令和6年12月25日(水曜日) 15時00分~17時00分
Web会議
部会長 村山 裕三
部会長代理 田中 明子
臨時委員 秋山 文野
臨時委員 笠原 次郎
臨時委員 金井 宣茂
臨時委員 木村 真一
臨時委員 芝井 広
臨時委員 白井 恭一
臨時委員 鈴木 健吾
臨時委員 髙橋 德行
臨時委員 鶴岡 路人
臨時委員 山崎 直子
臨時委員 山室 真澄
臨時委員 米澤 千夏
研究開発局宇宙開発利用課 課長 嶋崎 政一
研究開発局宇宙開発利用課 研究開発戦略官 原田 大地
研究開発局宇宙開発利用課 宇宙科学技術推進企画官 阿部 陽一
研究開発局宇宙開発利用課 課長補佐 西 隆平
研究開発局宇宙開発利用課 課長補佐 木元 健一
研究開発局宇宙開発利用課 研究開発戦略官付課長補佐 川端 正憲
研究開発局宇宙開発利用課 研究開発戦略官付宇宙科学専門官 豆佐 哲治
(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
理事 岡田 匡史
理事 佐藤 寿晃
宇宙科学研究所 SLIMプロジェクトチーム/プロジェクトマネージャ 坂井 真一郎
宇宙輸送技術部門 イプシロンロケットプロジェクトチーム/プロジェクトマネージャ 井元 隆行
宇宙輸送技術部門/第一宇宙技術部門 事業推進部 部長 森 有司
宇宙輸送技術部門 事業推進部 計画マネージャ 布施 竜吾
宇宙輸送技術部門 鹿児島宇宙センター 射場技術開発ユニット 研究領域主幹 川島 秀人
調査国際部 部長 小野田 勝美
【村山部会長】 それでは定刻になりましたので、第93回の宇宙開発利用部会を開催いたします。
今回も前回同様、オンラインでの開催となっております。委員の皆様には、御多忙のところ、お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
まず、事務局より本日の会議についての事務連絡をお願いいたします。
【阿部企画官(事務局)】 事務局の阿部です。本日もよろしくお願いいたします。
本日は16名の委員のうち、途中参加の委員を含めて15名の方に御出席いただいております。本日の資料につきましては、会議次第に記載のとおりでございます。
オンライン状況について、音声がつながらない等の問題がございましたら、事務局へ、メール、電話等で御連絡ください。以上となります。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
本日の議題のうち、最初の議題のみが審議事項になっております。残りの3つは報告事項です。それでは、早速議題の方に移りたいと思います。
最初の議題は、「小型月着陸実証機(SLIM)プロジェクト終了審査の結果について」です。
昨年9月に打ち上げられたSLIMが、今年の1月20日に月面へのピンポイント着陸を成功させてから早くも1年が経とうとしております。
設計想定外の3回の越夜を含め、数々の成果を上げたSLIMプロジェクトについては、10月22日にJAXAでのプロジェクト終了審査が実施され、正式にプロジェクトの終了が確認されました。
本日は、その審査内容について当部会でも確認したいと思います。それでは、JAXA宇宙科学研究所SLIMプロジェクトチームの坂井プロジェクトマネージャ、資料の御説明をお願いいたします。
【坂井プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
では、坂井の方から、まず資料について御説明をさせていただきます。よろしくお願いいたします。次の頁をお願いいたします。
こちらは目次になってございまして、本日の御報告内容になります。読み上げ等はしませんけれども、プロジェクトの結果というところに引き続いて、推進系のトラブルの原因調査の結果、それから、これまでに得られたアウトカム・インパクトについての整理をした上で、最後にまとめのところを少し御説明したいと思いますので、よろしくお願いいたします。次の頁をお願いします。
こちらは経緯のところになりますけれども、重複しますので簡単にいきますけれども、1月20日の着陸のあと、3回の越夜をうけたあとには、残念ながら2024年5月期以降は通信確立ができない状態となりました。そのため、8月23日に停波運用を実施して、運用については終了としています。
サクセスクライテリア、それからアウトカム目標の達成状況によって、SLIMプロジェクトの終了について、10月29日にJAXA理事会の方で承認をされているというものが経緯になります。
それを踏まえて、本資料の報告内容と位置づけというところをここに記載させていただいておりますので御確認いただければと思います。次の頁をお願いいたします。
こちらも改めて、になりますので簡単にいきますけれども、SLIMというプロジェクトは2016年に始まったJAXAのプロジェクトでございますけれども、大きく2つの目的を掲げたプロジェクトになります。
1つ目が月への高精度着陸技術の実証を目指すというところ。それから、もう一つが軽量な月惑星探査機システムを実現して、月惑星探査の高頻度化貢献するというところが2つの大きな目的となってございました。次の頁をお願いします。
こちらも皆様十分御承知かと思いますので、改めてのサマリーになってございますけれども、SLIMの着陸機の概要、あるいは打上げ日等の履歴、それから簡単なものではありますけれども、開発の線表などもそちらにお示しをしてございますので、必要がありましたら戻っていただいて確認いただければと思います。次の頁をお願いします。
これも改めてになりますけれども、ピンポイント着陸の成果というところを、成果の最初のところとしてお示しをしてございますものが、こちらの頁になってございます。Chandrayaan-2が撮ってくれていた高分解能の画像と、それからSLIMが自分で取得した画像と比較することで、高度50m付近のところで確認された性能として、着陸性能は10m程度、あるいはそれよりも良好というふうに評価をされていますので、目的としていた100mという性能の中には十分に入っている、良好な性能が確認できているという状況になってございますので、これで世界で初めてのピンポイント着陸ができたというふうに判断をしてございます。
少し細かい説明を書かせていただいておりますけれども、なぜこの高度50mあたりのところでの性能評価を行っているのか、といったところを資料の方には記載をさせていただいております。
それから、これも本日の後半の御報告と関係しますけれども、ちょうどこの画像を取得している途中で、2枚の画像を取得している間のタイミングでしたけれども、推進系にトラブルが発生して、メインエンジン2機のうちの1機の推力を失いましたので、結果として、これ以降は徐々に東に流れながら降下して、着陸目標地点から東に大体60m程度の地点に軟着陸をしたというものが、このあとの経緯になります。
ただし、着陸後も探査機は動作の維持をしており、地上との通信も維持されたままでしたので、我々としては軟着陸については成功というふうに判断をしたことになってございます。では、次の頁をお願いします。
それから、こちらは軽量化の成果について簡単にまとめている頁になってございます。月惑星探査機を軽量化するための要素技術の開発を行って、軽量な探査機の実現をしたと。
結果として、これまで月着陸に成功した中では、おそらくSLIMは最軽量であるというふうに考えられているというところをまず述べさせていただいております。
それから、軽量化のいろいろな技術開発、ここに書いてあるものが全てではありませんけれども、代表的なものをいくつか記載をさせていただいております。
フルデジタルのS帯の送受信機であるとか、あるいは薄膜太陽電池セルの本格採用であるとか、ということをいくつか大事なところを少しピックアップしてお示しをさせていただいておりますので、この辺りについても御確認いただければと思います。次の頁をお願いします。
それから、これが今述べたことの補足の説明になりますけれども、直近の月着陸機6機、成功したものも失敗したものも、ちょうど成功確率が5割ぐらいという形になってございますけれども、これらと比べた数字としてのSLIMの立ち位置というところを改めて整理をしているのがこちらの頁になってございます。
青枠で囲ってあるあたりが、今御説明した質量に関するところでして、この辺り、これ以前のものももちろん比較をしておりますけれども、こういった検討を通じて、おそらく月に着陸した着陸機の中では、SLIMがこれまでで一番軽いものだろうというふうに我々が考えている根拠の一端を御覧いただいているというものがこちらの頁になってございます。次の頁をお願いします。
それから、着陸後の成果についても改めて整理をさせていただいているものがこちらの頁になってございます。
まず、搭載をしているマルチバンド分光カメラという観測装置を使って、着陸直後には太陽電池には光があたっておりませんでしたので、一旦電源オフになりましたけれども、その後、太陽の方向が変化して運用を再開することができたあとには、このMBCという観測装置を使って、10個の岩石、それから2箇所のレゴリスについての科学観測を、それぞれ10バンドの波長帯で実施することができています。
それから、SLIM着陸直前には、2機の超小型ローバの分離にも成功していて、それぞれが月面で完全な自律操作をすることに成功し、世界で初めて、複数ロボットの連携動作による月面探査ということが達成をされています。
最も分かりやすいというか、多分御覧いただいたことがあるかと思いますけれども、右下にある写真が、まさにこの2機の超小型ローバの連携動作によって、我々が提示することができた貴重な月面での1枚の写真ということになってございます。
それから、月の表面は御承知のとおり、14日間の昼間と14日間の夜間が繰り返されて、その間、大きな温度変化を伴うために、越夜ができるということは、設計上は想定していなかったのですけれども、結果として、3回の越夜後も探査機の動作を確認することができて、各種の機体のデータを取得することができたというところ、アディショナルな成果としては、こちらについても明示をさせていただいてございます。次の頁をお願いします。
それから、運用終了についてですけれども、これも途中で述べましたけれども、その後は残念ながら越夜後のSLIMと通信再確立をすることができませんでしたので、8月23日をもって運用については終了としています。
越夜後の探査機について得られたデータからは、今後の月着陸開発に活用し得る何らかの知見が得られる可能性があるというふうに考えています。
そのため、このあとプロジェクトが解散になったあとも、越夜によって探査機が動作しなくなった原因の調査などをJAXAの中の研究活動として継続していくということを方針として定めているところになります。
