令和6年9月27日(金曜日) 15時00分~17時00分
Web会議
部会長 村山 裕三
部会長代理 田中 明子
臨時委員 秋山 文野
臨時委員 笠原 次郎
臨時委員 木村 真一
臨時委員 芝井 広
臨時委員 白井 恭一
臨時委員 鈴木 健吾
臨時委員 髙橋 德行
臨時委員 鶴岡 路人
臨時委員 米澤 千夏
大臣官房審議官(研究開発局担当) 橋爪 淳
研究開発局宇宙開発利用課 課長 嶋崎 政一
研究開発局宇宙開発利用課 企画官 森島 健人
研究開発局宇宙開発利用課 課長補佐 西 隆平
研究開発局宇宙開発利用課 課長補佐 木元 健一
研究開発局宇宙開発利用課 研究開発戦略官付 宇宙科学専門官 豆佐 哲治
(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
理事 佐藤 寿晃
理事 國中 均
宇宙科学研究所 准教授(プラネタリーディフェンスチーム・チーム長) 吉川 真
宇宙科学研究所 教授 藤本 正樹
調査国際部国際課 参事 吉田 良太
経営企画部企画課 課長 笠原 希仁
宇宙輸送技術部門 H3プロジェクトチーム・プロジェクトマネージャ 有田 誠
新事業促進部 佐藤 勝
研究開発部門 計画マネージャ 原田 正行
新事業促進部 部長 内木 悟
新事業促進部事業支援課 課長 込山 立人
【村山部会長】 第90回宇宙開発事業部会を開催いたします。今回も前回同様、オンラインでの開催となっております。委員の皆さまには、ご多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
まず、事務局に人事異動があったということなので、その紹介も含めて、本日の会議についての事務連絡をお願いいたします。
【森島企画官(事務局)】 事務局の森島でございます。8月1日付で企画官として着任いたしました。今後ともどうぞよろしくお願いいたします。本日、宇宙開発利用部会の16名の委員のうち、11名の方にご出席いただいております。次に本日の資料ですが、議事次第に記載のとおりでございます。オンライン状況につきまして、音声がつながらない等の問題がございましたら、事務局へメールや電話等でご連絡ください。事務局からは以上です。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。森島企画官、これからどうぞよろしくお願いいたします。
本日の議題は、3つ全て報告案件です。それでは早速、議題のほうに移りたいと思います。最初の議題は、文部科学省における、令和7年度宇宙関連概算要求についてです。8月29日に、令和7年度の概算要求内容が公表されました。本日はそれについて、事務局よりご説明いただきます。
それでは、嶋崎課長、資料の説明をお願いいたします。
【嶋崎課長(事務局)】 文部科学省の嶋崎でございます。資料に基づいて、令和7年度の文科省における宇宙関連の概算要求の内容についてご説明させていただきます。スライドを一枚めくっていただけますか。
こちらが全体の概要でございます。7年度の概算要求の総額としては、2046億円と事項要求という形になってございます。大きく4ブロックに書かせていただいておりますけれども、基本的には宇宙基本計画の履行ということを中心に据えて、来年度必要な予算について要求をさせていただいているということでございます。この後に、それぞれの項目の主な事項の中身について、説明のスライドを用意してございますので、全体の大きな概要だけ、このスライドでは触れさせていただければと思います。
左上の囲みは、宇宙活動を支える総合的基盤の強化と題してございますけれども、こちらについては、基本的には基幹ロケットの、H3・イプシロンなどがありますけれども、こちらのさらなる高度化・高頻度化、あるいは将来の輸送に向けた研究開発等につきまして、571億円の要求という内容になってございます。この囲みの一番下に、宇宙戦略基金、これは昨年度の補正予算で、文科省としては1500億、全省合わせて3000億円を補正予算で措置いただいておりますけれども、来年度も概算要求の中で、一応25億円という要求をさせていただいております。最終的に補正予算を合わせてどのような予算措置になるのかというのは、あらゆる形を含めて財務省と協議中という状況でございます。
下のほうを見てください。宇宙安全保障の確保/国土強靱化・地球規模課題への対応ということで、ここは基本的には衛星プロジェクトに係る予算です。運用費も合わせて、この項目で約301億ということで要求をさせていただいております。
右上の大きな囲みですけれども、宇宙科学・探査における新たな知と産業の創造ということで、約630億要求してございます。中身は、4月にアメリカのNASAと文科省の間で実施取決めを締結した有人与圧ローバの開発を含むアルテミス計画に向けた研究開発に関連するものとして370億。また、点線の囲みの下にあります各種科学探査プロジェクトとしては、高感度太陽紫外線分光観測衛星(SOLAR-C)計画について、36億円の要求、あるいは「はやぶさ2」の拡張ミッションについて3億の要求をしてございます。次世代航空科学技術の研究開発としては、総額として約40億で、昨年度と比べて1億増の要求をしているという状況でございます。それぞれの各項目簡単に概要について次のスライド以降でご説明を差し上げます。
一つ目は宇宙活動を支える総合的基盤の強化ということで、このスライドでは、基幹ロケットの開発・高度化ということ、あるいはその中でも基幹ロケットの打ち上げの高頻度化というところを特出しいたしまして、こちらについては19億円の要求をしてございます。また、デブリの除去技術の実証ミッションの開発、先日フェーズ2の採択が終わったところでございますけれども、これについても引き続きフェーズ2を実施する経費として、11億を計上しているところでございます。基幹ロケット、特にH3につきましては、30形態への移行ということを来年度以降着実に進めていくということで、4号機の打ち上げを来月に控えておりますけれども、着実に打上げ実績を積み重ねていき、しっかり高度化を図っていくということで、来年度は145億円を計上しております。
高頻度化ですけれども、いろいろな工夫をする中で、種子島射場は今2つということで、H3用とH2A用でそれぞれ用意してございますけれども、しっかり1年間で打てる機数を増やしていくということで、様々な冗長性の排除や、いろいろな推薬・燃料等の保管スペースがないと、なかなか多くの機数を一年度に打つことができないということで、今できる範囲でしっかりと高頻度化していくということで、19億円を計上してございます。次のスライドをお願いいたします。
こちらは、もう少し先を見据えた次期基幹ロケットということもございますけれども、将来の宇宙輸送システムに向けた様々な取り組みということで、官民を合わせての取り組みということで、将来宇宙輸送システム研究開発プログラムについては14億ということで、産学官一体となったイノベーション創出に向けた取組み、そのための環境整備ということを主眼に置いて、来年度は要求してございます。また、フランスとドイツと共同で行っている、ロケットの一段目の再使用に向けた飛行実験(CALLISTO)についても、来年度所要の費用を要求しているということでございます。宇宙戦略基金については、一応概算要求の上では25億を要求しております。次のスライドをお願いいたします。
