令和4年10月5日(水曜日) 13時00分~15時00分
Web会議
部会長代理 鈴木 桂子
臨時委員 井川 陽次郎
臨時委員 大西 卓哉
臨時委員 笠原 次郎
臨時委員 芝井 広
臨時委員 白井 恭一
臨時委員 鈴木 健吾
臨時委員 髙橋 德行
臨時委員 鶴岡 路人
臨時委員 松岡 彩子
臨時委員 山崎 直子
臨時委員 山室 真澄
臨時委員 吉田 和哉
臨時委員 米澤 千夏
研究開発局宇宙開発利用課長 上田 光幸
研究開発局宇宙利用推進室長 池田 一郎
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一
(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
理事 布野 泰広
理事 國中 均
宇宙輸送技術部門イプシロンロケットプロジェクト プロジェクトマネージャ 井元 隆行
宇宙輸送技術部門H3ロケットプロジェクト プロジェクトマネージャ 岡田 匡史
宇宙科学研究所宇宙飛翔工学研究系 教授 津田 雄一
【鈴木部会長代理】 では、定刻になりましたので、宇宙開発利用部会の第68回会合を開催いたします。
本日は、村山部会長の御都合がつかないということで、私、神戸大学の鈴木が部会長代理として進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、本日も新型コロナウイルス感染防止のため、前回同様にオンラインでの開催となっております。委員の先生方には御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
まず、事務局で人事異動があったということですので、その御紹介をお願いいたします。
【木元補佐(事務局)】 それでは、まず上田課長、お願いいたします。
【上田課長】 皆様、多くの方にとっては初めまして、になります、文部科省宇宙開発利用課長を8月1日付で拝命いたしました上田でございます。どうぞよろしくお願いします。
【木元補佐(事務局)】 続きまして、池田室長、御挨拶をお願いします。
【池田室長】 8月10日付で宇宙利用推進室長を拝命いたしました、池田一郎と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
【木元補佐(事務局)】 併せまして本日参加できませんが、研究開発局長の真先前局長の後任として千原局長が着任しておりますので、ここで紹介をしておきます。
【鈴木部会長代理】 では、上田課長、池田室長、これからどうぞよろしくお願いいたします。
それでは、事務局から本日の会議に関する事務連絡をお願いいたします。
【木元補佐(事務局)】 事務局でございます。本日は宇宙開発利用部会に御所属いただいている16名の委員のうち、14名の委員に御出席いただいております。運営規則に定める定足数の要件を満たしておりまして、よって本日の会議は成立していることを御報告いたします。
本日の資料ですが、議事次第に記載のとおりでございます。
あと、オンライン状況について、音声がつながらないなどの問題がございましたら、事務局のほうへメール、電話などで御連絡ください。
本日は議題が四つありまして、はやぶさ2プロジェクト終了審査の結果について、これが審議案件になっておりまして、残りの3件は報告案件になります。
事務連絡は以上です。
【鈴木部会長代理】 それでは、議事に入ります。
最初の議題は、イプシロンロケット6号機の打ち上げについてです。
では、JAXAの布野理事、お願いいたします。
【布野理事(JAXA)】 JAXAの輸送系を担当しております、理事の布野でございます。
イプシロンロケット6号機の打ち上げについて御報告させていただきます。
イプシロンロケットは、2段階開発で開発を進めておりまして、今回打ち上げます6号機は、1段階開発の最終号機の打ち上げになります。6号機では、JAXAの衛星の打ち上げに加えまして、将来2段階開発でありますイプシロンSロケットによって、打ち上げサービス事業を担うIHIエアロスペース社、IA社から受託します民間衛星の打ち上げやIA社の打ち上げサービス化に向けた取組の強化、それから、イプシロンSロケット用に開発を進めております機器の飛行実証等、イプシロンSに向けた取組も取り込んで、6号機の開発を進めているところでございます。
6号機の打ち上げは、10月7日に打ち上げを予定しておりましたけれども、本日午前中に実施いたしました判断会議におきまして、ロケットの飛行状況確認に必要な条件がそろわないということで、打ち上げを延期することを決定したところでございます。
そういう状況でございますけれども、本日は、6号機の概要並びに打ち上げに向けた状況について、井元プロマネにより御報告させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 それでは、JAXAイプシロンロケットプロジェクトチームの井元から、資料の御説明をいたします。
まず、右下2ページ、このページになりますけども、先ほど布野理事から話がありましたとおり、イプシロンの全体計画を示しておりまして、イプシロンは2段階の開発を進めております。この6号機につきましては、第1段階の最終号機ということで節目の打ち上げになります。
次のロケットの打ち上げは、イプシロンSロケットの実証機ということで、これは実質的な7号機の打ち上げになります。その適用2機目、イプシロンの8号機からは、IAに打ち上げ輸送サービス事業を展開していただくということを今計画しているところでございます。
次のページをお願いいたします。
6号機の説明になります。
まず、6号機につきましては、革新的衛星技術実証3号機のうち、6基の衛星、それと受託衛星2基を打ち上げ、合計8基の打上げになります。受託衛星2基につきましては、QPS-SAR-3/-4ということでQPSのほうからIHIエアロスペースが受託をしまして、さらにJAXAはIAから打ち上げを受託するという形になっております。
これに対応した複数衛星搭載構造というものにつきましては、この衛星の下側にある構造体になるのですが、これはIAが開発をしているという形になります。
革新的衛星技術実証3号機、6基のうち一つが小型実証衛星3号機、RAISE-3と称するものでありまして、キューブサット5基につきましては、九工大、早稲田大、名古屋大、米子高専、それと未来科学研究所の五つ衛星を打ち上げることになっております。
次のページをお願いいたします。
ペイロード以外の6号機の特徴、大きく二つ記載しております。
まず、一つ目ですけども、イプシロンSの適用2機目の移送サービス事業として選定しております、IAの主体性を発揮していただく取組を進めております。この6号機で段階的かつ着実な民間輸送を推進する予定であります。6号機の打ち上げそのものはJAXAが打ち上げます。
具体的には、これまでJAXAが行ってきました、発射整備作業及びペイロードインテグレーション作業、これをIAの請負範囲に拡大しまして、打ち上げ直前までのロケット系準備をIA主体の作業に変更しております。現時点、Y-0リハーサル終了しておりますけども、この準備作業におきまして、この体制の下で良好に作業を完了しているところであります。
二つ目の特徴としまして、イプシロンSロケットの適用に向けまして開発中の冗長複合航法システム、我々RINSというふうに称しているものですけども、この試行実証を実施いたします。
このRINSにつきましては、ロケットの位置、速度を計測する機器でありまして、イプシロンSとH3ロケットのほうで共通的に搭載するものでございます。
このRINSにつきましては、民生部品を使用して、冗長回路技術によって、放射線耐性を高め、低コスト化を図るものでございます。6号機に搭載して、実飛行環境下での機能性能を実証する予定でございます。
次のページをお願いいたします。
こちらが6号機の主要諸元になりまして、基本的に5号機と同じ形になります。搭載ペイロード及び搭載構造のところだけが5号機と変更しているところでございます。3段の上に小型液体推進系でありますPBSを搭載して、軌道投入精度を高めるというロケットになっております。
次のページをお願いいたします。
こちらが6号機の飛行経路とシーケンスオブイベントになっておりまして、第一衛星分離のところまでは基本的に5号機とほぼ同じ経路を取っていきます。こちらの15番、RAISE-3分離、これが52分後に南米上空で分離するんですけども、そこまではシーケンスイベントとしてはほぼ5号機と同じです。それから順次、8基の衛星を分離いたしまして、1時間11分過ぎ、7時1分過ぎ、全ての衛星を分離してミッションを終了するという計画になっております。
次のページをお願いいたします。
こちらは、衛星の分離のシーケンスを書いておりまして、まず、RAISE-3を分離いたします。その次に、MITSUBA+WASEDA-SAT-ZEROを分離いたしまして、軌道を多少変更いたします。これは、衛星衝突回避のために軌道を少し変更するものでして、QPS-SAR-3を分離してMAGNAROを分離し、その後、QPS-SAR-4とKOSEN-2+FSI-SATを分離すると、こういうシーケンスになっております。
次のページをお願いいたします。
こちらが6号機の打ち上げ準備状況になります。
まず、今年の5月に1段モーターを射場に搬入し、7月から射場での作業に着手しております。M組立室という建物で各段作業を実施いたしまして、その後、M整備塔のほうに機体を移送しまして全段作業、10月1日までにリハーサルを実施しておりまして、昨日まで順調に作業を進めております。それで、10月7日打ち上げ予定と書かれておりますが、先ほど理事から報告があったとおり延期を決定しております。
次の打ち上げにつきましては、また別途、設定するという形になっております。
次、お願いいたします。
8ページですけども、1段モーターをまず、内之浦漁港をお借りして水切りして、陸上移送いたします。各段をM組立室というところで組立て点検いたしました。
次のページをお願いいたします。
その後、1段を整備塔に持っていきまして、その後、2段のVOS、1段と2段の結合を実施しております。
次のページをお願いいたします。
こちらは衛星の搭載状況を示しておりまして、キューブサットを収缶して、RAISE-3、QPS-SAR-3/-4の搭載を順次いたしまして、フェアリング結合して、この頭胴部VOSというものを実施しております。
次のページをお願いいたします。
こちらは10月1日に実施したリハーサルの様子でございまして、結果良好でございます。
次のページお願いいたします。
まとめです。イプシロンロケット6号機の主な特徴といたしましては、革新的衛星技術実証3号機のうちの6基と受託衛星2基を打ち上げいたします。強化型イプシロンロケットの最終号機になりまして、段階的かつ着実な民間移管の取組を推進していきます。それと、冗長複合航法システム、RINSの飛行実証ということが特徴になっております。
6号機の状況と今後の予定につきましては、Y-0リハーサルまで終了いたしました。今後、打ち上げ日を設定して、それ以降の作業を進める予定でございます。
14ページ以降は、これまでの実績、それと5号機の成果を示しておりますので、御覧いただければと思います。
説明は以上になります。
【鈴木部会長代理】 御説明ありがとうございました。
ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。何か御意見ありましたら、挙手をしていただければありがたいですが。
【木元補佐(事務局)】 白井先生が挙げていらっしゃいます。
【鈴木部会長代理】 では、白井先生お願いいたします。
【白井委員】 白井です。
質問は、資料で言うと2ページ目についての質問になります。
今回の打ち上げ、第1段階と呼ぶことはあまり意識してなかったのですが、イプシロンSになる前の最終号機ということでした。JAXAから見ると、これは受託ということになるのでしょうが、事実上、IHIエアロスペースの努力によって、商業受注をされた、と、こういう理解で正しかったでしょうか。第2段階、イプシロンSにつながる最終号機かなという、そういう印象をまず受けました。
