宇宙開発利用部会(第91回) 議事録

1.日時

令和6年10月28日(月曜日) 15時00分~17時00分

2.場所

Web会議

3.議題

  1. 先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)の打上げ以降の経過について
  2. 衛星地球観測の官民連携による災害対応訓練(防災ドリル)の実施計画について
  3. JAXAによる今後の衛星地球観測の方向性について
  4. 宇宙輸送分野における取組(次世代の宇宙輸送システムの開発)について

4.出席者

委員

部会長 村山 裕三
部会長代理 田中 明子
臨時委員 秋山 文野
臨時委員 笠原 次郎
臨時委員 金井 宣成
臨時委員 木村 真一
臨時委員 芝井 広
臨時委員 白井 恭一
臨時委員 鈴木 健吾
臨時委員 鶴岡 路人
臨時委員 松岡 彩子
臨時委員 村松 加奈子
臨時委員 山室 真澄
臨時委員 米澤 千夏

文部科学省

大臣官房審議官(研究開発局担当) 橋爪 淳
研究開発局宇宙開発利用課 課長 嶋崎 政一
研究開発局宇宙開発利用課 研究開発戦略官 原田 大地
研究開発局宇宙開発利用課 宇宙科学技術推進企画官 阿部 陽一 
研究開発局宇宙開発利用課 課長補佐 池田 宗太郎
研究開発局宇宙開発利用課 課長補佐 木元 健一

(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
 理事 瀧口 太
 理事 稲場 典康
 第一宇宙技術部門 先進レーダ衛星プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 有川 善久
 第一宇宙技術部門 先進レーダ衛星プロジェクトチーム サブプロジェクトマネージャ 勧角 幸弘
 第一宇宙技術部門 先進レーダ衛星プロジェクトチーム ファンクションマネージャ 三浦 聡子
 第一宇宙技術部門 地球観測統括 前島 弘則
 第一宇宙技術部門 衛星利用運用センター 技術領域主幹 松尾 尚子
 第一宇宙技術部門 衛星利用運用センター 技術領域主幹 川北 史朗
 研究開発部門 第四研究ユニット ユニット長 南里 秀明
 研究開発部門 CALLISTOプロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 石本 真二

一般社団法人 宇宙旅客輸送推進協議会(SLA)
 代表理事 稲谷 芳文
 理事 岩本 裕之

5.議事録

【村山部会長】 それでは、定刻になりましたので、第91回の宇宙開発利用部会を開催いたします。
 今回も前回同様オンラインでの開催となっております。
 委員の皆様には御多忙のところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 まず、事務局に人事異動があったということなので、その御紹介を含めて、本日の会議についての事務連絡をお願いいたします。
 
【阿部企画官(事務局)】 事務局の阿部です。よろしくお願いいたします。
 10月1日付で着任いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は宇宙開発利用部会の16名の委員のうち、遅れて参加の方を含めて13名に出席いただける予定となってございます。
 本日の資料につきましては、議事次第に記載のとおりです。
 オンライン状況について、音声が繋がらない等の問題がございましたら、事務局へメール、もしくは電話等で御連絡ください。
 事務局からは以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 それでは、阿部企画官これからどうぞよろしくお願いいたします。
 本日の議題ですが4つあります。これは全て報告案件となっております。
 それでは、早速議題の方に移りたいと思います。
 最初の議題は、(1)先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)の打上げ以降の経過についてです。
 7月1日にH3ロケット3号機で打上げられた「だいち4号」は、約3か月の初期機能確認運用を順調に終え、各センサの調整を行う段階に入っています。
 本日は、打上げ以降の「だいち4号」の歩みと定常運用に向けた今後の計画について御説明をいただきます。
 それでは、JAXA第1宇宙技術部門の瀧口理事、先進レーダ衛星プロジェクトの有川プロジェクトマネージャ、御説明をお願いいたします。
 
【瀧口理事(JAXA)】 第1宇宙技術部門、部門長の瀧口でございます。
 今お話にありましたように、「だいち4号」ALOS-4につきましては、ほぼ予定通り、初期機能確認が終わりましたので、プロジェクトマネージャの方から、定常運用以降を含めて、今後の話を含めて、状況について御報告させていただきます。
 では、有川プロマネお願いいたします。
 
【有川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 それでは、JAXA有川の方から御紹介させていただきます。どうぞよろしくお願いします。次のスライドをお願いいたします。
 7月23日の宇宙開発利用部会で詳細に御説明させていただきましたが、7月1日の打上げ以降、約3日間のクリティカル運用を無事終了しております。
 本日は、この赤枠の部分、初期機能確認運用ということで、その結果を御紹介させていただきます。
 10月18日にJAXAの中の定常運用移行審査において、次のフェーズ、初期校正検証運用への移行が了承されたというものでございます。次のスライドをお願いします。
 こちらは若干おさらいになりますけれども、左側がALOS-4、「だいち4号」の軌道上の外観図でございます。紙面下側に地球がありまして、手前の方から奥の方へ衛星が進行しているという様子でございます。
 両翼20mの太陽電池パドル、そして、進行方向右側にはPALSAR-3というLバンドSARの合成開口レーダのアンテナがございます。幅3.6m、奥行き10mでございます。
 左側には船舶からの信号を受信するSPAISE3のアンテナ、幅5mでございます。
 また、地球方向にはKa帯の直接伝送アンテナ、進行方向反対側には光衛星間通信機器ということで、これらについて本日御紹介させていただきます。
 特徴といたしまして、「だいち2号」と同じ軌道を飛ぶということで、「だいち2号」「だいち4号」の衛星データを組み合わせた解析が可能という設計になっております。次のスライドをお願いいたします。
 7月1日に打上げてから2週間後になります7月15日に、PALSAR-3による初観測を行いました。こちらはプレスリリースでも御報告しておりますが、詳細に御説明させていただきたいと思います。
 左側の絵が、「だいち4号」において、初めて取得された関東の画像でございます。観測幅200km、分解能3mの観測に成功しております。
 こちら、ALOS-4、「だいち4号」から初めて採用いたしました、デジタルビームフォーミング、この技術を使って観測幅を大幅に拡大したというものです。
 比較のために、右側「だいち2号」の画像を示しております。こちらは富士山のあたり50kmの幅を示しておりますが、ここから4倍に広がっていると。つまり、「だいち2号」では、4回帰必要だった地域も「だいち4号」は1回の観測でカバーできるということになります。
 これによって、広域同時多発的な災害発生時の状況把握を迅速に行うということのみならず、日本全域を年20回程度観測できるようになりますので、高頻度な時系列観測、これによって、地殻変動、インフラ変異など、平時におけるデータ利用もさらに高度化させることが期待されております。
 また、この絵を見ていただいて分かりますとおり、「だいち2号」は白黒の画像に対しまして、「だいち4号」はカラーをつけております。次のスライドで御紹介いたします。
 後ほど述べます観測データの伝送技術、これが高度化したことに伴いまして、常時2偏波で観測ができるようになりました。HH、HVと呼んでおりますけれども、水平方向に電波を出し、水平方向で受けるHH、それから垂直方向で受けるHVと、この2偏波のデータから合成した疑似的なカラー画像をお示しております。
 これによりまして、緑色が植生、明るい紫や黄緑色が市街地、暗い紫や黒は裸地や水面などを表すということで、こういった偏波情報によって、地表の状況の判別が容易になるということで、災害状況の把握や森林伐採の監視などへの活用が期待されているところでございます。次のスライドをお願いいたします。
 このほかにも、左側の絵につきまして、アマゾンの森林の観測を行っております。
 1ポツ目の御説明ですが、「だいち」「だいち2号」からの継続した観測を実施し、JAXAにおける30年にわたって、世界の森林・非森林マップを作成可能となっております。
 御存知のとおり、Lバンドは森林の観測に適しておりますので、森林保全管理やバイオマスの推定など、今後期待がなされているところです。
 また、右側の絵につきましては、スポットライトモードの観測結果をお示ししております。衛星進行方向にビームを照射し続けることで、進行方向の分解能を1mに高めたというものです。
 「だいち2号」から、この観測範囲を約2倍に拡大するということで、災害発生時などの都市部を詳細に観測ができるということになります。また、こちらも見てお分かりのとおり、2偏波で常時観測ができるようになりました。次のスライドをお願いいたします。
 次が、「だいち2号」からの進化ということでお示ししております。こちらは、先ほどの2偏波に加えまして、フルポラリメトリ、4偏波による全球観測も実施する予定でございます。
 HH、HVに加えまして、垂直方向に電波を送って、垂直方向に帰ってきた電波を受けるVV、それから、水平方向で受けるVHと、この4偏波の観測を行っております。
 2偏波の観測よりも多くの情報を含みますので、詳細な土地被覆の分類であるとか、土壌の水分量、さらには台風の下の海上風の面的な推定など、高次の解析が可能となります。
 この下に示しております図は、ベトナムの都市部と農業地帯の絵を4偏波で撮ったものになります。この4偏波の画像を右側にありますように、カラー合成をしたもので、RGBのB、ブルーのところに、VVの情報を入れていると。これによって、画面右上の辺りが若干紫色に表示されているということが分かります。
 これによって、土地被覆、土壌の植生の様子というものを詳細に把握できるようになりました。
 この画像につきましては、「だいち2号」まで一部の地域で実験的に実施していたものでございますけれども、これを全球で観測するということを計画しております。
 より具体的に言いますと、「だいち4号」の基本観測シナリオの中で、昇交軌道は年1回高分解の10mの2偏波で継続して観測してまいります。
 加えて、降交軌道につきましては、年1回、6mの分解能を4偏波で観測をするということで、新たな利用開拓が期待されているということでございます。次のスライドをお願いいたします。
 そして、「だいち2号」から継続した観測を実現するということで、「だいち4号」と「だいち2号」との間の干渉SAR解析にも成功いたしました。
 これは、「だいち2号」の、もちろん今後の観測もありますけれども、過去10年にわたって蓄積されているアーカイブデータ、これと組み合わせることで、より高頻度かつ長期的なモニタリングが可能となるものでございます。
 下の絵は、10月2日に公表したものでございまして、岩手山の地殻変動を確認したものです。岩手山の噴火警戒レベルを2に引き上げたということで、「だいち2号」と「だいち4号」の間の干渉SARというものでございます。
 この結果につきましては、ミッションパートナーである国土地理院と一緒に実施したものでございますが、こういった国土地理院との連携及び過去長年の運用で培った高度な解析技術、こういったものが揃って、「だいち4号」打上げ、まだ早期でございますけれども、こういった技術が実現できているということになります。今後も「だいち2号」と「だいち4号」の同時運用を活かして観測を実施していく予定でございます。次のスライドをお願いいたします。
 こちらは、AIS信号の受信状況、船舶の受信状況になります。衛星AIS受信機、SPAISE3と呼んでおりますけれども、こちらの健全性確認、及び地上処理の初期動作確認を実施いたしました。
 左下にあります観測イメージでございます。8本のアンテナ、AISアンテナで受信した信号を地上でデジタルビームフォーミングの処理を行うというものでございます。地上でビーム整形をいたしまして、観測をしたい場所、特にこれまで信号識別が困難であった、より混雑したエリアにビームの指向性を高め、解析処理を行うというものです。
 この技術を使いまして、右側にありますように、「だいち2号」搭載のSPAISE2と、「だいち4号」搭載のSPAISE3、これらの観測結果を比較したものが示されております。
 緑色の衛星軌道、南側から北に上っていくにつれて、検出されたAISの信号の場所を赤でプロットしております。「だいち2号」の結果に比べて、船舶が過密している地域など、日本近海で多くの信号が検出できているということがお分かりいただけるかと思います。
 これによって、日本の政府機関と連携いたしまして、航行の安全確保に資するということが期待されております。
 JAXAとしましては、今後も引き続き、船舶からのAIS信号の情報処理をより高度化する、最適化すると、こういった技術改善を進めてまいります。次のスライドをお願いいたします。
 「だいち4号」の技術達成目標の状況につきまして、まとめさせていただきたいと思います。技術達成目標丸1丸2ということで、SARのデジタルビームフォーミングの技術、それから高速伝送の技術というものの成功を確認しております。今後、打上げ後1年間にわたって継続して性能評価を行ってまいります。
 伝送技術に関しましては、7月の段階で、右上にありますKaバンドの達成状況を御紹介いたしました。本日は、右下にあります、LUCAS、光衛星間通信システムの状況をお知らせしたいと思います。
 この真ん中の部分ですけれども、LUCASとの間で光通信による相互捕捉・追尾を確立しました。
 続いて、ALOS-4、「だいち4号」に対して、コマンドを送信する。また、「だいち4号」からのテレメトリーデータを取得することに成功いたしました。
 これによって1.5μmの光波長を用いた、1.8Gbpsの通信速度を確認しております。こちらは世界初の技術となりまして、先代のDRTS「こだま」の7.5倍の速度を確認できております。
 また、Kaの1波、1.8Gbpsと、光の1.8Gbps同時の通信も可能となるということで、また今後、そのSARの観測画像を地上にダウンリンクするなど、近日詳細にまたお知らせしていきたいと思います。
 この技術に関しましては、右下の絵に分かるように、通信時間が大幅に拡大することに加えまして、光データ中継衛星経由で緊急観測のコマンドを登録するなど、更なる利便性向上に期待をしているところです。次のスライドをお願いします。
 現在、左から3番目の初期校正検証運用を行っております。この中で、プロダクトの校正検証を行ってまいりますとともに、災害時の緊急観測もまだ試験的な画像ですが運用を開始したところでございます。
 年明け1月以降、PALSAR-3の標準データ、標準プロダクトを一般ユーザへ配布していくということで、こちらに関しましてはJAXAが選定する複数の民間事業者から提供していく予定としております。現段階で既に複数、いくつかの事業者から関心、具体的な提案をいただいているところです。今後、民間の力も使って、データ利用を進めてまいりたいと思います。次のスライドをお願いいたします。
 「だいち4号」の運用状況の公表につきまして、簡単ですが御紹介いたします。
 打上げ後のアウトリーチ活動といたしまして、プレスリリース・サテナビなどを通じて、情報発信を行ってまいりました。ちょっとポツを飛ばしまして、上から5ポツ目です。「だいち」シリーズ衛星の更なる認知向上を目的としまして、応援アンバサダーである三浦大知さんに登場いただいたコラボ動画を公開しております。
 この中で、JAXAのみならず、衛星プライムメーカーの三菱電機、あるいは運用設計を担当いただいています三菱電機ソフトウェアの方、またSARの解析を担当いただいているRESTECにも登場いただきまして、三浦大知さんとともに、打上げ時の緊迫した様子、また初観測の画像について、具体的に分かりやすく紹介したものでございます。今後も引き続き、理解向上につながる情報発信を継続的に実施していきたいと思っております。
 最後が、データ配布につきまして、今後の予定ということで簡単におさらいしたいと思います。
 打上げから2027年度までは、基本的にALOS-2、「だいち2号」を継承いたします。先ほど申し上げたように、民間からの実費提供で、複数の事業者からの提供を予定しております。
 2028年度以降につきましては、まだ検討中ですが、防災機関、地方自治体などについては、民間からの配布に移行することも含め、継続的に調整したいと考えております。
 最後のスライドでございますが、次のスライドをお願いします。JAXAから「だいち4号」のデータを事業者に提供し、不特定多数の一般ユーザへ提供していくと。
 この中で、事業者が定めた価格、事業者が定めるデータサービスの内容にて、提供を行っていくということを予定しております。
 私からの説明は以上になります。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明について、御意見、質問がありましたらお願いいたします。
鈴木委員、お願いいたします。
 