続いて、宇宙安全保障の確保/国土強靱化あるいは地球規模課題の対応とイノベーションの実現と題しておりますけれども、基本的には、各種衛星の運用や、現在開発中の衛星の予算が、この中に含まれるものでございます。そう言いながら、一番上は衛星というよりも望遠鏡の話が書いてありますけれども、SSAシステムはだいたい定額運用ということですけれども、美星にあります望遠鏡、レーダー観測と光学観測で宇宙状況把握に資するデータを取得する取り組みに9億円。衛星としては、今、開発中のうち2つを挙げさせていただいております。1つは、工程表ですと、来年度末の打ち上げを予定している技術試験衛星の9号機(ETS-9)です。打ち上げ間近ということで、来年度は78億円で、オール電化による技術実証をするというミッションを予定しております。また、地球観測につきましても、日米協力を中心に、これまでの大きな貢献をしてきたところでございますけれども、降水レーダー衛星(PMM)ということで、今後さらに降雨・降水に関するレーダーの感度をさらに向上させて、雨粒の落下速度等の把握もできるような形で観測の高度化を図っていくための衛星ということで、こちらについても開発を本格化させていくということで、27億円を計上してございます。次のスライドをお願いいたします。
また、衛星ということでは、衛星コンステレーション関連技術開発ということで、総額61億円を計上してございますけれども、来年度からJAXAは、新しい中長期目標期間に入ります。JAXAのメニューの中で、さまざまな小型衛星に関するプログラムがございますけれども、それを一体化して運用していくということで、4プログラムあったうちの1プログラムは来年度から公募しないこととして、3プログラム分を合わせて、今回は45億円ということで計上をしてございます。また、これも官民連携の光学ミッションの開発ということでありまして、基金のほうで第一期の中で、別途民間による小型の光学コンステレーションの開発というのが走っておりますけれども、それと相まって、いわゆる高度計ライダー衛星というのを、まずはJAXAのほうで開発をしていきます。今後は民間主体に移行していくことも念頭に置きながら、まずは民間主体の小型光学衛星観測システムとの連携を図るための高度計ライダーというものを開発するということで、14億円を計上してございます。次のスライドをお願いいたします。
次は宇宙科学・探査でございます。先ほども申し上げましたように、アルテミス計画ということでは、有人与圧ローバの開発が、本格的にNASAとの間で始まりますので、これに関して、今見えている部分については24億円としてございますけれども、実はこのアルテミス計画の中で、有人与圧ローバにつきましては、ローバ自体の開発は日本が行うのですが、着陸機などの部分についてはNASAが担当することになっております。こういった部分について、NASA側の仕様が、今、大体出てきているところですが、概算要求を提出する時点では、そこがまだ不明ということもありまして、そこが明らかになってから見積もりができる部分については、事項要求ということで、改めて財政当局と相談をさせていただくということで、24億円プラス事項要求という形で予算要求をさせていただいております。また、月周回有人拠点ゲートウェイもアルテミス計画の一環として進めているものでありますけれども、日本としては、これまでISS国際宇宙ステーションで培った有人の滞在技術、特にバッテリーや生命維持装置といった部分について、このゲートウェイのコンポーネントの中でも提供していくということで、その開発に必要な予算として11億円。また、H3ロケット、3号機まで無事に打ち上げが進んでおりますけれども、試験機1号機が失敗に終わった影響もあって、本来は、このHTV-Xについても、もう少し開発が進んで打ち上がっているはずだったのですが、来年度からやっと打ち上げられることになりました。宇宙ステーションを利用するための条件の中でHTV-Xの4号機、さらに5号機に着手するという内容も含めまして、一連のHTV-Xの開発に必要な経費として240億円を計上してございます。次のスライドをお願いします。
これはインドの宇宙機関と共同で進めている事業でございます。月極域探査機(LUPEX)の開発ということで、これについても打ち上げが近づいてきているということで、今32億円を計上してございます。その他、探査のオープンイノベーション研究、あるいはMMXも令和8年度の打ち上げ予定になっておりますが、50億円を計上してございます。また「きぼう」の運用費も経常経費でございますけれども、これについても114億円を計上しているという状況でございます。次のスライドをお願いします。
アルテミス計画の中には入りませんが、その他にも様々な宇宙科学・探査に関するプロジェクトがあります。その中でもこのスライドにあるSOLAR-Cも比較的新しい取り組みで、来年度から少し開発が本格化するということで、36億円を計上してございます。DESTINY+は、本来であればイプシロンを使って打ち上げる予定であったのですが、別な形で打ち上げ機会を調整するということで、現時点での打ち上げ時期は調整中となりますけれども、そこにありますとおり、双子座流星群の母天体のフェートンに近づいてフライバイ探査を行うためのDESTINY+については、引き続き開発機分として12億を計上しているということでございます。その他、いろいろ小規模プロジェクトや戦略的海外共同計画がいくつかございます。この中に書いてありますように、NASAの「Roman宇宙望遠鏡」への協力ですとか、ESA主導の長周期彗星探査計画「Comet Interceptor」への参画にかかる費用も含めて、合計として12億円を計上しているということでございます。「はやぶさ2」につきましては、リュウグウの探査でサンプルリターンをした後、まだ燃料に余裕があるということで、そこに記載のある新たな小惑星への到達を目標として、さらなる運用を継続している状況に移行しており、運用等に必要な経費として3億円を計上しているということでございます。最後のスライドをお願いいたします。
最後に、次世代の航空科学技術の研究開発ということで、航空部門については、産業界との連携をかなり密にやっているものが多いのですが、大きく3つのメニューで進めております。1つ目は既存形態での航空輸送です。航空機の利用の発展に必要な研究開発ということで23億円を。2つ目は次世代モビリティシステムのさらなる空の利用に必要な研究開発ということで、特に災害や危機対応時にドローンをどのように活用するのかなど、こういったときに必要な超高密度の環境下での運航管理技術の研究開発等の実施に3億円を。最後には電動ハイブリッド推進システム技術の研究開発ということで、電動ハイブリッドの推進システムを、国内航空機産業と一緒に開発するという眼目で、13億を計上しているところでございます。
