資料4-1-5 宇宙ステーション補給機「こうのとり」4号機(HTV4)に係る安全対策について 質問に対する回答

平成25年6月20日
独立行政法人宇宙航空研究開発機構

【本資料の位置付け】
  本資料は、平成25年6月20日(木曜日)に開催される宇宙開発利用部会 調査・安全小委員会(第4回)における宇宙ステーション補給機「こうのとり」4号機(HTV4)に係る安全対策について事前送付された資料に対する構成員からの質問に対し、独立行政法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の回答をまとめたものである。

目次

●調査審議の区分1(HTV4号機の概要)に関連する質問

1-1  海外調達品スラスタを使用することについて

●調査審議の区分2(HTVに係る安全審査)に関連する質問

該当なし

●調査審議の区分3(HTV4号機のISS近傍運用フェーズの安全性)に関連する質問

3-1  検証結果に対する時間経過の影響について
3-2  搭乗員が確認した結果の記録について
3-3  1cm~10cmのデブリへの対応について
3-4  電池の搭載タイミングについて

●調査審議の区分4(HTV4号機の大気圏再突入フェーズの安全性)に関連する質問

4-1  再突入角及び南緯について
4-2  衛星通信システム等の健全性確認について

●その他の質問

該当なし

調査審議の区分1(HTV4号機の概要)に関連する質問

【質問番号 1-1】海外調達品スラスタを使用することについて

【質問内容】
  HTV4号機ではスラスタをHTV2号機で使用した海外調達品に戻るために推進系の運用モードも検討したとの記述があります。本スラスタは、HTV3のバックアップ品として購入されたものですが、できれば国産スラスタの使用が我が国の宇宙事業貢献の意味で大切と誰もが思うが、何か国産スラスタの安全性などに課題があったのでしょうか?

【資料の該当箇所】
資料4-1-3
5.HTV3号機ミッションからの反映/変更事項への対応 
(2) HTV2号機と同じ海外調達スラスタを適用することの影響評価 P23

【回答者】JAXA

【回答内容】
  HTV3号機では、万が一国産スラスタ開発に遅延が生じた場合、国際宇宙ステーション補給計画に影響が出るため、そのリスクを吸収すべく海外調達スラスタをバックアップとして準備いたしました。
  HTV4号機では、HTV3号機のバックアップとして調達済みの海外調達スラスタがあるため、それを有効活用することとしました。
  国産スラスタの安全性に課題があったわけではありませんので、我が国の宇宙産業への貢献のためにも、今後は国産スラスタを使用する予定です。

調査審議の区分3(HTV4号機のISS近傍運用フェーズの安全性)に関連する質問

【質問番号 3-1】検証結果に対する時間経過の影響について

【質問内容】
  各ハザードタイトルに対してのHTV4号機の対応及び検証結果に関して受入試験、受入検査、製品検査、検査、試験、機能試験、システム試験、射場で最終確認・・の場で確認した、及び実施予定と記載されています。各確認行為は、受入時での確認後は変化・変動しないものや他の検査や試験での確認後も時間経過すると変化・変動するもの、何かの原因で変更になったことも発生しえます。それらを考慮して検証(確認)していると思います。
  そこで質問ですが、「検査・試験・機能試験で確認」との記述が随所に記載されていますが、経時変化などを考慮したどのフェーズの検査・試験・機能試験での確認かを説明時に補足して説明いただきたい。

【資料の該当箇所】
資料4-1-3
4.HTV4号機の安全設計・検証結果
4.2 「きぼう」と同様なハザード制御の検証結果 P8~13
4.3 HTVに特有なハザード制御の検証結果 P14~20