右下、そのごく一例になりますけれども、越夜を経ることで、探査機内部の温度が越夜前を比べると、高い方向にシフトしている場所があるということが例えば分かってきたりしますので、こういったことを通じて、越夜を経て、SLIMに一体どういうことが起こったのかということを、これから引き続き研究を行っていこうということを考えているところでございます。次の頁をお願いします。
こちらはビジーになっておりますので、読み上げまでは割愛いたしますけれども、JAXAの中で定められていたプロジェクトの目標に対して、どういう達成状況にあるのかということを改めて整理をしているような表になってございます。
我々、ミニマム、フル、エクストラ、いずれに対しても達成することができたというふうに考えてございますので、必要がありましたら、細かいところを少しお読みいただければというふうに思います。次の頁をお願いします。
ここからがなかなか調査の結果について、御報告する機会を持てていなかった、着陸直前に発生した推進系トラブルについての原因調査の結果をお示ししているところでございます。
高度50m付近で発生した推進系のトラブル、具体的には、メインエンジン2機(±X)のうちの1機(-X側)のノズル離脱・推力低下について、JAXA研究開発部門をはじめとする各部門の専門家の協力も得ながら、関係メーカと共に原因調査を行ってきました。
その結果、このトラブルはメインにそのものに起因するものではなく、推進系システムにおける以下のような動作の結果として、メインエンジンのノズル離脱及び推力低下に至った可能性が高いというふうな結論を得てございます。
具体的に何が起こったかという御説明の前提のところになりますけれども、軽量化のために、推薬消費とともに徐々に供給圧力が低下をするブローダウン方式というものをSLIMでは採用していました。
本トラブルが発生したのは運用の末期であって、そのために推薬供給圧がかなり低下した状態で使っておりました。スラスタは、これは一般論ですけれども、推薬供給圧力が低い条件下では、着火しづらくなるような傾向は有しているというふうに理解しています。
そのことを踏まえて、SLIMに何が起こったかという話ですけれども、メインエンジン噴射開始のタイミングに、制御のために多数の補助スラスタ(全12台)の噴射開始が重なり、このためにメインエンジンへの推薬供給圧が一時的に、さらに減少した。
結果として、-X側メインエンジンには、このタイミングでは着火することができず、供給される推薬が未燃のまま、-X側メインエンジンの中に滞留していく状態となった。
その約1秒後、所定の噴射を終えた多数の補助スラスタが一斉に噴射を停止したことで、メインエンジンへの推薬供給圧が回復した。この回復した結果として、このタイミングで-X側のメインエンジンに着火したのだろうと。
一方、それまで約1秒間にわたって供給された推薬は未燃推薬として、-X側のメインエンジンの中に滞留しておりましたので、この未燃推薬にも引火した結果、過大な着火衝撃が発生して、これによって、-X側のメインエンジンのノズルが破損して、推力が大幅に低下する結果となったというものが、今我々が行った原因調査で得られた結果ということになってございます。次の頁をお願いします。
こちらは、今御説明したところで少し分かりにくいところもあろうかと思いましたので、分かりやすくする意図で、図の形で並べているスライドなってございます。
基本的に御説明している内容は、今口頭で御説明した内容と同じことを書いておりますので、改めての読み上げは割愛いたしますけれども、適宜、御理解のために御覧いただければよいのかというふうに思います。次の頁をお願いします。
前頁に記載したようなシナリオというものは、SLIMの推進系を再現した数値解析モデルを使って、SLIM着陸降下時のテレメトリデータを参照しつつ、実際の典型的なパルスパターンにおける着火状態の評価を行って、その妥当性を確認しているものになります。
その評価の際には、SLIMの設計情報や開発データ、あるいは燃焼試験や燃焼実験の結果などに基づく、JAXAの中の専門家の知見というものも参照されています。
それから、前頁に記載したシナリオについては、事象発生前後に得られた各種のテレメトリデータ、推進系以外のものも含め、つまり、加速度計の出力、あるいは着陸レーダ、レーザー距離計、航法カメラの画像出力とも概ね整合するということが確認されています。
なお、過大な着火衝撃によるスラストの破損は、このメインエンジン、セラミックスラスタと言っているものになりますけれども、これに特有なものではなくて、設計想定外での動作であって、一般的な金属スラスタであっても機能損失に至った可能性が高いというふうに我々は考えています。
逆に、と言いますか、素材がセラミックであって、材料の寿命を考慮する必要が事実上ないことから、本メインエンジンについては、搭載実機について、搭載前に過負荷試験等も実施しておりますので、設計過誤などの可能性を排除できているというふうに考えています。
少し、今後の話ですけれども、今回得られた知見については、今後のプロジェクト等で適切に参照される必要があるというふうに考えています。そのため、JAXA安全・信頼性推進部を通じて、JAXA内及び関係するメーカへの情報展開というものは既に開始している状態にあります。
なお、推進系はロケット分離直後から月着陸まで、軌道変更や姿勢制御、着陸降下に継続的に使用されてきています。今回の推進系のトラブルは、総デルタV量、あるいはメインエンジンの噴射時間の積算値、どちらで評価をしてみても、分離から月着陸までの総噴射のうち、約98%を終えたところで発生していて、それまでは所定の性能を得ることができていたということについても確認ができているような状況になってございます。次の頁をお願いいたします。
こちらもちょっとビジーなグラフになっておりますので、詳しい御説明までは一旦割愛いたしますけれども、先ほど口頭でお伝えした、各種のいろいろなデータ、得られているデータと、今御説明したシナリオ、時系列の観点でも概ね整合がとれているというところをお示ししているグラフになってございます。必要があれば、御説明させていただきますので、戻ってきたいと思います。次の頁をお願いいたします。
推進系の話から少し変わりますけれども、これまでに得られたアウトカム、あるいはインパクトについての整理になってございます。
提案段階からSLIMが世界に先駆けて提唱し続けて、結果として世界で初めて実証・獲得した高精度着陸技術は、従来の「降りられるところに降りる探査」から、「降りたいところへ降りる探査」へのパラダイムシフトを実現するものであって、今後の月惑星探査の可能性を広げることができたというふうに考えてございます。
それから、ピンポイント技術実証を世界最軽量級の着陸機で実現したこと、また当初想定していない月での越夜を複数回成功させたことを通じて、一部の分野においては我が国の宇宙開発は世界水準にあることを示すことができたと。これによって、我が国の国際的なプレゼンスの向上にも貢献できたというふうに考えているところでございます。
それから、広報活動などを通じて、一般社会の宇宙活動への理解を深めることにも貢献できただろうというふうに我々としては考えているところになってございます。次の頁をお願いいたします。
この辺りは、ちょっと手前味噌なところもありますけれども、今口頭で申し上げたようなところを、少し具体的な事例を紹介をしつつ、御説明している頁になってございます。
ちょっと細かい御説明は割愛いたしますけれども、こういうところを通じて、SLIMのアウトカムあるいはインパクトについては、我々としては良い結果が得られてるいのではないかというふうに考えているところでございます。次の頁をお願いいたします。
こちらも読み上げまでは割愛いたしますけれども、以上のような経緯から、10月22日に、SLIMの中ではプロジェクト終了審査というものが行われていて、ここに記載されているような判断が得られている状況になってございます。次の頁をお願いします。
それから、今後についてですけれども、まずSLIMを通して立証された技術については、今後各所での活用が期待をされて、またそのために必要な活動を継続する方針というふうになっております。
いくつかの例をお示ししておりますけれども、SLIM本体とは少し違うところでは、例えば低衝撃分離機構などについても、今後いろいろなところに受け継がれていくだろうということが期待されている状況になっておりますし、それから、SLIMで実証した画像航法については、一部MMXでも使われておりますので、この辺りも継承されている。
それから、高精度着陸に関する技術や知見については、月着陸を実施する国内の民間事業者に提供していく方向で今調整が進んでいるという状況になってございます。
それから、着陸、月面活動で得られた成果については、いろいろな形で論文等へも投稿していくことを計画しているところでございまして、また今後については、JAXAの中での手続が完了次第、プロジェクトとしては解散となる予定ということになってございます。
最後のところ、構想検討の開始からだと、もう20年経つようなものになりますけれども、大変多くの方に長きにわたって御支援をいただいたことを感謝して、報告については終わらせていただこうと思います。どうもありがとうございました。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
それでは、ただいまの御説明について、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。いつも通り挙手をいただければというふうに思います。いかがでしょうか。まずは金井委員が挙がっておりますので、金井委員、お願いいたします。
【金井委員】 御説明ありがとうございました。
3回の越夜を通して、当初のサクセスクライテリアを超えた、エクストラサクセス、本当にそのとおりだと思います。月からの映像や素晴らしい写真がニュース報道等で紹介されて、私自身も心躍るような気持ちになりました。素晴らしいミッションを本当にありがとうございました。
技術的な点で、スラスタ(エンジン)のことについてお聞きしたいと思います。今回-Xのエンジンについてトラブルがあったという御説明でしたが、これに関して必ずしも-Xのエンジンだけではなくて、例えば+Xのエンジンにも同じようなことが起こった可能性がある、あるいは、場合によっては両方のエンジンに同時に起こったかもしれないという理解でよろしいでしょうか。それとも、運用のときに-Xのエンジンの方にだけ(何らかの負荷がかかって)こういったことが起こったのでしょうか。もう少し理解を深めるための質問です。よろしくお願いします。