宇宙関係につきましては、さまざまなニーズが高まっており、やることもどんどん増えているという状況でございますけれども、今般説明させていただいたような内容をはじめ、まずはしっかりと宇宙基本計画の履行に取り組むとともに、新しいニーズについてもしっかり受け止められるように文部科学省としても邁進していきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。私からの説明は以上とさせていただきます。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。ただいまの説明について、ご意見やご質問がありましたら、お願いいたします。笠原委員、お願いいたします。
【笠原委員】 笠原です。よろしくお願いいたします。非常に詳細で、わかりやすくご説明いただきまして、誠にありがとうございます。また、多岐にわたって幅広い宇宙分野の技術開発実証等、航空分野も含めて、非常にアクティビティが高いという認識を持たせていただきました。
一点質問させていただきたいのは、DESTINY+で打ち上げ機がイプシロンSではないかもしれないというお話のように理解したのですが、それは一体どういう方向なのでしょうか。また、イプシロンS自体が、我が国の固体ロケット技術において非常に重要なものだと理解しておりますので、応援したい技術の最重要なものの一つだと思っていますが、最初の基幹ロケットの開発の中に、イプシロンSの、固体ロケットのほうの開発も含まれているのでしょうか。そちらも進められているのでしょうか。
【嶋崎課長(事務局)】 ありがとうございます。2つ目の質問から答えさせていただきます。当然、基幹ロケットの開発の中にイプシロンSの開発は含まれてございます。現在、イプシロンSにつきましては、前回の失敗を受けて次の開発になっておりますが、地上燃焼試験をしっかりとやって、また打ち上げをするということで、リカバリーのための取り組みを進めており、しっかり確認ができた後には再度打ち上げを進めていくということでございます。これも基幹ロケットの一つの主力として、我々としてはしっかりと進めたいと思っております。
説明の中で端折ってしまったのですが、DESTINY+自体は、このイプシロンSがうまくいかないからということではなく、イプシロンSと合わせて、いわゆるキックステージ技術といって、一回打ち上げて、そこからさらに向こうに押し上げるための技術と合わせて、このDESTINY+の目的を達成しようという目論みであったのですけれども、イプシロンSのほうが、今は足踏みをしておりますので、どうしても科学目的のタイミングを考えると、イプシロンSでやろうとするとうまいタイミングでいかない、キックステージの開発込みでは間に合わなさそうだということです。そうすると、H2Aも昨日成功した49号機の次はGOSAT-GWの50号機が最終号機として決まっておりますので、そうなるとH3か、もしくはその他のファルコン9や他国のものを使うのか、あらゆるオプションがございます。科学ミッションを成立させるためのタイミングと、我が国内で相乗りするなら相乗り、単独で打ち上げるなら単独、いろいろなオプションがありますので、いろいろな方策をうまく調整しながら、科学ミッションなのでどうしてもこのタイミングでやらないといけない、というのが出てきますので、そこを逸することがないように調整をさせていただいている状況でございます。
【笠原委員】 大変わかりやすく、よく理解できました。ありがとうございました。以上でございます。
【村山部会長】 他の方はいかがでしょうか。また何か疑問があれば事務局のほうに連絡いただければ、お答えいただけると思います。ひとまずここで切りまして、次の議題に移らせていただきます。
次の議題は、プラネタリーディフェンスの取り組みとアポフィス観測についてです。プラネタリーディフェンスとは、小惑星や彗星のような天体の衝突による災害を未然に防ぐための活動です。本日はJAXAにおける取り組みについてご説明いただきます。
それではJAXAの佐藤理事、國中理事、プラネタリーディフェンスチームの吉川チーム長、ご説明をお願いいたします。
【佐藤理事(JAXA)】 JAXAの佐藤でございます。本日はご紹介いただきましたプラネタリーディフェンスの取り組みとアポフィス観測についてご紹介させていただきます。部会長からもお話ありましたけれども、天体衝突という問題については、頻度は低いのですけれども将来的にも繰り返される重大なリスクだというふうに捉えており、国際的にもプラネタリーディフェンスに対する取り組みの検討を活発化している状況と認識しております。JAXAといたしましても、前から取り組んできているところですが、継続して検討を推進するという観点から、この4月にJAXA全社として組織横断的に検討を加速するためのプラネタリーディフェンスチームというのを組織して、今、検討を進めているところでございます。本日はJAXAで行っておりますプラネタリーディフェンス関連の取り組み、それから、2029年に地球最接近が予測されているアポフィスにつきまして、こちらも国際的にもいろいろな検討が進んでいる中で、JAXAとしてどう対応していくかという考え方についてご紹介させていただきたいと思います。プラネタリーディフェンスチーム長をしている吉川のほうから説明させていただきます。
【吉川チーム長(JAXA)】 吉川のほうからご説明いたします。次のページをお願いいたします。
最初にプラネタリーディフェンスの概要についてご説明した上で、JAXAにおける活動とアポフィスについてお話ししたいと思います。次をお願いします。
チェリャビンスク隕石やツングースカというような、割と最近に起こった天災衝突における被害がありまして、たった17メートルや5、60メートルの天体でもかなり大きな被害があるということでございます。恐竜絶滅になると、6,000万年前ですし、大きさが10キロメートルと桁が違うのですが、今プラネタリーディフェンスとして気にしているのは、チェリャビンスク隕石やツングースカレベルの地域的な被害を防ぎたいということになります。例として、バリンジャー・クレーターの写真も出ております。次をお願いします。
今の観測はどんどん進んでおりますので、小惑星が事前に地球にぶつかる予測もできるようになりました。ここに1例目から8例目まで書いてありますが、ざっと見ていただくと、発見されてから地球にぶつかるまでの時間が、長くても20時間、短ければ2~3時間となっております。これは小惑星の大きさが小さいからです。2~3メートルの天体ですと、地球に接近したときに発見され、すぐに軌道が割り出されて、地球にぶつかることが事前に予測できたというものが、この8つに加えて、今年の9月4日にフィリピンに落ちた隕石もありました。これも落ちる11時間くらい前に発見されて、5~6時間前には地球にぶつかることがわかったというもので、実際にぶつかって火球として観測された例がありました。これまで事前に9例の隕石が予測できたということになります。次をお願いします。
