令和4年12月20日(火曜日) 13時00分~15時30分
Web会議
部会長 村山 裕三
部会長代理 鈴木 桂子
臨時委員 井川 陽次郎
臨時委員 大西 卓哉
臨時委員 笠原 次郎
臨時委員 三枝 信子
臨時委員 芝井 広
臨時委員 白井 恭一
臨時委員 鈴木 健吾
臨時委員 髙橋 德行
臨時委員 吉田 和哉
臨時委員 米澤 千夏
研究開発局宇宙開発利用課課長 上田 光幸
研究開発局宇宙開発利用課宇宙連携協力推進室長 須藤 正幸
研究開発局宇宙開発利用課企画官 竹上 直也
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 横井 奈央
研究開発局宇宙開発利用課課長補佐 木元 健一
(説明者)
国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)
理事 布野 泰広
理事 國中 均
宇宙輸送技術部門イプシロンロケットプロジェクト プロジェクトマネージャ 井元 隆行
宇宙輸送技術部門H3ロケットプロジェクト プロジェクトマネージャ 岡田 匡史
宇宙科学研究所宇宙科学プログラムディレクタ/OMOTENASHI運用異常対策チーム長 佐藤 英一
宇宙科学研究所SLS搭載超小型探査機プロジェクトチーム長 橋本 樹明
第一宇宙技術部門技術試験衛星9号機プロジェクトチーム プロジェクトマネージャ 深津 敦
研究開発部門第一研究ユニット研究領域 主幹 新藤 浩之
国際宇宙探査センター宇宙探査システム技術ユニット長 佐藤 直樹
【村山部会長】 それでは始めさせていただきます。大体10分遅れになりました。今年の最後の第71回の宇宙開発利用部会を開催いたします。
本日も新型コロナウイルス感染防止のため、前回同様オンラインでの開催になっております。委員の皆様には御多忙のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
まずは、事務局のほうから本日の会議に関する事務連絡をお願いいたします。
【竹上企画官(事務局)】 事務局の竹上でございます。冒頭、システムトラブルで開始時間が約10分遅れましたこと、お詫び申し上げます。それでは事務連絡でございます。本日、宇宙開発利用部会の16名の委員のうち、現時点で11名ご出席いただいており、後ほど数名に追加出席いただく予定です。定足数要件を満たしておりますので、本日の会議は成立していることを報告いたします。次に、本日の資料ですが、議事次第のとおりでございますので御確認ください。また、オンライン状況について、音声がつながらない等の問題がございましたら、事務局へメール、電話等で御連絡いただければと思います。以上です。
【村山部会長】 ありがとうございます。
本日の議題ですが、全部で7件用意しております。最後の議題であるスターダストプログラムにより実施する文科省の戦略プロジェクトの新規案件候補については、運営規則第3条3号の定めにより非公開とさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
それでは議題に入らせていただきます。
最初の議題は、前回の第70回利用部会で書面審査を行いました「ISSを含む地球低軌道活動の在り方について」の提言についてです。
書面審査の結果を審議会運営規則に基づき、部会長である私から委員の皆様に御報告いたします。資料71-1-1を御覧ください。
資料に示すとおり、ISS小委員会提案の提言案に対し、19案の訂正案が事務局に提示され、これらを反映したものとして、今回、資料71-1-2の宇宙開発利用部会提言として取りまとめさせていただきました。
また、取りまとめた提言などを踏まえ、11月18日に永岡文部科学大臣から、ISSの2030年までの運用延長への日本政府としての参加を表明いただきましたので、併せて報告させていただきます。
私からの報告は以上であります。
それでは、次の議題に移らせていただきます。
二つ目の議題は、イプシロンロケット6号機打ち上げ失敗原因調査状況についてです。
先週16日金曜日にも調査安全小委員会が開催されましたが、本日は現在までの原因調査の進捗状況について報告いただきます。
それでは、JAXA布野理事及び井元プロジェクトマネージャから説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
【布野理事(JAXA)】 輸送系を担当しております、JAXAの布野でございます。
イプシロン6号機につきましては、10月12日の打ち上げ失敗後、直ちに山川理事長を長とする対策本部を設置し、原因究明を進めているところでございます。
原因調査状況につきましては、今、部会長から御紹介がありましたように、これまで5回にわたりまして、当宇宙開発利用部会の下に設置されました調査・安全小委員会にて報告させていただいているところでございまして、本日は、これまでの原因究明のまとめ、といたしまして、先週、調査・安全小委員会に御報告させていただいた内容について、井元プロジェクトマネージャより御報告させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 それでは、資料に基づきまして、JAXAの井元から御説明いたします。
右下のページ、次のページをお願いいたします。3ページです。
目次ということで、1項で全体概要を示しておりまして、2項で原因究明状況、3項が今後の進め方になります。
右下、4ページをお願いいたします。
打ち上げ失敗を受けまして、フライトデータに基づく事象の把握、それからフライトデータに基づく原因究明、それから製造・検査データに基づく原因究明、そして一部、追加実証をしておりまして、原因の特定、それから是正、水平展開を実施するというところで今現在のステータスを御報告いたします。
次のページをお願いいたします。
こちらが打ち上げのときに発生した事象でございまして、リフトオフから約388秒後に指令破壊に至ったというところでございます。説明は割愛いたします。
次のページをお願いいたします。
こちらは機体諸元になりますけれども、説明は割愛いたします。
次のページをお願いいたします。
こちらは姿勢制御装置を搭載しておりまして、今回「2段ガスジェット装置(2段RCS)」と書いているところが問題の発生したところですけれども、そちらにつきましては2段モーターの後方側に装着されているものでございます。
次のページをお願いします。
8ページになります。1段の姿勢制御は正常に行われまして、2段のTVC制御も正常でした。その後、RCSによる制御のみになった際に、3軸全ての姿勢誤差が拡大し続けまして、その結果、姿勢異常という形で指令破壊に至ったものでございます。
フライトデータの確認をしましたところ、2系統のRCSのうち1系統のパイロ弁の下流配管圧力の値が、パイロ弁に点火信号を送出した後にタンク圧力まで上昇しなかったというところで、RCSとして機能しなかったという結果でございます。
FTAを展開いたしまして、原因の可能性が否定できなかった3か所がございましたけれども、そのうち一つは原因でないと識別しておりまして、パイロ弁の開動作不良、それと推進薬供給配管の閉塞といった二つの要因に今絞っているという状況でございます。
次のページをお願いいたします。
9ページになります。こちらはRCS、2系統ありますうち、+Y軸側が機能しなかったもの、-Y軸側が正常に機能したものでございます。タンクの下流にパイロ弁がございまして、その下に下流配管圧力を計測しております。その下流に推薬弁とスラスタがついているものでございます。
次のページをお願いいたします。
こちらはパイロ弁の動作イメージを示しておりまして、イニシエータが二つ装着されております。その下にプライマチャンバアッセンブリ――PCAというものが装着されておりまして、その中にブースターという火薬があります。この火薬を作動させることによりましてラムという棒を押し下げまして、仕切り板を打ち抜いて推進薬を供給するという仕組みになってございます。後ほどこの用語が出てきますので、御記憶ください。
次のページをお願いいたします。
こちらはタンクにつきまして、試験機、それから2号機以降の強化型との違いを示しております。2号機から強化型ですけれども、ダイヤフラム方式に変更しておりまして、今回、ガスと推進薬を分断する硬いゴムのようなもので膜を作っておりますけれども、このダイヤフラムに閉塞が発生した可能性があるというものでございます。
次のページをお願いいたします。
こちらから原因究明状況ということで、これまでにフライトデータをはじめといたしまして製造検査データの確認をしてきておるところでございます。一部追加試験を実施しておりまして、詳細分析を進めているところでございます。
次のページをお願いいたします。
まず、パイロ弁の開動作不良に関しまして、FTAを展開いたしました。
まず、その上流側についております二つのイニシエータの作動不良につきましては全て良好であるということで、製造検査データを確認した結果、要因ではないと識別しております。
次のページをお願いいたします。
続きまして、プライマチャンバアッセンブリ――PCAの作動不良、こちらにつきましても良好であるということを確認しておりまして、要因ではないと判断しております。
最後に、バルブ本体につきまして、特にラムと仕切り板のところですけれども、一部製造の検査を確認しているところがございますので、現在まだバツがつけられてない状況です。それ以外の保管不良、それから取付け不良、フライトの振動といったようなところにつきましては、要因ではないと判断しております。
ということで、まだパイロ弁につきましては、完全には要因ではないということが言えていない状況でして、こちらはまだ要因として残るところがございます。
次のページをお願いいたします。
続いて、推進薬供給配管の閉塞になりますけれども、タンク出口ポートの閉塞、それから配管の閉塞、それからパイロ弁の中にあります推進薬配管の閉塞、こちらは全て要因を確認したところ、まだダイヤフラムによる閉塞のみ要因として潰し切れてないところがございまして、今、確認しているところでございます。
次のページをお願いいたします。
こちらはダイヤフラムによる閉塞ということで、ダイヤフラムが正常、それから異常というところに分解してFTAを展開しているところです。今後追加試験等を実施いたしまして、潰し込みをしていく予定でございます。
次のページをお願いいたします。
こちらから製造・検査データの確認結果を示しておりまして、フローを示しております。説明は時間の関係で割愛させていただきます。
18ページをお願いいたします。
こちらは推進薬タンクの製造フローを示しておりまして、特に重要な点のみ御説明いたします。
まず、右にタンク内部のイメージ図を示しておりまして、上のほうにガスポート、下のほうに液ポート、その真ん中辺りのところにダイヤフラムを固定する部分がございます。その外側を赤道リングと称しておりまして、内側に固定リングがあります。それを溶接して挟み込むというところで、溶接の詳細を左の下の小さい図に示しておりまして、溶接丸1、丸2、丸3がございます。丸1というのは、赤道リングと液側の半球の溶接部、丸3というのは、赤道リングとガス側半球の溶接部になりますけれども、今回特に重要なのが溶接丸2になりまして、シール部を押さえる溶接になります。この辺りのところを中心に今確認をしているところでございます。