【坂井プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
我々もその辺りを気にして、いろいろと調べたところではございます。
結論としては、推進系のそのときの使い方の状況によって、どちらのエンジンも壊れた可能性があるのだろうというふうには思っております。
【金井委員】 ありがとうございます。理解が深まりました。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
ただいま、3名の手が挙がっております。まず、笠原委員からお願いいたします。
【笠原委員】 御説明本当にどうもありがとうございます。
改めまして、私も最大限の賛辞というか、本当に世界に誇る成果を出していただきまして、心より感謝申し上げますし、私も実際の映像が流れたところや、ニュース、それから今日の坂井先生の御発表を聞いて、改めて非常に歴史、人類史に残る成果を上げられたということを再認識させていただきました。ありがとうございました。
すみません、私もちょっと専門が爆発や推進系のものですから、その原因に関して、2点だけ聞かしてください。
1点は、ブローダウン方式を採用ということで、これはつまり、調圧弁というか、圧力を調整する、そういう重たいものをなるべく外すような方式を採用していたのでしょうか、というものが1つ目の質問です。
2つ目の質問は、実際に破損が起こったと想定される図のところですが、丸4のところで、実際に爆発現象が起こっている図が、右下の図がそうだと思うのですが、これは燃焼器を破壊する程度ですので、結構高密度というか、液体のまま連続的に爆発が起こっているような、かなり高密度な二液の状態が保持されたのかなと、ちょっと想像したりしていたのですが、その辺りに関して、先生がもし御開示できる御知見があれば、ぜひ教えていただきたいなと思います。以上、2点でございます。よろしくお願いします。
【坂井プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
まず、1つ目にいただいた方の御質問ですけれども、御理解のとおりでございまして、気蓄器であるとか、調圧弁というものを多くの衛星等では採用することで、圧力を一定に保つような使い方をしていることが多いわけでありますけれども、SLIMの場合には敢えてそういったものを非搭載することで軽量化を図り、かつ設計についても少しシンプルにするということを方針として当初から選んでいたということが経緯になってございます。
それから、2つ目にいただいた御質問ですけれども、こういうお答えで回答になっているかどうかあれですけれども、この1秒間、未燃の推薬がたまることで、どのくらいそこに燃料がたまり得るのか、それが着火をすると、どのくらいの衝撃が出るのか、ということについては、粗々の検討計算ということは行っておりまして、場合によっては、メインエンジンの破損に至るような着火衝撃が出るだろうというところについては、つまりそういうことが起こり得るだろうということについては、ある程度の確認は取っているような状況になっています。
【笠原委員】 ありがとうございました。
引き続き、大きな成果、それから、また次に向けたいろいろな成果を上げられていると思いますので、今後の報告も楽しみにしています。どうも先生、ありがとうございました。以上でございます。
【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして、秋山委員、お願いいたします。
【秋山委員】 秋山です。よろしくお願いいたします。
SLIMの成果、御発表ありがとうございます。本当に社会に大きなインパクトを与えたと思います。
その上で、私の方も推進トラブルのことについて、細かい確認が1点と、それからもう1問、2点質問させていただきたいのですけれども、まず細かい方は、トラブルが発生したタイミングのところで、補助スラスタ12本、全12台を噴射したタイミングということで、「多数の」と書いてあるのですけれども、これは12台全部ということなのか、それとも、12台のうちの多くということなのか、その細かい点がまず1点です。
それからもう一つは、こうした知見を今後活用していくにあたってですけれども、同じようなことが起こり得るような条件というものは、ほかのタイプのミッション、例えば今回は月着陸ですけれども、何か着陸を伴うようなミッションであり得ることなのか、それとももう少し広く、例えば何かの天体に軌道投入するというようなことでもあり得るのかどうか、その辺りで想定されることがありましたら教えていただけないでしょうか。お願いいたします。
【坂井プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
まず、1点目の御質問についてですけれども、我々は数値シミュレーションみたいな、流体の数値シミュレーションみたいなことを通じて、いろいろな検討を行ってきたところでございますけれども、その結果からすると、パラメータ等によって、いくつかのパターンがあり得るようでして、場合によっては、必ずしも12台全部が同時に噴射をしなくても、一定以上の台数が同時噴射をすれば、こういうことが起こり得るのではないかというふうに考えているところでございます。
それから、2点目にいただいたところは大変重要なところでございまして、まず途中でも申し上げましたけれども、これは圧力が全体的に下がってきているというところが大きな背後要因になっているのかと思います。
その意味で言いますと、これも個別の衛星、あるいは着陸機の設計によるのですけれども、いわゆる調圧方式のような形を使って、圧力が下がりにくいよう、圧力を一定の状況で使っているものについては、比較的にはこういうことは起こりにくいだろうというふうには考えています。
いずれにしろ、今回の調査を通じて、だいぶいろいろなことが分かって、知見も得られて、整理をすることができていますので、具体的にどういう場合に、この事象について心配をする必要があるのか、あるいは心配だということに、心配をするべき状況である可能性があるということが分かったときに、どういったような検討すれば、安心できるのか、そうでないのか、ということがだいぶ整理ができましたので、今御報告の中でも申し上げましたけれども、その辺りの知見をまとめて、関係するメーカを含めた関係者には情報展開が行われているところですので、そういったものをきちんと見ていただくことで、今後については同じようなことが起こることを避けることができるのではないかというふうに考えているところでございます。
【秋山委員】 御説明ありがとうございました。
【村山部会長】 それでは続きまして、芝井委員、お願いいたします。
【芝井委員】 最初に聞いた時に、やはり、いかにも日本の宇宙技術の長所をうまく活かしたようなプロジェクトに成功したということで、大変嬉しく思っております。御苦労さまでした。
質問は、やっぱりこういう実際に実験をやってみるということの一番の価値というものは、想定していなかったことが起きるということが、実際にやってみたら分かるということでして、そういうことで言いますと、やっぱり3回越夜したあとも運用できたということは、非常に想定外のものだったと思うのですが、もちろん詳しくはまだ検討中だと思いますが、今現時点で、何が起こったかについて、特に技術的に何が起こったかについて、想定外に「あ、こうだったのか」というようなことがありましたら、もしお話できることがありましたら、教えていただければと思います。以上です。
【坂井プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
ちょっとまだそちらの検討については、プロジェクト解散後も、今後も引き続き行っていく予定ということになっていることもありまして、まだオンゴーイングなところが多くございますので、今の時点で、何かこれというところは、あまり残念ながらお話することができないのですけれども、例えば先ほどの御報告の中でもお伝えしたような、越夜によってどういうところの温度がどう変わっていったのか、というところについては、少し状況が分かってきたようなところもありますので、なぜこういうことが起こったのか、例えば、探査機本体からの放熱の性能に何らか変化が起こったのではないかといったようなところの仮説を立てたりしながら、いろいろな形で今検証を進めているところでございますので、この辺りについても、少しまとまってきた段階では何かの形で御報告できる範囲については御報告していきたいというふうに考えているところでございます。
【芝井委員】 ありがとうございました。
【村山部会長】 ありがとうございます。もう1名お手が挙がっております。それでは最後に、木村委員、お願いいたします。
【木村委員】 ありがとうございます。
皆様おっしゃっていますけれども、素晴らしい成果で大変嬉しく思っておりますし、非常に社会的なインパクトも大きかったと思います。質問は2点、技術的なところで質問させてください。
1つは、今回のピンポイント着陸で画像航法誘導は、制御系もそうですけれども、センシングの方で、かなり新しい試みをされたということで、これが世界的にどういう位置づけになっているかということを一つサマライズいただけるとありがたいと思います。
それからもう1点は、これは光学ミッションですので、今後この技術が、例えば「はやぶさ」に対して「はやぶさ2」があったように、今後技術として活用されていくと考えられるのですけれども、その計画について、もし教えていただければ、お願いできますでしょうか。
【坂井プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
まず1点目の方ですけれども、レーティングということのきちんとしたお答えになるかどうかはあれですけれども、御承知のことかと思いますけれども、この辺り、画像照合航法自体については、以前から各国でも開発等が行われていて、あるものについては、例えば着陸機に試験搭載もしてみるといったようなことも例として見られてくるようにはなっていたという状況になっているのかと思います。
ただし、いずれにしても、実際にこれを月面着陸で使って、しかもピンポイント着陸の性能までたどり着いたというものは、もちろんまだSLIMしかないわけですので、直接話を聞いているわけではありませんけれども、きっとそういう目で世界の方々も見てくれているのではないかというふうには思っているところでございます。