【鈴木委員】 鈴木でございます。
 この度は「だいち4号」が初期の観測を無事に終えられたということで、とてもよかったなと個人的に思います。
 質問ですけれども、分解能も計測のときに変化させることができると思うのですけれども、3m以内というところの目標に対して、懸念点が現時点であるかないかと、あとは民間に提供するとか、画像配布するときの分解能がどれぐらいのもので、実費としてはいくらぐらいの価格で提供されるのか、みたいなことも確認させていただければと思います。
 質問の理由としては、民間の利用シーンでも、あまりに高すぎたりとかすると、利用できる人が限られますし、比較的安価だと、いろいろ裾野が広がりやすいのではないかなというふうに思っていて、その辺りの情報を確認させていただければということでの質問です。よろしくお願いします。
 
【有川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 御質問ありがとうございます。
 分解能の計測・評価につきましては、地上でコーナリフレクター等を置きまして、精度を確認しております。3mのスペックに対しまして、十分それを満足できる、3m以下の分解能が達成できているということを確認して、JAXAの中で審査を行ったというものです。
 今後様々な校正検証のサイトにおきまして、その性能を評価するということで予定をしておりますが、現時点で大きな課題等はないというふうに認識しております。
 一般の方々へ提供する価格につきましては、前回も御質問いただきましたが、JAXAの方から具体的な金額を御紹介することは差し控えたいと思っております。
 その理由といたしまして、「だいち2号」でも、一般配布事業者が提供価格を定めて提供されているということと、今回新しい取組として、複数の事業者から提供いただく予定としております。
 JAXAとしては、競争といいますか、お互いのデータとサービスの質と価格のトレードオフの中で、より競争が進んでいくということを期待しているものです。お答えは以上です。
 
【鈴木委員】 ありがとうございます。
 すみません、重複した質問をしていたら申し訳なかったのですけれども、よく分かりましたので、引き続きよろしくお願いします。
 
【有川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。続きまして、田中委員、お願いいたします。
 
【田中部会長代理】 素晴らしい成功で、順調なことというのは素晴らしいことだと思っています。
 特にALOS-2との干渉が実証されていて、それはすごく大きな強みだと思います。特に、「だいち2号」からのことを考えると、長期間にわたるモニタリングが可能になると思いますので、これはぜひ、大きくアピールしていくべきだと思います。
 先の鈴木委員の質問にも少し関係するのですが、ALOS-2の配布に関しての考え方というのは何か変化があったのでしょうか。ある程度時期が経ったら、例えば安く出すとか、広くもう一度公募し直すとか、そういうようなお考え、広く配布するような方向に進むというようなお考えはお持ちではないのでしょうか。
 
【有川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 御質問ありがとうございます。
 まず、御指摘いただきました1つ目の「だいち2号」と「だいち4号」の連携した観測、より強化すべき、よりアピールすべきということにつきましては、おっしゃるとおりだと思いますので、干渉SARに限らず、災害のときの様々な利活用をアピールしていくということで、JAXAとしては、やはり軌道上に2基あることの強みというものを最大限にアピールしていきたいと考えております。
 2つ目の御質問、「だいち2号」のデータ配布につきましては、配布事業者との関係性もございますので、当面は現在の形を続けることを想定しています。
 ただ、希望としましては、「だいち2号」をもうちょっと長く運用することを期待しておりますので、2028年度以降につきまして、継続して検討してまいりたいというふうに考えています。よろしいでしょうか。
 
【田中部会長代理】 ありがとうございました。
 本当に大きくアピールすべき点だと思うので、ぜひ利用者が使いやすい形にしていただければと思います。ありがとうございました。
 
【有川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 承知しました。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。続きまして、米澤委員、お願いいたします。
 
【米澤委員】 どうもありがとうございます。米澤です。
 データ提供について、複数の事業者から提供されるということで、データの検索についてお伺いします。ユーザは自分が見たいところのデータについて調べるのですが、検索システムはJAXAで準備していただき、検索結果をもとに事業者にデータ提供をお願いするというイメージでよろしいのでしょうか。
 
【有川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 御質問ありがとうございます。基本的にはそのとおりの御理解で正しいです。
 AUIG4という、利用者のインターフェースを、窓口を作る予定ですので、その中であるとか、今後向こう3か月間にわたって、どういったところを観測していく予定ですといったものも分かるように、ホームページ等で御紹介できればと思います。
 そういったところの利便性の向上は、次の課題かと、まだまだ向上が必要かと思いますが、そういった計画を持っております。以上です。
 
【米澤委員】 どうもありがとうございます。非常に楽しみにしております。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。ほかはいいでしょうか。田中委員からお手が挙がりました。
 
【田中部会長代理】 すみません、AUIG4をすごく楽しみにしているのですが、以前は、OS依存性とかいろいろあったのですが、そういうものは解消されているという理解で良いのですね。
 
【有川プロジェクトマネージャ(JAXA)】 御質問ありがとうございます。
 その辺は改善しているように考えておりますが、詳細を確認して、後ほどお伝えいたします。また、先ほどAUIG4で、というふうに申し上げましたが、各事業者側でも注文受付用のポータルも整備される予定ですので、また詳細は公表できればと思います。
 あと、AUIG4のOS依存性は解消済みでございます。御安心ください。ありがとうございます。
 
【村山部会長】 それでは、どうも今日は御説明ありがとうございました。
 それでは、次の議題に移らせていただきます。次の議題は、(2)衛星地球観測の官民連携による災害対応訓練(防災ドリル)の実施計画についてです。
 元日に発生した能登半島地震において、官民の地球観測衛星による緊急観測が行われました。
 それぞれの衛星が迅速な対応を行った一方で、各衛星の特徴を活かした有機的な連携については、課題も残ったとされています。
 これに対して、災害発生時の官民衛星による観測体制や、情報提供までの一連のプロセスを確認する防災ドリルが計画されています。
 本日は、その内容について、衛星地球観測コンソーシアム、CONSEOにより御説明いただきます。それでは、CONSEO事務局として、JAXA第1宇宙技術部門の前島地球観測統括、資料の御説明をお願いいたします。
 
【前島統括(JAXA)】 御紹介ありがとうございます。JAXA第1宇宙技術部門で地球観測統括をやっております前島と申します。
 本日は、今御紹介いただきましたとおり、衛星地球観測コンソーシアム、CONSEOと呼んでおりますけれども、そちらの方で検討を進めております、防災ドリルの実施計画について御報告をしたいと思います。それでは、次の頁をお願いいたします。
 まず、CONSEOの光学・SAR観測ワーキンググループというものを設置しているのですけれども、そこで防災ドリルの計画についてこれまで準備をしてまいりました。それについて御説明をいたします。
 まず、1ポツ・経緯ですけれども、2024年1月1日、今年の元日に皆様御承知のとおり能登半島で大きな地震がありました。
 それで、我が国の官民衛星、JAXAの衛星のみならず、民間の衛星によっても緊急観測が行われました。これは後ほどの参考1というところで実績についてまとめましたので、こちらで御説明をいたします。
 衛星地球観測コンソーシアム、CONSEOの2023年度の光学・SAR観測ワーキンググループ、主査は中須賀先生ですけれども、こちらにて能登半島地震後の観測及びデータ提供に係る実績を共有いたしまして、それを評価した結果、官民衛星それぞれが初動での観測を行ったものの、官民各衛星の特徴を踏まえて有機的な観測の連携が今後の課題というふうに認識をされました。
 これは何を言っているかといいますと、それぞれ観測をなるべく早くという形で実施をしたのですけれども、やはり衛星がそれぞれ観測地域の上に飛んでくるタイミングもありますし、それを観測して、速やかに提供して、解析をして、というところが一連の流れとしてあるのですけれども、そういったところが連携してできていたのか、というところを皆さんで評価をしていただきました。
 その結果としては、産学官の関連組織による効果的な初動観測、初動撮像を実施する仕組み、あるいは画像・データプロダクトや分析情報を迅速に提供する、こういったところが必要とされているのですけれども、これをドリルの形で一度実施をしてみるのがよいのではないか、ということが提言されました。
 そのために、災害発生時に我が国の官民衛星が連携した観測体制や一連のプロセスを確認する防災ドリルについて、CONSEO防災ドリル準備委員会、座長は三浦山口大学名誉教授に務めていただいておりますけれども、それを設置いたしまして、議論を行っているところです。こういった経緯がございます。
 2ポツ、本ドリルの目的ですけれども、能登半島地震における官民衛星のそれぞれの観測実績や課題を分析しつつ、ドリルの準備段階/ドリルの実施/実施結果の評価等を通じて、下にABCとまとめておりますが、それらについて将来の激甚災害における官民連携での衛星の役割や適切な観測に向けてのあり方をまとめるということを目的としております。
 そのあり方の具体的ですけれども、Aとしまして、衛星観測システム、その提供すべきプロダクト、これはユーザが求める情報です。あとは提供タイミング、こういったものを検証しまして、災害対応に資する衛星観測システムのあるべき姿というものを検討するということを1番目に置いております。
 Bといたしまして、初動対応時に衛星観測で何を把握するのか、官民の各種衛星はそれぞれ特徴を持っておりますので、それに対する効果的な、効率的な使い方・使い分け方というのはどのようなものがあるべきか、ということを検証いたします。
 Cといたしましては、ユーザから観測要求を受けて、観測計画を調整・立案をして、実際に観測をして、観測データを受信・解析して、サービス情報を提供するまでの一連の流れを検証いたします。また一連のプロセスにおける官民連携の仕方というものも検証するという3本柱を今回のドリルの目的と設定をいたしました。次の頁をお願いします。
 この頁が示しておりますのは、防災ドリルにおける官民連携による衛星観測シナリオ骨子でございます。シナリオです。
 まず、観測計画としましては、大規模地震など、広域な激甚災害が発生した場合には、発災直後に被害状況の把握から観測要求受付までにある程度時間を要することが想定されます。
 仮にそのように時間ができた場合でも、衛星観測の機会を逃がさないため、衛星が飛んでくる機会というのは限られますので、事前に被害推定をもとにした観測シナリオを準備しておくことが肝要です。それをデフォルトとして対応することといたします。
 また、防災機関から具体的な観測要求があった際には、その実現性を確認の上で優先対応するということも踏まえたいと考えています。
 次に、官民衛星の観測対象ですけれども、有識者から成る大規模災害衛星画像解析支援チームというものがございます。こちらの方で既に整理されたものがありまして、衛星観測の初動シナリオというものがありますので、そちらをベースといたします。能登半島地震での振り返りを含めまして、防災ドリル準備委員会で議論を踏まえ、以下のとおりとしたいと思います。
 四角、箱の中に囲ってありますけれども、今衛星システムを3つに大きく分類をいたしました。
 まず1つ目が、広域観測のSAR衛星、これは分解能がおよそ1m以上のものですけれども、具体的にはJAXAのALOS「だいち」を想定しております。こちらに求められるものは、早期に災害の全貌を把握するということです。
 被災地全域、例えば、大規模地震が起きたときには震度6弱以上のエリアというものが想定されますけれども、そういったところをカバーすることを最優先に観測するということが求められるというふうに整理をいたしました。
 このときには、被災範囲全体の被害状況、例えば建物被害ですとか、地殻変動、土砂移動など、こういったものを把握することを主目的といたします。
 次に中分解能小型衛星、これは民間の小型衛星で、高分解能に加えまして、中分解能モードというのを持っているものがあります。そちらに期待するのは、地震による土砂移動、道路閉塞とか河道閉塞及び津波による浸水域・長期浸水域、こういったものを観測するというものを使命といたしたいと思います。
 最後に、高分解能の小型衛星、分解能1m未満です。こういったものは、広域の防災拠点、例えば、あるいは空港、港湾、こういったものに加えて、飛行制限が設定される可能性のある原発の被害状況など、こういったものを把握することを目的として観測をするというシナリオを策定いたしました。では、次の頁をお願いいたします。
 この頁は、官民連携の衛星観測による防災ドリルの骨子を示しております。まず、解析のプロダクト、被害情報につきましては、先ほど申し上げた衛星観測対象の考え方というものをもとにして、衛星機関から提供された観測データの情報化を行います。
 これは、観測データそのものだけでは読み取りが難しいので、当然解析をして、情報化をするという必要がございます。
 次に、管理・共有システムについてですけれども、観測要求の受付、観測データ及び解析プロダクトの共有、対応状況の共有、こういったものが必要になるのですが、そのシステムとしては、防災科学技術研究所が「ワンストップシステム」というものの開発をしております。そちらを使用することを想定しております。
 箱の中に書いてありますのが全体案ですけれども、今3日程度を想定しておりまして、2024年12月、今年の12月に実施することを想定しております。実際のタイミングは伏せておきまして、大規模地震があるタイミングで起きたというところをトリガーにいたしまして、丸1観測機会の確認、丸2で観測準備、丸3で緊急観測実施、丸4で観測データの提供、丸5で解析及びプロダクトの提供、こういったものを実際に行ってみるということを訓練の内容としております。では、次の頁をお願いいたします。
 その訓練の実施のあとですけれども、防災ドリルの結果に対して、先ほど目的として申し上げましたAからCについて、これに関する分析評価を行って、CONSEOに報告をすることといたしております。
 A)については、観測システム、提供すべきプロダクト、提供タイミング、観測システムのあるべき姿、こういったものに対して評価を行います。
 B)につきましては、衛星の観測対象、官民の各種衛星の役割分担といったものを評価いたします。
 C)につきましては、一連の流れの検証、一連のプロセスでの官民連携の仕方、こういったものを検証いたします。
 CONSEOにおけるこれまでの議論や本防災ドリルの結果を踏まえて、災害対応における官民連携での衛星の役割や適切な観測に向けたあり方をまとめるとともに、将来SAR衛星のあり方についても検討を進めてまいりたいと考えております。
 以上が、現在までに検討してまいりました計画についてです。参考につきましては、すみません、時間が来てしまいましたので、ざっとですけれども、これが1月1日に起きた能登の地震での実績でございます。
 1月1日の夕方に地震が起きまして、衛星が飛んでくるタイミング等々もあるのですけれども、こういったタイミングでそれぞれ観測が行われたというものをまとめております。
 JAXAの衛星、ALOSでも観測いたしましたし、国内外の衛星、国内では民間衛星も観測をしていただいております。次の頁をお願いいたします。
 こちらが、防災科学技術研究所が作っております、ワンストップシステムというものです。ワンストップシステムで、それぞれの衛星が今どこを飛んでくるのか、というところを把握しまして、それぞれに対して適切なタイミングで撮像計画を立案して要求を出すと。それらの観測データをまたここで保管して、ユーザに配布をするというところまでワンストップで行うというシステムができておりまして、それを今回使用いたします。
 御説明は以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明について、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。山室委員、お願いいたします。
 
