があり,この基本的なやり方自体を変えるということには,かなり大きな議論が必要なので,今回の小委員会のレベルの議論ではないと思うのでここではこれ以上の議論は無しにします。基本的な安全審査に関してやられたということは承知しましたし,そうだと思っています。
 ただ,これに関してはもう少し別の機会で議論をした方が良い事項と思います。

【山川主査】  ありがとうございます。
 馬嶋委員,お願いします。

【馬嶋委員】  先ほど質問をさせていただいたことですが,最悪の場合に,例えば,ISSの方に突入してしまうことはあり得ないと思うのですけれども,このようなことは,ハザードと認識しなくてよろしいのですか。

【JAXA(高橋)】  そちらはHTVのハザードの方で識別してございます。カプセルはHTVの中に搭載している状態で,ISSから離脱します。ISSから十分離れたところで,カプセルを分離しますので,そこから再びISSの方にカプセルが行くということはないことを確認しています。

【馬嶋委員】  ということは,この評価の中に入れないのですか。

【JAXA(高橋)】  はい。HTVの再突入に関しては,今回の評価の対象外でございまして,別途,再突入の審査のところで評価いたします。もう一つ,HTVがISSから離れてということに関しては,HTVの安全審査の中で評価しておりまして,これもカプセルから審査しておりまして,今回の報告の中に含まれている件でございますが,実際にはそういうことも実施してございます。HTVの大きな中で安全評価をしているということです。

【馬嶋委員】  それは今後評価するのでしょうか。

【JAXA(高橋)】  いや,今回の報告はカプセルの話で,カプセルとHTVとのインターフェイスをどのように切るかということですが……

【JAXA(織田)】  HTVの再突入の評価の中で行います。

【馬嶋委員】  ISSとのリコンタクトについてもHTVとして評価するのですか。

【JAXA(織田)】  それはHTVの評価時に行います。

【山川主査】  文科省の方からお答えをお願いします。

【梅津課長補佐】  御質問のHTVの再突入に関しましては,別途,この調査・安全小委員会の中で,JAXAから御報告いただいて,評価を受ける形になります。

【馬嶋委員】  もう一つ質問となります。今までの衛星には推進系があったはずです。衛星を軌道に投入していますが,その中で推進系を持った衛星はあるのでしょうか。

【JAXA(白井)】  一般的な衛星は,軌道制御,姿勢制御をしています。

【馬嶋委員】  軌道制御もしている?

【JAXA(白井)】  衛星自体は軌道制御,姿勢制御を行うものがあります。

【馬嶋委員】  それは今回と同じコントロール系となっていて,それがうまくいかなかったということはないのでしょうか。

【JAXA(白井)】  御質問の点として,今回の安全評価の解析とは異なると思いますが,衛星の設計の安全解析として,実施されていると考えています。

【山川主査】  ほかに御質問がないようであれば,そろそろ予定していた時間になりつつありますので,まとめに入りたいと思います。多くの貴重な重要な御指摘を頂きありがとうございました。
野口委員からいただきました御指摘に関して一つ確認させていただきたいと思います。今回の安全審査結果に関して御指摘をいただいて,基本的には,部会の指針に関して適合性を確認したということとで,今回に関しては次のステップに進んでよろしいと私は理解しましたがよろしいでしょうか。ただし,残存リスク等々の考え方については,改めて議論する場を設けるという御提案だったという趣旨でよろしいでしょうか。

【野口委員】  はい,結構です。基本的に今までのやり方が基本指針に適合したということをもって,次のステップに進むということですので,この指針はクリアしていると思いますので,結構だと思います。
 ただ,このような安全解析方法が安全に資するかというのは,1回しっかりと議論した方がいいというのが私の意見となります。

【山之内企画官】  すみません。確認となりますが,指針に対する適合性として問題はなく,例えば23ページでの原因分析がこれで十分であるか,そういった解析内容については検証をし直す必要があるのではないかということになるのでしょうか。

【野口委員】  やはりこのような安全解析は,どの粗さで全体のバランスを取るかがすごく大事です。ある粗さの中である部分だけ細かく検討して安全性が高まるかというと,実はそうはならなくて,さらにはハザードの数を増やすなどの全体をバランスよく見なくてはいけないと思います。そういう意味では,今回の審査が,この粗さで行うという考え方がある以上,19件のハザードについて一件ごとに,制御が十分かどうかということの評価を行うことはできるのですけれども,こういう体系的なFTAの形に整理し抽出した審査であるという手順に関しては理解しています。

【山之内企画官】  了解しました。 今回の評価はよろしいということを承りました。今後,評価を行う際は,FTAの内容とか,ハザード抽出のプロセスを丁寧に委員の皆様に説明するようにさせていただければと思います。どうもありがとうございます。

【JAXA(白井)】  補足ですけれども,先ほどの電池も決して単体だけではなくて,全体を通した試験についても,細かくハザードを通して,原因は何で,それは単体なのか,システムなのか,という評価を行って,それで整理をしたうえで審査をしております。

【野口委員】  基本的にこれまでいろいろ実績のあるJAXAがやられていることなので,不十分であるという前提で話ししているつもりはありません。ただ,委員としては,審査対象として出てきた書類でしか審査ができないので,JAXAを信用しているから,書類はどうでもいいですよというわけにはいかないと思います。そういう意味では,行っている安全解析の内容の意図が委員に正しく伝わる書類を準備していただきたいということをお願いします。

【山川主査】  ありがとうございます。
 よろしいでしょうか。
 それでは,ただいまのいただいた御意見を踏まえまして,これまでの検討結果を取りまとめたいと思います。
 事務局で案を準備していただいておりますので,御説明をお願いいたします。

【山之内企画官】  より資料30-4-3に基づき説明を行った。

【山川主査】  ありがとうございます。
 ただいまの御説明に関して,御意見,御指摘がございましたらお願いいたします。
 よろしいでしょうか。
 ありがとうございます。
 それではただいまの御議論等を踏まえまして,私の方から資料30-4-3を,宇宙開発利用部会に報告させていただきたいと思います。
 その際に調査審議のポイントにつきましては,主査であります私に御一任いただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。

(「異議なし」という声あり)

【山川主査】   ありがとうございました。
 それでは御異議がないようですので,本日の審議結果を私の方から部会に報告するようにいたします。
 それでは,非公開審議に入る前に,議題6のその他を先に実施したいと思います。

(6)その他

【山川主査】  事務局から,連絡事項についてお願いいたします。

【山之内企画官】  会議資料と議事録の公開について申し上げます。
 宇宙開発利用部会の運営規則に基づきまして,本日の会議資料は非公開部分を除いて公開となります。後日,文科省のホームページにて掲載させていただく予定でございます。また,議事録についても,この後の非公開審議部分を除いて公開となりますので,委員の皆様に御確認いただいた後,文科省のホームページに掲載させていただきますので,よろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【山川主査】  それでは,これ以降は非公開審議に移りたいと思いますので,プレスの方及び一般傍聴者の方は御退席をお願いいたします。

(プレス及び一般傍聴者 退席)


以上


(発言者については敬称略)

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