そこを考えたときにふとお伺いしたくなったのが、国際競争力についてです。世界各国の今の中型小型のロケットの競争って激しくなっているというふうに見聞きしております。日本も頑張らなきゃいけない中で、昨今の円安、今143円とか2円ぐらいだと思いますけど、110円の時代から見ると約25%のドル建てでは値段が下がったことになると、つまり、円安のネガティブ要素が多い中、これは珍しく追い風になっているというふうに受け止めてよろしいのか。
あるいは、この製造原価の中に、海外調達のものが含まれているから、25%のドル建ての削減効果というほどシンプルにはならないと考えてよろしいのか。技術的な質問ではないのですが、この機会なので教えていただければと思います。
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。まさにイプシロンSにつながるすばらしい計画になっていると、我々も思っております。
その中で、まず製造原価の中で輸入品につきましては、多少はありますけれども、基本的に国産になっております。その観点で、円安というのはイプシロンにとってはかなりの追い風になっておりまして、国際競争力はさらに増す状況になっております。
以上です。
【白井委員】 ありがとうございました。大変、円安のニュースの中では珍しく非常に喜ばしいニュースだったと思います。よろしくお願いいたします。
【鈴木部会長代理】 ほかに御意見はございませんでしょうか。
笠原先生、お願いいたします。
【笠原委員】 名古屋大の笠原でございます。御説明どうもありがとうございます。
順調に開発、それから打ち上げの準備が整って、すばらしいと思います。また、8基もの衛星を一つのパッケージとして打ち上げる技術、大変すばらしい内容だと思います。
質問は、先ほどの白井先生と同じで今後のことでございまして、やはりこの技術をさらにイプシロンSで発展させていくということですが、特に打ち上げ能力、より遠くへ惑星間への航法等をにらんだ打ち上げ能力に関して、どのような体制や考えでいられるのかというのを質問させていただきたいと思います。
特にIAの自主的な開発ということで、JAXAとしては見守る立場というふうな理解をしましたが、その中で、そういう能力を向上、特にキックモーター等を強化するという、そういう情報も私、聞いたことがございますので、その辺りの御説明をいただければ大変ありがたく存じます。
以上でございます。
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 まず、イプシロンSロケットにつきましては、JAXA開発になります。IAに責任持って開発していただくという観点で、強化型までは研究開発ということでJAXAの開発でございました。一方でイプシロンSにつきましては、より責任を持っていただくという観点で、輸送サービスを見据えて、ロケットシステム全体をIAに実施していただくという形になっております。
実証機につきましては、JAXA打ち上げになりますけども、適用2機目から輸送サービスを見据えております。その中で、2機目以降になりますけども、DESTINY+、公募型小型のISASになるのですけど、こちらについてはキックステージを搭載しております。このキックステージにつきましては、今の仕切りとしては衛星・探査機側の開発になるのですけども、これは我々イプシロンとしても、一体となって開発、技術力を結集して実施していきたいというふうに考えておりますので、我々も技術支援を実施していく所存でございます。
キックモーターそのものはIAの開発になりますので、そういった技術といいますか、探査機とイプシロンS側のシナジーといったようなことも考えておりまして、そういったもので探査を進めていくという考えでございます。
以上です。
【笠原委員】 ありがとうございました。応援しておりますので、ぜひ、引き続きよろしくお願いします。
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
【鈴木部会長代理】 ほかに御意見、御質問はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
(「なし」の声あり)
【鈴木部会長代理】 それでは、次の議題に移りたいと思います。
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございました。
【布野理事(JAXA)】 ありがとうございます。
【鈴木部会長代理】 二つ目の議題は、H3ロケットの開発状況についてです。こちらも布野理事、よろしくお願いいたします。
【布野理事(JAXA)】 引き続いて布野でございます。
H3ロケットに関しましては、本年3月に当部会におきまして、第1段エンジン・LE-9の開発状況を踏まえまして、試験機1号機の2021年度打ち上げを見合わせることについて御報告をさせていただいたところです。
その後、本年3月から6月にかけまして、確実な打ち上げを実施するため複数の対応案に対しまして、翼振動試験等、計8回、累積燃焼秒時1,800秒を超える検証に取り組みまして、試験機1号機に適用する対応策を選定することができ、現在22年度内の打ち上げを目指して、LE-9エンジンの認定試験並びに領収試験に取り組んでいるところでございます。
本日は、3月以降、これまでの取組状況、それから今後の予定について、岡田プロマネから報告させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 JAXAのH3プロジェクトチームの岡田でございます。よろしくお願いいたします。
画面の投影はできておりますでしょうか。では、よろしくお願いいたします。
本日、H3ロケットの開発状況について御説明いたします。
先ほど、布野理事より説明させていただいたとおりですけれども、前回の部会では、それは3月23日だったですけれども、1段エンジンの開発状況を踏まえ、2021年度の1号機の打ち上げを見合わせさせていただくということを御報告いたしました。
以降、確実な打ち上げを行うための対応として、課題となっておりますターボポンプの設計変更、そして、その検証に取り組んだ結果、試験機1号機は、今年度、2022年度内の打ち上げを目指すことといたしまして、それの内容につきまして御報告いたしたいと思います。
この資料の中の18ページ以降は参考になっておりまして、ロケットのあらましであるとかエンジンの構成要素であるとか、そういったものが載せてございますので、適宜御参照いただきたいと思います。
2ページ目、H3ロケットの開発経緯です。
このページは、2014年に開発着手から2020年度の2020年5月のLE-9の認定試験におきます二つの事象で1回目の延期をさせていただいたところまでが載せてございますので、これを読み取りいただきたいと思います。
3ページ目ですけれども、この1月に起きたことを少しおさらいさせていただきます。
当時起きておりました二つの事象、一つは燃焼室の内壁の開口、そしてもう一つは液体水素ターボポンプのタービンの疲労に関して、ですけれども、燃焼室の開口につきましては、対応策を確立いたしました。それから、タービンの疲労につきましても、全翼の設計変更などを行って改善効果を確認したのですけれども、以下2点について引き続き対応して、確実な打ち上げを目指すということにさせていただきました。
FTP、水素のターボポンプにつきましては、第1段のタービンディスク部のフラッタ、そして、OTP、液体酸素のターボポンプにつきましては、タービン入り口部の流れの不均一性が要因と推定されます共振です。
この二つを何とか解決したいということで、3月下旬から対応策を順次具体化いたしまして、種子島宇宙センターなどで燃焼試験を行って、この翼振動の計測試験に着手しております。
タービンの話が時々出てまいりますので、タービンの概要を御説明したいと思います。これは水素のターボポンプの絵が一番左に小さく載せてございまして、タービンというのは一番右にあります。このターボポンプは2段式でして、真ん中はタービンの動翼の回転の様子、右側の図は、タービンの中の流れの様子を今、動画でお示ししております、御覧いただけていると思いますけれども、このように、これはJAXAのJEDIという第3研究ユニットのシミュレーションの結果ですけれども、現物とは少し設計が違いますが、このような流れ、かなり高速で流れる流れの中の現象と格闘してきたということでございます。
一つ、我々がこのときに強力な試験の計測ツールを手に入れまして、それは前回も少し触れさせていただきましたけれども、翼振動の計測です。水素のターボホンプで言いますと1秒間に700回転しますが、その回転する先端にあります動翼の部分にひずみセンサーを貼りまして、それを非接触の形で電源を供給して、高周波のひずみのデータを得るということで、常にこの状況をセットしまして、振動状況をモニターしながら開発を進めてきております。
右側にはその結果として得られますキャンベル線図、横軸がターボポンプの回転数で、縦軸が振動周波数、斜めに駆け上がっているこの線が回転数の整数倍で、固有値とぶつかったところで共振が発生するわけですけれども、時にフラッタという現象は、このように回転数の整数倍とは違う固有モードに水平な形で出てくる、こういったものを観察しながら、開発を進めてまいりました。
この6ページは、前回少し触れさせていただいたチャートです。このターボポンプの対応策を取る上で、残された時間には限りがあるし、必ず基本的な計画を満たさなければいけないという思いでリスクを最小化するための開発ステップを取りました。
それは、複数の矢を同時並行で開発するということです。この複数の矢の概念ですけれども、新たなリスクを持ち込まないという観点から、今まで共振などについて有効性が確認できたものは維持します。こうした極力実績を維持するという面と、一方ではそれだけでは対応不十分な場合も想定して、設計的には少し踏み込んだ設計をすると、こういったものを幾つかの複数の案として用意しました。
この対応案に関しては、効果の度合いであるとか設計の成熟度、そして、その設計を取った場合の製造スケジュール、こういったものを含めて、どれを最初に試すべきか、ということを評価しながら進めておりまして、順次設計製造を行って、それが整い次第、先ほど申しました翼振動計測試験で検証を行ってきました。
我々、後ほど出てまいりますようにゼロの矢、1の矢、2の矢と呼んでいるのですけれども、これはニックネームですけども、まずは従来設計に最小限の変更を施しましたゼロの矢から試験を始めました。ゼロの矢を始めつつ、その検証が未達の場合に備えまして、後続案は、部品完成状態または設計完了の状態で待機させ、順次それを試験するということで進めてまいりました。
具体的な水素と酸素のターボポンプへの対応の方針ですけれども、水素はフラッタが起きておりましたので、その耐性を高めるために剛性を高める、あるいは減衰力を強化するということを図りました。それから、酸素のターボポンプは、入り口部の流れの不均一が要因とされる共振が残っておりましたので、共振そのものに対する固有値の調整であるとか減衰力の強化を図るということと加えまして、先ほど申しました、入り口部の流れの不均一性そのものを抑えていくという、二つのアプローチを取りました。
もう少し、設計の具体的なところを御説明いたします。
水素に関しましては、ゼロの矢から1の矢、2の矢、3の矢まで、順次、製造、あるいは検討までを進めております。この中で我々が試したものはゼロの矢と1の矢までです。
このゼロの矢というのはどういったものかと申しますと、ちょっとページが飛んでしまいますが、9ページに、これまでの翼振動試験などの取組を載せてございますけども、これは2020年から2021年にかけてのチャートです。この赤いマークがついているところで翼振動試験を行っています。