【山室委員】 ちょっと素人なので、何か突拍子もない質問かもしれないのですけれども、今回の能登半島のときには、海の沿岸のところも結構隆起して、港が閉塞したとか、そういう弊害もあったのですけれども、現在の技術で水面下を空から衛星とか何かで、浅いところでいいので、キャッチするということは、もう既にされているのか、開発途中なのか、それはもう原理的にそもそもできないのかどうなのでしょう。
 
【前島統括(JAXA)】 御質問ありがとうございます。
 まず、防災で最も役に立つと思われるSAR衛星につきましては、残念ながら水中に電波を透過して観測することはできません。
 あとは光学衛星につきましては、浅い海で、そこが透き通って見えるようなところであれば、見ることができるかもしれませんけれども、これも限界があると残念ながら思います。
 
【山室委員】 そうですよね。それで、ああいう地震ですとか、土砂崩れとかあると、濁ってしまうのと、それからやっぱり、そもそも船を出せないとなるので、だから本当は技術的に衛星でなくても、水の上に出なくても何かできるような技術があると、今後そういう地震とか、豪雨とかで、結構沿岸域が大変になることが予測されるので、宇宙開発利用部会の範疇ではないかもしれないのですけど、そういうふうな開発もあったらいいなというふうに常日頃思っていましたので、今日質問させていただきました。ありがとうございました。
 
【前島統括(JAXA)】 ありがとうございます。
 先ほどの回答に加えまして、例えば我々が有しておりますGCOM-Cという衛星がありますけれども、そちらで海色を測るセンサがついておりまして、それで海の色という形では情報が得られると思います。
 ただ、おっしゃるとおりのところもありますので、その辺は今後の技術開発の課題として検討してまいりたいと思います。ありがとうございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。続きまして、村松委員、お願いいたします。
 
【村松委員】 どうもありがとうございました。大変素晴らしい計画かと思います。
 以前も紀伊半島の方で、台風で土砂崩れが山の奥の方まで起こった場合に、緊急観測をしていただいて、奈良県庁などからたいへん感謝されていたのですけれども、今回の計画に関しては、主に地震に関して一例として挙げておられますが、今後それを、台風の災害とか、比較的大きな災害などで、どれに対してこういう観測を行っていくということは、どういうところで決められていくのでしょうか。
 データを緊急観測して、こういうデータを取っていくというようなことは、各地方自治体から要求が上がってきましたら、それに応じて行うのか、という辺りはどういうような状況でしょうか。
 
【前島統括(JAXA)】 どうもありがとうございます。
 今回の我々のドリルのきっかけになりますのは、能登半島の大規模な地震をきっかけといたしまして、各衛星が有機的に本当に撮像、あるいはデータの提供ができていたのか、というところを一度しっかり検証しましょう、それで将来のあり方というものをしっかり検討しましょうというところがきっかけとなりましたので、地震について始めております。
 一方で、御指摘のようなところも重要なものとは考えておりますけれども、例えば、台風などをきっかけとして、やはり土砂崩れですとか、浸水被害ですとか、そういったものが結果として出てくると思われますけれども、そういったところは今回の地震でも把握の対象となっておりますので、共通性はあると考えています。
 
【村松委員】 どうもありがとうございます。
 
【村山部会長】 それでは最後に、秋山委員、お願いいたします。
 
【秋山委員】 実施の詳細について少し質問させていただければと思います。
 まず確認ですけれども、12月に、事前にいつということははっきりさせずに、とおっしゃったように思うのですが、これは情報を利用する側にとっては、12月というところまでお知らせした上で、実際に12月何日か、ということは公表せずに、防災訓練なので、急に起きましたという想定で進められるということになるのでしょうか、というのがまず一点と、その状況で、情報化されたものを受け取られるところですね、例えば自治体市区町村とか、そういう単位で、どこで例えば土砂崩れが起きています、といったようなことをお伝えするということになるのでしょうか。その辺りの詳細のところを少し教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【前島統括(JAXA)】 ありがとうございます。
 今回我々、おっしゃるとおりのところ、検討してまいった結果といたしまして、やはりタイムラインの検証をしっかりすべきだろうということで、事前に日時を決めてやるということもオプションにはあったのですけれども、やはりここは抜き打ちの形で、実際に我々観測する側がどのようにタイムラインで動けるのか、というところに重きを置いたドリルといたしました。
 今回、出てきた情報というものは、主に政府側に渡すことにいたしまして、あとは利用者はほかにもいると思うのですけれども、その辺はどこまでが参加していただけるかというのは、今後検討を続けてまいりたいというふうに思っております。
 
【秋山委員】 なるほど。分かりました。どうもありがとうございました。
 
【前島統括(JAXA)】 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 どうも前島総括、ありがとうございました。
 
【前島統括(JAXA)】 ありがとうございました。
 
【村山部会長】 それでは、次の議題に移らせていただきます。
 次の議題は、(3)JAXAによる今後の衛星地球観測の方向性についてです。近年のJAXAにおける衛星地球観測は、技術の獲得に向けた研究開発や、衛星データの社会実装に向けた利用技術の高度化を進めるとともに、CONSEOの設立、民間との衛星データの利用実証の取組など、官民の連携強化にも取り組んできています。
 本日は、JAXAによる今後の衛星地球観測の方向性について、文部科学省から現在の検討状況について説明いただき、委員の皆様から忌憚のない意見をいただければと思っております。
 それでは、文部科学省池田補佐、説明をお願いいたします。
 