【回答者】JAXA

【回答内容】
  各機能に対する試験結果は、当該機能の試験を複数回実施している場合(例:コンポーネント試験→サブシステム試験→システム試験、という3回の試験で同一機能の試験を実施している場合)は、常に最後に行われた試験結果を適用します。これにより、以下のように結果の有効性が保証されます:
(1) 最終ステップの試験結果を適用することによって、不具合の是正などによる変更が加わった場合でも試験の有効性が変動しないようにしています。
(2) 他機能との組合せ状態が最も本番運用に近い最終ステップの試験結果を適用することによって、より複雑な条件における機能有効性を示すようにしています。
(3) 時期的に最も本番運用に近い時期の試験結果を適用することにより、試験実施後の経年変化などの影響を最小にするようにしています。

  したがって、推進系配管のリーク試験など、同一機能に対する検証が複数回行われる場合は、打ち上げ直前の射場フェーズでの試験を適用し、経年変化による機能性能の劣化が最小となるようにしています。
また、経時変化を特に考慮しなければならないような品目については「特性値管理品目」として作動回数や保管期間、あるいは品質を示す特性値を指定して経時変化が許容値内であることを打上げまで継続して確認・管理いたします。例として、経年変化によりGPSレシーバの源振周波数がずれていくという事象に対し、これを特性値管理品目として管理しております。源振周波数をコンポーネント受入時から射場作業での最終試験時まで、各審査会においてトレンドを評価し、規定値以内に入っていることを確認しております。

【質問番号 3-2】搭乗員が確認した結果の記録について

【質問内容】
  HTVに係る安全対策の評価のための基本指針に対してHTV4号機の適合性確認結果が記載されています。
  いろいろな確認手段で確認されている中で、P16の(2)誤操作の防止の項目で{搭乗員の確認を受ける計画としている}との記述が2か所有ります。
  質問は、搭乗員の確認を受けたとのチェックをどのような方法で記録に残し確認しているのでしょうか?

【資料の該当箇所】
資料4-1-3 付表-1
「宇宙ステーション補給機(HTV)に係る安全対策の評価のための基本指針」に対するHTV4の適合性確認結果 P16、P17

【回答者】JAXA

【回答内容】
  搭乗員の確認はNASAの担当オフィスが搭乗員とともに来日して実施いたします。実施内容及び結果については現場で記入する試験記録シート・記録写真を添付した”Quality Inspection Result Sheet”に、JAXA/NASA関係者のサインを得た上で資料化し、JAXA/NASA双方がそれぞれ記録として保存しています。

【質問番号 3-3】1cm~10cmのデブリへの対応について

【質問内容】
ハザードタイトル 衝突(HTVのISSへの衝突を除く)
ハザード内容 6
HTV4号機の対応及び検証結果
  直径1~10cmのデブリへの対応の記述が見当たらないが、どこかに記載されているのでしょうか?

【資料の該当箇所】
資料4-1-3
4.HTV4号機の安全設計・検証結果
4.2 「きぼう」と同様なハザード制御の検証結果 P9

【回答者】JAXA

【回答内容】
  1~10cmのサイズを含めて、デブリが万が一衝突した場合に適切な事後対応を行うことで搭乗員の安全を確保することとしています。その対応手順は、4.2項6の3つ目「万が一デブリが衝突した場合の対応手順」に記載しております。

【質問番号 3-4】電池の搭載タイミングについて

【質問内容】
  一次電池が7台搭載します。これまでの号機では、幸いにもほとんど消費することがなく太陽電池と二次電池でもかなうことができたと報告されています。姿勢異常やその他の不具合により太陽電池やその充電機能を発揮できないことを想定して、一次電池を搭載されていることは賢明な対策です。ただ一次電池は充電できないので自己放電を考慮すると、できるだけ打ち上げ直前に搭載した方がベストですが、打上げ延期なども考慮して打上の何日前に搭載される(組み込まれる)のでしょうか?