この2021年度の10月に、いろいろな現象を捉まえながら試してきて、割と最終段階のものをベースにしまして、一部改善効果を確認しておりましたので、そのタービンを追加工して、さらに減衰力を強化してフラッタを抑えにいくこととしました。
1の矢に関しては、少し抜本的な改善でした。新設計のタービンに対して、ディスクの厚さを厚くするなどで剛性を高めたものを1の矢として用意しました。
2の矢は、まだこれは部品レベルで、我々持っておるのですけれども、1の矢の派生型として考えております。
3の矢は、さらにかなり抜本的な設計変更の検討を行っています。
それからOTPにつきましては、ゼロの矢、これは先ほど申しました2021年の10月から12月にかけて、改善効果を少し確認できつつあったものを元に、さらに減衰力を強化したものです。
1の矢につきましては、タービンの入り口の流れの不均一性を断つ、あるいは抑制するといったことを狙いとした設計変更をいたしました。したがって、これはタービンそのものの設計変更ではございません。
2の矢につきましては、新型のタービンを基に、かなりこれは抜本的に固有値を変更した設計を行ったタービンです。
3の矢はまだ検討中です。
このように並行して開発を進めてまいりますので、複数の設計チームを編成し、また企業の垣根を越えたターボポンプ開発推進室を設置しまして、都度技術評価などを行いながら、開発を進めてまいりました。次に、その結果を御説明いたします。
3月から6月に複数の矢をいろいろと組み合わせまして、翼振動計測試験を8回、約1,800秒行いましたけれども、FTPについてはゼロの矢、1の矢、OTPについてはゼロの矢、1の矢、そして、脇で角田の宇宙センターで単体の試験で2の矢を試しました。この中で得られた結果を評価いたしまして、試験機1号機へ適用する最有力の案といたしましては、以下を選定しました。
FTPについてはゼロの矢、そしてOTPについては1の矢。この選定をしたと同時に、次に認定燃焼試験が控えておりますので、一気にターボポンプの製造を加速いたしまして、認定試験に入っていくというプロセスを取りました。
なお、このLE-9のエンジンは従来から2段階開発をさせていただくということでお話をしておりまして、このため2号機以降に向けましては、引き続きいろいろな矢の評価を行いながら、これまでの矢を含めまして、最適な仕様を選定する予定でございます。
2段階開発の意味合いについては、下のほうの中央を御覧いただきたいと思います。
9ページは、先ほど御説明したチャートでして、10ページがそのチャートの続き、この2021年度の1月に今回の延期をさせていただいて以来、約半年強かけまして、複数の矢をかなりのピッチで設計製造、試験を行いまして、7月にその矢を選定したという経緯でございます。
そういった選定した矢を用いまして、認定燃焼試験を行っております。認定燃焼試験の目的でございますけれども、実際の打ち上げに用いるエンジンと同設計同プロセスで、試験用のエンジンを用意しまして、機能性能そして寿命の実証を行うものです。先ほど申しました矢を選定しまして、その製造工程までを含めて保証するというものでございます。
計画は、前半シリーズと後半シリーズに分割いたしまして、前半シリーズでは厳しい作動状況も含めて、作動範囲を確認し、これはかなりリスクとして高い側の試験を詰め込んであります。これで5回行った上で、これならば大丈夫という判断をした上で、1号機に実際に用いる現物のエンジンの領収燃焼試験(AT)への移行を判断いたします。そして、そのATが終わった後で、後半シリーズとして、ある意味淡々と寿命、あるいは回数を蓄積するような寿命実証試験を行うという計画でございます。
現在の状況ですけども、前半5回を完了して、厳しい作動条件での試験を全てクリアいたしました。具体的には、燃焼室に関しましては、かつて起こりました燃焼室の開口の対応策として、この温度以下で作動させれば大丈夫というところでコントロールして作動させまして、試験後に健全性を確認しております。
ターボポンプにつきましては、これは認定燃焼試験の前段階で、既に翼振動の試験で確認しておりますので、認定燃焼試験では翼振動試験を行わずに、結果としてタービン部の健全性を目視で確認して問題ないことを検証しております。
このように、前半が終わった段階でリスクは十分下げられたと判断いたしまして、試験機1号機用エンジンの領収燃焼試験に入りました。
12ページには、認定試験の前半5回の結果を載せてございます。これはお読み取りいただければと思いますけれども、試験時間を一つ取ってみますと、大体200秒強の試験をセットしまして、タイマー停止というのはその試験予定時間、完全に燃焼しているというものですけども、あるいは3回目以降は、ほぼ意図したとおりの燃焼の停止をしておりまして、エンジンのシステム全体としては、技術の成熟度は非常に高くなってきているということを今実感しておるところでございます。
13ページには、1例として認定試験ではどのようなデータを取ったかということをお示ししておりますが、このエンジンの特徴といたしまして、メインバルブという水素と酸素の流量をコントロールする四つのバルブの回路を電動で調整できるようになっておりまして、それがメリットで、一つの、例えば200秒の試験の中でいろいろな作動状態をあらかじめインプットしたデータで変化させまして、データが取れるということで、下にございますのがその結果ですけれども、推力が一番上にありまして、ターボポンプの回転数、あと一番下がターボポンプの入り口の圧力ですが、この1例に挙げたものは、最後の試験の後半で酸素の入り口圧をずっと下げてまいりまして、酸素のターボポンプの吸い込みの性能のデータを取るということで、所定の圧力に達したところで燃焼を自動停止したという試験でございました。したがって、目標時間よりは手前で止まっているのですけども、これは意図どおりの停止でございました。
14ページには、そういったこれまで5回取られたデータを横軸、エンジン混合比、縦軸、推力でプロットしたものでございます。一つの試験が一つの色で表しておりますので、一つの試験の中でいろいろな作業点を探索しているところをお読み取りいただけると思います。この赤の点線で囲ってあるところが認定燃焼試験の作動範囲、この中を大体確認しようということで、こういった網羅的な探索を行ってまいりました。概してなんですけども、エンジン混合比が高くて推力が高い、つまり右上の側がエンジンの作動としては厳しい側にありますので、この辺のデータも丁寧に取ってまいりました。
15ページには、これまでのエンジン試験、燃焼試験の実績、累積の試験秒時を示してございます。横軸が時間軸、2017年から始まったエンジン燃焼試験、現時点、この点線のところにおります。それに対して、累積燃焼秒時がどんどん増えておりまして、特にこの2022年の初頭辺りから一気に坂道を駆け上がるようにして、燃焼時間が累積されているところからいたしましても、このエンジンのシステムとしての成熟は高まってきているというふうに申し上げてよいと思っております。
今後の予定でございます。試験機1号機に向けまして、今現在、射場にて実機型タンクステージ燃焼試験(CFT)に向けた準備を行っております。実機型タンク燃焼試験といいますのは、発射台の上にロケット本体を据付けまして、発射台の上で燃焼試験を実際のロケットを使って行うというものです。燃焼試験は11月上旬から中旬を予定しておりまして、現在、これに向けまして、保管しておりました1段と2段を再VOS、組立てを行いました。1機目のLE-9エンジンは、この右下の写真に載せてございますように、既に領収燃焼試験を完了し、ロケットに装着済みです。ロケット本体の機能点検を実施しながら2機目のLE-9エンジンの完成を待っているところですけれども、10月3日、一昨日に2機目のエンジンの領収燃焼試験を行いまして、現在のところ、機体に引き渡せる状態になりつつあるというふうに見ております。
このCFTの試験が終わった時点で、打ち上げの時期を一体いつにできそうかということを見極める予定でございますが、現時点、試験機1号機は2022年度内の打ち上げを目指すということで、我々取り組んでいるところでございます。
17ページには、今後の射場作業の予定ということで、現在、機体の組立てが終わりまして、LE-9エンジンの組み込みが行われつつあります。間もなく先端にありますフェアリングを実際の現物を取付けまして、CFTを行うと。CFTが終わりますと、一旦フェアリングを外して人工衛星を搭載する準備を始めます。
このCFTは、固体ロケットブースターがない状態で燃焼試験を行いますので、CFT後には固体ロケットブースターを装着して、打ち上げに臨んでいくという、現段階、かなり最終段階に至りつつあるというところでございます。
御説明は以上です。
【鈴木部会長代理】 ありがとうございました。
では、ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。
【木元補佐(事務局)】 鈴木健吾先生の手が挙がっています。
【鈴木部会長代理】 鈴木先生お願いいたします。
【鈴木委員】 鈴木健吾でございます。
このたびは、予期しないトラブルに対しての対応ということで、いろんな策を講じられてリカバリーを見せられたというところが本当にすばらしいなと思いますけれども、現場におけるほかのプロジェクトとか、ほかの開発に対する負担のしわ寄せみたいなところがあったとしたときに、どのようにケアされているのかみたいなところもちょっと教えていただければと思います。
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 しわ寄せと申しますか、まずはこのH3ロケットは、宇宙基本計画に予定されておりますミッションを予定どおりこなすという、それを支えるというのが使命でございまして、その点においては、この2回の延期をさせていただいたことで、影響を大きく与えてしまっておるということを非常に重く受け止めているところです。
また、このプロジェクトが、人的リソースなども含めまして、それなりに投入してやらせていただいている上で、やはり少しでも早くこのプロジェクトの終了をするようにしたいという思いでおります。
JAXAの中では、H3ロケットに対して非常に全社的な協力体制にありますので、本当にいろいろな部門のメンバーに協力してもらっているということで、それはプラス側で捉えております。
以上です。
【鈴木委員】 ありがとうございます。
【鈴木部会長代理】 ほかに御意見、御質問はございませんでしょうか。
笠原先生、お願いいたします。
【笠原委員】 名古屋大の笠原でございます。
ちょっと技術的なお話になりますけど、非常に詳しい御説明で5回の前半シリーズを無事終えられて、非常に厳しい環境下で作動が安定しているという、そのような理解をしております。
御説明の中で後半シリーズ、寿命実証を中心にAT後に4回実施を予定と。この試験というのは、既に機体にロケットが組み上げられた状態で実施されるものなのでしょうか。それとも、寿命実証試験というのはまた別途行われるものなのでしょうか。17ページの図の中でちょっとそのことを理解させていただきたいなと思いまして、質問させていただきました。
以上です。
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。説明が的確でなくて申し訳ございません。
この認定燃焼試験というのは、1台のエンジンでまず行う試験です。したがいまして、後半シリーズは、前半シリーズで使ったものと同じ試験用のエンジンをもう一度燃焼試験スタンドに戻しまして、試験を続けます。もう一度といいますのは、前半シリーズが終わった後で、一旦そのエンジンを取り外しまして、フライト用のエンジンを2式、同じ燃焼試験スタンドでそれぞれ領収燃焼試験を終えました。終えましたので、今度テストスタンドが空きますので、そこに一旦取り外した認定試験用のエンジンを戻しまして、引き続き4回試験を行う。したがいまして、1台のエンジンで合計9回燃焼試験を行う予定でございます。
【笠原委員】 ありがとうございます。
フライト用とは全く別のエンジン?