観測はどんどん進んでおり、現在小惑星としては138万個ぐらい軌道がわかっているものがあります。さらに左の図には木星までの軌道が書いてありますが、赤い点が地球接近小惑星で、これも数がどんどん増えているのですが、現在3万5千個くらい見つかっております。図を見ると、地球軌道の周りが真っ赤になっていますが、全て軌道計算されていますので、近い将来に地球にぶつかる心配はありませんが、実はまだ見つかっていない地球接近小惑星がたくさんあるわけです。右のグラフを見るとわかるのですが、横軸が西暦の年号で、縦軸が発見された地球接近小惑星の累積数です。現在は3万5千個ぐらいになっていますけれども、この色分けが重要になっています。赤色は大きさが1km以上の小惑星で、あまり数は増えておりません。オレンジ色は140m以上、それ以下が青色でお示ししていますが、この数がどんどん増えています。これは何を意味するかというと、1km以上の地球接近小惑星はだいたい見つかるのですが、小さいものはどんどん増えていますので、未発見のものが多いということです。特に直径50m以下だとすると、まだ7%ぐらいしか見つかっていないということですから、ツングースカ大爆発レベルの最大になりますので、こういったものをどんどん発見しようということで、現在観測が進んでおります。次をお願いします。
これはこちらで計算したものなのですが、横軸が西暦の年号、1950年から2150年までで、縦軸が地球中心からの距離で、1本1本の縦線が地球にどこまで小惑星が接近したかという図になっております。2000年から現在まで、地球に接近している小惑星の数が非常に多いのですが、これがまさに2000年くらいからプラネタリーディフェンスの活動が活発になっており、その結果、どんどん発見されているということになります。赤い色がチェリャビンスク隕石と同じ大きさかそれよりも大きい天体の地球接近のケースで、月の軌道よりも近いところにたくさん接近している様子がわかります。実際にぶつかるとチェリャビンスク隕石のような被害を生じることになります。次をお願いします。
参考までに、こういう地球接近小惑星あるいは地球接近彗星の探査もどんどんされております。丸で囲んだ天体が地球軌道に接近する天体ということで、物理的な性質もどんどんわかってきたということです。次をお願いします。
プラネタリーディフェンスで何をやるかということなのですが、基本的に人類の安全保障という大きなテーマがありますが、STEP1とSTEP2に分かれております。まずは地球に接近する天体を発見し軌道を正確に推定して、地球衝突を予測します。あとは天体の物理的な性質を把握することは、観測や探査で行っていることです。STEP2が衝突の回避です。2年前にNASAが実験をやりましたけれども、こちらも今かなり動きが出てきたということで、もうすぐ打ち上がるHeraも衝突実験をした天体を詳しく調べて、探査器をぶつけることによって小惑星の軌道を変える効率が、さらに詳しく解析できるということになります。こういうことは国際的な協力体制の下でやるということで、国連の下にいくつかグループもできて、活発な議論が行われている状況になっています。次をお願いします。
どうやって天体の地球衝突を避けるかということなのですが、現実的なのは探査器を小惑星にぶつけることによって、小惑星の軌道を反らすというやり方です。これがNASAのDARTというミッションで実証されたことになります。他にもグラビティートラクターと言って、重い宇宙船を打ち上げて、万有引力で軌道を変えていこうというやり方、あるいは核爆弾で小惑星を破壊せずに軌道だけを変えようというやり方です。その他にもいろいろと書いてありますが、現在は探査器をぶつけることによって軌道を変えようということをやっているわけです。相手が300メートルぐらいまでの天体だと、探査器をぶつけることによって軌道は変えられます。ただし、その場合も、時間的な猶予が10年から20年必要になりますが、時間的な余裕が少なかったり、もっと天体が大きくなったりすると、エネルギー的には核エネルギーを使わないとダメだろうというのが、右のグラフになります。次をお願いします。
こちらには意義がまとめてありますが、基本的には人類を守っていこうということです。さらに今後、月面で有人活動がありますと、月は大気がない分より深刻ですね。ですから、プラネタリーディフェンスというのは地球だけではなく、今後、月の天体衝突、さらには単に衝突して困るということだけではなく、地球に接近する天体ですから、利用できる可能性もあるわけです。そういった方面にも、この活動が広がっていくことになります。こういったことを、ぜひとも日本も力を入れて行っていきたいということです。次をお願いします。
国連は先ほどもお話ししましたが、国連の宇宙空間平和利用委員会のもとに、地球に接近する天体を観測してモニターしようというグループ(IAWN)と、宇宙機関の集まりで、まさに天体の衝突回避、地球衝突回避を議論するグループ(SMPAG)が、活発な議論を行っている状況です。次をお願いします。
プラネタリーディフェンスに非常に積極的なのがNASAです。NASAは、衝突回避のDARTという実験もやりましたが、それ以外に小惑星の観測にも結構な予算を出していますし、天体回避のコーディネーションにもかなり力を入れています。また、ESAも結構力を入れており、独自のプラネタリーディフェンスのセンターがありますし、軌道計算や観測を行っているという状況です。次をお願いします。
一方でJAXAには、一つは「はやぶさ2」の拡張ミッションがあります。2020年に「はやぶさ2」が地球に戻ってきた後もミッションを延長しており、2年後の2026年に、2001CC21(Torifune)のフライバイ探査をします。これは500メートルぐらいの小惑星なので、かなり接近しないとデータが取れません。接近して正確なナビゲーションをしようということもテーマになっています。つまり、正確なナビゲーションができれば、こういう小さな天体に探査機をぶつけることもできるわけです。まさにアメリカのDARTで行ったような小惑星の軌道変更が日本にもできるということになります。
右側の微小小惑星の探査について、1998 KY26という小惑星ですが、たったの直径30メートルしかありません。30メートルぐらいの天体の地球衝突確率が、100年から200年に一回ということですので、割と現実的に地球にぶつかる天体の素状が、この探査で解明できるということです。高速フライバイ技術と微小天体の物理的性質の解明という2つにおいて、「はやぶさ2」拡張ミッションはプラネタリーディフェンスに寄与できることになります。次をお願いします。
こちらはHeraで、もうすぐ打ち上がるわけですが、左側のDARTのほうは。2年前に探査機がディモルフォスという衛星に衝突して軌道を変えることに成功しております。ただ、探査機が壊れてしまったので、詳しい状況がわからない、それでESAがHeraをもうすぐ打ち上げて、詳しく衝突の様子を解明して、軌道を変更するための効率を詳しく調べることになります。このHeraのほうに、JAXAから赤外線のカメラを提供しております。次をお願いします。
JAXAのほうでも小惑星の観測を行っており、美星スペースガードセンターというのが岡山県にあります。こちらに、口径1メートルと口径50センチの望遠鏡があります。主にスペースデブリの観測ですが、地球に接近する小惑星の観測もここで行っております。右側は研究開発部門の試験的な観測ですが、口径が20センチぐらいの望遠鏡を使い、特殊な重ね合わせ法を開発して、地球に接近していて動きの早い小惑星を発見することに成功しています。たった20センチぐらいの望遠鏡でも、10個以上の天体を発見していることになります。次をお願いします。