【資料の該当箇所】
資料4-1-3
4.HTV4号機の安全設計・検証結果
4.3 HTVに特有なハザード制御の検証結果 P17

【回答者】JAXA

【回答内容】
  一次電池(P-BAT)は射場搭載ではなく、工場にて電気モジュール組立時に搭載しているため、打上げ約1.2年前の搭載となります。ただし、P-BATはシステム上一次電池として使用していますが、電池そのものは充電可能な二次電池と同じ設計であるため、打上げ前に射場で満充電することで、その能力を最大限使用できるようにしています。
  なお、HTVの打上げ時一次電池必要容量規定上は、P-BATの電気モジュール搭載~打上げ間の容量劣化に対して保管温度及び充電量を管理することで、仮に打上げが約1年延期しても対応可能です。

調査審議の区分4(HTV4号機の大気圏再突入フェーズの安全性)に関連する質問

【質問番号 4-1】再突入角及び南緯について

【質問内容】
  再突入フェーズで再突入角、南緯が前回(H19.4.27)の資料と異なるが、HTV3からHTV4への変更点(P23)によるのか? 着水予想域はHTV3の場合しか提示されていないがなぜか?

【資料の該当箇所】
資料4-1-4
3.1 再突入までの運用計画 P8
資料4-1-1
再突入フェーズ P17、P18

【回答者】JAXA

【回答内容】
  資料4-1-4、P8(及び資料4-1-1、P17)に示しております再突入角度(-1.2~-1.5deg)、南緯(40deg)の値は、HTV1号機から適用している値であり、これまで変更はしておりません。

  御指摘いただいたHTV1号機の宇宙開発委員会安全部会資料(H19.4.27)の再突入角度(-1.35~-1.65deg)、南緯(45deg)は、当時検討していた詳細設計結果に基づく再突入軌道計画のものであり、その後の検討進捗に伴って具体的に再突入計画を設定する際に見直されました。
  見直し結果を反映し、南緯については40度と記載しておりますが、再突入角度については資料への反映から漏れてしまっており、大変申し訳ございませんでした。
  なお、実際の再突入計画及び安全評価(着水予想区域の解析を含む)は正しい再突入角度、南緯で実施されていることをJAXA内の審査で確認しております。

  また、資料4-1-1、P18に示しております着水予想域がHTV3号機のものである点については、HTV4号機の実際の再突入軌道計画は、ISSからの離脱日時が明らかになった段階で作成されるため、現時点ではお示しすることができません。ただし、図内に黄色で囲んでおります着水予定域内に十分納まるよう計画できることは確認しております。

【質問番号 4-2】衛星通信システム等の健全性確認について

【質問内容】
  「こうのとり」4号機を安全に再投入させるため、4.安全管理計画でも記述されているように、運用管制体制も重要である。その観点からP5の(3)再突入飛行の可否判断の実施 で1.軌道、位置、姿勢/2.姿勢制御系機能/3.推進系機能に加えて、4.TDRS衛星通信システム、地上管制、運用管制等の機能も明記してはと思います。当然のことながらどこかで、これらの機能健全性を確認の上で実施されていると思いますので。

【資料の該当箇所】
資料4-1-4
2.JAXA安全評価による安全性確認結果 P5
(3) 再突入飛行の可否判断の実施

【回答者】JAXA

【回答内容】
  p.4からp.7の「基準内容」は、宇宙機を大気圏に再突入させる場合の安全対策を御評価いただくに際して最低限確認すべき観点を、「ロケットによる人工衛星等の打上げに係る安全対策の評価基準」としてまとめていただいたもので、HTV以外の宇宙機が大気圏に再突入する場合にも同様の観点で御評価いただくことになっています。
  この基準内容を受けて、JAXAでは、HTVの1.軌道、位置、姿勢/2.姿勢制御系機能/3.推進系機能等をテレメトリで確認するために、TDRS衛星通信システム、及び地上管制システムを使用することとしており、これらの機能健全性は1~3の確認する上での前提条件として打上げ前に確認しております。

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研究開発局宇宙開発利用課

-- 登録:平成25年08月 --