【池田補佐(事務局)】 文科省の池田です。
 本日は、「JAXAによる今後の衛星地球観測の方向性について」ということでお話させていただきます。
 背景としましては、今の御案内にありましたとおり、JAXAは来年度からの7年間として、次期となる第5期の中長期目標の期間に入るところでございます。
 そうした中では、輸送ですとか、探査とか、いろいろと複数の項目があるわけですけれども、特に衛星による地球観測の分野に関しましては、これまでのJAXAの取組の結実も伴いまして、社会実装や商業展開、民間の参入などが進んできたということでございます。
 ほかの分野と比較しても、一般目線で相当に、もう宇宙は遠い存在ではなくて、リアリティのある世界となってきたと思っています。そうした中で、本分野においては、今後の方向性を再検討し、必要に応じて切り替えていくという重要性もあろうと思っておりますので、この点、これまでJAXAや関係府省とも連携しつつ、大筋のところを検討してまいりましたので、少し概念的とはなりますけれども、今回、概要を報告させていただきまして、御意見いただければと思っております。
 まず、お示ししている1頁目、簡単にこれまでの動向を振り返りますと、JAXAの衛星地球観測に関しましては、2017年までの第3期においては、衛星の開発運用の信頼性の向上ですとか、ある意味、公共・科学的な利用を念頭に置いた成果創出の観点から、いわゆる技術開発、技術の獲得に重きを置いて取り組んできたところでございます。
 その後、第4期に入りまして、磨いてきた技術によって得られるデータの社会実装といった観点での取組が進められてきておりまして、その際、技術ドリブン、いわゆるボトムアップ的な研究開発・技術開発から、衛星データ利用としても、具体的なミッションをあらかじめ想定・定義した上での開発にシフトしてきているということでございます。
 加えまして、衛星のコンステレーションですとか、衛星データの利用ビジネス等による、近年の民間事業者の参入などを受けて、本分野については、とりわけ、JAXAによる官民連携の強化や、産業振興といった取組にも注力されてきておりまして、例として書かせていただいていますのは、先ほど防災の関係でも御説明がありました、CONSEOといったコンソーシアムの構築ですとか、あるいは民間との衛星データ利用実証の取組ですとか、そして昨年度末にお示しした、官民連携による光学観測事業構想です。これはいわゆる、ALOS-3の後継をどうするかといった議論で、一つ象徴的に挙げられると思っております。
 また、こうした動きに合わせまして、最後のポツですけれども、昨年度は宇宙技術戦略の策定ですとか、宇宙戦略基金の創設など、民間による宇宙開発を抜本的に強化するという政策が打ち出されてきたといった背景でございます。次の頁をお願いします。
 こちらは参考でございまして、具体的にどういった社会実装の状況にあるかということで、例えば防災・減災ですとか、土地利用・インフラ、海洋、気象、気候変動、最後は森林・炭素クレジットに至るまで、JAXAや文科省にとどまらず、関係省庁や民間事業者等との連携を通じて、様々な衛星開発、あるいはそういったデータの利用実証といったものを進めてきたといったところです。次の頁をお願いします。
 こちらもまた参考ですけれども、先ほど述べた民間との連携拡大といったところで、CONSEOであるとか、だいち2号、今後は4号もですけども、利用実証ですとか、官民連携の光学事業ですとか、あるいはこちらも先般御説明した共創プログラムですとか、小型衛星の刷新、研究開発プログラム、こういった取組をしているといったところでございます。次の頁をお願いします。
 こうした流れで来たところで、今後のあり方に向けた論点を整理したところとして、まず1ポツ目、JAXAの衛星地球観測につきましては、第4期からの取組に引き続き、単なる既存ミッションの延長とか継続、つまり後継機がとにかくあるということではなく、一般的に商業化が進んでいる・見込まれる領域につきましては、限られたリソースの有効的な活用といった観点も含めて、従来JAXAが担ってきた役割や機能・技術を民間等に移転・移行しつつ、共創、あるいは民間主体での取組として推進していくことがまず重要と考えています。
 他方で、では民間事業に移管していくことが全てかと言われれば、全くそうしたことではございません。2つ目のポツでございますけれども、例えば、国際協調による気候変動や防災・災害対策等の地球規模課題の解決に向けた取組など、近年になりまして、衛星の地球観測に係る取組やプロダクトが、政府の外交のツール、あるいはバーター的なポジションとして想定・期待される場面が増えてきていると感じています。
 これらは民間主体ではまだ限界がある領域でございますので、JAXAの役割をしっかりと継続・強化していくことによって、しっかりとした国益・リターンにつなげていくことが重要だと思っています。
 特に今後は、衛星の地球観測を通じたハイレベルでの外交のテーマ化ですとか、ルール形成でのポジション確保、我が国の民間企業の国際市場の獲得機会の創出、例えば、JAXAが政府として、まず先手を打っていって、そこで日本としてのポジションを取り、後発でスタートアップ等が入ってマーケットを取っていただくと、そういったようなことも含めて、具体的に便益、あるいはリターンの獲得に向けた戦略的な国際展開といったものを、その実施主体となる者と一緒になって重点的に強化していくべきではないかというふうに考えております。
 最後のポツでございますが、またこれらの取組に際しては、近年では様々な課題へのソリューションとして、単一の衛星ですとかシステムではなくて、一つのイシューに対して、複数の衛星のデータですとか、あるいは先ほども少し、海底観測の議論もありましたけれども、衛星のみならず、地上でのセンサも含めマルチにツールを組み合わせ、一つの問題に対応していくといったこと、あるいはAIの活用といった、複数の武器を組み合わせていくといったアプローチが広がっていますところ、これまでのJAXAの衛星における開発利用のプロジェクト検討のあり方や、その推進体制についても、こういった動向を踏まえつつ、適切な形に見直しを図っていく必要があると考えております。次の頁をお願いします。
 こちらは、先ほどの論点整理の補足として置いているものでございますけれども、JAXAとも議論しまして、抽出された課題として記載しております。
 例えば、真ん中の緑のところです。現状の課題とされているところを左から右に読み上げていきますけれども、例えば、我が国独自の技術を海外のインフラとして組み込むことによって、交換条件、バーターとしての付加価値を狙っていくような戦略性が不足しているのではないかといった点。
 また、真ん中の青いところ、本来、社会課題や様々なニーズは、先ほどもお伝えしたとおり、一つのツールのみではなくて、何らかの上位目標に合ったソリューションとして、複数のツールや衛星、あるいは衛星以外のシステムとの組み合わせで対応していくといったところです。これまでの期間限定かつ、一つひとつのプロジェクトに紐づいた取組のみでは、手元のシーズですとか、JAXAが有している衛星単体に、やはり思考として寄っていってしまうということで、柔軟にミッションとして対応できていないのではないかといった、総合性に関わる課題があるのではないかといった考え方。
 最後、オレンジ色のところでございますが、国内外の各ステークホルダーとのコミュニケーションやデータの提供といった観点では、先方のニーズに合わせて、JAXAとして提供するソリューションですとか、開発運用している関連のプロジェクトがあるかないか、というところだけで右往左往してしまって、不確実性が極めて高く、取れるアクションが絞られてしまうという継続性の課題があるということで、今後は、JAXAの有する観測リソースに加えて、開発のみに縛られず、要すれば民間や海外衛星、海外データの活用も想定しながら、中長期的にここはしばらくやっていくのでポジションを取れます、ということを戦略的にしっかり言える・やっていけるような体制に取り組んでいく必要があると思っております。次の頁をお願いします。
 こちらの頁では、そこでJAXAによる衛星地球観測の今後の方向性の案として、簡単にお示ししております。その上で、まず今回のJAXAの役割というものを、概念上ABCの3つに分類しております。
 A)が、地球規模課題解決ですとか、外交政策への貢献など、衛星データの国際展開の強化に向けて、その開発利用に取り組むといったもの。
 B)が、これまで第4期でもしっかりと注力してまいりました民間との連携ですとか、官民の共創による衛星データのさらなる社会実装。
 そして、C)が全く新しいような技術を開発して、全く新しい開発利用の間口を広げる、イノベーションの創出に取り組みたいといったような考え方です。
 第5期、今後の7年間の方向性としては、この中で引き続き、Bですとか、Cといった取組は推進していくことが重要です。その上で、特にAの取組につきましては、関係機関との連携によって、達成を狙うリターンを明確にすることによって、従来よりも具体的かつ高い水準の目標・アウトプットを設定し、衛星地球観測の開発利用をより一層戦略的に進めていくといった方針でございます。
 具体的には、先ほどの論点整理も踏まえて、戦略性、総合性、継続性の観点等より、従来の衛星ごとのプロジェクトベースのシーズ的な発想から、ソリューションも含めた各課題、重点分野といいますか、戦略的、あるいは複合的なアプローチに立脚したプログラムの体系、体制に変えていくということで検討しております。イメージとしては、右側に小さくある図のとおり、まずは衛星地球観測が大きく寄与しうる外交ですとか、防災ですとか、市場といった、それぞれの分野、それもかなり具体的なところに標的を置きまして、そのリターンとして、例えばJAXAのリソースを海外で使ってもらうだけではなくて、使ってもらった結果として何が得られるのかといった、ギブアンドテイクのテイクの部分をしっかり考えていくということです。
 その上で、JAXAと連携してテイクを取りに行く実施主体との組み合わせによって、設定したリターンのためのチームをJAXAの中に編成していくことを想定しています。ここで言う実施主体というのは、当然各省庁等を含んでおります。
 これに対して、下に行きまして、では、そういったリターンを取っていくためには、どんなデータプロダクトが必要かといったところを、衛星のデータのみならず、またJAXAの衛星以外のツールも使って考えていく、使っていく。
 そして、その中でやはり新規に開発が必要な内容につきましては、JAXA内外での技術開発項目や衛星開発のプロジェクトとして立ち上げていくといったことを考えております。
 7頁目です。こちらもイメージ図になります。ちょっと繰り返しになってしまいますけれども、左上から左下にぐっと曲がっていきますが、概略図として、左上から、これまで技術開発を中心に第3期と来て、第4期では利用実証という形で、今はセンチネルアジアですとか、GSMaPといった、社会定着に向けたプロダクトが出てきているところです。
 こうした様々なソリューションですとか、要素やツールが、ある意味、上りの方向で揃ってきた中におきまして、今後は開発、実証、定着のあとは、やはり成果の追求をしっかり考えていくということで、下りのフェーズだと思っておりまして、公共、産業、外交の中でも、より具体化されたリターンの獲得に向けて、衛星データをいかに利活用していくか、といった点について、JAXAのみならず、外交や海外展開によって、直接的にリターンを勝ち取ってこられる様々なステークホルダーと連携をして、戦略的に、言葉を言い換え誤解を恐れずに言えば、我が国として狡猾に狙っていくようなアプローチに転換していくということでございます。
 その際、想定されるリターンに合った体制を構築して、衛星開発のプロジェクトベースではなくて、ターゲットに基づく戦略プログラムを設定し、この要素をブレークダウンしながら、右から左に、いろいろなツールの動員、新規開発、民間との連携、海外連携、そういったものを組み合わせながら、新規開発項目にも取り組んでいくという形で、得られる成果を最大化していくということを想定しております。
 当然、この過程でJAXAのリソースを外に出していくといったことについても考える必要もありますけれども、他方で、そうしたことをやることによって、空いたリソースを、次なる我が国の強みの獲得のためにも、全く新しい技術開発にチャレンジしていくといったことも想定され、このサイクルをもう一巡させるという方向にも行くと考えております。
 いずれにしましても、宇宙というものは、やはり遠いところには政府が先陣となり切り開いていく、そして近いところは明け渡していくような動きとなっていくことが想定される中ではありながらも、やはり低軌道の衛星に関しても、政府として担うべき役割も残っている、あるいは、拡大していくという中において、基礎から開発、実装、果てはソリューションまでJAXAのやることもどんどん広がってきている状況です。
 気持ちの面では、いろいろなソリューション、いろいろな分野での課題解決に向けて、全て全力でやってほしいという気持ちはあるものの、気持ちだけではどうにもならないところもありますので、今後はより戦略的に振る舞いつつ、必要なリソースを整え、効率的にリターンを追求していくフェーズに変わっていくのかなと思っております。
 これはとても難しいことで、JAXAとしても慣れないところはあると思うのですけども、諸情勢を踏まえて、やはり衛星という分野が先行事例になっていくものだと思っておりますので、今後のJAXAの全体の礎とするためにも、難しい目標にチャレンジしていきたいと考えております。
 以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明について、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。それでは、まず芝井委員、お願いいたします。
 
【芝井委員】 あまりこの分野について詳しく知らないのですけど、非常に綿密なきっちりした計画をされているというふうに思いました。
 ただ一つコメントがあるとすると、このJAXAの役割のAですね。地球規模課題解決や外交政策への貢献等というところになりますと、例えば、東アジアに話を限ったとしても、中国、あるいは韓国もかなりレベルの高いことができているのではないかと思うのですよ。インドもそうですけれども。
 もしこのAというところで、大きい価値を得ようとするならば、やはり諸外国の状況というものは非常によく研究されて、調査された上で、我が国の方針を検討されるのがいいのではないかというふうに思いました。以上です。
 
【池田補佐(事務局)】 ありがとうございます。私からコメントしてよろしいですか。
 
【村山部会長】 はい、どうぞ。
 
【池田補佐(事務局)】 今、芝井先生がおっしゃったとおりだとまさに思っておりまして、こういった場では、いろいろ言えることと言えないことがあるところですが、まさにこういった方向性を打ち出して、この先、実際の目標・計画を作り込んでいくにあたって、では本当にどういったところでリターンを取りにいけるのか、というところをしっかり議論していく必要があると思っていますし、やはり、今おっしゃった中国、韓国、インドも含めて、宇宙開発に投資をしている中において、日本として今どういった立場にあって、どこでどう攻めたらどんなリターンがあるのか、それは必ずしも宇宙分野へのリターンではないかもしれない、というところも含めて、しっかり検討していく必要があると思っております。ありがとうございます。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして、松岡委員、お願いいたします。
 
【松岡委員】 京都大学の松岡と申します。一点質問させてください。
 これまで、地球観測はJAXAで着実に実施してきた、そういう実績を持つ分野と考えております。
 今回の御報告は、地球観測の大きな将来像を描く、大局的に重要なものを示されたと拝見しました。
 私は大学にいるということもありまして、今後、学術研究との関係がどうなるのかということに関心があります。
 実際、今日御紹介いただいたCONSEOも、多くの大学など、学術機関が参加していると思います。
 そういう中で、今日の御説明はむしろ、外交とか、産業とか、社会実装などに重点が置かれている、ように拝見しました。
 今日の御説明内容に、何か異を唱える意図は全くないのですけれども、また今日紹介された防災とか、環境などは学術的な側面を持つことは理解している一方で、かなり結果重視的な雰囲気を感じました。
 学術に関しては、これまで大変立派なことをしてきたので、今後も自然発生的に出てくると期待され、特に今日の御報告で戦略的な課題として取り立てて言う必要はないというスタンスなのか、という観点も含め、学術との関係について、どのように考えていらっしゃるか伺えればと思います。よろしくお願いします。
 
【池田補佐(事務局)】 ありがとうございます。
 学術界、アカデミアとも関係性がこれによって何か大きく損なわれるということは全く想定をしておりません。
 むしろ、課題がしっかりしていくことによって、先ほどの複合的なデータ、ソリューションも連携させながら、一つのゴールに打ち込んでいくというふうになっていきますので、例えば、先ほどのCONSEOといった取組を通じて、特定のゴールを見据えて、研究開発的な課題と、そのゴールを一直線につなぐのではなく、複数の研究開発をまとめ上げて向かっていく、というチーミングの作業になっていくと思っています。
 その際には、必ず新規の研究開発要素も出てきますし、実はこれまで取りこぼしていたかもしれないような研究開発というところに、スポットライトがあたる可能性も十分あると思っていますので、むしろ、これまで総花的にやってきたものを、一回俯瞰して見て、どれがどれに刺さるか、というところ出口と入口を突き合わせて考えていく取組になってくのかなと思っています。
 また、JAXAもしっかり研究開発をしていく中で、今回は宇宙戦略基金といった、外の人たちをうまく発破をかけて、宇宙開発に参入していってもらうような取組もできてきましたので、むしろJAXAとしては、そういったものを俯瞰しながら戦略的に組み合わせて、言い方は悪いのですが、ずる賢く立ち回っていくような、そういう機能をJAXAの中にしっかり付与していくといったところが、我が国全体としての利益につながっていくのではないかと、そういった考え方でございます。
 
【松岡委員】 ありがとうございます。
 学術というものは、地球観測に限った話ではありませんが、短期的な成果や急いで結果を出すものとは相容れない面もありますので、その辺はバランスを考えていただければ幸いと思います。ありがとうございました。
 
【池田補佐(事務局)】 ありがとうございます。
 中目期間は7年間でございますのと、あとはやはりCのところですね、全く新しいものをやっていくというところのリソースをしっかり確保しなければいけないと思っていますので、むしろ出口があるものについては、ある意味集中していくところをしっかり決めていくといったところが重要だと思っております。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。
 ちょっと時間が押してきていまして、今3名質問が上がっているのですけれども、本件につきましては、この3名に限らせていただきます。それでは、順番にお願いします。まず、秋山委員からお願いいたします。
 