次のページをお願いいたします。
こちらもタンク製造以降のフローを示しておりますので、説明は割愛させていただきます。
次のページをお願いいたします。
こちらから製造・検査データの確認結果を示しておりまして、まず、ダイヤフラムの単体の製造につきましては良好であるということを確認しております。
次のページをお願いいたします。
続いて、推薬タンクの製造の確認状況でございますけれども、ダイヤフラム固定リングの溶接部は検査記録を確認しているところで、その妥当性を確認しているところでございます。それからダイヤフラム組付部寸法も妥当性を確認しているところ、それからダイヤフラムの内部漏洩、上半球――ガス側半球を溶接する前の漏洩試験、漏洩点検、それから機能試験、それからまた漏洩試験、こちらについては良好である、それからガス側半球の溶接した後の耐圧試験、気密試験についても良好であるということを確認しております。それ以降のダイヤフラムの内部漏洩につきましては、妥当性を今確認しているところでございます。
次のページをお願いいたします。
こちらはタンク製造以降のRCSの本体に組み付けた後の耐圧試験、気密試験、こういったところも良好であります。あとダイヤフラムの内部漏洩につきましては妥当性を確認していると。それから機械環境試験、気密試験は良好でございます。
次のページをお願いいたします。
推進薬充填から輸送、それから推進薬タンクの圧力データ、こちらは全て良好であることを確認しております。
以上を基に、まだダイヤフラムに関しましては製造・検査データの妥当性を一部確認しているところがございます。
次のページをお願いいたします。
フライトデータといたしまして、+Y軸側、機能しなかった側の下流配管圧力の変動について御説明いたします。
まず152秒前後でパイロ弁の開信号が出ます。パイロ弁の開信号が出ますと、通常ではタンク圧力が1.9MPaA相当になり、下流配管圧力がそれと同圧になるというのが正常の動きになるのですけれども、150秒過ぎの辺りの時点で、その正常なタンク圧力まで上昇せずに、1ビット、1分解能だけ上昇しているというところが分かります。リフトオフから徐々に下がってきておりまして、パイロ弁開のタイミングで少し圧力が上昇します。それ以降、推薬弁1番が開きまして圧力が降下すると。それから推薬弁1と3が開くタイミングで真空圧力になるというところのデータを示しております。
次のページ以降が区間A、B、Cにつきまして詳細を示しております。
まず区間Aですけれども、リフトオフから約70秒の間に徐々に圧力が下がってきております。最初リフトオフのときには大気圧相当の0.1MPaAですけれども、外気圧力の低下、それから飛行中の振動の影響によりまして圧力が徐々に低下しているというところで良好な状況でございます。
続いて、次のページをお願いいたします。
今回一番着目しているところでございますけれども、151秒過ぎ、152秒前後のところで、パイロ弁の点火信号が1秒おきに出ます。その最初のタイミングで圧力が1分解能だけ上昇しているというデータがございます。こちらの評価につきましては後ほど御説明いたします。
次のページをお願いいたします。
Cの区間、推薬弁が開いて圧力が降下するところのデータになりますけれども、推薬弁1が開きまして圧力が降下すると。それから推薬弁1と3が開くリフトオフから257秒時点で真空圧力を示すというものであります。こちらは一部、それ以降、一定の圧力を示しているところがあり、原因については今検討中でございますけれども、それ以外の部分につきましては良好にデータが取れているというものでございます。
次のページをお願いいたします。
28ページになりますけれども、先ほどお示しいたしましたBの区間の1分解能上昇、こちらが実事象か実事象でないかといったところの検討をしてきておりましたところ、実事象であると判断いたしております。
その理由といたしましては、まず区間Aの圧力降下と区間Cの推薬弁開タイミングでの圧力降下は実事象を示しておるということで、圧力センサそのものは正常に動作していることを確認しております。
今回のこの1分解能の上昇が実事象でない場合は、電気的要因として以下の三つが考えられますけれども、いずれも本事象とは整合しないということで、この事象は実事象であると判断しております。
まず一つ目ですけれども、ノイズによる計測値のシフトということで、パイロ弁点火信号を送出したときに電気的なノイズが発生する可能性があります。この場合は、点火電流がなくなれば元に戻るという一過性のものでありまして、先ほどお示しいたしましたとおり、一定圧力が継続しているということで、この事象とは全く異なるものと判断しております。
それから、グランドの変動による計測値のシフトによりましても実事象でない可能性がありますけれども、この事象発生時にはグランドとしています機体との接続状態には全く変化がないこと、それから電気的にグランドが変動する操作はしていないというところで、本事象とも異なると判断しております。
最後に、デジタル変換閾値の近傍での計測値のシフトになりますけれども、アナログ信号でありますセンサ信号がデジタル変換閾値を少しでも超えればデジタル値は1分解能上昇して、それを下回れば下降するというようなものでありますけれども、つまりセンサ信号が閾値付近であればシフトする可能性はあります。一方で、先ほどAの区間で示しております圧力データは徐々に低下しているという状況から、この事象発生時点では閾値近傍ではないということを解析も含めて確認しておりまして、本事象とは異なるといったところで、1分解能上昇については実事象であると判断しております。
次のページをお願いいたします。
こういったフライトデータを基に、それから要因として消し込めていない、要因として残るものを基に故障シナリオを検討しております。
この故障シナリオについては二つに絞り込まれると考えておりまして、まずパイロ弁の開動作不良に関しましては、PCAという火薬は正常に作動すると判断しておりますので、PCAが正常に作動した後にラムが仕切り板を完全に打ち抜けずに、仕切り板に微小な隙間が発生してブースターの燃焼ガスまたは推進薬が僅かにパイロ弁下流に入り込んだというシナリオが考えられます。
それから、推進薬供給配管の閉塞に関しましては、ダイヤフラムが何らかの要因で液ポートに近接して、パイロ弁の開動作時にダイヤフラムが液ポートに引き込まれて閉塞すると。そして閉塞までの間に推進薬が僅かにパイロ弁に入り込んで1ビット上昇したというシナリオを考えております。
最後、30ページ、まとめになります。
6号機の原因究明に関しまして、絞り込みを行った結果、二つ目のところになりますけれども、パイロ弁のバルブ本体の作動不良もしくはダイヤフラムによる閉塞、この二つに今絞り込んだところでございます。フライトデータの下流配管圧力の1分解能上昇を基に二つの故障シナリオを推定しております。
今後の予定といたしまして、この二つの故障シナリオに対して発生可能性を見極めるための解析・試験を実施して、シナリオの確度を向上させて、後継ロケット等への対策を反映すると同時に、背後要因等の分析を行って、同様の事象が発生しないよう対策を講じることとしております。
説明につきましては以上になります。
【村山部会長】 どうもありがとうございました。
ただいまの説明について、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。挙手していただければ幸いです。
笠原委員、お願いいたします。
【笠原委員】 名古屋大の笠原と申します。御報告、本当にありがとうございます。
最後の「故障シナリオの発生の可能性を見極めるための解析・試験を実施し」というところは非常に重要だと感じております。一体どのような仕組み、メカニズムでこのようなことが起こったのか、ここを徹底的に解明することが、ここにも書かれてあるとおり、次のロケットの開発等に非常な重要な知見をもたらされるものだと私も信じております。
質問は、どのような解析・試験を今後実施して、そのような原因究明を徹底的に行うのか、その点に関しまして、もちろん秘密等はあるかとは思いますが、今お話しできる範囲で結構ですので、お知らせいただければと思います。
以上でございます。
【村山部会長】 いかがでしょうか。
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ダイヤフラムに関して御説明させていただきたいと思います。
まず、このダイヤフラムですが、こちらが何らかの要因で出口ポート近傍にある、そういう段階でパイロ弁が開になった後に引き込まれるというシナリオを考えているんですけれども、そもそもそういう閉塞モードがあるのかといったダイヤフラムによる閉塞確認試験を現在実施しているところでございます。そういう可能性があるかどうかといったところがまず一つ、一番重要なところだと考えています。
続きまして、赤道リングと固定リングの溶接のところにつきましては、一部テストピースによる確認というところになりますので、実際溶接をして、そのテストピースと実物を比べて、製造プロセスが妥当であるのかといったところを確認する試験、それから溶接によるシール部の熱影響、そういったところの確認試験を実施して、製造データの妥当性を検討する予定でございます。
【村山部会長】 今のお答えでいいでしょうか。
【笠原委員】 パイロ弁不作動のほうに関しましては、どのような方策をお考えなのでしょうか。
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 こちらは概要ですけれども、ラムと仕切り板の寸法のところで、先ほどお示ししたシナリオが発生するのかといった解析もしくは実証試験といったものを今検討しているところでございます。
【笠原委員】 ありがとうございます。非常に個人的な感想ですが、後者の可能性は高いと個人的には感じておりますので、そちらの解析・試験に当たりまして、手段を尽くして解析・試験等を実施していただきますよう強くお願いしたいと思います。どちらかというと私はそちらの後者のほうが原因の主たるものである可能性が極めて高いと感じていますので、内部解析の方法や過去の事例等、様々な手段があると思いますので、それを総動員して、ぜひとも解明のほうに手を尽くしていただきたいと強く思います。
以上です。よろしくお願いいたします。
【井元プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい。分かりました。
【村山部会長】 ありがとうございます。
ほかの方はいかがでしょうか。いいでしょうか。
(「なし」の声あり)
【村山部会長】 ほかはないようですので、それでは、次に進ませていただきます。
次の議題ですけれども、H3ロケットの開発状況についてです。