それから、2つ目にいただいたところ、その点もすごく大事なところだと思っておりまして、資料の方には記載しませんでしたけれども、例えば、LUPEXなどにおいても、ランダは日本が作るわけではないという今計画になっているのですけれども、日本側でも何らかのクロスチェック的な形で、SLIMで得られた知見を使うという話も耳にしているところでございますし、それから、資料にも記載させていただいたとおり、月着陸を実施する国内の民間事業者に提供していくということについても、今調整が行われているところでございますので、この辺りを通じて、もちろんSLIMは工学技術実証の衛星でありますので、我々としても、この辺りの技術継承については、しっかりやっていきたいと思っているところですので、その辺り、今申し上げたようなことを続けて行っていきたいと思っているところでございます。
【木村委員】 ありがとうございます。
【村山部会長】 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの御質問も踏まえまして、宇宙開発利用部会として、資料93-1について、特に18頁に記載されたJAXAの審査結果に同意するものとしたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。非常に評価が高かったので特に異論はないと思いますが。
それでは、これで決定としたいと思います。坂井プロジェクトマネージャ、どうもありがとうございました。
【坂井プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございました。
【村山部会長】 それでは、次の議題に移らせていただきます。
次の議題は、「イプシロンSロケット第2段モータ再地上燃焼試験における燃焼異常原因調査状況について」です。
先月末に種子島の試験場で実施されたイプシロンSロケット第2段モータ再地上燃焼試験におけるモータ爆発からほぼ1か月が経過しました。本日は、ここまでの原因調査の状況について御説明いただきます。
それでは、JAXA宇宙輸送技術部門の岡田理事、イプシロンロケットプロジェクトの井元プロジェクトマネージャ、資料の御説明をお願いいたします。
【岡田理事(JAXA)】 岡田でございます。よろしくお願いいたします。
11月26日に第2段モータの地上燃焼試験での爆発によりまして、イプシロンSの今年度中の打上げができなくなりました。
宇宙計画に大きな影響を与えましたこと、そして、昨年7月の秋田県の能代ロケット実験場での試験に続き、今回2度目の爆発事象であるということを踏まえまして、当日中にJAXAとして原因調査チームを設置いたしまして、外部有識者を含めた万全の体制を整えて、私もその任にあたっております。
本日は、この1か月ほど取り組んでまいりました原因調査の状況につきまして、井元プロジェクトマネージャから説明させていただきます。よろしくお願いいたします。
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 それでは、井元から資料の説明をいたします。3頁をお願いいたします。
これが原因調査の全貌を示しておりまして、その中で本日御説明することは、赤で囲っております事象の概要、それから、原因調査の緒に就いたところですけども、その概要を示させていただきます。次の頁をお願いいたします。
本日の報告内容、概要を示しておりまして、まず、原因調査状況といたしまして、試験データ全体の確認をいたしました。その結果、以下の3つの事象を確認しております。
まず1つ目は、点火後約17秒から燃焼圧力が予測値と乖離し始めまして、高い側に徐々に拡大しております。
それから、2番目としまして、約48.9秒時点で燃焼圧力が下降しました。これは燃焼ガスが後方でリークしたというふうに判断しております。
3番目としまして、49.3秒の時点で燃焼圧力が急激に下降ということで、これは後方で圧力容器が破壊、爆発したというふうに判断しております。
丸1と丸3の事象は、能代の事象に近い状況になっておりまして、丸2につきましては、燃焼ガスリークにつきましては、能代の爆発のときには確認できていないと、そういう違いがございます。
把握した事象を踏まえまして、3つをトップ事象としたFTAを展開して評価を開始したところでございます。能代との違いは後ほど御説明いたします。
試験データの詳細評価は一通り終わったのですけども、現在、回収品を回収している途中段階ですけども、その分析、それから設計・製造・検査データを詳細に評価しているところでございまして、FTAの中で要因の絞り込みを進めていきたいというふうに考えております。それから、設備の損傷状況についても概要を御説明いたします。
続きまして、6頁目からが、イプシロンSロケットの概要を示しておりますけども、こちらは説明を割愛させていただきます。
8頁に2段モータの強化型、6号機までのモータと、今回のイプシロンSのモータの違いも示しておりますが、本日は詳細を割愛させていただきます。
それから、10頁に移っていただきまして、再地上燃焼試験計画になります。こちらの試験目的、これは昨年7月に発生した燃焼試験の、燃焼異常の対策を含めて、2段モータの設計妥当性を検証するものとしておりました。計測項目は約200点になります。
11頁をお願いいたします。試験実施結果概要を示しておりまして、発生時刻としましては、点火後約49秒ということで、元々120秒のところが半分弱のところで異常燃焼が発生したというものでございます。
被害状況といたしましては、人的被害、それから第三者の物的損傷はないということ、それからJAXA設備につきましては、スタンド設備の損傷と、扉等、周辺設備の破損になっております。
スタンドへのセット状況ということで、能代と違いまして、種子島では、SRB-A、あるいはSRB-3の燃焼試験をする設備でございまして、モータとしては非常に長いものの地上燃焼試験をする設備です。
それに対しまして、2段モータは短いものですので、赤で囲った部分が供試体、それ以外は試験用の設備ということで、このような円筒状の推力を伝えるものを使って、後方側、赤で囲った部分の2段モータの燃焼試験を実施したということになります。次の頁をお願いいたします。
こちらが計測項目の例を示しておりまして、全ての計測項目を確認いたしました。それに基づいて把握した事象の概要、特徴的なものを示しております。
まず、燃焼圧力データですけども、ちょっと拡大しないと分からないのですけども、左の図で黒いものが予測、黒い実線が予測、設計予測になります。それに対して、破線が能代で発生したもの、それから赤が今回の再地燃の結果になります。
点火後約17秒時点から、元々点火直後から若干予測よりも圧力が高いのですけども、17秒時点から顕著に差が拡大し始めまして、設計予測と異なっているというものでございます。
その最後の部分を拡大したものが右の図になっておりまして、48.9秒の時点で燃焼圧力が少し下降を開始しております。それの0.4秒後に急下降ということで、ここで爆発が発生したというふうに考えております。
このいずれの圧力も、最大使用圧力であります8.0MPa、それから保証耐圧圧力であります8.8MPa以下の事象で、以下で発生しているということで、こちらも能代の事象と近い状況になってございます。次の頁に画像を示しております。
左の列の上と真ん中につきましては正常な状態ですけども、左の一番下のところで、発光と書いていますけども、光、もしくはガスがモヤモヤと出ているというものが、時間を経つにしたがいまして拡大していくのがよく分かるかと思います。一番右の真ん中のところで爆発しておりまして、燃焼圧力が急降下の時点というふうに考えております。
つまり、左下の時点が48.9秒、右の真ん中の時点が493秒というふうに考えております。この画像については、手動でタイマスタートしておりまして、試験データと非同期ということで、先ほどの圧力データの秒示の方が正しいということになります。次の頁をお願いいたします。
それから、別の画角で調べたものを示しておりまして、左の列につきましては正常な状態。これは前方から、斜め前から取得しているものですけども、2列目の上のところ、そこで燃焼ガスと思われるものが出ているということ。それから、3列目の上の方ですけども、下の方からも出ていると。この上か下かにつきましては、ちょっとこの画角ではよく分からないものでして、いろいろな画角から撮っているのですけども、現時点で画像データからは、どの位層が先に燃焼ガスが漏えいしたかというのは、現時点ではまだ分かっていないという状況です。その後、一番右下になりますけども、爆発しているという状況になります。
15頁は飛散した状態を撮ったものでして、こちらの説明は割愛させていただきます。それから16頁をお願いいたします。
こちらは下の方に、加速度と歪データの変動した順番を書いておりまして、48.9秒時点の加速度データ、真ん中の図の左側ですね。加速度の変動順を示しておりまして、TVC、ノズル、後方スカートという順番で変動しているということ。それから、前方スカートは変動していないということを確認しております。有意な変動はしていないということです。
それから、右の図が歪でして、歪は加速度を計測していない後方ドームのところについても計測しておりまして、この後方ドームというモータケースの部分ですね。そこが最初に反応して、そのあと、TVC、ノズル、それから後方スカートという順番で変動していると。そのほかは有意な変動がないということで、こういったものと、あとは先ほどの画像データから、モータの後方から燃焼ガスがリークしているというふうに判断しております。
それから、493秒時点、燃焼圧力が急下降した時点になりますけども、ここのところも、断線あるいは短絡をしているのですけども、その順番も、ノズル、TVC、後方スカートというものが加速度の順番になっています。あとは前方スカートという順番。後ろから前の方に。
それから、歪につきましても、後方ドームが先で、ノズル、TVC、後方スカート、平行部、前方スカートという、丸1から丸7前方ドームというような、後ろから変動しているということと、画像から、後方から爆発したというふうに考えております。続きまして、17頁をお願いいたします。
48.9秒、この燃焼ガスがリークを開始するまでの供試体の温度履歴につきましては、こちらは後方の方が若干温度は高め、これは外表面の温度を計測していますけども、1℃から5℃程度上昇しているということ。前方の方は、0℃から2℃程度の上昇にとどまっているということ。
これは特段大きな異常ではないという状況ですけども、48.9秒以降の時点も、これは0.1秒ごとにしか計測しておりませんので、さらに短時間での現象については正確に温度が測れているかどうかはまだ確認ができていないところですけども、後方側で温度が7度程度まで上昇しているということ、前方では0.2度程度ということで、こちらも後方から事象が発生したということの裏付けになっております。続きまして、18頁をお願いいたします。