これは国際的な協力の中で、特にアジア地域の小惑星観測を後押していこうということを、数年前にJAXAで音頭を取ってやりました。これはAPAONというものです。アジア地域で小惑星の観測をネットワーク化したり、あるいはアマチュアの観測家に呼びかけたりして、天気が悪いと観測できないわけですから、わりと広範囲で観測を呼びかけると観測の成功率が上がるということで、こういう活動をやったんです。今はちょっと下火になっていましたが、この後にアポフィスの地球接近がありますので、それに向けて、この活動を再開することを検討しているところです。次をお願いします。
これは国際的な活動のまとめみたいな図になっていますが、先ほど言いました国連の下にIWANとSMPAGがあります。両方ともJAXAは正式なメンバーになって活動をしております。下のほうに国際会議でPDCとありますが、これも2年に1回行われているプラネタリーディフェンスの大きな国際会議で、2017年にはJAXAがホストとなって、世界中の研究者を招いて議論したということがあります。次をお願いします。
ここからアポフィスについてです。アポフィス(Apophis)という小惑星が2004年に発見されました。その時に地球にぶつかるのではないかと言われて、かなり話題になりましたが、その後の観測で地球にぶつからないことが判明しています。ただし、かなり近いところを通過します。下の図にありますように、地球から大体3万2千キロのところを通過します。静止衛星までの距離よりも近いところを通過するということです。かつ、大きさが340メートルもあり、この規模の天体がこれだけ近いところを通過するのは、観測史上初めてです。さらに現在わかっている範囲では、こういう接近は1000年ぐらい起こらないだろうということで、非常に貴重なイベントになります。地球にぶつからないので、プラネタリーディフェンスとしては問題ないのですが、この機会を使ってプラネタリーディフェンスの知見、あるいはサイエンスの知見を得たらどうかという議論が、急速に巻き上がってきたという状況です。次をお願いします。
この図は地球への小惑星接近の図ですが、赤線で描いたのがアポフィスのサイズ、またはそれ以上の小惑星への地球接近の状況です。これを見たらわかりますように、赤い線は数が非常に少なくなるのと、地球に接近する距離がかなり遠いものが多いです。2029年4月13日のアポフィスだけが例外で地球に接近するというわけですから、このアポフィスの地球接近が非常に稀な現象であるということがわかると思います。次をお願いします。
アポフィスに対して、今いろいろな動きが出てきたのですが、一つは左上のOSIRIS-APEXというのがあります。これはOSIRIS-REXの延長ミッションで、ベヌーのサンプルを持ち帰った後に名前をAPEXと変えて、アポフィスに向かっています。ただ、非常に残念なことに、この小惑星が地球に接近した後に到着します。地球接近前に到着できません。地球に接近して変化した後の状況はわかるのですが、変化する前の状況がわからないということになります。
右側にあるRAMSESというミッションが、ESAが検討している2028年の打ち上げミッションですが、アポフィスが地球に接近する前にアポフィスにランデブーできます。また、下にJanusというNASAのミッションがありますが、これは小型の探査機でフライバイしようというアイディアです。あるいは中国や韓国が関心を示しているということで、こういった機会をうまく捉えて惑星科学やプラネタリーディフェンスを進めていきたいということになります。次をお願いします。
アポフィス探査の意義・価値をここにまとめてあります。下に解析も書いてありますが、一番重要なのは、マイナス要因の脅威と書いてあるところです。海外では関心が高まっていて、このアポフィスに対して観測だけではなく、ミッションもやりたいという議論がある中で、日本がどのように対応するかというところはかなり重要だと思います。我々としても、ぜひこの機会を使って、プラネタリーディフェンスの技術や知見をどんどん向上させていきたいということです。次をお願いします。
サイエンス的なことを簡単にまとめましたが、プラネタリーディフェンスで、単に地球にぶつかるかどうかということ以外に、こういう小惑星を調べること自体、惑星科学としては非常に重要です。特に300メートルクラスの小惑星には、これまで探査機が行ったことがありません。今回は地球に接近するので、地球潮汐力で表面がズレたり、変化する可能性もありますし、自転が変わる可能性もあります。ですから、内部構造についての情報が得られるのではないかということが、今注目されているわけです。したがって、アポフィスの地球接近をうまく観測することによって、小天体の構造を通した太陽系の形成過程や進化などといった惑星科学について調べていきたいということになります。その部分でJAXAの赤外線カメラが活躍できる可能性があるということになります。次をお願いします。
まとめになります。このプラネタリーディフェンスは30年くらい前から議論が始まっていますが、西暦2000年くらいから割と本格的に国際的な枠組みで動きが始まりました。まだ日本ではプラネタリーディフェンスということが政策上の位置づけがない状況なので、この機会に、ぜひ日本としてもプラネタリーディフェンスを進めていく状況にしていければと思っております。その時に、このアポフィスというのが非常に重要な役割を果たすのではないかということです。このアポフィスで、ESAやNASAとの国際協力も進めていきたいと考えております。私からの説明は以上になります。よろしくお願いいたします。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。ただいまの説明についてご意見やご質問があればお願いいたします。まずは芝井委員お願いいたします。
【芝井委員】 芝井です。特にアポフィスについて、一つ質問があります。これぐらい近いところを通ることになりますと、地上の大望遠鏡などの観測装置も、かなり強力な性能を発揮できるのではないかと思います。特に宇宙機だけではなく、地上の観測装置も含めた研究計画があればいいと思うのですが、そのあたりの動きは何かありますか。
【吉川チーム長(JAXA)】 ご質問ありがとうございます。まさにその通りで、特に2029年に地球に接近するときには、肉眼ですら見える明るさになります。3等星ぐらいの星が夜空を動いていくという状況ですので、地上からの望遠鏡でも観測できるわけです。ですが、望遠鏡だと得られる情報が限られてしまいます。例えば、潮汐力で表面がどのように動くかわかりませんから、ぜひとも探査機を送りたいということになります。もちろん軌道の変化などは地上の望遠鏡でもわかると思いますが、やはり接近して観測をすることが重要であり、国際的には探査のほうの議論が中心になっているという感じです。
【芝井委員】 探査機を送ることの重要性はすごくよくわかりますが、それに増して大きい学術的成果を出そうとすると、地上との詳細観測との連携が一定の効果があるのではないかと思いました。以上、感想です。
【吉川チーム長(JAXA)】 その通りです。多分この時期になると、世界中の望遠鏡がアポフィスの方向を見ることになると思います。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。続きまして鈴木委員、お願いいたします。