それでは、JAXAの布野理事及び岡田プロジェクトマネージャから説明をお願いいたします。
【布野理事(JAXA)】 JAXAの布野でございます。
H3ロケットに関しましては、本年の10月に当部会におきまして開発状況を御報告させていただいておりまして、その際、1号機に適用するLE-9エンジンの対応策の選定状況、それから22年度内の打ち上げを目指して開始しました認定試験の前半の試験結果等、それから今後の予定として1段実機型タンクステージ燃焼試験を始める等の報告をさせていただいたところでございます。
本日は、その後の取組といたしまして、認定試験の後半の試験結果、それから先月の6日から8日にかけまして実施いたしました1段実機型タンクステージ燃焼試験の結果及び先ほど御報告ありましたけれども、イプシロンロケット6号機の不具合究明状況を踏まえた水平展開の対応状況を御説明するとともに、今後の予定について岡田プロジェクトマネージャから御報告させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 JAXA H3プロジェクトチームの岡田でございます。音声聞こえておりますでしょうか。
【村山部会長】 大丈夫です。
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 それでは御説明させていただきます。種子島から失礼いたします。
お手元の資料、H3ロケットの開発状況について、でございます。
本日の御報告内容は、今、布野理事より御説明した次第でございまして、10月以降の進捗について述べさせていただきます。
2ページはこれまでの開発経緯を述べてございます。これは前回も御説明済みですので、お目通しいただきたいと思いますが、開発の前半、2020年にエンジンの課題が生じたところまでを経緯として載せてございます。
そして、3ページ、特に後半ですけれども、今年度に入りまして、そのエンジン、2回の延期をさせていただいた上でのエンジンのいろいろな対策試験を行った上で、認定試験、そしてまた1号機用の領収燃焼試験をやってまいったということを御説明しております。
順次その内容を御説明していきます。
まず、LE-9の認定試験ですけれども、前回は前半5回分まで御説明いたしました。そして、その5回の中で、比較的手戻りが発生しやすい作動範囲を振ったような試験を5回行った上で、1号機用の領収燃焼試験を行いました。後半4回は、一部2号機以降に使いますスロットリング燃焼の検証も含めまして計画をいたしまして、このタイプ1という1号機向けのエンジンの確性をいたしました。今回、その後ろの4回について御報告したいと思います。
5ページにまいりまして、合計9回の中の後半4回でございますけれども、おおむね日程に関しましても、試験の内容に関しましても、当初計画どおりに行いまして、データを取得いたしました。一番右側に備考欄がありまして、FTP、OTPは水素と酸素のターボポンプですけれども、それぞれの入り口の圧力を試験の最後のフェーズで下げながらデータを取るということで、停止秒時は、ある圧力になったら止めるということなのでまちまちではあるものの、全て計画どおりに試験を行っております。
6ページが得られたデータを、横軸にエンジン混合比、縦軸に推力をのせたプロットでございます。赤点線の部分が認定範囲で抑えるべき範囲、その外側まで含めまして、このエンジンの顔を知るべきデータをここで取ってまいりました。
そして、その結果、7ページに載せてございますが、これは横軸が時間、縦軸がエンジンの総燃焼秒時です。ここで御説明したいのは、2020年のちょうどこの4月、5月辺りから、なかなかこの累積秒時が伸びないでいたところだったんですけれども、そして2021年の4月辺りから技術データ取得であるとか翼振動の試験を燃焼試験で行いまして、見極めがようやくつけられた2022年の4月辺りから急速にこの累積燃焼秒時を稼いできております。これはすなわちエンジン試験によって、このエンジンのシステムが徐々に確性されてきている、それが成熟しつつあったということを、この時間軸を通しまして見ていただける部分かなと思っております。
そのようにして、まず1号機向けのエンジンの認定を行った上で、1段の実機型タンクステージ燃焼試験を行いました。これは今年の11月に行ったのですけれども、主な目的は、第1段の推進系の機能・性能を確認すること。これはロケットの本体に、実際にフライトさせるためのエンジン2基を装着して、発射台の上で燃焼させますので、まずロケットとしてはトータルの機能・性能が確認できるということと、まさにこれは機体と設備を一体化させて、全てのものを動作させての試験ですので、システム・オブ・システムズというロケットの総合システムレベルでの確認をすることを目的としておりました。実施日時は11月6日から8日で、実際エンジン燃焼試験そのものは7日の16時30分に行ってございます。
9ページには、推進系統システムの概要をお示ししておりますが、第1段の推進系は、下にLE-9エンジンが2基ついておりますけれども、上にあります液体酸素の燃料タンク、そして下にあります液体水素の燃料タンクから、この中塗りの矢印のようにエンジンに推進剤が供給されましてエンジンが燃焼します。エンジンが燃焼しますとタンクの圧力が徐々に低下しますので、それを補うようにエンジンから加圧のガスを供給する、この点線の部分ですが、こういったシステム全体を作動させることになります。また併せて、一番下にございますように、推力の方向制御機能、我々はTVCと言っておりますけれども、その機能を発射台上で動作させることによってエンジンの首振り動作を確認するということも含めて行いました。
10ページは、先ほど申し上げました総合システムの概念です。一つは地上施設設備、これはロケットの発射までをつかさどる設備、そしてロケット本体、また3番に安全管理ということで、ロケットの打ち上げ時と飛行中の安全を確保するためのシステム、これらを一体として検証を行いました。
11ページはCFTの実際の姿ですけれども、このように発射台の上にロケット本体が搭載されています。これは試験機1号機ですが、外見上は固体ロケットブースターを取り外した上での試験をしております。また、発射台とロケットは固定しておりまして、安全を確保した上での試験を行っているというものでございます。
12ページは、最初に大型ロケットの組立棟から機体を移動させるところの状況でございます。
そして13ページ、ここで動画をお示ししたいと思いますが、これは燃焼試験の状況を含めた動画でございます。
機体が発射台区画に向かっておりまして、これが今、発射台に据え付けられた状態です。燃焼試験が始まります。
燃焼試験の時間は25秒でございました。
音声が届いていないと思います。申し訳ございません。
発射台の上でロケットを燃焼させるというのは、こういった試験以外ではあり得ませんので、このように安全に配慮しながら順調に進めてまいりました。
14ページにまいりまして、結果を御説明いたします。
まず、データそのものは、必要なデータは取得できたと思っています。これは準備の機能、そしてカウントダウンの機能、それから飛行中の機能、それぞれに分けまして、それぞれに必要な評価をするためのデータです。計測データ以外にも、実際にその接続ができるか、燃料がきちんと充填できるか、それからカウントダウンの中では、エンジンの燃焼に至るまでのカウントダウンが適切にできるか、そして飛行中ということでありますと、エンジンを燃焼状態で、先ほど御説明した推進系統の機能が動作するか、振動環境、音響環境がどうであるか、また追尾局との通信は正常にできるか、こういったことを確認いたしまして、それらのデータを時間をかけて詳細に評価いたしました結果、初期の目標を達成したと判断いたしまして、このCFTは1回で完了することができました。現在、CFTで抽出された改善事項、これから御説明しますような改善事項について、順次反映しているところです。
15ページには、その改善事項を載せてございますけれども、大小様々な改善・反映事項が抽出できまして、比較的大きなものを三つ述べさせていただいております。補足図が16ページ、17ページにございますけれども、時々そこに飛びながら御説明します。
まず、1番といたしまして、1段の液体酸素の加圧配管の接手部の漏洩が試験後に確認されました。これは燃料の充填時にタンクが収縮しまして、その周りにあります加圧配管も変形すると。それに伴いまして接手部、そしてシールが変形して、試験後の常温復帰時にこのシールの隙間から漏洩が起きたというものでございます。
前後いたしますけれども、16ページの真ん中、ロケットのサイドから見た図の、分かりづらいですが右半分が今御説明したものの内容で、細いこの1段の液体酸素の加圧配管のことでございまして、右側にクローズアップの写真を載せてございますけれども、こういった接手部分からの漏洩が確認されました。
これにつきましては、接手を設計変更した上で一部の配管を交換、あるいはボルトの締めつけなどの手順を見直すことで対応しております。
それから、2番目が、1段の液体酸素のタンクの上部のドーム部、ここにリリーフバルブという安全弁がついておりますが、この振動環境の条件が超過したものでございます。これは加圧とか排気時にガスが配管を流れるときに、そのタンクドームそのものが振動しまして、リリーフバルブは比較的軽量なものですから、設計上の環境条件をそれで超過したものと考えております。
リリーフバルブというのは、この左側で説明してございますけれども、真ん中に1段機体とありまして、ロケットを実際に組み立てておるところの写真の上の液体酸素のドームの頂部、一番上に拡大図を載せてございますが、この上に乗せてあるバルブです。左側には得られた環境などに基づく振動のイメージを載せてございますけれども、当初この青点線であったところを、想定される環境条件がこの赤実線であるということから、今から御説明するような手を打っております。
環境条件を再評価しまして、このCFTで得られた結果を踏まえまして、フライト時に想定される環境下でのバルブの単体の振動試験を行いまして、実際にこれがもつことを確認するということで考えてございます。
それから最後、3番目ですけれども、2段の機器搭載部等における振動環境条件の規定の超過で、2番と少し似ている話ですけれども、燃焼試験時には煙道の出口から音響が伝わります。それにより2段の搭載部が加振されて、当初環境条件として規定していたものを超過したと。
まず17ページで状況を御説明しますが、一番左側が燃焼試験の状態で、この白く水の波紋のような状態で音が伝わってまいりまして、ロケットの真ん中の搭載部を振動させたというものです。実際に、一番右には丸1として青点線で当初の環境条件の規定、そして丸2が得られたデータにほぼ近い、そういったものの環境を赤で載せてございます。そして今回は、この赤と青を包絡するような薄い黄色で今回認定試験を行ったものでございます。
15ページに戻りまして、繰り返しになりますが、環境条件を見直して耐性を評価すると。一通り評価した上で、詳細な評価が必要とされた慣性センサにつきましては、今申し上げたような追加の認定試験によって検証を行いました。