【秋山委員】 秋山です。よろしくお願いいたします。
 ALOS-3喪失に関連してちょっとお伺いしたいのですが、これまでJAXAが非常に地球観測衛星の実績、開発、それから様々な成果を積み上げてきたとは思いますが、ALOS-3が失われたことによって、光学高分解能の経験というものが、やはり失われてしまった部分がある、これから積もうとしていたものが失われてしまったという部分があると思います。
 宇宙戦略基金によって、光学衛星ということに関しては、民間の力を借りて、これから取り組んでいくということは承知しておりますし、それから防災のような部分に関してのデータの配布も保障されているということは承知しておりますけれども、高分解能、それから光学のデータを、どのようなビジネス面でユーザが欲していて、どのように利用したいのか、ということに関しては、これは民間の事業者からすると、それはビジネスの非常に重要な部分なので、そういった情報というものが、この先、宇宙戦略基金で手当する光学衛星の事業で、JAXAの側には得られるのかといいますか、ちょっと嫌な言い方をしてしまうと、頭の上をどこか通り過ぎていってしまって、実際にそれについて把握できているのは事業者であって、ちょっとJAXAの手元に残らないといった懸念はないのか、ということと、もしそういうことが発生してしまった場合に、結局ニーズですとか、将来の様々な利用の拡大といったことを考える土台になるようなものが欠けてしまうのではないか、というようなことをちょっと心配しまして、この質問させていただきました。その点について、いかがお考えでしょうか。よろしくお願いいたします。
 
【池田補佐(事務局)】 ありがとうございます。
 おっしゃった点は我々としても意識しておりまして、基金を使ってすぐに外に出してしまった挙句、JAXAに全然ノウハウが貯まらないのではないかという問題意識だと思いますけれども、そのために先ほどもあったCONSEOといった産学官のコンソーシアムを立ち上げて、同じ土台、同じ土俵の中で、ニーズについて議論をしていく。そこから技術開発として設定されたものは、宇宙技術戦略の中に乗っていき、それをできる人が誰かといったところで、JAXAですとか、民間に振り分けられていくといった発想になっていきますので、開発の主体がJAXAの頭上を擦り抜けていくといったところについては、JAXAとして必要な研究開発をするものがあれば、そこはしっかりJAXAとしてやっていくといったところでございます。
 また、衛星データの利用拡大につきましては、BtoBの世界観で通じるものを、無理にJAXAを通じてやっていく必要はないとは思いつつ、それをやっていく中で、新しくこういったデータ、例えば、先ほどあったように、海底を少しでも見れるとソリューションとして拡大するのではないかといった点については、それも含めて、JAXAの方で一度開発をしてみて、それを小型化するなりをして民間に流していく、といったような、うまいエコシステムを組めればいいと思っておりますし、こういったものが宇宙基本計画の中のJAXAの産学官の結節点としての機能になると認識しております。
 
【秋山委員】 分かりました。ありがとうございました。
 
【村山部会長】 続きまして、鈴木委員、お願いいたします。
 
【鈴木委員】 時間も限られているということで、コメントのみでよいかなと思いますが、まさに先ほど質問させていただいた、だいち2号と4号の違いみたいな部分も含めて、競合比較表とか、そういったものに近い形で、海外の衛星と、国内の開発中、実装中の衛星のスペックの違いみたいなものを表にしてみるみたいなものは、ぜひ、もうやられているかもしれないですけれども、やってみていただいて、分解能ですとか、時間分解能と空間分解能とバンドの種類と、あとSNとかも重要かなと思うので、その辺り、SN比とか、そういった部分も含めて、どの衛星でどんなものが撮れるか、そういったものを考えてみるのがよろしいかなと。
 あと頁7のところがすごく分かりやすいなと思うのですけれども、具現化したプロダクトのサービスの事例で、これでもう全て完成されているものなのか、あとスペックはどこが拡充されると、どんなサービスに発展するか、みたいなものを、今記載されているものだと、9あるものに対して、一度考えてみられるのと、あとは新しいサービスを提供しようとしたときに、従来具現化したサービス以外のサービスとして、どんなものがあるかみたいなものをリストアップして整理されると、開発の方向性が客観的にも、こういうスペックを満たすと、こういったものに発展できるみたいなこととかで判断できるのかなと思っています。もうされているかもしれないですけれども、私の所感をコメントさせていただきました。ありがとうございます。
 
【村山部会長】 それに対して何かあれば。
 
【池田補佐(事務局)】 まさに御指摘のとおりだと思っております。
 スペックも含めて、一度テーブルの上に並べてみて、どれがどれだけ伸びれば何ができるのか、というところはまさに重要だと思っています。
 また、プロダクトはいっぱいあるものの、それぞれ本当にどこまで使われているのかとか、ものによっては一緒にした方がうまく使えるのではないかという議論もあると思っていますので、その辺りはしっかり議論していきたいというふうに思っています。ありがとうございます。
 
【鈴木委員】 ありがとうございます。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。それでは、最後に米澤委員、お願いいたします。
 
【米澤委員】 どうもありがとうございます。
 2点お伺いしたいことがあります。まず1点目は、事業規模が大きいことから、今のJAXAの体制で実施できるのかについて疑問に思ったというのが一つです。
 といいますのは、イノベーションの創出など、かなり大きな仕事になると思うので、詳しくお伺いしたいと思います。
 あともう一つ、多分これは外の機関との連携というものが今まで以上に重要になってくるというお考えだと理解しました。3頁目にまとめていただいているのですけど、ほかに何かこれを仕掛けよう、というような具体的なお話があったら、差し支えない範囲で教えていただけたらありがたいです。どうぞよろしくお願いいたします。
 
【池田補佐(事務局)】 ありがとうございます。
 体制の面は大変難しい問題ではございますが、JAXA全体として、しっかりと人的な資本の拡充に努めるという方針であるところ、やはり、衛星分野にとっても一緒のことでございます。ただ衛星が全てをできるかのように振舞って、全ての問題に対して何かやってみましょう、とやっていくと、これはもう大変なことになってしまうので、ここから先は、しっかり戦略を立てて、これはいけるのではないか、というところを、ある程度集中してやっていくことで、人的資本とのバランスも取っていくべきでしょうし、まさに今米澤先生がおっしゃったように、外との連携によって、必要なところはJAXAがやるし、ほかのところはビジネスとしてやっていきます、というところに分けていくと思っています。
 すみません、具体的なアクションとして何かみたいな、今言いづらいところもややあるのですけど、例えば、先般スターダストプログラムという、内閣府の事業でやらせていただいている中に、カーボンクレジットの算定にSARの衛星が使えないか、というプログラムがあります。イメージとしてはああいったものが近くて、関係省庁とも連携しながら、衛星のアセット、宇宙のアセットというものを使って、日本が最後ポジションとしてどう立ち振る舞えるか、というところをある程度ゴール設定して、それに向かって突き進んでいくようなイメージをしている次第でございます。
 
【米澤委員】 どうもありがとうございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 ちょっと急がせて申し訳ありません。というのは、最後の議題は本日のメインイベントみたいなところがありまして、ちょっとそこに時間を取りたいので、そういう形にさせていただきました。池田さん、どうもありがとうございました。
 本日いただいた御助言や御意見については、文部科学省及びJAXAにおいて御考慮いただき、今後の衛星地球観測の方向性についての具体的検討の中で適切に対応していただきたいと思います。
 ということで、本日の最後の議題に入らせていただきます。最後の議題は、(4)宇宙輸送分野における取組についてです。
 これは次世代の宇宙輸送システムの開発ということですけれども、7月の第88回では、宇宙輸送分野における検討項目として、基幹ロケットの高度化、打上げの高頻度化、次期基幹ロケットに向けた取組の2点について御意見、御助言をいただきました。
 本日はもう一つの論点であった次世代の宇宙輸送システムに向けた具体的な取組について、現在の検討状況を御説明いただき、こちらについても、委員の皆様から忌憚のない意見をいただきたいと思います。
 本日は文部科学省、JAXAに加え、宇宙輸送の事業化を目指す民間企業の集まりである宇宙旅客輸送推進協議会、SLAという機関ですけれども、こちらからも現在の民間動向や重要と考える技術についての御紹介をいただくことにしております。
 それでは、まず文部科学省宇宙開発利用課の阿部企画官、続きまして、SLAの稲谷代表理事、そして最後にJAXA研究部門の稲場理事の順に資料の説明をお願いいたします。なお、質疑応答は3件の説明のあとでまとめて行いたいと思います。それでは、よろしくお願いいたします。
 
【阿部企画官(事務局)】 まず文部科学省の方から説明をさせていただきます。
 1枚めくっていただきまして、今、部会長の方から御説明ありましたとおり、7月の利用部会におきまして、丸1、丸2を御議論いただきました。今日は丸3について、これからご議論をいただきたいと思っております。
 文部科学省の方から、まずSLAの設立に至った背景としての、文科省での政策議論の経緯、それから、民間主導での研究開発に対する支援策、宇宙輸送分野における技術戦略についての御紹介というところです。
 めくっていただきまして、2頁目になりますけれども、ちょっと2頁目を御覧いただきながら、3頁目をあわせて御説明いたします。
 令和2年に革新的将来宇宙輸送システム実現に向けたロードマップ検討会というものを文部科学省の方に設立しまして議論を開始しております。
 この議論の動向を踏まえまして、宇宙輸送事業を民間で進めていくための組織として、令和3年5月に、一般社団法人宇宙旅客輸送推進協議会、SLAが設立されたというところです。
 この検討会の取りまとめにおきましては、官ミッションに対する基幹ロケット発展型と民間主導による高頻度往還飛行型の2本立ての宇宙輸送システムの開発を進めるというようなことが提言されたというところです。
 こうした動向を踏まえまして、JAXAの事業の方では、将来宇宙輸送プログラムの拡充がありまして、また文科省の方では、中小企業イノベーション創出事業、こういったものを開始して、民間が行う研究開発への支援を開始してきたということでございます。
 そして、令和6年3月には、宇宙技術戦略の策定において、こうしたところの取りまとめの内容が反映されてきたというところでして、今年の4月には、宇宙戦略基金の基本方針、実施方針といったものが決定していったという流れになってございます。
 1枚飛ばして、4頁目を御覧ください。SBIRの事業について簡単に御紹介いたします。
 2027年をターゲットに、国際競争力を持ったロケットの開発・飛行実証を行うスタートアップ企業を支援するというところで、資料の右肩に書いてありますが、支援期間は2023年から7年まで、総額として350億円というところで事業をスタートしております。
 事業フェーズ1としては、最初に4社を支援して開始しておりまして、ステージゲート審査を行って、3社に先般絞り込んだところでして、これがまたフェーズ3に移行する段階では、2社まで絞り込むという予定で事業を進めているところでございます。
 試験機の飛行実証に成功し、条件を満たす宇宙輸送機については、JAXAや文科省などの取組において、衛星等の打上げサービス調達を進めていく予定ということを計画しているものでございまして、詳細については、今画面にある表のようになってございます。
 続きまして、5頁目ですけども、宇宙戦略基金の方でございます。こちらについては、これまでも何度か御説明をしているところかなと思いますけれども、民間企業、大学等が複数年度にわたる予見可能性を持って研究開発に取り組めるように、産学官の結節点としてのJAXAの戦略的かつ弾力的な資金供給機能を強化するというところで、これが設けられて動いております。
 こちらにつきましては、順次公募・採択を進めてきているところでございまして、先週10月25日金曜日に初めて採択課題が公表されたというところで、ここから順次審査が終わり次第、公表していくというところでございます。
 次、6頁を御覧ください。宇宙戦略基金の基本方針と実施方針です。細かいところは、ここで申し上げませんけれども、技術開発テーマの選定にあたっては、宇宙技術戦略で抽出された技術項目を参照して、民間企業・大学等が主体となることで、より効果的な技術開発の推進を図るテーマを設定するということになってございます。
 その戦略の趣旨等については7頁目を御覧ください。安全保障・民生分野における横断的に我が国の勝ち筋を見据えながら、我が国が開発を進めるべき技術、こういったものを見定めていくというところで、毎年度最新の状況を踏まえたローリングを行っていくということになってございます。
 この中で、宇宙輸送の関係のところについての技術開発の方向性については8頁となります。低コスト構造の宇宙輸送システムを実現していくというところで、産業基盤を国内に構築し、自立性及び自律性を確保し、必要な技術を獲得し我が国の国際競争力を底上げするのだという、こういった方向性の中進めていくことになってございます。
 9頁目は、具体的な戦略の記載になりますので飛ばしまして、具体的にどういったイメージか、というものが10頁目になります。システム技術、構造系の技術、推進系の技術、そして基盤技術、輸送サービス技術とありまして、下に横にざっとなっていますが、射場・宇宙港の技術、こういったものに具体的に取り組むということで掲げられているというところになります。
 以上になります。
 