【鈴木委員】 鈴木でございます。素晴らしい取り組みだと思いますが、2つ質問させていただければと思います。まずはJAXAの中でも、アジア太平洋小惑星観測ネットワークに関して、小惑星を見つけたチームに対して何らかのインセンティブ設計がなされているのか、あとは2018年以降、AIの仕組みなども、いろいろな形でアップデートがあると思うので、そういった観測の際にAIが果たす役割などが変わっているかというあたりを教えていただければと思います。
【吉川チーム長(JAXA)】 ありがとうございます。小惑星の場合は、正確に言うと観測をして最初の軌道を推定できた人が発見者になります。その場合は全世界共通で、データを国際天文学連合のマイナープラネットセンターに送ります。そうすると、全世界共通的なやり方で発見者として登録される仕組みになっております。これはよろしいでしょうか。
【鈴木委員】 インセンティブという点においては、やはり意義深いことなので、金銭面や名誉的なものがサポートされる設計がうまくなされて機能すると、より見つかりやすくなるのではないかと思います。そのあたりの可能性などを教えていただければと思います。
【吉川チーム長(JAXA)】 わかりました。小惑星の発見というのは、写真に撮って写っただけではダメなのです。そうすると、また別の写真に写っても、同じ小惑星かどうかわからない状況になってしまうので、連続的な観測でちゃんと追跡できることが重要です。それでアジア地域でネットワークを組んで、こっちで見つけたら次に別の観測所で観測してもらう連携をすることによって、小惑星の発見を促進しようというアイディアで、このネットワークを作ったことになります。だから、そういう情報のやり取りをスムーズにやろうというのが、一つのアイディアでした。
【鈴木委員】 わかりました。見つけたチームには、また次の開発予算が何らかの形で工面される仕組みがあると、より参加者が増えたり、参加する人の積極性が増したりするのではないでしょうか。現状についてはわかりました。
【吉川チーム長(JAXA)】 AIの活用については、画像の中から小惑星を探すという部分で、割と最近になって機械学習を使ったらどうかという活動が活発になりつつある状況です。多分、今後より有効なやり方が出てくると思います。
【鈴木委員】 わかりました。そういったチームも加わると、より効率よく見つかって、データベース化なども促進されるのではないかなと思います。私からは以上です。
【村山部会長】 ありがとうございます。続きまして米澤委員、お願いいたします。
【米澤委員】 どうもありがとうございました。これは非常に社会的な関心も高くなるのではないかと話を伺っていて思いました。人材育成について何かご計画があればお聞かせください。
もう一点は、政策的な位置づけがないというお話が出てきたのですが、これは長期的に見てすごく重要な話だと思うので、何らかの動きはありそうなのかという感触で結構ですので、お聞かせいただけるとありがたいです。どうぞよろしくお願いいたします。
【吉川チーム長(JAXA)】 ご質問ありがとうございます。人材育成についてはいろいろなレベルがあると思います。一つは先ほどのAPAONと関連して言いますと、アマチュアで望遠鏡を持っていて観測もできるけれども、小惑星の専門的な観測ができないというところに、我々から情報を出して、アマチュアの観測も研究者が使えるデータにしてもらうというような活動が考えられています。APAONとは別ですが、実際に日本のアマチュアが小惑星の掩蔽といって、小惑星が星を隠すような現象を共同で観測して、それが結構いい国際的な論文になっております。そういうレベルでは考えております。
あとは小惑星の軌道計算については、ある程度の専門的知識が必要になってくるので、そういったことに興味がある学生さん来れば指導して、そういう技術を蓄積してもらうこともあると思います。
【米澤委員】 政策的なところについてはいかがでしょうか。
【吉川チーム長(JAXA)】 まさに我々からいろいろと呼びかけている段階です。アメリカやヨーロッパは、かなり本格的に動き出しておりますので、そのあたりも見ながら、日本としても一緒に共同して進めていきたいということを呼びかけている段階です。
【米澤委員】 どうもありがとうございます。社会的な関心が高まることを心より願っています。
【村山部会長】 ありがとうございます。他にいかがでしょうか。
すみませんが、トップページの上のほうには「プラネタリディフェンス」と書いてありますが、下のほうは「プラネタリーディフェンス」と書いてありますので、どちらかに統一していただいたほうが、社会的認知度は高まると思います。
【吉川チーム長(JAXA)】 失礼しました。「プラネタリーディフェンス」が正しいです。
【村山部会長】 分かりました。それでは笠原委員、お願いいたします。
【笠原委員】 吉川先生どうもありがとうございました。非常に興奮しながら聞かせていただきました。潮汐力で小惑星に影響がある部分は大変興味深かったです。7ページに、発見されている数の不連続なグラフがございますが、実は17メートル程度のものというのは、本当に直前にならないと発見できていないというふうに認識させていただいております。つまり、2024年現段階のものは多いのですが、少し先のほうは、極端に数が少なくなっております。そういう意味では、今後100メートルとは言えないまでも、10メートルオーダーのものが地球に接近するリスクが高いのではないかと想像しました。そのあたりのことをもう少しお聞かせいただけますか。
また、最終的な大きな小惑星の接近に関して、せっかく地球の周辺まで来るので、軌道投入に近いようなプログラムを立ち上げることは検討されていないのでしょうか。それは今回の小惑星ではなく、やがて将来来る小惑星に対する考え方だと思いますが、そのあたりのこともお聞かせいただきますとありがたく存じます。以上でございます。
【吉川チーム長(JAXA)】 ご質問ありがとうございました。2つ目のご質問からお答えいたします。私の説明が悪かったのかもしれませんが、ESAが提案しているRAMSESというのはランデブーです。2028年に打ち上げて、一年足らずでアポフィスに到着して、アポフィスが地球に接近する前にランデブーして、接近して離れていく様子をずっと観察しようというミッションです。これは非常に面白いミッションです。
あとは7ページ目のグラフですが、まさにおっしゃる通りです。赤い線が大きさ17メートル以上ぐらいのものになりますけれど、2000年から現在まで、赤い線が月よりも近いところにたくさんありますよね。これはまさに観測が活発になって、そのおかげで地球に接近して発見されたというものです。したがって、2024年以降もずっと観測をすれば、地球にもっと接近するものがたくさんあるはずだということです。20メートル以下ぐらいの天体は、まだまだたくさん未発見のものがありますが、今の技術では地球に接近しないと発見できません。チェリャビンスク隕石レベルの被害は出てしまいます。チェリャビンスク隕石は昼間側から接近したので事前に見つからなかったのですが、仮に夜側から来ていれば、もっと早くに見つかっていました。そうなっていたら、地球のどこにいつぶつかるかまで予測できること、何らかの対策はできますか、衝突回避そのものはできません。小さなやつだと、そんなに早く見つけることはできないだろうということになってしまいます。でも、そういうことがたくさんあるというのが、最近の観測結果からわかると思います。