これらがCFTから得られた改善事項でございます。
18ページには、少しお話が変わって、イプシロンロケット6号機の原因究明からの水平展開についてでございます。
6号機の原因究明を進めている中で、原因の箇所特定、要因の絞り込みが進んでおりますが、可能性が残るとされた要因のうち、第2段ガスジェット装置のパイロ弁については、イプシロンロケットとH3ロケット、製品としては異なるものの、製造元と作動原理が同じということで、懸念を排除できない可能性があります。
これを踏まえまして、製造元と作動原理が異なって十分な実績があるH-ⅡAロケットのパイロ弁に交換することを判断し、急遽設計変更を行いまして、最終的な試験としては、この右下にございますような音響試験で機械的環境への耐性まで確認して設計変更を完了いたしました。これらの内容につきましては、宇宙開発利用部会の調査・安全小委員会にて確認をいただいております。並行して、これは試験のための準備でしたので、1号機のパイロ弁の交換を実際に行い、完了しております。それは工場で行っておりますので、今後カートリッジに推進薬を充填して、射場にて完成体としてH3ロケットに取り付ける予定でございます。
以上によりまして、打ち上げ日の設定に課題はない状況でございます。
最後、まとめに入らせていただきますけれども、今、御説明いたしましたように、試験機1号機に向けて、CFTで抽出された改善事項を反映しているところです。これは機体、そして設備にわたります。反映の見通しは立っておりまして、1号機に向けた開発はおおむね完了した状況と言えると考えております。このため、引き続き必要な検証を入念に行った上で打ち上げ準備作業に以降する予定でございます。
今後、当面の主な予定は、1例でございますけれども、まず機体の仕様をCFTの形態から打ち上げの形態に変更するということで、代表的なものは、固体ロケットブースター(SRB-3)の取付けです。そして、それが終わりますと、推進系、電気系等の総合的な点検に入っていくということで、打ち上げ時期につきましては、上述の開発状況を踏まえるとともに、関係機関等と調整次第、設定する予定でございます。
20ページから22ページまでは参考でございますので、お読み取りいただきたいと思います。
以上です。
【村山部会長】 どうもありがとうございます。
ただいまの御説明について、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。
先ほどのイプシロンロケットとの関連部分もありますけれども、その辺りも含めていかがでしょうか。
米澤委員、手が挙がっております。お願いいたします。
【米澤委員】 どうもありがとうございます。米澤です。
大変丁寧に説明していただいて納得したところですけれども、最後のところで、打ち上げ日設定に課題がないと表現されていまして、これはいろいろ調整の上、今年度の打ち上げを目指されると理解してもよいのでしょうか。
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 19ページで御説明いたしますが、ここにございますように、1号機に向けた開発はおおむね完了した状況であります。もちろんまだ並行して入念に検証を行う部分はありますけれども、課題はないと考えておりまして、したがいまして2022年度内の打ち上げを目指したいと考えています。
【米澤委員】 ありがとうございます。
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
【村山部会長】 ほか、いかがでしょうか。
芝井委員、お手が挙がっております。お願いします。
【芝井委員】 芝井です。私は専門ではないので確認させていただきたいのですが、SRBをつけずに試験をしておられるんですが、そのことによる音響レベルの判断には、あるのとないので影響はないのでしょうか。
以上です。
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 おっしゃられること、理解いたしました。
この発射台での燃焼試験は、主には1段の液体推進系の燃焼としまして機能を確認する、その上で音響データなども取得してということで先ほど御説明しました。ここに固体ロケットブースターが入りますと、確かに先生おっしゃるとおり環境条件は少し変わってくるのですけれども、それにつきましては別途の固体ロケットブースターの燃焼がどのぐらいの振動なり音響を発するかというのはデータが取れておりますので、それと重ね合わせることによりまして、飛行環境条件を予測することを考えております。これは従来のロケットの開発の中で我々が培ってきた手法でございます。
【芝井委員】 了解いたしました。
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございます。
【村山部会長】 ほかの方はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
(「なし」の声あり)
【村山部会長】 それでは、ほかの議題もありますので、次の議題に移らせていただきます。
岡田プロジェクトマネージャ、どうもありがとうございました。
【岡田プロジェクトマネージャ(JAXA)】 ありがとうございました。失礼いたします。
【村山部会長】 三つ目の議題は、超小型探査機OMOTENASHIの打ち上げ結果についてです。
それでは、JAXA宇宙科学研究所の國中所長、佐藤プログラムディレクタ及び橋本チームリーダーから説明をお願いいたします。
【國中所長(JAXA)】 宇宙研から報告させていただきます。
先月、11月16日にアメリカの新型ロケット Artemis Iの打ち上げが履行されまして、そこにJAXAからOMOTENASHIとEQUULEUSという2基の超小型キューブサット6U、約13kgの探査機を打ち上げました。EQUULEUSのほうは現在順調に運用中でありますが、OMOTENASHIにつきましては、当初の目標である月着陸を断念するという事態になりました。すぐさま宇宙研としましてはOMOTENASHI運用異常対策チームを起こしまして、原因究明を図ってまいったものです。本日は、その内容について御報告させていただきたいと思っております。御心配をおかけして大変申し訳ありません。
それでは、運用異常対策チーム長の佐藤から報告させていただきます。
【佐藤プログラムディレクタ(JAXA)】 それでは、佐藤から報告させていただきます。今御紹介ありましたとおり、OMOTENASHIの運用異常対策チーム長を務めております。OMOTENASHIの概要と状況については、OMOTENASHIのプロジェクトチーム長の橋本より説明をいたします。
次のページをお願いします。
最初に、OMOTENASHIの概要、それから打ち上げ後の運用異常の状況について、プロジェクトチーム長の橋本から説明をさせていただき、それのデータに基づいた異常発生の要因分析をプロジェクトとは独立した対策チームから佐藤が説明させていただきます。
それでは、橋本先生、よろしくお願いします。
【橋本チームリーダー(JAXA)】 それでは、まずプロジェクト開始の経緯から御説明いたします。
このプロジェクトは2015年8月に、NASAよりSLSの初号機の相乗りキューブサットのミッションについて提案要請がありました。それを受けて、JAXAからは複数の提案を行ったところ、OMOTENASHIとEQUULEUSが選定されました。これを受けまして、JAXAでは宇宙科学研究所内に部門内プロジェクトとして両探査機を開発するプロジェクトを発足いたしました。なお、当時の打ち上げ時期は2018年秋とされていましたので、非常に短期間での開発が必要でした。
次のページをお願いします。
OMOTENASHIのミッションは以下の二つでございます。
一つは、このキューブサットクラスという超小型の探査機で月面に着陸する技術を開発して、この技術が大学や産業界が探査に参加する際の敷居を下げることにつながると考えております。
もう一つは、地球磁気圏外の放射線環境を測定して、今後の有人探査のための情報とすることを考えておりました。
探査機の開発は、超小型ということ、それから低コスト、短期間で開発する必要があるといったことから、以下のような開発方針としました。
搭載機器は全て単系、いわゆる冗長系を持っていない。それから機器の要求仕様も必要以上にはマージンを持たずに最低限とする。それから開発項目をできるだけ減らすために既製品の調達を考えていく。それから宇宙用の部品が必ずしもないというものもありますので、地上で試験をして問題がないことが分かれば、それらを使用していく。また開発の方法はJAXAの若手技術者を中心として人材育成機会とするということも考えました。
次のページをお願いします。
探査機の構成はこの図のようになっておりまして、本日お話しするガスジェット推進装置というのが、この薄い紫色で囲まれた2式が搭載されていて、この赤い丸の部分がスラスタのノズルになります。
次をお願いします。
これが本来予定していたミッションシーケンスです。SLSロケットから分離されると、自動的にこの太陽電池面を太陽の方向に向ける、その後、翌日にガスジェット推進装置を使って月に向かう軌道に入れて、着陸の直前に固体ロケットを点火して着陸するということを考えておりました。
次のページをお願いします。
そういう予定でしたけれども、分離直後からNASAのディープスペースネットワークという地上局でOMOTENASHIの電波の受信を開始しましたが、しばらくテレメトリがロックしないという状態が続きました。探査機の送信電力をハイパワーにしてテレメトリをロックさせたところ、まず太陽電池面が太陽とほぼ反対方向を向いていて、それから毎秒約80度の速度で回転していたと、そういう状況でした。
次のページお願いします。
当初予定していた、この自動のシーケンスというのは、探査機の電源がオンになると搭載計算機が起動して姿勢制御装置がオンになって、探査機の回転がある程度ある場合には、この分岐の「No」のほうに行きまして、ガスジェット推進装置をオンしてレートダンプ制御というのを起動して回転を抑えるということをします。そして、ある許容値以下になったらば、姿勢制御装置のほうに制御を戻して、太陽方向に向けるという制御が動くことになっていましたが、テレメトリの情報を見ると、レートダンプ制御は終了しているにもかかわらず太陽捕捉制御は完了していないという状況でした。
次をお願いします。
そのときの状況のテレメトリ画面がこの画面ですけれども、今お話ししたような状況になっていたということです。
次をお願いします。
このテレメトリ画面だけを見ていても何が起こったかよく分からなかったわけですけれども、その後、NASAのDSN局から受信レベルのデータをもらいました。それを解析すると、かなり状況が分かってきました。
これが振幅のデータですけれども、最初の頃の部分の拡大図が次のページにありますので、次をお願いします。