供試体ですけども、まず地上に飛散しておりますモータケースはかなりバラバラになって、断熱材、インシュレーションですね、こういったものもバラバラになった状態ですけども、回収できるものについては全て回収いたしました。それから、ノズルの一部、それからノズルとの結合部ですね、こういったものも回収しておりまして、今のものは陸上の話になります。
海中のものにつきましても一部回収が終わっていまして、本日ノズルの後方側の供試体も海の中から回収いたしました。一方で、まだ海中には重要な部品が飛んでいるというふうに推定しておりますので、海中回収作業につきましては継続しております。
回収品につきましては、昨日回収したものを除いて、工場に輸送しておりまして、今鋭意分析しているところでございます。
それから、前回はイグブースタが溶融したということで、そこが原因であろうというふうに推定していたのですけども、そちらにつきましては、対策をとった結果、溶融していないということも確認しております。
それからイグナイタについても回収できておりまして、外観目視上溶融してないということを確認しているというものでございます。続きまして、20頁をお願いいたします。
原因調査の状況ということで、FTAを展開しております。前回と事象が似ているということで、前回の原因が正しかったかどうかというところも含めまして、あらゆる可能性を考慮して原因調査を進めているところであります。
それから、試験データに基づいて抽出した特記すべき事象を全てを、3つ、FTAのトップ事象といたしまして、FTAを展開していきます。
能代では、丸1と丸3が基本的には発生しているのですけども、この丸3の事象をトップ事象として、丸1は強い相関があるということで、FTAを作っておりませんでしたが、今回は、そちらに因果関係があるかどうかも含めて検討するということで、それぞれのFTAを展開して、結果的に相関があるかもしれませんし、ないかもしれません。そういうところを幅広く、徹底的にFTAを潰していくということを考えております。さらに丸2番についてもFTAを展開して、どこからガスがリークしたのかというところを特定していきたいというふうに考えております。
右下のところに、後方で発生したということで、そこの登場人物を書いておりまして、まずモータケースの後ろ側、後方ドームというふうに称しているもの。それから、ノズルが分かりやすいかと思います。そのモータケースとノズルを結合している結合部が、この3つが大きく登場人物になります。そういうことを念頭に置いた上でFTAを見ていただければと思います。21頁をお願いいたします。
まず、最初の点火後約17秒からの圧力の乖離ですけども、こちらは1次要因として2つ展開しておりまして、推進薬の燃焼面積の増加と進行速度が速いというもの、これが全ての要因と考えておりまして、それらに対して設計・製造・組立・不良、これで全て網羅できているというふうに考えております。それから、22頁をお願いいたします。
燃焼ガスリークです。こちらにつきましては、先ほどの登場人物というか対象部品、これがB-1、B-3、B-5に示しておりまして、モータケースの後方ドーム、B-3がケース/ノズルの結合構造、それからB-5がノズルからのリークということになります。
B-2とB-4は、それぞれの間のシール面がありますので、ケースと結合部のシール部からのリークがB-2、それからノズルと結合部の間のシール部からのリーク、それをB-4というふうに考えて、これらを全て網羅できているというふうに判断しております。
それから、23頁をお願いいたします。最後のCのトップ事象であります爆発に対しまして、後方ドームが破壊したのか、それかケースとノズルの結合部から破壊したのか、それがC-2になります。C-3につきましてはノズルが破壊したのか、こういったものでFTAを展開しておりまして、さらにそれぞれの部材に対しまして、今回燃焼ガスがリークしたというものが能代と違うところになりますので、このリークしたガスによる影響かどうかというところで場合分けしております。C-1-1がガスによる影響、C-1-2がそれ以外の影響ということで、全ての場合分けになります。
全部の部材に対しまして、こういうFTAを展開いたしまして、まずは回収できた部品の分析をもとに、どういうところが要因ではないかということを判断いたします。そういったもので、まだ判断がつかないものについては、さらにFTAを深掘りしていって、原因を突き止めていくと。それから、それらのFTAのトップ事象の相関関係についても検討していくという形にしております。
続いて、25頁をお願いいたします。設備の損傷状況ということで、モータ、右の写真が分かりやすいのですけども、まずモータのモータケースにつきましてはバラバラになって、飛散しているという状況です。モータ以外の設備が焼損しているというものになります。次の頁をお願いいたします。
特に被害はスタンド内部に集中しておりまして、供試体が設置されておりました海側、モータ側の損傷が顕著でございました。続きまして、28頁をお願いいたします。
今後の計画になりますけども、2度目ということで、あらゆる可能性を考慮しつつ、展開した3つのFTAをもとに原因を絞り込んでいきたいというふうに考えています。
それから、さらに解析と試験の追加実施を今検討しているところです。
それから、2番目ですけども、竹崎設備、地燃設備の復旧計画を検討しております。
3番目は記者説明という形になりますけれども、1月は詳細な検討に充てさせていただいて、2月を目標に進捗報告を行うというふうに考えて計画しております。
それから、イプシロンSロケットの今年度の打上げですけども、技術的に不可能であるということをJAXAとして正式に確認していただきました。29頁をお願いします。
原因調査体制になります。今回、特に原因調査チームというものを設置いたしまして、IHIエアロスペースが設置していただいた対策本部と連携を取りつつ、原因調査を進めていく予定でございます。
最後に30頁で、参考ということで、H3への影響評価になります。H3につきましては、SRB-3とE-21、今回の2段モータですね、この設計の違い、それから、SRB-3の全ての製造データ等から、SRB-3をフライトへ供するにあたっての懸念事項はないというふうに判断しております。説明は以上になります。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
それでは、ただいまの説明について、御意見、御質問があればお願いいたします。挙手をいただければと思います。山室委員、お願いいたします。
【山室委員】 山室です。聞こえていますか。
【村山部会長】 はい、大丈夫です。
【山室委員】 御説明ありがとうございました。
18枚目に海中の回収作業を継続中とあったのですけれども、未回収の部分に、原因解明に不可欠なものはあるのでしょうか。
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 不可欠かどうかということは、まだ回収してみないと分からないのですけども、ぜひ回収したいというものが、モータケースのところの金属部材等がありますので、そういったものは、ぜひ何とか回収したいということになります。それがあると、原因究明に非常に役立つというふうに考えております。
【山室委員】 ありがとうございます。
海から部品の回収は、既に回収しやすい物は回収されていて、なかなか回収しにくいというか、見つかりにくいものがまだ残っているというふうに想像しておりますけれども、2025年2月に、28枚目で詳細評価が一通り取りまとめられるという、この御予定に、回収作業の進捗が影響するのかどうかということがちょっと気になりましたので御確認させていただきました。その点はいかがでしょうか。
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 回収できなければ、回収できないなりの調査になります。
回収できると、一気に原因調査が進む可能性もありますので、できるだけ回収していきたいというふうに考えております。
今、回収しようとしている部分につきましては金属部品でして、飛行状態から大体の場所を特定しようというふうに考えているのですけども、そういったものをもとに、金属探知機等を使って、砂に埋まっている可能性が非常に高いですので、そういう努力を今しているところでございます。
【山室委員】 ありがとうございます。
先ほども御発言があったように、2度失敗しているので、ぜひ万全を期すという意味では、2月に詳細評価というスケジュールにとらわれず、なるべく回収して、確信を得たところで進めた方がいいのかなと、今お話を伺っていて思いました。ありがとうございました。
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
そこは徹底的に実施したいというふうに考えております。
これは全て結論が出る時期というふうにはまだ考えておりませんで、かなり絞れる時期としては、この2月ではなかろうかなということで、目標という形で示させていただいております。
ここで完全に結論が出るという状況ではないというふうに思っておりますし、今回は特に徹底的にやっていきたいというふうに考えております。
【山室委員】 ありがとうございます。以上です。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは続きまして、笠原委員、お願いいたします。
【笠原委員】 御説明、本当にどうもありがとうございます。
また今回も非常に真摯に今回の件に関して調査にあたられているお姿を拝見して、改めて非常に頭が下がります。
ご無理をされないように進められるのがやはりいいのかなと感じておりますので、原因究明は重要なことだと思うのですが、それに携わるJAXAや関係者の方々の体のことも私はすごく心配しておりまして、やはりゆっくりと、まずご無理されないように進めていただきたいなと思っています。
1点やはりちょっとデータだけ確認させていただきたくて、燃焼圧力の12頁のグラフは、やはり基本的な圧力状況を示しているデータとして拝見させていただきました。
これは以前も質問した可能性が高いとは思うのですが、やはり耐えられる圧力の限界というものが、設計値としてはどれぐらいだったのかと。つまり、普通に燃焼しても7MPaぐらいの燃焼圧まで到達するような予定があるわけでして、今回事象が起こったところがやはり7MPaぐらいですので、通常の温度というか、外壁の構造であれば、やはり以て然るべき圧力で何らかの破壊現象が起きたのかなと、素直に理解しているところがございまして、そうであるならば、構造体がやはり弱くなる、何らかの事象が発生したのかなと。