【笠原委員】 ありがとうございます。大変関心を高めることができました。引き続きどうぞよろしくお願いします。どうもご説明ありがとうございました。失礼します。
【村山部会長】 どうもありがとうございました。それでは質問もないようですので、これで終わりたいと思います。ご説明どうもありがとうございました。
それでは次の議題に移ります。本日最後の議題は、H3ロケット30形態試験機の打ち上げ計画及び超小型衛星相乗りの実施についてです。試験機2号機、3号機と連続成功しているH3ロケットですが、大きな課題として、固体ブースなしの30形態での打ち上げ、LE-9Type2エンジンの完成が残っています。本日はそのうちの一つ、30形態試験機の打ち上げ計画について、JAXAよりご説明いただきます。
それではJAXAの佐藤理事、資料の説明をお願いいたします。
【佐藤(JAXA)】 佐藤でございます。現在投影されている資料のほうでご説明させていただきます。
まずは本日の報告事項になりますけれども、ご紹介のとおり、H3の30形態の実証時期につきまして、工程表の最新版においては、試験機2号機の打ち上げ結果を踏まえ、今後調整と記載されております。今年の7月と2月に2号機と3号機の打ち上げが成功いたしましたので、これらを踏まえまして、30形態の試験機の打ち上げを計画しています。その際に超小型衛星の相乗りを実施する方針について、本日はご報告させていただきます。
おさらいになりますが経緯をご紹介させていただきます。H3ロケットのラインナップは、第一段ロケットの構成が異なる22形態、これが今まで3機上がってきた形態になります。LE9という機体のエンジンが2個、それからSRB3、固体ロケットブースターが2個ということで22形態になっています。もう1つは、SRB3をさらに2本増強した24形態、それから今回対象になっております30形態という、液体エンジンを3個、SRBは0という、3つの形態をラインナップとして計画をしてございます。
遡りますと、開発当初の打ち上げ計画としては、試験機2号機として、この30形態の試験機を打ち上げるという予定でございましたが、1号機の失敗を受けまして、見直しが必要となったというところでございます。昨年の宇宙開発利用部会におきまして、こういった経緯も踏まえて、試験機2号機につきましては、30形態でALOS−4を搭載する計画から22形態に戻して、ロケット性能確認用ペイロード(VEP)の搭載に変更するということで、ご議論いただいて決定させていただいております。その後の12月に宇宙基本計画の工程表の改訂がございまして、令和6年度に3号機でのALOS打ち上げを想定する記載がなされており、この中で30形態の実証時期は「今後調整」という記載がされているというのが、今、計画上の位置づけになってございます。
最後の2つは、繰り返しになりますが、2月に2号機の打ち上げ、それから7月に3号機のALOS-4での打ち上げが、それぞれ成功したというのが、H3ロケットに関わる経緯になってございます。
次のページに参りまして、こちらで30形態試験機の打ち上げ計画に係る方針を記載させていただいております。右側に図がございますが、SRB3がついていない左側のロケットが30形態というものです。下は少し見にくいですが、液体エンジンが3機ついている形態になります。右側の22形態がエンジン2機とSRB2機ということで、今まで3機打ち上げた形態ということになってございます。日本では、右側のような液体エンジンと固体ブースターによる組み合わせの形態というのが、過去H2Aまで基本になってございまして、左側の30形態という液体エンジンだけで飛ぶロケットは、今回が初めてになってございます。これを踏まえまして、ペイロード搭載についての我々の判断をした結果を記載させていただいております。
昨年もご議論させていただきましたけれども、失敗を受けまして、試験機に対する実衛星搭載可否の判断プロセスをどうするかというところで、マネージメント改革検討委員会等での議論を踏まえまして、我々として方針を設定してまいりました。これに基づきまして、今回、次にご説明するような考え方を取りたいと思ってございます。まず30形態です。2機の成功実績を有する22形態と、サブシステムの大部分は共通になりますが、液体エンジンだけで飛ぶ初めてのロケットシステムということで、システムレベルとしては刷新を伴う試験機であるというふうに、我々としては考えてございます。こういった観点から飛行性能の評価のために、VEPを搭載して飛行実証することが基本的な考えとしてございます。ただ、この判断プロセスの中で搭載機械を希望するペイロードがある場合は、試験機の開発状況等の情報を、その機関に提供し、改めて搭載の意思が確認できれば、試験機の衛星搭載を排除しない方針としてございます。当然、これは政府とのご相談を踏まえて総合的な判断をしていくことになりますが、そのあたりは相手方の機関との調整の上で排除しない方針としてはおります。ただ、3ポツ目にありますとおり、今回の30形態試験機に搭載する主衛星に関しては搭載意思を示すということで、打ち上げ時期の条件を満たし、ミッション解析等の評価により、技術的成立が担保できる候補というのを調査いたしましたけれども、該当するペイロードがなかったことも踏まえて、基本的な考え方に従いまして、主衛星としてVEPを搭載することを考えてございます。
一方、昨年もご議論いただき、小型衛星に対する機械の提供を幅広くやっていただきたいというご意見もいただいておりました。こういった主衛星以外に積む副衛星といたしましては、30形態試験機の位置づけと現在の開発状況を説明した上で、衛星側でのミッション内容やリスク許容度について、相手機関との相互理解を図った上で、搭載意思を確認した超小型衛星については、ロケットの実証目的を妨げない範囲で相乗り搭載するということで、今回は選定しているところでございます。次のページをよろしくお願いします。
以上のような基本的な考え方に基づきまして、相乗りいたします超小型衛星の候補を、このページにまとめております。今回の意義・目的ですが、一つ目は、超小型衛星搭載用のリング形状アダプターによる衝撃環境条件低減の実現です。我々JAXAとしても、将来の小型衛星のコンステ的な打ち上げの機会を広げていくためにも重要だと思っており、このあたりを一つの意義・目的としてございます。下のポツを読ませていただきます。今年の試験機2号機で副衛星を載せましたが、同じような搭載方式とすると、若干衝撃源から近いということもあり、衝撃レベルが高くなってしまう問題がございます。これは他の小型ロケット等の搭載環境に比べると劣るということで、構造体の間に超小型衛星搭載用のリング形状アダプターというのを新たに開発しており、これによって衝撃環境を世界レベルに低減した搭載技術実証を進めるということを進めてございます。今回の打ち上げにおきまして、4つのポートをフル活用した実証を進めることで、今、宇宙戦略基金あるいは経済安全保障プログラム等で計画されている多数の小型衛星の打ち上げ実証計画の需要に、将来的に対応できるということ、また、H3での複数衛星搭載に向けた技術知見の獲得を、30試験機の中で目指したいと思っております。