【村山部会長】 では、続きまして、SLAの方からお願いいたします。
 
【稲谷代表理事(SLA)】 今日はどうもお時間いただきましてありがとうございます。SLAの稲谷と申します。
 私自身は元々JAXAの宇宙科学の世界で、ロケットや惑星探査などの宇宙工学の分野で仕事をしてまいりました。現在、SLAという組織を主宰しておりまして、先ほど阿部企画官の方から御紹介がありましたような、日本として、基幹ロケットの発展と並行して、民間主導で、輸送を革新して、大きな意味で日本の競争力の伸長にむけて頑張ろうではないかと、そういう動きの中で、このSLAを設立させていただいて活動しているところです。次、お願いいたします。
 本日は、技術課題の重点化の御提案をさせていただく機会をいただきまして、どういう動機と理屈で、何のために、どういうことをやるのであるか、というようなことを若干御説明させていただいた上で、技術課題の抽出、あるいは重点化の理由、その論理や、目指すところなどについて御紹介させていただければ幸いと存じますのでよろしくお願いします。次、お願いいたします。
 まず、SLAという組織について若干の御紹介させていただき、世界の宇宙輸送と日本の現状のご紹介、特にアメリカの民間では、輸送のビジネスという点で市場を席巻する状況の中で、これから日本はいかに立ち向かっていくかと、そういう図式について御説明しています。何はともあれ、どういう輸送の需要があるのかということが重要で、輸送というのはあくまで手段であって、手段が目的化してはいけませんので、何をどう運ぶのであるか、というようなマーケットが、現在から未来に向けてどう発展していくものであるか、ということについて若御説明をさせていただいています。
 その上で、現在日本でも、特にスタートアップの方々を中心に、民間の側で新しい輸送の社会を作ろうと頑張っておられる方々がおられます。
 我々SLAとしては、それらの方々と連絡を密にとりながら、コミュニケーションを図り、これらの皆さんが、前に進めるための環境を作るということでやっております。
 同時に、これも先程来、阿部企画官の方からお話がありましたように、国からの支援、文部科学省のみならずではありますが、内閣府、それから経済産業省、総務省、文部科学省など、宇宙関係の国の府省などからの御支援を得つつ、この辺を前に進めていくということが大事でありますので、その辺の御紹介をさせていただきます。
 それらの考えに基づいて、こういう技術課題に挑戦すべきではないかという御提案をさせていただいて、最後に結論を申し上げます。次、お願いいたします。
 SLAという組織は、先ほど申しましたように、SLA自身は事業をするボディではありません。民間で宇宙輸送事業をされるという方々のために、環境の整備、国との間に入って国の支援を引き出したり、日本の国が世界で競争力を持つためにどういう環境を作ればいいかと、そういうところで活動しています。
 補足の資料に、SLAの紹介がありますので、後ほど御参照いただければ幸いです。次をお願いいたします。
 左側のグラフは世界のロケット打上げ機数の変遷で、2010年代から2020年代にかけて、倍とか、3倍とか、特にこの5年間は急速に輸送の需要、ロケット打上げ数が増えております。増えているかなりの部分がアメリカの民間、それから中国などが占めている状況があります。
 我々の危機意識の一つは、日本のロケット技術というものは、我々が先達から引き継いで、レベルの高い技術を持っているということを認識しておりますし、現在の基幹ロケットもその範囲においては世界レベルのロケットではありますが、残念ながら市場を席巻するというふうになっていない。そういう問題意識のもとに、先ほど阿部企画官に御紹介いただいたように、国側のいろいろな施策が、この右側の図のような形で、SBIRでありますとか、JAXAの中の施策でありますとか、宇宙戦略基金の設立と運営、ということで現実に動いています。多くのものの背景には、政府の総合経済対策のもとに、日本の競争力の確保、イノベーションの推進、ということが大きな目標として掲げられている、と認識しております。次、お願いいたします。
 ここから少しマーケットについて申し上げますが、ここでは、現在の輸送のマーケットということで、先程来ロケットの機数が増えていることについて述べましたが、それは衛星を打ち上げるという世界のビジネスについてであります。
 衛星打上げのビジネスが、この数年非常な勢いで伸長していること。そのなかでコンステレーションとか、非常に多数の衛星打上げビジネスが活発化しています。しかし残念ながら日本のロケットは、その中で多くを占めるには至っていない、そういう状況があります。次、お願いいたします。
 衛星の打上げとは別に、宇宙ステーション、あるいは有人の輸送、物資の大規模な輸送などということになりますと、ここに書いてありますような現在の国際宇宙ステーションへの輸送を中心とする状況が作られております。
 この宇宙ステーションが運用を終える2030年代以降については、民間のステーションによって、この活動も民営化されて、さらにそこで必要な物資や人の輸送も民間が担うという状況が作られようとしています。次、お願いいたします。
 既にそれらの飛行機会を使って、民間ビジネスとして、人を運ぶ、遊覧飛行をする、体験をする、などということがビジネスとして始まっております。
 ただし、現在の輸送の手段や技術では、1人の輸送費というものは、何十億円というお金を払える人たちがその利益を享受できるという世界でありますので、大規模化という意味では、ごく一部の方にとどまっているという状況ではあります。
 ところが、最近報道でもされているとおり、スターシップという輸送機が、非常に大きなロケットで、1回に何と100人を運ぶというような世界を作ろうということで頑張っている状況があります。これでどういう世界が作られるか、大変注目されるところではありますが、このような動きが、特にアメリカの民間によって加速されている状況があるということを認識しておきたいと思います。次、お願いいたします。
 さらに、10年20年の先に、先ほどのスターシップや、さらにその先の世界を見据えたときに、どういう世界が期待されるかというと、ここでは宇宙への移動の一般化、大衆化、低コスト化などをもたらす現在の商業航空輸送のような世界に、いかにロケットによる宇宙輸送を近づけるか?ということで、2040年代には、こういうことをゴールにしてはどうか、ということが、文部科学省のードマップ検討会などで議論されました。それに向けて、いかに段階的な発展を進めていくか、ということを具体化する議論がされているところであります。次、お願いいたします。
 一方で、日本の輸送スタートアップの方々が、10数社おられて、その中の数社は、実際にロケットを開発して輸送サービスをして飛ばすというところまで活動されているという状況があります。これはSPACETIDEというところでまとめられた資料に基づいています。次、お願いいたします。
 それらの事業者の方々が、この先の10年、20年の間に、どんな活動や構想を持っておられるかということが書いてありますが、最初は無人のロケット輸送サービスということをすることから始まり、それを低コスト化のために何度も繰り返して使う、それがうまくいけば人を乗せてビジネスをしよう、さらには大規模な宇宙旅行やP2P(Point to Point)と申しますが、大陸間の高速移動などを宇宙空間経由で行うということがビジネスになるということ。これも先ほどの2040年代の世界のところで述べましたが、そういう世界を目指そうという活動が現実に行われています。
 同時に、それをやるためには、必要な資金の規模も段階的に、桁の単位で増えていくことが期待されますし、それに必要な制度整備についても、ここでは詳細は申し上げませんが、地上と宇宙を往復するために必要な制度、あるいは人が乗るための制度整備を並行して進展させる必要があります。アメリカでも、このような制度整備が、民間が実行しやすい環境を作るために先行して行われていますが、十分な一般化、大衆化というところまでは、まだ現実のものになっていない、という状況ではあります。次、お願いいたします。
 これらの事業者の方々やスタートアップの皆さんが具体的にロケットを開発して、輸送サービスしようとされています。この先の10年間、というところでは、まずは使い捨てロケットによる輸送サービスを向上させようという方もおられますし、往還飛行、すなわち繰り返して使えるロケットを作って、コストを下げて競争力を上げようという動きへ、さらにそれができた暁には、人を乗せて運ぼうというような構想を現在のスタートアップの皆さんが計画され、実行に移そうとされています。
 すなわち、この5年10年の間には、そういうことを実行する人が本当に現れてくるということで、それらの人々が大いに活躍できるような環境をどう作ったらいいか、ということが話題の中心であると考えているところであります。次、お願いいたします。
 その意味で、これらの実行のために必要な技術課題の抽出ということをさせていただきました。先ほどのような未来志向の大きな世界を作ることと、それに向かうための取り組みを前に進めるために必要な、技術課題の抽出です。
 先程ご説明されたような宇宙技術戦略でも、技術課題の抽出をされておりますが、ここではさらに未来志向のビジネスとして成り立つような将来の大きなマーケットを創出するために、推進系、軽量化、再突入飛行、繰り返し運用の効率化や航空機的運航、それから人を運ぶための技術、という5つの技術にカテゴライズをして、それぞれの中でどういう技術課題を抽出していくべきか、ということを議論させていただいています。次、お願いします。
 さらに、これらの抽出された課題を重点化するときの論理について考えさせていただきました。重点化のロジックとしては、この赤枠の中に書かれていますように、海外の先行する民間などの状況を意識し、ベンチマークをして、中長期で世界の日本の競争力向上と、勝ち技が繰り出せるようなテーマを選んで重点化していこうではないかということが第一の重点化の動機と理由です。
 2番としては、先程来お示ししましたように、現在活動されておられるスタートアップの皆さんが、2020年代のうち、あるいは2030年代はじめにかけてやろうとされていることを支援していくための技術課題、これが2番目です。
 3番目は、特に新しい仕組みで世界との競争に勝てるようなエンジンや、世界で競争力の高い材料開発などの取組には極めて長い時間を要します。そういう課題については先行して取り組んでいこう、という観点です。
このような3つの重点化のロジックで、先ほどの5つの課題の中から、さらに具体的な課題を抽出させていただいています。
 抽出の課題の全てをここでいちいち申し上げる時間がありませんので、それは本資料の本文と付属資料に、その技術の内容を具体的に示していますので、御参照いただきたいと思います。
 これらの中には、いろいろな事業者の皆さん、先ほどのスタートアップの皆さんが取り組まれていること、これから取り組もうとされていることなど、いろいろな技術、それからまだ取り組まれておられないことも含まれていますが、特定の事業者の方のために書いたものではないということ、一般的な将来に必要な技術という形で抽出させていただいているということを申し上げさせていただきます。
 この絵につきましては、それぞれの抽出された技術、これは縦に5つ並んでおりますが、これらは、どういう構成の輸送機器に適用されて、それらができると、どういうビジネスができるのだろうか。ビジネスとは、衛星打上げビジネス、それから未来的な、というふうに時間が上から下に流れるような書き方をさせていただいていますが、こういうつながりで、これらの技術の重点化の議論をしています。次、お願いします。
 最後に結論です。先ほど申し上げましたように、第一には、輸送の将来像として、大きな市場が形成されることが期待されます。それは大量高頻度の往復飛行による航空機的運航と、これによって大量の人を安全に運ぶ世界を作ることであります。
 第二には、それらが期待される中で、これまで我々が獲得してきた輸送技術は高いレベルを持っているというふうに認識しておりますけども、この先で戦略的に我が国がどういうことをやって、世界の中でどういう位置を占めるのであるかということについて、ぜひ議論していただき、それに向かう戦略を立てることが必要であることです。
 それから、第三として、本日お話ししたように、現実に日本のスタートアップの皆さんが、これらの活動を実行しようとする状況があります。
これらの未来に向けた期待と現在の状況認識の上で、大きな目標に向かうために、以下の3つの提案の形にまとめました。
第1の提案は、上記の背景から技術課題を抽出しましたので、これらの重点化技術課題に、ぜひ取り組んでいくということが望まれます。現状の技術戦略の更新やローリングの際に、この議論を、ぜひ前向きに進めていただきたいと。
 提案の2としましては、これらは本来、イノベーションを起こす程に、極めて競争力が高い活動を作ることが目的なので、いろいろな形の戦略的な資金支援の施策の充実をお願いしたいことです。
 3つめとしては、資金支援のみならず、様々な形の制度整備、インフラ、技術の支援など、新しい課題、特に往還飛行や有人輸送に取り組むためのサポートが必要であるということです。
以上を申し上げて、私の説明を終わらせていただきたいと思います。
 添付の付属資料には、先ほどの具体的な重点化課題を書いてあることと、SLAという組織はこういうことを目指しているというようなことも書かせていただいていますので、ぜひ御参照いただければと思います。
 お話は以上であります。ありがとうございました。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。続きまして、JAXAの方からお願いいたします。御説明をお願いいたします。
 
【稲場理事(JAXA)】 JAXAで研究開発部門を見ております稲場でございます。
 JAXAからは、輸送系の基盤技術の研究開発、それから稲谷SLA代表から御説明のありました民間の動向に関するJAXAの認識、これを説明させていただきますとともに、それを踏まえて、今後のJAXAの取組方針についても御説明させていただき、御意見を頂戴したいと考えております。
 以後、この資料の説明は、第4研究ユニットの南里ユニット長からさせていただきます。
 