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 別です。
【笠原委員】 この残りの試験というのは、フライトまでに寿命実証として行うという認識でよろしいでしょうか。
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 そのとおりでございます。
【笠原委員】 ありがとうございます。よく理解できました。どうも本当にありがとうございます。失礼いたします。
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
【鈴木部会長代理】 ほかに御意見、御質問はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
(「なし」の声あり)
【鈴木部会長代理】 それでは、次の議題に移りたいと思います。
次の議題は、文科省における令和5年度宇宙関連概算要求についてです。
それでは、事務局上田課長より御説明をお願いいたします。
【上田課長】 文部科学省宇宙開発利用課長の上田でございます。私のほうから、宇宙関連予算、こちらの概算要求の状況について御説明差し上げます。
早速ですけど、画面に表示されている資料を御覧ください。
令和5年度の要求額、2,002億円プラス事項要求ということになっております。前年度予算は1,526億円でございます。
事項要求というのは、8月末各省庁が概算要求をする時点で、事項のみ要求して額は示さないということでして、今回の概算要求、各省庁、割とこれを使った要求をしております。
一方、この宇宙予算に関連しましては、ちょっと下に書いてございますように、H3ロケット関連予算について事項要求させてもらうということでして、文部科学省の学術予算の中では唯一の事項要求となっています。
ちょっとこちらの状況を簡単に御説明しますけれども、先ほど岡田プロマネから御説明あったとおり、まさにH3ロケット、特にLE-9エンジンの開発が今、断続的に進んでいるということで、8月末の時点では、先ほどの認定燃焼試験の前半が終わっている段階でございました。そして、この秋に先ほど御説明あったように、各種燃焼試験が断続的に続くという状況。H3ロケットの開発予算は、試験機1号機、2号機まで含めて開発予算と計上しておりまして、そこまで含めた対応策、こちらが順次明らかになっていくであろうということから、この秋の要求の段階において額を精査して、財政当局にきちっと説明して具体化していきたいと考えているものを事項要求とさせてもらっております。
このページ、左側から御説明しますが、それぞれ宇宙基本計画の柱の項目に沿って通常、予算整理しておりますので、その柱に沿ってです。左側、イノベーションの実現、あるいは産業科学技術基盤の強化ということと、輸送系、ロケットの予算、H3ロケット、そしてイプシロンSロケット、そして将来宇宙輸送、抜本的な低コスト化等を目指す今後のもの、こちらの予算が入ってございます。中身は後ほど次以降のページで説明いたします。
また、衛星といたしまして、基盤的な衛星ということで技術試験衛星9号機の予算、また、衛星コンステレーション関連の技術開発の予算が入って総額577億円の増額要求となっております。
左下を御覧ください。
宇宙安全保障の確保、そして災害対策・国土強靱化、地球規模課題解決の貢献という項目で、衛星等の費用を計上しております。
一つは温室効果ガス・水循環観測技術衛星、GOSAT-GWの予算。また、SSA宇宙状況把握システムの予算が計上されてございます。
右側、宇宙基本計画の項目、宇宙科学探査による新たな知の創造ということでございまして、こちらは601億円の増要求ということでして、まず、一つは国際宇宙探査アルテミス計画に向けた研究開発等ということで336億円の増要求、こちらにHTV-X、新型宇宙ステーション補給機の開発予算。また、ゲートウェイでございますね、米国を中心とする国際計画でゲートウェイが造られることになっていますけど、そちらに対する予算。また、MMX火星衛星探査計画に38億円。そして、月面の有人与圧ローバ、こちらを開発することになってございますが、こちら開発のフロントローディング、技術的要素技術を最初開発するという予算を計上しております。
さらに、DESTINY+、深宇宙探査実証機の予算。また、はやぶさ2の拡張ミッションを引き続き計上させてもらっております。中身につきまして次以降のページで御説明します。
もう一つお願いします。イノベーションの実現/産業化技術基盤でございます。
H3ロケットは、97億円から35億円要求とありますけども、これがまさにH3ロケットの開発部分につきまして、事項要求ということで、それをこの秋に明らかにして具体化して要求する予定でございます。一つ一つの燃焼試験の状況を踏まえまして、JAXAと緊密に連絡を取りながら概算要求を進める予定です。
イプシロンSロケットにつきましては、令和5年度実証機打ち上げ予定でございますので、開発の進捗による増ということで95億円という要求になってございます。
下のほうは、将来輸送システムということでして、主に二つございまして、一つは将来宇宙輸送システム研究開発プログラムということで、令和4年度、20億円が本格予算としては初になります。今回、それの倍増予算ということで40億円、最初の数年程度をかけて要素技術開発を中心に進めさせてもらえばと思っておりますが、抜本的低コスト化をにらんで、ロードマップ上は2030年をめどに、再使用型も含めて、種々検討して輸送コストの半分を目指すというふうになっていますが、そういったものの要素技術開発等々を進めてまいりたいと考えております。
また、CALLISTOと呼ばれる第1段再使用に向けた飛行実験をドイツ・フランスとの国際共同で進めてございます。右側に開発分担がございますけれども、赤色の部分がJAXAの担当する部分です。例えば、一番下のエンジン及び推進系といった部分になってございますが、これが2024年度、飛行試験に向けて開発進捗するということで17億円の増要求になってございます。
次のページになります。
続きまして、衛星ものでございますが、ETS-9につきましては、御案内のとおりオール電化衛星ということ、あるいはフルデジタル化ということで開発進捗を続けてまいりました。打ち上げが近くなってきていますので、27億円の要求ということになってございます。
その次が、デブリ除去技術の実証ミッションの開発ということで、右側、CRD2と呼ばれる実証のイメージ、フェーズ1とフェーズ2に分けて、フェーズ1は非協力的ターゲットへのランデブーと映像の取得までを行う。そして、フェーズ2については捕獲・除去までを行うということでして、増額要求になってございますのは、フェーズ1からフェーズ2に徐々に移行しつつあるためでございます。
宇宙太陽光発電技術の研究といたしましては、前年同様の要求をしております。
下のほうに衛星コンステレーションの関連技術というふうにまとめさせてもらっておりますけども、一つは革新的衛星技術実証プログラムということで、今度、3号機の打ち上げがイプシロンロケットで行われますが、2年に一度程度、こういった革新的衛星技術を宇宙実証していただく機会を提供するということで、令和6年度の4号機打ち上げを目指しての予算進捗になってございます。
また、小型技術刷新衛星研究開発プログラムということで、これも2022年度から本格的に実施を始めたものですけども、挑戦的な衛星技術を積極に取り組んで将来の官民双方の衛星に資する開発・製造・保守の刷新を図るといったことで、どちらかというとトップダウン的な開発スタイルになると考えていますが、これによって短期サイクルでの開発実証をしていくということを増要求させてもらっております。
また、このページ一番下になりますけども、衛星コンステレーションによる革新的衛星観測ミッション共創プログラムということで、こちらも2022年度、令和4年度、1.5億円で開始したものでございます。こちらも増額要求させてもらっていまして、複数の観測衛星によるコンステレーションということが見込まれる中、政府の大型衛星、こちらによる観測と民間の小型衛星のコンステレーションの観測、こちらの連携に必要となる技術開発を今の段階からきちっとやっておこうということのプログラムになってございます。
次のページをお願いいたします。
宇宙安全保障、あるいは災害対策・国土強靱化、地球規模課題関係の衛星等の事項でございます。
GOSAT-GWにつきましては、こちらは環境省と共に衛星開発を進めているということでございまして、例えばAMSR2を高度化したAMSR3を搭載したりするものでございますが、令和5年度打ち上げ予定ということで、開発の進捗に伴う増要求をさせてもらっております。
宇宙状況把握システムにつきましては、防衛省と連携しまして、スペースデブリの観測を行う宇宙状況監視システムの開発運用を行ってまいりました。ちょうど今年度が試行運用の年を終えて、来年度からは実運用の年になりますので、それに伴う予算要求となってございます。
次のページに参ります。
宇宙科学探査ということでございますが、アルテミス計画に向けた研究開発等ということで、大きく増要求になってございますが、月周回有人拠点につきましては、ゲートウェイに対して我が国の優位技術、有人滞在技術あるいはバッテリーといった、コンポーネント、こちらを日本側で開発して、実際にそれをインテグレーションする欧米の機関に渡すといった計画が進捗しておりまして、54.9億円というところの増要求になってございます。
また、新型宇宙ステーション補給機、HTV-Xでございますが、「こうのとり」を改良して進化させるということで、まずはISSの2024年までの延長に伴うところへの補給ということになりますが、これを将来それ以遠の補給にも見越して、今回については、試験機2号機、そして3号機の開発が進捗するということに伴う増要求になってございます。
続きまして、7ページになります。
LUPEXでございます。
インドとの国際協力で、インドがランダーを開発して我が方がローバ等を開発するというLUPEXで、水の存在量等の確認を行うというミッションでございますけれども、こちらにつきましても開発が継続しておりまして、15億円の要求というふうになっております。
また、宇宙探査オープンイノベーションの研究ということで、宇宙探査イノベーションハブといったものを構築しまして、産学官・国内外から様々な研究者・技術者を糾合し、あるいは異分野の融合を行うといったようなアイデア掘り起こし等を行うプログラムに継続要求させてもらっています。
MMXでございます。こちらは2024年の打ち上げに向けて開発が進捗しております。2029年の世界初の火星圏往還を目指すといったものでございまして、火星のフォボスのサンプルリターンを行うという計画でございますが、開発の進捗に伴う増要求をさせてもらってございます。
その次になります、有人与圧ローバの開発のフロントローディングということで、これまで、今年度まで国際宇宙探査に向けた開発研究の内数で実施を始めたものでございますけども、こちらを本格的な概算要求ということで、15億円への増要求をさせてもらっています。居住機能と移動機能を併せ持つローバということでございまして、国際計画の中において、日本の参加をきちっと行っていくためには重要と考えられるものでございますが、こちらのキー技術に関して、要素試作試験を最初の、これも数年程度で行うことが大事だと今考えていまして、そのための予算、ある意味、15億円は2年度目と言ってもいいかもしれません、内数でやったものは今年度から始めたものがありまして、2年度目の予算要求を大きくさせてもらうといったことをさせてもらっています。
また、国際宇宙ステーション「きぼう」の運用について継続要求をしてございます。
最後のページになります。