この相乗りに関しまして、民間事業者もH2Aも含めて進めてきているわけですけれども、SpaceBD社という事業者に、相乗り打ち上げ機会の提供事業を移管しておりますが、これを推進するという観点で、今回の相乗り機会において打ち上げを提供し、事業者側の主体的な事業推進を図るという、2つを意義・目的として考えてございます。実施内容は各自でご覧ください。
最後の搭載衛星候補の選定ですが、先ほど考え方で少し述べましたけれども、我々の今の30形態試験機の位置付け、あるいは開発状況等をご説明し、乗りたいと希望される機関との打ち上げ時期との整合、あるいは搭載条件の精査を行いまして、乗りたいという機関が試験機特有のリスクを許容した上で搭載意思を有することを確認し、候補の選定を行って参りました。
次のページに今回、載せる候補を示してございます。右側の図にあるとおり、5つの衛星を候補としております。今回、JAXA内外に声をおかけして確認しておりまして、上の革新的衛星技術実証3号機関連衛星で2つ候補を出しておりますが、こちらはJAXA事業に少し関係するところで、公募事業ではありません。この革新実証の3号機の関連性というのは、もともとイプシロンに乗る予定だったものをスキーム変更して、他のロケットで打ち上げるということで変更してきたものでして、こちらのほうが、まだ適当な打ち上げ機会がなかったということで、今回適合するかどうかというところを確認いたしまして、この2つを載せることにいたしました。
2つ目のSpaceBD社関連衛星は、民間の事業の推進ということで、SpaceBD社のほうで、世界的にも広く公募を確認して、3つの衛星が今回乗れるということで選んできたものです。我々としては、この5つが乗る方向で検討を進めてきたというところになります。
次のページで、一つ目の意義・目的でご紹介した衛星搭載アダプターの開発実証というところを少し解説しております。一番右側に半割れになったような図がございます。これが2号機のときに小型衛星を載せる場所の図を示しております。赤い矢印が伸びているところに、衛星のアタッチフィッティングを乗せて、そこに衛星を乗せる方式です。これはH2Aから載せているものをそのまま使ったわけですが、一番末端にある部分に近いあたりがペアリングの分離を行う加工品に近いということで、その衝撃が近い距離で伝わるということで、衝撃環境が強かったというものになってございます。今回の真ん中の図にお示ししますように、その土台であるPSSの上に筒状のアダプターを新たに開発し、ここで4つのポートに衛星を載せる方式を取ることにいたしました。この4つのポートには、最大100キロずつの衛星が載せることができます。Simple PAFという小型衛星のPAFも結合可能な機械的インターフェースを持っているところで、1つのポートに高さ800ミリ、縦横600ミリ程度の超小型衛星を搭載可能な方式として開発・実証をしていきたいというふうに考えてございます。他の打ち上げ手段と同等なレベルの衝撃環境の低減を実現と書いております。どのくらいのレベルだったかという比較ですが、TF2の衝撃環境は機軸方向4000G、機軸直行2700Gという、かなり大きい環境であったということで、2号機のときに耐えられるかというのを、そのとき乗せたキャノンの衛星等で個別に確認試験を実施して、載せられそうだということで2号機は実施したところです。今回は。これを1000G程度に緩和できる見込みということで、Falcon9などもかなりの機数を上げるような、トランスポーターといったような仕組みで打ち上げておりますが、こういったところと同等の衝撃環境を提供できるということで、我々としても、今後はこういった小型衛星の多数の搭載に向けた足掛かりになるというふうに考えてございます。
最後まとめになりますけれども、30試験機につきましては、令和7年度を前提に主衛星として飛行実証のための性能評価用ペイロードを搭載して実施します。副衛星といたしましては、30形態試験機への搭載意思のある超小型衛星を、飛行実証に影響しない範囲で相乗り搭載する方針とさせていただきたいと思ってございます。説明は以上になります。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。ただいまの説明についてご意見やご質問がありましたらお願いいたします。秋山委員いたします。
【秋山委員】 ライターの秋山です。よろしくお願いいたします。質問は2点ございます。
まず小型相乗り副衛星について、搭載のポートは4ポートあって、候補の衛星は5機あるということですので、今後何か選定が行われて4機に絞り込まれるということなのでしょうか。もし、そうであるとすれば、その選定プロセスはどのようになるのでしょうか。
それから2点目は、冒頭におっしゃっていた基幹ロケットの高度化でH3 30形態の実証とType2エンジンの開発可能性があるということをおっしゃっていましたが、H3 30形態試験機ではType2エンジンにはならないということでしょうか。その辺りの開発目標について教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【佐藤理事(JAXA)】 ご質問ありがとうございます。まずは衛星数についてですが、今回の超高型衛星搭載アダプターは6ページに示したとおり、大体100キロの衛星を積める構造になってございます。上の2つは50キロ級ということで一機ずつ載ります。下のSpaceBD社関連の衛星は、サイズが6Uが3つと8Uが1つという形になっており、1つのポートに6Uの衛星の3つ同時に載せるという形で分離機構等を載せる形になっています。そういった意味で、今回ご提示した衛星は全て載せるということで考えてございます。
それからType2についてですが、結論としては、今回の30形態試験機は従来のエンジンで飛ばすことになります。現在、並行してType2の開発を進めておりますので、今後どの機体で実証するかは検討中ですが、今回は今までのエンジンと同じもので打ち上げるという考えでございます。
【村山部会長】 ありがとうございます。他にいかがでしょうか。それではご質問もないようですので、H3ロケット30形態については、これで終わりたいと思います。ご説明ありがとうございました。
本日の議事はこれで終了となります。最後に事務局から連絡事項があればお願いいたします。
【森島企画官(事務局)】 本日もありがとうございました。会議資料と議事録の公開について申し上げます。本日の会議資料は、文科省のホームページに既に掲載させていただいております。また、議事録に関しましては、委員の皆さまにご確認いただきました後に、文科省のホームページに掲載させていただきます。
最後に、次回の宇宙開発利用部会ですが、10月下旬の開催を予定してございます。委員の皆さまには別途ご連絡いたします。事務連絡は以上でございます。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。それでは以上をもちまして、閉会といたします。本日も長時間にわたり、誠にありがとうございました。失礼いたします。
―― 了 ――
研究開発局宇宙開発利用課