前回の御説明ですと、確かインシュレータの部分への影響というか、その断熱層が破壊されているのが一つの要因だというふうに理解しましたが、今回も、やはり構造、本来持つべき構造部材が熱的に何らかの影響で弱くなったというふうに理解したいところですが、その辺り、つまりこの圧力データのみから、ある程度推察できる原因というものは、ある程度お考えがあるかなと思うのですが、その辺り、今の段階でもお聞きしたいところでございます。以上、質問になります。よろしくお願いいたします。
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 まずは温かいお言葉ありがとうございます。健康に気をつけて、まずは頑張っていきたいと思います。
御質問の回答ですけども、まず、この供試体以外の、前回地燃のモータで耐圧試験を実施しておりまして、10MPaまで耐荷しているものです。
今回のモータも、保証耐圧試験と書いております、8.8MPaで耐圧試験をやって耐荷しているものでございます。
ということで、常温の状態であれば、このくらいは持つ、耐荷するというものでございまして、今回はそれ以下の7MPaで爆発したということで、やはり熱的な影響というものを中心に考えることになろうかというふうに思います。
一方で、それ以外の部分も、やはりきっちりと潰していく必要があると思っておりますので、全ての可能性を検討していくというようなつもりで、今徹底的に設計結果等も、もう一度洗い直しているという状況でございます。
【笠原委員】 井元プロジェクトマネージャ、どうもありがとうございました。承知いたしました。ありがとうございます。
【村山部会長】 それでは続きまして、山崎委員、お願いいたします。
【山崎委員】 御丁寧な御説明ありがとうございます。
また、真摯に原因究明に対応してくださいまして、どうもありがとうございます。
先ほどの笠原先生との御質問からも少し重なってしまうかもしれないのですけれども、今回、能代で試験をしたときから、今回に試験をしたときの設計変更の部分というものは、イグナイタ、イグブースタの部分のみということでしょうか。
そちらは逆に今回溶けなかったということで、対策としては非常に効果が発せられたと思うのですけれども、ほかに変更された部分があれば教えてください。
もう1点お願いしたいものが、試験設備のことに関してですけれども、今回の復旧に、試験設備の復旧にはどれくらいかかると考えられていらっしゃいますでしょうか。2月により詳細な原因究明の、もう少しデータが出てきそうだということでおっしゃっていましたけれども、それも含めた今後の予定の見通しを、今分かる範囲で教えてくだされば幸いです。以上です。
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
最初の御質問ですけども、前回の地上燃焼試験から今回にかけて変えたものはイグブースタの断熱対策ですね、熱対策。
それから、その検証の過程で不具合が出ておりまして、イグナイタのところですね。その2つを設計変更いたしました。この2つのみになります。
そこは大丈夫だったということで、今回は別の要因というものを徹底的に洗い出さないといけないという状況でございます。
それから、設備につきましては、今はまだ外観検査というところで確認を終えたところでして、今後詳細な確認をした上で、並行してこういったものを全部新しく作る場合のスケジュールにつきましても、今まさに検討しているところでございまして、2月の段階で分かったところは御説明していきたいと思います。
今日の時点では、すみません、スケジュールについては説明できないという状況でございます。
【山崎委員】 承知いたしました。
こうした開発を支えるために、地上設備もとても大切だと思いますので、計画的にこれが改修され、さらによりよい地上設備になるようにしていただければと思います。ありがとうございます。
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 分かりました。ありがとうございます。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。ほかはいかがでしょうか。いいでしょうか。
それでは、御質問がないようですので、本件はこれで終わりたいと思います。井元プロジェクトマネージャ、誠にどうもありがとうございました。
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございました。
【岡田理事(JAXA)】 どうもありがとうございました。
【村山部会長】 それでは、次の議題に移らせていただきます。
次の議題は「第30回アジア・太平洋宇宙機関会議(APRSAF-30)結果について」です。
APRSAFは1992年に開催されたアジア太平洋国際宇宙会議における日本からの提案をもとに開催されており、今年は30回目の記念の年となっております。
それでは、JAXA佐藤理事、調査国際部の小野田部長、資料の御説明をお願いいたします。
【佐藤理事(JAXA)】 佐藤でございます。
本日は、今御紹介いただきましたとおり、日本が主導して、文部科学省とともに開催国と共同開催をしてきておりますAPRSAFにつきまして御紹介のお時間をいただきましてありがとうございます。
このAPRSAFにつきましては、参加国、あるいは地域といったものを拘束せずに、オープンな会議体として運営してきておりまして、政府機関、あるいは宇宙関係機関、それから大学研究機関、あるいは国連等の国際機関の参加のみならず、近年では民間のセクターからの参加者もかなり増えているということで、非常に活発な議論が行われるものになってきたかなというふうに考えてございます。
目的としておりますものは、アジア太平洋地域における宇宙活動の平和利用、あるいは社会課題の解決、それから経済発展の有効なツールという形で機能してきているというふうに考えてございます。
本日は、今年オーストラリアで開催しました30回目の開催状況や成果に加えまして、30回の節目ということで、過去を振り返りつつ、今後どうやっていくかという、その取組の方向性についても整理してまいりましたので、説明は調査国際部の小野田部長の方から行いますけれども、忌憚のない御意見をいただければと思います。
それでは、小野田さん、よろしくお願いいたします。
【小野田部長(JAXA)】 ただいま御紹介にあずかりました調査国際部の小野田と申します。
村山部会長には大変御無沙汰しておりまして…。
【村山部会長】 御無沙汰しております。お久しぶりです。どうも。
【小野田部長(JAXA)】 お久しぶりです。どうぞよろしくお願い申し上げます。
アジア太平洋地域宇宙機関会議APRSAFでございますが、紹介にありましたように、日本からの提案をもとに1993年より、ほぼ毎年開催しておるもので今年30周年、30回目を迎えました。
例年約30カ国、地域、500人以上が参加する会議へと近年は発展いたしまして、大変盛況な形で毎年開催しております。
参加するため、メンバーシップ制度を設けていないというところが比較的ほかの国際会議と異なる特色かと思っておりまして、オープンな会議体として、アジア太平洋地域の関係機関、大学、国際機関が参加しております。
近年では、また産業の促進の観点から、民間セクターからの参加も増加しておりまして、各地域からの活動報告のほか、具体的な協力活動というものをこのフォーラムの中で行ってきております。
下のグラフに表示してございますように、90年代から見ますと、隔世の感のある参加者数の伸びかと存じます。次をお願いします。
APRSAF-30の結果概要ということで御説明いたします。今年は11月26日から29日、西オーストラリア州パースで開きました。テーマは「持続可能で責任ある地域宇宙コミュニティの連携共創」ということでして、オーストラリア宇宙庁(ASA)、それから文部科学省、JAXA、それから豪州側の開催支援機関として、西オーストラリア州政府の支援のもとに開催しております。
総合議長はASAのGeneral Manager、Chris Hewitt氏と、それから文部科学省の橋爪審議官に総合議長をしていただきました。
また、右の写真にも出ておりますけれども、本会合においては、あべ文科大臣の御挨拶もビデオでいただいた次第です。
参加者数560名、現地参加がほとんどでございましたが、オンライン参加も大勢いただいております。
それから、過去最大の出展団体数ということで展示も行っておりまして、今後のAPRSAF開催予定といたしましては、31回をフィリピン、32回目をタイで開催する予定です。次をお願いします。
2つ成果文書が大きくございまして、1つ目は共同声明、下にございますがJoint Statementを採択いたしました。こちらでは、APRSAFにはいくつかワーキンググループがございますが、ここに挙げてございますように、地域共通の様々な課題解決の促進をセンチネルアジアや政府といったイニシアティブを通じて議論してまいりました。そして、衛星データの活用、社会課題の解決といったことについて議論しております。
それから、「きぼう」の実験等を活かした科学技術及び人材育成に関する協力ですとか、また宇宙教育会議、それからそのもとにあるポスターコンテス、ト天体観望会など、そういった活動ですとか、それから、システムズエンジニアリング等の技術基盤向上を図るべく意見交換を行うなどといったことをしております。
それから、宇宙法制イニシアティブ(NSLI)と呼んでおりますけれども、これに関連した報告ですとか、それからSpace Sustainabilityをテーマとした合同セッションによって、宇宙機関や民間等により、技術的な観点と、それから法政策的な観点を合わせた取組状況を共有しまして議論するといったような取組をしております。
それから、産業のワークショップも開催しておりまして、こうした成果をまとめてJoint Statementとして採択しております。次をお願いします。
名古屋ビジョンを改訂したというものが2番目の成果文書でございますが、こちらは2019年に結んだ、採択したビジョンでございまして、今後APRSAFの全体の活動と運営のビジョンを描いたものでございます。