深宇宙探査実証機、DESTINY+ということで増要求になってございます。こちら、令和6年度打ち上げ予定に向けて開発が進捗するということに伴う増になりますが、こちらはふたご座流星群母天体「フェイトン」のフライバイ探査を行うといったこと、活動的小惑星というふうに今知られているものですけども、そちらがちりを出すということで、惑星間ダストの観測も行うといったことになります。ドイツからダスト分析機の提供を受けて、探査機の設計製作を行い、イプシロンSロケットで打ち上げる予定になってございます。
真ん中のものでございますが、戦略的海外共同研究と呼ばれる宇宙科学研究所のプログラムの中の小規模プロジェクトということで、三つあります。木星氷衛星探査計画、JUICE。そして、ESA主導の二重小惑星探査計画、Hera。そして、NASAのRoman宇宙望遠鏡への参画といったことになってございます。
JUICEも進んでございますし、2番目のHeraにつきましては、ちょうど先週にNASAが小惑星に衝突機DARTを衝突させたとの発表及び報道もございました。こういった衝突をした上で、ヨーロッパ、ESA主導で二重小惑星探査計画、Heraに基づきまして、数年後になりますが同じ小惑星に行って、その状況を確認する、観測をする、あるいは軌道を最終的に決定するといったことが国際的に計画されてきたものでございます。
プラネタリディフェンスということで、地球防衛とも今回は報道上訳されていましたけども、国際共同計画ということでJAXAがこれに参画するといったことで進めているものでございます。
予算的にはこのJUICEとHeraといったものが予定どおりの進捗を見せていまして、そこの進捗に伴う減があったということでございますが、3番目のRomanにつきましては、2022年度、令和4年度、今年度初めて予算計上させてもらって5,000万円のところの予算要求だったものが3.5億円の増要求になってございます。こちらの戦略的海外共同計画については、全体としてほぼ同じような予算配分であるべきだというふうに、当課としては考えておりますが、今回はこの三つ合わせてこの額になっているといったことでございます。
はやぶさ2拡張ミッションでございます。新たな小惑星に向けて飛んでいるわけでございまして、2031年到達予定というふうに承知しておりますが、こちらの継続をするということと、米国のOSIRIS-Rexとよばれるサンプルリターン計画と共同することになりまして、この2年はちょうどいただけるサンプルのキュレーション設備の整備の最盛期がありまして、この額になってございます。また、これ以後は定常の額に戻る予定になるといったことでございます。
以上、簡単ではございますが、令和5年度宇宙関連概算要求を御説明いたしました。私どもとしましては、関係各省あるいはJAXAときちんと連携しまして、事項要求をきちんと要求するといったことを含めて、予算の確保に最大限努力してまいりたいと考えております。
以上でございます。
【鈴木部会長代理】 ありがとうございました。
ただいまの御説明につきまして、御意見、御質問がございましたらお願いいたします。
井川先生、お願いいたします。
【井川委員】 ありがとうございます。
1点お伺いしたいのですが、事項要求ってちょっと正しく理解してない可能性もあるので、ちょっと教えていただきたいです。ここに書いてある35億円余というのは、これは事項要求で、今後、開発の進捗状況を見ながら要求するものとは別の現状の運営費交付金等から推計される額という理解でよろしいのかどうかということが一点。もしそうであるとするならば、事項要求でやると、なかなか今、防衛予算とかいろいろやっていたりとかして、なかなか全体の中でH3ロケットの位置づけがどうなるのかちょっとよく分からないですけれど、ぜひとも自由な開発というのですかね、柔軟な開発高度化というものが引き続き確保されるように、ぜひとも現状リスクを最小限にすることということで開発されていると、先ほど岡田さんの御説明がありましたけれども、それとともに果敢に高度化をさらにいどむということも技術開発には必須のことでございますので、ぜひとも予算についても果敢に要求していただいて確保していただけるようにお願いしたいなと思う次第です。
以上です。
【上田課長】 では、まずお答えいたします。ありがとうございます、御指摘。
まず、事項要求と35億円の関係でございますけど、35億円に加えてH3ロケットの開発に必要な予算を事項要求しているということです。ややテクニカルになりますが、今ここに計上されています35億円というのは、H3ロケットの開発と高度化のうちの高度化の部分、主に3号機以降に適用していく予定の高度化の部分を従前よりちょっと始めていまして、それはそれで引き続き続けるものの、試験機2号機までの開発予算につきましては、まさに岡田プロマネからあったように、新たな課題、二つばかりについて複数の案を以降、引き続き検討されるということで、試験機1号機に向けて最適な対応策を選定されていますし、それを踏まえて試験機2号機につきましても、2の矢を含めた開発をされていくというふうに聞いています。文科省としては、最大限の支援をするという方針に変更はございません。そういった計画をきちんとサポートできるような事項要求を精査して、具体化してきちんとこの秋、あるいは年末に向けて財政当局にきちんと要求していこうと考えてございます。ありがとうございます。
【井川委員】 ありがとうございました。
【鈴木部会長代理】 山崎さん手が挙がっています。よろしくお願いいたします。
【山崎委員】 どうもありがとうございます、山崎です。御説明くださりありがとうございます。
2点、コメントと質問ですけれども、1点目が、有人与圧ローバ開発のフロントローディングということで、こちら挑戦的な開発上のキー技術に対して先行的に要素試験を行うということで、こうした取組は非常に有意義なものだと思っています。今後の開発のリスクを低減してスケジュールを守っていくという上で、大切な点だと思いますので、今回、有人与圧ローバですけれども、幅広くほかにも適用できるところがあれば適用しつつ、こうした先行技術開発ということをぜひ重点的に力を入れていただければと思います。
2点目が御質問ですけれども、ISSの予算の中に、これから地球周回低軌道を民営化していくということも行われていると思いますが、そうした民間の利活用促進のようなものも、このISSの予算の中で考えていらっしゃるということでしょうか。
【上田課長】 ありがとうございます。
御指摘のとおり、フロントローディング、大事な技術開発の在り方だと考えてございますので、与圧ローバだけでなくて、例えば宇宙科学研究所予算にもそういった予算が今回増要求で、今日はちょっと説明していませんけど入ってございますし、衛星開発につきましても重要な観点だと思いますので、引き続き推進してまいりたいと考えてございます。
いわゆるポストISSの予算も、有人部門を中心に進捗している部分がございますので、こちらはきぼうの運用等の予算の中で要求していますし、確保してまいりたいと考えております。
【山崎委員】 ありがとうございます。
【鈴木部会長代理】 山室先生、お願いいたします。
【山室委員】 山室です。ちょっとビデオの調子がよくないので、顔出しなしでお願いいたします。
4番目のスライドについて教えていただきたいのですけれども、トップタイトルがイノベーションの実現というふうになっておりまして、このスライドの中でイノベーションという言葉が出てくるところが、下半分の衛星コンステレーション関連技術開発となっております。
私、イノベーションというのは単なる技術開発ではなくて、それにより社会を大きく変革するもの、価値観とか考え方を変えるものだというふうに理解しておりまして、ちょっとこの文面からは、これによって今までにない価値観とか社会をどういう方向で想定して、イノベーションと書かれているのかがちょっと分かりにくかったので、教えていただけますでしょうか。
【上田課長】 ありがとうございます。
イノベーションの概念自体、私ども文部科学省としても同様の概念だと理解しまして、単なる技術開発のみではないという、将来のアウトプットあるいはアウトカムも含めて、イノベーションの実現に向けたプロジェクトをこちらに並べているものでございます。
例えば、になりますけども、ETS-9につきましては、現在、欧米でもフルデジタル化衛星の開発、あるいは衛星の搭載機器そのもののデジタル化が進んでいると、いわゆる価値創造が進んでいるということでございます。1回の衛星の打ち上げで、途中で通信に使う周波数を変えるといったようなことも今後、顧客への価値提供ということであり得るということになりまして、そういった衛星向けの技術、これをきちんと日本側でも実証するという意味で将来のイノベーションの実現に向かうといった意味に捉えてございます。
下のほうの三つも、衛星コンステレーションに向けてのイノベーションの実現ということで、どういう価値を考えているかということでございますけども、革新的衛星につきましては、これは大学・研究機関・民間企業が部品とかコンポーネント、あるいは超小型衛星を開発します。それの実証を右側にありますようなJAXAの衛星に載せたり、あるいはキューブサットをイプシロンに載せたりして実証機会を提供するということで、これは種々のキューブサットですとか、部品コンポーネントにおいて、顧客に、あるいは社会で発現したい価値は異なると思いますが、こういった宇宙実証の機会というのはそう多くはないものでございます。
こういったことで、私どもとしては、こういったプレーヤーの裾野が広がることと、個々のプレーヤーが成し遂げるイノベーションを後押ししたいという意味で使ってございます。
2番目の小型技術刷新衛星研究開発プログラム、これは今年度から開始したものでして、まだ様々、種々、通常の試行錯誤しながらプログラムを進めていきたいと思いますが、一つはこの短期サイクルといったことで、民間ではよくアジャイル開発というふうにデジタルの世界で言われたりしているものがあるかと思いますが、衛星開発につきましても、ウオーターフォール開発をするのではなくて、アジャイルに短期サイクルで開発するというトレンドがもはや来ているのではないかと考えております。
こういった衛星開発における、顧客あるいは社会への価値、アジャイルに開発してそのときのニーズに合ったものを提供していくといった意味で、基盤技術の提供になるのではないかなというふうに考えております。
というふうに、ちょっとすいません、一言で全てはこうですということはなかなかちょっと説明申し上げにくいのですが、全体としてやっぱり文部科学省、あるいはその技術開発省庁らしい、きちんとした基盤技術の開発を通じて、一方で、将来のイノベーション、あるいは価値提供といった発現を見据えた施策展開をしてまいりたいと考えてございます。ありがとうございます。
【山室委員】 ありがとうございました。
私があまり強くないこの分野で理解した範囲では、宇宙を使ってそれでいろいろITが、裾野が広がることによって、裾野がもう本当に、ある段階、臨界点を超えた途端に、恐らく、例えば様々なネットワークが一気につながったある臨界点で、何かが起こるのだろうというような、そういうイメージが一つなのかなと思いました。それから一番下の衛星コンステレーションよる革新的衛星観測ミッション共創プログラムというところは、例えばこれによって情報が桁違いに大きくなると、今まで点的なデータから将来予測していたのが膨大な面的データが宇宙を介して取れるようになって、それによって予測というものそのものが変わって、将来の不安に対する我々の考え方も違ってくるみたいな、そんなイノベーションですかね。
【上田課長】 大まかに言いまして、同じようなイメージを私も思っております。
特にデジタル化というものにつきましては、宇宙にも必ず、今、現時点で押し寄せていると思いますし、デジタル化によって指数関数的にできること、あるいは取得データも増えてくるといったことがあろうかと思いますし、ちょっと付け加えるならば、プレーヤーの拡大、官民協力、官民連携によって、民間プレーヤー、宇宙に興味を持たれるベンチャー、民間企業もたくさん最近増えてございますから、そういうプレーヤーの拡大も含めて、ちょっと後押し、裾野を拡大していきたいと思うところです。ありがとうございます。