このデータから見ますと、この受信レベルが変動しているというのは、姿勢が動いていて、アンテナの地球に対する向きが変わっているから、このように変動しております。これを見て分かることは、この緑の帯の部分、この辺で自動レートダンプ制御が恐らくここで行われていて、回転数が一度収まったのではないかと。ロケットから分離したときの外乱の回転は収まったのではないかと推測できます。そして、この赤の部分、ここの部分で、だんだんこの振動の周期が短くなってきていますが、これは回転がどんどん加速しているということです。ですので、この後、なぜ約5分間程度で、このように回転が加速していったかということをトップ事象として異常事象検討チームのほうで検討いただいております。
【佐藤プログラムディレクタ(JAXA)】 このようなチーム側からの探査機の状況のデータ分析をしてもらったので、それを受けて、なぜこのような状況になったのかの要因分析というのを独立した検討チームの中で行ってきております。
その次のページ、FTA――Fault Tree Analysis、故障の木分析を行ったわけですけれども、まずここで識別したトップ事象、何が一番問題だったかというのは、約5分間で、ほぼ回転ゼロから80度/秒の速度まで徐々に回転が加速していったと。それがなぜかというのを分析いたしました。
その要因として、次の右側の欄に書いていますが、レートダンプ制御ロジックの問題だったのか、あるいは姿勢の測定・推定精度が間違っていたのではないか、あるいは外乱が入ったのではないかというようなことがありますが、上の二つはデータから見てあり得ないということで却下しております。
その外乱が入ったという外乱の要因としまして、最初に外部要因、ロケットからの分離外乱とか他の探査機との衝突ということもなかったと。徐々にスピードアップしたということは説明できません。それからエアバッグ用にCO2のガスボンベを積んでおりますが、それのリークだと考えても、それではこれだけの運動量を出すことはできないということで、ガスジェットスラスタからの異常であっただろうと考えられます。
そこで、次のページをお願いします。
次に、このガスジェットスラスタが異常を起こしたということで、それを起こした原因は何が考えられるかという次のステップのFTAを展開いたしました。
そこで考えられる要因としましては、最初に自動的に動作したレートダンプ中に推力が異常だったのではないか、あるいは放射線の影響による誤動作じゃないかということも考えられますが、それら二つについてはないということで却下することができます。
残り考えられるのは、推進薬のリークによって力が発生したということです。それがどこからリークして、どう発生したかということを次に考えたわけですけれども、推進薬の充填口から漏れたのではないかということ。これはきちんとボルトとテープで封止している上、それが探査機の内側を向いているため、大きな外力は出さないだろうということ。次、タンクが破損したとしても、タンクの圧力温度は正常であったと確認できています。残るのは、スラスタバルブからリークしたのだろうということですけれども、通常の運用のように、ガスが噴出したのではないかと考えますと、それではこのスラスタの推力としてこれだけ5分間で80度/秒という速度には達しないということで、残り一つ考えるのが、スラスタバルブから推進薬が液体状態でリークしたのではないかということが考えられて、それが起きたとすると、一応説明がつくというところまでは突き止めました。
次のページをお願いします。
これが、何でガス推進系から液体推進薬がリークしたかということの背景要因になりますけれども、ここにその推進系の図が描いてありますけれども、一番左側のタンクに液体推進薬が気液平衡状態で充填されておりまして、それから真ん中のプレナムというガスためにガス状態でためて、それを噴射する構造になっております。そこに内部バルブがあるわけですけれども、その特性上、この内部バルブのリークによって液体推進薬がガスために移動することがあり得るということは準備段階で把握しておりましたが、これが実施可能なレベルと判断して、それに対応するようなロジックも組んで開発を進めてきてまいりました。打ち上げ前には、このプレナムに液体推進薬が入っていることも認識していたことになります。
次のページをお願いします。
以上を踏まえた、故障のシナリオの推定になります。
まず1番目、ロケットからの分離時に、ある程度の大きさの外乱が発生して、2番目に、自動のレートダンプ処理によりガスジェットスラスタが噴射してダンプをしたということです。そして、角運動量が低減してレートダンプ制御が修了し、スラスタの電源がオフになったというところが確認できております。
5番目がポイントですが、電源がオフ状態では閉止するはずだったガスジェットスラスタのバルブのどれかが十分に閉止しなかったのであろうということが推定されます。そのバルブからプレナム部にたまっていた液体推進薬がリークして、機体の回転を発生させたということではないかというシナリオが推定されます。
次のページをお願いします。
次に、なぜスラスタバルブのどれかが閉止しなかったか要因の推定になりますけれども、これに関しては、スラスタシステム自体がシステムとして調達したものであって、その内部構造について、基本的に我々は情報を得ておりませんので、これは一般的な推察になることを最初に申し添えます。
最初に言えることは、地上での試験や準備段階においては、スラスタバルブが閉止しないという事象は発生しておりませんでした。なぜ軌道上で初めてこのようなことが起きたか想像するに、一つは、推薬充填から探査機打ち上げ・分離まで3年以上待機時間があったわけで、その間におけるバルブシール特性が劣化したのではないかとか、あるいはプレナムにコンタミネーションが入っていたのではないかとか、そのようなことが推察されます。
現在、入手可能なデータからは、これ以上の原因究明は困難でありますが、今後、探査機が復帰した場合には、バルブが閉止しないような、するかもしれないという事情も考慮して復帰運用の対策検討をきちんとしていきたいと考えております。
原因究明は以上になります。
では、次のページ、本件を通したレッスンズラーンドとしまして以下を我々は強く認識しております。
このガスジェット推進装置については、JAXA単独にて推力試験等を実施して健全性を確認していました。しかしながら、このような新しい開発、新規採用の機器について、製造メーカとさらに十分なコミュニケーションが必要ではなかったかと考えております。
ただ、このような超小型の衛星の機器は、ある程度、ブラックボックスで使用することは必須ではありますけれども、そこに一定のリスクがあることをよく認識した上で、メーカと十分な調整が行えるような調達をしていくのが大事であろうと考えております。
このような機器、特に超小型探査用の機器はまだ黎明期にあって、根幹となるキー機器については入手性の向上を検討していくことが大切であろうと考えております。
また、相乗りのためには、このような想定以上の長期間の待機が要求されることが起こり得るので、そのようなことも考えて十分に評価をしていく必要があるのではないかと考えています。
また、水平展開としましては、まずこの推進装置は、現在JAXAプロジェクトにおいてはこれを使用しているものはございません。今後については、こういう問題があるというのはレッスンズラーンとして共有したいと思いますし、推進系についてこういう問題があるということは、超小型探査機のコミュニティ内でも十分対話をしていきたいと考えております。
【橋本チームリーダー(JAXA)】 それでは、今後の運用のことについて。
残念ながら月をフライバイするまでに探査機の電源が復旧しませんでしたので、月着陸は断念いたしました。しかし、着陸に必要な要素技術の実験や、また、もう一つのミッションである放射線計測は今後も実施可能と考えておりますので、復旧運用に向けていきたいと思っています。異常事象発生時の姿勢が維持されているとすれば、来年1月中旬ぐらいから太陽電池に光が当たり始め、探査機起動に十分な電力はもうちょっと先になりますが、4月中旬には発生電力は最大になると予想されますので、この辺りに復旧運用を開始したいと考えております。
【佐藤プログラムディレクタ(JAXA)】 最後のページをお願いします。
最後になりますけれども、今回はこのようなOMOTENASHIに関して異常事象を発生させてしまいまして、皆様の御期待に応えることできず、大変残念に思うとともに強くおわびを申し上げる次第です。
これから復旧の可能性及び実験ができる可能性が残っておりますので、当面は復旧に向けた準備に取り組んでいきたいと思っております。
このようなキューブサットのような超小型宇宙機は、非常に大きなリスクは伴うものの、低コスト・高頻度で非常に挑戦的なミッションを行える可能性があり、重要なものと考えております。宇宙研にとっても、このようなキューブサットを用いた超小型探査機による深宇宙での取組は始まったばかりでありますけれども、今後もこれをレッスンズラーンドとして、より一層確実な開発ができるように努めてまいりたいと存じます。
以上になります。
【村山部会長】 どうもありがとうございました。非常に残念な結果になったわけですけれども、この件につきまして、御意見、御質問があればお願いいたします。
まず、白井委員のほうからお願いいたします。
【白井委員】 一つ確認したい点があります。
今回の設計として、キューブサット6Uということでいろいろ制約があって、冗長系を持たない、それからマージンもミニマムにするという御説明がありました。ただ、今回の事象が起きた原因としては、仮に冗長設計を採用していたとしても、そこは同じだった、つまり、冗長設計を持たないということとの因果関係はないと理解したのですけれども、その理解で正しいでしょうか。
【橋本チームリーダー(JAXA)】 冗長をどこまで取るかにも依存しますが、例えば推進系を完全に冗長にして、今2式ですけれども、例えば4式搭載するようなことにして、またガスの漏れ等を検知したら、その上流にも弁をつけるような構成にしておけばできたかなとは思っていますけれども、おっしゃるとおり、我々が装置として複数持っていても、この開故障に対しては防止できませんので、そういう開故障を防止する冗長系になっている装置を調達することができれば、こういうことは起こらなかったかなとは思います。
【白井委員】 ありがとうございました。よく分かりました。
【村山部会長】 ありがとうございます。
続きまして、鈴木健吾委員、お願いいたします。
【鈴木健吾委員】 鈴木健吾でございます。
質問としましては、P20で言及しているメーカとのコミュニケーションが必要ということで、P18のバルブの不具合に関して、メーカからのコメントなどももらって行った記載なのかなと推測しますが、どういうコミュニケーションを取られて、どういうフィードバックがあったか、もしくはなかったかを教えていただければと思います。
【橋本チームリーダー(JAXA)】 まず、調達時というか、地上にあるときのコミュニケーションとしては、この製品仕様として、電源がオフのときは全てのバルブはオフであると、そういう前提でしたので、我々もそういう前提で設計なり試験等をしていました。また、試験中も注意深く本当に漏れがないかどうかずっと見ておりましたが、特にそういうことはなかったので、製品仕様どおりであると考えておりました。メーカ側も、当然ながらそういう設計ですので、こういうことが起こることは考えていないようであります。