【南里ユニット長(JAXA)】 それでは、資料の説明に移ります。今画面に映っています、2頁目になります。
 最初に文科省様から御説明がありましたとおり、7月23日において議論された丸1丸2に続きまして、丸3次世代の宇宙輸送システムに向けた具体的な取組について、本日御紹介いたします。
 内容としては、大きく2つ下に書いてございまして、次世代の宇宙輸送技術の基盤技術研究、JAXAが主として取り組んでいる研究。
 もう一つは、民間事業者によるシステムの開発・事業化の促進に関する取組状況、大きくこの2つについて御説明するものでございます。次の頁をお願いします。
 目次になります。次の頁をお願いいたします。
 4頁目は、宇宙基本計画を改めて記載してございます。青色で書かれているところが、今回の説明のポイントになるところになりますが、まず、新たな宇宙輸送システムの構築に向けまして、1つ目、次期基幹ロケットの開発に向けた取組、これは7月23日の宇宙開発利用部会にて、基幹ロケット開発の方策として御説明しているものでございます。
 それ以降、次世代の宇宙輸送技術の研究開発、これは今回の基盤技術研究に関するもの。
 もう一つは、取組を主導する民間事業者における事業化等を促進するために、有人輸送など、必要となる要素技術の開発を進めるとされていまして、これが2つ目の大きな役割となります。次の頁をお願いします。
 まず、1つ目の方法、基盤技術研究について御説明していきます。次の頁をお願いいたします。
 6頁目は、7月に一度御説明しているものでございます。H3ロケットは、これから段階的にブロックアップグレード方式を採用して、最終的なターゲットとなる基幹ロケットに向けた開発をするということを考えてございます。
 これらの開発を支えるものとしまして、要素技術研究が不可欠でありまして、この絵の下の方にあります緑色のところです。ここを今、将来宇宙輸送システムの研究開発プログラムとして基盤研究を行っていまして、このうち早期に成果が出るもの、または活用できるものを基幹ロケットのアップグレードに採用していくという、大きな流れの考えのもとで、研究開発を進めてございます。次の頁をお願いします。
 7頁目は、その例を示してございます。左側の方に4つ示してございますが、小型衛星の効率的な打上げ、またロケットの低コスト化につながる3Dプリンタの活用等の研究開発を行いまして、成果が出たものについては、次のロケットアップグレード、もしくは次世代ロケット技術に活用されていくと、こういう流れを考えてございます。次の頁をお願いします。
 8頁目です。ロケットの機体の一部を再使用化する場合の課題と研究事項の例として紹介してございます。
 文章に書いてございますが、打上げの高頻度化、1年間あたりたくさん打上げる場合の高頻度化や、打上げの低コスト化に対して、機体を繰り返し使用する再使用化というのは有効な手段であると考えます。
 一方、技術的な難易度が高い事項ですので、これらの開発リスクが大きいことを踏まえ、技術成熟度の向上に向けたフロントローディング研究を今推進しています。
 具体的な例を下の方に3つ述べてございます。高高度からの帰還技術としまして、飛行制御技術、着陸技術、洋上回収技術など、また真ん中の中段には、高性能・軽量化に関する技術、一番右側は繰り返し使いますので、より効率的に再使用する技術について研究開発を進めてございます。
 また文章の2ポツ目にありますが、日本におきましては、フランスやドイツとの外国との宇宙機関との共同プロジェクト、CALLISTO等を推進していまして、機体再使用に関する必要な技術の獲得を、要素レベルだけではなく、実験機のようなシステムレベルでの検証活動も行ってございます。次の頁をお願いします。
 9頁目は、実験機の内容を示してございます。赤い方、左下がRV-X、飛行実験フェーズ1、右側がCALLISTO、飛行実験フェーズ2でございます。
 左側は小型の実験機でして、2025年度飛行試験を予定してございます。米印がついていますが、飛行試験の安全に関わる追加検討が必要であることが判明しましたので、当初2024年度を予定していましたが、2025年度に変更し、日本単独の研究として、秋田県能代ロケット実験場で飛行実験を行う予定としてございます。
 右側は、それを踏まえたCALLISTOプロジェクトになります。南米ギアナ宇宙センターで高高度の飛行試験を3機関と共同で実施する計画としてございます。詳しく次の頁で説明いたします。次の頁をお願いします。
 10頁目は、CALLISTOの進捗状況を記してございます。2024年10月現在ですけども、右側の方に写真を載せてございますが、タンクの試作、ロケットエンジンの試作試験、またはモックアップによる組立て手順等の確認等、着々と研究開発を進めているところでございます。
 ただ一方、共同開発を行っています国際パートナー、フランス、ドイツと開発計画について相互に協議いたしまして、協議した結果として、飛行試験の開始時期を2025年度から2026年度へ変更することとしてございます。
 なお、これまでに得た主な成果の例をその下に3つ記してございます。1つは、誘導制御技術、2つ目は推進薬のマネジメント技術、3つ目はヘルスマネジメント技術でございます。
 このような成果を得つつ、次の基幹ロケットの開発に向けたツール等を整備しているところでございます。次の頁をお願いします。
 11頁目は、成果展開の取組です。RV-X、CALLISTOという実験機について今御説明したところですが、そのあと再使用型を候補としています、将来宇宙輸送システムの研究開発プログラムと3つ連携しながら進めていまして、相互に得られた知見の共有等を図り展開をしているところでございます。
 その下に、CALLISTOの後に獲得すべき主な技術等を例として示してございます。CALLISTOの飛行領域は、マッハ1以下、高度20km以下でありまして、なおかつ着陸は地上に戻ってくるということを想定してございます。
 それから、さらに発展したもの、より速い速度での飛行実証、また海上、海に降ろす洋上プラットフォームに関する運用技術などが、そのあとの課題として残されており、今はそれに関する研究開発を進めているところでございます。次の頁をお願いします。
 ここからは、2つ目の話題になります。民間事業者における宇宙輸送システム開発・事業化促進に関する御説明になります。次の頁をお願いします。
 開発事業化の促進としまして、これは8月に産業力強化として一度御説明しているものになります。
 1つ目のポツです。高速二地点間輸送や宇宙旅行のような中長期的な取組につきましては、民間事業者によって主導されるものとされていまして、その技術の獲得戦略を取りまとめていくという活動を行ってございます。
 また、民間事業者が単独で開発に取り組むのが難しいような要素技術がまだいくつか残ってございますので、提案に基づき、官民共同での共同研究や、また今後の基幹ロケットの開発に向けた取組をJAXAでも行っていますので、こういうものと連携し、技術成熟の促進を図ってございます。
 絵でいいますと、今まで主に青色のところをJAXAで研究開発を行ってきましたが、より事業化、または実現性の見通しが高いものにつきましては、民間主導のシステムに適用され、彼らによる実現が期待されます。
 また、JAXAにおきましても、今後の基幹ロケットに向けた適用となる研究開発を青い線として行っています。
 ただ、この赤い線と青い線はそれぞれ単独ではなく、真ん中の方にございますが、相互に技術の適用・連携を図ることが重要でして、今それを進めつつ、将来の宇宙像をより効率的に実現するべく調整検討を行っているところでございます。次の頁をお願いします。
 促進に向けた取組として、大きく3つ挙げてございます。丸1丸2丸3とございまして、1つ目は民間事業者・アカデミア様等との対話及び意見等の集約を行うものでございます。
 それぞれ、長期的な目標、誰がいつまでにどういうことをするのかということの情報共有を図ることによって、より効率的に研究開発を進めることができるという取組が丸1。
 丸2はそれを踏まえまして、民間からの提案に基づく共同研究を行い、いわゆるオープンイノベーションとしての共創体制を行うことによって、より効率的に、協働的にブレークスルー技術の開発を実施しているものでございます。
 3つ目は、民間主導の開発体制を整える環境の整備としまして、今、角田宇宙センターに、ロケットエンジンの実験場を造っているところでございます。これにより、民間事業者に試験準備の予見性を持たせて、民間における開発の機会の拡大を図るという活動を行っていまして、大きくこの3つの活動を今推進してございます。一つ一つやや詳しく説明してまいります。次の頁をお願いします。
 民間事業者・アカデミアとの対話のツールを2つ紹介してございます。1つは、技術ロードマップのやや詳細なものを作成するというものでございます。今後、何をいつまでにすべきか、ということを見える化することによって、より効率的に、また宇宙関連の事業者とは違う業者にも門戸を開くという効果がございます。
 2つ目は、ワークショップの開催です。ロードマップを作成するだけではなく、ワークショップを開きまして、民間、アカデミアとの会話を踏まえ、より確実に物事を推進していくという活動をしてございます。次の頁をお願いします。
 16頁目はロードマップのワークショップの開催事例を書いてございます。これまで4回行ってきていまして、延べ79機関193名の多数の機関及び方々に参加いただき、様々な意見をいただいてございます。次の頁をお願いします。
 17頁目は、民間事業者、アカデミアとの対話を踏まえた技術ロードマップの更新の例を示してございます。内容は、民間主導による宇宙輸送システムに関する事項です。文章で書いてございますが、民間各社はそれぞれ技術戦略を持たれていますけども、多くは非公開が原則となってございます。ですが、公開、共用可能な範囲で技術情報を提示いただきまして、このように見える化を行い、相互に情報交換を行っているというものでございます。
 青字がキーとなるところですけども、機体システム設計ツールの構築、有翼形態の機体の着陸に関する技術、また空気吸い込み式エンジンとそれを活用した飛行経路作成等について、やや詳しく示すことができてございます。次の頁をお願いします。
 18頁目は、同じく民間主導のものになりますけども、これは有人輸送に関するロードマップを青く記してございます。同じく民間との意見等を踏まえまして、公開、共有可能な範囲で示している時系列の目標となってございます。
 今回これを新たに策定してございまして、重要な技術として、2段目の青字になりますが、環境制御技術、生命維持技術、緊急時の通信を確保する技術、異常検知技術等が重要な技術として考えられます。次の頁をお願いします。
 次は2つ目の取組でございます。官民共創でのイノベーションに関することを記してございます。下の方に図がございますが、これまでの取組は主にこの赤いところをやってきてございます。
 次のロケットシステムとして、リファレンスとなる機体の諸元を大まかに作りまして、それを踏まえてブレークダウンを行い、研究開発課題を抽出し、これまではJAXAの大型研究として主に研究開発を行ってきてございました。
 今はそれだけではなく、さらにそのテーマの一部について、広く公募をかけることにしまして、RFI、RFP等による民間との共同研究を踏まえた、より幅広い共創体制を構築し、効率的に進める活動を行ってございます。次の頁をお願いします。
 20頁目は、その実績を記してございます。2021年度以降、3回のRFI、RFPを実施してございまして、合計48件の研究テーマを実施してございます。
 その中で、例えば赤い丸がついてございますけども、うち9件につきましては、国内のスタートアップ企業に参加していただきまして、このように彼らの事業化開発を促進することにも役に立っている活動でございます。次の頁をお願いします。
 21頁目は共創体制でございますので、民間だけではなくて、JAXAの今後の基幹ロケットにも役立つ例として2つ挙げてございます。
 左側は、製造技術になります。複合材料や3Dプリンタを活用した技術につきましては、共創体制で共同研究を行っていまして、この得られた成果につきましては、今後の基幹ロケットの開発、または民間にもこういう技術を使っていただくということが予定されてございます。
 右側はシミュレーションに関する技術です。タンクの中の液体の挙動に関する解析ツールでございます。再使用型は大きく機体の姿勢を変えますので、こういうタンクの中の液面の挙動が重要になってきます。それに関する解析ツールの効率化を図るものの新たな研究開発を行っています。
 また、これは民間におけるロケットにおきましても必要な解析作業でして、今回こういう共同研究により、その解析作業を大幅に効率化できることが分かりまして、メーカーにも使っていただけるもの、要するに、我々の次期基幹ロケットに関する研究及び民間においても両方に裨益する活動として役に立っているものでございます。次の頁をお願いします。
 最後に3つ目としまして、角田におけるロケットエンジンの試験設備について紹介してございます。右側の方に構想図を示してございますが、いくつかの試験を実施できるような、設備を今、建設中でございまして、それはJAXAの試験設備と試験実施のノウハウを提供することで、より効率的に、また民間の試験のハードルを下げることによって、開発を後押しすることができると考えてございます。
 また、これまでユーザ説明会等を行ってきてございまして、36機関が参加し、13機関が少なくとも、この新しい設備を整備したあとに利用を希望されているということで、大学や民間企業の関心が高いということを感じてございます。次の頁をお願いします。
 最後の頁になります。1つ目のポツになります。JAXAは、民間事業者とこれまでに3つの活動、民間との意見集約、共同研究、オープンイノベーション共創体制、また、角田宇宙センターにおけるユーザ説明会等を通じて、対話を多く重ねてきてございます。
 これらを踏まえて、2つ目になりますが、主に以下の事項について、研究開発の加速や支援に関する意見をいただいてございます。整理したものを表として示してございます。
 左側の緑のところが民間との対応を踏まえた意見、技術課題、技術項目になります。それに対応する形で、現在の政策的な位置づけとして、宇宙技術戦略の文章を対応させるように並べてございます。
 この中で、ほとんどの事項につきましては、非常に重要と位置づけられていますけども、最後の丸5、輸送サービス技術、有人輸送技術につきましては検討が必要ということが書かれてございまして、民間の意見を踏まえると、従来からこの重要性を高くするということが望ましいと考えられます。
 これらを踏まえまして、下の黄色いところでございます。有人輸送技術につきましては、現在JAXAは経験が限定的でございます。このため、幅広い技術獲得に向けた初期段階からの検討を行っているところです。
 今後、技術的な知見を得るためには、多大な研究開発活動が必要な状況でして、引き続き民間事業者との連携の仕方を工夫すること、調整することにより、必要な要素技術研究を着実に進めていきたいというふうに考えてございます。
 説明は以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。
 会議の予定時間が5時までになっているのですけど、もう既に5時になりました。したがって、もし今後の御予定がある方は退室していただいて結構です。
 それでは、お時間が延びて誠に申し訳ないのですけれども、これから議論に入りたいと思います。御意見、御質問がある方はお願いいたします。まずは笠原委員からお手が挙がっております。よろしくお願いします。
 