【山室委員】 ありがとうございます。
そういうことがイメージできるようなポンチ絵があるといいかなと思いました。
【上田課長】 ありがとうございます。
【鈴木部会長代理】 米澤先生、お手が挙がっています。お願いいたします。
【米澤委員】 どうもありがとうございます、米澤です。
すごく丁寧に説明していただいて、どれも重要だと思ったのですが、トップページの三つの項目でどうやってバランスを取られたのかというところについて、もしよろしければ教えていただければと思います。よろしくお願いいたします。
【上田課長】 バランスというのは、とても宇宙開発全体を進める上で重要だと、当課としても思っております。
こちらの項目、冒頭申し上げたとおり、宇宙基本計画を踏まえた項目立てになっています。そういう意味では、内閣府の下、私どもも主要プレーヤーとして参画します宇宙基本計画の策定のときから、全体を俯瞰したバランスが図られているかと思います。
その中で、毎年毎年そのときに必要な予算要求をするといったことでございまして、今回もバランスが結果的に図られたと思いますが、やっぱり私ども財政当局等にも説明していますのは、来年度要求につきましては、H3ロケット、事項要求も含めてさせてもらっていますよといったことを重点事項で御説明差し上げていて、あるいは米国等と共同で進んでいくアルテミス計画に伴う進捗がございますので、そちら、これはISSも含めてですけども、予算要求をきちんとさせてもらっていますといった重点的なことを毎年毎年、その年によってちょっと違いますけども、重点事項ということで説明させてもらっています。
ただ、全体的に中長期的な視野でもってバランスを取って進めることが大事というふうに思ってございます。ありがとうございます。
【米澤委員】 どうもありがとうございました。よく分かりました。
【鈴木部会長代理】 笠原先生、お願いいたします。
【笠原委員】 名古屋大の笠原でございます。御説明、本当にどうもありがとうございます。
概算要求の表を見ておりまして、私が本当に生まれてから、これだけのメニューを、しかもそれぞれがキーポイントとなるようなところを通過しつつある、非常に幅広く、遠くに、また、大きな基幹ロケット、あるいはHTV-Xのような宇宙の飛翔体、これだけのメニューをこなされていることは、非常に敬意を表するとともに、非常に重要な時期にいらっしゃるなということを痛感しております。
ただ、それと同時に、これを支えている方々お一人お一人が活躍されているからだと思いまして、大学に身を今、置かせていただいていますが、若者の人材育成とか、こういう大きなシステム、あるいはフロンティアを開発するようなシステムに、今後もちゃんと人が入っていけるのかというのは、非常に不安に思います。
やはり難しい、非常に高度な内容でございますし、また技術の変化も、先ほども御質問にありましたが、非常に激しい状況で、人材育成に相当神経を使わないと、今後この状況を向こう10年20年と続けていけるのかというのが、特にこれだけのメニューを見ますと、不安に思えてくるところでございます。
そういう観点で、できましたら今後とも人材育成のほうにお力を納めていただきたいですし、大学に所属しています私からこういうことを申し上げるのは大変失礼だと思うのですが、いろんな面で人材育成への重点化というのをお図りいただきたいなと思います。
以上でございます。
【上田課長】 ありがとうございます。
人材育成の重要性につきましては、私ども文部科学省としては、同じように深く認識しておるところでございます。こういったプロジェクトをそもそも様々な方面へ進むということも、ある意味、遠くには人材育成に少なからぬ影響があると思いますので、こういったものをきちんと進捗させるとともに、大学等の方々が現場の人材育成を担われているということも深く認識しています。
私もJAXAとともにプログラムを進めることも多いわけですけども、人材育成につきましては、文部科学省の直接的な予算、こちらの費目がございまして、例年、こちらでは必ずしも説明していないかもしれませんけど、内局予算と呼ばれるもので、宇宙航空科学技術推進委託費と呼ばれる競争的研究費的に配分する予算がございます。これが、今年度予算が4.6億円になりまして、一つは、例えば大学に公募の上で配分されますから、例えば1,000万円、2,000万円といったものもございますが、この大学をはじめとした人材育成プログラムを、コンソーシアム等をつくって開発してもらうといったことで、スペシャリストの育成ですとか、そういったものにこれまで交付してまいりました。
こちらを今回、増要求させてもらおうと思っていまして、6.4億円への増要求といったことで、アーキテクトの育成といったものをスペシャリスト育成に加えて項目立てしてはどうかといったことで、こちらの予算が認められれば、競争的資金と同様に公募して採択して、大学等の人材育成プログラムを支援するといったことになりまして、そういった施策も同時に展開することによって、技術の裾野の部分を私どもも目を配って支援させてもらえればと考えている次第でございます。ありがとうございます。
【笠原委員】 ありがとうございます。
物凄い配慮をされて、既に手を打っていらっしゃるということ、よく理解いたしました。どうもありがとうございます。
【鈴木部会長代理】 鈴木健吾先生、お手が挙がっていますので、お願いいたします。
【鈴木委員】 鈴木健吾でございます。
私、民間の立場からということで質問させていただければなと思います。
まさに今、ロケットや観測衛星とかは、民間の活躍の場が存在すると思っていまして、先ほどイノベーションに関する質疑に、アウトプットのみならずアウトカムというお話もありましたけれども、基本的に中期的にロケットにおける国際的な市場の中での日本としてのポジション、例えば打ち上げる基数が、世界で何個に対して日本がどれくらいを占める、ですとか、あとは産業上の指標とかがあって、そのうちのシェアが何%みたいな、そういった目標がおありなのかどうかみたいな部分が、まず1点。
もう1点、産業と連携することに対する工夫というのが随所には聞かれるのですけども、予算要求の中で工夫されている点などがあれば、併せて聞かせていただきたく、質問させていただきました。
【上田課長】 ありがとうございます。
打ち上げの全体像、ビジョンというのですかね、こちらにつきましては御案内のとおり、アメリカ、ロシア、そして最近中国といったところ、民間も含めての打ち上げは従来の日本よりも格段に多いといった傾向は、必ずしも変わってないといったことはよく認識しています。
現在、H3ロケット及びイプシロンSロケットを開発してございます。こちらについては、基幹ロケットということで、政府衛星のみならず、民間衛星も打ち上げるといったことを視野に開発しますし、H3ロケットにつきましては高度化の部分で、衛星コンステレーションを複数打ち上げられるという能力も獲得していきたいと考えていますので、こちらはこちらで進めるものと思っています。
一方で、革新的輸送プログラムというのを今日御説明しました。20億円から40億円、増要求しているものでございます。
こちら、私どもの別途の審議会で、将来的革新輸送についての検討を行った結果、H3ロケットが就役して、しばらくはもちろん日本の基幹ロケットとしての役割を担うでしょうけど、その次のことを考えなきゃいけないといったことで、一つは、抜本的な低コスト化をさらに進めるということで、こちらの概念には、有名なアメリカのスペースXがやっている再使用型のロケットですとか、あるいは量産ですとか、あるいは個々の民生部品のより大きな活用ですとか、そういった方向性を少しずつ今、概念を示しています。
こちらについての要素技術、再使用なら再使用の要素技術開発を国が主導してやって、ベンチャーを含む民間の方々に見えるような形で、JAXAと共に行っていけばどうかと。開発手法は先ほどちょっと御質問にもあったように、JAXAへの交付金なわけですけども、JAXAからはRFI、リクエストフォーインフォメーション、あるいはリクエストフォープロポーザル、RFPを活用して、様々な民間のアイデアなり技術力を糾合するような形で進めてはどうかというふうにJAXAと考えているものでございます。
そういったふうにH3ロケット等の基幹ロケットを進めるとともに、その次、2030年あるいは40年を見越した次のロケットシステム、輸送システムを考えていかなければいけないという中で、官需打ち上げだけではなくて、民の打ち上げも活性化していけないかというふうに考えたのが一つと。
もう一つの産業界との関わりでございますけども、こちらも開発の初期段階におきましては、なるべく間口を広く取って、RFPなどを活用して様々なアイデアを取り入れると。こういった中に、実はフロントローディングという話も先ほどございましたけど、フロントローディングの際、要素技術開発をする際に、こういった広く官民連携で技術をつくっていくといった手法も取り入れるのが最近のJAXAと私どもで考えている方法でございます。
お答えになりましたでしょうか。
【鈴木委員】 ありがとうございます。
1キログラム当たりの打ち上げの価格ですとか、そういったところで昔、定量的に示していただいた部分もあるかなと思いますが、この目標に関する共通認識を醸成していただいて、普通にまず、リニアに連続的に開発を進めるところは進めていただいて、御説明があったようにイノベーティブなジャンプアップするような開発も戦略的に行っていただければと願っております。ありがとうございます。
【上田課長】 承知しました、留意いたします。ありがとうございます。
【鈴木部会長代理】 ほかに御意見、御質問はございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
(「なし」の声あり)
【鈴木部会長代理】 それでは、次の議題に移りたいと思います。ありがとうございます。
本日、最後となります四つ目の議題は、はやぶさ2プロジェクト終了審査の結果についてです。本日の審議案件となります。
それでは、國中理事、よろしくお願いいたします。
【國中理事(JAXA)】 宇宙科学研究所からデータを御紹介させていただきたいと思います。
まず、経緯を御紹介したいのですけれども、2014年にはやぶさ2は打ち上げまして、2020年12月に地球に帰ってまいりました。そして、その2か月後に宇宙開発利用部会に対しまして、2021年2月に帰還までのところの状況について、御報告を既に実施しております。その後、小惑星から取ってまいりました物質の分析が進捗しておるところです。
本来、プロジェクトの内側として定義しておった部分につきましても、評価ができる状況になりましたので、本年4月にJAXAとしてプロジェクト終了審査を実施いたしまして、全てのサクセスクライテリアを満足しておるということを確認した上で、5月にJAXAの理事会において了承されました。従いまして、このたび、はやぶさ2プロジェクトを終了したいと考えております。
本日は、特に小惑星物質の分析結果及びはやぶさ2がもたらしました社会貢献、それから波及効果の部分につきまして、重点的に御説明させていただきたいと思います。
そして、はやぶさ2を終了するに当たりまして、全プロジェクトを通しまして、御評価をいただくように御審議をお願いしたいと考えております。
それでは、津田のほうからはやぶさ2の本日の資料の重点領域につきまして、御説明をします。
【津田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はやぶさ2プロジェクトマネージャをやっておりました、JAXAの津田です。
ここから先、私のほうから資料に沿って御説明させていただきます。