この事象が起こった後も、こちらでFTAをやっているのと並行して、メーカにもこういうことが起こっているんだけどということは聞いて、今もまだコミュニケーション中です。
【鈴木健吾委員】 こういう事象が起こってからどういうコメントがあったか、具体的におっしゃっていただけるところがあればということで質問させていただきましたがご回答にあるようなコミュニケーションを継続していただくことは必要だということ私も思います。そういったコミュニケーションが適切に取ることができる関係なのか、そうではないのかということを示す一つの事例かと思って伺いました。
【橋本チームリーダー(JAXA)】 キューブサットの場合、共同開発というよりは製品を調達するというような立場でメーカとお話しする状況でしたので、どちらかというと、こういう仕様になっているけれども本当に大丈夫かというところまでは突っ込んでコミュニケーションしていなかったわけですが、世界的に見ても、こういうところは非常に先端の技術だと思いますので、今から考えると、調達するという立場ではありますが、もうちょっとメーカと踏み込んで議論してもよかったかなと考えております。
【鈴木健吾委員】 ありがとうございます。
【佐藤プログラムディレクタ(JAXA)】 佐藤から追加させていただきます。
このような機器は、ある程度小さなものをブラックボックスの状態で安価に購入して使いこなしていくというのがこういう超小型の世界では必要とされて、そこは通常の大型の衛星とは違う調達の仕方をしなきゃいけないところだと認識しております。
ただその上で、ある程度それでも共同開発なりコミュニケーションしていかなきゃいけないわけですけれども、そのコミュニケーションができるというところをある程度強くした調達をしていくということは、それはそれでまた一つ調達のときのコストアップにもつながりますので、うまいバランスを取っていくのが必要ではないかと今考えていて、そこら辺が大事なレッスンズラーンドではないかと考えております。
【鈴木健吾委員】 分かりました。そうですね、責任を全て追及できる立場にないということも理解できますが、コミュニケーションの中で最大のパフォーマンスを実現していくことも可能かと思うので、引き続きよろしくお願いします。
以上です。
【村山部会長】 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
笠原委員、お願いいたします。
【笠原委員】 名古屋大の笠原です。どうも御説明ありがとうございます。
何点か技術的な質問をさせていただきたいと思います。
まずは、80度/秒で最終的に回転している状況で、太陽電池の発電ができない状況だと理解したんですけれども、すみません、80度/秒で回っているといっても、時には太陽のほうを向いたり、時には太陽の反対の方向を向いたりと、回転軸の方向によっては太陽の放射を受ける時間帯もあるかと思いますが、それは発電するには十分な太陽照射量を得られなかったということでしょうか。
【橋本チームリーダー(JAXA)】 そこは残念ながら、145度というほとんど反対を向いてしまっていたので、回転している間、全く太陽光は当たっていないと考えています。
【笠原委員】 なるほど、軸自体が太陽から見てほとんど反対と。そこは運が悪かったと。
【橋本チームリーダー(JAXA)】 そうですね、はい。
【笠原委員】 あと、先ほどから漏れの問題ということですが、どうしてもそういう話は、推進薬とシール部分の材料の適合性がちゃんとしていたのかが気になるところでして、その観点はどうだったのかということと、先ほどの議論から、事前の作動試験や噴射試験などがどの程度行われて、そういう機能の確認が行われていたのか、非常に短い期間での開発ということは十分御説明いただいているところですが、その辺りのことを御説明いただいてもよろしいでしょうか。
【橋本チームリーダー(JAXA)】 もちろんメーカとしては、このシール部については十分、少なくとも数年以上はもつようには考えていたようです。
それから、こちらの試験としましては、非常にスケジュールが厳しかったこともありますが、この後、このガスジェット装置を使って精密に軌道制御していく必要がありましたので、その推力の測定、それはいろいろな温度条件を変えながら、またパルスの長さを変えながら、必要な試験は一通りしたところです。ただし、耐久試験のようなものをする時間はなかったというところです。
【笠原委員】 承知いたしました。非常にチャレンジングな実験だと思いますので、今後も引き続きレッスンズラーンドをベースに、より広く研究展開していただきたいと強く思います。
以上でございます。
【佐藤プログラムディレクタ(JAXA)】 もう一つ追加させていただきますと、この推進薬は蒸気圧の高いフロン系の液体ですので、化学反応を使う推進薬と違って反応性はもともと非常に低いものを使ってございます。
【笠原委員】 ありがとうございます。ということは、そんなに漏れるリスクはそれなりに低かったという理解でよろしいでしょうか。
【橋本チームリーダー(JAXA)】 はい。そのように我々も考えておりましたし、メーカ側も今でも考えているようではあります。
【笠原委員】 今後のためには、もう少し深い解析をぜひお願いしたいところでございます。漏れの原因をぜひ理解させていただきたいと思います。
以上です。
【村山部会長】 ありがとうございます。ほかの方はいかがでしょうか。本件はこれでいいでしょうか。
(「なし」の声あり)
【村山部会長】 それでは、本件はこれで御報告を終わります。どうもありがとうございました。
【佐藤プログラムディレクタ(JAXA)】 どうもありがとうございました。
【村山部会長】 そしたら次の議題に移らせていただきます。
五つ目の議題は、令和4年度第二次補正予算における文部科学省宇宙関係予算についてです。事務局より説明をいただきます。
上田課長、よろしくお願いいたします。
【上田課長】 宇開課長、上田でございます。令和4年度補正予算につきまして、資料に基づいて御説明さし上げます。
11月に補正予算が閣議決定されまして、国会で御審議の上、12月2日に成立しております。639億円ということで、これは全額JAXAに対する予算ということになってございます。私どもとしては、必要な活動に伴う必要な補正予算をしっかり説明させていただいて、確保できたのではないかと考えておるところでございます。補正予算そのものは年度によって比較するようなものではないのかもしれませんが、昨年686億円ということで、同じ600億円台が確保できていると感じております。
下のほうに三つ程分類して御説明できるようにしてあります。ロケット関係、衛星関係、そして火星・アルテミス関係でございます。
2枚目、3枚目に補足説明として主なプロジェクトについての定性的な説明が添付されていますが、今日はそこの説明よりもこの1枚で御説明さし上げたいと思います。
まずロケットの部分です。H3ロケットに119億円が確保されました。
H3ロケットは、9月の概算要求時点では皆様に御説明したとおり事項要求でございました。当時認定燃焼試験が終わった段階で、その後に数々の地上試験が控えておるということで、その状況を踏まえながら要求内容を精査するということにしておりましたけれども、着々と一つ一つの試験をクリアしていったということで、現在のH3ロケットの開発をこのペースで進めていくということで、試験機1号機、2号機、ここまでに必要な開発経費が119億円の内数85億円が確保できております。こちらに基づきまして、引き続き2号機に向けては主要な開発項目でありますLE-9エンジンの燃焼試験、翼振動試験が残ってございますので、活動を実施していきたいと考えております。
また、H3ロケットの高度化の部分は、試験機以降、H3ロケットを高度化していくことに着手させてもらっているものでございまして、こちらについては要求のほぼ満額の34億円がつきまして、119億円となってございます。
次の項目、イプシロンSロケットでございます。95億円の概算要求をしていたところ、60億円前倒しで措置がなされております。
こちらは当然イプシロン6号機の原因究明がまだ進んでいるところですが、割と比較的早い段階で原因箇所が特定されまして、そこの原因究明は引き続きやりますが、イプシロンSロケットの全体の開発、地上開発は進んでおりますので、進めるところは進めるといったことで、確実な開発に結びつけるために60億円の前倒し措置をさせてもらっております。
また次の項目、基幹ロケットの打ち上げ高頻度化ということで、基幹ロケットは種子島、内之浦でそれぞれHシリーズ、そしてイプシロンシリーズが打ち上げられますが、そういった射場関係の整備費です。
項目としては幾つかありまして、例えば、固体ロケットブースターの充填作業は種子島で行った上でSRB-Aとして使われたり、あるいは充填を行った上で内之浦に運ばれてイプシロンロケットの1段目になったりするものですが、そういったブースターの製造能力には一定の限界がありますので、その製造能力の強化ということで、より今後の高頻度化に対応できるようにすること、また、種子島、内之浦の射場で共用している設備がございまして、打ち上げ時期の調整においては一定の頻度の制約になってくるのですが、こういった共用設備の解消のためそれぞれに整備をすること、また、種子島に衛星が持ち込まれて衛星フェアリング組立棟で組立が行われますが、幾つかあるそういう組立棟の中で整備場所をきちんと確保し治工具を整備することで複数の衛星フェアリング組立を種子島で行えるといったことで、今後の種子島を中心とした打ち上げ回数の高頻度化に向けた工事に着手するということでございます。
こちらもH3ロケットに伴う事項要求として考えておったものを、H3ロケットの開発が一つ一つ進んでいることを踏まえて具体化させてもらって、86億円の措置となったものです。こういった工事は1年で終わるものではございませんので、複数年の対応をしながら、徐々に打ち上げ能力を向上させていくことを考えてございます。
二つ目の事項は衛星関係です。2023年、2024年、近々に打ち上げる予定であった衛星につきまして概算要求しておりましたけれども、開発の最終段階ということで、それを加速するために、ETS-9が42億円、またGOSAT-GWが36億円、また深宇宙探査ということでDESTINY+が26億円を措置させてもらっております。
3番目、火星探査・アルテミス計画に238億円ということで、こちらも開発を確実に行うということで概算要求額からの前倒し措置を達成しております。
HTV-Xについて、でございますが、要求額191億円程あったのですが、そのうち73億円を前倒し措置させてもらっています。
また、月周回有人拠点(ゲートウェイ)に日本側としては機器提供をしていきますが、地上開発が進んでおりまして、こちらも概算要求額の内数としての前倒しをさせてもらっています。