今年、2024年、5年経ったところでAPRSAF名古屋ビジョン改訂版というものの採択をしております。以前、比較的ふんわりと書いておりましたオープンな協力を進めていく場とするというような表現をより具体化いたしまして、民間等との共創(パートナーシップ)活動の機会提供を進めていくこと、社会課題の解決を通じた経済発展に貢献すること、といったことを明記いたしまして、その下にございます4点、社会課題の解決、持続可能な宇宙活動の発展、人材育成、能力強化、民間宇宙セクターの成長の促進、宇宙開発や科学技術に関する情報交換の機会を提供、といったことをまとめたものが今回のビジョン改訂でございます。次をお願いします。
振り返りでございますが、今回は30年の振り返りということでございまして、それから今後の取組ということについて最後に述べさせていただきたいと思います。
まず、地域の防災や気候変動等の社会課題の解決、それからネットワーク形成に貢献したと評価をしております。
社会課題の解決、ここにありますように、それから宇宙活動に対する同地域のネットワーク形成に貢献するということで、センチネルアジア、「SAFE」、「Kibo-ABC」といった、具体的なプロジェクトを提供し、これらに多くのアジア太平洋の国々に参加いただいているという取組を長年にわたって続けさせていただいていることで、大きく人脈を含めたネットワーク化が進んでいるというふうに考えます。
それから、2番目としまして、現在500人以上の会議に成長しているというお話をいたしましたが、地域最大規模の宇宙関連会議へ発展してきたということがもう一つ大きく言えるかと思います。メンバーシップ制度を持たない開かれた集まりということで、その特色を活かして、アジア太平洋地域、また関連の地域から多くの参加者を得ております。
3番目ですが、ビジネス機会創出、それから外交の推進といったことを、より広い観点から効果を得られているのかなというふうに思っておりまして、政府と連携し、マルチやバイオでの国際協力、対話、そしてそれを通じた宇宙外交の推進に貢献できているのではないかと考えております。
また、民間セクターからの参加者の増加を受けまして、この場を通じた官民のネットワーキング機会を提供することができておりまして、ここでビジネス機会を創出できているのではないかというふうに考えております。
今後の取組でございますけれども、改訂版の名古屋ビジョンの実現に向けまして、各活動を推進いたしまして、引き続き、持続的な社会・経済の発展への貢献を目指したいと考えておりまして、これをコ・クリエーション、それからパートナーシップの機会提供の場として、今後も広く皆様に活かしていただきながら、日本として力強くリードしていきたいというふうに考えております。以上でございます。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
それでは、ただいまの御説明について、御意見、御質問がありましたら、お願いいたします。まず鈴木委員、お願いいたします。
【鈴木委員】 鈴木でございます。この度は御説明ありがとうございます。
アジアを中心とする地域のコンセンサスを形成していくということにおいて、非常に重要な位置づけの取組をしていただいていることを改めて認識させていただきました。
1件質問させていただきたいのですけれども、基本的にはJoint Statementと、あとは改訂版の名古屋のものですね。こちらの採択という、この採択されるプロセス、どういう形で採択されたとするのか、起案から採択されるまでのプロセスについて教えていただければと思っています。参加した人が、全員これに合意しているのか、運用の仕方などについて教えていただきたいです。
【小野田部長(JAXA)】 大変重要な点、御質問ありがとうございます。
オープンな場でメンバーシップがないということで、どうやってコンセンサスを取るのかというふうに思っていただけたのかなと思いますが、基本的にはExCOMというエグゼクティブコミティでございますね、過去の開催国、現在の開催国、将来の開催国、そして日本、文科省とJAXAを中心としたステアリングコミュニティのようなものがございまして、そこにおいて、まずはドラフト、起草していくという作業をいたします。
その中で、ドラフトし、ある程度委員として合意がとれたものを、今度はワーキンググループという、組織上は照会をかけられる対象がありますので、各ワーキンググループにこれを照会していくということ、そして最後は、APRSAFのホームページ上で、各参加者がこれを見ることができるという状態において、最終日プレナリーの場でコンセンサスを全参加者から取るという形で合意を得ています。以上です。
【鈴木委員】 よく分かりました。ありがとうございました。
要するに会場でどなたかが反対みたいな話をされたときの処理みたいなものとかも具体なプロセスとして、場合によっては割とあるのかもしれませんが、ホームページ上で書かれているということで、反映されるべき意見は反映されて、ブラッシュアップされたものが最終意見として採択されているということで理解させていただきました。ありがとうございました。
【小野田部長(JAXA)】 左様でございます。
【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして、米澤委員、お願いいたします。
【米澤委員】 どうもありがとうございます。米澤です。
非常に重要な取組だと思ってお伺いしていました。1点教えていただきたいのは、具体的な日本の貢献について、特に私はリモートセンシングを専門としていますので、衛星データの利用など、非常に重要な役割を果たしているのではないかと思いまして、この度のALOS-4なども含めて、これまでの取組と今後の貢献について教えていただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
【小野田部長(JAXA)】 また重要な質問、どうもありがとうございます。
ちょうど補足資料を準備いたしているところの御質問をいただきましたので、10頁と11頁にあたりますが、こちらを御覧いただきながら、というふうに思います。
例といたしましては、センチネルアジアといった、これは災害管理への貢献ということで、図が多少細かくございますが、日本のALOSデータを含めた、アジアを中心とする衛星保有国、ここではインド、タイ、台湾、シンガポール、フィリピン、ベトナム、UAEといったことを挙げておりますが、衛星観測を実施しつつ、センチネルアジアに参加している国から要望があったときには、その国での災害の緊急観測を行っていくというものでして、災害チャータといった取組を御存知の方もおられるかもしれませんが、それのアジア版といったふうに御理解いただけるとよいかと思います。もちろん、その中ではJAXAの衛星が非常に役立てられているところかと存じます。
次の頁では、11頁でございます、お願いします。宇宙技術による環境監視(SAFE)ということで、こちらはもう少し環境よりのアプリケーションをいろいろと連携して行っていくというプロジェクトですけれども、近年の最近の例ですと、3つ上がっている中の一番下にあります、CH4Rice、CH4は御存知のメタンでございますけれども、水田の水位をLバンドSARから観測することによって、水位を特に稲を通じて上手に観測できるということは、おそらく御存知と思いますけれども、そういった水位の調整を行うことによって、メタン排出をある程度調整できるという研究結果からプロジェクト化しているものでして、将来的にはカーボンクレジットなどに活用できるのではないかということでALOS-2を用いた水田の水張り状況の把握といったようなプロジェクトを各国協力して進めているなどの例がございまして、ほんの数例を挙げさせていただきましたけれども、このようにして利用を各国で進めていただくということを、このAPRSAFの中で議論して、結果このようなプロジェクトに結びつけるというようなことをしております。以上です。
【米澤委員】 どうもありがとうございます。もちろん、ALOS-4も利用の御予定でしょうか。
【小野田部長(JAXA)】 今後はそうですね、はい。
【米澤委員】 ありがとうございます。楽しみにしております。
【小野田部長(JAXA)】 ありがとうございます。
【村山部会長】 ほかはいかがでしょうか。いいでしょうか。
日本の宇宙機関として、アジア太平洋地域へのアウトリーチ活動として、非常に重要な活動と考えます。今後とも、小野田さん、どうぞよろしくお願いいたします。
【小野田部長(JAXA)】 よろしくお願いいたします。ありがとうございます。
【村山部会長】 小野田さん、ご説明ありがとうございました。
それでは、本件はこれで終了させていただいて、次の議題に移らせていただきます。
本日最後の議題は、「宇宙基本計画工程表(令和6年度改訂)及び令和6年度補正予算における文部科学省宇宙関係予算について」です。
昨日開催された宇宙開発戦略本部において、令和6年度の宇宙基本計画工程表の改訂版が、本部決定されました。またさらにその1週間前の12月17日には、令和6年度の補正予算が成立しています。
本日はこれら2つについて、事務局より説明をいただきます。それでは、阿部企画官、資料の説明をお願いいたします。
【阿部企画官(事務局)】 事務局阿部でございます。
まず1枚めくっていただきまして、宇宙基本計画工程表のポイントでございます。少し細かくなってございますけれども、特に文部科学省関係のところを中心に御説明いたします。
まず、1ポツ目、宇宙安全保障の確保のところでは、真ん中ほどになりますけれども、新型宇宙ステーション補給機で計画している宇宙実証プラットフォームを活用し、赤外線センサ等の宇宙実証を実施するという旨の記載がございます。
続いて、2ポツ目、国土強靱化・地球規模課題への対応とイノベーションの実現というところにつきましては、小型光学衛星による観測システム技術の高度化や革新的なライダー衛星の実現に向けた技術開発等を推進する。
また真ん中あたりになりますけれども、災害状況把握等への寄与が期待される先進レーダ衛星(ALOS-4)について、定常観測運用を開始し、データ提供を開始するということ。
少し下になりますけれども、温室効果ガス・水循環観測技術衛星(GOSAT-GW)の2025年度前半の打上げに向け、開発を着実に進めるといった旨を記載してございます。
続いて、3ポツ目、宇宙科学・探査における新たな知と産業の創出というところです。こちらにつきましては、今画面で出ております記載事項4点が全て文科省関係でございますが、アルテミス計画に主体的に参画し、有人与圧ローバの開発等を推進。
それから、日本人宇宙飛行士による月面着陸を含む2回の月面着陸の実現を目指す。
小型月着陸実証機(SLIM)で実証したピンポイント着陸技術を発展させ、研究開発を実施するということ。
それから、インド等との国際協力の下、月極域探査機の開発を進めるということ。
さらに火星衛星探査計画の探査機を2026年度に打ち上げるべく開発を進めるということ。