右下のページ番号で指定させていただきたいと思います。枚数が多ございますので、間を飛ばしながら重要な部分を重点的にお話し申し上げたいと思います。この資料自身は、JAXAの中で、先ほど國中理事のほうからありました審査を通したときの資料の中から、今日の御説明用に組み替えて用意したものです。基本的には、中身はそこに基づいております。
内容としては、はやぶさ2の概要、それからプロジェクト目標の達成状況、アウトカムの達成状況、それから拡張ミッションの概要、終了審査結果という構成になっております。
5ページ目に進んでください。
経緯については、終了審査がJAXAの中で終わって今日に至っているという御説明をしました。定常運用終了審査というのは、JAXAの中で2回に分けて入念に行っております。2021年10月、それから2022年3月の2回です。間にはやぶさ2拡張ミッション所内プロジェクトチームの発足というものがございました。その後、終了審査という運びになっているのですが、この最終的な終了審査については、JAXAの内部の審査ではありましたが、科学的な評価についてはJAXA外の先生、3名に評価いただいて、それに基づいてプロジェクト全体での終了判断をしているという状況です。
また、ページをめくっていただいて、9ページに進んでください。
この辺りはプロジェクトの概要が続いておりますが、はやぶさ2はプロジェクト発足当初からミッション目標・サクセスクライテリアという形で設定して、これを達成するプロジェクトであるということを定義しておりました。この表自身は、以前の利用部会でも御説明したことがあるかと思います。この中で、はやぶさ2が地球帰還したときには、11の枠の中で九つが達成していましたが、残り二つはまだ未達成の状態でした。
というのは、これはサンプルが返ってきてから分析を開始して、その成果に基づいて最終的な成果確認をするということになっていて、そのサンプルに基づく成果というのが残っていたからです。
それは、この表で言いますと右上の二つになります。縦に理学目標1・2、工学目標1・2と並んでいますが、この中の一番上、理学目標1の中に、ミニマム、フル、エクストラサクセスというレベル分けがしてございます。その中のフルサクセスとエクストラサクセス、この二つがブランクだったのです。それが今回を含めて達成したということで御報告させていただきます。今日の御報告についても、報告していなかった、この二つの部分について重点的にお話しさせていただきたいと思います。
理学目標1のフルサクセスというのは、採取試料の初期分析で、鉱物・水・有機物相互作用に関する新たな知見を得るということですので、サンプルの分析、結果が必要であるという内容になっています。エクストラサクセスについては、さらにそれを踏まえて、天体スケール及びミクロスケールの情報を統合し、地球・海・生命の材料物質に関する新たな科学的成果を上げるということになってございました。
以降、それぞれのサクセスクライテリアについて、その達成根拠を説明しているページが続きます。例えば、次のページ、10ページでは理学目標1のミニマムについて説明されております。ここについては、以前御紹介したことがあるかと思いますので、お見せするだけにしたいと思います。
11ページに行きまして、サクセスクライテリアの目標1、フル、ここを御説明します。
これは、採取試料の初期分析の結果に基づく知見です。リュウグウの母天体、リュウグウの元となる天体、リュウグウ自身が元から太陽系にあったわけではなくて、元となる微惑星、母なる天体から離合集散を繰り返してリュウグウになったと思われています。
その元となる天体の水質変成が、太陽系誕生後500万年後に起きていて、それが40℃程度の温度の鉱物の酸素同位体平衡が達成されていたことが分かったということで、こういうふうにリュウグウの物質の経歴が制約できているということがポイントになります。
水質変成ということで、これは水との反応があったという証拠をつかんでいるということになりますし、水とも温度が制約されていて、40℃以下ということで、ある種温泉のような環境の所で水との反応があった、そういう経歴を経た物質が、水も何も今はカラカラの状態のリュウグウに存在しているということで、これは母天体の歴史を紐解く上で、大変科学的に制約をする意義のある情報だというふうに考えています。
それから、有機物が見つかっておりまして、分子進化が母天体で進んでいた。それから、その中にはアミノ酸も含まれていたということで、かなり有機物の分子の進化が進んでいた状態で、その状態でリュウグウが生成されたということを示唆しています。
下のほうにはそれらに関わる写真をお載せしています。リュウグウのサンプルそのものプラス大きいもので1センチメートル級の石ころが入っていた、これは非常に大きいものです。
それから、これらは試料カタログという形で全世界に公開しておりまして、研究者はこの中から自分が研究したいサンプルを選んで研究ができるという環境を整えております。
12ページに行っていただいて、同じく理学目標1、フルの中の主要な成果のダイジェストを掲げてございます。
リュウグウで見つかったものが地球に落ちている隕石と対比関係を取るというのは非常に重要なことで、隕石はたくさん地球上にありますので、その中でどれと対応するかということが分かれば、隕石学の知見に基づいて研究が進むわけです。
その中でも、はやぶさ2が持って帰ったリュウグウのサンプルはCIコンドライトの中でも、さらにイヴナ型炭素質隕石、炭素の豊富な隕石の中の一つの形態、これと非常に類似性が高いということが分かっております。
さらに水が関与してできた含水ケイ酸塩とか、炭酸塩鉱物、こういうものがたくさん見つかっているということで、これが水との関与の物的証拠ということになっておりますし、中の形質をよく見ますと、30℃から40℃以下の環境の水の中で反応したということも見えているという状況です。
CIコンドライトと似ていると申し上げていますが、違うというところもありまして、それは主には地球上で見つかっている隕石というのが、地球上で長い間放置された状態で、ある日見つかったと。つまり、地球の汚染を受けているんです。その汚染をしたCIコンドライトに基づいて、我々がずっと研究をしてきたわけですけれども、今回リュウグウで新鮮な、まったく汚染を受けていないCIコンドライト、理想とする物質が手に入ったということで、ここが新たな我々の知識基盤になるというふうに考えております。
13ページに行きまして、エクストラサクセスになります。
この辺りは、先ほどもちょっと関連したことを申し上げましたが、初期太陽系の低温領域でつくられたという経歴を推定することができるということが重要で、そのことから、揮発性に富んだ小天体なのですが、それが外側の太陽系で生まれて内側の太陽系に輸送された。その後、C型小惑星リュウグウとなったということを示唆していますし、そこから地球に海や生命の材料をもたらす、そういう小惑星群が隕石となって地球に水や生命の元となる材料をもたらしたということを示唆しているということが読み解けるということになります。
これら、太陽系の歴史を紐解く糸口をつかんでいるということで、理学目標1のエクストラに掲げさせてございます。
その後、サクセスクライテリアの説明、14ページ以降も続いていますが、ここは既に御紹介してきたところでございますので、流して見ていただくだけにさせてください。
17ページまで進んでいただいて、一応、エンジニアリングの部分もダイジェストでこういう成果でしたというおさらいですが、全ての工学的成果は、これはもう達成そのもので証拠になっているということです。
一点、理工学に跨る成果として紹介させていただくと、一番下、地下物質にアクセスできたということ、これは第2回の着陸で地下物質にアクセスしたという書き方をしていましたが、そのアクセスした物質が実際に地下物資であったということも、これはサンプルの分析から確認できているというのが現状になっていきます。
次に18ページ以降進んでいただいて、19ページをお願いします。
これらの理学成果のまとめをしたのが、このページです。いろいろ書いてございますが、まとめますと、まず、これは母なる天体、母天体があった、それが遠方天体、氷天体であったということ、それが太陽系内の外側から内側へ大きく移動してきた、これは太陽系が非常にダイナミックな世界であるということを実証的に示すものになります。
それから2番目に、これは衝突実験というのがあって、人工クレーターをつくりました。このとき、予想外に大きい穴ができたのです。このことから、構成粒子間の固着力が非常に弱いということが分かって、これは触ってみなければ分からないことで、触って穴を空けたことで初めて得られた成果になります。
この弱さということから、太陽系の物質の移動のメカニズムということが制約されるという書き方をしています。
3番目は帰還試料そのものでして、非常に資源的な物質を手に入れることができて、さらにそれは隕石とも差異があったということで、新しい標準データ、物質科学的基盤になるということを掲げさせていただいています。
今後の理学成果創出の展望についても書いてございますが、これはリュウグウ試料のカタログを今、公開していて、国際公募研究を開始しています。今後は半年ごとに、もう既に2回目は今、募集開始していますが、合計4回の試料配布を行う予定で、これによって世界の科学者、はやぶさ2に関係なかった科学者からもリュウグウを調べていただいて成果を出していただこうと考えています。
それから、来年はアメリカ版のサンプルリターン、OSIRIS-RExというのがBennuからサンプルを持ち帰ります。ここと我々は協調しておりまして、既にその協定、MOUに基づいてはやぶさ2のリュウグウサンプルをNASAに引き渡しています。その引換えに、Bennuから持って帰ってきたサンプルを我々が引き受ける予定でして、これによってまたサンプル分析に科学的な成果が得られる、シナジーに基づく成果も得られると、その主たるプレーヤーに日本がなっているという状況を築けるというふうに考えています。
20ページに行っていただいて、さらにこれもはやぶさ2プロジェクト終了ですので、その先の展望ということもまとめさせていただきました。科学・技術・探査の三つの点で書いてございます。
科学については、やはり始原天体であるC型小惑星、これが面白かったということに尽きるかと思います。始原、プリミティブな天体の多様さを理解することの重要さが非常に明確になって、非常に大昔の天体、始原天体と進化した天体、地球みたいな天体の間のラインにいるのが、さらに外側にいるのがD型とかE型とか彗星とかいう、まだ我々が訪れたことがない天体でして、こういうところへの探査の期待が高まります。
それから技術的には、NEOというのは近地球小惑星です、ここの往復技術が確立できたということで、これがより遠方、より大きな天体探査の課題に注力できる状況に日本を導いたというふうに考えております。
探査の観点では、科学的成果は今、たくさん御説明しましたが、社会的な要請、プラネタリディフェンスの話、それから宇宙資源という話が国際的に盛り上がって、必要性が論じられていますが、こういうところへ、これは小惑星探査で先陣を切っている日本ですので、こういう課題にどう取り組むのかというのが真剣に問われる立場になったということになったと考えています。
その次のページ以降は、さらにこの成果から派生したアウトカム、この成果を元にどんな社会的・政策的・国際的貢献の波及があったかということをまとめています。
ちょっとページを飛んでいただいて、23ページ以降、小さいものから大きいものまでいろいろ書いてございます。今日は主要なところだけ御紹介しますが、例えば23ページで、産業界への貢献です。もちろん、これは企業との協力なくしてこういう技術の成立はなかったのですが、その結果に基づいて、我々はやぶさ2プロジェクトから152社に感謝状というのを贈っております。多くの企業は、自社のホームページや社内報でこの感謝状のことを掲載していただいており、実際に感謝に対するお礼をいただいて、こういう非常にポジティブな関係を増進することができた、そこにはやぶさ2プロジェクトが貢献できたと考えております。