またLUPEX、MMXですが、こちらはH3ロケットを使って打ち上げることもあって、概算要求時点では一部事項要求とさせてもらっておりましたけれども、こちらについてもロケット調達、衛星の開発も含めて前倒し措置をさせてもらって、それぞれ33億円、74億円となっております。
また、月面での有人与圧ローバーについても15億円の措置がなされています。こちらは概算要求時点で15億円の概算要求をしておりますが、それをそのまま補正予算から少しでも早く着手するということで措置ができまして、これが今回、与圧ローバーに関する主要な予算措置となります。要素試験から始まって、要素技術の開発から始まりますが、こういったところで与圧ローバーの開発も進めてまいりたいと考えております。
以上、項目ごとの御説明でございました。予算に関しては来年度の予算の大詰めを迎えてございます。引き続き私どもとしてはしっかりと対応してまいりたいと考えてございます。
御説明は以上ですが、御不明点等あれば質問にお答えしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
【村山部会長】 ありがとうございます。御質問いかがでしょうか。補正予算についてですけれども、いいでしょうか。
(「なし」の声あり)
【村山部会長】 それでは、上田課長、どうもありがとうございました。
【上田課長】 ありがとうございました。
【村山部会長】 それでは、次の議題に移らせていただきます。
六つ目の議題、これは審議事項になりますが、内閣府宇宙開発利用加速化戦略プログラム、これはスターダストプログラムですけれども、これにより実施する文科省の戦略プロジェクトの進捗報告・評価についてです。
昨年に引き続き、今年もスターダストプログラムで文科省が担当する各プロジェクトに対して各委員から指摘やコメントをいただきたいと考えております。説明は資料の順番に沿って事務局及び各プロジェクトのJAXA担当者から順次行っていただきます。質疑応答は全ての説明が終わった後でまとめて行いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
それでは、説明をよろしくお願いいたします。
【竹上企画官(事務局)】 資料はお手元の71-6を御覧ください。
昨年もこの時期に評価いただいた案件でございますが、スターダストプログラムについてということで、この資料の緑枠に記載のとおり、現在、内閣府宇宙事務局において、月面開発、衛星基盤技術の強化のための各省連携プロジェクト予算としてスターダストプログラムという事業が実施されております。既に資料に記載のとおり、今年、令和4年の補正予算でも107.5億円が計上されているところです。
中段、スキームというところに記載のとおり、内閣府宇宙政策委員会衛星開発・実証小委員会という場で審査や評価がなされ、実際に決定後は各省に内閣府から予算が移し替えられて、各省、文科省が公募を実施し、事業実施者が決定するというスキームになっております。
今般、補正予算が措置された等の状況を踏まえまして、今年も年末に、この衛星開発・実証小委が開催されます。そこで継続事業の評価及び新規案件の審議・決定がなされる予定になっております。
このスターダストプログラムでございますけれども、継続事業につきましては、先ほど申しましたとおり、文科省に予算が移し替えられております。よって文科省事業という位置づけになりますので、先立って文科省でも有識者会議の評価を得る必要があるということで、昨年に引き続き、本日、委員の皆様に各プロジェクトの進捗状況の確認と御助言をいただきたいと考えております。
現在、文科省事業としましては3件、うち1件は今年で終了となりますが、いずれもJAXAが実施機関として採択されております。本日、JAXAのプロジェクト担当に来ていただいておりますので、これから順次状況を報告いただきます。
なお、資料番号が入ってなくて非常に恐縮ですが、資料2ページ目に昨年いただいた御指摘、また昨年、その時点での対応方針をまとめておりますので、ここの対応の最新状況につきましても各担当から補足説明をいただく予定にしております。
また、3ページ目に予算額がそれぞれ記載されております。これは今年の予算額まで書いておりますが、別途、オンラインなので画面に出せませんが、事前にメールで机上配付資料という形で送らせていただいているものに、令和4年度以降を予定しているものは、そこの計画予算額も記載しておりますので、必要に応じて参照いただければと思います。
それでは、私の説明は以上としますので、ここからはJAXAの3プロジェクトの担当の方々、順次御説明をよろしくお願いいたします。
【深津プロジェクトマネージャ(JAXA)】 JAXA ETS-9プロジェクト、プロジェクトマネージャの深津と申します。よろしくお願いいたします。
それでは、衛星用フルデジタル通信化技術ということで説明させていただきます。
この技術につきましては、最近、世界的にも衛星通信につきましてはデジタル化を行いまして、通信容量や送受信する地域のフレキシビリティというところが重視されております。それを我が国も取り組み、国際協力を維持していこうということでございまして、事業の内容といたしましては、右側にございますが、衛星通信として地上からの電波を受信し、それをデジタル化した後に、信号処理部、それから送信部までのところを全てデジタル化するということでございます。
次のページをお願いいたします。
事業計画といたしましては、令和3年度に着手しておりまして、今年度4年度までに詳細設計が完了しております。それに基づきまして製造を行っておりまして、一部試験に入っておりますが、あと1年試験をやって、開発を完了させたいと考えております。
今のところ計画どおりに進んでおりまして、右下、留意事項という形で令和4年度のところで御指摘をいただいております。
一つ目といたしまして獲得した技術により国内外の商用衛星需要の獲得に努めること、それから二つ目が事業者自身の努力により他の必要な技術についても高度化していくこと、また三つ目に変化のスピードの速い海外の技術動向を把握して、常にベンチマークを更新していくことということで御指摘いただいております。
これにつきましては、まず、本事業の成果を基に、通信衛星市場のシェア獲得に向けて計画しております。それから、通信衛星市場における競争力確保のために、ETS-9におきましては、このフルデジタル化に取り組むこと以外に衛星バスの全電化によりミッション機器の搭載の拡大とか、ペイロードへの大電力供給の機能とかを付加することで競争力の強化に努めていきたいと考えております。また、世界の通信衛星の動向につきましては、JAXAといたしましては、外部業者からの協力も得ながら常に市場動向をモニターしておりまして、通信容量だけではなく、コストやその他もろもろの技術動向についてベンチマークを行いながら把握をしているところでございます。
次のページをお願いいたします。
当該年度の進捗状況といたしましては、左側にございますが、設計まで完了しておりますので、製作、それから試験に入っているところです。
右側の次年度の事業計画のところでございますが、基本的には作成させていただいた装置に基づきまして試験を行って開発を完了させる計画でございます。
右側に描いてある絵は、青枠で囲っているところが、これまで既に総務省が開発されていたペイロードがございますが、今回開発しておりますのが、下の赤で囲ったところでして、真ん中の赤枠で囲ったところが主に信号処理部でデジタル化されたところでございますが、左側のお椀のようなところから地上から電波を受信して、デジタル信号に処理したときに、右側のまたお椀のようなところから地上に向けて送信するというシステムになってございます。
簡単でございますが、説明は以上です。
【新藤プロジェクトマネージャ(JAXA)】 続きまして2件目、衛星のデジタル化に向けた革新的FPGAの研究開発につきまして、本件を担当しておりますJAXA研究開発部門の新藤から報告させていただきます。
本件は衛星のデジタル化のキーデバイスと識別されておりますFPGAと呼ばれる半導体デバイスの研究開発になります。
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現在、衛星の開発の場では、このFPGAというデバイスが非常に多く使われております。現在ですと宇宙用FPGAとしてリリースされているのは海外製品のみという状況、それから最近では産業用途の非常に性能の高いFPGAを宇宙でも使いこなしていくという技術開発も進められておるところでございますけれども、ここで二つ技術課題がございまして、非常に消費電力が高いということと、あと放射線耐性の問題、この二つについて、私たちとしては国産独自の技術を活用することで、海外製品を凌駕するような画期的なFPGAを開発することを目指して研究活動を進めております。
この国産独自の技術というのは、一つは、この図にありますようなナノブリッジと呼ばれる金属配線のスイッチング技術です。これは国内部品メーカが持っている独自の技術になります。それからもう一つは、JAXAが培ってきた耐放射線を強化する回路技術、これを組み合わせることでFPGAを実現することを目指しております。
スケジュールとしては、この表に示しますような2か年計画で進めておりまして、昨年度はアプリケーションの識別ですとかユーザーヒアリングベースの調査、それから車載向けに先行開発が進んでおりますFPGAの性能評価を進めるとともに、ハイエンドのFPGAの設計までを完了しております。
今年度は、昨年度の設計計画を踏まえて、実際にテストチップを製造して、これを評価することを今進めております。
留意事項としては二ついただいておりまして、それぞれの対応状況ですが、一つは、車載含め他産業での市場動向をたゆみなく調査するようにということにつきましては、JAXAとしてもありとあらゆるチャネル、手段を通じて、ここら辺の情報収集は継続しております。また、実際に車載の部品メーカがこのFPGAに興味を持っていただいておりまして、今、車載部品メーカに対して実際に第二世代と呼んでいるFPGAのテストチップと評価ボードを貸与することで実機評価をしていただいておるところでございます。
それから、技術を枯らせるために早くユーザーに使ってもらうべきという御指摘につきましては、御指摘はおっしゃるとおりと思いまして、今、宇宙用部品技術ワーキンググループという活動をJAXAはしておりますけれども、この中でユーザーとなっていただける人たちと対話をして、早期にユーザー評価をしてもらうことを調整しております。また、実証計画についても今、引き続き具体化を進めております。
次をお願いします。
当該年度の進捗状況です。大きくは二つあります。
一つは、テストチップの設計ということで、これは7月までに完了しております。テストチップのサイズとしては4mm×3mmという製品に比べると非常に小さな規模のテストチップでございますが、これを使うことでFPGAの機能が一通り耐放射線性も含めて評価できるような設計内容になっております。