国際的なプラネタリーディフェンスの活動として、国際協力の枠組みへの参画を検討する。
さらに宇宙、日本実験棟「きぼう」の運用、利用拡大と成果最大化に向け必要な施策を検討、実施する。
それから、2025年度以降のHTV-X1号機から5号機の打上げに向けた開発及び運用を行い、ISSへ安定的に物資供給を行うとともに、2025年以降のISS運用延長期に係る共通システムの運用について、各局との協議等を進めると。
そして、宇宙ステーションの運用主体が民間になることに伴い必要となる枠組み等の検討といったものを進めるといった旨の記載がございます。
最後、一番下になりますけれども、4ポツ目、宇宙活動を支える総合的基盤の強化というところにつきまして、まず、基幹ロケットについては、国際市場に対する打上げ能力の獲得を目指した高度化と打上げ高頻度化を推進するとともに、次期基幹ロケットの検討に着手する。
また、民間事業者によるロケット開発、コンポーネント、地上系設備等に係る研究開発を推進するとしております。
真ん中ほどにありますけれども、商業デブリ除去実証のこれまでの成果等を踏まえ、スペースデブリの低減・改善に資する技術開発に取り組むこと。
その下になりますが、宇宙技術戦略を参照しつつ、SBIRや経済安全保障重要技術育成プログラム、宇宙戦略基金等を活用し、スタートアップを含めた民間企業や大学などを支援する。
それから、宇宙戦略基金については、速やかに総額1兆円規模の支援を行うことを目指すとともに、宇宙分野への新規参入促進や新規事業の創出、事業化へのコミットの拡大等の観点から、スタートアップを含む民間企業や大学等の技術開発への支援を強化・加速する。
また併せて、政府によるアンカーテナンシーを確保し、国際競争力のある民間企業の事業展開の好循環を実現する。
それから最後に、大阪・関西万博の機会も捉え、宇宙開発利用の意義及び成果と価値、重要性について、情報発信を行うといったことがポイントとして記載されてございます。次の頁を御覧ください。
この行程表の中で、様々な行程表を示されているわけですけども、その中でも打上げのものについて、ここでは資料を示させていただいております。
ポイントとしましては、昨年12月以降のプロジェクトの進捗状況等も踏まえまして、具体的にはH3ロケット30形態試験機の打上げ予定を令和7年度に設定したこと。
それから、新型宇宙ステーション輸送機HTV-X4号機、5号機の打上げ予定を令和9年から12年度に設定したこと。
加えて、有人与圧ローバの打上げ予定年度を令和13年度に設定したこと、というところがございます。
また先ほど御説明いただきましたイプシロンSロケットに関しましては、燃焼試験結果を踏まえ、打上げ予定を今後調整するということが、画面上では見にくいのですが、下の米印のところに記載しているというところがポイントとなってございます。
続きまして、補正予算の関係の説明になります。今回の補正予算でも宇宙関係は様々な取組を加速するために予算措置をいただいております。
まず1つ目が基幹ロケットの開発・高度化、打上げ高頻度化、人工衛星の研究開発等というところでございますけれども、中ほど事業内容のところです。
まず、基幹ロケットの開発・高度化につきましては、H3ロケットの運用や、打上げ基盤等の更新を行うとともに、高度化に向けた研究開発を行うというものが盛り込まれております。
それから、打上げ高頻度化の対応ということで、基幹ロケット運用段階での製造能力の向上や、打上げ間隔の制約緩和等に資する施設整備等を行っていく旨のことが盛り込まれております。
それから右側、人工衛星の研究開発等のところですけれども、降水レーダ衛星や、高度計ライダー衛星、それから高感度太陽紫外線分光観測衛星、それから彗星探査計画、これらの取組を前倒しして実施することに関して、予算措置されているというところでございます。
それから次の頁のところでございますが、月での有人活動等を行うアルテミス計画の推進というところで、有人与圧ローバの開発、火星衛星探査計画、新型宇宙ステーション補給機、月極域探査機、月周回有人拠点、これらの取組を加速していくための予算ということで、右上に書いてありますが439億円というところを確保しているというところでございます。
最後になりますけれども、宇宙戦略基金の関係でございます。昨年度の補正予算で、政府全体として3000億円が確保されまして、その第1弾につきましては、既に公募を終了して、現在順次採択結果が出されていっているという状況でございます。
第1弾の確保した予算については、そういった形で資金需要の目途が大体立っているという状況なども踏まえまして、今回の補正予算で新たに3000億円が計上されております。
そのうち、文部科学省につきましては、1550億円を確保したというところでございまして、今後昨年同様に実施計画等を策定の上、順次公募をしていくということになります。事務局からの説明は以上となります。
【村山部会長】 どうもありがとうございました。
それでは、ただいまの説明について、御意見、御質問があればお願いいたします。いかがでしょうか。秋山委員、お願いいたします。
【秋山委員】 秋山です。よろしくお願いいたします。
最後に御説明いただいた宇宙戦略基金の事業について、ちょっと確認というところもあって質問させていただきたいのですけれども、令和6年度補正予算に3省で3000億円が計上されていて、これから検討を進めるというのは、これは令和7年度、2025年度以降に戦略基金の、要は募集の第2弾の検討が始まるという理解でよろしかったでしょうか。その確認です。お願いいたします。
【阿部企画官(事務局)】 ありがとうございます。
予算としては補正予算で措置されましたので、これから検討していくことになりますが、年度内にも検討が一定程度進むと思いますので、年度を超えて来年度になるかどうか、その辺のタイミングがちょっとこれからになりますけれども、いずれにしましても、準備が整い次第、どこかのタイミングで公募をしていくということになろうかと考えております。
【秋山委員】 分かりました。ありがとうございました。
【村山部会長】 続きまして、鶴岡委員、お願いいたします。
【鶴岡委員】 ありがとうございます。鶴岡です。よろしくお願いいたします。
アルテミス計画についてお伺いしたいと思います。アルテミス計画自体は、トランプ政権ときに始まったわけですけれども、今回改めて、1月のトランプ政権が発足して、アルテミス計画の将来がどうなるのか、ということに関して、アメリカ国内では、様々な懸念の声なども上がっているかと理解しています。
これはもちろん日本としては、基本的にこれは計画通り継続されるという前提で、日本の担当する場所を粛々とやっていくということだとは思いますけれども、今後、アメリカ国内でこの計画の変更などの動きがあったときに、日本としてはどのような基本的な方針でいるのか、ということで、それに関連しまして、やはりアメリカで今一番大きい声が上がっているとしたら、やはり月よりも火星の方がよりプライオリティが高いというような議論なのかもしれません。
そうしたときに、そうした声に対する日本の基本的な立場ということについて、可能な範囲でありましたら教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【原田戦略官(事務局)】 すみません、よろしいですか。宇宙利用推進を担当している原田と申します。
アルテミス計画、国際宇宙ステーション計画を担当しております。御質問ありがとうございます。鶴岡委員が御指摘のとおり、米国政権の次の政権に、月探査計画、あるいは火星探査計画というものに様々な意見が上がっているということは、我々も、例えば在外公館などを通じ、あるいはJAXAにもアメリカのオフィスがございますので、そういうところから情報収集をさせていただいているところですし、当然東京にある米国大使館、あるいはNASAの代表者もおりますので、そういった方とのコミュニケーションを進めさせていただいているところでございます。
他方で、あくまでも現段階では、まだ新政権は発足していない段階です。いろいろな情報が飛び交う段階であろうかなというふうに思っておりまして、我々としては、今後に備えて、いろいろな情報収集をしていきつつ、政策的な変更等もあれば、当然それに対応していくことになると思います。いずれにしましても、現行のアルテミス計画は、委員の先生方もよく御存知のとおり、前トランプ政権において立ち上げられたイニシアティブということもあり、基本的な構造の大きな変更はないのではないかという、若干期待感が込められているかもしれませんけれども、我々も事務的にはアメリカの政府関係者からも、そういった立場にあるとコミュニケーションをさせていただいているところでございます。現在、有人与圧ローバの開発などを進めておりますけれども、そういったものは粛々とさせていただき、また日米協力、中でも宇宙の協力というものは、先生方よく御存知のとおり、日米の一つの大きな軸だというふうに我々も考えております。ある意味、こういったアルテミス計画、日米の宇宙協力においても重要な柱であるといった観点で、米国政府側の新政権におきましても、こういったアルテミス計画を着実に進行いただくことが、日米関係においても非常に重要であると、メッセージをいろいろなチャンネルを通じて発信していくことで、アルテミス計画の推進を我々としても進めていきたいというふうに考えているところでございます。以上でございます。
【鶴岡委員】 ありがとうございました。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。いいでしょうか。
それでは、本件はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。
本日の議事はこれで全て終了となります。最後に事務局から連絡事項があればお願いいたします。
【阿部企画官(事務局)】 事務局です。
本日もありがとうございました。本日の会議資料につきましては、文部科学省のホームページに既に掲載しております。
また、議事録につきましては、委員の皆様の御確認をいただいた後、文部科学省のホームページに後日掲載させていただきます。
最後に、次回の宇宙開発利用部会について、委員の皆様の任期2年間における最後の部会となります。
開催時期は来年2月上旬を予定しております。委員の皆様には別途御連絡をさせていただきます。事務連絡は以上となります。
【村山部会長】 ありがとうございました。
以上をもちまして閉会といたします。本日も長時間にわたり誠にありがとうございました。
今回が今年最後の部会になります。皆様どうぞ良いお年をお迎えください。それでは失礼いたします。
―― 了 ――
研究開発局宇宙開発利用課