24ページに行きまして、今度は青少年への貢献ということで、これは御存じの方も多いかと思いますが、科学館とか博物館ではやぶさ2に関する情報発信を積極的に行いました。はやぶさ2関連の科学映画が製作されました。それから、高校の教科書や高校地学の資料などにも取り上げられております。それから、書籍も多数出版されているということで、こういう波及効果がございました。
25ページに行きまして、国際貢献です。
これは、先ほどもちょっと申し上げたリュウグウ試料の交換、それから海外への公募研究による展開ということがございます。それから、SCI衝突実験、これがベンチマークになって、先ほど一つ前の議題の中にあったDARTとHeraのミッション、そのベンチマークとして利用されております。
日本はそういう情報を提供できる、JAXAがそういう機関であるということで協力しているということですし、はやぶさ2ではドイツ・フランスがMASCOTというローバをはやぶさ2に搭載しましたが、これが非常にいい協力関係を築けたということで、次の火星衛星探査計画MMXでも似た枠組みで欧州ローバの参画を誘導することができました。
さらに、先ほどのHeraのミッションにおいては、はやぶさ2で搭載した熱赤外カメラがHeraミッションに採用されるということに至っております。
26ページに行きまして、社会的貢献です。
これは、たくさんのメディアの報道やドキュメンタリーを作っていただきました。それから、帰還カプセルは巡回展で全国の皆さんに見ていただくという活動を今も続けております。
帰還試料がたくさん取れました。そのうち1%はアウトリーチ用として博物館、一般市民に公開して巡回しております。さらにそのレプリカは47都道府県に配布、これは希望を出したところ、47都道府県全部がありまして、そこに配布をしたということになってございます。
そのほか、各大学が上げた成果とかもここに掲げてございます。
ページ進んでいただいて28ページです。
はやぶさ2の論文数ですが、これは今も増えている状況ですが、はやぶさ2の理工学論文は、ある時点、2022年2月時点で298論文あります。これは、同じタイプのミッションとしてはNASAのOSIRIS-RExが301論文、同じ時点ではそのぐらいでしたので、同レベルを獲得しています。
同レベルがいいのかという話ですが、これはOSIRIS-RExは予算規模がはやぶさ2の3倍で、非常に羨ましいのは論文執筆専属のチームを抱えています。こういうできるのが本当にアメリカのフラグシップというミッションで、これに対して日本は、現場の科学者と3分の1のリソースでやってきて、互角に対峙できているということが一つの大きな成果かなというふうに考えております。
受賞としても国際的にも認められておりまして、一番国際的な宇宙活動の中で大きな賞、IAF World Space Awardというのをいただいていますし、国内では内閣総理大臣顕彰というのをいただきました。
29ページ以降も成果が続きます。
30ページ以降は拡張ミッションの概要が御説明してございます。
これは、こういう成果を受けて、はやぶさ2のさらにリソースが余っている。燃料があってまだ探査機は余力があるということで拡張ミッション活動を開始いたしました。これについては、前回の利用部会でも御説明したので、詳細は割愛させていただきます。
最後、総括と謝辞のところに時間を使わせてください。
まず、総括としては32ページです。
いくつか書かれてございますが、社会的それからJAXAの内側向けの成果もまとめて書いております。
1番目として、プロジェクト目標・サクセスクライテリア、これは十二分に達成されたと考えていて、当初想定以上のことも含めて、技術・社会・科学的知見、成果を獲得したと考えています。
波及効果・アウトカムの観点では、困難なミッションに成功して、そのプロセスを見せることができて、またアウトプットに留まらずその効果を最大化することにチームが熱意を持って当たったことで、我が国の価値、世界の科学に資する成果が得られたというふうに考えております。
7番目に書いてあることとして、人材育成、学術成果創出・ミッション進行・チームづくりをうまく連動させることができました。チームメンバー個人にとっての自己成長とミッション遂行上の信頼性向上、成果達成、これらを連動させられたということが成功につながったと考えております。
はやぶさ2の成功は、初号機の教訓を真摯に反映して、シリーズ技術として開発できたこと、それから、プロジェクト内外のチームメンバーのモチベーションを十二分に喚起できるミッションに仕立てられたこと。それから、十分な自由度を現場に与えていただいて、若手とベテランのシナジーが発揮できたこと。直接社会と接点のあるミッション価値創出ができたことに帰するところが大きいと考えております。
宇宙科学のみならず、この成果が宇宙活動全般における日本への信頼や期待を高めることができたとすれば、我々にとっては大変喜ばしいことというふうに考えておりますし、後継の宇宙ミッションに科学・技術・マネジメントの点で礎になったと評価いただければ幸いと考えております。
最後のページに行きまして、最後に感謝を述べさせてください。
はやぶさ2実現に際して、宇宙科学コミュニティー、文部科学省、利用部会含む日本国政府関係者の皆さんから強力な支持をいただいて、この大きな成果に至ったと考えております。本当にありがとうございます。
はやぶさ2は多くの困難に遭遇しましたが、産業界、宇宙機関、大学、研究機関と良好なチームワークでこれらを乗り越えて、ミッション成功に導くことができました。はやぶさ2に関わったメーカー、それから国際的なパートナー、それから宇宙機関、国際的な学術コミュニティーの皆様に、深甚なる感謝の意を表したいと思います。
最後に、国内外の一般の方々から様々な形でいただいた応援が、プロジェクトチームあるいは実施主体であるJAXAにとって、直接・間接にプロジェクト遂行の強力な推進剤になったというふうに考えております。成功に至る前から、あるいは困難に遭遇している中途から、これほど多大な社会的支持を得られつつ継続できたことは、JAXAとしても得難い経験だというふうに考えております。はやぶさ2を暖かく、ときには熱く見守っていただいた全ての皆様に感謝申し上げたいと思います。
以上で原局側からの御報告は終了させていただきます。御質問をお受けしたいと思います、よろしくお願いいたします。
【鈴木部会長代理】 ありがとうございました。
ただいまの御質問につきまして、御質問、御意見がございましたらお願いいたします。
山崎先生、お手が挙がっているようです、お願いいたします。
【山崎委員】 御説明ありがとうございます。
本当にフルサクセス、エクストラサクセスということで、すばらしい成果を本当にコミュニティーの力として上げてくださったことを誇らしく思います。
昨今の宇宙科学として、こうしたデータをどう利活用していくかという世界的な貢献の一つだと思うのですけれど、はやぶさ2の中でもキュレーション設備を充実するとともに、そうしたデータの充実というものも図られていらっしゃる、それは世界に比べて、さらにどのような位置づけになっているかを教えていただければと思います。
【津田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
はやぶさ2プロジェクトを遂行しながら、データは国際的に科学者がすぐアクセスできるように、誰でもアクセスできるように順次公開しているところです。
ただ、やはりどうしても、特に欧米のミッションに比べると、予算プロファイル上、フライトハードウェアに注がなければならない比率が大きくなるために、欧米と比べたら、やはり課題があるというのは、現状どのミッションもそういう状況だと思います。
それで、はやぶさ2の場合、非常に大きな成果を上げられたということと、拡張ミッション活動を認めていただいたということで、実はその拡張ミッションというのは、はやぶさ2の探査機そのものを宇宙で飛ばすということ以外に、キュレーションの拡充、これはOSIRIS-RExの共同も含めますが、それに加えて、もう一つ大きな柱として、データアーカイビングということを掲げさせていただいています。
これは、既にはやぶさ2が獲得した科学データをさらに見やすい形で、あるいは科学者がアクセスしやすい形で加工して、2次データ、3次データとして提供することで、もっとたくさん論文を書いていただこうというような活動です。
これも予算を認めていただいて、拡張ミッションの一部としてやらせていただいているところです。
【山崎委員】 承知いたしました。
そうしたデータの利活用も今後ますます大切になると思いますので、充実に期待しています。ありがとうございます。
【鈴木部会長代理】 ほかに御意見、御質問ございませんでしょうか。
笠原先生、お願いいたします。
【笠原委員】 名古屋大の笠原です。御説明本当にありがとうございます。
改めて今、國中所長と津田先生からの御説明を伺って、成果が、まさに人類史上、ないしは太陽系史上、非常に偉大な成果だと再認識しております。まさに歴史の証拠をつかまれて、それを広く科学的に証明されているわけであって、今日はノーベル化学賞の発表だと思いますが、ノーベル化学賞やノーベル物理学賞、ないしはまさにノーベル歴史学賞みたいなものがあれば、まさにそれにふさわしい成果だと強く感じて聞いておりました。
私が、逆にこういう成果を日本が先陣を切って、切り開いているということは、何とか諸外国の方にも深く理解していただきたいなというのは強く思うところでございまして、その辺りの、今、御説明いただいたような論文の数を、数多くの方に参加していただきながら公開するというのは、一つの、もちろん重要な活動だと思うのですが、そういう観点でも、何か戦略的な取組、諸外国の方々からこの成果をいかに位置づけていただくかということへの取組は、これはまさに成果を上げられた先生方に対して求めることではないような気もしておりまして、それを取り巻く我々大学ももちろん、文部科学省、要は政府の取組なのかもしれないですが、その辺りが非常に重要だというふうに感じております。
ちょっと質問でもコメントでもないような気がいたしますが、本当に重要な成果を上げていただきまして、かつ、これをどのような世界的な位置づけとして今後評価を受けるような戦略を練っていくのかというのが、非常に重要だと感じております。
以上でございます。
【鈴木部会長代理】 ありがとうございました。
ほかに御意見、御質問ございませんでしょうか。
(「なし」の声あり)
【鈴木部会長代理】 御審議ありがとうございました。
宇宙開発利用部会といたしましては、本日の資料に示されたプロジェクトの具体的成果、貢献などを認め、資料68-4の32ページにあるプロジェクトの自己評価及び33ページに示されている機構としての終了審査の結果に同意するということにいたしますが、よろしいでしょうか。御異議ある方がいらっしゃいましたら、手を挙げていただければと思いますが。
(「異議なし」の声あり)
【鈴木部会長代理】 御異議ないようですので、決定とさせていただきます。
本日の審議はこれで終了となります。
最後に、事務局から連絡事項がありましたらお願いいたします。
【木元補佐(事務局)】 会議資料と議事録の公開について申し上げます。
宇宙開発利用部会の運営規則に基づきまして、本日の会議資料は既に文部科学省のホームページに掲載させていただいております。
また、議事録についても公開となりますので、委員の皆様に御確認いただいた後、文部科学省のホームページに掲載させていただきますのでよろしくお願いいたします。
事務連絡としては以上になります。
【鈴木部会長代理】 ありがとうございました。
以上をもちまして閉会といたします。長時間にわたる御審議、誠にありがとうございました。
以上です。
【上田課長】 ありがとうございました。鈴木先生、皆様、どうもありがとうございました。
―― 了 ――
研究開発局宇宙開発利用課