現在進行形で、年度末達成見込みということで書かせていただいておりますが、今テストチップの製造を実施している最中でございます。見込みでは年明け2月頃にチップ製造が完了して、最後、性能評価して、目的を達成したかというところを分析して、完了させたいと考えております。
一応2年間の総括ということで、見込みも含めて書かせていただきました。今回の研究開発を通じて、第三世代と呼んでいるハイエンドなFPGAについては要素技術の開発が一通りできて、大規模な製品を想定した試作に移る準備が完了したと考えております。
それから、車載向けで先行しているFPGAも使いこなせることが分かってきておりますので、これも含めて、早期にユーザーと使っていくよう、今後実証計画も検討していきたいと考えております。
報告は以上になります。
【佐藤システム技術ユニット長(JAXA)】 それでは、引き続き月面活動に向けた測位・通信技術開発について、JAXAの国際宇宙探査センターの佐藤から御報告いたします。
ここに書いてあります背景・必要性は、前回も御説明したかと思いますが、アルテミス計画の中で測位・通信といった基盤技術をしっかり上げていくことが大きな目的でございます。全体で5年間の研究開発で、昨年度から始めているものになります。
次をお願いします。
それでは、もう少し事業計画について御説明したいと思います。
大きく分けて測位の研究と通信の研究に分けてやっておりまして、測位に関しましては、月面での航法精度40mというところを目標にして、全体のアーキテクチャ検討、それからキーとなる要素技術の研究を行っております。
通信のほうは、将来的な通信の需要を考えますと、月―地球間での1Gbpsクラスの高速通信、大容量通信を達成すべきだろうというところで、それを目標として特に光通信に関する研究開発を行っております。
5年間の計画を下の表にまとめておりますけれども、測位のほうをまず手早くやろうということで、昨年度から来年度にかけて測位実証衛星の概念設計、試作試験、丸3丸4丸5と書いてありますのは、その中でもキー要素でありますGNSS受信機の研究開発として試作試験、TRL4まで上げるということでございます。
通信のほうは若干時間がかかると思っておりまして、全体的なシステム設計とか、特に光通信のキー技術と思われる高感度送受信技術ですとか大口径の光学系の研究、それから補償光学系の研究、そういったところを5年間かけてTRL4まで上げていこうとしておりまして、今年は2年目ということになります。
実施体制は、ここに書いてあるとおりJAXAが文科省から受託しておりまして、幅広い形で検討を行っておりますが、来年度以降はもう少し企業を絞ってやろうかと思っております。
いただいた留意事項への対応状況ということでは、一つ目が、ESA、NASAと意見交換をしながら確実にということで、既にNASA、ESAとの協働による実証ミッションや全体のアーキテクチャ検討などを議論しているところでございますし、2番目の小さな要素技術レベルでも実証機会を模索するということで、現在はGNSS受信機を搭載した測位衛星を月周回軌道に投入して、そこから出される航法メッセージを月面で受信するという計画を2028年度に実施することを目標に計画中でございます。
それ以外にも、ここの部会でいただいた話としまして、スタートアップ企業も検討に入れなさいということで、実施体制にありますように、アークエッジ・スペース、ワープスペースといったスタートアップ企業にも参加いただいております。
次をお願いします。
左側が今年度の進捗状況で、右側が来年度の計画でございますけれども、大まかに言いますと、昨年度から少し始めましたアーキテクチャ検討は今年度で終わりにしまして、NASA、ESAとの協働検討に資しております。
それから丸2が実証機のシステム検討で、これは28年に打ち上げたいと考えている月測位衛星の実証機の概念検討でございます。
それから丸3丸4丸5はGNSS受信機関連の主要要素の研究を進めておりますし、光通信に関しましては丸7丸8丸9、先ほど御紹介したようなところをNICT等と一緒に研究を進めております。
来年度に関しましては、LNSS、測位実証のほうに関しましては概念検討と試作、それからGNSSについても試作を完了するというところが目標になってございます。
光通信のほうは、先ほど言いましたように5年間かけますので、もう少し試作等をじっくりやっているという状況でございます。
以上でございます。
【村山部会長】 どうもありがとうございました。
それでは、御質問、コメントをいただきたいのですけれども、まず、三つプロジェクトがありますので、どのプロジェクトか特定していただいて、それから御質問いただければと思います。いかがでしょうか。
それでは、ほかの方が考えておられる間に、私からプロジェクト1について質問いたします。
通信用のフルデジタル化ということで非常に重要なプロジェクトだと思うのですけれども、世界シェア10%を目指すということを書いてありますが、現在のシェアは何%ぐらいなのかということと、それで、このプロジェクトで仮に良い製品ができたとしても、世界シェア10%を目指すためにネックとなる事象、例えば価格だとかマーケティングだとかいろいろあると思うんですけれども、その辺りをどう考えておられるかを質問したいのですが、いかがでしょうか。
いかがでしょうか、今の質問について、プロジェクト1のJAXAの御担当の方。
【深津プロジェクトマネージャ(JAXA)】 失礼いたしました。
まず、現時点のシェアでございますが、残念ながら現時点では受注ができておりません。しかしながら、このフルデジタル化の開発をすることによりまして、世界的な衛星メーカと肩を並べることができたものですから、そういう意味では受注活動に入ることができたということをメーカのほうから報告を受けております。
したがいまして、このフルデジタルペイロードを開発することによって、いずれ受注の成果が出て、2020年代にシェア10%という目標に近づくのではないかと期待しております。
【村山部会長】 価格というのは重要になると思いますが、ほかの国の製品に比べて、このプロジェクトから出てくる製品の価格の見通しはどんな感じでしょうか。
【深津プロジェクトマネージャ(JAXA)】 資料にも記載しておりますように、このフルデジタルペイロードの要素技術ができれば、次の民間企業側としては200Gbpsの通信能力が出せるとなっております。ここまで行ければ、かなり価格的には、ビット単位当たりの単価ということで、衛星の価格を伝送量で割って、それが1に近づけば近づくほど競争力が上がると評価してございますが、そこにおいて優位性が保てるであろうと期待しております。ただ、世界のインフレ等もありまして、なかなか価格的には世界的にも大変な状況らしいのですが、我々としては、このフルデジタルの開発を達成することによって、ようやく価格においても競争力が持てると期待しております。
【村山部会長】 ありがとうございます。製品の品質ということはもちろんですけれども、そういう価格の面も考慮してこれから開発していただければと思います。
ほかにいかがでしょうか。どなたか、どんなことでも結構ですので、お気づきの点、こういう方向がいいのではないかとか、何でも結構ですので、いかがでしょうか。
それでは考えていただいておいて、私のほうからもう一つ質問します。
プロジェクト3の月面活動の測位、それから光通信という話ですけれども、これはかなり多くの企業が参加している形態ですが、これで完成品ができた場合、知的所有権はどこに所属するかというのを教えていただければと思います。
【佐藤システム技術ユニット長(JAXA)】 基本的にはJAXAのほうに所有権はあることになりますけれども、そこはケースバイケースで、各企業のほうに受け渡すこともあり得るということになっていると思います。
【村山部会長】 一括してJAXAが最初は知的所有権を管理していて、それで、例えば一つの企業からこの要素技術についての技術を展開したいという場合は、知的所有権が移転されると、そういう理解でいいですか。
【佐藤システム技術ユニット長(JAXA)】 はい。協議の上、そういうことも可能になっております。
【村山部会長】 分かりました。その辺りの契約絡みのところもちゃんと整理して進めていただければと思います。ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。私ばかり質問していてよくないですけれども。どなたでも結構ですので、いかがでしょうか。
それでは、一応1、3について質問しましたので、2についても若干質問させていただきますと、半導体デバイスを設計しているということで、企業がNBSという会社ですが、この会社は、設計はうまくできる会社というふうにお見受けしておりますが、生産の段階に移った場合、半導体チップの生産はどういう形でやられる計画でしょうか。
【新藤プロジェクトマネージャ(JAXA)】 NBSに限らず、最近、業界の標準的な形態として、NBSみたいに設計技術を持っているけれども自社では製造ファブを持っておらず、そこは協業してもらえる半導体工場と協業するというのが産業界でも標準的な開発手法になっております。
今回も16nmという技術を作っていただける半導体メーカと協力関係を結んでチップを製造しましたし、将来、製品というところでも同じような図式で製品を開発し、最後は今回のナノブリッジ社のブランドで製品が流通するというような流れを考えております。
【村山部会長】 ありがとうございます。この辺りは、今、日本政府が半導体の生産技術についてかなりお金を出して投資をしてやっていますよね。だから、これはかなり重要な技術で戦略的に不可欠な技術になる可能性がありますので、そういうところも協力してやっていただければと思います。
【新藤プロジェクトマネージャ(JAXA)】 はい、承知しました。ありがとうございます。
【村山部会長】 ほかに御質問はいかがでしょうか。特にありませんでしょうか。
(「なし」の声あり)
【村山部会長】 それでは、ありがとうございました。
このプロジェクトですけれども、スターダストプログラムの評価については、内閣府における衛星開発・実証小委員会に加えて、各省においても実施することになっており、本日の意見は事務局においてまとめていただいて、内閣府にも共有、報告いただくとともに、今後の各プロジェクトの推進に活用していただく予定となっております。
以上です。
ここまでは公開でして、次の議題は非公開となりますので、一旦ここまでの範囲で事務局からの連絡事項をお願いいたします。
【竹上企画官(事務局)】 ありがとうございました。先に会議資料と議事録の公開について申し上げます。本日の会議資料は、この後審議する非公開資料を除き公開となります。この公開資料につきましては既に文科省ホームページに掲載させていただいております。また議事録につきましても非公開部分を除き、委員の皆様に御確認いただいた後に文科省ホームページに掲載させていただきますので、よろしくお願いいたします。事務連絡は以上でございます。
【村山部会長】 ありがとうございます。
それでは、一般の方はここまでとなりますので、ここまでの傍聴、誠にありがとうございました。
(公開部分終了)
―― 了 ――
研究開発局宇宙開発利用課