【笠原委員】 笠原でございます。御説明ありがとうございます。
 内容に関しまして、非常に応援すべき内容を3者の方々から御説明いただいたものと再認識しております。
 それで言いたいことは、ほぼ一点に集約されるのですけど、稲谷先生が御説明された最後の資料の、最後の提案3のところにもお書きになられているのですが、技術開発のみならず、制度整備や種々の事業開発支援体制ということで、いわゆる基盤的なところをしっかりやはり応援していかないと、こういうことというのはなかなかうまくいかないというふうに感じております。
 既に最後の御説明の方で、JAXAの方で、民間のためのロケットの開発支援所を制作しているということで、非常に心強い内容だと思うのですが、そういう開発体制と、それから射場の方も、射場を一つ作るというのは、やはり膨大なエネルギーとリソースが必要になり、また射場と、それから人ですね。それぞれ民間が人材を集めるのに多大な御努力をされているというふうに目にすることがやはり多く感じております。
 したがいまして、うまくそういう、日本は決して広い国ではなく、ただ海はたくさんありますが、そういう環境の中で勝ち筋を見つけるというのは、実はこの提案3のところに本当に集約されているのではないかなと、いかに応援するかというところで、土台をしっかり守ってあげるというか、しっかり整えるというところに、より一層の支援をしていただけるような環境がとても重要だなと、そういうふうに感じている次第です。
 つまりは、開発、それから射場、それから人ですね。そういうところをしっかりと応援していくべきだなと強く感じました。すみません、コメントのみになりますが、付言させていただきました。以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは、コメントということで参考にさせていただきます。あと3名手が挙がっております。まず、鶴岡委員、お願いいたします。
 
【鶴岡委員】 鶴岡と申します。詳細な御説明ありがとうございました。
 2点お聞きしたい点がございます。1点目が、この輸送システムの件は、やはり抜本的な低コスト化、今日のお話にもありましたけれども、それが鍵なのだと理解しております。
 そのときに、様々な要素が、低コストにできる要素があるのだと思いますけれども、この再使用というものが、どこまでウエイトを占めているのかと。要するに、低コスト化=再使用ぐらいの話なのか、あるいは、必ずしもそこだけに焦点を置いているのではなく、ほかにも低コスト化できるところがたくさんあるという話なのか、この再使用というものが占めるウエイトについて、全体のイメージを教えていただければと思います。
 2点目に、この再使用という観点では、最近まさにスペースXのメカジラなど、各国で様々な取組があるかと思います。日本の取組がどのような形で、他国における取組の影響を受けるのか、あるいはそういったものも活用していくのかという、この日本の独自の取組の部分と、他国での話というものがどのようにつながるのか、つながらないのか、という点もお願いいたします。それに関連して、このスペースXのメカジラみたいな技術の話と、今回御説明いただいたような日本でのシステムというものを比べたときに、日本のシステムの比較優位みたいなものがもしありましたら教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
 
【村山部会長】 ありがとうございます。どなたでも結構ですので、今3つの質問が出ましたけれども、答えられる方はお願いいたします。
 
【稲谷代表理事(SLA)】 稲谷から申し上げてよろしいですか。
 
【村山部会長】 お願いいたします。
 
【稲谷代表理事(SLA)】 先生どうも質問ありがとうございます。
 低コスト化と再使用ということについて、まず述べさせていただきますが、先程来お見せしたような2030年代、2040年代に目指すべきところは、現在例えば、アメリカの民間ですら1人何十億円というお金を払ってやっているというような世界なので、一般大衆化とか、乗客を増やすという概念で言うと、桁違いにコストを下げないと、そういう世界はやってこないというふうに言われています。
 その意味で、例えば、輸送コストを半分にしなさい、そうすると繰り返し使わなくても、そういう世界ができるかもしれませんが、10分の1にしなさい、20分の1にしなさいという世界、あるいは100分の1にしなさいという世界になりますと、これは飛行機のように繰り返し使えるということと、もう不可分の世界になっていくというふうに考えております。
 その意味で、現在のコストを半分にしたり、3分の1にしたりという世界ではなくて、目指す世界が桁違いのコストの社会を作って、それはとりもなおさずロケットを1回で捨てているからそれができないのであって、捨てない世界を作るということは再使用が必須、再使用ということであれば、桁違いな世界が作れる。10回使えば、10分の1、100回使えば100分の1、あるいは1000回使えば1000分の1というほど単純ではありませんが、桁違いの世界は再使用が必ず前提になります。ということが我々の考えているコストダウンと再使用の関係というふうに御理解いただければありがたいと思います。
 2番目の他国との関係について、現在スターシップなどでやっていることとの関係ということでありますが、先ほど申し上げましたような、2040年代に非常に一般化した世界というのは、どういう世界であるだろうか、あるいはどういう技術によるのだろうかということは、スターシップのやり方がそのうちの一つであるとは思いますけれども、それは全て、あるいは正解かどうかということもまだまだ分からない世界ではあるので、先ほど御紹介した、我々が一緒に仕事をさせていただいている日本のスタートアップの皆さんも、その辺で何か違うやり方で日本の勝ち筋が作れないだろうか、ということを一生懸命考えておられるところです。ベンチマークのひとつとしてのスターシップのやり方というものはあるとは思いますが、それより優れたもの、あるいは違う考えなどで、新しい世界が作れないかというようなことを標榜する、あるいは考えるということは極めて大事なことかなというふうに考えております。
 一方で、先行しているスターシップがあって、その存在が他に対する影響力が大きいことは当然のことながら事実ではありますので、なかなか難しい世界ではあるとは思いますが、新しい世界を自ら良いアイディアを持って切り開くということを、必ずしも海外の先行者に倣うことだけではないというふうに考えている方がおられますし、我々もそういうキャッチアップでない新しいやり方にこそ、未来があるといいますか、追求すべきであるとの考えで、先ほどの課題の重点化なども、その文脈で議論や提案させていただいているというところであります。
 最後に日本の優位性ということで申し上げますと、先程来、これも課題抽出のところで申し上げましたが、日本には優れた材料技術で民間航空機の構造や材料は日本の優れた技術によっているとか、例えば、航空機の世界で申しますと、日本のエアラインはとても優れていると言われていますのは、定時運航制であるとか、繰り返しで使うところの運航技術が日本のエアラインはとても優れているというふうに言われております。
 製造の世界とは違う話ではあるかもしれませんが、非常に優れたターンアラウンド、定時運航するというような世界では、日本のエアラインは非常に優れています。このように日本の優位性が発揮できる場所は、さっきの材料技術でありますとか、運航やエンジン製造や整備の信頼性の技術、こういうエアラインの技術、あるいは高度な安全性信頼性を確保する技術など、少なからずあるだろうというふうに思っております。そういうところを切り口にして、さらに何か新しい課題を設定していくというようなことが、高い国際競争力と勝ち技につながり、既にあるアドバンテージを伸ばす意味で重要であるかなというふうに我々は考えておりまして、そういうことこそ重点課題に取り上げていただければ大変ありがたいというふうに考えているところです。
 3つの御質問に対して十分なお答えになったかどうか分かりませんが、考え方を述べさせていただきました。以上です。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 かなり包括的にお答えいただいたのですけれども、文科省、JAXAから何か追加的なコメントなどがあれば、お願いいたします。いかがでしょうか。なければそれで結構ですけど、いいでしょうか。
 
【阿部企画官(事務局)】 結構です。
 
【稲場理事(JAXA)】 JAXA、結構でございます。
 
【村山部会長】 分かりました。それでは、次の質問に行きたいと思います。秋山委員、お願いいたします。
 
【秋山委員】 秋山です。よろしくお願いいたします。
 米国の例がいくつも出てきておりますけれども、最近コマーシャルクルー、低軌道の宇宙船ということに関しては、2つの事業者、スペースXとボーイングの中で、ちょっと明暗が分かれているような状況になってきていて、そうした状況も踏まえてだと思いますが、米国でオーガスティン報告書と言われるレポートは9月に出されたものでは、技術成熟度の低いレベルのものをしっかり実現していくために、NASA自身のインハウスの開発能力をもっと強化するべきといった提言が含まれておりましたので、なるほどと思いながら読んでいるところです。
 単純にそれを日本に当てはめられるかどうか、というところはあると思いますが、やはりでも、これから民間の事業者が再利用ですとか、有人宇宙輸送といったものを、これまで日本になかったものを開発していくにあたって、JAXAの役割というのは当然大きいと思います。そのことについての御説明は今いただいたと思っておりますけれども、ただちょっと文言として、例えば要素技術研究を着実に進めるといった言葉なので、その辺り、もっとシステム全体、統合したものを作る力を、JAXAもこれから先、身につけていくといった、そういった方向性みたいなものに関しては、どのように思われているのか、というところを伺えればと思います。よろしくお願いいたします。
 
【村山部会長】 それでは、これはJAXAの方からお願いいたします。
 
【南里ユニット長(JAXA)】 JAXAからお答えいたします。
 まず1つ目の再使用技術につきましては、JAXA独自としましても、システム的なものとして、RV-XやCALLISTOに関する試験機で、システム技術を蓄えるように努力するところでございます。
 また有人技術につきましても、システムインテグレーション技術ですね、ある特定のシステムではないのですけども、そういうシステムをインテグレーションするためのモデルベース開発等の仕組みの研究開発を行ってございますので、そういう観点から民間を支えるような要素技術研究と、これも呼んでございますけども、着実に進めていきたいというふうに考えております。
 
【秋山委員】 分かりました。ありがとうございました。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは、芝井委員、お願いいたします。
 
【芝井委員】 芝井です。JAXAの方に御質問します。
 ・・・・・・
 
【村山部会長】 芝井委員、ちょっと音声の状況が悪いようですが。
 
【芝井委員】 もしもし、聞こえないですか。
 
【村山部会長】 ちょっと途切れ途切れですね。ちょっと聞きづらいので、どういたしましょう。
 
【木元補佐(事務局)】 村山先生、チャットでいただくということでいかがでしょうか。
 
【村山部会長】 そうですか。それでは、チャットでお願いできますか。
 それでは、入力していただいている間に、ほかの委員から、欠席されている委員からのコメントもありますので、それを御紹介していただきます。そのあとでチャットの方に移りたいと思います。それでは、事務局の方から欠席委員のコメントの発表をお願いいたします。
 
【阿部企画官(事務局)】 事務局です。
 山崎委員の方からコメントをいただいておりますので紹介いたします。
 民間主導の次世代の宇宙輸送システムについても多様な宇宙輸送手段を確保していくために、官民共同で戦略を持って取り組んでいくことが大切と考えます。
 宇宙へのアクセスは、宇宙開発利用の骨幹となるものです。国際競争力を保ち、日本における宇宙輸送の自律性を確保していくためには、需要が増えていく小型衛星打上げ、有人輸送、高速二地点輸送等、多様な宇宙輸送についても戦略を持っていくことが大切と考えます。
 そのためにも、一般社団法人Space Port JAPANでも提言をしてきているところですが、有人を含む、多様な宇宙輸送実現のための制度整備を加速していくことが望まれます。技術開発とともに、制度整備を前もって進めておくことで、予見性を高めることができ、戦略の幅が広がり、日本の宇宙輸送力の強化につながるものと考えます。以上でございます。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
 芝井委員の方からは、後日文書で質問を送らせていただきますとチャットに記入いただきましたので、文書を送っていただいた時点で、事務局あるいはほかの機関の方から対応をしていただきたいと思います。ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。いいでしょうか。それでは、ほかにお手は挙がっていないようですので、これまでにいたしたいと思います。
 この件については、また意見交換の場を設けたいと思いますので、そのときにまた改めて御意見を伺いたいと思います。
 いずれにいたしましても、文部科学省、JAXAにおかれましては、本日いただいた御意見なども踏まえた上で、今後の宇宙基本計画工程表や宇宙技術戦略の改定などに向けて、更なる取組の検討を進めていただければと思います。
 それでは、いずれにしても、これはまた継続して行うということでよろしくお願いいたします。
 本日の議事はこれで終了となります。最後に、事務局から連絡事項があればお願いいたします。
 
【阿部企画官(事務局)】 本日もありがとうございました。
 本日の会議資料は文部科学省のホームページに既に記載させていただいております。
 また議事録につきましては、委員の皆様に御確認をいただいたあと、文部科学省のホームページに掲載させていただきます。
 次回の宇宙開発利用部会につきましては、11月下旬の開催を予定しております。委員の皆様には別途御連絡申し上げます。
 本日は、事務局の時間配分の都合があまりうまくなく、時間を超過してしまったことをお詫び申し上げます。以上事務局となります。
 
【村山部会長】 どうもありがとうございました。
 以上をもちまして、閉会といたします。
 お時間が過ぎたにも関わらず、熱心な議論をいただきまして誠にありがとうございます。それでは、失礼いたします。

―― 了 ――

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研究開発局宇宙開発利用課